JP2023077042A - 車体構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】スモールオーバラップオフセット衝突時の車室変形を抑制するとともに重量の増加を抑制した車体構造を提供する。【解決手段】乗員が収容される車室2の前部における側端部に設けられ上下方向に延在するフロントピラーロワ10と、フロントピラーロワの上端部から上方側かつ後方側へ傾斜して延在するフロントピラーアッパ20と、フロントピラーロワとフロントピラーアッパとの接合部近傍から車両前方側へ突き出したアッパフレーム70とを備える車体構造1を、前端部111がアッパフレームに固定されるとともに後端部112がアッパフレームとフロントピラーロワとの結合箇所よりも下方側でフロントピラーロワに固定される連結部材110と、連結部材から下方側に突出し、衝突時に車室に対して後退する前輪FWと当接する前輪当接部120とを備える構成とする。【選択図】図2

Description

本発明は、自動車等の車両の車体構造に関する。
自動車等の車両の車体構造に関する技術として、例えば特許文献1には、大幅な補強を行うことなく、衝撃荷重の入力時に構成部材が車室内方向に進入するのを防止する車体側部構造として、フロントピラーの一部を車室外側に凹状に窪ませた脆弱部を設けることが記載されている。脆弱部は、フロントピラーの前端部から長手方向に荷重が入力されたときに、傾斜領域の車室外側に向かう屈曲変形を誘起する外側変形誘起部を構成することが記載されている。
特許文献2には、フードリッジメンバに衝撃入力荷重が作用しても、フロントピラー全体を強化することなく、フロントピラーの後退を抑制した車体前部構造として、フードリッジメンバのストラットハウジングとフロントピラーとの間の部分に脆弱部を設け、大きな衝撃荷重がフードリッジメンバの前側から入力された場合には、脆弱部が変形するよう構成したものが記載されている。
特許文献3には、車両の重量の増加を招くことなく衝撃吸収性能を高めるための車体構造であって、フロントピラーはアウタリインフォースメント(以下「R/F」という)を備えており、フロントピラーアウタR/Fにおけるベルトライン部の内側には、フロントピラーパッチR/Fが配設されることが記載されている。また、フロントピラーアウタR/Fには、高強度部および脆弱部が形成されることが記載されている。
特開2014-104836号公報 特開2006- 88949号公報 国際公開WO2011/030463A1
車幅方向における側端部近傍の微小な領域にのみ車両前方側から衝突物が衝突するスモールオーバラップオフセット衝突では、オーバラップが比較的大きいオフセット衝突やフルラップ衝突に対して、衝突エネルギを十分に吸収できない状態で、車室に比較的大きな荷重が伝達され、車室の変形が生じることが懸念される。
これに対し、車室構造自体の強度を向上することも考えられるが、この場合、例えば部材の板厚や断面を拡大したり、補強構造を追加することなどにより、車体重量が増加してしまう。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、スモールオーバラップオフセット衝突時の車室変形を抑制するとともに重量の増加を抑制した車体構造を提供することである。
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る車体構造は、乗員が収容される車室の前部における側端部に設けられ上下方向に延在するフロントピラーロワと、前記フロントピラーロワの上端部から上方側かつ後方側へ傾斜して延在するフロントピラーアッパと、前記フロントピラーロワと前記フロントピラーアッパとの接合部近傍から車両前方側へ突き出したアッパフレームとを備える車体構造であって、前端部が前記アッパフレームに結合されるとともに後端部が前記アッパフレームと前記フロントピラーロワとの結合箇所よりも下方側で前記フロントピラーロワに結合される連結部材と、前記連結部材から下方側に突出し、衝突時に前記車室に対して後退する前輪と当接する前輪当接部とを備えることを特徴とする。
これによれば、衝突時に前輪が後退し、前輪当接部に当接すると、連結部材は、前輪からの入力によって、車幅方向から見たときに上方が凸となる方向に屈曲変形する。
連結部材の屈曲変形により、アッパフレームには前端部が後端部より下がる前下がり方向に回動するモーメントが負荷される。
アッパフレームが前下がり方向に回動する車体変形が発生することにより、アッパフレームとフロントピラーアッパとの相対傾斜が小さくなり、アッパフレームからフロントピラーアッパへ、車体後方側への荷重伝達を軸力に近い状態で行うことが可能となる。
このため、衝突により入力されたエネルギの車体後方側への伝達を促進し、フロントピラーロワ等の車室前部構造の圧壊により吸収することが必要なエネルギが低減される。
これにより、フロントピラーロワ、フロントピラーアッパ等に、重量増を伴う過度な補強を行うことなく、スモールオーバラップオフセット衝突時の車室変形を抑制することができる。
本発明において、前記フロントピラーロワにおける前記連結部材との結合箇所よりも上方の領域に、前記フロントピラーロワの前部の強度を後部に対して部分的に低下させた脆弱部を設けた構成とすることができる。
これによれば、衝突時におけるフロントピラーロワの上部の車両後方が凸となる方向の屈曲変形又は湾曲変形を誘起することにより、アッパフレームが前下がりとなる車体変形を確実に発生させ、上述した効果を促進することができる。
本発明において、前記アッパフレームよりも車幅方向内側でありかつ下方側で前記車室の前部から車両前方側へ突き出したフロントサイドフレームと、前記アッパフレームと前記フロントサイドフレームとを前記車室に対して車両前方側に離間した箇所で連結する連結構造体とを備える構成とすることができる。
これによれば、衝突時に連結構造体が車室に対して後退する挙動により、連結部材の前端部に後端部側への荷重を入力することができ、連結部材の座屈変形を促進し、上述した効果をより確実に得ることができる。
なお、連結構造体は、典型的にはストラット式サスペンション装置のストラット上部を収容するストラットハウジングを利用することができるが、他の構造体であってもよい。
以上説明したように、本発明によれば、スモールオーバラップオフセット衝突時の車室変形を抑制するとともに重量の増加を抑制した車体構造を提供することができる。
本発明を適用した車体構造の第1実施形態を車両上方から見た状態を示す模式的平面視図である。 第1実施形態の車体構造を車幅方向から見た状態を示す模式的側面視図である。 スモールオーバラップオフセット衝突後における第1実施形態の車体構造を車幅方向から見た状態を示す模式的側面視図である。 本発明を適用した車体構造の第2実施形態におけるアッパフレーム周辺の構造の模式的側面視図である。
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した車体構造の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の車体構造1は、車室2の前方側にパワーユニットコンパートメント3が設けられた乗用車等の自動車に設けられるものである。
図1は、第1実施形態の車体構造を車両上方から見た状態を示す模式的平面視図である。
図2は、第1実施形態の車体構造を車幅方向から見た状態を示す模式的側面視図である。
車体構造1は、車室2とパワーユニットコンパートメント3との接合部周辺の構成に特徴を有する。
車室2は、図示しない乗員等を収容する空間部である。
パワーユニットコンパートメント3は、例えば、図示しないエンジン、トランスミッション、モータジェネレータ、及び、その補機類などのパワーユニットを収容する空間部である。
パワーユニットコンパートメント3は、車室2の前端部から車両前方側へ張り出して形成されている。
車体構造1は、フロントピラーロワ10、フロントピラーアッパ20、トーボード30、トーボードクロスメンバ40、フロアパネル50、フロントサイドフレーム60、アッパフレーム70、ストラットハウジング80等を有して形成されている。
フロントピラーロワ10は、車室の前端部かつ左右側端部にそれぞれ設けられた柱状の部材である。
フロントピラーロワ10は、上下方向に延在している。
フロントピラーロワ10は、長手方向と直交する平面で切って見た断面形状が閉断面として形成されている。
フロントピラーロワ10は、図示しないフロントウインドウガラス及びフロントドアガラスの下端部よりも下方側(いわゆるグリーンハウスよりも下方側)の領域に設けられている。
フロントピラーアッパ20は、フロントピラーロワ10の上端部から上方へ突き出した柱状の部材である。
フロントピラーロワ10、フロントピラーアッパ20は共同して車両のフロントピラー(Aピラー)を構成する。
フロントピラーアッパ20は、上端部が下端部に対して車両後方側となるように、後傾している。
また、フロントピラーアッパ20は、上端部が下端部に対して車幅方向内側となるように、内傾して配置されている。
フロントピラーアッパ20は、長手方向と直交する平面で切って見た断面形状が閉断面として形成されている。
フロントピラーアッパ20は、フロントウインドウガラスの側端部、及び、フロントドアガラスの前端部に沿って配置されている。
フロントピラーアッパ20の後端部は、図示しないルーフの側部に沿って延在する図示しないルーフサイドフレームに、連続的に接続されている。
ルーフサイドフレームには、図示しないセンターピラー(Aピラー)、リアピラー(Cピラー、Dピラー等)の上端部が接続される。
トーボード30は、左右のフロントピラーロワ10の間にわたして設けられたパネル状の部材である。
トーボード30は、車室2の下半部における前面部を構成する部分である。
トーボード30の上部31は、車幅方向から見たときに、上下方向に沿って延在している。
トーボード30の下部32は、上部31の下端部から下方へ張り出して形成されている。
下部32は、下端部が上端部(上部31との接続部)に対して車両後方側となるように、前傾して配置されている。
トーボードクロスメンバ40は、左右のフロントピラーロワ10の上部の間にわたして配置されている。
トーボードクロスメンバ40は、トーボード30の上部31に対して車両前方側へ張り出して形成されている。
トーボードクロスメンバ40は、フロントウインドウガラスの下端部に沿って延在している。
フロアパネル50は、車室2の床面部を構成するパネル状の部材である。
フロアパネル50は、トーボード30の下部32の下端部から、車両後方側へ張り出して形成されている。
フロアパネル50の側端部には、サイドシル51が設けられている。
サイドシル51は、閉断面を有しかつ車両前後方向に延在する構造部材である。
サイドシル51の前端部は、フロントピラーロワ10の下端部に結合されている。
フロントサイドフレーム60は、図示しないパワーユニット及びフロントサスペンションの一部を支持する車体の構造部材である。
フロントサイドフレーム60は、車室2の前部からパワーユニットコンパートメント3にかけて、車両前後方向に延在している。
フロントサイドフレーム60は、車両前後方向から見た断面形状が閉断面となるよう構成されている。
フロントサイドフレーム60の前部61は、トーボード30における上部31と下部32との接合部付近から、車両前方側へ突出して形成されている。
フロントサイドフレーム60の中間部62は、トーボード30の下部32の前面(下面)に沿って配置されている。
フロントサイドフレーム60の後部63は、フロアパネル50の下面に沿って、車両前後方向に延在している。
中間部62、後部63は、トーボード30、フロアパネル50にそれぞれ溶接等によって固定されている。
フロントサイドフレーム60は、フロントピラーロワ10よりも車幅方向内側に配置されている。
フロントサイドフレーム60は、車幅方向に離間して一対設けられている。
左右のフロントサイドフレーム60の間には、パワーユニットの主機等が配置される。
フロントサイドフレーム60の車幅方向外側には、前輪FWと、前輪FWを支持する図示しないサスペンション装置の一部が配置される。
アッパフレーム70は、フロントピラーロワ10の前部から車両前方側へ突き出した構造部材である。
アッパフレーム70は、車両前後方向から見たときに、それぞれ平板状に形成された上面部71、下面部72、内側側面部73、外側側面部74を有する矩形状の閉断面形状を有する。
アッパフレーム70の上面部71は、フロントピラーロワ10の上端部と同等の高さに配置されている。
アッパフレーム70の下面部72は、上面部71と上下方向に間隔を隔てて対向して配置されている。
アッパフレーム70の下面部72は、図2に示すように車幅方向から見たときに、前端部に対して後端部が低くなるよう水平方向に対して傾斜している。
アッパフレーム70の内側側面部73は、車両前後方向に沿って配置されている。
アッパフレーム70の外側側面部74は、内側側面部73と車幅方向(左右方向)に間隔を隔てて対向して配置されている。
アッパフレーム70の外側側面部74は、図1に示すように上方から見た平面視において、前端部に対して後端部が車幅方向外側となるように、車両前後方向に対して傾斜して配置されている。
上記構成により、アッパフレーム70は、車両前後方向と直交する断面における断面が、車両前方側から後方側へ向かうのにつれて連続的に大きくなるよう形成されている。
ストラットハウジング80は、サスペンション装置の一部を収容する部分である。
ストラットハウジング80は、例えば、下方側が開口したボックス状の構造体として形成することができる。
例えば、サスペンション装置がマクファーソンストラット式である場合には、ストラットハウジング80は、図示しないストラットの上部を収容する。
ストラットは、ショックアブソーバ及びその外径側に巻き回されたコイルスプリングを有する。
ショックアブソーバの下端部は、前輪FWが回転可能に取り付けられる図示しないハブベアリングハウジング(ハブナックル)に締結される。
ストラットハウジング80には、ストラットの上端部が締結される図示しないストラットトップマウント部が形成されている。
ストラットハウジング80の下部は、フロントサイドフレーム60の前部61の車幅方向外側の部分に溶接等により結合されている。
ストラットハウジング80とフロントサイドフレーム60との結合箇所は、フロントサイドフレーム60とトーボード30との結合箇所に対して車両前方側に、トーボード30との間に間隔を有して配置されている。
ストラットハウジング80の上部は、アッパフレーム70の内側側面部73に、溶接等により結合されている。
ストラットハウジング80は、本発明の連結構造体として機能する。
第1実施形態の車体構造においては、以下説明するレインフォースメント110、突出部120が設けられる。
レインフォースメント(リインフォースメント)110は、主にアッパフレーム70の下方側に配置され、アッパフレーム70の前端部近傍と、アッパフレーム70よりも下方側におけるフロントピラーロワ10の前面部とを連結する軸状の連結部材である。
レインフォースメント110は、例えば、鋼やアルミニウム系合金などの金属製のパイプ材により構成することができる。
レインフォースメント110は、中心軸(筒軸)が直線状となるよう形成されている。
レインフォースメント110の前端部111は、アッパフレーム70の前部において、下面部72に、例えば溶接等により結合されている。
車両前後方向における前端部111の位置は、アッパフレーム70とストラットハウジング80との結合部又はその近傍に配置されている。
レインフォースメント110は、アッパフレーム70に対して相対回動しないよう拘束されている。
レインフォース110の後端部112は、図2に示すように、フロントピラーロワ10とアッパフレーム70との結合箇所よりも下方側で、フロントピラーロワ10の前面部に、例えば溶接等により結合されている。
図1に示すように、レインフォースメント110の後端部112は、フロントピラーロワ10の内部に一部挿入された状態で、車幅方向における中央部に結合されている。
レインフォースメント110は、フロントピラーロワ10に対して相対回動しないよう拘束されている。
レインフォースメント110は、図2に示すように、車幅方向から見たときに、前端部111に対して、後端部112が低くなるよう傾斜して配置されている。
レインフォースメント110は、図1に示すように、車両上方から見たときに、車両前後方向に沿って配置されている。
車両1の衝突前(レインフォースメント110の屈曲変形前)においては、アッパフレーム70、フロントピラーロワ10の上部、及び、レインフォースメント110は、トラス状の構造体を形成している。
図2に示すように、レインフォースメント110の長手方向における中間部には、突出部120が形成されている。
突出部120は、本発明の前輪当接部である。
突出部120は、レインフォースメント110の下面部から下方側へ突出して形成されている。
突出部120は、例えば、鋼板などにより、車幅方向から見た平面形が三角形状となるプレート状に形成されている。
突出部120は、三角形状の一辺をレインフォースメント110の下面部に例えば溶接等によって結合されている。
突出部120は、アッパフレーム70の下面部72、及び、フロントピラーロワ10の前面部から、それぞれ離間した箇所に配置されている。
突出部120は、車両の通常走行時(非衝突時)においては、フロントサスペンションのストロークや、ゴムブッシュ等の弾性変形に起因する前輪FWの変位、ステアリング装置による前輪FWのステア(転舵)などがある場合であっても、前輪FWと当接しない(干渉しない)よう配置されている。
以下、第1実施形態の車体構造1を有する車両において、スモールオーバラップオフセット衝突が発生した際の状態について説明する。
図3は、スモールオーバラップオフセット衝突後における第1実施形態の車体構造を車幅方向から見た状態を示す模式的側面視図である。
フロントサイドフレーム60の前端部は、図示しないバンパビーム等を介して車両後方側への荷重を受けて圧壊しつつ車室2側へ後退する。
このとき、ストラットハウジング80を介して、アッパフレーム70にも車両後方側へ向いた荷重が伝達される。
また、特にスモールオーバラップオフセット衝突においては、前輪FWは、サスペンション装置の破壊を伴いつつ、車室2に対して上昇しながら後退する。
このとき、前輪FWの後方側上面は、突出部120と当接し、突出部120に対して荷重fを入力する。
荷重fの作用方向は、車幅方向から見たときに、後方側かつ上方側となるよう、水平方向、鉛直方向に対して傾斜している。
これにより、レインフォースメント110の中間部に局所的に荷重が入力され、レインフォースメント110は、突出部120が設けられた箇所を起点として、車幅方向から見たときに上方が凸となる方向に屈曲変形する。
上述したレインフォースメント110の屈曲変形により、アッパフレーム70の前部には、アッパフレーム70を前部が後部に対して下がる方向に回転させるモーメントM1が負荷される。
一方、フロントピラーロワ10の前面部には、レインフォースメント110の後端部112近傍の領域を後傾させるモーメントM2が負荷される。
第1実施形態においては、フロントピラーロワ10の前部におけるレインフォースメント110との結合部よりも上方の領域を、他の部分よりも板厚が小さい脆弱部10a(図1参照)として構成している。
その結果、フロントピラーロワ10は、図3に示すように、レインフォースメント110との結合部よりも上方の領域が、車幅方向から見たときに車両後方側が凸となるように湾曲する変形を示す。
このようなフロントピラーロワ10の湾曲変形は、それ自体がエネルギ吸収の効果を発揮し、さらに、レインフォースメント110の屈曲変形によるアッパフレーム70へのモーメントM1の入力を阻害しない機能を有する。
さらに、フロントピラーロワ10の湾曲変形が生じた部分の上部(典型的にはフロントピラーロワ10の上端部)が前傾することにより、アッパフレーム70は、前部が後部に対して下がる方向(前下がり)に回動する。
このとき、フロントピラーアッパ20は、後端部をルーフサイドフレームやセンターピラー等によって拘束されているため、アッパフレーム70のような顕著な傾斜は発生しない。
アッパフレーム70が前下がりに回動することにより、アッパフレーム70の中心軸とフロントピラーアッパ20の中心軸とがなす角度は小さくなる(一直線に近づく)。
これにより、アッパフレーム70からフロントピラーアッパ20に荷重Fを、軸力に近い形で効果的に伝達することができる。
フロントピラーアッパ20に入力された軸力方向の荷重は、図示しないルーフサイドレールやセンターピラー以後の各ピラーに伝達され、車両後方側で各部材に分散して吸収される。
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)衝突時に前輪FWが後退し、突出部120に当接すると、レインフォースメント110は、前輪FWからの入力によって上方が凸となる方向に屈曲変形する。
レインフォースメント110の屈曲変形により、アッパフレーム70には、前端部が後端部より下がる前下がり方向に回動するモーメントM1が負荷される。
アッパフレーム70が前下がり方向に回動する車体変形が発生することにより、アッパフレーム70とフロントピラーアッパ20との相対傾斜が小さくなり、アッパフレーム70からフロントピラーアッパ20へ、車体後方側への荷重Fの伝達を軸力に近い状態で行うことが可能となる。
このため、衝突により入力されたエネルギの車体後方側への伝達を促進し、フロントピラーロワ10等の車室前部構造の圧壊により吸収することが必要なエネルギが低減される。
これにより、フロントピラーロワ10、フロントピラーアッパ20等に、重量増を伴う過度な補強を行うことなく、スモールオーバラップオフセット衝突時の車室2の変形を抑制することができる。
(2)アッパフレーム70の後端部62との接合部近傍におけるフロントピラーロワ10の前面部の板厚を他の部分に対して小さくし、脆弱部10aを形成することによって、衝突時におけるフロントピラーロワ10の上部の車両後方が凸となる方向の屈曲変形又は湾曲変形を誘起し、アッパフレーム70が前下がりとなる車体変形を確実に発生させ、上述した効果を促進することができる。
(3)アッパフレーム70の前部がストラットハウジング80によってフロントサイドフレーム60と連結されていることにより、衝突時にストラットハウジング80が車室2に対して後退する挙動により、レインフォースメント110の前端部111に後端部112側への荷重を軸力として入力することができ、レインフォースメント110の座屈変形を促進し、上述した効果をより確実に得ることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した車体構造の第2実施形態について説明する。
以下、上述した第1実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図4は、第2実施形態の車体構造におけるアッパフレーム周辺の構造の模式的側面視図である。
第2実施形態の車体構造においては、フロントピラーロワ10のアッパフレーム70との接合部に、脆弱部11を形成している。
脆弱部11は、例えば、フロントピラーロワ10の前面部を、車幅方向に沿った溝状に、車両後方側に凹ませて形成した凹部を有する。
以上説明した第2実施形態によれば、衝突後レインフォースメント110が屈曲変形し、フロントピラーロワ10にモーメントM2が入力された際に、フロントピラーロワ10が脆弱部11を変形の起点として、車幅方向から見たときに、車両後方側が凸となる方向の屈曲変形が誘起される。
これにより、アッパフレーム70が前下がりとなる車体変形を、フロントピラーロワ10が拘束して阻害することが防止され、上述した第1実施形態の効果と同様の効果を促進することができる。
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)車体構造を構成する各構成要素の形状、構造、材質、製法、配置、個数などは、上述した実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
(2)連結部材(レインフォースメント)及び前輪当接部(突出部)の構成は、各実施形態の構成に限らず、適宜変更することができる。
例えば、各実施形態においては、レインフォースメントをストレートなパイプ材によって形成しているが、これに限らず、例えば屈曲変形あるいは湾曲変形の起点となるように、車幅方向から見たときに上方が凸となるように、予め屈曲又は湾曲させた構成としてもよい。
また、連結部材は、パイプ材によって形成するものに限らず、例えばアルミニウム系合金の押出材や、プレス加工された板金部材を集成し接合したもの、炭素樹脂複合材など、材質や製法は適宜変更することができる。
また、各実施形態では、前輪当接部である突出部を、連結部材とは別部品として構成しているが、突出部を連結部材の一部として、連結部材と一体に形成してもよい。
(3)実施形態では、アッパフレームとフロントサイドフレームとをストラットハウジングにより連結しているが、これに限らず、他の構造体によって連結してもよい。
1 車体構造 2 車室
3 パワーユニットコンパートメント
10 フロントピラーロワ 10a 脆弱部
11 脆弱部 20 フロントピラーアッパ
30 トーボード 31 上部
32 下部 40 トーボードクロスメンバ
50 フロアパネル 51 サイドシル
60 フロントサイドフレーム 61 前部
62 中間部 63 後部
70 アッパフレーム 71 上面部
72 下面部 73 内側側面部
74 外側側面部 80 ストラットハウジング
110 レインフォースメント
111 前端部 112 後端部
120 突出部
FW 前輪 M1,M2 モーメント
f 前輪から入力される荷重
F アッパフレームが軸力として伝達する荷重

Claims (3)

  1. 乗員が収容される車室の前部における側端部に設けられ上下方向に延在するフロントピラーロワと、
    前記フロントピラーロワの上端部から上方側かつ後方側へ傾斜して延在するフロントピラーアッパと、
    前記フロントピラーロワと前記フロントピラーアッパとの接合部近傍から車両前方側へ突き出したアッパフレームと
    を備える車体構造であって、
    前端部が前記アッパフレームに結合されるとともに後端部が前記アッパフレームと前記フロントピラーロワとの結合箇所よりも下方側で前記フロントピラーロワに結合される連結部材と、
    前記連結部材から下方側に突出し、衝突時に前記車室に対して後退する前輪と当接する前輪当接部と
    を備えることを特徴とする車体構造。
  2. 前記フロントピラーロワにおける前記連結部材との結合箇所よりも上方の領域に、前記フロントピラーロワの前部の強度を後部に対して部分的に低下させた脆弱部を設けたこと
    を特徴とする請求項1に記載の車体構造。
  3. 前記アッパフレームよりも車幅方向内側でありかつ下方側で前記車室の前部から車両前方側へ突き出したフロントサイドフレームと、
    前記アッパフレームと前記フロントサイドフレームとを前記車室に対して車両前方側に離間した箇所で連結する連結構造体と
    を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体構造。
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