JP2023081725A - 積層板及びそれを用いた金属張積層板 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた誘電率、誘電正接及び誘電率均一性を有し、かつ低熱膨張係数及び優れた耐熱性を有する積層板を提供すること。【解決手段】本開示は、ガラス繊維クロスに第一のマトリックス樹脂が含浸又は塗布された少なくとも一つの第一樹脂層を含む、コア層と、上記コア層の片面又は両面に積層され、有機繊維クロスに第二のマトリックス樹脂が含浸又は塗布された少なくとも一つの第二樹脂層を含む、表面層とを備える、積層板を提供する。上記第二樹脂層の熱膨張係数は、上記第一樹脂層の熱膨張係数よりも大きい。【選択図】図1

Description

本開示は、積層板及びそれを用いた金属張積層板に関する。
近年、情報ネットワーク技術の著しい進歩又は情報ネットワークを活用したサービスの拡大に伴い、電子機器には情報量の大容量化、及び処理速度の高速化が求められている。これらの要求に応えるため、電子機器に搭載されるプリント配線板には、従来から求められていた、絶縁信頼性、耐熱性、剛性、難燃性等の特性に加え、低誘電率及び低誘電正接が強く求められている。したがって、プリント配線板を構成する主要な絶縁材料である、樹脂組成物(以下「マトリックス樹脂組成物」ともいう。)とガラスクロスでは、誘電率及び誘電正接の更なる改良が検討されている。
マトリックス樹脂組成物としては、低い誘電率及び誘電正接、並びに高い耐熱性を有するポリフェニレンエーテル(以下、「PPE」ともいう。)と他樹脂を含む混合物が、上述のプリント配線板用材料として好適に使用される。例えば、特許文献1に記載の樹脂組成物は、特定の変性ポリフェニレンエーテルと、架橋剤として特定のシアヌレート化合物と、ブタジエン及びスチレンの共重合体と、有機過酸化物とを所定の割合で含有すると、低誘電率及び低誘電正接に優れるマトリックス樹脂組成物が得られることが記載されている。
ガラスクロスとしては、一般的なEガラスとは異なる組成の、NEガラス、Lガラス等の低誘電率ガラスクロスが好適に使用される。通常、低誘電率化にはガラス組成中のSiOとBの配合量を増やす必要がある。これまで、プリント配線板用ガラスクロスに実際に応用された低誘電率ガラス組成は、SiO配合量が45質量%~60質量%、B配合量が15質量%~30質量%に調整されることが多かった(特許文献2及び3)。一方、ガラスクロス以外の低誘電率基材として、有機繊維クロスを用いた検討がなされている(特許文献4及び5)。
特開2017-82200号公報 特開昭63-2831号公報 特開平11-292567号公報 特表2017-502179号公報 特開2008-069478号公報
河野賢哉,中康弘,谷江尚史,木本良輔,山本健一著「高温劣化を考慮したはんだ接合部の疲労寿命予測手法」エレクトロニクス実装学会誌、17(2),2014年、pp.123~131
しかし、将来の200Gbps以上の高速伝送において、信号のずれ(SKEW)の問題が顕在化してきている。この問題は、基板の絶縁層の局所的な誘電率のばらつきに主な原因がある。一般的な低誘電率マトリックス樹脂組成物の誘電率は2.0~3.0程度なのに対し、低誘電率ガラスクロスは4.6~4.8程度であり、低誘電率ガラスクロスの基板内での局所ばらつきが、大きな問題になってきている。また、特許文献4及び5に記載されるように有機繊維クロスを用いても、クロス、プリプレグ、積層板としての十分な低熱膨張係数及び耐熱性は得られていない。このように、低誘電率の樹脂組成物と低誘電率のガラスクロスとを組み合わせたプリプレグ、又は積層板を作製した場合、高速伝送に必要な絶縁層の誘電率均一性が得られないという課題があり、有機繊維クロスを用いたとしても、クロス、プリプレグ、積層板としての十分な低熱膨張係数及び耐熱性は得られていなかった。
本開示は、優れた誘電率、誘電正接及び誘電率均一性を有し、かつ低熱膨張係数、及び優れた耐熱性を有する積層板を提供することを課題とする。
発明者らは、ガラス繊維クロスを有する第一樹脂層を含むコア層と、有機繊維クロスを有する第二樹脂層を含む表面層とを備える積層板において、第二樹脂層の熱膨張係数を第一樹脂層の熱膨張係数よりも大きくすることにより、上記課題を解決することができることを見いだした。本開示の実施形態の例を以下の項目[1]~[19]に列記する。
[1]
ガラス繊維クロスに第一のマトリックス樹脂が含浸又は塗布された少なくとも一つの第一樹脂層を含む、コア層と、
上記コア層の片面又は両面に積層され、有機繊維クロスに第二のマトリックス樹脂が含浸又は塗布された少なくとも一つの第二樹脂層を含む、表面層と
を備える、積層板であって、
上記第二樹脂層の熱膨張係数が、上記第一樹脂層の熱膨張係数よりも大きい、積層板。
[2]
上記第一樹脂層の熱膨張係数が、3ppm/℃以上20ppm/℃未満であり、かつ上記第二樹脂層の熱膨張係数が、18ppm/℃以上200ppm/℃以下である、項目1に記載の積層板。
[3]
上記表面層が上記コア層の両面に積層された、項目1又は2に記載の積層板。
[4]
上記有機繊維クロスの繊維は、ポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物から構成される繊維である、項目1~3のいずれか一項に記載の積層板。
[5]
上記ポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物は、上記樹脂組成物の全質量を基準として、5質量%~95質量%のポリフェニレンエーテルと、5質量%~95質量%の液晶ポリエステル及びシンジオタクチックポリスチレンから選択される少なくとも1つとを含む、項目4に記載の積層板。
[6]
上記第一樹脂層の熱膨張係数が、3ppm/℃以上20ppm/℃未満であり、かつ上記第二樹脂層の熱膨張係数が、20ppm/℃以上150ppm/℃以下である、項目1~5のいずれか一項に記載の積層板。
[7]
上記コア層は2層以上の上記第一樹脂層を含む、項目1~6のいずれか一項に記載の積層板。
[8]
上記コア層に含まれる上記第一樹脂層の層数は、上記表面層に含まれる上記第二樹脂層の層数より多い、項目1~7のいずれか一項に記載の積層板。
[9]
上記表面層に含まれる第二のマトリックス樹脂の誘電率が2.0以上3.0以下であり、かつ有機繊維クロスの誘電率は、2.0以上3.0以下である、項目1~8のいずれか一項に記載の積層板。
[10]
項目1~9のいずれか一項に記載の積層板と、上記積層板の上記表面層に積層された金属箔とを有する、金属張積層板。
[11]
ガラス繊維クロスに第一のマトリックス樹脂が含浸または塗布された少なくとも一つの第一プリプレグと、有機繊維クロスに第二のマトリックス樹脂が含浸または塗布された少なくとも一つの第二プリプレグとを積層して、上記少なくとも一つの第一プリプレグを含むコア層と、上記コア層の片面又は両面に積層された上記少なくとも一つの第二プリプレグを含む表面層とを備える、プリプレグ積層体を準備する工程と、
上記第一のマトリックス樹脂及び上記第二のマトリックス樹脂を硬化する工程と、
を含む、積層板の製造方法であって、
上記第二プリプレグの熱膨張係数が、上記第一プリプレグの熱膨張係数よりも大きい、積層板の製造方法。
[12]
上記第一プリプレグの熱膨張係数が、3ppm/℃以上20ppm/℃未満であり、かつ上記第二プリプレグの熱膨張係数が、18ppm/℃以上200ppm/℃以下である、項目11に記載の方法。
[13]
上記表面層が上記コア層の両面に積層される、項目11又は12に記載の方法。
[14]
上記有機繊維クロスの繊維は、ポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物から構成される繊維である、項目11~13のいずれか一項に記載の方法。
[15]
上記ポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物は、上記樹脂組成物の全質量を基準として、5質量%~95質量%のポリフェニレンエーテルと、5質量%~95質量%の液晶ポリエステル及びシンジオタクチックポリスチレンから選択される少なくとも1つとを含む、項目14に記載の方法。
[16]
上記第一プリプレグの熱膨張係数が、3ppm/℃以上20ppm/℃未満であり、かつ上記第二プリプレグの熱膨張係数が、20ppm/℃以上150ppm/℃以下である、項目11~15のいずれか一項に記載の方法。
[17]
上記コア層に2層以上の上記第一プリプレグが積層される、項目11~16のいずれか一項に記載の方法。
[18]
上記コア層に積層される上記第一プリプレグの層数は、上記表面層に積層される上記第二プリプレグの層数より多い、項目11~17のいずれか一項に記載の方法。
[19]
上記表面層に含まれる第二のマトリックス樹脂の誘電率が2.0以上3.0以下であり、かつ有機繊維クロスの誘電率は、2.0以上3.0以下である、項目11~18のいずれか一項に記載の方法。
本開示によれば、優れた誘電率、誘電正接及び誘電率均一性を有し、かつ優れた低熱膨張係数及び耐熱性を有する積層板を提供することができる。
図1は、本開示の積層板の断面を示す模式図である。 図2は、本開示の積層板の断面を示す模式図である。 図3は、本開示の積層板の断面を示す模式図である。 図4は、本開示の積層板の断面を示す模式図である。 図5は、本開示の金属張積層板の断面を示す模式図である。 図6は、実施例のコンピュータシミュレーションによる温度サイクル試験のための積層板の積層構造を示す模式図である。 図7は、実施例のコンピュータシミュレーションによる表面層での電気信号遅延を評価するための積層板の積層構造を示す模式図である。
以下、必要に応じて図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、様々な変更を加えることができる。また、本明細書での「~」とは、特に断りがない場合、その両端の数値を上限値、及び下限値として含む意味である。本明細書において、数値範囲の上限値、及び下限値は任意に組み合わせることができる。
<積層板>
本開示の積層板は、ガラス繊維クロスに第一のマトリックス樹脂が含浸又は塗布された少なくとも一つの第一樹脂層を含む、コア層と、上記コア層の片面又は両面に積層され、有機繊維クロスに第二のマトリックス樹脂が含浸又は塗布された少なくとも一つの第二樹脂層を含む、表面層とを備える。そして、上記第二樹脂層の熱膨張係数が、上記第一樹脂層の熱膨張係数よりも大きい。有機繊維クロスの誘電率は、ガラス繊維クロスの誘電率と比べて、低誘電率マトリックス樹脂の誘電率に近く、そのため積層板内の誘電率の局所的ばらつきを低減することができる。そのような有機繊維クロスを有する第二樹脂層を表面層として備えることにより、主に積層板表面付近における誘電率の局所的ばらつきが低減され、高速伝送における信号のずれ(SKEW)を低減することができる。また、ガラス繊維クロスを有する第一樹脂層をコア層として有することにより、積層板全体の十分な低熱膨張係数及び耐熱性を達成することができる。
第二樹脂層の熱膨張係数は、第一樹脂層の熱膨張係数よりも大きい。すなわち、第一樹脂層の熱膨張係数をCTE1、第二樹脂層の熱膨張係数をCTE2とすると、CTE2>CTE1の条件を満たす。これによって、積層板全体としての熱膨張係数を、はんだの熱膨張係数と同程度もしくは大きくすることができ、電子部品を実装した場合の温度サイクルに伴うはんだへのひずみ緩和効果を得ることができる。積層板の熱膨張係数が小さい場合、積層板上に実装した電子部品および積層板の両方からはんだが圧縮される構造となるが、積層板の熱膨張係数がはんだの熱膨張係数と同等もしくは大きい場合、はんだが実装した部品側からは圧縮、積層板側からは膨張させられる構造とすることができる。この構造の変化により、温度サイクルに伴うはんだへのひずみを緩和することができ、はんだクラックの信頼性寿命を延ばすことができ、温度サイクル信頼性が向上する。CTE2はCTE1の10倍以下が好ましく、より好ましくは、CTE2はCTE1の8倍以下、さらに好ましくは、CTE2はCTE1の6倍以下、特に好ましくは、CTE2はCTE1の4倍以下である。
コア層は、一つ又は複数の第一樹脂層を有することができ、表面層は、一つ又は複数の第二樹脂層を有することができる。積層構造は、上記ガラス繊維クロスを有する第一樹脂層をコア層とし、有機繊維クロスを有する第二樹脂層を表面層として備える限り、特に限定されない。例えば、図1~4は、本開示の積層板の断面を示す模式図である。図1において、積層板(100)は、ガラス繊維クロスに第一のマトリックス樹脂が含浸又は塗布された2層の第一樹脂層(1)からなるコア層(10)と、コア層(10)の両面に積層され、有機繊維クロスに第二のマトリックス樹脂が含浸又は塗布された1層の第二樹脂層からなる表面層(20)を有する。図2において、積層板(100)は、2層の第一樹脂層(1)からなるコア層(10)と、コア層(10)の片面に積層された、2層の第二樹脂層からなる表面層(20)を有する。図3において、積層板(100)は、5層の第一樹脂層(1)からなるコア層(10)と、コア層(10)の両面に積層された、2層の第二樹脂層からなる表面層(20)を有する。図4において、積層板(100)は、5層の第一樹脂層(1)からなるコア層(10)と、コア層(10)の片面に積層された、2層の第二樹脂層からなる表面層(20)を有する。このように、ガラス繊維クロスを含有するコア層上に有機繊維クロスを含有する表面層を配置することによって、積層板全体としての熱膨張係数を低減することができる。また、誘電率のばらつきに伴い積層板上で発生する、配線ごとの電気信号の遅延差を低減することができる。
積層板の熱膨張係数の低減効果をより効果的に得るためには、コア層の第一樹脂層の層数は2層以上であることが好ましい。そのような積層構造は、図1~4に例示される。コア層の第一樹脂層の層数を2層以上とすることで、コア層の機械的強度を増すことができ、コア層と表面層の寸法変化量の不均一さに伴って生じる積層板の反りを低減することで耐熱性をより向上できる。コア層の第一樹脂層の層数は80層以下であることが製造上好ましい。より好ましくは、第一樹脂層は、2層以上80層以下、さらに好ましくは4層以上64層以下、特に好ましくは8層以上32層以下である。
積層板の熱膨張係数の低減効果をより効果的に得るためには、コア層の第一樹脂層の層数をn、表面層の第二樹脂層の層数をmとしたとき、m/n<1の条件を満たすことが好ましい。すなわち、コア層に含まれる第一樹脂層の層数が、表面層に含まれる第二樹脂層の層数より多いことが好ましい。そのような積層構造は、図3及び4に例示される。この条件を満たすことで、積層板全体の熱膨張係数におけるコア層の熱膨張係数を支配的とすることができ、表面層の熱膨張を抑制する効果が高まり、積層板としての熱膨張係数をより低減できる。
積層板の熱膨張係数の低減効果をより効果的に得るためには、表面層がコア層の両面に積層されることが好ましく、コア層および表面層が、積層板の断面において積層板の厚みを二分する中心線に対してそれぞれ対称に配置されることがより好ましい。そのような積層構造は、図1及び3に例示される。コア層の両面に表面層を積層することで、両面での温度変化に伴う寸法変化量の不均一さを低減する事ができ、積層板としての熱膨張係数を均一に低減することが可能となる。また、寸法変化量の不均一さに伴って生じる積層板の反りも低減することが可能となる。コア層および表面層を対称に配置することで、両面での温度変化に伴う寸法変化量の不均一さを低減又は解消する事ができ、両面で同様の熱膨張の抑制効果を得ることができる。両面で同様の効果を得ることにより、積層板としての熱膨張係数を均一に低減することが可能となる。また、寸法変化量の不均一さに伴って生じる積層板の反りも低減でき信頼性を向上させることができる。
積層板の厚さは、好ましくは、1.0mm以上8.0mm以下である。より好ましくは1.2mm以上6.4mm以下、さらに好ましくは1.4mm以上5.6mm以下、とくに好ましくは1.6mm以上4.2mm以下である。積層板の厚さが上記範囲内であると、機械的強度および生産性のバランスがとくに優れ、回路基板に適した積層板を得ることができる。
表面層を形成する第二樹脂層の面方向の熱膨張係数は、好ましくは8ppm/℃以上300ppm/℃以下であり、より好ましくは14ppm/℃以上250ppm/℃以下、さらに好ましくは18ppm/℃以上200ppm/℃以下、より更に好ましくは20ppm/℃以上150ppm/℃以下である。表面層を形成する第二樹脂層の熱膨張係数が上記範囲内であると、コア層と積層した際に積層板としての熱膨張係数がはんだの熱膨張係数と同程度もしくは大きくすることができる。これにより、電子部品に実装した場合の温度サイクルに伴うはんだへのひずみ緩和効果を得ることができる。積層板の熱膨張係数が小さい場合、積層板上に実装した電子部品および積層板の両方からはんだが圧縮される構造となるが、積層板の熱膨張係数がはんだの熱膨張係数と同等もしくは大きい場合、はんだが実装した部品側からは圧縮、積層板側からは膨張させられる構造とすることができる。この構造の変化により、温度サイクルに伴うはんだへのひずみを緩和することができ、はんだクラックの信頼性寿命を延ばすことができ、温度サイクル信頼性の向上がより一層効果的に得られる。
コア層を形成する第一樹脂層の面方向の熱膨張係数は、好ましくは1ppm/℃以上100ppm/℃以下であり、より好ましくは2ppm/℃以上50ppm/℃以下、更に好ましくは3ppm/℃以上20ppm/℃未満にすることにより、積層板の熱膨張係数をはんだの熱膨張係数に近づけることができ、はんだクラックの信頼性寿命を延ばすことができる。本願明細書において、熱膨張係数は、とくに断りがなければ、50℃以上150℃以下の領域における線膨張係数の平均値を表す。
コア層を形成する第一樹脂層に用いる第一のマトリックス樹脂と、表面層を形成する第二樹脂層に用いる第二のマトリックス樹脂とは、異なる組成物であっても同組成物であってもよく、同組成物で構成することが好ましい。同組成物であることにより第一樹脂層と第二樹脂層の界面の密着性を向上させることができ、温度サイクルに伴い生じる第一樹脂層と第二樹脂層の層間の応力による層間剥離を防ぎ、信頼性寿命を延ばすことができる。
<積層板の製造方法>
本開示の積層板の製造方法は、まず、ガラス繊維クロスに第一のマトリックス樹脂が含浸または塗布された少なくとも一つの第一プリプレグと、有機繊維クロスに第二のマトリックス樹脂が含浸または塗布された少なくとも一つの第二プリプレグとをそれぞれ準備する。このとき、第二プリプレグの熱膨張係数は、第一プリプレグの熱膨張係数よりも大きい。つぎに、第一プリプレグと第二プリプレグとを積層して、少なくとも一つの第一プリプレグを含むコア層と、当該コア層の片面又は両面に積層された少なくとも一つの第二プリプレグを含む表面層とを備える、プリプレグ積層体を準備する。そして、第一のマトリックス樹脂及び第二のマトリックス樹脂を硬化することにより、積層板を製造することができる。本願明細書において、硬化前の「第一プリプレグ」及び「第二プリプレグ」は、硬化後における「第一樹脂層」及び「第二樹脂層」に対応する。
例えば、図1~4に例示するように、プリプレグの積層方向において、第一プリプレグを1層以上積層したコア層、第二プリプレグを1層以上積層した表面層を重ね合わせることができる。このとき、積層板の熱膨張係数の低減効果をより効果的に得るためには、コア層の層数をn、表面層の層数をmとしたとき、m/n<1の条件を満たすように、各プリプレグを重ね合わせることが好ましい。プリプレグの積層方向において、コア層の両面に表面層を積層することが好ましく、積層板の断面において積層板の厚みを二分する中心線に対してそれぞれ対称に配置することがより好ましい。その理由は、上述のとおりである。
なお、積層方法としては、とくに限定されないが、例えばバッチ式であってもよいし、各プリプレグを連続的に供給して、真空ラミネート装置、真空ベクレル装置などを用いて連続的に積層してもよい。
最後に、上記のように重ね合わせた第一プリプレグ201および第二プリプレグ202を加熱、加圧して成形することにより、図1~4に例示するような本開示の積層板が得られる。
上記加熱処理する方法としては、とくに限定されないが、例えば、熱風乾燥装置、赤外線加熱装置、加熱ロール装置、平板状の熱盤プレス装置などを用いて実施することができる。熱風乾燥装置または赤外線加熱装置を用いた場合は、上記接合したものに実質的に圧力を作用させることなく実施することができる。また、加熱ロール装置または平板状の熱盤プレス装置を用いた場合は、上記接合したものに所定の圧力を作用させることで実施することができる。
加熱処理する際の温度は、とくに限定されないが、用いる樹脂が溶融し、かつ樹脂の硬化反応が急速に進行しないような温度域とすることが好ましい。例えば、PPE樹脂を用いる場合、溶融する温度としては好ましくは120℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。また、樹脂の硬化反応が急速に進行しない温度としては好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。
加熱処理する時間は用いる樹脂の種類などにより異なるため、とくに限定されないが、例えば、30分間以上180分間以下処理することにより実施することができる。また、加圧する圧力は、とくに限定されないが、例えば、0.2MPa以上5MPa以下が好ましく、2MPa以上4MPa以下がより好ましい。
表面層はビルドアップ工法により積層してもよい。ここで、「ビルドアップ」とは、プリプレグを積層すると共に、一層毎に孔あけ加工、配線形成などを繰り返すことによって、多層構造の積層板を作製することを意味する。
<第一プリプレグ(第一樹脂層)>
第一プリプレグは、ガラスクロスに第一のマトリックス樹脂組成物と溶剤とを含むワニス(以下、単に「ワニス」と呼ぶ場合がある。)に含浸させた後、熱風乾燥機等で溶剤分を乾燥除去することにより得られる。あるいは、ガラスクロスにワニスを塗布した後、熱風乾燥機等で溶剤分を乾燥除去することにより得ることができる。
第一のマトリックス樹脂組成物は、第一のマトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、熱硬化性樹脂と無機充填材とを含有することがより好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、常温で液状の熱硬化性樹脂を用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、樹脂成分と硬化剤成分との混合物を用いることができる。樹脂成分としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、マレイミド樹脂などのラジカル重合型熱硬化性樹脂等を用いることができる。
第一プリプレグは、第一のマトリックス樹脂としてポリフェニレンエーテル(PPE)を含む樹脂組成物を用いることが好ましい。ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物を用いることで、より優れた低誘電特性を得ることができる。
第一プリプレグは、第一のマトリックス樹脂としてエポキシ系樹脂を用いてもよい。エポキシ樹脂を用いることで積層板の低コスト化と、表面層の優れた誘電率、誘電正接及び誘電率均一性を両立させることができる。
第一プリプレグを構成する第一のマトリックス樹脂の誘電率は2.0以上3.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.5以上2.8以下である。第一のマトリックス樹脂の誘電率が上記範囲内であると、より優れた低誘電特性を得ることができる。
第一プリプレグ中の第一のマトリックス樹脂(固形分として)の割合は、第一プリプレグの全質量を基準として、30質量%~80質量%であることが好ましく、40質量%~70質量%であることがより好ましい。上記割合が30質量%以上であることにより、第一プリプレグを電子基板用等に用いた場合に絶縁信頼性に一層優れる傾向にある。上記割合が80質量%以下であることにより、電子基板等の用途において、曲げ弾性率等の機械特性に一層優れる傾向にある。第一プリプレグを硬化させた第一樹脂層における第一のマトリックス樹脂の割合も同様に、第一樹脂層の全質量を基準として、30質量%~80質量%であることが好ましく、40質量%~70質量%であることがより好ましい。
<第二プリプレグ(第二樹脂層)>
本開示に係る第二プリプレグは、有機繊維クロスに第二のマトリックス樹脂組成物と溶剤とを含むワニス(以下、単に「ワニス」と呼ぶ場合がある。)に含浸させた後、熱風乾燥機等で溶剤分を乾燥除去することにより得られる。あるいは、有機繊維クロスにワニスを塗布した後、熱風乾燥機等で溶剤分を乾燥除去することにより得ることができる。
第二のマトリックス樹脂組成物は、第二のマトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、熱硬化性樹脂と無機充填材とを含有することがより好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、常温で液状の熱硬化性樹脂を用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、樹脂成分と硬化剤成分との混合物を用いることができる。樹脂成分としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、マレイミド樹脂などのラジカル重合型熱硬化性樹脂等を用いることができる。
第二プリプレグはマトリックス樹脂としてポリフェニレンエーテル(PPE)を含む樹脂組成物を用いることが好ましい。ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物を用いることで、より優れた低誘電特性を得ることができる。一態様において、第二のマトリックス樹脂組成物は、数平均分子量1000~4000の低分子量PPEを含む。
第二プリプレグは、第二のマトリックス樹脂としてエポキシ系樹脂を用いてもよい。エポキシ樹脂を用いることで積層板の低コスト化と、表面層の誘電率均一性を両立させることができる。
第二プリプレグを構成する第二のマトリックス樹脂の誘電率は2.0以上3.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.5以上2.8以下である。第二のマトリックス樹脂の誘電率が上記範囲内であると、有機繊維クロスとの誘電率差を低減することができ、誘電率のばらつきに伴い積層板上で発生する、配線ごとの電気信号の遅延差を低減することができる。
第二プリプレグ中の第二のマトリックス樹脂組成物(固形分として)の割合は、第二プリプレグの全質量を基準として、30質量%~80質量%であることが好ましく、40質量%~70質量%であることがより好ましい。上記割合が30質量%以上であることにより、第二プリプレグを電子基板用等に用いた場合に絶縁信頼性に一層優れる傾向にある。上記割合が80質量%以下であることにより、電子基板等の用途において、曲げ弾性率等の機械特性に一層優れる傾向にある。第二プリプレグを硬化させた第二樹脂層における第二のマトリックス樹脂の割合も同様に、第二樹脂層の全質量を基準として、30質量%~80質量%であることが好ましく、40質量%~70質量%であることがより好ましい。
<ガラスクロス>
第一プリプレグに用いられるガラスクロスとしては、特に限定されるものではなく、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。その具体例としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、球状ガラス、NEガラス、Lガラス、NLガラス、L2ガラス、Qガラス、等のガラス繊維、クォーツ等のガラス以外の無機繊維が挙げられるが、これらに限定されない。低誘電ガラスを用いることで、基板垂直方向に電気信号を伝送した際の電気信号損失および電気信号遅延を抑制することができる。
これらの中でも低熱膨張性および低誘電特性の観点から、Eガラスクロス、NEガラスクロス、Lガラスクロス、NLガラスクロス、L2ガラスクロス、Qガラスクロスが好ましい。低誘電ガラスを用いることで、基板垂直方向に電気信号を伝送した際の電気信号損失および電気信号遅延を抑制することができる。これらガラスクロスは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
クロスの織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラスクロスが好適に使用される。ガラスクロスの厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01mm~0.3mm程度のものが好適に用いられる。とりわけ、強度と吸水性との観点から、クロスは、厚み200μm以下、質量250g/m以下のガラスクロスが好ましく、Eガラス、NEガラス、Lガラス、NLガラス、L2ガラス及びQガラス等のガラス繊維からなるガラスクロスがより好ましい。
<有機繊維クロス>
第二プリプレグで使用される有機繊維クロスとしては、特に限定されるものではなく、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。有機繊維の具体例としては、例えば、ポリイミド繊維、ポリフェニレンエーテル繊維、フッ素繊維、炭素繊維などの有機繊維が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも低誘電特性の観点から、ポリフェニレンエーテル繊維が好ましい。
有機繊維クロスは、PPEを含む組成物からなる繊維(PPE組成物繊維)で構成されていることが好ましい。一態様において、有機繊維クロスは、PPE組成物繊維の経緯の織密度(すなわち、経糸及び緯糸の両方の織密度)が20本/inch~90本/inch、開口率が1%~30%に製織された織布である。一態様において、PPE組成物繊維は、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル5質量%~95質量%を含むことが好ましく、さらに、液晶ポリエステル及びシンジオタクチックポリスチレンのうち少なくとも1種を5質量%~95質量%を含むことがより好ましい。一態様において、PPE組成物繊維は、直径5μm~50μmの単糸を10本~200本束ねた繊維であることが好ましい。
有機繊維としてポリフェニレンエーテルを使用する場合は、第二のマトリックス樹脂としてポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物を使用することが好ましい。これにより、プリプレグ内での誘電率のばらつきを小さくすることができ、プリプレグ上に形成される配線上の電気信号の遅延差低減効果を得ることができる。また、有機繊維および第二のマトリックス樹脂にポリフェニレンエ-テルを含む樹脂組成物を使用することで、有機繊維と第二のマトリックス樹脂間での密着性を向上させることができる。これにより、温度サイクルに伴い生じる有機繊維とマトリックス樹脂間の応力による界面剥離を防ぎ、信頼性寿命を延ばすことがでる。
PPE組成物繊維に含まれるPPEは、数平均分子量が9000~21000であることが好ましい。なお、数平均分子量は、それぞれ、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)測定を行い、同条件で測定した標準ポリスチレン試料の分子量と溶出時間との関係式から、標準ポリスチレン換算で求められる。
PPEの数平均分子量が9000以上の場合、基板に求められる耐熱性や、マトリックス樹脂組成物ワニス用の溶剤、及び基板の洗浄液への耐薬液性が良好である傾向にある。PPEの数平均分子量が21000以下の場合、PPE組成物調製時、及び紡糸時の押出成型性が良好である傾向にある。PPEの数平均分子量は、より好ましくは、9500以上、又は10000以上であり、より好ましくは、17000以下、又は16000以下である。
一態様において、PPEは、数平均分子量が9000~12000であるPPE成分と、数平均分子量が14000~17000であるPPE成分との組合せを含み又は当該組合せからなることが好ましい。これにより、耐熱性と成型性の両方を向上できる。特に、数平均分子量が9000~12000であるPPE成分の配合量を、PPE100質量%に対して30質量%~60質量%に調整することで、耐熱性と成型性の両方をさらに向上できるとともに、プリプレグ作製時に有機繊維クロスとマトリックス樹脂組成物ワニスとの親和性が高まり、積層板としての耐熱性や接着性が向上する。
数平均分子量が9000~12000であるPPE成分の数平均分子量は、それぞれ、より好ましくは、9500以上、又は10000以上であってよく、11500以下、又は11000以下であってよい。
数平均分子量が14000~17000であるPPE成分の数平均分子量は、それぞれ、より好ましくは、14500以上、又は15000以上であってよく、16500以下、又は16000以下であってよい。
PPE組成物繊維に含まれるPPEの構造単位は、マトリックス樹脂組成物に含まれる低分子量PPEに関して後述で例示するのと同様であってよい。PPE組成物繊維は、液晶ポリエステル及びシンジオタクチックポリスチレンのうち少なくとも1種を含むことが好ましい。これらポリマーはいずれも、ポリマー分子の高度な秩序構造により結晶性を示し得る一方、流動性に優れることから、PPE組成物繊維の耐熱性、機械強度及び耐溶剤性を向上させ得るとともに、寸法安定性が良好なPPE組成物繊維の製造にも寄与する。
上記液晶ポリエステル(以下LCPともいう)は、数平均分子量10000~100000であることが好ましい。液晶ポリエステルの数平均分子量が10000以上の場合、基板に求められる耐熱性や、耐薬液性が良好である傾向にある。液晶ポリエステルの数平均分子量が100000以下の場合、PPE組成物調製時、及び紡糸時の押出成型性が良好である傾向にある。液晶ポリエステルの数平均分子量は、より好ましくは15000~95000、又は20000~90000である。
上記シンジオタクチックポリスチレン(以下sPSともいう)は、数平均分子量10000~100000であることが好ましい。sPSの数平均分子量が10000以上の場合、基板に求められる耐熱性や、耐薬液性が良好である傾向にある。sPSの数平均分子量が100000以下の場合、PPE組成物調製時、及び紡糸時の押出成型性が良好である傾向にある。sPSの数平均分子量は、より好ましくは15000~95000、又は20000~90000である。
PPE組成物繊維中、PPEの含有量は、一態様において5質量%~95質量%であり、好ましくは、10質量%~90質量%、又は15質量%~85質量%である。PPE含有量が5質量%以上の場合、マトリックス樹脂とPPE組成物繊維の接着性、及びPPE組成物繊維へのマトリックス樹脂の浸透性に優れるとともに、プリプレグの硬化物が優れた誘電率均一性を示す。PPEが95質量%以下の場合、溶融紡糸性に優れる。
PPE組成物繊維中、sPSの含有量は、一態様において5~95質量%であり、好ましくは、20~80質量%、25~70質量%、又は30~60質量%である。sPS含有量が5%以上の場合、PPE繊維組成物の耐溶剤性、誘電率/誘電正接が向上する。特に、sPS含有量が30質量%以上の場合、sPSの結晶性の効果がより発現し、寸法安定性(低反り)に優れる。sPS含有量が95%以下の場合、耐熱性に優れる。
PPE組成物繊維中、LCPの含有量は、5~95質量%であり、好ましくは、5~50質量%、5~40質量%、又は5~30質量%である。LCP含有量が5%以上の場合、耐熱性や繊維強度に優れる。LCP含有量が95%以下の場合、紡糸性に優れ、特に30%以下の場合、高強度の紡糸繊維ができる。
PPE組成物繊維中にLCPとsPSの両方を含み、合計の含有量が5~95質量%の場合、誘電率/誘電正接、耐熱性、機械強度の特性が特に優れる。好ましくは、10~90質量%、20~80質量%、又は30~70質量%である。
その他に、必要に応じてスチレン系エラストマー、難燃剤、酸化防止剤、油剤、その他の添加剤等を加えても構わない。スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-イソプレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレンの単独重合体(ポリスチレン)から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物がより好ましい。
難燃剤は、従来公知のものが使用できる。例えば、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機難燃剤;ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物;レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート等のリン系難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
以上の原料を、二軸押出機等にて、例えば300℃以上で溶融混練することにより、PPE組成物を調製できる。さらに、このPPE組成物を、一般的な紡糸法により、具体的には例えば溶融紡糸法により、例えば250℃以上に加熱し、紡糸口金を通し、押出成型して紡糸することで、マルチフィラメント繊維を作製できる。マルチフィラメントを構成する単糸の直径は、一態様において5μm~30μmであり、好ましくは、5μm~20μm、又は5μm~15μmであってよく、マルチフィラメントを構成する単糸の本数は、一態様において10本~200本であり、好ましくは、10本~100本、又は10本~50本であってよい。単糸直径が5μm以上の場合、次工程の製織工程や開繊工程で必要な引張強度が発現されて毛羽(単糸切れ)が生じにくく、単糸直径が30μm以下の場合、基板用途で一般的に求められる厚さ30μm~100μmを実現できる。マルチフィラメントを構成する単糸の本数が10本以上の場合、次工程の製織工程や開繊工程の調整により基板の絶縁層の誘電率を均一化でき、マルチフィラメントを構成する単糸の本数が200本以下の場合、上述の毛羽(単糸切れ)が生じにくい。
一態様においては、上記のPPE組成物繊維を、経緯の織密度が20~90本/inch、開口率が1%~30%以下になるように製織して、有機繊維クロスを作製する。経緯の織密度が20本/inch以上の場合、目曲がりを防止し基板の絶縁層の誘電率を均一化できる。経緯の織密度が90本/inch以下の場合、繊維同士の交絡を防止し毛羽(単糸切れ)を抑制できる。経緯の織密度は、好ましくは、30本/inch~70本/inch、又は40本/inch~60本/inchである。
開口率が1%以上の場合、マトリックス樹脂が有機繊維クロスを貫通し易くなり樹脂含浸性と耐熱性が向上し、また、適度に有機繊維クロスの存在しない箇所が存在するため、基板の絶縁層と金属箔(例えば銅箔)との接着性が向上する。開口率が30%以下の場合、基板の絶縁層の誘電率を均一化でき、また、適度にPPE組成物繊維がばらけることで耐熱性が向上する。開口率は、好ましくは、5%~25%、又は10%~20%である。経緯の織密度、及び開口率は、本開示の[実施例]に記載の方法で測定される値である。織り構造については、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り、等の織り構造が挙げられる。このなかでも、平織り構造がより好ましい。
上記の有機繊維クロスは、繊維表面が、シランカップリング剤処理、コロナ処理、プラズマ加工等により表面処理されていてよい。中でも、有機繊維クロスの繊維表面が、不活性ガス種プラズマ加工されていることが好ましい。上記のような表面処理により、基板に求められる耐熱性や接着性をさらに向上できる傾向にある。
有機繊維クロスの誘電率は、2.0以上3.0以下であり、好ましくは2.5以上2.8以下である。有機繊維クロスの誘電率が上記範囲内であると、マトリックス樹脂の誘電率との誘電率差を低減することができる。これにより、第二プリプレグおよび表面層内部での誘電率の均一性を向上させることができ、誘電率のばらつきに伴い積層板上で発生する、配線ごとの電気信号の遅延差を低減することができる。
有機繊維クロスとしてポリフェニレンエーテル組成物を含む有機繊維を使用することで上記誘電率を達成することができ、電気信号の遅延差低減効果を得ることができる。有機繊維は低誘電率および低誘電正接と、紡糸の生産性を両立させるという観点から、ポリフェニレンエーテル5質量%~95質量%と、液晶ポリエステル、シンジオタクチックポリスチレンのいずれか、または両方の成分を5質量%~95質量%を含むことが好ましい。
<マトリックス樹脂組成物>
第一及び第二のマトリックス樹脂組成物は、異なる組成物であっても同組成物であってもよく、同組成物で構成することが好ましい。同組成物であることにより第一樹脂層と第二樹脂層の界面の密着性を向上させることができ、温度サイクルに伴い生じる第一樹脂層と第二樹脂層の層間の応力による層間剥離を防ぎ、信頼性寿命を延ばすことができる。以下、第一及び第二のマトリックス樹脂組成物に共通する事項を説明する。
マトリックス樹脂組成物は、数平均分子量1000~5000の低分子量PPEを用いるのが好ましい。マトリックス樹脂組成物は、低分子量PPE、架橋剤、及び有機過酸化物を含むことが好ましい。一態様において、マトリックス樹脂組成物は、(a)低分子量PPE、(b)架橋剤、及び(c)有機過酸化物、並びに、所望により、(d)熱可塑性樹脂、(e)難燃剤、及び/又は(f)シリカフィラーを含むことができる。マトリックス樹脂組成物は、(g)溶剤を含むマトリックス樹脂組成物ワニスとされてもよい。以下、マトリックス樹脂組成物を構成可能な要素について説明する。
(a)低分子量PPE
低分子量PPEは、フェニレンエーテル単位を繰り返し構造単位として含む。フェニレンエーテル単位中のフェニレン基は、置換基を有してもよく有していなくてもよい。本明細書において、用語「ポリフェニレンエーテル」は、ダイマー、トリマー、オリゴマー、及びポリマーを含む。
PPEは、フェニレンエーテル単位以外のその他の構成単位も含んでもよい。その他の構造単位の量は、全単位構造の数に対して、典型的には、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下である。ただし、本開示の作用効果を阻害しない範囲内であれば、その他の構造単位の量は、全単位構造の数に対して、30%を超えてもよい。
PPEの具体例としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6-トリメチルフェノール、2-メチル-6-ブチルフェノール等)との共重合体、及び、2,6-ジメチルフェノールとビフェノール類又はビスフェノール類とをカップリングさせて得られるPPE共重合体、及びポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等を、ビスフェノール類又はトリスフェノール類のようなフェノール化合物と有機過酸化物の存在下、トルエン溶媒中で加熱し、再分配反応させて得られる、直鎖構造又は分岐構造を有するPPEが挙げられる。さらに、これらPPEの末端水酸基が、炭素-炭素二重結合を含有する官能基で置換されたPPEも挙げられる。炭素-炭素二重結合を有する官能基の具体例としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、1-ペンテニル基、p-ビニルフェニル基、p-イソプロペニルフェニル基、m-ビニルフェニル基、m-イソプロペニルフェニル基、o-ビニルフェニル基、o-イソプロペニルフェニル基、p-ビニルベンジル基、p-イソプロペニルベンジル基、m-ビニルベンジル基、m-イソプロペニルベンジル基、o-ビニルベンジル基、o-イソプロペニルベンジル基、p-ビニルフェニルエテニル基、p-ビニルフェニルプロペニル基、p-ビニルフェニルブテニル基、m-ビニルフェニルエテニル基、m-ビニルフェニルプロペニル基、m-ビニルフェニルブテニル基、o-ビニルフェニルエテニル基、o-ビニルフェニルプロペニル基、o-ビニルフェニルブテニル基、メタクリル基、アクリル基、2-エチルアクリル基、2-ヒドロキシメチルアクリル基等が挙げられる。
低分子量PPEの数平均分子量は、1000~5000であることが好ましい。マトリックス樹脂組成物がこのような低分子量のPPEを含むことで、マトリックス樹脂組成物ワニスの粘度増大を抑制できるので、マトリックス樹脂組成物ワニスのクロスへの塗工性の向上を図ることができる。当該塗工性の向上を図ることにより、マトリックス樹脂組成物又はその硬化物に要求される、各種特性の向上も図ることができる。低分子量PPEの数平均分子量は、好ましくは、1000~3500、又は1500~3000である。
マトリックス樹脂組成物に含まれる低分子量PPE(すなわち数平均分子量1000~5000のPPE)は、1種でもよいし、数平均分子量が1000~5000である2種以上のPPEの組合せでもよい。
(b)架橋剤
架橋反応を起こすか又は促進する能力を有する任意の架橋剤を使用することができる。架橋剤は、数平均分子量が9,000以下であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が9,000以下であると、マトリックス樹脂組成物ワニスの粘度の増大を抑制でき、また加熱成型時の良好な樹脂流動性が得られる。架橋剤の数平均分子量は、より好ましくは、100~6,000、又は200~5,000であってよい。架橋剤の数平均分子量は、GPCを用い、標準ポリスチレン換算で測定した値である。
架橋剤は、架橋反応性の観点から、炭素-炭素不飽和二重結合を1分子中に平均2個以上有することが好ましい。架橋剤は、1種又は2種以上の化合物で構成されてよい。架橋剤がポリマー又はオリゴマーである場合、炭素-炭素不飽和二重結合は、典型的には、分子末端(すなわち主鎖又は分岐鎖の末端)に位置するが、本実施形態はそれに限定されない。炭素-炭素不飽和二重結合としては、例えば、ポリブタジエンにおける1,2-ビニル結合が挙げられる。
具体的には、架橋剤はスチレン20質量%以上からなるスチレン-ブタジエン共重合物であることが好ましい。PPE組成物繊維、マトリックス樹脂の低分子量PPEのそれぞれに相溶し易く、基板の耐熱性、層間接着性が向上する傾向にある。例えば、Cray Valley社の製品の、Ricon100、Ricon181、Ricon257、Ricon184等があげられる。
架橋剤としては、その他に、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、トリアリルシアヌレート(TAC)等のトリアルケニルシアヌレート化合物、分子中にメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物、分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物、ポリブタジエン等の分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物、分子中にビニルベンジル基を有するジビニルベンゼン等のビニルベンジル化合物、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン等の分子中にマレイミド基を2個以上有する多官能マレイミド化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤は、これらの中でも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、及びポリブタジエンから成る群より選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。架橋剤が、上記で説明された少なくとも1種以上の化合物を含むことにより、硬化反応(架橋反応)時に架橋密度が一層高くなり、これにより、マトリックス樹脂組成物の硬化物の耐熱性が一層向上する傾向にある。
マトリックス樹脂組成物において、低分子量PPE:架橋剤の質量比は、硬化時の低誘電率及び低誘電正接と、架橋構造物の架橋密度とのバランスを取るという観点から、25:75~95:5であることが好ましく、より好ましくは、32:68~85:15である。
(c)有機過酸化物
低分子量PPE及び架橋剤を含むマトリックス樹脂組成物の重合反応を促進する能力を有する任意の有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。なお、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等のラジカル発生剤もマトリックス樹脂組成物のための反応開始剤として使用することができる。中でも、耐熱性、及び機械特性に優れ、更に低い誘電率、及び低い誘電正接を有する硬化物を提供することができるという観点から、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
有機過酸化物の1分間半減期温度は、好ましくは、155℃~185℃、又は160℃~180℃、又は165℃~175℃である。本明細書では、1分間半減期温度は、有機過酸化物が分解して、その活性酸素量が半分になる時間が1分間となる温度である。1分間半減期温度は、ラジカルに対して不活性な溶剤、例えばベンゼン等に有機過酸化物を0.05mol/L~0.1mol/Lの濃度となるように溶解させ、有機過酸化物溶液を窒素雰囲気下で熱分解させる方法で確認される値である。
有機過酸化物の1分間半減期温度が155℃以上であることにより、マトリックス樹脂組成物を加熱加圧成型に供する際、低分子量PPEを十分に溶融させてから架橋剤との反応を開始できるので、成型性に優れる傾向にある。一方、有機過酸化物の1分間半減期温度が185℃以下であることにより、通常の加熱加圧成型条件(例えば最高到達温度200℃)での有機過酸化物の分解速度が十分であるため、架橋剤との架橋反応を効率的かつ緩やかに進めることができるので、良好な電気特性(特に誘電正接)を有する硬化物を形成可能である。
1分間半減期温度が155℃~185℃の範囲内にある有機過酸化物としては、例えば、t-へキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(155.0℃)(括弧内は1分間半減期温度、以下同じ。)、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(166.0℃)、t-ブチルペルオキシラウレート(159.4℃)、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(158.8℃)、t-ブチルペルオキシ2-エチルへキシルモノカーボネート(161.4℃)、t-へキシルパーオキシベンゾエート(160.3℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(158.2℃)、t-ブチルペルオキシアセテート(159.9℃)、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン(159.9℃)、t-ブチルパーオキシベンゾエート(166.8℃)、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルペルオキシ)バレラート(172.5℃)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(175.4℃)、ジクミルパーオキサイド(175.2℃)、ジ-t-へキシルパーオキサイド(176.7℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(179.8℃)、 及びt-ブチルクミルパーオキサイド(173.3℃)等が挙げられる。
有機過酸化物の含有量は、低分子量PPEと架橋剤との合計質量100質量%を基準として、反応率を高くすることができるという観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、得られる硬化物の誘電率、及び誘電正接を低く抑えることができるという観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
(d)熱可塑性樹脂
マトリックス樹脂組成物は、低分子量ポリフェニレンエーテル及び架橋剤以外の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂は、ビニル芳香族化合物と、炭素-炭素不飽和二重結合を有する脂肪族炭化水素化合物とのブロック共重合体、及びその水素添加物(ビニル芳香族化合物と、炭素-炭素不飽和二重結合を有する脂肪族炭化水素化合物とのブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体)、並びにビニル芳香族化合物の単独重合体から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記ブロック共重合体又はその水素添加物のビニル芳香族化合物由来の単位の含有率は、20質量%以上であることが好ましく、99質量%以下であることができる。上記ブロック共重合体又はその水素添加物のビニル芳香族化合物由来の単位の含有率が20質量%以上であることにより、低分子量PPEと熱可塑性樹脂との相溶性が一層向上し、プリプレグの硬化物と金属箔との密着強度が一層向上する傾向にある。
ビニル芳香族化合物は、分子内に芳香環、及びビニル基を有すればよく、例えば、スチレンが挙げられる。炭素-炭素不飽和二重結合を有する脂肪族炭化水素化合物は、分子内に、直鎖若しくは分岐鎖の構造を有する不飽和炭化水素であればよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ブタジエン、及びイソプレンが挙げられる。熱可塑性樹脂は、低分子量PPEとの相溶性に一層優れる観点から、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン‐イソプレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレンの単独重合体(ポリスチレン)から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、及びポリスチレンからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
上記水素添加物における水素添加率は特に限定されず、炭素-炭素不飽和二重結合を有する脂肪族炭化水素化合物に由来する炭素-炭素不飽和二重結合が一部残存していてもよい。
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは30,000~300,000、より好ましくは31,000~290,000である。重量平均分子量が30,000以上であることにより、マトリックス樹脂組成物は、硬化した際に耐熱性に一層優れる傾向にある。重量平均分子量が300,000以下であることにより、マトリックス樹脂組成物は、加熱成形時に一層良好な樹脂流動性を有する傾向にある。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用い、標準ポリスチレン換算により求められる値である。
熱可塑性樹脂の含有量は、低分子量PPE及び架橋剤の合計100質量部を基準として、2質量部~20質量部であることが好ましい。上記含有量が2質量部以上であることにより、マトリックス樹脂組成物は、硬化した際に低誘電率、低誘電正接、及び金属箔との良好な密着性を示す傾向にある。上記含有量が20質量部以下であることにより、マトリックス樹脂組成物は、加熱成形時に一層優れた樹脂流動性を有する傾向にある。
(e)難燃剤
マトリックス樹脂組成物は、難燃剤を含むことが好ましい。難燃剤としては、耐熱性を向上できる観点から、マトリックス樹脂組成物の硬化後にマトリックス樹脂組成物中の他の含有成分と相溶しないものが好ましい。好ましくは、難燃剤は、マトリックス樹脂組成物の硬化後にマトリックス樹脂組成物中の低分子量PPE、及び/又は架橋剤と相溶しない。難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機難燃剤;ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物;レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート等のリン系難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、難燃剤は、マトリックス樹脂組成物が硬化した際に低誘電率及び低誘電正接となる観点から、デカブロモジフェニルエタンであることが好ましい。
難燃剤の含有量は、特に限定されないが、UL規格94V-0レベルの難燃性を維持するという観点から、低分子量PPEと架橋剤との合計100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。また、得られる硬化物の誘電率、及び誘電正接を低く維持できる観点から、難燃剤の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
(f)シリカフィラー
マトリックス樹脂組成物は、シリカフィラーを含有してよい。シリカフィラーとしては、天然シリカ、合成シリカのいずれも使用でき、例えば、溶融シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、及び中空シリカが挙げられる。シリカフィラーとしては、平均粒子径が0.1~2μmの球状シリカフィラーが好ましい。平均粒子径が0.1μm~2μmだと、マトリックス樹脂への分散性が良く、基板の寸法安定性(反り)に優れる。また、2μm以下だと、PPE樹脂組成繊維へのマトリックス樹脂の含浸性に優れる。マトリックス樹脂組成中のシリカフィラーの含有量は、高分散性を実現しやすく、基板の弾性率と寸法安定性(反り)に優れる点で、好ましくは、10~50質量%、10~45質量%、又は10~40質量%である。また、シリカフィラーは、その表面にシランカップリング剤等を用いて表面処理をされたものであってもよい。
マトリックス樹脂組成物は、上記の成分以外に、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤等の添加剤を更に含んでもよい。
(g)溶剤
マトリックス樹脂組成物は、有機繊維クロスに含侵させる際に好適な流動性を得る観点から、溶剤を含有したマトリックス樹脂組成物ワニスとすることができる。プリプレグの製造工程においては、有機繊維クロスにマトリックス樹脂組成物ワニスを含浸させた後、熱風乾燥機等で溶剤分を乾燥除去することが好ましい。マトリックス樹脂組成物中の固形成分は、ワニス中に溶解又は分散していてよい。溶剤の量は、マトリックス樹脂組成物ワニスの流動性が好適な範囲となるように適宜調整すればよいが、例えば、マトリックス樹脂組成物ワニス中の溶剤の量が、20質量%~80質量%、又は30質量%~70質量%、又は40質量%~60質量%であってよい。
溶剤としては、マトリックス樹脂組成物中の成分の溶解性の観点から、トルエン、キシレン等の芳香族系化合物、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びクロロホルムが好ましい。これらの溶剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
溶剤に対して低分子量PPEを好適に溶解させ、また、室温程度でもマトリックス樹脂組成物ワニスの好適な流動性を確保し易くする観点からも、溶剤としては、トルエン等の芳香族系化合物が好ましく、例えば、トルエン・メチルエチルケトン混合溶剤、トルエン・シクロヘキサノン混合溶剤、及びトルエン・シクロペンタノン混合溶剤等が好ましい。また、マトリックス樹脂組成物であれば、トルエン単独の溶剤であってもかかる溶剤に好適に溶解し、ひいては、基板への含浸性に優れるため、溶剤としてはトルエン単独の溶剤も好ましい。
<金属張積層板>
本開示の金属張積層板は、本開示の積層板と、その表面層に積層された金属箔とを有する。本開示の金属張積層板は、本開示の積層板を有することにより、優れた誘電率、誘電正接及び誘電率均一性を有し、かつ低熱膨張係数、及び高耐熱性を有する。金属箔は、表面層を構成する第一樹脂層の表面及び/又は第一樹脂層同士の間に積層されることができ、表面層を構成する第一樹脂層とコア層を構成する第二樹脂層との間に積層されていてもよく、あるいは、コア層を構成する第二樹脂層同士の間に積層されていてもよい。金属張積層板において、第一樹脂層及び第二樹脂層は絶縁層を形成するが、当該絶縁層は、1層の第一樹脂層又は第二樹脂層から形成されても、2層以上の第一樹脂層及び/又は第二樹脂層から形成されてもよい。
図5は、本開示の金属張積層板の断面を示す模式図である。図5において、金属張積層板(200)は、5層の第一樹脂層(1)からなるコア層(10)と、コア層(10)の両面に積層された、2層の第二樹脂層からなる表面層(20)を有する。金属張積層板(200)は、その表面に積層された銅箔(3)を有し、また、表面層を構成する第一樹脂層とコア層を構成する第二樹脂層との間、及びコア層を構成する第二樹脂層同士の間にも積層された銅箔(3)を有している。
金属箔としては、銅やアルミニウムなどを用いることができる。ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔などの公知の銅箔が好ましい。また、金属箔(導体層)の厚みは、特に限定されないが、1μm~70μmが好ましく、より好ましくは1.5μm~35μmである。
金属張積層板の成形方法及びその成形条件は、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、金属張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができる。また、金属張積層板の成形において、温度は100℃~300℃、圧力は面圧2kgf/cm~100kgf/cm、加熱時間は0.05時間~5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150℃~300℃の温度で後硬化を行うこともできる。また、上述のプリプレグと、別途作成した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
表面層はビルドアップ工法により積層してもよい。ここで、「ビルドアップ」とは、プリプレグ及び/又は金属張積層板を積層すると共に、一層毎に孔あけ加工、配線形成などを繰り返すことによって、多層構造のプリント配線板を作製することを意味する。誘電率の均一性の高い表面層をビルドアップ工法を用いて積層し、微細な配線加工を施すことで、微細な配線ごとの電気信号の遅延差を低減することができ、電子部品を高密度に実装することができる。
より具体的には、プリプレグ及び/又は金属張積層板金属箔張積層板を、プリント配線板のビルドアップ材料として利用することができる。プリプレグを用いて形成されたプリント配線板においては、そのプリプレグの硬化した層が、絶縁層を構成することになる。また、金属張積層板を用いて形成されたプリント配線板においても、そのプリプレグの硬化した層が、絶縁層を構成することになる。
プリプレグをビルドアップ材料として用いる場合は、プリプレグを用いて金属張積層板を作製してから、ビルドアップ工法によりプリント配線板を得ることができる。或いは、後述のように多層プリント配線板の材料として用いる場合等は、プリプレグをそのままビルドアップ材料として使用してもよい。
プリプレグをビルドアップ材料として用いる場合は、常法により、当該プリプレグを表面処理し、絶縁層表面にめっきにより配線パターン(導体層)を形成することにより、プリント配線板が得られる。
金属張積層板をビルドアップ材料として用いる場合は、常法により、金属張積層板の金属箔をエッチングした後、プリプレグからなる層(絶縁層)を表面処理し、絶縁層表面にめっきにより配線パターン(導体層)を形成することにより、プリント配線板を得ることができる。
なお、何れの場合も、必要に応じて積層ごとにその他の各種の工程(例えば、ビアホール、スルーホール等を形成する穴加工処理等)を加えてもよい。
<プリント配線板>
プリント配線板は、金属張積層板から金属箔の一部が除去されたものである。プリント配線板は、典型的には、上述したプリプレグを用いて、加圧加熱成型する方法で形成できる。クロスとしてはプリプレグに関して前述した有機繊維クロスと同様のものが挙げられる。プリント配線板は、本開示の積層板を有することにより、優れた誘電率、誘電正接及び誘電率均一性を有し、かつ低熱膨張係数、及び高耐熱性を有する。
以下に本開示の実施例を詳細に説明する。ただし、本開示は実施例に限定されるものではない。
<測定及び評価方法>
(1)数平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、分子量既知の標準ポリスチレンの溶出時間との比較により、PPEの数平均分子量、及び熱可塑性樹脂の重量平均分子量求めた。具体的には、試料濃度0.2w/vol%(溶媒:クロロホルム)の測定試料を調製後、測定装置にはHLC-8220GPC(東ソー株式会社製)を用い、カラム:Shodex GPC KF-405L HQ×3(昭和電工株式会社製)、溶離液:クロロホルム、注入量:20μL、流量:0.3mL/min、カラム温度:40℃、検出器:RI、の条件下にて測定した。
(2)単糸の直径
走査型電子顕微鏡(株式会社日立サイエンスシステムズ SEMEDX3TypeN)により、任意の100本のフィラメント断面を撮像し、直径を測定し、平均値を算出した。
(3)クロスの経緯の織密度
JIS R3420に準拠し、経方向、緯方向それぞれについて測定した。
(4)クロスの開口率
クロスのロール中央部100mm幅(約4inch幅)四方をカットし、光学顕微鏡によるクロス表面形態像において、全経糸幅(すなわち100mm×100mmのクロス全体での経糸合計幅)と全緯糸幅(すなわち100mm×100mmのクロス全体での緯糸合計幅)とを計測し、経糸及び緯糸の各々の平均値を算出した。この平均値と、上記で求めた経緯の織密度とに基づき、下記式に従って開口率を算出した。
開口率=(25.4mm÷経密度-経糸幅mm)×(25.4mm÷緯密度-緯糸幅mm)÷((25.4mm÷経密度)×(25.4mm÷緯密度))
(5)クロスの厚さ
JIS R3420に準拠し、測定した。
(6)耐熱性
プリプレグを表1に示す構造に積層し、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力5kg/cmの条件で真空プレスを行い、130℃まで達したら昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力40kg/cmの条件で真空プレスを行い、200℃まで達したら温度を200℃に維持したまま圧力40kg/cm、かつ60分間の条件で真空プレスを行うことによって積層板を作製した。積層板を、50mm×50mmにカットし、5点を、121℃飽和蒸気圧のプレッシャークッカーに10時間入れ、取り出し、表面の水分をふき取った後、288℃のハンダ浴に20秒間浸漬し、積層板の膨れ度を評価した。
◎:膨れが全くなし
〇:膨れが1個発生
△:膨れが2個以上発生
×:膨れが3個以上発生
(7)表面層の誘電率、及び誘電正接(電気特性、10GHz)
上記(6)耐熱性評価と同様に、実施例1~8、比較例1,2においては表1の表面層(b)に示すプリプレグを8枚重ねて、比較例3においては表1のコア層(a)に示すプリプレグを8枚重ねて積層板を作製し、10GHzでの誘電率、及び誘電正接を、空洞共振法にて測定した。測定装置としてネットワークアナライザー(N5230A、AgilentTechnologies社製)、及び関東電子応用開発社製の空洞共振器(Cavity Resornator CPシリーズ)を用いて測定した。
(8)表面層の誘電率均一性(誘電率局所ばらつき)
プリプレグを1枚とした他は上記(6)耐熱性評価、(7)表面層の誘電率、及び誘電正接評価と同様に積層板を作製し、樹脂に包埋して断面を削り出し研磨し、走査型電子顕微鏡(株式会社日立サイエンスシステムズ SEMEDX3TypeN)により連続測定幅25mmの断面画像を撮影した。得られた断面画像を画像解析し、測定幅50μmの単位幅ごとに繊維充填量(視野面積内の繊維部分の総面積として)とマトリックス樹脂組成物充填量(視野面積内の樹脂部分の総面積として)とを計測し、繊維充填量/マトリックス樹脂組成物充填量の比率を算出した。その後、単位幅ごとに算出した繊維充填量/マトリックス樹脂組成物充填量の比率と、繊維の誘電率およびマトリックス樹脂組成物の誘電率の数値を用いて単位幅あたりの誘電率を算出した。単位幅間での上記誘電率の標準偏差を、誘電率局所ばらつきとした。
(9)基板反り量
上記(6)耐熱性評価と同様に、表1に示す構造にコア層(a)および表面層(b)を積層して積層板を作製し、任意の50mm角の試料を4枚切り出し、各試料の4隅の各反り量(表裏で大きい方)をノギスで計測した。4隅の平均値を算出し、基板反り量とした。
(10)熱膨張係数
熱膨張係数の測定は、TMA法(Thermo-mechanical analysis)により求めた値である。所望の構造となるように上記(6)耐熱性評価と同様に表1に示す構造にコア層(a)および表面層(b)を積層して積層板を作製し、得られた積層板を、5mm□角に切断し、板厚を測定し、資料の断面積を算出する。試験片に40g重/cmの加重をかけ、10℃/分の昇温速度で加熱を行い、試料片の長さの変化を測定する。25℃から300℃まで加熱し、50℃から100℃の温度範囲における長さの変化量を、試験片の長さで割り、さらに50で割った値を、熱膨張係数とした。また、積層板の一部の層を研磨加工により削り出し、所望の層構造の積層板を作製してもよい。
<実施例1~8、比較例1~3>
有機繊維クロス用PPE組成物の調製:
表1に示す数平均分子量(Mn)を有するPPE、sPS、LCP、及びSEBS(スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)を、表1に示す配合比率(質量基準)で二軸押出機にて350℃で溶融混練して、PPE組成物を得た。
有機繊維クロスの作製:
上記PPE組成物を、溶融紡糸機にて、紡糸口金を通して押出成型して紡糸し、マルチフィラメントを作製した。単糸の直径は20μmであり、当該マルチフィラメントを構成する単糸の本数は50本である。
次に、上記マルチフィラメントを、製織、物理加工、脱糊、表面処理、開繊加工の上、経緯の織密度が30本/inch、厚さが50μm、開口率が20%となるように有機繊維クロスを作製した。
ガラスクロス:
ガラスクロスは、低誘電ガラスクロスL2116(織密度60本×58本/inch、厚み95μm、開口率5%)を用いた。
マトリックス樹脂組成物の調製:
[材料]
以下の材料を用いた。
(低分子量PPE)
・末端メタクリル基変性PPE(製品名「SA9000」、Sabicイノベーティブプラスチックス社製、Mn:2756、分子当たり末端官能基数:2個)
(架橋剤)
・RICON100(CRAY VALLEY社製、重量平均分子量:4500)
・TAIC(三菱ケミカル社製、分子量:249.7)
(有機過酸化物)
・ビス(1-tert-ブチルペルオキシ-1-メチルエチル)ベンゼン(製品名「パーブチルP」、日油社製)
(熱可塑性樹脂)
・水添スチレン系熱可塑性樹脂(SEBS)(製品名「タフテックH1051」、旭化成社製、重量平均分子量(Mw):4.9万、スチレン単位含有率:30質量%)
(難燃剤)
・デカブロモジフェニルエタン(製品名「SAYTEX8010」、アルベマール社製)
(その他成分)
・エポキシ樹脂
エポキシ樹脂:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(製品名「N680-75M」、大日本インキ化学社製)
・硬化剤
ジシアンジアミド(DICY)
マトリックス樹脂組成物ワニスの調製:
予め各材料を計量し、容器にトルエン/メチルエチルケトン混合溶剤を50:50の比率で入れ、ミキサーで攪拌しながら、各材料を投入し、5時間以上混合して、50質量%のマトリックス樹脂組成物ワニスを調製した。
第一プリプレグ、第二プリプレグの作製:
クロスを約100N/mの一定張力で樹脂組成物ワニスに含浸させ、スリットで掻き落とし、120℃で3分乾燥して、プリプレグを作製した。
積層板の作製:
コア層8層、表面層8層で、上記に記載の各材料、及び表1に記載の組成の有機繊維を用いてクロスを作製し、ワニスに含浸させてプリプレグを作製した。組成とその評価結果を表1に示す。
Figure 2023081725000002
<実施例9~15、比較例4~6>
以下のコンピュータシミュレーションにより、コア層と表面層の層数、硬化前の熱膨張係数(CTE)及び硬化後の熱膨張係数(CTE)を様々に変化させたときの、積層板の性能をシミュレートした。
コンピュータシミュレーションソフトウェア:
シミュレーションソフトウエアとしては、有限要素解析ソフトウエアであるAbaqus2018を使用した。
1.層構成
モデルの層構成は、図6に示す多層構造体の断面構成と同様である。すなわち、コア層(10)の両面に表面層(20)が積層された積層構造である。「層数」は、合計層数を意味する。例えば、コア層の層数が8、表面層の層数が8であれば、8層の第一樹脂層からなるコア層の両面に、4層の第二樹脂層からなる表面層がそれぞれ配置されている状態を意味する。
2.モデル
図6に示す構造をモデリングした。積層板の長さを4mm、厚み1.6mm、積層板上および積層板上に位置する基板上の銅箔(3)を長さ0.68mm、厚み0.025mm、積層板上に位置する基板(4)の長さを4mm、厚みを1mmとして2次元でメッシュを作成した。はんだは直径0.68mmの円を形成し、円の中心線を対称に上下0.205mm、高さ0.41mmとなる位置で切り取り、モデルおよびメッシュを作製した。
3.熱膨張係数
積層板の熱膨張係数は、表2に記載のとおりに設定した。そのほかの熱膨張係数は銅箔は17ppm/℃、積層板上に位置する基板は12ppm/℃、はんだは23ppm/℃として設定した。
4.温度サイクル
温度負荷は、モデル全体へ一様に昇温・降温履歴を3サイクル付与する条件を設定した。温度は-55℃~125℃とし、保持は5分とした。降温および昇温は、開始時と終了時を除き10分に設定した。
シミュレーション結果:
各実施例および各比較例の各部材について熱応力解析を実施し、はんだ部の非弾性ひずみを計算した。また、非特許文献1に記載の疲労寿命線図を元に、破損繰り返し数をシミュレートし、以下の基準で評価した。表2の「温度サイクル試験」に結果を記載する。
○ 破損繰り返し数が1E+5回以上
△ 破損繰り返し数が5E+4回以上~1E+5回未満
× 破損繰り返し数が5E+4回未満
表2の「積層板としての熱膨張係数」は、以下のようにして計算した。
温度サイクルの3サイクル目において、50℃から100℃の温度範囲におけるモデルの長さの変化量を、モデルの長さで割り、さらに50で割った値を、熱膨張係数とした。
表2の「表面層での電気信号遅延」は、以下のようにしてシミュレート及び評価した。
コンピュータシミュレーションソフトウェア:
シミュレーションソフトウエアとしては、有限要素解析ソフトウエアであるAnsys HFSSを使用した。
1.層構成
モデルの層構成は、図7に示す多層構造体の断面構成と同様である。すなわち、コア層(10)の両面に表面層(20)が積層された積層構造である。「層数」は合計層数を意味する。例えば、コア層の層数が8、表面層の層数が8であれば、8層の第一樹脂層からなるコア層の両面に、4層の第二樹脂層からなる表面層がそれぞれ配置されている状態を意味する。
2.モデル
図7に示す構造をモデリングした。積層板の長さを3.68mm、奥行きを7.36mm、厚み1.6mmとし、積層板の表面から2層目と3層目の間に銅箔(3)を配置した。積層板上に長さ0.27mm、奥行き7.36mm、厚み0.018mmの銅箔(3)を2つ配置した。銅箔はクロスの経糸と緯糸が織り重なり、クロス充填率が高くなる位置と、クロスの織りと織りの間の樹脂充填率が高くなる位置へそれぞれ配置し、3次元でモデル及びメッシュを作成した。
3.誘電率
積層板内のマトリックス樹脂、ガラスクロスおよび有機繊維クロスの誘電率は、表2に記載のとおりに設定した。
4.電気信号遅延差の算出方法
上記モデルの2つの銅箔配線に10GHzの高周波信号を入射し、信号が伝搬する際の遅延時間を測定した。配線間の遅延時間差から電気信号遅延差を算出した。
シミュレーション結果:
各実施例及び比較例の各部材についてシミュレーションを実施し、電気信号遅延差を算出し、以下の評価基準で評価した。表2の「表面層での電気信号遅延」に結果を記載する。
〇 信号の遅延時間が0.25psec/inch未満
× 信号の遅延時間が0.25psec/inch以上
Figure 2023081725000003
1 第一樹脂層
2 第二樹脂層
3 銅箔
4 基板
10 コア層
20 表面層
100 積層板
200 金属張積層板

Claims (19)

  1. ガラス繊維クロスに第一のマトリックス樹脂が含浸又は塗布された少なくとも一つの第一樹脂層を含む、コア層と、
    前記コア層の片面又は両面に積層され、有機繊維クロスに第二のマトリックス樹脂が含浸又は塗布された少なくとも一つの第二樹脂層を含む、表面層と
    を備える、積層板であって、
    前記第二樹脂層の熱膨張係数が、前記第一樹脂層の熱膨張係数よりも大きい、積層板。
  2. 前記第一樹脂層の熱膨張係数が、3ppm/℃以上20ppm/℃未満であり、かつ前記第二樹脂層の熱膨張係数が、18ppm/℃以上200ppm/℃以下である、請求項1に記載の積層板。
  3. 前記表面層が前記コア層の両面に積層された、請求項1又は2に記載の積層板。
  4. 前記有機繊維クロスの繊維は、ポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物から構成される繊維である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層板。
  5. 前記ポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物は、前記樹脂組成物の全質量を基準として、5質量%~95質量%のポリフェニレンエーテルと、5質量%~95質量%の液晶ポリエステル及びシンジオタクチックポリスチレンから選択される少なくとも1つとを含む、請求項4に記載の積層板。
  6. 前記第一樹脂層の熱膨張係数が、3ppm/℃以上20ppm/℃未満であり、かつ前記第二樹脂層の熱膨張係数が、20ppm/℃以上150ppm/℃以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層板。
  7. 前記コア層は2層以上の前記第一樹脂層を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層板。
  8. 前記コア層に含まれる前記第一樹脂層の層数は、前記表面層に含まれる前記第二樹脂層の層数より多い、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層板。
  9. 前記表面層に含まれる第二のマトリックス樹脂の誘電率が2.0以上3.0以下であり、かつ有機繊維クロスの誘電率は、2.0以上3.0以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の積層板。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載の積層板と、前記積層板の前記表面層に積層された金属箔とを有する、金属張積層板。
  11. ガラス繊維クロスに第一のマトリックス樹脂が含浸または塗布された少なくとも一つの第一プリプレグと、有機繊維クロスに第二のマトリックス樹脂が含浸または塗布された少なくとも一つの第二プリプレグとを積層して、前記少なくとも一つの第一プリプレグを含むコア層と、前記コア層の片面又は両面に積層された前記少なくとも一つの第二プリプレグを含む表面層とを備える、プリプレグ積層体を準備する工程と、
    前記第一のマトリックス樹脂及び前記第二のマトリックス樹脂を硬化する工程と、
    を含む、積層板の製造方法であって、
    前記第二プリプレグの熱膨張係数が、前記第一プリプレグの熱膨張係数よりも大きい、積層板の製造方法。
  12. 前記第一プリプレグの熱膨張係数が、3ppm/℃以上20ppm/℃未満であり、かつ前記第二プリプレグの熱膨張係数が、18ppm/℃以上200ppm/℃以下である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記表面層が前記コア層の両面に積層される、請求項11又は12に記載の方法。
  14. 前記有機繊維クロスの繊維は、ポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物から構成される繊維である、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記ポリフェニレンエーテルを含有する樹脂組成物は、前記樹脂組成物の全質量を基準として、5質量%~95質量%のポリフェニレンエーテルと、5質量%~95質量%の液晶ポリエステル及びシンジオタクチックポリスチレンから選択される少なくとも1つとを含む、請求項14に記載の方法。
  16. 前記第一プリプレグの熱膨張係数が、3ppm/℃以上20ppm/℃未満であり、かつ前記第二プリプレグの熱膨張係数が、20ppm/℃以上150ppm/℃以下である、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記コア層に2層以上の前記第一プリプレグが積層される、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記コア層に積層される前記第一プリプレグの層数は、前記表面層に積層される前記第二プリプレグの層数より多い、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記表面層に含まれる第二のマトリックス樹脂の誘電率が2.0以上3.0以下であり、かつ有機繊維クロスの誘電率は、2.0以上3.0以下である、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024202454A1 (ja) * 2023-03-24 2024-10-03 三井化学株式会社 プリプレグ、プリント配線基板及び電子部品

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