JP2023057243A - 電池用セパレータ - Google Patents

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Abstract

【課題】硫酸バリウム粒子を含有する耐熱性多孔層が片面に設けられたセパレータにおいて、低露点環境でハンドリング性に優れた耐熱性セパレータを提供する。【解決手段】ポリオレフィン多孔質膜と、該ポリオレフィン多孔質膜の片面に設けられた耐熱性多孔層とを有する電池用セパレータであって、前記耐熱性多孔層は、硫酸バリウム粒子と有機合成樹脂成分とを含み、前記硫酸バリウム粒子が特定のアスペクト比を有し、体積平均粒子径(D50)が、0.5μm以上、2.0μm以下であり、前記硫酸バリウム粒子の表面の少なくとも一部が、不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体で被覆されており、前記硫酸バリウム表面の式1で計算される付着量Aが、0.1mg/m2~2.0mg/m2である電池用セパレータ。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリオレフィン多孔質膜と、該多孔質膜の少なくとも片面に耐熱性多孔層とを有する電池用セパレータに関する。
熱可塑性樹脂多孔質膜は、物質の分離や選択透過及び隔離材等として広く用いられている。例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池、及びポリマー電池等に用いる電池用セパレータや、電気二重層コンデンサ用セパレータ、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、及び精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、及び医療用材料等である。
特にリチウムイオン二次電池用セパレータとしては、電解液含浸によりイオン透過性を有し、電気絶縁性、耐電解液性及び耐酸化性に優れ、電池異常昇温時に120~150℃程度の温度において電流を遮断し、過度の昇温を抑制する孔閉塞効果をも備えているポリオレフィン多孔質膜が好適に使用されている。
しかしながら、何らかの原因で孔閉塞後も昇温が続く場合、ポリオレフィン多孔質膜は破膜を生じることがある。この現象はポリオレフィンを用いた場合に限定される現象ではなく、その多孔質膜を構成する樹脂の融点以上では避けることができない。
特にリチウムイオン二次電池用セパレータは、電池特性、電池生産性及び電池安全性に深く関わっており、優れた機械的特性、耐熱性、透過性、寸法安定性、孔閉塞特性(シャットダウン特性)、及び溶融破膜特性(メルトダウン特性)等が要求される。近年では特に車載用途のリチウムイオン電池に使用される場合、電池の充電時間の短縮や加速性の向上が必要であり、電池の要求特性として急速充電(大電流充電)や消費電力増加(大電流放電)が求められる。それに伴いセパレータへの要求事項として出力特性の改善も一層高いものとなってきている。そのために、これまでに多孔質膜にさまざまな改質多孔層を積層する検討がなされている。
改質多孔層としては、耐熱性及び電解液浸透性を併せ持つポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂及び/又は電極接着性に優れたフッ素系樹脂等が好適に用いられている。また、比較的簡易な水洗工程や乾燥工程を用いて改質多孔層が積層できる、水溶性又は水分散性バインダーも広く用いられている。なお、前記改質多孔層とは、耐熱性、電極材料との接着性、高イオン透過性及び高出力特性等の機能を少なくとも一つ以上付与又は向上させる樹脂を含む層をいう。
特許文献1の実施例1では、厚さ12μmのポリエチレンセパレータ上に、硫酸バリウム粒子とポリ(メタ)アクリルアミドを配合したスラリーをグラビア塗布により塗工することで耐熱性と電池の安定性を向上させたセパレータが開示されている。
特許文献2の実施例1では、12μmのポリエチレンセパレータ上に、アルミナ粒子とカルボキシメチルセルロースとポリオキシエチレンアルキルエーテルを配合したスラリーを塗布し、乾燥することで、透気度を保ちながら、高温における寸法保持が良好で、カール量を低減できるセパレータが開示されている。
特許文献3の実施例1では、厚さ25μmのポリエチレンセパレータ上に、アルミナ粒子と水溶性重合体、非水溶性粒子状重合体、カルボキシメチルセルロースを配合したスラリーを塗布し、乾燥することで多孔膜の粉落ち製、ガーレー値の増加率が小さく、電池の安定性を向上させたセパレータが開示されている。
特開2015-162313号公報 特開2017-4960号公報 国際公開第2012/029805号
電池用セパレータは、リチウム二次電池の異常昇温時に電子の流れを絶縁するための部材であり、電池の安全性向上のため、耐熱性多孔層にはより高い耐熱性が求められる。耐熱性を向上させるため耐熱性樹脂以外にも無機粒子を配合することがあり、さらに熱によるセパレータの収縮を抑制することができる。
また、リチウムイオン二次電池には電池反応に重要な電解質が含まれており、水に対して非常に敏感に反応し、フッ化水素等のガス発生や、電解質の消費による電池性能の低下を引き起こす可能性がある。一般的な電池用セパレータの耐熱性多孔層に、無機粒子として含まれるベーマイトを例に挙げると、ベーマイトは構造中に水分子を含む、また、粒子表面に水酸基を多数有しており、空気中の水分と水素結合を形成することで水分を多く吸着する性質がある。耐熱性多孔質層中でも同様に水分を含み、電池の中で電解液に触れることで電解質と反応し、フッ酸等のガス発生や、電池性能の低下を引き起こす。 特許文献1では特定の硫酸バリウムと特定の合成樹脂の混合物を用いることを提案されている。しかしながら、電池セル組立工程の低露点環境に曝されることで、常温常湿の状態で耐熱性多孔層に付着していた水分が大気放出されるので、ポリオレフィン多孔質膜の片面に耐熱性多孔層を設けたセパレータにおいては、カールし易く、巻きずれや折れジワが混入することで電池セル組立の歩留まりを下げる要因となっていた。
本発明の課題は、硫酸バリウム粒子を含有する耐熱性多孔層が片面に設けられたセパレータにおいて、低露点環境でハンドリング性に優れた耐熱性セパレータを提供することである。
本発明者らは、鋭意検討し、
ポリオレフィン多孔質膜と、該ポリオレフィン多孔質膜の片面に設けられた耐熱性多孔層とを有する電池用セパレータであって、
前記耐熱性多孔層は、硫酸バリウム粒子と有機合成樹脂成分とを含み、
前記硫酸バリウム粒子は、3軸径を、L(長軸径)、B(短軸径、B⊥L)、T(厚み)としたとき、長軸径と厚みのアスペクト比(L/T)が、1.0~3.0であって
レーザー回折法で測定した体積平均粒子径(D50)が、0.5μm以上、2.0μm以下であり、
前記硫酸バリウム粒子の表面の少なくとも一部が、不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体で被覆されており、
前記硫酸バリウム表面の式1で計算される付着量Aが、0.1mg/m~2.0mg/mである電池用セパレータであることにより、本課題を解決することを見出した。
式1・・・A={a/(S×100)}×1000 (mg/m
A:硫酸バリウム粒子に付着する不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体の付着量
a:硫酸バリウム100質量部に対する不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体の質量
S:硫酸バリウム粒子のBET比表面積(m/g)
更に好ましい様態は、
(1)前記有機合成樹脂成分が、アクリル酸とアクリルアミドの共重合体であること、
(2)前記耐熱性多孔層において、前記硫酸バリウム粒子100質量部に対し、前記有機合成樹脂成分が、0.5~5.0質量部含有していること、
(3)前記耐熱性多孔層の厚さが、1.0μm以上、5.0μm以下であること、
(4)前記ポリオレフィン多孔質膜の厚さが、4μm以上、20μm以下であること、
(5)前記セパレータの水分率が、300ppm以下であること、
である。
本発明の実施形態によって、硫酸バリウム粒子を含有する耐熱性多孔層が片面に設けられたセパレータにおいて、低露点環境でハンドリング性に優れた耐熱性セパレータを提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る電池用セパレータは、ポリオレフィン多孔質膜と、該多孔質膜の少なくとも片面に設けられた耐熱性多孔層とを有する。
[ポリオレフィン多孔質膜]
本発明の実施形態におけるポリオレフィン多孔質膜の厚さは、電池用セパレータの機能を有する限りにおいて特に制限されるものではないが、4μm以上、20μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以上、20μm以下であり、さらに好ましくは9μm以上、16μm以下である。ポリオレフィン多孔質膜の厚さが20μm以下であると、実用的な膜強度と孔閉塞機能を両立させることが出来、電池ケースの単位容積当たりの面積が制約されず、電池の高容量化に適する。
ポリオレフィン多孔質膜の透気抵抗度は30sec/100cmAir以上、200sec/100cmAir以下が好ましい。より好ましくは40sec/100cmAir以上、150sec/100cmAir以下であり、さらに好ましくは50sec/100cmAir以上、100sec/100cmAir以下である。透気抵抗度が30sec/100cmAir以上であると、十分な機械的強度と絶縁性が得られることで電池の充放電時に短絡が起こる可能性が低くなる。200sec/100cmAir以下であると、十分な電池の充放電特性、特にイオン透過性(充放電作動電圧)及び電池の寿命(電解液の保持量と密接に関係する)において十分であり、電池としての機能を十分に発揮することができる。
ポリオレフィン多孔質膜の空孔率は20%以上、70%以下が好ましい。より好ましくは30%以上、60%以下であり、さらに好ましくは55%以下である。空孔率が30%以上、70%以下であると、十分な電池の充放電特性、特にイオン透過性(充放電作動電圧)及び電池の寿命(電解液の保持量と密接に関係する)において十分であり、電池としての機能を十分に発揮することができ、十分な機械的強度と絶縁性が得られることで充放電時に短絡が起こる可能性が低くなる。
ポリオレフィン多孔質膜の平均孔径は、孔閉塞性能に大きく影響を与えるため、0.01μm以上、1.0μm以下が好ましい。より好ましくは0.02μm以上、0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.03μm以上、0.3μm以下である。ポリオレフィン多孔質膜の平均孔径が0.01μm未満であると、耐熱性多孔層を堆積した際に有機合成成分による孔の目詰まりが発生し、透気抵抗度および電気抵抗度が悪化する。1μm以上であると、耐熱性多孔層組成物による孔の目詰まりが発生し、透気抵抗度およ び電気抵抗度が悪化したり、微短絡の発生のため電池の安全性が低下する場合がある。
ポリオレフィン多孔質膜の平均孔径が0.01μm以上、1.0μm以下であると、バインダーのアンカー効果により、ポリオレフィン多孔質膜に対する、十分な耐熱性多孔層の密着強度が得られ、耐熱性多孔層を積層した際に透気抵抗度及び電気抵抗度が大幅に悪化せず、かつ、孔閉塞現象の温度に対する応答が緩慢になることもなく、昇温速度による孔閉塞温度がより高温側にシフトすることも少ない。本発明で言う平均孔径とはJIS K 3832:1990で規定されるバブルポイント法にて得た測定値である。
ポリオレフィン多孔質膜を構成するポリオレフィン樹脂は特に制限されるものではないが、ポリエチレンやポリプロピレンが好ましい。また、単一物又は2種以上の異なるポリオレフィン樹脂の混合物、例えばポリエチレンとポリプロピレンとの混合物であってもよいし、異なるオレフィンの共重合体であってもよい。電気絶縁性、及びイオン透過性等の基本特性に加え、電池異常昇温時において、電流を遮断し、過度の昇温を抑制する孔閉塞効果を具備しているからである。
なかでもポリエチレンが優れた孔閉塞性能の観点から特に好ましい。以下、本発明で用いるポリオレフィン樹脂としてポリエチレンを例に詳述するが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。
ポリエチレンとしては、例えば、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレン等が挙げられる。また重合触媒にも特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系触媒やフィリップス系触媒やメタロセン系触媒等が挙げられる。これらのポリエチレンはエチレンの単独重合体のみならず、他のα-オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。エチレン以外のα-オレフィンとしてはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン等が好適である。
ポリエチレンは単一物でもよいが、2種以上のポリエチレンからなる混合物であることが好ましい。ポリエチレン混合物としては重量平均分子量(Mw)の異なる2種類以上の超高分子量ポリエチレン同士の混合物、同様な高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンの混合物を用いてもよいし、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる2種以上ポリエチレンの混合物を用いてもよい。
ポリオレフィン多孔質膜は、充放電反応の異常時に孔が閉塞する機能を有することが必要である。従って、構成する樹脂の融点(軟化点)は70℃以上、150℃以下が好ましい。より好ましくは80℃以上、140℃以下、さらに好ましくは100℃以上、130℃以下である。構成する樹脂の融点が70℃以上、150℃以下であると、正常使用時に孔閉塞機能が発現してしまって電池が使用不可になることがなく、また、異常反応時に孔閉塞機能が発現することで安全性を確保できる。
[耐熱性多孔層]
本発明の実施形態に係る電池用セパレータは、上記ポリオレフィン多孔質膜の片面に耐熱性多孔層が設けられており、硫酸バリウム粒子と有機合成樹脂成分とを含む。
[硫酸バリウム粒子]
本発明の硫酸バリウム粒子は、真球形状、略球形状、棒状、多面体形状のいずれかであり、3軸径を、L(長軸径)、B(短軸径、B⊥L)、T(厚み)としたとき、長軸径と厚みのアスペクト比(L/T)が、1.0~3.0である。すなわち、板状や針状などの形状を除くものである。
ここで言う3軸径とは、不規則形状粒子を直方体に換算して粒子形状を定量化する方法であり、粉体工学会編 粉体工学便覧、昭和61年初版1刷発行の1頁に記載がある。具体的には、任意の平面上に安定に配置した粒子の平面への投影図形に対して両側から平行線を接近させ、その投影図形に接した時の平行線の間隔を測定する。この間隔が最長である平行線間距離を粒の長軸径L(μm)とし、それに直角方向の投影図形に接する平行線間隔距離を粒の短軸径B(μm)とする。粒子が安定に配置している面から粒子上端までの高さを粒の厚みT(μm)とする。但し、本発明の3軸径の厚みT(μm)については、粒の短軸径B(μm)と厚みT(μm)の内、値の小さいほう厚みを厚みT(μm)とする。すなわち、前記寸法には、L≧B≧Tの関係を持たせ、同一の場合以外はBとTの小さい方を厚みTと定義する。具体的には、三次元計測走査型電子顕微鏡(3D-SEM)を用いて観察を行い、得られた像から硫酸バリウム粒子のL、B、Tを測長し、アスペクト比(L/T)を求める。無作為に300個の硫酸バリウム粒子を測長し、平均化することで硫酸バリウム粒子のアスペクト比(L/T)を規定する。
硫酸バリウム粒子のアスペクト比(L/T)は、1.0~3.0であり、好ましくは1.0~2.0である。アスペクト比を前記範囲とすることにより、硫酸バリウム粒子の比表面積が小さくなり、それにより常温常湿環境における耐熱性多孔層の硫酸バリウム粒子に付着する水分量を小さくすることができる。すなわち、セパレータを低露点環境に曝したときに放出される水分量を小さくすることができ、カールを抑制することができる。
硫酸バリウム粒子のレーザー回折法で測定した体積平均粒子径(D50)が、0.5μm以上、2.0μm以下である。硫酸バリウム粒子の体積平均粒子径(D50)を前記範囲にすることにより、硫酸バリウム粒子に常温常湿状態で付着する水分量を抑制することができる。すなわち、セパレータを低露点環境に曝したときに放出される水分量を小さくすることができ、カールを抑制することができる。
[不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体]
前記硫酸バリウム粒子の表面の少なくとも一部が、不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体で被覆されている。前記不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体で被覆されることにより、硫酸バリウム粒子に常温常湿状態で付着する水分量を抑制することができる。
前記共重合体における不飽和カルボン酸は、エチレン性不飽和結合と1個以上のカルボキシル基を有する化合物である。不飽和カルボン酸の例として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸などが挙げられ、その1種又は2種以上が用いられる。
また、前記共重合体における不飽和スルホン酸は、エチレン性不飽和結合と1個以上のスルホン酸基を有する化合物である。不飽和スルホン酸の例として、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸、3-メタロキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸、ブタジエンスルホン酸やイソプレンスルホン酸等の共役ジエンスルホン化物、スチレンスルホン酸、スルホアルキルアクリレートエステル、スルホアルキルメタクリレートエステル、スルホアルキルアリルエーテル、スルホアルキルメタリルエーテル、スルホフェノアリルエーテル、スルホフェノメタリルエーテル、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸などが挙げられ、その1種又は2種以上が用いられる。
前記共重合体における不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合モル比は通常、99:1~1:99の範囲であり、好ましくは95:5~50:50の範囲である。
前記共重合体の好ましい分子量は、重量平均分子量として1000~100000の範囲であり、より好ましくは4000~20000の範囲である。該共重合体は、ラジカル重合法として公知の方法で製造でき、例えば、不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸を含むモノマー溶液にアゾ化合物や過酸化物等の重合開始剤を加えて加熱することにより目的の共重合体を製造することができる。
更に、本発明に用いる共重合体は、不飽和カルボン酸や不飽和スルホン酸と共重合可能な他のモノエチレン性不飽和単量体を含んでもよい。その場合、共重合可能な他のモノエチレン性不飽和単量体の比率は、モノマー合計量に対して5モル%以下であることが好ましい。
共重合可能な他のモノエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステル;(メタ)アクリルアミド類の(メタ)アクリルアミド、N-アルキル置換(メタ)アクリルアミド;炭素数2~8のオレフィンのエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2-エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテンなど;ビニルアルキルエーテル類のビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル;マレイン酸アルキルエステルなどが挙げられ、その1種又は2種以上が用いられる。
本発明に用いる共重合体の好ましい具体的例として、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の共重合体、アクリル酸と3-アリロキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸の共重合体、アクリル酸とスチレンスルホン酸の共重合体、アクリル酸と共役ジエンスルホン化物の共重合体等が挙げられる。
[硫酸バリウム粒子表面の被覆方法]
本発明の硫酸バリウム粒子の表面に不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体を被覆する方法は特に限定するものではなく、公知の方法を使用することができる。具体的には、例えば、硫酸バリウム粒子の粉末と、不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体と液体とを混合することにより、混合物を得、該混合物の液体を乾燥することにより得ることができる。また、例えば、前記混合物に、更に有機合成樹脂成分、及びその他の成分を加え、分散して耐熱性多孔層用塗工分散液とし、ポリオレフィン多孔質膜の片面に塗布乾燥することで硫酸バリウム粒子の表面に不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体を被覆する粒子よりなる耐熱性多孔層を形成することができる。
ここで、硫酸バリウム100質量部に対する不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体の質量aは、公知の方法で求めることができる。例えば、(1)被覆した硫酸バリウム粒子を走査型電子顕微鏡を用いて被膜厚さを測定し、前記共重合体の比重で除する。また例えば、(2)前記被覆方法で用いた共重合体の質量を硫酸バリウム粒子の質量と比表面積で除することにより求めることができる。またあるいは、(3)乾式密度測定装置を用いて求めることができる。
[硫酸バリウム粒子に付着する不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体の付着量A]
式1で計算される硫酸バリウム粒子に付着する不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体の付着量Aは、0.1mg/m~2.0mg/mである。前記範囲にすることにより、セパレータを低露点環境に曝したときに放出される水分量を小さくすることができ、カールを抑制することができる。より好ましくは0.1mg/m~1.5mg/mである。
[有機合成樹脂成分]
本発明の有機合成樹脂成分は、水溶性ポリマーであれば限定されることなく使用できる。具体的には、セルロース系化合物、でんぷん、アルギン酸、キトサン、デキストリン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリスルホン酸、ポリエチレン移民、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスチレンスルホン酸、エチレン―アクリル酸共重合チア、エチレン、アクリルアミドーアクリル酸共重合体等、及びその誘導体又は塩が挙げられる。これらのなかでセパレータの耐熱性を確保する観点から、アクリル酸とアクリルアミドの共重合体であることが好ましい。中でも、ポリ(メタ)アクリルアミドが好ましい。
ポリ(メタ)アクリルアミドは、構成単量体として分子内に(メタ)アクリルアミド骨格を有する単量体を含むものである。分子内に(メタ)アクリルアミド骨格を有する単量体として、具体的には、例えば、メタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸等が挙げられ、これらの1種を単独で、又は二種以上を併用できる。これらの中でも(メタ)アクリルアミド、特にアクリルアミドを用いると、ポリ(メタ)アクリルアミドの耐酸化性が高くなる。
[その他の成分]
前記耐熱性多孔層にはポリオレフィン多孔質膜との密着性を向上させる目的で非水溶性接着性樹脂、塗工性を向上させる目的で増粘剤及び濡れ剤等、耐熱性を向上させる目的で熱硬化性樹脂及び架橋剤等を適宜含んでもよい。
[耐熱性多孔層の質量組成比]
本発明の実施形態における耐熱性多孔層中に含まれる硫酸バリウム粒子の含有量は、硫酸バリウム粒子と有機合成樹脂成分の合計を100質量%として80質量%以上、99質量%以下である。より好ましくは85質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
硫酸バリウム粒子の含有量を前述の範囲以上とすることで、耐熱性多孔層中の個々の硫酸バリウム粒子の隙間が有機合成樹脂成分で目詰まりすることを抑制でき、イオンの移動経路が狭くなったり長くなることで電気抵抗度や透気抵抗度が大きくなることを抑制できる。
硫酸バリウム粒子の含有量を前述の範囲以下とすると、個々の硫酸バリウム粒子同士をつなぎ留めている有機合成樹脂成分が不足し、耐熱性多孔層としての構造が保てない場合を抑制することができる。
また、前記耐熱性多孔層において、前記硫酸バリウム粒子100質量部に対し、前記有機合成樹脂成分が、0.5~5.0質量部含有していることが好ましい。前記耐熱性多孔層において、前記有機合成樹脂成分が前記硫酸バリウム粒子に対して上記の範囲で含有することで、150℃における熱収縮性を小さく保持するとともに、電池用セパレータの透気抵抗度を小さく保持することができる。
[耐熱性多孔層の平均厚さ]
本発明の実施形態における耐熱性多孔層の平均厚さは、1.0μm以上、5.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは1.5μm以上、4.0μm以下である。耐熱性多孔層の厚さが1.0μmより小さいと、熱によるポリオレフィン多孔質膜の収縮を抑制することができなくなる場合がある。耐熱性多孔層の平均厚さが5.0μmより大きいと、イオンの移動経路が長くなるため、透気抵抗度が大きくなったり、電池セルの正極と負極の極間距離が大きくなることで電池セル容量に占める電池用セパレータの割合が多くなり、電気抵抗度が大きくなる場合がある。耐熱性多孔層の平均厚さが1.0μm以上、5.0μm以下であると、透気抵抗度が大きくなったり、電気抵抗度が大きくなることを抑制できる。
[耐熱性多孔層の形成方法]
本発明を得るための耐熱性多孔層は以下の工程で得ることができる。
(a)耐熱性多孔層用塗工分散液の作製。
(b)ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも片面、又は両面に前記スラリーをコーティングする工程。
(c)前記コーティング後、溶媒をドライヤーで乾燥させ、耐熱性多孔層を形成する工程。
前記工程(b)において、ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも片面又は両面に耐熱性多孔層用塗工分散液をコーティングする方法は公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、小径グラビアコーター法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、エアナイフコート法、マイヤーバーコート法、パイプドクター法、ブレードコート法及びダイコート法等が挙げられ、これらの方法は単独又は組み合わせて行うことができる。
本発明の実施形態に係る電池用セパレータは、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-亜鉛電池、銀-亜鉛電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、及びリチウム-硫黄電池等の二次電池等の電池用セパレータとして用いることができる。特に、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用いるのが好ましい。
[セパレータの水分率]
本発明の電池用セパレータの水分率は、300ppm以下であることが好ましい。ここで言う水分率は電池用セパレータ1gを露点-60℃雰囲気下に24時間静置後、露点-60℃雰囲気下に置いたカールフィッシャー水分率計(京都電子工業(株)MKC-610)を用い、窒素雰囲気下、温度150℃条件下で10分間加熱して得られた測定値である。電池用セパレータの水分率が前記範囲であることにより、電池セル内の残存水分量を低減し、高温サイクル特性等の電池性能を向上させ得ることができる。
以下、実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例よって何ら制限されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法で得た値である。
1.透気抵抗度(sec/100cmAir)
王研式透気抵抗度計(旭精工(株)製、EGO-1T)を使用してポリオレフィン多孔質膜と電池用セパレータそれぞれの試料についてシワが入らないように固定し、JIS P8117に従って測定した。試料は100mm角とし、測定点は試料の中央部と4隅の計5点として、その平均値を透気抵抗度(sec/100cmAir)として用いた。なお、試料の1辺の長さが100mmに満たない場合は50mm間隔で5点測定した値を用いてもよい。
2.厚さ(μm)
ポリオレフィン多孔質膜及び電池用セパレータを接触式膜厚計((株)ミツトヨ製“ライトマチック”(登録商標)series318)を使用して5点の測定値を平均することによって厚さを求めた。超硬球面測定子φ9.5mmを用い、加重0.01Nの条件で測定した。さらに、耐熱性多孔層の厚さ(μm)は、電池用セパレータを前記スラリーに含まれる溶媒と同じ液で洗浄し、耐熱性多孔層を除去したポリオレフィン多孔質膜を前記接触式膜厚計にて測定し、下記計算式にて得た。
耐熱性多孔層の厚さ(μm)=電池用セパレータの厚さ(μm)-ポリオレフィン多孔質膜の厚さ(μm)
3.粒子径(μm)
アセトン中に電池用セパレータ片を入れ、10分超音波処理を行ない、アセトンと耐熱性多孔層成分の混合液を作製した。その後、希釈、遠心分離、乾燥を行い、硫酸バリウム粒子を採取した。
硫酸バリウム粒子の粒子径は、JIS-Z8825(2013)に従いレーザー回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA-960V2)を用いて以下の物性値を測定した。
1)体積平均粒子径(D50)(μm)=体積基準積算率が50%のときの粒子径。
4.粒子のアスペクト比
三次元計測走査型電子顕微鏡(3D-SEM)を用いて耐熱性多孔層の粒子の形状観察を行い、粒子の平面への投影図形に対して両側から平行線を接近させ、その投影図形に接した時の平行線の間隔を測定する。この間隔が最長である平行線間距離を粒の長軸径L(μm)とし、それに直角方向の投影図形に接する平行線間隔距離を粒の短軸径B(μm)とする。粒子が安定に配置している面から粒子上端までの高さを粒の厚みT(μm)とする。但し、本発明の3軸径の厚みT(μm)については、粒の短軸径B(μm)と厚みT(μm)の内、値の小さいほう厚みを厚みT(μm)とする。すなわち、前記寸法には、L≧B≧Tの関係を持たせ、同一の場合以外はBとTの小さい方を厚みTと定義する。硫酸バリウム粒子のL、B、Tを測長し、アスペクト比(L/T)を求める。無作為に300個の硫酸バリウム粒子を測長し、平均化し、表に示した。
5.粒子のBET比表面積
バリウム粒子のBET比表面積の測定手順は、JIS Z 8830:2013に従い測定した。装置は、一般的な比表面積測定装置(マイクロトラック社製、BELSORP-mini II)を用いた。
6.硫酸バリウム粒子に付着する不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体の付着量
硫酸バリウム粒子に付着する共重合体の付着量は、作製された電池セパレータの耐熱性多孔層表面から硫酸バリウム粒子を採取して試料とし、乾式密度測定装置(島津製作所製、アキュピック 1330)を用いて、測定・算出した。
7.熱収縮率
電池用セパレータの耐熱性は下記の方法にて、電池用セパレータのMD方向(長手方向)とTD方向(横手方向)について測定した。詳細な手順を下記に説明する。
1)電池用セパレータ100mm×100mmの大きさで3枚切り出し、透明なガラススケール(測定精度0.1mm)を乗せ、電池用セパレータの対面する2辺の中点同士の距離を、それぞれMD方向の長さ、TD方向の長さとして計測し、初期寸法(mm)とする。
2)電池用セパレータをA3サイズの紙2枚で挟み、温度150℃にしたオーブンに入れ1時間放置した。その後、電池用セパレータを取り出し30分放冷した。
3)電池用セパレータの対面する2辺の中点同士の距離を再度、前記ガラススケールにて測定し、収縮後の寸法(mm)とした。この時の測定位置は初期寸法を測定した位置と同じ位置であり、電池用セパレータの端部がカールしていた場合は、広げて測定を実施した。得られた初期寸法と、収縮後の寸法を用い、下記計算式にてMD方向の長さ、及びTD方向の長さ、それぞれの熱収縮率(%)を得、熱収縮率の大きい値を表に示した。
熱収縮率(%) = {初期寸法(mm)- 収縮後の寸法(mm)}/初期寸法(mm)×100
8.セパレータの水分率
水分率は電池用セパレータ1gを露点-60℃雰囲気下に24時間静置後、露点-60℃雰囲気下に置いたカールフィッシャー水分率計(京都電子工業(株)MKC-610)を用い、窒素雰囲気下、温度150℃条件下で10分間加熱して得られた測定値である。
9.カール
室温常湿下(23±2℃、40~80%RH)で電池用セパレータを95mm×95mm角の正方形に切り出し、ドライルーム(23℃±2℃、露点-50℃±10℃)で耐熱性多孔層を上にして5分保持した後、端部の持ち上がった高さを測定した。
また、外観を以下の基準で判断を行った。
A:端部の持ち上がりなし。
B:端部のみ持ち上がるが、端部以外の大部分は持ち上がりなく平坦な状態でいる。
C:両端が近づき、筒状に巻き込んでいる。
(実施例1)
[粒子の被覆工程]
アクリル酸ナトリウム(以下、SAとも称する。)及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(以下、AMPSとも称する。)の共重合体B(モル比:SA/AMPS=80/20、重量平均分子量Mw10000)にイオン交換水を添加し、10%水溶液とした。
次いで、表1に示す硫酸バリウム粒子Dを100質量部準備した。
複合型流動層微粒子コーティング装置(株式会社パウレック製、SFP)を用いて、塗布、乾燥し、共重合体の付着量が、0.52mg/mの共重合体付着粒子を作製した。
[耐熱性多孔層用塗工液の作製]
前記共重合体粒子を100質量部とポリアクリルアミドJ樹脂水溶液(昭和電工(株)製“コーガムLB-1”(登録商標))を1質量部(有効成分)と水を加え、ビーズミル分散し、有効成分率が60質量%である分散液を得た。得られた分散液にアクリルエマルジョンL(トーヨーケム株式会社製、LIOACCUM CSB-130)2質量部(有効成分)、濡れ剤M(サンノプコ(株)製、SNウェット366)0.2質量部(有効成分)及び水を加え攪拌し、固形分率が50質量%の耐熱性多孔層用塗工液を作製した。
得られた耐熱性多孔層用塗工液を、ポリエチレン多孔質膜N(厚さ8μm、東レ(株)製“SETELA” (登録商標))の片面(1面)に、マイクログラビア法に塗布、乾燥し、厚さ4μmの耐熱性多孔層を有する電池用セパレータを作製した。
作製した電池用セパレータについて、熱収縮率、水分量、カール性の評価を実施し、結果を表1に示した。
(実施例2~3、比較例1)
実施例1の共重合体Bの付着量を表1に記載のとおり変えた以外は実施例1と同様に電池用セパレータを作製し、結果を表1に示した。
(実施例4)
表2に示す硫酸バリウム粒子Eを100質量部準備した。次いで、SA及び3-アリルオキシ―2-ヒドロキシ―1-プロパンスルホン酸ナトリウム(以下、HAPSとも称する)の共重合体C(モル比:SA/HAPS=85/15、重量平均分子量Mw6000)の水溶液を0.12質量部(有効成分)、ポリアクリルアミド樹脂J水溶液(荒川化学工業(株)製、ポリストロン(登録商標)117)を1.5質量部(有効成分)と水を加え、ビーズミル分散し、有効成分率が60質量%である分散液を得た。得られた分散液にアクリルエマルジョンLを3質量部、濡れ剤Mを0.2質量部(有効成分)及び水を加え攪拌し、固形分率が50質量%の耐熱性多孔層用塗工液を作製した。
得られた耐熱性多孔層用塗工液を、ポリエチレン多孔質膜O(厚さ16μm、東レ(株)製“SETELA”(登録商標))の片面(1面)に、マイクログラビア法にて塗布、乾燥し、厚さ3μmの耐熱性多孔層を有する電池用セパレータを作製した。作製した電池用セパレータについて、実施例1と同様に評価を実施し、表2に示した。
(比較例2、3)
実施例4の硫酸バリウム粒子Eを表2に記載の硫酸バリウム粒子F及びGに変えた以外は実施例4と同様に、電池用セパレータを作製し、結果を表2に示した。
(比較例4,5)
実施例4のポリアクリルアミドJの添加量を、表2に記載の添加量に変えた以外は実施例4と同様に、電池用セパレータを作製し、結果を表2に示した。
(比較例6)
表3に示す硫酸バリウム粒子Eを100質量部準備した。これに分散剤Aとして、ポリカルボン酸アンモニウム塩(東亜合成(株)製、アロンA-6114)を0.5質量部(有効成分)と、ポリアクリルアミド樹脂J水溶液(荒川化学工業(株)製、ポリストロン(登録商標)117)を1.5質量部(有効成分)と水を加え、ビーズミル分散し、有効成分率が60質量%である分散液を得た。得られた分散液にアクリルエマルジョンLを3質量部、濡れ剤Mを0.2質量部(有効成分)及び水を加え攪拌し、固形分率が50質量%の耐熱性多孔層用塗工液を作製した。
得られた耐熱性多孔層用塗工液を、ポリエチレン多孔質膜P(厚さ12μm、東レ(株)製“SETELA”(登録商標))の片面(1面)に、マイクログラビア法に塗布、乾燥し、厚さ4μmの耐熱性多孔層を有する電池用セパレータを作製した。作製した電池用セパレータについて、実施例1と同様に評価を実施し、表3に示した。
(参考例1)
比較例6で作製した塗工液を、ポリエチレン多孔質膜Pの両面にマイクログラビア法に塗布、乾燥し、それぞれの面に2μmずつ、合計4μmの耐熱性多孔層を有する電池用セパレータを作製した。作製した電池用セパレータについて、実施例1と同様に評価を実施し、表3に示した。
(参考例2,3)
比較例6の硫酸バリウム粒子Eを表3に示すアルミナ粒子H及びベーマイト粒子Iに変えた以外は、実施例6と同様に電池用セパレータを作製し、結果を表3に示した。
Figure 2023057243000001
Figure 2023057243000002
Figure 2023057243000003
本発明のセパレータは、リチウムイオン電池などの非水電解質電池に好ましく用いられる電池用セパレータとして好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. ポリオレフィン多孔質膜と、該ポリオレフィン多孔質膜の片面に設けられた耐熱性多孔層とを有する電池用セパレータであって、
    前記耐熱性多孔層は、硫酸バリウム粒子と有機合成樹脂成分とを含み、
    前記硫酸バリウム粒子は、3軸径を大きいものから順に、L(長軸径)、B(短軸径、B⊥L)、T(厚み)としたとき、長軸径と厚みのアスペクト比(L/T)が、1.0~3.0であって
    レーザー回折法で測定した体積平均粒子径(D50)が、0.5μm以上、2.0μm以下であり、
    前記硫酸バリウム粒子の表面の少なくとも一部が、不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体で被覆されており、
    前記硫酸バリウム表面の式1で計算される付着量Aが、0.1mg/m~2.0mg/mである電池用セパレータ。
    式1・・・A={a/(S×100)}×1000 (mg/m
    A:硫酸バリウム粒子に付着する不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体の付着量
    a:硫酸バリウム100質量部に対する不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸の共重合体の質量
    S:硫酸バリウム粒子のBET比表面積(m/g)
  2. 前記有機合成樹脂成分が、アクリル酸とアクリルアミドの共重合体である請求項1に記載の電池用セパレータ。
  3. 前記耐熱性多孔層において、前記硫酸バリウム粒子100質量部に対し、前記有機合成樹脂成分が、0.5~5.0質量部含有している請求項1又は請求項2に記載の電池用セパレータ。
  4. 前記耐熱性多孔層の厚さが、1.0μm以上、5.0μm以下である請求項1から請求項3のいずれかに記載の電池用セパレータ。
  5. 前記ポリオレフィン多孔質膜の厚さが、4μm以上、20μm以下である請求項1から請求項4のいずれかに記載の電池用セパレータ。
  6. 前記セパレータの水分率が、300ppm以下である請求項1から請求項5のいずれかに記載の電池用セパレータ。
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