JP2023069789A - 機能性不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】 環状シロキサンなどの揮発性有機化合物を吸着することができるとともに、交換によるメンテナンスのコストを低く抑えることができる機能性不織布を提供する。【解決手段】 不織布本体1に対し放射線グラフト重合2を行い、GMA溶液3を接触させて、不織布本体1の繊維に複数のグラフト鎖4を形成し、このグラフト鎖を形成した不織布本体をスルホン酸基の液体5に浸漬させる。これにより、不織布本体1と、不織布本体の繊維に形成された複数のグラフト鎖4とを備え、このグラフト鎖4には、スルホン酸基6が付与されている機能性不織布10を得ることができる。【選択図】 図1

Description

本発明は、機能性不織布に関し、より詳しくは、揮発性有機化合物などを吸着する機能性不織布に関する。
近年、繊維を改質して特定の機能、例えば抗菌、消臭(脱臭)、有害物質の除去等の機能を付与した繊維体が注目されている。具体的には、例えばコットン等の天然繊維の表面を、電子線を用いてグラフト重合により活性化させ、その活性化された繊維表面に上記機能を有する物質を結合させることにより、繊維に特定の機能を付与している。
例えば、特許文献1には、繊維が集合した不織布本体と、前記繊維に形成された複数のグラフト鎖と、前記グラフト鎖に付与された官能基とを備え、前記繊維の径の平均が3.0μm以下である機能性不織布が記載されている。官能基として、シアル酸、N-アセチルグルコサミン、シアリルガラクトース、シアリルラクトースを採用することで、インフルエンザウイルスを捕捉することができることが記載されている。
一方で、揮発性有機化合物(VOCs)は、沸点が低く、大気中に容易に存在する有機化合物の総称であり、特に室内空間において室温で存在し、人体に急性または慢性の中毒を引き起こす汚染物質として問題視されている。そのため、VOCsを室内空間から除去するために多くの研究が行われてきた。VOCs除去の典型的な技術は、燃焼(酸化)や、吸着である。燃焼は、除去率が高く効率が良い一方で、燃料消費量が多く、高コストである。吸着は、例えば、活性炭による吸着がある。活性炭は高い吸着を示し効率的だが、頻繁に交換する必要があることから、メンテナンスのコストは、燃焼よりも安いものの、依然として高い水準にある。
環状シロキサンは、ケイ素原子上に2つのメチル基を持つケイ素原子が、酸素原子と結合したジメチルシロキサン単位を有する環状構造をもったシロキサンである。シリコーン製品中には、その生成過程にて残存する環状シロキサンが含まれており、この残存する環状シロキサンが揮発し、モータやリレースイッチなどの電子部品の接点部に付着して、接点不良を引き起こすという問題がある。
環状シロキサンとしては、例えば、ジメチルシロキサン単位を3つ有するヘキサメチルシクロトリシロキサン(「D3」と呼ばれる)、ジメチルシロキサン単位を4つ有するオクタメチルシクロテトラシロキサン(「D4」と呼ばれる)、ジメチルシロキサン単位を5つ有するデカメチルシクロペンタシロキサン(「D5」と呼ばれる)などがあり、特に、低分子環状シロキサン(D3~D10)が、揮発して問題となるものとして知られている。
再表2019/004477号公報
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、環状シロキサンなどの揮発性有機化合物を吸着することができるとともに、交換によるメンテナンスのコストを低く抑えることができる機能性不織布を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、その一態様として、揮発性有機化合物として環状シロキサンを選択的に吸着するための機能性不織布であって、この機能性不織布は、不織布本体と、前記不織布本体の繊維に形成された複数のグラフト鎖と、前記グラフト鎖に付与された官能基としてスルホン酸基を備える。
前記スルホン酸基のモル転化率は40~100%であることが好ましい。
前記グラフト鎖は、グリシジルメタクリレート(GMA)で形成されたグラフト鎖であることが好ましい。前記グラフト鎖のグラフト率は、不織布重量当たり30~150%の範囲であることが好ましい。
前記不織布本体の繊維は、3μm以下の平均繊維径を有することが好ましい。
前記不織布本体の目付量は0.5g/m以上、50g/m以下であることが好ましい。
前記不織布本体の比表面積は1.0m/g以上、10.0m/g以下であることが好ましい。
当該機能性不織布の通気度は3.0cm/cm・s以上、300cm/cm・s以下であることが好ましい。
また、本発明は、別の態様として、揮発性有機化合物として環状シロキサンを選択的に吸着するための機能性不織布の製造方法であって、不織布本体の繊維に複数のグラフト鎖を形成する工程と、前記グラフト鎖に、スルホン酸基を付与する工程とを含む。
このように本発明によれば、放射線グラフト重合による不織布は安価であるとともに、不織布本体の繊維に形成されたグラフト鎖に官能基としてスルホン酸基が付与されている場合に、揮発性有機化合物として環状シロキサンを吸着することができる。
本発明に係る機能性不織布の製造方法の一実施の形態を模式的に説明するフロー図である。 本発明に係る機能性不織布に用いるナノファイバー不織布本体の一例の走査型透過電子顕微鏡(SEM)画像である。 実施例の機能性不織布による環状シロキサン(D3)の吸着試験の結果を表すグラフである。 実施例の機能性不織布による環状シロキサン(D3)の吸着試験の結果を表すグラフである。 実施例の機能性不織布による環状シロキサン(D3)の吸着試験の結果を表すグラフである。 実施例の機能性不織布による環状シロキサン(D3)の吸着試験の結果を表すグラフである。 実施例の機能性不織布による環状シロキサン(D3)の吸着試験の結果を表すグラフである。 実施例の機能性不織布による環状シロキサン(D3)の吸着試験の結果を表すグラフである。 実施例の機能性不織布による環状シロキサン(D3)の吸着試験の結果を表すグラフである。
以下、添付図面を参照して、本発明に係る機能性不織布およびその製造方法の一実施の形態について説明する。
本発明に係る機能性不織布の製造方法の一実施の形態について説明する。本実施形態の機能性不織布の製造方法は、図1に示すように、不織布本体1の繊維に複数のグラフト鎖4を形成するグラフト鎖形成工程と、グラフト鎖4にスルホン酸基6を付与するスルホン酸基付与工程とを有する。これにより揮発性有機化合物として環状シロキサンに対して優れた吸着性を示す機能性不織布10を得ることができる。各工程について詳しく説明する。
グラフト鎖形成工程では、先ず、図1(a)に示すように、不織布本体1を準備する。不織布本体1は、繊維が一方向またはランダムに配向しており、交流、融着、および/または接着によって繊維間が結合されたシートまたはウェブである。繊維としては、ナノファイバー、マイクロファイバー、またはナノファイバーとマイクロファイバーとの組み合わせが好ましい。本明細書において、ナノファイバーは、材料としての樹脂を平均繊維径が1μm未満の繊維に加工したものをいい、マイクロファイバーは、材料としての樹脂を平均繊維径が3μm以下の繊維に加工したものをいう。ここで、平均繊維径とは不織布となった状態における複数の長繊維フィラメントの平均直径をいう。
ナノファイバーおよびマイクロファイバーの材料として使用可能な樹脂は、糸状に加工可能な熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸を含むポリエステル、ナイロン(ナイロン6、ナイロン66)を含むポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンを含むポリオレフィン、ポリビニルアルコール系ポリマー、アクリロニトリル系ポリマー、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを含むフッ素系ポリマー、ウレタン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、スチレン系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリオキシメチレン、エーテルエステル系ポリマー、トリアセチルセルロース等のセルロース修飾ポリマーなどが使用可能である。なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ナイロン(ナイロン6、ナイロン66)及びポリプロピレンは、延伸性及び分子配向性が良いため好ましい。
不織布本体1を構成する繊維の平均繊維径は低いほど好ましい。平均繊維径が3μm以下であれば、不織布本体1の比表面積を顕著に大きくすることができ、繊維表面に形成されるグラフト鎖の数(単位重量当たり)が多くなり、そのグラフト鎖に付与されるスルホン酸基の数も多くなる。すなわち、平均繊維径の小さい繊維の不織布ほど、スルホン酸基のもつ機能の有効性が高い。よって、マイクロファイバーよりもナノファイバーが好ましく、ナノファイバーの平均繊維径は上記の通り1μm未満であるが、0.5μm以下のものがより好ましい。ナノファイバーからなる不織布本体1の一例の走査型透過電子顕微鏡(SEM)画像を図2に示す。
ナノファイバーを用いる場合の不織布本体1の目付量は0.5g/m以上、10g/m以下であることが好ましい。特に目付量の上限値は6g/m以下であることがより好ましく、3g/m以下であることがさらに好ましい。マイクロファイバーを用いる場合の不織布本体1の目付量は50g/m以下であり、好ましくは30g/m以下である。不織布本体1の目付量が上記の範囲に維持されることにより、機能性不織布の製品としての通気性の低下を抑制することができる。
また、単位目付量当たりの不織布本体1の厚さは、50μm/(g/m)以上、200μm/(g/m)以下が好ましい。不織布本体1の比表面積は1.0m/g以上、10.0m/g以下であることが好ましい。比表面積が大きいほど、アセトン等の揮発性有機化合物の吸着サイトが多くなり、高い吸着性を発揮することができる。
不織布本体1には、不織布本体1を支持するため、不織布本体1の一方の面に基材(図示省略)を積層させてもよい。基材は、例えば、乾式不織布、湿式法不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、ステッチボンド不織布、スチームジェット不織布等、公知の不織布を採用することができる。
基材の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン、レーヨン、ポリエステル、ポリアミド、アクリル繊維、ビニロン、アラミド繊維、ガラス繊維、ゼルロース繊維等が挙げられる。これらの中から一種の材料だけで基材を形成してもよいし、二種以上の材料を混合して基材を形成してもよい。
基材を構成する繊維の形状としては、材料としての樹脂を紡糸して糸状に加工したもの、フィルム化した後にメッシュ状に割繊して扁平な繊維に加工したもの等、公知の形状を採用することができる。平均繊維径は100μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、3μm以下が特に好ましい。基材を不織布本体1に積層させた場合でも積層させない場合でも、機能性不織布10の通気度は、3.0cm/cm・s以上、300cm/cm・s以下であることが好ましい。通気度が高いほど、揮発性有機化合物の吸着サイトへの移動が容易になる。
そして、不織布本体1に対して放射線グラフト重合2を行い、図1(b)に示すように、不織布本体1を構成する繊維の表面にグラフト鎖4を定着させる。具体的に説明すると、例えば、ナノファイバーを構成するポリプロピレン等の高分子素材に放射線を照射する。放射線が照射された高分子素材においては、C-H結合が切れてラジカルが生成する。ラジカルが生成した高分子材料を、二重結合(ビニル基)を持つグリシジルメタクリレート(GMA)溶液3と接触させると、ラジカルが反応の活性種となってグリシジルメタクリレートの二重結合が切れてラジカルと結合し、高分子素材の表面にグラフト鎖4が形成される。GMA溶液の溶媒としては、メタノールなどのアルコール類や、トルエンなどの芳香族類を用いることができる。
なお、グラフト鎖4を形成する材料としてGMAを用いる例を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などの不飽和二重結合を有する化合物を用いてもよいし、プロパルギル基などの不飽和三重結合を有する化合物を用いても、不織布本体1の繊維にグラフト鎖4を形成することができる。また、グラフト鎖4にスルホン酸基を容易に付与させるために、エポキシ基を有する化合物を用いることが好ましい。このような化合物としては、例えば、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルベンジル)アクリルアミド、グリシジルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが挙げられる。
グラフト鎖4は、このようにナノファイバー等の繊維の表面に、枝のように配列されたグラフト重合体である。グラフト鎖4が繊維表面に定着することにより、ナノファイバー等の繊維の表面には、グラフト鎖4の無数の枝が層をなすように形成される。本実施の形態において、以下の式1から求められるグラフト鎖4のグラフト率(略号:DG)は、30~150%の範囲が好ましく、40~100%の範囲がより好ましく、50~70%の範囲が更に好ましい。なお、式1においてWはグラフト重合前の不織布(基材を有する場合は基材も含む)の重量を指し、Wはグラフト重合後の不織布(基材を有する場合は基材も含む)の重量を指す。
Figure 2023069789000002
揮発性有機化合物(VOCs)のうち、特に低分子環状シロキサンは、分子量が小さな化合物であることから、高密度のグラフト鎖の間を拡散することが可能であり、吸着サイトとなる官能基たるスルホン酸基は不織布表面に多く付与されている方が好ましい。一方で、グラフト率を過度に高めても、不織布表面ではなく不織布内部にグラフト鎖が形成され吸着サイトとして機能しない。よって、グラフト率は上述した範囲とすることが好ましい。
次に、スルホン酸基付与工程として、図1(c)に示すように、グラフト鎖4が形成された不織布本体1を、スルホン酸基を含む液体5に浸漬し、所定の温度下で所定の時間にわたりその状態を維持する。本発明において液体5としては、スルホン酸基(-SOH)の場合、亜硫酸ナトリウム水溶液などを用いることが好ましい。その後、液体5から不織布本体を取り出し、洗浄及び乾燥させると、グラフト鎖4にスルホン酸基6が付与される。スルホン酸基を含む液体5に用いる溶媒としては、水や、メタノールなどのアルコール類や、トルエンなどの芳香族類を用いることができる。液体5の温度は、例えば、60~80℃の範囲が好ましい。浸漬時間は、例えば、6~24時間が好ましい。
グラフト鎖4に付与されるスルホン酸基6は、グラフト鎖に結合することができるとともに、揮発性有機化合物として環状シロキサンを吸着することができる。
また、グラフト鎖4に付与されるスルホン酸基6のモル転化率は、40~100%の範囲が好ましく、60~100%の範囲がより好ましく、60~85%の範囲が更に好ましい。スルホン酸基のモル転化率は、不織布重量当たりのグラフト鎖の物質量に対する不織布重量当たりのスルホン酸基の物質量のパーセンテージである。スルホン酸基のモル転化率が高いほど、グラフト鎖に対して付与されたスルホン酸基が多いことから好ましい。
このようにして得られた機能性不織布10は、図1(c)に示すように、不織布本体1の繊維に形成されたグラフト鎖4には、官能基としてスルホン酸基6が付与されている。よって、この機能性不織布10は、グラフト鎖4に官能基として付与されたスルホン酸基6によって、環状シロキサンに対して優れた吸着性を示すことがでる。このような機能性不織布10によれば、環状シロキサンを吸着、除去することで、電子部品の誤作動を防止することができる。
[1.GMA不織布の形成]
先ず、不織布(ポリプロピレン製、平均繊維径2.9μm)を30mm×30mmの正方形に裁断したものを用意し、その重量を測定した。重量は50mgであった。また、グリシジルメタクリレート(GMA)濃度10%のGMA/メタノール混合溶液を調製し、その溶液を注入した袋に上記の大きさに裁断した不織布を入れ、袋を真空引きしてGMA/メタノール混合溶液に浸漬した。その後、袋を真空引きした状態を維持しつつ、袋内の不織布に放射線を当ててグラフト重合させた。不織布を袋から取り出し、メタノールで三回、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)で二回洗浄した。洗浄後に不織布を乾燥させて、不織布の素材表面にグラフト鎖が形成された不織布(以下、「GMA不織布」という)を作製した。
作製したGMA不織布についてグラフト率を算出した。グラフト率(DG)は、グラフト重合前の不織布の重量(W)とグラフト重合後の不織布の重量(W)をそれぞれ測定し、上述した式1を用いて算出した。その結果、グラフト率は60%であった。
[2.GMA不織布へのスルホン酸基の導入]
スルホン酸基を含む液体として、亜硫酸ナトリウム(SS)、イソプロピルアルコール(IPA)、水を、重量%で、SS/IPA/水=10/15/75の比で秤量し、ビーカー中で撹拌して亜硫酸ナトリウム水溶液を調製した。そして、GMA不織布を、亜硫酸ナトリウム水溶液に浸漬し、80℃の温度下で12時間にわたり振とうした。その後、亜硫酸ナトリウム水溶液からGMA不織布を取り出し、イオン交換水で洗浄し、塩酸処理を行った。塩酸処理は、イオン交換水で7倍に希釈した濃塩酸にGMA不織布を浸漬し、室温で2時間にわたり振とうした。この塩酸処理により、ナトリウムイオンをプロトン置換することができ、吸着能を発揮することができる。塩酸処理の後、イオン交換水で洗浄し、乾燥させた。これにより、GMA不織布のグラフト鎖にスルホン酸基を付加した不織布(以下、「SA不織布」という)を作製した。そして、SA不織布の重量(W)を測定し、上記測定した不織布の重量(W)およびGMA不織布の重量(W)と、スルホン酸基の分子量(MW)とを用い、以下の式2から、グラフト鎖に付加されたスルホン酸基の不織布重量当たり物質量(mol)を算出した。
Figure 2023069789000003
また、得られたSA不織布について、スルホン酸基のモル転化率を算出した。モル転化率(MCR)は、上記のGMA不織布の重量(W)に加え、SA不織布の重量(W)を測定し、上記算出したグラフト率(DG)、GMA分子量(MW)、スルホン酸基の分子量(MW)から以下の式3により求めた。その結果、モル転化率は、85%であった。
Figure 2023069789000004
[3.環状シロキサンの吸着試験]
以下の要領で、機能性不織布に環状シロキサンを吸着させる試験を行った。2Lの容量のポリフッ化ビニル製のバッグに、試験対象として上記の通りに作製したSA不織布を入れた後、真空状態にして密封した。このバッグに、環状シロキサンとしてヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)と、硫化水素(HS)とを充填した。試験温度は室温(23~24℃)で行った。そして、所定の時間ごとにバッグの中から少量のガスを抽出し、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(日本電子株式会社製、品番JMS-Q1500GC)でD3の濃度を測定するとともに、硫化水素検知管(株式会社ガステック製、品番No.4LB)で硫化水素の濃度を測定した。D3の初期濃度は100volppmで、硫化水素の初期濃度は10volppmであった(吸着試験1)。
バッグの中に試験対象の不織布を入れなかった場合と、上記の通りに作製したSA不織布を入れた場合の吸着試験の結果を、図3、図4に示す。図3に示すように、不織布を入れなかった場合でも、D3の濃度は、120分の試験時間で当初濃度から約8%減少していたが、SA不織布を入れた場合は、図4に示すように、当初濃度から約60%減少し、SA不織布の環状シロキサンの吸着効果が確認できた。120分でのD3の吸着量は不織布重量当たり約22mg/gであった。なお、SA不織布を入れた場合も不織布を入れなかった場合も硫化水素の減少は見られなかった。
次に、バッグに充填するガスとして硫化水素を加えなかった点を除き、吸着試験1と同様にして環状シロキサンの吸着試験を行った(吸着試験2)。その結果を図5に示す。D3に硫化水素に共存させなかった場合も、図5に示すように、試験時間120分でD3の濃度は当初濃度から約60%減少し、SA不織布の環状シロキサンの吸着効果が確認できた。120分でのD3の吸着量は不織布重量当たり約22mg/gであった。硫化水素の存在の有無による吸着量の違いは僅かであり、硫化水素の影響はほぼ無いことがわかった。
また、不織布を90mm×100mmの長方形に裁断したもの(重量は515mg)を用いた点を除き、吸着試験1と同様にしてSA不織布を作製し、環状シロキサンの吸着試験を行った(吸着試験3)。その結果を図6に示す。図6に示すように、試験時間5分でD3の濃度は当初濃度から約45%減少し、15分で約78%減少し、60分で約98%減少し、SA不織布を増量した効果が確認できた。
更に、試験温度を40℃、80℃とし、硫化水素を加えなかった点を除き、吸着試験1と同様にして環状シロキサンの吸着試験を行った(吸着試験4)。その結果を図7、図8に示す。試験温度が40℃では、図7に示すように、試験時間120分でD3の濃度は当初濃度から約63%減少し、室温に比べて、SA不織布の環状シロキサンの吸着効果は若干ながら高くなった。また、試験温度が80℃では、図8に示すように、試験時間120分でD3の濃度は当初濃度から約64%減少し、40℃に比べて、SA不織布の環状シロキサンの吸着効果は若干ながら高くなった。120分でのD3の不織布重量当たりの吸着量は、試験温度が40℃で約23mg/g、試験温度が80℃で約24mg/gであった。温度の影響はほとんど無いことがわかった。
今度は、バッグに充填するガスとして硫化水素を加えず、飽和水蒸気量を加えた点を除き、吸着試験1と同様にして環状シロキサンの吸着試験を行った(吸着試験5)。その結果を図9に示す。図9に示すように、試験時間120分でD3の濃度は当初濃度から約75%減少し、SA不織布の環状シロキサンの吸着効果が確認できた。120分でのD3の不織布重量当たりの吸着量は約28mg/gであった。加湿すると若干、吸着量が増加したものの、湿度の影響はほとんど無いことがわかった。
吸着試験3では、SA不織布の重量を約10倍にしたところ、D3の濃度は5分で約45%減少したことから、吸着試験1でD3の濃度が約45%減少するのに約70分かかったことと比べると、約14倍の吸着速度であった。また、上記の吸着試験1、2、4、5において、120分でのD3の不織布重量当たりの吸着量は約22~28mg/gであったことから、導入スルホン酸基の約70~80%が吸着に寄与した計算となる。吸着試験3では、120分でのD3の不織布重量当たりの吸着量は約3.4mg/gであったことから、導入スルホン酸基の約10%が吸着に寄与した計算となる。
1 不織布本体
2 放射線グラフト重合
3 GMA溶液
4 グラフト鎖
5 スルホン酸基を含む液体
6 スルホン酸基
10 機能性不織布

Claims (8)

  1. 揮発性有機化合物として環状シロキサンを選択的に吸着するための機能性不織布であって、
    不織布本体と、前記不織布本体の繊維に形成された複数のグラフト鎖と、前記グラフト鎖に付与されたスルホン酸基とを備えた機能性不織布。
  2. 前記スルホン酸基のモル転化率が40~100%である請求項1に記載の機能性不織布。
  3. 前記グラフト鎖がグリシジルメタクリレート(GMA)で形成されたグラフト鎖である請求項1又は2に記載の機能性不織布。
  4. 前記不織布本体の繊維が3μm以下の平均繊維径を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の機能性不織布。
  5. 前記不織布本体の目付量が0.5g/m以上、50g/m以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の機能性不織布。
  6. 前記不織布本体の比表面積が1.0m/g以上、10.0m/g以下である請求項1~5のいずれか一項に記載の機能性不織布。
  7. 当該機能性不織布の通気度が3.0cm/cm・s以上、300cm/cm・s以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の機能性不織布。
  8. 揮発性有機化合物として環状シロキサンを選択的に吸着するための機能性不織布の製造方法であって、
    不織布本体の繊維に複数のグラフト鎖を形成する工程と、
    前記グラフト鎖に、スルホン酸基を付与する工程とを含む機能性不織布の製造方法。
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