JP2023060973A - 速度変換機 - Google Patents

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博幸 西澤
Hiroyuki Nishizawa
祥宏 水野
Sachihiro Mizuno
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Abstract

【課題】速度変換機の騒音・振動を低減し、効率を高くする。【解決手段】速度変換機である減速機16は、入力軸22と出力軸26の間に並列に設けられた同型の遊星ギヤ気候28および遊星ローラ機構30と、入力軸22の回転速度が所定回転速度以上のときに、入力軸22と遊星ギヤ機構28を切り離す遠心クラッチ48とを含む。遊星ギヤ気候28および遊星ローラ機構30は、入力軸22と出力軸26の間で速度変換して動力伝達を行う。遊星ローラ機構28の無負荷状態における入力軸22に対する出力軸26の速度比は、遊星ギヤ機構の速度比と等しい。【選択図】図1

Description

本発明は、速度変換機、特に並列に配置された遊星ギヤ機構と遊星ローラ機構を備えた速度変換機に関する。
小形化や高価な希土類磁石の使用量削減等の目的で電動機と減速機を組み合わせて電動機を高回転化することが行われている。小形化等によって出力トルクが減じても、減速機によってトルクを増幅することができる。このような減速機には、一般的にギヤ式の減速機が用いられており、特に、電動機の出力軸と減速機の出力軸を同軸に配置することができるなどの利点から遊星ギヤ機構が採用されることがある。ギヤ式減速機においては、電動機のより一層の高回転化に伴って騒音・振動の問題が顕著となる。遊星ギヤ機構の各ギヤをローラに置き換え、摩擦により動力を伝達する遊星ローラ機構を採用することにより、騒音・振動の問題を解消または低減することができる。しかし、ローラ同士を強い力で接触させる必要があり、ローラが弾性変形する際の損失が大きくなる。減速機と組み合せられた電動機を発電機として動作させるときには、この減速機は、入力を増速して電動機に伝える増速機として機能する。以下、減速機と増速機を包括して速度変換機と記す。
下記特許文献1には、入力軸(30)と出力軸(40)の間に並列に配置された遊星ギヤ機構(遊星歯車機構PG)と遊星ローラ機構(PR)を含む減速機(TR)が開示されている。遊星ギヤ機構(PG)の入力要素と出力要素の速度比は、この遊星ギヤ機構が伝達するトルクが変化しても一定である。一方、遊星ローラ機構(PR)では、入力要素に対する出力要素の遅れである滑りに応じて伝達トルクが変化する。滑りが大きいとき大きなトルクが伝達され、滑りが小さいとき伝達トルクは小さくなる。この減速機(TR)において、遊星ギヤ機構(PG)の各要素と、対応する遊星ローラ機構(PR)の各要素の回転速度の関係は一定であり、遊星ローラ機構(PR)の滑りは一定となり、遊星ローラ機構(PR)の伝達トルクも一定となる(段落0064参照)。
遊星ローラ機構(PR)の減速比が遊星ギヤ機構(PG)の減速比より小さく設定された場合、低トルクの領域では、遊星ローラ機構(PR)がトルク伝達を担い、高トルクの領域では、遊星ローラ機構(PR)に加え遊星ギヤ機構(PG)もトルク伝達を分担する。電動機は、回転速度が速いときトルクは低く、遊星ローラ機構(PR)がトルクを伝達するため、騒音・振動の問題に対し有利となる。一方で、出力軸(40)の出力トルクが、一定である遊星ローラ機構(PR)の伝達トルクよりも小さい場合、伝達トルクの出力トルクを超えた分が遊星ギヤ機構(PG)を介して入力軸(30)に戻る内部循環が生じ、摩擦損失等の増加を招いて効率が低下する(段落0074参照)。
なお、( )内の符号および部材名は、下記特許文献1で用いられている符号であり、本願の実施形態の説明で用いられる符号および部材名とは関連しない。
特開2002-213566号公報
電動機等の原動機を、更に小形化、低価格化するために、騒音・振動が小さく、効率の高い速度変換機が求められている。
本発明に係る速度変換機は、第1軸と第2軸の間に設けられ、第1軸と第2軸の間で速度変換して動力伝達を行う、並列に設けられた同型の遊星ギヤ機構および遊星ローラ機構と、第1軸の回転速度が所定回転速度以上のときに、第1軸または第2軸と遊星ギヤ機構とを切り離すクラッチ機構とを含む。遊星ローラ機構の無負荷状態における第1軸に対する第2軸の速度比は、遊星ギヤ機構の速度比と等しい。
高回転時には、遊星ギヤ機構が切り離されて遊星ローラ機構によって動力が伝達されるため、ギヤに起因する振動・騒音の発生を抑制することができる。また、低回転時には、遊星ギヤ機構と遊星ローラ機構の両者が第1軸および第2軸に接続された状態であっても、遊星ギヤ機構と遊星ローラ機構は同速度で回転し、互いの速度比が等しいことから、遊星ローラ機構に滑りが生ぜず、遊星ローラ機構はトルク伝達を担わない。このため、遊星ギヤ機構と遊星ローラ機構の間で動力が循環することがなく、循環による損失増加が抑制される。
クラッチ機構として、遠心クラッチを採用することができる。遠心クラッチは、遠心クラッチを設けた軸の回転速度が所定回転速度以上となったときに、この軸の回転による遠心力によって、軸と遊星ギヤ機構を切り離すよう動作する。
また、クラッチ機構として、遊星ギヤ機構と遊星ローラ機構のいずれか一方を選択的に第1軸または第2軸に接続する切換式のクラッチ機構を採用することができる。
さらに、クラッチ機構は、第1軸または第2軸と遊星ギヤ機構を切り離した状態のとき、切り離された第1軸または第2軸と遊星ギヤ機構の間に滑りが生じる程度の摩擦力をもって接触するものとすることができる。切り離された状態でもギヤに若干のトルクが伝えられることにより、ギヤがかみ合う相手側のギヤのバックラッシュ内で振動することで生じる歯打ち音の発生を抑制することができる。
遊星ギヤ機構は、サンギヤと、サンギヤの周囲を囲むように同軸配置されたリングギヤと、サンギヤとリングギヤにかみ合うプラネタリピニオンを回転可能に支持し、かつサンギヤおよびリングギヤと同軸配置されたギヤキャリヤと、を有するものとできる。また、遊星ローラ機構は、サンローラと、サンローラの周囲を囲むように同軸配置されたリングローラと、サンローラとリングローラに接触するプラネタリローラを回転可能に支持し、かつサンローラおよびリングローラと同軸配置されたローラキャリヤと、を有するものとできる。
高回転時において、遊星ギヤ機構を動力伝達経路から切り離し、遊星ローラ機構によって動力伝達を行うことで遊星ギヤ機構に起因する騒音・振動を抑制することができる。また、低回転時においては、遊星ギヤ機構と遊星ローラ機構の速度比を等しくしたことで遊星ローラ機構が動力伝達を担わなくなり、遊星ギヤ機構と遊星ローラ機構の間の動力循環による損失を抑えることができる。
本実施形態の減速機を含む駆動装置を示す模式図である。 遠心クラッチの構成を示す模式図である。 電動機の出力特性と減速機の動力伝達を担う機構を示す図である。 切換クラッチの構成を示す模式図である。
以下、本発明の実施野形態を図面に従って説明する。図1は、電動車両の駆動装置10の構成を模式的に示す図である。駆動装置10は、電動機12と、電動機12の出力を駆動輪(不図示)に伝達する伝動装置14を含む。伝動装置14は、電動機12の出力を減速する減速機16と、減速機16の出力をさらに減速し、駆動軸18を介して左右の駆動輪に分配する終減速機20を含む。
減速機16は、電動機12のロータ軸と一体の、または一体に回転する入力軸22と、終減速機20の減速ギヤ対の駆動側ギヤである終減速駆動ギヤ24と一体の、または一体に回転する出力軸26を含む。入力軸22と出力軸26は同軸に配置されており、入力軸22および出力軸26の中心軸線が延びる方向を以下「軸線方向」と記す。この減速機16においては、入力軸22上に軸受を介して出力軸26が支持されている。減速機16は、さらに入力軸22と出力軸26の間に並列に設けられた遊星ギヤ機構28と遊星ローラ機構30を含む。遊星ギヤ機構28と遊星ローラ機構30が並列に設けられているので、これらの一方のみにより入力軸22に入力した動力を出力軸26に出力することができる。
終減速機20は、前述の終減速駆動ギヤ24と対をなし、これとかみ合う終減速被駆動ギヤ32を含む。終減速被駆動ギヤ32は差動装置34のデフケース36に結合され,これらは一体となって回転する。デフケース36内には、差動ギヤセット38が配置される。差動装置34の構成およびその動作は周知であり説明を省略する。
遊星ギヤ機構28は、入力軸22と同軸に配置されたサンギヤ40と、サンギヤ40を囲むように、サンギヤ40と同軸に配置されたリングギヤ42と、サンギヤ40とリングギヤ42にかみ合うプラネタリピニオン44を回転可能に支持するギヤキャリヤ46とを含む。ギヤキャリヤ46は、入力軸22と同軸に配置され、ギヤキャリヤ46の入力軸22と同軸の回転に伴ってプラネタリピニオン44が入力軸22周りを公転する。プラネタリピニオン44は、周方向に複数、例えば3個が配置される。サンギヤ40、リングギヤ42およびギヤキャリヤ46が遊星ギヤ機構28の相対回転する3つの要素である。サンギヤ40は、軸受62(図2参照)を介して入力軸22に回転可能に支持されており、入力軸22上に設けられたクラッチ機構によって、入力軸22と一体となる。この減速機16では、クラッチ機構は遠心クラッチ48である。サンギヤ40は、遠心クラッチ48が接続状態のときに入力軸22と一体に回転し、遠心クラッチ48が切断状態となると入力軸22から切り離される。リングギヤ42は、減速機16の減速機ケース50に固定されている。
遊星ローラ機構30は、入力軸22と同軸かつ固定して配置されたサンローラ52と、サンローラ52を囲むように、サンローラ52と同軸に配置されたリングローラ54と、サンローラ52とリングローラ54に接触するプラネタリローラ56を回転可能に支持するローラキャリヤ58とを含む。ローラキャリヤ58は、出力軸26と一体であるか、または一体に回転し、ローラキャリヤ58の回転に伴ってプラネタリローラ56が入力軸22周りを公転する。プラネタリローラ56は、周方向に複数、例えば3個が配置される。サンローラ52、リングローラ54およびローラキャリヤ58が遊星ローラ機構30の相対回転する3つの要素である。リングローラ54は、減速機16の減速機ケース50に固定されている。
ギヤキャリヤ46とローラキャリヤ58は、プラネタリピニオン44およびプラネタリローラ56を回転可能に支持する共通のキャリヤピン60を有し、キャリヤピン60によって一体となって回転する。
遊星ギヤ機構28と遊星ローラ機構30は、3つの要素の配置において同型の構成を有する。つまり中心に位置するサン要素(サンギヤ40、サンローラ52)と、サン要素を囲むように、サン要素と同軸に配置されるリング要素(リングギヤ42、リングローラ54)と、サン要素とリング要素にかみ合いまたは接触するプラネタリ要素(プラネタリピニオン44、プラネタリローラ56)を回転可能に支持し、サン要素およびリング要素と同軸に配置され、この軸周りに回転するキャリヤ要素(ギヤキャリヤ46、ローラキャリヤ58)を含む。
遊星ギヤ機構28と遊星ローラ機構30の速度比、つまり入力軸の回転速度に対する出力軸の回転速度の比は等しい。一般的に遊星ローラ機構においては、ローラ間での滑りがあるため速度比は一定でないが、ここでは無負荷状態、つまりローラ間の滑りがない状態での速度比を遊星ローラ機構の速度比とする。遊星ギヤ機構28と遊星ローラ機構30の速度比を等しくするためには、例えば遊星ローラ機構30の各ローラの直径比を、遊星ギヤ機構28の各ギヤの歯数比とする。
図2は、遠心クラッチ48の構成を模式的に示す図である。サンギヤ40は、例えば針状ころ軸受等の軸受62を介して入力軸22に支持されている。サンギヤ40には、クラッチケース64が結合されており、クラッチケース64はサンギヤ40と一体となって回転する。クラッチケース64は、入力軸22に同軸に配置される略円筒形状の周壁66を含む。クラッチケース64内には、円環板形状のクラッチプレート68が、周壁66と同軸に複数枚配置される。クラッチケース64の周壁66の内壁面には、軸線方向に延びる溝が周方向に複数並んで形成され、クラッチプレート68の外周縁には、周方向に並んで凸部が配列されている。クラッチプレート68の外周面に設けられた凸部が、周壁66の内周面に形成された溝に嵌まり、クラッチプレート68は、回転方向に関してはクラッチケース64と一体となって回転し、一方、周壁66の溝に沿った方向、つまり軸線方向に関してはクラッチケース64に対して移動が許容されている。
クラッチケース64内には、さらに円環板形状のクラッチディスク70が、入力軸22と同軸に複数枚配置されている。クラッチプレート68とクラッチディスク70は軸線方向において交互に積層配置されている。入力軸22の表面には軸線方向に延びる溝が周方向に複数並んで形成され、クラッチディスクの内周縁には、周方向に並んで凸部が配列されている。クラッチディスク70の凸部が、入力軸22に形成された溝に嵌まり、クラッチディスク70は、回転方向に関しては、入力軸22と一体となって回転し、一方、軸線の方向に関しては入力軸22に対して移動が許容されている。
さらに、積層されたクラッチプレート68とクラッチディスク70の積層方向の一端に概略円環板形状のプレッシャプレート72が配置されている。プレッシャプレート72は、クラッチケース64の周壁66の径方向外側に張り出している。プレッシャプレート72は、クラッチプレート68と同様に、クラッチケース64と一体に回転すると共に、軸線方向においてクラッチケース64に対して移動が許容されている。プレッシャプレート72の、クラッチプレート68およびクラッチディスク70から離れる方向の移動限界は、ストッパ74によって規定されている。クラッチケース64内には、クラッチプレート68とクラッチディスク70を、これらの積層方向にプレッシャプレート72を介して押圧する与圧ばね76が配置されている。クラッチプレート68とクラッチディスク70は、与圧ばね76の付勢力によって、通常時において圧接状態とされる。
クラッチケース64の外周面には、プレッシャプレート72に隣接して、クラッチケース64と同軸に円環状の保持リング78が固定されている。保持リング78は、プレッシャプレート72に関して与圧ばね76の反対側に位置している。保持リング78には、径方向に延び、プレッシャプレート72に向けて開放した保持溝80が形成されている。保持溝80の底面には、径方向において外に向けて浅くなるように傾斜する斜面80aが設けられている。保持溝80内に球形状のウェイト82が保持され、ウェイト82は、保持溝80によって周方向の動きは拘束され、一方径方向の動きは許容されている。入力軸22の回転によってウェイト82に遠心力が作用すると、ウェイト82は、保持溝80に沿って径方向外方に移動し、さらに斜面80aによりプレッシャプレート72に向かい、これを押圧する。
電動機12の回転速度が低いときには、与圧ばね76の付勢力によってクラッチプレート68とクラッチディスク70は圧接し、遠心クラッチ48は接続状態となって、入力軸22とサンギヤ40が結合する。一方、電動機12の回転速度が高くなると、入力軸22と共に回転するウェイト82が、ウェイト82自身に作用する遠心力によって径方向外側に移動し、さらに斜面80aによってプレッシャプレート72に向かい、これを押圧する。ウェイト82の押圧力が、与圧ばね76の付勢力に勝ると、プレッシャプレート72は、クラッチプレート68およびクラッチディスク70から離れる方向に移動し、遠心クラッチ48が切断状態となる。減速機16の接続状態と電動機12の出力特性の関係を図3に示す。
図3に示すように、電動機12の出力特性は、回転速度が低いとき最大トルクTmaxが一定となり、高いときに最大出力Pmaxが一定となる。また、遠心クラッチ48が接続状態から切断状態となる境界速度Nc未満の速度では、遊星ギヤ機構28により動力が伝達され、境界速度Nc以上の速度では、遊星ローラ機構30により動力が伝達される。
電動機12の回転速度が境界速度Nc未満では、遠心クラッチ48が接続状態であるのでサンギヤ40とサンローラ52が一体に回転し、またキャリヤピン60を共有しているギヤキャリヤ46とローラキャリヤ58が一体に回転する。さらに、遊星ギヤ機構28と遊星ローラ機構30の速度比は同じであるから、遊星ローラ機構30の接触するローラ間で滑りは発生せず、遊星ローラ機構30は、入力軸22と出力軸26間のトルク伝達に寄与しない。したがって、遠心クラッチ48が接続状態である低速時においては、遊星ギヤ機構28を介して入力軸22から出力軸26にトルクが伝達される。遊星ローラ機構30は、トルク伝達に寄与しないため、遊星ローラ機構30と遊星ギヤ機構28間のトルクの循環は生じない。
電動機12の回転速度が境界速度Nc以上となり、遠心クラッチ48が切断状態となると、遊星ギヤ機構28は入力軸22から切り離され、遊星ローラ機構30のみにより入力軸22から出力軸26にトルクが伝達される。遊星ギヤ機構28がトルク伝達に寄与しないので、ギヤのかみ合いによる騒音・振動を抑制することができる。また、遊星ローラ機構30のローラ同士を圧接させるための荷重は、一般に電動機の出力トルクが小さくなる高速時のみを考慮して定めればよく、小さく設定することができ、圧接荷重による各ローラの変形を抑制し、ローラの変形に伴う損失を抑制することができる。
遠心クラッチ48が切断状態となる速度は、ウェイト82の質量、斜面80aの傾斜角度、与圧ばね76の付勢力の設定により、定めることができる。
プレッシャプレート72の軸線方向の移動、特にクラッチプレート68およびクラッチディスク70から離れる方向の移動は、移動の範囲がストッパ74によって規定され、プレッシャプレート72がストッパ74に当接すると、それ以上は移動ができない。プレッシャプレート72がストッパ74に当接する位置は、クラッチプレート68とクラッチディスク70が互いの滑りが許容される程度の摩擦が生じるように接触する状態となる位置に設定されている。
トルクを伝達している状態での遊星ローラ機構30の速度比は、無負荷状態の速度比より小さくなるので、遊星ギヤ機構28に対してサン要素の速度がキャリヤ要素の速度より速くなる。遠心クラッチ48が滑りが生じる程度に接触していることにより、その摩擦力によって、サンギヤ40の歯はプラネタリピニオン44の一方の歯面に常に接触するようになる。これにより、遊星ギヤ機構28の各ギヤが、かみ合う相手側のギヤのバックラッシュの中で踊ることにより生じる歯打ち音を低減することができる。
図4は、クラッチ機構の他の例を示す図である。この例では、クラッチ機構は、遊星ギヤ機構28と遊星ローラ機構30を選択的に入力軸22または出力軸26のいずれかに接続する切換クラッチ84である。図3に示す中心線より上側の部分が切換クラッチ84が遊星ギヤ機構28を入力軸22に接続した状態を示し、下側の半分が遊星ローラ機構30を入力軸22に接続した状態を示している。サンギヤ86およびサンローラ88は、互いに相対する面にドグ歯90,92が形成されている点で、前述のサンギヤ40およびサンローラ52と相違する。リング要素およびキャリヤ要素は、前述のリングギヤ42、リングローラ54、ギヤキャリヤ46およびローラキャリヤ58と同様の構成である。サンギヤ86およびサンローラ88は、それぞれ軸受94,96を介して入力軸22に回転可能に支持されている。また、入力軸22上には、外周にドグ歯97を有するドグスリーブ98が、回転方向においては拘束され、軸線方向に沿ってはスライド可能に支持されている。ドグスリーブ98は、油圧駆動のドグ駆動ピストン100により軸線方向にスライド駆動される。ドグスリーブ98がサンギヤ86側にスライドしたとき、ドグスリーブ98のドグ歯97とサンギヤ86のドグ歯90が係合し、サンギヤ86が入力軸22に結合した状態となる。ドグスリーブ98がサンローラ88側にスライドしたとき、ドグスリーブ98のドグ歯97とサンローラ88のドグ歯92が係合し、サンローラ88が入力軸22に結合した状態となる。
電動機12に設けられた回転センサによって電動機12の回転速度が所定の回転速度より低いとされたときには、ドグ駆動ピストン100は、ドグスリーブ98をサンギヤ86のドグ歯90に係合するように駆動し、所定の回転速度以上とされたときに、ドグスリーブ98をサンローラ88のドグ歯92に係合するように駆動する。これにより、電動機12が低速のときには、遊星ギヤ機構28により入力軸22から出力軸26へのトルク伝達がなされ、高速のときには、遊星ローラ機構30によりトルク伝達がなされる。
図2に示した遠心クラッチ48は、他の形式のクラッチ機構とすることができる。例えば、油圧によりクラッチプレート68とクラッチディスク70の接触、分離を制御する油圧クラッチとすることができる。
また、入力軸22に代えて出力軸26にクラッチ機構を設け、トルク伝達を担う機構を選択するようにしてもよい。具体的には、ギヤキャリヤ46とローラキャリヤ58を接続、分離可能として、トルク伝達機構の担う機構を選択するようにしてよい。出力軸26上に設けられたクラッチ機構は、出力軸26の回転速度に応じて接続・切断するよう制御されてよく、入力軸22の回転速度に応じて制御されてもよい。入力軸22上に設けられたクラッチ機構についても、出力軸26の回転速度に応じて接続・切断するよう制御されてよい。
前述の実施形態では、減速機16を例として説明したが、増速機についても同様である。前述の駆動装置10により電動車両を駆動する場合、回生制動時には、出力軸26からの入力トルクを、遊星ギヤ機構28または遊星ローラ機構30によって増速して入力軸22に伝達し、電動機12を駆動する。このとき、減速機16は増速機として機能する。減速機16は、2つの軸、つまり第1軸と第2軸の間で速度変換してトルクを伝達する速度変換機である。
10 駆動装置、12 電動機、16 減速機、22 入力軸、26 出力軸、28 遊星ギヤ機構、30 遊星ローラ機構、40 サンギヤ、42 リングギヤ、44 プラネタリピニオン、46 ギヤキャリヤ、48 遠心クラッチ(クラッチ機構)、50 減速機ケース、52 サンローラ、54 リングローラ、56 プラネタリローラ、58 ローラキャリヤ、60 キャリヤピン、64 クラッチケース、66 周壁、68 クラッチプレート、70 クラッチディスク、72 プレッシャプレート、74 ストッパ、76 与圧ばね、78 保持リング、80 保持溝、82 ウェイト、84 切換クラッチ(クラッチ機構)、86 サンギヤ、88 サンローラ、98 ドグスリーブ、100 ドグ駆動ピストン。

Claims (5)

  1. 第1軸と第2軸の間に設けられ、前記第1軸と前記第2軸の間で速度変換して動力伝達を行う遊星ギヤ機構と、
    前記第1軸と前記第2軸の間に前記遊星ギヤ機構と並列に設けられ、前記第1軸と前記第2軸の間で速度変換して動力伝達を行う、前記遊星ギヤ機構と同型の遊星ローラ機構であって、無負荷状態の第1軸に対する第2軸の速度比が前記遊星ギヤ機構の速度比と等しい遊星ローラ機構と、
    前記第1軸の回転速度が所定回転速度以上のときに、前記第1軸または前記第2軸と前記遊星ギヤ機構とを切り離すクラッチ機構と、
    を含む、速度変換機。
  2. 請求項1に記載の速度変換機であって、前記クラッチ機構は、前記第1軸の回転速度が前記所定回転速度以上のときに、前記第1軸と前記遊星ギヤ機構を切り離す遠心クラッチである、速度変換機。
  3. 請求項1に記載の速度変換機であって、前記クラッチ機構は、遊星ギヤ機構と遊星ローラ機構のいずれか一方を選択的に前記第1軸または第2軸に接続する、速度変換機。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の速度変換機であって、前記クラッチ機構は、前記第1軸または前記第2軸と前記ギヤ機構を切り離した状態のとき、前記第1軸または前記第2軸と前記ギヤ機構の間に滑りが生じる程度の摩擦力をもって接触している、速度変換機。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の速度変換機であって、
    前記遊星ギヤ機構は、サンギヤと、前記サンギヤの周囲を囲むように同軸配置されたリングギヤと、前記サンギヤと前記リングギヤにかみ合うプラネタリピニオンを回転可能に支持し、かつ前記サンギヤおよび前記リングギヤと同軸配置されたギヤキャリヤと、を有し、
    前記遊星ローラ機構は、サンローラと、前記サンローラの周囲を囲むように同軸配置されたリングローラと、前記サンローラと前記リングローラに接触するプラネタリローラを回転可能に支持し、かつ前記サンローラと前記リングローラと同軸配置されたローラキャリヤと、を有する、
    速度変換機。
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