JP2023077419A - 変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物、およびガスバリア材 - Google Patents
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Abstract
【課題】エチレン-ビニルアルコール系樹脂の結晶化速度を適切に低下させることで、ガスバリア性、及び生分解性を有しつつ、加工性、特に延伸加工性を向上させることができ、さらに熱安定性に優れる変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物を提供する。【解決手段】側鎖に一級水酸基構造単位を1~16.5mol%有する変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂と、共役ポリエンを0.1~500ppm含み、側鎖一級水酸基構造単位の含有量をDとし、該樹脂組成物を示差走査熱量分析で分析条件1に従い分析し、変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂の融点-10℃以上の高温に観察される融解ピークの融解エンタルピーの合計をH1、分析条件2に従い分析し、融解ピークの融解エンタルピーをH3としたとき、下記式(1)を満たす変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物とする。0.55≦H1/H3≦―0.025×D+0.97 ・・・(1)【選択図】なし
Description
本発明は、変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物、およびガスバリア材に関する。
従来、エチレン-ビニルアルコール系樹脂(以下、「EVOH系樹脂」と称することがある)から形成されるフィルムは透明性、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性を有することから、食品包材に用いられている。食品包材用のフィルムとして商品価値を高めるためには、延伸加工できることが好ましいが、EVOH系樹脂は結晶化速度が速いために、延伸等の加工性を確保することが難しい。
また、EVOH系樹脂のフィルムと、他の樹脂フィルムとを積層した多層構造体は、EVOH系樹脂のフィルムと隣接する樹脂フィルムとの結晶化速度の差が大きい場合、成形時の収縮の差が大きくなり、層間で剥がれやすいという欠点がある。
また、EVOH系樹脂のフィルムと、他の樹脂フィルムとを積層した多層構造体は、EVOH系樹脂のフィルムと隣接する樹脂フィルムとの結晶化速度の差が大きい場合、成形時の収縮の差が大きくなり、層間で剥がれやすいという欠点がある。
熱可塑性樹脂の結晶化速度を低下させる化合物として、例えば、亜鉛、コバルト、カルシウム塩等が、ポリアミド樹脂に対する結晶化遅延剤として作用することが知られている。しかし、EVOH系樹脂に対しては、結晶化速度を下げる化合物は知られていない。
また、EVOH系樹脂以外の熱可塑性樹脂では、可塑剤等の添加剤を加えることで結晶化速度を低下させる試みもされているが、可塑剤は成形物の非晶領域を疎にするため、ガスバリア性を求めるEVOH系樹脂に対しては適用しにくい。
そのため、添加剤を加えることなくEVOH系樹脂の結晶化速度を低下させることにより、加工性、特に延伸加工性に優れたEVOH系樹脂が求められている。
また、EVOH系樹脂以外の熱可塑性樹脂では、可塑剤等の添加剤を加えることで結晶化速度を低下させる試みもされているが、可塑剤は成形物の非晶領域を疎にするため、ガスバリア性を求めるEVOH系樹脂に対しては適用しにくい。
そのため、添加剤を加えることなくEVOH系樹脂の結晶化速度を低下させることにより、加工性、特に延伸加工性に優れたEVOH系樹脂が求められている。
例えば、特許文献1には、EVOH系樹脂組成物の結晶化挙動を、示差走査熱量分析(DSC)によって、融解状態から極めて速い冷却速度で冷却することにより、均一核生成による結晶化と、不均一核生成による結晶化とを区別して評価し、不均一核生成による結晶化の割合の低いEVOH系樹脂組成物が、溶融成形の際の安定性や外観特性に優れることが開示されている。
しかしながら、特許文献1では、評価方法が極めて速い冷却速度での評価であるために、結晶化速度が遅い成分の寄与は示されていない。
しかしながら、特許文献1では、評価方法が極めて速い冷却速度での評価であるために、結晶化速度が遅い成分の寄与は示されていない。
また、特許文献2には、EVOH系樹脂の主鎖に一級水酸基として1,3-ジオール構造単量体単位を有する樹脂は、1,3-ジオール構造単量体単位を有さないEVOH系樹脂に比べて、結晶性が低下するため、柔軟性や二次加工性を向上させることができ、また、結晶化速度も低下するため、層間接着性が向上することが開示されている。
しかし、特許文献2では、結晶化速度をどの程度低下させられるのか、またそれがどの程度、加工性に影響を及ぼすのか、具体的な指標は示されていない。
しかし、特許文献2では、結晶化速度をどの程度低下させられるのか、またそれがどの程度、加工性に影響を及ぼすのか、具体的な指標は示されていない。
さらに、非特許文献1では、側鎖に一級水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂のDSCにおいて、融解状態の樹脂を、冷却途中に一定温度での保温を数段階含めるように段階的に冷却させつつ結晶化させてから、再加熱させると複数の融解ピークが観察され、その融点の差から結晶ラメラ厚むの中の分子鎖の繰り返し単位数を求める試みが報告されている。このように複数の融解ピークが観察されるのは、該樹脂の結晶化が比較的遅いために、段階的冷却における結晶化の過程で一度に結晶化したりせず、各段階で徐々に結晶化が起きたものが、その段階に対応して融解する状態を反映しているものと考えられる。
しかし、該文献ではエチレンが共重合されたEVOH系樹脂については触れられておらず、エチレン共重合が及ぼす影響については、これまで全く知られていない。
しかし、該文献ではエチレンが共重合されたEVOH系樹脂については触れられておらず、エチレン共重合が及ぼす影響については、これまで全く知られていない。
さらに、近年では環境負荷の低減の観点(例えば、海洋問題)から、優れた生分解性を有するガスバリア性樹脂が求められているが、EVOH系樹脂で生分解性とガスバリア性を両立した樹脂は知られていない。
また、該EVOH系樹脂を溶融成形することによってガスバリア材を製造する場合には、熱安定性に優れる樹脂組成物が求められているが、生分解性、ガスバリア性を両立させた上に熱安定性にも優れるEVOH系樹脂組成物は知られていない。
また、該EVOH系樹脂を溶融成形することによってガスバリア材を製造する場合には、熱安定性に優れる樹脂組成物が求められているが、生分解性、ガスバリア性を両立させた上に熱安定性にも優れるEVOH系樹脂組成物は知られていない。
材料 (Journal of the Society of Materials Science,Japan) 66巻 23ページ (2017年)
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、EVOH系樹脂の結晶化速度を適切に低下させることで、ガスバリア性を有しつつ、加工性、特に延伸加工性に優れ、さらに生分解性を併せ持つ変性EVOH系樹脂を含み、熱安定性に優れる変性EVOH系樹脂組成物の提供を目的とする。
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、側鎖に一級水酸基を有する変性EVOH系樹脂と、共役ポリエンを0.1~500ppm含む樹脂組成物において、DSCで変性EVOH系樹脂組成物を加熱して融解させた後、冷却途中に一定温度での保温を数段階含めるように段階的に冷却させつつ徐々に結晶化させてから、再加熱すると、結晶化速度が適切に遅いために、段階的冷却時のパターンに対応した融解ピークが観察され、その融解ピークから求められる融解エンタルピーと、通常のJIS K7121に従って行われるDSC測定のように、一定速度での冷却のみにより結晶化させてから再加熱する方法で求めた融解エンタルピーとの比率が特定範囲である樹脂組成物が、結晶化速度が適切に低下した変性EVOH系樹脂組成物であることを見出した。そして、得られた変性EVOH系樹脂組成物からなるフィルムは、ガラス転移温度よりもやや高温で引張試験を実施した際の応力/ひずみ曲線において特定の挙動を示すことから、延伸加工に適する可能性を示し、良好なガスバリア性、及び生分解性を示すとともに良好な熱安定性が確保できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 側鎖に一級水酸基構造単位を有する変性EVOH系樹脂と、共役ポリエンを0.01~500ppm含む樹脂組成物であって、
上記変性EVOH系樹脂のエチレン構造単位の含有量が1~16.5mol%であり、側鎖に有する一級水酸基構造単位(mol%)の含有量をDとし、
該樹脂組成物を示差走査熱量分析(DSC)で下記分析条件1に従い分析し、観察される融解ピークのうち、変性EVOH系樹脂の融点-10℃以上の高温に観察される融解ピークの融解エンタルピーをH1、
下記分析条件2に従い分析し、観察される融解ピークの融解エンタルピーをH3としたとき、下記式(1)を満たす変性EVOH系樹脂組成物。
0.55≦H1/H3≦-0.025×D+0.97・・・(1)
[分析条件1]
(1)10℃/分で変性EVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2)変性EVOH系樹脂組成物の融点-10℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3)変性EVOH系樹脂組成物の融点-20℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(4)変性EVOH系樹脂組成物の融点-30℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(5)変性EVOH系樹脂組成物の融点-40℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(6)変性EVOH系樹脂組成物の融点-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(7)変性EVOH系樹脂組成物を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(8)10℃/分で変性EVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで再加熱する。
[分析条件2]
(1’)10℃/分で変性EVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2’)変性EVOH系樹脂組成物を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3’)10℃/分で再加熱する。
なお、前記[分析条件2]は、JIS K7121において、一定の熱処理を行った後融解温度を測定する方法として示されている方法に準じたものであって、前記変性EVOH系樹脂組成物の融点とは、この方法によって求めた融解ピーク温度である。また、
[2] 分析条件1で観察されるすべてのピークの融解エンタルピーの合計をH2としたとき、下記式(2)および(3)を満たす[1]記載の変性EVOH系樹脂組成物。
H2/H3≦0.2×D+1 ・・・(2)
D≦4.8・・・(3)
[3] [1]または[2]記載の変性EVOH系樹脂組成物からなる層を有するガスバリア材。
[1] 側鎖に一級水酸基構造単位を有する変性EVOH系樹脂と、共役ポリエンを0.01~500ppm含む樹脂組成物であって、
上記変性EVOH系樹脂のエチレン構造単位の含有量が1~16.5mol%であり、側鎖に有する一級水酸基構造単位(mol%)の含有量をDとし、
該樹脂組成物を示差走査熱量分析(DSC)で下記分析条件1に従い分析し、観察される融解ピークのうち、変性EVOH系樹脂の融点-10℃以上の高温に観察される融解ピークの融解エンタルピーをH1、
下記分析条件2に従い分析し、観察される融解ピークの融解エンタルピーをH3としたとき、下記式(1)を満たす変性EVOH系樹脂組成物。
0.55≦H1/H3≦-0.025×D+0.97・・・(1)
[分析条件1]
(1)10℃/分で変性EVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2)変性EVOH系樹脂組成物の融点-10℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3)変性EVOH系樹脂組成物の融点-20℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(4)変性EVOH系樹脂組成物の融点-30℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(5)変性EVOH系樹脂組成物の融点-40℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(6)変性EVOH系樹脂組成物の融点-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(7)変性EVOH系樹脂組成物を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(8)10℃/分で変性EVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで再加熱する。
[分析条件2]
(1’)10℃/分で変性EVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2’)変性EVOH系樹脂組成物を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3’)10℃/分で再加熱する。
なお、前記[分析条件2]は、JIS K7121において、一定の熱処理を行った後融解温度を測定する方法として示されている方法に準じたものであって、前記変性EVOH系樹脂組成物の融点とは、この方法によって求めた融解ピーク温度である。また、
[2] 分析条件1で観察されるすべてのピークの融解エンタルピーの合計をH2としたとき、下記式(2)および(3)を満たす[1]記載の変性EVOH系樹脂組成物。
H2/H3≦0.2×D+1 ・・・(2)
D≦4.8・・・(3)
[3] [1]または[2]記載の変性EVOH系樹脂組成物からなる層を有するガスバリア材。
本発明の変性EVOH系樹脂組成物は、特定の分析条件で求めた特定融解ピークの融解エンタルピーと通常のJIS K7121に従った方法で求めた融解エンタルピーとの比率が、特定の範囲であることから、結晶化速度が適切に遅い樹脂組成物である。そのため、本発明の変性EVOH系樹脂組成物は、生分解性を示し、熱安定性を示しつつ、さらに、本発明の変性EVOH系樹脂組成物を成形したフィルムは、加工性、特に延伸加工性に優れつつ、良好なガスバリア性を示す。
以下、本発明の実施形態例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
なお、本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)または「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」または「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
さらに、本発明において、「xおよび/またはy(x,yは任意の構成または成分)」とは、xのみ、yのみ、xおよびy、という3通りの組合せを意味するものである。
なお、本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)または「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」または「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
さらに、本発明において、「xおよび/またはy(x,yは任意の構成または成分)」とは、xのみ、yのみ、xおよびy、という3通りの組合せを意味するものである。
本発明の実施形態の一例に係る変性EVOH系樹脂組成物(以下、「本変性EVOH系樹脂組成物」と称する)は、側鎖に一級水酸基構造単位を有する変性EVOH系樹脂と、共役ポリエンを0.1~500ppm含む樹脂組成物であって、
上記変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂のエチレン構造単位の含有量が1~16.5mol%であり、側鎖一級水酸基構造単位(mol%)の含有量をDとし、
該樹脂組成物を示差走査熱量分析(DSC)で特定の分析条件1に従い分析し、観察される融解ピークのうち、変性EVOH系樹脂の融点-10℃以上の高温に観察される融解ピークの融解エンタルピーをH1、特定の分析条件2に従い分析し、観察される融解ピークの融解エンタルピーをH3としたとき、下記式(1)を満たすものである。
0.55≦H1/H3≦-0.025×D+0.97・・・(1)
以下、本変性EVOH系樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
上記変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂のエチレン構造単位の含有量が1~16.5mol%であり、側鎖一級水酸基構造単位(mol%)の含有量をDとし、
該樹脂組成物を示差走査熱量分析(DSC)で特定の分析条件1に従い分析し、観察される融解ピークのうち、変性EVOH系樹脂の融点-10℃以上の高温に観察される融解ピークの融解エンタルピーをH1、特定の分析条件2に従い分析し、観察される融解ピークの融解エンタルピーをH3としたとき、下記式(1)を満たすものである。
0.55≦H1/H3≦-0.025×D+0.97・・・(1)
以下、本変性EVOH系樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
〔変性EVOH系樹脂〕
EVOH系樹脂は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体であるエチレン-ビニルエステル系共重合体をケン化させることにより得られる熱可塑性樹脂である。
EVOH系樹脂は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体であるエチレン-ビニルエステル系共重合体をケン化させることにより得られる熱可塑性樹脂である。
EVOH系樹脂は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体であるエチレン-ビニルエステル系共重合体をケン化させることにより得られる熱可塑性樹脂であり、エチレン構造単位と、ビニルアルコール構造単位を主とし、通常、ケン化されずに残存する若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
また、本変性EVOH系樹脂組成物に含まれる変性EVOH系樹脂とは、側鎖に特定量の一級水酸基を有するものであり、具体的には下記一般式(1)の構造単位を有するEVOH系樹脂である。
R1~R3としては、水素原子または有機基であれば、特に限定されない。上記有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基等の炭化水素基(これらの炭化水素基は水酸基、フッ素、塩素、および臭素等を置換基として有してもよい)等が挙げられる。
ポリマー主鎖と一級水酸基構造とを結合する結合鎖(X)としては、特に限定されないが、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素は水酸基、フッ素、塩素、および臭素等を置換基として有してもよい)、オキシアルキレン、オキシアルケニレン、オキシアルキニレン、オキシフェニレン、オキシナフチレン等のエーテル結合でポリマー主鎖と結合する炭化水素(これらの炭化水素は水酸基、フッ素、塩素、および臭素等を置換基として有してもよい)のほか、-CO-、-CO(CH2)mCO-、-CO(CH2)mCOR4-、-NR5-、-CONR5-等が挙げられる(R4,R5は独立して任意の置換基であり、水素原子またはアルキル基が好ましく、mは自然数を示す)。
ポリマー主鎖と一級水酸基構造とを結合する結合鎖(X)としては、特に限定されないが、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素は水酸基、フッ素、塩素、および臭素等を置換基として有してもよい)、オキシアルキレン、オキシアルケニレン、オキシアルキニレン、オキシフェニレン、オキシナフチレン等のエーテル結合でポリマー主鎖と結合する炭化水素(これらの炭化水素は水酸基、フッ素、塩素、および臭素等を置換基として有してもよい)のほか、-CO-、-CO(CH2)mCO-、-CO(CH2)mCOR4-、-NR5-、-CONR5-等が挙げられる(R4,R5は独立して任意の置換基であり、水素原子またはアルキル基が好ましく、mは自然数を示す)。
前記変性EVOH系樹脂を得るためには、例えば、
(I)側鎖に一級水酸基を有するモノマーおよび/または側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーをエチレン、およびビニルエステル系モノマーと共重合させた後に、ケン化する方法、
(II)先にエチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体をケン化してEVOH系樹脂を得たのち、EVOH系樹脂を後変性して側鎖に一級水酸基を生じさせる方法、
等が挙げられる。なかでも上記(I)の方法が生産性の点から好ましい。
以下、変性EVOH系樹脂の製造方法について説明する。
(I)側鎖に一級水酸基を有するモノマーおよび/または側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーをエチレン、およびビニルエステル系モノマーと共重合させた後に、ケン化する方法、
(II)先にエチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体をケン化してEVOH系樹脂を得たのち、EVOH系樹脂を後変性して側鎖に一級水酸基を生じさせる方法、
等が挙げられる。なかでも上記(I)の方法が生産性の点から好ましい。
以下、変性EVOH系樹脂の製造方法について説明する。
前記(I)の方法で変性EVOH系樹脂を製造する場合、まず、エチレン、ビニルエステル系モノマーおよび、側鎖に一級水酸基を有するモノマーおよび/または側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーを共重合させる。
前記ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、経済的な観点から、酢酸ビニルが好ましい。
前記側鎖に一級水酸基を有するモノマーとしては、例えば、アリルアルコール、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、6-ヘプテン-1-オール、メタリルアルコール等のモノヒドロキシアルキル基含有モノマー; 2-メチレン-1,3-プロパンジオール、3,4-ジオール-1-ブテン、4,5-ジオール-1-ペンテン、4,5-ジオール-3-メチル-1-ペンテン、5,6-ジオール-1-ヘキセン、グリセリンモノアリルエーテル等のジヒドロキシアルキル基含有モノマーが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
前記側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマー(以下、「水酸基をエステル等で保護したモノマー」と称することがある)としては、例えば、上記の側鎖一級水酸基を有するモノマーの酢酸エステル等が挙げられる。具体的には、例えば、酢酸アリル、酢酸3-ブテニル、酢酸4-ペンテニル、酢酸5-ヘキセニル、酢酸6-ヘプテニル、酢酸メタリル等のモノアセトキシアルキル基含有モノマー;2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテート、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、4,5-ジアセトキシ-1-ペンテン、4,5-ジアセトキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-ジアセトキシ-1-ヘキセン、3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオールジアセテート等のジアセトキシアルキル基含有モノマー等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
前記側鎖に一級水酸基を有するモノマー、水酸基をエステル等で保護したモノマーのなかでも、生産性の点から、水酸基をエステル等で保護したモノマーが好ましく、ジアセトキシアルキル基含有モノマーがより好ましく、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテートがより好ましい。
また、前記(I)の方法においては、共重合成分として本発明の効果を阻害しない範囲(例えば、共重合成分の10質量%以下)で、共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合させてもよい。
かかるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1~18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩;アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩類あるいはその4級塩等のアクリルアミド類;メタクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩等のメタクリルアミド類;N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;炭素数1~18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類;ビニルシラン類等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
かかるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1~18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩;アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩類あるいはその4級塩等のアクリルアミド類;メタクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩等のメタクリルアミド類;N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;炭素数1~18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類;ビニルシラン類等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
これらの共重合反応においては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン重合等、公知の方法を採用することができる。なかでも、共重合制御の容易な溶液重合が好適に用いられる。
かかる共重合を溶液重合で実施するとき、用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等の炭素数1~5の低級アルコール、アセトン、2-ブタノン等のケトン類が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、重合反応の制御容易さからメタノールが好適に用いられる。また、低重合度の共重合体を合成する場合には2-プロパノールが好適に用いられる。
上記溶媒の使用量は、目的とする変性EVOH系樹脂の重合度、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択することができる。溶媒がメタノールまたは2-プロパノールのときは、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01~10(質量比)が好ましく、0.05~7(質量比)がより好ましい。
溶液重合における共重合成分の仕込み方法としては、例えば、初期一括仕込み、分割仕込み、モノマーの反応性比を考慮したHanna法等の連続仕込み等の任意の方法を採用することができる。
上記共重合には、重合開始剤が用いられる。かかる重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、等の過酸化物系開始剤が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
上記重合開始剤の使用量は、重合触媒の種類により異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、t-ブチルパーオキシネオデカノエートを用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対し、通常、10~2000ppmであり、好ましくは50~1000ppmである。
共重合の重合温度は、使用する溶媒やエチレン圧力に応じて、40℃から沸点の範囲から選択することが好ましい。
また、共重合時に、本発明の効果を阻害しない範囲で、連鎖移動剤の存在下で共重合させてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド等のアルデヒド類;2-ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン類等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、アルデヒド類が好適に用いられる。共重合時の連鎖移動剤の添加量は、連鎖移動剤の連鎖移動定数および目的とする変性EVOH系樹脂の重合度に応じて決定されるが、一般に、ビニルエステル系モノマー100質量部に対して0.1~10質量部が好ましい。
共重合成分を共重合させた後は、反応を確実に停止させるために、重合禁止剤としてソルビン酸等の共役ポリエンを添加することも好ましい。
この共役ポリエンは、後述する変性EVOH系樹脂を洗浄するとき、洗浄溶媒に溶解するために、洗浄と共に含有量が減少するのであるが、洗浄方法を制御することにより、変性EVOH系樹脂中の含有量を制御することができる。このような共役ポリエンの含有量が制御された変性EVOH系樹脂を用いることにより、変性EVOH樹脂組成物の熱安定性を制御することができる。
この共役ポリエンは、後述する変性EVOH系樹脂を洗浄するとき、洗浄溶媒に溶解するために、洗浄と共に含有量が減少するのであるが、洗浄方法を制御することにより、変性EVOH系樹脂中の含有量を制御することができる。このような共役ポリエンの含有量が制御された変性EVOH系樹脂を用いることにより、変性EVOH樹脂組成物の熱安定性を制御することができる。
こうして得られたエチレン-ビニルエステル系共重合体をケン化することによりEVOH系樹脂を得ることができる。また、ケン化を行う前に、加熱を行い、溶液中に残存する未反応のビニルエステル系モノマーの含有量を減少させることが、得られる変性EVOH系樹脂組成物の着色抑制の点から好ましい。
上記ケン化方法は公知の方法を採用でき、例えば、上記で得られたエチレン-ビニルエステル系共重合体をアルコールまたは含水アルコールに溶解した状態で、ケン化触媒を用いて行われる。
上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1~5の低級アルコールが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでもメタノールが好ましい。
アルコール中のエチレン-ビニルエステル系共重合体の濃度は、粘度により適宜選択され、通常、5~60質量%である。
上記ケン化触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラート等のアルカリ触媒;硫酸、塩酸、硝酸、メタスルホン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
ケン化を行う温度は限定されないが、20~140℃の範囲が好適である。ケン化の進行に従って粒子状物が生成し、反応が進行したことが分かる。このとき、ゲル状の生成物が析出してくる場合には、生成物を粉砕すればよい。生成した粒状物を洗浄、乾燥させて、EVOH系樹脂を得ることができる。
また、EVOH系樹脂のケン化度を高めるために、二次ケン化として、一旦生成した粒状物から、洗浄等により副生成物(例えば、ビニルエステル系モノマーとして酢酸ビニル、ケン化時の溶媒としてメタノールを用いた時には、酢酸メチル)を除いた後に、再度アルコール等に分散させ、アルカリ触媒を追加して、さらに反応させることも好ましい。
また、EVOH系樹脂のケン化度を高めるために、二次ケン化として、一旦生成した粒状物から、洗浄等により副生成物(例えば、ビニルエステル系モノマーとして酢酸ビニル、ケン化時の溶媒としてメタノールを用いた時には、酢酸メチル)を除いた後に、再度アルコール等に分散させ、アルカリ触媒を追加して、さらに反応させることも好ましい。
上記ケン化によって、エチレン-ビニルエステル系共重合体中のビニルエステル単位がビニルアルコール単位に変換されEVOH系樹脂が得られる。
また、前記(I)の方法で、水酸基をエステル等で保護したモノマーを共重合させた場合、ケン化によって保護したモノマーのエステル等も同時に脱保護されて、側鎖一級水酸基構造に変換され、変性EVOH系樹脂となる。
例えば、上記(I)の方法において共重合成分として、例えば、3,4-ジアセトキシ-1-ブテンを用いた場合、ケン化等により脱保護して得られる変性EVOH系樹脂は、下記一般式(2)で表される一級水酸基を側鎖に有する。
また、上記(I)の方法において共重合成分として、例えば、2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテートを用いた場合、得られる変性EVOH系樹脂は、下記一般式(3)で表される一級水酸基を側鎖に有する。
なお、変性EVOH系樹脂は、側鎖に一級水酸基を有すればよく、完全に脱保護されず、少量のエステル基が残存してもよい。
前記(II)の方法で変性EVOH系樹脂を製造する場合は、例えば、エチレンと前記(I)の方法で例示したビニルエステル系モノマー、必要に応じて前記(I)の方法で例示した共重合可能なエチレン性不飽和単量体を、前記(I)の方法に準じて共重合、ケン化させ、EVOH系樹脂を製造し、得られたEVOH系樹脂と一価のエポキシ基含有化合物とを反応させればよい。上記反応方法は特に限定されないが、例えば、溶液で反応させる方法、押出機内で反応させる方法等が好適な方法として挙げられる。また、押出機内で反応させる方法を採る時、周期表第3~12族に属する金属のイオンを含む触媒を使用することも好ましい。
上記一価のエポキシ基含有化合物の好ましい例としては、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、グリシドール等を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。なかでも、プロピレンオキサイドが好ましい。
上記一価のエポキシ基含有化合物として、例えば、プロピレンオキサイドを用いた場合、得られる変性EVOH系樹脂は、下記一般式(4)で表される一級水酸基を側鎖に有する。
このような(I)または(II)の方法により、下記一般式(1)の構造単位を有する変性EVOH系樹脂を得ることができる。なお、変性EVOH系樹脂は、側鎖に一級水酸基を有していればよく、側鎖に他の水酸基構造(二級水酸基や三級水酸基)を有していてもよい。
R1~R3としては、水素原子または有機基であれば、特に限定されない。上記有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基等の炭化水素基(これらの炭化水素基は水酸基、フッ素、塩素、および臭素等を置換基として有してもよい)等が挙げられる。
ポリマー主鎖と一級水酸基構造とを結合する結合鎖(X)としては、特に限定されないが、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素は水酸基、フッ素、塩素、および臭素等を置換基として有してもよい)、オキシアルキレン、オキシアルケニレン、オキシアルキニレン、オキシフェニレン、オキシナフチレン等のエーテル結合でポリマー主鎖と結合する炭化水素(これらの炭化水素は水酸基、フッ素、塩素、および臭素等を置換基として有してもよい)のほか、-CO-、-CO(CH2)mCO-、-CO(CH2)mCOR4-、-NR5-、-CONR5-等が挙げられる(R4,R5は独立して任意の置換基であり、水素原子またはアルキル基が好ましく、mは自然数を示す)。
ポリマー主鎖と一級水酸基構造とを結合する結合鎖(X)としては、特に限定されないが、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素は水酸基、フッ素、塩素、および臭素等を置換基として有してもよい)、オキシアルキレン、オキシアルケニレン、オキシアルキニレン、オキシフェニレン、オキシナフチレン等のエーテル結合でポリマー主鎖と結合する炭化水素(これらの炭化水素は水酸基、フッ素、塩素、および臭素等を置換基として有してもよい)のほか、-CO-、-CO(CH2)mCO-、-CO(CH2)mCOR4-、-NR5-、-CONR5-等が挙げられる(R4,R5は独立して任意の置換基であり、水素原子またはアルキル基が好ましく、mは自然数を示す)。
変性EVOH系樹脂のエチレン構造単位の含有量は1~16.5mol%であり、好ましくは3~15mol%であり、さらに好ましくは5~11mol%であり、特に好ましくは6~10mol%である。
エチレン構造単位の含有量が少なすぎると、変性EVOH系樹脂の融点が高くなり、溶融成形が難しくなる。また、エチレン構造単位の含有量が多すぎると、ガスバリア性が低下するし、生分解性が低下する傾向がある。
上記変性EVOH系樹脂のエチレン構造単位の含有量は、共重合時のエチレン圧力を調整することで制御することができる。
エチレン構造単位の含有量が少なすぎると、変性EVOH系樹脂の融点が高くなり、溶融成形が難しくなる。また、エチレン構造単位の含有量が多すぎると、ガスバリア性が低下するし、生分解性が低下する傾向がある。
上記変性EVOH系樹脂のエチレン構造単位の含有量は、共重合時のエチレン圧力を調整することで制御することができる。
前記変性EVOH系樹脂が側鎖に有する一級水酸基構造単位の含有量は、通常2.5mol%以上、好ましくは2.5~10mol%、特に好ましくは3~6mol%、さらに好ましくは3~4.5mol%である。
一級水酸基構造単位の含有量が、前記範囲内であることにより、結晶が小さくなり、分子鎖の流動性が容易になるため結晶化速度が遅くなる傾向がある。
一級水酸基構造の含有量が少なすぎると、後述する式(1)でのH1/H3が大きくなる傾向がある。すなわち、結晶化速度が速くなる傾向があり、その結果、結晶が大きくなり、後述するような延伸加工に適さない傾向がある。
一級水酸基構造の含有量が多すぎると、結晶化速度が遅くなりすぎ、延伸加工時に適当な形状を付与できなくなる傾向があり、また、エチレン構造単位と側鎖一級水酸基構造単位のバランスが悪くなり、ガスバリア性に劣ったり、ビニルアルコール構造単位が少なくなって生分解性に劣る傾向がある。さらに、一級水酸基構造の含有量を多くし過ぎることは、製造時に側鎖に一級水酸基を有するモノマーおよび/または側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーを多く使用する必要があり、製造コストが高くなる傾向がある。
一級水酸基構造単位の含有量が、前記範囲内であることにより、結晶が小さくなり、分子鎖の流動性が容易になるため結晶化速度が遅くなる傾向がある。
一級水酸基構造の含有量が少なすぎると、後述する式(1)でのH1/H3が大きくなる傾向がある。すなわち、結晶化速度が速くなる傾向があり、その結果、結晶が大きくなり、後述するような延伸加工に適さない傾向がある。
一級水酸基構造の含有量が多すぎると、結晶化速度が遅くなりすぎ、延伸加工時に適当な形状を付与できなくなる傾向があり、また、エチレン構造単位と側鎖一級水酸基構造単位のバランスが悪くなり、ガスバリア性に劣ったり、ビニルアルコール構造単位が少なくなって生分解性に劣る傾向がある。さらに、一級水酸基構造の含有量を多くし過ぎることは、製造時に側鎖に一級水酸基を有するモノマーおよび/または側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーを多く使用する必要があり、製造コストが高くなる傾向がある。
前記一級水酸基を有する構造単位の含有量は、前記(I)の方法の場合は、共重合モノマーとして用いる側鎖に一級水酸基を有するモノマーまたは上記水酸基をエステル等で保護したモノマーの仕込み量によって制御することができる。また、前記(II)の方法の場合は、変性に用いる一価のエポキシ基含有化合物の使用量で制御することができる。
また、前記変性EVOH系樹脂のメルトフローレート(MFR)〔210℃、荷重2160g〕は、通常0.1~100g/10分であり、好ましくは1~50g/10分、特に好ましくは3~35g/10分である。かかるMFRが大きすぎる場合には、溶融成形によるバリア材製造時に本変性EVOH系樹脂組成物からなる層の厚み制御が難しくなる傾向があり、小さすぎる場合には溶融成形時に成形機に高い負荷がかかる傾向がある。
かかるMFRは、変性EVOH系樹脂の重合度の指標となるものであり、共重合成分を共重合させる際の重合触媒の量や、溶媒の量によって調整することができる。
かかるMFRは、変性EVOH系樹脂の重合度の指標となるものであり、共重合成分を共重合させる際の重合触媒の量や、溶媒の量によって調整することができる。
前記変性EVOH系樹脂のケン化度は、通常90mol%以上であり、好ましくは95mol%以上、特に好ましくは99mol%以上である。ケン化度が低すぎると、ガスバリア性が低下する傾向にある。
前記変性EVOH系樹脂の含有量は、本変性EVOH系樹脂組成物に対して、通常80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
〔共役ポリエン〕
前記共役ポリエンとは、炭素-炭素二重結合と炭素-炭素単結合が交互に繋がってなる構造であって、炭素-炭素二重結合の数が2個以上である、いわゆる共役二重結合を有する化合物である。
前記共役ポリエンは、2個の炭素-炭素二重結合と1個の炭素-炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役ジエン、3個の炭素-炭素二重結合と2個の炭素-炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役トリエン、あるいはそれ以上の数の炭素-炭素二重結合と炭素-炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役ポリエンであってもよい。
ただし、共役する炭素-炭素二重結合の数が8個以上になると共役ポリエン自身の色により成形物が着色する傾向があるため、共役する炭素-炭素二重結合の数は7個以下であることが好ましい。また、2個以上の炭素-炭素二重結合からなる上記共役二重結合が互いに共役せずに1分子中に複数組あってもよい。例えば、桐油のように共役トリエンが同一分子内に3個ある化合物も共役ポリエンに含まれる。
前記共役ポリエンとは、炭素-炭素二重結合と炭素-炭素単結合が交互に繋がってなる構造であって、炭素-炭素二重結合の数が2個以上である、いわゆる共役二重結合を有する化合物である。
前記共役ポリエンは、2個の炭素-炭素二重結合と1個の炭素-炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役ジエン、3個の炭素-炭素二重結合と2個の炭素-炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役トリエン、あるいはそれ以上の数の炭素-炭素二重結合と炭素-炭素単結合が交互に繋がってなる構造である共役ポリエンであってもよい。
ただし、共役する炭素-炭素二重結合の数が8個以上になると共役ポリエン自身の色により成形物が着色する傾向があるため、共役する炭素-炭素二重結合の数は7個以下であることが好ましい。また、2個以上の炭素-炭素二重結合からなる上記共役二重結合が互いに共役せずに1分子中に複数組あってもよい。例えば、桐油のように共役トリエンが同一分子内に3個ある化合物も共役ポリエンに含まれる。
具体的な共役ポリエンとしては、例えば、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3- ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-t-ブチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3-エチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、1-メトキシ-1,3-ブタジエン、2-メトキシ-1,3-ブタジエン、1-エトキシ-1,3-ブタジエン、2-エトキシ-1,3-ブタジエン、2-ニトロ-1,3-ブタジエン、クロロプレン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、1-ブロモ-1,3-ブタジエン、2-ブロモ-1,3-ブタジエン、フルベン、トロポン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、センブレン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸等の炭素-炭素二重結合2個の共役構造よりなる共役ジエン;1,3,5-ヘキサトリエン、2,4,6-オクタトリエン-1-カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール等の炭素-炭素二重結合3個の共役構造からなる共役トリエン;シクロオクタテトラエン、2,4,6,8-デカテトラエン-1-カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の炭素-炭素二重結合4個以上の共役構造からなる共役ポリエン等があげられる。なお、1,3-ペンタジエン、ミルセン、ファルネセンのように、複数の立体異性体を有するものについては、そのいずれを用いてもよい。かかる共役ポリエンは単独でもしくは2種類以上を併せて用いてもよい。
これらのうち、共役ポリエンとしては、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、およびソルビン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つが好ましく、ソルビン酸が特に好ましい。これらの共役ポリエンは、EVOH系樹脂の製造において、共重合反応停止時に添加する重合禁止剤として使用することができる。これらの共役ポリエンを重合禁止剤として使用した場合、重合を確実に停止させることができ、取り扱い性に優れる傾向がある。また、これらの共役ポリエンは、変性EVOH系樹脂組成物に後から所定量添加する場合、取り扱い性に優れる傾向がある。
共役ポリエンの含有量は、変性EVOH系樹脂組成物に対して0.1~500ppmであり、0.2~400ppmであることがより好ましく、0.2~50ppmであることが特に好ましく、0.2~20ppmであることが殊に好ましい。共役ポリエンの含有量が少なすぎると、変性EVOH系樹脂組成物の熱安定性が悪くなる傾向があり、例えば、後述する溶融成形によってガスバリア材を得るとき、長時間運転時にゲルやブツの発生しやすくなる傾向がある。また、共役ポリエンの含有量が多過ぎると、ガスバリア性や生分解性が低下する傾向がある。
共役ポリエン含有量は、例えば、変性EVOH系樹脂の製造における共重合停止時に添加する重合禁止剤の量、EVOH系樹脂の洗浄方法によって制御できるほか、樹脂組成物にあとから所定量を添加することによっても制御できる。
[他の成分]
また、本変性EVOH系樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば、本変性EVOH系樹脂組成物の10質量%以下)で、変性EVOH系樹脂、共役ポリエン以外に、他の成分を配合することができる。上記他の成分としては、例えば、変性EVOH系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂、可塑剤、滑剤、安定材、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、金属塩、充填剤、各種繊維等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
また、本変性EVOH系樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば、本変性EVOH系樹脂組成物の10質量%以下)で、変性EVOH系樹脂、共役ポリエン以外に、他の成分を配合することができる。上記他の成分としては、例えば、変性EVOH系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂、可塑剤、滑剤、安定材、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、金属塩、充填剤、各種繊維等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
[本変性EVOH樹脂組成物の製造方法]
本変性EVOH樹脂組成物は、前記変性EVOH系樹脂、共役ポリエン、必要に応じて他の成分を混合することにより製造されるが、製造方法としては、例えば、ドライブレンド法、溶融混合法、溶液混合法、含浸法等の公知の方法が挙げられ、これらを任意に組み合わせることも可能である。
本変性EVOH樹脂組成物は、前記変性EVOH系樹脂、共役ポリエン、必要に応じて他の成分を混合することにより製造されるが、製造方法としては、例えば、ドライブレンド法、溶融混合法、溶液混合法、含浸法等の公知の方法が挙げられ、これらを任意に組み合わせることも可能である。
<本変性EVOH系樹脂組成物>
このように得られる本変性EVOH系樹脂組成物は、側鎖一級水酸基構造単位(mol%)の含有量をD、示差走査熱量分析(DSC)で下記分析条件1に従い分析し、観察される融解ピークのうち、変性EVOH系樹脂の融点-10℃以上の高温に観察されるピークの融解エンタルピーをH1、下記分析条件2に従い分析し、観察される融解ピークの融解エンタルピーをH3としたとき、下記式(1)を満たすものである。
0.55≦H1/H3≦-0.025×D+0.97 ・・・(1)
[分析条件1]
(1)10℃/分で変性EVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2)変性EVOH系樹脂組成物の融点-10℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3)変性EVOH系樹脂組成物の融点-20℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(4)変性EVOH系樹脂組成物の融点-30℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(5)変性EVOH系樹脂組成物の融点-40℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(6)変性EVOH系樹脂組成物の融点-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(7)変性EVOH系樹脂組成物を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(8)10℃/分で変性EVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで再加熱する。
[分析条件2]
(1’)10℃/分で変性EVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2’)変性EVOH系樹脂組成物を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3’)10℃/分で再加熱する。
なお、前記[分析条件2]は、JIS K7121において、一定の熱処理を行った後融解温度を測定する方法として示されている方法に準じたものであって、前記本変性EVOH系樹脂組成物の融点とは、この方法によって求めた融解ピーク温度である。
また、前記分析条件1で融点-10℃以上の高温に観察される融解ピークが複数ある場合は、複数ある融解ピークの融解エンタルピーの合計をH1とし、前記分析条件2で融解ピークが複数観察される場合は、最も高温に観察される融解ピークの融解エンタルピーを融解エンタルピーH3とする。
このように得られる本変性EVOH系樹脂組成物は、側鎖一級水酸基構造単位(mol%)の含有量をD、示差走査熱量分析(DSC)で下記分析条件1に従い分析し、観察される融解ピークのうち、変性EVOH系樹脂の融点-10℃以上の高温に観察されるピークの融解エンタルピーをH1、下記分析条件2に従い分析し、観察される融解ピークの融解エンタルピーをH3としたとき、下記式(1)を満たすものである。
0.55≦H1/H3≦-0.025×D+0.97 ・・・(1)
[分析条件1]
(1)10℃/分で変性EVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2)変性EVOH系樹脂組成物の融点-10℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3)変性EVOH系樹脂組成物の融点-20℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(4)変性EVOH系樹脂組成物の融点-30℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(5)変性EVOH系樹脂組成物の融点-40℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(6)変性EVOH系樹脂組成物の融点-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(7)変性EVOH系樹脂組成物を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(8)10℃/分で変性EVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで再加熱する。
[分析条件2]
(1’)10℃/分で変性EVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2’)変性EVOH系樹脂組成物を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3’)10℃/分で再加熱する。
なお、前記[分析条件2]は、JIS K7121において、一定の熱処理を行った後融解温度を測定する方法として示されている方法に準じたものであって、前記本変性EVOH系樹脂組成物の融点とは、この方法によって求めた融解ピーク温度である。
また、前記分析条件1で融点-10℃以上の高温に観察される融解ピークが複数ある場合は、複数ある融解ピークの融解エンタルピーの合計をH1とし、前記分析条件2で融解ピークが複数観察される場合は、最も高温に観察される融解ピークの融解エンタルピーを融解エンタルピーH3とする。
一般的に、結晶性を示す樹脂を溶融状態から冷却させるとき、融点よりやや低い過冷却温度で結晶核が生成し、ついで、結晶が成長することが知られている。
通常、JIS K7121に記載の、一定の熱処理を行った後融解温度を測定する方法に準じて、示差走査熱量分析を行う場合は、本発明の分析条件2のように、樹脂を溶融状態から転移ピークより十分低温の状態まで5℃/分または10℃/分の一定速度で連続して冷却させるため、結晶核からその冷却速度で結晶化できる成分が結晶化する。そして、これを再加熱すると、結晶化した部分に対応する結晶融解ピークが観察され、この結晶融解ピークから結晶融解エンタルピーH3を求めることができる。しかし、樹脂の結晶化速度に関する情報を結晶融解エンタルピーH3だけで評価することはできない。
前記分析条件2の方法に対し、分析条件1の方法では、過冷却温度X1℃まで冷却させ、その温度をしばらくの時間保つと、結晶化速度の速い樹脂はその温度と時間で十分に結晶化が進むが、結晶化速度が遅い樹脂は、一部の結晶化に留まる。その後、冷却を再開して、先の過冷却温度X1℃よりも少し低い過冷却温度Y1℃まで冷却させ、その温度でまたしばらくの時間保つと、結晶化速度の速い樹脂では、過冷却温度X1℃でほとんど結晶化が完了しているために、過冷却温度Y1℃で新たに結晶化する成分は少ない。
これに対し、結晶化速度の遅い樹脂は、過冷却温度Y1℃において、過冷却温度X1℃では結晶化しなかった部分について結晶化が進む。
このように徐々に冷却し、その冷却温度をしばらくの時間保つという操作を繰り返すと、上述のように、結晶化速度の速い樹脂では最初の過冷却温度で急速に結晶化が進み、その後の過冷却温度では結晶化する成分は減少するのに対し、結晶化速度の遅い樹脂では、各過冷却温度で少しずつ結晶化が進むことになる。
そのため、上記のような操作を繰り返して融点より低い温度に十分冷却した後、再度加熱すると、冷却時の結晶化の様子を反映して、結晶の融解が起こる。
この現象をDSCで観察すると、過冷却時の結晶化の様子を反映した形で結晶融解ピークが現れ、多くの場合、複数本の融解ピークとして観察される。
このとき、冷却速度はJIS K7121と同様、10℃/分が好ましい。また、この冷却速度の時、前記過冷却温度X1℃が、樹脂の融点よりもあまりに低い温度では、融点から過冷却温度X1℃まで降温する間に結晶化の速度に関係なく結晶化が進むため結晶化速度の評価には適さない。また、融点に近すぎる温度では、やはり結晶化速度による差が見られなくなるため、過冷却温度X1℃は樹脂の融点-10℃とすることが好ましい。
前記過冷却温度X1℃と過冷却温度Y1℃があまりに近接している場合、過冷却温度X1℃で結晶化した融解ピークと、過冷却温度Y1℃で結晶化した融解ピークを区別することはできないが、過冷却温度X1℃と、過冷却温度Y1℃とが10℃離れていれば、別の融解ピークとして観察することが可能である。さらに、過冷却温度X1℃、過冷却温度Y1℃等での保持時間については、短すぎる場合、樹脂の結晶化を進めるには不十分であり、長すぎる場合、測定に時間がかかりすぎるため、15分が適当である。
前記過冷却温度X1℃を樹脂の融点-10℃とし、過冷却温度X1℃と、過冷却温度Y1℃とを10℃離すと、過冷却温度Y1℃は「樹脂の融点-20℃」となる。また、前記過冷却温度Y1℃での冷却以降も、前の過冷却温度よりも10℃低い温度で冷却、その一定温度で15分間保つことをn段階繰り返すことが、結晶化速度の評価には好ましい。繰り返しの段階数nは、あまりに少なくても結晶化速度を区別するには少なすぎるし、多くすると結晶化可能な部分をすべて結晶化させた段階の後にも過冷却段階を設けることになって、測定に時間がかかる傾向があるため、5段階が好ましい。
こうして5段階の冷却を経て、樹脂の融点-50℃まで段階的に冷却したのちに、-50℃まで冷却すれば、樹脂の融点より低い温度に十分冷却したことになる。
通常、JIS K7121に記載の、一定の熱処理を行った後融解温度を測定する方法に準じて、示差走査熱量分析を行う場合は、本発明の分析条件2のように、樹脂を溶融状態から転移ピークより十分低温の状態まで5℃/分または10℃/分の一定速度で連続して冷却させるため、結晶核からその冷却速度で結晶化できる成分が結晶化する。そして、これを再加熱すると、結晶化した部分に対応する結晶融解ピークが観察され、この結晶融解ピークから結晶融解エンタルピーH3を求めることができる。しかし、樹脂の結晶化速度に関する情報を結晶融解エンタルピーH3だけで評価することはできない。
前記分析条件2の方法に対し、分析条件1の方法では、過冷却温度X1℃まで冷却させ、その温度をしばらくの時間保つと、結晶化速度の速い樹脂はその温度と時間で十分に結晶化が進むが、結晶化速度が遅い樹脂は、一部の結晶化に留まる。その後、冷却を再開して、先の過冷却温度X1℃よりも少し低い過冷却温度Y1℃まで冷却させ、その温度でまたしばらくの時間保つと、結晶化速度の速い樹脂では、過冷却温度X1℃でほとんど結晶化が完了しているために、過冷却温度Y1℃で新たに結晶化する成分は少ない。
これに対し、結晶化速度の遅い樹脂は、過冷却温度Y1℃において、過冷却温度X1℃では結晶化しなかった部分について結晶化が進む。
このように徐々に冷却し、その冷却温度をしばらくの時間保つという操作を繰り返すと、上述のように、結晶化速度の速い樹脂では最初の過冷却温度で急速に結晶化が進み、その後の過冷却温度では結晶化する成分は減少するのに対し、結晶化速度の遅い樹脂では、各過冷却温度で少しずつ結晶化が進むことになる。
そのため、上記のような操作を繰り返して融点より低い温度に十分冷却した後、再度加熱すると、冷却時の結晶化の様子を反映して、結晶の融解が起こる。
この現象をDSCで観察すると、過冷却時の結晶化の様子を反映した形で結晶融解ピークが現れ、多くの場合、複数本の融解ピークとして観察される。
このとき、冷却速度はJIS K7121と同様、10℃/分が好ましい。また、この冷却速度の時、前記過冷却温度X1℃が、樹脂の融点よりもあまりに低い温度では、融点から過冷却温度X1℃まで降温する間に結晶化の速度に関係なく結晶化が進むため結晶化速度の評価には適さない。また、融点に近すぎる温度では、やはり結晶化速度による差が見られなくなるため、過冷却温度X1℃は樹脂の融点-10℃とすることが好ましい。
前記過冷却温度X1℃と過冷却温度Y1℃があまりに近接している場合、過冷却温度X1℃で結晶化した融解ピークと、過冷却温度Y1℃で結晶化した融解ピークを区別することはできないが、過冷却温度X1℃と、過冷却温度Y1℃とが10℃離れていれば、別の融解ピークとして観察することが可能である。さらに、過冷却温度X1℃、過冷却温度Y1℃等での保持時間については、短すぎる場合、樹脂の結晶化を進めるには不十分であり、長すぎる場合、測定に時間がかかりすぎるため、15分が適当である。
前記過冷却温度X1℃を樹脂の融点-10℃とし、過冷却温度X1℃と、過冷却温度Y1℃とを10℃離すと、過冷却温度Y1℃は「樹脂の融点-20℃」となる。また、前記過冷却温度Y1℃での冷却以降も、前の過冷却温度よりも10℃低い温度で冷却、その一定温度で15分間保つことをn段階繰り返すことが、結晶化速度の評価には好ましい。繰り返しの段階数nは、あまりに少なくても結晶化速度を区別するには少なすぎるし、多くすると結晶化可能な部分をすべて結晶化させた段階の後にも過冷却段階を設けることになって、測定に時間がかかる傾向があるため、5段階が好ましい。
こうして5段階の冷却を経て、樹脂の融点-50℃まで段階的に冷却したのちに、-50℃まで冷却すれば、樹脂の融点より低い温度に十分冷却したことになる。
この後、10℃/分で再加熱することによって結晶の融解ピークを観察するのであるが、ピークの判定は実施例に記載の方法により行うことができる。
結晶化速度の速い樹脂は、過冷却温度X1℃より高温で融点に近い温度(X2℃)において、上記過冷却温度X1℃で結晶化した部分が融解することに対応する大きな融解ピークが現れ、過冷却温度X1℃より低温で、過冷却温度Y1℃に近い温度(Y2℃)では、上記過冷却温度Y1℃で結晶化した部分が小さな融解ピークとして観察される。そして、さらに低い過冷却温度では融解ピークがさらに小さくなるか、あるいは観察されなくなる。
これに対し、本発明で用いる変性EVOH系樹脂のように、結晶化速度の適切に遅い樹脂は、過冷却温度X1℃より高温で融点に近い温度(X2℃)において、上記過冷却温度X1℃で結晶化した部分が融解することに対応する融解ピークが現れるが、1段階目の過冷却温度X1℃で結晶化される成分は、樹脂の一部分に過ぎず、過冷却温度Y1℃や、さらに低温での過冷却温度で結晶化する成分が多く含まれる。そのため、結晶化速度の適切に遅い樹脂の場合、分析条件1のように融点-50℃まで10℃ずつ5段階で冷却しても、5段階目の過冷却温度で結晶化できる成分が存在する。したがって、結晶化速度が適切に遅い樹脂において、再加熱時に、上記過冷却温度X1℃で結晶化した成分は、過冷却温度X1℃より高温で融点に近い温度(X2℃)において融解ピークとして観察されるほか、過冷却温度Y1℃で結晶化した成分は、過冷却温度X1℃より低温で、過冷却温度Y1℃に近い温度(Y2℃)に、融解ピークとして観察され、さらに低温の各過冷却段階で結晶化した成分は、それに対応した温度で融解ピークとして観察される。
また、結晶化速度が適切に遅い樹脂においては、融点から過冷却温度X1℃までの間にわずかに結晶化してしまう成分が存在する場合や、過冷却温度X1℃になってすぐに結晶化した成分と、過冷却温度X1℃で保温中にゆっくり結晶化した成分がある場合等の結晶化が2段階に分かれる時がある。このような結晶化が2段階に分かれる時は、各融解ピークが別のピークとして観察され、過冷却温度X1℃より高温での融解ピークが2本観察されることがある。そのため、例えば、上述の「融点よりやや低い過冷却温度X1℃」を「融点-10℃」とし、以降、過冷却温度Y1℃を「融点-20℃」等、10℃ずつ冷却、その一定温度でしばらくの時間保つという過冷却段階をn段階繰り返すと、10℃/分で再加熱した時に、結晶化速度の速い樹脂では、結晶融解ピークはnより少ない本数しか観察されないが、結晶化速度の適切に遅い樹脂では、n本または、過冷却温度X1℃での保温中の結晶化が2段階に分かれる樹脂ではn+1本観察される。
したがって、本発明の分析条件1のように、過冷却段階が5段階の場合、結晶化速度の速い樹脂では、結晶融解ピークは4本以下、結晶化速度の適切に遅い樹脂では、5本または6本観察される。
また、結晶化速度のさらに遅い樹脂では、過冷却温度X1℃での保温中にゆっくり結晶化した成分が、X2℃における幅広い融解ピークとなって観測されるが、このX2℃における幅広い融解ピークが、過冷却温度Y1℃での保温中に結晶化したことに対応するY2℃での融解ピークと重なり、溶融ピークが4本以下しか観察されないことがある。このような結晶化速度がさらに遅い樹脂は、延伸加工時に適当な形状を付与できなかったり、エチレン構造単位と側鎖一級水酸基構造単位のバランスが悪くてガスバリア性に劣ったり、生分解性に劣ったりする傾向がある。
なお、上記では、共役ポリエンを含まないEVOH系樹脂における結晶化の様子を説明したが、本変性EVOH系樹脂組成物に含まれる共役ポリエンの含有量では、樹脂の結晶化に影響を与えないため、本変性EVOH系樹脂組成物においても、上記と同様に考えることができる。
結晶化速度の速い樹脂は、過冷却温度X1℃より高温で融点に近い温度(X2℃)において、上記過冷却温度X1℃で結晶化した部分が融解することに対応する大きな融解ピークが現れ、過冷却温度X1℃より低温で、過冷却温度Y1℃に近い温度(Y2℃)では、上記過冷却温度Y1℃で結晶化した部分が小さな融解ピークとして観察される。そして、さらに低い過冷却温度では融解ピークがさらに小さくなるか、あるいは観察されなくなる。
これに対し、本発明で用いる変性EVOH系樹脂のように、結晶化速度の適切に遅い樹脂は、過冷却温度X1℃より高温で融点に近い温度(X2℃)において、上記過冷却温度X1℃で結晶化した部分が融解することに対応する融解ピークが現れるが、1段階目の過冷却温度X1℃で結晶化される成分は、樹脂の一部分に過ぎず、過冷却温度Y1℃や、さらに低温での過冷却温度で結晶化する成分が多く含まれる。そのため、結晶化速度の適切に遅い樹脂の場合、分析条件1のように融点-50℃まで10℃ずつ5段階で冷却しても、5段階目の過冷却温度で結晶化できる成分が存在する。したがって、結晶化速度が適切に遅い樹脂において、再加熱時に、上記過冷却温度X1℃で結晶化した成分は、過冷却温度X1℃より高温で融点に近い温度(X2℃)において融解ピークとして観察されるほか、過冷却温度Y1℃で結晶化した成分は、過冷却温度X1℃より低温で、過冷却温度Y1℃に近い温度(Y2℃)に、融解ピークとして観察され、さらに低温の各過冷却段階で結晶化した成分は、それに対応した温度で融解ピークとして観察される。
また、結晶化速度が適切に遅い樹脂においては、融点から過冷却温度X1℃までの間にわずかに結晶化してしまう成分が存在する場合や、過冷却温度X1℃になってすぐに結晶化した成分と、過冷却温度X1℃で保温中にゆっくり結晶化した成分がある場合等の結晶化が2段階に分かれる時がある。このような結晶化が2段階に分かれる時は、各融解ピークが別のピークとして観察され、過冷却温度X1℃より高温での融解ピークが2本観察されることがある。そのため、例えば、上述の「融点よりやや低い過冷却温度X1℃」を「融点-10℃」とし、以降、過冷却温度Y1℃を「融点-20℃」等、10℃ずつ冷却、その一定温度でしばらくの時間保つという過冷却段階をn段階繰り返すと、10℃/分で再加熱した時に、結晶化速度の速い樹脂では、結晶融解ピークはnより少ない本数しか観察されないが、結晶化速度の適切に遅い樹脂では、n本または、過冷却温度X1℃での保温中の結晶化が2段階に分かれる樹脂ではn+1本観察される。
したがって、本発明の分析条件1のように、過冷却段階が5段階の場合、結晶化速度の速い樹脂では、結晶融解ピークは4本以下、結晶化速度の適切に遅い樹脂では、5本または6本観察される。
また、結晶化速度のさらに遅い樹脂では、過冷却温度X1℃での保温中にゆっくり結晶化した成分が、X2℃における幅広い融解ピークとなって観測されるが、このX2℃における幅広い融解ピークが、過冷却温度Y1℃での保温中に結晶化したことに対応するY2℃での融解ピークと重なり、溶融ピークが4本以下しか観察されないことがある。このような結晶化速度がさらに遅い樹脂は、延伸加工時に適当な形状を付与できなかったり、エチレン構造単位と側鎖一級水酸基構造単位のバランスが悪くてガスバリア性に劣ったり、生分解性に劣ったりする傾向がある。
なお、上記では、共役ポリエンを含まないEVOH系樹脂における結晶化の様子を説明したが、本変性EVOH系樹脂組成物に含まれる共役ポリエンの含有量では、樹脂の結晶化に影響を与えないため、本変性EVOH系樹脂組成物においても、上記と同様に考えることができる。
また、分析条件1で得られる結晶融解に伴う融解ピークの面積をJIS K7122に従って求めると、その融解ピークの融解エンタルピーが求められる。このとき、樹脂の融点-10℃以上の高温に観察されるピークの融解エンタルピーの合計をH1、ピーク全体の融解エンタルピーをH2とし、これらを分析条件2で求めた融解エンタルピーH3と比較することにより、樹脂の結晶化速度を評価することができる。
さらに、前記H3に対するH1の値(H1/H3)を評価することにより、結晶化速度に関する情報が得られる。結晶化速度の速い樹脂では、H1/H3の値が1に近いが、結晶化速度の遅い樹脂では小さくなる。
本変性EVOH系樹脂組成物においては、前述のとおり、側鎖に有する一級水酸基構造単位(mol%)の含有量をDとしたとき、下記式(1)を満たすものである。
0.55≦H1/H3≦-0.025×D+0.97・・・(1)
また、H1/H3の値は、0.60以上、0.90以下であることがさらに好ましい。
本変性EVOH系樹脂組成物においては、前述のとおり、側鎖に有する一級水酸基構造単位(mol%)の含有量をDとしたとき、下記式(1)を満たすものである。
0.55≦H1/H3≦-0.025×D+0.97・・・(1)
また、H1/H3の値は、0.60以上、0.90以下であることがさらに好ましい。
本発明で用いる側鎖に一級水酸基構造単位を有する変性EVOH系樹脂は、結晶が小さく、分子鎖の流動性が容易になるために、結晶化速度が遅くなる。そのため、分析条件1のように段階的に冷却させると、融点-10℃(X1℃)における冷却までに結晶化した成分のみが、再融解時にX1℃よりやや高温であるX2℃以上、すなわち、融点-10℃以上の高温での融解ピークとして観察される。その融解ピークの融解エンタルピーがH1となる。
一方、分析条件2のように連続的に冷却すると、融点-10℃よりも低温で結晶化した樹脂も、再融解時にまとめて1つのピークとして観察される。したがって、前記分析条件1のピーク1の融解エンタルピーをH1、分析条件2のピークの融解エンタルピーをH3とした場合、H1/H3は一般的に小さくなる。
このとき、結晶の大きさや結晶化速度は、エチレン構造単位の含有量と側鎖一級水酸基構造単位の含有量に影響を受けるが、側鎖一級水酸基構造単位の含有量(D)の影響は特に大きい。そのため、H1/H3の好ましい値の上限は、側鎖一級水酸基構造単位の含有量(D)と関連があり、-0.025×D+0.97である。H1/H3≦-0.025×D+0.97とすることにより、分析条件1の(1)の融点-10℃において結晶化できる樹脂が、分析条件2のような通常の冷却過程によって結晶化できる樹脂に対して占める比が適切に少ない、結晶化速度が適切に遅い樹脂を得ることができ、後述するような適切な延伸加工性を有することとなる。
H1/H3が-0.025×D+0.97を越えると、融点-10℃(X1℃)における冷却までに結晶化できる部分が相対的に少ないことを示し、結晶化速度が速くなる傾向がある。
他方、分析条件1の(1)の融点-10℃において結晶化できる成分が、分析条件2のような通常の冷却過程によって結晶化できる樹脂に対して占める比率があまりに小さすぎると、ガスバリア材として使用を試みるときに結晶化度が小さすぎて、高湿度条件(23℃、65%RH)でのガスバリア性が発揮しにくい傾向があるので、H1/H3は0.60以上であることが好ましく、0.68以上であることがより好ましい。
一方、分析条件2のように連続的に冷却すると、融点-10℃よりも低温で結晶化した樹脂も、再融解時にまとめて1つのピークとして観察される。したがって、前記分析条件1のピーク1の融解エンタルピーをH1、分析条件2のピークの融解エンタルピーをH3とした場合、H1/H3は一般的に小さくなる。
このとき、結晶の大きさや結晶化速度は、エチレン構造単位の含有量と側鎖一級水酸基構造単位の含有量に影響を受けるが、側鎖一級水酸基構造単位の含有量(D)の影響は特に大きい。そのため、H1/H3の好ましい値の上限は、側鎖一級水酸基構造単位の含有量(D)と関連があり、-0.025×D+0.97である。H1/H3≦-0.025×D+0.97とすることにより、分析条件1の(1)の融点-10℃において結晶化できる樹脂が、分析条件2のような通常の冷却過程によって結晶化できる樹脂に対して占める比が適切に少ない、結晶化速度が適切に遅い樹脂を得ることができ、後述するような適切な延伸加工性を有することとなる。
H1/H3が-0.025×D+0.97を越えると、融点-10℃(X1℃)における冷却までに結晶化できる部分が相対的に少ないことを示し、結晶化速度が速くなる傾向がある。
他方、分析条件1の(1)の融点-10℃において結晶化できる成分が、分析条件2のような通常の冷却過程によって結晶化できる樹脂に対して占める比率があまりに小さすぎると、ガスバリア材として使用を試みるときに結晶化度が小さすぎて、高湿度条件(23℃、65%RH)でのガスバリア性が発揮しにくい傾向があるので、H1/H3は0.60以上であることが好ましく、0.68以上であることがより好ましい。
さらに、前記H3に対するH2の値(H2/H3)を評価することによっても、結晶化速度に関する情報が得られる。
本変性EVOH系樹脂樹脂組成物においては、変性EVOH系樹脂が側鎖に有する一級水酸基構造単位の含有量(mol%)をDとした場合、下記式(2)、(3)を満たすことが好ましい。
H2/H3≦0.2×D+1 ・・・(2)
D≦4.8・・・(3)
本変性EVOH系樹脂樹脂組成物においては、変性EVOH系樹脂が側鎖に有する一級水酸基構造単位の含有量(mol%)をDとした場合、下記式(2)、(3)を満たすことが好ましい。
H2/H3≦0.2×D+1 ・・・(2)
D≦4.8・・・(3)
側鎖に一級水酸基構造単位を有する樹脂は、結晶化速度が遅いものの、分析条件1のように徐々に冷却すれば、結晶化できる樹脂をほぼ冷却させることができる。この結晶化できる樹脂を再融解させたときに観察される融解エンタルピーがH2である。
これに対し、分析条件2のように一定速度で連続的に冷却すると、結晶化できる全ての樹脂が結晶化するわけではなく、分析条件2の降温条件で結晶化できる樹脂だけが結晶化する。そして、この結晶化できる樹脂を再融解させたときに観察される融解エンタルピーがH3である。
そのため、一般に1≦H2/H3であるが、前記式(2)を満たさないほどH2/H3が大きくなると、溶融成形性が低下する傾向がある。また、H2/H3が大きすぎる場合は、樹脂の結晶化できる部分が多く、分析条件1ではH2が大きいにも関わらず、通常の分析条件2では結晶化速度が速すぎるためにH3が小さくなる。
式(2)を満たす場合でも、式(3)を満たさなければ、一級水酸基構造の含有量が多過ぎるために、結晶化速度が遅くなりすぎ、延伸加工時に適当な形状を付与できにくくなる傾向があり、また、エチレン構造単位と側鎖一級水酸基構造単位のバランスが悪くガスバリア性に劣ったり、ビニルアルコール構造単位が少なくなって生分解性に劣る傾向がある。さらに、一級水酸基構造の含有量を多くし過ぎることは、製造時に側鎖に一級水酸基を有するモノマーおよび/または側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーを多く使用する必要があり、製造コストが高くなる傾向がある。
これに対し、分析条件2のように一定速度で連続的に冷却すると、結晶化できる全ての樹脂が結晶化するわけではなく、分析条件2の降温条件で結晶化できる樹脂だけが結晶化する。そして、この結晶化できる樹脂を再融解させたときに観察される融解エンタルピーがH3である。
そのため、一般に1≦H2/H3であるが、前記式(2)を満たさないほどH2/H3が大きくなると、溶融成形性が低下する傾向がある。また、H2/H3が大きすぎる場合は、樹脂の結晶化できる部分が多く、分析条件1ではH2が大きいにも関わらず、通常の分析条件2では結晶化速度が速すぎるためにH3が小さくなる。
式(2)を満たす場合でも、式(3)を満たさなければ、一級水酸基構造の含有量が多過ぎるために、結晶化速度が遅くなりすぎ、延伸加工時に適当な形状を付与できにくくなる傾向があり、また、エチレン構造単位と側鎖一級水酸基構造単位のバランスが悪くガスバリア性に劣ったり、ビニルアルコール構造単位が少なくなって生分解性に劣る傾向がある。さらに、一級水酸基構造の含有量を多くし過ぎることは、製造時に側鎖に一級水酸基を有するモノマーおよび/または側鎖の一級水酸基をエステル等で保護したモノマーを多く使用する必要があり、製造コストが高くなる傾向がある。
かくして、本発明のように異なるDSC測定方法により測定した結晶融解エンタルピーの比率を評価することによって適切な結晶化速度の低下の様子を定量的に確認することができる。
上記の特徴を有する本変性EVOH系樹脂組成物を得るには、例えば、変性EVOH系樹脂の側鎖の一級水酸基構造単位の含有量やケン化度を特定範囲とする方法、異なる融点を有するEVOH系樹脂を混合する方法等があげられる。これらは単独でもしくは併せて用いてもよい。これらのうち、フィルムのガスバリア性への影響を少なくしつつ、上記の特徴を発揮させるためには、側鎖の一級水酸基構造単位の含有量を特定範囲とする方法が、制御が容易で好ましい。
本変性EVOH系樹脂組成物の生分解度は、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることが特に好ましい。なお、上記生分解度は、JIS K6950に記載された方法を参考にし、下記の条件で試験を行った際の生物化学的酸素消費量と、理論的酸素要求量から求められる。
・装置:BOD TESTER 200F (タイテック社製)
・植種源:家庭下水を処理している下水処理場の返送汚泥
・標準試験培養液:100mL
・植種濃度:90mg/L
・温度:25±1℃
・期間:28日間。
・装置:BOD TESTER 200F (タイテック社製)
・植種源:家庭下水を処理している下水処理場の返送汚泥
・標準試験培養液:100mL
・植種濃度:90mg/L
・温度:25±1℃
・期間:28日間。
本変性EVOH系樹脂組成物は、フィルム状とすることにより、延伸フィルムや食品包材等のガスバリア材として好適に用いることができる。そして、本変性EVOH系樹脂組成物は、前述のとおり、適切に結晶化速度が低下しているため、フィルムとした際の延伸加工性に優れる。
一般に、フィルムを延伸する際に、良好な延伸加工物を得るには、変形により付与される応力がフィルム全体に均一に加わり、分子の配向を促すことが重要である。
このことは、フィルムに対しJIS K7161に従って引張特性を評価したときの応力/ひずみ曲線により評価することができる。同規格では、引張試験中に、応力の増加を伴わずにひずみの増加が生じる最初の地点を降伏点と定義しており、降伏点が現れず、応力がひずみと共に増加する挙動(ひずみ硬化)を示す材料を適切な加工温度で加工する場合、延伸加工性に優れると判断される。
このことは、フィルムに対しJIS K7161に従って引張特性を評価したときの応力/ひずみ曲線により評価することができる。同規格では、引張試験中に、応力の増加を伴わずにひずみの増加が生じる最初の地点を降伏点と定義しており、降伏点が現れず、応力がひずみと共に増加する挙動(ひずみ硬化)を示す材料を適切な加工温度で加工する場合、延伸加工性に優れると判断される。
一般的なEVOH系樹脂は結晶化速度が速いため、降伏点を有し、延伸加工する場合は、ネック延伸となることから加工性を確保することが難しく、延伸加工性に優れる材料とはいい難い。これに対し、本変性EVOH系樹脂組成物は、すでに述べたように、結晶が小さいことから、分子鎖の流動性が容易になり、結晶化速度が遅いため、降伏点が現れず延伸加工性に優れる材料となる。なお、本変性EVOH系樹脂組成物が、延伸加工性に優れる材料となる理由は定かではないが、適切な温度での引張において、結晶ラメラから続けて分子が引き出せる状況になるためと考えられる。
また、フィルムを加工する際の加工温度は、JIS K7121に従って求めたフィルムのガラス転移温度(Tg)から+10~40℃の温度が好ましく、Tg+10~30℃の温度がより好ましい。前記温度範囲では、Tgの意義から考えて、引張試験時にフィルムの結晶ラメラがやや弱くなり、そこから分子を引き出す際に適度な張力がかかって引き出すことができる。
フィルムの加工温度がTg未満では、フィルムがガラス状態であるため、分子は凍結されており、硬くて延伸できない。また、加工温度がTg付近では、非晶部分は伸びることはできるが、結晶ラメラは依然として強固なため、分子鎖を引き出すことはできず、分子の配向が十分ではない。さらに、加工温度がTg+40℃を超える場合は、結晶ラメラはかなり弱くなり、フィルムを引っ張った時に分子鎖が滑るため適度な張力がかからず、分子の配向が起こらない。
本変性EVOH系樹脂組成物から延伸フィルムやガスバリア材を得る方法としては、特に制限されず、例えば、(i)本変性EVOH系樹脂組成物の溶液を基材樹脂のフィルムに塗工、乾燥して変性EVOH系樹脂組成物からなる層を形成して延伸フィルムやガスバリア材とする方法、(ii)本変性EVOH系樹脂組成物を溶融成形して、変性EVOH系樹脂組成物からなる層を形成して延伸フィルムやガスバリア材とする方法等が挙げられる。
上記(i)の方法において、本変性EVOH系樹脂組成物の溶液に用いる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等の炭素数1~5の低級アルコールが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いてもよい。なかでも、水と2-プロパノールの混合溶媒が好ましい。
また、本変性EVOH系樹脂組成物の溶液中の固形分濃度は、通常0.5~30質量%、好ましくは5~20質量%である。
上記本変性EVOH系樹脂組成物の溶液を塗工する方法としては、例えば、バーコーター、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等公知の方法が挙げられる。なかでもバーコーターが好ましい。
塗工後、例えば60~105℃、0.5~10分間の加熱処理等によって乾燥させることにより、本変性EVOH系樹脂組成物からなる延伸フィルムやガスバリア材を得ることができる。
また、上記(ii)の方法における溶融成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、プレス成形、ブロー成形等が挙げられる。
このようにして本変性EVOH系樹脂組成物からなる層を有する延伸フィルムやガスバリア材が得られる。上記延伸フィルムやガスバリア材は、単層構造の延伸フィルムやガスバリア材としてもよいし、多層構造の延伸フィルムやガスバリア材としてもよいが、多層構造とすることが好ましい。上記多層構造の延伸フィルムやバリア材は、本変性EVOH系樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有することが好ましい。また、上記多層構造の延伸フィルムやガスバリア材は、本変性EVOH系樹脂組成物からなる層を積層してもよいし、他の基材樹脂と積層させてもよい。
上記基材樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、エチレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン、ポリ環状オレフィン系樹脂(環状オレフィン構造を主鎖および側鎖の少なくとも一方に有する重合体)等の(未変性)ポリオレフィン系樹脂や、これらのポリオレフィン類を不飽和カルボン酸またはそのエステルでグラフト変性した不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等の変性オレフィン系樹脂を含む広義のポリオレフィン系樹脂、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲン化ポリオレフィン、芳香族または脂肪族ポリケトン類等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いてもよい。また、これらの基材樹脂は、コロナ処理等の表面処理を行ってもよい。
上記本変性EVOH系樹脂組成物からなる層の厚みは、通常1~200μm、好ましくは1~100μm、特に好ましくは1~50μmである。なお、上記延伸フィルムやガスバリア材が多層構造である場合は、延伸フィルムやガスバリア材に含まれる全ての本変性EVOH系樹脂組成物からなる層の厚みを合計したものである。
また、ガスバリア材が使用される環境は低湿度から高湿度まで広い条件にわたるために、高湿度でも酸素透過度が低く、温度の変化に対し、酸素透過度の変化が小さいことが好ましい。この観点から、23℃、65%RHの環境下で測定した酸素透過度は、30cc・3μm/m2・day・atm以下であることが好ましく、5cc・3μm/m2・day・atm以下であることが特に好ましい。上記酸素透過度は、酸素透過率測定装置により求めることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準を意味する。
実施例における融点、ガラス転移温度、段階的降温後の融解ピーク、融解エンタルピー、共役ポリエンの含有量、熱安定性試験および生分解度の測定方法を下記に示す。
〔融点〕
示差走査熱量分析計(TA Instrument社製「Q2000」)を用い、JIS K7121において、一定の熱処理を行った後融解温度を測定する方法に準じて求めた融解ピーク温度を融点とした。具体的には、-50℃から250℃まで10℃/分の速度にて加熱し、融解させた後、10℃/分の速度にて-50℃まで冷却し、再度-50℃から250℃まで10℃/分の速度にて加熱した際の2度目の加熱時の融解ピークの頂点の温度を融点として求めた。
示差走査熱量分析計(TA Instrument社製「Q2000」)を用い、JIS K7121において、一定の熱処理を行った後融解温度を測定する方法に準じて求めた融解ピーク温度を融点とした。具体的には、-50℃から250℃まで10℃/分の速度にて加熱し、融解させた後、10℃/分の速度にて-50℃まで冷却し、再度-50℃から250℃まで10℃/分の速度にて加熱した際の2度目の加熱時の融解ピークの頂点の温度を融点として求めた。
〔ガラス転移温度〕
上記の融点を求めるために測定した示差走査熱量分析において、2度目の加熱時のカーブ(DSC曲線)から、JIS K7121に従って求めた中間点ガラス転移温度をガラス転移温度として求めた。
上記の融点を求めるために測定した示差走査熱量分析において、2度目の加熱時のカーブ(DSC曲線)から、JIS K7121に従って求めた中間点ガラス転移温度をガラス転移温度として求めた。
〔段階的降温後の融解ピーク〕
示差走査熱量分析計(TA Instrument社製「Q2000」)を用い、下記の分析条件1により、樹脂組成物を融解、段階的に冷却させた後、加熱して、融解ピークを検出した。また、別に下記の分析条件2により、サンプルを連続的に冷却させた後、加熱して、融解ピークを検出した。
[分析条件1]
(1)10℃/分で樹脂組成物の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2)樹脂組成物の融点-10℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3)樹脂組成物の融点-20℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(4)樹脂組成物の融点-30℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(5)樹脂組成物の融点-40℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(6)樹脂組成物の融点-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(7)樹脂組成物を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(8)10℃/分でEVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで再加熱する。
[分析条件2]
(1’)10℃/分で樹脂の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2’)樹脂を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3’)10℃/分で再加熱する。
示差走査熱量分析計(TA Instrument社製「Q2000」)を用い、下記の分析条件1により、樹脂組成物を融解、段階的に冷却させた後、加熱して、融解ピークを検出した。また、別に下記の分析条件2により、サンプルを連続的に冷却させた後、加熱して、融解ピークを検出した。
[分析条件1]
(1)10℃/分で樹脂組成物の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2)樹脂組成物の融点-10℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3)樹脂組成物の融点-20℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(4)樹脂組成物の融点-30℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(5)樹脂組成物の融点-40℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(6)樹脂組成物の融点-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(7)樹脂組成物を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(8)10℃/分でEVOH系樹脂組成物の融点+30℃まで再加熱する。
[分析条件2]
(1’)10℃/分で樹脂の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2’)樹脂を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3’)10℃/分で再加熱する。
〔融解エンタルピー〕
前記DSC曲線における融解ピークから、融解エンタルピーを、以下のようにして決定した。
DSC曲線における「融解ピーク全体」とは、JIS K7121の用語で用いられるピークと同義であり、DSC曲線がベースラインから離れて再度ベースラインに戻るまでの部分をいう。
例えば、図1に示すように、最も低融点側かつ、ベースラインからDSC曲線が離れた点をX、最も高温側かつ、DSC曲線がベースラインに戻る点をYとし、線分XYを以降の融解エンタルピー算出時のベースラインとした。
前記DSC曲線における融解ピークから、融解エンタルピーを、以下のようにして決定した。
DSC曲線における「融解ピーク全体」とは、JIS K7121の用語で用いられるピークと同義であり、DSC曲線がベースラインから離れて再度ベースラインに戻るまでの部分をいう。
例えば、図1に示すように、最も低融点側かつ、ベースラインからDSC曲線が離れた点をX、最も高温側かつ、DSC曲線がベースラインに戻る点をYとし、線分XYを以降の融解エンタルピー算出時のベースラインとした。
DSC曲線に複数の融解ピークが観察された場合は、図1に示すように高温側から順にピーク1、ピーク2、・・・ピークnとした。
ここで、ピークnにおける融解ピーク温度の定義は、JIS K7121の融解ピーク温度の定め方と同様に、融解ピークの頂点の温度とする。この融解ピーク温度は、図2に示すようなDSC曲線の微分曲線が温度の上昇と共に負から正に変化しつつ0になる点としても求められる。
また、図3の156~166℃の範囲のように、DSC曲線の微分曲線が負のままであって0になる部分が存在しない区間は、融解ピークに頂点がないものとみなし、独立した融解ピークとはせずに、隣接する高温側(170℃)のピークの一部として扱った。また、いわゆる、ピークの肩、については、DSC曲線の微分曲線が0にならない限り、独立した融解ピークとはせずに、隣接する融解ピークの一部として扱った。
ここで、ピークnにおける融解ピーク温度の定義は、JIS K7121の融解ピーク温度の定め方と同様に、融解ピークの頂点の温度とする。この融解ピーク温度は、図2に示すようなDSC曲線の微分曲線が温度の上昇と共に負から正に変化しつつ0になる点としても求められる。
また、図3の156~166℃の範囲のように、DSC曲線の微分曲線が負のままであって0になる部分が存在しない区間は、融解ピークに頂点がないものとみなし、独立した融解ピークとはせずに、隣接する高温側(170℃)のピークの一部として扱った。また、いわゆる、ピークの肩、については、DSC曲線の微分曲線が0にならない限り、独立した融解ピークとはせずに、隣接する融解ピークの一部として扱った。
また、融解ピークn-1と融解ピークnの区切り温度は、例えば、図2に示すようにDSC曲線の微分が融解ピークn-1と融解ピークnとの間で温度の上昇と共に正から負に変化しつつ0になる点を区切り温度とした。
前記の方法で求めたピーク間の区切り温度から、ベースラインに対して垂直な線を引くことにより、隣接するピークとの間に区切りを設定することができ、DSC曲線とベースラインで囲まれた部分の面積から、ピーク1の融解エンタルピー(H1)を求めた。
また、ピーク全体の融解エンタルピーについては、例えば、図1に示すように線分XYとDSC曲線に囲まれた部分の面積をピーク全体の融解エンタルピー(H2)とした。
また、ピーク全体の融解エンタルピーについては、例えば、図1に示すように線分XYとDSC曲線に囲まれた部分の面積をピーク全体の融解エンタルピー(H2)とした。
また、分析条件2においては、JIS K7122に示される方法に従って求めた融解ピークを融解エンタルピー(H3)とした(図5参照)。
[DSC曲線の微分曲線の求め方]
前記DSC曲線の微分曲線は、下記のように求めた。
示差走査熱量分析の測定開始からの経過時間t秒時の温度をTemp(t)、経過時間t秒時のヒートフローをHeat Flow(t)とし、経過時間t秒時のヒートフローの温度に対する瞬時変化d(H)を下記式(4)から求めた。
d(H)(t)={Heat Flow(t+0.5秒)-Heat Flow(t秒)}/{Temp(t+0.5秒)-Temp(t秒)} … (4)
また、t秒時におけるヒートフローの温度に対する微小変化は、式(4)においてt、t±0.5秒~3.0秒の計13点について計算した値の平均値を下記式(5)から求めた。
ヒートフロー微小変化 = dHeat Flow/dTemp =[dH(t―3.0秒)+dH(t-2.5秒)+dH(t-2.0秒)+dH(t-1.5秒)+dH(t-1.0秒)+dH(t-0.5秒)+dH(t)+dH(t+0.5秒)+dH(t+1.0秒)+dH(t+1.5秒)+dH(t+2.0秒)+dH(t+2.5秒)+dH(t+3.0秒)}÷13 … (5)
上記のようにして求めたヒートフローの微小変化dHeat Flow/dTempと、同時刻に測定された温度Tempとの関係を微分曲線とした。例を図2、3に示す。
前記DSC曲線の微分曲線は、下記のように求めた。
示差走査熱量分析の測定開始からの経過時間t秒時の温度をTemp(t)、経過時間t秒時のヒートフローをHeat Flow(t)とし、経過時間t秒時のヒートフローの温度に対する瞬時変化d(H)を下記式(4)から求めた。
d(H)(t)={Heat Flow(t+0.5秒)-Heat Flow(t秒)}/{Temp(t+0.5秒)-Temp(t秒)} … (4)
また、t秒時におけるヒートフローの温度に対する微小変化は、式(4)においてt、t±0.5秒~3.0秒の計13点について計算した値の平均値を下記式(5)から求めた。
ヒートフロー微小変化 = dHeat Flow/dTemp =[dH(t―3.0秒)+dH(t-2.5秒)+dH(t-2.0秒)+dH(t-1.5秒)+dH(t-1.0秒)+dH(t-0.5秒)+dH(t)+dH(t+0.5秒)+dH(t+1.0秒)+dH(t+1.5秒)+dH(t+2.0秒)+dH(t+2.5秒)+dH(t+3.0秒)}÷13 … (5)
上記のようにして求めたヒートフローの微小変化dHeat Flow/dTempと、同時刻に測定された温度Tempとの関係を微分曲線とした。例を図2、3に示す。
〔共役ポリエンの含有量〕
共役ポリエンがソルビン酸の場合、含有量は以下のようにして求めた。
樹脂組成物を凍結粉砕し、200mgを精秤し、これに3.5mLのメタノールを加えて分散させてから、水1.5mLを添加した。さらにメタノール/水=7/3(体積比)の混合溶媒を添加して全量を10mLとし、60分間超音波を照射して溶解させたものを検体とした。この検体を液体クロマトグラフィーによりソルビン酸量を定量した。なお、この方法での定量下限値は0.1ppmであり、定量下限値以下の場合「0.1ppm未満」と表記した。
共役ポリエンがソルビン酸の場合、含有量は以下のようにして求めた。
樹脂組成物を凍結粉砕し、200mgを精秤し、これに3.5mLのメタノールを加えて分散させてから、水1.5mLを添加した。さらにメタノール/水=7/3(体積比)の混合溶媒を添加して全量を10mLとし、60分間超音波を照射して溶解させたものを検体とした。この検体を液体クロマトグラフィーによりソルビン酸量を定量した。なお、この方法での定量下限値は0.1ppmであり、定量下限値以下の場合「0.1ppm未満」と表記した。
〔熱安定性試験〕
樹脂組成物1gを三角フラスコに取り、表3に示す試験溶媒100mLを注ぎ、95℃で1時間撹拌したのち、室温(23℃)まで冷却した。その後、この溶液が均一な溶液であることを目視にて確認した。
次に、樹脂組成物1gをアルミ皿に取り、窒素で中を満たした230℃のイナートオーブンに30分間放置して溶融させた。溶融させた樹脂組成物を室温まで冷却、固化させた後、これを砕いて、表3に示す試験溶媒100mLを注ぎ、95℃で1時間撹拌した後、室温(23℃)まで冷却した。これを目視にて確認し、下記の基準にて熱安定性を評価した。
[評価基準]
〇:(very good):未溶解分がなく、均一な溶液であった
×:(poor):未溶解分が認められた
樹脂組成物1gを三角フラスコに取り、表3に示す試験溶媒100mLを注ぎ、95℃で1時間撹拌したのち、室温(23℃)まで冷却した。その後、この溶液が均一な溶液であることを目視にて確認した。
次に、樹脂組成物1gをアルミ皿に取り、窒素で中を満たした230℃のイナートオーブンに30分間放置して溶融させた。溶融させた樹脂組成物を室温まで冷却、固化させた後、これを砕いて、表3に示す試験溶媒100mLを注ぎ、95℃で1時間撹拌した後、室温(23℃)まで冷却した。これを目視にて確認し、下記の基準にて熱安定性を評価した。
[評価基準]
〇:(very good):未溶解分がなく、均一な溶液であった
×:(poor):未溶解分が認められた
〔生分解度〕
生分解度の評価は、JIS K6950に記載された方法を参考にし、下記の条件で行った。
・装置:BOD TESTER 200F (タイテック社製)
・植種源:家庭下水を処理している下水処理場の返送汚泥
・標準試験培養液:100mL
・植種濃度:90mg/L
・温度:25±1℃
・期間:28日間
生物化学的酸素消費量と、理論的酸素要求量から、生分解度を求めた。
生分解度の評価は、JIS K6950に記載された方法を参考にし、下記の条件で行った。
・装置:BOD TESTER 200F (タイテック社製)
・植種源:家庭下水を処理している下水処理場の返送汚泥
・標準試験培養液:100mL
・植種濃度:90mg/L
・温度:25±1℃
・期間:28日間
生物化学的酸素消費量と、理論的酸素要求量から、生分解度を求めた。
<実施例1>
温度制御のできるオートクレーブに酢酸ビニル460部、側鎖一級水酸基をエステルで保護したモノマーである、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン32部、メタノール75部を仕込み、系内を窒素ガスで一旦置換した後、ついでエチレンで置換して、撹拌しながら、67℃まで昇温した。昇温後、エチレンをその分圧が1.0MPaとなるように圧入し、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.082部をメタノール10部に溶解させた溶液を加え、撹拌しながら、内温を67℃で4時間保つことにより、重合反応を行った。その後、重合反応停止工程として、ソルビン酸0.096部をメタノール100部に溶解させた溶液を投入、室温(23℃)まで冷却した。さらに未反応のモノマーを減少させる目的で、減圧による揮発分追い出しとメタノール添加を繰り返した。
ついで、上記溶液をメタノールで希釈して濃度10%に調整して撹拌機と冷却管を有するフラスコにて撹拌しつつ、溶液温度を45℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの3.5%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して10mmol当量となる量を加えて、一次ケン化を行った。約30分後にケン化物が析出し、ついには粒子状物を含むスラリーになった。さらにケン化を進めるために、二次ケン化として、生成したスラリーを一旦ろ別した後、再度、ケン化物の20倍量のメタノールに分散させ、撹拌機と冷却管を有するフラスコにて撹拌しつつ、水酸化ナトリウムの3.5%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体中の最初の酢酸ビニル単位に対して50mmol当量となる量を加えて、50℃で3時間反応させた。反応後、酢酸で中和し、スラリーを再度ろ別して、ウェットケーキを得、該ウェットケーキをその5倍の質量のメタノールで3回洗浄してろ別した後、100℃熱風乾燥器中で8時間乾燥させて変性EVOH系樹脂組成物を得た。得られた共重合体は、側鎖に一級水酸基を有する構造として、1,2-ブタンジオール構造を有していた。
得られた変性EVOH系樹脂のケン化度は、残存ビニルエステル単位の加水分解に関するアルカリ消費量で分析したところ、99.8mol%であった。
また、NMR測定によるエチレン構造単位の含有量は7.5mol%であり、1,2-ブタンジオール構造単位の含有量(D)は3.3mol%であった。
共役ポリエンであるソルビン酸の含有量は0.8ppm、融点は190℃、ガラス転移温度(Tg)は75℃であった。
段階的降温後の融解ピークおよび融解エンタルピーについて、前述の分析条件1に従い、測定を行ったところ、融解ピークは5本観察された。また、最も高融点側のピーク(ピーク1)は182℃(X2℃)に観察され、その融解エンタルピー(H1)は28.8J/gであり、ピーク全体の融解エンタルピー(H2)は48.2J/gであった。
さらに、前述の分析条件2に従い、測定を行ったところ、融解ピークは1本だけ観察され、その融解エンタルピー(H3)は33.3J/gであった。
さらに熱安定性試験では、溶媒として水を用いた場合、水の均一溶液を得ることができ、一度溶融させた樹脂組成物についても、水の均一溶液が得られ、熱安定性は良好であった。
生分解度は72%であった。
実施例1の共重合成分等を後記の表1、2に示し、物性等を後記の表3に示す。また、実施例1の分析条件1でのDSC曲線を図4に、分析条件2でのDSC曲線を図5に示す。
温度制御のできるオートクレーブに酢酸ビニル460部、側鎖一級水酸基をエステルで保護したモノマーである、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン32部、メタノール75部を仕込み、系内を窒素ガスで一旦置換した後、ついでエチレンで置換して、撹拌しながら、67℃まで昇温した。昇温後、エチレンをその分圧が1.0MPaとなるように圧入し、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.082部をメタノール10部に溶解させた溶液を加え、撹拌しながら、内温を67℃で4時間保つことにより、重合反応を行った。その後、重合反応停止工程として、ソルビン酸0.096部をメタノール100部に溶解させた溶液を投入、室温(23℃)まで冷却した。さらに未反応のモノマーを減少させる目的で、減圧による揮発分追い出しとメタノール添加を繰り返した。
ついで、上記溶液をメタノールで希釈して濃度10%に調整して撹拌機と冷却管を有するフラスコにて撹拌しつつ、溶液温度を45℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの3.5%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して10mmol当量となる量を加えて、一次ケン化を行った。約30分後にケン化物が析出し、ついには粒子状物を含むスラリーになった。さらにケン化を進めるために、二次ケン化として、生成したスラリーを一旦ろ別した後、再度、ケン化物の20倍量のメタノールに分散させ、撹拌機と冷却管を有するフラスコにて撹拌しつつ、水酸化ナトリウムの3.5%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体中の最初の酢酸ビニル単位に対して50mmol当量となる量を加えて、50℃で3時間反応させた。反応後、酢酸で中和し、スラリーを再度ろ別して、ウェットケーキを得、該ウェットケーキをその5倍の質量のメタノールで3回洗浄してろ別した後、100℃熱風乾燥器中で8時間乾燥させて変性EVOH系樹脂組成物を得た。得られた共重合体は、側鎖に一級水酸基を有する構造として、1,2-ブタンジオール構造を有していた。
得られた変性EVOH系樹脂のケン化度は、残存ビニルエステル単位の加水分解に関するアルカリ消費量で分析したところ、99.8mol%であった。
また、NMR測定によるエチレン構造単位の含有量は7.5mol%であり、1,2-ブタンジオール構造単位の含有量(D)は3.3mol%であった。
共役ポリエンであるソルビン酸の含有量は0.8ppm、融点は190℃、ガラス転移温度(Tg)は75℃であった。
段階的降温後の融解ピークおよび融解エンタルピーについて、前述の分析条件1に従い、測定を行ったところ、融解ピークは5本観察された。また、最も高融点側のピーク(ピーク1)は182℃(X2℃)に観察され、その融解エンタルピー(H1)は28.8J/gであり、ピーク全体の融解エンタルピー(H2)は48.2J/gであった。
さらに、前述の分析条件2に従い、測定を行ったところ、融解ピークは1本だけ観察され、その融解エンタルピー(H3)は33.3J/gであった。
さらに熱安定性試験では、溶媒として水を用いた場合、水の均一溶液を得ることができ、一度溶融させた樹脂組成物についても、水の均一溶液が得られ、熱安定性は良好であった。
生分解度は72%であった。
実施例1の共重合成分等を後記の表1、2に示し、物性等を後記の表3に示す。また、実施例1の分析条件1でのDSC曲線を図4に、分析条件2でのDSC曲線を図5に示す。
<実施例2、7、8、比較例1~3、6~8>
実施例1における、仕込みの酢酸ビニル量、側鎖一級水酸基をエステルで保護したモノマーの種類と量、メタノール量、エチレン分圧、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル量を表1のとおりに変更して重合を行った。重合停止反応工程、未反応モノマーを減少させる工程、一次ケン化は実施例1と同様に実施した後、二次ケン化の有無、二次ケン化で使用したアルカリ量、ケン化後のウェットケーキの洗浄方法を表1のとおりに変更したほかは実施例1と同様にして、変性EVOH系樹脂組成物またはEVOH系樹脂組成物を得た。
実施例1における、仕込みの酢酸ビニル量、側鎖一級水酸基をエステルで保護したモノマーの種類と量、メタノール量、エチレン分圧、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル量を表1のとおりに変更して重合を行った。重合停止反応工程、未反応モノマーを減少させる工程、一次ケン化は実施例1と同様に実施した後、二次ケン化の有無、二次ケン化で使用したアルカリ量、ケン化後のウェットケーキの洗浄方法を表1のとおりに変更したほかは実施例1と同様にして、変性EVOH系樹脂組成物またはEVOH系樹脂組成物を得た。
<実施例3~6、9、10>
実施例1における、仕込みの酢酸ビニル量、側鎖一級水酸基をエステルで保護したモノマーの種類と量、メタノール量を表1のとおりに変更し、67℃までの昇温操作も同様に行った。昇温後のエチレン分圧を表1のとおりに変更して圧入した後、撹拌を続けながら、t-ブチルパーオキシネオデカノエートを表1のとおりに変更したメタノール溶液(濃度2%)を4時間かけて添加しつつ重合を行い、添加終了後もさらに67℃で3時間撹拌を続けて、重合反応を継続した。
その後、重合反応停止工程として、ソルビン酸0.096部をメタノール100部に溶解させた溶液を投入、室温(23℃)まで冷却した。さらに未反応のモノマーを減少させる目的で、75℃加熱による揮発分追い出しとメタノール添加を繰り返した。
ついで、上記溶液をメタノールで希釈して濃度30%に調整して、ニーダーで撹拌しつつ、溶液温度を45℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの8.7%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して9mmol当量となる量を加えて、一次ケン化を行った。約15分後に粘度上昇を伴ってケン化物が析出し、ついには粒子状物を含むスラリーになった。1時間後に水酸化ナトリウムの8.7%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して11mmol当量となる量を加えて一次ケン化を継続した。実施例3、4、5、6、10では、さらにケン化を進めるために、二次ケン化として、生成したスラリーを一旦ろ別した後、再度、ケン化物の5倍量のメタノールに分散させ、ニーダーにて撹拌しつつ、水酸化ナトリウムの8.7%メタノール溶液を、表1に示す量を加えて、50℃で3時間反応させた。実施例9では、二次ケン化は行わなかった。ケン化反応後の酢酸中和以降は、ウェットケーキの洗浄方法を表1のように変更した他は、実施例1と同様に処理して、変性EVOH系樹脂組成物を得た。
実施例1における、仕込みの酢酸ビニル量、側鎖一級水酸基をエステルで保護したモノマーの種類と量、メタノール量を表1のとおりに変更し、67℃までの昇温操作も同様に行った。昇温後のエチレン分圧を表1のとおりに変更して圧入した後、撹拌を続けながら、t-ブチルパーオキシネオデカノエートを表1のとおりに変更したメタノール溶液(濃度2%)を4時間かけて添加しつつ重合を行い、添加終了後もさらに67℃で3時間撹拌を続けて、重合反応を継続した。
その後、重合反応停止工程として、ソルビン酸0.096部をメタノール100部に溶解させた溶液を投入、室温(23℃)まで冷却した。さらに未反応のモノマーを減少させる目的で、75℃加熱による揮発分追い出しとメタノール添加を繰り返した。
ついで、上記溶液をメタノールで希釈して濃度30%に調整して、ニーダーで撹拌しつつ、溶液温度を45℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの8.7%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して9mmol当量となる量を加えて、一次ケン化を行った。約15分後に粘度上昇を伴ってケン化物が析出し、ついには粒子状物を含むスラリーになった。1時間後に水酸化ナトリウムの8.7%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して11mmol当量となる量を加えて一次ケン化を継続した。実施例3、4、5、6、10では、さらにケン化を進めるために、二次ケン化として、生成したスラリーを一旦ろ別した後、再度、ケン化物の5倍量のメタノールに分散させ、ニーダーにて撹拌しつつ、水酸化ナトリウムの8.7%メタノール溶液を、表1に示す量を加えて、50℃で3時間反応させた。実施例9では、二次ケン化は行わなかった。ケン化反応後の酢酸中和以降は、ウェットケーキの洗浄方法を表1のように変更した他は、実施例1と同様に処理して、変性EVOH系樹脂組成物を得た。
<実施例11>
実施例3と同様にして変性EVOH系樹脂組成物を得たのち、さらにソルビン酸を樹脂組成物の370ppmとなるように添加し、よく混合して、実施例11の変性EVOH系樹脂組成物とした。
実施例3と同様にして変性EVOH系樹脂組成物を得たのち、さらにソルビン酸を樹脂組成物の370ppmとなるように添加し、よく混合して、実施例11の変性EVOH系樹脂組成物とした。
<比較例4、5>
実施例1における、仕込みの酢酸ビニル量、側鎖一級水酸基をエステルで保護したモノマーの種類と量、メタノール量、エチレン分圧、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル量を表1のとおりに変更して重合を行い、重合反応停止工程、未反応モノマーを減少させる操作も同様に行った後、ケン化工程部分を以下のように変更した。
未反応モノマーを減少させた操作を行った溶液をメタノールで希釈して、濃度20%に調整して撹拌し、溶液温度を45℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの3.5%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して50mmol当量となる量を加え、30分還流させて一次ケン化を行った。このとき、ケン化物は析出せず、溶液の状態を保っていた。この溶液をメタノールで希釈して、濃度10%に調整した後に、エバポレーターで揮発分を留去し、再び濃度20%に調整した。さらにケン化を進めるために、二次ケン化として、水酸化ナトリウムの3.5%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体中の最初の酢酸ビニル単位に対して50mmol当量となる量をさらに加えて、30分還流させた。この時点でもケン化物は析出せず、溶液の状態であった。これを氷浴で冷却すると、白色ゲル状固体となったので、粉砕して、ゲル状固体の3倍の質量の2.5%酢酸水溶液に投入してウェットケーキを得た。その後、該ウェットケーキをその5倍の質量の水で3回洗浄してろ別した後、100℃熱風乾燥器中で8時間乾燥させて変性EVOH系樹脂組成物を得た。
実施例1における、仕込みの酢酸ビニル量、側鎖一級水酸基をエステルで保護したモノマーの種類と量、メタノール量、エチレン分圧、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル量を表1のとおりに変更して重合を行い、重合反応停止工程、未反応モノマーを減少させる操作も同様に行った後、ケン化工程部分を以下のように変更した。
未反応モノマーを減少させた操作を行った溶液をメタノールで希釈して、濃度20%に調整して撹拌し、溶液温度を45℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの3.5%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体の酢酸ビニル単位に対して50mmol当量となる量を加え、30分還流させて一次ケン化を行った。このとき、ケン化物は析出せず、溶液の状態を保っていた。この溶液をメタノールで希釈して、濃度10%に調整した後に、エバポレーターで揮発分を留去し、再び濃度20%に調整した。さらにケン化を進めるために、二次ケン化として、水酸化ナトリウムの3.5%メタノール溶液を、水酸化ナトリウムが共重合体中の最初の酢酸ビニル単位に対して50mmol当量となる量をさらに加えて、30分還流させた。この時点でもケン化物は析出せず、溶液の状態であった。これを氷浴で冷却すると、白色ゲル状固体となったので、粉砕して、ゲル状固体の3倍の質量の2.5%酢酸水溶液に投入してウェットケーキを得た。その後、該ウェットケーキをその5倍の質量の水で3回洗浄してろ別した後、100℃熱風乾燥器中で8時間乾燥させて変性EVOH系樹脂組成物を得た。
得られた実施例2~11、比較例1~8の変性EVOH系樹脂組成物またはEVOH系樹脂組成物のエチレン構造単位の含有量、側鎖に一級水酸基を有する構造単位の含有量、ケン化度、共役ポリエン化合物とその含有量、Tg、融点、吸熱ピークおよび融解エンタルピー、熱安定性試験で用いた溶媒と溶解性を実施例1と同様に求めた。結果を下記の表2、3に示す。また、実施例2、比較例1、2、7の分析条件1でのDSCチャートを図6、8、10、12に、分析条件2でのDSCチャートを図7、9、11、13にそれぞれ示す。
上記表3の結果から、熱安定性試験では、樹脂組成物を溶融させない場合、すべての実施例、比較例について、均一溶液を得ることができた。一度樹脂組成物を溶融させた場合、すべての実施例1~11と、比較例1~7については、均一溶液を得ることができ、熱安定性は良好であったが、比較例8については均一溶液が得ることができず、熱安定性は不良であった。
得られた実施例1~11、比較例1~8の各樹脂組成物を用いて以下の評価を行った。
[溶液キャストによるフィルム作成]
実施例1、2、7、8、11、比較例1~3、6~8の樹脂組成物を、表4に示すフィルム作成溶媒に10質量%の濃度となるように溶解させ溶液を調製した。この溶液を、PETフィルム基材(100μm厚)上にキャストした後、溶媒を室温で蒸発させて粗乾燥したフィルムを得た。この粗乾燥したフィルムを五酸化りんの存在下、105℃、減圧下で恒量になるまで乾燥させた後、PETフィルム基材を剥がして溶液キャストによるフィルムを得た。フィルムの厚みは約20~30μmであった。
実施例1、2、7、8、11、比較例1~3、6~8の樹脂組成物を、表4に示すフィルム作成溶媒に10質量%の濃度となるように溶解させ溶液を調製した。この溶液を、PETフィルム基材(100μm厚)上にキャストした後、溶媒を室温で蒸発させて粗乾燥したフィルムを得た。この粗乾燥したフィルムを五酸化りんの存在下、105℃、減圧下で恒量になるまで乾燥させた後、PETフィルム基材を剥がして溶液キャストによるフィルムを得た。フィルムの厚みは約20~30μmであった。
[ペレットの作成]
実施例3~6、9、10の変性EVOH系樹脂組成物を下記の条件で押出することによりペレットを作成した。
・ペレット化条件
押出機:芝浦機械株式会社製 2軸混練押出機 TEM-18DS
スクリュー:2軸、20mmΦ、L/D=48
シリンダー部設定温度:170~220℃
ヘッダー部設定温度:210℃
押出された樹脂の冷却方法:空冷ベルト
吐出量:4kg/hr
実施例3~6、9、10の変性EVOH系樹脂組成物を下記の条件で押出することによりペレットを作成した。
・ペレット化条件
押出機:芝浦機械株式会社製 2軸混練押出機 TEM-18DS
スクリュー:2軸、20mmΦ、L/D=48
シリンダー部設定温度:170~220℃
ヘッダー部設定温度:210℃
押出された樹脂の冷却方法:空冷ベルト
吐出量:4kg/hr
[溶融押出単層フィルム作成]
得られた実施例4~6のペレットを下記の条件で押出することにより、溶融押出単層フィルムを得た。
・フィルム作成条件
押出機:ブラベンダー社製 プラストグラフEC-plus
スクリュー:単軸、20mmΦ、フルフライト
シリンダー部設定温度:170~220℃
冷却ロール設定温度:80℃
フィルムの厚み:20μm
得られた実施例4~6のペレットを下記の条件で押出することにより、溶融押出単層フィルムを得た。
・フィルム作成条件
押出機:ブラベンダー社製 プラストグラフEC-plus
スクリュー:単軸、20mmΦ、フルフライト
シリンダー部設定温度:170~220℃
冷却ロール設定温度:80℃
フィルムの厚み:20μm
[溶融押出多層フィルム作成]
得られた実施例3、9、10のペレットから以下の条件で押出することにより、LLDPE/ガスバリア層(変性EVOH系樹脂組成物からなる層)/LLDPEの3種5層の多層構造(5層を順にLLDPE/LLDPE/ガスバリア層(変性EVOH系樹脂組成物からなる層)/LLDPE/LLDPE)を有する溶融押出多層フィルムを得た。
・フィルム作成条件
押出機:プラスチック工学研究所 3種5層インフレフィルム製膜機
LLDPE:三菱ケミカル社製、ノバテックLL UF240
スクリュー:単軸、20mmΦ、フルフライト
シリンダー部設定温度:180℃~210℃
フィルム厚み:90μm (LLDPE 40μm/ガスバリア層 10μm/LLDPE 40μm)
得られた実施例3、9、10のペレットから以下の条件で押出することにより、LLDPE/ガスバリア層(変性EVOH系樹脂組成物からなる層)/LLDPEの3種5層の多層構造(5層を順にLLDPE/LLDPE/ガスバリア層(変性EVOH系樹脂組成物からなる層)/LLDPE/LLDPE)を有する溶融押出多層フィルムを得た。
・フィルム作成条件
押出機:プラスチック工学研究所 3種5層インフレフィルム製膜機
LLDPE:三菱ケミカル社製、ノバテックLL UF240
スクリュー:単軸、20mmΦ、フルフライト
シリンダー部設定温度:180℃~210℃
フィルム厚み:90μm (LLDPE 40μm/ガスバリア層 10μm/LLDPE 40μm)
[プレス成形フィルムの作成]
比較例4、5の樹脂組成物を、アズワン社製の小型熱プレス機AH-10TDを用い、予熱温度210℃、予熱時間30秒、加熱温度210℃、加熱時間1分間、加熱加重1t、冷却温度20℃、冷却時間30秒の条件にて、測定サンプルを厚さ0.1mmにプレス成形することでプレス成形フィルムを得た。
比較例4、5の樹脂組成物を、アズワン社製の小型熱プレス機AH-10TDを用い、予熱温度210℃、予熱時間30秒、加熱温度210℃、加熱時間1分間、加熱加重1t、冷却温度20℃、冷却時間30秒の条件にて、測定サンプルを厚さ0.1mmにプレス成形することでプレス成形フィルムを得た。
[引張試験条件]
得られた溶液キャストによるフィルム、溶融押出単層フィルム、溶融押出多層フィルムからLLDPE層を剥がしてガスバリア層(変性EVOH系樹脂組成物からなる層)のみにしたフィルム、プレス成形フィルムをユービーエム社製Rheogel-E4000を用い、つかみ具間距離10mm、引張速度1.1mm/秒、測定モードS-S測定にて、ガラス転移温度-10℃、±0℃、+10℃、+20℃、+30℃の温度で引張試験し、応力/ひずみ曲線を得た。
実施例1、実施例2、実施例6、比較例1、比較例2の応力/ひずみ曲線をそれぞれ、図14~18に示す。
得られた溶液キャストによるフィルム、溶融押出単層フィルム、溶融押出多層フィルムからLLDPE層を剥がしてガスバリア層(変性EVOH系樹脂組成物からなる層)のみにしたフィルム、プレス成形フィルムをユービーエム社製Rheogel-E4000を用い、つかみ具間距離10mm、引張速度1.1mm/秒、測定モードS-S測定にて、ガラス転移温度-10℃、±0℃、+10℃、+20℃、+30℃の温度で引張試験し、応力/ひずみ曲線を得た。
実施例1、実施例2、実施例6、比較例1、比較例2の応力/ひずみ曲線をそれぞれ、図14~18に示す。
実施例、比較例の引張試験結果、および延伸加工性の評価を後記の表4~7に示す。
引張試験については、Tg+10~30℃の温度で引張試験をした際の、降伏点の有無で評価を行った。また、延伸加工性については、Tg+10~30℃の温度で引張試験をした際に、降伏点がないものを延伸加工性「〇(very good)」とし、降伏点があるものを延伸加工性「×(poor)」とした。結果を後記の表4~7に示す。
引張試験については、Tg+10~30℃の温度で引張試験をした際の、降伏点の有無で評価を行った。また、延伸加工性については、Tg+10~30℃の温度で引張試験をした際に、降伏点がないものを延伸加工性「〇(very good)」とし、降伏点があるものを延伸加工性「×(poor)」とした。結果を後記の表4~7に示す。
[ガスバリア材の作成]
実施例1、2、7~9、11、比較例1~3、6~8の樹脂組成物を、表4に示すフィルム作成溶媒に10質量%の濃度となるように溶解させた溶液を調製した。この溶液を、コロナ処理したPETフィルム(38μm厚)上にバーコーターで塗布し、80℃で5分間乾燥させることにより樹脂組成物からなる層を3μm有するガスバリア材を得た。
実施例1、2、7~9、11、比較例1~3、6~8の樹脂組成物を、表4に示すフィルム作成溶媒に10質量%の濃度となるように溶解させた溶液を調製した。この溶液を、コロナ処理したPETフィルム(38μm厚)上にバーコーターで塗布し、80℃で5分間乾燥させることにより樹脂組成物からなる層を3μm有するガスバリア材を得た。
〔酸素透過度〕
得られたこのガスバリア材、前記溶融押出単層フィルム、溶融押出多層フィルム、およびプレス成形フィルムについて、温度23℃、湿度65%RHにおける酸素透過度を、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OXTRAN2/20」)を用いて測定し、この測定した値を樹脂組成物の厚さ3μmの値に換算し、ガスバリア性を示す値とした。
また、前記ガスバリア材、溶融押出単層フィルム、およびプレス成形フィルムについては、湿度0%RHについても同様に測定した。結果を下記の表4~7に示す。
得られたこのガスバリア材、前記溶融押出単層フィルム、溶融押出多層フィルム、およびプレス成形フィルムについて、温度23℃、湿度65%RHにおける酸素透過度を、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OXTRAN2/20」)を用いて測定し、この測定した値を樹脂組成物の厚さ3μmの値に換算し、ガスバリア性を示す値とした。
また、前記ガスバリア材、溶融押出単層フィルム、およびプレス成形フィルムについては、湿度0%RHについても同様に測定した。結果を下記の表4~7に示す。
表4~6、図14~16から、本発明で規定する要件を全て満たす実施例1、2または6のフィルムは、ガラス転移温度よりも10℃、20℃、または30℃高い温度において、降伏点が現れず、応力がひずみと共に増加する挙動が観察された。このことから、実施例1、2、6のフィルムは、Tg+10~30℃の加工温度でフィルムを引っ張った時に、適度な張力がかかり延伸加工に適するものであった。
また、実施例6のフィルムを100mm×100mmの大きさに切り出して、Bruckner Maschinenbau社製研究開発用延伸装置Karo IVにて、Tg+30℃である101℃で同時2軸延伸を試みたところ、2.0×2.0倍に破れや欠点なく延伸加工可能であった。さらに、この延伸後のフィルムから85mm×85mmの試験片を切り出し、111℃のオリーブ油に浸漬したところ、10秒以内に収縮し、収縮後のフィルムの大きさは49×48mmであった。このことから、実施例6のフィルムは延伸加工後のシュリンク性も有していることが分かった。
また、実施例6のフィルムを100mm×100mmの大きさに切り出して、Bruckner Maschinenbau社製研究開発用延伸装置Karo IVにて、Tg+30℃である101℃で同時2軸延伸を試みたところ、2.0×2.0倍に破れや欠点なく延伸加工可能であった。さらに、この延伸後のフィルムから85mm×85mmの試験片を切り出し、111℃のオリーブ油に浸漬したところ、10秒以内に収縮し、収縮後のフィルムの大きさは49×48mmであった。このことから、実施例6のフィルムは延伸加工後のシュリンク性も有していることが分かった。
また、表4、7の結果や、図17、18から、本発明で規定する要件を満たさない比較例1、2のフィルムは、ガラス転移温度-10℃、±0、+10℃、+20℃、+30℃の全ての温度において降伏点を有し、延伸加工に適さないものであった。
以上の結果から、実施例1~11の変性EVOH系樹脂組成物は、延伸加工性に優れ、かつ、酸素透過度も低く、生分解度も高いものであった。
一方、H1/H3の比率が式(1)を満たさず、H2/H3の比率が式(2)を満たさない比較例1、4のEVOH系樹脂組成物および比較例2、3、5、6の変性EVOH系樹脂組成物は、延伸加工性に劣るものであった。
また、比較例4のEVOH系樹脂組成物および比較例5、6の変性EVOH系樹脂組成物は生分解性に劣るものであった。
さらに、比較例7の変性EVOH樹脂組成物はガラス転移温度よりも30℃高い温度での引張試験で降伏点は観察されず、また、式(2)を満たすものの、式(1)、式(3)を満たさず、この樹脂の場合は結晶化が遅すぎ、生分解性にも劣るものであった。
また、比較例8の変性EVOH樹脂組成物は、ガラス転移温度よりも30℃高い温度での引張試験で降伏点は観察されず、式(1)、式(2)、式(3)ともに満足していて、適切な結晶化速度を有しており、生分解性も好ましかったが、共役ポリエンの量が検出できない程度に少なく、先に表3に示したように熱安定性に不足するものであった。
一方、H1/H3の比率が式(1)を満たさず、H2/H3の比率が式(2)を満たさない比較例1、4のEVOH系樹脂組成物および比較例2、3、5、6の変性EVOH系樹脂組成物は、延伸加工性に劣るものであった。
また、比較例4のEVOH系樹脂組成物および比較例5、6の変性EVOH系樹脂組成物は生分解性に劣るものであった。
さらに、比較例7の変性EVOH樹脂組成物はガラス転移温度よりも30℃高い温度での引張試験で降伏点は観察されず、また、式(2)を満たすものの、式(1)、式(3)を満たさず、この樹脂の場合は結晶化が遅すぎ、生分解性にも劣るものであった。
また、比較例8の変性EVOH樹脂組成物は、ガラス転移温度よりも30℃高い温度での引張試験で降伏点は観察されず、式(1)、式(2)、式(3)ともに満足していて、適切な結晶化速度を有しており、生分解性も好ましかったが、共役ポリエンの量が検出できない程度に少なく、先に表3に示したように熱安定性に不足するものであった。
本変性EVOH系樹脂組成物は、延伸加工性にすぐれ、かつ、酸素透過度が低く生分解性に優れ、熱安定性にも優れるため、包装用材料として有用であり、特に食品や医薬品等の包装材料として好適に用いることができる。
Claims (3)
- 側鎖に一級水酸基構造単位を有する変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂と、共役ポリエンを0.1~500ppm含む樹脂組成物であって、
上記変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂のエチレン構造単位の含有量が1~16.5mol%であり、側鎖一級水酸基構造単位(mol%)の含有量をDとし、
該樹脂組成物を示差走査熱量分析(DSC)で下記分析条件1に従い分析し、観察される融解ピークのうち、変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂の融点-10℃以上の高温に観察される融解ピークの融解エンタルピーをH1、下記分析条件2に従い分析し、観察される融解ピークの融解エンタルピーをH3としたとき、下記式(1)を満たす変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物。
0.55≦H1/H3≦-0.025×D+0.97・・・(1)
[分析条件1]
(1)10℃/分で変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2)変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の融点-10℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3)変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂の融点組成物-20℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(4)変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の融点-30℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(5)変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の融点-40℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(6)変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の融点-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(7)変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(8)10℃/分で変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の融点+30℃まで再加熱する。
[分析条件2]
(1’)10℃/分で変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の融点+30℃まで加熱し、該温度にて1分間溶融状態を保つ、
(2’)変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物を-50℃まで10℃/分で冷却し、該温度にて15分保持、
(3’)10℃/分で再加熱する。
なお、前記変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物の融点とは、JIS K7121において、一定の熱処理を行った後融解温度を測定する方法に準じて求めた融解ピーク温度である。 - 分析条件1で観察されるすべてのピークの融解エンタルピーの合計をH2としたとき、下記式(2)および(3)を満たす請求項1記載の変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物。
H2/H3≦0.2×D+1 ・・・(2)
D≦4.8・・・(3) - 請求項1または2記載の変性エチレン-ビニルアルコール系樹脂組成物からなる層を有するガスバリア材。
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