JP2023069308A - 位置推定システム、位置推定方法、処理装置、およびコンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】ユーザによる携帯が可能なモバイル装置の位置を推定するシステムの利便性を高める。【解決手段】通信装置11は、ユーザ20により携帯可能なモバイル装置30と無線通信を行なう。第一処理装置12は、モバイル装置30における通信装置11からの信号受信強度値または通信装置11におけるモバイル装置30からの信号受信強度値を断続的に取得し、複数の当該信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより当該信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を算出する。第二処理装置13は、前記統計値が第一閾値を上回る場合にモバイル装置30が通信装置11に距離d1まで近づいたと判断し、前記統計値が当該第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合にモバイル装置30が通信装置11から距離d1まで離れたと判断する。【選択図】図1
Description
本発明は、ユーザによる携帯が可能なモバイル装置の位置を推定するシステムおよび方法に関連する。本発明は、当該システムの一部を構成しうる処理装置、および当該処理装置に搭載された処理部により実行可能なコンピュータプログラムにも関連する。
特許文献1は、移動体の一例である車両に搭載された位置推定システムを開示している。当該システムにおいては、ユーザに携帯されたモバイル装置の認証処理を行なうために当該モバイル装置の位置推定が行なわれる。
本発明の目的は、ユーザによる携帯が可能なモバイル装置の位置を推定するシステムの利便性を高めることである。
上記の目的を達成するための一態様は、位置推定システムであって、
ユーザにより携帯可能なモバイル装置と無線通信を行なう通信装置と、
前記モバイル装置における前記通信装置からの信号受信強度値または前記通信装置における前記モバイル装置からの信号受信強度値を断続的に取得し、複数の当該信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより当該信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を算出する第一処理装置と、
前記統計値が第一閾値を上回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置に第一距離まで近づいたと判断し、前記統計値が当該第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置から第二距離まで離れたと判断する第二処理装置と、
を備えている。
ユーザにより携帯可能なモバイル装置と無線通信を行なう通信装置と、
前記モバイル装置における前記通信装置からの信号受信強度値または前記通信装置における前記モバイル装置からの信号受信強度値を断続的に取得し、複数の当該信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより当該信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を算出する第一処理装置と、
前記統計値が第一閾値を上回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置に第一距離まで近づいたと判断し、前記統計値が当該第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置から第二距離まで離れたと判断する第二処理装置と、
を備えている。
上記の目的を達成するための一態様は、位置推定方法であって、
ユーザにより携帯可能なモバイル装置における通信装置からの信号受信強度値または当該通信装置における当該モバイル装置からの信号受信強度値を断続的に取得し、
複数の当該信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより当該信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を算出し、
前記統計値が第一閾値を上回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置に第一距離まで近づいたと判断し、
前記統計値が前記第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置から第二距離まで離れたと判断する。
ユーザにより携帯可能なモバイル装置における通信装置からの信号受信強度値または当該通信装置における当該モバイル装置からの信号受信強度値を断続的に取得し、
複数の当該信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより当該信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を算出し、
前記統計値が第一閾値を上回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置に第一距離まで近づいたと判断し、
前記統計値が前記第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置から第二距離まで離れたと判断する。
上記の目的を達成するための一態様は、処理装置であって、
ユーザにより携帯可能なモバイル装置における通信装置からの信号受信強度値または当該通信装置における当該モバイル装置からの信号受信強度値を断続的に取得し、かつ複数の当該信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより算出される当該信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を示すデータを受け付ける受付部と、
前記統計値が第一閾値を上回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置に第一距離まで近づいたと判断し、前記統計値が当該第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置から第二距離まで離れたと判断する処理部と、
を備えている。
ユーザにより携帯可能なモバイル装置における通信装置からの信号受信強度値または当該通信装置における当該モバイル装置からの信号受信強度値を断続的に取得し、かつ複数の当該信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより算出される当該信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を示すデータを受け付ける受付部と、
前記統計値が第一閾値を上回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置に第一距離まで近づいたと判断し、前記統計値が当該第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置から第二距離まで離れたと判断する処理部と、
を備えている。
上記の目的を達成するための一態様は、処理装置に搭載された処理部により実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記処理装置は、
ユーザにより携帯可能なモバイル装置における通信装置からの信号受信強度値または当該通信装置における当該モバイル装置からの信号受信強度値を断続的に取得し、
複数の前記信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより算出される前記信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を示すデータを受け付け、
前記統計値が第一閾値を上回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置に第一距離まで近づいたと判断し、
前記統計値が前記第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置から第二距離まで離れたと判断する。
実行されることにより、前記処理装置は、
ユーザにより携帯可能なモバイル装置における通信装置からの信号受信強度値または当該通信装置における当該モバイル装置からの信号受信強度値を断続的に取得し、
複数の前記信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより算出される前記信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を示すデータを受け付け、
前記統計値が第一閾値を上回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置に第一距離まで近づいたと判断し、
前記統計値が前記第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置から第二距離まで離れたと判断する。
本願の発明者たちは、統計処理の適用によりモバイル装置の位置推定精度を高めようとすると、本来はモバイル装置が通信装置から特定の距離だけ離れた時点で実行しようとする処理が、当該距離よりも遠くまで離れてから実行される可能性があることを見出した。本願の発明者たちは、この相反を解消するために、モバイル装置が通信装置から所定の距離まで離れたことを検出するための信号受信強度に係る閾値を、モバイル装置が通信装置に所定の距離まで近づいたことを検出するための信号受信強度に係る閾値から独立して設定すればよいとの着想を得た。
上記の各態様に係る構成によれば、モバイル装置の位置推定精度を高めるために統計処理を適用した結果として位置推定処理に遅延が生じたとしても、モバイル装置が通信装置から離れる際に実行される処理について適切かつ柔軟な距離条件の設定が可能になる。したがって、ユーザによる携帯が可能なモバイル装置の位置を推定するシステムの利便性を高めることができる。
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。各図面においては、例示される各要素を認識可能な大きさとするために、縮尺を適宜に変更している。
図1は、一実施形態に係る位置推定システム10の構成を例示している。位置推定システム10は、ユーザ20による携帯が可能であるモバイル装置30の位置を推定し、推定されたモバイル装置30の位置に基づいてユーザ20による車両40の利用を許可するために使用されうる。車両40の形状は、例示に過ぎない。車両40は、移動体の一例である。
位置推定システム10は、通信装置11を含んでいる。通信装置11は、モバイル装置30と無線通信を実行可能なアンテナを備えている。本例においては、通信装置11とモバイル装置30は、Bluetooth(登録商標)規格に準拠した無線通信を行なうように構成されている。
具体的には、通信装置11は、車両40の少なくとも外側へトリガ信号を送信するように構成されている。モバイル装置30は、当該トリガ信号の受信強度値を計測し、計測された受信強度値を示すデータを含む応答信号を送信するように構成されている。
図2に例示されるように、通信装置11は、応答信号に含まれる受信強度値データRIを出力するように構成されている。なお、モバイル装置30がトリガ信号の受信強度値を計測する構成に代えて、トリガ信号への応答としてモバイル装置30から送信される信号の通信装置11における受信強度値が計測される構成が採用されうる。すなわち、受信強度値データRIは、モバイル装置30における通信装置11からの信号受信強度値または通信装置11におけるモバイル装置30からの信号受信強度値を示す。
位置推定システム10は、第一処理装置12を含んでいる。第一処理装置12は、通信装置11と通信可能に接続されている。第一処理装置12は、車両40における適宜の位置に配置されている。図1に示される例においては、通信装置11と第一処理装置12は独立した装置として車両40における異なる場所に位置している。しかしながら、通信装置11は、第一処理装置12の一部として提供されてもよい。
図2に例示されるように、第一処理装置12は、受付部121を備えている。受付部121は、通信装置11から出力される受信強度値データRIを受け付けるインタフェースとして構成されている。受信強度値データRIは、アナログデータであってもよいし、デジタルデータであってもよし。受信強度値データRIがアナログデータである場合、受付部121は、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を備える。
通信装置11とモバイル装置30の間におけるトリガ信号と応答信号の送受信は断続的に行なわれる。したがって、第一処理装置12の受付部121における受信強度値データRIの受け付けもまた断続的に行なわれる。
信号受信強度値は、通信装置11とモバイル装置30の間の距離を反映している。しかしながら、当該距離が一定であっても、信号受信強度値は、様々な原因により変動しうる。例えば、Bluetooth規格に準拠する無線通信においては、周波数ホッピング方式に基づく通信チャネル周波数の切り替えや、直進性の高い(障害物の影響を受けやすい)周波数帯の電波の使用が、信号受信強度値の変動原因になりうる。したがって、断続的に取得される複数の信号強度値は分散を伴う。
第一処理装置12は、処理部122を備えている。処理部122は、断続的に取得された複数の信号受信強度値に対してカルマンフィルタを適用する処理を行なうことにより、上記の分散を抑制するように構成されている。具体的には、あるタイミングで取得された信号受信強度値に基づいて、次の取得タイミングにおける信号受信強度値が推定される。この推定値をカルマン推定値と称する。当該カルマン推定値は、次の取得タイミングで実際に取得された信号受信強度値に基づいて、次回の推定精度を高めるように補正される。カルマンフィルタを適用する処理は、統計処理の一例である。補正後のカルマン推定値は、統計値の一例である。
第一処理装置12は、出力部123を備えている。処理部122は、カルマン推定値の補正がなされる度に、補正後のカルマン推定値を示す推定値データESを出力部123から出力するように構成されている。すなわち、出力部123は、推定値データESを出力可能なインタフェースとして構成されている。受付部121による受信強度値データRIの受け付けが断続的に行なわれるので、出力部123からの推定値データESの出力もまた断続的に行なわれる。
図1に例示されるように、位置推定システム10は、第二処理装置13を含んでいる。第二処理装置13は、車両40における適宜の位置に配置されている。第一処理装置12と第二処理装置13は、車両40に搭載された通信ネットワークを介して通信可能に接続されている。
図2に例示されるように、第二処理装置13は、受付部131を備えている。受付部131は、第一処理装置12から断続的に出力される推定値データESを受け付け可能なネットワークインタフェースとして構成されている。
第二処理装置13は、処理部132を備えている。処理部132は、受付部131により受け付けられた推定値データESが示す信号受信強度の推定値が第一閾値を上回る場合、モバイル装置30が通信装置11に第一距離まで近づいたと判断するように構成されている。
第一距離は、例えば、図1に例示される距離d1である。本例においては、距離d1は、領域Aの半径に対応している。すなわち、推定値データESが示す信号受信強度の推定値が第一閾値を上回る場合、モバイル装置30が領域Aに進入したと判断される。
モバイル装置30が通信装置11に第一距離まで近づいたと判断されると、処理部132は、当該判断に関連付けられた処理を実行するように構成されている。
例えば、車両40に搭載された施解錠装置41の使用を許可するための認証処理が実行される。施解錠装置41は、車両40の車室を開閉するドア42を施解錠する装置である。施解錠装置41は、被制御装置の一例である。車室は、規定された空間の一例である。ドア42は、開閉体の一例である。
具体的には、第二処理装置13は、通信装置11と第一処理装置12を通じて、モバイル装置30から認証情報を取得する。認証情報は、ユーザ20とモバイル装置30の少なくとも一方を特定可能な情報である。認証情報は、アナログデータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。
したがって、受付部131は、認証情報も受け付け可能なインタフェースとして構成されている。認証情報がアナログデータの形態である場合、受付部131は、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を備える。
処理部132は、受付部131により受け付けられた認証情報を、不図示の記憶部に予め格納されている認証情報と照合するように構成されている。両情報の一致度が閾値を上回る場合、処理部132は、認証処理が成立したと判断するように構成されている。
第二処理装置13は、出力部133を備えている。処理部132は、認証処理が成立したと判断すると、出力部133から許可信号ENを出力するように構成されている。許可信号ENは、モバイル装置30を携帯しているユーザ20による施解錠装置41の使用を許可する信号である。
すなわち、出力部133は、許可信号ENを施解錠装置41へ出力するインタフェースとして構成されている。許可信号ENは、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよい。許可信号ENがアナログ信号である場合、出力部133は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を備える。
施解錠装置41は、許可信号ENに基づいてドア42の施解錠を行なう。一例として、許可信号ENは、施解錠装置41にユーザ20による施解錠指示の入力を待機させる。施解錠指示の入力は、ドアノブに内蔵されたタッチセンサによりユーザ20の手の接触または接近が検出されることによってなされてもよいし、モバイル装置30から指示を無線送信することによってなされてもよい。別例として、許可信号ENにより直接的に施解錠装置41の動作が制御されてもよい。
モバイル装置30が通信装置11に第一距離まで近づいたと判断された後も、受付部131による推定値データESの受け付けは断続的になされる。第二処理装置13の処理部132は、当該判断の後に受け付けられた推定値データESが示す信号受信強度の推定値が第二閾値を下回る場合、モバイル装置30が通信装置11から第二距離まで離れたと判断するように構成されている。第二閾値は、第一閾値と異なっている。
本例においては、第二距離は、図1に例示される距離d1である。すなわち、第二距離は、第一距離と等しい。したがって、推定値データESが示す信号受信強度の推定値が第二閾値を下回る場合、モバイル装置30が領域Aから退出したと判断される。
モバイル装置30が通信装置11から第二距離まで離れたと判断されると、処理部132は、当該判断に関連付けられた処理を実行するように構成されている。
例えば、処理部132は、出力部133から禁止信号DSを出力することにより、施解錠装置41の使用を禁止する処理を実行する。施解錠装置41は、禁止信号DSに基づいてドア42を施錠し、次に許可信号ENを受け付けるまでその状態を維持するように構成されうる。
すなわち、出力部133は、禁止信号DSを施解錠装置41へ出力するインタフェースとしても構成されている。禁止信号DSは、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよい。禁止信号DSがアナログ信号である場合、出力部133は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を備える。
図3と図4を参照しつつ、上記のように構成された位置推定システム10において実行される処理の流れの例について説明する。
図3は、第一処理装置12の処理部122によって実行される処理の流れを例示している。処理部122は、受付部121を通じて受信強度値データRIを取得する(STEP11)。前述の通り、受信強度値データRIは、通信装置11とモバイル装置30の間の距離を反映している。
続いて、処理部122は、取得された受信強度値データRIにカルマンフィルタを適用することにより、受信強度値データRIに対応する信号受信強度値のカルマン推定値を取得するとともに、次に取得された受信強度値データRIに対応する信号受信強度値に基づいてカルマン推定値を補正する(STEP12)。
続いて、処理部122は、補正されたカルマン推定値に対応する推定値データESを出力部123から出力する(STEP13)。その後、処理はSTEP11に戻る。
図4は、第二処理装置13の処理部132によって実行される処理の流れを例示している。処理部132は、受付部131を通じて推定値データESを取得する(STEP21)。
続いて、処理部132は、推定値データESに対応する信号受信強度の推定値が第一閾値を上回っているかを判断する(STEP22)。信号受信強度の推定値が第一閾値を上回っていないと判断されると(STEP22においてNO)、処理部132は、モバイル装置30が通信装置11に第一距離まで近づいていないとの判断に基づき、処理をSTEP21に戻す。
信号受信強度の推定値が第一閾値を上回っていると判断されると(STEP22においてYES)、処理部132は、モバイル装置30が通信装置11に第一距離まで近づいたと判断する(STEP23)。処理部132は、前述の通り、当該判断に関連付けられた処理を実行する。
その後、あるいは並行して、処理部132は、受付部131を通じた推定値データESの取得を継続する(STEP24)。
続いて、処理部132は、推定値データESに対応する信号受信強度の推定値が第二閾値を下回っているかを判断する(STEP25)。信号受信強度の推定値が第二閾値を下回っていないと判断されると(STEP25においてNO)、処理部132は、モバイル装置30が通信装置11から第二距離まで離れていないとの判断に基づき、処理をSTEP24に戻す。
信号受信強度の推定値が第二閾値を下回っていると判断されると(STEP25においてYES)、処理部132は、モバイル装置30がモバイル装置30が通信装置11から第二距離まで離れたと判断する(STEP26)。処理部132は、前述の通り、当該判断に関連付けられた処理を実行する。その後、処理はSTEP21に戻る。
図5を参照しつつ、上記のように構成された位置推定システム10の動作例について説明する。図5に例示されたグラフは、モバイル装置30を携帯したユーザ20が通信装置11に接近し、続いて離れるように等速で移動した状況において計測された信号受信強度値の経時変化を示している。本例においては、通信装置11から送信されたトリガ信号のモバイル装置30における受信強度が計測の対象とされている。モバイル装置30は、時点t2において通信装置11に最接近している。
破線は、実際に計測された信号受信強度値の経時変化を表している。上記のユーザ20の移動に対応して時間経過とともに信号受信強度値が上昇し、続いて下降する傾向が見て取れるが、前述したBluetoothの規格仕様上の理由により、取得された信号受信強度値は大きな分散を伴っている。
一点鎖線は、上記の信号受信強度の実測値に移動平均値取得処理を適用することにより取得された平均値の経時変化を、比較例として表している。本比較例においては、十個の実測値に基づいて一つの平均値が取得される。実測値よりも分散が抑制されていることが判る。
実線は、上記の信号受信強度の実測値にカルマンフィルタを適用することにより得られた信号受信強度の推定値の経時変化を表しており、第一処理装置12から出力される推定値データESの経時変化に対応している。移動平均値取得処理が提供された場合よりもさらに分散が抑制されていることが判る。
他方、信号受信強度の推定値の経時変化は、カルマンフィルタを適用する処理に要する時間の分だけ実測値の経時変化に対して遅延が生じる。図示された例においては、モバイル装置30が通信装置11に最接近した時点t2に遅れて信号受信強度の推定値がピークに達している。
前述の通り、本例に係る第二処理装置13は、信号受信強度の推定値が第一閾値Th1を上回る場合にモバイル装置30が通信装置11に距離d1まで近づいた(領域Aに進入した)と判断するように構成されている。したがって、図示された例においては、時点t1において当該判断がなされる。
ユーザ20は等速で移動しているので、時点t1から時点t2までの時間Tに等しい時間が時点t2から経過した時点t3において、モバイル装置30が通信装置11から距離d1まで離れる。したがって、時点t3における信号受信強度の推定値は、第一閾値Th1と同等であるべきである。しかしながら、前述したカルマンフィルタの適用処理に伴う遅延により、時点t3における信号受信強度の推定値はピークから十分に低下せず、より長い時間が経過した時点t4において第一閾値Th1と同等まで低下する。すなわち、第一閾値Th1に基づいてモバイル装置30が通信装置11から距離d1だけ離れたことを検出しようとすると、実際にはモバイル装置30が通信装置11から距離d2だけ離れているという事態が生じる可能性がある。
本願の発明者たちは、カルマンフィルタの適用によりモバイル装置30の位置推定精度を高めようとすると、本来はモバイル装置30が通信装置11から特定の距離だけ離れた時点で実行しようとする処理が、当該距離よりも遠くまで離れてから実行される可能性があることを見出した。本願の発明者たちは、この相反を解消するために、モバイル装置30が通信装置11から第二距離まで離れたことを検出するための信号受信強度に係る閾値を、モバイル装置30が通信装置11に第一距離まで近づいたことを検出するための信号受信強度に係る閾値から独立して設定すればよいとの着想を得た。
図示された例においては、モバイル装置30が通信装置11から距離d1まで離れる時点t3において当該事実が検出されるように、第一閾値Th1よりも高い第二閾値Th2が設定されている。
このような構成によれば、モバイル装置30の位置推定精度を高めるためにカルマンフィルタを適用した結果として位置推定処理に遅延が生じたとしても、モバイル装置30が通信装置11から離れる際に実行される処理について適切かつ柔軟な距離条件の設定が可能になる。したがって、ユーザ20による携帯が可能なモバイル装置30の位置を推定するシステムの利便性を高めることができる。
特に第二閾値Th2が第一閾値Th1よりも高くなるように設定することにより、第二閾値Th2に関連付けられた第二距離を、第一閾値Th1に関連付けられた第一距離に近づけることが容易になる。図1および図5に示される例のように第一距離と第二距離が等しい場合、特定の領域Aに対するモバイル装置30の進入と退出を精度よく検出できる。
これまで説明した様々な機能を有する第一処理装置12の処理部122と第二処理装置13の処理部132の各々は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたコンピュータプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、不図示の無線通信ネットワークを介して不図示の外部サーバ装置からダウンロードされた後、汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、当該外部サーバ装置は、コンピュータプログラムを記憶している非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。
処理部122と処理部132の各々は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。処理部122と処理部132の各々は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
上記の各実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の各実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
上記の実施形態においては、通信装置11とモバイル装置30との間でなされる無線通信は、Bluetooth規格に基づいている。しかしながら、通信装置11とモバイル装置30との間でなされる無線通信は、周波数ホッピング技術を用いたり、直進性の強い電波を用いたりする各種の無線通信規格に基づいて行なわれうる。換言すると、計測される受信電波強度値に比較的大きな分散が伴う無線通信規格に対して、上記の実施形態に係る構成を有利に適用可能である。
上記の実施形態においては、分散が抑制された信号受信強度の推定値を取得するためにカルマンフィルタを適用する処理が行なわれている。しかしながら、然るべき数の信号受信強度の実測値を対象に移動平均値取得処理や移動最大値取得処理などが行なわれてもよい。これらの処理は統計処理の一例であり、取得される移動平均値や移動最大値は統計値の一例である。
上記の実施形態においては、単一の第一処理装置12が第二処理装置13と通信可能に接続されている。しかしながら、複数の第一処理装置12が車両40における適宜の箇所に配置され、共通の第二処理装置13と通信可能に接続される構成もまた採用されうる。
上記の実施形態においては、第一処理装置12と第二処理装置13は、互いに独立した装置として車両40における異なる場所に配置されている。しかしながら、第一処理装置12は、第二処理装置13の一部として提供されてもよい。
認証処理の結果として第二処理装置13により制御される被制御装置は、施解錠装置41に限られない。他の被制御装置の例としては、車両40に搭載されたエンジン、イグニッション電源、空調装置、音響映像機器、照明装置、シートやステアリングホイールの位置調節機構などが挙げられる。
位置推定システム10は、車両40以外の移動体にも適用されうる。他の移動体の例としては、鉄道、航空機、船舶などが挙げられる。当該移動体は、運転者を必要としなくてもよい。
施解錠装置41により施解錠される開閉体は、移動体のドアに限られない。住宅や施設における扉、窓、門などもまた開閉体の一例になりうる。また、住宅や施設における各種設備もまた、被制御装置の一例になりうる。すなわち、通信装置11、第一処理装置12、および第二処理装置13は、移動体に搭載されることを要しない。住宅や施設における適宜の領域は、規定された空間の一例になりうる。
10:位置推定システム、11:通信装置、12:第一処理装置、13:第二処理装置、131:受付部、132:処理部、20:ユーザ、30:モバイル装置、40:車両、41:施解錠装置、42:ドア、d1:通信装置からの距離、Th1:第一閾値、Th2:第二閾値
Claims (11)
- ユーザにより携帯可能なモバイル装置と無線通信を行なう通信装置と、
前記モバイル装置における前記通信装置からの信号受信強度値または前記通信装置における前記モバイル装置からの信号受信強度値を断続的に取得し、複数の当該信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより当該信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を算出する第一処理装置と、
前記統計値が第一閾値を上回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置に第一距離まで近づいたと判断し、前記統計値が当該第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置から第二距離まで離れたと判断する第二処理装置と、
を備えている、
位置推定システム。 - 前記第二閾値は、前記第一閾値よりも高い、
請求項1に記載の位置推定システム。 - 前記第二距離は、前記第一距離と等しい、
請求項2に記載の位置推定システム。 - 前記統計処理は、カルマンフィルタの適用を含んでいる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の位置推定システム。 - 前記無線通信は、通信チャネル周波数を切り替えながら行なわれる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の位置推定システム。 - 前記通信装置、前記第一処理装置、および前記第二処理装置は、移動体に搭載されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の位置推定システム。 - 前記第二処理装置は、推定された前記モバイル装置の位置に応じて被制御装置の動作制御を許可する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の位置推定システム。 - 前記被制御装置は、規定された空間を開閉する開閉体を施解錠する施解錠装置である、
請求項7に記載の位置推定システム。 - ユーザにより携帯可能なモバイル装置における通信装置からの信号受信強度値または当該通信装置における当該モバイル装置からの信号受信強度値を断続的に取得し、
複数の当該信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより当該信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を算出し、
前記統計値が第一閾値を上回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置に第一距離まで近づいたと判断し、
前記統計値が前記第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置から第二距離まで離れたと判断する、
位置推定方法。 - ユーザにより携帯可能なモバイル装置における通信装置からの信号受信強度値または当該通信装置における当該モバイル装置からの信号受信強度値を断続的に取得し、かつ複数の当該信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより算出される当該信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を示すデータを受け付ける受付部と、
前記統計値が第一閾値を上回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置に第一距離まで近づいたと判断し、前記統計値が当該第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置から第二距離まで離れたと判断する処理部と、
を備えている、
処理装置。 - 処理装置に搭載された処理部により実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記処理装置は、
ユーザにより携帯可能なモバイル装置における通信装置からの信号受信強度値または当該通信装置における当該モバイル装置からの信号受信強度値を断続的に取得し、
複数の前記信号受信強度値に対して統計処理を適用することにより算出される前記信号受信強度値よりも分散が抑制された統計値を示すデータを受け付け、
前記統計値が第一閾値を上回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置に第一距離まで近づいたと判断し、
前記統計値が前記第一閾値と異なる第二閾値を下回る場合に前記モバイル装置が前記通信装置から第二距離まで離れたと判断する、
コンピュータプログラム。
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JP2021181083A JP2023069308A (ja) | 2021-11-05 | 2021-11-05 | 位置推定システム、位置推定方法、処理装置、およびコンピュータプログラム |
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