JP4300905B2 - ポリフェニレンエーテル樹脂組成物、プリプレグ、積層板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板等の絶縁材料として有用な耐熱性を有するポリフェニレンエーテル(以下「PPE」ともいう。)樹脂組成物並びにこのPPE樹脂組成物を用いたプリプレグ及びこのプリプレグを用いた積層板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器は、搭載される半導体デバイスの高集積化とパッケージの精緻化、プリント配線板の高密度配線化及び接合、実装技術の向上に伴い、非常に進展しており、特に、移動体通信のような高周波数帯を利用する電子機器においては、進展が著しい。
【0003】
この種の電子機器を構成するプリント配線板は、多層化と微細配線化が同時進行しているが、情報処理の高速化に要求される信号伝達速度の高速化には材料の誘電率を低減することが有効であり、また、伝送時の損失を低減するためには誘電正接(誘電損失)の少ない材料を使用することが効果的である。
【0004】
このような要求の高周波数帯を利用する電子機器のプリント配線板には、誘電率や誘電損失等の高周波特性(誘電特性)が優れている点でPPEが適しているが、耐熱性や寸法安定性が十分ではなかった。また、PPEは融点が高いため、PPEを用いて通常の多層プリント配線板を製造するために使用されるプリプレグを形成すると、プリプレグの溶融粘度が高くなり、多層成形時にボイドやかすれなどの成形不良が発生し、信頼性が十分とは言えないものであった。
【0005】
そこで、耐熱性の向上と寸法安定性の向上を図ったPPE樹脂組成物と、このPPE樹脂組成物を用いたプリプレグ及び、このプリプレグを用いた積層板が開示されている(特許文献1参照)。すなわち、PPE、トリアリルイソシアヌレート(以下「TAIC」ともいう。)、非反応性の臭素化化合物とを含有してなるPPE樹脂組成物と、このPPE樹脂組成物を用いたプリプレグ、及びこのプリプレグを用いた積層板である。
【0006】
ところが、特許文献1に記載の樹脂組成物を用いた場合は、PPE自身の融点が高いため、多層プリント配線板として内層導体パターンを充填するには、通常のプレス成形温度では溶融時の粘度が高く、多層化が困難であった。
【0007】
そこで、PPEの分子量を小さくすることにより、成形時の溶融樹脂の流動性が良好で、通常のプレス成形温度において、成形性に優れたPPE樹脂組成物と、このPPE樹脂組成物を用いたプリプレグ、及びこのプリプレグを用いた積層板が提案されている(特許文献2参照)。これにより、課題であった多層化が改善された。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−231847号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】
特開2002−265777号公報(特許請求の範囲等)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のようなPPE/TAIC系樹脂組成物を用いたのでは、アスペクト比が4以上のインナービアホール(以下「IVH」ともいう。)の穴埋めを完全に行うことができず、IVHの穴埋め性が悪いという問題があった。
【0010】
詳細にいえば、樹脂中に難燃剤や無機フィラー等のフィラー成分を添加した系においてはフィラー成分がIVHの中央部にまで入って行くことができないという現象が生じるのである。このことは、PPEとTAICとの相溶性が悪いために粘度の低いTAICリッチな成分が優先的にIVHの中央部へ浸透したことによるものと推察される。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ポリフェニレンエーテルとトリアリルイソシアヌレートとの相溶性が良くインナービアホールの穴埋め性が向上し、より信頼性の高い積層板を得ることができるポリフェニレンエーテル樹脂組成物、並びにこのポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いたプリプレグ及びこのプリプレグを用いた積層板を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル、トリアリルイソシアヌレート、及びフェニル基とビニル基を有する分子を含有し、前記フェニル基とビニル基を有する分子を上記組成物全量に対して10〜70質量%含有して成ることを特徴とするものである。
【0013】
また、フェニル基とビニル基を有する分子が、フェノール樹脂にビニルベンジル基を付加した分子であることを特徴とするものである。
【0014】
また請求項2の発明は、請求項1において、フェノール樹脂にビニルベンジル基を付加した分子においてビニルベンジル基の個数が0.3〜10個/10000分子量であることを特徴とするものである。
【0015】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、上記フェノール樹脂にビニルベンジル基を付加した分子においてフェノール樹脂がポリフェニレンエーテルであることを特徴とするものである。
【0016】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、組成物中の上記ポリフェニレンエーテルの分子量が2000〜12000の範囲であることを特徴とするものである。
【0017】
また請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、組成物中の上記ポリフェニレンエーテルの分子量が6000〜10000の範囲であることを特徴とするものである。
【0018】
また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、組成物全量に対して、ポリフェニレンエーテルを10〜60質量%、トリアリルイソシアヌレートを10〜60質量%含有して成ることを特徴とするものである。
【0019】
また請求項7の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、組成物全量に対して、ポリフェニレンエーテルを10〜40質量%、トリアリルイソシアヌレートを20〜50質量%、フェニル基とビニル基を有する分子を20〜60質量%含有して成ることを特徴とするものである。
【0020】
また請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかにおいて、多官能のメタクリレート樹脂と多官能のアクリレート樹脂から選ばれるものを組成物全量に対して3〜20質量%含有して成ることを特徴とするものである。
【0021】
また請求項9の発明は、請求項1乃至7のいずれかにおいて、2〜4官能のメタクリレート樹脂と2〜4官能のアクリレート樹脂から選ばれるものを組成物全量に対して3〜20質量%含有して成ることを特徴とするものである。
【0022】
また請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかにおいて、中空フィラーを含有して成ることを特徴とするものである。
【0023】
また請求項11の発明は、請求項10において、組成物100質量部に対して中空フィラーの含有量が5〜60質量部であることを特徴とするものである。
【0024】
また請求項12の発明は、請求項10又は11において、中空フィラーが有機化合物であることを特徴とするものである。
【0025】
また請求項13の発明は、請求項12において、中空フィラーがジビニルベンゼンとジビニルビフェニルから選ばれるものであることを特徴とするものである。
【0026】
本発明の請求項14に係るプリプレグは、請求項1乃至13のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を基材に含浸して加熱乾燥により半硬化させて成ることを特徴とするものである。
【0027】
また請求項15の発明は、請求項14において、基材としてNEタイプのガラスクロスを用いて成ることを特徴とするものである。
【0028】
本発明の請求項16に係る積層板は、請求項14又は15に記載のプリプレグを1枚又は複数枚重ね、さらにその両面又は片面に金属箔を重ねたものを加熱加圧成形することにより積層一体化して成ることを特徴とするものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
本発明に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル(PPE)とトリアリルイソシアヌレート(TAIC)を含有し、さらに、フェニル基とビニル基を有する分子を組成物全量に対して10〜70質量%含有するものである。
【0031】
本発明においてPPEとしては、例えば、下記の一般式(1)で表されるものを用いることができる。
【0032】
【化1】
【0033】
上記の一般式(1)で表されるPPEの一例としては、下記の式(2)で表されるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)を挙げることができる。
【0034】
【化2】
【0035】
このようなPPEは、例えば、米国特許第4,059,568号明細書に開示されている方法で合成したものを用いることができるものもあり、特に限定されるものではないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が46000〜53000で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)が4.0〜4.5であるものが好ましい。
【0036】
本来PPEは、熱可塑性樹脂であり、耐熱性と寸法安定性とを改良するために、このPPEとスチレン・ブタジエンブロックコポリマー等の相溶化剤、そしてTAICとを含有したPPE樹脂組成物として用いられる。
【0037】
しかし、従来の技術において既述のとおり、上記のような樹脂組成物においてはインナービアホールへの樹脂充填性(IVHの穴埋め性)に問題がある。そこで本発明では、PPE/TAIC系の組成物に、フェニル基とビニル基を有する分子を10〜70質量%含有させるようにしている。フェニル基とビニル基を有する分子は、フェニル基を有することでPPEとの相溶性が良くなり、またビニル基を有することでTAICとの相溶性が良くなる。そうすると結果的に、PPEとTAICとの相溶性が良くなり、後述する積層板の作製時においてIVHの穴埋め性を従来よりも改善して向上させることができるものである。
【0038】
本発明においてフェニル基とビニル基を有する分子としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記の[化3]に示すようなビニルベンジルエーテル系樹脂(昭和高分子株式会社製「V−1000X」及び「V−1100X」等)を用いることができ、またフェノール樹脂にビニルベンジル基を付加した分子を用いることもできる。フェノール樹脂は、様々な構造のものを工業的に安価かつ容易に入手することができるので、フェニル基源として好ましい。ビニル基源としては、特に限定されるものではないが、上記のようにビニルベンジル基が好ましい。
【0039】
【化3】
【0040】
フェノール樹脂にビニルベンジル基を付加した分子は、フェノール樹脂とビニルベンジルハライドとをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることにより、得ることができる。このようにすると、フェノール樹脂の分子中に容易にビニル基を導入することができる。
【0041】
さらに、フェノール樹脂にビニルベンジル基を付加した分子において、ビニルベンジル基の個数が0.3〜10個/10000分子量であることが好ましい。このようにすると、PPE樹脂組成物の硬化物のガラス転移点と密着性を共に高く得ることができるものである。ここで、「ビニルベンジル基の個数が0.3〜10個/10000分子量である」とは、フェノール樹脂にビニルベンジル基を付加した分子の分子量が10000である場合において、この分子が有するビニルベンジル基の個数が0.3〜10個であることを意味するものである。フェノール樹脂にビニルベンジル基を付加した分子の分子量が10000でない場合においては、この分子の分子量を10000に換算するものであるが、これについては後述するように具体例を挙げて説明する。なお、フェノール樹脂にビニルベンジル基を付加した分子において、ビニルベンジル基の個数が0.3個未満であると、官能基であるビニル基の量が少ないため、TAICに対する相溶性が悪くなるおそれがあり、逆にビニルベンジル基の個数が10個を超えると、官能基量が多く、架橋密度が高くなりすぎ、密着性が悪化するおそれがある。
【0042】
上記のようなフェノール樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルキルフェノールのような1官能のフェノール樹脂、ポリフェニレンエーテルのような1〜2官能の樹脂、ビスフェノールAやビスフェノールFのような2官能の樹脂及びフェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂のような多官能の樹脂等を用いることができる。このようなフェノール樹脂にビニルベンジル基を付加させることによって得られる分子において、ビニルベンジル基の個数を0.3〜10個/10000分子量に調整するためには、ポリフェニレンエーテルや、特開2003−40920号公報で開示されたスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体や、スチレン−ポリアセトスチレン共重合体の加水分解物等を用いるのが好ましい。ここで、例えば、ポリフェニレンエーテルの1分子中のOH基は1〜2個であるので、分子量12200(100核体)の場合、10000分子量中のビニルベンジル基の量は0.8〜1.6個である。分子量が3100(24核体)の場合、3.1〜6.0個となる。つまり、分子量を調整すれば、10000分子量当たりのビニルベンジル基の個数を0.3〜10個に自在に調整することができる。また、例えば、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体で、スチレン60核体、ヒドロキシスチレン6核体の共重合体である場合、10000分子量中のビニルベンジル基の個数は8.8個である。スチレン共重合体とヒドロキシスチレン共重合体との比率を調整すれば、10000分子量当たりのビニルベンジル基の個数を0.3〜10個に自在に調整することができる。スチレン−ポリアセトスチレン共重合体の加水分解物の場合も同様に、スチレンとアセトスチレンとの重合比率を変えることにより、10000分子量当たりのビニルベンジル基の個数を0.3〜10個に自在に調整することができる。フェノール樹脂の中では特にポリフェニレンエーテルが好ましいが、その理由は、工業的に容易に入手できる材料であるからである。
【0043】
上記のようにしてPPE/TAIC系の相溶性を改善することができるが、このままではPPEの融点及び溶融粘度が高いため、このPPEを含有する樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、多層プリント配線板用材料としては成形性不良の問題が発生するおそれがある。そこで、PPEの分子量を低減することにより、樹脂組成物の粘度を低減し、成形性の向上を図るようにしてもよい。PPEの分子量を低減する手法としては、次のような方法を使用することができる。すなわち、PPEにフェノール種を反応させることによって、PPEの分子量を低減する方法である。この方法で使用するフェノール種としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、2,6−ジメチルフェノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル等を挙げることができるが、硬化後の耐熱性を向上させるために、2官能以上のフェノール種を使用するのが好ましい。
【0044】
また、PPEにフェノール種を反応させるための開始剤として、過酸化ベンゾイル、3,3′,5,5′−テトラメチル−1,4−ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノキシル、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルのような酸化剤を用いるのが好ましく、必要に応じてカルボン酸金属塩等を用いて上記の反応を促進することもできる。また、反応後の成分として低分子量アルコールのような揮発性の高い成分を発生する開始剤が、誘電率の上昇を抑制することができるため、より好ましい。
【0045】
また、上記のようにフェノール種を反応させて低分子量化することによって得られるPPEの分子量(数平均分子量)は2000〜12000の範囲であることが好ましい。PPEの分子量が上記の範囲であると、耐熱性が高く、成形時の溶融樹脂の流動性を良好にすることができ、成形性を高めることができるものである。しかし、PPEの分子量が2000未満であると、ガラス転移点(以下「Tg」ともいう。)が低く、耐熱性に問題を生じるおそれがあり、逆にPPEの分子量が12000を超えると、溶融粘度が高く、成形時の樹脂流れ性や2次成形性が悪くなり、多層プリント配線板の作製時にボイドが発生し、吸湿耐熱性を悪化させるおそれがある。
【0046】
さらに、PPEの分子量(数平均分子量)は6000〜10000の範囲であることが好ましい。PPEの分子量が上記の範囲であると、耐熱性がより高く、成形時の溶融樹脂の流動性をさらに良好にすることができ、成形性を一層高めることができるものである。なお、PPEの分子量が6000未満であると、Tgがやや低く、耐熱性に問題を生じるおそれが少しあり、逆にPPEの分子量が10000を超えると、成形時の樹脂流れ性が少し悪くなり、多層プリント配線板の作製時にボイドが若干発生し、吸湿耐熱性を少し悪化させるおそれがある。
【0047】
ここで、本発明に係るPPE樹脂組成物において、この組成物全量に対して、PPEを10〜60質量%、TAICを10〜60質量%含有するのが好ましい。PPE及びTAICをそれぞれ上記の含有量となるように配合することによって、誘電特性、耐熱性、密着性のすべてを高く得ることができるものである。しかし、PPEが10質量%未満であると、誘電特性、密着性が悪くなるおそれがあり、逆にPPEが60質量%を超えると、Tgの低下を招き、耐熱性が悪くなったり、溶融粘度が高くなって2次成形性が悪化したりするおそれがある。PPEは誘電特性に優れた材料である反面、Tgが低いという特性を有する材料であるため、組成物中においてPPEが10〜60質量%であると、PPEの長所を生かすことができると共にPPEの短所は無視することができる。また、TAICが10質量%未満であると、Tgが低く、耐熱性が悪くなるおそれがあり、逆にTAICが60質量%を超えると、誘電特性、密着性が悪くなるおそれがある。TAICは、Tgが高く、耐熱性に優れた材料であるが、固く脆いため、密着性に乏しく、また、誘電率も比較的高い材料である。そのため、組成物中においてTAICが10〜60質量%であると、TAICの長所を生かすことができると共にTAICの短所は無視することができる。
【0048】
さらに、本発明に係るPPE樹脂組成物において、この組成物全量に対して、PPEを10〜40質量%、TAICを20〜50質量%、フェニル基とビニル基を有する分子を20〜60質量%含有するのがより好ましい。PPE、TAIC、フェニル基とビニル基を有する分子をそれぞれ上記の含有量となるように配合することによって、誘電特性、耐熱性、密着性のすべてをより高く得ることができるものである。しかし、PPEが40質量%を超えると、Tgがやや低く、耐熱性に少々不安がある。また、TAICが20質量%未満であると、Tgがやや低く、耐熱性に少々不安があり、逆にTAICが50質量%を超えると、誘電特性、密着性がやや悪くなるおそれがある。また、フェニル基とビニル基を有する分子が20質量%未満であると、相溶性が悪くなる可能性があり、逆にフェニル基とビニル基を有する分子が60質量%を超えると、工業的に容易に入手できるPPE/TAIC樹脂の使用量が相対的に低下し、本発明に係るPPE樹脂組成物の工業的な汎用性が損なわれるおそれがある。
【0049】
また、本発明に係るPPE樹脂組成物において、多官能のメタクリレート樹脂と多官能のアクリレート樹脂から選ばれるものを上記組成物全量に対して3〜20質量%含有するのが好ましい。このように多官能のメタクリレート樹脂や多官能のアクリレート樹脂を所定量含有することによって、架橋密度を緻密にし、Tgを高く得ることができるものである。しかし、多官能のメタクリレート樹脂や多官能のアクリレート樹脂を用いるにしても、これらが20質量%を超えて含有されていると、固く脆くなるため密着性が低下する傾向にあり、逆に3質量%未満しか含有されていないと、高Tg化を図ることができないおそれがある。なお、多官能のメタクリレート樹脂や多官能のアクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等を用いることができる。
【0050】
さらに、本発明に係るPPE樹脂組成物において、2〜4官能のメタクリレート樹脂と2〜4官能のアクリレート樹脂から選ばれるものを上記組成物全量に対して3〜20質量%含有するのが好ましい。このように2〜4官能のメタクリレート樹脂や2〜4官能のアクリレート樹脂を所定量含有することによって、Tgを高めることができると共に密着性を損なわないようにすることができるものである。2官能未満のメタクリレート樹脂や2官能未満のアクリレート樹脂であると、Tgの向上を図ることができないおそれがあり、逆に、4官能を超えるメタクリレート樹脂や4官能を超えるアクリレート樹脂であると、固く脆くなるため、密着性の低下につながるおそれがある。また、2〜4官能のメタクリレート樹脂や2〜4官能のアクリレート樹脂を用いるにしても、これらが20質量%を超えて含有されていると、固く脆くなるため密着性が低下する傾向にあり、逆に3質量%未満しか含有されていないと、高Tg化を図ることができないおそれがある。なお、2〜4官能のメタクリレート樹脂や2〜4官能のアクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレートやテトラメチロールメタンテトラアクリレート等を用いることができる。
【0051】
さらに、本発明に係るPPE樹脂組成物には、必要に応じて、無機材質(無機化合物)や有機材質(有機化合物)の充填材(フィラー)を配合することができる。無機材質の充填材は、本発明に係るPPE樹脂組成物を用いて作製される積層板の熱膨張係数の低減や強靱化の目的で使用することができ、その材質は、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ、窒化ホウ素、ワラストナイト、タルク、カオリン、クレー、マイカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物、窒化物、珪化物、硼化物等を例示することができる。低誘電率がPPE/TAIC樹脂の特徴であるため、シリカや窒化ホウ素のような低誘電率フィラーを使用することが好ましい。
【0052】
特に、本発明に係るPPE樹脂組成物に配合するフィラーとしては、中空フィラーを用いるのが好ましい。このように上記組成物中に中空フィラーが含有されていると、低誘電率の積層板を容易に得ることができるものである。
【0053】
一方、有機材質の充填材としては、特に限定されるものではないが、例えば、フッ素系、ポリスチレン系、ジビニルベンゼン系、ポリイミド系等を例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は複数組み合わせて使用することができる。フッ素系充填材(フッ素含有化合物の充填材)としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリパーフルオロアルコキシ樹脂、ポリフッ化エチレンプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂等を使用することができる。これらの有機材質の充填材も、低誘電率化の目的から、中空であることが好ましい。この有機材質(有機化合物)の中空フィラーについては後述する。また、これらの無機材質や有機材質の中空フィラーは、単独で又は複数組み合わせて使用することができる。
【0054】
また、PPE樹脂組成物100質量部に対して上記の中空フィラーの含有量は5〜60質量部であることが好ましい。中空フィラーの含有量をこの範囲に設定することによって、誘電特性と成形性が共に優れた積層板を得ることができるものである。中空体の含有量が高くなることで誘電特性の向上を図ることができるが、反面、樹脂流れ性の低下につながり、成形性に問題を生じるおそれがあるため、中空フィラーの含有量の上限は上記のように60質量部としている。逆に中空フィラーの含有量が5質量部未満であると、誘電特性と成形性とを共に高く得ることができないおそれがある。
【0055】
中空フィラーは、無機化合物であるよりも、有機化合物である方が好ましい。その理由は、有機化合物は無機化合物に比べて誘電率が低いからであり、このような有機化合物の中空フィラーを用いることによって、さらに低誘電率の積層板を得ることができるものである。有機化合物の中空フィラーとしては、特に、特開2002−80503号公報で開示されている中空高分子微粒子を用いるのが好ましい。また、上記の中空フィラーとしては、ジビニルベンゼンとジビニルビフェニルから選ばれるものを用いるのが好ましい。この中空フィラーは、シェル(殻)の材質がジビニルベンゼンやジビニルビフェニルであるものを意味しているが、このような中空フィラーは、ビニル基とフェニル基を有しているため、PPE/TAIC樹脂との相溶性が良くなるものである。
【0056】
本発明に係るPPE樹脂組成物には、必要に応じて、難燃剤を配合することができる。この場合、PPE、TAIC、フェニル基とビニル基を有する分子及び難燃剤を含有してなるPPE樹脂組成物に溶剤(有機溶媒)を添加したワニスにおいて、上記の難燃剤が、PPE、TAIC、フェニル基とビニル基を有する分子に非反応の臭素化有機化合物であり、かつ、上記のワニス調製用の溶剤に溶解せず、分散させることが好ましい。すなわち、難燃剤が不飽和結合を有する反応型の難燃剤、又は上記の溶剤に溶解する溶解型の難燃剤である場合には、この難燃剤がマトリックス樹脂の反応系に取り込まれ、その結果、この樹脂組成物を用いたプリプレグ及びこのプリプレグを用いた積層板の耐水性、耐湿性、吸湿耐熱性及びTgが低下する。従って、難燃剤が、PPE、TAIC、フェニル基とビニル基を有する分子に非反応の臭素化有機化合物であり、かつ、上記の溶剤に溶解せず、分散することにより、難燃剤が樹脂中にフィラーとして存在するため、耐水性、耐湿性、吸湿耐熱性及びTgが向上するものと推察される。
【0057】
例えば、上記の臭素化有機化合物としては、芳香族臭素化化合物が好ましく、デカブロモジフェニルエタン、4,4−ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等を挙げることができる。臭素の含有量がPPE樹脂組成物全量に対して8〜20質量%となるように、上記の臭素化有機化合物を配合するのが好ましい。すなわち、PPE樹脂組成物全量に対して臭素の含有量が8質量%未満の場合には、積層板の難燃性が低下し、UL規格94V−0レベルの難燃性を維持できなくなるおそれがあり、逆に臭素の含有量が20質量%を超える場合には、製造した積層板の加熱時に臭素(Br)が解離し易くなり、積層板の耐熱性が低下する傾向を示すおそれがある。
【0058】
本発明に係るPPE樹脂組成物は、基材に含浸してプリプレグを得るために、まず、PPE、TAIC、フェニル基とビニル基を有する分子、必要に応じて難燃剤である臭素化有機化合物、有機溶媒を混合し、ワニスに調製して用いられる。
【0059】
上記の有機溶媒としては、上記の臭素化有機化合物を溶解せず、樹脂成分を溶解し、かつ反応に悪影響を及ぼすものでなければ特に限定されるものではなく、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、ジブチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素等の適当な有機溶媒を1種あるいは2種以上混合して用いることができる。上記のワニスの樹脂固形分の濃度は、ワニスを基材に含浸する作業に応じて適当に調整すればよいが、例えば、40〜90質量%が適当である。
【0060】
上記のように調製されたワニスを基材に含浸して、さらに加熱乾燥することにより、有機溶媒を蒸発させると共に基材中の樹脂を半硬化させることによってプリプレグを得ることができる。このようにして得たプリプレグは、誘電特性、耐熱性、密着性、成形性が高く、また、上記のようなプリプレグを用いて製造される多層プリント配線板においては、IVH内部に樹脂を相分離させることなく充填することができるものである。ここで、上記の基材としては、公知の有機繊維やガラス繊維の織布又は不織布を用いることができるが、NEタイプのガラスクロスを基材として用いるのが好ましく、これにより、誘電率、誘電正接が低くて高周波特性の良いプリプレグや積層板が得られるものである。なお、「NEタイプのガラスクロス」とは、誘電率が低いガラスクロスのことである。すなわち、通常のEガラスの誘電率(ε6.5)よりも低い誘電率(ε4.4)のNEガラスで形成したガラスクロスを「NEタイプのガラスクロス」という。ちなみに、「NE」は日東紡績株式会社製の「New Eガラス」のことである。
【0061】
上記の基材へのワニスの含浸量は、プリプレグ中の樹脂固形分の質量比率が35質量%以上になるようにするのが好ましい。一般に基材の誘電率は樹脂のそれよりも大きく、それゆえに、このプリプレグを用いて得られた積層板の誘電率を小さくするには、プリプレグ中の樹脂固形分の含有量を前記質量比率より多くすると良い。例えば、基材にEガラス布を用いたプリプレグが37質量%以上の樹脂固形分の含有量では誘電率3.5以下を達成することができ、基材にNEガラス布を用いたプリプレグが45質量%以上の樹脂固形分の含有量では誘電率3.3以下を達成することができる。また、ワニスを含浸させた基材の加熱条件は、例えば、80〜150℃で1〜10分間にすることができるが、これに限定されるものではない。
【0062】
本発明においては、上記のプリプレグを用いて積層板を作製することができる。詳しく説明すると、本発明に係るプリプレグを1枚又は複数枚重ね、さらにその両面又は片面に銅箔等の金属箔を重ねたものを加熱加圧成形することにより、積層一体化された両面金属箔張り又は片面金属箔張り積層板を作製することができる。この積層板の金属箔をエッチング加工等して回路形成することによって、プリント配線板を得ることができ、さらには、このプリント配線板を内層用プリント配線板として、内層の金属箔に表面処理を施し、本発明に係るプリプレグを間に介して複数枚重ねると共に、その最外層に金属箔を重ねたものを加熱加圧成形することによって、多層プリント配線板を作製することができる。なお、成形条件は、本発明に係るPPE樹脂組成物の原料の配合比率により異なり、特に限定されるものではないが、一般的には温度170〜230℃、圧力1.0〜6.0MPa(10〜60kg/cm2)の条件で、適切な時間加熱加圧するのが好ましい。このようにして得られた積層板やプリント配線板は、PPEの特性が損なわれておらず、誘電特性等の高周波特性が優れたものであって、しかも、成形性、耐水性、耐湿性、吸湿耐熱性及びTgが改良された優れたものである。
【0063】
ここで、上記の金属箔として銅箔を用いる場合には、この銅箔としては、表面粗さが0μmより大きく2μm以下であり、かつ銅箔の樹脂層が形成される側の表面(プリプレグと接触する側の表面)が、防錆や樹脂層との密着向上のために亜鉛又は亜鉛合金にて処理された後、ビニル基含有シランカップリング剤等によりカップリング処理されたものを用いるのが好ましい。このような銅箔を用いることで、樹脂層(絶縁層)と回路(銅箔)との密着性が良く、また伝送特性が良く、かつ高周波特性に優れたプリント配線板が得られる。なお、銅箔を亜鉛又は亜鉛合金にて処理するにあたっては、銅箔の表面に亜鉛や亜鉛合金をメッキ等により付着させるようにして行うことができる。
【0064】
以上により、本発明に係るPPE樹脂組成物を基材に含浸し、加熱乾燥して半硬化させて得たプリプレグ、及びこのプリプレグの所定枚数を加熱加圧して積層成形して得た積層板によると、成形性、耐水性、耐湿性、吸湿耐熱性及びガラス転移点が高く優れており、また、このプリプレグは多層成形用としても優れた成形性を示す。また、本発明に係る積層板を用いてプリント配線板を形成することによって、誘電率、誘電正接が低く、耐水性、耐湿性、吸湿耐熱性に優れ、ガラス転移点が高く、密着性が良い高周波特性の優れたプリント配線板を得ることができる。また、多層成形に用いる積層板が、本発明に係る積層板を使用すると共にプリプレグとして本発明に係るプリプレグを用いて多層プリント配線板を形成することによって、多層成形時のボイドやかすれがなく、IVHの穴埋め性を含む成形性に優れ、誘電率、誘電正接が低く、耐水性、耐湿性、吸湿耐熱性に優れ、ガラス転移点が高く、密着性が良い高周波特性の優れた多層プリント配線板を得ることができるものである。
【0065】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0066】
(実施例1)
最初にPPEの分子量の調整を実施した。PPE(日本ジーイープラスチックス株式会社製:商品名「ノリルPX9701」、数平均分子量14000)を250g、ビスフェノールAを2.5g、開始剤としてt−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(日本油脂株式会社製:商品名「パーブチルI」)を1.8g、ナフテン酸コバルト8%を0.0056gそれぞれ配合し、これに溶剤であるトルエンを600g加え、90℃にて1時間混合し、分散・溶解させて反応させることによって、PPEの分子量を調整する処理を行った。この処理後に得られた透明溶液中のPPEの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)にて測定したところ、約9000であった。
【0067】
次に、上記のようにして低分子量にしたPPE溶液にTAIC(日本化成株式会社製)を200g、ビニルベンジルエーテル系樹脂「V−1000X」(昭和高分子株式会社製)を50g、難燃剤として臭素化有機化合物であるデカブロモジフェニルエタン(アルベマール浅野株式会社製:商品名「SAYTEX8010」、Br含有量82質量%)を100g及び開始剤としてα、α’ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(日本油脂株式会社製:商品名「パーブチルP」)10gを配合した。さらに無機フィラーとして球状シリカ(電気化学工業株式会社製:商品名「FB−3SDC」)50gを添加して、これを溶剤であるトルエン中で混合、分散、溶解して樹脂組成物のワニスを得た。上記の難燃剤が、PPE及びTAICに非反応の臭素化有機化合物であるので、樹脂組成物であるワニス中で上記の難燃剤は上記の溶剤には溶解せずに分散していた。
【0068】
なお、ここで使用した「V−1000X」は、上記の[化3]に示すような構造式で表され、10000分子量中のビニルベンジル基の数は28〜30個である(28〜30個/10000分子量)。
【0069】
次に、このワニスをEタイプのガラスクロス(日東紡績株式会社製:商品名「WEA116E」)に含浸させた後、温度120℃、3分間の条件で加熱乾燥し、溶媒を除去して樹脂含有量55質量%のプリプレグを得た。この1枚のプリプレグの両面に35μm厚の銅箔(ST箔)を配して、温度200℃、圧力3.0MPa(30kg/cm2)、180分間の成形条件で加熱加圧し、内層プリント配線板用の両面銅張積層板を得た。
【0070】
次に、上記のようにして得た内層プリント配線板用の両面銅張積層板に0.2mmの導体幅で2.54mmピッチの格子パターンを形成することによって、プリント配線板を作製した。このようなプリント配線板を15枚準備し、これらのプリント配線板間及び最外層のプリント配線板の外側に各々1枚のプリプレグを配し、さらに最外層のプリプレグの外側に35μm厚の銅箔(ST箔)を配して、温度200℃、圧力3.0MPa(30kg/cm2)、180分間の成形条件で加熱加圧することにより、成形性評価用の多層プリント配線板を得た。次にこの多層プリント配線板に0.25mmのドリル径でスルーホールを形成し、スルーホールめっきを20μm付着させた後に、両側に各1枚のプリプレグを重ね、その両側に厚さ35μmの銅箔(ST箔)を重ねて、温度200℃、圧力3.0MPa(30kg/cm2)、180分間の成形条件で加熱加圧し、IVH穴埋め性評価用の多層プリント配線板を得た。
【0071】
また、6枚のプリプレグを重ね、その両側に厚さ35μmの銅箔(ST箔)を重ねて、温度200℃、圧力3.0MPa(30kg/cm2)、180分間の成形条件で加熱加圧し、両面銅張積層板を得た。次に、このようにして得られた両面銅張積層板を100mm×10mmの大きさにカットして、層間接着力測定用のサンプルを作製し、また、表面の銅箔をエッチングして、ガラス転移点(Tg)、誘電特性評価用のサンプルとした。
【0072】
そして、上記のようなサンプルを用いて、IVHの穴埋め性評価、2次成形性評価、層間接着力(層間接着強度)、誘電率(Dk)、誘電正接(Df)、Tgを評価した。評価方法は以下のとおりである。
【0073】
IVHの穴埋め性評価は、IVH穴埋め性評価用多層プリント配線板のIVHの断面を観察し、IVH中心部にフィラーが相分離せずに観察されたものは「○」、相分離してIVH中心部にフィラーが観察されなかったものは「×」とした。
【0074】
2次成形性評価は、2次成形評価用多層プリント配線板の断面を観察し、ボイドが観察されなかったものは「○」、ボイドが観察されたものは「×」とした。ただし、2次成形性評価の「×」は、成型条件を最適化すれば「○」になる可能性はあると考える。
【0075】
層間接着力は、外層銅箔の下の第1層目のプリプレグとその下の第2層目のプリプレグとの界面の接着力を指し、JIS法(C6481)に準じて測定した。
【0076】
積層板の誘電率、誘電正接は、IPC法(TM−650−2.5.5.9)により評価した。
【0077】
ガラス転移点(Tg)は、粘弾性スペクトロメーター(DMA)を用いて測定した。
【0078】
(実施例2〜27及び比較例1)
表1〜3に記載の配合量で実施例1と同様にサンプルを作製し、実施例1と同様に、IVHの穴埋め性、2次成形性評価、層間接着力(層間接着強度)、誘電率(Dk)、誘電正接(Df)、Tgを評価した。結果を表1〜3に示す。
【0079】
なお、フェニル基とビニル基を有する分子として使用した「V−1100X」(昭和高分子株式会社製)は、上記の[化3]に示すような構造式で表され、10000分子量中のビニルベンジル基の数は23〜39個である(23〜39個/10000分子量)。また、ビニルベンジル化PPE(1)(以下「VBE−PPE(1)」ともいう。)は、特公平07−047631号公報に準じて作製された旭化成株式会社試作品のPPE(Mn=2400、Mw=3600、OH当量=1800)を使用し、特開平6−116184号公報に準じてビニルベンジル化を実施することにより得られた化合物であって、Mw=3830、10000分子量中のビニルベンジル基の個数が5.2個(5.2個/10000分子量)であるものである。一方、ビニルベンジル化PPE(2)(以下「VBE−PPE(2)」ともいう。)は、ゼネラルエレクトリック社製のPPE(「ノリル640」(Mn=12000、Mw=41000、OH当量25600))を、特開平6−116184号公報に準じてビニルベンジル化を実施することにより得られた化合物であって、Mw=41200、10000分子量中のビニルベンジル基の個数が0.39個(0.39個/10000分子量)であるものである。また、実施例26ではEタイプではなくNEタイプのガラスクロス(日東紡績株式会社製:商品名「NEA2116」)を使用した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
表1〜3にみられるように、実施例1〜27では、フェニル基とビニル基を有する分子を組成物中において10質量%以上含有するので、フェニル基とビニル基を有する分子を全く含有していない比較例1に比べてIVHの穴埋め性に優れていることが確認される。
【0084】
また実施例10,11,13,15では、フェニル基とビニル基を有する分子において10000分子量のビニルベンジル基が10個以下であるので、実施例8,9,12,14に比べて層間接着力が高いことが確認される。
【0085】
また、実施例5では、PPEの分子量が実施例3,4に比べて高いため、Tgの低下が防止されていることが確認される。
【0086】
また、実施例5,6では、PPEの分子量が実施例7に比べて低いため、2次成形性が良好であることが確認される。
【0087】
また、実施例1,2では、PPEの配合比率が高く、フェニル基とビニル基を有する分子の配合比率が低いため、2次成形性があまり良くないことが確認される。
【0088】
また、実施例16では、PPEの配合比率が高く、TAICの配合比率が低いため、2次成形性があまり良くないことが確認される。
【0089】
また、実施例14,15では、PPEの配合比率が低く、TAICの配合比率が高いため、層間接着力があまり高くないことが確認される。
【0090】
また、実施例19,22では、3官能のトリメタクリレートを添加しているので、実施例5に比べて層間接着力を損なうことなくTgが高くなっていることが確認される。
【0091】
また、実施例21,24では、4官能のアクリレートを添加しているので、4官能未満のメタクリレートを添加している実施例に比べて層間接着力があまり高くないことが確認される。
【0092】
また、実施例20,23では、2官能のメタクリレートを添加しているので、実施例5に比べてわずかであるがTgが向上していることが確認される。
【0093】
また、実施例25,26では、中空フィラーを添加しているので、誘電率が低いことが確認される。
【0094】
また、実施例27では、NEタイプのガラスクロスを使用しているので、実施例25に比べて誘電率が低くなっていることが確認される。
【0095】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物によれば、フェニル基とビニル基を有する分子によって、PPEとTAICとの相溶性が良くなり、積層板の作製時におけるIVHの穴埋め性を改善することができるものである。また、フェノール樹脂又はPPEを工業的に容易に入手することができることから、容易にフェニル基とビニル基を有する分子を調製することができるものである。
【0096】
また請求項3の発明によれば、フェノール樹脂又はPPEを工業的に容易に入手することができることから、容易にフェニル基とビニル基を有する分子を調製することができるものである。
【0097】
また請求項2の発明によれば、ガラス転移点、密着性を共に高く得ることができるものである。
【0098】
また請求項4の発明によれば、耐熱性に優れ、成形時の溶融樹脂の流動性を良好にすることができ、成形性を高めることができるものであり、請求項5の発明によれば、さらにその効果を高めることができるものである。
【0099】
また請求項6の発明によれば、誘電特性、耐熱性、密着性のすべてを高く得ることができるものであり、請求項7の発明によれば、さらにその効果を高めることができるものである。
【0100】
また請求項8の発明によれば、架橋密度を緻密にし、ガラス転移点を高く得ることができるものである。
【0101】
また請求項9の発明によれば、ガラス転移点を高めることができると共に密着性を損なわないようにすることができるものである。
【0102】
また請求項10の発明によれば、低誘電率の積層板を得ることができるものである。
【0103】
また請求項11の発明によれば、誘電特性、成形性が共に優れた積層板を得ることができるものである。
【0104】
また請求項12の発明によれば、さらに低誘電率の積層板を得ることができるものである。
【0105】
また請求項13の発明によれば、PPE樹脂組成物における相溶性を良好に得ることができるものである。
【0106】
本発明の請求項14に係るプリプレグによれば、誘電特性、耐熱性、密着性、成形性のすべてを高め、また、多層プリント配線板においては、IVH内部に樹脂を相分離させることなく充填することができるものである。
【0107】
また請求項15の発明によれば、低い誘電率の積層板を得ることができるものである。
Claims (16)
- ポリフェニレンエーテル、トリアリルイソシアヌレート、及びフェニル基とビニル基を有する分子を含有し、前記フェニル基とビニル基を有する分子が、フェノール樹脂にビニルベンジル基を付加した分子であり、前記フェニル基とビニル基を有する分子を組成物全量に対して10〜70質量%含有して成ることを特徴とするポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- フェノール樹脂にビニルベンジル基を付加した分子においてビニルベンジル基の個数が0.3〜10個/10000分子量であることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 上記フェノール樹脂にビニルベンジル基を付加した分子においてフェノール樹脂がポリフェニレンエーテルであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 組成物中の上記ポリフェニレンエーテルの分子量が2000〜12000の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 組成物中の上記ポリフェニレンエーテルの分子量が6000〜10000の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 組成物全量に対して、ポリフェニレンエーテルを10〜60質量%、トリアリルイソシアヌレートを10〜60質量%含有して成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 組成物全量に対して、ポリフェニレンエーテルを10〜40質量%、トリアリルイソシアヌレートを20〜50質量%、フェニル基とビニル基を有する分子を20〜60質量%含有して成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 多官能のメタクリレート樹脂と多官能のアクリレート樹脂から選ばれるものを組成物全量に対して3〜20質量%含有して成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 2〜4官能のメタクリレート樹脂と2〜4官能のアクリレート樹脂から選ばれるものを組成物全量に対して3〜20質量%含有して成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 中空フィラーを含有して成ることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 組成物100質量部に対して中空フィラーの含有量が5〜60質量部であることを特徴とする請求項10に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 中空フィラーが有機化合物であることを特徴とする請求項10又は11に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 中空フィラーがジビニルベンゼンとジビニルビフェニルから選ばれるものであることを特徴とする請求項12に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
- 請求項1乃至13のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を基材に含浸して加熱乾燥により半硬化させて成ることを特徴とするプリプレグ。
- 基材としてNEタイプのガラスクロスを用いて成ることを特徴とする請求項14に記載のプリプレグ。
- 請求項14又は15に記載のプリプレグを1枚又は複数枚重ね、さらにその両面又は片面に金属箔を重ねたものを加熱加圧成形することにより積層一体化して成ることを特徴とする積層板。
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