JP2023078628A - 成形用フィルムの製造方法及びこれを用いた成形された物品 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハードコート層のようなベースコート層の上に反射防止層等の光学機能層を有していても安定した塗工外観が得られ、且つ伸び率が高いため成形性に優れるアフターキュア型成形用フィルムの製造方法と、それを用いて成形された物品を提供する。【解決手段】光透過性を有する基材フィルムに、第一の紫外線硬化樹脂組成物を塗布して紫外線照射により一次硬化させ、その上に第二の紫外線硬化樹脂組成物を塗布して乾燥後、立体形状に成形し、その形状を保持した状態で紫外線照射により二次硬化させて光学機能層を形成する成形用フィルムにおいて、前記一次硬化を皮膜の赤外線吸収硬化率で10~50%にて行うことを特徴とする成形用フィルムの製造方法である。【選択図】なし
Description
本発明は、成形性に優れるアフターキュア型成形用フィルムの製造方法及びこれを用いて成形された物品に関する。
アクリル系の光硬化型樹脂は、プラスチックフィルムやプラスチック成形物表面に特別な性能を付与するために多くの分野で用いられており、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布して高硬度を付与したハードコートフィルムは、タッチパネル用フィルムや成形用フィルムとして大量に使用されている。
これらのなかで特に成形用としては、フィルム表面に絵柄を印刷後、加熱により軟化させた状態で3次元成形を行うインサートフィルムが良く知られているが、フィルムに塗布されたハードコート樹脂層を硬くすると、立体形状に加工する際に曲面においてマイクロクラックが入りやすくなり、加工形状には制約があった。そのため立体成形前にハードコート層を完全硬化させず、成形後に光硬化させるアフターキュア手法が考案され、過去に出願人も、2個以上のアクリロイル基を有する多官能重合性化合物、分子量が50~400の低分子量アミン、および分子量が1~20万のポリアミンを含有する樹脂組成物を発明している(特許文献1)。
このハードコート樹脂組成物は硬度や耐擦傷性が高く、且つ成形性も良好なハードコート皮膜を得ることができる優れたものであるが、近年では更に、フィルム表面に反射防止等の新たな光学機能を要求されるようになってきた。そのため、ハードコート層に加えて反射防止層等の光学機能層を有すると共に、光硬化前では伸び率が高く十分な成形性がありながらタックレスであるアフターキュア型成形用フィルムが求められていた。
本発明の課題は、ハードコート層のようなベースコート層の上に反射防止層等の光学機能層を有していても安定した塗工外観が得られ、且つ伸び率が高いため成形性に優れるアフターキュア型成形用フィルムの製造方法と、それを用いて成形された物品を提供することにある。
上記の課題を解決するため請求項1記載の発明は、光透過性を有する基材フィルムに、第一の紫外線硬化樹脂組成物(UV1)を塗布して紫外線照射により一次硬化させ、その上に第二の紫外線硬化樹脂組成物(UV2)を塗布して乾燥後、立体形状に成形し、その形状を保持した状態で紫外線照射により二次硬化させて光学機能層を形成する成形用フィルムにおいて、前記一次硬化を皮膜の赤外線吸収硬化率で10~50%にて行うことを特徴とする成形用フィルムの製造方法を提供する。
また請求項2記載の発明は、前記(UV2)硬化物の屈折率が、(UV1)硬化物の屈折率よりも低いことを特徴とする請求項1記載の成形用フィルムの製造方法を提供する。
また請求項3記載の発明は、前記(UV2)が重合性官能基を有する(メタ)アクリル系重合体(A2)を含むことを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の成形用フィルムの製造方法を提供する。
また請求項4記載の発明は、前記(A2)が、側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体のカルボキシル基の一部に脂環式エポキシ(メタ)アクリレートを反応させて得られる(メタ)アクリル系重合体であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の成形用フィルムの製造方法を提供する。
また請求項5記載の発明は、請求項1~4いずれか記載の製造方法により製造された成形用フィルムを用いて成形された物品を提供する。
本発明の製造方法により製造した成型用フィルムは、アフターキュア型でありながら、ハードコート層のようなベースコート層の上に反射防止層等の光学機能層を有していても安定した塗工外観を得ることができ、且つ伸び率が十分高く成形性にも優れるため、2層構成であるアフターキュア型成形用フィルムの製造方法として有用である。
本発明の成形用フィルムの製造方法は、基材フィルムに直接塗布する第一の紫外線硬化型樹脂組成物(以下(UV1)という)と、その硬化層(以下第一硬化層という)の上に塗布する第二の紫外線硬化樹脂組成物(以下(UV2)という)の2種類を用いて製造する製造方法である。なお(UV2)を用いて形成した硬化層を光学機能層という。また本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
上記の第一硬化層は、成形用フィルムの硬度や耐擦傷性を確保するハードコート層としての役割を担うことが好ましい。また光学機能層は成形用フィルム表面に光学的な機能を付与する役割を担い、例えば第一硬化層よりも屈折率を低くした光学機能層を形成することで、成形用フィルムに反射防止機能を付与することができる。
本発明の成形用フィルムは、基材フィルム上に(UV1)を塗布した後に紫外線照射により一次硬化(半硬化)させて第一硬化層を形成し、更にその上に(UV2)を塗布し、溶剤を乾燥させて指触タックをなくした後に金型等を用いて立体成形を行い、再度紫外線照射をすることにより二次硬化させて光学機能層を形成するアフターキュア型の成形フィルムである。
上記光学機能層を形成した反対側の基材面には、立体成形前に必要により接着層・プライマー層の形成や加飾層を入れても良く、更に立体成形後には必要により射出成型を行っても良い。また立体成形と同時に様々な基材と密着させて一体化した後に二次硬化しても良く、インサート成形やTOM成形等で使用することができる。
前記(UV1)を塗布した後に一次硬化させる目的は、(UV2)を塗布した際に、(UV1)のバインダー成分が多量に溶出するのを防止するためであり、一次硬化させることで、(UV2)の固形分が非常に低くなる低屈折樹脂のような場合でもバインダー成分の過剰な溶出を抑制でき、十分な塗工外観を確保できるようになる。但し、バインダー成分の溶出がほとんど無くなるレベルまで硬化させすぎると、伸び率が低くなり成形性が低下したり、低屈折率の光学機能層であっても最小反射率を小さくできなくなる場合がある。
前記(UV2)を低屈折率とするため、中空シリカ等の低屈折率フィラーを配合する場合、低固形分の(UV2)を第一層上に塗布する際、第一層中のバインダー樹脂を若干溶解するため、光学機能層をその最表面から第一層層へ向かって断面を観察すると、最上部は空気中に低屈折率フィラーが露出しており屈折率が最も低く、その下部は第一層から溶出したバインダー樹脂の影響で低屈折率フィラーの比率が徐々に低くなり、結果として屈折率が傾斜的に緩やかに増加した構成となっている。そのため外部からの光の反射を効果的に低減でき、最小反射率を小さくできる。
一次硬化の度合いは、紫外線照射前後で皮膜中に存在する未反応の(メタ)アクリロイル基量が変化するため、赤外線分光測定によるATR測定法にて、波長810cm-1付近のピーク面積と、波長1720cm-1付近のピーク面積の測定を行い、その比から次式(1)で定義することができる。 硬化率(%)=((P1a/P2a)-(P1b/P2b))/(P1a/P2a)・・・式(1)
(但し、P1a:紫外線照射前の波長810cm-1付近の赤外線吸収ピーク面積
P1b:紫外線照射後の波長810cm-1付近の赤外線吸収ピーク面積
P2a:紫外線照射前の波長1720cm-1付近の赤外線吸収ピーク面積
P2b:紫外線照射後の波長1720cm-1付近の赤外線吸収ピーク面積)
(但し、P1a:紫外線照射前の波長810cm-1付近の赤外線吸収ピーク面積
P1b:紫外線照射後の波長810cm-1付近の赤外線吸収ピーク面積
P2a:紫外線照射前の波長1720cm-1付近の赤外線吸収ピーク面積
P2b:紫外線照射後の波長1720cm-1付近の赤外線吸収ピーク面積)
上記のピーク面積測定は、パーキンエルマー社製のフーリエ変換赤外分光光度計Spectrum100を用い、ATR法にて吸光度を測定し、810cm-1および1720cm-1付近のピークの両裾を結んだ線をベースラインとしてその面積を求めた。なお810cm-1はアクリロイル基の二重結合に由来し、1720cm-1はカルボニル基に由来するピークで、1720cm-1のピークが紫外線照射前後で変化しないため、このピークと二重結合由来ピークとの比により反応率を算出している。
測定するサンプルは厚さ300μmのテクノロイC003(商品名:住友化学社製、PMMA/PCフィルム二層シート)を基材とし、PMMA側に(UV1)の各樹脂組成物を乾燥後で3μmとなる様に塗布し、恒温槽にて80℃で1分乾燥させた状態を紫外線照射前とし、紫外線により任意の露光量で一次硬化させた状態を紫外線硬化後とした。
本発明の成形フィルムの製造方法における一次硬化での硬化率は10~50%であり、13~48%が好ましく、15~45%が更に好ましい。10%未満の場合は、指触タックが無い場合でも光学機能層の外観が低下しやすくなり、50%超の場合は伸び率が低下するため立体形状に成形する際にクラックが発生しやすくなる。
前記(UV1)は、成形用フィルムに十分な硬度や耐擦傷性を確保できるハードコート皮膜としての特性を付与できる組成物が好ましい。例えば、(メタ)アクリル系重合体(A1)と、重合性官能基を有する化合物(B)と、光重合開始剤(C)を含む組成物である。また(UV2)については光学機能層を低屈折率化し、成形フィルムに反射防止機能を付与できる組成物が好ましい。例えば、重合性官能基を有する(メタ)アクリル系重合体(A2)と、光重合開始剤(C)と、中空ナノシリカ(D)と、表面調整剤(E)を含む組成物である。
本発明の(UV1)で使用できる(メタ)アクリル系重合体(A1)は、紫外線照射により一次硬化させた状態での伸び率を向上させる目的で配合する。(A1)を構成するモノマーとしては、塗工性や伸び率の観点でアルキル基の炭素数が1~8であるアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、メチルメタクリレート(以下MMAという)及びブチルメタクリレート(以下BMAという)を含むことが更に好ましい。
前記(A1)の重合方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば溶液重合や乳化重合、塊状重合などが挙げられる。これらの中では、ポリマーが溶液として得られる溶液重合が好ましく、具体的にはモノマーと溶媒を混合し、公知の重合開始剤や連鎖移動剤を加えて、加熱することにより重合が可能である。重合温度は70~130℃が好ましく、80~120℃が更に好ましい。
前記(A1)の重量平均分子量(以下Mw)は30,000~200,000が好ましく、50,000~150,000が更に好ましい。30,000以上とすることで充分な伸び率を確保でき、200,000以下とすることで作業性の良い粘度に調整しやすくなる。なおMwは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、スチレンジビニルベンゼン基材の充填剤を用いたカラムでテトラハイドロフラン溶離液を用いて、標準ポリスチレン換算の分子量を測定、算出した。
前記(A1)の配合比率は、(UV1)に含まれる固形分全量に対し40~60重量%が好ましく、42~58重量%が更に好ましい。40重量%以上とすることで一次硬化時点での伸び率を十分確保することができ、60重量%以下とすることで十分な塗工外観と低反射率を確保することができる。
本発明の(UV2)で使用できる(A2)は、光学機能層を構成する主要バインダー樹脂成分で、重合性官能基を有することが好ましい。重合性官能基は(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基、ビニル基、マレイミド基、エポキシ基等が挙げられるが、紫外線等の光照射により硬化性に優れる点で(メタ)アクリロイル基が好ましい。
前記(A2)は、溶剤乾燥後の塗膜表面をタックフリーにでき、色相変化が小さく耐熱性、耐候性に優れる点で、側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体のカルボキシル基の一部に脂環式エポキシ(メタ)アクリレートを反応させて得られる(メタ)アクリル系重合体が好ましい。
前記(A2)のMwは5,000~30,000が好ましく、7,000~25,000が更に好ましい。5,000以上とすることで充分な塗膜強度を確保でき、50,000以下とすることで溶媒への溶解性が良好となり、十分な塗膜外観を確保できる。また酸価(KOHmg/g)としては20~200が好ましく、50~100が更に好ましい。20以上とすることで下地との十分な密着性を確保でき、200以下とすることでその他の重合性官能基を有する化合物(B)を併用する際の相溶性を確保できる。
前記(A2)の配合比率は、(UV2)に含まれる固形分全量に対し5~40重量%が好ましく、8~35重量%が更に好ましい。5重量%以上とすることで十分な伸び率を確保することができ、40重量%以下とすることで屈折率を十分低くすることができる。またその他の重合性官能基を有する化合物(B)を含む場合の(A)の配合比率は、(A)と(B)のバインダー樹脂成分合計に対し、70重量%以上が好ましく、90重量%以上が更に好ましい。70重量%以上とすることで十分なタックレス性が確保でき、光照射前の成形プロセスで安定した生産性を確保することができる。
前記(UV1)及び(UV2)において、(A1)及び(A2)以外に用いる重合性官能基を有する化合物(B)としては、オリゴマーではウレタン(メタ)アクリレート(以下ウレアクという)、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ジエン系(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では反応性、耐摩耗性、耐候性にバランスが取れ、(A1)及び(A2)との相溶性に優れたウレアクが好ましい。官能基数としては硬化性の点で4官能以上が好ましく、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIという)とペンタエリスリトールトリアクリレート(以下PETAという)を反応させた6官能のウレアクが挙げられる。
上記(B)としては、オリゴマー以外の成分として低分子量バインダーを用いても良い。例えば脂肪族、脂環族、ポリエーテル骨格、水酸基及びアミノ基等の官能基を有する(メタ)アクリレートや、アクリルアミド化合物を挙げることができ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。官能基数としては硬化性の点で4官能以上が好ましく、例えばペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下DPHAという)等が挙げられる。
本発明に使用される光重合開始剤(C)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
前記(UV1)の場合、(C)は黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、市販品としてはOmnirad2959、Omnirad127D、Omnirad184(商品名:IGM Resins社製)などが挙げられる。これらの中では、特に黄変が少なく耐擦傷性に優れるOmnirad2959が好ましい。
前記(C)の(UV1)における光重合成分100重量部に対する配合は0.1~5.0重量部が好ましく、0.5~4.5重量部が更に好ましく、0.8~4.0重量部が特に好ましい。0.1重量部以上とすることで十分な光硬化性が期待でき、5.0重量部以下とすることで一次硬化状態での伸び率を十分確保し良好な成形性を得ることができる。
前記(UV2)の場合、(C)は(UV1)の場合と同様にα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、特に薄膜での硬化性に優れるOmnirad127Dが好ましい。(C)の(UV2)における光重合成分100重量部に対する配合は5~35重量部が好ましく、8~15重量部が更に好ましい。
本発明では、(UV2)の屈折率を低下させるため中空ナノシリカ(D)を配合することが好ましい。(D)は光学機能層の塗膜強度を保持しつつ、その屈折率を下げる機能を有し、内部に屈折率1の空気を含む空洞を有するシリカ粒子である。中実シリカ粒子の屈折率が1.45程度に対し、(D)の屈折率は内部の空洞の占有率が高くなるにつれて低下し、1.20~1.40程度である。
前記(D)の一次粒子径は5~150nmが好ましく、10~100nmが更に好ましく、40~80nmが特に好ましい。この範囲とすることで、光学機能層の透明性を損なうことなく、良好な分散性を得られる。特に40~80nmであれば、強度不足とならない外殻の厚みを確保しつつ、空洞の占有率を上げて屈折率を下げることができる。市販品としてはスルーリア4320(商品名:日揮触媒化成社製、一次平均粒子径60nm)が挙げられる。
前記(D)の固形分全量に対する配合量は45~80重量%が好ましく、50~78重量%が更に好ましい。45重量%以上とすることで屈折率を十分低下させることが可能となり、80重量%以下とすることで下地ハードコート層との十分な密着性を確保できる。
本発明では、(UV2)の撥水撥油性を上げ防汚性を向上させるため表面調整剤(E)を配合することが好ましい。例えばシリコーン系、フッ素系、アクリル系等が挙げられるが、硬化後の皮膜からブリード等により経時的に欠落することが無く効果を長期的に持続できる点で、バインダー樹脂と重合して硬化塗膜を形成できる反応性官能基を有することが好ましい。特にフッ素系化合物が、低い表面自由エネルギーにより、塗工後に塗膜表面に偏析しやすく、耐摩耗性及び防汚性を長期にわたり安定化させることができる点で好ましい。
前記(E)の固形分全量に対する配合比率は8~20重量%が好ましく、10~15重量%が更に好ましい。8重量%以上とすることで十分な撥水撥油性を確保することができ、20重量%以下とすることで十分な塗工外観を確保することができる。
本発明の組成物には、性能を損なわない範囲で必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、密着促進剤、ブルーイング剤、消泡剤、増粘剤、沈澱防止剤、帯電防止剤、防曇剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、有機微粒子等を添加してもよい。また(UV1)には少量のアミン、イソシアネート等の硬化成分を含んでも良い。
前記(UV1)及び(UV2)(以下両者を合わせて本願樹脂組成物という)を塗工する際には、塗工特性を向上させるため。トルエン、イソブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGMと表記)などの溶剤で希釈してもよい。希釈する場合の固形分としては1~50%が例示されるが、特に指定は無く、塗工しやすい粘度となるように適宜設定可能である。
前記(UV1)が塗布される基材フィルムとしては、ポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネート(以下PCと表記)フィルム、ポリスルフォンフィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンフィルム、アクリル(以下PMMAと表記)フィルム、ポリイミドフィルム、ABSフィルム、ポリオレフィンフィルム、PVCフィルム、PVAフィルム等を挙げることができる。なかでも耐候性、加工性、寸法安定性などの点から二軸延伸処理されたポリエステルフィルムが好ましく用いられる。更に自動車内装加飾用ではPMMAフィルムやPCフィルムが好ましく用いられ、またそれらの積層フィルムでも良い。フィルムの厚みは概ね25μm~500μmであればよい。
前記基材フィルムは、本願樹脂組成物との密着性を向上させる目的で、プライマー処理やサンドブラスト法、溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
本願樹脂組成物を塗布する方法は、特に制限はなく、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成できる。
前記(UV1)の膜厚は乾燥時で1μm~10μmが例示できるが、これに限定されるものではない。また第一層上に塗布する(UV2)の膜厚は乾燥時で50~200nmであることが好ましく、80~150nmであることが更に好ましい。光学機能層の厚さがこの範囲であれば、反射率を十分低くすることが可能となる。
本願樹脂組成物を硬化させる際に用いる紫外線照射の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、無電極紫外線ランプなどがあり、また照射する雰囲気は空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。また紫外線照射時にバックロールの加温や、IRヒーターなどにより塗膜を加熱することで、より硬化性を上げることができる。
照射条件としては一次硬化条件として照射強度500mW/cm2~3000mW/cm2、露光量50~400mJ/cm2が、二次硬化条件として照射強度60mW/cm2~200mW/cm2、露光量400~1200mJ/cm2が、例示されるがこれに限定されるものではない。
本発明の成形フィルムを立体形状に成形する方法は、予備過熱をした成形フィルムを雄金型と雌金型をマッチングさせて成形するマッチングモールド成形法や、予備過熱をした成形フィルムを雄金型または雌金型を押し当てて、圧空及び真空圧を利用して賦形する真空圧空成形法等を例示できるが、特に限定されるものではなく任意の方法で良い。
前記(UV1)を基材フィルム上に塗布して一次硬化させ、(UV2)を塗布して乾燥させた段階において、雰囲気温度130℃の環境下、引っ張り速度300mm/分で引っ張り試験を行った際の伸び率が、50%以上であること好ましく、100%以上であることが更に好ましい。50%以上の伸び率であれば、アフターキュア型の成形フィルムとして十分な伸び特性を有していると言える。
以下、本発明について実施例、比較例を挙げて詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行い、配合表の単位は重量部で固形分換算とする。
(UV1)配合
前記(A1)としてZ-624BA-2(商品名:アイカ工業社製、MMA及びBMAからなるアクリル系共重合体、Mw100,000)を、(B)としてウレタンアクリレート(PETA-HDI-PETA骨格)及びDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を、(C)としてOmnirad2959(商品名:IGM Resins社製、α-ヒドロキシアセトフェノン系)及びOmnirad184(商品名:IGM Resins社製、α―ヒドロキシアセトフェノン系)を、表1記載の配合で均一に溶解・分散するまで撹拌し、更に固形分が30%となるようにPGMを加えて希釈撹拌し、1~6の(UV1)を得た。
前記(A1)としてZ-624BA-2(商品名:アイカ工業社製、MMA及びBMAからなるアクリル系共重合体、Mw100,000)を、(B)としてウレタンアクリレート(PETA-HDI-PETA骨格)及びDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を、(C)としてOmnirad2959(商品名:IGM Resins社製、α-ヒドロキシアセトフェノン系)及びOmnirad184(商品名:IGM Resins社製、α―ヒドロキシアセトフェノン系)を、表1記載の配合で均一に溶解・分散するまで撹拌し、更に固形分が30%となるようにPGMを加えて希釈撹拌し、1~6の(UV1)を得た。
(UV2)配合
前記(A2)としてサイクロマーP ACA Z250(商品名:ダイセルオルネクス社製、Mw22,000、酸化70(KOHmg/g))を、(C)としてOmnirad127D(商品名:IGM Resins社製、α―ヒドロキシアセトフェノン系)を、(D)としてスルーリア4320(商品名:日揮触媒化成社製、粒子径60nm、屈折率1.3)を、(E)としてKY-1203(商品名:信越化学工業社製、反応性フッ素系化合物)を、表2記載の配合で均一に溶解・分散するまで撹拌し、更に固形分が3%となるようにPGMを加えて希釈撹拌し、11~13の(UV2)を得た。
前記(A2)としてサイクロマーP ACA Z250(商品名:ダイセルオルネクス社製、Mw22,000、酸化70(KOHmg/g))を、(C)としてOmnirad127D(商品名:IGM Resins社製、α―ヒドロキシアセトフェノン系)を、(D)としてスルーリア4320(商品名:日揮触媒化成社製、粒子径60nm、屈折率1.3)を、(E)としてKY-1203(商品名:信越化学工業社製、反応性フッ素系化合物)を、表2記載の配合で均一に溶解・分散するまで撹拌し、更に固形分が3%となるようにPGMを加えて希釈撹拌し、11~13の(UV2)を得た。
評価方法は以下の通りとした。
ハードコートフィルムの作成
(UV1)1~6を用い、PMMA/PCフィルムC003(商品名:住友化学社製、厚み300μm)のPMMA面に乾燥膜厚で3μmとなるように塗布し、80℃で1分乾燥した。その後、紫外線光源として高圧水銀ランプを用い、下記条件にて一次硬化させたフィルム(以下HCフィルムという)を作成した。
実施例1 :出力250mW/cm2,20mJ/cm2
実施例2~4、6~10:出力300mW/cm2,25mJ/cm2
実施例5 :出力600mW/cm2,30mJ/cm2
比較例1、3、5 :出力100mW/cm2,10mJ/cm2
比較例2、4、6 :出力800mW/cm2,50mJ/cm2
(UV1)1~6を用い、PMMA/PCフィルムC003(商品名:住友化学社製、厚み300μm)のPMMA面に乾燥膜厚で3μmとなるように塗布し、80℃で1分乾燥した。その後、紫外線光源として高圧水銀ランプを用い、下記条件にて一次硬化させたフィルム(以下HCフィルムという)を作成した。
実施例1 :出力250mW/cm2,20mJ/cm2
実施例2~4、6~10:出力300mW/cm2,25mJ/cm2
実施例5 :出力600mW/cm2,30mJ/cm2
比較例1、3、5 :出力100mW/cm2,10mJ/cm2
比較例2、4、6 :出力800mW/cm2,50mJ/cm2
成形用フィルムの作成
上記で作成したHCフィルム上に、(UV2)11~13を乾燥膜厚で100nmとなるように表3の組合せで塗布して80℃で1分乾燥して光学機能層を形成し、紫外線による二次硬化前のフィルムを作成した。その後、高圧水銀ランプで出力100mW/cm2,800mJ/cm2の条件で二次硬化させ成形用フィルムを形成した。
上記で作成したHCフィルム上に、(UV2)11~13を乾燥膜厚で100nmとなるように表3の組合せで塗布して80℃で1分乾燥して光学機能層を形成し、紫外線による二次硬化前のフィルムを作成した。その後、高圧水銀ランプで出力100mW/cm2,800mJ/cm2の条件で二次硬化させ成形用フィルムを形成した。
HC層硬化率:パーキンエルマー社製のフーリエ変換赤外分光光度計Spectrum100を用い、ATR法にて吸光度を測定し、810cm-1および1720cm-1付近のピークの両裾を結んだ線をベースラインとして紫外線照射前後でその面積を求め、式(1)より求めた。測定サンプルはPETフィルム上に(UV1)の各組成物を乾燥後3μmで塗布したものを用いた。
塗工外観:紫外線による一次硬化後のHCフィルム、及び紫外線による二次硬化前の成形用フィルムの外観を目視にて確認し、白化等が無くレベリング性も良好な場合を○、外観に異常がある場合を×とした。
タックレス性:紫外線による一次硬化後のHCフィルム、及び紫外線による二次硬化前の成形用フィルムを用い、指触にて表面タック性を確認し、タックが無い場合を○、ある場合を×とした。
伸び率:紫外線による二次硬化前の成形用フィルムを用い、横25mm×縦50mmにカットし、ミネベア社製TechnoGraph TGI-1KNを用い、チャック間距離50mmで雰囲気温度130℃、引っ張り速度300mm/分で引っ張り試験を行い、目視で割れを確認し、伸び率が50%以上を○、100%以上を◎、50%未満を×とした。
計算式:50mmを基準として何mm伸びたかで計算。
伸びた長さ(mm)/50mm×100=伸び率(%)。
計算式:50mmを基準として何mm伸びたかで計算。
伸びた長さ(mm)/50mm×100=伸び率(%)。
密着性:紫外線硬化後のフィルムを用い、JIS K 5600-5-6のクロスカット法に準拠し、塗工面に1mm間隔で10×10にマス目を作成し、セロハンテープCT-24(商品名:ニチバン社製)を貼り、上方に引っ張り剥離状況を確認した。100/100は〇、0/100~99/100を×とした。
最小反射率:紫外線硬化後のフィルムを用い、塗工面とは反対面を紙やすりで擦り傷を付け、黒色顔料マーカーで塗りつぶし、更に黒色PETを貼り合せ反対面側の反射率を0%とする。その後HC面側を分光光度計にて300nm~780nmの範囲で1nm毎に反射率をプロットし、最低の反射率を測定し、2.0%以下を〇、2.0%超は×とした。
耐スチールウール性:紫外線硬化後のフィルムを用い、スチールウール#0000の上に100g/cm2の荷重を載せて10往復させ、目視による観察で傷が付かないものを○、傷が付くものを×とした。
実施例は、塗工外観、タックレス性、伸び率、密着性、最小反射率、耐スチールウール性の全ての評価で問題はなく良好であった。
一方、一次硬化の硬化率が10%未満である比較例1、3,5は光学機能層の塗工外観が悪いと同時に最小反射率が大きく、硬化率が50%超の比較例2、4、6は伸び率が低く、いずれも本願発明に適さないものであった。
Claims (5)
- 光透過性を有する基材フィルムに、第一の紫外線硬化樹脂組成物(UV1)を塗布して紫外線照射により一次硬化させ、その上に第二の紫外線硬化樹脂組成物(UV2)を塗布して乾燥後、立体形状に成形し、その形状を保持した状態で紫外線照射により二次硬化させて光学機能層を形成する成形用フィルムにおいて、前記一次硬化を、下記で定義された皮膜の赤外線吸収硬化率で10~50%にて行うことを特徴とする成形用フィルムの製造方法。
硬化率(%)=((P1a/P2a)-(P1b/P2b))/(P1a/P2a)
(但し、P1a:紫外線照射前の波長810cm-1付近の赤外線吸収ピーク面積
P1b:紫外線照射後の波長810cm-1付近の赤外線吸収ピーク面積
P2a:紫外線照射前の波長1720cm-1付近の赤外線吸収ピーク面積
P2b:紫外線照射後の波長1720cm-1付近の赤外線吸収ピーク面積) - 前記(UV2)硬化物の屈折率が、(UV1)硬化物の屈折率よりも低いことを特徴とする請求項1記載の成形用フィルムの製造方法。
- 前記(UV2)が重合性官能基を有する(メタ)アクリル系重合体(A2)を含むことを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の成形用フィルムの製造方法。
- 前記(A2)が、側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系共重合体のカルボキシル基の一部に脂環式エポキシ(メタ)アクリレートを反応させて得られる(メタ)アクリル系重合体であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の成形用フィルムの製造方法。
- 請求項1~4いずれか記載の製造方法により製造された成形用フィルムを用いて成形された物品。
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