以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明による回転電機は、たとえば回転電機のみによって走行する純粋な電気自動車や、エンジンと回転電機の双方によって駆動されるハイブリッド型の電気自動車に適用できる。
−第1の実施の形態−
図1は、回転電機100を示す半断面図である。回転電機100は、電動機または発電機として作動するものであり、ロータ2と、ステータ1と、ロータ2およびステータ1を保持するハウジング9とを有している。
ロータ2は、円筒状のステータ1の内側において、回転可能に配設されている。ロータ2は、円筒状のロータコア7と、永久磁石6とを備えている。ロータコア7の中空部には円柱状のシャフト8が圧入され、ロータコア7がシャフト8に固定されている。ロータコア7の外周近傍には、永久磁石6がロータコア7の周方向に沿って等間隔に配設されている。永久磁石6はロータ2の界磁極として作用する。三相交流電流がステータコイル5に流されると、回転磁界がステータ1に発生し、この回転磁界がロータ2の永久磁石6に作用してトルクが生じる。
ハウジング9は、円筒状の円筒部9aと、円筒部9aの両端に設けられた端板とを備えている。一方の端板には軸受11aが設けられ、他方の端板には軸受11bが設けられている。ステータ1は円筒部9aにより保持され、ロータ2のシャフト8は円筒部9aの両端の端板のそれぞれに設けられた軸受11a,11bにより回転自在に保持されている。
図2はステータ1の斜視図である。ステータ1は、円筒状のステータコア140と、ステータコイル5からなるU相巻線、V相巻線およびW相巻線とを備えている。
図3は、ステータ1のステータコア140のみを示す斜視図である。図3に示すように、ステータコア140の内周側には、ステータコア140の中心軸CL(すなわちロータ2の回転中心軸)に平行な方向(以下、単に軸方向とも記す)に延在する複数のスロット149とティース144とが交互に、かつステータコア140の周方向(以下、単に周方向とも記す)に等間隔となるように形成されている。
図3に示すように、各ティース144は、環状のバックヨーク(コアバック)143から中心軸CLに向かって突出するように、周方向に一定幅で形成されている。各ティース144は、ステータコイル5(図2参照)に交流電力が供給されることにより発生した回転磁界をロータ2に導き、ロータ2に回転トルクを発生させる働きをする。
ステータコア140は、12個の分割コアブロック141で構成され、12個の分割コアブロック141が周方向に配設されることで円筒状を呈している。換言すれば、ステータコア140は周方向に12個の分割コアブロック141に分割されている。各分割コアブロック141は、同様の形状とされている。
分割コアブロック141の各々は、コアバック部143pと、コアバック部143pから径方向内側に突出する1つのティース144とを有している。バックヨーク143は、周方向に沿って配置された12個のコアバック部143pが連結されることで環状を呈している。一の分割コアブロック141は、周方向で隣接する他の分割コアブロック141との間で1つのスロット149を区画するように平面視T字状に形成されている。
図2に示すように、複数のステータコイル5が電気的に接続されて、U相巻線、V相巻線およびW相巻線のそれぞれが形成される。図1に示すように、U相、V相、W相巻線のそれぞれの端部には、電源接続用端子59が設けられている。電源接続用端子59は、図示しない導電部材を介して電力変換装置(インバータ)に接続される。図示しないバッテリからの直流電力は、電力変換装置により交流電力に変換され、電源接続用端子59を介して各相巻線に供給されることで、回転磁界が発生し、ロータ2が回転する。
図2に示すように、分割コアブロック141のティース144には、インシュレータ21が取り付けられ、ステータコイル5を構成する絶縁被覆導線105がインシュレータ21を介してティース144に集中的に巻回されている。インシュレータ21は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等の絶縁性を有する樹脂材料で形成されている。
図4は、隣り合う分割コアブロック141同士を連結する様子を示す斜視図である。図4に示すように、分割コアブロック141は、第1コア部材151と、第2コア部材152とが軸方向に交互に積層されてなる。
第1コア部材151および第2コア部材152は、たとえば、厚さ0.05〜1.0mm程度の電磁鋼板をプレス加工により打ち抜いて形成されたコアプレートを複数枚積層して形成されている。コアプレートの積層方向は、軸方向と平行とされている。
分割コアブロック141は、第1コア部材151を構成する複数枚のコアプレートの束(積層体)と、第2コア部材152を構成する複数枚のコアプレートの束(積層体)とを交互に配置した後、パンチ等を使用してV加締めや丸加締めを行って加締め部190(図5参照)を形成する。これにより、分割コアブロック141を構成するコアプレートが固定され、一体となる。なお、分割コアブロック141を固定する方法は、各第1コア部材151および各第2コア部材152をそれぞれ加締め固定してから、第1コア部材151と第2コア部材152とを交互に積層して、全体を加締め固定してもよい。また、ステータコア140の外周面を軸方向に溶接して、分割コアブロック141を構成する複数のコアプレートを結合してもよい。
図5を参照して、第1コア部材151および第2コア部材152について説明する。図5(a)は第1コア部材151を示す平面図であり、図5(b)は第2コア部材152を示す平面図である。第1コア部材151および第2コア部材152は、それぞれコアバック部153と、コアバック部153から径方向内側に突出する1つのティース部154とを有している。
分割コアブロック141のコアバック部143p(図3参照)は、複数の第1コア部材151のコアバック部153および複数の第2コア部材152のコアバック部153が軸方向に固定されることで形成される。分割コアブロック141のティース144(図3参照)は、複数の第1コア部材151のティース部154および複数の第2コア部材152のティース部154が軸方向に固定されることで形成される。
第1コア部材151および第2コア部材152は、コアバック部153において、ティース部154の中心軸TCLから周方向の一方に延在する部分よりも、中心軸TCLから周方向の他方に延在する部分の方が長くなるように形成されている。つまり、図中、θ1とθ2の大小関係は、θ1>θ2とされている。θ1は、ステータコア140の中心軸CLとコアバック部153の周方向一端とを結ぶ線分と、ティース部154の中心軸TCLとのなす角度である。θ2は、ステータコア140の中心軸CLとコアバック部153の他端とを結ぶ線分と、ティース部154の中心軸TCLとのなす角度である。なお、ティース部154の中心軸TCLとは、ティース部154の幅方向(すなわち、周方向)の中心軸のことを指す。
第1コア部材151と第2コア部材152とは、同一形状であるが、配置の際の表裏の向きが異なっている。つまり、第2コア部材152は第1コア部材151を裏返したものに相当し、第1コア部材151は第2コア部材152を裏返したものに相当する。
第1コア部材151と第2コア部材152は、同一形状のため、第1コア部材151を代表して、形状の詳細な説明をする。図5(a)の左下において、各部位を概念的に示した図も記している。図5(a)の各部位の概念図に示すように、第1コア部材151のコアバック部153は、基端部160と、内周凸部162と、外周凸部172とを備えている。
基端部160は、ティース部154が設けられる部位であり、ティース部154の中心軸TCLから一定の径方向の幅で周方向に延在する部位である。内周凸部162は、基端部160の周方向一端(図示左端)から周方向外方に突出する部位であり、基端部160の内周側が連続的に周方向外方に延在する部位である。換言すれば、第1コア部材151には、コアバック部153の基端部160から周方向の一端側(図中左端側)の先端部に亘って、コアバック部153の外周側から内周側にへこむ外側凹部164が形成されることで、内周凸部162と基端部160とで段部(以下、内凸段部161と記す)が形成されている。
外周凸部172は、基端部160の周方向他端(図示右端)から周方向外方に突出する部位であり、基端部160の外周側が連続的に周方向外方に延在する部位である。換言すれば、コアバック部153の基端部160から周方向の他端側(図中右端側)の先端部に亘って、第1コア部材151には、コアバック部153の内周側から外周側にへこむ内側凹部174が形成されることで、外周凸部172と基端部160とで段部(以下、外凸段部171と記す)が形成されている。
図5(a)に示すように、内凸段部161の外側凹部164は、周方向外側が開放された平面視L字状の窪みであって、径方向外方を向く湾曲面状の主面(以下、外向き主面165と記す)と、外向き主面165における中心軸TCL側の端部から径方向外方に立ち上がる側面168とを有している。
外向き主面165は、周方向に沿って形成され、外向き主面165の周方向中央部には径方向外方に突出する嵌合凸部166が形成されている。嵌合凸部166は、平面視で半円状に湾曲した嵌合凸面を有している。
外凸段部171の内側凹部174は、周方向外側が開放された平面視L字状の窪みであって、径方向内方を向く湾曲面状の主面(以下、内向き主面175と記す)と、内向き主面175における中心軸TCL側の端部から径方向外方に立ち上がる側面169とを有している。
内向き主面175は、周方向に沿って形成され、内向き主面165の周方向中央部には径方向外方にへこむ嵌合凹部176が形成されている。嵌合凹部176は、平面視で半円状に湾曲された嵌合凹面を有している。
本実施の形態では、ティース部154の中心軸TCLから基端部160の周方向一端(図示左端)までの周方向長さが、ティース部154の中心軸TCLからコアバック部153の周方向他端(図示右端)までの周方向長さと同じになるように設定されている。つまり、側面168と、ティース部154の中心軸TCLとのなす角度θ2が、外周凸部172の周方向端面と、ティース部154の中心軸TCLとのなす角度θ2とが等しい。
外周凸部172の周長(具体的には、外向き主面165の周方向長さ)と、内周凸部162の周長(具体的には、内向き主面175の周方向長さ)とは等しく設定され、隣り合う分割コアブロック141同士の外凸段部171と内凸段部161とが嵌合する構成とされている。換言すれば、外周凸部172の中心角θrは、内周凸部162の中心角θrと等しい。このため、ティース部154の中心軸TCLと側面169とのなす角度θ3は、角度θ2から中心角θrを差し引いた角度となる。なお、外周凸部172の中心角θrとは、内向き主面175と、内向き主面175の周方向両端部と中心軸CLとを結んで画成される扇状領域の中心角のことを指す。内周凸部162の中心角θrとは、外向き主面165と、外向き主面165の周方向両端部と中心軸CLとを結んで画成される扇状領域の中心角のことを指す。
第1コア部材151と第2コア部材152を交互に積層すると、図4(a)に示すように、周方向に突出する凸部V1と、周方向にへこむ凹部C1とが軸方向に交互に形成される。なお、本実施の形態では、周方向一端側では上から凸部V1、凹部C1、凸部V1、凹部C1・・・の順で形成され、周方向他端側では上から凹部C1、凸部V1、凹部C1、凸部V1・・・の順で形成される。これにより、分割コアブロック141の周方向両端部がそれぞれ櫛歯状を呈している。
図4に示すように、以下では、説明の便宜上、図中左側の分割コアブロック141を第1分割ブロック141Aと記し、第1分割ブロック141Aに隣接する図中右側の分割コアブロック141を第2分割ブロック141Bと記す。
分割コアブロック141同士を連結するには、第1分割ブロック141Aの凹部C1と、第2分割ブロック141Bの凸部V1とを嵌合し、第1分割ブロック141Aの凸部V1と第2分割ブロック141Bの凹部C1とを嵌合する。
軸方向に交互に形成される凸部V1と凹部C1が嵌合することで、第1分割ブロック141Aを構成する第2コア部材152の内凸段部161の軸方向に向く端面と、第2分割ブロック141Bを構成する第1コア部材151の内凸段部161の軸方向に向く端面とが軸方向に重なる。図5(a)の右下に記す模式図におけるハッチング部が、重なり部Lに相当する。重なり部Lは、重なり部Lの両端から中心軸CLに延びる線を引いたときに画成される扇状領域の中心角が、角度θ1から角度θ3を差し引いた角度、すなわち、中心角θrの2倍分の角度となる。このように、本実施の形態では、コアバック部153の一部の軸方向端面が、隣接する分割コアブロック141のコアバック部153の一部の軸方向端面と重なり部Lで重なる。したがって、分割コアブロック141は、周方向に隣接する分割コアブロック141によって、軸方向の移動が規制される。
図4(b)に示すように、分割コアブロック141同士が連結されると、図5に示す第1分割ブロック141Aを構成する第1コア部材151における外凸段部171の外周凸部172の内向き主面175と、第2分割ブロック141Bを構成する第1コア部材151における内凸段部161の内周凸部162の外向き主面165とが径方向で重なる。
第1分割ブロック141Aを構成する第2コア部材152における内凸段部161の内周凸部162の外向き主面165と、第2分割ブロック141Bを構成する第2コア部材152における外凸段部171の外周凸部172の内向き主面175とが径方向で重なる。
このように、各凹部C1に設けられた内向き主面175と、各凸部V1に設けられた外向き主面165とが径方向で重なり、当接する構成とされているので、一の分割コアブロック141は、周方向に隣接する他の分割コアブロック141によって、径方向の移動が規制される。
分割コアブロック141同士が連結されると、第1分割ブロック141Aを構成する第1コア部材151における外凸段部171の外周凸部172の内向き主面175に設けられた嵌合凹部176と、第2分割ブロック141Bを構成する第1コア部材151における内凸段部161の内周凸部162の外向き主面165に設けられた嵌合凸部166とが嵌合する。
第1分割ブロック141Aを構成する第2コア部材152における内凸段部161の内周凸部162の外向き主面165に設けられた嵌合凸部166と、第2分割ブロック141Bを構成する第2コア部材152における外凸段部171の外周凸部172の内向き主面175に設けられた嵌合凹部176とが嵌合する。
このように、各凹部C1の内向き主面175において径方向外方に向かって凹む嵌合凹部176と、各凸部V1の外向き主面165において径方向外方に向かって突出する嵌合凸部166とが嵌合する構成とされている。このため、一の分割コアブロック141は、周方向に隣接する他の分割コアブロック141によって、周方向の移動が規制される。
なお、分割コアブロック141同士を連結するために、内周凸部162を内側凹部174に嵌め合わせる際(すなわち、外周凸部172を外側凹部164に嵌め合わせる際)、嵌合凸部166が内向き主面175に接触する。その結果、内周凸部162および外周凸部172のそれぞれに互いを離隔させるような押圧力が作用する。内周凸部162は径方向内方にわずかに曲げ変形し、外周凸部172は径方向外方にわずかに曲げ変形する。嵌合凸部166と嵌合凹部176とが嵌合すると、変形していた内周凸部162および外周凸部172は、変形前の状態に戻る。
本実施の形態では、内周凸部162および外周凸部172は、コアプレートの積層方向(すなわちコアプレートの厚み方向)と直交する径方向に変形するので、変形量が弾性域内で抑えられ、分割コアブロック141同士を連結した後に、密着度が低下することが防止される。
12個の分割コアブロック141の結合方法としては、たとえば、周方向に所定の間隔をあけて12個の分割コアブロック141を配置し、治具(不図示)により、径方向外方から径方向内方に向けて各分割コアブロック141を移動させることで、図3に示すような一体のステータコア140を形成することができる。なお、説明の便宜上、分割コアブロック141同士の連結を説明する図3および図4では、インシュレータ21やステータコイル5の図示を省略している。しかしながら、実際の組立作業時には、各分割コアブロック141には、予めインシュレータ21が装着され、ステータコイル5が巻回されている。このため、分割コアブロック141同士を連結すると、図2に示すような一体のステータ1を形成することができる。なお、12個の分割コアブロック141を同時に連結する場合に限らず、1つずつ分割コアブロック141を隣接する分割コアブロック141に連結させてもよい。
12個の分割コアブロック141を連結した後、各分割コアブロック141から軸方向に延出されたステータコイル5の引出し線105a同士を接続する。分割コアブロック141ごとに装着されたステータコイル5はスター結線等にて結線される。本実施の形態では、隣り合う分割コアブロック141同士が渡り線105bを介して接続されている。渡り線105bは、引出し線105a同士を接続する絶縁被覆導線105であり、ステータコア140の軸方向一端側で周方向に沿って配置されている。
なお、渡り線105bは、ステータコイル5とは別の導電部材(絶縁被覆導線105)とする場合に限定されることはなく、ステータコイル5を複数の分割コアブロック141に連続して巻回することで渡り線105bを形成してもよい。渡り線105bの周方向長さが製作公差等で設計値よりも長い場合、渡り線105bによって接続される分割コアブロック141同士を引き離すように、渡り線105bの弾性力が分割コアブロック141に作用する。特に、複数の分割コアブロック141に連続して巻回するような場合、渡り線105bから各分割コアブロック141に作用する力が顕著となる。
本実施の形態では、上述したように、分割コアブロック141同士の周方向の移動が、嵌合凹部176および嵌合凸部166によって規制されるため、分割コアブロック141に渡り線105bの弾性力が作用したとしても、分割コアブロック141が周方向にズレることが防止される。
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)分割コアブロック141のコアバック部153には、周方向に隣接する分割コアブロック141に嵌合し、隣接する分割コアブロック141の軸方向の移動を規制する凸部V1および凹部C1が軸方向に交互に形成されている。凸部V1および凹部C1のそれぞれには、径方向を向く主面(外向き主面165、内向き主面175)が設けられている。一の分割コアブロック141の凸部V1に設けられた主面(外向き主面165)は、周方向に隣接する他の分割コアブロック141の凹部C1に設けられた主面(内向き主面175)と接触する。一の分割コアブロック141の凹部C1に設けられた主面(内向き主面175)は、周方向に隣接する他の分割コアブロック141の凸部V1に設けられた主面(外向き主面165)と接触する。外向き主面165および内向き主面175は、互いに接触することで、隣接する分割コアブロック141の径方向の移動および周方向の移動を規制するように構成されている。
これにより、ハウジング9へステータ1を圧入する際に、分割コアブロック141の位置ズレを防止することができる。その結果、ハウジング組み付け作業性の向上を図ることができる。なお、分割コアブロック141の径方向、周方向および軸方向の移動が規制されない構造では、位置決めリング(不図示)によって複数個の分割コアブロック141を保持したとしても、位置決めリング(不図示)から離れるにしたがって、分割コアブロック141が径方向外方に広がってしまうおそれがある。その結果、ステータ1をハウジング9に圧入できなくなってしまうおそれがある。また、ハウジング9にステータ1を無理に圧入してしまうと、分割コアブロック141の端部が変形してしまったり、ハウジング9が削れてしまうおそれがある。
これに対して、本実施の形態では、分割コアブロック141同士が径方向、軸方向および周方向のいずれにもズレることのないように、一体的に結合されているので、ステータ1のハウジング9への圧入作業を容易に行うことができる。また、圧入の際に、ステータ1やハウジング9が変形してしまったり、削れてしまったりすることを防止できる。
(2)特許文献1に記載の積層鉄心では、一の分割鉄心ブロック13の嵌合凹部18の軸方向に向く内側面に設けられた凹部25および凸部26に、隣接する他の分割鉄心ブロック13の嵌合凸部20の軸方向に向く外側面に設けられた凸部26および凹部25が嵌合される構成である。
特許文献1に記載の分割鉄心ブロック13は、厚さの薄い鉄心片を軸方向に積層する構成であり、径方向や周方向に比べて、軸方向の曲げ剛性が低い。このため、嵌合凹部18に嵌合凸部20を嵌合する際、凸部26が凹部25に嵌入するまでの間、凸部26が鉄心片を積層方向に押圧し、嵌合凹部18の軸方向の間隔が広がるように鉄心片が大きく変形してしまうおそれがある。特許文献1に記載の分割鉄心ブロック13では、軸方向の曲げ剛性が低いため、径方向や周方向に力が作用する場合に比べて、変形量が大きく、塑性域に至ってしまい、凸部26と凹部25とが嵌合した後、鉄心片が元の形状に戻らなくなってしまうおそれがある。鉄心片が変形したままであると、鋼板同士の軸方向の密着度や、隣接する分割鉄心ブロック同士の密着度を低下させ、回転電機の磁気的な性能の低下を招くおそれがある。
これに対して、本実施の形態では、凹部C1と凸部V1を嵌め合わせる際、内周凸部162および外周凸部172は、コアプレートの積層方向(すなわちコアプレートの厚み方向)と直交する径方向に変形するので、変形量が弾性域内で抑えられ、分割コアブロック141同士を連結した後に、密着度が低下することが防止される。したがって、本実施の形態によれば、回転電機100の磁気的な性能の低下を防止することができる。
(3)本実施の形態では、凸部V1において、コアバック部153の基端部160から周方向の先端部に亘って、コアバック部153の外周側から内周側にへこむ外側凹部164が形成された内凸段部161を設け、この内凸段部161に外向き主面165を形成した。コアバック部153の基端部160から周方向の先端部に亘って、コアバック部153の内周側から外周側にへこむ内側凹部174が形成された外凸段部171を設け、この外凸段部171に内向き主面175を形成した。このような構成によれば、分割コアブロック141の成形性がよく、外向き主面165と内向き主面175の接触面積を十分に確保できる。
(4)本実施の形態では、分割コアブロック141の凸部V1に設けられた外向き主面165、および、周方向に隣接する分割コアブロック141の凹部C1に設けられた内向き主面175のうち、一方の主面である内向き主面175が嵌合凹面を有し、他方の主面である外向き主面165が嵌合凸面を有し、嵌合凹面と嵌合凸面とが嵌合している。嵌合凹面と嵌合凸面とを嵌合させることで、分割コアブロック141同士の周方向の移動を規制できる。
(5)各分割コアブロック141は、同一の形状であるので、製作工数の低減を図ることができる。
−第2の実施の形態−
本発明の第2の実施の形態を図6および図7を参照して説明する。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。図6は、図5と同様の図である。図6(a)は第1コア部材251を示す平面図であり、図6(b)は第2コア部材252を示す平面図である。図6では、側面168と外向き主面265との交点、および、側面169と内向き主面275との交点を通る、ステータコアの中心軸CL(図6において不図示)を中心とした仮想円弧CAを二点鎖線で示している。
第1の実施の形態では、外向き主面165に嵌合凸部166を設け、内向き主面175に嵌合凹部176を設け、両者を嵌合させることで、分割コアブロック141の周方向の移動を規制する構成であった(図4参照)。これに対して、第2の実施の形態では、嵌合凸部166および嵌合凹部176を設けることに代えて、外向き主面265と内向き主面275を周方向の接線方向から角度θだけ傾けて、周方向の移動を規制する構成としている。
つまり、第2の実施の形態では、内凸段部261の内周凸部262および外凸段部271の外周凸部272の形状が、第1の実施の形態の内凸段部161の内周凸部162および外凸段部171の外周凸部172の形状と異なっている。第2の実施の形態では、コアバック部253の周方向端部における嵌め合い部分が、蟻継形状でみられる傾斜面のように、互いに離れることを防ぐ構成とされている。
図6に示すように、第1コア部材251と第2コア部材252は、配置の際に表裏の向きは異なるが、同一形状のため、第1コア部材251を代表して、形状の詳細な説明をする。
図6(a)に示すように、第1コア部材251には、コアバック部253の基端部160から周方向の一端側(図中左端側)の先端部に亘って、コアバック部253の外周側から内周側にへこむ外側凹部264が形成されることで、内周凸部262と基端部160とで段部(以下、内凸段部261と記す)が形成されている。
第1コア部材251には、コアバック部253の基端部160から周方向の他端側(図中右端側)の先端部に亘って、コアバック部253の内周側から外周側にへこむ内側凹部274が形成されることで、外周凸部272と基端部160とで段部(以下、外凸段部271と記す)が形成されている。
内凸段部261の外側凹部264は、周方向外側が開放された平面視L字状の窪みであって、径方向外方を向く平面状の主面(以下、外向き主面265と記す)と、外向き主面265における中心軸TCL側の端部から径方向外方に立ち上がる側面168とを有している。
外向き主面265は、周方向の接線(すなわちステータコアの中心軸CL(図6において不図示)を中心とする仮想円弧CAの接線)TL方向に対してθだけ径方向外方に向けて傾けられるように形成されている。平面状の外向き主面265の反対側の面、すなわちコアバック部253の内周側面は、周方向に沿った湾曲面状に形成されている。
内周凸部262は基端部160から先端部に向かって、径方向の幅が広がる形状とされている。つまり、内周凸部262は、基端部160から径方向外方に向かうにしたがって断面積が増加する形状とされている。
外凸段部271の内側凹部274は、周方向外側が開放された平面視L字状の窪みであって、径方向内方を向く平面状の主面(以下、内向き主面275と記す)と、内向き主面275における中心軸TCL側の端部から径方向外方に立ち上がる側面169とを有している。
内向き主面275は、周方向の接線(すなわちステータコアの中心軸CL(図6において不図示)を中心とする仮想円弧CAの接線)接線TL方向に対してθだけ径方向内方に向けて傾けられるように形成されている。平面状の内向き主面275の反対側の面、すなわちコアバック部253の外周側面は、周方向に沿った湾曲面状に形成されている。
外周凸部272は基端部160から先端部に向かって、径方向の幅が広がる形状とされている。つまり、外周凸部272は、基端部160から径方向外方に向かうにしたがって断面積が増加する形状とされている。
図7は、図4と同様の図である。図7は第2の実施の形態において、隣り合う分割コアブロック241同士を連結する様子を示す斜視図である。図7(a)に示すように、第1コア部材251と第2コア部材252を交互に積層すると、周方向に突出する凸部V2と、周方向にへこむ凹部C2とが軸方向に交互に形成される。
図7に示すように、以下では、説明の便宜上、図中左側の分割コアブロック241を第1分割ブロック241Aと記し、第1分割ブロック241Aに隣接する図中右側の分割コアブロック241を第2分割ブロック241Bと記す。
第1分割ブロック241Aの凹部C2と、第2分割ブロック241Bの凸部V2とを嵌合し、第1分割ブロック241Aの凸部V2と第2分割ブロック241Bの凹部C2とを嵌合することで、第1分割ブロック241Aと第2分割ブロック241Bとが連結される。
分割コアブロック241同士が連結されると、第1分割ブロック241A(第2分割ブロック241B)における外周凸部272の内向き主面275と、第2分割ブロック241B(第1分割ブロック241A)における内周凸部262の外向き主面265とが径方向で重なる。なお、内向き主面275と外向き主面265は、周方向の接線方向からθだけ傾くように形成されているので、周方向でも重なっている。外向き主面265は、仮想円弧CAよりも径方向外方に位置するように傾斜し、内向き主面275は、仮想円弧CAよりも径方向内方に位置するように傾斜している。このため、一の分割コアブロック241は、周方向に隣接する分割コアブロック241によって、隣り合う分割コアブロック241同士が離隔するような周方向の移動が規制される。
なお、第1の実施の形態と同様、分割コアブロック241同士を連結する際、内周凸部262は径方向内方にわずかに曲げ変形し、外周凸部272は径方向外方にわずかに曲げ変形するが、弾性域内での変形量に抑えられる。
このように、第2の実施の形態では、内側凹部274が形成された外凸段部271には、コアバック部253の外周部が周方向に延在する外周凸部272が設けられている。外側凹部264が形成された内凸段部261には、コアバック部253の内周部が周方向に延在する内周凸部262が設けられている。分割コアブロック241の外周凸部272および内周凸部262は、それぞれ基端から先端に向かって、径方向の幅が広がるように、内向き主面175および外向き主面265が周方向の接線TL方向に対して傾けられている。このため、嵌合凹部や嵌合凸部を設けない場合であっても、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
−第3の実施の形態−
本発明の第3の実施の形態を図8および図9を参照して説明する。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。図8は、図5と同様の図である。図8(a)は第1コア部材351を示す平面図であり、図8(b)は第2コア部材352を示す平面図である。図9は、隣り合う分割コアブロック341同士を連結する様子を示す斜視図である。
第1の実施の形態では、12個の分割コアブロック141が全て同一形状とされていた。これに対して、第3の実施の形態では、2種類の分割コアブロック341を備えている。図9に示すように、2種類の分割コアブロック341をそれぞれX分割コアブロック341XおよびY分割コアブロック341Yと記す。X分割コアブロック341XとY分割コアブロック341Yは、互いに隣り合うように、周方向に交互に配置されて、円筒状のステータコアが形成される(不図示)。
図9に示すように、X分割コアブロック341Xは、上から第1コア部材351、第2コア部材352、第1コア部材351、第2コア部材352・・・の順で交互に積層されている。Y分割コアブロック341Yは、上から第2コア部材352、第1コア部材351、第2コア部材352、第1コア部材351・・・の順で交互に積層されている。
第1の実施の形態では、第1コア部材151と第2コア部材152とが同一形状とされ、コアバック部153の周方向一端に内凸段部161が設けられ、コアバック部153の周方向他端に外凸段部171が設けられていた(図5参照)。これに対して、第3の実施の形態では、図8に示すように、第1コア部材351と第2コア部材352とが異なる形状とされている。
図8(a)に示すように、第1コア部材351は、コアバック部353の周方向両端に外凸段部371L,371Rが設けられている。図8(b)に示すように、第2コア部材352は、コアバック部353の周方向両端に内凸段部361L,361Rが設けられている。
図9に示すように、X分割コアブロック341Xは、周方向両端のそれぞれにおいて、第1コア部材351の周方向端面と第2コア部材352の周方向端面とが、面一とされている。同様に、Y分割コアブロック341Yは、周方向両端のそれぞれにおいて、第1コア部材351の周方向端面と第2コア部材352の周方向端面とが、面一とされている。
換言すれば、図8(a)および図8(b)に示すように、ステータコアの中心軸CL(図8において不図示)とコアバック部353の周方向一端(図示左端)とを結ぶ線分と、ティース部154の中心軸TCLとのなす角度θLが、第1コア部材351と第2コア部材352とで同一とされている。同様に、ステータコアの中心軸CL(図8において不図示)とコアバック部353の周方向他端(図示右端)とを結ぶ線分と、ティース部154の中心軸TCLとの成す角度θRが、第1コア部材351と第2コア部材352とで同一とされている。
第1コア部材351と第2コア部材352を交互に積層すると、図9に示すように、周方向に突出する凸部V3i,V3oと、周方向にへこむ凹部C3i,C3oとが軸方向に交互に形成される。X分割コアブロック341Xは、径方向内側では上から凹部C3i、凸部V3i、凹部C3i、凸部V3i・・・の順で形成され、径方向外側では上から凸部V3o、凹部C3o、凸部V3o、凹部C3o・・・の順で形成される。Y分割コアブロック341Yは、径方向内側では上から凸部V3i、凹部C3i、凸部V3i、凹部C3i・・・の順で形成され、径方向外側では上から凹部C3o、凸部V3o、凹部C3o、凸部V3o・・・の順で形成される。
このような第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
(6)コアバック部353の内周側および外周側のそれぞれで、隣接する分割コアブロック341の軸方向の移動を規制する凸部V3i,V3oおよび凹部C3i,C3oが軸方向に交互に形成されている。これにより、第1の実施の形態に比べて、分割コアブロック341の軸方向の移動を規制する第1コア部材351と第2コア部材352の軸方向端面同士の接触面積、すなわち重なり部Lの面積の拡大を容易に図ることができる。
−第4の実施の形態−
本発明の第4の実施の形態を図10および図11を参照して説明する。なお、図中、第2の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。図10は、図6と同様の図である。図10(a)は第1コア部材451を示す平面図であり、図10(b)は第2コア部材452を示す平面図である。図10では、側面168と外向き主面265との交点、および、側面169と内向き主面275との交点を通る、ステータコアの中心軸CL(図10において不図示)を中心とした仮想円弧CAを二点鎖線で示している。図11は、隣り合う分割コアブロック441同士を連結する様子を示す斜視図である。
第2の実施の形態では、12個の分割コアブロック241が全て同一形状とされていた。これに対して、第4の実施の形態では、2種類の分割コアブロック441を備えている。図11に示すように、2種類の分割コアブロック441をそれぞれX分割コアブロック441XおよびY分割コアブロック441Yと記す。X分割コアブロック441XとY分割コアブロック441Yは、互いに隣り合うように、周方向に交互に配置されて、円筒状のステータコアが形成される(不図示)。
図11に示すように、X分割コアブロック441Xは、上から第1コア部材451、第2コア部材452、第1コア部材451、第2コア部材452・・・の順で交互に積層されている。Y分割コアブロック341Yは、上から第2コア部材452、第1コア部材451、第2コア部材452、第1コア部材451・・・の順で交互に積層されている。
第2の実施の形態では、第1コア部材251と第2コア部材252とが同一形状とされ、コアバック部253部の周方向一端に内凸段部261が設けられ、コアバック部253の周方向他端に外凸段部271が設けられていた(図6参照)。これに対して、第4の実施の形態では、図10に示すように、第1コア部材451と第2コア部材452とが異なる形状とされている。
図10(a)に示すように、第1コア部材451は、コアバック部453の周方向両端に外凸段部471L,471Rが設けられている。図10(b)に示すように、第2コア部材452は、コアバック部453の周方向両端に内凸段部461L,461Rが設けられている。
図11に示すように、X分割コアブロック441Xは、周方向両端のそれぞれにおいて、第1コア部材451の周方向端面と第2コア部材452の周方向端面とが、面一とされている。同様に、Y分割コアブロック441Yは、周方向両端のそれぞれにおいて、第1コア部材451の周方向端面と第2コア部材452の周方向端面とが、面一とされている。つまり、第3の実施の形態と、同様の特徴を備えている。
このため、第1コア部材451と第2コア部材452を交互に積層すると、図11に示すように、周方向に突出する凸部V4i,V4oと、周方向にへこむ凹部C4i,C4oとが軸方向に交互に形成される。X分割コアブロック441Xは、径方向内側では上から凹部C4i、凸部V4i、凹部C4i、凸部V4i・・・の順で形成され、径方向外側では上から凸部V4o、凹部C4o、凸部V4o、凹部C4o・・・の順で形成される。Y分割コアブロック441Yは、径方向内側では上から凸部V4i、凹部C4i、凸部V4i、凹部C4i・・・の順で形成され、径方向外側では上から凹部C4o、凸部V4o、凹部C4o、凸部V4o・・・の順で形成される。
このような第4の実施の形態によれば、第2の実施の形態の作用効果に加え、第3の実施の形態で説明した(6)と同様の作用効果を奏する。
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
上述した実施の形態では、隣り合う分割コアブロック同士を連結し、軸方向、径方向および周方向の移動を規制するための構成を全ての第1コア部材と第2コア部材とに設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、図4に示す分割コアブロック141において、軸方向の中間部(上から3段目から6段目まで)のコア部材については、左右対称形状で、段部が形成されないコア部材(不図示)を用いてもよい。
(変形例2)
本明細書において、円筒状とは、完全な円筒に限らず、これとほぼ同一で、本願発明の効果を奏するような略円筒を含む。
(変形例3)
上述した実施の形態では、12個の分割コアブロックを周方向に配置してなる円筒状のステータコアを例に説明したが、本発明はこれに限定されない。少なくとも2以上の分割コアブロックからなる円筒状のステータコアに本発明を適用することができる。
(変形例4)
上述した実施の形態では、ステータコアを例に説明したが、本発明はこれに限定されない。ロータコアを2以上の分割コアブロックに分割する場合に、本発明を適用してもよい。
(変形例5)
上述した実施の形態では、電磁鋼板をプレス加工により打ち抜いて形成したコアプレートを複数枚積層することで、第1コア部材および第2コア部材を形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、圧粉磁心等の軟磁性材料から形成することもできる。
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。