JP2023102777A - 薄膜トランジスタ素子およびその製造方法 - Google Patents

薄膜トランジスタ素子およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高電子移動度を有する薄膜トランジスタ素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】薄膜トランジスタ素子は、ゲート層31、酸化物半導体薄膜4、ゲート層と酸化物半導体薄膜との間に配置されたゲート絶縁膜2、酸化物半導体薄膜に接する一対のソース・ドレイン電極51、52および酸化物半導体薄膜を覆い、SiHを含有する樹脂膜6を備える。一対のソース・ドレイン電極51、52の間には、電極が設けられていないチャネル領域45が形成される。酸化物半導体薄膜は、Snを必須成分とし、さらにIn、GaおよびZnからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜トランジスタ素子およびその製造方法に関する。
InGaZnO等の酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタ(TFT)は、アモルファスシリコンTFTに比べて電子移動度が大きく、優れた電気特性を示すことから、有機ELディプレイの駆動素子や、省電力素子として期待されている。酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタでは、従来のアモルファスシリコンを用いた薄膜トランジスタと同様、デバイスの動作安定性向上等の観点から、半導体薄膜を外部雰囲気から保護するために、半導体薄膜上に絶縁性の保護膜が設けられることがある。例えば、特許文献1では、酸化物半導体薄膜上にシロキサン樹脂を含む感光性組成物を塗布し、フォトリソグラフィーによりパターニングした後、加熱硬化して保護膜を形成することが提案されている。
特開2013-89971号公報
酸化物半導体を用いたTFT素子は、高い電子移動度を有するが、スイッチング速度の向上や省電力化の観点から、より高い電子移動度を有する素子の開発が求められている。
本発明は以下に関する。
[1]ゲート層と、酸化物半導体薄膜と、前記ゲート層と前記酸化物半導体薄膜との間に配置されたゲート絶縁膜と、前記酸化物半導体薄膜に電気的に接続された一対のソース・ドレイン電極と、前記酸化物半導体薄膜を覆う樹脂膜と、を備える薄膜トランジスタ素子であって、前記酸化物半導体薄膜は、錫を必須成分とし、さらにインジウム、ガリウム及び、亜鉛からなる群から選択される1種以上の金属元素を含み、前記樹脂膜は、前記酸化物半導体薄膜に接しており、SiH基を含有する、薄膜トランジスタ素子。
[2]前記樹脂膜におけるSiH基量が、0.001mmol/g以上である、[1]に記載の薄膜トランジスタ素子。
[3]電子移動度が35cm/Vs以上である[1]または[2]に記載の薄膜トランジスタ素子。
[4]前記樹脂膜が、SiH基およびポリシロキサン構造を含むポリマーを含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の薄膜トランジスタ素子。
[5]前記樹脂膜が、SiH基および環状ポリシロキサン構造を含むポリマーを含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の薄膜トランジスタ素子。
[6]前記ゲート絶縁膜が前記ゲート層を覆い、前記ゲート絶縁膜上に前記酸化物半導体薄膜が設けられている、[1]~[5]のいずれかに記載の薄膜トランジスタ素子。
[7]前記酸化物半導体薄膜上に、前記ゲート絶縁膜および前記ゲート層が順に設けられている、[1]~[6]のいずれかに記載の薄膜トランジスタ素子。
[8]ゲート層と、酸化物半導体薄膜と、前記ゲート層と前記酸化物半導体薄膜との間に配置されたゲート絶縁膜と、前記酸化物半導体薄膜に電気的に接続された一対のソース・ドレイン電極と、前記酸化物半導体薄膜を覆う樹脂膜と、を備える薄膜トランジスタ素子の製造方法であって、前記酸化物半導体薄膜は、錫を必須成分とし、さらにインジウム、ガリウムおよび、亜鉛からなる群から選択される1種以上の金属元素を含み、前記酸化物半導体薄膜上に、SiH基含有化合物を含む組成物を塗布した後、加熱して前記樹脂膜を形成する工程を有する、薄膜トランジスタ素子の製造方法。
[9]前記SiH基含有化合物のSiH基量が、0.1mmol/g以上である[8]に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
[10]前記SiH基含有化合物が、ポリシロキサン構造を含む、[8]または[9]に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
[11]前記SiH基含有化合物が、環状ポリシロキサン構造を含む[8]~[10]のいずれかに記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
[12]さらに、前記樹脂膜をフォトリソグラフィーによりパターニングしてコンタクトホールを形成する工程を有する、[8]~[11]のいずれかに記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
[13]前記組成物が、ネガ型感光性組成物である、[12]に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
[14]前記組成物が、ポジ型感光性組成物である、[12]に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
[15]前記組成物がアルカリ可溶性を有さない光・熱硬化性組成物または熱硬化性組成物である、[8]~[14]のいずれかに記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
前記酸化物半導体薄膜が、錫を必須成分とし、さらに所定の金属元素を含み、またSiH基を含有する樹脂膜が、前記酸化物半導体薄膜に接していることにより、高電子移動度を有する薄膜トランジスタ素子が得られる。
ボトムゲート型の薄膜トランジスタ素子の構成例を示す断面図である。 ボトムゲート型の薄膜トランジスタ素子の構成例を示す断面図である。 トップゲート型の薄膜トランジスタ素子の構成例を示す断面図である。 トップゲート型の薄膜トランジスタ素子の構成例を示す断面図である。
[薄膜トランジスタ素子の概要]
図1は、薄膜トランジスタ素子の構成例を示す断面図である。図1に示す素子は、ゲート層31の上にゲート絶縁膜2が形成され、その上に酸化物半導体薄膜4が形成されているボトムゲート型の素子である。酸化物半導体薄膜4の両端には、一対のソース・ドレイン電極51,52が、ゲート絶縁膜2と接するように形成される。
図1に示す薄膜トランジスタ素子の作製においては、まず、ガラス等の基板1上にゲート層31を形成し、その上にゲート絶縁膜2を形成する。ゲート層31の材料としては、モリブデン、アルミニウム、銅、銀、金、白金、チタン、およびこれらの合金等の金属材料が挙げられる。ゲート絶縁膜2としては、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン窒化酸化膜等のシリコン系薄膜が、プラズマCVD法により形成される。ゲート絶縁膜の厚みは、通常50~300nmである。絶縁膜付きのゲート層として、表面に熱酸化膜が形成された低抵抗シリコン基板を用いてもよい。
酸化物半導体薄膜4は、錫を必須成分とし、さらにインジウム、ガリウムおよび、亜鉛のうちの1種以上の金属元素を含む複合酸化物からなる半導体薄膜である。酸化物の具体例としては、Zn-Sn-O等の亜鉛系酸化膜、In-Sn-O、In-Zn-Sn-O、In-Ga-Sn-O、In-Ga-Zn-Sn-O等のインジウム系酸化物が挙げられる。酸化物は、In,Ga,Zn,Sn以外の金属元素(例えば、Al,W)を含んでいてもよい。
酸化物半導体薄膜は、スパッタ法、液相法等により形成できる。酸化物半導体薄膜の膜厚は、20~150nm程度である。酸化物半導体薄膜4を形成後、後述の樹脂膜6を形成する前に、加熱アニールを実施することが好ましい。酸化物半導体薄膜4上に、ソース・ドレイン電極51,52を形成後に加熱アニールを実施してもよい。酸化物半導体薄膜の加熱アニールは、例えば、酸素雰囲気下、200~400℃で、10分~3時間程度行えばよい。
酸化物半導体薄膜4上に、ソース・ドレイン電極51,52が形成される。ソース・ドレイン電極は、酸化物半導体薄膜4の端部に電気的に接続されるように形成され、一対のソース・ドレイン電極51,52の間に、電極が設けられていないチャネル領域45が形成される。ソース・ドレイン電極の材料としては、モリブデン、アルミニウム、銅、銀、金、白金、チタン、およびこれらの合金が挙げられる。またソース・ドレイン電極は単層であってもよいし、複層であってもよい。
ソース・ドレイン電極51,52をパターニングする方法としては、ウェットエッチングまたはドライエッチングによるパターニング、およびマスク成膜やリフトオフによるパターニングが挙げられる。
酸化物半導体薄膜4上を覆うように樹脂膜6を形成する。樹脂膜6は、酸化物半導体薄膜4を、外部環境および/またはプロセスダメージから保護する役割を有する。例えば、図1に示す実施形態では、ソース・ドレイン電極51、52を覆うように樹脂膜6が形成され、酸化物半導体薄膜4を外部環境から保護する保護膜として機能する。
酸化物半導体薄膜4とソース・ドレイン電極51,52との間に樹脂膜を形成してもよい。この場合、樹脂膜はソース・ドレイン電極をパターニングする際の酸化物半導体薄膜4の損傷を防止するエッチストッパとして機能し得る。エッチストッパとしての樹脂膜を形成する場合は、樹脂膜を形成後、樹脂膜上にソース・ドレイン電極を形成すればよい。
樹脂膜の形成に用いられる組成物は、SiH基を含む化合物(SiH基含有化合物)を含む。SiH基含有化合物のSiH基の量は、0.1mmol/g以上が好ましい。SiH基含有化合物は、ポリマーであってもよい。組成物は、ネガ型またはポジ型の感光性を有し、フォトリソグラフィーによるパターニングが可能な組成物であってもよい。組成物は、アルカリ可溶性(フォトリソグラフィー性)を有さない光・熱硬化性組成物または熱硬化性組成物であってもよい。
酸化物半導体薄膜4上にSiH基含有化合物を含む組成物を塗布し、塗布した組成物を加熱することにより、樹脂膜6が形成される。薄膜トランジスタ素子の特性をより効果的に向上させる観点から、ボトムゲート型の素子においては、酸化物半導体薄膜4のチャネル領域45上に直接SiH基含有組成物を含む組成物を塗布することが好ましい。複数の樹脂膜を形成する場合は、化合物半導体薄膜4のチャネル領域45上に接する樹脂膜の形成に用いられる組成物が、SiH基含有化合物を含むことが好ましい。
樹脂膜形成時の加熱温度は190℃以上が好ましい。組成物の加熱は、2段階以上で実施してもよい。例えば、主に組成物に含まれる溶媒を除去するための加熱(プリベイク)と、樹脂成分と熱硬化するための加熱(ポストベイク)を実施してもよい。2段階以上で加熱を実施する場合は、最も高い温度が190℃以上であることが好ましい。組成物が感光性を有している場合は、プリベイクとポストベイクの間に露光を実施してもよい。
酸化物半導体薄膜4上で、SiH基含有化合物を含む組成物を加熱することにより、薄膜トランジスタ素子の電子移動度が向上する傾向がある。薄膜トランジスタ素子の電子移動度は、35cm/Vs以上が好ましく、40cm/Vs以上がより好ましく、45cm/Vs以上がさらに好ましく、50cm/Vs以上、55cm/Vs以上または60cm/Vs以上であってもよく、65cm/Vs以上であってもよい。
酸化物半導体の中でも、In-Ga-Zn-Sn-O(IGZTO)薄膜を用いた薄膜トランジスタ素子は、高い電子移動度を示すことが知られているが、その値は高々15~25cm/Vs程度である。本発明の実施形態では、従来の酸化物半導体薄膜トランジスタ素子に比べて顕著に高い電子移動度を実現可能であり、スイッチング速度等の特性に優れる薄膜トランジスタ素子を提供可能である。
組成物中のSiH基の量が多く、加熱温度が高いほど、素子の電子移動度が大きくなる傾向がある。樹脂膜の形成により電子移動度が大幅に向上する理由は定かではないが、1つの推定要因として、酸化物半導体薄膜の加熱アニールに加えて、加熱の際にSiH基含有化合物から発生した水素が酸化物半導体薄膜内に拡散することが挙げられる。
[SiH基含有化合物]
SiH基含有化合物は、分子内に少なくとも1個のSiH基を含み、好ましくはポリシロキサン構造を含む。「ポリシロキサン構造」とは、シロキサン単位Si-O-Siを有する構造骨格を意味する。ポリシロキサン構造は、環状ポリシロキサン構造であってもよい。「環状ポリシロキサン構造」とは、環の構成要素にシロキサン単位(Si-O-Si)を有する環状分子構造骨格を意味する。
SiH基含有化合物に含まれるSiH基の量は、0.1mmol/g以上が好ましく、0.3mmol/g以上がより好ましく、0.5mmol/g以上がさらに好ましく、0.7mmol/g以上または1.0mmol/g以上であってもよい。SiH基含有化合物に含まれるSiH基の量の上限は特に限定されないが、一般には30mmol/g以下であり、20mmol/g以下、15mmol/g以下または10mmol/g以下であってもよい。
SiH基含有化合物は、低分子量化合物であってもよく、ポリマーであってもよい。SIH基を含む低分子量化合物としては、例えば、後述のSiH基を有するポリシロキサン化合物が挙げられる。
樹脂膜の膜形成性や耐熱性の観点から、SiH基含有化合物は、ポリシロキサン構造を含むポリマーであることが好ましい。樹脂膜形成用組成物は、SiH基を含む低分子量化合物とSiH基を含むポリマーの両方を含んでいてもよい。ポリシロキサンポリマーは、ポリシロキサン構造を主鎖に含有していてもよく側鎖に含有していてもよい。ポリマーが主鎖にポリシロキサン構造を含有する場合に、樹脂膜の耐熱性が向上する傾向がある。
SiH基を有するポリシロキサンポリマーは、例えば、(α)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリシロキサン化合物と、(β)SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合(エチレン性不飽和基)を1分子中に少なくとも2個有する化合物とのヒドロシリル化反応により得られる。複数のSiH基を有する化合物(α)と複数のエチレン性不飽和基を有する化合物との反応により、複数の化合物(α)が架橋されるため、ポリマーの分子量が高められ、製膜性および樹脂膜の耐熱性が向上する傾向がある。
(化合物(α):SiH基を有するポリシロキサン化合物)
1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリシロキサン化合物(α)の具体例としては、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン、分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサン、およびヒドロシリル基を含有する環状ポリシロキサンが挙げられる。環状ポリシロキサン構造を含有するポリマーは、鎖状のポリシロキサン構造のみを含有するポリマーと比較して、樹脂膜の製膜性および耐熱性に優れる傾向がある。
環状ポリシロキサンは多環構造でもよく、多環は多面体構造を有していてもよい。耐熱性および機械強度の高い膜を形成するためには、化合物(α)として、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリシロキサン化合物を用いることが好ましい。化合物(α)は、好ましくは1分子中に3個以上のSiH基を含む。耐熱性および耐光性の観点から、Si原子上に存在する基は、水素原子およびメチル基のいずれかであることが好ましい。
直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位および末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位および末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位および末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ならびにジメチルハイドロジェンシリル基によって末端が封鎖されたポリシロキサン等が例示される。
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンとしては、ジメチルハイドロジェンシリル基によって末端が封鎖されたポリシロキサン、ならびにジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CHSiO1/2単位)と、SiO単位、SiO3/2単位およびSiO単位からなる群より選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位とからなるポリシロキサン等が例示される。
環状ポリシロキサン化合物としては、1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-プロピル-3,5,7-トリハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-ジハイドロジェン-3,7-ジヘキシル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5-トリハイドロジェン-1,3,5-トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタハイドロジェン-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロシロキサンおよび1,3,5,7,9,11-ヘキサハイドロジェン-1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロシロキサン等が例示される。
化合物(α)は、多環の環状ポリシロキサンでもよい。多環は多面体構造でもよい。多面体骨格を有するポリシロキサンは、多面体骨格を構成するSi原子の数が6~24であるものが好ましく、6~10であるものがより好ましい。多面体骨格を有するポリシロキサンの具体例としては、シルセスキオキサンが挙げられる。環状ポリシロキサンは、多面体骨格を有するシリル化ケイ酸でもよい。
(化合物(β):エチレン性不飽和基を含む化合物)
化合物(β)は、SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に2個以上含む。SiH基との反応性を有する炭素-炭素二重結合を含む基(以下、単に「エチレン性不飽和基」または「アルケニル基」と称することがある)としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2-ヒドロキシ-3-(アリルオキシ)プロピル基、2-アリルフェニル基、3-アリルフェニル基、4-アリルフェニル基、2-(アリルオキシ)フェニル基、3-(アリルオキシ)フェニル基、4-(アリルオキシ)フェニル基、2-(アリルオキシ)エチル基、2,2-ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3-アリルオキシ-2,2-ビス(アリルオキシメチル)プロピル基およびビニルエーテル基等が挙げられる。
1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物(β)の具体例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2-テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3-ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5-トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5-トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5-ヘキサジエン、1,9-デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,5-ジアリルフェノールアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、1,2-ポリブタジエン(1,2比率10~100%のもの、好ましくは1,2比率50~100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、その他、従来公知のエポキシ樹脂のグリシジル基の全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。また、上記例示の化合物におけるアリル基を(メタ)アクリロイル基に置き換えた化合物(例えば、多官能(メタ)アクリレート)も、化合物(β)として好適に用いられる。
化合物(β)は、2以上のアルケニル基を有するポリシロキサン化合物でもよい。2個以上のアルケニル基を有する環状ポリシロキサン化合物の具体例としては、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1-プロピル-3,5,7-トリビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5-ジビニル-3,7-ジヘキシル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタビニル-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロシロキサンおよび1,3,5,7,9,11-ヘキサビニル-1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロシロキサン等が挙げられる。
化合物(β)は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド、ポリイミド、フェノール-ホルムアルデヒド等のポリマー鎖の末端および/または側鎖にアルケニル基を有する化合物であってもよい。
(その他の出発物質)
ヒドロシリル化反応の出発物質として、上記の化合物(α)および化合物(β)に加えて、1分子中に、ヒドロシリル化反応に関与する官能基を1個のみ有する化合物を用いてもよい。ヒドロシリル化反応に関与する官能基とは、SiH基、またはエチレン性不飽和基である。ヒドロシリル化反応に関与する官能基を1つのみ含む化合物を用いることにより、ポリマーの末端に特定の官能基を導入できる。
ヒドロシリル化反応の出発物質として、光重合性官能基を有する化合物を用いてもよい。光重合性官能基としては、カチオン重合性官能基やラジカル重合性官能基が挙げられる。「カチオン重合性官能基」とは、活性エネルギー線が照射された場合に、光酸発生剤から生成した酸性活性物質によって重合および架橋する官能基を意味する。活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、およびγ線等が挙げられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基、およびアルコキシシリル基が挙げられる。感光性の観点から、カチオン重合性官能基としてはエポキシ基が好ましく、エポキシ基の中でも、安定性の観点から、脂環式エポキシ基またはグリシジル基が好ましい。特に、光カチオン重合性に優れることから、脂環式エポキシ基が好ましい。
出発物質として、1分子中にアルケニル基とカチオン重合性官能基とを有する化合物を用いることにより、ポリマーにカチオン重合性官能基を導入できる。ポリマーがカチオン重合性官能基を有する場合は、光カチオン重合により、ポリマーが架橋されるため、樹脂膜の機械強度や耐熱性の向上が期待できる。
一分子中にアルケニル基とカチオン重合性官能基としてのエポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートおよびモノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
ポリシロキサンポリマーは、1分子中に複数のカチオン重合性官能基を有していてもよい。ポリマーが1分子中に複数のカチオン重合性官能基を有する場合に、架橋密度が高められ、樹脂膜の耐熱性が向上する傾向がある。複数のカチオン重合性官能基は同一でもよく、2種以上の異なる官能基でもよい。
ポリシロキサンポリマーは、アルカリ可溶性を有していてもよい。ポリマーにアルカリ可溶性付与基を導入することにより、アルカリ可溶性を付与できる。ポリマーが光重合性官能基とアルカリ可溶性基を有する場合、光硬化前はアルカリに対する溶解性を示し、光硬化後はアルカリに不溶となるため、ネガ型の感光性樹脂として使用できる。アルカリ可溶性付与基(酸性基)としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、N-置換イソシアヌル酸、およびN,N’-ジ置換イソシアヌル酸が挙げられる。ヒドロシリル化反応の出発物質として、酸性基を含み、かつ、アルケニル基および/またはSiH基を含む化合物を用いることにより、アルカリ可溶性ポリマーが得られる。
ポリシロキサンポリマーは、酸の存在下で保護機が脱離してアルカリ可溶性を示すものであってもよい。酸の存在下で保護基が脱離してアルカリ可溶性を示すポリマーは、光酸発生剤から発生する酸との反応により保護基が外れ(脱保護)、アルカリ溶解性が増大するため、ポジ型の感光性樹脂として使用できる。
酸性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、N-置換イソシアヌル酸、およびN,N’-ジ置換イソシアヌル酸が挙げられる。フェノール性水酸基の保護基としては、tert-ブトキシカルボニル基およびトリアルキルシリル基等が挙げられる。例えば、Boc化試薬を用いた反応により、フェノール性水酸基をtert-ブトキシカルボニル基により保護できる。フェノール性水酸基の保護基としてのトリアルキルシリル基におけるアルキル基は、酸による脱保護のしやすさの観点から、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン等のシリル化剤を用いた反応により、フェノール性水酸基をトリメチルシリル基により保護できる。N-置換イソシアヌル酸、およびN,N’-ジ置換イソシアヌル酸の酸性基(NH基)も、フェノール性水酸基と同様の保護基により保護できる。カルボン酸の保護基としては、第三級アルキルエステル、アセタール等が挙げられる。カルボン酸の第三級アルキルエステルにおける第三級アルキル基としては、tert-ブチル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、ノルボルニル基等が挙げられる。
ヒドロシリル化反応の出発物質として、酸の存在下で脱離する保護基を有する構造を有し、かつ、アルケニル基および/またはSiH基を含む化合物を用いることにより、酸の存在下で保護機が脱離してアルカリ可溶性を示すポリシロキサンポリマーが得られる。
(ヒドロシリル化反応)
ヒドロシリル化反応の順序および方法は特に限定されない。ヒドロシリル化反応は、全ての出発物質を1ポットに仕込んで重合を実施してもよく、原料を複数回に分けて投入し、多段階で反応を実施してもよい。
ヒドロシリル化反応における出発物質のアルケニル基の総量AとSiH基の総量Bとの比B/Aは、1より大きいことが好ましい。ヒドロシリル化反応では、アルケニル基とSiH基が1:1で反応する。B/Aが1より大きくアルケニル基に対してSiH基が過剰であれば、未反応のSiH基を有するポリシロキサンポリマーが得られる。
酸化物半導体薄膜4上に形成される樹脂膜6におけるポリシロキサンポリマーのSiH基の量が多いほど、薄膜トランジスタ素子の電子移動度が大きくなる傾向がある。そのため、B/Aは、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2以上がさらに好ましく、3以上または5以上であってもよい。ポリマーのSiH基含有量を大きくする観点からは、B/Aは大きいほど好ましい。一方、未反応の残存SiH基が過度に多い場合は、樹脂膜の安定性が低下する場合があるため、B/Aは30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下または10以下であってもよい。
ヒドロシリル化反応には、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体等のヒドロシリル化触媒を用いてもよい。ヒドロシリル化触媒と助触媒とを併用してもよい。ヒドロシリル化触媒の添加量は特に限定されないが、出発物質に含まれるアルケニル基の総量(モル数)に対して、好ましくは10-8~10-1倍、より好ましくは10-6~10-2倍である。
ヒドロシリル化の反応温度は適宜に設定すればよく、好ましくは30~200℃、より好ましくは50~150℃である。ヒドロシリル化反応における気相部の酸素体積濃度は3%以下が好ましい。酸素添加によるヒドロシリル化反応促進の観点からは、気相部には、0.1~3体積%程度の酸素が含まれていてもよい。
ヒドロシリル化反応には、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、ヘキサンおよびヘプタン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランおよびジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトンおよびメチルエチルケトン等のケトン系溶媒;クロロホルム、塩化メチレンおよび1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。反応後の留去が容易であることから、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランまたはクロロホルムが好ましい。ヒドロシリル化反応においては、必要に応じて、ゲル化抑制剤を用いてもよい。
ポリシロキサンポリマーに含まれるSiH基の量は、0.1mmol/g以上が好ましく、0.3mmol/g以上がより好ましく、0.5mmol/g以上がさらに好ましく、0.7mmol/g以上または1.0mmol/g以上であってもよい。ポリマーに含まれるSiH基の量の上限は特に限定されないが、一般には30mmol/g以下であり、20mmol/g以下、15mmol/g以下または10mmol/g以下であってもよい。上述の通り、出発物質の種類や、SiH基の量とアルケニル基の量の比率を調整することにより、ポリマー中の残存SiH基の量を所望の範囲に調整できる。
[組成物]
酸化物半導体薄膜上への樹脂膜の形成に用いられる組成物は、上記のSiH基含有化合物に加えて、SiH基を含まないポリマー、架橋剤、熱硬化性樹脂、光酸発生剤、増感剤、溶媒等を含んでいてもよい。
<架橋剤>
組成物は、上記のSiH基含有化合物との反応性を有する架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤は、光反応により反応性を示すものでもよく、熱により反応性を示すものでもよい。
例えば、架橋剤として1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物を用いれば、加熱により、アルケニル基が、SiH基含有化合物のSiH基とヒドロシリル化反応するため、架橋構造が導入される。1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物の具体例としては、化合物(β)の例として先に例示したものが挙げられる。
SiH基含有化合物がカチオン重合性を有する場合、架橋剤として1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物を用いれば、露光によりSiH基含有化合物と架橋剤とが反応するため、樹脂膜を硬化できる。光カチオン重合性を有する架橋剤としては、1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有する化合物が好ましい。1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有する化合物の具体例としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル製「セロキサイド2021P」)、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル製「セロキサイド2081」)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、下記式S1のエポキシ変性鎖状シロキサン化合物(信越化学製「X-40-2669」)、および下記式S2のエポキシ変性環状シロキサン化合物(信越化学製「KR-470」)等が挙げられる。
<熱硬化性樹脂>
組成物は、上記のSiH基含有化合物との反応性を示さず、単独でまたは他の化合物と反応して熱硬化可能な重合性化合物(熱硬化性樹脂)を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、イソシアネート樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、アクリル樹脂、アリル硬化樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、高分子鎖の側鎖または末端に、アリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基等の反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性ポリマーであってもよい。
<光酸発生剤>
感光性を有する樹脂膜形成用組成物は、光酸発生剤を含んでいてもよい。光酸発生剤に紫外線等の活性エネルギー線が照射されると酸が発生する。カチオン重合性の組成物(例えばネガ型の感光性組成物)では、光酸発生剤が重合開始剤として作用し、カチオン重合による硬化が進行する。ポジ型の感光性組成物では、光酸発生剤から発生した酸の作用により、アルカリ可溶性付与基(酸性基)に結合している保護機が脱離して、アルカリ溶解性が増大する。
感光性組成物に含まれる光酸発生剤は、露光によりルイス酸を発生するものであれば特に限定されない。光酸発生剤の具体例としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、その他のオニウム塩等のイオン性光酸発生剤;イミドスルホネート類、オキシムスルホネート類、スルホニルジアゾメタン類等の非イオン性光酸発生剤が挙げられる。
感光性組成物における光酸発生剤の含有量は、組成物の樹脂分100重量部に対して0.1~20重量部が好ましく、0.1~15重量部がより好ましく、0.5~10重量部がさらに好ましい。
<増感剤>
感光性を有する樹脂膜形成用組成物は、増感剤を含んでいてもよい。増感剤を用いることにより、パターニング時の露光感度が向上する。増感剤としては、ナフタレン系化合物、アントラセン系化合物およびチオキサントン系化合物等が挙げられ、中でも光増感効果に優れることから、アントラセン系増感剤が好ましい。アントラセン系増感剤の具体例としては、アントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン(DBA)、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセン、1,4-ジメトキシアントラセン、9-メチルアントラセン、2-エチルアントラセン、2-tert-ブチルアントラセン、2,6-ジ-tert-ブチルアントラセン、9,10-ジフェニル-2,6-ジ-tert-ブチルアントラセン等が挙げられる。
組成物における増感剤の含有量は、特に限定されず、増感効果を発揮し得る範囲で適宜に調整すればよい。樹脂膜の硬化性および物性のバランスの観点から、組成物の樹脂分100重量部に対して0.01~20重量部が好ましく、0.1~15重量部がより好ましく、0.5~10重量部がさらに好ましい。
<溶媒>
上記の各成分を溶媒中に溶解または分散させることにより、樹脂膜形成用組成物を調製できる。溶媒は、上記のSiH基含有化合物およびその他の成分を溶解可能であればよく、具体的には、ベンゼン、トルエン、ヘキサンおよびヘプタン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランおよびジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルおよびエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶媒;クロロホルム、塩化メチレンおよび1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。製膜安定性の観点から、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテートおよびジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。溶媒の使用量は適宜設定すればよい。
<その他の成分>
樹脂膜形成用組成物は上記以外の樹脂成分や添加剤等を含有していてもよい。例えば、樹脂膜形成用組成物は、特性改質等の目的で、種々の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂シクロオ
レフィン系樹脂、オレフィン-マレイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、天然ゴムおよびEPDM等のゴム状樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基およびアルコキシシリル基等の架橋性基を有していてもよい。
樹脂膜形成用組成物は、上記の他に、接着性改良剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、劣化防止剤、ヒドロシリル化反応抑制剤、重合禁止剤、重合触媒(架橋促進剤)、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、イオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤および物性調整剤等を含んでいてもよい。
樹脂膜形成用組成物の樹脂分のSiH基の量は、0.1mmol/g以上が好ましく、0.3mmol/g以上がより好ましく、0.5mmol/g以上がさらに好ましく、0.7mmol/g以上または1.0mmol/g以上であってもよい。
[樹脂膜の形成]
酸化物半導体薄膜4上に、SiH基含有化合物を含む組成物を塗布し、加熱することにより樹脂膜6が形成される。前述のように、ボトムゲート型の素子の形成においては、組成物は、酸化物半導体薄膜4のチャネル領域45上に直接塗布することが好ましい。組成物を塗布する方法は、均一に塗布が可能である方法であれば特に限定されず、スピンコーティング、スリットコーティング、スクリーンコーティング等の一般的なコーティング法を使用できる。
組成物を塗布後、加熱することにより、樹脂膜6が形成される。樹脂膜6の厚みは、例えば、0.2~6μm程度であり、0.5~3μm程度であってもよい。
前述のように、加熱温度は190℃以上が好ましい。加熱温度が高いほど、素子の電子移動度が大きくなる傾向がある。加熱温度は、200℃以上がより好ましく、210℃以上がさらに好ましく、220℃以上であってもよい。加熱温度が過度に高い場合は、酸化物半導体薄膜や樹脂膜の熱劣化の原因となる場合がある。そのため、加熱温度は450℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、350℃以下または300℃以下であってもよい。190℃以上の温度での加熱時間は、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましい。加熱時間の上限は特に限定されないが、熱劣化の抑制および生産効率の観点から、5時間以下が好ましく、3時間以下がより好ましく、1時間以下であってもよい。前述のように、組成物の加熱は、2段階以上で実施してもよい。
190℃以上の加熱により、SiH基含有化合物のSiH基同士が反応して硬化する。また、組成物が架橋剤として複数のアルケニル基を有する化合物を含む場合、加熱により、SiH基と架橋剤のアルケニル基とのヒドロシリル化反応により硬化(架橋)が進行するため、樹脂膜の絶縁性、耐熱性、および耐溶剤性等が向上する傾向がある。
ソース・ドレイン電極51,52上に樹脂膜6を形成する場合、ソース・ドレイン電極51,52との電気的接続を確保するために、図2に示すように、樹脂膜6にコンタクトホール91,92を形成してもよい。樹脂膜形成用組成物が感光性を有している場合は、ポストベイクの前に、露光およびアルカリ現像を行い、フォトリソグラフィーにより樹脂膜のパターニングを行うことが好ましい。
露光前に、溶媒を乾燥するために加熱(プリベイク)を行ってもよい。加熱温度は適宜設定され得るが、好ましくは50~150℃である。熱硬化性の成分を含む感光性組成物は、加熱により硬化が進むと現像性が低下する場合がある。そのため、プリベイクにおける加熱温度は120℃以下が好ましい。
露光の光源は、感光性組成物に含まれる光酸発生剤および増感剤の感度波長に応じて選択すればよい。通常は、200~450nmの範囲の波長を含む光源(例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプまたは発光ダイオード等)が用いられる。
露光量は特に制限されないが、1~5000mJ/cmが好ましく、5~1000mJ/cmがより好ましく、10~500mJ/cmがさらに好ましい。露光量が過度に少ないと硬化が不十分となりパターンのコントラストが低下する場合があり、露光量が過度に多いとタクトタイムの増大による製造コスト増加を招く場合がある。
パターン露光においては、一般的なフォトマスクを使用できる。ネガ型感光組成物では、コンタクトホール91,92の形成箇所を遮光可能なパターンマスクが用いられる。ポジ型感光性組成物では、コンタクトホール91,92の形成箇所が選択的に露光されるように開口が形成されたパターンマスクが用いられる。
露光後の塗膜に、浸漬法またはスプレー法等によりアルカリ現像液を接触させ、塗膜を溶解および除去することによりパターニングが行われる。ネガ型感光性組成物では、露光部が光硬化されてアルカリ溶解性を示さなくなるため、アルカリ現像により非露光部の膜が選択的に除去される。ポジ型感光性組成物では、光酸発生剤への光照射により発生した酸の作用により、アルカリ溶解性が増大するため、露光部の膜が選択的に除去される。
アルカリ現像液は、一般に使用されるものを特に限定なく使用できる。アルカリ現像液の具体例としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液およびコリン水溶液等の有機アルカリ水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液および炭酸リチウム水溶液等の無機アルカリ水溶液等が挙げられる。現像液のアルカリ濃度は0.01~25重量%が好ましく、0.1~10重量%がより好ましく、0.3~5重量%がさらに好ましい。溶解速度の調整等を目的として、現像液には界面活性剤等が含まれていてもよい。
現像後に上記の加熱(ポストベイク)を実施することにより、樹脂膜が硬化するとともに、素子の電子移動度が向上する。ネガ型またはポジ型の感光性組成物を用い、フォトリソグラフィーによりコンタクトホール91,92を形成する方法は、コンタクトホールの形成時の電極51,52や酸化物半導体薄膜4へのダメージが生じ難く、特性に優れる素子の形成に寄与し得る。
コンタクトホールの形成方法は、フォトリソグラフィーに限定されず、例えばドライエッチング、メカニカルドリル、レーザ加工、リフトオフ等の手法によりコンタクトホールを形成してもよい。また、素子の構造によっては、必ずしも樹脂膜にコンタクトホールを形成する必要はない。フォトリソグラフィーによるパターニングを必要としない場合、樹脂膜形成用組成物は、アルカリ可溶性を有さない光・熱硬化性組成物または熱硬化性組成物であってもよい。
熱および/または光による硬化後の樹脂膜には、SiH基含有化合物のSiH基が未反応で残存していてもよい。硬化後の樹脂膜におけるSiH基量は、0.001mmol/g以上であってもよく、0.01mmol/g以上であってもよく、0.05mol/g以上であってもよい。
上記のように、本実施形態では、SiH基含有化合物を含む組成物を酸化物半導体薄膜上に塗布し、加熱して樹脂膜を形成することにより、電子移動度の高い薄膜トランジスタ素子が得られる。薄膜トランジスタ素子の構成は、図1,2に示す形態に限定されない。例えば、前述のように、ソース・ドレイン電極51,52の形成前に酸化物半導体薄膜上に樹脂膜を形成することにより、エッチストッパとしての機能を持たせることができる。また、樹脂膜に設けられたコンタクトホールを介して、酸化物半導体薄膜とコンタクトするソース・ドレイン電極を形成した薄膜トランジスタ素子にも、本実施形態は適用可能である。
薄膜トランジスタ素子は、半導体層よりも基板に近い側にゲート層が配置されているボトムゲート型に限定されず、半導体層上(基板と反対側の面)にゲート層が配置されたトップゲート型でもよい。
図3は、トップゲート型の薄膜トランジスタ素子の構成例を示す断面図であり、基板1上に、酸化物半導体薄膜4が設けられ、その上の一部の領域に、ゲート絶縁膜2およびゲート層31が設けられ、チャネル領域46を構成している。図3では、ゲート絶縁膜2上の全体にゲート層31が設けられているが、ゲート絶縁膜上の一部の領域にゲート層が設けられていてもよい。酸化物半導体薄膜4上には、ゲート層31と離間してソース・ドレイン電極51,52が設けられている。ソース・ドレイン電極51,52は、ゲート層31とは離間しているが、ゲート絶縁膜2とは接していてもよい。ゲート絶縁膜2、ゲート層31、酸化物半導体薄膜4、ソース・ドレイン電極51,52の材料、形成方法、膜厚等は、ボトムゲート型と同様である。
トップゲート型の素子においても、酸化物半導体薄膜4上を覆うように、SiH基含有化合物を含む組成物を塗布した後、加熱して樹脂膜6を形成することにより、薄膜トランジスタ素子の特性(例えば、電子移動度)が向上する傾向がある。この構成では、樹脂膜6は、酸化物半導体薄膜4の保護膜としての機能に加えて、電極間を絶縁する層間絶縁膜としても機能する。
図3に示すトップゲート型の素子では、チャネル領域46において、酸化物半導体薄膜4上には樹脂膜6が接していないが、ボトムゲート型の素子の場合と同様に、SiHを有する組成物を用いて樹脂膜6を形成することにより、薄膜トランジスタ素子の特性向上がみられる。その理由は定かではないが、酸化物半導体薄膜4上の一部の領域に樹脂膜6を形成することにより酸化物半導体薄膜4のバルクとしての膜質向上効果がみられることや、樹脂膜6のSiH基含有化合物から発生した水素が、酸化物半導体薄膜4の樹脂膜6が接していない領域にも拡散して膜質向上に寄与すること等が、特性向上に寄与していると推定される。
トップゲート型の素子において、樹脂膜6は、電極51とゲート層31との間、および電極52とゲート層31との間の領域で、酸化物半導体薄膜4上を覆っていればよく、ソース・ドレイン電極51,52の一部または全部の領域、およびゲート層31上の一部または全部の領域には、樹脂膜6が設けられていなくてもよい。例えば、図2に示す場合と同様、ソース・ドレイン電極51,52上の樹脂膜6に、コンタクトホールを設けてもよい。また、図4に示す実施形態のように、樹脂膜6を形成後に、樹脂膜6にコンタクトホール93,94を形成し、コンタクトホールを介して、酸化物半導体薄膜4にコンタクトするように、ソース・ドレイン電極53,54を形成してもよい。
薄膜トランジスタ素子は、半導体層よりも基板に近い側のボトムゲート層と、半導体層上(基板と反対側の面)に配置されたトップゲート層をそなえるダブルゲート構造でもよい。ダブルゲート型の素子は、半導体層とボトムゲート層の間にボトムゲート絶縁膜を備え、半導体層とトップゲート層の間にトップゲート絶縁層を備え、半導体層上に接して上記の樹脂膜を備える。ダブルゲート型の素子は、例えば、ボトムゲート型の素子の形成と同様に、基板上にボトムゲート層およびボトムゲート絶縁膜および半導体層を順に形成した後、トップゲート型の素子の形成と同様に、半導体層上に、トップゲート絶縁膜、トップゲート層および樹脂膜(層間充填膜)を形成することにより製造できる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[ポリシロキサンポリマーの合成]
<合成例1>
264gのジオキサンに、ジアリルイソシアヌル酸40gおよびジアリルモノメチルイソシアヌル酸29gを溶解させ、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズジャパン製「Pt-VTSC-3X」、白金含有量3重量%)0.02gを加えて溶液1を調製した。176gのトルエンに88gの1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンを溶解させた溶液を105℃に加熱し、酸素を3%含有する窒素雰囲気下で、上記の溶液1を、3時間かけて滴下した。滴下終了から30分後に、H-NMRにより、アルケニル基の反応率が95%以上であることを確認した。
上記の反応溶液に、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサンとトルエンを重量比1:1で混合した溶液124g(1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン62g)を、1時間かけて滴下した。滴下終了から30分後に、H-NMRにより、アルケニル基の反応率が95%以上であることを確認した。その後、冷却により反応を終了し、トルエンおよびジオキサンを減圧留去して、ポリマーAを得た。H-NMRにより測定したSiH基の量は、1.1mmol/gであった。
<合成例2>
20gのテトラヒドロフラン(THF)に、5gのビスフェノールを溶解させた後、2.5gのヘキサメチルジシラザンを添加し、室温で2時間反応させた。THFおよび反応残渣を減圧留去し、6.5gの反応物2を得た。反応物2は、水酸基がトリメチルシリル基で保護されたジアリルビスフェノールSであり、H-NMRにより、トリメチルシリル基由来のピークおよび水酸基由来のピークが存在しないことを確認した。
20gのトルエンに、3gの1,3,5,7-テトラハイドロジェン-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンを溶解させ、気相部を窒素置換した後、100℃に加熱した。この溶液に、上述の反応物2を5g、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン1.5g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズジャパン製「Pt-VTSC-3X」)0.7mg、およびトルエン5gを含む混合液を45分かけて滴下した。滴下終了から30分後に、H-NMRにより、アルケニル基の反応率が95%以上であることを確認した。その後、冷却により反応を終了し、トルエンを減圧留去して、無色透明の液体であるポリマーBを得た。H-NMRにより測定したSiH基の量は、3.0mmol/gであった。
<合成例3>
72gのトルエンに、72.4gの1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンを溶解させ、気相部を窒素置換した後、105℃に加熱した。この溶液に、トリアリルイソシアヌレート10g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(ユミコアプレシャスメタルズジャパン製「Pt-VTSC-3X」)6.3mg、およびトルエン10gを含む混合液を、45分かけて滴下した。滴下終了から60分後に、H-NMRにより、アルケニル基の反応率が95%以上であることを確認した。その後、冷却により反応を終了し、トルエンを減圧留去して、無色透明の液体であるポリマーCを得た。H-NMRにより測定したSiH基の量は、9.2mmol/gであった。
[絶縁膜形成用組成物の調製]
表1に示す配合(重量比)で、光・熱硬化性の樹脂組成物1~4を調製した。組成物1は、ネガ型の感光性組成物、組成物2はポジ型の感光性組成物である。
組成物4は、樹脂成分として、アルカリ可溶性を示すアクリル樹脂(綜研化学製「フォレットZAH110」)と、下記式で表されるエポキシ化合物(ダイセル製「セロキサイド2021P」)を含む組成物である。
表1に示す各成分の詳細は、下記の通りである。
TAIC:トリアリルイソシアヌレート
光酸発生剤:サンアプロ製「CPI210S」(スルホニウム塩系光酸発生剤)
増感剤:9,10-ジブトキシアントラセン
Pt触媒:ユミコアプレシャスメタルズジャパン製「Pt-VTSC-3X」
溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
[薄膜トランジスタ素子の作製]
<参考例1:保護膜を有さないボトムゲート型素子>
100nmの熱酸化膜付きp型高ドープSi基板上に、スパッタリング装置(島津エミット製「SENTRON」)により、In、Ga、Zn、Snの合金ターゲットを用い、圧力0.5Pa、Ar流量2.0sccm、O流量2.0sccmの条件で、膜厚30nmの酸化物(IGZTO)半導体薄膜をスパッタ成膜した。酸化物半導体薄膜上にレジストパターンを形成し、0.05mol%塩酸によりウェットエッチングした後、アセトン、メタノール洗浄によりレジストを取り除き、酸化物半導体薄膜をパターニング、さらに、大気下400℃で、1時間の加熱アニール処理を行った。その上にレジストパターンを形成し、スパッタにより、膜厚20nmのPtソース電極および膜厚80nmのMoドレイン電極を形成し、リフトオフにより電極のパターニングを行った。その後、酸素フロー下350℃で、1時間の加熱アニール処理を行って、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ素子を得た。
<実施例1、2>
参考例1と同様に、酸化物半導体薄膜、ソース電極およびドレイン電極の製膜およびパターニング、ならびに加熱アニール処理を行った。酸化物半導体薄膜および電極の形成面に、スピンコートにより、乾燥後の膜厚が1μmとなるように表1の組成物1、2,を塗布し、110℃のホットプレートで2分加熱した。マスクアライナー(ミカサ製「MA-10」)により、100μmホールパターンのフォトマスク越しに露光を行い(積算光量:100mJ/cm)、2.38%TMAH現像液にて現像処理を行い、ソース電極上およびドレイン電極上のそれぞれに、100μmφのコンタクトホールを形成した。その後、230℃で30分の加熱硬化(ポストベイク)を行い、保護膜を備える薄膜トランジスタ素子を得た。
<実施例3>
実施例1、2と同様に、酸化物半導体薄膜および電極の形成面に、スピンコートにより、乾燥後の膜厚が1μmとなるように表1の組成物3を塗布し、110℃のホットプレートで2分加熱した後、230℃で30分の加熱硬化を行った。その後、ソース電極上およびドレイン電極上の保護膜をドライエッチングにより除去してコンタクトホールを形成した。
<比較例1>
実施例1と同様に、酸化物半導体薄膜および電極の形成面に、スピンコートにより、乾燥後の膜厚が1μmとなるように表1の組成物4を塗布し、110℃のホットプレートで2分加熱した。フォトマスクを介さずに、マスクアライナーにより露光を行った後、230℃、30分の加熱硬化を行った。その後、実施例4と同様にドライエッチングによりコンタクトホールを形成した。
<参考例2:層間絶縁膜を有さないトップゲート型素子> 100nmの熱酸化膜付きSi基板上に、参考例1と同条件で膜厚30nmのIGZTO半導体薄膜を成膜し、パターニングを行った。スパッタにより、膜厚200nmのSiO層(ゲート絶縁膜)および膜厚100nmのAl層(ゲート層)を順に成膜した。Al層上にレジストパターンを形成し、混酸(リン酸80重量%、硝酸5重量%、酢酸5重量%、残部水)によりAl層をウェットエッチングした後、アセトン、メタノール洗浄によりレジストを取り除いた。その後、CFをエッチングガスとして、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング(ICP-RIE)によりSiO層をパターニングし、さらにArプラズマ処理を行った。レジストパターンを形成し、スパッタにより、膜厚20nmのPtソース電極および膜厚80nmのMoドレイン電極を形成し、リフトオフにより電極のパターニングを行った。その後、酸素フロー下(O流量:5sccm)350℃で、1時間の加熱アニール処理を行って、トップゲート型の薄膜トランジスタ素子を得た。
<実施例4.比較例2>
参考例2と同様に、酸化物半導体薄膜、ゲート絶縁膜、ゲート層、ソース電極およびドレイン電極の製膜およびパターニング、ならびに加熱アニール処理を行った。酸化物半導体薄膜および電極の形成面に、スピンコートにより、乾燥後の膜厚が1μmとなるように表1の組成物1または、組成物4を塗布し、110℃のホットプレートで2分加熱した。その後、実施例1と同条件で、コンタクトホールの形成およびポストベイク(230℃で30分)を行い、層間絶縁膜を備える薄膜トランジスタ素子を得た。
[評価]
半導体パラメータアナライザー(アギレント・テクノロジー製「Agilent 4156」)を用い、ドレイン電圧:5V、基板温度:室温の条件で、ゲート電圧を-20V~+20Vの範囲で変化させ、上記の参考例、実施例および比較例の薄膜トランジスタ素子の電流伝達特性を測定した。下記の方法により、電子移動度、閾値電圧およびON/OFF電流比を算出した。
(閾値電圧)
電流伝達特性の飽和領域間における接線のX切片電圧値を閾値電圧Vthとした。
(電子移動度)
下記の計算式により、ゲート電圧-20V~+20Vの範囲における電子移動度μを算出し、測定範囲における最大値を素子の電子移動度とした。
μ=2(L×I)/{W×Cox×(V-Vth
L:チャネル長;10μm
W:チャネル幅:90μm
Cox:ゲート絶縁膜の単位面積あたりの静電容量:3.45×10-8F/cm
:ゲート電圧
th:閾値電圧
:ソース・ドレイン間電流
(ON/OFF電流比)
電流伝達特性の曲線において飽和領域での最大電流値をオン時の電流Ionとした。オフ時の電流Ioffは、オフ状態の最小電流から求めた。両者の比Ion/Ioffを、ON/OFF電流比とした。
実施例および比較例の保護膜の形成に用いた組成物の種類およびSiH基の量、保護膜形成時の加熱硬化(ポストベイク)の条件、ならびに薄膜トランジスタ素子の評価結果を表2に示す。
SiH基を有するポリシロキサンポリマーを含む組成物を用いて保護膜を形成した実施例1、2、3のボトムゲート型の薄膜トランジスタ素子は、電子移動度が35cm/Vs以上であり、保護膜を形成しなかった参考例1の素子と比較して、電子移動度が大幅に向上していた。
SiH基を含まない組成物を用いて保護膜を形成した比較例1では、参考例1に比べて素子の電子移動度上昇はみられず、電子移動度が低下していた。
実施例4のトップゲート型の薄膜トランジスタ素子も、実施例1と同様、35cm/Vs以上の電子移動度を示し、層間絶縁膜を形成しなかった参考例2の素子と比較して、電子移動度が大幅に向上していた。SiH基を含まない組成物を用いて層間絶縁膜を形成した比較例2の素子は、参考例2に比べて電子移動度が低下していた。
以上の結果から、トップゲート型およびボトムゲート型のいずれの素子においても酸化物半導体薄膜上にSiH基を含む樹脂組成物を塗布し、高温で加熱を行うことにより、素子の電子移動度が向上した。
1 基板
2 ゲート絶縁膜
31 ゲート層
4 酸化物半導体薄膜
6 樹脂膜
51,52,53,54 ソース・ドレイン電極
45,46 チャネル領域
91,92,93,94 コンタクトホール

Claims (15)

  1. ゲート層と、酸化物半導体薄膜と、前記ゲート層と前記酸化物半導体薄膜との間に配置されたゲート絶縁膜と、前記酸化物半導体薄膜に電気的に接続された一対のソース・ドレイン電極と、前記酸化物半導体薄膜を覆う樹脂膜と、を備える薄膜トランジスタ素子であって、
    前記酸化物半導体薄膜は、錫を必須成分とし、さらにインジウム、ガリウム及び、亜鉛からなる群から選択される1種以上の金属元素を含み、
    前記樹脂膜は、前記酸化物半導体薄膜に接しており、SiH基を含有する、薄膜トランジスタ素子。
  2. 前記樹脂膜におけるSiH基量が、0.001mmol/g以上である、請求項1に記載の薄膜トランジスタ素子。
  3. 電子移動度が35cm/Vs以上である請求項1または2に記載の薄膜トランジスタ素子。
  4. 前記樹脂膜が、SiH基およびポリシロキサン構造を含むポリマーを含有する、請求項1または2に記載の薄膜トランジスタ素子。
  5. 前記樹脂膜が、SiH基および環状ポリシロキサン構造を含むポリマーを含有する、請求項4に記載の薄膜トランジスタ素子。
  6. 前記ゲート絶縁膜が前記ゲート層を覆い、前記ゲート絶縁膜上に前記酸化物半導体薄膜が設けられている、請求項1または2に記載の薄膜トランジスタ素子。
  7. 前記酸化物半導体薄膜上に、前記ゲート絶縁膜および前記ゲート層が順に設けられている、請求項1または2に記載の薄膜トランジスタ素子。
  8. ゲート層と、酸化物半導体薄膜と、前記ゲート層と前記酸化物半導体薄膜との間に配置されたゲート絶縁膜と、前記酸化物半導体薄膜に電気的に接続された一対のソース・ドレイン電極と、前記酸化物半導体薄膜を覆う樹脂膜と、を備える薄膜トランジスタ素子の製造方法であって、
    前記酸化物半導体薄膜は、錫を必須成分とし、さらにインジウム、ガリウムおよび、亜鉛からなる群から選択される1種以上の金属元素を含み、
    前記酸化物半導体薄膜上に、SiH基含有化合物を含む組成物を塗布した後、加熱して前記樹脂膜を形成する工程を有する、薄膜トランジスタ素子の製造方法。
  9. 前記SiH基含有化合物のSiH基量が、0.1mmol/g以上である、請求項8に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
  10. 前記SiH基含有化合物が、ポリシロキサン構造を含む、請求項8または9に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
  11. 前記SiH基含有化合物が、環状ポリシロキサン構造を含む、請求項10に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
  12. さらに、前記樹脂膜をフォトリソグラフィーによりパターニングしてコンタクトホールを形成する工程を有する、請求項8または9に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
  13. 前記組成物が、ネガ型感光性組成物である、請求項12に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
  14. 前記組成物が、ポジ型感光性組成物である、請求項12に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。
  15. 前記組成物がアルカリ可溶性を有さない光・熱硬化性組成物または熱硬化性組成物である、請求項8または9に記載の薄膜トランジスタ素子の製造方法。

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