JP3677197B2 - 分離機能性繊維シート及びフィルタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は分離機能性繊維シート及びフィルタに関する。特には、空気浄化用フィルタ又は水処理用フィルタとして好適に使用できる分離機能性繊維シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体産業、精密機械産業、写真産業、医薬品製造産業、食品産業、農業産業或いは病院などにおいては、微細な塵が存在するだけでも、製品や人体に与える影響は測り知れないため、空気中の微細な塵を除去したクリーンルームを設けている。従来、このようなクリーンルームに使用されているフィルタは、空気中の塵は除去できるものの、有害ガスやイオンなどに対する配慮がなされていなかつたため、製品や人体に与える影響が無視できない場合があった。例えば、LSI製造工場において、ウエハ表面がイオンによって汚染されると、接触抵抗を増大させるなどウエハに大きな影響を与える場合があった。また、このような産業においては、空気中の塵、有害ガス或いはイオンばかりではなく、高純度の水が洗浄用水などとして使用されるため、この水中のイオンが高いと製品の品質に悪影響を与える場合があつた。また、フィルタ構成材料に使用されている接着剤等からの、空気中へのVOC(volatile organic carbon:揮発性有機炭素)の放出や、水中へのTOC(Total Organic Carbon:全有機炭素)の溶出を可能な限り抑える必要があった。
【0003】
そのため、このような空気中や水中のイオンを除去できるフィルタとして、ポリプロピレンを芯成分としポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維、又はポリエステルを芯成分としポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を使用した不織布を、放射線グラフト重合してイオン交換基を導入したものが提案されている(例えば、特開平6−142439号公報、特開平8−199480号公報など)。
【0004】
しかしながら、ポリプロピレン−ポリエチレン芯鞘型複合繊維、又はポリエステル−ポリエチレン芯鞘型複合繊維を使用した不織布を放射線グラフト重合すると、鞘成分であるポリエチレン成分が肥大化して、芯成分であるポリプロピレン成分又はポリエステル成分との間に空隙が発生する傾向があつた。このように芯成分と鞘成分との間に空隙が発生すると、グラフト重合の際に使用する反応液がこの空隙に残留してしまうため、この反応液を除去するために多大な手間と時間を要する、という問題があつた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、生産性に優れる分離機能性繊維シート、及びフィルタを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の分離機能性繊維シートは、低融点ポリエテレン成分と、前記低融点ポリエチレン成分よりも融点の高い高融点ポリエチレン成分とを含み、前記低融点ポリエチレン成分が表面に露出しており、かつ少なくとも前記低融点ポリエチレン成分がイオン交換基及び/又はキレート基を有する分離機能性繊維を含んだ繊維シートから構成される。このように分離機能性繊維シートをポリエチレン成分のみから構成すると、イオン交換基及び/又はキレート基を導入する際に低融点ポリエチレン成分が肥大化したとしても、同時に高融点ポリエチレン成分も肥大化して、低融点ポリエチレン成分と高融点ポリエチレン成分との密着性が維持されやすいため、イオン交換基及び/又はキレート基を導入する際に使用する反応液が残留しにくい。したがって、本発明の分離機能性繊維シートは生産性良く製造することができる。
【0007】
本発明の分離機能性繊維シートにおいては、イオン交換基及び/又はキレート基を放射線グラフト重合法により導入しても、分離機能性繊維シートを構成する繊維がポリエチレン成分のみからなり、放射線照射による劣化がほとんど起きないため、繊維を損傷したり強度を低下させることなく、グラフト重合することができる。
【0008】
本発明の分離機能性繊維シートにおいて、好ましくは、低融点ポリエチレン成分を直鎖状低密度ポリエチレンから構成すると、これを折り曲げても繊維が損傷して発塵することが起こりにくいため、発塵を生じにくい分離機能性繊維シートを提供することができる。したがって、このような分離機能性繊維シートをプリーツ加工したものは、空気浄化用フィルタ又は水処理用フィルタとして好適に使用することができる。
【0009】
また、本発明の分離機能性繊維シートにおいて、好ましくは、前記分離機能性繊維以外に、前記分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分よりも融点の高い高融点ポリエチレン成分を表面に有する第2のポリエチレン系繊維を含ませると、分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分を融着させたとしても、前記第2のポリエチレン系繊維によつて空隙を維持することができるため、適度な通気度又は通水抵抗を確保することができる。
【0010】
本発明の分離機能性繊維シートによりフィルタを形成すると、放射線の影響をほとんど受けることなく放射線グラフト重合によりイオン交換基及び/又はキレート基を導入することができ、発塵を生じにくく、好ましくは適度な通気度又は通水抵抗を有するフィルタを、生産性よく製造することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の分離機能性繊維にイオン交換基及び/又はキレート基を導入する前の繊維、即ち、低融点ポリエチレン成分と、前記低融点ポリエチレン成分よりも融点の高い高融点ポリエチレン成分とを含み、前記低融点ポリエチレン成分が表面に露出している繊維(以下、「低融点表面のポリエチレン系複合繊維」という)は、実質的にポリエチレン系成分のみから構成されるので、イオン交換基及び/又はキレート基を導入するために放射線を照射したとしても、繊維の強度劣化が少なく、また肥大化したとしても繊維全体が肥大化でき、また、グラフトの過程で低融点ポリエチレン成分が肥大化したとしても高融点ポリエチレン成分との剥離を抑えることができ、しかも折り曲げた際の発塵などの問題が発生しない。
【0012】
上述したように、本発明において、低融点表面のポリエチレン系複合繊維は、低融点ポリエチレン成分と、この低融点ポリエチレン成分よりも融点の高い高融点ポリエチレン成分とを含み、前記低融点ポリエチレン成分が表面に露出したものである。ここで、低融点ポリエチレン成分とは、後述の高融点ポリエチレン成分との比較において融点のより低いポリエチレンをいう。この低融点ポリエチレン成分は低温で融着できるため、低融点ポリエチレン成分の融着により繊維シート形状を維持でき、分離機能性繊維シート中にポリエチレン系成分以外の成分からなる接着剤等を特に必要としない。なお、本発明において用いることのできる低融点ポリエチレン成分としては、例えば、低密度ポリエチレン(密度が0.91〜0.94程度のポリエチレン)、低密度ポリエチレンに1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、高級アルケン、或いはその誘導体を挙げることができる。
【0013】
本発明において「融点」とは、示差熱量計を用い、昇温温度20℃/分で、室温から昇温して得られる融解吸収曲線の極値を与える温度をいう。また、ポリエチレンの密度はJIS K 6760によつて測定することができる。
【0014】
なお、低融点ポリエチレン成分を直鎖状低密度ポリエチレン成分から構成すると、繊維シートを曲げても分離機能性繊維が破壊されにくく、発塵しにくいため好適である。例えば、分離機能性繊維シートを空気浄化用フィルタとして使用した場合、圧力損失を下げると同時に吸塵量を多くするためにシートにプリーツ加工を施すのが好ましいが、低融点ポリエチレン成分を直鎖状低密度ポリエチレン成分から構成すると、このようなプリーツ加工を施したとしても発塵しにくい。また、分離機能性繊維シートを水処理用フィルタとして使用した場合、微粒子の発生、或いはTOCやイオンの発生が少ない。
【0015】
このような低融点ポリエチレン成分(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)は市販されているため、容易に入手することができる。
【0016】
本発明の低融点表面のポリエチレン系複合繊維は前述のような低融点ポリエチレン成分以外に、低融点ポリエチレン成分よりも融点の高い高融点ポリエチレン成分を含んでいる。この高融点ポリエチレン成分は低融点ポリエチレン成分よりも融点が高いため、低融点ポリエチレン成分を融着させたとしても、低融点表面のポリエチレン系複合繊維の繊維形状を維持することができ、フィルム化しないため、分離機能性繊維シートの適度な通気度や通水抵抗を確保することができる。また、この高融点ポリエチレン成分を含んでいることによつて、低融点ポリエチレン成分を表面に有する低融点表面のポリエチレン系複合繊維を紡糸可能となる。
【0017】
この高融点ポリエチレン成分としては、低融点ポリエチレン成分よりも融点が高いポリエチレンであれば使用できるが、上述のような効果を得るためには融点差が5℃以上あるのが好ましいため、高密度ポリエチレン(密度が0.94以上のポリエチレン)からなるのが好ましい。特に、低融点ポリエチレン成分が直鎖状低密度ポリエチレンからなる場合には、直鎖状低密度ポリエチレンの融点が123〜126℃程度と高いため、高融点ポリエチレン成分は高密度ポリエチレンからなるのが好ましい。なお、高融点ポリエチレンとして、高密度ポリエチレン以外に、例えば、高密度ポリエチレンに1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、高級アルケン、或いはその誘導体を含むものを使用することができる。このような高融点ポリエチレンは市販されているため、容易に入手できる。
【0018】
本発明の低融点表面のポリエチレン系複合繊維は上述のような低融点ポリエチレン成分と高融点ポリエチレン成分とを含んでおり、低融点ポリエチレン成分が繊維表面に露出した繊維である。そのため、この低融点ポリエチレン成分を融着させることにより、繊維シートの形状を維持することができる。したがつて、ポリエチレン以外の成分からなる接着剤等を必要としないため、イオン交換基及び/又はキレート基を導入する際に空隙の発生を少なくすることができる。
【0019】
なお、低融点ポリエテレン成分が繊維表面に露出している理由の1つとして、この低融点ポリエチレン成分によつて繊維同士を融着させるということがあるため、低融点ポリエチレン成分は繊維表面積の40%以上を占めているのが好ましく、70%以上を占めているのがより好ましく、 100%を占めているのが最も好ましい。このような低融点表面のポリエチレン系複合繊維の断面形状としては、例えば、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型などがあり、上述のように低融点ポリエチレン成分の繊維表面を占める比率が高ければ高いほど融着力に優れているため、芯鞘型、偏芯型、或いは海島型であるのが好ましい。
【0020】
また、低融点表面のポリエチレン系複合繊維が物理的作用(例えば、水流などの流体流、ニードル、フタットプレス機、カレンダーなど)や化学的作用(例えば、溶媒による除去、溶媒による膨潤など)によって、低融点ポリエチレン成分からなる極細繊維と高融点ポリエチレン成分からなる極細繊維とに分割可能であると、(1)低融点ポリエチレン成分が繊維表面を100%占める極細繊維を発生することができるため、効率的に融着できる;(2)極細繊維を含んでいるため、より微細な塵を補集できる;(3)繊維表面積が広くなるため、イオン交換基及び/又はキレート基の量が多くなり、イオン交換速度及び/又はキレート反応速度が速くなる;などの効果を生じるため好適である。このような分割可能な低融点表面のポリエチレン系複合繊維の断面形状としては、例えば、海島型、オレンジ型、或いは多重バイメタル型などがある。
【0021】
本発明の低融点表面のポリエチレン系複合繊維における低融点ポリエチレン成分と高融点ポリエチレン成分との質量比率は、80〜20:20〜80程度が適当である。低融点ポリエチレン成分の比率が20質量%未満であると、融着力が弱くなる傾向があり、高融点ポリエチレン成分の比率が20質量%未満であると、低融点表面のポリエチレン系複合繊維の強度が低下する傾向があるためである。
【0022】
なお、低融点表面のポリエチレン系複合繊維の断面形状は円形であっても良いし、非円形であっても良い。この非円形の断面形状としては、例えば、楕円形状、長円形状、アルファベット形状(例えば、T形状、Y形状など)、プラス(+)形状、中空形状、多角形状(例えば、四角形、六角形など)などがある。
【0023】
また、低融点表面のポリエチレン系複合繊維の繊度は特に限定するものではないが、微細な塵も補集できるように、0.5〜10デニール程度が適当である。また、低融点表面のポリエチレン系複合繊維はフィラメントであっても良いし、繊維長1〜160mm程度のステープルであっても良い。
【0024】
なお、低融点表面のポリエチレン系複合繊維の低融点ポリエチレン成分及び/又は高融点ポリエチレン成分中に、吸湿剤、艶消し剤、顔料、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、着色剤、染色剤、導電剤、親水化剤、脱臭剤、或いは抗菌剤などの機能性物質が含まれていても良い。
【0025】
このような本発明の低融点表面のポリエチレン系複合繊維は、常法の複合紡糸装置を利用することにより紡糸することができる。例えば、高融点ポリエチレン成分が高密度ポリエチレンからなる場合、溶融紡糸温度を160〜330℃とすることにより紡糸できる。なお、このようにして複合紡糸した未延伸糸は延伸し、必要であれば裁断して、繊維シートの原料とすることができる。また、この低融点表面のポリエチレン系複合繊維を乾式不織布の原料として、又は紡績糸として使用する場合には、機械的に又は熱的に巻縮を付与するのが好ましい。
【0026】
本発明の分離機能性繊維シートは、前述のような低融点表面のポリエチレン系複合繊維の少なくとも低融点ポリエチレン成分にイオン交換基及び/又はキレート基を有する分離機能性繊維を含んでいるため、塵挨以外にイオンを捕捉したり、キレート反応により金属イオンを捕捉することができる。この分離機能性繊維は、例えば、前述のようにして製造した低融点表面のポリエチレン系複合繊維にイオン交換基及び/又はキレート基を導入することによって製造することができる。なお、このイオン交換基及び/又はキレート基の導入は、低融点表面のポリエチレン系複合繊維に対して実施しても良いし、低融点表面のポリエチレン系複合繊維を使用して繊維シートを形成した後にイオン交換基及び/又はキレート基を導入して、分離機能性繊維を形成しても良い。
【0027】
また、分離機能性繊維シートの態様としては、例えば、織物、編物、不織布、或いはこれらの複合体であることができる。これらの中でも、不織布は繊維が三次元的に配列することができ、塵埃の補集効率に優れ、イオン交換基及び/又はキレート基との接触機会が多いため、分離機能性繊維シートとして、不織布を含んでいるのが好ましい。この分離機能性繊維シートは常法により製造することができる。例えば、好適である不織布は、次のようにして製造することができる。
【0028】
まず、低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維を含む繊維ウエブを形成する。この繊維ウエブの形成方法としては、例えば、カード法、エアレイ法、スパンボンド法、メルトプロー法などの乾式法や、湿式法などがある。なお、繊維ウエブを形成した後、製法の異なる繊維ウエブを積層したり、繊維配合の異なる繊維ウエブを積層するなど、種類の異なる繊維ウエブを積層しても良い。
【0029】
この繊維ウエブは低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維を20質量%以上含んでいるのが好ましく、40質量%以上含んでいるのがより好ましい。この低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維以外の繊維として、低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分よりも融点の高い高融点ポリエチレン成分を表面に有する第2のポリエチレン系繊維(これを、以下、高融点表面のポリエチレン系繊維という)を含んでいるのが好ましい。このような高融点表面のポリエチレン系繊維を繊維ウエブ中に含ませることによって、低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分を融着させた場合であっても、適度な通気度又は通水抵抗を確保することができる。
【0030】
この高融点表面のポリエチレン系繊維における高融点ポリエチレン成分は、低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維を構成する低融点ポリエチレン成分よりも融点が高いポリエチレンであれば良いが、適度な通気度又は通水抵抗を確保するために、融点差が5℃以上あるのが好ましいため、高融点表面のポリエチレン系繊維の高融点ポリエチレン成分は高密度ポリエチレンからなるのが好ましい。なお、低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維を構成する低融点ポリエチレン成分が直鎖状低密度ポリエテレンからなる場合には、直鎖状低密度ポリエチレンの融点が123〜126℃程度と高いため、高融点表面のポリエチレン系繊維の高融点ポリエチレン成分は高密度ポリエチレン(密度が0.94以上のポリエチレン)からなるのが好ましい。また、高融点表面のポリエチレン系繊維の高融点ポリエチレン成分は、高密度ポリエチレン以外に、例えば、高密度ポリエチレンに1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、高級アルケン、或いはその誘導体に由来する単位を含むものであつても使用することができる。更に、この高融点表面のポリエチレン系繊維を構成する高融点ポリエチレン成分と、低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維を構成する高融点ポリエチレン成分とは同じであっても、異なっていても良い。
【0031】
なお、高融点表面のポリエチレン系繊維の高融点ポリエチレン成分は繊維の表面を占めていれば良く(好適には100%を占める)、単一成分から構成されていても、複数成分から構成されていても良い。なお、繊維シートを形成した後にイオン交換基及び/又はキレート基を導入する場合、高融点表面のポリエチレン系繊維がポリエチレン系樹脂成分以外の樹脂成分を含んでいると、イオン交換基及び/又はキレートを導入する際に繊維強度が低下したり、ポリエチレン系樹脂成分とポリエチレン系樹脂成分以外の樹脂成分との間に空隙ができる場合があるため、このような場合には、高融点表面のポリエチレン系繊維はポリエチレン系樹脂成分のみ、つまり、2種類以上の高密度ポリエチレンからなるのが好ましい。この高融点表面のポリエチレン系繊維が複数成分から構成される場合の断面形状としては、例えば、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型などがある。このような高融点表面のポリエチレン系繊維は常法の溶融紡糸法、複合紡糸法、混合紡糸法、或いはこれらを適宜組み合わせることにより紡糸することができる。
【0032】
また、この高融点表面のポリエチレン系繊維が低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維よりも太いと、仮に高融点表面のポリエチレン系繊維が多少溶融したとしても、適度な空隙を確保でき、適度な通気度又は通水抵抗を確保することができるため好適である。このことは低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分が直鎖状低密度ポリエチレンからなる場合に特に有効である。
【0033】
この高融点表面のポリエチレン系繊維の量は、低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維との関係から、80質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのがより好ましい。
【0034】
次いで、この繊維ウエブを結合して不織布を製造することができる。この結合方法としては、例えば、水流などの流体流やニードルによる絡合、繊維ウエブを構成する低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分による部分的又は全面的な融着、バインダーによる部分的又は全面的な接着、或いはこれらを併用する方法などがある。これらの中でも、ポリエチレン系樹脂成分以外の樹脂成分からなる接着剤等を必要としない、水流などの流体流やニードルによる絡合や、繊維ウエブを構成する低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分による部分的又は全面的な融着が好ましく、より強度的に優れる、繊維ウエブを構成する低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分による全面的な融着がより好ましい。
【0035】
この好適である融着処理は、低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分の融点以上、かつ低融点表面のポリエチレン系複合繊維又は分離機能性繊維の高融点成分の融点未満(ウエブが高融点表面のポリエチレン系繊維を含んでいる場合には、高融点表面のポリエチレン系繊維の高融点ポリエチレン成分の融点未満であることも必要である)の温度で実施するのが好ましい。このような熱処理は、例えば、ドライヤー、熱風ドライヤー、吸引付きドライヤーなどによって実施することができる。また、熱処理と同時又は加熱後に加圧して、融着を確実にしたり、空隙を調整したり、或いは厚さを調整するのが好ましい。この線圧力としては、例えば、5〜30N/cmが適当である。このような加圧処理は、例えば、カレンダーロール、平板プレス機などによって実施することができる。
【0036】
上述のようにして製造した繊維シートが分離機能性繊維を含んでいない場合、即ちイオン交換基又はキレート基の導入処理を行っていない低融点表面のポリエチレン系複合繊維から繊維シートを製造した場合、次いで繊維シートを構成する低融点表面のポリエチレン系複合繊維の低融点ポリエチレン成分に、イオン交換基及び/又はキレート基を導入する。なお、繊維シート中に高融点表面のポリエチレン系繊維が含まれている場合には、この高融点表面のポリエチレン系繊維にもイオン交換基及び/又はキレート基が導入される。
【0037】
このイオン交換基及び/又はキレート基の導入方法としては、例えば、(1)イオン交換基及び/又はキレート基を有するモノマー及び/又はポリマーをグラフト重合させる方法、(2)モノマー及び/又はポリマーをグラフト重合させた後にイオン交換基及び/又はキレート基を導入する方法、などがある。
【0038】
このモノマー及び/又はポリマー(モノマー及び/又はポリマーがイオン交換基及び/又はキレート基を有するに関係ない)をグラフト重合させる方法としては、例えば、(1)モノマー及び/又はポリマーと重合開始剤とを含む溶液中に繊維シートを浸漬して加熱する方法、(2)繊維シートにモノマー及び/又はポリマーを含む溶液を付与した後に放射線を照射する方法、(3)繊維シートに放射線を照射した後にモノマー及び/又はポリマーと接触させる方法、(4)増感剤を含むモノマー及び/又はポリマー溶液を繊維シートに付与した後に紫外線を照射する方法、などがある。これらの中でも(2)又は(3)のような放射線グラフト重合法によれば、グラフト率が高く、よりイオン交換性及び/又はキレート反応性に優れる分離機能性繊維シートとすることができるため好適である。また、低融点表面のポリエチレン系複合繊維は実質的にポリエチレン系樹脂のみから構成されているため、放射線を照射したとしても繊維が劣化して発塵したり、グラフト重合に使用する反応液が残留しやすい空隙を生じることもない。なお、モノマー及び/又はポリマーと繊維シートとを接触させる前に、紫外線照射、コロナ放電、プラズマ放電などにより、繊維シート表面を改質処理すると、モノマー及び/又はポリマーとの親和性が高くなり、効率的にグラフト重合することができる。
【0039】
この好適である放射線を照射する場合、その線源としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線、X線などを使用できる。また、照射線量はラジカルが発生しやすく、放射線による低融点表面のポリエチレン系繊維などの劣化が生じないように、20〜300kGyが適当である。
【0040】
また、モノマー及び/又はポリマーの繊維シートとの接触方法は、例えば、モノマー及び/又はポリマーを含む溶液を繊維シートにスプレー又は塗布する方法、モノマー及び/又はポリマーを含む溶液中に繊維シートを浸漬する方法、モノマー及び/又はポリマー蒸気で満たされた空間に繊維シートを供給する方法、などがある。
【0041】
このグラフト重合させるモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンスルホン酸ナトリウム、メタクリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウムなどのイオン交換基を有するモノマーや、アクリロニトリル、アクロレイン、ピニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジルなどのイオン交換基及びキレート基をもたないモノマーがある。前者のイオン交換基を有するモノマーを使用した場合には、グラフト重合によって繊維シート中に直接イオン交換基を導入することができる。また、後者のイオン交換基及びキレート基をもたないモノマーを使用した場合には、グラフト重合の後、例えば、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、塩化スルフリルなどのスルホン化剤によってスルホン酸基を導入したり、イミノジ酢酸などのキレート化剤によりイミノジ酢酸基などのキレート基を導入することによって、繊維シート中にイオン交換基又はキレート基を導入することができる。また、グラフト重合させるポリマーとしては、上述のモノマーを構成単位とするポリマーを使用することができる。
【0042】
なお、上記のイオン交換基及び/又はキレート基の導入に関する説明は、繊維シートを形成した後にイオン交換基及び/又はキレート基を導入する場合に関して行ったが、繊維シート形成前の低融点表面のポリエチレン系複合繊維に対して上記と同様の処理を行なって、繊維に対してイオン交換基及び/又はキレート基を導入し、この繊維から繊維シートを形成することによっても、本発明に係る分離機能性繊維シートを形成することができる。
【0043】
以上のような方法で形成される本発明に係る分離機能性繊維シートは、イオン交換基及び/又はキレート基が導入された分離機能性繊維を含んでいるため、イオン交換性やキレート反応性を必要とする用途に好適に使用することができる。例えば、半導体産業、精密機械産業、写真産業、医薬品製造産業、食品産業、農業産業、或いは病院などにおけるフィルタ(特に、空気浄化用フィルタ或いは水処理用フィルタ)として好適に使用することができる。なお、本発明の分離機能性繊維シートをフィルタとして使用する場合には、平板状のまま使用することもできるし、より圧力損失を低くし、給塵量を多くすることができるように、プリーツ加工して使用することもできる。
【0044】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、通気度はJIS L 1096(6.27.1 A法(フラジール法))に規定される方法により測定した値である。また、ポリエチレン及びポリプロピレンのMFRは、それぞれJIS K6760及びJIS K7210に従って測定した(単位はg/10分)。また、ポリエステルの固有粘度(η)はo−クロロフェノール溶液中で定法にしたがって測定した。
【0045】
【実施例】
(実施例1)
常法の芯鞘型の複合紡糸装置を使用し、鞘成分を構成する直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.93、融点124℃、MFR50)と、芯成分を構成する高密度ポリエチレン(密度0.96、融点134℃、MFR20)とを、それぞれ240℃で溶融させた後、直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの複合質量比50:50でノズルから押し出し、繊度22デニールの巻き取り糸を得た。
【0046】
次いで、この巻き取り糸を90℃で7倍延伸し、次いでスチームを吹き当てながら1倍延伸して巻縮を付与し、繊度3.5デニール、繊維長51mmの低融点表面のポリエチレン系複合繊維を製造した。この低融点表面のポリエチレン系複合繊維は直鎖状低密度ポリエチレンが繊維表面全体(100%)を占める、芯鞘型の円形断面を有するものであった。
【0047】
他方、高融点表面のポリエチレン系繊維として、断面円形の高密度ポリエチレン繊維(密度0.96、融点134℃、繊度6デニール、繊維長51mm)を用意した。
【0048】
次いで、上記低融点表面のポリエチレン系複合繊維50質量%と高密度ポリエチレン繊維50質量%とを混綿し、カード機により開繊して、一方向性繊維ウエブを形成した。次いで、この一方向性繊維ウエブをクロスレイヤーにより、繊維ウエブの長さ方向に対して交差させて、クロスレイウエブを形成した。
【0049】
そして、このクロスレイウエブを温度125℃で加熱した後、面圧力9.8N/cm2のロール間を通し、低融点表面のポリエチレン系複合繊維の直鎖状低密度ポリエチレン成分を全面的に融着させて、面密度80g/m2、厚さ0.3mmの不織布を製造した。
【0050】
次いで、この不織布にγ線を窒素雰囲気下で200kGy照射し、温度40℃のアクリル酸水溶液(濃度50質量%)に6時間浸漬した後、水洗して、分離機能性繊維シートを製造した。グラフト率を算出したところ、74%であった。なお、グラフト率は、重量増加率に基づき下式により求められる。
【0051】
【式1】
Figure 0003677197
【0052】
この分離機能性繊維シートはプリーツ加工しても全く発塵せず、またアクリル酸水溶液の残留がなく、容易に水洗することのできるものであった。また、その通気度は110cm3/cm2・secであり、通気性にも優れていた。そのため、この分離機能性繊維シートは空気浄化用フィルタとして好適に使用できるものであった。
【0053】
(実施例2)
実施例1と同じ低融点表面のポリエチレン系複合繊維70質量%と高密度ポリエチレン繊維30質量%とを混綿したこと以外は、実施例1と全く同様にして、繊維ウエブを形成し、低融点表面のポリエチレン系複合繊維の直鎖状低密度ポリエチレン成分を全面的に融着させることにより、面密度80g/m2、厚さ0.25mmの不織布を製造した。
【0054】
次いで、この不織布に対して、実施例1と全く同様にしてアクリル酸をグラフト重合させて、分離機能性繊維シートを製造した。グラフト率は68%であった。この分離機能性繊維シートはプリーツ加工しても全く発塵せず、またアクリル酸水溶液の残留がなく、容易に水洗することのできるものであった。また、その通気度は80cm3/cm2・secであり、通気性にも優れるものであった。そのため、この分離機能性繊維シートは空気浄化用フィルタとして好適に使用できるものであった。
【0055】
(実施例3)
実施例1と同じ低融点表面のポリエチレン系複合繊維100質量%を使用したこと以外は、実施例1と全く同様にして、繊維ウエブを形成し、低融点表面のポリエチレン系複合繊維の直鎖状低密度ポリエチレン成分を全面的に融着させることにより、面密度80g/m2、厚さ0.2mmの不織布を製造した。
【0056】
次いで、この不織布に対して、実施例1と全く同様にしてアクリル酸をグラフト重合させて、分離機能性繊維シートを製造した。この分離機能性繊維シートはプリーツ加工しても全く発塵せず、またアクリル酸水溶液の残留がなく、容易に水洗することのできるものであった。ただし、通気度は30cm3/cm2・secであり、実施例1及び実施例2と比較すると、やや通気性の劣るものであった。
【0057】
(比較例1)
芯成分がポリプロピレン(融点160℃、MFR30)からなり、鞘成分が高密度ポリエチレン(密度0.96、融点134℃、MFR20)からなる、芯鞘型複合繊維(繊度3.5デニール、繊維長51mm)を用意した。
【0058】
次いで、この芯鞘型複合繊維100%をカード機により開繊して、一方向性繊維ウエブを形成した。次いで、この一方向性繊維ウエブをクロスレイヤーにより繊維ウエブの長さ方向に対して交差させて、クロスレイウエブを形成した。
【0059】
そして、このクロスレイウエブを温度140℃で加熱した後、面圧力9.8N/cm2のロール間を通し、芯鞘型複合繊維の高密度ポリエチレン成分を全面的に融着させて、面密度80g/m2、厚さ0.2mmの不織布を製造した。
【0060】
次いで、この不織布に対して、実施例1と全く同様にしてアクリル酸をグラフト重合させて、分離機能性繊維シートを製造した。グラフト率は69%であった。この分離機能性繊維シートは、芯鞘型複合繊維を構成するポリプロピレン成分(芯)と高密度ポリエチレン成分(鞘)との間に空隙が発生しており、この空隙にアクリル酸水溶液の残留していたため、このアクリル酸水溶液を除去するのに多大な手間と時間を要した。
【0061】
(比較例2)
芯成分がポリエステル(融点257℃、固有粘度η=0.64)からなり、鞘成分が高密度ポリエチレン(密度0.96、融点134℃、MFR20)からなる、芯鞘型複合繊維(繊度3.5デニール、繊維長51mm)を用意した。
【0062】
次いで、この芯鞘型複合繊維100%をカード機により開繊して、一方向性繊維ウエブを形成した。次いで、この一方向性繊維ウエブをクロスレイヤーにより繊維ウエブの長さ方向に対して交差させて、クロスレイウエブを形成した。
【0063】
そして、このクロスレイウエブを温度140℃で加熱した後、面圧力9.8N/cm2のロール間を通し、芯鞘型複合繊維の高密度ポリエチレン成分を全面的に融着させて、面密度80g/m2、厚さ0.2mmの不織布を製造した。
【0064】
次いで、この不織布に対して、実施例1と全く同様にしてアクリル酸をグラフト重合させて、分離機能性繊維シートを製造した。グラフト率は78%であった。この分離機能性繊維シートは、芯鞘型複合繊維を構成するポリエステル成分(芯)と高密度ポリエチレン成分(鞘)との間に空隙が発生しており、この空隙にアクリル酸水溶液の残留していたため、このアクリル酸水溶液を除去するのに多大な手間と時間を要した。
【0065】
(実施例4)
実施例1と全く同様にして製造した不織布(面密度80g/m2、厚さ0.3mm)に、γ線を窒素雰囲気下で200kGy照射し、次いで温度45℃のメタクリル酸グリシジル溶液に10時間浸漬した後、水洗して、グラフト率143%のメタクリル酸グリシジルグラフト不織布を製造した。次いで、このグラフト不織布を温度80℃の亜硫酸ナトリウム10%水溶液に10時間浸漬して反応させ、スルホン化を実施した。このスルホン化した不織布を純水で洗浄した後、塩酸再生し、更に純水で洗浄した。
【0066】
(比較例3)
比較例1と全く同様にして製造した不織布(面密度80g/m2,厚さ0.2mm)を、実施例4と全く同様にして、γ線の照射、メタクリル酸グリシジル溶液への浸漬、水洗及び亜硫酸ナトリウム10%水溶液への浸漬を実施して、スルホン化を実施した。グラフト率は151%であった。このスルホン化した不織布の洗浄及びそれに続く塩酸再生後の洗浄を純水で実施したところ、実施例4に要した純水の2.1倍量の純水が必要であった。
【0067】
(実施例5)
実施例4と全く同様にして製造したメタクリル酸グリシジルグラフト不織布を、70℃のイミノジ酢酸10%水溶液に5時間浸漬して、イミノジ酢酸基を導入し、純水で洗浄した。このイミノジ酢酸基を導入したグラフト不織布(分離機能性繊維シート)を10cm角の大きさ裁断し、温度25℃の超純水500ml中に10日間浸漬した後、TOCを測定したところ、1.2mg/lであった。
【0068】
(比較例4)
比較例3と全く同様にして製造したメタクリル酸グリシジルグラフト不織布を、70℃のイミノジ酢酸10%水溶液に5時間浸漬して、イミノジ酢酸基を導入した。この不織布の洗浄を純水で実施したところ、実施例5に要した純水の1.5倍量の純水が必要であった。また、このイミノジ酢酸基を導入したグラフト不織布(分離機能性繊維シート)を10cm角の大きさ裁断し、温度25℃の超純水500ml中に10日間浸漬した後、TOCを測定したところ、3.4mg/lであり、実施例5のものよりも3倍近く濃度が高かった。
【0069】
【発明の効果】
本発明の分離機能性繊維シートは、シートを構成する繊維がポリエチレン成分のみからなるため、イオン交換基及び/又はキレート基を導入する際に低融点ポリエチレン成分が肥大化したとしても、高融点ポリエチレン成分も同様に肥大化して、低融点ポリエチレン成分と高融点ポリエチレン成分との密着性が維持されやすいため、イオン交換基及び/又はキレート基を導入する際に使用する反応液が残留しにくい。したがって、本発明の分離機能性繊維シートは生産性良く製造することができる。
【0070】
また、分離機能性繊維のイオン交換基及び/又はキレート基を放射線グラフト重合法により導入しても、分離機能性繊維シートを構成する繊維がポリエチレン成分のみからなり、放射線の影響をほとんど受けることがないため、分離機能性繊維を損傷したり強度を低下させることなく、グラフト重合することができる。
【0071】
本発明の好ましい態様にかかる分離機能性繊維シートにおいては、前記分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分が直鎖状低密度ポリエチレンからなるので、繊維シートを折り曲げたとしても分離機能性繊維は損傷して発塵しにくいため、発塵を生じにくい。そのため、この分離機能性繊維シートをプリーツ加工したものは、空気浄化用フィルタ又は水処理用フィルタとして好適に使用することができる。
【0072】
また、本発明の好ましい態様にかかる分離機能性繊維シートは、前記分離機能性繊維以外に、前記分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分よりも融点の高い高融点ポリエチレン成分を表面に有するポリエチレン系繊維を含んでいるので、分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分を融着させたとしても、前記ポリエチレン系繊維によって空隙を維持することができるため、適度な通気度又は通水抵抗を確保することができる。
【0073】
本発明のフィルタが、前述のような分離機能性繊維シートからなると、生産性良く製造でき、放射線の影響をほとんど受けることなくグラフト重合することができ、発塵を生じにくいものであり、或いは適度な通気度又は通水抵抗を有するものである。

Claims (4)

  1. 低融点ポリエチレン成分と、前記低融点ポリエチレン成分よりも融点の高い高融点ポリエチレン成分とを含み、前記低融点ポリエチレン成分が表面に露出しており、かつ少なくとも前記低融点ポリエチレン成分が放射線グラフト重合法により導入されたイオン交換基及び/又はキレート基を有する分離機能性繊維を含んでいることを特徴とする分離機能性繊維シート。
  2. 前記分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分が直鎖状低密度ポリエチレンからなることを特徴とする、請求項1に記載の分離機能性繊維シート。
  3. 前記分離機能性繊維以外に、前記分離機能性繊維の低融点ポリエチレン成分よりも融点の高い高融点ポリエチレン成分を表面に有するポリエチレン系繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1又は2に記載の分離機能性繊維シート。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の分離機能性繊維シートからなることを特徴とするフィルタ。
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