JP2023081765A - 放射性核種製造システムおよび放射性核種製造方法 - Google Patents

放射性核種製造システムおよび放射性核種製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】気体状の放射性物質の漏洩を抑制して安全に放射性核種を製造することが可能な放射性核種製造システムおよび放射性核種製造方法を提供する。【解決手段】電子線の照射によって生成する制動放射線を、原料核種を含む液体または固体に照射して放射性核種を製造する放射性核種製造システムであって、原料核種、および、制動放射線の照射によって原料核種から生成された生成核種のうち、少なくとも一方を含む液体または固体を収容する容器10を備え、容器10は、分子の大きさに応じて気体を透過させる気体透過材料11と、対応する他の接続部と閉鎖系で接続されて流体の通流を可能にする接続部12とを有する。放射性核種製造方法は、原料核種に制動放射線を照射する照射処理と、生成核種を分離精製する分離精製処理とを含み、照射処理および分離精製処理において、原料核種、および、生成核種のうち、少なくとも一方を含む液体または固体を容器10に収容した状態で取り扱う。【選択図】図1

Description

本発明は、原料核種や生成核種を半密閉式の容器に収容した状態で放射性核種の製造プロセスを行う放射性核種製造システムおよび放射性核種製造方法に関する。
アクチニウム225(Ac-225)は、アルファ線を放出する放射性核種であり、アルファ線内用療法に用いる治療用薬剤の原料として期待されている。従来、アクチニウム225(Ac-225)は、親核種であるトリウム229(Th-229)からの崩壊によって生産されている。
現在、臨床に利用可能なAc-225を供給可能な施設は、ドイツのカールスルーエにある超ウラン元素研究所(ITU:Institute for Transuranium Elements)、米国のオークリッジ国立研究所(ORNL:Oak Ridge National Laboratory)、ロシアのオブニンスクにあるロシア国立科学センタ物理エネルギ研究所(IPPE:Institute of Physics and Power Engineering)の3ヵ所のみである。
Th-229は自然界には無く、ウラン233(U-233)からの崩壊によって生成されている。しかし、今後は核物質防護の関係でU-233が生産されないことから、全世界におけるAc-225の生産可能量は、現存するU-233からTh-229を経由して生産可能な範囲に制限される。この量は、臨床前試験には十分であるが、臨床試験以降には大幅に不足することが予想されている。そのため、加速器を用いたAC-225の製造が望まれている。
加速器を用いてAc-225を製造する方法としては、Ra-226(p,2n)Ac-225反応を利用する方法が知られている。この方法では、天然に存在するラジウム226(Ra-226)にサイクロトロンで加速された陽子が照射される。製造試験は、ORNLや、米国のブルックヘブン国立研究所(BNL:Brookhaven National Laboratory)や、日本の量子科学技術研究開発機構(QST:National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology)で進められているが、商用化はされていない。
加速器を用いてAc-225を製造する方法は、製造上の課題を抱えている。サイクロトロンで加速された陽子は、Ra-226中の飛程が短いため、ターゲットを厚くしても、Ac-225を大量に製造できないという課題がある。陽子エネルギの大半をターゲット中で失うが、ターゲットの十分な除熱が難しいため、加速器のビーム電流やエネルギを従来よりも高くすることは困難である。
加速器を用いてAc-225を製造する方法としては、Ra-226(γ,n)Ra-225反応の後に、Ra-225をβ崩壊させてAc-225に変換する方法もある。この方法では、Ra-226に制動放射線が照射される。制動放射線は、マイクロトロンや、線形加速器等で加速させた電子を重金属のターゲットに照射して発生させている。特許文献1には、循環路内の原料核種を含む流体に制動放射線を照射して放射性核種を製造する技術が記載されている。
特開2020-183926号公報
放射性核種の製造プロセスでは、原料核種に制動放射線等を照射して核反応を惹起させ、原料核種を所定の生成核種に核変換させて目的の放射性核種を製造する。原料核種や、原料核種の核反応によって生成される生成核種は、放射性壊変を起こして気体状の放射性核種を生成することがある。気体状の放射性物質は、周囲に拡散・漏洩し易いため、原料核種や生成核種を容器に収容した状態で取り扱う製造プロセスが望まれている。
放射性核種の製造時には、原料核種に制動放射線を照射する照射処理、生成核種を原料核種から分離精製する分離精製処理等が必要である。これらの処理を、原料核種や生成核種を容器に収容した状態で行うことができれば、放射能汚染や被曝のリスクを低減できる。放射性物質の除去設備や放射線の遮蔽設備を簡素化できるため、製造装置の小型化・低コスト化が期待される。
しかし、原料核種や生成核種を取り扱う容器は、気体状の放射性核種の生成や、容器内の加熱によって、内圧が大きく上昇する虞がある。内圧が過度に上昇すると、容器が破損して、放射性物質が周囲に拡散・漏洩する可能性がある。容器の内圧を抑制しつつ、原料核種や生成核種を容器内に保持したまま、各種の処理を行うことができる製造プロセスが求められている。
特許文献1に記載された技術では、原料核種や生成核種を含む流体を循環路内に循環させているが、循環路は閉鎖系であるため、内圧の上昇を防ぐ対策が必要になる。また、原料核種を含む流体は、原料として利用できるが、固体については、原料として利用できないという課題がある。目的の放射性核種を、より小さい製造単位で製造することが求められる場合も想定される。
そこで、本発明は、気体状の放射性物質の漏洩を抑制して安全に放射性核種を製造することが可能な放射性核種製造システムおよび放射性核種製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために本発明に係る放射性核種製造システムは、電子線の照射によって生成する制動放射線を、原料核種を含む液体または固体に照射して放射性核種を製造する放射性核種製造システムであって、前記原料核種、および、前記制動放射線の照射によって前記原料核種から生成された生成核種のうち、少なくとも一方を含む液体または固体を収容する容器を備え、前記容器は、前記容器の本体部の一部を形成し、分子の大きさに応じて気体を透過させる気体透過材料と、前記容器の本体部に設けられており、対応する他の接続部と閉鎖系で接続されて流体の通流を可能にする接続部と、を有する。
また、本発明に係る放射性核種製造方法は、電子線の照射によって生成する制動放射線を、原料核種を含む液体または固体に照射して放射性核種を製造する放射性核種製造方法であって、原料核種に制動放射線を照射する照射処理と、前記制動放射線の照射によって前記原料核種から生成された生成核種を分離精製する分離精製処理と、を含み、前記照射処理および前記分離精製処理において、前記原料核種、および、前記生成核種のうち、少なくとも一方を含む液体または固体を容器に収容した状態で取り扱い、前記容器は、前記容器の本体部の一部を形成し、分子の大きさに応じて気体を透過させる気体透過材料と、前記容器の本体部に設けられており、対応する他の接続部と閉鎖系で接続されて流体の通流を可能にする接続部と、を有する。
本発明によると、気体状の放射性物質の漏洩を抑制して安全に放射性核種を製造することが可能な放射性核種製造システムおよび放射性核種製造方法を提供することができる。
本実施形態に係る放射性核種製造システムで用いられる容器の一例を示す図である。 本実施形態に係る放射性核種製造システムで用いられる容器の一例を示す図である。 放射性核種製造システムにおける容器を取り扱う処理の一例を示す図である。 放射性核種製造システムにおける容器を取り扱う処理の一例を示す図である。 放射性核種製造システムにおける容器を取り扱う処理の一例を示す図である。 放射性核種製造システムにおける容器を取り扱う処理の一例を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る放射性核種製造システムおよび放射性核種製造方法について、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において、共通する構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
本実施形態に係る放射性核種製造システムは、電子線の照射によって生成する制動放射線を、原料核種を含む液体、または、原料核種を含む固体に照射して放射性核種を製造するシステムである。この放射性核種製造システムでは、所定の原料核種に核反応の閾値以上のエネルギを持つ制動放射線を照射し、制動放射線による核反応によって原料核種を所定の生成核種に核変換させて目的の放射性核種を製造する。
本実施形態に係る放射性核種製造システムでは、原料核種を含む化学種や、原料核種から核反応によって生成された生成核種を含む化学種を、半密閉式の容器に収容した状態のまま、放射性核種の製造プロセスを行う。半密閉式の容器には、液体の化学種が収容されてもよいし、固体の化学種が収容されてもよい。半密閉式の容器には、製造プロセスの進捗に応じて、原料核種および生成核種のうち、少なくとも一方が含まれる。
放射性核種製造システムにおける放射性核種の製造プロセスは、次の方法で行われる。原料核種を含む適宜の化学形態の原料を、半密閉式の容器に収容する。そして、原料を収容した容器を照射部に配置して照射処理を行う。照射部は、電子線の照射が行われる部位であり、放射性核種製造システム内に設けられる。照射処理は、電子線の照射によって制動放射性を発生させて、原料核種に制動放射線を照射する処理である。
照射処理では、電子線照射装置から照射部に向けて高エネルギの電子線を照射する。電子線は、制動放射線発生用のターゲット材に照射される。制動放射線発生用のターゲット材は、照射部に配置されてもよいし、半密閉式の容器と一体的に設けられてもよい。制動放射線発生用のターゲット材は、所定のエネルギの電子線が照射されると、原料核種の核反応に必要な閾値以上のエネルギを持つ制動放射線を発生させる。制動放射線は、半密閉式の容器に収容された原料核種を含む原料に照射される。
照射処理を行うと、原料核種に制動放射線が照射されて核反応が起こり、原料核種が核変換されて所定の生成核種が生成される。続いて、照射処理を受けた半密閉式の容器を、照射部から分離精製部に搬送して分離精製処理を行う。分離精製部は、目的の放射性核種が回収される部位であり、放射性核種製造システム内に設けられる。分離精製処理は、制動放射線の照射によって前記原料核種から生成された生成核種を原料核種等から分離精製する処理である。
分離精製処理では、半密閉式の容器に収容されている原料核種や生成核種を含む化学種から、目的の放射性核種を、適宜の化学形態として回収する。回収する目的の放射性核種は、原料核種の核反応によって生成した娘核種であってもよいし、原料核種の核反応の後に娘核種の放射性壊変によって生成した子孫核種であってもよい。
原料核種としては、製造しようとする目的の放射性核種に応じて、適宜の核種を用いることができる。原料核種の具体例としては、ラジウム-226(Ra-226)、モリブデン-100(Mo-100)、亜鉛-68(Zn-68)、ハフニウム-178(Hf-178)、ゲルマニウム-70(Ge-70)等が挙げられる。
原料核種を核変換する核反応としては、製造しようとする目的の放射性核種、原料核種の種類、必要なエネルギ等に応じて、(γ,n)、(γ,p)、(γ,2n)、(γ,pn)等の適宜の光核反応を用いることができる。
放射性核種製造システム1で製造する放射性核種は、特に制限されるものではない。製造する放射性核種としては、RI内用療法に用いられる治療用薬剤の原料や、放射線診断に用いられる放射性標識試薬等として有用な点で、α線放出核種、β線放出核種またはγ線放出核種が好ましく、α線放出核種が特に好ましい。
例えば、α線放出核種であるアクチニウム-225(Ac-225)を製造する場合、Ra-226(γ,n)Ra-225反応とRa-225のβ崩壊を利用することができる。原料核種を含む原料としては、ラジウム-226(Ra-226)を含む塩化ラジウム(RaCl)、炭酸ラジウム(RaCO)等の固体や、これらを溶解させた硝酸溶液、水溶液等の液体を用いることができる。
放射性核種製造システムは、制動放射線を発生させるための電子線を生成する装置として、電子を発生させる線源と、電子を加速させる加速器と、を備える電子線発生装置を備えることができる。加速器としては、線形加速器を備えることが好ましい。電子線形加速器は、付与するエネルギが同じであれば、陽子加速器や重粒子加速器と比較して、小型化が可能である。
放射性核種の製造に制動放射線による核反応を利用すると、核反応に必要なエネルギを持つ入射粒子を、シンクロトロン、サイクロトロン等と比較して、小型の加速器で発生させることができる。また、中性子や荷電粒子による核反応を用いる場合と比較して、遮蔽材を厚く設ける必要がないため、装置を小型に設けることができる。
従来、加速器を用いてAc-225を製造する方法としては、Ra-226(p,2n)Ac-225反応を利用する方法が知られている。Ra-226(γ,n)Ra-225反応の反応断面積は、Ra-226(p,2n)Ac-225反応の反応断面積と同程度である。電子線形加速器を用いると、陽子加速器を用いる場合と比較して、加速器以外の構成要素についても小型化が可能である。
加速器を用いてAc-225を製造する方法としては、Ra-226(n,2n)Ra-225反応の後に、Ra-225をβ崩壊させてAc-225に変換する方法も知られている。Ra-226(n,2n)Ra-225反応の反応断面積は、Ra-226(γ,n)Ra-225反応の反応断面積と比較して1桁弱大きい。
しかし、この方法では、高速中性子を反応させるため、サイクロトロンで加速した重陽子を、炭素のターゲットや、トリチウムを吸蔵させた金属等のターゲットに照射する必要がある。高速中性子の遮蔽が必要であるため、厚い遮蔽材によってシステムが大型化する問題がある。また、多量の高速中性子が生成されるため、装置自体の放射化が顕著になる。
これに対し、Ra-226(γ,n)Ra-225反応とRa-225のβ崩壊を利用する場合、制動放射線発生用のターゲット材に電子線を照射して制動放射線を発生させるため、遮蔽が容易になる。電子線や制動放射線は、高速中性子等と比較して容易に遮蔽できるため、他の核反応を利用する方法と比較して、システムの小型化が可能になる。
Ra-225は、β崩壊を起こし、半減期14.8日で、Ac-225となる。Ac-225は、治療用薬剤の原料として有用なα線放出核種である。Ac-225は、半減期10.0日でFr-221となる。Fr-221は、半減期4.9分で、At-217となる。At-217は、半減期32ミリ秒で、Bi-213となる。これらの子孫核種も、α線放出核種であり、治療用薬剤の原料として利用できる。
Ra-226とRa-225は、α線放出核種ではないため、治療用薬剤の原料として不要である。照射処理後に残存するRa-226やRa-225は、Ac-225等のα線放出核種から分離することが好ましい。また、Ra-226は、比較的高価であるため、原料核種として再利用することが好ましい。分離精製処理では、未反応の原料核種から、目的の放射性核種に加え、このような不要な放射性核種を分離する。
Ra-226は、α崩壊を起こし、半減期1600年で、Rn-222となる。Rn-222は、沸点が-61.7℃であり、気体として存在する放射性核種である。Rn-222が環境中に拡散すると、Rn-222やその子孫核種が付着して放射能汚染を生じる。このような気体状の放射性物質は、放射性核種の製造時、環境中に放出させないことが好ましいため、原料核種や生成核種を含む液体や固体を密閉容器等に収容して閉鎖系で取り扱うことが望まれる。
しかし、原料核種を含む原料として液体を用いる場合、完全な閉鎖系での取り扱いには問題がある。液体に制動放射線を照射すると、液体に水が含まれている場合に水の放射線分解が起こり、酸素ガスや水素ガスが発生する。Ra-226(γ,n)Ra-225反応とRa-225のβ崩壊を利用する場合、Ac-225や、その子孫核種が放出するα線によっても、水の放射線分解が起こる。
原料核種や生成核種を含む液体や固体を、密閉容器に収容して取り扱うと、水の放射線分解が起こって酸素ガスや水素ガスが発生した場合に、密閉容器内にガスが蓄積する。多量のガスが蓄積すると、密閉容器の内圧が上昇するため、密閉容器が破損して放射性物質が漏洩する虞がある。また、原料核種や生成核種を含む液体が制動放射線で加熱された場合にも、液体の気化が進むため、密閉容器の内圧が上昇する虞がある。
原料核種として50GBqのRa-226を用いる場合、α崩壊によって、1秒間に5.0×1010個のRn-222が生成される。Rn-222は、半減期3.8日でα崩壊する。Rn-222の子孫核種は、気体状ではない場合もある。そのため、Ra-226によるガスの生成量は微量である。しかし、密閉容器に水溶液等を収容する場合、水の放射線分解によるガスの生成量は多くなる。水の放射線分解によって密閉容器が破損すると、微量の放射性物質も環境中に放出されてしまう。気体状の放射性物質は、環境中に拡散し易いため、広範囲な放射能汚染を生じる虞がある。
他方、原料核種を含む原料として固体を用いる場合、水の放射線分解は起こらないため、酸素ガスや水素ガスは発生しない。しかし、制動放射線が照射されると、密閉容器や固体が加熱されて、密閉容器の内圧が上昇する虞がある。密閉容器に、ヘリウム、窒素等のカバーガスが封入されている場合、カバーガスが膨張して、密閉容器の内圧が上昇し易くなる。
これに対し、本実施形態に係る放射性核種製造システムでは、原料核種や生成核種を含む液体や固体を、半密閉式の容器に収容した状態で取り扱う。半密閉式の容器には、分子の大きさに応じて気体を透過させる気体透過材料が用いられる。そのため、核反応や放射性壊変によって生じる大きい分子については、容器外への放出を抑制しつつ、容器の内圧を左右し易い小さい分子については、容器外に放出させることができる。そのため、容器の内圧の上昇を抑制して、放射性物質の漏洩を防ぐことができる。
図1および図2は、本実施形態に係る放射性核種製造システムで用いられる容器の一例を示す図である。
図1および図2には、放射性核種製造システムで用いられる半密閉式の容器10を、内部を透視して示している。図1および図2には、原料核種に制動放射線を照射する照射処理における容器10の状態を示す。
図1および図2に示すように、半密閉式の容器10は、分子の大きさに応じて気体を透過させる気体透過材料11と、対応する他の接続部と閉鎖系で接続されて流体の通流を可能にする接続部12と、電子線を照射されて制動放射線を発生させる制動放射線発生部13と、を有している。
図1において、容器10には、液体30が収容されている。液体30としては、原料核種を含む適宜の化学形態の化学種が溶解した溶液が用意される。液体30は、照射処理の後には、制動放射線の照射によって生成された生成核種を含む化学種や、未反応の原料核種を含む化学種や、これらの放射性壊変によって生じた子孫核種を含む化学種が混在した状態となる。
図2において、容器10には、固体31が収容されている。固体31としては、原料核種を含む適宜の化学形態の化学種の粉末、バルク等が用意される。固体31は、照射処理の後には、制動放射線の照射によって原料核種から生成された生成核種を含む化学種や、未反応の原料核種を含む化学種や、これらの放射性壊変によって生じた子孫核種を含む化学種が混在した状態となる。
容器10の液体30上や固体31上には、気体32が存在している。気体32としては、カバーガスや冷却材として機能するヘリウム、窒素等が封入される。気体32は、照射処理の後には、原料核種や生成核種の放射性壊変によって生じた気体状の放射性核種や、水の放射線分解によって生じた酸素ガスや水素ガスや、加熱によって気化した水蒸気等が混在した状態となる。
図1および図2に示す半密閉式の容器10は、放射性核種を製造する製造プロセスで用いられる。液体30や固体31は、容器10に収容されたまま、各種の処理を受ける。このような処理としては、原料核種を含む化学種の液体30や固体31を調製する処理、原料核種に制動放射線を照射する照射処理、生成核種を原料核種から分離精製する分離精製処理、システム内における液体30や固体31の搬送、放射性核種の回収等が挙げられる。
半密閉式の容器10は、システム内において自動または手動で搬送することができる。自動搬送は、ロボットアーム、コンベア等の適宜の自動搬送装置によって行うことができる。また、半密閉式の容器10は、対応する他の容器、カラム、配管等の機器に対して、自動または手動で接続される。自動接続は、ロボットアーム、自動開栓機等の適宜の装置によって行うことができる。
原料核種に制動放射線を照射する照射処理では、電子線1を容器10の下方から制動放射線発生部13に向けて照射する。制動放射線発生部13は、電子線1が照射されると、制動放射線を発生させて、原料核種を含む液体30または固体31に照射する。原料核種は、核反応を起こして所定の生成核種に核変換される。
容器10は、容器内と容器外を隔てる本体部を備えている。容器10の本体部の一部は、気体透過材料11で形成されている。容器10の本体部には、容器内と容器外とを連通する貫通孔を備えた接続部12が設けられている。図1および図2において、容器10の本体部は、中空の円柱形状に設けられている。但し、容器10の本体部は、中空の立方体、中空の直方体、中空の多角柱等の適宜の形状に設けることができる。
気体透過材料11は、分子の大きさに応じて気体を透過させる分子篩として機能する材料で形成される。気体透過材料11としては、酸素、水素、水蒸気、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、塩化水素、硝酸等の小さい分子を透過させる一方で、ラドン等の大きい分子を透過させない細孔を有する多孔質を用いることができる。気体透過材料11によると、大分子の容器10外への放出を抑制しつつ、小分子の容器10外への放出を許容して、容器10の内圧を抑制することができる。
ラドンの分子サイズは、約0.6nmである。酸素分子の分子サイズは、約0.35nmである。水素分子の分子サイズは、約0.28nmである。水分子の分子サイズは、約0.38nmである。ヘリウムの分子サイズは、約0.26nmである。窒素の分子サイズは、約0.36nmである。二酸化炭素の分子サイズは、約0.33nmである。
気体透過材料11としては、大きさが0.5nm未満の分子を透過し、大きさが0.5nm以上の分子を透過しない材料を用いることが好ましい。このような材料を用いると、Rn-222等の大分子を、容器10内に閉じ込めつつ、容器10の内圧を左右し易い酸素、水素、水蒸気、ヘリウム、窒素等の小分子を、容器10外に放出させることができる。容器10の内圧が抑制されて、容器10の破損が防止されるため、放射性物質の漏洩を抑制することができる。
気体透過材料11としては、多孔質である支持体にゼオライトを担持させた材料を用いることができる。支持体としては、表面積や機械的強度が確保される限り、モノリス状、シート状等の焼結体、発泡体等を用いることができる。支持体の材料としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の無機材料や、ステンレス鋼や、鉄、ニッケル、タングステンや、これらの合金等の金属材料が挙げられる。
気体透過材料11は、例えば、多孔質である支持体にゼオライトの種結晶を付着させた後、アルミニウム原料、ケイ素原料、アルカリ原料等を含む溶液中に支持体を浸漬させて、溶液中でゼオライトを水熱合成する方法によって形成することができる。気体透過材料11の厚さ、ゼオライト膜の厚さ、ゼオライトの粒径は、表面積や機械的強度が確保され、大分子の透過が防止される限り、特に限定されるものではない。
図1および図2において、気体透過材料11は、容器10の本体部の接続部12を除いた上面を形成している。気体透過材料11は、接続部12の周囲に円環状の部材として設けられている。気体透過材料11を容器10の本体部の上面に設けると、液体30上や固体31上の小分子を容器10外に効率的に放出できる。但し、気体透過材料11は、容器10の本体部の上面の他に、容器10の本体部の側面等、適宜の箇所に適宜の形状で設けることができる。
接続部12は、対応する他の容器、配管等の機器の接続部に対して、貫通孔内を外気に接触させることなく閉鎖系で接続される構造に設けられる。接続部12は、対応する他の機器の接続部と接続された状態で、容器10と他の機器との間で流体の双方向の通流を可能にする。放射性核種の製造に用いられる液体は、接続部12を通じて、容器10内への導入または容器10外への排出が可能とされる。
接続部12は、対応する他の機器の接続部が接続された状態では、貫通孔が開放されて流体の通流が可能であり、対応する他の機器の接続部が接続されていない状態では、貫通孔が閉鎖されて流体の通流が不能である構造に設けられることが好ましい。このような構造であると、接続部同士を接続する操作によって、液体30の導入や排出、容器10の密閉性を制御できるため、容器10の取り扱いの自動化が容易になる。
接続部12は、容器内と容器外とを連通する貫通孔、対応するコネクタと結合可能なコネクタ、貫通孔を気密に密閉するシール材等で形成することができる。容器10の接続部12のコネクタは、他の機器に設けられる対応するコネクタと結合可能に設けられる。コネクタは、互いに結合された状態で貫通孔を密閉するカップリングボディ等を備える構造に設けられる。接続部12は、貫通孔を開閉する機構や、貫通孔に設けられる逆止弁への付勢を解除する機構として、バネ式、圧力式、クランプ式等の適宜の機構を備えることができる。
図1および図2において、接続部12は、容器10の本体部の上面の中央から上方に向けて管状に突出している。但し、接続部12は、液体30の導入や排出が可能である限り、容器10の本体部の上面の他に、容器10の本体部の側面、容器10の本体部の下面等、適宜の箇所に適宜の形状で設けることができる。
制動放射線発生部13は、電子線の照射によって制動放射線を発生させる重金属で形成される。制動放射線発生部13を容器10の本体部の一部として一体的に設けると、容器10に収容された液体30や固体31に対して制動放射線を直接的に照射できるため、原料核種を均一性高く核反応させることができる。また、電子線1の飛程の終端を容器10内に設定できるため、電子線1の遮蔽が容易になる。
制動放射線発生部13の材料としては、原子番号が大きく、且つ、密度が高い重金属を用いることができる。制動放射線発生部13の材料としては、タングステン(W)、タンタル(Ta)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)や、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)等の白金族が挙げられる。
図1および図2において、制動放射線発生部13は、容器10の本体部の下面を形成している。制動放射線発生部13を容器10の本体部の下面に設けると、電子線1が照射されたとき、下部の液体30が加熱されるため、液体30を自然対流させて均一性高く核反応させることができる。但し、制動放射線発生部13は、原料核種に制動放射線が照射される限り、容器10の本体部の上面、容器10の本体部の側面、容器10と電子線発生装置との間等、適宜の箇所に適宜の形状で設けることができる。
図1に示すように、容器10に液体30が収容されている場合、液体30に水が含まれていると、制動放射線や放射性核種が放出した放射線によって、水の放射線分解が起こる。酸素ガスや水素ガスが発生して、容器10の内圧が上昇する虞がある。また、制動放射線や電子線1の入射によって、液体30や気体32が加熱される。液体30が気化すると、容器10の内圧が上昇する虞がある。
図2に示すように、容器10に固体31が収容されている場合、制動放射線や放射性核種が放出した放射線によって、水の放射線分解が起こることはない。但し、電子線1の入射によって、固体31や気体32が加熱される。気体32が加熱されると、気体32が膨張して、容器10の内圧が上昇する虞がある。
しかし、図1および図2に示すように、容器10の本体部の一部に気体透過材料11を用いると、液体30や固体31に生じたRn-222等の放射性物質の大分子を、容器10内に閉じ込めることができる。水の放射線分解で生成された酸素、水素や、加熱によって気化した水蒸気や、カバーガスとして封入されていたヘリウム、窒素や、原料の液体30や固体31から脱離した二酸化炭素、塩化水素、硝酸等の小分子を、容器10外に逃がすことができる。そのため、容器の内圧の上昇を抑制して、放射性物質の漏洩を防ぐことができる。
図3は、放射性核種製造システムにおける容器を取り扱う処理の一例を示す図である。
図3には、生成核種を含む化学種を乾固させる乾固処理を受ける半密閉式の容器10を、内部を透視して示している。図3に示すように、半密閉式の容器10は、原料核種を含む原料として液体30を用いる場合、原料核種に制動放射線を照射する照射処理を受けた後に、生成核種を含む化学種を乾固させる乾固処理を受ける。液体30に含まれる溶媒を除去することによって、生成核種の濃度が調整される。
図3において、容器10には、液体30が収容されている。液体30としては、制動放射線の照射によって生成された生成核種を含む溶液が収容されている。液体30には、生成核種を含む化学種と共に、未反応の原料核種を含む化学種や、これらの放射性壊変によって生じた子孫核種を含む化学種が混在している。
容器10の液体30上には、気体32が存在している。気体32としては、カバーガスや冷却材として機能するヘリウム、窒素等が封入される。気体32には、原料核種や生成核種の放射性壊変によって生じた気体状の放射性核種、水の放射線分解によって生じた酸素ガスや水素ガス、加熱によって気化した水蒸気等が含まれ得る。
図3に示すように、放射性核種製造システムは、半密閉式の容器10の内容物を加熱する加熱部40を備える。加熱部40は、電気炉等の抵抗加熱装置、誘導加熱装置、マイクロ波誘電加熱装置、高周波誘電加熱装置等の適宜の加熱装置を備えることができる。加熱部40は、容器10に収容された生成核種を含む液体30を加熱して乾固させる乾固処理(図3参照)や、容器10内の気体を加熱して加圧し、容器10に収容された液体30等を、気体32の圧力で排出させる処理(図4~6参照)を行う。
生成核種を含む液体30が収容された容器10は、原料核種に制動放射線を照射する照射処理の後、且つ、生成核種を原料核種から分離精製する分離精製処理の前に、加熱部40に搬送されて、生成核種を含む化学種を乾固させる乾固処理を受ける。
乾固処理では、容器10に収容された生成核種を含む液体30を加熱して、液体30に含まれる生成核種を含む化学種を固体として乾固させる。液体30に含まれる溶媒の化学種は、加熱によって留去される。加熱によって気化した水蒸気や、原料の液体30から脱離した二酸化炭素、塩化水素、硝酸等の小分子の一部は、水の放射線分解で生成された酸素、水素や、カバーガスとして封入されたヘリウム、窒素等の残存していた小分子と共に、気体透過材料11を透過して容器10外に放出される。ラドン等の大分子や、液体30に含まれていた固形分は、気体透過材料11を透過せず容器10内に残留する。
乾固処理は、容器10の内圧と同等の圧力雰囲気下で行ってもよいし、容器10の内圧よりも低い圧力雰囲気下で行ってもよい。容器10の内圧よりも低い圧力雰囲気に減圧すると、気体透過材料11を挟んで膜間圧力差が形成される。そのため、液体30に含まれる溶媒の化学種の気化や、気体透過材料11を通じた小分子の放出を促進させることができる。
図4は、放射性核種製造システムにおける容器を取り扱う処理の一例を示す図である。
図4には、乾固させた生成核種を含む化学種を溶解させる溶解処理を受ける半密閉式の容器10を、内部を透視して示している。図4に示すように、半密閉式の容器10は、生成核種を含む化学種を乾固させる乾固処理を受けた後に、生成核種を含む化学種を溶解させる溶解処理を受ける。生成核種を含む化学種の溶液を調製することによって、カラムクロマトグラフィによる分離精製処理が行われる。
図4において、容器10には、固体31が収容されている。固体31としては、制動放射線の照射によって生成された生成核種を含む化学種が乾固したスラッジ状、粉末状等の乾燥物が収容されている。固体31には、生成核種を含む化学種と共に、未反応の原料核種を含む化学種や、これらの放射性壊変によって生じた子孫核種を含む化学種が混在している。
容器20には、所定の濃度且つ所定の量に調製された溶解液33が収容されている。溶解液33としては、生成核種を含む化学種を溶解させるための硝酸溶液、塩酸溶液、水等が収容される。
容器20は、容器10と同様に、分子の大きさに応じて気体を透過させる気体透過材料11と、対応する他の接続部と閉鎖系で接続されて流体の通流を可能にする接続部12と、を有している。容器20は、容器10と同様に、制動放射線発生部13を有する構造に設けられてもよいし、制動放射線発生部13を有しない構造に設けられてもよい。容器20の接続部12と容器10の接続部12とは、互いに閉鎖系で接続可能に設けられる。
容器10の固体31上や、容器20の溶解液33上には、気体32が存在している。気体32としては、カバーガスとして機能するヘリウム、窒素等が封入される。容器10の固体31上の気体32には、原料核種や生成核種の放射性壊変によって生じた気体状の放射性核種、水の放射線分解によって生じた酸素ガスや水素ガス、加熱によって気化した水蒸気等が含まれ得る。
図4に示すように、放射性核種製造システムは、半密閉式の容器10を振動させる振動部50を備える。振動部50は、加熱部40の下方に配置される。振動部50は、偏心運動式、往復運動式、超振動式等の適宜の振動装置を備えることができる。振動部50は、容器10を振動させて、容器10に収容された液体30を攪拌する処理(図4参照)を行う。
乾固した生成核種を含む固体31が収容された容器10は、原料核種に制動放射線を照射する照射処理の後、且つ、生成核種を原料核種から分離精製する分離精製処理の前に、振動部50に搬送されて、生成核種を含む化学種を溶解させる溶解処理を受ける。固体31が収容された容器10の上方には、溶解液33が収容された容器20が搬送される。溶解液33が収容された容器20は、固体31が収容された容器10の上方に、上下を反転させて配置される。固体31が収容された容器10の接続部12は、溶解液33が収容された容器20の接続部12と接続される。
溶解処理では、溶解液33が収容された容器20内の気体32を加熱部40で加熱して加圧し、容器20に収容された溶解液33を、気体32の圧力で容器20の接続部12から排出させる。気体32は、加熱によって膨張し、容器20に収容された溶解液33を、乾固した固体31が収容された容器10に向けて押し出す。容器10にカバーガスとして封入されたヘリウム、窒素や、容器10に残存していた小分子の一部は、気体透過材料11を透過して容器10外に放出される。容器10に残存していたラドン等の大分子は、気体透過材料11を透過せず容器10内に残留する。
乾固した固体31が収容された容器10は、溶解液33が導入されると共に、振動部50によって振動が加えられる。固体31は、溶解液33が振動で攪拌されて溶解液33に溶解する。乾固処理の後に溶解処理を行うと、生成核種を含む化学種を、所定の濃度且つ所定の量の溶解液33に再溶解させることができるため、カラムクロマトグラフィによる分離精製処理に供する所定の濃度の溶液が得られる。
図5は、放射性核種製造システムにおける容器を取り扱う処理の一例を示す図である。
図5には、生成核種を原料核種から分離精製する分離精製処理のうち、生成核種を固定相に吸着させる吸着処理を受ける半密閉式の容器10を、内部を透視して示している。図5に示すように、半密閉式の容器10は、生成核種を含む化学種を溶解させる溶解処理を受けた後に、生成核種を固定相に吸着させる吸着処理を受ける。
図5において、上方の容器10には、液体30が収容されている。液体30としては、制動放射線の照射によって生成された生成核種を含む化学種が溶解液33に溶解した溶液が収容されている。液体30には、生成核種を含む化学種と共に、未反応の原料核種を含む化学種や、これらの放射性壊変によって生じた子孫核種を含む化学種が混在している。
上方の容器10の液体30上には、気体32が存在している。気体32としては、カバーガスとして機能するヘリウム、窒素等が封入される。気体32には、原料核種や生成核種の放射性壊変によって生じた気体状の放射性核種、水の放射線分解によって生じた酸素ガスや水素ガス、加熱によって気化した水蒸気等が含まれ得る。
下方の容器10には、気体32が封入されている。気体32としては、カバーガスとして機能するヘリウム、窒素等が封入される。図5には、少量の液体30が導入された容器10を示しているが、下方の容器10は、液体30を収容していない空状態で用意される。
図5に示すように、放射性核種製造システムは、生成核種を分離精製するためのカラム60を備える。カラム60は、中空の筒状に設けられている。カラム60の内部には、生成核種を分離精製するための固定相として機能する充填剤が充填されている。カラム60は、中空の筒状体の両端部に、対応する他の接続部と閉鎖系で接続されて流体の通流を可能にする接続部12を有している。カラム60の接続部12と容器10,20の接続部12とは、互いに閉鎖系で接続可能に設けられる。
カラム60の固定相としては、例えば、抽出クロマトグラフィ用のレジンを用いることができる。固定相の具体例としては、N,N,N´,N´-テトラキス-2-エチルヘキシルジグリコールアミド、4,4´(5´)-ジtert-ブチルシクロヘキサノ18-クラウン-6等が挙げられる。レジンに対する核種の親和性は、硝酸、塩酸等の酸濃度や塩濃度等に依存するため、目的の放射性核種を選択的に分離精製することができる。
再溶解された生成核種を含む液体30が収容された容器10は、生成核種を原料核種から分離精製する分離精製処理において、加熱部40に搬送される。また、廃液を回収するための容器10が、加熱部40の下方の振動部50に配置される。液体30が収容された容器10は、廃液を回収するための容器10の上方に、上下を反転させて配置される。液体30が収容された上方の容器10は、接続部12を介して、カラム60の一端と接続される。カラム60の他端は、接続部12を介して、廃液を回収するための下方の容器10と接続される。
吸着処理では、生成核種を含む液体30が収容された容器10内の気体32を加熱部40で加熱して加圧し、容器10に収容された液体30を、気体32の圧力で容器10の接続部12から排出させる。気体32は、加熱によって膨張し、容器10に収容された生成核種を含む液体30を、廃液を回収するための容器10に向けて押し出す。廃液を回収するための容器10にカバーガスとして封入されたヘリウム、窒素等の小分子の一部は、気体透過材料11を透過して容器10外に放出される。
下方の容器10内の気体32の一部が容器10外に放出されると、上方の容器10内が陽圧となるため、上方の容器10に収容された生成核種を含む液体30は、固定相が充填されたカラム60内に導入される。液体30に含まれる生成核種は、カラム60内を通流する過程で、カラム60内に充填された固定相に吸着される。カラム60内に導入された液体30は、カラム60内を通過した後に、下方の容器10に流入して廃液として回収される。
生成核種を含む液体30が収容された容器10内には、ラドン等の大分子が残存している場合がある。ラドン等の大分子は、気体透過材料11を透過することができないため、カラム60内や、廃液を回収するための容器10内に閉じ込められ、環境中に拡散するのが防止される。廃液を回収するための容器10に流入した液体30は、未反応の原料核種を含んでいる場合がある。そのため、下方の容器10は、カラム60から取り外した後に照射処理に再利用できる。下方の容器10に、カバーガスを封入しておくと、流入した未反応の原料核種を含む液体30を、カバーガスで覆うことができる。
図6は、放射性核種製造システムにおける容器を取り扱う処理の一例を示す図である。
図6には、生成核種を原料核種から分離精製する分離精製処理のうち、生成核種を固定相から溶離させる溶離処理を受ける半密閉式の容器10を、内部を透視して示している。図6に示すように、半密閉式の容器10は、生成核種を固定相から溶離させる溶離処理に用いることができる。
図6において、上方の容器20には、所定の濃度且つ所定の量に調製された溶離液34が収容されている。溶離液34としては、生成核種を固定相から溶離させるための硝酸溶液、塩酸溶液、水等が収容される。溶離液34は、カラム60の固定相から生成核種を溶離させるために、溶解液33とは異なる濃度に調整される。
容器20の溶離液34上には、気体32が存在している。気体32としては、カバーガスとして機能するヘリウム、窒素等が封入される。
下方の容器10には、気体32が封入されている。気体32としては、カバーガスとして機能するヘリウム、窒素等が封入される。図6には、少量の溶離液34が導入された容器10を示しているが、下方の容器10は、溶離液34や液体30を収容していない空状態で用意される。
生成核種を固定相に吸着させる吸着処理の後、生成核種が固定相に吸着されたカラム60の一端は、接続部12を介して、溶離液34が収容された容器20と接続される。カラム60の他端は、接続部12を介して、生成核種を回収するための容器10と接続される。溶離液34が収容された容器20は、加熱部40に配置される。生成核種を回収するための容器10は、加熱部40の下方に配置される。
溶離処理では、溶離液34が収容された容器20内の気体32を加熱部40で加熱して加圧し、容器20に収容された溶離液34を、気体32の圧力で容器20の接続部12から排出させる。気体32は、加熱によって膨張し、容器20に収容された溶離液34を、カラム60に向けて押し出す。生成核種を回収するための容器10内にカバーガスとして封入されたヘリウム、窒素等の小分子の一部は、気体透過材料11を透過して容器10外に放出される。
容器10内の気体32の一部が容器10外に放出されると、上方の容器20内が陽圧となるため、上方の容器20に収容された溶離液34は、固定相が充填されたカラム60内に導入される。溶離液34は、カラム60内を通流する過程で、カラム60内に充填された固定相に吸着された生成核種を溶離させる。カラム60内に導入された溶離液34は、カラム60内を通流した後に、溶離した生成核種と共に、下方の容器10に流入して回収される。下方の容器10に、カバーガスを封入しておくと、流入した生成核種を含む溶離液34を、カバーガスで覆うことができる。
カラム60内には、ラドン等の大分子が微量に残存している場合がある。ラドン等の大分子は、気体透過材料11を透過することができないため、カラム60内や、生成核種を回収するための容器10内に閉じ込められ、環境中に拡散するのが防止される。Rn-222は、半減期3.8日でα崩壊し、徐々に固体状の放射性核種に変換されていく。そのため、ラドン等の大分子を容器10内に閉じ込めて静置・保管することによって、固体として処理することができる。
以上の放射性核種製造システムおよび放射性核種製造方法によると、原料核種や生成核種を、半密閉式の容器に収容した状態のまま、放射性核種の製造プロセスで取り扱うことができる。半密閉式の容器には、気体透過材料11が用いられているため、大分子については、容器外への放出を抑制しつつ、小分子については、容器外に放出させることができる。容器の内圧が抑制されるため、気体状の放射性物質の漏洩を抑制して安全に放射性核種を製造することができる。
以上の放射性核種製造システムおよび放射性核種製造方法によると、容器の内圧の上昇を抑制して、放射性物質の漏洩を防ぐことができるため、各種の処理を行うシステム内の部位を、より簡易な遮蔽構造に設けることができる。気中の放射性物質を除去するフィルタ装置等の除去設備や、放射線の遮蔽設備を簡易な構造に設けることができるため、システムを小型化・低コスト化できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、本発明は、必ずしも前記の実施形態が備える全ての構成を備えるものに限定されない。或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成の一部を他の形態に追加したり、或る実施形態の構成の一部を省略したりすることができる。
10 容器
11 気体透過材料
12 接続部
13 制動放射線発生部
20 容器
30 液体
31 固体
32 気体
33 溶解液
34 溶離液
40 加熱部
50 振動部
60 カラム

Claims (15)

  1. 電子線の照射によって生成する制動放射線を、原料核種を含む液体または固体に照射して放射性核種を製造する放射性核種製造システムであって、
    前記原料核種、および、前記制動放射線の照射によって前記原料核種から生成された生成核種のうち、少なくとも一方を含む液体または固体を収容する容器を備え、
    前記容器は、前記容器の本体部の一部を形成し、分子の大きさに応じて気体を透過させる気体透過材料と、前記容器の本体部に設けられており、対応する他の接続部と閉鎖系で接続されて流体の通流を可能にする接続部と、を有する放射性核種製造システム。
  2. 請求項1に記載の放射性核種製造システムであって、
    前記気体透過材料は、0.5nm未満の分子を透過し、0.5nm以上の分子を透過しない分子篩として機能する放射性核種製造システム。
  3. 請求項1に記載の放射性核種製造システムであって、
    前記気体透過材料は、多孔質である支持体にゼオライトを担持させた材料である放射性核種製造システム。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射性核種製造システムであって、
    前記容器を加熱する加熱部を備え、
    前記容器は、前記原料核種に制動放射線を照射する処理の後、且つ、前記生成核種を前記原料核種から分離精製する処理の前に、前記加熱部に搬送される放射性核種製造システム。
  5. 請求項4に記載の放射性核種製造システムであって、
    前記加熱部は、前記容器に収容された前記生成核種を含む液体を加熱して乾固させる処理、または、前記容器内の気体を加熱して加圧し、前記容器に収容された液体を、前記気体の圧力で前記接続部から排出させる処理を行う放射性核種製造システム。
  6. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射性核種製造システムであって、
    前記容器を振動させる振動部を備え、
    前記容器は、前記原料核種に制動放射線を照射する処理の後、且つ、前記生成核種を前記原料核種から分離精製する処理の前に、前記振動部に搬送される放射性核種製造システム。
  7. 請求項6に記載の放射性核種製造システムであって、
    前記振動部は、前記容器を振動させて、前記容器に収容された液体を攪拌する放射性核種製造システム。
  8. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射性核種製造システムであって、
    前記容器は、前記容器の本体部の一部を形成し、前記電子線を照射されて前記制動放射線を発生させる制動放射線発生部を有する放射性核種製造システム。
  9. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射性核種製造システムであって、
    前記生成核種を分離精製するためのカラムを備え、
    前記カラムは、前記カラムの両端部に、対応する他の接続部と閉鎖系で接続されて流体の通流を可能にする接続部を有し、
    前記カラムの接続部と前記容器の接続部とは、互いに接続可能である放射性核種製造システム。
  10. 請求項9に記載の放射性核種製造システムであって、
    前記容器を加熱する加熱部を備え、
    前記加熱部は、前記カラムに接続された一方の前記容器内の気体を加熱して加圧し、前記容器に収容された液体を、前記気体の圧力で前記接続部から排出させて、前記カラムを通じて、前記カラムに接続された他方の前記容器内に移動させる放射性核種製造システム。
  11. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射性核種製造システムであって、
    複数の前記容器を備え、
    前記容器の接続部は、複数の前記容器同士で互いに接続可能である放射性核種製造システム。
  12. 請求項11に記載の放射性核種製造システムであって、
    前記容器を加熱する加熱部を備え、
    前記加熱部は、互いに接続された一方の前記容器内の気体を加熱して加圧し、前記容器に収容された液体を、前記気体の圧力で前記接続部から排出させて、他方の前記容器内に移動させる放射性核種製造システム。
  13. 請求項11に記載の放射性核種製造システムであって、
    前記容器を加熱する加熱部と、
    前記容器を振動させる振動部と、を備え、
    前記加熱部は、互いに接続された一方の前記容器内の気体を加熱して加圧し、前記容器に収容された液体を、前記気体の圧力で前記接続部から排出させて、他方の前記容器内に移動させ、
    前記振動部は、前記液体が導入された前記容器を振動させて、前記容器に収容された固体を溶解させる放射性核種製造システム。
  14. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射性核種製造システムであって、
    前記接続部は、対応する他の接続部が接続された状態では、開放されて流体の通流が可能であり、対応する他の接続部が接続されていない状態では、閉鎖されて流体の通流が不能である放射性核種製造システム。
  15. 電子線の照射によって生成する制動放射線を、原料核種を含む液体または固体に照射して放射性核種を製造する放射性核種製造方法であって、
    原料核種に制動放射線を照射する照射処理と、
    前記制動放射線の照射によって前記原料核種から生成された生成核種を分離精製する分離精製処理と、を含み、
    前記照射処理および前記分離精製処理において、前記原料核種、および、前記生成核種のうち、少なくとも一方を含む液体または固体を容器に収容した状態で取り扱い、
    前記容器は、前記容器の本体部の一部を形成し、分子の大きさに応じて気体を透過させる気体透過材料と、前記容器の本体部に設けられており、対応する他の接続部と閉鎖系で接続されて流体の通流を可能にする接続部と、を有する放射性核種製造方法。
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