JP2023064963A - 吸水性樹脂の製造方法及び吸水性樹脂 - Google Patents

吸水性樹脂の製造方法及び吸水性樹脂 Download PDF

Info

Publication number
JP2023064963A
JP2023064963A JP2021175442A JP2021175442A JP2023064963A JP 2023064963 A JP2023064963 A JP 2023064963A JP 2021175442 A JP2021175442 A JP 2021175442A JP 2021175442 A JP2021175442 A JP 2021175442A JP 2023064963 A JP2023064963 A JP 2023064963A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
roll
water
absorbent resin
rolls
water absorbent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021175442A
Other languages
English (en)
Inventor
伸哉 勝部
Shinya Katsube
眞一 藤野
Shinichi Fujino
元洋 井村
Motohiro Imura
雅史 井上
Masafumi Inoue
耕士 本田
Koji Honda
峻一 田島
Shunichi Tajima
眸 山西
Hitomi Yamanishi
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Priority to JP2021175442A priority Critical patent/JP2023064963A/ja
Publication of JP2023064963A publication Critical patent/JP2023064963A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Crushing And Grinding (AREA)
  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)

Abstract

【課題】逆相懸濁重合により得られる吸水性樹脂の製造方法において、吸水性樹脂の不定形粒子の含有量を低減する手段を提供する。【解決手段】単量体を逆相懸濁重合して含水ゲル重合体を得る工程と、前記含水ゲル重合体を乾燥して乾燥重合体を得る工程と、前記乾燥重合体を粉砕装置により粉砕して、吸水性樹脂を得る工程と、を含む吸水性樹脂の製造方法であって、前記粉砕装置が、少なくとも一対のロールを有するロール式粉砕装置であり、前記一対のロールにおいて、少なくとも一方のロールの表面には、ロール回転方向に対して平行に延びる溝が設けられている、吸水性樹脂の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、吸水性樹脂の製造方法及び吸水性樹脂に関する。
近年、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料には、体液吸収の観点から、その構成材としての吸水性樹脂が、吸水剤として幅広く利用されている。上記吸水性樹脂には、その原料として多くの単量体や親水性高分子が使用されている。例えば、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉-アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリル酸部分中和物重合体の架橋物等が知られている。中でも、吸水性能の観点から、アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、工業的に最も多く生産されている。
吸水性樹脂の一般的製造方法としては、水溶液重合法と、逆相懸濁重合法とに大別される。逆相懸濁重合法は、有機溶媒中に単量体水溶液を懸濁させ、重合を行う方式であり、パール状(球状)又はそれらの凝集体形状の吸水性樹脂が得られる。逆相懸濁重合法によれば、粒子径や粒度分布が制御された粉末状又は粒子状の吸水性樹脂を得ることができるという利点がある。吸水性樹脂の粒子径や粒度分布は性能に大きな影響を与えるため、その制御方法についてこれまでに種々の検討がなされている。また、逆相懸濁重合により得られる球状粒子は粒子径が比較的小さいため、作業性や吸水性能の面で課題があった。この課題解決のため、球状粒子の凝集体を得る検討もなされており、逆相懸濁重合を2段以上の多段で行ったり(特許文献1)、得られた球状粒子をバインダ-等と混合し造粒する検討(特許文献2)がなされている。さらに、上記重合法による重合工程の後の乾燥工程においても凝集体を形成することが知られており、例えば、特許文献3では、含水ゲルを乾燥する乾燥工程において、少なくとも一部において攪拌型乾燥機を用いる技術が開示されている。この技術によれば、粒度制御された粉末状又は粒子状の吸水性樹脂を効率よく製造することができるとされている。
このような吸水性樹脂は、ある程度粒度が制御されるとしても、目的外の粗粒や微粉の発生を完全になくすことはできていない。また、製品に要求される粒度分布に厳密に合わせるためには、その製造工程には粉砕機と分級機が用いることが好ましい。例えば、特許文献4には、粉砕工程において、ロールミルを用いて乾燥重合体を粉砕する技術が提案されている。当該技術によれば、乾燥重合体の粉砕により吸水性樹脂を所望の粒子サイズへと調整しやすく、また、所望とする粒子サイズよりも細かな粒子(微粉)の発生も抑制できることが開示されている。
特開平3-227301号公報 特開昭62-132936号公報 特開2016-216713号公報 国際公開第2014/084281号
本発明者らの検討によれば、逆相懸濁重合法による重合工程を経て得られた乾燥重合体に対して特許文献4の技術を適用すると、乾燥重合体を粉砕して得られた吸水性樹脂において不定形粒子の含有量が増加し、吸水性樹脂の吸水性能が低下するという問題が生じる。
そこで本発明は、逆相懸濁重合により得られる吸水性樹脂の製造方法において、吸水性樹脂の不定形粒子の含有量を低減する手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、逆相懸濁重合法による重合工程を経て得られた乾燥重合体を粉砕する粉砕工程において、一対のロールを有し、一対のロールのうち少なくとも一方のロールの表面には、ロール回転方向に対して平行に延びる溝が設けられているロール式粉砕装置を用いることによって、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態に係る吸水性樹脂の製造方法は、単量体を逆相懸濁重合して含水ゲル重合体を得る工程と、前記含水ゲル重合体を乾燥して乾燥重合体を得る工程と、前記乾燥重合体を粉砕装置により粉砕して吸水性樹脂を得る工程と、を含む吸水性樹脂の製造方法であって、前記粉砕装置が、少なくとも一対のロールを有するロール式粉砕装置であり、前記一対のロールにおいて、少なくとも一方のロールの表面には、ロール回転方向に対して平行に延びる溝が設けられている、吸水性樹脂の製造方法である。
本発明によれば、逆相懸濁重合により得られる吸水性樹脂の製造方法において、吸水性樹脂の不定形粒子の含有量を低減する手段が提供される。
押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置の分類を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る粉砕装置を模式的に示す図である。 粉砕装置における一対のロールを模式的に示す図であり、ロール表面が溝形状を有する2本のロールから構成される一対のロール(図3(a))と、ロール表面が溝形状を有するロールと平滑面を有するロールとから構成される一対のロール(図3(b))と、を示す図である。 実施例で得られた吸水性樹脂(乾燥重合体の粉砕物)のSEM画像(100倍)である。 比較例で得られた吸水性樹脂(乾燥重合体の粉砕物)のSEM画像(100倍)である。
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」等)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
〔1.用語の定義〕
[1-1.吸水性樹脂]
本明細書において「吸水性樹脂」とは、NWSP 241.0.R2(15)により規定される水膨潤性(CRC)が5g/g以上であり、且つNWSP 270.0.R2(15)により規定される水可溶成分(Ext)が70質量%以下である高分子ゲル化剤をいう。なお、「NWSP」は「Non-Woven Standard Procedures-Edition 2015」を表し、EDANA(European Disposables And Nonwovens Association、欧州不織布工業会)とINDA(Association of the Nonwoven Fabrics Industry、北米不織布工業会)が、不織布及びその製品の評価法を米国及び欧州で統一して共同で発行したものであり、吸水性樹脂の標準的な測定法を示すものである。
本明細書において「吸水性樹脂」とは、全量(100質量%)が当該吸水性樹脂のみである態様に限定されず、上述のCRC及びExtを満足するならば、添加剤などを含んでいる吸水性樹脂組成物であってもよい。また、本明細書において「吸水性樹脂」とは、吸水性樹脂の製造工程における中間体をも包含する概念である。例えば、重合後の含水ゲル重合体、乾燥後の乾燥重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粒子なども、「吸水性樹脂」と表記する場合がある。
このように、本明細書においては、吸水性樹脂そのものに加えて、吸水性樹脂組成物及び中間体をも総称して「吸水性樹脂」と表記する場合がある。
[1-2.その他]
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。
本明細書において、特記しない限り、「ppm」は、「質量ppm」を意味する。
本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸及び/又はその塩」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
本明細書においては、体積の単位「リットル」を「l」又は「L」と表記する場合がある。
本明細書においては、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」、「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。
〔2.吸水性樹脂の製造方法〕
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、単量体を逆相懸濁重合して含水ゲル重合体を得る工程と、前記含水ゲル重合体を乾燥して乾燥重合体を得る工程と、前記乾燥重合体を粉砕装置により粉砕して吸水性樹脂を得る工程と、を含む吸水性樹脂の製造方法であって、前記粉砕装置が、少なくとも一対のロールを有するロール式粉砕装置であり、前記一対のロールにおいて、少なくとも一方のロールの表面には、ロール回転方向(ロール周方向)に対して平行に延びる溝が設けられている、吸水性樹脂の製造方法である。
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法によれば、逆相懸濁重合により得られる吸水性樹脂において、吸水性樹脂の不定形粒子の含有量を低減することが可能となる。
本発明の構成とすることによって乾燥重合体を粉砕して得られる吸水性樹脂の不定形粒子の含有量を低減することができるメカニズムは完全に明らかとはなっていないが、以下のようなメカニズムが推定されている。本実施形態では、逆相懸濁重合法による重合工程を経て得られた乾燥重合体を粉砕する粉砕工程において、特定のロール式粉砕装置に備えられた一対のロール間のクリアランスに乾燥重合体を通すことによって、乾燥重合体が粉砕される。この際、特定のロール式粉砕装置においては、一対のロール間のクリアランスが、ロール幅方向(ロールの回転軸と平行する方向であり、ロール回転方向とは直行する方向)の任意の位置において、ロールの回転により実質的に変化しない。そのため、ロール間のクリアランスを通過する乾燥重合体に対して、過度な圧力がかかりにくい。逆相懸濁重合法により得られる含水ゲル重合体は、重合反応における懸濁液中で、球状粒子が形成されやすく、この重合工程及び乾燥工程の結果、得られる乾燥重合体には、球状粒子が過度に凝集した粗大粒子がある程度生成してしまう。この場合、例えば、特許文献4に記載のロール式粉砕装置を用いた場合、乾燥重合体がロール間を通過する際に、乾燥重合体に対して強い圧力がかかり、球状粒子の凝集を解くだけでなく、球状粒子自体を破砕するのでないかと推測される。一方、粉砕工程において、本発明における特定のロール式粉砕装置を用いることにより、乾燥重合体の球状粒子を破砕することなく、球状粒子の凝集を解くことができ、これにより、吸水性樹脂の不定形粒子の含有量を低減することができるものと推測される。なお、このメカニズムはあくまでも推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすことはない。
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、重合方法としては、有機溶媒に単量体水溶液が分散又は懸濁した状態で前記単量体を重合して得る、逆相懸濁重合により含水ゲル重合体を得られれば良く、その重合方法としては、バッチ式でも連続式でも良い。バッチ式製造方法においては、有機溶媒中に単量体水溶液を添加又は滴下して混合して得た単量体水溶液の分散又は懸濁液を反応装置中で重合を行い、含水ゲル重合体を得る製造方法である。一方、連続式製造方法とは、単量体水溶液を連続的に反応装置中の有機溶媒に送液し、分散又は懸濁させたのち重合させ、重合反応により形成される含水ゲル重合体と有機溶媒とを連続的に反応装置から排出する方法である。本発明の好ましい実施形態は、連続式の逆相懸濁重合であり、さらに好ましくは、単量体水溶液を連続的に有機溶媒中に分散させ重合を行う液相液滴連続重合である。このような連続式の製造プロセスの場合、各工程及び工程間におけるそれぞれの操作を連続的に実施でき、長時間の運転により大量生産が可能となる点で好ましい。また、吸水性樹脂の物性の点からも連続式の逆相懸濁重合は好ましい形態である。本発明に係る吸水性樹脂の製造方法においては、重合工程で得られた含水ゲル重合体と有機溶媒とを分離する分離工程を設けてもよい。連続式の製造プロセスにおいては、分離工程において含水ゲル重合体から分離された有機溶媒を回収し、重合工程の有機溶媒として再利用することが好ましい。このような循環型の製造プロセスとすることにより、有機溶媒の使用量を削減できるため、製造コストや廃液処理の点で好ましい。なお、連続重合は、分散装置において連続的に単量体水溶液が有機溶媒中に液滴として懸濁又は分散し、当該分散/懸濁液が反応装置へと連続的に供給される形態であるため、重合装置内に単量体の分散/懸濁液を滞留させて重合を行う形態(回分操作、バッチ式)とは明確に区別される。また、連続的に操作を行う場合、その運転時間としては、1時間以上であることが好ましく、3時間以上であることがより好ましく、さらに好ましくは8時間以上、さらには24時間以上が好ましい。また、通常1年以下である。
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法としては、任意の単量体水溶液調製工程;任意の分散工程;重合工程;任意の分離工程;任意のゲル整粒工程;乾燥工程;粉砕工程を含む。また、乾燥工程の後に、任意に、冷却工程、分級工程、表面架橋工程、再湿潤工程、整粒工程、微粉除去工程、造粒工程及び微粉再利用工程などを含むことができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等をさらに含んでもよい。
以下、各工程について説明する。
[2-1:単量体水溶液調製工程]
本工程は任意の工程であり、単量体と必要に応じて重合開始剤とを混合して単量体水溶液を得る工程である。
以下、本工程で用いられる材料について説明する。
「単量体水溶液」
単量体水溶液は、吸水性樹脂の原料となる単量体を含む水溶液であり、逆相懸濁重合を行うため、有機溶媒に分散又は懸濁させる溶液である。
単量体水溶液の溶媒としては水、又は水及び水溶性有機溶媒(例えば、アルコール等)の混合物が好適に用いられ、水であることがさらにより好ましい。水と水溶性有機溶媒の混合物である場合、水溶性有機溶剤(例えば、アルコール等)は30質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
単量体としては、エチレン性不飽和単量体が好ましく用いられ、水溶性であることが好ましい。エチレン性不飽和単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等の酸基含有不飽和単量体;、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン、N-ビニルアセトアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等の窒素含有不飽和単量体;メルカプト基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体等が挙げられる。
なお、上記各単量体の安定性の面から、各単量体は重合禁止剤を含んでいてもよい。
上記単量体の中で、酸基含有不飽和単量体を用いて吸水性樹脂を製造する場合には、当該酸基が中和された中和塩を用いることができる。この場合、酸基含有不飽和単量体の塩としては一価のカチオンとの塩であることが好ましく、アルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、アルカリ金属塩であることがさらに好ましく、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種であることがよりさらに好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
本発明に係る製造方法では、上記単量体水溶液の調製において、上記例示した単量体のいずれかを単独で使用してもよく、任意の2種以上の単量体を適宜混合して使用してもよい。また、本発明の目的が達成される限り、さらに他の単量体を混合することもできる。
これらの中でも、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、単量体としては、酸基含有不飽和単量体及び/又はその塩を含むことが好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)、(無水)マレイン酸(塩)、イタコン酸(塩)、ケイ皮酸(塩)から選択される少なくとも1種を含む。さらに好ましくは単量体は(メタ)アクリル酸(塩)、特に好ましくはアクリル酸(塩)を含む。
上記単量体水溶液の調製において、2種以上の単量体を併用する場合、主成分として、酸基含有不飽和単量体及び/又はその塩を含むことが好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)を主成分として含む。この場合、重合に用いられる単量体全体に対する酸基含有不飽和単量体及び/又はその塩の割合は、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、通常は50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)である。特に好ましい形態としては、(メタ)アクリル酸(塩)を主成分として含み、重合に用いられる単量体全体に対する(メタ)アクリル酸(塩)の割合が70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)である。
単量体として酸基含有不飽和単量体を用いる場合、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、その酸基含有不飽和単量体の中和塩と併用することが好ましい。吸水性能の観点から、酸基含有不飽和単量体とその中和塩の合計モル数に対する中和塩のモル数(以下、「中和率」と称する)は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは40モル%~95モル%、さらに好ましくは50モル%~90モル%、さらにより好ましくは55モル%~85モル%、特に好ましくは60モル%~80モル%である。
上記単量体水溶液の調製においては、必要に応じて、内部架橋剤を用いることができる。内部架橋剤としては、1分子内に2個以上の重合性不飽和基や2個以上の反応性基を有する従来公知の内部架橋剤が挙げられる。内部架橋剤としては、例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの内部架橋剤は1種のみ用いてもよいし2種以上使用してもよい。
中でも、得られる吸水性樹脂の吸水特性等から、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を内部架橋剤として用いることが好ましい。所望する吸水性樹脂の物性により適宜決定されればよいが、通常、内部架橋剤の使用量は、単量体に対して0.0001~5モル%、より好ましくは0.001~3モル%、さらにより好ましくは0.005~1.5モル%である。
また、キレート剤等を単量体水溶液に添加してもよい。また、以下に例示する物質(以下、「その他の物質」と称する)を単量体水溶液に添加することもできる。
その他の物質の具体例として、チオール類、チオール酸類、2級アルコール類、アミン類、次亜リン酸塩類等の連鎖移動剤;炭酸塩、重炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の発泡剤;エチレンジアミン4酢酸の金属塩、ジエチレントリアミン5酢酸の金属塩等のキレート剤;ポリアクリル酸(塩)及びこれらの架橋体、澱粉、セルロース、澱粉-セルロース誘導体、ポリビニルアルコール等の増粘剤等が挙げられる。その他の物質は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
その他の物質の使用量は、特に限定されないが、その他の物質の全濃度としては、好ましくは単量体に対して10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらにより好ましくは0.1質量%以下である。
また、単量体水溶液中の溶存酸素を、昇温又は不活性ガスとの置換により低減させてもよい。
「重合開始剤」
上記単量体水溶液の調製において、重合開始剤を用いてもよい。単量体水溶液に重合開始剤を含むことにより、簡便に逆相懸濁重合を行うことができる。なお、単量体水溶液の調製に重合開始剤を使用する場合は、単量体水溶液のゲル化や粘度増大が起こる恐れがあるため、重合開始剤の添加は単量体水溶液を有機溶媒に分散/懸濁させる直前に行う、単量体水溶液を冷却し常温より低温(20℃以下、好ましくは0℃付近)で重合開始剤と混合する、単量体水溶液と重合開始剤をラインミキシングしながら分散工程に供する、等を行うことが好ましい。重合開始剤としては、熱分解型重合開始剤が好ましく用いられる。該熱分解型重合開始剤は、熱によって分解しラジカルを発生する化合物を指すが、熱分解型重合開始剤の貯蔵安定性や吸水性樹脂の生産効率の観点から、10時間半減期温度が好ましくは0℃~120℃、より好ましくは30℃~100℃、さらに好ましくは50℃~80℃である水溶性の化合物が重合開始剤として好ましく用いられる。
熱分解型重合開始剤の取扱性や吸水性樹脂の物性の観点から、重合開始剤としては、好ましくは過硫酸塩、より好ましくは過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、さらに好ましくは過硫酸ナトリウムが使用される。
上記熱分解型重合開始剤の使用量は、単量体及び重合開始剤の種類等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、生産効率の観点から、単量体に対して、好ましくは0.001g/モル以上、より好ましくは0.005g/モル以上、さらに好ましくは0.01g/モル以上である。また、吸水性樹脂の吸水性能向上の観点から、好ましくは2g/モル以下、より好ましくは1g/モル以下である。
また、必要に応じて、光分解型重合開始剤等、他の重合開始剤と併用することもできる。該光分解型重合開始剤として、具体的には、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体等が挙げられる。
また、上記熱分解型重合開始剤と還元剤とを併用してレドックス系重合開始剤とすることもできる。上記レドックス系重合開始剤では、熱分解型重合開始剤が酸化剤として機能する。用いられる還元剤としては、特に限定されないが、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸塩;第一鉄塩等の還元性金属塩;L-アスコルビン酸(塩)、アミン類等が挙げられる。
「単量体水溶液における単量体の濃度」
本発明において、単量体水溶液中の単量体の濃度は、選択された単量体及び有機溶媒の種類等に応じて選択されるが、生産効率上、下限は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらにより好ましくは30質量%以上であり、また、上限は、好ましくは100質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下であり、さらにより好ましくは70質量%以下である。
本発明の目的が阻害されない限り、単量体水溶液に、界面活性剤、密度調整剤、増粘剤等の添加物を配合することも可能である。なお、添加物の種類及び添加量は、用いられる単量体及び有機溶媒の組合せにより、適宜選択されうる。
[2-2.分散工程]
分散工程は、有機溶媒に単量体を含む液滴を分散又は懸濁する工程である。なお、以下、単に「分散」と記載した場合には、懸濁も含む概念とする。より具体的には、上記単量体水溶液を、有機溶媒に添加して混合、攪拌することにより分散させる。例えば、攪拌翼(プロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼等)を備えた攪拌装置を用いてもよい。このような攪拌翼を有する攪拌装置を用いる場合、分散液滴径は、攪拌翼の種類、翼径、回転数等により調節することができ、バッチ式逆相懸濁重合を行う場合に特に好適に使用できる。また国際公開第2009/025235号、第2013/018571号等に記載された方法で分散液を得ることができる。連続式逆相懸濁重合を行う場合には、分散工程は、単量体水溶液及び有機溶媒を、分散装置に別々に連続的に供給し、有機溶媒中に分散する単量体を含む液滴を作製することが好ましい。ここで、単量体水溶液及び有機溶媒を、分散装置に「別々に」供給するとは、単量体水溶液及び有機溶媒の混合物を「別々に」分散装置に供給する意ではなく、単量体水溶液と、有機溶媒と、を独立して「別々に」分散装置に供給する意である。
連続式逆相懸濁重合を行う場合に、分散工程において用いられる分散装置としては、スプレーノズルや高速回転せん断型撹拌機、ニードル等の円筒ノズル、プレートに多数の孔を直接設けたオリフィスプレート、スプレーノズル、回転ホイール等の遠心アトマイザーなどが挙げられるが特に制限はない。
「スプレーノズル」
スプレーノズルとしては、単量体水溶液と、有機溶媒とを別々に導入し、これらを相互に接触することなくその内部を通過させ、スプレーノズルから排出する直前又は直後に接触して排出する機能を有するものが好ましい。
スプレーノズルの例としては、2流体スプレーノズル、3流体スプレーノズル、4流体スプレーノズル等の多流体スプレーノズル;2重管、3重管、4重管等の多重管;エジェクター等が挙げられる。また、2流体スプレーノズルとしては、プレフィルミング型、プレーンジェット型、クロスフロー型、外部混合型、内部混合型及びYジェット型のスプレーノズルが例示される。
多流体スプレーノズルとしては、市販品を使用してもよく、例えば、株式会社共立合金製作所製ミニアトマイズMMA、株式会社いけうち製SETOJet、スプレーイングシステムスジャパン株式会社製エアーアトマイジングノズルSU-HTE91、新倉工業株式会社製ミクロマイザー、藤崎電機株式会社製4流体ノズル、大川原化工機株式会社製ツインジェットノズル等が挙げられる。
スプレーノズルの具体的形態は、例えば、国際公開第2016/182082号に記載されている。国際公開第2016/182082号の開示内容は参照され、全体として本明細書に組み入れられる。
「高速回転せん断型撹拌機」
高速回転せん断型撹拌機の一実施形態によれば、間隙を隔てて互いに対向する対向面を有する一対の壁が相対的に移動することによってせん断場を形成する流路が形成される。そして、このせん断場を形成する流路を循環する有機溶媒中に単量体水溶液を連続的に供給することで、より好適な分散状態を効率的に達成することができる。
高速回転せん断型撹拌機における「流路」は、一対の壁における互いに対向する対向面の間の間隙によって流体(有機溶媒中に単量体水溶液が供給された流体)を流すことができる形態であれば、形状は特に限定されない。
「壁」の具体的な形状は、流路の形状に応じて、平面形状、羽根形状、ディスク形状、中空円筒形状、あるいは中実円筒形状など種々の形状を有することができる。
「一対の壁が相対的に移動する」形態は、せん断場を形成する流路を形成することができる形態であれば、特に限定されない。例えば、一方の壁を固定壁とし、他方の壁を可動壁として構成することができる。また、移動速度に差が生じるように一対の壁をともに可動壁として構成することができる。
本発明において、有機溶媒中に分散される単量体水溶液を含む微細液滴をより微細化する観点からは、単量体水溶液が、比較的狭い流路内に供給されるほうが好ましい。このような観点からは、間隙の寸法は、5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることが好ましい。また、生産性を考慮すると、間隙の寸法は、0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。
高速回転せん断型撹拌機については、例えば、国際公開第2020/067310号図2~図8に開示された装置が挙げられ、国際公開第2020/067310号の開示内容は参照され、全体として本明細書に組み入れられる。
以下、本工程で用いられる材料について説明する。
「有機溶媒」
本発明において、逆相懸濁重合の分散媒となる有機溶媒としては、単量体水溶液を懸濁/分散できる疎水性の有機溶媒が使用できる。好ましい有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種類の有機溶媒が挙げられる。具体例には、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロルベンゼン、ブロムベンゼン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素が例示される。これらの中でも、入手容易性及び品質安定性の観点から、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサンが好ましい。2種以上を混合した混合溶媒として用いることも可能である。
本発明においては、本発明の目的が阻害されない限り、必要に応じて、分散媒である有機溶媒に、界面活性剤や高分子添加剤等の分散助剤を添加してもよい。分散助剤の種類は、用いられる有機溶媒及び単量体の組合せにより、適宜選択されるが、使用できる分散助剤としては、以下の界面活性剤や高分子添加剤が例示される。
上記界面活性剤として、具体的には、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N-アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。また、重合性を有する重合性界面活性剤を使用することもできる。重合性界面活性剤として、具体的には下記の構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 2023064963000002
なお、式中、R及びRは、互いに独立して、水素、メチル基又はエチル基であり、nは、3~20の整数を意味する。上記の界面活性剤の中では、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類が好ましく、中でもショ糖脂肪酸エステルが好ましい。
上記高分子添加剤として、具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。中でも、単量体水溶液の分散安定性の観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、及び酸化型エチレン・プロピレン共重合体が好ましい。これらのうち、2種以上を併用してもよい。また、これらの高分子添加剤と上記界面活性剤とを併用してもよい。中でも、高分子添加剤を用いることが好ましく、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体を用いることがより好ましい。また、他の好適な実施形態では、界面活性剤を用いずに高分子添加剤単独で用いる。
上記分散助剤の使用量は、重合形態、単量体水溶液及び有機溶媒の種類等に応じて適宜設定される。具体的には、有機溶媒中の分散助剤の濃度として、好ましくは0.0001~2質量%であり、より好ましくは0.0005~1質量%である。
[2-3.重合工程]
重合工程は、上記分散工程において得られた単量体を含む液滴を重合して、含水ゲル重合体(以下、単に含水ゲルとも称する)を得る工程である。
「反応装置」
重合工程で用いられる反応装置は、上記分散工程で用いられた分散装置をそのまま用いてもよいし、別の装置であってもよい。バッチ式逆相懸濁重合の場合、分散工程で用いた装置をそのまま反応装置として用いることができ、作業性の面で好適である。反応装置が分散装置と別の装置である場合、分散工程で得られた単量体の分散液が反応装置に供給される。
また、重合反応が行われる反応装置の形状は特に限定されず、公知の反応装置を用いることができる。上述したように、分散工程で好適に使用できる攪拌装置が重合反応においても好適に使用できる。連続式製造方法の場合、好ましくは、この反応装置内に形成された分散媒である有機溶媒中を、上記単量体(水溶液)が液滴状の分散相として移動しながら重合反応しうる形状である。このような反応装置として、例えば、管状の反応管を、縦型、横型又は螺旋型に配置した反応装置が挙げられる。この態様では、単量体(水溶液)が、反応部内を移動する有機溶媒中に供給されるため、単量体水溶液からなる液滴が滞留することなく、有機溶媒と共に移動する。これにより、重合率の異なる単量体反応物同士の接触が抑制される。
また、上記反応装置には、必要に応じて、外部から反応装置内部の単量体の分散液を加熱又は冷却できるように、温度調整手段が備えられていてもよい。
「重合温度」
重合工程における反応温度である重合温度としては、使用する重合開始剤の種類や量によって適宜設定すればよいが、好ましくは20℃~100℃、より好ましくは40℃~90℃である。重合温度が100℃より高い場合は急激な重合反応が起こるため好ましくない。なお重合温度とは、分散媒である有機溶媒の温度(以下、「Td」と称する)を重合温度とする。
重合工程においては、上記単量体(水溶液)が液滴状で有機溶媒に分散していることから、単量体水溶液の温度は、有機溶媒からの熱移動によって速やかに上昇する。液滴に含まれる重合開始剤が熱分解型重合開始剤である場合には、上記昇温に伴って熱分解型重合開始剤が分解してラジカルが発生する。そして、発生したラジカルによって重合反応が開始し、重合反応の進行に伴って含水ゲルが形成される。
連続式製造方法の場合、形成された含水ゲルは、移動する連続相である有機溶媒によって反応装置の内部を移動し、連続相をなす有機溶媒とともに反応装置から排出される。
上記単量体水溶液が熱分解型重合開始剤を含む場合、上記Tdは、重合率の観点から、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは75℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上である。Tdの上限は特に限定されないが、安全性の観点から、分散媒である有機溶媒の沸点を超えない範囲内で、適宜選択される。
「多段逆相懸濁重合」
本発明の製造方法において、適度な凝集粒径を得る観点から、多段重合を行ってもよい。具体的には、一段目の重合工程の終了後に、さらに反応液を攪拌しながら上記単量体水溶液を添加し重合反応を行う等により行うことができる。
「無機微粒子」
本発明の製造方法において、重合中、重合終了後の含水ゲル重合体に対して、適度な凝集粒径を得る観点から無機微粒子を添加してもよい。
本発明で使用できる無機微粒子としては、例えば二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、珪藻土、ベントナイト、ゼオライト、その他の金属酸化物などがあげられる。特に二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化チタンが好ましい。
無機微粒子の添加量は、含水ゲル重合体に対して一般に0.001~1重量部、好ましくは0.001~0.5重量部の割合で使用すると好結果が得られる。この範囲にあることで、無機微粒子の添加効果が効率的に発現し、また吸水性能に与える影響も少ないので好ましい。
[2-4.分離工程]
分離工程は、上記重合工程において得られた含水ゲル重合体と有機溶媒とを分離する工程である。分離工程で用いる装置の種類及び構造については特に限定されないが、例えば、ろ過、沈降、遠心分離、圧搾等の公知の装置を利用することができる。また、重合工程で用いた攪拌羽を有する攪拌装置を用いて常圧又は減圧下で加熱し、共沸脱水することにより有機溶媒と分離してもよい。バッチ式逆相懸濁重合においては常圧又は減圧下での共沸脱水が好適に行われる。
連続式製造方法の場合は、重合工程において形成された含水ゲルが、連続相をなす有機溶媒とともに反応装置から連続的に排出される。上述した通り、有機溶媒と含水ゲルとは、例えば、ろ過、沈降、遠心分離、圧搾等の公知の方法により分離できる。また、好ましい形態としては、本工程で分離した有機溶媒を回収し、配管を通じて分散装置に循環させる循環型のプロセスが好ましい。
上記分離工程において得られた含水ゲル状重合体は、球形ゲルの単粒子形状又は球形ゲルの集合体形状である。当該含水ゲル重合体の平均粒径の下限は特に制限されないが、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上、一層好ましくは0.1mm以上、より一層好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは1mm以上である。上限に関しても特に制限されないが、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下である。また、単粒子形状である場合はその粒子径を、集合体形状である場合は当該集合体を構成する各球形ゲルの粒子径を、一次粒子径と称する。本発明において、平均一次粒子径は特に制限されないが、乾燥工程における微粉の発生を抑制できるという観点から、好ましくは1~2000μmであり、より好ましくは5~1000μmであり、さらに好ましくは5~800μmであり、一層好ましくは8~500μm、さらに一層好ましくは10~300μmであり、特に好ましくは10~200μmであり、最も好ましくは10~100μmである。含水ゲル重合体(含水ゲル)の平均一次粒子径及び当該含水ゲルの平均粒径は、実施例に記載の方法で測定することができる。
「含水ゲルの有機溶媒の含有率」
分離工程を経て有機溶媒から分離された含水ゲルにおける有機溶媒の含有率は特に制限されない。ただし、乾燥時の負荷や有機溶媒のコストという観点から、有機溶媒の含有率(以下、単に溶媒含有率とも称する)は、当該溶媒も含めた含水ゲル100質量%に対して、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.01~9質量%であり、さらに好ましくは0.01~5質量%であり、特に好ましくは0.01~3質量%であり、最も好ましくは0.01~2.5質量%である。なお、溶媒含有率の値は、実施例に記載の手法により測定できる。
「含水ゲル重合体の固形分率」
有機溶媒から分離された含水ゲルの固形分率は特に制限されない。ただし、後工程の乾燥工程での乾燥コストの観点から、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。また、含水ゲル重合体の固形分率の上限は、吸水性能への悪影響の低減及び生産効率という観点から、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは60質量%以下である。
「ゲル重合率」
得られた含水ゲルのゲル重合率は、得られる含水ゲルの乾燥時の凝集抑制や、得られる吸水性樹脂中の残存モノマー低減の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。重合率の上限値は、100質量%が理想的である。該重合率が70質量%以上であることで、乾燥中に含水ゲル同士が強く凝集し、塊状化することを抑制することができる。ゲル重合率は実施例に記載の方法で測定することができる。
「含水ゲル温度」
上記分離工程において得られる含水ゲルの温度の下限は特に制限はないが、乾燥工程において含水ゲルの凝集が抑制できるとの観点から好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃、さらに好ましくは80℃以上である。ゲル整粒装置投入時の含水ゲル温度の上限は特に制限はないが、一般的に100℃以下である。
[2-5.ゲル整粒工程]
ゲル整粒工程では、上記分離工程で有機溶媒から分離された含水ゲル重合体を、押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置を用いて含水ゲルを整粒する。これにより、整粒された含水ゲル重合体が得られる。ゲル整粒工程は任意の工程である。ゲル整粒工程を有することで、粒子形状を制御しやすくなり、吸水速度が一層向上する。
分離工程において得られた含水ゲルは、必要に応じて、ゲル整粒工程へと導入される。この際、さらに分離工程において得られた含水ゲルに対して解砕処理を施した後に、解砕された含水ゲルをゲル整粒工程に供してもよい。
「ゲル整粒装置」
本明細書において、「ゲル整粒」とは、粉体の湿塊を多孔板の小孔から円柱状に押し出すことにより、湿粉状の原料からほぼ均一な形状及びサイズを有する粒を作製する操作である。つまり、多孔板を用いることにより、前工程の溶媒分離工程で過度に凝集した粗大凝集物の形状になっている含水ゲルは解砕され、小粒径の単粒子状の含水ゲルは適度に凝集される。したがって、本工程によって、比較的粒子径の均一な造粒形状の含水ゲルを得ることができる。なお、整粒後の含水ゲルは単粒子状の含水ゲルを含んでいてもよい。
ゲル整粒工程において使用される「押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置」としては、押出作用部と、多孔板(ダイ又はスクリーン)とを有し、押出作用部が通常は多孔板に向かって内容物を押出し供給する押出し部材を有し、多孔板から材料を押し出すことにより一定サイズの粒を作製可能な装置であれば特に限定されない。
図1は、押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置の分類を模式的に示す図である。押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置は、押出作用部の構造から、スクリュー形式、回転多孔ダイス形式、及び回転ブレード形式に大別される。
スクリュー形式のゲル整粒装置310は、回転駆動されるスクリュー311(押出作用部に相当する)と、小孔312が形成されたダイス313(多孔板に相当する)とを有する。投入された材料(矢印314を参照)は、回転駆動されたスクリュー311によってダイス313に向かって押出し供給され、ダイス313の小孔312から押し出される(矢印315を参照)。スクリュー形式のゲル整粒装置310は、材料が押し出される方向から、横押出し方式と、前押出し方式とがある。横押出し方式の場合、図示例のように、ダイス313は、スクリュー311の回転軸が伸びている方向と平行な方向に配置され、材料は、スクリュー311の回転軸と交差する方向に押し出される。前押出し方式の場合、ダイス313は、スクリュー311の回転軸と直交する方向に配置され、材料は、スクリュー311の回転軸が伸びている方向に押し出される。
スクリュー形式のゲル整粒装置としては、スクリュー型前押出し式整粒機、スクリュー型横押出し式整粒機、スクリュー型前処理兼用押出し式整粒機などが用いられうる。スクリュー型横押出し式整粒機としては、アキラ機工株式会社製のニーダー付一軸押出し整粒機が挙げられる。スクリュー型前押出し式整粒機としては、株式会社ダルトン製のツインドームグランシリーズが挙げられる。スクリュー型前処理兼用押出し式整粒機としては、株式会社ダルトン製のマルチグランが挙げられる。
回転多孔ダイス形式のゲル整粒装置320は、ロール321(押出作用部に相当する)と、小孔322が形成され回転駆動される回転ダイス323(多孔板に相当する)とを有する。ロール321は、回転ダイス323の内側に配置される。回転ダイス323とロール321との間に投入された材料(矢印324を参照)は、ロール321によって回転ダイス323の小孔322から押し出される(矢印325を参照)。
回転多孔ダイス形式のゲル整粒装置としては、ロール型リングダイ式押出し整粒機が用いられうる。ロール型リングダイ式押出し整粒機としては、株式会社ダルトン製のディスクペレッターが挙げられる。
回転ブレード形式のゲル整粒装置330は、回転駆動されるパドル331(押出作用部に相当する)と、小孔332が形成された円筒状ダイス333(多孔板に相当する)とを有する。パドル331は、円筒状ダイス333の内側に配置される。パドル331の上方には、回転駆動される押込み羽根336が配置される。投入された材料(矢印334を参照)は、回転駆動された押込み羽根336及びパドル331によって円筒状ダイス333に向かって押出し供給され、円筒状ダイス333の小孔332から押し出される(矢印335を参照)。
回転ブレード形式のゲル整粒装置としては、ブレード型バスケット式押出し整粒機、ブレード型オシレーティング式押出し整粒機などが用いられうる。ブレード型オシレーティング式押出し整粒機としては、フロイント・ターボ株式会社製の円筒造粒機が挙げられる。
ゲル整粒工程において使用される「押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置」は、好ましくは、スクリュー型前押出し式整粒機又はスクリュー型横押出し式整粒機であり、より好ましくはスクリュー型前押出し式整粒機である。
ここで、「多孔板」とは、粒子を一定のサイズにするための、多数の孔を有する部材であり、ダイ又はスクリーンに対応するものである。多孔板の形状は特に制限されず、平面状、曲面状、球面状(ドーム形状)などが採用されうる。例えばスクリュー型前押出し式押出し整粒機であれば、スクリューの先端部分にドーム形状のダイが配置されている。また、スクリュー型横押出し式押出し整粒機であれば、スクリューの外周部分に曲面状のスクリーンが配置されている。このときの押出し羽根も、球面状(すなわち、そのエッジの輪郭が球面の一部を形成するような形状)とされていることが好ましい。このように、ダイ又はスクリーンを球面状にし、押出し羽根の先端も球状にすることにより、孔径の小さなダイでも押出し整粒を容易に行うことができ生産性がより向上し、さらに強度の強い整粒粒子が任意の粒子径で得られる。なお、この「球面」には、真円や楕円などの円の回転してできる軌跡面、さらには複数の円を組み合わせて回転させて得られる軌跡面、半球面、曲面、双曲面、放物面など平面以外の面が広く含まれる。
さらに、この多孔板(ダイ又はスクリーン)の孔の形は特に限定されず、真円状、楕円状、六角形等の多角形、三角形状等、使用に適した形状に任意に選択することが可能であるが、整粒強度の観点から真円状、楕円状が好ましい。孔径についても特に制限されないが、1.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましく、0.8mm以下であることがさらにより好ましい。かような上限以下であることで、得られる含水ゲル(整粒後の含水ゲル)のサイズが必要以上に増大することが防止され、下流工程における撹拌型乾燥機を用いた乾燥の際に発生する微粉量を低減させることができる。孔径は、好ましくは0.3~1.5mmであり、より好ましくは0.3~0.8mmである。多孔板の孔径が0.3mm以上であれば、押出し操作を実施する際に効率よく押出すことができる。なお、上記孔径については以下のように定義する。まず、孔が真円でない場合は孔の短径と長径の相乗平均値を孔径として採用する。また、多孔板の孔の各孔径が異なる場合は、全ての孔の孔径を算出し、その相加平均値を多孔板の孔の孔径として採用する。さらに多孔板の押出し作用部側からその反対側までの間で多孔板の孔径が変化する(多孔板の厚み方向において孔径が変化する)場合は、その中で孔径が最少となる値を採用する。
多孔板(ダイ又はスクリーン)の厚みについても特に限定されないが、ゲル整粒装置の特性上、孔径が小さい場合には多孔板の厚みが厚すぎると押出し整粒が困難となる場合がある。したがって、多孔板(ダイ又はスクリーン)の厚みは、好ましくは多孔板の孔径の0.1~5倍程度であり、より好ましくは孔径の0.2倍~3倍であり、さらに好ましくは孔径の0.5~2倍である。多孔板(ダイ又はスクリーン)の厚みが孔径の5倍以下であれば、孔部分での抵抗の増大が防止され、押出し整粒をスムーズに実施することができる。一方、多孔板の厚みが孔径の0.1倍以上であれば、整粒強度の低下が防止されうる。
[2-6.乾燥工程]
乾燥工程は、上記分離工程で得られた含水ゲル又は上記ゲル整粒工程で得られた含水ゲル(整粒後の含水ゲル)を乾燥する工程である。これにより、含水ゲルに含まれる水分と、分離装置16において分離しきれなかった有機溶媒とが除去され、所望の固形分率を有する粒子状の乾燥重合体が得られる。
本発明において、乾燥工程における乾燥の手法としては、撹拌型乾燥機を用いた撹拌乾燥が採用される。この撹拌乾燥は、伝導伝熱による乾燥操作の1種であり、間接加熱方式を用いて、好ましくは連続的に、被乾燥物に対して乾燥処理を施すことができる。このため、乾燥効率が高く、得られる吸水性樹脂の物性低下が抑制できるという利点がある。
本乾燥工程で得られる乾燥重合体を、そのまま吸水性樹脂として各用途に供することもできる。また、この製造方法において吸水性樹脂を製造する場合には、乾燥工程で得られる乾燥重合体を後述する表面架橋工程に供することも可能である。この場合、後述する表面架橋工程を経た吸水性樹脂を、便宜上「吸水性樹脂粒子」とも称する。
本工程において使用される撹拌型乾燥機としては、連続式の撹拌型乾燥機がより好ましい。撹拌型乾燥機を用いることで、上記含水ゲルの乾燥効率が高くなり、得られる吸水性樹脂の物性低下が抑制でき、好ましい。
本発明において、上記撹拌型乾燥機の撹拌方式及び形態は特に限定されず、乾燥機内の内容物が、アーム、羽根、パドル等の撹拌翼や回転円筒等の撹拌手段により撹拌される形態であればよい。つまり、上記撹拌型乾燥機として、内容物を収容する容器自体が回転、振動、揺動する容器回転型乾燥機;アーム、羽根、パドル等の撹拌翼を具備した回転軸で内容物を撹拌する機械撹拌型乾燥機;空気等の気体で内容物を浮遊させる浮遊撹拌型乾燥機;重力及び分岐板等で流路を分割する流路分割型乾燥機;高速せん断型乾燥機;衝撃型乾燥機等が挙げられる。これらの中でも、撹拌能力の高い乾燥機が好ましく選択される。また、これらの乾燥機は、連続式であってもバッチ式であってもよい。例えば、一軸又は二軸のディスク型乾燥機、一軸又は二軸のパドル型乾燥機、ロータリードライヤー、ロータリーキルン、チューブドライヤー等が挙げられる。具体的には、ナウターミキサー、ソリッドエアーコンティニュエーター、トーラスディスク、ミクロンサーモプロセッサ(ホソカワミクロン株式会社製);コンダクションフロー、スーパーロータリードライヤー、フラッシュリアクター(株式会社大川原製作所製);カットデスクドライヤー(株式会社栗本鐵工所製);パドルドライヤ(株式会社奈良機械製作所製);レーディゲミキサー(株式会社マツボー製);スチームチューブドライヤー(宇部興産機械株式会社製);プローシエアミキサー(太平洋機工株式会社製);等の攪拌型乾燥機を使用することができる。
また、上述した撹拌型乾燥機は、加熱手段を備えていることが好ましい。この加熱手段は、上記含水ゲルを所望する固形分率の乾燥重合体とするのに必要な熱量を加えることができる形態であればよく特に限定されないが、例えば、高圧蒸気や熱媒油、熱風等の熱媒を通すことができるジャケットや、スチームトレス、電熱線、マイクロ波、電磁誘導等の各種加熱手段から適宜選択すればよい。なお、これらの加熱手段は通常、乾燥機の外側に設置されるが、乾燥機の内側にも設置することができる。
本発明において、上記攪拌型乾燥機の材質は特に限定されないが、ステンレス鋼を使用することが好ましい。また内容物と接触する部分については、鏡面仕上げとされていることが好ましい。該鏡面仕上げは、電解研磨、サンドブラスト等の表面処理によって行うことができる。該鏡面仕上げによって撹拌型乾燥機の内面を下記の表面粗さに調節することで、内容物が装置に付着する度合いが減少し、得られる吸水性樹脂の物性への悪影響が減少する。なお、上記ステンレス鋼としては、SUS304、SUS316、SUS316L等が挙げられる。また、ステンレス鋼以外にも、銅、チタン合金、PTEE、PFA、FEP等のフッ素樹脂等を使用することができる。
本発明において、乾燥工程に使用される上記攪拌型乾燥機の内面は、JIS B 0601-2013で規定される表面粗さ(Rz)が、好ましくは2μm以下、以下順に1μm以下、900nm以下、500nm以下、300nm以下、200nm以下がより好ましく、最も好ましくは170nm以下に制御される。また、該表面粗さ(Rz)の下限として好ましくは0nmであるが、10nm又は20nm程度でもよい。なお、該表面粗さ(Rz)は、表面の凹凸の最大高さ(単位;nm)を意味する。
また、上記の表面粗さ(Rz)の他に、表面粗さ(Ra)もJIS B 0601-2013で規定されるが、その好ましい値も表面粗さ(Rz)と同じとされる。これらの表面粗さは、触針式表面粗さ測定器を用いて測定することができる。
本発明において、乾燥工程に使用される上記撹拌型乾燥装置の数は、1基のみでもよく、2基以上の複数でもよい。仕様の異なる複数の撹拌型乾燥機を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、上記撹拌型乾燥機での乾燥時間は、得られる乾燥重合体又は吸水性樹脂の固形分率を指標として適宜調整されるため、特に限定されないが、好ましくは1分間~120分間、より好ましくは3分間~90分間、さらに好ましくは10分間~90分間、特に好ましくは20分間~80分間、最も好ましくは30分間~60分間である。なお、乾燥重合体又は吸水性樹脂の固形分率は、吸水性能の観点から、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%~98質量%である。なお、乾燥重合体又は吸水性樹脂の固形分率は、試料(吸水性樹脂)を180℃で3時間乾燥させた際の乾燥減量に基づいて算出される値である。
また、上記撹拌型乾燥機での乾燥温度は、乾燥速度の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上、特に好ましくは160℃以上である。乾燥温度の上限は、乾燥重合体の劣化や着色、得られる吸水性樹脂の性能の観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。
「乾燥助剤」
乾燥助剤は、攪拌乾燥時に流動性を保つことを目的として添加されるものであり、乾燥助剤としては界面活性剤や高分子滑材が挙げられる。乾燥助剤として、高分子滑剤と界面活性剤とを併用してもよい。また、分散工程で分散助剤として用いる界面活性剤、高分子添加剤と重複してもよい。
乾燥助剤に用いられる界面活性剤として、具体的には、(1)ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N-アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステルなどのノニオン性界面活性剤、(2)カプリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジアルキルアミノ酢酸ベタイン;ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルヒドロキシスルホベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤、(3)ラウリルアミノジ酢酸モノナトリウム、ラウリルアミノジ酢酸カリウム、ミリスチルアミノジ酢酸ナトリウム等のアルキルアミノジ酢酸モノアルカリ金属などのアニオン性界面活性剤、(4)長鎖アルキルジメチルアミノエチル4級塩などのカチオン性界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
高分子滑剤として、具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。これらの分子量(重量平均分子量)は、好ましくは200~200万、より好ましくは400~100万の範囲で適宜選択される。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
「乾燥重合体の粒度分布」
上記乾燥工程で得られた乾燥重合体の粒度分布としては、粒子径850μm以上の割合(目開き粒子径850μmの篩を通過しなかった粒子の割合)は好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。本実施形態の方法によれば、撹拌型乾燥機を用いた乾燥と組み合わせることにより、粗大粒子の形成が有意に抑制されるために、上記好ましい範囲とすることが可能となる。また、乾燥重合体の粒子径1400μm以上の割合(目開き粒子径1400μmの篩を通過しなかった粒子の割合)は好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
[2-7.表面架橋工程]
上記乾燥工程(及びその後の任意の工程)を経て得られる吸水性樹脂は、表面架橋剤によって表面架橋されることが好ましい。この表面架橋は、吸水性樹脂粒子の表面層(吸水性樹脂粒子の表面から数μmの部分)に架橋密度の高い部分を設ける処理である。表面架橋処理を行うことで各種吸水特性を向上させることができる。なお、本発明においては、公知の表面架橋技術が適宜適用される。なお、本工程で用いられる表面架橋剤は、単量体水溶液調製工程で使用される内部架橋剤と区別するため、公知技術では「後架橋剤」としても示されるものである。
本発明において表面架橋工程は、上記の乾燥工程後であってもよいし、乾燥工程中に行ってもよい。公知の表面架橋工程では、一般的に、含水ゲル架橋重合体又はその乾燥物の架橋重合体に表面架橋剤を混合し、その混合物を加熱して架橋反応を行うが、本発明においては、これらの工程を上記の乾燥工程後に別途設けてもよいし、乾燥工程において表面架橋剤を添加し表面架橋反応と乾燥を同時に行ってもよい。特に、バッチ式の逆相懸濁重合法で吸水性樹脂の製造を行う場合は、重合反応後の分離工程においては共沸脱水を行うことにより溶媒と含水ゲル重合体を分離することができるが、当該分離工程においても表面架橋剤を添加することにより表面架橋した吸水性樹脂を得ることができる。
[2-8.冷却工程]
任意に実施される冷却工程では、乾燥工程において得られた粒子状の乾燥重合体を、公知の冷却手段を用いて冷却することにより、所望の温度まで冷却された粒子状の乾燥重合体を得ることができる。
[2-9.粉砕工程]
粉砕工程では、上記乾燥工程及び必要に応じて行われる表面架橋工程、冷却工程を経て得られた粒子状の乾燥重合体を粉砕する。当該粒子状の乾燥重合体は、単粒子形状の一次粒子が凝集した集合体形状の粒子を含んでいる。本粉砕工程は、このような集合体形状の粒子であって過度に凝集し粒径の比較的大きい粒子を粉砕し、粒子径及び粒度分布の整った吸水性樹脂を得る工程である。粉砕する粒子は上記乾燥工程を経た粒子全てでもよいが、好ましくは分級工程を経て分離された粗粒側の粒子だけを粉砕するのが好ましい。
「粉砕装置」
上記粉砕工程は、2本一対のロールから構成されており、一対のロールのうち少なくとも一方のロールの表面には、ロール回転方向に対して平行に延びる溝(縦溝)が設けられている特定のロール式粉砕装置が用いられる。この特定のロール式粉砕装置に備えられた一対のロール間のクリアランスに粒子状の乾燥重合体を通すことによって、乾燥重合体はロール間で圧縮、せん断又は圧密されて、乾燥重合体が粉砕される。この特定のロール式粉砕装置に備えられた一対のロール間のクリアランスに乾燥重合体を通すことによって、乾燥重合体が粉砕される。なお、このような特定のロール式粉砕装置としては、ロールグラニュレーター(日本グラニュレーター株式会社製)、ロールグラニュレータ(株式会社栗本鐵工所)、GRAN-U-LIZER(MPE社)などが挙げられる。
本発明の粉砕工程で用いられるロール式粉砕装置260を図2に示す。図2に示すように、ロール式粉砕装置260は、乾燥重合体を装置260に供給するための配管261と、当該乾燥重合体を装置260内に供給する投入口262と、供給された乾燥重合体を粉砕する一対のロール263と、を備えている。これらは、この順に上下方向に配置されている。なお、当該「上下方向」は鉛直方向に限らず、斜め方向も含み得る概念である。一対のロール263は、2本のロール263a、263bにより構成されている。なお、ロール式粉砕装置において、ロールは、少なくとも一対(2本)備えられていればよく、例えば、二対(4本)以上のロールが上下方向に並べて備えられていてもよい。例えば、二対のロールが上下方向に並べて配置された場合、乾燥重合体は、上に位置する一対のロール間を通過して粉砕された後、さらに、下に位置する一対のロール間を通過して粉砕される。
ロール263間に投入された乾燥重合体27aは、一対のロール263のロール263aとロール263bとの間を通過し、乾燥重合体の粉砕物である吸水性樹脂27bとされる。なお、図示していないが、ロール式粉砕装置260において、投入口262と一対のロール263との間に、定量的に供給するフィーダを備えていてもよい。
「ロールの構造」
本発明の粉砕工程で用いられるロール式粉砕装置は、一対のロールのうち少なくともひとつのロール表面に溝(凹凸パターン)を有する。溝とは、ロール表面上の凹凸を意味し、本発明においては、溝が縞模様状に並んだものを意味する。溝は、ロール幅方向(ロールの回転軸方向)に複数並んで設けられる。すなわち、ロール式粉砕装置において、一対のロールのうち少なくとも一方のロール表面には、ロール回転方向に対して平行に延びる溝(縦溝)が、ロール幅方向に複数並んで設けられている。よって、ロール表面には、凹凸(凹部及び凸部)がロール回転方向に対して平行に延びて形成されている。これにより、一対のロール間のクリアランスが、ロール幅方向の任意の位置において、ロールの回転により実質的に変化しない。ロール幅方向の任意の位置においてロール間のクリアランスが変化しないため、ロール間を通過する乾燥重合体に適切な力を付与することができ、得られる粉砕物の粒子径が揃い、シャープな粒度分布を有する粉砕物が得られると推定される。なお、ロール間のクリアランスとは、対向する一対のロール間の距離を意味する。
本発明の製造方法において好ましい実施形態としては、溝が、一対のロールの2つのロール表面にそれぞれ設けられる。この場合、2つのロールのロール表面に設けられた対応する凹凸が噛み合うことにより、ロール幅方向のどの位置においてもロール間のクリアランスを一定とすることができ、これにより粉砕される乾燥物に対して一定の力を付与することができると考えられる。よって、特に、球状粒子の凝集物の粉砕において、得られる粉砕物の粒子径がより一層揃いやすく、より一層シャープな粒度分布を有する粉砕物が得られると推定される。一対のロールは同一形状(溝の形状、直径)でも異形状でもよいが、好ましくは同一形状(対称関係を含む)のロールが使用される。
例えば、一実施形態において、ロール式粉砕装置260は、一対のロール263のうち両方のロール表面において、ロール回転方向に対して平行に延びる溝(凹部及び凸部)が設けられている。すなわち、図3(a)に示すように、一対のロール263の両方(ロール263a、263b)は、そのロール表面にロールの回転軸Aのロール回転方向に対して平行に延びる凹部と凸部とを有している。そうして、一対のロールの一方のロール表面に設けられた凸部が、一対のロールの他方のロール表面に設けられた凹部と、回転により噛み合うように構成されている。
また、一実施形態において、図3(b)に示すように、一対のロール263のうち一方(例えば、ロール263a)は、ロール表面にロールの回転軸Aのロール回転方向に対して平行に延びる溝を有し、一対のロールのうち他方(例えば、ロール263b)は、ロール表面に溝がない滑面(平滑面)を有する。
ここで、ロール間のクリアランスについて、図3(a)及び図3(b)に基づいて説明する。図3(a)に示すように、2つのロール263a、263bの表面において溝が設けられている場合、そのクリアランスdは、ロール幅方向の任意の位置において、一定の値dとなっている。また、図3(b)に示すように、一方のロール263aの表面において溝が設けられ、他方のロール263bの表面において溝が設けられていない場合、そのクリアランスdは、ロール幅方向の位置により最大値(dmax)と最小値(dmin)とを有する。図3(a)、図3(b)のいずれの形態においても、ロールに設けられた溝はロール回転方向に対して平行に延びて形成されているため、ロールの回転により実質的に変化しない。
なお、縦溝構造において、ロールの製造上の事情等により、ロールの一部に横溝(ロール幅方向に延びる溝)又はロール幅方向に延びる凸部が形成される場合がある。このような溝又は凸部により、ロールの縦溝の一部に切り欠き部分が生じる。この場合、ロールの縦溝において形成された一部の切り欠き部分の存在により、ロール幅方向の任意の位置において、クリアランスの変化が生じてしまう。本発明では、「ロールの回転により実質的に変化しない」とは、「ロールが1回転するうちの70%以上の長さ範囲で、好ましくは80%以上の長さ範囲で、より好ましくは90%以上の長さ範囲で、さらに好ましくは95%以上の長さ範囲でクリアランスが変化しない」ことを包含する。よって、ロールの縦溝の一部に切り欠き部分が存在する場合であっても、上記規定を満たしている場合は、「ロールの回転により実質的に変化しない」とみなされる。
ここで、図3(a)の形態では、ロール幅方向のどの位置においても、クリアランスdは同じであるのに対して、図3(b)の形態では、ロール幅方向の位置によってクリアランスdが異なる。本発明では、ロール幅方向の位置によってクリアランスdが異なっていたとしても、任意の位置において、そのクリアランスdが、ロールの回転により実質的に変化しなければよい。
なお、本発明において、溝は、ロール回転方向に対して、実質的に平行(0度)に延びた形状で設けられている。実質的に平行とは、ロール回転方向に対し±1°未満で傾斜した溝は、本発明の構成に含まれることを意味する。当該傾斜角は、ロール回転方向に対してプラス方向又はマイナス方向のいずれでもよい。
ロール間のクリアランス最小値dminは、適宜決定することができ、特に限定されないが、好ましくは0を超えて3mm以下である。ロール間のクリアランス最小値dminは、より好ましくは0.05~3mm、さらに好ましくは0.05~2.5mm、さらにより好ましくは0.1~2mm、特に好ましくは0.1~1.5mm、最も好ましくは0.2~1mmである。ロール間のクリアランス最小値dminが上記範囲であるように一対のロールが配置されることにより、粉砕物における不定形粒子の低減効果がさらに発揮できる。なお、クリアランス最小値dminとクリアランス最大値dmaxとが同じである場合(すなわち、図3(a)の場合)、クリアランスdがクリアランス最小値dminとみなされる。粉砕工程で二対以上のロールを用いる場合は、各ロール間で設けられたクリアランス最小値の中で最小の値が上記範囲であればよい。
また、図3(b)のように、ロール幅方向の位置によってクリアランスdが異なる場合、各位置でのクリアランスdを算出し、その最大のクリアランスdmaxと最小のクリアランスdminとの差を「クリアランス差」と称する。クリアランス差は、特に限定されないが、好ましくは0~0.2mm、より好ましくは0~0.1mm、さらに好ましくは0~0.05mmである。
ロールに設けられた溝のピッチ(間隔)は粉砕する粒子のサイズに合わせて適宜決定することができる。粉砕粒子サイズが大きい場合は溝のピッチも大きいものを、小さい場合は溝のピッチも小さいものを選定するのが好ましい。溝のピッチは、特に限定されないが、好ましくは0.1~2mm、より好ましくは0.2~1.5mm、さらに好ましくは0.3~1.2mmの間隔で溝が設けられる。ここで、溝のピッチpとしては、図3(a)に示すように、任意の溝の山部分と、それに隣接する溝の山部分との間隔、又は任意の溝の谷部分と、それに隣接する溝の谷部分との間隔を意味する。例えば、溝の山部分及び谷部分との間に周方向に平行な面(以下、「平坦部分」と称する)が設けられている場合、平坦部分を含め、隣接する溝の山部分と山部分との間隔又は隣接する溝の谷部分と谷部分の間隔を意味する。当該溝のピッチは、一つのロール上で異なっていても良いが、ロール幅全体に亘って一定であることが好ましく、一対のロールの両方に溝が設けられている場合は当該一対のロール全体に亘って一定であることが好ましい。
溝の高さは、適宜決定することができ、特に限定されないが、好ましくは0.1~2mm、より好ましくは0.2~1.5mm、さらに好ましくは0.3~1mmの高さで溝が設けられる。ここで、溝の高さとしては、図3(a)に示すように、任意の溝の山部分の頂点と、その溝の谷部分の底との高低差を意味する。
「溝構造の断面」
ロール表面における溝の形状は、ロール回転方向に対して平行に延びる形状であれば特に制限されず、例えば、溝の断面が、断面V字状、凹凸形状、レ形状、波形状であってもよい。ロール表面に設けられる溝は、ロール回転方向において、ロール全周にわたって連続して設けられていてもよいし、ロール回転方向において断続的に設けられていてもよい。これらのうち、ロール回転方向に対して平行に、ロール全周にわたって連続して設けられた断面V字形状の溝であるのが好ましい。すなわち、好ましい実施形態としては、溝が、ロール回転方向に対して平行に、全周にわたって連続して設けられた断面V字形状の溝である。より好ましくは、ロール回転方向に対して平行に、全周にわたって連続して設けられた断面V字形状の溝が、一対のロールの2つのロール表面にそれぞれ設けられる。この場合、粉砕される乾燥物に対して効果的に粉砕する力を付与することができ、得られる粉砕物の粒子径がより一層揃いやすく、より一層シャープな粒度分布を有する粉砕物が得られる。また、ロール表面には、ロール幅方向において複数の溝が連続して並んで設けられていてもよいし、ロール幅方向において複数の溝が断続的に設けられていてもよい(この場合、ロール表面において、溝部分と平坦部分とがロール幅方向に交互に並んで設けられる)。ロール表面にロール幅方向においても複数の溝が連続して並んで設けられることにより、上記効果がより一層発揮される。さらには、ロール幅方向において(ロールの一方の端から他方の端まで)複数の溝が連続して並んで設けられる、すなわち、平坦部分を含まないことが好ましい。
上述した溝の傾斜角は、特に限定されないが、好ましくは20~70°、より好ましくは30~60°の傾斜角で溝が設けられる。なお、「傾斜角」とは、ロールの回転軸に対する溝の斜面の角度を意味する。なお、ひとつの溝の両斜面の傾斜角は同じであってもよいし、又はひとつの溝の斜面がそれぞれ異なる傾斜角を有していてもよい。本発明において、一対のロールの両方のロール表面に溝が設けられている場合、一対のロールにおいて同一の傾斜角を有する溝と谷とで乾燥重合体を挟み込むように粉砕するのが好ましい。
「ロール径及びロール長」
本発明で用いられるロール式粉砕装置におけるロールの直径(ロール径)は、本発明の効果の観点(大スケールでより発揮される)から、好ましくは60mm以上、より好ましくは100mm以上である。また、ロール径の上限としては特に限定されないが、好ましくは500mm以下、より好ましくは300mm以下である。なお、溝のあるロールのロール径は、山の部分(径が最大になる値)をロール径とする。本発明で用いられるロール式粉砕装置におけるロールの長さ(ロール長)は、本発明の効果の観点(大スケールでより発揮される)から、好ましくは50mm以上、より好ましくは60mm以上、更に好ましくは70mm以上、特に好ましくは100mm以上である。また、ロール長の上限としては特に限定されないが、好ましくは3000mm以下、より好ましくは2000mm以下である。
なお、ロール長は、ロール幅方向の長さである。ロール式粉砕装置におけるロールのロール長を長くすることで処理量が増加し、本発明の効果がより発揮される方向となるが、そのためには乾燥重合体をロールミルに供給する配管の配管径(角型配管の場合は内幅)又はコンベアの幅よりもロール長を長くすることが好ましい。以上の観点から、本発明ではロール長を、乾燥重合体をロールミルに供給する配管の配管径(角型配管の場合は内幅)又はコンベアの幅に対して、好ましくは2~100倍、より好ましくは3~50倍、さらに好ましくは5~20倍とする。すなわち、本発明では、粉砕工程において使用される装置が、上記乾燥重合体を上記ロール式粉砕装置に供給するための配管を含み、当該ロール式粉砕装置のロール長が、当該配管の径の2~100倍であることが好ましい。
「ロール式粉砕装置の段数」
本発明の粉砕工程におけるロール式粉砕装置は、通常、2つのロールを一対とするロール式粉砕装置である。当該一対のロール式粉砕装置のみを有する単段式ロール式粉砕装置、又は、複数の対を有する多段式ロール式粉砕装置として、使用することができる。多段式ロール式粉砕装置とする場合、段数によっては複数系列に分岐させることもできる。また、多段式ロール式粉砕装置を用いる場合、全ての段が同じ直径、回転数でもよく、また各段ごとに異なる直径、回転数であってもよい。
多段式ロール式粉砕装置を用いる場合は、上段から下段にかけて、各段でのクリアランス最小値dminが順次狭まるように選択することが好ましい。また、単段式ロール式粉砕装置でのクリアランス最小値dmin、又は多段式ロール式粉砕装置での最小のクリアランス最小値dminは、吸水性樹脂粒子の粒度に対して多大な影響を及ぼす条件である。
なお、クリアランスの測定は、特に限定されないが、好ましくは光学的なセンサーや隙間ゲージ(JIS B 7524(2008))を用いる方法、より好ましくは隙間ゲージ(JIS B 7524(2008))を用いる方法が採用される。
「ロールの回転数及び周速」
本発明の粉砕工程において用いられるロール式粉砕装置において、一対のロールのうち少なくとも一方が内回りに回転することにより、一対のロール間のクリアランスに乾燥重合体が巻き込まれて、乾燥重合体が粉砕される。本発明において、一対のロールのうち少なくとも一方が内回りに回転することによりロール間のクリアランスに乾燥重合体を巻き込むことができるため、一対のロールのうちの他方は回転していなくてもよい(すなわち、停止状態)。好ましい実施形態としては、一対のロールにおける2つのロールのロール表面に溝が設けられ、一対のロールにおける2つのロールがそれぞれ内回りに回転する。この場合、より効率的に一対のロール間のクリアランスに乾燥重合体を巻き込むことができる。なお、「内回り」とは一対のロール間において、上から下に向かって乾燥重合体が噛み込まれる回転形式をいう。例えば、図3(a)及び図3(b)では、一対のロールにおいて、各ロールは、それぞれ回転軸Aの矢印方向に回転することにより、各ロールが内回りする構成となっている。
当該ロールの回転数は、好ましくは10~10000rpm、より好ましくは50~5000rpm、更に好ましくは100~2000rpmである。また、当該ロールの周速は、好ましくは0.5~200(m/s)、より好ましくは1~150(m/s)、さらに好ましくは5~100(m/s)である。
また、一対のロールミルにおいて、2つのロールの周速(一対のロールの直径が等しい場合は回転数)は等速であっても非等速であってもよいが、本発明の効果を達成する観点から、等速又は等速に近いことが好ましい。周速比では、好ましくは1:1~1:1.5、より好ましくは1:1~1:1.4、特に好ましくは1:1~1:1.25である。
一対のロールが非等速で回転する場合、上記回転数及び周速を適宜設定すればよいが、特に低速ロールの周速としては、好ましくは上記範囲、より好ましくは0.5~30(m/s)、さらに好ましくは0.7~20(m/s)、特に好ましくは1~10(m/s)である。
低速ロールの回転数(周速)を大きくすると処理量が増加するものの、それに伴って高速ロールの回転数(周速)も大きくなる。そして、高速ロールの回転数が過度に大きくなると、微粉が増加する傾向にあり、好ましくない。
「ロールの材質」
本発明で使用されるロール式粉砕装置のロールは、長期運転における耐久性の観点から、遠心チルド鋳鉄であることが好ましく、更にその材質として、鉄(Fe)に炭素(C)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)等を含有した合金であってもよい。
「ロール式粉砕装置の温度」
本発明で使用されるロール式粉砕装置は、付着防止の観点から、加熱(所定温度に制御)されていることが好ましい。例えば、空調が整えられた場所でロール式粉砕装置を使用することにより、ロール式粉砕装置(壁面及びロール表面)の温度を所定温度に制御することができる。ロール式粉砕装置を加熱する場合は、加熱温度(ロール式粉砕装置の壁面及びロール表面の温度)としては、好ましくは30~100℃、より好ましくは35~90℃、更に好ましくは40~80℃である。なお、ロール式粉砕装置を所定温度に制御する方法として、ロール式粉砕装置を外部から加熱する方法、所定温度に加熱された乾燥重合体を連続供給することで乾燥重合体からの伝導伝熱及び摩擦熱や粉砕熱で加熱する方法等が挙げられるが、ロール式粉砕装置(装置全体)又はロール式粉砕装置のロール内部もしくは表面を保温又は加熱する方法が好ましい。この場合、加熱した液体(例えば温水)や気体をロール内部に導入するか、加熱及び/又は乾燥された気体をロール式粉砕装置に吹き込むことが好ましい。当該気体は、窒素等の不活性ガスや空気が好ましい。
「粉砕装置内の温度、相対湿度」
本発明において使用されるロール式粉砕装置を必須に含む粉砕装置は、通常、ケーシングで覆われている。本粉砕工程においては、粉砕工程の安定化の観点から、粉砕装置内の温度(粉砕装置のケーシング内の気体の温度)を好ましくは20~100℃、より好ましくは25~90℃とする。なお、当該粉砕装置内の温度は、上記ロール式粉砕装置を加熱する又は装置内に加熱気体を吹き込むことで調整されることが好ましい。ロール式粉砕装置や気体の過度の加熱は、乾燥重合体を粉砕し難くなる場合があるため、好ましくない。
また、本粉砕工程において粉砕装置内の相対湿度(粉砕装置のケーシング内の気体の相対湿度)は、好ましくは50%RH(relative humidity)以下、より好ましくは45%RH以下、更に好ましくは40%RH以下、特に好ましくは35%RH以下である。上記相対湿度の下限については特に限定されないが、コストパフォーマンスの観点から、好ましくは1%RH以上である。
なお、上記相対湿度は湿度を調製した気体を粉砕装置内に吹き込むことで調整されるが、当該気体の好ましい温度範囲及び相対湿度は、上記ロール式粉砕装置内の温度及び相対湿度の好ましい範囲と同様である。
「粉砕装置内の圧力」
本発明の粉砕工程での粉砕装置内の圧力(粉砕装置のケーシング内の気体部分の気圧)は、常圧、加圧、減圧のいずれでもよいが、好ましくは減圧状態とする。この場合、微減圧であることが好ましく、大気圧に対して好ましくは0.01~30kPa、より好ましくは0.05~10kPa低下させる。
また、更に好ましい形態として、減圧下及び/又は気流下(ロール式粉砕装置の投入口から粉砕物27bが排出される排出口(図示せず)に向かって気相部が流動する条件下)で粉砕する形態が挙げられる。ロール式粉砕装置を減圧下とする方法は、特に制限されず、例えば、投入口に、真空ポンプを接続し、排出口には窒素ガス等のガス供給部を接続して、減圧時にはガス供給部からの供給を停止することにより装置内部を減圧してもよい。また、例えば、ロール式粉砕装置を気流下とする方法は、特に制限されず、投入口に、窒素ガス等のガス供給部を接続し、ガス供給部からの供給を開始することにより、装置内に投入口から排出口に向けた気流を生じさせることができる。この場合、好ましい気流の条件は、上記粉砕装置内の温度、相対湿度、気圧の記載の通りである。
「処理量及び処理時間」
本粉砕工程は、大スケールでの連続粉砕、特に乾燥重合体の処理量が100(kg/hr)以上でかつ24時間以上での連続粉砕に好ましく適用される。上記乾燥重合体の連続粉砕の処理量としては、好ましくは200(kg/hr)以上、より好ましくは500(kg/hr)以上、更に好ましくは1000(kg/hr)以上である。なお、処理量の上限としては、運転のしやすさから20(t/hr)程度である。
また、連続粉砕の処理時間としては、好ましくは24時間以上、より好ましくは5日間以上、更に好ましくは10日間以上、特に好ましくは30日間以上である。また、連続粉砕又は断続粉砕による合計の処理時間(総粉砕時間)としては、好ましくは30日間以上、より好ましくは60日間以上、更に好ましくは90日間以上、特に好ましくは200日間以上、最も好ましくは1年間以上である。
「粉砕工程前の吸水性樹脂」
本発明において、乾燥工程等で得られ、粉砕工程に供される乾燥重合体は、そのまま全量をロール式粉砕装置で粉砕してもよいが、乾燥重合体の形状に応じて、ロール式粉砕装置で粉砕する前に、別の工程、例えば、粗解砕工程に供してもよく、更に分級工程に供してもよい。なお、「粗解砕工程」とは凝集粒子を解す(ほぐす)工程をいう。したがって、乾燥重合体がブロック状等に凝集している場合、ロール式粉砕装置での粉砕を効率よく行うため、予め乾燥重合体を粗解砕しておくこともできる。
本発明において、ロール式粉砕装置に投入される乾燥重合体は、質量平均二次粒子径が、200~3000μmであるのが好ましく、250~2500μmであるのがより好ましく、300~2000μmであるのがさらに好ましい。一次粒子径及び質量平均二次粒子径が上記範囲であることにより、本発明の効果がさらに発揮できる。
本発明において、ロール式粉砕装置に投入される乾燥重合体の質量平均二次粒子径が上記範囲を超えている場合や粗粒が含まれる場合には、ロール式粉砕装置で粉砕する前に分級工程に供され、所定の目開きを有する篩の通過物・非通過物を分離するのが好ましい。この場合、篩の目開き(JIS Z8801-1(2000)で規定)として用途により選定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、850μm、710μm、600μm、350μmである。当該篩の非通過物に対して、ロール式粉砕装置による粉砕を行うことで、粉砕不要な粒子が分離されることで粉砕処理量を低減することができる。
乾燥重合体の粒子径850μm以上の割合(目開き粒子径850μmの篩を通過しなかった粒子の割合)は好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。本実施形態の方法によれば、攪拌型乾燥装置を用いた乾燥とすることにより、乾燥重合体の粒子径850μm以上の割合を上記範囲とすることできる。粗大粒子の形成が有意に抑制されるために、上記好ましい範囲とすることが可能となる。
本発明の粉砕工程に供される乾燥重合体の固形分率は、例えば、好ましくは84~99質量%、より好ましくは90~98.5質量%、さらに好ましくは95~98.5質量%である。すなわち、本発明の乾燥重合体の含水率は、好ましくは1~16質量%、より好ましくは1.2~10質量%、さらに好ましくは1.5~5質量%である。乾燥重合体の固形分率を上記範囲とすることにより、乾燥重合体により形成される凝集体の大きさ及び硬さを、粉砕工程における粉砕に適したものへと調整することができ、得られる粉砕物において、不定形粒子の発生が更に抑制できる。なお、乾燥重合体の固形分率は、試料(乾燥重合体)を180℃で3時間乾燥させた際の乾燥減量に基づいて算出される値である。
本発明において、一対のロールのロール間のクリアランスと、ロール式粉砕装置に供される乾燥重合体の粒子径(質量平均二次粒子径)とが、1:0.3~1:10の関係であるのが好ましい。この場合、乾燥重合体の一次粒子が形成する凝集体を解砕するのに適した圧力が粉砕される際に乾燥重合体に付与され、不定形粒子の発生がさらに抑制できる。一対のロールのロール間のクリアランスと、ロール式粉砕装置に供される乾燥重合体の粒子径(質量平均二次粒子径)とは、より好ましくは1:0.5~1:5であり、さらに好ましくは1:0.9~1:3である。
「吸水性樹脂の粒度」
本発明において、粉砕工程を経て得られる吸水性樹脂の粒度として、質量平均二次粒子径(D50)は100~600μmが好ましく、100~500μmがより好ましく、105~450μmが更に好ましく、110~400μmが特に好ましい。二次粒子径を幅広く調整することが可能となることで、広範囲の用途に対応する吸水性樹脂が得られる。なお、粉砕工程後の吸水性樹脂を「粉砕物」と称する場合もある。
吸水性樹脂の質量平均二次粒子径における粒度分布の対数標準偏差(σζ)が、0.410未満であるのが好ましい。吸水性樹脂の質量平均二次粒子径における粒子径分布の対数標準偏差(σζ)は、0.200~0.409がより好ましく、0.25~0.40がさらに好ましく、0.28~0.39が特に好ましい。本発明によれば、粉砕工程において球状の一次粒子を砕くことなく、過度に凝集した粒径の大きい凝集体を粉砕し、凝集体の凝集サイズを減少させることができる。よって、粒子径分布において、粒子径分布がシャープ(すなわち、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が低い)吸水性樹脂を得ることができる。
なお、質量平均二次粒子径の値としては、米国特許第7638570号のカラム27、28に記載された「(3)Mass-Average Particle Diameter(D50) and Logarithmic Standard Deviation(σζ) of Particle Diameter Distribution」に記載の測定方法に従って測定される値を採用した。また、質量平均二次粒子径における粒度分布の対数標準偏差は、σζにより表される数値である。
吸水性樹脂における粒子径106μm未満の粒子の割合は、吸水性樹脂全体の0~30質量%が好ましく、0~25質量%がより好ましく、0~20質量%が更に好ましく、吸水性樹脂における粒子径850μm以上の粒子の割合は0~8質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~4質量%が更に好ましく、0~3質量%が特に好ましい。なお、これらの粒度は、米国特許出願公開第2006/0204755号やEDANA ERT420.2-02に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、粉砕工程とともに分級工程を含むことができる。上記分級工程では、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801-1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が適宜選択されて用いられる。
[2-10.その他の工程〕
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、上述した各工程以外に、必要に応じて、整粒工程、及び微粉再利用工程を含むことができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等をさらに含んでもよい。
(再湿潤工程)
本工程は、上記表面架橋工程で得られた吸水性樹脂粒子に、多価金属塩、カチオン性ポリマー、キレート剤、無機還元剤、α-ヒドロキシカルボン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加する工程である。
上記の添加剤は、水溶液又は分散液(スラリー)で吸水性樹脂粒子に添加することが好ましい。なお、当該添加剤は上述した表面架橋剤溶液と同時に添加・混合してもよい。
具体的には、国際特許公開第2015/053372号「(2-7)再湿潤工程」記載の方法が本発明にも適用される。
(微粉再利用工程)
「微粉再利用工程」とは、上記各工程で発生した微粉をそのまま、又は微粉を造粒した後にいずれかの工程に供給する工程を意味する。
〔3.吸水性樹脂の用途〕
本発明の吸水性樹脂の用途は、特に限定されないが、好ましくは止水防止材、塗料、接着剤、アンチブロッキング剤、光拡散剤、艶消し剤、化粧板用添加剤、人工大理石用添加剤、トナー用添加剤等の樹脂用添加剤が挙げられる。また、吸水性樹脂としての用途は、特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の吸収体用途が挙げられる。特に、原料由来の臭気、着色等が問題となっていた高濃度紙オムツの吸収体として使用することができる。さらに、この吸水性樹脂は、不定形粒子の発生量が低減されていて粒度分布が制御されているので、上記吸収体の上層部に使用する場合に好適である。その他の吸収性物品の一例としては、例えば、土壌保水剤、育苗用シート、種子コーティング材、結露防止シート、ドリップ吸収材、鮮度保持材、使い捨てカイロ、冷却用バンダナ、保冷剤、医療用廃液固化剤、残土固化材、水損防止廃液ゲル化剤、吸水土のう、災害用簡易トイレ、湿布材、化粧品用増粘剤、電気・電子材料通信ケーブル用止水材、ガスケットパッキング、肥料用徐放剤、各種徐放剤(空間除菌剤、芳香剤等)、ペットシート、ネコ砂、創傷保護用ドレッシング材、結露防止用建築資材、油中水分除去剤等が挙げられる。また本発明の吸水性樹脂は、塗料、接着剤、アンチブロッキング剤、光拡散剤、艶消し剤、化粧板用添加剤、人工大理石用添加剤、トナー用添加剤等の樹脂用添加剤などとして、吸水・膨潤させ樹脂や基材に混合する用途でも使用することができる。
また、上記吸収体の原料として、上記吸水性樹脂とともにパルプ繊維等の吸収性材料を使用することもできる。この場合、吸収体中の吸水性樹脂の含有量(コア濃度)としては、好ましくは30質量%~100質量%、より好ましくは40質量%~100質量%、さらに好ましくは50質量%~100質量%、さらにより好ましくは60質量%~100質量%、特に好ましくは70質量%~100質量%、最も好ましくは75質量%~95質量%である。
上記コア濃度を上記範囲とすることで、吸収体を吸収性物品の上層部に使用した場合に、この吸収性物品を清浄感のある白色状態に保つことができる。さらに、吸収体は尿や血液等の体液等の拡散性に優れるため、効率的な液分配がなされることにより、吸収量の向上が見込める。
〔4.吸水性樹脂の物性〕
「吸水性樹脂の粒子形状」
本発明においては、いわゆる逆相懸濁重合により吸水性樹脂を製造する。得られる吸水性樹脂は、通常球状重合体粒子となる。ここで、「球状」には、真球状以外の形状も含む。詳細には、「球状」とは、粒子の平均長径と平均短径との比(真球度とも称する)が、好ましくは1.0~3.0の粒子を意味する。粒子の平均長径及び平均短径は、顕微鏡で観察された画像に基づいて測定される。本発明において、「球状重合体粒子」は単独粒子で存在することに限定されず、球状重合体粒子の凝集体を形成していてもよい。出来るだけ真球に近い形状が好ましく、真球度が1.0~1.1の粒子が好ましい。
本発明における球状重合体粒子は、その用途・目的に応じて、重合性モノマーを選択することにより設計される。例えば、球状重合体粒子として粒子状の吸水性樹脂を製造する場合、代表的に用いられる重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩である。
粒子形状が球状であること、特に球状の凝集体であることで、吸水性樹脂の吸水速度が不定形状よりも速くなる傾向にある。また、後述の実施例では、不定形粒子の含有量を、「106μmの篩の通過物中における不定形粒子の含有量」として測定している。例えば、106μmの篩の通過物中の不定形(球が割れたもの)粒子含有率が増加すると、106μmの篩の通過物以外の粒子(例えば106μmの篩の非通過物(on 106μm粒子))においても、相対的に球が割れた部分を有する粒子(すなわち、不定形粒子)が多いものと推察される。また、このような不定形粒子の含有量が多い吸水性樹脂粒子は分級せずにそのまま用いる方が生産効率的に好ましい。例えば、106μmの篩の通過物は分級しても廃棄することなく再利用するため、106μmの篩の通過物においても不定形粒子の含有量が少ない方が得られる吸水性樹脂の性能的に有利となると考えられる。
本発明の効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
「含水ゲル重合体の平均粒径」
分離工程で得られた含水ゲルを光学顕微鏡(KH-3000、株式会社ハイロックス製)で撮影し、得られた画像から、集合体又は単粒子の長径を50個測定しその平均値を平均粒径とした。
「含水ゲルの平均一次粒子径」
含水ゲルを光学顕微鏡(KH-3000、株式会社ハイロックス製)で撮影し、得られた画像から、一次粒子の長径を測定する。一次粒子50粒についてこの測定を行い、その算術平均値を当該含水ゲルの平均一次粒子径とした。
「含水ゲルの有機溶媒の溶媒含有率」
有機溶媒と分離された含水ゲルについて、含水ゲルの粒子間に存在する疎水性有機溶媒量を表す指標であり、吸水性樹脂の重合時に使用され、排出された含水ゲルのゲル粒子間に存在する有機溶媒の量に基づいて、以下の要領で算出した。
具体的には、有機溶媒と分離された含水ゲルを酢酸エチルに浸漬させることで、ゲル粒子間に存在する有機溶媒を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル中の有機溶媒濃度を、ガスクロマトグラフを用いて測定した。該酢酸エチル中の有機溶媒濃度をs(g/L)としたときに、下記(式1)にしたがって、溶媒含有率R(質量%)を求めた。
R=100×s×A/M・・・(式1)
ただし、(式1)中、Mは含水ゲルの質量(g)、Aは抽出に用いた酢酸エチルの容量(L)を意味する。
「ゲル重合率」
イオン交換水1000gに含水ゲル1.00gを投入し、300rpmで2時間攪拌した後に、ろ過することにより、不溶分を除去した。上記操作で得られたところ液中に抽出された単量体の量を、液体クロマトグラフを用いて測定した。該単量体の量を残存モノマー量m(g)としたときに、下記(式3)にしたがって、重合率C(質量%)を求めた。C=100×{1-m/(α×M/100)}・・・(式3)
ただし、(式3)中、Cは含水ゲルの重合率(質量%)、Mは含水ゲルの質量(g)、αは含水ゲルの固形分率(質量%)を意味する。
[製造例1]
国際公開第2020/067310号の図1に示す製造プロセスに従って、分離装置16から排出された含水重合体(1)を得た。ここで、分散装置12としては国際公開第2020/067310号の図8に示し、実施例1で用いた二重円筒型の高速回転せん断型攪拌機(分散装置12G)を使用した。
重合反応の準備段階として、有機溶媒であるn-ヘプタンを、上記分散装置12、反応装置14、上記分離装置16及びこれらを接続する配管(接合部を含む)内に投入した。
続いて、送液ポンプ18を稼働させて、流量300mL/分で有機溶媒の循環を開始した。また、熱交換器20を稼働させて、設定温度(反応装置において単量体水溶液(1)が投入される領域に存在する有機溶媒の温度)が90℃となるように、上記循環する有機溶媒を加熱した。さらに、分散助剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(商品名:ハイワックス(登録商標)1105A/三井化学株式会社)を、上記有機溶媒100質量%に対して0.007質量%の量で添加した。
続いて、アクリル酸、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液及びイオン交換水を混合し、さらに、内部架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレート(平均重合度:9)及びキレート剤であるジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウムを配合することで、単量体水溶液(1)を作製した。また、別途、重合開始剤である過硫酸ナトリウム及びイオン交換水を混合することで、6質量%の過硫酸ナトリウム水溶液(1)を作製した。
続いて、上記操作で得られた単量体水溶液(1)と過硫酸ナトリウム水溶液(1)とを混合装置に供給して混合することで、単量体水溶液(1)を作製した。該単量体水溶液(1)のモノマー濃度は43質量%であり、中和率は75モル%であった。また、ポリエチレングリコールジアクリレートの量は単量体(アクリル酸)100モル%に対して0.010モル%、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウムの量は単量体(アクリル酸)に対して200ppm、過硫酸ナトリウムの量は単量体(アクリル酸)に対して0.1g/モルであった。
分散装置12C(二重円筒型の高速回転せん断型撹拌機)のローターを、回転数が6000rpmとなるように回転させた。次に、単量体水溶液(1)を、流量40mL/分(47.2g/分)で、分散装置の配管に送液した。供給された上記単量体水溶液(1)は、分散装置12Cによって上記有機溶媒中で液滴状に分散した。
次いで、上記のようにして得られた分散液を、反応装置14に供給した。上記単量体水溶液(1)からなる液滴は、上記分散媒である有機溶媒が満たされた反応装置内を有機溶媒の循環方向に移動しながら重合し、反応装置の排出口付近において、微小な球形ゲルの含水ゲル(1)を確認した。上記一連の操作で得られた含水ゲル(1)は、上記有機溶媒とともに連続的に反応装置14から配管40を介して分離装置16に供給し、該分離装置16において、含水ゲル(1)と有機溶媒とを分離した。分離装置16において含水ゲル(1)は微小な球形が凝集したものであり、その凝集物の大きさは5~10mmであり、平均一次粒子径は45~55μmであり、かつ含水ゲル(1)の排出後の固形分は44質量%であった。有機溶媒含有率は1.5質量%であり、ゲル重合率は98.9%であった。
ゲル整粒装置(ドームグラン DG-L1、ドームダイの孔径:0.5mm、押出作用部との隙間:1.2mm、株式会社ダルトン製)に、予め乾燥助剤として3.5質量%のラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液(含水ゲル(1)に対して700ppm)を添加混合した含水ゲル(1)(ゲル温度:90℃)を投入し、ゲル整粒装置から排出させることで整粒された含水ゲル(1)を得た。
続いて、上記で得られた整粒された含水ゲル(1)を加熱菅付き回転乾燥機へ供給し、前記乾燥機中、回転数を30rpm、ジャケット温度200℃にて50分間乾燥して乾燥物(1)を得た。乾燥物(1)に対して、目開き粒子径850μmの篩を用いて分級した。この分級の際に目開き粒子径850μmの篩を通過しなかった粒子(非通過物)の割合(乾燥物の850μm on量)は25.5質量%であった。
[実施例1]
上記製造例1で得た乾燥物(1)を、粉砕装置ロールグラニュレーター(日本グラニュレーター株式会社製)(ロールサイズ:直径115mm×長さ100mm)を使用して、以下の粉砕条件で粉砕し、吸水性樹脂(1)を得た。吸水性樹脂(1)の質量平均二次粒子径は320μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.406であった。
得られた吸水性樹脂(1)に対して、目開き粒子径850μm、500μm、300μm、212μm、150μm及び106μmの篩を用いて分級を行った。この分級の際に目開き粒子径850μmの篩を通過しなかった粒子(非通過物)の割合(吸水性樹脂の850μm on量)は0質量%;目開き粒子径850μmの篩を通過し、目開き粒子径500μmの篩を通過しなかった粒子の割合(吸水性樹脂の850μm pass/500μm on量)は6質量%;目開き粒子径500μmの篩を通過し、目開き粒子径300μmの篩を通過しなかった粒子の割合(吸水性樹脂の500μm pass/300μm on量)は52質量%;目開き粒子径300μmの篩を通過し、目開き粒子径212μmの篩を通過しなかった粒子の割合(乾燥物の300μm pass/212μm on量)は22質量%;目開き粒子径212μmの篩を通過し、目開き粒子径150μmの篩を通過しなかった粒子の割合(乾燥物の212μm pass/150μm on量)は10質量%;目開き粒子径150μmの篩を通過し、目開き粒子径106μmの篩を通過しなかった粒子の割合(乾燥物の150μm pass/106μm on量)は5質量%;目開き粒子径106μmの篩を通過した粒子の割合(乾燥物の106μm pass量)は5質量%;であった。この分級処理において、各篩により分級された粒子の含有量を表1に示すが、表1では、例えば、「500μm pass/300μm on」を「500 pass/300 on」と記載する。また、不定形粒子割合は14%であった。
[粉砕条件]
上記粉砕装置において、一対のロールを一段目に設置し、一段粉砕とした。なお、一対のロールのロール表面は、どちらも、ロール回転方向に対して平行方向に断面V字形状の溝が設けられているものを用いた(クリアランス差:0)。溝は、ロール表面の全周にわたって、かつ、複数の溝がロールの一方の端から他方の端まで連続して並んで設けられている。一対のロールのロールピッチ、クリアランスは、どちらも同じとした。
・ロール回転数:565/462rpm(内回り)
・溝の高さ(溝の傾斜角):1.0mm(45°)
・ロールピッチ:2.0mm
・クリアランス:1mm。
[実施例2]
実施例1において一対のロールのロールピッチを1.2mm、クリアランスを0.6mmに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂(2)を得た。吸水性樹脂(2)の質量平均二次粒子径は312μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.381であった。得られた吸水性樹脂(2)に対して、実施例1と同様に分級を行い、分級された粒子の含有量を表1に示す。また、不定形粒子割合は9%であった。
[実施例3]
実施例1において一対のロールのロールピッチを0.6mm、クリアランスを0.3mmに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂(3)を得た。吸水性樹脂の(3)質量平均二次粒子径は217μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.373であった。得られた吸水性樹脂に対して、実施例1と同様に分級を行い、分級された粒子の含有量を表1に示す。また、不定形粒子割合は16%であった。
[実施例4]
実施例1において一対のロールのロールピッチを0.3mm、クリアランスを0.15mmに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂(4)を得た。吸水性樹脂(4)の質量平均二次粒子径は132μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.348であった。得られた吸水性樹脂(4)に対して、実施例1と同様に分級を行った。この分級処理において、各篩により分級された粒子の含有量を表1に示す。また、不定形粒子割合は23%であった。
[製造例2]
製造例1において乾燥機の回転数を45rpmで回転させた以外は製造例1と同様の方法で、整粒された含水ゲル(2)及び乾燥物(2)を得た。乾燥物(2)に対して、目開き粒子径850μmの篩を用いて分級した。この分級の際に目開き粒子径850μmの篩を通過しなかった粒子(非通過物)の割合(乾燥物の850μm on量)は9.1質量%であった。
[実施例5]
上記製造例2で得た乾燥物(2)を、篩を用いて分級し、850μmの篩を通過しなかった粒子(乾燥物(2)の850μm onの粒子)のみを実施例1と同様の粉砕条件で粉砕した。乾燥物(2)の850μm onの粒子の粉砕物と、乾燥物(2)の850μm passの粒子を分級前と同等の重量比になる様に再度混合し、吸水性樹脂(5)を得た。吸水性樹脂(5)の質量平均二次粒子径は366μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.404であった。この粉体に対して、実施例1と同様に分級を行った。この分級処理において、各篩により分級された粒子の含有量を表1に示す。また、不定形粒子割合は8%であった。
[製造例3]
製造例1において、分散装置12(二重円筒型の高速回転せん断型撹拌機)のローターを、回転数が7200rpmとなるように回転させた以外は製造例1と同様の方法で、整粒された含水ゲル(3)及び乾燥物(3)を得た。含水ゲル(3)の排出後の固形分は42~48質量%で、平均一次粒子径が30μmであった。また、有機溶媒含有率は1.9質量%であり、ゲル重合率は99.2%であった。乾燥物(3)に対して、目開き粒子径850μmの篩を用いて分級した。この分級の際に目開き粒子径850μmの篩を通過しなかった粒子(非通過物)の割合(乾燥物(3)の850μm on量)は36.4質量%であった。
[実施例6]
上記製造例3で得た乾燥物(3)を、粉砕装置260を使用して、以下の粉砕条件で粉砕し、吸水性樹脂(6)を得た。吸水性樹脂(6)の質量平均二次粒子径は130μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.359であった。得られた吸水性樹脂(6)に対して、実施例1と同様に分級を行った。この分級処理において、各篩により分級された粒子の含有量を表1に示す。また、不定形粒子割合は21質量%であった。
[粉砕条件]
上記粉砕装置において、一対のロールを一段目に設置し、一段粉砕とした。なお、一対のロールのロール表面は、どちらも、ロール回転方向に対して平行に断面V字形状の溝が設けられているものを用いた(クリアランス差:0)。ロール表面において、1つの溝が全周にわたって連続して設けられ、かつ、複数の溝がロールの一方の端から他方の端まで連続して並んで設けられている。一対のロールのロールピッチ、クリアランスは、どちらも同じとした。
・ロール回転数:565/462rpm(内回り)
・溝の高さ(傾斜角):0.15mm(45°)
・ロールピッチ:0.3mm
・クリアランス:0.15mm。
[製造例4]
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2000mlの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン800gを取り、分散剤としてショ糖脂肪酸エステル(HLB=6)3.0gを加え溶解させ窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。
別に、フラスコ中で、アクリル酸ナトリウム141g、アクリル酸36g、及びポリエチレングルコールジアクリレート(n=9)0.522g、イオン交換水413gよりなる単量体水溶液を調整し、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する溶存酸素を追い出した。次いで、このフラスコ内の単量体水溶液に過硫酸ナトリウムの10%水溶液1.0gを加えた後、全量を上記セパラブルフラスコに加えて、230rpmで撹拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させ、2時間保持した後、重合を止め吸引ろ過により濾別し、残渣を一晩風乾させることで含水ゲル(4)を得た。含水ゲル(4)の平均一次粒子径は58μmであり、固形分は36.3質量%であった。次いで、ゲル整粒装置(ドームグラン DG-L1、ドームダイの孔径:0.8mm、押出作用部との隙間:1.2mm、株式会社ダルトン製)に、予め乾燥助剤として3.5質量%のポリエチレングリコール20000水溶液(含水ゲル(2)の固形分に対して0.20質量%)を添加混合した含水ゲル(4)(ゲル温度:90℃)を投入し、ゲル整粒装置から排出させることで整粒された含水ゲル(4)を得た。
続いて、上記で得られた整粒された含水ゲル(4)を加熱菅付き回転乾燥機へ供給し、前記乾燥機中、回転数を30rpm、ジャケット温度200℃にて50分間乾燥して乾燥物(4)を得た。乾燥物(4)に対して、目開き粒子径850μmの篩を用いて分級した。この分級の際に目開き粒子径850μmの篩を通過しなかった粒子(非通過物)の割合(乾燥物の850μm on量)は35.5質量%であった。
[実施例7]
製造例4で得られた乾燥物(4)に対して、実施例1において一対のロールのロールピッチを0.6mm、クリアランスを0.3mmに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂(7)を得た。吸水性樹脂(7)の質量平均二次粒子径は221μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.349であった。得られた吸水性樹脂(7)に対して、実施例1と同様に分級を行った。この分級処理において、各篩により分級された粒子の含有量を表1に示す。また、不定形粒子割合は8%であった。
[比較例1]
上記製造例1で得られた乾燥物(1)を、粉砕装置ロールミル(WML型ロール粉砕機/井ノ口技研製)を用いて以下の粉砕条件で粉砕し、比較吸水性樹脂(1)を得た。比較吸水性樹脂(1)の質量平均二次粒子径は339μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.447であった。得られた比較吸水性樹脂(1)に対して、実施例1と同様に分級を行った。この分級処理において、各篩により分級された粒子の含有量を表1に示す。また、不定形粒子割合は23%であった。
[粉砕条件]
上記粉砕装置において、一対のロールを一段目に設置し、一段粉砕とした。なお、一対のロールのロール表面は、どちらも、ロール回転方向に対してほぼ垂直(若干の傾斜あり)方向に断面V字形状の溝が設けられているものを用いた。ロール表面において、1つの溝がロールの一方の端から他方の端まで連続して(すなわち、ロール幅方向において連続して)設けられ、かつ、複数の溝が全周にわたって連続して並んで設けられている。一対のロールのロール溝(溝の歯形)は、どちらも同じとした。なお、ロールギャップとは、2つのロール間の距離を意味する。
・ロール回転数:480/200rpm
・ロールピッチ:1.15mm
・ロールギャップ:1.0mm。
[比較例2]
比較例1において、ロールギャップを0.4mmに変更した以外は比較例1と同様の操作を行い、比較吸水性樹脂(2)を得た。比較吸水性樹脂(2)の質量平均二次粒子径は278μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.415であった。得られた比較吸水性樹脂(2)に対して、実施例1と同様に分級を行った。この分級処理において、各篩により分級された粒子の含有量を表1に示す。また、不定形粒子割合は23%であった。
[比較例3]
比較例1において、ロールギャップを0.1mmに変更した以外は比較例1と同様の操作を行い、比較吸水性樹脂(3)を得た。比較吸水性樹脂(3)の質量平均二次粒子径は250μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.451であった。得られた比較吸水性樹脂(3)に対して、実施例1と同様に分級を行った。この分級処理において、各篩により分級された粒子の含有量を表1に示す。また、不定形粒子割合は23%であった。
[比較例4]
上記製造例1で得られた乾燥物(1)を、卓上粉砕機を使用して粉砕し、比較吸水性樹脂(4)を得た。比較吸水性樹脂(4)の質量平均二次粒子径は175μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.507であった。得られた比較吸水性樹脂(4)に対して、実施例1と同様に分級を行った。この分級処理において、各篩により分級された粒子の含有量を表1に示す。また、不定形粒子割合は51%であった。
[吸水性樹脂(粉砕物)のSEM観察]
実施例1と比較例4とにおいて、得られた吸水性樹脂に対してSEM(走査電子顕微鏡)による観察を行った。得られたSEM画像を図4、図5に示す。図4は、実施例1で得られた吸水性樹脂のSEM画像(100倍)であり、図5は、比較例4で得られた吸水性樹脂のSEM画像(100倍)である。
不定形粒子割合は、実施例1~7及び比較例1~4で得られた106μmを通過した各粉砕物に対して、上記と同様にして、SEM観察を行い、撮影されたSEM画像(100倍)に基づき、任意に選択された100個の粒子に対して、不定形粒子と判断される粒子の個数を計測し、不定形粒子の個数の割合(%)を算出した。なお、不定形粒子とは、球状の一次粒子又は凝集体を構成する球状の一次粒子球について、その一部が破断した形状を有する粒子を意味し、具体的には、半球状粒子などの球が割れた(破断した)ときに出来る形状と観察された粒子を、さらに前記半球状粒子が割れた形状を有すると観察される粒子を不定形粒子とみなす。
Figure 2023064963000003
表1に示す結果から、実施例1~7の製造方法によれば、重合体の乾燥物を粉砕した吸水性樹脂における不定形粒子割合を低減することがわかる。また、実施例1~7の製造方法により得られた吸水性樹脂は、比較例1~4の製造方法により得られた吸水性樹脂に比べて、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が小さく、シャープな粒度分布を有することがわかる。
また、図4に示すように、実施例1の吸水性樹脂では、粒子の球形が維持されており、図5に示される比較例4の吸水性樹脂に比べて、不定形粒子が顕著に少ないことがわかる。
以上のように、重合体の乾燥物を特定の粉砕装置を用いて粉砕することにより、乾燥物に対して適度な圧力をかけることができ、これにより乾燥物の粒子形状を破壊することなく、粒子の二次凝集を解砕することができ、結果として吸水性樹脂の不定形粒子の発生を抑制できたものと考えられる。
260 ロール式粉砕装置、
261 配管、
262 投入口、
263、263a、263b ロール、
27a 乾燥重合体、
27b 吸水性樹脂(乾燥重合体の粉砕物)、
310、320、330 ゲル整粒装置、
311 スクリュー、
312、322、332 小孔、
313 ダイス、
321 ロール、
323 回転ダイス、
331 パドル、
333 円筒状ダイス、
336 押込み羽根。

Claims (7)

  1. 単量体を逆相懸濁重合して含水ゲル重合体を得る工程と、
    前記含水ゲル重合体を乾燥して乾燥重合体を得る工程と、
    前記乾燥重合体を粉砕装置により粉砕して吸水性樹脂を得る工程と、
    を含む吸水性樹脂の製造方法であって、
    前記粉砕装置が、少なくとも一対のロールを有するロール式粉砕装置であり、
    前記一対のロールにおいて、少なくとも一方のロールの表面には、ロール回転方向に対して平行に延びる溝が設けられている、吸水性樹脂の製造方法。
  2. 前記吸水性樹脂の質量平均二次粒子径が、100~500μmである、請求項1に記載の吸水性樹脂の製造方法。
  3. 前記吸水性樹脂の前記質量平均二次粒子径における粒度分布の対数標準偏差(σζ)が、0.410未満である、請求項2に記載の吸水性樹脂の製造方法。
  4. 前記一対のロール間のクリアランス最小値が、0を超えて3mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
  5. 前記溝が、前記一対のロールの2つのロールの表面にそれぞれ設けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
  6. 前記溝が、ロール全周にわたって連続して設けられた断面V字形状の溝である、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
  7. 前記溝のピッチが、0.2~1.5mmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の吸水性樹脂の製造方法。
JP2021175442A 2021-10-27 2021-10-27 吸水性樹脂の製造方法及び吸水性樹脂 Pending JP2023064963A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021175442A JP2023064963A (ja) 2021-10-27 2021-10-27 吸水性樹脂の製造方法及び吸水性樹脂

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021175442A JP2023064963A (ja) 2021-10-27 2021-10-27 吸水性樹脂の製造方法及び吸水性樹脂

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023064963A true JP2023064963A (ja) 2023-05-12

Family

ID=86281681

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021175442A Pending JP2023064963A (ja) 2021-10-27 2021-10-27 吸水性樹脂の製造方法及び吸水性樹脂

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023064963A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0497623B1 (en) Method for production of particulate hydrated gel polymer and absorbent resin
JP4564284B2 (ja) 吸水材の製造方法
JP6157853B2 (ja) ポリアクリル酸系吸水性樹脂及びその製造方法
WO2016088848A1 (ja) 吸水性樹脂の製造方法
JP5883948B2 (ja) ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法
JPH11292919A (ja) 吸水性樹脂の製造方法
WO1997024394A1 (en) Water absorbent and process and equipment for the production thereof
JP5132927B2 (ja) 吸水性樹脂の製造方法
JP7174769B2 (ja) 吸水性樹脂の製造方法
CN107075030B (zh) 制备吸水性聚合物颗粒的方法
JP4084648B2 (ja) 吸水性樹脂の製造方法
EP3652237B1 (en) Process for producing superabsorbent polymer particles
JP6362284B2 (ja) 耐塩性に優れた吸水性樹脂粒子
JP2022132184A (ja) 吸水性樹脂の製造方法および吸水性樹脂
JP2023064963A (ja) 吸水性樹脂の製造方法及び吸水性樹脂
JP2022132183A (ja) 吸水性樹脂の製造方法
JP7078778B1 (ja) ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂、及び吸収体
WO2022239628A1 (ja) ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂、及び吸収体
JP2847249B2 (ja) 顆粒状水溶性ポリマーの製造方法
WO2022239723A1 (ja) ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂、及び吸収体
JP2022176054A (ja) ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂、及び吸収体
JP2022175088A (ja) ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂、及び吸収体
JP2022175091A (ja) ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂、及び吸収体
JP2023084518A (ja) 吸収性物品
JPH04220407A (ja) 高吸水性ポリマーの連続製造方法