JP2023076176A - ポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法およびその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便な操作で特定の含水率のPHAシートを得ることができる製造方法を提供する。【解決手段】(a)pHが7以下であるPHA水性懸濁液を調製する工程、(b)前記工程(a)で調製したPHA水性懸濁液の中心部の温度が50~95℃となるように予備加熱する工程、および(c)前記工程(b)で予備加熱したPHA水性懸濁液を、加熱プレス装置を用いて加熱および加圧する工程を含む、含水率が20~40%であるPHAシートの製造方法。【選択図】図1

Description

本発明はポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法およびその利用に関する。
ポリヒドロキシアルカン酸(以下、「PHA」と称する場合がある。)は、生分解性を有することが知られている。
微生物が生成するPHAは、微生物の菌体内に蓄積されるため、PHAをプラスチックとして利用するためには、微生物の菌体内からPHAを分離・精製する工程が必要となる。PHAを分離・精製する工程では、PHA含有微生物の菌体を破砕もしくはPHA以外の生物由来成分を可溶化した後、得られた水性懸濁液からPHAを分離させる。このとき、例えば、遠心分離、ろ過、乾燥等の分離操作を行う。乾燥操作には、噴霧乾燥機、流動層乾燥機等が用いられるが、操作が簡便であることから、好ましくは噴霧乾燥機が用いられる。
これまで、本発明者は、pH7以下の水性懸濁液中でのPHAの凝集を防止するために、水性懸濁液のpHを7以下に調整する前にポリビニルアルコール(PVA)を分散剤として添加し、その後、得られたpH7以下の水性懸濁液を噴霧乾燥する技術を開発している(特許文献1)。
国際公開第2018/070492号
上述した特許文献1の技術は優れたものであるが、噴霧乾燥ではPHAが粉体として得られるため、PHAの取り扱い性の観点から改善の余地がある。すなわち、PHA粉体に代わる材料として、PHAのバルク(とりわけ、PHAシート)が要望されていた。
そこで、本発明の目的は、噴霧乾燥に代わる技術として、簡便な操作で特定の含水率を有するPHAシートを得ることができる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、予備加熱したPHA水性懸濁液を、加熱加圧装置を用いて加熱および加圧することにより、簡便に特定の含水率を有するPHAシートが得られるとの新規知見を見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明の一態様は、(a)pHが7以下であるPHA水性懸濁液を調製する工程、(b)前記工程(a)で調製したPHA水性懸濁液の中心部の温度が50~95℃となるように予備加熱する工程、および(c)前記工程(b)で予備加熱したPHA水性懸濁液を、加熱プレス装置を用いて加熱および加圧する工程、を含む、含水率が20~40%のPHAシートの製造方法(以下、「本製造方法」と称する。)である。
また、本発明の一態様は、97重量%以上のPHAを含み、かつ、厚みが5~12.0mmである、PHAシート(以下、「本PHAシート」と称する。)である。
本発明の一態様によれば、簡便に特定の含水率を有するPHAシートを得ることができる。
本発明の一実施形態に係る、ダブルベルトプレス機の概略図である。
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
〔1.本発明の概要〕
本発明者は、PHAの製造において噴霧乾燥を行う場合、次の問題点があると考えた。例えば、噴霧乾燥操作では、水性懸濁液中のすべての水を蒸発させる必要があるために、膨大な熱エネルギーが要求される。また、噴霧乾燥操作に用いられる噴霧乾燥機は、巨大になりがちであり、設備設置面積が大きくなるという点でも問題となる。また、pH7以下の高濃度のPHA水性懸濁液を噴霧乾燥機に送液するためには、粘度が低い方が好ましいため水性懸濁液中に分散剤を添加する必要があるが、分散剤の添加が製造コストや用途の面で改善の余地がある。さらに、噴霧乾燥ではPHAが粉体として得られるため、PHAの取り扱い性の観点からも改善の余地がある。
そこで、噴霧乾燥を代替し得る技術の開発を目指し、鋭意研究を行ったところ、加熱プレス装置を用いる方法が有用であることを見出した。具体的には、本発明者は、加熱プレス装置内で加熱および加圧工程に供する前に、PHA水性懸濁液を予備加熱することにより、簡便に特定の含水率を有するPHAシートを得ることができることを初めて見出した。PHAシートの製造において、(1)加熱プレス装置を用いること、および(2)当該加熱プレス装置を用いた製造において、加熱および加圧工程に供する前に、PHA水性懸濁液を予備加熱すること、およびそれにより簡便に特定の含水率を有するPHAシートを得ることができることはこれまでに報告がなく、本発明者が見出した上記知見は、驚くべきことである。
本発明者は、加熱プレス装置内で加熱および加圧工程に供する前に、PHA水性懸濁液を予備加熱することにより、加熱プレス装置内で加熱および加圧した際にPHA水性懸濁液の内部まで熱融着が進行し、その結果、簡便に特定の含水率を有するPHAシートが得られると推測している。また、加熱プレス装置を用いると、十分な加熱・加圧が担保されることにより、厚みのバラつきが少なく、均一なPHAシートが製造できる。
このように、本製造方法によれば、簡便な操作で特定の含水率を有するPHAシートを得ることができる。したがって、本製造方法は、PHAシートの製造において極めて有利である。また、本製造方法によれば、シート化することにより、ロール状にして保管することが可能となり、保管管理の観点からも有利である。
また、上述したような構成によれば、プラスチックゴミの発生量を低減でき、これにより、例えば、目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」や目標14「持続可能な開発のために、海・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」等の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
〔2.PHAの製造方法〕
本製造方法は、下記の工程(a)~(c)を含む方法である。
・工程(a):pHが7以下であるPHA水性懸濁液を調製する工程
・工程(b):前記工程(a)で調製したPHA水性懸濁液の中心部の温度が50~95℃となるように予備加熱する工程
・工程(c):前記工程(b)で予備加熱したPHA水性懸濁液を、加熱プレス装置を用いて加熱および加圧する工程
(工程(a))
本製造方法における工程(a)では、pHが7以下であるPHA水性懸濁液を調製する。当該水性懸濁液において、PHAは水性媒体中に分散した状態で存在している。本明細書では、少なくともPHAを含む水性懸濁液を、「PHA水性懸濁液」と略して表記する場合がある。
<PHA>
本明細書において、「PHA」とは、ヒドロキシアルカン酸をモノマーユニットとする重合体の総称である。PHAを構成するヒドロキシアルカン酸としては、特に限定されないが、例えば、3-ヒドロキシブタン酸、4-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシヘプタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸等が挙げられる。これらの重合体は、単独重合体でも、2種以上のモノマーユニットを含む共重合体でもよい。
より詳しくは、PHAとしては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)(P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)(P3HB3HO)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)(P3HB3HOD)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)(P3HB3HD)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HV3HH)等が挙げられる。中でも、工業的に生産が容易であることから、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB4HBが好ましい。
また、繰り返し単位の組成比を変えることで、融点、結晶化度を変化させ、結果として、ヤング率、耐熱性等の物性を変化させることができ、かつ、ポリプロピレンとポリエチレンとの間の物性を付与することが可能であること、および上記したように工業的に生産が容易であり、物性的に有用なプラスチックであるという観点から、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシヘキサン酸の共重合体であるP3HB3HHがより好ましい。
本発明の一実施形態において、P3HB3HHの繰り返し単位の組成比は、柔軟性および強度のバランスの観点から、3-ヒドロキシブチレート単位/3-ヒドロキシヘキサノエート単位の組成比が、80/20~99/1(mol/mol)であることが好ましく、83/17~97/3(mo1/mo1)であることがより好ましい。3-ヒドロキシブチレート単位/3-ヒドロキシヘキサノエート単位の組成比が、99/1(mol/mol)以下であると、十分な柔軟性が得られ、80/20(mol/mol)以上であると、十分な硬度が得られる。前記P3HB3HHにおける3HB単位の含有量が多くなる場合、得られるPHA(PHAシート)の溶融温度が高くなり、その結果、耐熱性が向上する。また、前記P3HB3HHにおける3HB単位の含有量が多くなる場合、得られるPHA(PHAシート)の結晶化速度が速くなり、その結果、加工性が向上する。前記PHA(PHAシート)の耐熱性および加工性を向上させるとの観点からは、前記P3HB3HHの3HB単位/3HH単位の組成比が100/0、すなわち、P3HBであることが特に好ましい。
工程(a)において、出発原料として用いるPHA水性懸濁液は、特に限定されないが、例えば、細胞内にPHAを生成する能力を有する微生物を培養する培養工程、および当該培養工程の後、PHA以外の物質を分解および/または除去する精製工程、を含む方法により得ることができる。
本製造方法は、工程(a)の前に、PHA水性懸濁液を得る工程(例えば、上述の培養工程および精製工程を含む工程)を含んでいてもよい。当該工程において用いられる微生物は、細胞内にPHAを生成し得る微生物である限り、特に限定されない。例えば、天然から単離された微生物や菌株の寄託機関(例えば、IFO、ATCC等)に寄託されている微生物、またはそれらから調製し得る変異体や形質転換体等を使用できる。より詳しくは、例えば、カプリアビダス(Cupriavidus)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、ラルストニア(Ralstonia)属、シュウドモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、ノカルディア(Nocardia)属、アエロモナス(Aeromonas)属の菌等が挙げられる。中でも、アエロモナス属、アルカリゲネス属、ラルストニア属、またはカプリアビダス属に属する微生物が好ましい。特に、アルカリゲネス・リポリティカ(A.lipolytica)、アルカリゲネス・ラトゥス(A.latus)、アエロモナス・キャビエ(A.caviae)、アエロモナス・ハイドロフィラ(A.hydrophila)、カプリアビダス・ネカトール(C.necator)等の菌株がより好ましく、カプリアビダス・ネカトールが最も好ましい。
また、微生物が、本来PHAの生産能力を有しないものである場合、またはPHAの生産量が低いものである場合には、当該微生物に目的とするPHAの合成酵素遺伝子および/またはその変異体を導入して得られる形質転換体を用いることもできる。このような形質転換体の作製に用いるPHAの合成酵素遺伝子としては特に限定されないが、アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素の遺伝子が好ましい。これらの微生物を適切な条件で培養することで、菌体内にPHAを蓄積した微生物菌体を得ることができる。当該微生物菌体の培養方法は特に限定されないが、例えば、特開平05-93049号公報等に記載された方法が用いられる。
上記の微生物を培養することにより作製されたPHA含有微生物には、不純物である菌体由来成分が多量に含まれているため、通常、PHA以外の不純物を分解および/または除去するための精製工程を実施され得る。この精製工程においては、特に限定されず、当業者が考え得る物理学的処理、化学的処理、生物学的処理等を適用することができ、例えば、国際公開第2010/067543号に記載の精製方法が好ましく適用できる。
上記の精製工程により、最終製品に残留する不純物量が概ね決定されるため、これらの不純物は、できる限り低減させた方が好ましい。当然に、用途によっては、最終製品の物性を損なわない限り不純物が混入しても構わないが、医療用用途等、高純度のPHAが必要とされる場合は、できる限り不純物を低減させることが好ましい。その際の精製度の指標としては、例えば、PHA水性懸濁液中のタンパク質量が挙げられる。当該タンパク質量は、好ましくは、PHA重量当たり30000ppm以下、より好ましくは、15000ppm以下、さらに好ましくは、10000ppm以下、最も好ましくは、7500ppm以下である。精製手段は、特に限定されず、例えば、上記した公知の方法を適用可能である。
なお、本製造方法におけるPHA水性懸濁液を構成する溶媒(「溶媒」は、「水性媒体」とも称する。)は、水、または水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。また、当該混合溶媒において、水と相溶性のある有機溶媒の濃度としては、使用する有機溶媒の水への溶解度以下であれば特に限定されない。また、水と相溶性のある有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、iso-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、アセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、ピリジン、ピペリジン等が挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、iso-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリル等が、除去しやすい点から好ましい。また、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、アセトン等が、入手容易であることからより好ましい。さらに、メタノール、エタノール、アセトンが、特に好ましい。なお、PHA水性懸濁液を構成する水性媒体は、本発明の本質を損なわない限り、他の溶媒、菌体由来の成分、精製時に発生する化合物等を含んでいても構わない。
本製造方法におけるPHA水性懸濁液を構成する水性媒体には、水が含まれていることが好ましい。水性媒体中の水の含有量は、5重量%以上が好ましく、より好ましくは、10重量%以上であり、さらに好ましくは、30重量%以上であり、特に好ましくは、50重量%以上である。
<その他>
本製造方法の工程(a)において、出発原料として用いるPHA水性懸濁液は、通常、上記の精製工程を経ることにより、7を超えるpHを有する。そこで、本製造方法の工程(a)により、上記PHA水性懸濁液のpHを7以下に調整する。その調整方法は、特に限定されず、例えば、酸を添加する方法等が挙げられる。酸は、特に限定されず、有機酸、無機酸のいずれでもよく、揮発性の有無は問わない。より具体的には、酸としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸等が使用できる。
上記調整工程において調整するPHA水性懸濁液のpHの上限については、PHAを加熱溶融した時の着色を低減したり、加熱時および/または乾燥時の分子量の安定性を確保する観点から、7以下であり、好ましくは、5以下であり、より好ましくは、4以下である。また、pHの下限については、容器の耐酸性の観点より、好ましくは、1以上であり、より好ましくは、2以上であり、さらに好ましくは、3以上である。PHA水性懸濁液のpHを7以下とすることによって、加熱溶融時の着色が低減され、加熱時および/または乾燥時の分子量低下が抑制されたPHAが得られる。
本製造方法の工程(a)により得られるPHA水性懸濁液におけるPHAの濃度は、乾燥ユーティリティーの面から経済的に有利であり、生産性が向上するため、例えば、30重量%以上であり、好ましくは、32.5重量%以上であり、より好ましくは、35重量%以上であり、さらに好ましくは、37.5重量%以上であり、特に好ましくは、40重量%以上である。また、PHAの濃度の上限は、最密充填となり、十分な流動性が確保できない可能性があるため、例えば、70重量%以下であり、好ましくは、65重量%以下であり、より好ましくは、60重量%以下である。PHAの濃度を調整する方法は、特に限定されず、水性媒体を添加したり、水性媒体の一部を除去する(例えば、遠心分離した後、上清を取り除く等による)等の方法が挙げられる。PHAの濃度の調整は、工程(a)のいずれの段階で実施してもよいし、工程(a)の前の段階で実施してもよい。
本発明の一実施形態において、本製造方法は、工程(a)で調製する水性懸濁液におけるPHAの濃度が、30~70重量%である。
本発明の一実施形態において、本製造方法の工程(a)により得られるPHA水性懸濁液におけるPHAの体積メジアン径(以下、単に「PHAの体積メジアン径」と称する。)は、例えば、優れた流動性が達成されるという観点から、0.5~5μmが好ましく、1~4.5μmがより好ましく、1~4μmがさらに好ましい。PHAの体積メジアン径は、HORIBA製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950を用いて測定される。
本発明の一実施形態において、本製造方法の工程(a)により得られるPHA水性懸濁液の粘度は、10 1/sのせん断速度を与えた時の粘度が1~120Pa・sが好ましく、2~100Pa・sがより好ましく、3~80Pa・sがさらに好ましい。PHA水性懸濁液の粘度が上記範囲であると、後述する工程(c)において、加熱プレス装置により加圧することが可能となる。また、PHA水性懸濁液の粘度が上記範囲であると、優れた堆積性が達成される。PHA水性懸濁液の粘度は、Anton Paar社製MCR302を用いて測定される。
(工程(b))
本製造方法における工程(b)では、工程(a)で調製したPHA水性懸濁液の中心部の温度が50~95℃となるように予備加熱する工程である。本製造方法における工程(b)は、工程(c)を行う前にPHA水性懸濁液を予備加熱する工程、と換言することもできる。本製造方法における工程(b)において、PHA水性懸濁液をあらかじめ一定温度以上に加熱しておくことにより、工程(c)において、PHA水性懸濁液の内部まで熱融着が進行し、一定の厚みを有するPHAシートを得ることができる。
工程(b)において、PHA水性懸濁液の中心部の温度は、50~95℃であり、好ましくは、55~94℃、より好ましくは、60~93℃、さらに好ましくは、65~92℃であり、特に好ましくは、70~91℃である。PHA水性懸濁液の中心部の温度が前記範囲内であれば、工程(c)において、PHA水性懸濁液の内部まで熱融着が進行し、得られるPHAシートの形状が安定する。なお、PHA水性懸濁液の中心部の温度は、実施例に記載の方法で測定される。
PHA水性懸濁液の中心部の温度は、例えば、加熱プレス装置に備えられた予熱機構により調整され得る。予熱機構の予備加熱温度は、PHA水性懸濁液の中心部の温度が上記の範囲となるように設定されればよく、特に限定されないが、例えば、50~95℃であり、好ましくは、60~95℃である。予熱機構の一例として、図1に示すように、加熱プレス装置としてダブルベルトプレス機を用いる場合、ダブルベルトプレス機に搬送される前段階に、予熱機構を設ける。この予熱機構は、例えば、搬送ベルト上に流延して搬送されるPHA水性懸濁液の上下の両面に設ける構成を挙げることができる。
また、本発明の別の一実施形態において、PHA水性懸濁液の中心部の温度は、別の装置により調整された後に、工程(c)における加熱プレス装置に供されてもよい。
本発明の一実施形態において、前記予備加熱時には加圧しないことが好ましい。そのような加圧せずに予備加熱を行う方法としては、例えば、輻射加熱、直接加熱等が挙げられる。
工程(b)における予備加熱時間は、PHA水性懸濁液の中心部の温度が上記の範囲となるように設定されればよく、特に限定されないが、例えば、30~300秒であり、好ましくは、40~280秒であり、より好ましくは、50~250秒である。
(工程(c))
本製造方法における工程(c)では、工程(b)で予熱したPHA水性懸濁液を、加熱プレス装置を用いて加熱および加圧する。本製造方法における工程(c)は、工程(b)で予熱したPHA水性懸濁液を、加熱プレス装置を用いて加熱および加圧し、シート状のPHAを成形させる工程、と換言することもできる。本製造方法における工程(c)では、加熱プレス装置の内部でPHA水性懸濁液を加熱および加圧することにより、PHA水性懸濁液中のPHAが熱融着し、その結果、PHAシートが得られる。
本明細書において、「加熱プレス装置」とは、対象物(例えば、PHA水性懸濁液)を加熱および加圧するために使用される装置を意図し、加熱および加圧によりPHA水性懸濁液中のPHAを熱融着し、PHAシートを製造できるものであれば特に限定されない。
前記加熱プレス装置の方式は特に限定されないが、例えば、バッチ式、セミバッチ式、連続式のいずれであってもよい。すなわち、本発明の一実施形態において、工程(c)は、工程(b)で予熱したPHA水性懸濁液を、バッチ方式にて、加熱プレス装置を用いて加熱および加圧し、短尺のシート状のPHAを成形させる工程であり得る。また、本発明の一実施形態において、工程(c)は、工程(b)で予熱したPHA水性懸濁液を、連続方式にて、加熱プレス装置を用いて加熱および加圧し、長尺のシート状のPHAを成形させる工程であり得る。
加熱プレス装置としては、例えば、ドラムドライヤー、ベルトドライヤー、ディスクドライヤー、ヒートローラー、ダブルベルトプレス機(例えば、ダブルベルトヒートプレス機)、ヒートプレス、ダブルドラムドライヤー等が挙げられる。ベルトドライヤーを使用する場合、例えば、PHA水性懸濁液をダイ等によって、ベルトドライヤー上に流涎し、加熱および加圧する方法を例示し得る。また、ドラムドライヤーを使用する場合、例えば、PHA水性懸濁液をドラムに供給し、加熱する方法を例示し得る。中でも、熱効率、迅速性、連続操作性に優れることから、ドラムドライヤー、ダブルベルトプレス機が好ましい。ドラムドライヤーとしては、例えば、シングルドラムドライヤー、ダブルドラムドライヤー、ツインドラムドライヤー等が挙げられ、ダブルドラムドライヤーが好適に使用される。ダブルドラムドライヤーを使用する場合、2つのドラムの間にPHA水性懸濁液を供給し、当該2つのドラムの間にてPHA水性懸濁液を加熱する工程を挙げることができる。また、ダブルベルトプレス機を使用する場合、2つのベルトの間にPHA水性懸濁液を供給し、当該2つのベルトの間にてPHA水性懸濁液を加熱する工程を挙げることができる。
加熱プレス装置は、(1)加熱を主たる目的とし、加圧が付加的に行われる装置であってもよく、(2)対象の加熱を行いながら、所望の時間プレスを行うことができる装置であってもよい。上記(1)の装置としては、例えば、ダブルドラムドライヤーが挙げられる。また、上記(2)の装置としては、例えば、ダブルベルトプレス機が挙げられる。以下、加熱プレス装置の一例として、以下、ダブルベルトプレス機を挙げて説明する。
本発明の一実施形態における加熱プレス装置としてダブルベルトプレス機を一例として、図1を用いて説明する。なお、本製造方法で使用される加熱プレス装置が、図1で示すダブルベルトプレス機に限定されないことは言うまでもない。
図1において、ダブルベルトプレス機の左側から投入されたPHA水性懸濁液は、予熱工程、加熱・プレス工程、および冷却工程を経てシート成形され、当該ダブルベルトプレス機の右側から排出される。すなわち、ダブルベルトプレス機を使用する場合、工程(c)は、加熱・プレス工程、および冷却工程を含み得る。PHA水性懸濁液は、予熱工程で一定の温度まで加熱され、上記加熱・プレス工程で水分が蒸発し、PHA水性懸濁液の内部まで熱融着が進行することで、PHAシートが形成される。ダブルベルトプレス機内でのPHA水性懸濁液の搬送は、当該ダブルベルトプレス機に備えられたスチールベルトにより行われる。
本発明の一実施形態において、ダブルベルトプレス機でプレス時に加熱した際のPHA水性懸濁液の中心部の温度は、好ましくは、100~160℃であり、より好ましくは、103~155℃であり、より好ましくは、105~150℃である。PHA水性懸濁液の温度が上記の範囲内であると、PHA水性懸濁液の内部まで熱融着が進行し、シート状のPHAが形成できる。特に、温度が160℃以下であると、PHAが再結晶化しやすくなり、その結果、PHAシートを容易に形成できる。なお、PHA水性懸濁液の中心部の温度は、実施例に記載の方法で測定される。また、本明細書において「PHA水性懸濁液の中心部の温度」とは、工程(c)における、PHA水性懸濁液の中心部の最高到達温度を意図する。
工程(c)において、ダブルベルトプレス機加熱部の表面温度は、上記PHA水性懸濁液の中心部の温度を達成できる温度であれば特に限定されない。本発明の一実施形態において、ダブルベルトプレス機加熱部の表面温度は、例えば、100~300℃であり、好ましくは、120~250℃であり、より好ましくは、120~200℃である。ダブルベルトプレス機加熱部の表面温度が上記の範囲内であると、PHA水性懸濁液中のPHAの熱融着が進行し、一定の厚みを有するPHAシートを得ることができる。
本発明の一実施形態において、PHA水性懸濁液の加熱は、加圧蒸気により行うこともできる。加圧蒸気の蒸気圧は、ダブルベルトプレス機の表面温度が上記の範囲(すなわち、80~180℃)となるようなものであれば特に限定されないが、例えば、0.05~0.8Mpaであり、好ましくは、0.06~0.7Mpaであり、より好ましくは、0.07~0.6Mpaである。
本発明の一実施形態において、工程(c)におけるプレス圧は、例えば、1.5~15N/cmであり、好ましくは、2~10N/cmであり、より好ましくは、3~8N/cmである。プレス圧が上記の範囲内であると、PHA水性懸濁液中のPHAの熱融着が進行し、一定の厚みを有するPHAシートを得ることができる。また、プレス圧が10N/cm以下であれば、PHA水性懸濁液中の水分が排出可能となり、製造されるPHAシート中に気泡が生じにくくなる。
本発明の一実施形態において、工程(c)におけるPHA水性懸濁液の加熱滞留時間は、好ましくは、10~20秒であり、より好ましくは、12~19.5秒であり、さらに好ましくは、14~19秒である。なお、本明細書において「加熱滞留時間」とは、上記工程(c)において、加熱および加圧の両方を行っている時間を意図する。
本発明の一実施形態において、図1に示すように、ベルト間プレス後のPHAシートを冷却してもよい。これにより、PHAシート中のPHAの再結晶化が促進される。PHAシートを冷却する温度および時間は、適宜設定され得る。
本発明の一実施形態において、ダブルベルトプレス機の2つのベルトの間隙は適宜設定し得る。例えば、1~15mmであることが好ましく、1.5~10mmであることがより好ましく、2~5mmであることがさらに好ましい。間隙の大きさによって、得られるPHAシートの膜厚を制御することができる。
本発明の一実施形態において、ダブルベルトプレス機のベルトスピードは、例えば、0.1~10mであり、好ましくは、0.2~5mであり、より好ましくは、0.25~4mである。ベルトスピードが上記の範囲内であると、PHA水性懸濁液中のPHAの熱融着が進行し、一定の厚みを有するPHAシートを得ることができる。なお、ベルトスピードを適宜設定することにより、加熱滞留時間を制御することができる。
本発明の一実施形態において、本製造方法は、工程(c)の後に、目的に応じて任意の工程を含み得る。そのような工程としては、特に限定されないが、例えば、印刷工程、蒸着工程、ラミネート工程、製袋工程、破砕工程等が挙げられる。また、工程(c)の後に、PHAシートの搬送工程を含むこともできる。この場合は、所望の長さを有する長尺状のPHAシートを得ることができる。
本製造方法において得られるPHAシートの含水率は、20~40%であり、好ましくは、23~37%であり、より好ましくは、25~35%である。本PHAシートの含水率は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明の一実施形態において、本製造方法において得られるPHAシートの含水率が高い場合には、工程(c)の後に、得られたPHAシートをさらに乾燥させる工程(例えば、減圧乾燥に付す工程等)を含んでいてもよい。
〔3.PHAシート〕
本PHAシートは、シート全体を100重量%としたときに、97重量%以上のPHAを含み、かつ、厚みが5.0~12.0mmである。本PHAシートにおけるPHAの含有量は、水を除いた固形分を基準とした含有量(すなわち、固形分濃度)を意味する。言い換えると、固形分濃度100重量%は水がすべて蒸発した状態である。
本発明の一実施形態において、本PHAシートは、PHAを97重量%以上、好ましくは、98重量%以上、より好ましくは、99重量%以上、さらに好ましくは、100重量%含む。本発明の一実施形態において、本PHAシートは、PHAのみから形成されていることが好ましい。本製造方法は、噴霧乾燥に代替する方法であるため、噴霧乾燥に必要とされる種々の成分の添加を回避することができ、より純度の高いPHAを得ることができる。例えば、食品用途や医療用途等の高い清浄性が要求される場合、本PHAシートは、分散剤等を含有しないものであることが好ましい。
本発明の一実施形態において、本PHAシートの厚みは、5.0~12.0mmであり、好ましくは、5.5~11.5mmであり、より好ましくは、6.0~11.0mmであり、さらに好ましくは、6.5~10.5mmであり、特に好ましくは、7.0~10.0mmである。
本PHAシートの厚みは、例えば、ダブルベルトプレス機を用いる場合、例えばダブルベルトプレス機中の2つのベルト間の隙間(間隙)を調整することにより制御できる。なお、本PHAシートの厚みは、実施例に記載の方法により測定される。
本発明の一実施形態において、本PHAシートの含水率は、上記したものが援用される。
上述の通り、本PHAシートは、PHAの一次粒子が熱融着して得られる。本発明の一実施形態において、本PHAシートは、例えば、PHAの一次粒子の体積メジアン径(以下、「一次粒子径」と称する。)が0.5~6μmのPHAが熱融着したものであり、好ましくは、一次粒子径が0.5~5μmのPHAが熱融着したものであり、より好ましくは、一次粒子径が0.5~4μmのPHAが熱融着したものである。
なお、本PHAシートは、本製造方法の過程で生じた、または除去されなかった種々の成分を含んでいることも許容される。
本PHAシートは、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野で、種々の用途に利用できる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
すなわち、本発明の一実施形態は、以下である。
<1>(a)pHが7以下であるポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液を調製する工程、(b)前記工程(a)で調製したポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液の中心部の温度が50~95℃となるように予備加熱する工程、および(c)前記工程(b)で予備加熱したポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液を、加熱プレス装置を用いて加熱および加圧する工程、を含む、含水率が20~40%のポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法。
<2>前記工程(a)において、10 1/sのせん断速度を与えたときのポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液の粘度が、1~120Pa・sとなるように調整する工程を、さらに含む、<1>に記載のポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法。
<3>前記工程(c)において、前記加熱プレス装置で加熱した際のポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液の中心部の温度が、100~160℃である、<1>または<2>に記載のポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法。
<4>前記工程(c)において、加熱プレス装置内でのポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液の加熱滞留時間が、10~20秒である、<1>~<3>のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法。
<5>前記加熱プレス装置がダブルベルトプレス装置である、<1>~<4>のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法。
<6>前記工程(a)において、ポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液中のポリヒドロキシアルカン酸濃度が、30~70重量%である、<1>~<5>のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法。
<7>97重量%以上のポリヒドロキシアルカン酸を含み、かつ、厚みが5.0~12.0mmである、ポリヒドロキシアルカン酸シート。
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、「PHA」としては「P3HB3HH」を用いており、「PHA」を「P3HB3HH」と読み替えることができる。
〔測定および評価方法〕
実施例における測定および評価を、以下の方法で行った。
(厚み)
デジタルノギスにて、得られたPHAシートの厚みを10か所測定し、その平均値をシート厚み(シート厚み平均値)とした。
(含水率)
赤外線水分計FD-720(株式会社ケツト科学研究所)にて、得られたPHAシートの含水率を測定した。
(PHA水性懸濁液の中心部の温度)
PHA水性懸濁液の中心部の温度は、熱電対をPHA水性懸濁液中に投入することで測定した。
〔実施例1〕
(菌体培養液の調製)
国際公開第2008/010296号の段落〔0049〕に記載のラルストニア・ユートロファKNK-005株を、同文献の段落〔0050〕~〔0053〕に記載の方法で培養し、PHAを含有する菌体を含む菌体培養液を得た。なお、ラルストニア・ユートロファは、現在では、カプリアビダス・ネカトールに分類されている。前記菌体が含有するPHAの繰り返し単位の組成比(3HB単位/3HH単位の組成比)は、92/8~99/1(mol/mol)であった。
(滅菌処理)
上記で得られた菌体培養液を内温60~80℃で20分間加熱・攪拌処理し、滅菌処理を行った。
(高圧破砕処理)
上記で得られた滅菌済みの菌体培養液に、0.2重量%のドデシル硫酸ナトリウムを添加した。さらに、pHが11.0になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加した後、50℃で1時間保温した。その後、高圧破砕機(ニロソアビ社製高圧ホモジナイザーモデルPA2K型)を用いて、450~550kgf/cmの圧力で高圧破砕を行った。
(精製処理)
上記で得られた高圧破砕後の破砕液に対して、等量の蒸留水を添加した。これを遠心分離した後、上清を除去して2倍濃縮した。この濃縮したPHAの水性懸濁液に、除去した上清と同量の水酸化ナトリウム水溶液(pH11)を添加して遠心分離し、上清を除去した。そこに再度水を添加して懸濁させ、0.2重量%のドデシル硫酸ナトリウムと、PHAの1/100重量のプロテアーゼ(ノボザイム社、エスペラーゼ)を添加し、pH10で50℃に保持したまま、2時間攪拌した。その後、遠心分離により上清を除去して4倍濃縮した。さらに水を添加して、PHA濃度が50.0重量%になるように調整した。PHAの体積メジアン径は、2μmであった。
(ダブルスチールベルトヒートプレス機を用いたPHAシートの成形)
上記で得られたPHA水性懸濁液に硫酸を添加し、pHを3.5に調整した。10 1/sのせん断速度を与えた場合のPHA水性懸濁液の粘度は、9.1Pa・sであった。また、PHAの一次粒子径は、2μmであった。得られたPHA水性懸濁液を図1に示すダブルスチールベルトヒートプレス機(DYMCO社製)の予熱部にてPHA水性懸濁液の中心部の温度が90℃になるまで、210秒間予熱した。その後、PHA水性懸濁液をダブルスチールベルトヒートプレス機内部に投入し、ベルト間隙10mm、ベルト速度0.5m/分、プレス時の圧力4.9N/cm、プレス時の加熱ベルト温度(加熱部の表面温度)180℃、冷却ベルト温度35℃とした。なお、加熱滞留時間は18秒であった。ダブルスチールベルトヒートプレス機でプレス時に加熱した際のPHA水性懸濁液の中心部の温度は、114℃であった。シート状に形成されたPHAシートの厚みは、9.1mmであった。また、シート含水率(ウェットベース)を測定したところ、30.1%であった。
〔実施例2〕
ダブルスチールベルトヒートプレス機予熱部にてPHA水性懸濁液の中心部の温度が70℃になるまで加熱したこと以外は、実施例1と同様の方法でPHAシートを得た。ダブルスチールベルトヒートプレス機でプレス時に加熱した際のPHA水性懸濁液の中心部の温度は、106℃であった。シート状に形成されたPHAシートの厚みは、8.9mmであった。また、シート含水率(ウェットベース)を測定したところ、33.1%であった。
〔比較例1〕
ダブルスチールベルトヒートプレス機予熱部にてPHA水性懸濁液を加熱しなかった以外は、実施例1と同様の方法でPHA水性懸濁液を処理した。ダブルスチールベルトヒートプレス機でプレス時に加熱した際のPHA水性懸濁液の中心部の温度は、86℃であった。PHA水性懸濁液はシート状とはならず、PHA水性懸濁液のままであった。
Figure 2023076176000002
[結果]
実施例1、2より、PHA水性懸濁液を予熱してから加熱プレス装置を用いて加熱および加圧することにより、一定の含水率を有するPHAシートが得られることが分かった。また、比較例1よりPHA水性懸濁液の予熱が不十分であると、PHAシートは得られないことが分かった。
本製造方法は、簡便な操作でPHAシートを製造することができることから、PHAシートの製造において有利に使用できる。また、本製造方法により得られたPHAシートは、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に利用することができる。

Claims (7)

  1. (a)pHが7以下であるポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液を調製する工程、
    (b)前記工程(a)で調製したポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液の中心部の温度が50~95℃となるように予備加熱する工程、および
    (c)前記工程(b)で予備加熱したポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液を、加熱プレス装置を用いて加熱および加圧する工程、
    を含む、含水率が20~40%であるポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法。
  2. 前記工程(a)において、10 1/sのせん断速度を与えたときのポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液の粘度が、1~120Pa・sとなるように調整する工程を、さらに含む、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法。
  3. 前記工程(c)において、前記加熱プレス装置で加熱した際のポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液の中心部の温度が、100~160℃である、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法。
  4. 前記工程(c)において、加熱プレス装置内でのポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液の加熱滞留時間が、10~20秒である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法。
  5. 前記加熱プレス装置がダブルベルトプレス装置である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法。
  6. 前記工程(a)において、ポリヒドロキシアルカン酸水性懸濁液中のポリヒドロキシアルカン酸濃度が、30~70重量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリヒドロキシアルカン酸シートの製造方法。
  7. 97重量%以上のポリヒドロキシアルカン酸を含み、かつ、厚みが5.0~12.0mmである、ポリヒドロキシアルカン酸シート。
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