JP2023102328A - 回転電機の固定子 - Google Patents

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政洋 湯谷
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Abstract

【課題】コイルから固定子鉄心を介した放熱性を向上させ、コイルの温度上昇を抑えることができるとともに、コイルエンドを形成する際の絶縁部材の損傷を防止する。【解決手段】複数のティース33間の空間により形成されるスロット34と、スロット34内に配置される固定子巻線41と、固定子鉄心31と固定子巻線41との間に配置される絶縁部材61を備え、スロット34の外周側の端部に凹み部36を設けるとともに、絶縁部材61の外周側の角部に凹み部36に収納される弛み部62を設ける。【選択図】図4

Description

本願は、回転電機の固定子に関するものである。
分布巻の固定子においては、各スロットに配置される巻線のコイルエンド部が固定子鉄心の軸方向外側において重なって配置される。そのため、コイルエンド部が高くなってしまい、回転電機の小型化を図る際に障壁となっている。そこで、コイルエンドでのコイル間の隙間を低減してコイルエンドを低くするために、巻線をコイルセグメントに分割して形成し、固定子鉄心に組み込む方法がある。コイル間の隙間が最小限になるように、予めコイルエンド部を成型したコイルセグメントを多数用意し、それらを固定子鉄心のスロット部に軸方向から組み込むようにすることによってコイルエンド部を小型化するものである。
スロット部に配置されたコイルセグメントは、固定子鉄心の軸方向外側で周方向に曲げられてコイルエンドを構成するが、コイルエンドを小型化するには曲げ部をできるだけ固定子鉄心の近くに配置することが望ましい。
一方、スロット部においてコイルと固定子鉄心との電気的絶縁を確保するために絶縁シートが両者の間に配置される。絶縁シートはスロット部の軸方向端部での絶縁距離を確保するために、スロット内だけでなく固定子鉄心の軸方向外側にはみ出すようになっている。
上述のように、コイルエンドを小型化するためにコイルの曲げ部をできるだけ固定子鉄心に近いところに配置すると、絶縁シートの固定子鉄心の軸方向外側にはみ出した部分が周方向に押し広げられるため、絶縁シートが損傷するおそれがある。
この絶縁シートの損傷を防ぐため、絶縁シートに弛み部を設ける構造が特許文献1に開示されている。
特許6156679号
回転電機の動作時には、電流が流れることによる発熱により、固定子巻線の温度が上昇する。固定子巻線の温度が過度に上昇すると、コイルの絶縁被膜が劣化、あるいは損傷するため、熱を外部に放出して固定子巻線の温度を下げなければならない。固定子巻線から回転電機の外部への放熱経路は複数あるが、そのうち、スロット内に配置されたコイルから固定子鉄心を介して外部に放熱される経路は主要な放熱経路のひとつである。
上記先行技術文献に開示された絶縁シートの構成のうち、スロットにおいて外径側の内壁面が断面V字状に屈曲して外径側へ凸となるように形成するとともに、絶縁シートが断面V字状に屈曲して外径側へ凸となるように形成された弛み部を設けた構造は、固定子鉄心のスロット部内周面とコイルの外周面との接触面が減少するため、コイルから固定子鉄心を介した放熱量が少なくなり、コイルの温度が上昇し易いという問題がある。
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、コイルエンドを形成する際の絶縁部材の損傷を防止できる回転電機の固定子を提供することを目的とする。
本願に開示される回転電機の固定子は、
バックヨークから内径側に突出した複数のティースが周方向に並んで配置されている固定子鉄心と、
複数の前記ティース間の空間により形成されるスロットと、
前記スロット内に配置される固定子巻線と、
前記固定子鉄心と前記固定子巻線との間に配置される絶縁部材を備えたものであって、
前記スロットの外周側の端部に凹み部を設けるとともに、前記絶縁部材の外周側の角部に前記凹み部に収納される弛み部を設けたものである。
本願に開示される回転電機の固定子によれば、コイルエンドを形成する際の絶縁部材の損傷を防止できる。
実施の形態1に係る回転電機の軸方向に対して垂直な断面を示す横断面図である。 実施の形態1に係る回転電機の軸方向に対して平行な断面を示す縦断面図である。 実施の形態1に係る固定子鉄心の平面図である。 実施の形態1に係る固定子鉄心の一部を示す拡大平面図である。 実施の形態1に係る固定子巻線を構成するコイルセグメントを示す斜視図である。 実施の形態1に係る固定子を周方向に展開してコイルセグメントの組み込み状態を表した模式図である。 実施の形態1に係る固定子を周方向に展開してコイルセグメントの組み込み状態を表した模式図である。 実施の形態1に係る固定子を周方向に展開してコイルセグメントの組み込み状態を表した模式図である。 実施の形態1に係る固定子を周方向に展開してコイルセグメントの組み込み状態を表した模式図である。 実施の形態1に係るスロット周辺における固定子鉄心の一部を示す部分拡大斜視図である。 実施の形態1に係るスロット周辺における固定子鉄心の一部を示す部分拡大斜視図である。 実施の形態1に係るスロット周辺における固定子鉄心の一部を示す部分拡大斜視図である。 実施の形態1に係るコイルエンド部を示す側面図である。 実施の形態2に係る固定子鉄心の平面図である。 実施の形態2に係る固定子鉄心の一部を示す拡大平面図である。 実施の形態2に係るスロット周辺における固定子鉄心の一部を示す部分拡大斜視図である。 実施の形態2に係るスロット周辺における固定子鉄心の一部を示す部分拡大斜視図である。 実施の形態2に係るスロット周辺における固定子鉄心の一部を示す部分拡大斜視図である。 実施の形態3に係る固定子鉄心の一部を示す拡大平面図である。 実施の形態3に係る固定子鉄心の一部を示す拡大平面図である。 実施の形態4に係る固定子鉄心の一部を示す拡大平面図である。
実施の形態1.
本実施の形態は、固定子の内周側に回転子が配置された内転型の回転電機であって、分布巻の巻線を備えた固定子を有する回転電機に関するものである。
以下、本実施の形態に係る回転電機を、図に基づいて説明するが、明細書において、特に断り無く「軸方向」、「周方向」、「径方向」、「内周側」、「外周側」、「内周面」、「外周面」というときは、それぞれ、回転子及び固定子における「軸方向」、「周方向」、「径方向」、「内周側」、「外周側」、「内周面」、「外周面」をいうものとする。
図1は、本実施の形態による回転電機の軸方向に対して垂直な断面を示す横断面図、図2は回転電機の軸方向に対して平行な断面を示す縦断面図である。
回転電機100は、モータフレーム2と、モータフレーム2内に固定された中空円筒形の固定子3と、固定子3の内周面に隙間を介して配置されるとともに回転する回転子6とからなる。回転子6においては、回転軸7に略円柱状の回転子鉄心8が固定されており、回転子鉄心8の内部に磁石9が組み込まれている。回転軸7は軸受10を介して回転可能にモータフレーム2に取り付けられている。
固定子3は、固定子鉄心31に固定子巻線(コイル)41を巻回したものである。固定子鉄心31と固定子巻線41の間には両者が電気的に短絡するのを防止するための絶縁部材61が配置されている。固定子巻線41は、3以上の多相の巻線群で構成され、制御装置(図示せず)を用いて回転子6の位相に応じて所定の電流を各相の固定子巻線41に順次電流を流すことにより、回転子6を回転させる。
なお、本実施の形態は固定子に関するものであり、回転子の種類はどのようなものであってもよい。図1、図2では、回転子の構造として、回転子鉄心の内部に磁石を組み込んだ永久磁石埋め込み型の場合を示しているが、回転子鉄心の外周面に磁石を取り付けたものであってもよい。更に磁石を組み込まない誘導電動機の回転子であってもよい。
また、図1、図2では固定子がモータフレームに固定された構造を示しているが、軸受をモータフレームとは別の部材で支持し、固定子外周にモータフレームを配置しない構造でもよい。尚図1は後述するように、スロットの外周側の両方の端部に凹み部を設けた場合を示している。
次に固定子鉄心について説明する。図3は固定子鉄心を軸方向から見た平面図である。図3においては、スロットの外周側の一方の端部にのみ凹み部を設けている場合を示している。固定子鉄心31は、鋼板、一般的には電磁鋼板からなる薄板をプレス加工したものを積層して、かしめ、溶接、又は接着等によってお互いに連結したものである。固定子鉄心31は略円環状のバックヨーク32から内径側に突出した複数のティース33が周方向に並んでいる。周方向に隣接するティース33間の空間によりスロット34が形成されており、このスロット34に絶縁シートである絶縁部材61と固定子巻線41が組み込まれる。ティース33の内周端には周方向に突出したシュー35が設けられている。又スロット34の外周側の端部には凹み部36が設けられている。
図4は固定子鉄心の一部を示す拡大平面図であり、1つのスロット部を示している。
絶縁部材61の外周側の角部であって、固定子鉄心31のスロット外周部に対応する位置に弛み部62を設ける。そして弛み部62を固定子鉄心31のスロット34に設けた凹み部36に収納する。図4においては、外周側周方向の一方の端部のみに弛み部62と凹み部36を設けている。
図4に示すように、絶縁部材61の外周側に設けられた弛み部62が周方向の一方側にのみ設けられており、それに対応する固定子鉄心31の凹み部36も一方側にのみ設けられている。
次に絶縁部材61について説明する。図4においては、スロット34に絶縁部材61と固定子巻線41を構成するコイルセグメント51を組み込んだ状態を示している。スロット34内において、固定子巻線41と固定子鉄心31との間に絶縁部材61が組み込まれる。固定子巻線41の表面には絶縁被膜が施されているが、固定子鉄心31は一般的にプレス加工で製作されており断面が平滑ではないため、固定子巻線41を挿入する際に、絶縁被膜が損傷する恐れがあり、固定子巻線41と固定子鉄心31が短絡してしまう恐れがある。また、絶縁被膜に部分的な欠陥があった場合にも固定子鉄心31と固定子巻線41とが短絡する恐れがある。そのため、両者の絶縁を確保するために、スロット34内において固定子巻線41と固定子鉄心31との間に絶縁部材61が組み込まれる。
絶縁部材61としては、樹脂の成型品を用いる場合、フィルム状の絶縁シート、更には絶縁塗装等を用いる。本実施の形態では絶縁シートを用いた場合を対象とする。絶縁部材61は絶縁のためには必要であるが、回転電機を動作させるうえでの電磁気的作用には関与しない。従ってできるだけ絶縁部材61を薄くして固定子鉄心31及び固定子巻線41を隙間なく配置することが回転電機の特性の向上につながる。絶縁シートは電気的絶縁性と耐熱性をもつ樹脂フィルム、不織布等の素材、更にはそれらを重ねて接着したシート状の部材であり、一般的に樹脂成型による絶縁部材より薄くできるため回転電機の特性向上には有利である。この絶縁シートを所定の大きさに切り出し、矩形型のパイプ状に折って絶縁部材61を形成する。
次にコイルセグメントについて説明する。図5は固定子巻線を構成するコイルセグメントを示す斜視図である。コイルセグメント51はスロット34に挿入される2本の直線部51a、51bと、それらをコイルエンド部51cで繋いだ略U字状の形状で構成される。表面に絶縁被膜を備えた導体線を所定の長さに切り出し、それに曲げ加工等を施して形成する。スロット34内のコイル占積率を上げるため、導体線としては平角線を用いることが多いが、丸線に塑性加工を施して、スロット34に挿入される部分を角形断面としたものでもよい。2本の直線部51a、51bはそれぞれ異なるスロット34内に挿入されるとともに、スロット34内での異なる径方向位置に配置される。
2本の直線部51a、51bの先端は絶縁被膜が剥離された部分があり、後述の第2コイルエンド成形工程の後にコイルセグメント同士を接合するために用いる。
スロット34に絶縁部材61を取り付けた後、複数のコイルセグメント51を組み合わせてスロット34に軸方向から挿入する。固定子を周方向に展開してコイルセグメントの組み込み状態を表した模式図を図6~図9に示す。なお、ここでは判り易くするために絶縁部材の図示は省略している。図6の上方からコイルセグメント51を挿入する。コイルセグメント51のコイルエンド部が固定子鉄心31の軸方向外側の一方向に集まり、これを第1コイルエンド部42とする。各コイルセグメント51の直線部51a、51bは固定子鉄心31のスロット34を貫通して反対側の軸方向外側まで突出する。
次に図7に示すように、固定子鉄心31から突出した直線部51a、51bを周方向に曲げることにより第2コイルエンド部43を成形する。第2コイルエンド部43において、所定のスロットピッチ離れたところのコイルセグメント同士を接合するものであり、図7においては、3スロットピッチの例を示している。図7に示すように、図の手前側にあるコイルを図の左側に、その奥にあるコイルを反対の右側に曲げることにより2つのコイルセグメント51の直線部51a、51bの先端が重なる位置が形成される。
コイルを曲げた後は直線部51a、51bの先端同士を接合する。図8は接合後の模式図を示している。接合には溶接又はロウ付けが用いられ、コイルセグメント51の先端に接合部52が形成される。なお、図8では複数の相が重なった状態を示しているが、これを1相分だけ表したものが図9である。所定のスロットピッチ(ここでは3スロットピッチ)に配置されたコイルセグメント51が、図の上側の第1コイルエンド部42と下側の第2コイルエンド部43で順番に接続される。
図10~図12はスロット周辺における固定子鉄心の一部を示す部分拡大斜視図である。図10は固定子鉄心31に絶縁部材61が挿入されていない状態を示しており、図11は絶縁部材61をスロット34に挿入した状態を示している。絶縁部材61は図11の奥、即ち内周側で両端が重なっており、手前の外周側の片方の端部(図11では外周側から見て右側)に弛み部62を備えている。スロット34における弛み部62に相当する位置には、弛み部62を収納するための凹み部36が備わっている。固定子鉄心31の積層端面と固定子巻線41との絶縁距離を確保するため、絶縁部材61は固定子鉄心31の端面から所定の長さ突出している。
図12はコイルセグメント51を挿入して、直線部51a、51bが貫通した状態を示している。図示していないが、コイルセグメント51の第1コイルエンド部42が図12の下方にあり、上に向かってコイルセグメント51をスロット34に挿入した状態を示している。この貫通したコイル端部を周方向に曲げて第2コイルエンド部43を形成する。
図6~図9では絶縁部材61を省略して表したが、実際には固定子鉄心31の軸方向外側には絶縁部材61が突出しており、図13のように、第2コイルエンド部43の成形の際に、コイルの曲げ方向と同方向に絶縁部材61の突出部が押し広げられる。このとき、図4に示すように、絶縁部材61には弛み部62が設けてあるので、コイルの曲げに伴って弛み部62が広がり、絶縁部材61が損傷しない。
なお、弛み部62の配置方向は、第2コイルエンド部43の成形の際に、スロット34の最外周に配置された固定子巻線41を曲げる方向と合致させる。本実施の形態の説明では、図13に示すように、スロット34の最外周の固定子巻線41を外周側から見て右側に曲げており、それに合わせて絶縁部材61の弛み部62も外周側から見て右側に配置するようにしている。本実施の形態の説明とは逆に、固定子巻線41を曲げる方向が、外周側から見て左側となる場合は、絶縁部材61の弛み部62、及びスロット34の凹み部36はともに左側に配置する。
コイルセグメント51を用いた回転電機の固定子3においては、固定子鉄心31と固定子巻線41との間にシート状の絶縁部材61を配置して両者の電気的絶縁を確保するのが一般的である。このとき、固定子鉄心31の積層端面での絶縁距離を確保するために、絶縁部材61は積層端面から所定の長さ分だけ積層端面から軸方向外側に突出した形状となる。固定子鉄心31に挿入したコイルセグメント51の直線部51a、51bを積層端面外側で周方向に曲げて、第2コイルエンド部43を形成する際に、絶縁部材61の突出部が周方向に押し広げられる(図13参照)。
絶縁部材61としては、絶縁性能、耐熱性、耐久性が重視されるため、素材としては、伸びの大きい素材が用いられるとは限らない。従って絶縁シートが押し広げられると破れてしまう場合がある。特に、回転電機に用いる電源が高電圧であるため、絶縁部材61の突出部を長くする必要がある場合、又はコイルエンドの高さを小さくするためにコイルの曲げ部を積層端面に近づける必要がある場合に絶縁部材61が損傷し易い。
本実施の形態では、図4に示すように、絶縁部材61に弛み部62を設け、コイルエンドの形成時に弛み部62が伸ばされることにより絶縁部材61の損傷を防止しつつ、スロット34の径方向外周側端面の周方向端部に凹み部36を設け、絶縁部材61の弛み部62を凹み部36に収納した。
一方回転電機の特性向上において、コイルの通電発熱による温度上昇を抑えることは重要な課題の1つである。温度上昇を抑える手段の1つがコイルからの放熱性の向上である。スロット34内に配置された固定子巻線41にあっては、固定子巻線41が直接外気に触れている面積は多くないため、固定子巻線41から絶縁部材61、固定子鉄心31を介した回転電機外部への放熱経路が重要である。この経路の放熱性を向上させるためには、絶縁部材61を介して固定子巻線41と固定子鉄心31が接触する面積を増やすこと、更に接触部において絶縁部材61の厚さを抑えることが有効な手段となる。スロット34内において、固定子巻線41と固定子鉄心31が接触しているのは主に周方向の両側面、及びバックヨーク32側の径方向外周側端面の3面である。
本実施の形態では、絶縁部材61が重なる部分を、スロット34の径方向内周側に配置させ、スロット34の他の3面では固定子巻線41と固定子鉄心31との間には1枚の絶縁部材61のみ介在させるようにして、固定子巻線41と固定子鉄心31との接触面における絶縁部材61の厚さを最小限としている。
また、絶縁部材61の弛み部62を収納するための固定子鉄心31の凹み部36を、スロット34の径方向外周側における周方向端部に配置しており、凹み部36をコイル断面の角部が円弧状となる箇所に配置している。角形断面形状のコイルにおいては、その角部がある程度の円弧形状となることが避けられない。角部を尖った形状にすると、絶縁被膜を形成しにくく、また損傷し易くなるためである。角部の円弧状は製造上のばらつきが避けられないため、角部において絶縁部材61を介して固定子鉄心31と固定子巻線41を密着させることは難しい。そのため、一般的に固定子巻線41の角部においては、ある程度の隙間が生じるような設計としている。したがって、固定子巻線41の角部に相当する位置に凹み部36を設けても、固定子巻線41と固定子鉄心31の間の接触面積を損なうことがない。
以上のように本実施の形態の構造では、コイルエンド形成に伴う絶縁部材61の損傷を防止できるとともに、固定子巻線41から絶縁部材61を介した固定子鉄心31への放熱経路を確保できる。
次に図4に示すように、スロット34の外周側の一方の端部にのみ凹み部36を設けることによる効果について説明する。
第2コイルエンド部43を形成する際に、コイルを周方向に曲げるが、その曲げ方向はコイルの径方向位置によって決まっており、径方向位置が同じコイルはすべて周方向の同じ側に曲げられる(図13参照)。したがって、絶縁部材61の弛み部62は最外周に配置したコイルの曲げる方向のみに配置しておけば絶縁部材61の損傷防止効果を得ることができる。絶縁部材61の弛み部62がスロット34の外周側の一方の端部のみとなり、絶縁部材61の展開長さが短くなるため、絶縁部材61のコストが低減する。
実施の形態2.
次にスロット34の径方向外周側の両方の端部に凹み部36を設けた場合について説明する。図14は固定子鉄心を軸方向から見た平面図、図15はこの場合の固定子鉄心の一部を示す拡大平面図である。又図16~図18はスロット周辺における固定子鉄心の一部を示す部分拡大斜視図である。図16は固定子鉄心31に絶縁部材61が挿入されていない状態を示しており、図17は絶縁部材61をスロット34に挿入した状態を示している。
本実施の形態においては、絶縁部材61は外周側の両端部に弛み部62を有しているため、固定子鉄心31のスロット34の当該箇所に凹み部36を設けて弛み部62が収まるようにする。
尚コイルセグメント51の形状及び固定子鉄心31へコイルセグメント51を組み込む方法は図5~図9に示したものと同様である。
又図17に示すように、絶縁部材61は図17の奥側の径方向内周側で両端が重なっており、手前の径方向外周側端部に弛み部62を備えている。固定子鉄心31の積層端面とコイルとの絶縁距離を確保するため、絶縁部材61は固定子端面から所定の長さ突出した状態である。
ここにコイルセグメント51を挿入して直線部51a、51bが貫通した状態を図18に示す。図示していないが、コイルセグメント51のコイルエンド部51cが図の下方にあり、上に向かってスロット34にコイルセグメント51を挿入した状態を図18に示している。この貫通したコイル端部を周方向に曲げて第2コイルエンド部43を形成する。
図15に示した構造においても、コイルエンド形成に伴う絶縁部材61の損傷を防止できるとともに、固定子巻線41から絶縁部材61を介した固定子鉄心31への放熱経路を確保できる。
更に図15の構造であれば、図4に示した構造と比べると、スロット34の周方向両端に凹み部36があるので、コイルの捻り方向が左右どちら向きでも対応できる。従って、各スロット34における最外層のコイルの捻り方向が逆になる作業であっても、固定子鉄心31あるいは絶縁部材61を共有することが出来、部品の種類を減らせる。
又スロット34の外周側端部に凹み部36を設けると、わずかではあるが固定子鉄心31を通る磁束の経路に影響がある。片側のみに凹み部36があると、回転電機の回転方向によって特性に差が生じる恐れがある。これに対し両側に凹み部36を設けると、回転方向による特性差がなくなる。
実施の形態3.
以下、実施の形態3に係る回転電機を、実施の形態1、2と異なる部分を中心に説明する。実施の形態1、2では絶縁部材61の端部がスロット34の径方向内周側で重なった場合を示したが、本実施の形態では重なりのない構造としたものである。固定子鉄心31は実施の形態1、2と同様の構造である。又絶縁部材61の外周側に実施の形態1のように片方の端部、あるいは実施の形態2のように両方の端部に弛み部62を設ける。ただし、実施の形態1、2とは異なり内周側での絶縁部材61において重なり部分がない構造とする。図19は実施の形態3による固定子鉄心の一部を示す拡大平面図であり、絶縁部材61のみで構成された場合を示す。ティース先端の周方向に突出しているシュー35をカバーするように絶縁部材61の端部がスロット34内側に折り込まれている。図20は別の実施の形態3による固定子鉄心の一部を示す拡大平面図であり、絶縁部材61に加えてウェッジ63を配置したものである。
ウェッジ63は樹脂等の絶縁素材からなる細長い板状の部材で、スロット34の内周側の開口部に蓋をするように、固定子巻線41とシュー35との間に配置される。絶縁部材61のみではシュー35と固定子巻線41との絶縁距離が十分に確保できない場合、又は固定子巻線41のスロット径方向内周側への脱落防止を目的としてウェッジ63が組み込まれる。
コイルセグメント51の構成、固定子鉄心31への組込み方法、及びコイルエンドの成形方法については実施の形態1、2と同様である。
スロット34の開口部にウェッジ63を配置して、固定子巻線41の径方向における固定に用いることは、回転電機の固定子において一般的に行われている。本実施の形態によれば、ウェッジ63を配した構造でも、絶縁部材61の損傷を防止できるとともに、固定子巻線41から固定子鉄心31への放熱性を確保することができる。
実施の形態4.
以下、実施の形態4に係る回転電機を、実施の形態1、2と異なる部分を中心に説明する。図21は実施の形態4による固定子鉄心の一部を示す拡大平面図である。
コイルセグメント51として用いる絶縁被膜付きの断面矩形型コイルにおいては、その断面の角部にある程度の円弧状部が存在する。この円弧状部の半径をrとし、絶縁部材61の厚さをtとしたとき、凹み部36の周方向幅wを
w<r+t
となるようにする。
即ちコイル(固定子巻線41)断面の円弧状角部における半径の値と絶縁部材61の厚さを合計した値より、凹み部36の周方向幅が小さくなるよう構成する。
凹み部36の周方向幅wを制限することで、コイルの外周側端面の円弧状部を除いた平面部全体が、スロット34の径方向外周側における凹み部36を除いた平坦部に対して、絶縁部材61を介して接することができる。その結果、コイル外周側における放熱面積を最大限とすることができ、放熱性が向上する。
ただし、凹み部36には絶縁部材61の弛み部62が収納されるので、凹み部36の周方向幅wは少なくとも絶縁部材61の厚さtの2倍は必要である。即ち2t<w<r+tの関係式が成立する。したがって、コイル角部の半径rが絶縁部材11の厚さtより小さい場合には、本実施の形態の関係式は適用できないこととなる。尚図21においては、図15に示した構造について説明したが、図4、図19、図20に示した構造に本実施の形態に示した関係式を適用することもできる。
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
100 回転電機、2 モータフレーム、3 固定子、6 回転子、7 回転軸、
8 回転子鉄心、9 磁石、10 軸受、31 固定子鉄心、32 バックヨーク、
33 ティース、34 スロット、35 シュー、36 凹み部、41 固定子巻線、
42 第1コイルエンド部、43 第2コイルエンド部、51 コイルセグメント、
51a,51b 直線部、51c コイルエンド部、52 接合部、61 絶縁部材、
62 弛み部、63 ウェッジ。

Claims (6)

  1. バックヨークから内径側に突出した複数のティースが周方向に並んで配置されている固定子鉄心と、
    複数の前記ティース間の空間により形成されるスロットと、
    前記スロット内に配置される固定子巻線と、
    前記固定子鉄心と前記固定子巻線との間に配置される絶縁部材を備えた回転電機の固定子であって、
    前記スロットの外周側の端部に凹み部を設けるとともに、
    前記絶縁部材の外周側の角部に前記凹み部に収納される弛み部を設けた回転電機の固定子。
  2. 前記スロットの外周側の一方の端部にのみ前記凹み部を設けた請求項1記載の回転電機の固定子。
  3. 前記スロットの外周側の両方の端部に前記凹み部を設けた請求項1記載の回転電機の固定子。
  4. 前記絶縁部材が重なる部分を、前記スロットの径方向内周側に配置させた請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
  5. 前記スロットの内周側の開口部にウェッジを配置した請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
  6. 前記固定子巻線の円弧状角部における半径と前記絶縁部材の厚さを合計した値よりも、前記凹み部の周方向幅が小さくなるよう構成した請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
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