JP2023078060A - 糖類含有化合物の精製方法及び糖類含有化合物の精製キット - Google Patents

糖類含有化合物の精製方法及び糖類含有化合物の精製キット Download PDF

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Miu Kaneyasu
雅哲 豊田
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Abstract

【課題】従来よりも糖類含有化合物の回収量を増加させ、効率的に精製することが可能な糖類含有化合物の精製方法を提供する。また、糖類含有化合物を効率的に精製することが可能な糖類含有化合物の精製キットを提供する。【解決手段】少なくとも、糖類含有化合物を含む試料と、有機溶媒と、塩とを混合した混合液を調製し、精製剤に糖類含有化合物を吸着させる工程と、混合液から分離した精製剤を、水を含む溶液に接触させ、精製剤から水に糖類含有化合物を溶出させる工程と、を含み、精製剤は、ベタイン構造を有する化合物を有効成分として含有し、混合液は、有機溶媒と、塩とを含む糖類含有化合物の精製方法。【選択図】なし

Description

本発明は、糖類含有化合物の精製方法及び糖類含有化合物の精製キットに関する。
生体を構成するタンパク質の多くは、糖鎖修飾を受け糖タンパク質として存在している。「糖タンパク質」は、糖鎖修飾されたタンパク質のことを指す。糖たんぱく質は、高次構造形成、細胞間シグナル伝達、分子認識等の機能や、体内動態が適切に調節され、生体内で重要な役割を担っている。このような糖タンパク質の構造解析は、生命科学、医療、創薬等の種々の技術分野において重要な役割を果たすことが期待されており、検討されている。
糖タンパク質の構造解析は、一般に、糖タンパク質を酵素消化等によって分解し、生じる糖類や糖ペプチドを分析することにより行われる。
上記方法で生じる糖類や糖ペプチド(糖類含有化合物)は、上記方法で生じる糖タンパク質の分解物の量に対して微量である。そのため、糖たんぱく質の分解物の中から、糖類含有化合物を選択的に精製し濃縮できる技術が求められている。
発明者らは、ベタイン構造を有する化合物からなる糖ペプチドの精製剤を用いることにより、糖類含有化合物を特異的且つ効率的に捕捉可能とする技術を見出し、検討を重ねている(特許文献1参照)。
国際公開第2019/088167号
特許文献1に記載の精製剤を用いると、糖類含有化合物を効率的に捕捉し回収することができる。しかし、糖類含有化合物の回収量を増加させ、作業効率を向上させるという観点からは、未だ改善の余地がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、従来よりも糖類含有化合物の回収量を増加させ、効率的に精製することが可能な糖類含有化合物の精製方法を提供することを目的とする。また、糖類含有化合物を効率的に精製することが可能な糖類含有化合物の精製キットを提供することを併せて目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。
[1]精製剤を、糖類含有化合物を含む混合液に接触させ、前記精製剤に前記糖類含有化合物を吸着させる工程と、前記混合液から分離した前記精製剤を、水を含む溶液に接触させ、前記精製剤から前記水に前記糖類含有化合物を溶出させる工程と、を含み、前記混合液は、少なくとも、前記糖類含有化合物を含む試料と、水と、有機溶媒と、塩とを含み、前記精製剤は、ベタイン構造を有するポリマー、又は前記ポリマーと前記ポリマーを担持する支持体とを有する複合体の少なくともいずれか一方を含有する、糖類含有化合物の精製方法。
[2]前記混合液の塩濃度は、0.01mmol/L~50mmol/Lである[1]に記載の糖類含有化合物の精製方法。
[3]前記塩は、アルカリ金属塩を含む[1]又は[2]に記載の糖類含有化合物の精製方法。
[4]前記混合液は、0.01体積%~20体積%の水を含む[1]から[3]のいずれか1項に記載の糖類含有化合物の精製方法。
[5]前記ベタイン構造はアニオン基と、カチオン基と、及び前記アニオン基と前記カチオン基とを連結するリンカーと、を有し、前記アニオン基は、リン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群より選択される基であり、前記カチオン基は、4級アンモニウム基であり、前記リンカーは炭素数1~4のアルキレン基である[1]から[4]のいずれか1項に記載の糖類含有化合物の精製方法。
[6]前記アニオン基がリン酸基である[5]に記載の糖類含有化合物の精製方法。
[7]前記ベタイン構造が、ホスホリルコリン基である[5]又は[6]に記載の糖類含有化合物の精製方法。
[8]前記支持体に固定された前記ポリマーの重量が、前記支持体の単位表面積(m)当たり0.5mg~1.5mgである[1]から[7]のいずれか1項に記載の糖類含有化合物の精製方法。
[9]前記支持体が、無機化合物を材料とする[8]に記載の糖類含有化合物の精製方法。
[10]前記複合体の比重が、1.05~3.00である、[8]又は[9]に記載の糖類含有化合物の精製方法。
[11]前記複合体は、形状が球状であり、平均粒径が0.5μm~100μmである、[8]から[10]のいずれか1項に記載の糖類含有化合物の精製方法。
[12]前記ポリマーが、(メタ)アクリル化合物に由来する繰り返し単位を含む[1]から[11]のいずれか1項に記載の糖類含有化合物の精製方法。
[13]前記糖類含有化合物を吸着させる工程に先だって、糖タンパク質を含む混合試料を電気泳動し、前記混合試料から前記糖タンパク質を分離する工程と、前記電気泳動を行ったゲルから疎水性膜に前記糖タンパク質を転写する工程と、前記糖タンパク質が転写された前記疎水性膜から、目的の糖タンパク質のバンドを含む切片を切り出す工程と、前記切片に遊離試薬を含む液体を添加し前記糖タンパク質から糖類含有化合物を遊離させ、前記混合液を得る工程と、をさらに含む、[1]から[12]のいずれか1項に記載の糖類含有化合物の精製方法。
[14][1]から[13]のいずれか1項に記載の糖類含有化合物の精製方法に用いられる糖類含有化合物の精製キットであって、前記精製キットは、前記精製剤と、前記混合液に含まれる塩と、キット使用のためのプロトコル情報と、を含む糖類含有化合物の精製キット。
本発明によれば、従来よりも糖類含有化合物の回収量を増加させ、効率的に精製することが可能な糖類含有化合物の精製方法を提供することができる。また、糖類含有化合物を効率的に精製することが可能な糖類含有化合物の精製キットを提供することができる。
図1は、実施形態の精製方法で用いる精製剤の一例を示す模式図である。 図2は、実施形態の精製方法を実施する装置の一例を説明する模式図である。 図3は、実施例1の結果を示すグラフである。 図4は、実施例3~5、比較例2の結果を示すグラフである。 図5は、実施例6,7、比較例3の結果を示すグラフである。
[第1実施形態]
《糖含有化合物の精製方法》
本発明の一態様である第1実施形態の糖類含有化合物の精製方法は、下記(I)(II)の工程を含む。
(I)精製剤を、糖類含有化合物を含む混合液に接触させ、精製剤に前記糖類含有化合物を吸着させる工程
(II)混合液から分離した精製剤を、水を含む溶液に接触させ、精製剤から水に糖類含有化合物を溶出させる工程
本願発明においては、混合液が、少なくとも糖類含有化合物を含む試料と、水と、有機溶媒と、塩とを含む。
また、精製剤は、以下の(A)(B)の少なくともいずれか一方を含有する。
(A)ベタイン構造を有するポリマー
(B)ベタイン構造を有するポリマーと、当該ポリマーを担持する支持体と、を有する複合体
詳しくは後述するが、発明者らは、このような糖類含有化合物の精製方法とすることで、糖類含有化合物の回収量を増加させ、効率的に精製することが可能となることを見出し、発明を完成させた。
ここで、本明細書においては、以下のように用語を定義する。
「糖類」とは、単糖及び糖鎖をまとめた集合を指す。単糖は、誘導体であってもよい。
「糖鎖」とは、2以上の単糖がグリコシド結合により直鎖状又は分岐鎖状につながった化合物を指す。糖鎖を構成する単糖は、誘導体であってもよい。
「糖ペプチド」は、糖類により修飾されたペプチドのことを指す。
「糖類含有化合物」は、糖類及び糖ペプチドをまとめた総称である。
「糖類含有化合物を含む試料」としては、糖類含有化合物を含有している可能性のある試料であれば特に制限はない。試料としては、例えば、単糖や多糖類等の糖類含有化合物そのものを含む試料の他、多糖類に対して加水分解処理を施したもの、複合糖質を含む試料に対して糖鎖遊離処理を施したものを挙げることができる。複合糖質としては、単糖、多糖類、糖タンパク質の混合物を挙げることができる。
複合糖質を含む試料としては、生体試料及び環境試料を挙げることができる。このような試料としては、例えば、全血、血清、血漿、尿、唾液、糞便、脳脊髄液、細胞、細胞培養物及び細胞組織等の生体試料が挙げられる。生体試料は、未精製のものであってもよく、複合糖類を公知の技術により精製したものであってもよく、脱脂、脱塩、タンパク質分画、熱変性等の必要な前処理を行ったものであってもよい。
糖タンパク質等の複合糖類からの糖鎖遊離処理は、複合糖類から糖鎖を遊離することができるものであれば、特に制限はなく、酵素的処理及び化学的処理等の別は問わない。また、糖鎖遊離処理に先立って、糖タンパク質や糖ペプチド等に対してタンパク質分解酵素を作用させ、タンパク質及びペプチド部分の断片化処理等を行ってもよい。
上記試料は、有機溶媒の溶液であってもよく、水溶液であってもよい。
以下の説明においては、糖類含有化合物の精製方法を単に「精製方法」と称することがある。以下、精製方法について、順に説明する。
[(I)精製剤に糖類含有化合物を吸着させる工程]
本実施形態の精製方法では、糖類含有化合物を精製対象とする。まず、少なくとも、糖類含有化合物を含む試料と、水と、有機溶媒と、塩とを含む混合液を調製し、精製剤を混合液に接触させて、精製剤に糖類含有化合物を吸着させる(工程(I))。これにより、用いる精製剤に試料中の糖類含有化合物を吸着させる。
本実施形態の糖類含有化合物の精製方法で用いる上記(A)(B)の精製剤は、いずれもベタイン構造を有する。このような精製剤は、ベタイン構造を有する部分において、試料中の糖類含有化合物を吸着する。
「ベタイン構造」とは、下記(a)~(c)の要件を満たす分子構造を意味する。
(a)正電荷と負電荷を同一分子構造内の隣り合わない位置に有する。
(b)正電荷を持つ原子には解離しうる水素が結合していない。
(c)分子構造全体としては電荷を持たない。
精製剤は、工程(I)で調製する混合液中で上記(a)~(c)を満たす構造(ベタイン構造)を有する。すなわち、精製剤には、単独でベタイン構造を分子内に有するポリマー及び複合体の他、混合液に入れることで初めて分子内にベタイン構造が生じるポリマー及び複合体も含まれる。精製剤については、後に詳述する。
発明者らは、ベタイン構造を有する精製剤により糖類含有化合物をより効率的に吸着させることを検討したところ、工程(I)で調製する混合液中に有機溶媒と塩とを含むことにより、当該化合物による糖類含有化合物の吸着の効率が向上することを見出し、発明を完成させた。
発明者らは、混合液に塩を加えることの効果について、次のように考えている。精製剤の一例として、ベタイン構造としてホスホリルコリン基を含有するポリマーと、ポリマーを担持するシリカ粒子(支持体)とを有する複合体(上記(B)の精製剤)を用いた場合について説明する。ホスホリルコリン基は、本発明における「ベタイン構造」を示す部分に該当する。
精製剤は、ホスホリルコリン基(ベタイン構造)が有する電荷により、親水性が高い。このような精製剤では、ポリマー鎖近傍に混合液中の水分子を引き付ける。これにより、精製剤は、ポリマー鎖が引き付けた水分子を介して、シリカ粒子の表面の水酸基と混合液中の糖類との相互作用を促し、糖類を吸着する。
混合液中に塩が溶解していると、混合液中では、塩の少なくとも一部は電離し、イオンを生じる。生じたイオンに対しては水分子が水和するため、ポリマー鎖やイオンによる束縛を受けておらず糖類に水和可能な水分子(自由水)が減少する。その結果、塩が存在しない場合と比べて、精製剤のポリマー鎖近傍に糖類がより近づきやすくなり、上記メカニズムによる吸着が促進される。
その結果、糖類含有化合物の吸着の効率が向上すると考えられる。
(混合液)
混合液は、工程(I)において、少なくとも、糖類含有化合物を含む試料と、有機溶媒と、塩とを混合したものであり、精製剤に前記糖類含有化合物を吸着させるものとして用いる。
混合液は、有機溶媒と塩とを含み、水を含んでもよい。有機溶媒、又は有機溶媒と水との混合溶媒は、精製対象である糖類含有化合物の種類に応じて選択することができる。
混合液に用いられる有機溶媒としては、糖類含有化合物を溶解可能なものである限り特に制限はない。例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジオキサン、ピリジン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、および1-ブタノール等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。混合液に用いられる有機溶媒は、アセトニトリル、1-ブタノール又はエタノールが好ましい。
混合液は、0.01体積%~20体積%の水を含むことが好ましく、0.1体積%~15体積%の水を含むことがより好ましく、0.5体積%~12体積%の水を含むことがさらに好ましい。混合液が上記量の水を含むことにより、糖類を効果的に精製剤に吸着させることができる。
混合液の塩濃度は、0.01mmol/L~50mmol/Lであると好ましく、0.01mmol/L~40mmol/Lであるとより好ましく、0.01mmol/L~30mmol/Lであるとさらに好ましい。混合液の塩濃度が上記の範囲であることにより、精製剤から離れた自由水を水和水とすることができ、その結果糖類を効果的に精製剤に吸着させることができる。
混合液に含まれる塩は、極性溶媒に可溶であり、水溶性を有すると好ましい。用いる塩は、アルカリ金属塩を含むと好ましい。アルカリ金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムを挙げることができ、入手しやすいことから塩化ナトリウムが好ましい。
工程(I)において、少なくとも、糖類含有化合物を含む試料と、精製剤とを混合して混合液を調製することにより、混合液の中では、効果的に精製剤に試料中の糖類含有化合物が吸着される。この際、糖類含有化合物と比べ、相対的に親水性が低い夾雑物(タンパク、ペプチド、脂質、塩等)は、精製剤に吸着されず、混合液中に遊離状態で残存する。
ここで、用いる精製剤は、あらゆる糖類を濃縮対象とする。
糖類を構成する単糖又はその誘導体としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、アラビノース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、シアル酸、及びこれらの誘導体が挙げられる。
精製剤で濃縮する糖類としては、単糖及びその誘導体、多糖類、糖タンパク質、並びに、糖ペプチド、プロテオグリカン、及び、糖脂質等の複合糖質から遊離又は誘導された糖鎖等が挙げられるが、これらに限定されない。特に、本実施形態で用いる精製剤は、単糖や二糖等の小さな糖をも効率的に吸着することができる。
ここで、糖タンパク質を構成する糖類は、主にアスパラギン残基に糖類が結合するN-グリコシド結合糖鎖(N型糖鎖)、及び、セリン及びスレオニン等と結合するO-グリコシド結合糖鎖(O型糖鎖)の2種類に大別される。本実施形態で用いる精製剤は、いずれの糖類をも濃縮対象とし、糖類の種類、鎖長、構造等は特に制限されない。したがって、上記精製剤は、例えば、分子量が小さなO型糖鎖を、多量に存在する糖類以外の夾雑物(タンパク、ペプチド、脂質、塩等)の影響を最小限に抑え、特異的かつ効率的に吸着することができる。
[(II)精製剤から水に糖類含有化合物を溶出させる工程]
次いで、糖類含有化合物を吸着させた精製剤を混合液から分離し、分離した精製剤を、水を含む溶液に接触させる(工程(II))。これにより、精製剤から水に糖類含有化合物を溶出させる。
工程(II)においては、まず、混合液から精製剤を分離する。分離後には、精製剤を洗浄すると良い。洗浄により、精製剤に捕捉された糖類含有化合物以外の夾雑物を除去することができる。
洗浄は、糖類含有化合物を吸着させた精製剤を、マイクロチューブ、遠心管、マイクロプレート等の容器中で洗浄液に浸漬し、洗浄液の交換を繰り返すことにより行うことができる。例えば、容器に精製剤を入れ、洗浄液を加え、振とう又は撹拌した後、固液分離により液相部分を除去する操作を繰り返すことにより行う。また、フィルター入りチューブを使用することで、精製剤の回収を効率的に行うことができる。
次いで、糖類含有化合物を吸着させた精製剤から糖類含有化合物を溶出させる。糖類含有化合物の溶出は、精製剤を溶出液に浸漬することによって行う。例えば、精製剤から十分に洗浄液を取り除いた後、マイクロチューブ、遠心管、マイクロプレート等の容器中で精製剤に溶出液を加え、振とう又は撹拌することで行う。
溶出液には、水を含む溶液を用いる。具体的には、溶出液は有機溶媒と水との混合溶媒であってもよい。有機溶媒としては、混合液に用いられる有機溶媒として提示した有機溶媒が挙げられる。混合溶媒を使用する場合は、溶出液中の水の含有率は25体積%以上であるとよい。
このようにして、試料に含まれる糖類含有化合物を精製することができる。必要に応じて、糖類含有化合物が溶出した溶出液から、溶出液のみを留去することにより、糖類含有化合物を濃縮することもできる。
本実施形態の精製方法においては、従来の方法と比べ、糖類含有化合物の回収量を増加させ、効率的に精製することができる。特に、本実施形態の精製方法においては、従来の方法と比べ、単糖の回収量が顕著に多く、効率的に糖類含有化合物を精製することができる。
以下、用いる精製剤について、さらに詳細に説明する。
(精製剤)
精製剤に含まれるベタイン構造は、具体的には、下記式(1)又は式(2)のいずれかの構造である。下記式(1)又は式(2)のいずれかの構造を分子内に有する化合物は、分子末端にベタイン構造を有する。
-Z-L-A …(1)
-A-L-Z …(2)
[式(1)(2)中、Zは、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、イミノ基及びイミニウム基からなる群より選択されるカチオン基を表す。
Lは、炭素数1~10のアルキレン基を表す。
Aは、リン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、スルホン酸基、スルフィン基、スルフェン基、水酸基、チオール基及びボロン酸基からなる群より選択されるアニオン基を表す。]
すなわち、精製剤におけるベタイン構造は、アニオン基と、カチオン基と、アニオン基とカチオン基とを連結するリンカーと、を有する。
カチオン基としては、2級アミノ基(-NHR)、3級アミノ基(-NR)、4級アンモニウム基(-N)、イミノ基(-C(=NR)-)及びイミニウム基(-C(=N)-)が挙げられるが、これらに限定するものではない。
カチオン基が有するRは、アルキル基又はアリール基であり、アルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状であってもよく、分岐していてもよい。カチオン基が複数のRを有する場合、複数のRはそれぞれ異なっていてもよく同一であってよい。Rは、例えば炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
カチオン基として、4級アンモニウム基が好ましい。上記式(2)においては、カチオン基は、トリメチルアンモニウム基がより好ましい。
カチオン基は、陰イオンとイオン結合し、塩を形成してもよい。このようなカチオン基であっても、混合液中では陰イオンが脱離し、カチオン基として機能する。カチオン基とイオン結合する陰イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、塩酸イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、フッ化水素酸イオン、及び炭酸イオンを挙げることができる。
式(1)(2)中、Lで表される基は、カチオン基とアニオン基とを接続するリンカーである。リンカーであるアルキレン基は、直鎖状であってもよく、環状であってもよく、分岐構造を有していてもよいが、直鎖状が好ましい。アルキレン基の炭素数は、2~5が好ましい。
アニオン基としては、例えば、リン酸基(-OP(=O)(OH))、カルボキシル基(-COOH)、ホスホン酸基(-P(=O)(OH))、ホスフィン酸基(-P(=O)R(OH))、スルホン酸基(-SOH)、スルフィン基(-S(=O)OH)、スルフェン基(-SOH)、水酸基(-OH)、チオール基(-SH)、及びボロン酸基(-B(OH))等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
アニオン基としては、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基及びカルボキシル基が好ましく、リン酸基及びカルボキシル基がより好ましい。
アニオン基は、陽イオンとイオン結合し、塩を形成してもよい。このようなアニオン基であっても、混合液中では陽イオンが脱離し、アニオン基として機能する。アニオン基とイオン結合する陽イオンとしては、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオン、及びカルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン等を挙げることができる。
精製剤におけるベタイン構造において、カチオン基とアニオン基の組み合わせは特に制限はない。好ましい組み合わせは、アニオン基が、リン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群より選択される基であり、カチオン基が4級アンモニウム基であり、リンカーが炭素数1~4のアルキレン基である。
また、精製剤が有するベタイン構造において、アニオン基はリン酸基がより好ましい。さらに、精製剤が有するベタイン構造において、ベタイン構造を示す部分は、ホスホリルコリン基であると好ましい。
((A)ベタイン構造を有するポリマー)
精製剤は、上記式(1)又は(2)で表されるベタイン構造を有するポリマー(高分子)であってもよい。以下の説明では、「ベタイン構造を有するポリマー」を「ポリマーA」と称することがある。
ポリマーAは、直鎖状であってもよく、分岐構造を有していてもよい。
ポリマーAが分岐構造を有する場合、主鎖がベタイン構造を有していてもよく、側鎖がベタイン構造を有していてもよい。側鎖がベタイン構造を有する場合、ポリマーAは、全ての側鎖がベタイン構造を有してもよく、側鎖の一部がベタイン構造を有してもよい。ベタイン構造を有していない側鎖は、電荷を有していてもよく、有していなくてもよい。
ポリマーAの主鎖には、特に制限はない。主鎖は、(メタ)アクリル化合物に由来する繰り返し単位を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリル酸エステルの誘導体に由来する繰り返し単位を含むとより好ましい。
さらに、主鎖には、上記繰り返し単位と共重合可能な繰り返し単位を含んでもよい。このような共重合可能な繰り返し単位としては、ビニル基、アリル基、α-アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、及びシトラコン酸残基に由来する繰り返し単位を挙げることができる。
ポリマーAは、ベタイン構造を有する重合性単量体の重合体であると好ましい。ベタイン構造を有する重合性単量体としては、公知の単量体を用いることができる。例えば、(i)ホスホベタイン基を有するホスホベタイン系単量体、(ii)カルボキシベタイン基を有するカルボキシベタイン系単量体、(iii)スルホベタイン基を有するスルホベタイン系単量体等が挙げられる。
(i)ホスホベタイン系単量体としては、ホスホリルコリン基を有する重合性単量体が好ましい。例えば、
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、
2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルホスホリルコリン、
6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、
10-(メタ)アクリロイルオキシエトキシノニルホスホリルコリン、
2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン、
2-(メタ)アクリロイルオキシブチルホスホリルコリン
が挙げられる。以上の単量体は、式(2)におけるAがリン酸基、Zが4級アンモニウム基、Lがエチレン基であるベタイン構造を有する。
なかでも、入手が容易であることから、ホスホベタイン系単量体としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが好ましく、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)がより好ましい。
更に、ホスホベタイン系単量体として、上記式(1)で表されるベタイン構造を有する単量体を用いることもできる。例えば、
・ジメチル(2-メタクリロイルオキシエチル)(ホスホナトメチル)アミニウム、ジメチル(2-アクリロイルオキシエチル)(ホスホナトメチル)アミニウム(上記式(1)のAがホスホン酸基、Zが4級アンモニウム基、Lがメチレン基)
・ジメチル(2-メタクリロイルオキシエチル)(2-ホスホナトエチル)アミニウム、ジメチル(2-アクリロイルオキシエチル)(2-ホスホナトエチル)アミニウム(上記式(1)のAがホスホン酸基、Zが4級アンモニウム基、Lがエチレン基)
・ジメチル(2-メタクリロイルオキシエチル)(3-ホスホナトプロピル)アミニウム、ジメチル(2-アクリロイルオキシエチル)(3-ホスホナトプロピル)アミニウム(上記式(1)のAがホスホン酸基、Zが4級アンモニウム基、Lがプロピレン基)
・ジメチル(2-メタクリロイルオキシエチル)(4-ホスホナトブチル)アミニウム、ジメチル(2-アクリロイルオキシエチル)(4-ホスホナトブチル)アミニウム(上記式(1)のAがホスホン酸基、Zが4級アンモニウム基、Lがブチレン基)
が挙げられる。
カルボキシベタイン系単量体としては、上記式(1)で表されるベタイン構造を有する単量体を用いることができる。例えば、
・ジメチル(2-メタクリロイルオキシエチル)(カルボキシラトメチル)アミニウム、ジメチル(2-アクリロイルオキシエチル)(カルボキシラトメチル)アミニウム(上記式(1)のAがカルボキシル基、Zが4級アンモニウム基、Lがメチレン基)
・ジメチル(2-メタクリロイルオキシエチル)(2-カルボキシラトエチル)アミニウム、ジメチル(2-アクリロイルオキシエチル)(2-カルボキシラトエチル)アミニウム(上記式(1)のAがカルボキシル基、Zが4級アンモニウム基、Lがエチレン基)
・ジメチル(2-メタクリロイルオキシエチル)(3-カルボキシラトプロピル)アミニウム、ジメチル(2-アクリロイルオキシエチル)(3-カルボキシラトプロピル)アミニウム(上記式(1)のAがカルボキシル基、Zが4級アンモニウム基、Lがプロピレン基)
・ジメチル(2-メタクリロイルオキシエチル)(4-カルボキシラトブチル)アミニウム、ジメチル(2-アクリロイルオキシエチル)(4-カルボキシラトブチル)アミニウム(上記式(1)のAがカルボキシル基、Zが4級アンモニウム基、Lがブチレン基)
が挙げられる。
スルホベタイン系単量体としては、上記式(1)で表されるベタイン構造を有する単量体を用いることができる。例えば、
・ジメチル(2-メタクリロイルオキシエチル)(スルホナトメチル)アミニウム、ジメチル(2-アクリロイルオキシエチル)(スルホナトメチル)アミニウム(上記式(1)のAがスルホン酸基、Zが4級アンモニウム基、Lがメチレン基)
・ジメチル(2-メタクリロイルオキシエチル)(2-スルホナトエチル)アミニウム、ジメチル(2-アクリロイルオキシエチル)(2-スルホナトエチル)アミニウム(上記式(1)のAがスルホン酸基、Zが4級アンモニウム基、Lがエチレン基)
・ジメチル(2-メタクリロイルオキシエチル)(3-スルホナトプロピル)アミニウム、ジメチル(2-アクリロイルオキシエチル)(3-スルホナトプロピル)アミニウム(上記式(1)のAがスルホン酸基、Zが4級アンモニウム基、Lがプロピレン基)
・ジメチル(2-メタクリロイルオキシエチル)(4-スルホナトブチル)アミニウム、ジメチル(2-アクリロイルオキシエチル)(4-スルホナトブチル)アミニウム(上記式(1)のAがスルホン酸基、Zが4級アンモニウム基、Lがブチレン基)
が挙げられる。
これらのベタイン構造を有する重合性単量体としては、ホスホベタイン系単量体が好ましく、ホスホリルコリン基を有するホスホベタイン系単量体がより好ましい。
((B)ベタイン構造を有するポリマーと、ポリマーを担持する支持体と、を有する複合体)
精製剤としては、上記ポリマーAを単独で用いてもよく、ポリマーAを不溶性の支持体に担持させた複合体として用いてもよい。上記ポリマーAを不溶性の支持体に担持させた複合体は、糖類含有化合物を吸着させた後、混合液から分離しやすく、精製操作が簡便になるため好ましい。
図1は、本実施形態の精製方法で用いる精製剤の一例を示す模式図である。図1に示すように、精製剤1は、ベタイン構造を有するポリマー(ポリマーA)と、当該ポリマーを担持する支持体2とを有する複合体である。図1に示す精製剤1では、支持体2が球状(粒子状)であり、ベタイン構造を有するポリマーは、支持体2の表面に層状に設けられている。図1では、層状に設けられたポリマーの層を符号3で示しており、層3を構成するベタイン構造を有するポリマーを符号3aで示している。
(支持体)
図1では、支持体2を、球状であることとして示したがこれに限らない。例えば、支持体の形状は、基板やマルチウェルプレート等の板状、シートやフィルム、メンブレン等の膜状、繊維状であってもよい。
支持体2が球状であり、精製剤1が球状である場合、精製剤1の平均粒径は、0.5μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましく、1μm以上10μm以下がさらに好ましく、3μm以上10μm以下が特に好ましい。精製剤1の平均粒径が上記下限値以上であると、取り扱いが容易となり好ましい。また、精製剤1の平均粒径が上記上限値以下であると、工程(I)で調製する混合液中で、糖類含有化合物と精製剤1とを良好に接触させ、精製剤1に糖類含有化合物を吸着させやすいため好ましい。
精製剤1の平均粒径は、例えば、粒度分布計等で測定することができる。
精製剤1は、スピンカラム等のフィルターカップ、マルチウェルプレートの各ウェル、フィルタープレートの各ウェル、マイクロチューブ等の容器の中に充填された状態で用いてもよい。
また、図1では、ポリマー3aが支持体2の表面の全体を覆っているが、これに限らず、支持体2の表面が露出していてもよい。
支持体2の材料は、糖類含有化合物の精製過程で使用する有機溶媒及び水に不溶な基材であり、上述のベタイン構造を有するポリマー(ポリマーA)を担持できるものを採用できる。このような支持体2の材料は、無機材料であってもよく、有機材料であってもよく、無機材料と有機材料との複合材料であってもよい。
無機材料としては、ガラス、酸化鉄(フェライト、マグネタイト等)、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化物、鉄、銅、金、銀、白金、コバルト、アルミニウム、パラジウム、イリジウム、ロジウム等の金属及びその合金、グラファイト等の炭素材料等が挙げられる。
これらの材料は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機材料としては、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレン等の合成高分子、架橋セファロース、結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アミロース、架橋アガロース、架橋デキストラン等の多糖類等が挙げられる。
これらの材料は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
支持体2としては、無機材料を用いることが好ましい。支持体2となりうる有機材料は比重が1前後であり、精製で用いる混合液との比重差が小さい。そのため、支持体2の材料として有機材料を採用すると、固液分離が煩雑になることがある。一方、支持体2の材料として無機材料を用いると、容易かつ簡便に混合液と精製剤とを固液分離できる。これにより、作業効率の向上に寄与することができる。
支持体2の材料としては、シリカが特に好ましい。
支持体2は、多孔質体であってもよい。多孔質の支持体2を用いることにより、支持体2表面に固定するベタイン構造を有するポリマーAの量を増加できる。これにより、作業効率の向上に寄与することができる。
また、空隙を有する支持体と空隙を有さない支持体とを併用する、または、多孔質体である支持体の空隙の量を調製することにより、精製剤全体の比重を調製することもできる。
ポリマーAを支持体の表面に担持させる方法は、物理吸着、又は、化学結合のいずれであってもよい。糖類含有化合物の精製過程において、支持体からポリマーAが遊離し難いため、上記担持させる方法は、化学結合が好ましい。
例えば、表面に水酸基等の反応点を有する支持体の存在下、上述した重合性単量体を重合させることにより、支持体表面に重合体を結合させ担持させることができる。その他、WO2019/088167に記載の公知の方法により、支持体の表面にポリマーAを担持させることができる。
このような精製剤1において、支持体2に結合しているポリマーAの重量は、支持体2の単位表面積(m)当たり0.5mg以上1.5mg以下が好ましく、0.6mg以上1.3mg以下がより好ましく、0.7mg以上1.2mg以下がさらに好ましい。単位表面積当たりのポリマー重量が上記範囲であると、ポリマーAの重合時に支持体2からポリマーAを成長させやすく、ポリマー合成時のハンドリングが良好となる。また、精製剤1において、ポリマーAと糖類含有化合物とを接触させやすく、糖類含有化合物を効率よく吸着させることができる。
支持体2に結合しているポリマーAの重量は、精製剤を熱重量分析することで求められる重量減少率と、支持体2について窒素吸着法で求めるBET比表面積とから、求めることができる。
このような精製剤の比重は、1.05~3.00であると好ましく、1.1~2.7であるとより好ましく、1.5~2.5であるとさらに好ましい。精製剤の比重が下限値以上であることにより、精製剤を沈降させやすく固液分離の操作が容易となる。また、精製剤の比重が上限以下であることにより、工程(I)で調製する混合液において精製剤を分散させやすい。これにより、工程(I)で調製する混合液において、精製剤と糖類含有化合物とを接触させやすく、精製剤に糖類含有化合物を吸着させやすい。
上記構成の精製剤を用いることにより、効果的に本実施形態の精製方法を実施可能である。
[糖類含有化合物の精製キット]
本実施形態に係る糖類含有化合物の精製キットは、上述の精製剤、上述の混合液を作製するための塩(混合液に含まれる塩)、及び精製キット使用のためのプロトコル情報を含む。
プロトコル情報は、使用説明書に収録されている。使用説明書は、紙又はその他の媒体に書かれたもの又は印刷されたものでもよく、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク等の電子媒体に記録されたものでもよい。
糖類含有化合物の精製キットは、更に、当該キットを実施するために必要な試薬類を含めることができる。試薬類としては、例えば、糖類含有化合物を含む試料と、水と、有機溶媒と、塩とを混合した混合液のpHを調製するための緩衝液、精製剤の洗浄に用いる洗浄液、糖類含有化合物を吸着させた精製剤から糖類含有化合物を溶出させる溶出液等が挙げられる。
これらの試薬類は、凍結乾燥粉末の形態で提供されてもよい。試薬類が凍結乾燥粉末として提供される場合、精製キットには、凍結乾燥粉末を溶解、希釈するための希釈液を含んでいてよい。
糖類含有化合物の精製キットは、フィルターカップ、マルチウェルプレート、フィルタープレート、マイクロチューブ等の容器類を含んでいてよい。容器類には、上述の精製剤が充填されていてもよい。
このように、糖類含有化合物の精製に必要な精製剤、混合液を作製するための塩及びプロトコル情報をキット化することにより、糖類含有化合物の精製をより簡便に行うことができる。
図2は、本実施形態の精製方法を実施する装置の一例を説明する模式図である。装置100は、精製剤10を収容した容器15を保持する保持部20と、容器15に試薬を導入する導入部30とを備える。装置100は、容器15の収容物を固液分離する分離部40を備えていてもよい。また、装置100は、容器15の収容物の温度を調節する温度調節部60を更に備えていてもよい。
保持部20は、精製剤10を収容した容器15を直接又は間接的に保持する。装置100では保持部20が回収容器16を保持し、容器15が回収容器16に装着されていることで、保持部20が容器15を間接的に保持している。回収容器16は、例えばコレクションチューブ、コレクションプレート等を挙げることができる。
導入部30は、保持部20に保持された容器15内に液体類(試料L1、有機溶媒と塩とを含む液L2、洗浄液L3、溶出液L4)を導入する。導入部30は、液体類をそれぞれ収容したタンク34と、タンク34が収容した液体類を送液する送液管35aと、液体類を容器15に導入するノズル35とを備えている。送液管35aは、各タンク34に分岐している。分岐した各送液管35aには、各液体類の送液を制御する弁(36,37,38,39)を備える。
分離部40は、容器15の収容物から固体(精製剤10)と液体とを分離する。容器15には、回収容器16が装着されていてもよい。
分離部40は、容器15を保持するラック41と、ラック41が接続されるドライブシャフト42と、ドライブシャフト42を回転させるモーター43とを備えている。
分離部40は、保持部20から独立して構成されてもよい。この場合、装置100は、保持部20から分離部40へ、容器15を自動移送させる移送部50を含んでいてもよい。
分離部40は、遠心力によって、精製剤10に固定された糖類含有化合物を容器15内に残すとともに、洗浄液を回収容器16中に廃棄することができる。また、溶出過程においては、糖類含有化合物を含む溶出液を回収容器16中に回収することができる。
装置100においては、精製剤10を収容する容器15を保持部20にて保持し、導入部30を用いて容器15に試料L1、有機溶媒と塩とを含む液L2を導入する。これにより、容器15で混合液L5を調製し、試料L1に含まれる糖類含有化合物を精製剤10に吸着させる(工程(I))。
次いで、分離部40を用いて混合液L5を固液分離し、容器15から液相を抜き出す。固体である精製剤10が残された容器15に対し、導入部30を用いて洗浄液L3を導入し分離部40を用いて固液分離することで、精製剤10の洗浄を行う。
次いで、洗浄後の精製剤10が収容された容器15に、導入部30を用いて溶出液L4を導入する。これにより、精製剤10に吸着させた糖類含有化合物を溶出液L4に溶出させ、糖類含有化合物を精製する(工程(II))。
以上のような操作により、装置100を用いて本実施形態の精製方法を実施することができる。
以上のような糖類含有化合物の精製方法によれば、従来よりも糖類含有化合物の回収量を増加させ、効率的に精製することが可能となる。
また、以上のような糖類含有化合物の精製キットによれば、本発明の糖類含有化合物の精製方法を容易に実施し、糖類含有化合物を効率的に精製することが可能となる。
[第2実施形態]
《糖含有化合物の精製方法》
本発明の一態様である第2実施形態の糖類含有化合物の精製方法は、上記(I)の工程に先立って、さらに以下の各工程を順に含む。
(1)糖タンパク質を含む混合試料を電気泳動し、混合試料から糖タンパク質を分離する工程
(2)電気泳動を行ったゲルから疎水性膜に糖タンパク質を転写する工程
(3)糖タンパク質が転写された疎水性膜から、目的の糖タンパク質のバンドを含む切片を切り出す工程
(4)切片に遊離試薬を含む液体を添加し糖タンパク質から糖類含有化合物を遊離させ、混合液を得る工程
[(1)混合試料から糖タンパク質を分離する工程]
本実施形態の精製方法では、糖類含有化合物を含む試料として、糖タンパク質を含む混合試料を精製対象とする。複数種類の糖タンパク質を含む混合試料を対象とし、通常知られた電気泳動を行うことにより、ゲル上で混合試料を複数のバンドに分離する(工程(1))。電気泳動としては、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を挙げることができる。
電気泳動に用いるゲルは、ゲル全体で濃度が一定のものであってもよく、濃度勾配ゲルであってもよい。また、電気泳動時には、有色の分子量マーカーやコントロールサンプルを一緒に泳動させてもよい。
[(2)糖タンパク質を転写する工程]
次いで、糖タンパク質を複数のバンドに分離したゲルから、疎水成膜に糖タンパク質を転写する。具体的には、電気泳動で分離した糖タンパク質を、ゲルから疎水性膜(例えば、PVDF膜)に公知の方法により転写する(工程(2))。糖タンパク質の転写に用いるトランスファーバッファやブロッターは、通常知られたものを用いることができる。
上記転写の後、転写した糖タンパク質を検出するための公知の処理を行ってもよい。例えば、転写した糖タンパク質を色素で染色してもよく、抗体で標識してもよい。抗体で標識する場合、糖タンパク質の転写から抗体による標識・検出までの操作について、いわゆるウエスタンブロットやイムノブロットを採用することができる。
[(3)目的の糖タンパク質のバンドを含む切片を切り出す工程]
次いで、糖タンパク質が転写された疎水性膜から、目的の糖タンパク質のバンドを含む切片を切り出す(工程(3))。目的の糖タンパク質のバンドについては、予め同定しておく。
切り出した切片は、メタノールを添加して脱色してもよい。脱色に用いたメタノールを除去後、遠心乾燥機を用いて切片を完全に乾燥させるとよい。
[(4)混合液を得る工程]
次いで、切片に遊離試薬を含む液体を添加し、糖タンパク質から糖類含有化合物を遊離させ、混合液を得る(工程(4))。工程(3)で切り出した切片を、サンプル管やマイクロチューブ等の容器に集め、糖鎖遊離試薬を加えることで、切片に転写されている糖タンパク質から、糖鎖を遊離させる。これにより、上述の工程(I)で示した混合液を得る。
糖鎖遊離試薬としては、糖鎖遊離酵素を採用することができる。糖鎖遊離酵素としては、アスパラギン側鎖に結合したN型糖鎖を特異的に切断する糖切断酵素(例えば、PNGase F)を用いることができる。また、糖鎖を遊離させる公知の方法で採用される試薬を、糖鎖遊離試薬として採用することができる。このような公知の方法としては、O型糖鎖遊離法である「脱離オキシム化法」を挙げることができる。
工程(4)においては、糖鎖遊離試薬により糖タンパク質から糖類含有化合物を遊離させた後に塩を加え、混合液を得てもよい。または、糖鎖遊離試薬により糖タンパク質から糖類含有化合物を遊離させる際に塩も加えておくことで、混合液を得てもよい。糖類含有化合物を遊離させる際に塩を加えておくことで、上記工程(II)において回収される糖類含有化合物の量を増加させることができる。
以上のようにして得られた混合液を、上記工程(I)(II)により精製することで、糖類含有化合物が得られる。得られた糖類含有化合物は、質量分析や液体クロマトグラフィー(HPLC)等の公知の分析方法により分析して同定することができる。
以上のような糖類含有化合物の精製方法によれば、従来よりも糖類含有化合物の回収量を増加させ、効率的に精製することが可能となる。さらに、従来の方法よりも高精度の分析が可能となる。
また、以上のような糖類含有化合物の精製方法によれば、電気泳動でバンド位置を確認したサンプルから糖類含有化合物を精製できるため、解析を無駄なく効率的に行うことが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計、仕様等に基づき種々変更可能である。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[精製剤の製造]
(1.支持体の調製)
まず、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製M0928)を5g秤量し、pH3.0の酢酸水溶液50mLとエタノール50mLとの混合液に添加し、撹拌することで、シランカップリング剤を加水分解した。
次いで、混合液にシリカビーズ(平均粒径5μm、細孔径70Å、富士シリシア化学株式会社製SMB70-5)5gを投入し、70℃で2時間攪拌した後、反応溶液から固体を回収した。得られた固体を100℃で1時間加熱した。
その後、エタノールで分散させてよく振盪した後、遠心分離により上澄みを除去し乾燥させることで、表面にメルカプト基を備えた支持体を調製した。
(2.精製剤の調製)
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC、日本油脂株式会社製)をエタノールに溶解させ、0.8mol/Lのモノマー溶液を20mL調製した。調製したモノマー溶液に重合開始剤であるAIBNを添加し、均一になるまで撹拌した。AIBNの濃度は、モノマー溶液全体に対し0.027mol/Lとした。
次いで、AIBNを添加したモノマー溶液に、(1.支持体の調製)で調製した支持体4gを投入し、アルゴンガス雰囲気下、70℃で6時間反応させた。MPCモノマーは、重合して重合体(MPCポリマー)を生じた。また、生じたMPCポリマーは、支持体表面のメルカプト基に結合した。
反応後、遠心分離により反応溶液から精製剤を回収し、エタノールで洗浄し乾燥させることで、支持体の表面にベタイン構造を有するポリマー(MPCポリマー)が結合した精製剤を得た。
(ポリマーを含む層の重量測定)
得られた精製剤の支持体表面に設けられた、MCPポリマーを含む層の重量は、示差熱-熱重量測定装置(セイコーインスツルメント社製TG/DTA6200)を用いて測定した。
まず、精秤した精製剤について、空気雰囲気中、上記装置を用い室温から500℃へ10℃/分で昇温し、さらに500℃を1時間維持した後の重量減少率を測定した。得られた重量減少率の値と、別途BET法(窒素吸着)で求めた単位重量当たりの支持体の表面積とから、支持体の表面に導入された、ポリマーを含む層の重量を算出した。精製剤におけるMCPポリマーを含む層の質量は、1.08mg/mであった。
[実施例1]
(1.糖類含有化合物溶液の調製)
グルコースオリゴマー(生化学工業製。品番:800111)を超純水に溶解し、1mg/mLの糖類含有化合物溶液とした。以下、糖類含有化合物を単に「糖水溶液」と略称する。
(2.混合液の調製)
得られた糖水溶液1μLに、濃度200mmol/LのNaCl水溶液10μLと、アセトニトリル(富士フイルム和光純薬製。製品コード:018-19853、純度99.9%)990μLと、を加えて、アセトニトリル99体積%、NaCl濃度2mmol/Lの混合液を調製した。調整した混合液は、本発明における「混合液」に該当する。
(3.糖類含有化合物の回収)
上記混合液を、精製剤0.65mgに添加して懸濁した後、スピンカラム(住友ベークライト製、糖タンパク質のO型糖鎖分析キット(品番:BS-41601)に付属。フィルター付き)に加え、卓上遠心機を用い下記条件にて遠心して固液分離し、溶液を除去した。以下の操作においても、遠心の条件は同じとした。
(運転条件)
遠心力:3000×g、運転時間:1分間
スピンカラムのフィルター上に残った精製剤にアセトニトリル200μLを加え、遠心した後、溶液を除去した。再度、アセトニトリル200μLを加え、遠心して溶液を除去し、固体を得た。
(4.標識処理)
糖の蛍光標識試薬である2-アミノベンズアミド(住友ベークライト製、品番:BS-41601に付属)8mgをメタノール45μLと酢酸10μLの混合溶液に溶かした後、超純水45μLを加えた溶液1を調製した。
また、還元剤であるピコリンボラン(住友ベークライト製、品番:BS-41601に付属)4mgをメタノール45μLと酢酸10μLの混合溶液に溶かした後、超純水45μLを加えた溶液2を調製した。
溶液1の全量に2μLの溶液2を加えて攪拌し、糖類含有化合物の標識溶液とした。
(3.糖鎖の回収)で得られた固体に、上記標識溶液50μLを加え、遠心して固液分離した後、溶液をマイクロチューブに回収した。得られた溶液を50℃で2.5時間加熱し、糖に標識した。
加熱後の溶液に、アセトニトリル1mLを加え、攪拌してアセトニトリル液を得た。
得られたアセトニトリル液をクリーンアップカラム(住友ベークライト製、品番:BS-41601に付属)に全量添加後、遠心して固液分離し溶液を除去した。その後、クリーンアップカラムにアセトニトリル600μLを加え、遠心して固液分離し溶液を除去した。再度、クリーンアップカラムにアセトニトリル600μLを加え、遠心により溶液を除去した。
上記クリーンアップカラムに超純水50μLを加えて遠心し、標識糖鎖溶液をマイクロチューブに回収した。
(5.HPLC分析)
マイクロチューブに回収した溶液のうち1μLを用いて、下記表1の条件でHPLC分析を実施した。
Figure 2023078060000001
[実施例2]
(2.混合溶液の調製)において、糖水溶液1μLに、濃度40mmol/LのNaCl水溶液10μLと、アセトニトリル(富士フイルム和光純薬製。製品コード:018-19853、純度99.9%)990μLと、を加えて、アセトニトリル99体積%、NaCl濃度0.4mmol/Lの混合液を調製したこと以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例1]
(2.混合溶液の調製)において、糖水溶液1μLに、超純水10μLと、アセトニトリル(富士フイルム和光純薬製。製品コード:018-19853、純度99.9%)990μLと、を加えて、アセトニトリル99体積%の混合液を調製したこと以外は、実施例1と同様に行った。
図3は、実施例1,2、比較例1の結果を示すグラフであり、グルコース1糖~10糖に該当するピークの面積値を示すグラフである。横軸は、HPLC分析により確認したグルコース1糖~10糖のグルコース数、縦軸は、HPLC分析におけるピーク面積値を示す。
図3に示すように、実施例1,2は、比較例1よりも糖の回収量が多いことが確認できた。特に、実施例1,2は、比較例1と比べ、一糖の回収量が顕著に多く、また混合液中の塩の濃度が上昇するに伴い、一糖の回収量が向上することが確認できた。
[実施例3~5、比較例2]
(2.混合液の調製)において、糖水溶液1μLに、下表2に従って各液体を加え各濃度の混合液をそれぞれ調整し、調整した混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
Figure 2023078060000002
図4は、実施例3~5、比較例2の結果を示すグラフである。図4の横軸は、混合液のNaCl濃度(mmol/L)、縦軸は、HPLC分析におけるピーク面積値を示す。
図4に示すように、実施例3~5では、比較例2と比べグルコース1糖に該当するピークの面積値は増加した。すなわち、実施例3~5のように、O型糖鎖のような小さな糖類含有化合物についても、NaCl(塩)を添加すると回収量が増加することを確認した。
また、混合液におけるNaCl濃度が高くなるに従い、糖類含有化合物の回収量が増加していくことを確認した。
[実施例6、7,比較例3]
上述した第2実施形態の糖類含有化合物の精製方法について、以下の方法で効果を確認した。
[実施例6]
(6.糖タンパク質を転写した切片の用意)
セミドライ法によって電気泳動ゲルからウシ胎児血清fetuin(SigmaAldrich製。品番:F3004-100MG)を転写したPVDF膜(疎水性膜)(アトー製。品番:WSE-4051)を用意した。本工程は、上述した第2実施形態における工程(1)(2)に該当する。
fetuinを転写したPVDF膜を、トレーに貯めた純水に浸漬し、2分間洗浄した。洗浄後のPVDF膜を新たなトレーに移し、ゲル染色試薬(GelCode-Blue-Stain-Reagent(ThermoFisher製。品番:24590))を20mL加えた。ゲル染色試薬にPVDF膜を完全に浸し、5分間振盪した。
その後、ゲル染色試薬からPVDF膜を取り出し、50体積%メタノール、1体積%酢酸水溶液に浸漬して10分間振盪して洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返し、PVDF膜上の目的の糖タンパク質を染色した。
次いで、PVDF膜から染色した目的の糖タンパク質のバンド部分を切り出すことで、fetuinを1μg含有する切片を用意した。この切片を1.5mLチューブに入れてメタノール50μLを添加し、数回ピペッティングすることで脱色した。メタノールを除去後、遠心乾燥機に15分かけて切片を完全に乾燥させた。本工程は、上述した第2実施形態における工程(3)に該当する。
(7.糖鎖の遊離)
(6.糖タンパク質を転写した切片の用意)で得られた切片を1.5mLチューブに入れ、さらに50%ヒドロキシアミン水溶液(住友ベークライト製、品番:BS-41601に付属)10μLと、DBU(住友ベークライト製、品番:BS-41601に付属)5μLと、超純水10μLと、0.1mol/LのNaCL水溶液10μLと、を添加して混合した。得られた試料液を37℃で75分加熱した。本工程は、上述した第2実施形態における工程(4)に該当する。
得られた反応液にアセトニトリルを添加して数回ピペッティングし、アセトニトリル99体積%、NaCl濃度1mmol/Lの混合液を調製した。調整した混合液は、本発明における「混合液」に該当する。
その後、実施例1における(3.糖類含有化合物の回収)、(4.標識処理)と同じ処理を行い、標識糖鎖溶液をマイクロチューブに回収した。
得られた標識糖鎖溶液を凍結させた後、遠心乾燥機に1時間かけることで水分を除去した。次いで、同じマイクロチューブに超純水10μLを加えて攪拌し、5倍濃縮された標識糖鎖溶液を得た。
その後、実施例1における(5.HPLC分析)の方法にてHPLC分析を実施した。
[実施例7]
(7.糖鎖の遊離)において加えたNaCL水溶液の濃度を0.2mol/Lとしたこと以外は、実施例6と同様にして行った。
[比較例3]
(7.糖鎖の遊離)において加えたNaCL水溶液を加えないこと以外は、実施例6と同様にして行った。
図5は、実施例6,7、比較例3の結果を示すグラフである。図5の横軸は、添加したNaCl水溶液の濃度(mmol/L)、左縦軸は、HPLC分析におけるピーク面積値を示す。詳しくは、縦軸はFetuinから回収される4種類の糖鎖に該当するピークの面積値を示す。
また、右縦軸は、HPLC分析により確認された副反応(ピーリング)の割合(ピーリング率)を示す。ピーリング率は、左縦軸に示される4つのピーク面積の合計値に対する、ピーリングに該当するピークの面積で求められる。
図5に示すように、実施例、比較例共に、糖たんぱく質から遊離させた糖類含有化合物を精製し回収することができた。また、実施例6,7では、比較例3と比べ糖鎖の回収量に該当するピークの面積値は増加した。すなわち、NaCl(塩)を添加すると回収量が増加することを確認した。また、糖鎖の回収量が増加しても、ピーリング率は10%以下に抑えられることを確認した。
以上の結果から、本発明が有用であることが確認できた。
1,10…精製剤、2…支持体、3…ポリマーの層、3a…ポリマー、L1…試料、L2…有機溶媒と塩とを含む液、L5…混合液

Claims (14)

  1. 精製剤を、糖類含有化合物を含む混合液に接触させ、前記精製剤に前記糖類含有化合物を吸着させる工程と、
    前記混合液から分離した前記精製剤を、水を含む溶液に接触させ、前記精製剤から前記水に前記糖類含有化合物を溶出させる工程と、を含み、
    前記混合液は、少なくとも、前記糖類含有化合物を含む試料と、水と、有機溶媒と、塩とを含み、
    前記精製剤は、ベタイン構造を有するポリマー、又は前記ポリマーと前記ポリマーを担持する支持体とを有する複合体の少なくともいずれか一方を含有する、糖類含有化合物の精製方法。
  2. 前記混合液の塩濃度は、0.01mmol/L~50mmol/Lである請求項1に記載の糖類含有化合物の精製方法。
  3. 前記塩は、アルカリ金属塩を含む請求項1又は2に記載の糖類含有化合物の精製方法。
  4. 前記混合液は、0.01体積%~20体積%の水を含む請求項1記載の糖類含有化合物の精製方法。
  5. 前記ベタイン構造はアニオン基と、カチオン基と、及び前記アニオン基と前記カチオン基とを連結するリンカーと、を有し、
    前記アニオン基は、リン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基及びスルホン酸基からなる群より選択される基であり、
    前記カチオン基は、4級アンモニウム基であり、
    前記リンカーは炭素数1~4のアルキレン基である請求項1に記載の糖類含有化合物の精製方法。
  6. 前記アニオン基がリン酸基である請求項5に記載の糖類含有化合物の精製方法。
  7. 前記ベタイン構造が、ホスホリルコリン基である請求項5に記載の糖類含有化合物の精製方法。
  8. 前記支持体に固定された前記ポリマーの重量が、前記支持体の単位表面積(m)当たり0.5mg~1.5mgである請求項1に記載の糖類含有化合物の精製方法。
  9. 前記支持体が、無機化合物を材料とする請求項8に記載の糖類含有化合物の精製方法。
  10. 前記複合体の比重が、1.05~3.00である、請求項8に記載の糖類含有化合物の精製方法。
  11. 前記複合体は、形状が球状であり、平均粒径が0.5μm~100μmである、請求項8に記載の糖類含有化合物の精製方法。
  12. 前記ポリマーが、(メタ)アクリル化合物に由来する繰り返し単位を含む請求項1に記載の糖類含有化合物の精製方法。
  13. 前記糖類含有化合物を吸着させる工程に先だって、糖タンパク質を含む混合試料を電気泳動し、前記混合試料から前記糖タンパク質を分離する工程と、
    前記電気泳動を行ったゲルから疎水性膜に前記糖タンパク質を転写する工程と、
    前記糖タンパク質が転写された前記疎水性膜から、目的の糖タンパク質のバンドを含む切片を切り出す工程と、
    前記切片に遊離試薬を含む液体を添加し前記糖タンパク質から糖類含有化合物を遊離させ、前記混合液を得る工程と、をさらに含む、請求項1に記載の糖類含有化合物の精製方法。
  14. 請求項1に記載の糖類含有化合物の精製方法に用いられる糖類含有化合物の精製キットであって、
    前記精製キットは、前記精製剤と、
    前記混合液に含まれる塩と、
    キット使用のためのプロトコル情報と、を含む糖類含有化合物の精製キット。
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