JP2023096708A - 回転伝達装置、及び、回転伝達装置を用いた車両用操舵装置 - Google Patents

回転伝達装置、及び、回転伝達装置を用いた車両用操舵装置 Download PDF

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Abstract

【課題】自動操舵状態から手動操舵状態への切り替えを円滑にする。【解決手段】電磁クラッチ50への通電により2方向クラッチ10を係合解除させて自動操舵状態とし、通電の遮断により2方向クラッチ10を係合させて手動操舵状態とし、ステアリングホイール側の入力軸3及び転舵部側の出力軸4のいずれか一方に凸部72が設けられ、他方には凸部72と対向する凹部76が設けられ、凸部72及び凹部76の間には入力軸3及び出力軸4の回転方向に沿って所定の間隙wが設けられて、自動操舵状態では間隙wが縮小して凸部72と外面と凹部76の内面が当接することで入力軸3から出力軸4へ回転が伝達する回転伝達装置とした。【選択図】図1

Description

この発明は、回転伝達装置、及び、回転伝達装置を用いた車両用操舵装置に関する。
車両用操舵装置として、運転者がステアリングホイールを操作することによって、車輪の操舵を手動で行う手動操舵状態と、運転者がステアリングホイールを操作することなく車輪の操舵を自動で行う自動操舵状態とで、ステアリングシャフトの連結状態を切り替えるクラッチ機構を備えたものがある。
例えば、特許文献1の車両用操舵装置は、ステアリングシャフトとして、ステアリングホイールと連動する第1シャフトと、車輪の操舵部と連動する第2シャフトとを備え、さらに、第1シャフトと連動する第1クラッチ板と、第1クラッチ板と対向して配置され第2シャフトと連動する第2クラッチ板とを備えている。第1クラッチ板に凸部が設けられ、第2クラッチ板には凸部と対向する凹部が設けられている。クラッチ板の凸部と凹部との間には、ステアリングシャフトの回転方向に所定の大きさの間隙が設けられている。また、凸部を有する第1クラッチ板(ステアリングホイール側クラッチ板)の中央の軸挿通孔には雌スプラインが形成されており、軸挿通孔に挿通される支持軸部には雄スプラインが形成されている。
手動操舵状態のときは、クラッチ機構のクラッチ板同士が接触して接状態になるので、第1シャフトと第2シャフトとの連動が許容され、凸部と凹部との間の間隙が機能しない。このため、運転者は、ステアリングホイールを操作して第1シャフト及び第2シャフトを回転させて、車輪を操舵することができる。ここで、第1クラッチ板と支持軸部とはスプライン結合されており、ステアリングホイール側の回転がガタつきなく第1クラッチ板に伝達されるようになっている。
また、自動操舵状態のときには、クラッチ機構のクラッチ板同士を離間させて断状態にし、自動操舵手段(モータ)によって第2シャフトを回転させて車輪を操舵する。このとき、運転者が手動でステアリングホイールを強制的に回転させて凸部と凹部との間に設定された間隙を詰めると、一方のクラッチ板の凸部が他方のクラッチ板の凹部に当接し第2シャフトが第1シャフトに連動する。このため、自動操舵状態での運転中に緊急事態が発生した場合などには、運転者がステアリングホイールを手動で大きく操作することにより、車輪を操舵することができるとされている。
特開2018-122683号公報
自動操舵及び手動操舵に対応した特許文献1のステアリング装置では、自動操舵状態ではクラッチ板同士が離間して断状態となり、手動操舵状態ではクラッチ板同士が接触して接状態となる。しかし、この切り替えは、互いに相対回転するクラッチ板同士を接近させた後、摩擦力によりそれらが一体に回転する状態になるまでに所定の時間を要することとなる。自動操舵と手動操舵の切り替えは、出来る限りスムーズであることが望ましい。
また、特許文献1のステアリング装置では、自動操舵状態においても、一方のクラッチ板の凸部と他方のクラッチ板の凹部とは完全に離脱していない。このため、自動操舵により転舵部が大きく向きを変えると第2シャフトが回転して、クラッチ板の凸部と凹部との間の間隙が詰まることで、第1シャフト及びステアリングホイールが回転する。
ここで、仮に、クラッチ板の凸部と凹部とを完全に離脱させる、あるいは、ステアリングホイール側のクラッチ板と、それを支持する支持軸部とのスプライン結合が解除されれば、自動操舵による転舵部側のシャフトの回転が、ステアリングホイール側には伝達されなくなる。しかし、クラッチ板と支持軸部とのスプライン結合が解除される構成とすると、自動操舵状態から手動操舵状態への切り替えの際に、凸部と凹部がうまく噛み合わず、あるいは、スプラインの歯同士がぶつかり合い、両者がスムーズに嵌合できない場合がある。自動操舵状態から手動操舵状態への切り替えは、できる限りスムーズであることが望ましい。
そこで、この発明の課題は、クラッチが係合解除した状態であっても、入力軸が所定以上回転した際にはその回転をできる限り円滑に出力軸へ伝達することである。すなわち、車両用操舵装置においては、自動操舵状態から手動操舵状態への切り替えを、できる限り円滑にすることである。
上記の課題を解決するために、この発明は、入力軸及び出力軸と、外方部材及び内方部材とその間に配置される係合子を備え前記係合子を介して前記外方部材と前記内方部材とを係合及び係合解除することで前記入力軸と前記出力軸との間に設けられた2方向クラッチと、前記2方向クラッチの係合及び係合解除を制御する電磁クラッチとを備え、前記入力軸及び前記出力軸のいずれか一方に凸部が設けられ、他方には前記凸部と対向する凹部が設けられ、前記凸部及び前記凹部の間には前記入力軸及び前記出力軸の回転方向に沿って所定の間隙が設けられて、前記2方向クラッチが係合解除した状態であっても、前記入力軸の回転により前記間隙が縮小して前記凸部の外面と前記凹部の内面が当接することで前記入力軸から前記出力軸へ回転が伝達する回転伝達装置を採用した。
ここで、前記電磁クラッチの電磁石への通電により前記2方向クラッチが係合解除し、前記電磁石への通電の遮断により前記2方向クラッチが係合する構成を作用することができる。
これらの各態様において、前記2方向クラッチは、前記入力軸に回転自在且つ軸方向移動自在に支持される制御保持器及び回転保持器を有し、前記外方部材の内周と前記内方部材の外周との間に、前記制御保持器及び前記回転保持器のそれぞれに設けられた柱部を周方向に交互に配置し、隣接する柱部同士の間に形成されたポケットに、一対の前記係合子と、一対の前記係合子を互いに離反する方向に付勢して前記外方部材の内周及び前記内方部材の外周に係合する位置にスタンバイさせる弾性部材を組み込んだものである構成を作用することができる。
さらに、前記電磁クラッチは、前記制御保持器に連結されたアーマチュアと、前記入力軸に固定されて前記アーマチュアと軸方向で対向するロータとを有し、前記電磁石への通電により前記制御保持器を軸方向に移動させ、前記制御保持器の軸方向移動を運動変換機構によって前記ポケットの周方向幅が小さくなる方向への前記制御保持器と前記回転保持器の相対回転運動に変換して、一対の前記係合子を係合解除させるものである構成を作用することができる。
これらの各態様からなる回転伝達装置を用い、左右一対の転舵輪の向きが変化するように前記一対の転舵輪にその両端が接続されるラックと、前記ラックを移動可能に収容するラックハウジングとを備え、前記回転伝達装置の前記入力軸はステアリングホイールに通じるシャフトに、前記出力軸は前記ラックへ通じるシャフトに接続され、前記2方向クラッチが係合解除した状態は、運転者が前記ステアリングホイールを操作することなく前記転舵輪の操舵を自動で行う自動操舵状態に対応し、前記2方向クラッチが係合した状態は、前記ステアリングホイールからの入力によって前記転舵輪の操舵を手動で行う手動操舵状態に対応する車両用操舵装置を採用することができる。
この発明によれば、クラッチが係合解除した状態であっても、入力軸が所定以上回転した際にはその回転を即時に出力軸へ伝達できるようになる。このため、この発明を車両用操舵装置に適用すれば、自動操舵状態から手動操舵状態への切り替えを即時にできるようになる。
回転伝達装置の縦断面図 図1の要部拡大図 図1のIII-III断面図 図3の要部拡大図 図1のV-V断面図 図5のIV-IV断面図 図1のVII-VII断面図 図7のVIII-VIII断面図(係合解除状態) 図7のVIII-VIII断面図(係合状態) 図2のIX-IX断面図 変形例を示す要部拡大図 回転伝達装置を用いた車両用操舵装置の全体図
この発明の実施形態を、図1~図11に基づいて説明する。図1~図9は、この発明の第1の実施形態に係る回転伝達装置1を、図10は、その回転伝達装置1の変形例を、図11は、この発明の回転伝達装置1を用いた車両用操舵装置100(以下、ステアリング装置100と称する)の一例を示している。
回転伝達装置1は、図1に示すように、入力軸3と、その入力軸3と同軸上に配置された出力軸4と、入力軸3及び出力軸4の軸端部を覆うとともにその両端が開放された筒状のケース2を備えている。出力軸4は、ケース2の軸方向一端側へ突出し、入力軸3は、ケース2の軸方向他端側へ突出している。外部からの回転が入力軸3に入力され、その入力された回転が出力軸4を通じて外部へ出力される。また、回転伝達装置1は、入力軸3と出力軸4との間に設けられた2方向クラッチ10と、2方向クラッチ10の係合及び係合解除を制御する電磁クラッチ50とを備えている。
ステアリング装置100は、図11に示すように、左右一対の転舵輪(転舵部)107,107の向きが変化するように、一対の転舵輪107,107にその両端が接続されるラック104と、ラック104を左右に移動可能に収容するラックハウジング105とを備えている。また、運転者により操舵されるステアリングホイール(操作部)101と、ステアリングホイール101の回転を伝達するステアリングシャフト103(以下、単にシャフト103と称する)、及び、それらの制御装置等を備えている。回転伝達装置1の入力軸3にはシャフト103を通じてステアリングホイール101が接続され、回転伝達装置1の出力軸4には、シャフト103を通じてラック104に噛み合うピニオン(図示せず)が接続されている。ラック104の両端は、ボールジョイント109を介して左右の転舵輪107のナックルアーム108に接続されており、ラック104が左右に移動すると、その移動に応じてナックルアーム108が回動し、転舵輪107の向きが変化するようになっている。すなわち、回転伝達装置1の入力軸3は、ステアリングホイール101に通じるシャフト103に接続され、出力軸4はラック104へ通じるシャフト103に接続されている。シャフト103の途中には、適宜の位置にジョイント(ボールジョイント等)110が介在しており、そのジョイント110を介してシャフト103同士が屈曲した状態での回転伝達が可能となっている。
シャフト103には、転舵用モータ106が取り付けられている。転舵用モータ106の取り付け位置は、回転伝達装置1よりも転舵輪107側であればよく、例えば、ラック104に転舵用モータ106をとりつけてもよい。転舵用モータ106の駆動により、車体に固定されたラックハウジング105に対して、ラック104は左右に移動する。進行方向に従って操舵が可能である転舵輪107,107は、車両の前輪のみに設定される場合もあるし、前輪及び後輪の両方に設定される場合もある。
2方向クラッチ10は、外方部材11及び内方部材13と、その外方部材11と内方部材13の間に配置される複数の係合子15を備えたものである。図1に示すように、外方部材11は、出力軸4の軸端部に設けられている。外方部材11の内周12に、円筒面(以下、円筒面12と称する)が形成されている。内方部材13は、入力軸3の軸端部に設けられている。内方部材13の外周14に複数のカム面(以下、カム面14と称する)が形成されている。カム面14は、対の傾斜面14a,14bが周方向に沿って等間隔に形成されたものである。各カム面14と円筒面12との間に、一対の係合子15が配置されている。この実施形態では、係合子15としてローラを採用している。以下、係合子15をローラ15と称する。ローラ15に隣接して、そのローラ15をカム面14に沿って付勢する弾性部材20を組み込んでいる。ここでは、弾性部材20としてコイルバネを組み込んでいるが、弾性部材20は、コイルバネ以外の他の形態からなるバネや、その他の弾性体であってもよい。以下、弾性部材20をコイルバネ20と称する。
ローラ15は、外方部材11と内方部材13との間に配置された保持器16(制御保持器16Aおよび回転保持器16B)によって保持されている。そして、入力軸3と一体に回転する内方部材13が軸回り一方向に回転すると、一対のローラ15の一方が円筒面12およびカム面14に係合した状態で、内方部材13の回転を外方部材11に伝達する。また、内方部材13が軸回り他方向に回転すると、他方のローラ15が円筒面12及びカム面14に係合した状態で、内方部材13の回転を外方部材11に伝達するようにしている。
この実施形態では、外方部材11は出力軸4と一体に形成されている。その外方部材11の円筒面12よりも軸方向一端側の内周に設けられた小径の凹部17に、入力軸3の軸端部を回転自在に支持する軸受18が組み込まれている。図2に示すように、軸受18と外方部材11の段部端面との間には、軸方向の隙間を調整するシム18aが介在し、軸受18と内方部材13の段部端面との間には、軸方向の隙間を調整するシム18bが介在している。また、出力軸4は、軸受5を介してケース2の軸方向一端に形成された小径の軸受筒2aに回転自在に支持されている。また、その軸受筒2aの内周には、軸受5よりも軸方向外側で、出力軸4とケース2との間をシールする密封シール6が圧入されている。図中の符号5aは、軸受5とケース2の段部端面との間に介在する弾性体である。
また、この実施形態では、内方部材13は入力軸3と一体に形成されている。その内方部材13のカム面14は、周方向に沿って相反する方向に傾斜する一対の傾斜面14a、14bからなり、各傾斜面14a、14bと外方部材11の円筒面12との間に、周方向の一側又は他側で狭小となる楔形空間が形成されている。また内方部材13の一対の傾斜面14a、14bの間には、内方部材13の接線方向に向く平坦なばね支持面19が設けられている。そのばね支持面19によって、コイルバネ20が支持されている。
コイルバネ20は、一対のローラ15の間に配置されて、各ローラ15を互いに離反する方向に付勢して、外方部材11の円筒面12及び内方部材13のカム面14に係合する位置にスタンバイさせる機能を発揮する。各ローラ15は、円筒面12およびカム面14に係合するスタンバイ位置(図3に示す位置)に配置され、そのスタンバイ位置と円筒面12およびカム面14との係合が解除される係合解除位置(図4に示す位置)との間で周方向に移動可能とされている。また、コイルばね20は、入力軸3に固定されたばねホルダ45の外周側に形成されたばね保持片47によって、外周側への移動が規制された状態で一対のローラ15の間に保持されている(図4、図5参照)。
保持器16は、制御保持器16Aと回転保持器16Bとからなる。制御保持器16Aは、図1に示すように、環状の円板部21の片面にカム面14と同数の柱部22を周方向に等間隔に備えている。また、隣接する柱部22どうしの間に円弧状の長孔23を形成し(図7参照)、その外周には柱部22と反対向きに筒部24を備えている。回転保持器16Bは、環状の円板部25の片面にカム面14と同数の柱部26を周方向に等間隔に備えている。制御保持器16Aの長孔23内に回転保持器16Bの柱部26が挿入され、それぞれの柱部22、26が周方向に交互に並び、それぞれの柱部22,26の先端部が外方部材11と内方部材13との間に位置している。制御保持器16Aの柱部22と回転保持器16Bの柱部26との間には、内方部材13のカム面14と径方向で対向するポケット27が形成されている。一対のローラ15及びコイルバネ20は、各ポケット27に組み込まれている。
円板部21,25は、入力軸3の外周に嵌合された支持リング28と、外方部材11の軸方向他端側の端部との間に位置するように組込まれている。制御保持器16Aの円板部21及び回転保持器16Bの円板部25は、入力軸3の外周に形成されたスライド案内面29に沿って軸方向へスライド自在(移動自在)に支持されている。また、回転保持器16Bの円板部25と、入力軸3の外周に嵌合された支持リング28との間には、スラスト軸受30が組み込まれている。スラスト軸受30は、回転保持器16Bが電磁クラッチ50側に移動するのを防止しつつ、回転保持器16Bを、入力軸3及び支持リング28に対して軸回り回転自在に支持している。
制御保持器16Aの円板部21と回転保持器16Bの円板部25との間には、トルクカム40が設けられている。トルクカム40は、制御保持器16Aの軸方向の移動を、制御保持器16Aと回転保持器16Bとの相対的な回転運動に変換する運動変換機構として機能する。
トルクカム40は、図7、図8A及び図8Bに示すように、制御保持器16Aの円板部21と回転保持器16Bの円板部25の互いの対向面に、周方向の中央部で深く両端に至るに従って次第に浅くなる対向一対のカム溝41、42を備え、その対向一対のカム溝41、42の間にボール43が組み込まれた構成となっている。カム溝41、42は、ここでは略V字状の溝を示したが、円弧状の溝であってもよい。図8Bに示す状態から、制御保持器16Aの円板部21が回転保持器16Bの円板部25に接近する方向に制御保持器16Aが軸方向移動した際に、図8Aに示すように、ボール43がカム溝41、42の溝深さの最も深い位置に向けて転がり移動し、制御保持器16Aと回転保持器16Bが、ポケット27の周方向幅を小さくする方向に相対回転するようになっている。
ここで、図5および図6に示すように、入力軸3には、内方部材13の他端側に形成されたホルダ嵌合面44に、ばねホルダ45が相対回転不能かつ軸方向移動不能に嵌合されている。そのばねホルダ45の外周に、制御保持器16Aの柱部22と回転保持器16Bの柱部26との間に配置される回り止め片46が複数形成されている。複数の回り止め片46は、制御保持器16Aと回転保持器16Bとがポケット27の周方向幅を縮小する方向に相対回転した際に、各保持器16A、16Bの柱部22、26を両側縁で受け止めて相対回転量を規制し、一対のローラ15を中立位置に保持するようになっている。このため、コイルばね20は必要以上に収縮することはなく、伸長と収縮が繰り返し行われても疲労によって破損するようなことはない。
電磁クラッチ50は、図1に示すように、制御保持器16Aの筒部24の端面に軸方向で対向するアーマチュア51と、そのアーマチュア51と軸方向で対向するロータ52と、そのロータ52に軸方向で対向する電磁石53とを有している。
アーマチュア51は、支持リング28の外周円筒面54に回転自在に、且つ、軸方向へスライド自在に嵌合されている。また、アーマチュア51は、その外周部の片面に軸方向へ突出して設けられた連結筒の内周に、制御保持器16Aの筒部24が圧入されて、制御保持器16Aと連結一体化されている。これにより、アーマチュア51は、支持リング28の外周円筒面54と、入力軸3の外周のスライド案内面29の軸方向の2箇所で、軸方向へスライド自在に支持されている。また、支持リング28は、入力軸3のスライド案内面29に形成された段部によって軸方向へ位置決めされている。ロータ52は、入力軸3の外周に嵌合されて、その入力軸3に対して回り止めされている。また、ロータ52は、支持リング28との間に組み込まれたシム56によって、軸方向へ位置決めされている。
電磁石53は、電磁コイル53aと、電磁コイル53aを支持するヨーク53bとからなる。ヨーク53bは、入力軸3側であるケース2の大径部2b側の開口の内周に嵌合されて、ケース2に対して止め輪によって抜止めされている。また、電磁石53は、軸受57を介して入力軸3と相対的に回転自在である。入力軸3及び電磁石53の組込みにより、ケース2の大径部2b側の開口が閉塞されて、ケース2内へ異物が侵入しないようになっている。
電磁クラッチ50の電磁コイル53aに対する通電を遮断しているときは、図4に示すように、2方向クラッチ10のローラ15は外方部材11の円筒面12および内方部材13のカム面14に係合する状態にある。このため、入力軸3が一方向に回転すると、その回転は内方部材13から一対のローラ15の一方を介して外方部材11に伝達され、出力軸4が入力軸3と同方向に回転する。また、入力軸3が他方向に回転すると、その回転は内方部材13から他方のローラ15を介して外方部材11及び出力軸4に伝達される。
2方向クラッチ10の係合状態で電磁クラッチ50の電磁コイル53aに通電すると、アーマチュア51に吸引力が作用し、アーマチュア51が軸方向に移動してロータ52に吸着される。このとき、アーマチュア51と制御保持器16Aとは、連結筒と筒部24の嵌合によって連結一体化されている。このため、アーマチュア51の軸方向移動に伴って、制御保持器16Aは、その円板部21が回転保持器16Bの円板部25に接近する方向へ移動する。制御保持器16Aと回転保持器16Bの軸方向相対移動により、トルクカム40のボール43が、図8Bの状態から図8Aの状態へ、カム溝41、42の溝深さの最も深い位置に向けて転がり移動し、制御保持器16Aと回転保持器16Bはポケット27の周方向幅が小さくなる方向に相対回転する。制御保持器16Aと回転保持器16Bの相対回転により、2方向クラッチ10のローラ15は、制御保持器16Aの柱部22と回転保持器16Bの柱部26で押されて、互いに接近する方向に移動する。これにより、図2に示すように、ローラ15が円筒面12及びカム面14に対して係合解除する中立位置に変位し、2方向クラッチ10が係合解除状態となる。
この係合解除状態において、入力軸3を一方向に回転させると、ばねホルダ45に形成された回り止め片46が、制御保持器16Aの柱部22と回転保持器16Bの柱部26の一方を押圧する。このため、入力軸3とともに制御保持器16A及び回転保持器16Bが回転するので、各ローラ15は、保持器16(制御保持器16Aと回転保持器16B)のローラ保持力によって係合解除位置に保持される。このため、入力軸3の回転は、ローラ15を介して出力軸4に伝達されず、直結装置70により、回転方向ガタを有した状態で伝達されることとなる。
このように、電磁石53への通電及び通電の遮断により2方向クラッチ10を制御して、運転者がステアリングホイール101を操作することなく転舵輪107の操舵を自動で行う自動操舵状態と、ステアリングホイール101からの入力によって転舵輪107の操舵を手動で行う手動操舵状態とを切り替えできるようになっている。具体的には、電磁石53への通電により2方向クラッチ10を係合解除させて自動操舵状態とし、電磁石53への通電の遮断により2方向クラッチ10を係合させて手動操舵状態に設定している。
すなわち、このステアリング装置100は、車両の通常走行時は、回転伝達装置1の電磁石53への通電状態を保つことで2方向クラッチ10を係合解除させて、回転伝達装置1は、入力軸3から出力軸4への回転の伝達が直結装置70により回転方向ガタを有した状態(自動操舵状態)として使用する。一方、電源が喪失したときなどの異常時や手動操舵時は、回転伝達装置1の電磁石10への通電が遮断(停止)するので2方向クラッチ10が係合し、回転伝達装置1は、入力軸3から出力軸4にローラ15を介して回転がガタ無く伝達する締結状態となる。このとき、ステアリングホイール101の操作が、シャフト103と回転伝達装置1を通じて転舵部側へ機械的に回転ガタ無く伝達され、転舵輪107の転舵角を変化させることが可能となる。
ここで、自動操舵状態から手動操舵状態に切り替える場合を想定する。この場合、運転者が行う何等かの操作(例えば、ステアリングホイール101を所定角度移動回転させた場合、あるいは、ブレーキペダルを操作した場合等)の信号に基づいて、自動的に自動操舵状態から手動操舵状態に切り替えることとなる。
また、自動操舵状態での運転中に緊急事態が発生した場合等、急な運転条件の変化により運転者がステアリングホイール101を急激に、あるいは、大きく操作して転舵を行った場合を想定する。このような場合、回転伝達装置1が備えている直結装置70を介して、より迅速な自動操舵状態から手動操舵状態へ切り替えが可能である。
直結装置70の構成を説明すると、図2に示すように、入力軸3及び出力軸4のいずれか一方に凸部72が設けられ、他方には凸部72と対向する凹部78が設けられている。この実施形態では、入力軸3に設けられた係合軸部71と、出力軸4に設けられた係合凹部76を備え、凸部72及び凹部78の一方は係合軸部71の外周側面に、他方は係合凹部76の内周側面に設けられている。凸部72は、対向する凹部78内に入り込んで、互いに噛み合った状態となる。
係合軸部71及び係合凹部76は、入力軸3及び出力軸4の軸心を中心とする円形断面を基本として、その外周側面及び内周側面に凸部72又は凹部78を形成したものとなっている。なお、周方向に隣り合う凹部78同士の間は、内径方向に突出する凸部77となっている。また、周方向に隣り合う凸部72同士の間は、内径方向に凹む凹部73となっている。凸部72及び凹部78は、軸回り方向に沿って少なくとも1組備えていればよいが、この実施形態のように軸回り方向に沿って複数組備えていることが望ましい。
図2の実施形態では、係合軸部71側に凸部72を備え(雄嵌合)、係合凹部76側に凹部78を備え(雌嵌合)ているが、これを逆にして、係合軸部71側に凹部78を備え(雌嵌合)、係合凹部76側に凸部72を備え(雄嵌合)てもよい。また、図10に示す変形例のように、出力軸4に係合軸部71を、入力軸3に係合凹部76を備えてもよい。凸部72としては、ドグ等の各種形状の歯を採用でき、凹部78はその歯が入り込む凹形状であればよい。
図9に示すように、凸部72及び凹部78の間には、入力軸3及び出力軸4の軸回り回転方向に沿って所定の間隙wが設けられている。自動操舵状態において、入力軸3が大きく回転すると、その間隙wが縮小して凸部72の外面72aと凹部78の内面78aが当接することで、その後は、2方向クラッチ10を介することなく、入力軸3から出力軸4へ直接回転が伝達する。このため、自動操舵状態から手動操舵状態への切り替えが瞬時に可能である。
この発明は、上記のように、電磁クラッチ50と係合子型の2方向クラッチ10を組み合せ、電磁クラッチ50への通電(通電ON)で2方向クラッチ10が係合解除状態となり、通電の遮断(通電OFF)で2方向クラッチ10が係合状態となる回転伝達装置1に対し、通電ON時に、入力軸3及び出力軸4を、その回転方向に沿って所定のガタ(間隙w)を持ってトルク伝達できるようにしたものである。このような直結装置70を備えたことにより、2方向クラッチ10が係合解除状態であっても、入力軸3から所定角度以上の回転を入力することで、瞬時に出力軸4への回転の伝達が可能となる。なお、2方向クラッチ10は、電源が喪失した場合等にも対応できることを前提として、電磁クラッチ50への通電(通電ON)で2方向クラッチ10が係合状態となり、通電の遮断(通電OFF)で2方向クラッチ10が係合解除状態となるように設定してもよい。
また、この発明では、回転伝達装置1として電磁クラッチ50によって制御される係合子型の2方向クラッチ10を採用しているので、特許文献1のような接触式クラッチ板を用いた車両用操舵装置に比べて、自動操舵状態から手動操舵状態への切り替えがスムーズである。また、手動操舵状態から自動操舵状態への切り替えも同様である。さらに、係合子としてローラ15を使用しているため、入力軸3及び出力軸4の回転位相に関係なく、より素早くトルク伝達可能な状態に移行することできる。なお、この実施形態では、2方向クラッチ10の係合子としてローラ15を採用したが、スプラグ等の他の係合子を採用してもよい。
上記の実施形態では、この発明の回転伝達装置1を車両用操舵装置100に適用したが、この発明の回転伝達装置1は車両用操舵装置100に限定されず、それ以外の他の機器類に採用することもできる。すなわち、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 回転伝達装置
2 ケース
3 入力軸
4 出力軸
10 2方向クラッチ
11 外方部材
12 内周(円筒面)
13 内方部材
14 外周(カム面)
15 ローラ(係合子)
16A 制御保持器
16B 回転保持器
20 コイルばね(弾性部材)
22 柱部(制御保持器側)
26 柱部(回転保持器側)
27 ポケット
40 トルクカム(運動変換機構)
50 電磁クラッチ
51 アーマチュア
52 ロータ
53 電磁石

Claims (5)

  1. 入力軸(3)及び出力軸(4)と、外方部材(11)及び内方部材(13)とその間に配置される係合子(15)を備え前記係合子(15)を介して前記外方部材(11)と前記内方部材(13)とを係合及び係合解除することで前記入力軸(3)と前記出力軸(4)との間に設けられた2方向クラッチ(10)と、前記2方向クラッチ(10)の係合及び係合解除を制御する電磁クラッチ(50)とを備え、
    前記入力軸(3)及び前記出力軸(4)のいずれか一方に凸部(72)が設けられ、他方には前記凸部(72)と対向する凹部(76)が設けられ、前記凸部(72)及び前記凹部(76)の間には前記入力軸(3)及び前記出力軸(4)の回転方向に沿って所定の間隙(w)が設けられて、前記2方向クラッチ(10)が係合解除した状態であっても、前記入力軸(3)の回転により前記間隙(w)が縮小して前記凸部(72)の外面と前記凹部(76)の内面が当接することで前記入力軸(3)から前記出力軸(4)へ回転が伝達する回転伝達装置。
  2. 前記電磁クラッチ(50)の電磁石(53)への通電により前記2方向クラッチ(10)は係合解除し、前記電磁石(53)への通電の遮断により前記2方向クラッチ(10)は係合する請求項1に記載の回転伝達装置。
  3. 前記2方向クラッチ(10)は、前記入力軸(3)に回転自在且つ軸方向移動自在に支持される制御保持器(16A)及び回転保持器(16B)を有し、前記外方部材(11)の内周(12)と前記内方部材(13)の外周(14)との間に、前記制御保持器(16A)及び前記回転保持器(16B)のそれぞれに設けられた柱部(22,26)を周方向に交互に配置し、隣接する柱部(22,26)同士の間に形成されたポケット(27)に、一対の前記係合子(15)と、一対の前記係合子(15)を互いに離反する方向に付勢して前記外方部材(11)の内周(12)及び前記内方部材(13)の外周(14)に係合する位置にスタンバイさせる弾性部材(20)を組み込んだものである請求項1又は2に記載の回転伝達装置。
  4. 前記電磁クラッチ(50)は、前記制御保持器(16A)に連結されたアーマチュア(51)と、前記入力軸(3)に固定されて前記アーマチュア(51)と軸方向で対向するロータ(52)とを有し、前記電磁石(53)への通電により前記制御保持器(16A)を軸方向に移動させ、前記制御保持器(16A)の軸方向移動を運動変換機構によって前記ポケット(27)の周方向幅が小さくなる方向への前記制御保持器(16A)と前記回転保持器(16B)の相対回転運動に変換して、一対の前記係合子(15)を係合解除させるものである請求項3に記載の回転伝達装置。
  5. 請求項1から4のいずれか一つに記載の回転伝達装置(1)を用い、
    左右一対の転舵輪(107)の向きが変化するように前記一対の転舵輪(107)にその両端が接続されるラック(104)と、前記ラック(104)を移動可能に収容するラックハウジング(105)とを備え、前記回転伝達装置(1)の前記入力軸(3)はステアリングホイール(101)に通じるシャフト(103)に、前記出力軸(4)は前記ラック(104)へ通じるシャフト(103)に接続され、
    前記2方向クラッチ(10)が係合解除した状態は、運転者が前記ステアリングホイール(101)を操作することなく前記転舵輪(107)の操舵を自動で行う自動操舵状態に対応し、前記2方向クラッチ(10)が係合した状態は、前記ステアリングホイール(101)からの入力によって前記転舵輪(107)の操舵を手動で行う手動操舵状態に対応する車両用操舵装置。
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