JP2023078498A - ウォームの製造方法及びこの製造方法により製造されたウォーム。 - Google Patents
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Abstract
【課題】丸ダイスの加工歯でウォームの軸状素材に適度な荷重負荷を掛けることにより、ウォームの歯部の有効長を長くできる。【解決手段】丸ダイスを、加工歯の歯底面とウォームの歯先面との間に隙間がなくなるまで軸状素材の外周に押し当てる第1工程において、丸ダイスの径方向の移動量に対して、加工歯の間に形成される歯部の断面積と丸ダイスの径方向の移動量との比を取ったときに、丸ダイスの移動量が、加工歯の歯先が軸状素材の外周に接触した状態を0とし、ここから丸ダイスが径方向へ移動して加工歯の歯底面とウォームの歯先面との間に隙間がなくなる状態がダイス充填率を100.00%としたときに、第2工程での丸ダイスのダイス充填率を、100.10%~101.50%となるように設定した。【選択図】図8
Description
本発明は、丸ダイスを備えた転造盤により製造されるウォームの製造方法及びこの製造方法によって製造されたウォームに関する。
従来における丸ダイスを備えた転造盤によって製造されるウォームの製造方法としては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。転造盤は、予め設定された転造荷重で両丸ダイスの各加工歯がウォームの軸状素材の外周面を径方向から押し込むと共に、軸方向へ移動させる。これによって、隣接する加工歯の間で盛り上がった肉によりウォームの歯部を転造加工するようになっている。
そして、前記転造盤は、ウォームの歯部を成形する丸ダイスの加工歯の歯底面とウォームの歯部の歯先面との間に隙間が存在する状態で、ウォームの歯部の歯面が加工面によって仕上がり状態にして転造作業を終了するようになっている。これによって、転造盤は、丸ダイスをウォームの軸状素材に押し付ける荷重を低減させて丸ダイスを支持する支持部材の撓みを抑えて、ウォームの精度の低下を抑制するようになっている。
前記公報記載の従来技術は、前述のように、丸ダイスの加工歯の歯底面とウォームの歯部の歯先面との間に隙間を設けることによって支持部材の撓みを抑制している。しかし、丸ダイスの加工歯の押し付け荷重が小さくなることによって、丸ダイスによるウォームの歯部の材料充填率(塑性流動)が小さくなる、いわゆるセミトップとなって、ウォームの歯先面に凹部が形成され易くなる。これによって、ウォームの有効歯長が短くなってしまうおそれがある。
また、丸ダイスの加工歯の押し付け荷重が過度になると、ウォームの歯側面にうねりや転造皺による大きな凹凸が発生するおそれがある。
本発明は、前記従来技術の技術的課題に鑑みて案出されたもので、転造加工時における丸ダイスの加工歯でウォームの軸状素材に適度な荷重負荷を掛けることによって、ウォームの歯部の有効長を長くできるウォームの製造方法を提供することを一つの目的としている。
この発明の態様としては、軸状素材の外周に丸ダイスの螺旋状の加工歯を押し付けて、外周にウォーム歯を転造加工するウォームの製造方法であって、前記丸ダイスを、前記加工歯の歯底面と前記ウォーム歯の歯先面との間に隙間なくなるまで前記軸状素材の外周に押し当てるように径方向へ移動させる第1工程と、この第1工程からさらに前記丸ダイスを径方向へ押し込み移動させる第2工程と、を有し、
前記第1工程において、前記丸ダイスの径方向の移動量に対して、前記加工歯の間に形成される前記ウォーム歯の断面積と前記丸ダイスの径方向の移動量との比を取ったときに、
前記丸ダイスの移動量が、前記加工歯の歯先が前記軸状素材の外周に接触した状態を0とし、
ここから丸ダイスが径方向へさらに移動して前記加工歯の歯底面と前記ウォームの歯先面との間に隙間が無くなる状態がダイス充填率を100.00%としたときに、
前記第2工程での前記丸ダイスのダイス充填率を、100.10%~101.50%にしたことを特徴としている。
前記第1工程において、前記丸ダイスの径方向の移動量に対して、前記加工歯の間に形成される前記ウォーム歯の断面積と前記丸ダイスの径方向の移動量との比を取ったときに、
前記丸ダイスの移動量が、前記加工歯の歯先が前記軸状素材の外周に接触した状態を0とし、
ここから丸ダイスが径方向へさらに移動して前記加工歯の歯底面と前記ウォームの歯先面との間に隙間が無くなる状態がダイス充填率を100.00%としたときに、
前記第2工程での前記丸ダイスのダイス充填率を、100.10%~101.50%にしたことを特徴としている。
この発明の態様によれば、転造加工時における丸ダイスの加工歯でウォームの軸状素材に適度な荷重負荷を掛けることによって、ウォームの歯部の有効長を長くすることができる。
以下、本発明に係るウォームの製造方法及びこの製造方法によって製造されたウォームの実施形態を図面に基づいて詳述する。
本実施形態に用いられる転造盤は、丸ダイス転造盤であって、被転造物(軸状素材)としては、本出願人が先に出願した例えば特開2020-008144号公報などに記載された流量制御弁(MCV)に用いられるウォームギアの一つである金属製のウォームを対象としている。
図1はハウジングカバーを取り外した状態を示す流量制御弁の平面図、図2は流量制御弁の要部断面図である。
概略を説明すると、流量制御弁は、図外の内燃機関のシリンダヘッドの側部に配置され、合成樹脂材によって成形されたハウジング20と、該ハウジング20の内部に設けられた駆動機構21と、ロータである弁体26及び回転軸と、を有している。
ハウジング20は、合成樹脂材によって一体に形成され、基部20aや周壁20b、開口部である排出口20c及び図外の導入口、並びに軸受部などを有している。
駆動機構21は、基部20aの内部に設けられており、電動モータ22と、電動モータ22のモータ出力軸22aの先端部に設けられた第1ウォーム10と、軸方向の一端部に有するヘリカルギア23aが第1ウォーム10と噛み合う中間歯車23と、該中間歯車23の軸方向の他端部に有する第2ウォーム23bに噛み合うウォームホイール24と、を備えている。このウォームホイール24から回転軸25などを介して弁体26を正逆回転させて、ウォータポンプから導入された冷却水を、ヒータ、オイルクーラ及びラジエータへとそれぞれ分配制御するようになっている。
第1ウォーム10(以下、ウォーム10という。)は、後述する転造盤によって転造加工されるようになっている。
図3は本発明の実施形態に係る丸ダイス転造盤の全体構成図、図4は被転造材であるウォームの軸状素材が丸ダイスで加工され始められる状態を一部断面して示す要部拡大図である。
概略を説明すれば、丸ダイス転造盤は、図3に示すように左右対称形状に形成されており、基台1上に配置された一対の主軸台2,2と、該各主軸台2,2の対向位置に配置されて図外の駆動機構によって回転駆動される一対の主軸3,3と、該主軸3,3の外周に取り付けられた一対の転造ダイスである丸ダイス4,4と、を備えている。
主軸台2,2は、支持フレーム5,5によって支持された移動機構6,6の図外の一対の電動モータや減速機によって相対的に図中左右横方向(矢印方向)、つまり、近接あるいは離間する方向へ相対移動可能になっている。また、各主軸台2,2は、支持フレーム5,5の上下に跨って配置された上下2本ずつの4本の支柱7、8によって左右横方向へ案内支持されている。なお、前記移動機構6,6は、電動モータなどを用いて各主軸台2,2を電気的に相対移動させるようになっているが、油圧シリンダやカム機構によって相対移動させることも可能である。
主軸3,3は、主軸台2,2の内部に設けられた図外の電動モータや減速機からなる駆動機構によって図3の矢印で示すように、同一方向へ同期回転するように構成されている。また、主軸3,3は、主軸台2,2に設けられた傾動機構9,9によって上下方向へ傾斜できるように構成されている。なお、駆動機構は、いわゆるCNC制御によって駆動制御されるようになっている。
各丸ダイス4,4は、図3に示すように、転造に適した合金工具鋼または高速度工具鋼の金属材でそれぞれ円筒状に形成されている。各丸ダイス4、4は、内部中心軸方向に各主軸3,3が挿入される図外の貫通孔が貫通形成されていると共に、外周には後述する軸状素材11の外周面に螺旋状のウォーム歯である歯部15を加工する加工歯4a、4aを有している。
また、各丸ダイス4,4は、図外の貫通孔の内周面に軸方向に直線状に形成された目印部であるキー溝及び該キー溝に挿入されるキーによって主軸3,3に相対回転が規制されている。各丸ダイス4,4は、各主軸3,3から回転力が伝達されて、図3の矢印で示すように、各主軸3,3と同じく反時計方向へ回転するようになっている。各丸ダイス4のキー溝及びキーは、貫通孔の周方向の同じ位置(基準位置)に設けられている。
この両丸ダイス4,4の間には、図4に示すように、後述するウォーム10の軸状素材11が挟持状態に配置されており、この軸状素材11の軸部本体12と各テーパ面13a、13bのそれぞれ外周面を加工歯4a,4aによって連続的に塑性変形させて螺旋状の歯部15を成形するようになっている。軸状素材11は、基台1の上面に設けられた支持部材1aの上端部に回転可能に載置されている。支持部材1aは、板状に形成されていると共に、両丸ダイス4,4の間の下方に配置されて下端部が基台1上に固定されている。
図5は丸ダイスによる軸状素材が転造加工されている状態を示す説明図、図6は丸ダイスによる軸状素材を転造加工作業が完了した状態を示す説明図、図7は本実施形態における軸状素材を転造盤で転造加工によって成形された後のウォームを示す正面図である。
ウォーム10の転造加工前の被転造物である軸状素材11は、図4及び図5に示すように、塑性変形可能な金属材料によって一体に形成され、中央の軸部本体12と、該軸部本体12の軸方向の図中上下の両端部に一体に設けられた第1テーパ面13a及び第2テーパ面13bと、該第1、第2テーパ面13a、13bの軸方向の各外端からそれぞれ軸方向に延びた一対の軸部14a、14bと、を有している。
軸部本体12は、外径が均一のストレート形状に形成されて、所定の軸方向長さを有している。
〔ウォームの転造作業工程〕
このウォーム10(軸状素材11)転造作業工程の概略を説明すると、まず、図4に示すように、軸状素材11を、支持部材1aの上端部に位置決めしつつ載置支持させる。その後、移動機構6,6によって主軸台2,2を互いに接近移動させながら、両丸ダイス4,4間に軸状素材11を挟み込んで転造加工の準備を行う。次に、図5及び図6に示すように、両丸ダイス4,4を、主軸3,3を介して同方向へかつ同一速度で回転させる。これによって、軸状素材11の外周面に歯部15を転造加工する。これによって、図7に示す転造加工されたウォーム10が完成する。
このウォーム10(軸状素材11)転造作業工程の概略を説明すると、まず、図4に示すように、軸状素材11を、支持部材1aの上端部に位置決めしつつ載置支持させる。その後、移動機構6,6によって主軸台2,2を互いに接近移動させながら、両丸ダイス4,4間に軸状素材11を挟み込んで転造加工の準備を行う。次に、図5及び図6に示すように、両丸ダイス4,4を、主軸3,3を介して同方向へかつ同一速度で回転させる。これによって、軸状素材11の外周面に歯部15を転造加工する。これによって、図7に示す転造加工されたウォーム10が完成する。
なお、丸ダイス転造盤によって軸状素材11の外周面に歯部15を転造してウォーム10を成形する方法は、CNC制御に基づく一般的な方法によって行われる。
〔本願発明者によるウォームの転造加工実験〕
以下では、本願の発明者が、ウォーム10の軸状素材11の外周面に、移動機構6,6を介して両丸ダイス4,4の各加工歯4a、4aの押し付け荷重を変化させて転造加工した場合の実験内容について説明する。
〔本願発明者によるウォームの転造加工実験〕
以下では、本願の発明者が、ウォーム10の軸状素材11の外周面に、移動機構6,6を介して両丸ダイス4,4の各加工歯4a、4aの押し付け荷重を変化させて転造加工した場合の実験内容について説明する。
図8は本実施形態の丸ダイスによる転造時における軸状素材の塑性流動状態を示すが要部模式図であり、(a)~(e)は転造加工初期の状態から加工が順次進んだ状態を示している。図9はダイス充填率とダイス押し込み座標との関係を本願発明者の実験によって表したグラフである。図10はダイス充填率とウォームの歯部の有効歯長さの関係を示しており、(a)はダイス充填率が低いセミトップの場合の歯部の断面形状を示し、(b)はダイス充填率が高いトップロールの場合の歯部の断面形状を示している。図11は図10(a)(b)に示すダイス充填率の高低差に基づくウォームの各縦断面における測定位置を示すウォームの平面図である。図12は図9に示すダイス押し込み座標とダイス充填率との関係からサンプルとして取り出された3つのウォームの歯部の歯側面の表面粗さを示し、(a)は従来技術のセミトップの場合における表面粗さ、(b)は本実施形態のトップロールの場合における表面粗さ、(c)はさらに過充填率の場合における表面粗さを示し、歯側面の表面は走査電子顕微鏡で観察した。
まず、図4で示した状態では、丸ダイス4,4の径方向の移動量が、加工歯4aの歯先4bが前記軸状素材の外周に接触した状態を0としている。
その後、図5に示した丸ダイス4,4の径方向の移動から図6に示す径方向の移動となる。すなわち、図8(a)~(c)に示すように、丸ダイス4の各加工歯4aの歯先4bを、軸状素材11の軸部本体12の外周面に径方向(白矢印方向)から所定の荷重で押し付けて、軸状素材11の金属素材を各加工歯4aの歯先4bを中心として左右矢印方向に沿って塑性流動させる。
図8(a)、(b)に示す状態では、各加工歯4aの間に、軸状素材11の金属材が順次、塑性流動して入り込み、図8(c)に示す状態になると、押し込み荷重を抑制したことによって、加工歯4aの歯底面4cと軸状素材11(ウォーム10)の各歯部15の各歯先面15aとの間に隙間Sが形成されている。この隙間Sが形成される状態は、いわゆるセミトップと称されて前記公報記載の従来の技術と同じ状態になった。この隙間Sが形成された状態では、図9の矢印X範囲に示すように、加工歯4aによる押し付け荷重が抑えられて、ダイス押し込み座標は71.12mm~71.18mmになり、材料の充填率が99.00%~100%となった。
なお、このセミトップ状態における実験サンプルは、図9の矢印X範囲中の丸で示したダイス押し込み座標が71.15mmで充填率が99.63%であった。
この状態では、図12(a)に示すように、ウォーム10(軸状素材11)に形成された螺旋状の歯部15の歯側面15c(表面)に微小な転造皺が形成されていることが分かるが、局所凹凸が殆ど形成されずほぼ平坦面状になっている。
次に、さらに加工歯4aを押し込んで行くと、図8(d)で示すように、加工歯4aの歯底面4cと軸状素材11の歯部15の歯先面15aとの間の隙間Sが殆ど消失する状態となる。この隙間Sが消失し始めてさらに所定の荷重が大きくなった状態は、いわゆるトップロールと称されて、図9の矢印Y範囲に示すように、加工歯4aによる押し付け荷重が漸次大きくなって、ダイス押し込み座標が71.18mm~71.30mmになると、ダイス充填率が100.00%~101.5%になった。なお、この状態における実験サンプルとしては、丸で示したダイスの押し込み座標が71.24mmとし、この場合、充填率は100.85%になった。
この状態では、図12(b)に示すように、ウォーム10(軸状素材11)に形成された螺旋状の歯部15の歯側面15c(表面)に微小な鱗状の転造皺が形成されていることが分かった。
次に、さらに加工歯4aを押し込んで行くと、図8(e)に示すように、加工歯4aの歯底面4cと歯部15の歯先面15aとの間にも金属材料の塑性流動によって十分に充填された状態になる。この状態は図9の矢印Z範囲に示すように、加工歯4aによる押し付け荷重がさらに大きくなって、ダイス押し込み座標が71.30mm以上になり、実験サンプルとして丸で示した71.38mmではダイス充填率が102.74%と高くなった。
この状態では、図12(c)に示すように、ウォーム10(軸状素材11)に形成された螺旋状の歯部15の歯側面15cに顕著な転造皺による局所凹凸が発生していることが分かった。
図10(a)(b)は、前述したように、ウォーム10を、図11に示すX+とX-、Y+とY-のそれぞれの位置からウォーム10の回転軸方向に沿って縦断面した場合の断面形状を示し、図8及び図9に示したダイス充填率のいわゆるセミトップ領域(矢印X範囲)とトップロール領域(矢印Y範囲)におけるウォーム10の有効歯長の関係を示している。つまり、ウォーム10をセミトップ領域(矢印X範囲)で転造加工した場合と、トップロール領域(Y範囲)で転造加工した場合に、ウォーム10の歯部15の歯先面15aに凹部15bが形成されているか否かを示している。
まず、図10(a)に示す状態は、図8(a)~(c)に示すセミトップ領域で転造加工したウォーム10を、前記X+とX-、Y+とY-の位置から縦断面した場合の断面形状である。
X+とX-のそれぞれの断面位置では、4つ歯部15のうち、図10(a)中、最左側の1つの歯部15の歯先面15aに大きな凹部15bが形成され、他の3つの歯部15には凹部が形成されていないことが分かった。
Y+とY-のそれぞれの断面位置では、6つの歯部15のうち、図中最右側と最左側の2つの歯部15の各歯先面15aに大きな凹部15bがそれぞれ形成され、他の3つの歯先面15aには凹部15bが形成されていないことが分かった。
次に、図10(b)に示す状態は、図8(d)で示すトップロール領域で転造加工したウォーム10を、X-とX+、Y-とY+の位置から縦断面した場合の断面形状である。
X+とX-のそれぞれの断面位置では、4つ歯部15の歯先面15aのいずれにも凹部15bが形成されていないことが分った。
Y+とY-のそれぞれの断面位置では、6つの歯部15のうち、図中最右側と最左側の2つの歯部15の各歯先面15aに凹部15bがそれぞれ形成されているが、他の3つの歯先面15aには凹部15bが形成されていないことが分かった。
このように、ウォーム10(軸状素材11)をセミトップ領域で転造加工した場合には、前記X+、X-、Y+、Y-のいずれの断面位置においても各歯部15の歯先面15aに凹部15bが形成されている。これに対して、トップロール領域で転造加工した場合は、X+とX-の断面位置では、各歯部15の歯先面15aに凹部15bが形成されていない。
したがって、ウォーム10の有効歯長は、図7及び図10(a)(b)に示すように、セミトップ領域で加工されたものの有効歯長さLよりもトップロール領域で加工されたものの有効歯長さL1の方が長くなっている。この結果、ウォーム10は、有効歯長が長いL1ものの方が前記中間歯車23のヘリカルギア23aとの噛み合い率が高くなる。
以上の説明で明らかなように、通常は、前記公報記載の従来技術と同じく図8(a)~(c)に示すように、丸ダイス4の加工歯4aの歯底面4cとウォーム10(軸状素材11)の歯部15の歯先面15aとの間に隙間Sを設けるのが一般的であり、図8(e)に示すように、隙間Sが無くなるまで丸ダイス4の加工歯4aの歯先4bを過度に強く押し付けると、軸状素材11の歯側面15cにうねりや転造皺による大きな凹凸が発生し易くなる。
しかし、本願の発明者の実験によれば、図8(d)に示すように、丸ダイス4の加工歯4aの歯先4bを前記隙間Sが無くなるくらいまで押し付けたあと、さらに僅かな押し付け荷重(材料面積である充填率101.50%まで)ならば、うねりや転造皺が少なくなることが分かった。
また、充填率が101.50%を超えると、歯側面15cに急激なうねりや転造皺による局所凹凸が発生すると共に、この転造皺などに起因して異音が発生することが分かった。
そこで、本実施形態では、前記実験結果に基づいて、充填率を100.00~101.50の範囲内に設定した。この範囲に設定すれば、ウォーム10の歯側面15cにうねりや転造皺が少なくなるので軸方向で広い範囲で歯として成形することが可能になる。したがって、ウォーム10の歯部15の有効歯長さL1を十分長く取ることができ、これにより、ヘリカルギア23aとの噛み合い率を向上させることができる。
また、ウォーム10の歯側面15cに残留応力が残るので、ウォーム10の強度が高くなる。
また、トップロールの初期の状態では、図12(b)に示すように、ウォーム10(軸状素材11)に形成された螺旋状の歯部15の歯側面15c(表面)に微小な鱗状の転造皺が形成されて、歯側面15cの表面が若干粗くなる。このため、ここに油膜を形成することが可能になり、この結果、中間歯車23(ヘリカルギア23a)との噛み合い駆動時の異音の発生を抑制することができると共に、耐摩耗性の向上が図れる。
図13は本願発明者がダイス充填率(%)と音圧P-P(Pa)の関係について実験した結果について示したグラフである。この図で、黒丸は音圧P-P(G)、白丸は音圧P-P(A)を示し、太い横線はG閾値、細い横線はA閾値をそれぞれ示している。
このグラフをみると、ダイス充填率が98.50%~101.50%付近までは音圧は低い状態になっていると共に、約100.50%~約101.50%付近までのA領域ではウォーム10の歯側面15cに微小凹凸が発生している。また、ダイス充填率が約101.50%以上のB領域になると音圧が高くなると共に、歯側面15cに顕著な局所凹凸が発生していることが分かった。特に、ダイス充填率が100.50%~101.50%までの音圧が十分に低くなっているが、102.00%以上になると音圧が急激に高くなっている。
このように、音圧が十分に低下する充填率100.50%~101.50%のA領域では、前述したトップロールの範囲になることから、ウォーム10の歯側面15cに微小凹凸が発生し、ここに潤滑油が付着捕集されるので、他のギアとの噛み合い時における音圧が低下すると考えられる。
一方、ダイス充填率が101.50%以上のB領域になると、歯側面15cに顕著な局所凹凸が発生することから、この局所凹凸によって音圧が急激に高くなると考えられる。
したがって、本実施形態では、ダイス充填率を100.50%~101.50%に設定したことから、音圧を十分に低下させることが可能になる。
また、本実施形態によれば、前記ウォーム10を内燃機関の冷却水の流量制御弁に適用したことによって、ウォーム10から中間歯車23への回転伝達性が向上して弁体26による排出口20cや導入口の開閉制御精度が向上すると共に、耐摩耗性の向上に伴い流量制御弁自体の耐久性も向上する。
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、ウォームの外径や長さも任意に変更することが可能であり、また、ウォームギアとして前記流量制御弁以外の装置や機器類などに適用することも可能である。
1…基台、2…主軸台、3…主軸、4・4…丸ダイス、4a・4a…加工歯、4a…歯部、4b…歯先、4c…歯底面、10…ウォーム、11…軸状素材、12…軸部本体、15…歯部(ウォーム歯)、15a…歯先面、15b…凹部、15c…歯側面、20…ハウジング、20a…基部、20b…周壁、20c…排出口(開口部)、22…電動モータ、23…中間歯車、23a…ヘリカルギア、24…ウォームホイール、25…回転軸、26…弁体、S…隙間。
Claims (6)
- 軸状素材の外周に丸ダイスの螺旋状の加工歯を押し付けて、外周にウォーム歯を転造加工するウォームの製造方法であって、
前記丸ダイスを、前記加工歯の歯底面と前記ウォーム歯の歯先面との間に隙間なくなるまで前記軸状素材の外周に押し当てるように径方向へ移動させる第1工程と、
この第1工程からさらに前記丸ダイスを径方向へ押し込み移動させる第2工程と、
を有し、
前記第1工程において、前記丸ダイスの径方向の移動量に対して、前記加工歯の間に形成される前記ウォーム歯の断面積と前記丸ダイスの径方向の移動量との比を取ったときに、
前記丸ダイスの移動量が、前記加工歯の歯先が前記軸状素材の外周に接触した状態を0とし、
ここから丸ダイスが径方向へさらに移動して前記加工歯の歯底面と前記ウォームの歯先面との間に隙間が無くなる状態がダイス充填率を100.00%としたときに、
前記第2工程での前記丸ダイスのダイス充填率を、100.10%~101.50%にしたことを特徴とするウォームの製造方法。 - 請求項1に記載のウォームの製造方法であって、
前記丸ダイスの移動量は、前記丸ダイスの移動方向の座標値で管理することを特徴とするウォームの製造方法。 - 請求項1に記載のウォームの製造方法によって製造されたウォームであって、
前記ウォームを回転軸方向から複数の箇所で縦断面したときに、前記複数の縦断面のうち、少なくとも一つの縦断面における前記歯先面の全てに凹部が形成されていないことを特徴とするウォーム。 - 請求項3に記載のウォームであって、
前記ウォームを回転軸方向から複数の箇所で縦断面したときに、前記複数の縦断面のうち、少なくとも一つの縦断面における複数の歯先面のいずれかの箇所に凹部が形成されていることを特徴とするウォーム。 - 請求項1に記載されたウォームの製造方法で製造されたウォームであって、
前記ウォームを内燃機関の冷却水の流量制御弁に適用し、
前記流量制御弁は、
前記内燃機関の複数の冷却通路にそれぞれ繋がる複数の開口部を有するハウジングと、
前記ハウジング内に有する弁収容部の内部に配置され、モータによって回転することで前記複数の開口部を開閉する弁体と、
前記モータと前記弁体の一方に固定された歯車と、
前記モータと前記弁体の他方に固定されて、前記歯車と噛み合う前記ウォームと、
を備え、
前記ウォームを回転軸方向から複数の箇所で縦断面したときに、前記複数の縦断面のうち、少なくとも一つの縦断面における前記歯先面の全てに凹部が形成されていないことを特徴とするウォーム。 - 請求項5に記載のウォームであって、
前記ウォームを回転軸方向から複数の箇所で縦断面したときに、前記複数の縦断面のうち、少なくとも一つの縦断面における前記歯先面のいずれかの箇所に凹部が形成されていることを特徴とするウォーム。
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JP2021191631A JP2023078498A (ja) | 2021-11-26 | 2021-11-26 | ウォームの製造方法及びこの製造方法により製造されたウォーム。 |
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JP2021191631A Pending JP2023078498A (ja) | 2021-11-26 | 2021-11-26 | ウォームの製造方法及びこの製造方法により製造されたウォーム。 |
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2021
- 2021-11-26 JP JP2021191631A patent/JP2023078498A/ja active Pending
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