JP2023088871A - 塗工液、塗工層及び印刷用紙 - Google Patents

塗工液、塗工層及び印刷用紙 Download PDF

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明子 熊野谿
Akiko Kumanotani
凌 小林
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Abstract

【課題】インク密着性の長期安定性に優れ、紙粉が少ない塗工層を提供する。【解決手段】塗工液は、体積平均粒径が0.01~0.4μmの小径樹脂粒子のエマルジョンと、体積平均粒径が0.5~3.0μmの大径樹脂粒子のエマルジョンと、pH調整剤であって2価以上の弱酸と、エチレンイミン系樹脂と、を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、塗工液、塗工層及び印刷用紙に関する。
従来、ラベル、包装紙、ポスター、カレンダー、カタログ、又は広告等の印刷用紙として、樹脂フィルムが幅広く利用されている。樹脂フィルムは、耐水性及び耐久性に優れることから、特に屋外で使用する印刷用紙としての需要が高い。
印刷用紙は、各種印刷方式に対する印刷適性が求められる。印刷適性を高めるため、支持体の表面に、カチオン性ポリウレタン樹脂、エチレンイミン系樹脂等の樹脂層が設けられた印刷用紙が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。これらの樹脂は、インクとの密着性が高く、耐水性等にも優れた印刷物を提供することができる。
国際公開2014/087670号 国際公開2017/110599号 特開2021-154616号
上記樹脂層によって印刷適性が向上するものの、長期間保管した後に印刷すると保管前のような優れた印刷適性が得られないことがあった。このため、インク密着性の長期安定性及び紙粉の抑制の点等で改良の余地がある。
本発明は、インク密着性の長期安定性に優れ、紙粉が少ない塗工層の提供を目的とする。
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、粒径が異なる樹脂粒子を特定のpH調整剤と組み合わせれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]体積平均粒径が0.01~0.4μmの小径樹脂粒子のエマルジョンと、
体積平均粒径が0.5~3.0μmの大径樹脂粒子のエマルジョンと、
pH調整剤であって2価以上の弱酸と、
エチレンイミン系樹脂と、を含有する
塗工液。
[2]水溶性かつアミン系ポリマー型の帯電防止剤をさらに含有する
上記[1]に記載の塗工液。
[3]架橋剤をさらに含有する
上記[1]又は[2]に記載の塗工液。
[4]前記塗工液中の前記小径樹脂粒子の固形分量が、3質量%以上20質量%以下である
上記[1]~[3]のいずれかに記載の塗工液。
[5]前記塗工液中の前記大径樹脂粒子の固形分量が、前記小径樹脂粒子の固形分量に対し、0.3倍以上1倍未満である
上記[1]~[4]のいずれかに記載の塗工液。
[6]前記小径樹脂粒子が、(メタ)アクリル系樹脂である
上記[1]~[5]のいずれかに記載の塗工液。
[7]大径樹脂粒子が、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体である
上記[1]~[6]のいずれかに記載の塗工液。
[8]前記弱酸が、3価以上であって、pKaが2以上の酸である
上記[1]~[7]のいずれかに記載の塗工液。
[9]基材層上に塗工層を備える印刷用紙であって、
前記塗工層が、上記[1]~[8]のいずれかに記載の塗工液からなる
印刷用紙。
[10]直径が0.2~3.0μmの樹脂粒子を含む樹脂層と、
2価以上の弱酸由来の成分と、を含み、
電子顕微鏡により3000倍の拡大倍率で表面を観察したとき、30μm×30μmの領域内にある前記樹脂粒子の個数が100~1500個である
塗工層。
[11]基材層上に、上記[10]に記載の塗工層を備える印刷用紙。
本発明によれば、インク密着性の長期安定性に優れ、紙粉が少ない塗工層を提供することができる。
以下、本発明の塗工液、塗工層及び印刷用紙について詳細に説明する。以下の説明は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。
(塗工液)
本発明の塗工液は、体積平均粒径が0.01~0.4μmの小径樹脂粒子のエマルジョンを含有する。本発明の塗工液を用いて印刷用紙の基材層上に塗工層を形成したとき、小径樹脂粒子によって塗工膜が隙間無く均一に成膜されて基材層が露出する部分が無くなり、インクとの密着性が向上する。よって、印刷用紙に優れた印刷適性を付与することができる。また本発明の塗工液は、エチレンイミン系樹脂を含有する。エチレンイミン系樹脂は、塗工層においてバインダーとして機能し、印刷用紙の基材層に用いられる樹脂フィルムとの密着性も高いため、基材層からの塗工層の剥がれを抑えることができる。
本発明の塗工液はpH調整剤を含有し、小径樹脂粒子の分散性を高めている。本発明者らの検討により、pH調整剤として価数が2より小さい低級酸を使用すると、この低級酸とエチレンイミン系樹脂との反応生成物が徐々にブリードアウトし、インク密着性の長期安定性に影響することが判明した。そこで、本発明においては、pH調整剤として2価以上の弱酸を使用して、エチレンイミン系樹脂とpH調整剤との反応を低減することにより、インク密着性の長期安定性により優れた塗工層の形成を可能としている。本明細書において、インク密着性の長期安定性とは、未印刷の状態で印刷用紙を長期間保管した後も、印刷した際には長期間保管前と同等のインク密着性を維持できる特性を意味する。
さらに本発明の塗工液は、体積平均粒径が0.5~3.0μmの大径樹脂粒子を含むエマルジョンを含有することにより、塗工層に適度な表面粗さを付与する。これにより、投錨効果が生じ、塗工層とインクとの密着性がさらに向上するため、インク密着性の長期安定性をより高めることができる。
以下、塗工液中の各材料について説明する。
<小径樹脂粒子のエマルジョン>
本発明において、小径樹脂粒子のエマルジョン成分は、上述のように印刷適性を高めるアンカー剤として機能する。また、塗工後の乾燥条件によって小径樹脂粒子が結合して連続層が形成され、このような連続層を海、大径樹脂粒子を島とする海島構造を有する塗工層が形成される。連続層は大径樹脂粒子間に均一に隙間なく成膜されるため、大径樹脂粒子の脱落を抑えて紙粉の発生を減らすことが可能である。
小径樹脂粒子として使用できる樹脂の種類としては、極性基を有する樹脂が各種インクと高い密着力を発揮するため、好ましく、なかでも極性基を有するオレフィン系樹脂又はウレタン系樹脂がより好ましく、極性基を有するオレフィン系樹脂がさらに好ましい。
<<極性基を有するオレフィン系樹脂>>
極性基を有するオレフィン系樹脂の小径樹脂粒子は、極性基によってインクのアンカー剤として機能するだけでなく、オフセット印刷方式においては、非エマルジョン系の塗工層と比べて水分に強く水負けを抑制する効果もあり、印刷適性が向上すると推測される。一方、溶融熱転写印刷方式又は電子写真印刷方式等の加熱を利用する印刷方式においては、印刷時に塗工層中のオレフィン系樹脂粒子が一部溶融して、溶融熱転写インク又はトナーと相溶することにより、溶融熱転写インク又はトナーが固定され、印刷適性が向上すると推測される。
極性基を有するオレフィン系樹脂としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリエチレンの各種共重合体、(メタ)アクリル酸グラフトポリプロピレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、又は無水マレイン酸グラフトポリプロピレンの各種共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸共重合体としては、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアルカリ(土類)金属塩等が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
なかでも、インクとの密着性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましく、共重合体の構成要素としてエチレン骨格を有さない(メタ)アクリル酸エステル共重合体がさらに好ましい。
上記オレフィン系樹脂を水中に分散させてエマルジョンとするための分散剤としては、非イオン性界面活性剤、非イオン性水溶性高分子、カチオン性界面活性剤及びカチオン性水溶性高分子からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
<<ウレタン系樹脂>>
小径樹脂粒子として使用できるウレタン系樹脂は、カチオン性のウレタン系樹脂であってよい。カチオン性のウレタン系樹脂は、ポリウレタン骨格にカチオン性基を導入した共重合体である。当該共重合体は、例えば、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られる3級アミノ基含有ポリオールをポリイソシアネートと反応してウレタン樹脂を得て、当該ウレタン樹脂をジメチル硫酸のような4級化剤で4級化することにより得られる。
<<体積平均粒径>>
小径樹脂粒子の体積平均粒径は、0.01μm以上0.4μm以下である。上記体積平均粒径は、乳化剤の使用量を減らし、コスト増又は乳化剤による熱劣化を減らす観点、又はエマルジョンの調製を容易とし乳化状態を維持しやすくする観点からは、好ましくは0.05μm以上であり、さらに好ましくは0.2μm以上である。均一に隙間なく成膜する観点からは、上記体積平均粒径は、好ましくは0.3μm以下である。
小径樹脂粒子及び大径樹脂粒子の体積平均粒径は、例えばレーザ回折式粒子計測装置マイクロトラック(マイクロトラック社製)による累積で50%にあたる粒子径の測定、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による一次粒径(例えば粒子100個の平均値)の観察、粉体比表面積測定装置SS-100(島津製作所製)等により測定された比表面積からの換算等によって、求めることができる。
<<固形分量>>
塗工液中の小径樹脂粒子の固形分量は、3質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましい。一方、上記固形分量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。上記固形分量が上記下限値以上であれば、印刷適性が向上する傾向がある。また上記固形分量が上記上限値以下であれば、高すぎる平滑性によって濡れ性が低下し、インク密着性の長期安定性が低下することを抑えやすい。また、塗工層(乾燥後)中の小径樹脂粒子の割合(塗工液中の全固形分量に対する割合)は、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。一方、上記割合は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
<<造膜温度>>
小径樹脂粒子のエマルジョンは、その造膜温度が20℃以下であることが好ましく、5℃以下であることがより好ましい。この範囲内とすることで、一般的な製造条件下で、隙間の無い均一な塗工層を形成しやすくなる。上記造膜温度の下限は特にないが、通常は-20℃以上である。
<大径樹脂粒子のエマルジョン>
本発明において、大径樹脂粒子は塗工層の表面に適度な粗さを付与し、濡れ性の低下を抑えてインク密着性の長期安定性を向上させることができる。また、大径樹脂粒子のエマルジョン成分も小径樹脂粒子と同様にインクとの密着性を有し、アンカー剤として機能し得る。
使用できる大径樹脂粒子の樹脂の種類としては、上述した小径樹脂粒子の樹脂と同様の樹脂が挙げられる。なかでも、印刷適性の観点から、極性基を有するオレフィン系樹脂が好ましく、(メタ)アクリル系樹脂がより好ましく、(メタ)アクリル酸共重合体又は(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましく、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体がさらに好ましく、エチレン-メタクリル酸共重合体が特に好ましい。
<<体積平均粒径>>
大径樹脂粒子の体積平均粒径は、0.5μm以上3.0μm以下である。粗面化の観点から、上記体積平均粒径は、0.8μm以上がより好ましい。塗工層からの脱落を抑える観点からは、上記体積平均粒径は、2.0μm以下がより好ましく、1.2μm以下がさらに好ましい。
<<固形分量>>
塗工液中の大径樹脂粒子の固形分量は、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましい。一方、上記固形分量は、15質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。上記固形分量が上記下限値以上であれば、インク密着性の長期安定性が向上する傾向がある。上記固形分量が上記上限値以下であれば、紙粉が減る傾向がある。また、塗工層(乾燥後)中の大径樹脂粒子の割合(塗工液中の全固形分量に対する割合)は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。一方、上記割合は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。
また、塗工液中の大径樹脂粒子の固形分量は、小径樹脂粒子の固形分量に対し、0.3倍以上が好ましく、0.5倍以上がより好ましい一方、1倍未満が好ましく、0.8倍以下がより好ましい。上記固形分量が上記下限値以上であれば、インク密着性の長期安定性が向上する傾向がある。上記固形分量が上記上限値以下であれば、紙粉が減る傾向がある。
<<造膜温度>>
大径樹脂粒子のエマルジョンは、その造膜温度が40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがより好ましい。この範囲内とすることで、塗工層形成後に大径樹脂粒子由来の凹凸を保持しやすくなる。上記造膜温度の上限は特にないが、通常は200℃以下である。
<エチレンイミン系樹脂>
エチレンイミン系樹脂は、印刷用紙の基材層に用いられる樹脂フィルムとの親和性が高く、基材層と塗工層の接着剤として機能し得る。エチレンイミン系樹脂は各種インクとの親和性も高く、印刷適性の向上も可能である。一般的に剥がれが発生しやすいオフセット印刷用紫外線硬化型インク又は滲みが発生しやすい紫外線硬化型インクジェット印刷用インクに対しても、優れた印刷適性が得られやすい。
エチレンイミン系樹脂としては、例えばポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン-尿素)、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、これらの各種変性体又は水酸化物等が挙げられ、中でもブチル変性ポリエチレンイミンが好ましい。これらのうち、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
<<固形分量>>
塗工液中のエチレンイミン系樹脂の固形分量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。各種の印刷方式において高い印刷品質又は印刷物の耐水密着性が得られる。また、塗工層(乾燥後)中のエチレンイミン系樹脂の割合(塗工液中の全固形分量に対する割合)は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。一方、上記割合は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
<架橋剤>
本発明の塗工液は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。塗工後に架橋剤によりエチレンイミン系樹脂を架橋反応させることにより、塗工層の耐水性を高めることができる。
架橋剤としては、エチレンイミン系樹脂と反応して架橋する化合物が好ましい。また塗工液は水溶液又は水分散液であると工程管理がしやすいため、架橋剤は水溶性であることが好ましい。塗工層の柔軟性の観点からは、架橋剤が2官能の化合物であるか、又はポリマー系の化合物であることが好ましい。一方、塗工層の耐水密着性又は耐摩耗性の観点からは、架橋剤が3官能以上の低分子物質であることが好ましい。架橋剤として2官能の化合物と3官能以上の化合物とを併用してもよい。
架橋剤としては、例えばエポキシ系、イソシアネート系、ホルマリン系、又はオキサゾリン系の樹脂が挙げられる。なかでも、エポキシ系樹脂が好ましく、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン樹脂、ビスフェノールA-エピクロルヒドリン樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、脂環式エポキシ樹脂又は臭素化エポキシ樹脂がより好ましく、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物、単官能又は多官能のグリシジルエーテル又はグリシジルエステル類がさらに好ましい。ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物は多官能でありながら柔軟性の高い塗工膜が得られ、かつ水溶性であることから特に好ましい。
塗工液中の架橋剤の固形分量は、エチレンイミン系樹脂の100質量部に対し、100質量部以上が好ましく、120質量部以上がより好ましい一方、200質量部以下が好ましく、160質量部以下がより好ましい。
<pH調整剤>
本発明の塗工液に用いられるpH調整剤は、2価以上の弱酸である。本発明に用いられる小径樹脂粒子又は大径樹脂粒子のエマルジョンは、乾燥後の耐水密着性が高くなるように設計され、かつ平均粒径が比較的小さいエマルジョンであることから、塗工液中では凝集しやすい性質を有する。本発明においては、弱酸によって、小径樹脂粒子又は大径樹脂粒子の表面電位(ゼータ電位とも呼ばれる)を調整することにより、各樹脂粒子の分散性を高めることができる。特に、エチレンイミン系樹脂との混合時に樹脂粒子の凝集が起こりにくくなり、凝集及び増粘がしにくい塗工液が得られる。塗工が容易になり、異物が少なく、スジが少ない塗工層を形成することができる。
pH調整剤として使用する弱酸は、pKaが2以上が好ましく、2.5以上がより好ましい。また、酸であるため通常上限は6以下であり、pH調整のしやすさの観点からは5以下が好ましい。2以上のpKaをとる酸は、すべてのpKaが上記の範囲内にあることが好ましい。
pH調整剤を含有する塗工液のpHは、樹脂粒子の凝集を抑える観点からは、7.2以下が好ましく、6.0以下がより好ましく、5.5以下がさらに好ましい一方、通常は3.0以上であり、4.0以上がより好ましく、4.5以上がさらに好ましい。
1価の酸は、長期間経過するとエチレンイミン系樹脂との反応生成物が塗工層表面に移動してインクとの密着性が低下することがある。本発明においては、エチレンイミン系樹脂と反応しにくい2価以上の弱酸をpH調整剤として使用することにより、インク密着性の長期安定性を高めることができる。
2価以上の弱酸としては、例えば炭素数3~12の2価以上の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、又はリン酸類等が挙げられる。なかでも、3価以上の脂肪族カルボン酸、又はオルトリン酸が好ましく、3価以上の脂肪族カルボン酸がより好ましく、クエン酸がさらに好ましい。
<<固形分量>>
塗工層中のpH調整剤は、樹脂粒子の凝集を抑える観点から目的のpHとなるように添加することができる。目安としては、塗工層中のpH調整剤の固形分量は、微小樹脂粒子と大径樹脂粒子の固形分量100質量部に対し、0.01質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、5質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
<帯電防止剤>
本発明の塗工液は、帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤は、塗工層が設けられた媒体への埃の付着又は印刷時の静電気によるトラブルを軽減することができる。塗工層が形成された印刷用紙を重ねたときにも静電気が生じにくいため、ブロッキング又は帯電による印刷時のトラブルが少ない印刷用紙を提供することができる。
本発明において、帯電防止剤は無機系であってもよいし、有機系であってもよい。水系媒体の塗工液を調製する観点からは、帯電防止剤は水溶性であることが好ましい。上述したエチレンイミン系樹脂と酸との反応生成物がインク密着性の長期安定性に及ぼす影響は、水溶性の有機系帯電防止剤を使用する場合においてより顕著になる傾向があることから、そのような反応が進みにくい2価以上の弱酸をpH調整剤として使用する本発明は、水溶性の有機系帯電防止剤を含有する塗工液において特に効果的である。
有機系帯電防止剤としては、長期保存下において塗工層表面に浸み出してインク密着性の低下を招きにくいポリマー型帯電防止剤が好ましく挙げられる。帯電防止剤としてはカチオン型、アニオン型、両性型又はノニオン型を使用可能であるが、上記樹脂粒子のエマルジョン及びエチレンイミン系樹脂と混合しても凝集を起こしにくいことから、カチオン型又はノニオン型が好ましく、少量の添加で高い帯電防止性が得られるカチオン型がさらに好ましい。
カチオン型としては、アンモニウム塩構造又はホスホニウム塩構造を有するアミン系帯電防止剤が挙げられる。ノニオン型としては、アルキレンオキシド構造を有するエチレンオキシド重合体、又はエチレンオキシド重合成分を分子鎖中に有する重合体等が挙げられる。その他、ホウ素を分子構造中に有するポリマー型帯電防止剤も例として挙げることができる。これらのなかでも、水溶性であり、かつカチオン性であるアミン系ポリマー型の帯電防止剤が好ましく、第3級窒素又は第4級窒素を含有するアミン系アクリル系樹脂がより好ましい。
塗工層中の帯電防止剤の固形分量は、帯電によるトラブル低減の観点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。ブリードアウトの抑制等の観点からは、上記帯電防止剤の固形分量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
<その他の成分>
本発明の塗工液は、塗工適性又は印刷適性を向上するため、必要に応じて、消泡剤等の助剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
<溶媒と固形分濃度>
塗工液の溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、又はキシレン等を使用できる。工程管理の容易性の観点からは、溶媒は、水、水と相溶するアルコール類又はケトン類等の水系媒体が好ましい。
塗工液中のエマルジョンに由来する固形分濃度は、印刷適性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上記エマルジョンに由来する固形分濃度は、ベタツキ等を減らす観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、12質量%以下がさらに好ましい。
塗工液中の固形分濃度は、印刷適性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、13質量%以上がさらに好ましい。上記固形分濃度は、ベタツキ等を減らす観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
(塗工層)
本発明の塗工層は、直径が0.2~3.0μmの樹脂粒子を含む樹脂層と、2価以上の弱酸由来の成分と、を含む。
本発明の塗工層は、上述した塗工液を印刷用紙の基材層のような媒体上に塗工し、その塗工膜を乾燥することによって得られる。このようにして形成された塗工層は、小径樹脂粒子のエマルジョン成分を海、大径樹脂粒子を島とする海島構造を有する。乾燥時の熱により、エマルジョン中の溶媒成分が揮発し、小径樹脂粒子が溶融結合して連続層が形成され、大径樹脂粒子は一部溶融するかもしれないが、上記直径を有する樹脂粒子として連続層中に残ると推察される。
本発明の塗工層の表面を走査型電子顕微鏡により3000倍の拡大倍率で観察したとき、30μm×30μmの領域内にある上記樹脂粒子の個数は100~1500個である。このような樹脂粒子により、塗工層表面に凹凸が形成されるため、連続層の高すぎる平滑性による濡れ性の低下が抑えられ、ひいてはインク密着性の長期安定性が高まる。上記粒子の個数は、濡れ性の低下を抑制してインク密着性やその長期安定性を高める観点からは、300個以上が好ましく、500以上がより好ましく、紙粉を抑える観点からは、1000個以下が好ましく、800個以下がより好ましい。
<固形分>
塗工層の固形分量は、紫外線硬化型インクとの密着性の観点から、0.01g/m以上であることが好ましく、0.1g/m以上がより好ましい。塗工層の凝集破壊による密着力の発生抑制又はコストの観点からは、塗工層の固形分量は、3g/m以下が好ましく、1g/m以下がより好ましく、0.5g/m以下がさらに好ましい。本明細書における樹脂層の固形分は、片面当たりの固形分量であって、乾燥後の固形分量を意味する。
塗工には、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター等の一般的な塗工装置を使用することができる。
(印刷用紙)
本発明の印刷用紙は、基材層上に上記塗工液からなる塗工層を備える。当該塗工層は、上述のように小径樹脂粒子によって形成された樹脂層を含み、当該樹脂層中に直径が0.2~3.0μmの樹脂粒子及び2価以上の弱酸由来の成分を含む。塗工層はインクとの密着性が高く印刷適性に優れるだけでなく、印刷用紙が未印刷のまま長期間保管された後に印刷したとしてもその高い密着性を発揮できるため、インク密着性の長期安定性にも優れた印刷用紙を提供することができる。塗工層は、基材層の一方の面に設けられてもよいが、帯電防止性能の観点から両面に設けられていてもよい。
<基材層>
基材層は、印刷用紙にコシ又は剛度を付与し、印刷時の搬送性等を高めることができる。基材層としては特に限定されないが、印刷用紙の耐水性又は耐久性を高める観点からは、熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。
基材層に使用できる熱可塑性樹脂としては、例えばプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖線状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のアミド系樹脂等が挙げられる。機械的強度の観点からは、オレフィン系樹脂が好ましく、プロピレン系樹脂がより好ましい。
上記熱可塑性樹脂フィルムは、フィラーを含有することができる。フィラーを含有するフィルムを延伸することにより、フィラーを核とする空孔が形成されやすく、印刷用紙の白色度又は不透明度を調整しやすくなる。フィラーとしては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、又は酸化チタン等の無機フィラー、又は有機フィラーが挙げられる。白色度又はコストの観点からは重質炭酸カルシウムが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、又は紫外線吸収剤等の公知の添加剤を任意に含むことができる。
基材層は、単層構造であってもよいが、各層に特有の性質を付与できることから、多層構造であることが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂フィルムを表面層/コア層/表面層の3層構造とし、コア層にて印刷用紙に好適な剛度又は白色度等を付与することができる。2つの表面層は同質であっても異質であってもよい。例えば、一方の表面層を本発明の塗工液に適した層とし、他方の表面層は粘着剤層の形成に適した層とすることで、ラベル用紙として好適な印刷用紙を得ることができる。
基材層である熱可塑性樹脂フィルムは、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等を用いて、フィルム状に成形することができる。熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することにより、熱可塑性樹脂フィルムを成形してもよい。
多層構造の熱可塑性樹脂フィルムの成形方法としては、例えばフィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等が挙げられ、各方法を組み合わせることもできる。
熱可塑性樹脂フィルムは、無延伸フィルムであってもよいが、多孔質化又はフィルムの機械的強度の観点からは、少なくとも1層が延伸フィルムであることが好ましい。
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
基材層は、塗工層との密着性を高める観点から、表面処理が施されて表面が活性化していることが好ましい。
表面処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
<印刷>
本発明の印刷用紙において、塗工層への印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット方式、溶融熱転写方式、感圧転写方式、又は電子写真方式等の種々の印刷方式を用いることが可能である。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
表1及び表2は、実施例及び比較例に使用した材料の一覧である。
Figure 2023088871000001
Figure 2023088871000002
(基材層シートの製造)
プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY-4、日本ポリプロ社製)70質量%、高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ360、日本ポリエチレン社製)10質量%と、炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)20質量%よりなる樹脂組成物(a)を調製した。この樹脂組成物(a)を押出機を用いて260℃で溶融混練し、ダイより押し出してフィルム成形した。50℃までフィルムを冷却した後、140℃に再度加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸して、コア層となる一軸延伸フィルムを得た。
一方、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY-4)50質量%、高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ360)5質量%と、炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1800)45質量%よりなる樹脂組成物(b)を調製した。この樹脂組成物(b)を別の2台の押出機を用いて250℃で溶融混練し、上記一軸延伸フィルムの両面にそれぞれダイより押し出してフィルム成形して積層し、樹脂組成物(a)からなるコア層の両面に樹脂組成物(b)からなる表面層が積層された積層体(b/a/b)を得た。
得られた積層体をテンターオーブンに導き、155℃に加熱した後、テンターを用いて横方向に8倍延伸した。164℃で熱セット(アニーリング)し、55℃まで冷却した後、耳部をスリットし、基材層のシートを得た。得られた基材層のシートは、表面層/コア層/表面層の3層構造を有し、全厚80μm、各層厚み(20μm/40μm/20μm)であった。
(塗工液の製造)
<塗工液(A1)>
小径樹脂粒子のエマルジョンとして、カチオン性アクリル系樹脂粒子のエマルジョン(商品名:ボンコートSF571、DIC社製)を7.8質量部(固形分量)と、大径樹脂粒子のエマルジョンとしてメタクリル酸共重合体樹脂粒子のエマルジョン(商品名:アクアテックスAC3100、ジャパンコーティングレジン社製)を5.2質量部(固形分量)と、バインダーとしてブチル化ポリエチレンイミン(商品名:サフトマーAC72、三菱ケミカル社製)を0.4質量部(固形分量)と、エポキシ系架橋剤(商品名:WS4082、星光PMC社製)を0.6質量部(固形分量)と、有機系のカチオン性帯電防止剤として水溶性アミン系帯電防止剤(商品名:サフトマーST3200、三菱ケミカル社製)を0.6質量部(固形分量)と、を混合した。さらに、pH調整剤としてクエン酸(市販品)を0.1質量部と、水とを混合して、混合液のpHを5.0に調整し、塗工液(A1)を得た。
<塗工液(A2)>
小径樹脂粒子のエマルジョンを、カチオン性アクリル系樹脂粒子のエマルジョン(商品名:ボンコートV08、DIC社製)の7.8質量部(固形分量)に変更した以外は、塗工液(A1)と同様にして塗工液(A2)を調製した。
<塗工液(A3)>
小径樹脂粒子のエマルジョンを、カチオン性ウレタン系樹脂粒子のエマルジョン(商品名:ハイドランCP7050、DIC社製)の7.8質量部(固形分量)に変更した以外は、塗工液(A1)と同様にして塗工液(A3)を調製した。
<塗工液(B1)>
pH調整剤を、酢酸(市販品)0.1質量部に変更した以外は、塗工液(A3)と同様にして塗工液(B1)を調製した。
<塗工液(B2)>
大径樹脂粒子のエマルジョンを添加せずに、小径樹脂粒子のエマルジョンであるカチオン性ウレタン系樹脂粒子のエマルジョン(商品名:ハイドランCP7050)の配合量を13.0質量部(固形分量)に変更した以外は、塗工液(A3)と同様にして塗工液(B2)を調製した。
<塗工液(B3)>
大径樹脂粒子のエマルジョンを添加せずに、小径樹脂粒子のエマルジョンであるカチオン性アクリル系樹脂粒子のエマルジョン(商品名:ボンコートV08)の配合量を13.0質量部(固形分量)に変更した以外は、塗工液(A2)と同様にして塗工液(B3)を調製した。
<塗工液(B4)>
微小性樹脂粒子のエマルジョンを添加せずに、大径樹脂粒子のエマルジョンであるメタクリル酸共重合体樹脂粒子のエマルジョン(商品名:アクアテックスAC3300)の配合量を13.0質量部(固形分量)に変更した以外は、塗工液(A1)と同様にして塗工液(B4)を調製した。
(実施例1)
上記基材層のシートの一方の表面に、コロナ放電処理装置(商品名:HF400F、春日電気社製)、長さ0.8mのアルミニウム製放電電極及びトリーターロールにシリコーン被膜ロールを用い、放電電極とトリーターロールとのギャップを5mmとし、ライン処理速度15m/分、印加エネルギー密度4,200J/mにてコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理された表面に、上記塗工液(A1)を乾燥後の単位面積(m)当たりの固形分量が0.5g/mとなるようにバーコーターを用いて塗工した。次いで、60℃のオーブンにより乾燥して塗工層を形成し、ロール状に巻き取って、実施例1の印刷用紙を得た。
(実施例2~7)
塗工液(A1)を各塗工液(A2)、(A3)、(B1)~(B4)に変更した以外は、実施例1と同様にして各実施例2~7の印刷用紙を得た。
(評価)
各実施例及び比較例の印刷用紙について、下記測定及び評価を行った。
<塗工層表面の樹脂粒子数>
SEMにより塗工層の表面を3000倍の倍率で観察した。30μm×30μmの観察領域において、0.2~3.0μmの直径を有する樹脂粒子の数を数えた。
<インク転移性>
実施例及び比較例の各印刷用紙を、A3サイズに断裁した後、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で1日間調湿した。その後、印刷用紙の塗工層上にインク量2.0g/mでベタ印刷を実施した。印刷にはフレキソ印刷機(機器名:FC11B、エムティーテック社製)とUVフレキソ用インク(製品名:フレキソ500、T&K TOKA社製)を用いた。次いで、UV照射機を用いて、照射強度が100mJ/cmになるようにUV照射を実施し、サンプル1を得た。
サンプル1の目視観察を行い、印刷の均一性からインク転移性を下記の基準で評価した。
A:インク濃淡が認められない(合格)
B:インク濃淡がわずかに認められる(合格)
C:インク濃淡が認められる(不可)
<インク密着性(加湿促進処理前)>
上記サンプル1の印刷画像上に18mmのセロハンテープ(株式会社ニチバン製、製品名:CT-18)を貼り、指で密着させた。その後、180度の剥離角度及び50m/minの剥離速度によりテープを剥離した。剥離後のインクの剥がれを観察し、加湿促進処理前のインク密着性を下記の基準で評価した。
A:インクの剥がれなし(合格)
B:インクの剥がれが僅かにみられる(合格)
C:インクの剥がれが多くみられる(不可)
<インク密着性(加湿促進処理後)>
実施例及び比較例の各印刷用紙をA3サイズに断裁した後、インク密着性の長期安定性を確認するために、結露サイクル試験機を用いて加湿促進処理を施した。加湿促進処理は、「温度5℃かつ相対湿度40%RHの環境下で0.5時間静置した後に、温度40℃かつ相対湿度80%RHの環境下で2時間静置する処理」を1サイクルとして、当該処理を20サイクル繰り返す処理である。この加湿促進処理により長期間保管した後の状態を再現している。その後、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で1日間調湿した。次いで、インク転移性と同様にして印刷及びUV照射を行って、サンプル2を得た。サンプル2に対して、加湿促進処理前と同様にして、加湿促進処理後のインク密着性を評価した。
<紙粉>
実施例及び比較例の各印刷用紙を、A3サイズに断裁した。この断裁した印刷用紙2000枚に、UVオフセット印刷用インク(製品名:BC161、T&K TOKA社製)を用いて印刷を施した。印刷後にブランケットに付着している紙粉を目視で確認し、下記評価基準に従い評価した。
A:紙粉の付着がない(合格)
B:紙粉が僅かに付着している(合格)
C:紙粉が多数付着している(不可)
<溶融熱転写(TTR)の印刷適性>
実施例1~3の各印刷用紙について溶融熱転写(TTR)の印刷適性を評価した。まず印刷用紙の塗工層上にCODE39バーコードを印刷した。印刷は、バーコードプリンター(商品名:ZT620、Zebra社製) と溶融型樹脂性インクリボン(商品名:TR4070、大日本印刷株式会社製)とを用いて、バーコードプリンターの印字濃度エネルギーを初期値として24に設定して、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下で実施した。次いで、バーコード検証機(商品名:LASERCHEKII、富士電機冷凍機株式会社社製)を用いて、印刷用紙上のバーコードのANSIグレードを測定した。
その測定結果がNo Decode(バーコード読み取り不能)でなければ、印字濃度エネルギーを1下げて同様の印刷およびバーコード検証を実行し、測定結果がNo Decodeとなるまで印字濃度エネルギーを下げ続けた。No Decodeとなった印字濃度エネルギーに1を足した値を、印刷可能な印字濃度エネルギーの下限値とし、下記評価基準にしたがって溶融熱転写の印刷適性を評価した。
A:印字濃度エネルギーの下限値が17であり、かつ、ANSIグレードがC以上
B:印字濃度エネルギーの下限値が17であり、かつ、ANSIグレードがD以上
C:印字濃度エネルギーの下限値が18以上
表3は、各実施例及び比較例の塗工層の組成及び評価結果を示す。
Figure 2023088871000003
表3に示すように、実施例1~3は、紙粉が少なく、インクの転移性及び密着性に優れ、溶融熱転写の印刷適性も高い。加熱促進処理前の高いインク密着性が加熱促進処理後も維持されており、インク密着性の長期安定性にも優れている。一方、弱酸でも価数が1であるpH調整剤を用いた比較例1は、インクの転移性や加熱促進処理前のインク密着性は良好であるものの、加熱促進処理後は低下しており、インク密着性の長期安定性が得られていない。また大径樹脂粒子がない比較例2及び3もインク密着性の長期安定性が得られていない。逆に小径樹脂粒子がなく、大径樹脂粒子のみの比較例4は、インク密着性の長期安定性は得られるが、紙粉が発生している。

Claims (11)

  1. 体積平均粒径が0.01~0.4μmの小径樹脂粒子のエマルジョンと、
    体積平均粒径が0.5~3.0μmの大径樹脂粒子のエマルジョンと、
    pH調整剤であって2価以上の弱酸と、
    エチレンイミン系樹脂と、を含有する
    塗工液。
  2. 水溶性かつアミン系ポリマー型の帯電防止剤をさらに含有する
    請求項1に記載の塗工液。
  3. 架橋剤をさらに含有する
    請求項1又は2に記載の塗工液。
  4. 前記塗工液中の前記小径樹脂粒子の固形分量が、3質量%以上20質量%以下である
    請求項1~3のいずれか一項に記載の塗工液。
  5. 前記塗工液中の前記大径樹脂粒子の固形分量が、前記小径樹脂粒子の固形分量に対し、0.3倍以上1倍未満である
    請求項1~4のいずれか一項に記載の塗工液。
  6. 前記小径樹脂粒子が、(メタ)アクリル系樹脂である
    請求項1~5のいずれか一項に記載の塗工液。
  7. 前記大径樹脂粒子が、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体である
    請求項1~6のいずれか一項に記載の塗工液。
  8. 前記弱酸が、3価以上であって、pKaが2以上の酸である
    請求項1~7のいずれか一項に記載の塗工液。
  9. 基材層上に塗工層を備える印刷用紙であって、
    前記塗工層が、請求項1~8のいずれか一項に記載の塗工液からなる
    印刷用紙。
  10. 直径が0.2~3.0μmの樹脂粒子を含む樹脂層と、
    2価以上の弱酸由来の成分と、を含み、
    電子顕微鏡により3000倍の拡大倍率で表面を観察したとき、30μm×30μmの領域内にある前記樹脂粒子の個数が100~1500個である
    塗工層。
  11. 基材層上に、請求項10に記載の塗工層を備える印刷用紙。

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