JP2023096509A - 飲料 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸味のとげとげしさが抑制され、且つ味の厚みおよび丸みが付与された飲料を提供する。【解決手段】酸度が0.1g/100ml以上であり、且つ酢酸ゲラニルおよびフェンコールを含有し、この酢酸ゲラニルの含有量が10μg/L以上であり、このフェンコールの含有量が10μg/L以上1000μg/L以下である飲料とすることにより、前記課題を解決する。【選択図】なし

Description

本発明は、飲料、その製造方法等に関する。
酸味を有する飲料(特に酸味が高い飲料)においては、所定の香味を十分に感じられるようにするために酸味刺激をある程度抑制することが求められる場合がある。特に、缶チューハイや缶カクテルなどのいわゆるRTD飲料やワインテイストアルコール飲料などのアルコール飲料において、酸味刺激を抑制することが求められる場合が多い。そのため、飲料の酸味刺激を抑制または低減する技術の開発が行われている。
例えば特許文献1には、酸味料と果汁により全体の酸度が0.5g/100ml以上に調整され、果汁由来の酸度が全体の酸度の1%以上を占める、酸味に由来する刺激感が低減されたチューハイ(アルコール飲料)が開示されている。
特開2015-204775号公報
しかしながら、酸味を有する飲料における酸味のとげとげしさを抑制する技術についてはさらなる改善の余地がある。また、この酸味のとげとげしさを抑制しつつ味の厚みや丸みを付与する点についても改善の余地がある。
そこで本発明は、酸味のとげとげしさが抑制され、且つ味の厚みおよび丸みが付与された飲料を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、酢酸ゲラニルおよびフェンコールが飲料の香味などに影響を与えることを明らかにした。そして、この知見から、酸度が0.1g/100ml以上であり、且つ酢酸ゲラニルおよびフェンコールを含有し、この酢酸ゲラニルの含有量が10μg/L以上であり、フェンコールの含有量が10μg/L以上1000μg/L以下である飲料とすることにより、酸味のとげとげしさが抑制され、且つ味の厚みおよび丸みが付与されたものとなることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は次の<1>~<9>である。
<1>酸度が0.1g/100ml以上であり、且つ酢酸ゲラニルおよびフェンコールを含有する飲料であって、前記酢酸ゲラニルの含有量が10μg/L以上であり、前記フェンコールの含有量が10μg/L以上1000μg/L以下である、飲料。
<2>前記酢酸ゲラニルの含有量が50μg/L以上1000μg/L以下である、<1>に記載の飲料。
<3>前記フェンコールの含有量が50μg/L以上550μg/L以下である、<1>または<2>に記載の飲料。
<4>柑橘果実テイスト飲料である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の飲料。
<5>ワインテイスト飲料である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の飲料。
<6>アルコール度数が1v/v%以上20v/v%以下のアルコール飲料である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の飲料。
<7>前記酸度が0.5g/100ml以上2.0g/100ml以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の飲料。
<8>酸度を0.1g/100ml以上とする工程と、酢酸ゲラニルを10μg/L以上含有させる工程と、フェンコールを10μg/L以上1000μg/L以下含有させる工程と、を備える、飲料の製造方法。
<9>酸度が0.1g/100ml以上である飲料に酢酸ゲラニルを10μg/L以上およびフェンコールを10μg/L以上1000μg/L以下含有させることを特徴とする、飲料における酸味のとげとげしさの抑制、ならびに味の厚みおよび丸み付与方法。
本発明によれば、酸味のとげとげしさが抑制され、且つ味の厚みおよび丸みが付与された飲料を提供することができる。
本発明について説明する。
本発明は、酸度が0.1g/100ml以上であり、且つ酢酸ゲラニルおよびフェンコールを含有する飲料であって、酢酸ゲラニルの含有量が10μg/L以上であり、フェンコールの含有量が10μg/L以上1000μg/L以下である飲料(以下においては「本発明の飲料」という場合もある)、その製造方法等である。
本発明の飲料は、アルコール飲料であっても良く、あるいはノンアルコール飲料であっても良い。
ここで、「アルコール飲料」とは、酒税法(令和元年法律第六十三号)において定義される酒類(例えば、酒税法により定義されるリキュール、スピリッツ、果実酒、甘味果実酒、その他の発泡性酒類等)などの、アルコール度数が1v/v%以上である飲料を意味する。なお、この「アルコール度数(v/v%)」は、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計法またはガスクロマトグラフ分析法)に基づいて測定される値である(以下においても同様である)。また、本発明において「アルコール」とは、エタノールを意味する。
本発明の飲料がアルコール飲料である場合、酵母によるアルコール発酵工程(酵母が糖類などの有機物から代謝産物であるアルコールを生成する工程)を経て製造された発酵アルコール飲料、あるいはアルコール発酵工程を行うことなく製造された非発酵アルコール飲料(例えば蒸留酒等の酒類を原料として用いて調合により製造されたアルコール飲料など)のいずれであっても良い。
そして、そのアルコール度数は、1v/v%以上であれば特に限定されないが、例えば、下限として2v/v%以上、さらには3v/v%以上、さらには4v/v%以上、さらには5v/v%以上の範囲が示され、上限として20v/v%以下、さらには15v/v%以下、さらには12v/v%以下、さらには10v/v%以下、さらには9v/v%以下、さらには8v/v%以下、さらには7v/v%以下、さらには6v/v%以下の範囲が示される。特に、本発明の飲料がアルコール度数1v/v%以上20v/v%以下、さらには1v/v%以上15v/v%以下のアルコール飲料であるとより好ましい。なお、このアルコール度数は、その製造工程において原料として使用する酒類(蒸留酒、醸造酒、原料用アルコールなど)のアルコール度数や、その配合割合などによって調整することができる。さらには、発酵アルコール飲料の場合においては、アルコール発酵工程の発酵条件を制御することによりアルコール度数を調整することもできる。
一方、「ノンアルコール飲料」とは、アルコール度数が1v/v%未満である飲料を意味する。例えば、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)により規定される清涼飲料水などであって良い。なお、このノンアルコール飲料には、アルコール飲料のような味および香りを呈し、飲用の際にアルコール飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるアルコール度数が1v/v%未満のアルコールテイスト飲料だけでなく、このアルコールテイスト飲料以外の(アルコールテイスト以外の香味である)アルコール度数が1v/v%未満の飲料も包含される。
そして、本発明の飲料がノンアルコール飲料である場合、そのアルコール度数は1v/v%未満であれば特に制限されず、例えば0.000v/v%以上1v/v%未満であって良い。そして、この下限は、0.001v/v%以上、0.005v/v%以上、0.01v/v%以上、0.05v/v%以上、0.1v/v%以上、0.2v/v%以上、0.3v/v%以上、0.4v/v%以上、0.5v/v%以上、または0.6v/v%以上であって良い。また、この上限は、0.95v/v%以下、0.9v/v%以下、0.85v/v%以下、0.8v/v%以下、0.7v/v%以下、0.6v/v%以下、0.5v/v%以下、0.4v/v%以下、0.3v/v%以下、0.2v/v%以下、0.1v/v%以下、0.05v/v%以下、0.01v/v%以下、0.005v/v%以下、0.005v/v%未満、または0.004v/v%以下であって良い。なお、本発明の飲料がノンアルコール飲料である場合においては、上記したアルコールテイスト飲料であるとより好適である。
以下、本発明の飲料を構成する成分等について詳細に説明する。
本発明の飲料は、酢酸ゲラニルを10μg/L以上含有し、且つフェンコールを10μg/L以上1000μg/L以下含有する。これにより、酢酸ゲラニルとフェンコールとの相乗効果によって、所定の酸度である本発明の飲料における酸味のとげとげしさを抑制し、且つ味の厚み(厚み、コク)および丸み(丸み、やわらかさ、味全体の調和)を付与することができる。さらに、本発明の飲料にみずみずしい味わい(果実のようなみずみずしい味わい)を付与することもできる。
酢酸ゲラニル(Geranyl acetate:C1220)は、香気成分の1つであって、酢酸ゲラニオールなどとも称され、下記式(1)で表される化合物である。
Figure 2023096509000001
また、フェンコール(Fenchol:C1018O)は、これも香気成分の1つであって、フェンキルアルコールなどとも称され、下記式(2)で表される化合物である。
Figure 2023096509000002
そして、本発明の飲料においては、上記したように酢酸ゲラニルの含有量は10μg/L以上とするが、この酢酸ゲラニルの含有量を20μg/L以上とするのが好ましく、25μg/L以上とするのがより好ましく、30μg/L以上とするのがさらに好ましく、50μg/L以上とするのがさらに好ましく、80μg/L以上とするのがさらに好ましく、100μg/L以上とするのがさらに好ましく、120μg/L以上とするのがさらに好ましく、150μg/L以上とするのがさらに好ましい。フェンコールとの相乗効果によって本発明の飲料の酸味のとげとげしさをより抑制でき、且つ味の厚みおよび丸みをより高めることができるからである。同時に、みずみずしい味わいもより高めることができる。また、本発明の飲料に華やかな香味を付与することもでき、さらに、フェンコールにより感じられる場合がある墨汁様の香味を抑制(マスキング)することもできる。なお、この酢酸ゲラニルの含有量は、市販されている酢酸ゲラニル(例えば純品や精製品など)や酢酸ゲラニル含有原料(例えば香料、抽出エキス、果汁、酒類など)の使用により調整することができ、これらを複数併用しても良い。酢酸ゲラニル含有原料としては、オレンジ抽出物やレモン抽出物などが挙げられる。
また、本発明の飲料においては、酢酸ゲラニルの含有量を、好ましくは1000μg/L以下、より好ましくは800μg/L以下、さらに好ましくは600μg/L以下、さらに好ましくは500μg/L以下、さらに好ましくは400μg/L以下となるように調整すると、上記した酸味のとげとげしさ抑制効果や、味の厚みおよび丸み付与効果、みずみずしい味わいの付与効果などを高度に維持し、且つ香味全体のバランスも優れた飲料とすることができるため好適である。例えば、この酢酸ゲラニルの含有量は、50μg/L以上1000μg/L以下であって良い。
さらに、本発明の飲料においては、上記したようにフェンコールの含有量も10μg/L以上とするが、このフェンコールの含有量を20μg/L以上とするのが好ましく、25μg/L以上とするのがより好ましく、30μg/L以上とするのがさらに好ましく、40μg/L以上とするのがさらに好ましく、50μg/L以上とするのがさらに好ましい。酢酸ゲラニルとの相乗効果によって本発明の飲料の酸味のとげとげしさをより抑制でき、且つ味の厚みおよび丸みをより高めることができるからである。さらに、みずみずしい味わいもより高めることができる。なお、このフェンコールの含有量は、市販されているフェンコール(例えば純品や精製品など)やフェンコール含有原料(例えば香料、抽出エキス、果汁、酒類など)の使用により調整することができ、これらを複数併用しても良い。
また、本発明の飲料においては、これも上記したようにフェンコールの含有量は1000μg/L以下とするが、このフェンコールの含有量を好ましくは800μg/L以下、より好ましくは600μg/L以下、さらに好ましくは550μg/L以下、さらに好ましくは500μg/L以下、さらに好ましくは400μg/L以下、さらに好ましくは300μg/L以下、さらに好ましくは250μg/L以下、さらに好ましくは200μg/L以下となるように調整すると、上記した酸味のとげとげしさ抑制効果や、味の厚みおよび丸み付与効果、みずみずしい味わいの付与効果などを高度に維持し、且つ香味全体のバランスも優れた飲料とすることができるため好適である。また、墨汁様の香味や苦味を感じることも抑制し易い。例えば、このフェンコールの含有量は、50μg/L以上550μg/L以下であって良い。
なお、限定されるものではないが、本発明の飲料では、酢酸ゲラニルの含有量に対するフェンコールの含有量の比率(フェンコール含有量/酢酸ゲラニル含有量、質量比)を0.01以上、さらには0.05以上、さらには0.1以上、さらには0.2以上、さらには0.3以上とし、その上限を50以下、さらには30以下、さらには20以下、さらには15以下、さらには10以下、さらには6以下、さらには5以下とすると、上記効果(特に味の厚みおよび丸み付与効果)がさらに発揮され易くなるため非常に好適である。
ここで、本発明の飲料における酢酸ゲラニルの含有量は、例えば、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME-GC-MS)法により測定することができる。
また、本発明の飲料におけるフェンコールの含有量は、例えば、ペンタンなどの溶媒で抽出し適宜濃縮したものをガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)によって測定することができる。
さらに、本発明の飲料は、その酸度が0.1g/100ml以上となっている。そして、この酸度は0.2g/100ml以上であっても良く、0.3g/100ml以上であっても良く、0.4g/100ml以上であっても良く、0.5g/100ml以上であっても良く、0.6g/100ml以上であっても良く、0.7g/100ml以上であっても良く、0.8g/100ml以上であっても良い。本発明の飲料は、このような酸度であっても前述した酢酸ゲラニルとフェンコールとの相乗効果によって酸味のとげとげしさが抑制されたものとなる。そして、この酸度の上限は2.0g/100ml以下であって良く、さらには1.5g/100ml以下であって良く、さらには1.2g/100ml以下であって良く、さらには1.0g/100ml以下であって良い。
ここで、この「酸度」とは、クエン酸酸度(クエン酸相当量として換算した酸度の値)であり、果実飲料の日本農林規格(平成28年2月24日農林水産省告示第489号)に定められた方法で求められる値である。具体的には、飲料を水酸化ナトリウム溶液(0.1mol/L)で中和滴定し、中和滴定において必要となった水酸化ナトリウム溶液の「滴定量(ml)」、滴定に使用した飲料の「体積(ml)」、「0.0064」(0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液1mLに相当するクエン酸の重量(g))という定数などを用いて算出すれば良い。
なお、本発明の飲料は、上記のような酸度とするために、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、グルコン酸、酒石酸、酢酸など)またはその塩を原料として使用することができる。また、これ以外に、有機酸または有機酸塩含有原料として、果実由来成分(果肉、果汁、果皮、これらのエキスや発酵液、浸漬液などから選ばれる1以上)や、果実を原料として使用して製造された酒類(醸造ワイン、果実酒、甘味果実酒等)などを使用することもできる。特に、クエン酸またはクエン酸塩を含有することにより上記酸度となっている飲料であると本発明の効果がより発揮され易いため非常に好適である。また、リンゴ酸またはリンゴ酸塩、あるいは酒石酸あるいは酒石酸塩を含有することにより上記酸度となっている飲料であっても同様に好ましい。
本発明の飲料に果汁を含有させる場合、果汁の使用率は、ストレート果汁に換算した果汁使用率として1w/w%以上、さらには3w/w%以上、さらには5w/w%以上、さらには7w/w%以上であって良い。また上限は、20w/w%以下、さらには15w/w%以下、さらには12w/w%以下、さらには10w/w%以下であって良い。ここで、本発明における果汁とは、果実を搾った搾汁、あるいは、その濃縮液、濃縮還元液、または希釈液であり、果肉や果皮などが含まれていても良い。また、ストレート果汁に換算した果汁使用率とは、飲料の総質量に対する、この飲料中に含まれる果汁をJAS(日本農林規格)に準じてストレート果汁に換算した質量の割合である。
しかしながら、本発明の飲料は、ストレート果汁に換算した果汁使用率が1w/w%未満、さらには0.5w/w%未満などの果汁を実質的に含まない飲料(無果汁飲料など)であっても、酸味のとげとげしさが抑制され且つ味の厚みおよび丸みが付与されて香味が好ましい飲料となることが特徴である。
そして、本発明の飲料は、柑橘果汁などの柑橘果実由来成分(例えば有機酸または有機酸塩を含む柑橘果実由来成分)を含有するのが好適である。本発明の構成によって柑橘果実由来の酸味を含む酸味のとげとげしさを抑制させ易く、同時に柑橘果実の香味を含めた味の厚みおよび丸みも付与、向上させ易いからである。また、本発明の飲料は、柑橘果実様フレーバーを含有するものであっても同様に好適である。つまり、本発明の飲料は、柑橘果実由来成分(果肉、果汁、果皮、これらのエキスや発酵液、浸漬液など)および/または柑橘果実様フレーバー(香料など)を含有し、柑橘果実の香味を有する柑橘果実テイスト飲料であるのが好ましい。この場合、アルコール飲料(柑橘果実テイストアルコール飲料)であっても良く、あるいはノンアルコール飲料(柑橘果実テイストノンアルコール飲料)であっても良いが、アルコール飲料あるいはアルコールテイストのノンアルコール飲料であるとより好適である。
さらに、本発明の飲料に果実を原料として使用して製造された酒類を含有させる場合(例えばアルコール飲料とする場合)、ワイン類を含有させるのが好適である。これも、本発明の構成によってワイン類由来の酸味を含む酸味のとげとげしさを抑制し易く、同時にワイン類の香味を含めた味の厚みおよび丸みも付与、向上させ易いからである。また、本発明の飲料は、ワイン様フレーバー(香料など)を含有するものであっても同様に好適である。そして、本発明の飲料はワインテイスト飲料であるのがより好ましい。
ここで、この「ワインテイスト飲料」とは、ワイン(ぶどうなどの果実または果汁を酵母によりアルコール発酵させて得られた醸造酒)のような味および香りを呈し、飲用の際にワインを飲用したような感覚を飲用者に与える飲料を意味する。この場合も、アルコール飲料(ワインテイストアルコール飲料)であっても良く、あるいはノンアルコール飲料(ワインテイストノンアルコール飲料)であっても良い。また、前述したような柑橘果実の香味を有するワインテイスト飲料であっても良い。
なお、ワイン類としては、酒税法により定義される果実酒、甘味果実酒、またはリキュールや、これらには属さないがワインのような味および香りを呈するアルコール飲料などが例示される。このワイン類としては、例えばブドウ果実を原料として製造されたもの(醸造ワインなど)を使用できるが、ブドウ以外の果実を原料として製造されたものを使用することも可能である。
ここで、上記した酒税法により定義される「果実酒」とは、果実または果実および水を原料としてアルコール発酵させることにより製造されるアルコール分が20v/v%未満の酒類、果実または果実および水に糖類を加えてアルコール発酵させることにより製造されるアルコール分が15v/v%未満の酒類、あるいはこれらに糖類を加えてアルコール発酵させることにより製造されるアルコール分が15v/v%未満の酒類であり、これらの酒類にブランデー等、糖類、香味料または水を加えたアルコール分が15v/v%未満の酒類も包含され、ワイン、シードル等が例示される。
また、上記した酒税法により定義される「甘味果実酒」とは、果実または果実および水に糖類を加えてアルコール発酵させることにより製造される酒類、あるいはこれに糖類を加えてアルコール発酵させることにより製造される酒類、あるいはこれらの酒類にブランデー等、糖類、香味料または水を加えた酒類のうち上記果実酒に包含されない酒類であり、これらの酒類や上記果実酒に植物を浸してその成分を浸出させたもの、薬剤を加えたもの、またはこれらにブランデー等、糖類、香味料、色素若しくは水を加えたものも包含され、ポートワイン、マディラワイン、シェリー、ベルモット、サングリア等が例示される。
さらに、上記した酒税法により定義される「リキュール」とは、酒類と糖類その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類でエキス分が二度以上のものである。
なお、本発明の飲料がアルコール飲料である場合には、本発明の効果がより発揮され易くなることから、そのエキス分が0.5w/v%以上であるのが好ましく、1.0w/v%以上であるのがより好ましい。なお、この上限は、20.0w/v%以下、さらには15.0w/v%以下、さらには12.0w/v%以下、さらには10.0w/v%以下、さらには8.0w/v%以下、さらには5.0w/v%以下であって良い。
ここで、「エキス分」とは、以下の式(3)により算出される値である。
(3)エキス分(w/v%)=(S-A)×260+0.21
この式(3)中、「S」はアルコール飲料の比重(15/4℃)であり、「A」はアルコール飲料のアルコール度数を比重(15/15℃)に換算して算出される値である。アルコール度数の比重(15/15℃)への換算は、日本国の国税庁所定分析法(訓令)の第2表「アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」に基づき行う。また、この式による計算の途中においては小数点以下5けた目を四捨五入し、最終的に得られるエキス分の値については小数点以下2けた目を切り捨てる。また、本発明のアルコール飲料の比重(15/4℃)は、振動式密度計を用いて15℃における密度を測定し、得られた密度の値を0.99997で除することにより算出される。
さらに、本発明の飲料は、甘味料を含有する飲料であると、本発明の効果がより発揮され易くなり、香味全体のバランスも好ましくなり易いため好適である。この甘味料には、糖類(グルコース、フルクトース、ガラクトース、ショ糖、マルトース、ラクトース、オリゴ糖、果糖ぶどう糖液糖、トレハロースなど)、糖アルコール(キシリトール、エリスリトールなど)、高甘味度甘味料(アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、ステビアなど)等が包含される。特に、本発明の飲料が糖類を含有する飲料であると、上記した効果がさらに発揮されやすい。
また、本発明の飲料は香料が含まれていても良い。香料は、食品の製造または加工の工程で、所定の香気を付与または増強するために添加される添加物であり、この香料の具体例としては、限定されるものではないが、前述したワイン様フレーバーや柑橘果実様フレーバーなどが好ましいものとして示される。なお、この香料は、前述した酢酸ゲラニルまたはフェンコールが含まれるものであっても良い。
さらに、本発明の飲料には、上記以外に、塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウムなど)、リン酸またはその塩、酒類、炭酸水、水(純水など)、着色料、調味料、酸化防止剤、乳化剤等を原料として任意に使用することができる。
そして、本発明の飲料は、20℃における炭酸ガス圧(スニフト有り)が0.05MPa未満である非発泡性飲料であっても良く、あるいは、20℃における炭酸ガス圧(スニフト有り)が0.05MPa以上である発泡性飲料(炭酸飲料)であっても良い。しかしながら、本発明の飲料をワインテイスト飲料とする場合には非発泡性飲料とするのが好ましい。なお、発泡性飲料とする場合の炭酸ガス圧は、0.10MPa以上、さらには0.15MPa以上であっても良い。そして、この炭酸ガス圧の上限は、0.50MPa以下、さらには0.45MPa以下、さらには0.40MPa以下であっても良い。また、この炭酸ガスは、原料として使用する炭酸水由来のものであっても良いし、カーボネーション(炭酸ガス圧入)工程により飲料に付与されたものであっても良い。そして、このカーボネーション工程は、バッチ式で行っても良いし、配管路に炭酸ガス圧入システム(カーボネーター)が組み込まれたインライン方式で連続的に行っても良い。また、このカーボネーション工程は、フォーミング(泡噴き)の発生等を避けるために、液の液温を10℃以下(好ましくは4℃以下)として行うのが好適である。
本発明の飲料の製造方法は、酸度を0.1g/100ml以上とする工程と、酢酸ゲラニルを10μg/L以上含有させる工程と、フェンコールを10μg/L以上1000μg/L以下含有させる工程と、を備えれば、他は飲料製造における常法にしたがえば良く、特段限定はされない。なお、これらの工程は、有機酸または有機酸塩(果汁や酒類などの有機酸または有機酸塩含有原料であっても良い)、ならびに、酢酸ゲラニルおよびフェンコール(香料、抽出エキス、果汁、酒類などの酢酸ゲラニルおよび/またはフェンコール含有原料であっても良い)を含有させる工程と、酸度や上記成分含有量を所定の範囲内に調整する工程と、を含み、これらが別の工程(連続した工程となっていない構成)であっても構わない。また、有機酸または有機酸塩、ならびに、酢酸ゲラニルおよびフェンコールを含有させる工程では、有機酸または有機酸塩、酢酸ゲラニル、およびフェンコールをいずれも含有する原料を用いても良い。例えば、ベースとなる純水や酒類(ベース酒)等に糖類、有機酸、酢酸ゲラニル、フェンコールなどを混合して酸度や含有量などを調整し、必要であればろ過、殺菌、均質化などを行って製品とする方法が例示される。なお、この「ベース酒」とは、アルコール飲料に含まれるアルコール分の80%以上の由来となっている原料酒類である。
また、これらの工程はさらに、前述したそれぞれのより好ましい範囲に含まれるように調整する工程等を含んでいても良い。
そして、本発明の飲料は、上記のようにして得られた製品が金属製容器(アルミ製容器、スチール製容器など)、ペットボトル容器、ガラス製容器、紙容器、樽容器などに充填された容器詰アルコール飲料とするのが好ましい。このような容器詰飲料とすることにより、香味などの経時劣化を抑制しやすいだけでなく、流通や販売などにおける利便性がより高まる。なお、本発明の飲料がアルコール飲料である場合には、栓を開けてそのまま飲める(希釈されずにそのまま飲用される)RTD飲料(Ready to drink飲料)であっても良く、あるいは氷や炭酸水などで割るRTS飲料(Ready to serve飲料)であっても良い。また、ペットボトル入りまたは瓶入りのワインテイストアルコール飲料であっても良い。
以上のような構成である本発明の飲料は、酸味のとげとげしさが抑制され、且つ味の厚みおよび丸みも付与され、香味全体としても優れたものとなる。さらに、みずみずしい味わいが付与された飲料とすることもできる。特に、柑橘果実テイスト飲料やワインテイスト飲料において上記効果がより発揮され易く、また、アルコール飲料やノンアルコールのアルコールテイスト飲料においても上記効果がより発揮され易い。
なお、本発明は、酸度が0.1g/100ml以上である飲料に酢酸ゲラニルを10μg/L以上およびフェンコールを10μg/L以上1000μg/L以下含有させることを特徴とする、飲料における酸味のとげとげしさがの抑制、ならびに味の厚みおよび丸み付与方法を提供するものであるとも言える。言い換えれば、この飲料の香味改善方法を提供するものであるとも言える。さらに、この飲料におけるみずみずしい味わいの付与方法をあわせて提供することも可能である。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
<アルコール飲料の調製および官能評価I>
ベース酒であるウォッカに液糖(果糖ぶどう糖液糖)、および酸味料(クエン酸、クエン酸三ナトリウム)を添加混合し、必要に応じて酢酸ゲラニルおよび/またはフェンコールを添加混合し、さらに純水を添加混合して、アルコール度数が5v/v%、酸度(クエン酸酸度)が0.70g/100ml、エキス分が1.2w/v%であり、酢酸ゲラニル含有量およびフェンコール含有量が下記表1上段に記載の量である非発泡性アルコール飲料サンプル(サンプル1~7)を調製した。
そして、得られた各サンプルにおける、酸味のとげとげしさ、墨汁様の香味、厚み・コク(味の厚み)、みずみずしい味わい(果実のようなみずみずしい味わい)、丸み・やわらかさ(味の丸み)、およびアルコール飲料としての総合評価について、訓練され官能的識別能力を備えた5名のパネリストにより、以下に示す評価基準を用いて各サンプルを官能評価した。
[酸味のとげとげしさの評価基準]
サンプル1における酸味のとげとげしさを5(非常に強く感じる)とし、このサンプル1との対比として、それぞれ、1(全く感じない)から5(非常に強く感じる:サンプル1と同等)の5段階により比較官能評価を行った。なお、この項目は点数が低いほど評価が高いものとなる。
[墨汁様の香味の評価基準]
サンプル1における墨汁様の香味を1(全く感じない)とし、このサンプル1との対比として、それぞれ、1(全く感じない:サンプル1と同等)から5(非常に強く感じる)の5段階により比較官能評価を行った。なお、この項目も点数が低いほど評価が高いものとなる。
[厚み・コク、みずみずしい味わい、および丸み・やわらかさの評価基準]
サンプル1における厚み・コク、みずみずしい味わい、および丸み・やわらかさをいずれも1(全く感じない)とし、このサンプル1との対比として、それぞれ、1(全く感じない:サンプル1と同等)から5(非常に強く感じる)の5段階により比較官能評価を行った。
[総合評価の評価基準]
香味全体として優れているという観点でのアルコール飲料の評価を、1(非常に悪い)から5(非常に良い)の5段階により絶対評価を行った。
この官能評価結果(5名のパネリストの評価平均値)を下記表1下段に示した。この結果、酸度が0.70g/100mlであって、酢酸ゲラニルおよびフェンコールをいずれも含まないサンプル1は、酸味のとげとげしさが非常に強く、味の厚み・コク、みずみずしい味わい、および味の丸み・やわらかさも全く感じられないものであった。また、同じ酸度で酢酸ゲラニルまたはフェンコールのいずれか一方を含むサンプル2および3も、酸味のとげとげしさは若干低減するものの味の厚み・コク、みずみずしい味わい、および味の丸み・やわらかさがほとんど感じられないものであった。これに対して、同じ酸度で酢酸ゲラニルを50μg/L、およびフェンコールを50μg/L以上含有するサンプル4~7は、酸味のとげとげしさが十分に抑制されており且つ味の厚み・コク、みずみずしい味わい、および味の丸み・やわらかさを感じられるアルコール飲料であった。特に、サンプル4~6は香味全体(飲料としての香味全体のバランス)もより優れたものであり、サンプル4はフェンコールによって感じられる場合がある墨汁様の香味もほとんど感じられない非常に好ましいものであった。
Figure 2023096509000003
<アルコール飲料の調製および官能評価II>
ベース酒であるウォッカに液糖(果糖ぶどう糖液糖)、酸味料(クエン酸、クエン酸三ナトリウム)、酢酸ゲラニル、およびフェンコールを添加混合し、さらに純水を添加混合して、アルコール度数が5v/v%、酸度(クエン酸酸度)が0.70g/100ml、エキス分が1.2w/v%であり、酢酸ゲラニル含有量およびフェンコール含有量が下記表2上段に記載の量である非発泡性アルコール飲料サンプル(サンプル8~10)を調製した。
そして、得られた各サンプルにおける酸味のとげとげしさ、墨汁様の香味、厚み・コク、みずみずしい味わい、丸み・やわらかさ、およびアルコール飲料としての総合評価について、上記Iと同じ方法および評価基準により官能評価を行った。
この官能評価結果(5名のパネリストの評価平均値)を下記表2下段に示した。この結果、酸度が0.70g/100mlであって、酢酸ゲラニルを100μg/L以上、およびフェンコールを100μg/L含有するサンプル8~10は、上記Iのサンプル5よりもさらに酸味のとげとげしさが抑制されており且つ味の厚み・コク、みずみずしい味わい、および味の丸み・やわらかさを十分に感じられるアルコール飲料であった。そして、これらは墨汁様の香味もほとんど感じられず、香味全体も非常に優れたものであった。
Figure 2023096509000004
<アルコール飲料の調製および官能評価III>
ベース酒であるワイン(ブドウ果実を発酵させて得られた醸造ワインにレモン果汁を添加したもの)に液糖(果糖ぶどう糖液糖)、酸味料(リンゴ酸)、レモン果実様フレーバー(酢酸ゲラニルおよびフェンコールを含有するフレーバー)を添加混合し、さらに純水を添加混合して、アルコール度数が9v/v%、酸度(クエン酸酸度、ベース酒由来のものも含む)が0.82g/100ml、エキス分が8.0w/v%、レモン果汁使用率が約12w/w%である非発泡性ワインテイストアルコール飲料サンプル(サンプル11)を調製した(下記表3上段)。なお、この「レモン果汁使用率(%)」は、アルコール飲料サンプルの総質量に対するストレート果汁換算でのレモン果汁の使用率である。
また、このサンプル11の酢酸ゲラニル含有量およびフェンコール含有量を次の方法により測定した。まず、測定サンプルをジクロロメタンまたはペンタンで抽出し、硫酸ナトリウムで適宜脱水、濃縮して測定用試料とした。そして、この測定用試料を、以下の条件によってGC/MSにより測定した。
(自動前処理装置条件)
前処理装置:MPS2,MPS Robotic PRO(GERSTEL)
ニードルペネトレート:25mm
(GC/MS測定条件)
注入口:スプリットレス、パージ流量 40mL/min(1min)
分析機器:6890N or 7890 GC,597x MSD(Agilent Technologies)
カラム:InertCap Pure-WAX 30m×0.25mm,0.25μm(GLサイエンス)
注入量:1μL
注入口:スプリットレスライーナー ウール入り
:スプリットレス、パージ流量 40mL/min(1min)
:250℃
流量:1mL/min
オーブン温度:40℃(3min)-5℃/min-250℃(5min)
AUX温度:250℃
MS検出器:SIM m/z 81,121,136
この結果、サンプル11の酢酸ゲラニル含有量は81μg/L、フェンコール含有量は84μg/Lであった(下記表3上段)。
そして、このサンプル11における酸味のとげとげしさ、墨汁様の香味、厚み・コク、みずみずしい味わい、丸み・やわらかさ、およびアルコール飲料としての総合評価について、上記Iと同じ方法および評価基準により官能評価を行った。
この官能評価結果(5名のパネリストの評価平均値)を下記表3下段に示した。この結果、酸度が0.82g/100mlであって、酢酸ゲラニルを81μg/L、およびフェンコールを84μg/L含有するワインテイストアルコール飲料であるサンプル11は、酸度がより高いにも関わらず酸味のとげとげしさが十分に抑制されており、且つ味の厚み・コク、みずみずしい味わい、および味の丸み・やわらかさも非常に感じられ、香味全体としても極めて優れたワインテイストアルコール飲料であった。
Figure 2023096509000005
なお、本実施例の非発泡性アルコール飲料に代えて、ベース酒のウォッカを純水に変更した以外は本実施例のサンプル4、5、8と同様にして非発泡性ノンアルコール飲料(アルコール度数0.000v/v%)を3種類調製し、訓練され官能的識別能力を備えた1名のパネリストにより、酸味のとげとげしさ、厚み・コク、および丸み・やわらかさについて本実施例と同様の官能評価を行った。この結果、いずれもアルコール飲料と同様の傾向であり、つまり酸味のとげとげしさが抑制され、且つ味の厚みおよび丸みが付与されたノンアルコール飲料となっていた。よって、ノンアルコール飲料の場合でも、本発明の効果が発揮されないといった現象は起きないと推察できた。

Claims (9)

  1. 酸度が0.1g/100ml以上であり、且つ酢酸ゲラニルおよびフェンコールを含有する飲料であって、
    前記酢酸ゲラニルの含有量が10μg/L以上であり、前記フェンコールの含有量が10μg/L以上1000μg/L以下である、飲料。
  2. 前記酢酸ゲラニルの含有量が50μg/L以上1000μg/L以下である、請求項1に記載の飲料。
  3. 前記フェンコールの含有量が50μg/L以上550μg/L以下である、請求項1または2に記載の飲料。
  4. 柑橘果実テイスト飲料である、請求項1~3のいずれか1項に記載の飲料。
  5. ワインテイスト飲料である、請求項1~4のいずれか1項に記載の飲料。
  6. アルコール度数が1v/v%以上20v/v%以下のアルコール飲料である、請求項1~5のいずれか1項に記載の飲料。
  7. 前記酸度が0.5g/100ml以上2.0g/100ml以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の飲料。
  8. 酸度を0.1g/100ml以上とする工程と、酢酸ゲラニルを10μg/L以上含有させる工程と、フェンコールを10μg/L以上1000μg/L以下含有させる工程と、を備える、飲料の製造方法。
  9. 酸度が0.1g/100ml以上である飲料に酢酸ゲラニルを10μg/L以上およびフェンコールを10μg/L以上1000μg/L以下含有させることを特徴とする、飲料における酸味のとげとげしさの抑制、ならびに味の厚みおよび丸み付与方法。
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