JP2023066678A - アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【解決課題】窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、優れたろう付性を発揮し得るブレージングシートを提供する。【解決手段】フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、心材と、該心材の片面上又は両面上にクラッドされているろう材とを有し、心材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、ろう材は、4.00~13.00質量%のSiを含有するとともに、0.10~2.00質量%のMgを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値が30at%×nm~600at%×nmであるアルミニウム合金ブレージングシートである。【選択図】なし

Description

本発明は、フラックスを用いることなく、不活性ガス雰囲気中でろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法に関する。
熱交換器や機械用部品などのアルミニウム製品は、アルミニウム材(アルミニウム及びアルミニウム合金を含む。以下同じ。)からなる多数の部品を有している。
これらの部品の多くは、心材と、心材の少なくとも一方の面上に設けられたろう材とを有するアルミニウム材である、いわゆるブレージングシートによりろう付されている。
アルミニウム材(アルミニウム合金材を含む)をろう付接合するには、ろう付時に、ろう材の表面を覆っている酸化皮膜を破壊しつつ、溶融したろう材を接合対象となる相手材に接触させ、相手材の表面を覆う酸化皮膜を破壊する方法が求められ、このような方法として、大別して、フラックスを使用する方法(フラックスろう付法)と、真空中で加熱する方法(真空ろう付法)とが実用化されている。
これ等の方法のうち、フラックスろう付法は、接合予定部、つまりろう付によって接合しようとする部分の表面にフラックスを塗布してろう付を行う方法である。
しかしながら、フラックスろう付法においては、ろう付前にフラックスを塗布する作業を行う必要がある。さらにろう付が完了した後にフラックスやその残渣が十分に除去できていないと、その後表面処理等を行った場合などに十分な表面品質が得られない場合があり、アルミニウム製品の製造コストの増大を招いていた。
一方、真空ろう付法は、接合予定部の表面にフラックスを塗布せずに真空中でろう付を行う方法である。
しかしながら、真空ろう付法は、フラックスろう付法に比べて生産性が低く、十分なろう付品質が得られ難い。また、真空ろう付法に用いるろう付炉は、一般的なろう付炉に比べて設備費やメンテナンス費の増大を招き易い。
そこで、接合予定部の表面にフラックスを塗布せずに不活性ガス雰囲気中でろう付を行う、いわゆるフラックスフリーろう付法が提案されている。フラックスフリーろう付法に用いられるブレージングシートは、積層構造を成す少なくとも一つの層に、酸化皮膜を脆弱化する、あるいは酸化皮膜を破壊する作用を有する元素を有しており、この種の元素としては、Mgが多用されている。
Mgは、酸化物生成自由エネルギーがアルミニウムより小さいため、ろう付加熱中にアルミニウムを主成分とする表面酸化皮膜を還元・破壊することができる。
しかしながら、Mgは比較的酸化され易く、ろう材表層のMgは外部から侵入する酸素と反応して、容易にMgO皮膜を形成する。
このMgO皮膜は、Al皮膜よりも非常に強固であるため、MgO皮膜が成長し厚く形成されたブレージングシートは、ろう付時にMgO皮膜が破壊されず、溶融ろうが表面に濡れ拡がり難いことから、良好なろう付性を発揮し難い。
すなわち、ブレージングシート表面のAl皮膜の厚さが薄くても、MgO皮膜が厚い場合にはろう付不良が生じ易くなる。
このような状況下、特許文献1には、質量%で、Si:5.0~13.0%、Mg:0.1~3.0%を含有するAl-Si-Mg系ろう材が芯材にクラッドされて最表面に位置し、ろう付前のAl-Si-Mg系ろう材表面の酸化皮膜の平均膜厚が150Å以下であり、かつ酸化皮膜中の酸化マグネシウム膜の平均膜厚が20Å以下であるブレージングシートを用い、減圧を伴わない酸素濃度50ppm以下の非酸化性雰囲気中で、ブレージングシートにおけるAl-Si-Mg系ろう材とろう付対象部材とを接触密着させ、密着部分においてフラックスレスで前記Al-Si-Mg系ろう材により前記芯材と前記ろう付対象部材とをろう付接合することを特徴とするアルミニウム材のフラックスレスろう付方法が提案されている。
特許文献1は、ろう材表面のMgO皮膜の厚さを薄く制御するために、ろう材表面の酸化皮膜をその組成を問わず一律に平均膜厚150Å以下にすることを開示するものである。
また、特許文献2には、アルカリ洗浄によって洗浄面が形成されたアルミニウムろう付層を有するアルミニウム複合材料であって、上記アルカリ洗浄時に使用する洗浄媒体が、水酸化ナトリウムに加えて有機又は無機錯化剤も含み、上記アルミニウムろう付け層の洗浄面が、少なくとも部分的に露出した又は露出したケイ素粒子を含むアルミニウム複合材料を、保護性ガスの存在下でフラックスレス熱接合プロセスに使用する方法が開示されている。
特開2013-215797号公報 特表2015-526290号公報
特許文献1記載のブレージングシートは、ろう付加熱前における(ブレージングシートの製造時に生成した)ろう材表面のMgO皮膜の厚さを薄く制御することにより、ろう付け不良の発生を抑制しようとするものである。
また、特許文献2記載の方法は、ろう付加熱前における(ブレージングシートの製造時に生成した)アルミニウムの熱酸化皮膜を完全に除去することにより、ろう付け不良の発生を抑制しようとするものである。
しかしながら、本発明者等の検討によれば、特許文献1や特許文献2に記載の方法でも、ろう付け不良の発生を実用上十分に抑制し得ないことが判明した。
このような状況下、本発明は、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、優れたろう付性を発揮し得るブレージングシート及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者等の検討によれば、特許文献1の記載に従って、ろう材表面の酸化皮膜の平均膜厚を150Å以下にするために、ブレージングシートを酸洗浄あるいはアルカリ洗浄しても、十分なろう付性を確保できないことが判明した。
これは、酸洗浄あるいはアルカリ洗浄等によってろう材表面の酸化皮膜を150Å以下とする際に、相当量の結晶性Alが除去されてしまうためと考えられた。
本点に関し、本発明者等の検討によれば、例えば、各々Mgが添加されたろう材と心材とで構成される二層構造のアルミニウム合金ブレージングシートにおいては、ブレージングシート製造時の加熱工程で生成した結晶性Alと初期から存在するアモルファス状のアルミニウムの自然酸化皮膜の境界の欠陥に沿ってろう材層に添加されたMgがアルミニウム酸化皮膜中に拡散してAlと反応し、MgAlを生成することでAlを粒状・分断化すると考えられるが、加熱工程で生成した結晶性Alの相当量が除去されてしまうと上記Mgが拡散し難くMgによるアルミニウム酸化皮膜の還元・破壊を生じにくくなるため、十分なろう付性が得られないと考えられた。
また、特許文献2に記載の方法においては、ろう材の表面にケイ素が露出するほどのエッチングを施してブレージングシートの製造時に生成したアルミニウムの熱酸化皮膜を完全に除去しているが、ブレージングシートの製造時にろう材表面に生成するアルミニウムの熱酸化皮膜を完全に除去した場合、強固なアモルファス状のアルミニウムの自然酸化皮膜が全面的に生成し、アルミニウム酸化皮膜の還元・破壊の起点となる結晶性Alが存在しなくなるため、ろう溶融時にろう材に含有されるMgによるアルミニウム酸化皮膜の還元・破壊のみでは濡れ性が不十分となり、ろう付不良の発生を抑制し得ないことが判明した。
このように、製造時に生成したアルミニウムの熱酸化皮膜を完全に除去した場合には、強固なアモルファス状のアルミニウムの自然酸化皮膜が全面的に生成し、この場合も、アルミニウム酸化皮膜の還元・破壊の起点となる結晶性Alが存在しなくなるため、ろう材に含有されるMgによるアルミニウム酸化皮膜の還元・破壊が不十分となる。
上記知見に基づき、本発明者等がさらに検討したところ、アルミニウム合金ブレージングシートにおいて実用上十分なろう付性を得る上で、Mgを含有するろう材を用いたアルミニウム合金ブレージングシートを製造する場合、従来のようにブレージングシートの製造時に、ろう材表面のMgO皮膜の厚さを薄く制御したり、ろう材表面のアルミニウム酸化皮膜を完全に除去したりするのではなく、これとは全く反対に、アルミニウム合金ブレージングシートの製造時にろう材表面に(結晶性Alを含有する)アルミニウムの熱酸化性皮膜をある程度形成することにより、MgO濃縮層の生成を抑制しつつ、ろう付け加熱途中においてアルミニウムの熱酸化性皮膜を分断化しやすくなることを見出した。
すなわち、Mgを含有するろう材を用いたアルミニウム合金ブレージングシートを製造する際、その熱間圧延工程及び焼鈍工程において、ろう材表面に非晶質なアルミニウム酸化皮膜が成長するとともに係る非晶質なアルミニウム酸化皮膜内に結晶性Alが形成され、非晶質なアルミニウム酸化皮膜と結晶性Alの界面あるいは結晶性Alの内部に欠陥が発生し、Mgの拡散が促進されMgO皮膜が形成されるようになり、ろう付け性を阻害する要因となる。
そこで、熱間圧延工程及び焼鈍工程の後に、適切な条件にてMgO皮膜をエッチングで除去すれば、MgO濃縮層を低減させながら、非晶質なアルミニウム酸化皮膜をすべて除去することなく残存させておくことで、局所的に結晶性Alが存在する非晶質なアルミニウム酸化皮膜が残ることになる。この局所的に存在する結晶性Alは拡散されたMgを少量含有するものとなっているため、このMg量を指標にすることで、局所的に結晶性Alが存在する非晶質なアルミニウム酸化皮膜の存在を定義することができるようになる。
一方、エッチングにより、MgO濃縮層を低減させるとともに、非晶質なアルミニウム酸化皮膜をもすべて除去してしまうと、その後に形成されるアルミニウム酸化皮膜は非晶質なものとなってしまい、局所的に結晶性Alが存在する非晶質なアルミニウム酸化皮膜ではなくなり、酸化皮膜中にはMgがほとんど存在しないものとなる。
反対に、エッチングが不十分であるとMgO濃縮層が所望量以上残存することになる。
このように、局所的に結晶性Alが存在する非晶質なアルミニウム酸化皮膜中のMg量が適正な範囲にあるものが、良好なろう付け性を示すと考えられた。
上記着想に基づき、本発明者等がさらに検討を重ねた結果、ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値を指標としてこれが一定範囲内にあるアルミニウム合金ブレージングシートにより上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
心材と、該心材の片面上又は両面上にクラッドされているろう材とを有し、
前記心材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、
前記ろう材は、4.00~13.00質量%のSiを含有するとともに、0.10~2.00質量%のMgを含有し、残部アルミニウム及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値が30at%×nm~600at%×nmである
ことを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート、
(2)前記ろう材が、さらに、1.00質量%以下のBi、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr、0.05質量%以下のSb、8.00質量%以下のZn、4.00質量%以下のCu、1.00質量%以下のFe、1.00質量%以下のMn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSb及び0.10質量%以下のSnから選ばれる一種又は二種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載のアルミニウム合金ブレージングシート、
(3)前記心材と前記ろう材との間にさらにアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる中間材を有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のアルミニウム合金ブレージングシート、
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載のアルミニウム合金ブレージングシートを製造する方法であって、
心材用鋳塊と、当該心材用鋳塊の片面上又は両面上にろう材用鋳塊が積層された積層物に、少なくとも熱間加工と、冷間加工と、冷間加工での圧延のパス間における1回以上の中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理と、を行うことにより、アルミニウム合金ブレージングシートを製造する際に、
前記冷間圧延のパス間における中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理時における加熱を、下記式(I)
D=ΣD・exp(-Q/(RTn))・△tn (I)
(式中、Tnは前記中間焼鈍及び最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間△tn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D=1.24×10-4(m/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が7.0×10-10以下となるように行うことを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法、及び
(5)前記冷間加工での圧延のパス間における1回以上の中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理を施して焼鈍処理物を得た後、
酸及びアルカリ性溶液のうちのいずれか一方又は両方を用いて焼鈍処理物のろう材表面をエッチング処理することを特徴とする上記(4)に記載のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法
を提供するものである。
本発明によれば、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、ろう付性に優れたブレージングシート及びその製造方法を提供することができる。
本出願の実施例及び比較例において、ろう付性の評価時に使用した組み付け体の形態を説明する図であり、図1(a)に組付け体の斜視図、図1(b)に組付け体の側面図を示す。
先ず、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートについて説明する。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
心材と、該心材の片面上又は両面上にクラッドされているろう材とを有し、
前記心材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、
前記ろう材は、4.00~13.00質量%のSiを含有するとともに、0.10~2.00質量%のMgを含有し、残部アルミニウム及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、
前記ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値が30at%×nm~600at%×nmである
ことを特徴とするものである。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、心材と、該心材の片面上(いずれか一方の主表面上)あるいは両面上(両方の主表面上)にクラッドされているろう材とを少なくとも有するものである。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材がアルミニウムからなる場合、アルミニウムの純度は、特に制限されないが、99.00~99.99質量%が好ましく、99.50~99.99質量%がより好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材がアルミニウム合金からなる場合、アルミニウム合金としては、1.20質量%以下の、好ましくは0.10~0.70質量%のFe、1.20質量%以下の、好ましくは0.10~1.00質量%のSi、2.00質量%以下の、好ましくは0.10~1.00質量%のCu、2.00質量%以下の、好ましくは0.30~1.80質量%のMn、3.00質量%以下の、好ましくは0.50~3.00質量%のZn、0.30質量%以下の、好ましくは0.10~0.20質量%のCr、0.30質量%以下の、好ましくは0.10~0.20質量%のTi、0.30質量%以下の、好ましくは0.10~0.20質量%のZr、0.10質量%以下の、好ましくは0.01~0.03質量%のIn及び0.10質量%以下の、好ましくは0.01~0.10質量%のSnから選ばれる一種又は二種以上と、
必要に応じて、1.00質量%以下の、好ましくは0.10~1.00質量%のBi、3.00質量%以下の、好ましくは0.10~1.80質量%のMg、3.00質量%以下の、好ましくは0.10~1.80質量%のLi及び3.00質量%以下の、好ましくは0.10~1.80質量%のCaから選ばれる一種又は二種以上とを含有し、
残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。
上記不可避的不純物としては、0.05質量%以下の、Ag、B、Be、Cd、Co、Ga、Ge、Mo、Na、Ni、P、Pb、Sr、V、Hg、Yから選ばれる一種又は二種以上を挙げることができる。
本出願書類において、心材を構成する各成分の含有量は、発光分光分析装置(XPS)により測定した値を意味する。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいては、上記心材の片面上又は両面上にろう材がクラッドされており、ろう材は、4.00~13.00質量%のSiを含有しするとともに、0.10~2.00質量%のMgを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材はSiを含有する。
ろう材中に含有されるSiは、Alの融点を下げて流動性を高め、ろうの機能を発揮させる。
ろう材中のSi含有量は、4.00~13.00質量%であり、5.00~12.50質量%が好ましく、6.00~12.00質量%がより好ましい。
ろう材中のSiの含有量が上記範囲内にあることにより、十分な流動性を発揮し得るとともに、心材又はその他の被接合部へのエロージョンを抑制することができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材はMgを含有する。
ろう材に含有されるMgは、ろう付加熱中にろう材の表面を覆う結晶性Alが局所的に存在する非晶質のアルミニウム酸化皮膜を容易に脆弱化し、これを破壊することができる。
ろう材中のMg含有量は、0.10~2.00質量%であり、0.50~1.50質量%であることが好ましい。
ろう材中のMg含有量が上記範囲内にあることにより、所望量のMgを含有する結晶性Alが局所的に存在する非晶質なアルミニウム酸化皮膜が設けられたブレージングシートを容易に提供することができ、ろう付け時に十分なろう付け接合性を容易に発揮することができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材はBiを含有してもよい。
ろう材中のBi含有量は、1.00質量%以下が好ましく、0.01~1.00質量%がより好ましく、0.05~0.60質量%がさらに好ましい。
ろう材中のBi含有量が上記範囲内にあることにより、ろう付け時にろうの表面張力を低下させ、ろうの流動性を容易に高めることができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材は、Na、Sr及びSbから選ばれる一種又は二種以上を含有してもよい。
ろう材中のNa、Sr及びSbの含有量は、各々、0.05質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以下であることがより好ましい。
また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材は、8.00質量%以下のZn、4.00質量%以下のCu、1.00質量%以下のFe、1.00質量%以下のMn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSb及び0.10質量%以下のSnから選ばれる一種又は二種以上を含有してもよい。
本出願書類において、ろう材を構成する各成分の含有量は、発光分光分析装置(XPS)により測定した値を意味する。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値は、30at%×nm~600at%×nmである。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値は、40at%×nm~500at%×nm%であることが好ましく、45at%×nm~400at%×nm%であることがより好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値が上記範囲内にあることにより、ろう材表面に所望量のMgを含有する結晶性Alが局所的に存在する非晶質なアルミニウム酸化皮膜を一定程度形成しつつ、MgO濃縮層の生成を抑制して、ろう付性を好適に向上することができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、Mg積分値が上記下限値未満であると、ブレージングシートの製造時に形成される結晶性Alが局所的に存在する非晶質のアルミニウム酸化皮膜が過剰に除去されて酸化皮膜の還元・破壊の起点となる所望量のMgを含有する結晶性Alの存在量が不十分であることが示唆され、アルミニウム酸化皮膜が破壊されずに溶融ろうが表面に濡れ広がることができず、良好なろう付性を発揮し難くなる。
また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、Mg積分値が上記上限値を超えると、ブレージングシート表面のMgO皮膜が厚いことが示唆され、ろう付時にこのMgO皮膜が破壊されずに溶融ろうが表面に濡れ拡がることができず、良好なろう付性を発揮し難くなる。
本出願書類において、ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値は、X線光電子分光分析装置(XPS)を用い、アルゴンイオンでろう材表面をスパッタ処理して深さ1nmごとにMg濃度を測定する操作を繰り返したときにおける、深さ60nmまでのMg濃度の積算値を意味する。
上記深さ1nmごとのMg濃度は、上記XPS測定時における、スパッタレート(スパッタ深さ/スパッタ時間)及びスパッタ時間から特定され、係るスパッタレート(スパッタ深さ/スパッタ時間)は、厚さが既知のSiO薄膜をスパッタしながらO濃度を測定したときの、O濃度測定値が0になるまでの時間に基づいて算出する。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、心材とろう材との間にさらにアルミニウム合金からなる中間材を有するものであってもよい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、中間材は、ろうを生成させない中間材として用いられる場合と、ろうを生成させる中間材として用いられる場合がある。
中間材がろうを生成させない中間材として用いられる場合、中間材は、ろう付後のアルミニウム合金シートの強度を向上させる機能や、電位を調整して耐食性を向上させる機能を果たす。
また、中間材がろうを生成させる中間材として用いられる場合、中間材は、中間材の外側にクラッドされているろう材とは異なる組成のろうを供給する機能を果たす。中間材は、ろうを生成させない中間材であってもよいし、ろうを生成させる中間材であってもよい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、中間材としては、アルミニウムやアルミニウム合金から選ばれる一種または二種以上を挙げることができる。
中間材がアルミニウムにより形成されている場合、アルミニウムの純度は、特に制限されないが、好ましくは99.0質量%以上、特に好ましくは99.5質量%以上である。
中間材がアルミニウム合金により形成されている場合、アルミニウム合金としては、1.50質量%以下のFe、13.00質量%以下のSi、2.00質量%以下のCu、2.00質量%以下のMn、6.00質量%以下のZn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn0.10質量%以下のSn、1.00質量%以下のBi、3.00質量%以下のMgから選ばれる一種又は二種以上を含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるものを挙げることができる。
中間材がFeを含有するアルミニウム合金からなる場合、中間材中のFe含有量は、1.50質量%以下が好ましく、0.10~0.70質量%がより好ましい。
中間材中のFe含有量が上記範囲内にあることにより、強度向上の効果が得られ易くなる。一方、中間材中のFe含有量が上記上限値を超えると、耐食性が低くなるとともに巨大析出物が発生し易くなる。
中間材がSiを含有するアルミニウム合金からなり、ろうを生成させるものである場合、中間材中のSi含有量は、2.00質量%を超え13.00質量%以下が好ましく、4.00~12.00質量%がより好ましい。
中間材中のSi含有量が上記範囲内にあることにより、中間材の融点を低下させ、容易にろうを生成することができる。
中間材がSiを含有するアルミニウム合金からなり、ろうを生成させないものである場合、中間材中のSi含有量は、2.00質量%以下が好ましく、0.10~1.00質量%がより好ましい。
中間材中のSi含有量が上記範囲内にあることにより、容易にブレージングシートの強度を向上させることができる。
中間材がCuを含有するアルミニウム合金からなる場合、中間材中のCu含有量は、2.00質量%以下が好ましく、0.10~1.00質量%がより好ましい。
中間材中のCu含有量が上記範囲内にあることにより、ブレージングシートの強度を容易に向上させ得るとともに、電位調整を容易に行うことができる。一方、中間材中のCu含有量が上記上限値を超えると、粒界腐食が発生し易くなり、融点が著しく低下し易くなる。
中間材がMnを含有するアルミニウム合金からなる場合、中間材中のMn含有量は、2.00質量%以下が好ましく、0.30~1.80質量%がより好ましい。
中間材中のMn含有量が上記範囲内にあることにより、ブレージングシートの強度を容易に向上させ得るとともに、電位の調整を容易に行うことができる。一方、中間材中のMn含有量が上記上限値を超えると、材料圧延時に割れが生じ易くなる。
中間材がZnを含有するアルミニウム合金からなる場合、中間材中のZn含有量は、6.00質量%以下が好ましく、0.50~4.00質量%がより好ましい。
中間材中のZn含有量が上記範囲内にあることにより、電位の調整を容易に行い得るとともに、優れた犠牲防食効果を容易に付与して心材を防食し、ろう付後のアルミニウム製品の耐食性を容易に向上させることができる。一方、中間材中のZn含有量が上記上限値を超えると、自然電極電位が低くなり過ぎてしまい耐食性が低下し易くなる。
中間材がTi、Zr及びCrから選ばれる一種又は二種以上を含有するアルミニウム合金からなる場合、中間材中のTi含有量は、0.30質量%以下が好ましく、0.10~0.20質量%がより好ましく、中間材中のZr含有量は、0.30質量%以下が好ましく、0.10~0.20質量%がより好ましく、中間材中のCr含有量は、0.30質量%以下が好ましく、0.10~0.20質量%がより好ましい。
中間材中のTi、Zr又はCrが上記範囲内にあることにより、固溶強化によりブレージングシートの強度を容易に向上させることができる。一方、中間材中のTi、Zr又はCrの含有量が上記上限値を超えると、鋳造時に巨大金属間化合物が形成され易くなり、塑性加工性が低下し易くなる。
中間材がInを含有するアルミニウム合金からなる場合、中間材中のIn含有量は、0.10質量%以下が好ましく、0.01~0.03質量%がより好ましい。
中間材中のIn含有量が上記範囲内にあることにより、中間材の電位を卑にして、心材に対して優先的に腐食することで心材を容易に防食することができる。
一方、中間材中のIn含有量が上記上限値を超えると、自然電極電位が低くなり過ぎてしまい耐食性が低下し易くなる。
中間材がSnを含有するアルミニウム合金からなる場合、中間材中のSn含有量は、0.10質量%以下が好ましく、0.01~0.05質量%がより好ましい。
中間材中のSn含有量が上記範囲内にあることにより、中間材の電位を卑にして、心材に対して優先的に腐食することで心材を容易に防食することができる。
一方、中間材中のSn含有量が上記上限値を超えると、自然電極電位が低くなり過ぎてしまい耐食性が低下し易くなる。
中間材がBiを含有するアルミニウム合金からなる場合、中間材中のBi含有量は、1.00質量%以下が好ましく、0.10~1.00質量%がより好ましい。
中間材中のBi含有量が上記範囲内にあることにより、ろう付加熱中にろう材が溶融し心材の一部を溶融せしめた場合に、ろう材中に溶融してろう材のBi濃度の低下を抑制するように作用し、Al-Si溶融ろうの表面張力を低下させる効果を容易に発揮することができる。一方、中間材中のBi含有量が上記上限値を超えると、ブレージングシート製造時に圧延が困難になり易い。
中間材がMgを含有するアルミニウム合金からなる場合、中間材中のMg含有量は、3.00質量%以下が好ましく、0.10~1.80質量%がより好ましい。
中間材中のMgの含有量が上記範囲内にあることにより、ろう付加熱中に中間材からろう材にMgがろう材に拡散することにより、また、ろう材が溶融し中間材の一部を溶融せしめた場合に、ろう材のMgの濃度の低下を抑制するように作用して、ろう材表面で酸化されて形成されるMg酸化物が少なくなり、Mgによるブレージングシート及び相手材の酸化皮膜の破壊効果が高まり、優れたろう付性を容易に発揮することができる。
一方、中間材中のMgの含有量が上記上限値を超えると、中間材の融点が低下し過ぎて、ろう付加熱時に心材に局所溶融が生じてしまい、中間材が変形し、溶融ろうによる中間材への浸食が発生して、ろう付接合性や耐腐食性が低下し易くなる。
中間材がアルミニウム合金からなる場合、上記各成分以外の残部がアルミニウム及び不可避的不純物からなるものを挙げることができる。
上記不可避的不純物としては、0.05質量%以下の、Ag、B、Be、Bi、Ca、Cd、Co、Ga、Ge、Li、Mo、Na、Ni、P、Pb、Sr、V、Hg及びYから選ばれる一種または二種以上を挙げることができる。
本出願書類において、中間材を構成する各成分の含有量は、発光分光分析装置(XPS)により測定した値を意味する。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートとしては、
(1)心材の片面にのみろう材がクラッドされている二層材の形態(心材/ろう材)、
(2)心材の両面にろう材がクラッドされている三層材の形態(ろう材/心材/ろう材)、
(3)心材の片面に中間材が設けられさらに当該中間材の外表面にろう材がクラッドされている三層材の形態(心材/中間材/ろう材)、
(4)心材の片面に中間材が設けられさらに当該中間材の外表面にろう材がクラッドされているとともに、心材の他方の面にろう材がクラッドされている四層材の形態(ろう材/心材/中間材/ろう材)、
(5)心材の片面に中間材が設けられさらに当該中間材の外表面にろう材がクラッドされているとともに、心材の他方の面にも中間材が設けられさらに当該中間材の外表面にろう材がクラッドされている五層材の形態(ろう材/中間材/心材/中間材/ろう材)、
のいずれかの形態を挙げることができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、心材の片面上又は両面上にクラッドされるろう材のクラッド率(アルミニウム合金ブレージングシートの厚さに対するろう材の厚さの割合)は、3.0~30.0%が好ましく、4~25%がより好ましく、5~20%がさらに好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートが、(2)心材の両面にろう材がクラッドされている三層材の形態を採る場合や、(5)心材の片面に中間材が設けられさらに当該中間材の外表面にろう材がクラッドされているとともに、心材の他方の面にも中間材が設けられさらに当該中間材の外表面にろう材がクラッドされている五層材の形態を採る場合、各ろう材の組成やクラッド率は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの厚みは、例えば0.04~5.00mmの範囲、好ましくは0.05mm~2.00mmの範囲から適宜設定することができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、熱交換器の伝熱媒体となるフィンや、冷媒などが通る流路構成材となるチューブや、チューブと接合されて熱交換器の構造を形作るプレートなどの形成材として使用される。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートがフィン材に用いられる場合、ブレージングシートの厚みは、0.04~0.20mm程度であることが好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートがチューブ材に用いられる場合、ブレージングシートの厚みは、0.15~0.50mm程度であることが好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートがプレート材に用いられる場合、ブレージングシートの厚みは、0.80~5.00mm程度であることが好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、ろう材の表面が酸によりエッチング処理されてなるものであってもよい。
上記エッチングにより、表面に形成されたアルミニウムの酸化皮膜やMgO皮膜を一定程度まで除去することができる。
上記エッチング処理の詳細は、後述する通りである。
本発明によれば、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、ろう付性に優れたブレージングシートを提供することができる。
次に、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートを製造する方法について説明する。
本発明に係る製造方法は、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートを製造する方法であって、
心材用鋳塊と、当該心材用鋳塊の片面上又は両面上にろう材用鋳塊が積層された積層物に、少なくとも熱間加工と、冷間加工と、冷間加工での圧延のパス間における1回以上の中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理と、を行うことにより、アルミニウム合金ブレージングシートを製造する際に、
前記冷間圧延のパス間における中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理時における加熱を、下記式(I)
D=ΣD・exp(-Q/(RTn))・△tn (I)
(式中、Tnは前記中間焼鈍及び最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間△tn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D=1.24×10-4(m/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が7.0×10-10以下となるように
行うことを特徴とするものである。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、先ず、心材、ろう材及び必要に応じ中間材に用いる各々所望の成分組成を有するアルミニウム又はアルミニウム合金を、それぞれ溶解、鋳造することによって、心材用鋳塊、ろう材用鋳塊及び必要に応じ中間材用鋳塊を作製する。これら溶解、鋳造の方法は、特に限定されるものではなく通常の方法が用いられる。
次いで、心材用鋳塊及びろう材用鋳塊と、さらに必要に応じ中間材用鋳塊とを、適宜、均質化処理することが好ましい。均質化処理の好ましい温度範囲は、400~600℃であり、均質化処理時間は2~20時間である。
次いで、心材用鋳塊及びろう材用鋳塊と、さらに必要に応じ中間材用鋳塊とを、面削したり熱間圧延したりして所定の厚さにした後、所定の鋳塊を所定の順に重ね合わせ、積層物とする。
例えば、心材の両面にろう材がクラッドされている三層材構造を有するブレージングシートを作成しようとする場合には、心材用鋳塊の両面にろう材用鋳塊を重ね合わせ、三層構造の積層物(クラッド塊)とすればよい。
上記心材用鋳塊及びろう材用鋳塊と、必要に応じ使用される中間材用鋳塊とは、各々、得ようとするアルミニウム合金ブレージングシートを構成する、心材、ろう材及び中間材の組成に対応した組成を有している。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、上記積層物に対し、少なくとも熱間加工と、冷間加工と、冷間加工での圧延のパス間に1回以上の中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理を施す。
熱間加工では、所定の鋳塊を所定の順に積層した積層物を、400~500℃で熱間圧延する。熱間圧延では、例えば、2~8mmの板厚となるまで圧延を行う。
冷間加工では、熱間加工を行って得られた熱間圧延物を、冷間で圧延する。冷間加工では、冷間での圧延を、複数回のパスで行う。
冷間加工において、冷間での圧延のパス間における1回又は2回以上の中間焼鈍は、加熱温度が、200~500℃となるように行うことが好ましく、250~400℃となるように行うことがより好ましい。
中間焼鈍では、中間焼鈍温度まで昇温し、中間焼鈍温度に達した後、速やかに冷却を開始してもよいし、あるいは、中間焼鈍温度に達した後、中間焼鈍温度で一定時間保持後、冷却を開始してもよい。中間焼鈍温度での保持時間は、0~10時間、好ましくは1~5時間である。
冷間圧延後、得られた冷間圧延物に対し、適宜最終焼鈍を行う。
最終焼鈍は、加熱温度が、300~500℃となるように行うことが好ましく、350~450℃となるように行うことがより好ましい。
最終焼鈍では、最終焼鈍温度まで昇温し、最終焼鈍温度に達した後、速やかに冷却を開始してもよいし、あるいは、最終焼鈍温度に達した後、最終焼鈍温度で一定時間保持し、その後冷却を開始してもよい。最終焼鈍温度での保持時間は、0~10時間、好ましくは1~5時間である。
上記中間焼鈍及び最終焼鈍時における雰囲気は特に限定されず、大気中で実施してもよいが、大気中の酸素濃度より酸素濃度が低い雰囲気中にて実施することが好ましい。大気中より酸素濃度が低い雰囲気中にて加熱することにより、ろう材表面における酸化皮膜の成長を抑制することができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法において、上記中間焼鈍又は最終焼鈍は、上記ろう材用鋳塊を、厚さ10μm~50μmに圧延した状態で行うことが好ましく、厚さ20μm~50μmに圧延した状態で行うことがより好ましい。
中間焼鈍又は最終焼鈍時におけるろう材用鋳塊の厚さを上記範囲内に制御することにより、心材用鋳塊からろう材用鋳塊表面に拡散するMg濃度を低減させることができ、MgO皮膜の生成及び成長を抑制して、所望量のMgを含有する結晶性Alが局所的に存在する非晶質なアルミニウム酸化皮膜をブレージングシートの表面に容易に形成して、所望のろう付特性を容易に発揮することができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、上記冷間圧延のパス間における中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理における加熱を、下記式(I)
D=ΣD・exp(-Q/(RTn))・△tn (I)
(式中、Tnは前記中間焼鈍及び最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間△tn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D=1.24×10-4(m/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が7.0×10-10以下となるように行う。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、上記冷間圧延のパス間における中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理時における加熱を、上記拡散量Dの値が、7.0×10-10以下となるように行い、5.0×10-10以下となるように行うことが好ましく、2.0×10-10以下となるように行うことがより好ましい。
上記拡散量Dの下限値は特に制限されないが、上記拡散量Dは、通常、1.0×10-16以上である。
上記冷間圧延のパス間における中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍における加熱を、上記拡散量Dの値が、7.0×10-10以下となるように行うことにより、ろう材表面に非晶質なアルミニウム酸化皮膜が成長するとともに係る非晶質なアルミニウム酸化皮膜内に結晶性Alが形成され、非晶質なアルミニウム酸化皮膜と結晶性Alとの界面あるいは結晶性Alの内部に欠陥が発生し、上記ろう材用鋳塊の表層に拡散するMgの拡散量を制御することができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、上記冷間圧延のパス間における中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍時に加熱することにより、Mgがろう材表層に向かって拡散するが、その拡散量は、式(I)で求められる拡散量Dが7.0×10-10以下となるように中間焼鈍及び最終焼鈍時における温度及び時間を制御することにより、容易に制御することができる。
常法によれば、加熱処理によって最終的に到達した温度と、その温度に保持される時間を制御すれば、適切な拡散効果が得られると考えられる。
しかしながら、本発明に係る製造方法で得られるアルミニウム合金ブレージングシートは、上述したように、ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値が30at%×nm~600at%×nmになるように制御されてなるものであり、係るMg積分値を適切な値に制御するためには、中間焼鈍及び最終焼鈍時における全ての過程における入熱量の合計値を適切に制御する必要があり、係る必要を満たす上では、上記式(I)で求められる拡散量Dが、7.0×10-10以下、好ましくは5.0×10-10以下、より好ましくは2.0 ×10-10以下となるように制御する必要がある。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、必要に応じ、酸を用いてブレージングシートの表面をエッチング処理してもよい。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法において、エッチング処理は、ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値が、30at%×nm~600at%×nm、好ましくは40at%×nm~500at%×nm%、より好ましくは45at%×nm~400at%×nm%となるように行われる。
上記エッチング処理を行う時期は、熱間圧延を行った後、ブレージングシートを用いてろう付を行うまでの間であれば、特に限定されない。
例えば、熱間圧延後のクラッド板にエッチング処理を施してもよいし、冷間圧延の途中のクラッド板にエッチング処理を施してもよい。また、中間焼鈍後又は最終焼鈍後にエッチング処理を施してもよい。
さらに、前述した最終焼鈍が完了した後、酸化皮膜を有する状態でブレージングシートを保管し、ろう付を行う直前にエッチング処理を施してもよい。
ろう付を行う際にMgO濃縮層が脆弱化又は除去され所望量のMgを含有する結晶性Alが局所的に存在する非晶質なアルミニウム酸化皮膜が形成されていることにより、ブレージングシートを用いたろう付時におけるろう付性を向上させることができる。
ブレージングシートをエッチング処理する場合、ブレージングシートの片面にのみろう材がクラッドされている場合には、ろう材がクラッドされた面のみをエッチング処理しても良いし、両面をエッチング処理してもよい。
また、ブレージングシートの両面にろう材がクラッドされている場合には、両面をエッチング処理することが好ましい。
上述したように、エッチング処理を施すことにより、ろう材表面に形成されるMgO皮膜を脆弱化又は除去し、所望量のMgを含有する結晶性Alが局所的に存在する非晶質なアルミニウム酸化皮膜を形成させ、ろう材表面におけるMg濃度を所望範囲に制御することができる。
例えば、自動車用熱交換器に用いられるフィン材のような板厚の薄い材料では、設備制約上、焼鈍工程よりも前にエッチング処理工程が位置する場合がある。このような場合においても、エッチング処理によりろう材表面のMg濃度を減じる効果はあり、さらにその後の焼鈍工程の処理条件を適切化することで、酸化皮膜を脆弱化し、ろう付性を容易に向上させることができる。
ブレージングシートのエッチング処理に用いる酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、フッ酸等の水溶液を挙げることができる。これらの酸は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。酸化皮膜をより効率よく除去する観点からは、酸として、フッ酸と、フッ酸以外の酸とを含む混合水溶液を使用することが好ましく、フッ酸と硫酸との混合水溶液又はフッ酸と硝酸との混合水溶液を使用することがより好ましい。
また、ブレージングシートのエッチング処理に用いるアルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水溶液を挙げることができる。これらのアルカリ性溶液は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。アルカリ性溶液を用いてエッチングした場合には、エッチング後に硫酸水溶液や硝酸水溶液を用いてデスマット処理することが好ましい。
エッチング処理時におけるエッチング量は、0.02~0.40g/mであることが好ましい。エッチング量を0.03g/m以上、より好ましくは0.10g/m以上とすることにより、ブレージングシート表面の酸化皮膜を十分に除去し、ろう付性をより向上させることができる。
ブレージングシートのろう付性向上の観点からは、エッチング量に上限は存在しない。しかし、エッチング量が過度に多くなると、所望量のMgを含有する結晶性Alが局所的に存在する非晶質なアルミニウム酸化皮膜をも除去してしまい、その後に形成されるアルミニウム酸化皮膜は、ろう材から拡散してきたMgを含有する(結晶性Alが存在しない)非晶質なアルミニウム酸化皮膜となってしまうため、ろう付性向上の効果を得難くくなる。
上記エッチング量を0.40g/m以下、より好ましくは0.20g/m以下とすることにより、上記問題を容易に回避することができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法においては、このようにして、目的とするアルミニウム合金ブレージングシートを得ることができる。
得られたアルミニウム合金ブレージングシートの詳細は、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートの説明で詳述したとおりである。
本発明によれば、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、ろう付性に優れたブレージングシートを容易に製造することができる。
以下に、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)DC(die casting)鋳造により、各々表1および表2に示す化学成分を有するアルミニウム合金からなる心材用鋳塊とろう材用鋳塊を作製した。
次いで、心材用鋳塊に面削を施し、心材用鋳塊の板厚を所定の厚さとした。次いで、ろう材用鋳塊に熱間圧延を行い、ろう材用鋳塊の板厚を所定の厚さとした。
このようにして得られた心材用鋳塊及びろう材用鋳塊を重ね合わせて積層し、心材用鋳塊の片面上にろう材用鋳塊が積層された二層構造を有する(ろう材用鋳塊/心材用鋳塊の構造を有する)積層物を得た。
得られた積層物に熱間圧延を行って心材用鋳塊とろう材用鋳塊とを接合することにより、板厚2.6mmのクラッド材を作製した。
(2)(1)で得られたクラッド材に、冷間圧延を施して厚さ0.20mmの冷間圧延物を得た。
次いで、得られた冷間圧延物に対し、下記式(I)
D=ΣD・exp(-Q/(RTn))・△tn (I)
(式中、Tnは最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間△tn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D=1.24×10-4(m/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が1.2×10-10となるように、大気雰囲気下において、加熱温度及び加熱時間を制御しつつ加熱する最終焼鈍を施した。
次いで、表面から60nm以下のMg積分値を制御するためにろう材表面を酸によりエッチング処理することにより、ろう材/心材の二層構造からなり、心材の片面上に設けたろう材のクラッド率が10.8%である、厚さ0.20mmのアルミニウム合金ブレージングシートの試験片A~Cを得た。試験片A、試験片B、試験片Cはエッチング処理の時間を変化させた。
得られた試験片のろう材の表面から60nmの深さまでのMg積分値を、X線光電子分光分析装置(XPS、ULVAC-PHI社製 PHI 5000 VersaProbe III)で測定した。結果を表3に示す。
<ろう付性評価>
図1(a)および図1(b)に各々斜視図および側面図で示すように、得られたアルミニウム合金ブレージングシートの試験片(寸法:20mm幅×30mm長さ×0.20mm厚さ)を水平板として配置するとともに、この水平板上に、A3003-Oアルミニウム合金板(寸法:1.0mm厚さ×15mm幅×25mm長さ)を垂直板として配置し、さらに上記垂直板の端部に直径1.6mmのスペーサーを挿入して水平板と離間させつつ固定治具で固定して逆T字間隙充填試験片に組み付けた。
次いで、上記逆T字間隙充填試験片を、平均酸素濃度が1体積ppm、露点が-50℃の窒素ガス雰囲気の炉内に挿入して室温から600℃までの昇温速度100℃/分、600℃×3分保持のろう付加熱試験を行った。次いで、炉内で500℃以下になるまで冷却を行った後に炉外に搬出して試験片を取り出した。
以上により得られた加熱試験後の逆T字間隙充填試験片において、図1(b)に示す水平板と垂直板の接点からのフィレット充填長さを測定し、以下の基準によりろう付性を評価した。結果を表3に示す。
(ろう付性評価基準)
充填長さが3.0mm以上: 〇 (合格 (ろう付性良好))
充填長さが3.0mm未満: × (不合格(ろう付不良))
(実施例2)
実施例1において、冷間圧延物に対する最終焼鈍を、下記式(I)
D=ΣD・exp(-Q/(RTn))・△tn (I)
(式中、Tnは最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間△tn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D=1.24×10-4(m/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が1.3×10-13となるように、大気雰囲気下において、加熱温度及び加熱時間を制御しつつ加熱して行い、エッチング処理を試験片Bと同程度に行ったもの(試験片D)とエッチング処理を行わなかったもの(試験片E)とした。その他の条件は、実施例1と同様にして心材の片面上に設けたろう材のクラッド率が10.8%である、厚さ0.20mmのアルミニウム合金ブレージングシートの試験片D、試験片Eを得た。
得られた試験片D、試験片Eにおいて、実施例1と同様にして、ろう材の表面から60nmの深さまでのMg積分値を測定するとともに、ろう付性評価を行った。結果を表3に示す。
(実施例3)
実施例1において、冷間圧延物に対する最終焼鈍を、下記式(I)
D=ΣD・exp(-Q/(RTn))・△tn (I)
(式中、Tnは最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間△tn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D=1.24×10-4(m/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が3.3×10-10となるように、大気雰囲気下において、加熱温度及び加熱時間を制御しつつ加熱して行い、エッチング処理を行わなかったものとした。その他の条件は、実施例1と同様にして心材の片面上に設けたろう材のクラッド率が10.8%である、厚さ0.20mmのアルミニウム合金ブレージングシートの試験片Fを得た。結果を表3に示す。
(比較例1)
実施例1において、エッチング量が多くなるようにエッチング処理を行った以外は、実施例1と同様にして心材の片面上に設けたろう材のクラッド率が10.8%である、厚さ0.20mmのアルミニウム合金ブレージングシートの比較用試験片Gを得た。
得られた試験片Gにおいて、実施例1と同様にして、ろう材の表面から60nmの深さまでのMg積分値を測定するとともに、ろう付性評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例2)
冷間圧延物に対する最終焼鈍を、下記式(I)
D=ΣD・exp(-Q/(RTn))・△tn (I)
(式中、Tnは最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間△tn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D=1.24×10-4(m/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
で表される拡散量Dの値が4.2×10-10となるように、大気雰囲気下において、加熱温度及び加熱時間を制御しつつ加熱して行い、エッチング処理を行わなかったものとした。その他の条件は、実施例1と同様にして心材の片面上に設けたろう材のクラッド率が10.8%である、厚さ0.20mmのアルミニウム合金ブレージングシートの試験片Hを得た。
得られた試験片Hにおいて、実施例1と同様にして、ろう材の表面から60nmの深さまでのMg積分値を測定するとともに、ろう付性評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 2023066678000001
Figure 2023066678000002
Figure 2023066678000003
表3より、実施例1~実施例3で得られたアルミニウム合金ブレージングシートの試験片A~試験片Fは、心材と、該心材の片面にクラッドされているろう材とを有し、上記心材はアルミニウム合金からなり、上記ろう材は、4.00~13.00質量%のSiを含有するとともに、0.10~2.00質量%のMgを含有し、残部アルミニウム及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金からなり、上記ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値が30at%×nm~600at%×nmであることから、ろう付性評価を行ったときに充填長さが3.0mm以上で全て「〇」評価となり、いずれも良好なろう付性(接合性)を示すことが分かる。
一方、表3より、比較例1および比較例2で得られたアルミニウム合金ブレージングシートの試験片G~試験片Hは、心材と、該心材の片面にクラッドされているろう材とを有し、当該ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値が30at%×nm~600at%×nmの範囲外であることから、ろう付性評価を行ったときに充填長さが3.0mm未満で全て「×」評価となり、いずれもろう付性(接合性)に劣ることが分かる。
本発明によれば、窒素ガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気中でフラックスを使用せずにアルミニウム材をろう付する場合において、ろう付性に優れたブレージングシート及びその製造方法を提供することができる。

Claims (5)

  1. フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付に用いられるアルミニウム合金ブレージングシートであって、
    心材と、該心材の片面上又は両面上にクラッドされているろう材とを有し、
    前記心材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、
    前記ろう材は、4.00~13.00質量%のSiを含有するとともに、0.10~2.00質量%のMgを含有し、残部アルミニウム及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、
    前記ろう材表面から60nmの深さまでのMg積分値が30at%×nm~600at%×nmである
    ことを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
  2. 前記ろう材が、さらに、1.00質量%以下のBi、0.05質量%以下のNa、0.05質量%以下のSr、0.05質量%以下のSb、8.00質量%以下のZn、4.00質量%以下のCu、1.00質量%以下のFe、1.00質量%以下のMn、0.30質量%以下のCr、0.30質量%以下のTi、0.30質量%以下のZr、0.10質量%以下のIn、0.10質量%以下のSb及び0.10質量%以下のSnから選ばれる一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
  3. 前記心材と前記ろう材との間にさらにアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる中間材を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
  4. 請求項1~請求項3のいずれかに記載のアルミニウム合金ブレージングシートを製造する方法であって、
    心材用鋳塊と、当該心材用鋳塊の片面上又は両面上にろう材用鋳塊が積層された積層物に、少なくとも熱間加工と、冷間加工と、冷間加工での圧延のパス間における1回以上の中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理と、を行うことにより、アルミニウム合金ブレージングシートを製造する際に、
    前記冷間圧延のパス間における中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理時における加熱を、下記式(I)
    D=ΣD・exp(-Q/(RTn))・△tn (I)
    (式中、Tnは前記中間焼鈍及び最終焼鈍における総加熱時間(秒間)を、微小時間△tn(秒間)で区切った時の各微小時間における加熱温度(K)であり、D=1.24×10-4(m/s)、Q=130(kJ/mol)、R=8.3145(J/(mol・K))である。)
    で表される拡散量Dの値が7.0×10-10以下となるように行う
    ことを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
  5. 前記冷間加工での圧延のパス間における1回以上の中間焼鈍及び最後の冷間加工のパス後における最終焼鈍から選ばれる1回以上の焼鈍処理を施して焼鈍処理物を得た後、
    酸及びアルカリ性溶液のうちのいずれか一方又は両方を用いて焼鈍処理物のろう材表面をエッチング処理することを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法。
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