JP2023086585A - 弁開閉時期制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】減速機構の内歯と外歯との噛み合わせるためのバネ体が破断した場合でも、作動不能に陥ることない弁開閉時期制御装置を提供する。【解決手段】弁開閉時期制御装置は、駆動側回転体と、従動側回転体と、位相調節機構と、を備えている。位相調節機構が、内歯型の出力ギヤ25と、外歯型の入力ギヤ30と、出力ギヤ25と入力ギヤ30とを噛合させる偏心部材26と、を備えている。偏心部材26は、偏心支持面26Eに形成された凹状部70に対し、出力ギヤ25の歯部25Aに入力ギヤ30の歯部を噛み合わせる付勢力を作用させるバネ部材71が嵌め込まれ、径方向視で凹状部70に重複する固定リング31を備え、固定リング31が、凹状部70に嵌まり込む規制部31Rを有している。【選択図】図6

Description

本発明は、弁開閉時期制御装置に関する。
例えば、内燃機関の吸気バルブの開閉時期(バルブタイミング)を設定する弁開閉時期制御装置として、特許文献1には、内歯型の出力ギヤを、回転軸芯を中心に配置し、この出力ギヤの歯数より少ない歯数の外歯型の入力ギヤを前述した回転軸芯に対して偏心する偏心軸を中心に配置し、入力ギヤの外歯部を、出力ギヤの内歯部に噛み合わせる偏心部材を備え、偏心部材を駆動回転するモータを備えた構成が記載されている。
この特許文献1の弁開閉時期制御装置では、前述したギヤ構成をハイポトロコイド型のギヤ減速機構と称しており、このギヤ減速機構では、入力ギヤの外歯部を出力ギヤの内歯部に噛み合わせた状態を維持するために偏心部材の外周面の凹部にバネ部材を嵌め込み、このバネ部材の付勢力を入力ギヤの内周側に作用させている。
特開2021-17833号公報
しかしながら、特許文献1に記載される構成のバネ板(バネ部材)は、長期に亘る使用に伴い破断することもあり、破断によって分離したバネ板の一部が偏心部材から脱落し、入力ギヤの外歯部と出力ギヤの内歯部との間に侵入することや、装置内の作動部分に接触して弁開閉時期制御装置の作動を不能にすることも懸念された。
このような理由から、減速機構の内歯部と外歯部との噛み合わせるためのバネ体が破断した場合でも、作動不能に陥ることない弁開閉時期制御装置が求められる。
本発明に係る弁開閉時期制御装置の特徴構成は、回転軸芯を中心に内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、前記回転軸芯と同軸芯で前記駆動側回転体の内側に配置され、前記内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、前記駆動側回転体及び前記従動側回転体の相対回転位相を調節する位相調節機構と、を備え、前記位相調節機構が、前記回転軸芯と同軸芯で前記従動側回転体と一体的に回転する内歯型の出力ギヤと、前記出力ギヤより少ない歯数で前記出力ギヤの内側に配置され前記回転軸芯と平行姿勢の偏心軸芯を中心に回転する外歯型の入力ギヤと、前記入力ギヤを前記駆動側回転体の回転に連係させる継手部材と、前記出力ギヤの内歯部に前記入力ギヤの外歯部を噛合させる偏心部材と、前記回転軸芯を中心に前記偏心部材を駆動回転させる電動アクチュエータと、を備え、前記偏心部材は、前記偏心軸芯を中心とする偏心支持面に対し、径方向に窪み、前記偏心軸芯に沿う方向で前記偏心部材の端部方向に開放する凹状部を有しており、前記出力ギヤの前記内歯部に前記入力ギヤの前記外歯部を噛み合わせる付勢力を作用させるバネ部材が前記凹状部に嵌め込まれ、径方向視で前記凹状部に重複するように前記偏心支持面の外周に固定リングを備え、前記固定リングが、前記凹状部に嵌まり込んで前記バネ部材の脱落を阻止する規制部を有している点にある。
この特徴構成によると、偏心部材の偏心支持面の凹状部にバネ部材が嵌め込まれることにより、入力ギヤの歯部を出力ギヤの歯部に噛み合わせる方向にバネ部材の付勢力を作用させることが可能となる。また、固定リングが、凹状部に嵌まり込む規制部を有しているため、通常の使用状態でもバネ部材が凹状部から脱落することはなく、バネ部材が長期に亘る使用等で破断した場合であっても、破断により分離した破断物等が凹状部から脱落することを、規制部が阻止する。
従って、減速機構の内歯部と外歯部との噛み合わせるためのバネ部材が破断した場合でも、作動不能に陥ることない弁開閉時期制御装置が構成された。
上記構成に加えた構成として、前記偏心部材は、前記偏心部材の前記偏心支持面の外周に環状溝を有し、前記固定リングは、前記環状溝に嵌め込まれても良い。
これによると、偏心部材の偏心支持面の外周に環状溝を形成し、この環状溝に嵌め込む形態で固定リングを支持できるので、固定リングの支持のために別途支持手段を設ける必要がない。
上記構成に加えた構成として、前記バネ部材が、バネ板材を湾曲した湾曲部と、前記湾曲部の前記バネ板材の一方を延出し前記凹状部の底面に接触させる支持部と、前記湾曲部の前記バネ板材の他方を延出し前記入力ギヤの内周側に付勢力を作用させる付勢部と、前記支持部の先端側を前記凹状部の前記底面から離間させる姿勢に屈曲させた屈曲部と、を有し、前記偏心軸芯に沿う方向視で、前記屈曲部と前記規制部とが重複しても良い。
これによると、バネ部材を構成する支持部の端部に、凹状部の底面から先端側ほど離間する姿勢となる屈曲部が形成されるため、偏心軸芯に沿う方向視において、屈曲部が規制部に重複し、屈曲部が規制部に接触することで、凹状部からのバネ部材の脱落を阻止できる。また、この構成では、バネ板材のうち、凹状部に接触する側の端部の先端を凹状部の底面から離間させるため、先端が底面に接触することによる底面の摩耗も抑制できる。
上記構成に加えた構成として、前記偏心軸芯に沿う方向視において、前記固定リングの前記規制部の突出端と、前記凹状部の前記底面との間隙が、前記バネ板材の板厚より小さい値でも良い。
これによると、バネ部材が破断した場合でも、バネ部材の破断物等が、固定リングの規制部の突出端と凹状部の底面との間隙から脱落する不都合を解消できる。
上記構成に加えた構成として、前記バネ部材が、バネ板材を湾曲した湾曲部と、前記湾曲部の前記バネ板材の一方を延出し前記凹状部の底面に接触させる支持部と、前記湾曲部の前記バネ板材の他方を延出し前記入力ギヤの内周側に付勢力を作用させる付勢部と、前記支持部の先端側を前記凹状部の前記底面から離間させる姿勢に屈曲させた屈曲部と、を有し、2つの前記バネ部材が、夫々の前記湾曲部を前記凹状部の周方向での両端の端面に対向するように前記凹状部に嵌め込まれ、前記偏心軸芯に沿う方向視において、前記凹状部に嵌め込まれた一方の前記バネ部材の前記湾曲部が前記凹状部の周方向での一方の前記端面に接触する位置にあり、且つ、前記固定リングの前記規制部が前記凹状部の周方向での他方の前記端面に最も近接する位置にあるときに、前記凹状部の周方向での他方の前記端面から他方の前記バネ部材の前記屈曲部までの周方向に沿うバネ領域長より、前記凹状部の周方向での他方の前記端面から前記固定リングの前記規制部の他方の前記端面から遠い側の端縁までの周方向に沿う規制領域長が大きく設定されても良い。
2つのバネ部材を組み合わせて凹状部に嵌め込み、2つのバネ部材のうち一方の湾曲部が凹状部の一方の端面に接触し、固定リングの規制部が凹状部の他方の端面に最も近接する状況を想定する。この想定において、凹状部の周方向での他方の端面から他方のバネ部材の屈曲部までの周方向に沿うバネ領域長より、凹状部の周方向での他方の端面から固定リングの規制部の他方の端面から遠い側の端縁までの周方向に沿う規制領域長が大きく設定されている。
つまり、この想定では、凹状部において2つのバネ部材と規制部とが互いに逆方向の移動限界まで移動させた状態において、偏心軸芯に沿う方向で規制部が一方のバネ部材に充分に重複する位置に配置されるようにバネ領域長に対する規制領域長を決めることになる。これにより、バネ部材が脱落する不都合を阻止し、バネ部材が破断した際に生ずる破断物が脱落する不都合の阻止も可能にする。
弁開閉時期制御装置の断面図である。 図1のII-II線断面図である。 図1のIII-III線断面図である。 図1のIV-IV線断面図である。 弁開閉時期制御装置の分解斜視図である。 凹状部と一対のバネ部材と規制リングとの位置関係を示す断面図である。 付勢機構を構成する2つのバネ部材を示す斜視図である。 バネ部材の板厚と屈曲部の突出量とを説明する断面図である。 凹状部と固定リングの規制部との関係を示す図である。 凹状部において2つのバネ部材と規制部とを互いに逆方向の移動端まで移動した状態での各部の寸法関係を説明する図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、本実施形態に係る弁開閉時期制御装置100は、内燃機関としてのエンジンEのクランクシャフト1と同期回転する駆動側回転体Aと、吸気バルブ2B(弁の一例)を開閉する吸気カムシャフト2と一体回転する従動側回転体Bと、位相制御モータMの駆動力により駆動側回転体Aと従動側回転体Bとの相対回転位相を設定する位相調節機構Cと、を備えている。
この弁開閉時期制御装置100は、駆動側回転体Aと、従動側回転体Bとが回転軸芯Xを中心に設定範囲内で相対回転自在に備えられている。
エンジンEは、シリンダブロックに形成された複数のシリンダ3にピストン4を収容し、そのピストン4をコネクティングロッド5によりクランクシャフト1に連結した4サイクル型に構成されている。このエンジンEのクランクシャフト1の出力スプロケット1Sと、駆動側回転体Aの駆動スプロケット11Sとに亘ってタイミングチェーン6(タイミングベルト等でも良い)が巻回されている。
これによりエンジンEの稼働時には弁開閉時期制御装置100の全体が回転軸芯Xを中心に回転する。位相調節機構Cは、位相制御モータMの駆動力により、駆動側回転体Aと従動側回転体Bとの相対回転位相を設定し、吸気カムシャフト2のカム部2Aによる吸気バルブ2Bの開閉時期(開閉タイミング)の制御を実現する。
つまり、従動側回転体Bが相対的に駆動側回転体Aの回転方向と同方向に変位する作動を進角作動と称し、この進角作動により吸気圧縮比が増大する。また、従動側回転体Bが相対的に駆動側回転体Aと逆方向に変位する作動(進角作動とは逆方向への作動)を遅角作動と称し、この遅角作動により吸気圧縮比が低減する。
〔弁開閉時期制御装置〕
図1に示すように、駆動側回転体Aは、外周に駆動スプロケット11Sが形成されたアウタケース11と、フロントプレート12と、を複数の締結ボルト13で締結して構成されている。アウタケース11は、底部に開口を有する有底筒状型である。
図1~図5に示すように、アウタケース11の内部空間に従動側回転体Bとしての中間部材20と、ハイポトロコイド型のギヤ減速機構を有した位相調節機構C(図3等参照)とが収容されている。位相調節機構Cは、位相変化を駆動側回転体A及び従動側回転体Bに反映するオルダム継手Cx(図4、図5を参照)を備えている。
従動側回転体Bを構成する中間部材20は、回転軸芯Xに直交する姿勢で吸気カムシャフト2に連結する支持壁部21と、回転軸芯Xを中心とする筒状で吸気カムシャフト2から離間する方向に突出する筒状壁部22とが一体形成されている。
この中間部材20は、筒状壁部22の外面がアウタケース11の内面に接触する状態でアウタケース11に相対回転自在に嵌め込まれ、支持壁部21の中央の貫通孔に挿通する連結ボルト23により吸気カムシャフト2の端部に固定される。このように固定された状態で筒状壁部22の外側(吸気カムシャフト2から遠い側)の端部がフロントプレート12より内側に位置する。
図1、図5に示すように、筒状壁部22の外周側には溝部22aが全周にわたって形成されている。溝部22aにより筒状壁部22の外面とアウタケース11の内面との間においてオイルの保持性が向上する。これにより、筒状壁部22とアウタケース11との摩擦力が低減され、中間部材20がアウタケース11に対し滑らかな回転を可能にする。
図1に示すように、位相制御モータMは、その出力軸Maを回転軸芯Xと同軸芯上に配置するように支持フレーム7によりエンジンEに支持されている。位相制御モータMの出力軸Maには回転軸芯Xに対して直交する姿勢の一対の係合ピン8が形成されている(図4も参照)。
〔位相調節機構〕
図1、図5に示すように、位相調節機構Cは、中間部材20と、中間部材20の筒状壁部22の内周面に形成される出力ギヤ25と、偏心部材26と、付勢機構Sと、第一軸受28と、第二軸受29と、入力ギヤ30と、固定リング31と、リング状のスペーサ32と、オルダム継手Cxとを備えて構成されている。なお、第一軸受28と第二軸受29とには転がり軸受が使用されるが、滑り軸受を用いることも可能である。
図1に示すように、中間部材20の筒状壁部22の内周のうち、回転軸芯Xに沿う方向(以下、軸方向と記載する)で内側(支持壁部21に隣接する位置)に回転軸芯Xを中心とする支持面22Sが形成され、支持面22Sより外側(吸気カムシャフト2から遠い側)に回転軸芯Xを中心とする出力ギヤ25が一体的に形成されている。
図1、図2及び図5に示すように、偏心部材26は筒状である。偏心部材26は、軸方向での内側(吸気カムシャフト2に近い側)に回転軸芯Xを中心とする外周面の円周支持面26Sが形成されている。図1、図3及び図5に示すように、偏心部材26は、外側(吸気カムシャフト2から遠い側)に回転軸芯Xに平行となる姿勢で偏心する偏心軸芯Yを中心とする外周面の偏心支持面26Eが形成されている。偏心軸芯Yに沿う方向は軸方向と同一であるため、以下に、偏心軸芯Yに沿う方向についても単に軸方向と記載する。
偏心支持面26Eには、図5、図6に示すように、偏心部材26の径方向内側に窪み、軸方向での端部方向(外端方向:フロントプレート12に向かう方向)に開放する凹状部70が形成されている。この凹状部70は、底面70aと、周方向での両端に端面70bとを有している。
図6、図9に示すように、底面70aは、偏心軸芯Yを中心とする円弧面と比較して、周方向での中央部が径方向外側に膨らむ形状に成形されている。また、図6、図8~図10に示すように、一対の端面70bは、偏心軸芯Yに沿う方向視において平坦であり、周方向において対称に形成されている。
凹状部70には、後述するように付勢機構Sを構成する2つのバネ部材71が嵌め込まれる。凹状部70、底面70a、及び、一対の端面70bの関係については、後述する固定リング31と共に後述する。
図1、図5に示すように、偏心部材26の内周には、位相制御モータM(図1参照)の一対の係合ピン8の各々が係合可能な一対の係合溝26Tが回転軸芯Xと平行姿勢で形成されている。更に、偏心部材26の内側(支持壁部21の側)には径方向に沿う姿勢の複数の第一潤滑油溝26a(図1参照)が形成され、外側(吸気カムシャフト2から遠い側)には径方向に沿う姿勢の複数の第二潤滑油溝26bが形成されている。なお、偏心部材26には、第一潤滑油溝26aと第二潤滑油溝26bとの一方だけ形成しても良い。これら第一潤滑油溝26aと第二潤滑油溝26bの数は任意に設定しても良い。
図5に示すように、偏心部材26の外側(吸気カムシャフト2から遠い側)の開口端の内周側には、係合溝26Tの両側部分に内側(吸気カムシャフト2に近い側)に向けて径が小さくなるテーパ部26c(傾斜部分)が形成されている。位相制御モータMの一対の係合ピン8を偏心部材26の係合溝26Tに係合させる際に、テーパ部26cにより係合ピン8が係合溝26Tに案内されるので、位相制御モータMと偏心部材26との係合作業が容易になる。
図1、図2に示すように円周支持面26Sに第一軸受28を外嵌し、この第一軸受28を筒状壁部22の支持面22Sに嵌め込むことにより、偏心部材26は、中間部材20に対し回転軸芯Xを中心に回転自在に支持される。また、入力ギヤ30は、図1、図3に示すように偏心部材26の偏心支持面26Eに対し第二軸受29を介して偏心軸芯Yを中心に回転自在に支持される。
この位相調節機構Cでは、入力ギヤ30の外歯部30Aの歯数が、出力ギヤ25の内歯部25Aの歯数より1歯だけ少なく設定されている。そして、入力ギヤ30の外歯部30Aの一部が出力ギヤ25の内歯部25Aの一部に噛合する。
付勢機構Sは、入力ギヤ30の外歯部30Aの一部を出力ギヤ25の内歯部25Aの一部に噛み合わせるように、第二軸受29を介して入力ギヤ30に対し付勢力を作用させている。尚、第二軸受29のインナレース29aを偏心部材26の偏心支持面26Eに外嵌し、第二軸受29のアウタレース29bを入力ギヤ30の内周に嵌め込むことにより、付勢機構Sの付勢力を入力ギヤ30に対して径方向に作用させている。
これにより、入力ギヤ30の外歯部30Aの一部を出力ギヤ25の内歯部25Aに安定的に噛み合わせ、これらのバックラッシュの拡大を防ぎ、異音を防止している。
付勢機構Sは、同一の形状、かつ、同一の大きさの2つのバネ部材71を図7に示すように、組み合わせることにより構成されている。
図7、図8に示すように、バネ部材71は、バネ板材を湾曲した湾曲部72と、この湾曲部72のバネ板材の一方を延出し凹状部70の底面70aに接触させる支持部73と、湾曲部72のバネ板材の他方を延出し入力ギヤ30の内周側に付勢力を作用させる付勢部74とを一体的に形成し、支持部73の先端側を凹状部70の底面70aから離間させる姿勢に屈曲させた屈曲部75と、を備えている。
つまり、湾曲部72は、凹状部70に嵌め込まれた状態で、偏心軸芯Yに沿う方向視においてU字状となる形状になるようにバネ板材の曲げ加工することにより、支持部73と付勢部74とが略平行になる姿勢に配置した形状に成形されている。
また、平面視(支持部73、付勢部74に直交する径方向視)において、支持部73の幅(軸方向の寸法)を、湾曲部72の幅(軸方向の寸法)の半分(1/2)に設定し、幅方向の一方に偏る位置に配置しており、支持部73の幅(軸方向の寸法)を、湾曲部72の幅の半分(1/2)に設定し、幅方向の他方に偏る位置に配置している。
これにより、図7に示すように、湾曲部72と支持部73との境界部分に、幅方向に沿う姿勢の支持側切欠部73aが形成され、湾曲部72と付勢部74との境界部分に幅方向に沿う姿勢の付勢側切欠部74aが形成されている。
2つのバネ部材71は、図6、図8に示す方向視において、夫々の湾曲部72が凹状部70の周方向の端に配置されるように、互いに逆向きの姿勢で配置した付勢機構Sとして構成され、一つの凹状部70に嵌め込まれている。このように嵌め込まれることにより、2つのバネ部材71は、夫々の湾曲部72が離間し、2つの付勢部74が軸方向に沿って並列的に配置されている。これにより、コンパクトな付勢機構Sが構成されている。
図7、図8に示すように、バネ部材71は、湾曲部72から支持部73に亘る領域が、凹状部70の底面70aに沿うように湾曲すると共に、湾曲部72のうち底面70aに対向する位置に基端側当接位置Qを形成し、支持部73と屈曲部75との境界の先端側当接位置Rを形成している。更に、付勢部74は、第二軸受29のインナレース29aの内面のうち、出力ギヤ25の内歯部25Aに入力ギヤ30の外歯部30Aが最も深く噛み合う方向に集中的に付勢力を作用させるように、付勢部74には、付勢頂部74bを偏心部材26の径方向での外方に突出させている。
湾曲部72は、弾性変形することでバネ部材71の付勢力を生ずる主要部分である。2つのバネ部材71を組み合わせて凹状部70に嵌め込むことにより、図6、図7に示すように、偏心軸芯Yに沿う方向視において、2つのバネ部材71の夫々の付勢部74の付勢頂部74bが重なり合う位置に配置される。このように一つの凹状部70に対し、2つのバネ部材71を嵌め込む構造でありながら、入力ギヤ30に作用させる付勢力のバランスの維持も可能にする。
これにより、2つのバネ部材71の支持部73と湾曲部72との境界の基端側当接位置Qを支点として凹状部70の底面70aに当接させる状態で、2つの付勢部74の付勢頂部74bから付勢力を第二軸受29のインナレース29aに作用させることが可能となる。また、このように付勢力を作用させる際に屈曲部75と支持部73との境界となる先端側当接位置Rが凹状部70の底面70aに当接する状態に維持される。
ここで、例えば、偏心部材26の偏心支持面26Eに第二軸受29を外嵌し、この第二軸受29のインナレース29aの内周と、凹状部70との間に、2つのバネ部材71を挿入する工程を想定すると、屈曲部75と湾曲部72とに挿入用の治具等を当接させてバネ部材71を挿入できる。
つまり、例えば、湾曲部72の1箇所(例えば、基端側当接位置Qの近傍)だけに圧力を作用させてバネ部材71を挿入する工程では、バネ部材71の端部にのみ圧力が作用するため、バネ部材71の姿勢が適正な姿勢から外れ、バネ部材71の一部が凹状部70の端面70bに強く接触し、挿入が困難な状況に陥ることもある。これに対し、治具等を用い、バネ部材71に対し凹状部70の周方向で離間する2箇所(例えば、基端側当接位置Qの近傍と先端側当接位置Rの近傍)に圧力を作用させることにより、バネ部材71に作用する圧力が偏らず、凹状部70に対し適正な姿勢に維持する状態で軸方向に沿ってバネ部材71を挿入することが可能となる。
また、バネ部材71は、凹状部70に嵌め込まれた状態で、偏心部材26の周方向に沿って移動することもある。屈曲部75は、先端側が凹状部70の底面70aから離間する姿勢であり、屈曲部75の先端の角部(エッジ)が底面70aから離間するため、バネ部材71が凹状部70の内部で移動することがあっても、凹状部70の底面70aが摩耗する不都合を抑制できる。
〔固定リング・バネ部材〕
図1、図5に示すように、固定リング31は、偏心部材26の偏心支持面26Eの外周に環状に形成された環状溝26dに嵌め込まれることにより、径方向視において凹状部70に重複する位置に配置される。弁開閉時期制御装置100は、固定リング31に接触する位置にスペーサ32を備えることで、第二軸受29の抜け止めが行われる。
図4、図5に示すように、固定リング31は、C字状の環状の部材であり、偏心部材26の環状溝26dに嵌まり込んで偏心部材26に支持されるものである。また、固定リング31は、凹状部70に嵌め込まれる規制部31Rを固定リング31の内径側に有し、軸方向に沿う方向視で規制部31Rと反対側に間隙を有する合口31gが配置されている。この規制部31Rの先端は円弧状であり、周方向での両側で緩やかに(円弧を介して)固定リング31に接続している。
例えば、規制部31Rが形成されない固定リング31は、固定リング31の全周の径方向での幅が小さく、視覚での装着の有無の確認が困難である。これに対し、規制部31Rが形成された固定リング31は、規制部31Rの径方向の幅(径方向での突出量)が大きく、視覚で装着の確認を容易にする。
また、弁開閉時期制御装置100において、規制部31Rは凹状部70に嵌め込まれるため、固定リング31が環状溝26dに沿って回転することがなく、合口31gが、凹状部70に達することにより、合口31gの間隙によってバネ部材71の姿勢が乱される不都合を防止している。更に、規制部31Rを備えた固定リング31を用いることにより、通常の使用状態でもバネ部材71が凹状部70から脱落する不都合は解消される。
図8に示すように、バネ部材71の厚みを板厚Tとし、バネ部材71の屈曲部75の先端側当接位置Rを基準とした折り曲げによる高さを曲量Hとした場合に、曲量Hが板厚Tより大きくなるように(H>T)関係が設定されている。尚、曲量Hは、図8に示すように、偏心軸芯Yに沿う方向視において偏心軸芯Yと先端側当接位置Rとを径方向に沿う直線で結ぶ仮想ラインに沿う方向で、先端側当接位置Rと屈曲部75のうち最も高い位置との間隔となる。
このように、板厚Tより曲量Hを大きくすることにより、例えば、バネ部材71が固定リング31に接触する方向(軸方向)に移動した場合には、屈曲部75が規制部31Rの突出方向に沿う領域にも接触する。
規制部31Rは、バネ部材71の湾曲部72と支持部73と付勢部74との側面に対して広い面で接触することが可能である。従って、バネ部材71の湾曲部72と支持部73と付勢部74との側面が規制部31Rに接触し、屈曲部75が接触することにより、バネ部材71が不適正な姿勢に変化することを抑制し、付勢機構Sの付勢力の作用方向の安定化を可能にしている。
図9に示すように、固定リング31の規制部31Rの突出端と、凹状部70の底面70aとの距離を間隙Gとしている。この間隙Gは、バネ部材71の板厚Tより小さくなるように(G<T)寸法関係が設定されている。
同図では、規制部31Rの突出端の内周縁が偏心軸芯Yを中心とする円弧状であり、凹状部70の底面70aは、円弧状の一部を外方に滑らかに突出させることで、偏心軸芯Yを中心としない形状であるため、これらの間のうち最も狭い部位に間隙Gを示しているが、規制部31Rの内周縁と凹状部70の底面70aとの距離を均一にして、規制部31Rの内周縁の全てを等しい間隙Gとしてもよい。尚、底面70aの形状として、楕円等の非円形を想定できるが、例えば、偏心軸芯Yから外れた位置を中心とする円弧状に形成されるものも考えられる。
このように板厚Tより間隙Gを小さくすることにより、バネ部材71が破断した場合でも、破断物等が間隙Gを通過することが不能となり、例えば、破断物等がフロントプレート12に向かう方向に脱落し、出力ギヤ25の内歯部25Aや、入力ギヤ30の外歯部30Aなどに接触する不都合を解消できる。これにより、弁開閉時期制御装置100が作動不能に陥ることもない。
図10に示すように、偏心軸芯Yに沿う方向視において、凹状部70の端面70bから規制部31Rの2箇所の端縁のうち周方向で遠い側の端縁までの偏心部材26の偏心支持面26Eの周方向に沿う長さ(弧長)を規制領域長Dとしている。尚、凹状部70の周方向に沿う長さ(弧長)を、以下、「周方向長」と称する。
また、図10に示すように、2つのバネ部材71を組み合わせ、凹状部70に嵌め込んだ状態で、例えば、2つのバネ部材71を一体的に凹状部70の一方(同図では右側)に移動させることで一方のバネ部材71の湾曲部72の外面を端面70bに当接させ、環状溝26dに嵌め込んだ固定リング31の規制部31Rを他方(同図では左側)に移動させることで規制部31Rを端面70bに最も近接させている。
つまり、凹状部70において2つのバネ部材71と、規制部31Rとが互いに逆方向の移動限界まで移動した状況において、他方のバネ部材71の湾曲部72と、他方の端面70bとの間隙の周方向長を離間距離Uとしている。また、この状況において他方のバネ部材71の湾曲部72から屈曲部75の先端までの周方向長をバネ領域長Fとしている。更に、離間距離Uとバネ領域長Fとを加算した値より、周方向での規制領域長Dが大きくなるように(D>U+F)寸法関係を設定している。
この寸法関係は、凹状部70の周方向での他方(図10では左側)のバネ部材71の湾曲部72から他方のバネ部材71の屈曲部75の先端までの周方向長としてのバネ領域長Fより、他方の端面70bから固定リング31の規制部31Rの他方の端面70bから遠い側の端縁までの周方向長となる規制領域長Dが大きく設定された(D>F)場合に常に成立するものである。
バネ部材71の湾曲部72から屈曲部75の先端までのバネ領域長Fは、湾曲部72の外端位置72tと、屈曲部75の延出方向の先端を結ぶ凹状部70の周方向に沿う周方向長である。離間距離Uは、バネ部材71の湾曲部72の外端位置72tと、この外端位置72tを通り偏心軸芯Yを中心とする円弧が端面70bと交差する位置とを結ぶ凹状部70の周方向長である。
これにより、前述したように湾曲部72と凹状部70の端面70bとの間の離間距離Uと、湾曲部72から屈曲部75の先端までのバネ領域長Fと、規制部31Rの規制領域長Dとの関係を設定することにより、凹状部70の内部でのバネ部材71の位置に拘わらず、湾曲部72と支持部73と付勢部74との側面を確実に規制部31Rに接触させ、バネ部材71の姿勢を安定させるだけでなく、バネ部材71が破断した場合でも破断物等の凹状部70からフロントプレート12の方向への脱落の阻止も可能にする。
〔位相調節機構:オルダム継手〕
図1、図4、図5に示すように、オルダム継手Cxは、中央の環状部41と、この環状部41から第一方向(図4では左右方向)に沿って径方向外方に突出する一対の外部係合アーム42と、環状部41から第一方向に直交する方向(図4では上下方向)に沿って径方向外方に突出する内部係合アーム43とを一体形成した板状の継手部材40で構成されている。一対の内部係合アーム43の各々には環状部41の開口に連なる係合凹部43aが形成されている。
アウタケース11のうち、フロントプレート12が当接する開口縁部にはアウタケース11の内部空間から外部空間に亘り、回転軸芯Xを中心に半径方向に延びる一対の案内溝部11aが貫通溝状に形成されている。この案内溝部11aの溝幅が外部係合アーム42の幅より僅かに広く設定され、各々の案内溝部11aには一対の排出流路11bが切欠き形成されている。なお、排出流路11bを、フロントプレート12に対して径方向に潤滑油を流すように形成しても良い。
アウタケース11の開口縁部において、案内溝部11a以外の部位には、周方向に沿い内周側が切り欠かれた一つ以上のポケット部11cが形成されている。ポケット部11cには、駆動側回転体Aの回転による遠心力を受けて外周側に移動する異物が回収される。
図5には、4つのポケット部11cが形成されている場合を図示している。
また、入力ギヤ30のうちフロントプレート12に対向する端面には一対の係合突起30Tが一体形成されている。この係合突起30Tの係合幅が内部係合アーム43の係合凹部43aの係合幅より僅かに狭く設定されている。
このような構成から、継手部材40の一対の外部係合アーム42を、アウタケース11の一対の案内溝部11aに係合させ、継手部材40の一対の内部係合アーム43の係合凹部43aに、入力ギヤ30の一対の係合突起30Tを係合させることによりオルダム継手Cxを機能させることが可能となる。
なお、継手部材40がアウタケース11に対して外部係合アーム42が延びる第一方向(図4で左右方向)に変位可能となり、この継手部材40に対して内部係合アーム43の係合凹部43aの形成方向に沿う第二方向(図4では上下方向)に入力ギヤ30が変位自在となる。
〔位相調節機構の潤滑〕
図1に示すように、吸気カムシャフト2には外部のオイルポンプPからの潤滑油が油路形成部材9を介して供給される潤滑油路15を形成している。中間部材20の支持壁部21は、吸気カムシャフト2に当接する面の一部に対し、偏心部材26の内部にオイルを案内する開口部21aを形成している。
前述したように偏心部材26には複数の第一潤滑油溝26aと複数の第二潤滑油溝26bが形成されている(図1、図5を参照)。また、フロントプレート12のうち継手部材40と対向する面には、継手部材40の表面との間に径方向に沿って僅かな隙間となる潤滑凹部12aが形成されている。なお、この潤滑凹部12aはフロントプレート12の内周側に形成されているが、フロントプレート12の外周に達する領域に形成されるものでも良く、潤滑凹部12aを省略してフロントプレート12と継手部材40との隙間に潤滑油を供給するように構成しても良い。
前述したように案内溝部11aには一対の排出流路11bが形成されている(図4、図5を参照)。更に、フロントプレート12の開口12bの開口径を、偏心部材26の内径より充分に大きくすることにより、フロントプレート12の開口縁と偏心部材26の内周との間に開口径の差が設定されている。
この構成から、オイルポンプPから供給される潤滑油は、吸気カムシャフト2の潤滑油路15から、中間部材20の支持壁部21の開口部21aを介して偏心部材26の内部空間に供給される。このように供給された潤滑油は、遠心力により偏心部材26の第一潤滑油溝26aから第一軸受28に供給され第一軸受28を円滑に作動させる。
これと同時に、偏心部材26の内部空間の潤滑油は遠心力により第二潤滑油溝26bから継手部材40に供給されると共に、第二軸受29に供給され、出力ギヤ25の内歯部25Aと入力ギヤ30の外歯部30Aとの間に供給される。
また、図1に示すように第二潤滑油溝26bからの潤滑油は、潤滑凹部12aによりフロントプレート12と継手部材40との間に供給されると共に、継手部材40の外部係合アーム42とアウタケース11の案内溝部11aとの間の隙間に供給される。これにより、継手部材40を円滑に作動させる。そして、この継手部材40に供給された潤滑油は、継手部材40の外部係合アーム42とアウタケース11の案内溝部11aとの間の隙間から外部に排出される。
特に、図1に示すようにフロントプレート12の開口縁の内径より、偏心部材26の内径を小さくすることで、これらの間に段差が形成されているため、エンジンEが停止した場合には偏心部材26の内部空間の潤滑油をフロントプレート12の開口12bから排出し、内部に残留する潤滑油の油量を低減できる。なお、弁開閉時期制御装置100の内部に潤滑油が多く残留する場合には、寒冷の環境でエンジンEを始動した後に、潤滑油の粘性の影響により位相調節機構Cの作動が抑制されることになるが、エンジンEの停止時に潤滑油を排出することにより、このような不都合を解消できる。
更に、案内溝部11aに排出流路11bが形成されているため、寒冷の環境で停止状態にあるエンジンEを始動する際には、遠心力によって内部の潤滑油を、排出流路11bを介して迅速に排出できるため、粘性の高い潤滑油を短時間のうちに排出し、潤滑油の粘性の影響を排除して位相調節機構Cの迅速な作動を可能にする。
フロントプレート12には、図5に示すように、内側(吸気カムシャフト2に近い側)の面に、内側に向けて突出する凸部12cが形成されている。凸部12cは、中間部材20と摺接可能な程度に軽く当接させている。中間部材20は、凸部12cと当接することでフロントプレート12に近づく側への移動が規制される。これにより、オルダム継手Cx(継手部材40)はフロントプレート12と中間部材20との間において所定の間隔が保持された状態で、オルダム継手Cxを円滑(滑らかに)に作動させることができる。
〔位相調節機構の作動形態〕
図面には示していないが位相制御モータMはECUとして構成される制御装置によって制御される。制御装置は、エンジンEにはクランクシャフト1と吸気カムシャフト2との回転速度(単位時間あたりの回転数)と、各々の回転位相とを検知可能なセンサを備えており、これらのセンサの検知信号が制御装置に入力する。
制御装置は、エンジンEの稼動時において位相制御モータMを吸気カムシャフト2の回転速度と等しい速度で駆動することで相対回転位相を維持する。これに対して位相制御モータMの回転速度を吸気カムシャフト2の回転速度より低減することにより進角作動が行われ、これとは逆に回転速度が増大することにより遅角作動が行われる。前述したように進角作動により吸気圧縮比が増大し、遅角作動により吸気圧縮比が低減する。
位相制御モータMがアウタケース11と等速(吸気カムシャフト2と等速)で回転する場合には、出力ギヤ25の内歯部25Aに対する入力ギヤ30の外歯部30Aの噛み合い位置が変化しないため、駆動側回転体Aに対する従動側回転体Bの相対回転位相は維持される。
これに対してアウタケース11の回転速度より高速又は低速で位相制御モータMの出力軸Maを駆動回転することにより、位相調節機構Cでは偏心軸芯Yが回転軸芯Xを中心に公転する。この公転により出力ギヤ25の内歯部25Aに対する入力ギヤ30の外歯部30Aに対する噛み合い位置が出力ギヤ25の内周に沿って変位し、入力ギヤ30と出力ギヤ25との間には回転力が作用する。つまり、出力ギヤ25には回転軸芯Xを中心とする回転力が作用し、入力ギヤ30には偏心軸芯Yを中心に自転させようとする回転力が作用する。
前述したように入力ギヤ30は、その係合突起30Tが継手部材40の内部係合アーム43の係合凹部43aに係合するためアウタケース11に対して自転することはなく、回転力が出力ギヤ25に作用する。この回転力の作用により出力ギヤ25と共に中間部材20が、アウタケース11に対し回転軸芯Xを中心に回転する。その結果、駆動側回転体Aと従動側回転体Bとの相対回転位相を設定し、吸気カムシャフト2による開閉時期の設定を実現する。
また、入力ギヤ30の偏心軸芯Yが回転軸芯Xを中心に公転する際には、入力ギヤ30の変位に伴い、オルダム継手Cxの継手部材40は、アウタケース11に対して外部係合アーム42が延びる方向(第一方向)に変位し、入力ギヤ30は、内部係合アーム43が延びる方向(第二方向)へ変位する。
前述したように入力ギヤ30の外歯部30Aの歯数が、出力ギヤ25の内歯部25Aの歯数より1歯だけ少なく設定されているため、入力ギヤ30の偏心軸芯Yが回転軸芯Xを中心に1回転だけ公転した場合には、1歯分だけ出力ギヤ25が回転することになり大きい減速を実現している。
〔実施形態の作用・効果〕
弁開閉時期制御装置100は、偏心部材26を第一軸受28により中間部材20の内周の支持面22Sに支持し、偏心部材26の偏心支持面26Eに第二軸受29を介して入力ギヤ30を支持している。また、偏心部材26の偏心支持面26Eに形成された凹状部70に対し2つのバネ部材71を組み合わせた構成の付勢機構Sを嵌め込み、2つのバネ部材71から第二軸受29のインナレース29aの内周に付勢力を作用させている。
これにより、付勢機構Sの付勢力が入力ギヤ30の外歯部30Aの一部を、出力ギヤ25の内歯部25Aの一部に噛み合わせる状態を維持する状態の維持を可能にしている。
偏心部材26は、偏心支持面26Eの環状溝26dに固定リング31を支持し、この固定リング31に形成された規制部31Rを、凹状部70に嵌め込んでいる。また、バネ部材71が、バネ板材の曲げ加工により、湾曲部72と支持部73と付勢部74を一体的に形成され、支持部73の端部に屈曲部75を凹状部70の底面70aから離間させる姿勢に屈曲させた姿勢で形成している。
これにより、屈曲部75と湾曲部72とに挿入用の治具を当接させて圧力を加えることでバネ部材71の挿入を容易に行える。屈曲部75は、先端側が凹状部70の底面70aから離間する姿勢であるため、凹状部70の底面70aがバネ部材71の端部の接触によって摩耗する不都合を抑制できる。
また、固定リング31に規制部31Rが形成されているため、固定リング31の装着の有無の視認を容易に行える。規制部31Rが凹状部70に嵌め込まれるため、固定リング31の回転が不能となり、合口31gの間隙によってバネ部材71の姿勢が乱される不都合を防止できる。固定リング31の規制部31Rが、バネ部材71の湾曲部72と支持部73と付勢部74との側面に対して広い面で接触するため、バネ部材71の姿勢を適正に維持する。特に、バネ部材71に形成された屈曲部75の曲量Hが、バネ部材71の板厚Tより大きいため、バネ部材71は、規制部31Rが接触することにより、一層適正に姿勢を維持できる。
図9に示すように、固定リング31の規制部31Rの突出端と、凹状部70の底面70aとの距離を間隙Gとしており、この間隙Gが、板厚Tより小さいため、バネ部材71が破断した場合でも、破断物等が、この間隙Gの部位の通過を不能にしている。
また、図10に示すように、凹状部70において2つのバネ部材71と、規制部31Rとが互いに逆方向の移動端限界まで移動した状況において、他方のバネ部材71の湾曲部72と、凹状部70の周方向での他方の端面70bとの間の距離を離間距離Uとしており、他方のバネ部材71の湾曲部72から屈曲部75の先端までのバネ領域長Fとしている。更に、離間距離Uとバネ領域長Fとを加算した値より、固定リング31の周方向での規制領域長Dが大きくなるように(D>U+F)寸法関係を設定している。
これにより、凹状部70の内部でのバネ部材71の位置に拘わらず、湾曲部72と支持部73と付勢部74との側面を確実に規制部31Rに接触させ、バネ部材71の姿勢を安定させるだけでなく、規制部31Rによる破断物等の脱落の阻止も可能にして弁開閉時期制御装置100が作動不能に陥る不都合を解消している。特に、バネ領域長Fより規制領域長Dが大きく設定された(D>F)場合にも同様に規制部31Rによるバネ部材71の脱落を阻止し、判断物の脱落の抑制を可能にする。
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
(a)付勢機構Sとして、単一のバネ部材71を用いることも可能である。また、3つ以上のバネ部材71を並列的に配置して用いることも考えられる。
この別実施形態(a)の構成でも、凹状部70の底面70aと、固定リング31の規制部31Rの突出端との間隙Gを、バネ部材71の厚みを板厚Tより小さくする寸法関係は有効となる。
(b)実施形態と同様の構成で付勢機構Sを2つのバネ部材71を用いで構成する場合に、2つのバネ部材71の夫々の湾曲部72の外面を、凹状部70の端面70bに接触させる状態で凹状部70に嵌め込むように構成することも可能である。
この別実施形態(b)の構成でも、凹状部70の底面70aと、固定リング31の規制部31Rの突出端との間隙Gを、バネ部材71の厚みを板厚Tより小さくする寸法関係は有効となる。また、バネ部材71に屈曲部75を形成することも有効となる。
(c)固定リング31の規制部31Rの規制領域長Dを、凹状部70の幅とほぼ等しくすることで。規制部31Rで凹状部70のうち、フロントプレート12の方向に開放する部位を閉じることになり、バネ部材71が破断した場合には、破断物等の脱落を良好に抑制することが可能となる。
本発明は、弁開閉時期制御装置に利用することができる。
1 クランクシャフト
2 吸気カムシャフト(カムシャフト)
25 出力ギヤ
26 偏心部材
26E 偏心支持面
26d 環状溝
30 入力ギヤ
31 固定リング
31R 規制部
40 継手部材
70 凹状部
70a 端面
70b 底面
71 バネ部材
72 湾曲部
73 支持部
74 付勢部
75 規制部
100 弁開閉時期制御装置
A 駆動側回転体
B 従動側回転体
C 位相調節機構
E 内燃機関(エンジン)
G 間隙
M 位相制御モータ(電動アクチュエータ)
T 板厚
U 離間距離
X 回転軸芯
Y 偏心軸芯

Claims (5)

  1. 回転軸芯を中心に内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、
    前記回転軸芯と同軸芯で前記駆動側回転体の内側に配置され、前記内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、
    前記駆動側回転体及び前記従動側回転体の相対回転位相を調節する位相調節機構と、を備え、
    前記位相調節機構が、前記回転軸芯と同軸芯で前記従動側回転体と一体的に回転する内歯型の出力ギヤと、前記出力ギヤより少ない歯数で前記出力ギヤの内側に配置され前記回転軸芯と平行姿勢の偏心軸芯を中心に回転する外歯型の入力ギヤと、前記入力ギヤを前記駆動側回転体の回転に連係させる継手部材と、前記出力ギヤの内歯部に前記入力ギヤの外歯部を噛合させる偏心部材と、前記回転軸芯を中心に前記偏心部材を駆動回転させる電動アクチュエータと、を備え、
    前記偏心部材は、前記偏心軸芯を中心とする偏心支持面に対し、径方向に窪み、前記偏心軸芯に沿う方向で前記偏心部材の端部方向に開放する凹状部を有しており、
    前記出力ギヤの前記内歯部に前記入力ギヤの前記外歯部を噛み合わせる付勢力を作用させるバネ部材が前記凹状部に嵌め込まれ、
    径方向視で前記凹状部に重複するように前記偏心支持面の外周に固定リングを備え、
    前記固定リングが、前記凹状部に嵌まり込んで前記バネ部材の脱落を阻止する規制部を有している弁開閉時期制御装置。
  2. 前記偏心部材は、前記偏心部材の前記偏心支持面の外周に環状溝を有し、
    前記固定リングは、前記環状溝に嵌め込まれている請求項1に記載の弁開閉時期制御装置。
  3. 前記バネ部材が、バネ板材を湾曲した湾曲部と、前記湾曲部の前記バネ板材の一方を延出し前記凹状部の底面に接触させる支持部と、前記湾曲部の前記バネ板材の他方を延出し前記入力ギヤの内周側に付勢力を作用させる付勢部と、前記支持部の先端側を前記凹状部の前記底面から離間させる姿勢に屈曲させた屈曲部と、を有し、
    前記偏心軸芯に沿う方向視で、前記屈曲部と前記規制部とが重複している請求項1又は2に記載の弁開閉時期制御装置。
  4. 前記偏心軸芯に沿う方向視において、前記固定リングの前記規制部の突出端と、前記凹状部の前記底面との間隙が、前記バネ板材の板厚より小さい値である請求項3に記載の弁開閉時期制御装置。
  5. 前記バネ部材が、バネ板材を湾曲した湾曲部と、前記湾曲部の前記バネ板材の一方を延出し前記凹状部の底面に接触させる支持部と、前記湾曲部の前記バネ板材の他方を延出し前記入力ギヤの内周側に付勢力を作用させる付勢部と、前記支持部の先端側を前記凹状部の前記底面から離間させる姿勢に屈曲させた屈曲部と、を有し、
    2つの前記バネ部材が、夫々の前記湾曲部を前記凹状部の周方向での両端の端面に対向するように前記凹状部に嵌め込まれ、
    前記偏心軸芯に沿う方向視において、前記凹状部に嵌め込まれた一方の前記バネ部材の前記湾曲部が前記凹状部の周方向での一方の前記端面に接触する位置にあり、且つ、前記固定リングの前記規制部が前記凹状部の周方向での他方の前記端面に最も近接する位置にあるときに、
    前記凹状部の周方向での他方の前記端面から他方の前記バネ部材の前記屈曲部までの周方向に沿うバネ領域長より、前記凹状部の周方向での他方の前記端面から前記固定リングの前記規制部の他方の前記端面から遠い側の端縁までの周方向に沿う規制領域長が大きく設定されている請求項1~4のいずれか一項に記載の弁開閉時期制御装置。
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