JP2023051146A - 化粧シート - Google Patents

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玲子 桜井
Reiko Sakurai
祥太 西根
Shota Nishine
昂秀 齋藤
Takaho Saito
亮介 西垣
Ryosuke Nishigaki
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Abstract

【課題】粘度の高い汚染物質に対する表面の拭き取り性を向上させた、表面にシワ状の凹凸面を有する化粧シートを提供する。【解決手段】化粧シート10は、凹凸面32を有する艶消層30を備え、艶消層30は、樹脂層36と複数の粒子38とを含み、凹凸面32は、シワ構造を有し、凹凸面32における、JIS Z8741:1997に規定される60°鏡面光沢度は、5以下であり、凹凸面32における、JIS B0601:2013に規定される平均長さRSmは、25μm以上35μm以下である。【選択図】図1

Description

本開示は、化粧シートに関する。
従来、建築物の内装及び外装、建具、家具及び家電等の表面、車両の内装等に化粧シートが用いられている。化粧シートは、意匠層を有し得る。意匠層は、所定の模様、色彩等に対応した絵柄層を含む。化粧シートの表面には、光沢を抑制するための艶消層が設けられることがある。艶消層は、表面に凹凸面(いわゆるマット面)を有する。艶消層に入射した光が、この凹凸面で乱反射して拡散することにより、艶消層の表面における光沢が減少する。
近年、凹凸面を製造する方法として、エキシマ光を用いて樹脂の表面にシワ状の凹凸面を形成する方法が提案されている。このような凹凸面の製造方法の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1では、まず、光硬化性を有する樹脂からなる塗膜の表面にエキシマ光を照射する。その後、当該塗膜に紫外線を照射して塗膜の全体を硬化させる。これにより、塗膜の表面にシワが形成される。特許文献1では、このようにして形成されたシワにより、低光沢性を有する塗膜が得られる。
特開2021-24102号公報
使用にともなって、化粧シートには汚れが付着することがある。化粧シートに汚れが付着した際には、例えば、布やティッシュペーパー等で汚れを拭き取ることにより汚れを除去する。したがって、化粧シートにおいては、その表面が良好な拭き取り性を有することが求められる。すなわち、化粧シートの表面を布やティッシュペーパー等で擦ることにより、容易に汚れを除去できることが求められる。しかし、従来、表面にシワ状の凹凸面を有する化粧シートにおいては、そのシワ状の凹凸構造に起因して、化粧シートに付着した汚れの除去が困難であった。とりわけ、汚れが、クレヨン、靴墨、口紅等の粘度の高い汚染物質を含む場合、拭き取る際に汚染物質が広がってしまうことがある。したがって、粘度の高い汚染物質の除去は特に困難であった。したがって、表面にシワ状の凹凸面を有する化粧シートにおいて、粘度の高い汚染物質に対する良好な拭き取り性が実現されたものは存在していなかった。
本開示の実施形態は、表面にシワ状の凹凸面を有する化粧シートにおいて、粘度の高い汚染物質に対する表面の拭き取り性を向上させることを目的とする。
本開示の一実施の形態による化粧シートは、
凹凸面を有する艶消層を備え、
前記艶消層は、樹脂層と複数の粒子とを含み、
前記凹凸面は、シワ構造を有し、
前記凹凸面における、JIS Z8741:1997に規定される60°鏡面光沢度は、5以下であり、
前記凹凸面における、JIS B0601:2013に規定される平均長さRSmは、25μm以上35μm以下である、化粧シート。
本開示の一実施の形態によれば、表面にシワ状の凹凸面を有する化粧シートにおいて、粘度の高い汚染物質に対する表面の拭き取り性が向上する。
図1は、本開示の一実施の形態を説明する図であって、化粧シートの一例の断面図である。 図2は、サンプル1における凹凸面の写真である。 図3は、サンプル2における凹凸面の写真である。 図4は、サンプル3における凹凸面の写真である。 図5は、サンプル4における凹凸面の写真である。 図6は、サンプル5における凹凸面の写真である。
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。本明細書に添付する図面においては、図を理解しやすくするために、縮尺及び縦横の寸法比等を実物のそれらから変更及び誇張してある。なお、以下に示す実施形態は、本開示の実施形態の一例である。したがって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるべきではない。
本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されない。例えば、「シート」は、「板」又は「フィルム」と呼ばれる部材も含む。
また、「板面(シート面、フィルム面)」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合に、対象となる板状部材(シート状部材、フィルム状部材)が延びる方向と一致する面を指す。また、板状(シート状、フィルム状)の部材に対して用いる法線方向とは、当該部材の板面(シート面、フィルム面)に対する法線が延びる方向を指す。
本明細書において、「平面視」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を当該部材の法線方向から見た状態を指す。例えば、ある板状の部材が「平面視において矩形状の形状を有する」とは、当該部材をその板面に対する法線方向から見たときに、当該部材が矩形状の形状を有することを意味する。
本明細書において用いる、形状、幾何学的条件及び物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語、並びに、長さ、角度及び物理的特性の値が指す範囲は、厳密にその範囲に限定されず、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含む。ただし、特に厳格に解釈すべき旨の記載がある場合を除く。
本開示の実施形態の化粧シート10は、例えば、建築物の内装及び外装、建具、家具及び家電等の表面、車両の内装等の最表層を構成する部材として用いられる。より詳細には、化粧シート10は、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装、外装用部材に用いられてもよい。また、化粧シート10は、包装材料、ディスプレイ用防眩フィルム、白板(ホワイトボード)又は黒板、クレジットカード、キャッシュカード、テレフォンカード、各種証明書類等の各種カード、各種キーボードの鍵盤、窓、扉、間仕切り等の透明板(窓硝子等)、人工皮革等に用いられてもよい。
本実施形態の化粧シート10は、艶消層30を備えている。艶消層30は、凹凸面32と、裏面34とを有する。凹凸面32と裏面34とは、互いに対向するとともに、互いに反対を向く。凹凸面32は、艶消層30の表面を構成する。凹凸面32は、いわゆるマット面である。艶消層30に入射した光は、この凹凸面32で乱反射して拡散する。これにより、艶消層30の表面における光沢が減少する。すなわち、艶消層30において艶消効果が発揮される。本実施形態では、凹凸面32に特定の形状が付与されている。したがって、凹凸面32における汚れが付着した箇所を布やティッシュペーパー等で擦ることにより、汚れを容易に除去できる。とりわけ、本実施形態の凹凸面32には、付着した粘度の高い汚染物質が容易に除去できるような形状が付与されている。これにより、凹凸面32における粘度の高い汚染物質の拭き取り性が向上している。とりわけ、本実施形態の化粧シート10では、凹凸面32が特定の形状を有していることにより、艶消効果を十分に発揮しながらも、汚れの拭き取り性が向上している。このような凹凸面32の形状については後述する。
以下、図1を参照して、このような艶消層30を備えた化粧シート10の一例について説明する。図1は、化粧シート10の一例の断面を示す。図示された例では、化粧シート10は、基材12と、意匠層20と、接着層14と、透明樹脂層16と、プライマー層18と、艶消層30と、をこの順に有している。なお、基材12、意匠層20、接着層14、透明樹脂層16及びプライマー層18は、いずれも化粧シート10に不可欠の構成要素ではない。化粧シート10は、基材12、意匠層20、接着層14、透明樹脂層16及びプライマー層18のうちの1つ以上を有しなくてもよい。また、化粧シート10は、特定の機能を発揮することが意図された他の部材(層)を有してもよい。
基材12は、艶消層30を支持する機能を有する。とりわけ本実施形態では、基材12は、意匠層20、接着層14、透明樹脂層16、プライマー層18及び艶消層30を支持する。基材12は、艶消層30の裏面34と対面して配置されている。基材12は、フィルム状の部材であってもよい。基材12の厚さは、10μm以上1mm以下であってもよい。好ましくは、基材12の厚さは、20μm以上300μm以下であってもよい。
基材12の材料として、例えば、樹脂材料、金属材料、繊維質材料を用いてもよい。樹脂材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂であってもよい。金属材料は、例えば、アルミニウム、鉄、銅、金、銀、クロム、ニッケル、コバルト、錫、チタニウム又はこれらの合金であってもよい。繊維質材料は、例えば、紙、織布、不織布又はこれらに樹脂を含侵させたものであってもよい。基材12は、これらの材料により構成される1層のみを含んでもよい。また、基材12は、これらの材料により構成される複数の層を含んでもよい。基材12が複数の層を含む場合、互いに異なる材料からなる複数の層を含んでもよい。
意匠層20は、化粧シート10を観察する観察者から視認されるべき意匠を表示する機能を有する。この意匠としては、例えば、絵、写真、図形、模様、マーク、文字、色彩等の絵柄であってもよい。意匠層20は、単色の色彩の絵柄を意匠として表示するものであってもよい。意匠層20は、艶消層30の裏面34と対面して配置されている。本実施形態では、意匠層20は、基材12と艶消層30との間に配置されている。意匠層20の厚さは、0.5μm以上20μm以下であってもよい。好ましくは、意匠層20の厚さは、1μm以上10μm以下であってもよい。さらに好ましくは、意匠層20の厚さは、2μm以上5μm以下であってもよい。
意匠層20は、着色層22と、絵柄層24とを含んでもよい。着色層22は、基材12の表面の全面に所望の色彩を付与する層である。着色層22は、いわゆるベタ層であってもよい。着色層22は、単一の色彩を有してもよい。また、着色層22は、複数の色で構成される模様を有してもよい。絵柄層24は、意匠層20が表示すべき意匠を構成する層である。着色層22及び絵柄層24は、それぞれインキを用いて、塗布、印刷等により形成され得る。インキとしては、例えば、バインダー樹脂と、顔料、染料等の着色剤とを含むものが使用され得る。なお、意匠層20は、着色層22及び絵柄層24のいずれか一方のみを有してもよい。すなわち、意匠層20は、着色層22のみを有してもよく、絵柄層24のみを有してもよい。
透明樹脂層16は、意匠層20を保護する機能を有する。また、透明樹脂層16は、化粧シート10の強度を高める機能を有する。透明樹脂層16は、艶消層30の裏面34と対面して配置されている。本実施形態では、透明樹脂層16は、意匠層20と艶消層30との間に配置されている。透明樹脂層16は、透明な樹脂材料で形成される。樹脂材料は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等であってもよい。透明樹脂層16は、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、また着色剤等の添加剤を含有してもよい。透明樹脂層16の厚さは、20μm以上150μm以下であってもよい。好ましくは、透明樹脂層16の厚さは、40μm以上120μm以下であってもよい。さらに好ましくは、透明樹脂層16の厚さは、60μm以上100μm以下であってもよい。
なお、本明細書で用いる「透明」とは、可視光透過率が、50%以上であることを意味し、好ましくは80%以上である。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm以上780nm以下の範囲内で1nm毎に測定したときの、各波長における全光線透過率の平均値として特定される。また、「透明」とは、無色透明及び着色透明を含む。
接着層14は、意匠層20と透明樹脂層16とを互いに接着する機能を有する。化粧シート10が意匠層20を有しない場合には、接着層14は、基材12と透明樹脂層16とを互いに接着してもよい。接着層14の材料として、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等の接着剤を用いてもよい。接着層14の厚さは、0.1μm以上30μm以下であってもよい。好ましくは、接着層14の厚さは、1μm以上15μm以下であってもよい。さらに好ましくは、接着層14の厚さは、2μm以上10μm以下であってもよい。
プライマー層18は、透明樹脂層16と艶消層30との間の密着性を向上させる機能を有する。プライマー層18は、例えば、樹脂材料で形成される。樹脂材料は、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂であってもよい。プライマー層18は、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。プライマー層18の厚さは、0.1μm以上10μm以下であってもよい。好ましくは、プライマー層18の厚さは、1μm以上8μm以下であってもよい。さらに好ましくは、プライマー層18の厚さは、2μm以上6μm以下であってもよい。
艶消層30は、化粧シート10の表面における艶消効果を発揮する層である。艶消層30は、表面に設けられた凹凸面32を有する。化粧シート10が基材12を有している場合、凹凸面32は基材12と反対側を向く。凹凸面32は、いわゆるマット面である。艶消層30に入射した光は、この凹凸面32で乱反射して拡散する。これにより、艶消層30の表面における光沢が減少する。すなわち、艶消層30において艶消効果が発揮される。本実施形態では、艶消層30は、樹脂層36と、複数の粒子38とを含む。樹脂層36は、艶消層30の本体部分を構成する。凹凸面32は、樹脂層36の表面に形成される。すなわち、樹脂層36が凹凸面32を有する。凹凸面32は、シワ構造を有する。複数の粒子38は、凹凸面32に特定のシワ構造を付与するためのシワ形成剤として機能する。
シワ構造は、筋状の凹凸構造を含む構造である(図2~図10を参照)。とりわけ、本実施の形態のシワ構造は、筋状の凸部及び/又は筋状の凹部を含む。筋状の凸部及び/又は筋状の凹部は、平面視において不規則な形状を有して不規則に配置される。シワ構造は、湾曲した複数の筋状の凸部と、複数の凸部により囲まれて形成される凹部とを含んでもよい。また、シワ構造は、湾曲した複数の筋状の凹部と、複数の凹部により囲まれて形成される凸部とを含んでもよい。「湾曲」とは、平面視において、1つの筋状の凸部又は凹部の延びる方向が一方側から他方側に反転する反転部分を有することを意味する。シワ構造は、蛇行する筋状の凸部と、この蛇行する筋状の凸部に囲まれて形成される凹部とを含んでもよい。また、シワ構造は、蛇行する筋状の凹部と、この蛇行する筋状の凹部に囲まれて形成される凸部とを含んでもよい。「蛇行」とは、平面視において、1つの筋状の凸部又は凹部が2つ以上の反転部分を含み、1つの凸部又は凹部における隣り合う2つの反転部分において、凸部又は凹部の延びる方向が互いに逆向きに反転することを意味する。
シワ構造における凸部及び凹部は、例えば、化粧シート10の表面の画像の明度差を利用して、互いに区別してもよい。例えば、化粧シート10の表面の濃度分布画像における最も濃い部分を階調255とし、濃度分布画像における最も薄い部分を階調0として、濃度分布画像の濃度を階調0~255に区分する。そして、このうち階調0~127を凹部、階調128~255を凸部と、二値化処理して区別してもよい。なお、凹部と凸部とを区分する階調の閾値は任意に設定できる。
艶消層30の厚さは、1μm以上であってもよい。好ましくは、艶消層30の厚さは、2μm以上であってもよい。より好ましくは、艶消層30の厚さは、3μm以上であってもよい。さらに好ましくは、艶消層30の厚さは、4μm以上であってもよい。また、艶消層30の厚さは、300μm以下であってもよい。好ましくは、艶消層30の厚さは、200μm以下であってもよい。より好ましくは、艶消層30の厚さは、100μm以下であってもよい。さらに好ましくは、艶消層30の厚さは、50μm以下であってもよい。なお、本実施形態において、艶消層30の厚さは、艶消層30のうち粒子38を除いた部分の厚さを意味する。すなわち、艶消層30の厚さは、樹脂層36の厚さである。樹脂層36の厚さは、樹脂層36の法線方向に平行な断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像から20箇所の厚さを測定し、20箇所の厚さの値の相加平均の値とする。なお、SEMの加速電圧は3kV、倍率は厚さに応じて設定する。また、他の層の厚さについても同様である。
凹凸面32は、化粧シート10の表面における艶消効果を十分に発揮することが求められる。その一方、化粧シート10においては、その表面が良好な拭き取り性を有することが求められる。しかし、従来、表面にシワ構造を有する化粧シートにおいては、そのシワ構造に起因して、化粧シートに付着した汚れの除去が困難であった。とりわけ、汚れが、クレヨン、靴墨、口紅等の粘度の高い汚染物質を含む場合、拭き取る際に汚染物質が広がってしまうことがある。したがって、粘度の高い汚染物質の除去は特に困難であった。したがって、表面にシワ構造を有する化粧シートにおいて、粘度の高い汚染物質に対する良好な拭き取り性が実現されたものは存在していなかった。
本件発明者らが、表面にシワ構造を有する化粧シートにおける、粘度の高い汚染物質に対する拭き取り性について鋭意検討を進めたところ、艶消層30の表面(凹凸面32)に特定の形状を付与することにより、化粧シート10の表面における汚染物質の拭き取り性が向上することがわかった。とりわけ、凹凸面32における、光沢度の値と、JIS B0601:2013に規定される平均長さRSmの値とを所定の範囲の値とすることにより、艶消層30が艶消効果を十分に発揮しながらも、艶消層30の表面(凹凸面32)における、粘度の高い汚染物質に対する拭き取り性が効果的に向上することがわかった。以下、本実施形態における凹凸面32の形状について説明する。
凹凸面32における、JIS Z8741:1997に規定される60°鏡面光沢度は5以下である。凹凸面32における60°鏡面光沢度が5以下であることにより、凹凸面32が十分な艶消効果を発揮できる。凹凸面32における60°鏡面光沢度は2以上であってもよい。また、凹凸面32における、JIS Z8741:1997に規定される85°鏡面光沢度は30以下であってもよい。凹凸面32における85°鏡面光沢度が30以下であることにより、凹凸面32がさらに十分な艶消効果を発揮できる。凹凸面32における85°鏡面光沢度は10以上であってもよい。使用者が手で触れたときに粗い触感を有する表面は、60°鏡面光沢度だけでなく85°鏡面光沢度も低い傾向がある。85°鏡面光沢度が10以上である凹凸面32は、使用者が手で触れたときに滑らかな触感を有する。したがって、凹凸面32における85°鏡面光沢度が10以上であることにより、良好な触感を有する凹凸面32が得られる。60°鏡面光沢度及び85°鏡面光沢度は、例えば、BYK-Gardner社製micro-gloss光沢計を用いて測定できる。
凹凸面32における、JIS B0601:2013に規定される平均長さRSmは、25μm以上35μm以下である。平均長さRSmは、キーエンス社製レーザー顕微鏡(型番:VK-X100)を用いて測定できる。平均長さ(曲線要素の平均長さ)RSmは、輪郭曲線の横方向のパラメータであり、基準長さにおける輪郭曲線要素の長さの平均である。平均長さRSmの数値が小さいほど凸部及び凹部の幅が狭くなり、表面形状はより幅が狭い凸部及び凹部を有する傾向があることを示す。
クレヨン、靴墨、口紅等の粘度の高い汚染物質は、凹凸面32の凹部に入り込むと、凹凸面32に対して強固に付着する。したがって、従来の化粧シートにおいては、粘度の高い汚染物質を凹凸面32から除去することは困難であった。本実施形態では、凹凸面32における平均長さRSmが25μm以上であることにより、艶消層30のシート面に沿った方向における凹凸面32の凹部の寸法が大きくなる。これにより、布やティッシュペーパー等の拭き取り部材が凹凸面32の凹部に入り込みやすくなる。したがって、凹凸面32の凹部に入り込んだ粘度の高い汚染物質が、拭き取り部材により除去されやすくなる。好ましくは、凹凸面32における平均長さRSmは、25.5μm以上であってもよい。さらに好ましくは、平均長さRSmは、26μm以上であってもよい。なお、本明細書における平均長さRSmの測定におけるカットオフ値は0.8mmである。
また、本実施形態では、凹凸面32における平均長さRSmが35μm以下であることにより、凹凸面32のシワ構造が粗くなることが抑制される。したがって、凹凸面32の光沢度が大きくなることを十分に抑制できる。すなわち、凹凸面32が、艶消効果を十分に発揮する。好ましくは、凹凸面32における平均長さRSmは、34μm以下であってもよい。さらに好ましくは、平均長さRSmは、33μm以下であってもよい。
凹凸面32における、最大高さRzは、3μm以上7μm以下であってもよい。最大高さRzは、JIS B0601:2013に準拠して測定できる。最大高さRzは、例えばキーエンス社製レーザー顕微鏡(型番:VK-X100)を用いて測定できる。最大高さRzは、輪郭曲線の山及び高さパラメータの一つであり、基準長さにおける輪郭曲線の中で、最も高い山の高さと最も深い谷の深さとの和である。最大高さRzの数値が大きいほど、山の頂部から見て大きい深さを有する谷が存在し、そのような谷が多く存在する傾向があることを示す。最大高さRzが7μm以下であることにより、凹凸面32の凹部内に入り込んだ汚染物質がさらに除去されやすくなる。また、最大高さRzが3μm以上であることにより、凹凸面32の光沢度が大きくなることをさらに抑制できる。すなわち、凹凸面32が、艶消効果をさらに発揮する。なお、本明細書における最大高さRzの測定におけるカットオフ値は0.8mmである。
樹脂層36は、樹脂組成物を含む。樹脂層36に用いられる樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂を含んでもよい。電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線硬化性官能基を有する樹脂である。電離放射線硬化性官能基は、電離放射線の照射によって架橋する基である。電離放射線硬化性官能基は、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基であってもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合及び/又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味する。電離放射線としては、紫外線(UV)、電子線(EB)、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線を用いてもよい。
電離放射線硬化性樹脂としては、電子線硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂を用いてもよい。電離放射線硬化性樹脂は、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いてもよい。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。とりわけ、重合性モノマーとしては、多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、2以上8以下であってもよい。好ましくは、多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、2以上6以下であってもよい。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
重合性オリゴマーは、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよい。重合性オリゴマーは、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等であってもよい。さらに、重合性オリゴマーは、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、及びノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等であってもよい。
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。重合性オリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよい。好ましくは、重合性オリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよい。さらに好ましくは、重合性オリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよい。
これらの重合性オリゴマーの官能基数は、2以上8以下であってもよい。好ましくは、重合性オリゴマーの官能基数は、2以上6以下であってもよい。重合性オリゴマーの重量平均分子量は、2500以上7500以下であってもよい。好ましくは、重合性オリゴマーの重量平均分子量は、3000以上7000以下であってもよい。さらに好ましくは、重合性オリゴマーの重量平均分子量は、3500以上6000以下であってもよい。ここで、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
本実施形態において、樹脂層36を形成する樹脂として、重合性オリゴマーと重合性モノマーとが組み合わされて用いられてもよい。重合性オリゴマーは、多官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよい。好ましくは、重合性オリゴマーは、多官能性ウレタンアクリレートオリゴマーであってもよい。重合性モノマーは、多官能の重合性モノマーであってもよい。好ましくは、重合性モノマーは、多官能性(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。さらに好ましくは、重合性モノマーは、多官能アクリレートモノマーであってもよい。重合性オリゴマーと重合性モノマーとが組み合わされて用いられる場合、重合性オリゴマーと重合性モノマーとの合計100質量部に対する重合性オリゴマーの含有量は、40質量部以上であってもよい。好ましくは、重合性オリゴマーの含有量は、50質量部以上であってもよい。さらに好ましくは、重合性オリゴマーの含有量は、60質量部以上であってもよい。さらに好ましくは、重合性オリゴマーの含有量は、70質量部以上であってもよい。さらに好ましくは、重合性オリゴマーの含有量は、80質量部以上であってもよい。重合性オリゴマーの含有量は、98質量部以下であってもよい。好ましくは、重合性オリゴマーの含有量は、95質量部以下であってもよい。さらに好ましくは、重合性オリゴマーの含有量は、92質量部以下であってもよい。
樹脂層36に用いられる樹脂組成物は、上述の樹脂の他、所望の性能等に応じて、他の成分を含んでもよい。例えば、樹脂層36に用いられる樹脂組成物は、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを含有してもよい。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
また、上述の樹脂が紫外線により硬化する紫外線硬化性樹脂である場合、光重合開始剤、光重合促進剤等の添加剤を含んでもよい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上を用いてもよい。光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものである。光重合促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上を用いてもよい。
粒子38は、凹凸面32に特定のシワ構造を付与するためのシワ形成剤として機能する。エキシマ光等を用いて樹脂の表面にシワ状の凹凸面を形成する従来技術では、凹凸面のシワ構造の形状を精密に制御することは困難だった。これについて本件発明者らが鋭意検討を進めたところ、艶消層30を形成するための樹脂組成物に、さらに粒子38を添加することにより、凹凸面32のシワ構造の形状を制御できることがわかった。
従来、シワ構造を有しない樹脂層にシリカ等の粒子を添加して、艶消層を形成する技術が知られている。この技術では、樹脂層の表面から突出する粒子により当該表面に凹凸が形成され、この凹凸が艶消効果を発揮する。これに対して、本実施形態では、凹凸面32における凹凸は、シワ構造により実現される。本実施形態の粒子38は、それ自体が凹凸面32における凹凸を形成することを意図されたものではない。この点において、シワ構造を有しない樹脂層に添加された粒子と、本実施形態の粒子38とは、本質的に異なる。本件発明者らは、後述する製造方法のように樹脂組成物にエキシマ光等を照射した際に、粒子38が起点となって、シワ構造を構成する凸部及び/又は凹部が形成されるものと推測している。これにより、シワ構造に、従来技術では形成することが困難だった形状を付与することが可能になったものと考えられる。本実施形態では、艶消層30が粒子38を含むことにより、凹凸面32における、平均長さRSmを25μm以上35μm以下とすることができた。以下、このような粒子38について説明する。
粒子38としては、例えば、有機粒子又は無機粒子を用いてもよい。有機粒子を構成する有機物として、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等を用いてもよい。無機粒子を構成する無機物として、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケート及び硫酸バリウム等を用いてもよい。この中で、好ましくは、無機粒子を構成する無機物として、シリカを用いてもよい。粒子38の形状は、例えば、球形、多面体、鱗片状、不定形等であってもよい。
粒子38の平均粒子径は、1μm以上であってもよい。好ましくは、粒子38の平均粒子径は、1.3μm以上であってもよい。さらに好ましくは、粒子38の平均粒子径は、1.5μm以上であってもよい。さらに好ましくは、粒子38の平均粒子径は、1.8μm以上であってもよい。粒子38の平均粒子径は、20μm以下であってもよい。好ましくは、粒子38の平均粒子径は、15μm以下であってもよい。さらに好ましくは、粒子38の平均粒子径は、10μm以下であってもよい。なお、本明細書において、粒子38の平均粒子径は、レーザ光回折法による粒度分布測定における質量平均値d50として測定したものである。
複数の粒子38は、樹脂層36の厚さの1/2以上の最大寸法を有する粒子38を含んでもよい。本件発明者らの検討により、複数の粒子38が、樹脂層36の厚さの1/2以上の最大寸法を有する粒子38を含む場合に、凹凸面32のシワ構造の形状をより適切に制御できることがわかった。好ましくは、複数の粒子38は、樹脂層36の厚さ以上の最大寸法を有する粒子38を含んでもよい。
粒子38の最大寸法は、艶消層30の法線方向に平行な断面において観察される粒子38の断面において測定される。粒子38の断面において、当該粒子を横断する直線のうち、最も長い直線の長さが粒子38の最大寸法である。粒子38の最大寸法をこのように測定することにより、艶消層30に含まれる粒子38の最大寸法を簡単に測定できる。なお、粒子38における断面の位置によっては、上述のようにして測定された粒子38の最大寸法は、当該粒子38の真の最大寸法とは異なることもあり得る。しかし、上述のようにして測定された粒子38の最大寸法が、当該粒子38の真の最大寸法よりも大きくなることはない。したがって、粒子38の真の最大寸法は、上述のようにして測定された粒子38の最大寸法と等しいかこれより大きいものと推測できる。
樹脂層36を形成する樹脂100質量部に対して、粒子38の含有量は0.5質量部以上であってもよい。好ましくは、粒子38の含有量は0.75質量部以上であってもよい。さらに好ましくは、粒子38の含有量は1.0質量部以上であってもよい。さらに好ましくは、粒子38の含有量は1.2質量部以上であってもよい。樹脂層36を形成する樹脂100質量部に対して、粒子38の含有量は25.0質量部以下であってもよい。好ましくは、粒子38の含有量は15.0質量部以下であってもよい。さらに好ましくは、粒子38の含有量は10.0質量部以下であってもよい。さらに好ましくは、粒子38の含有量は7.5質量部以下であってもよい。さらに好ましくは、粒子38の含有量は6.0質量部以下であってもよい。
次に、本実施形態の化粧シート10の製造方法の一例について説明する。まず、基材12、意匠層20、接着層14、透明樹脂層16及びプライマー層18の積層体を準備する。次に、この積層体のプライマー層18上に、後に樹脂層36となる樹脂組成物と粒子38との混合物を配置する。混合物は、例えば、流動性を有する状態でプライマー層18上に塗布されてもよい。混合物は、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等により塗布されてもよい。また、混合物は、シート状に成形された状態でプライマー層18上に貼付されてもよい。
次に、樹脂組成物に、380nmを超える波長を有する光を照射して、樹脂組成物の全体を予備硬化させる。好ましくは、この光の波長は、385nm以上400nm以下であってもよい。なお、この予備硬化の工程は必須の工程ではなく、省略してもよい。
その後、樹脂組成物の表面に、100nm以上380nm以下の波長を有する光を照射する。これにより、樹脂組成物の表面にシワ構造が形成される。このシワ構造が形成されるメカニズムは、以下のとおりであると推測される。樹脂組成物の表面に、100nm以上380nm以下の波長を有する光を照射すると、この光の波長が短いことから、光のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層には光のエネルギーが到達しない。このとき、当該樹脂組成物の表面部分だけが硬化を始める。これにより、表面だけが硬化収縮を生じ、樹脂組成物の表面にシワ構造が形成される。樹脂組成物における、表面からのある厚さの範囲内の部分のみが硬化した状態において生じていると考えられる。また、このとき、粒子38がシワ構造の形成のきっかけとなる核のような機能を有しているものと考えられる。したがって、粒子38を中心に樹脂組成物の表面部分の樹脂が集まり、シワ構造の凸部及び凹部が形成されるものと推測される。
100nm以上380nm以下の波長を有する光としては、例えば、Ar、Kr、Xe、Ne等の希ガス、F、Cl、I、Br等のハロゲンによる希ガスのハロゲン化物等ガス、又はこれらの混合ガスの放電によって形成される励起状態の2量体、すなわちエキシマ(excimer)からの紫外線波長域の光を含む「エキシマ光」を用いてもよい。エキシマ光の波長及び光源となるエキシマは、例えばArのエキシマから輻射される波長126nmの光(以下、「126nm(Ar)」のように略称する)、146nm(Kr)、157nm(F)、172nm(Xe)、193nm(ArF)、222nm(KrCl)、247nm(KrF)、308nm(XeCl)、351nm(XeF)等であってもよい。エキシマ光としては、自然放出光、誘導放出によるコヒーレンス(可干渉性)の高いレーザ光のいずれでもよい。なお、このような光を放射する放電ランプは、「エキシマランプ」とも称される。エキシマ光は波長ピークが単一であり、また通常の紫外線(例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ等から放射される紫外線)と比べて波長の半値幅が狭い。このようなエキシマ光を用いることで、シワの形成が安定し、安定的に艶消効果が向上する。
樹脂組成物の表面に照射される光の波長は120nm以上であってもよい。好ましくは、光の波長は140nm以上であってもよい。さらに好ましくは、光の波長は150nm以上であってもよい。さらに好ましくは、光の波長は155nm以上であってもよい。樹脂組成物の表面に照射される光の波長は320nm以下であってもよい。好ましくは、光の波長は300nm以下であってもよい。さらに好ましくは、光の波長は250nm以下であってもよい。さらに好ましくは、光の波長は200nm以下であってもよい。さらに好ましくは、光の波長は172nm(Xe)であってもよい。
樹脂組成物の表面に照射される光の積算露光量は1mJ/cm以上であってもよい。好ましくは、積算露光量は10mJ/cm以上であってもよい。さらに好ましくは、積算露光量は30mJ/cm以上であってもよい。さらに好ましくは、積算露光量は50mJ/cm以上であってもよい。樹脂組成物の表面に照射される光の積算露光量は1000mJ/cm以下であってもよい。好ましくは、積算露光量は500mJ/cm以下であってもよい。さらに好ましくは、積算露光量は300mJ/cm以下であってもよい。
樹脂組成物の表面に照射される光の出力密度は0.001W/cm以上であってもよい。好ましくは、出力密度は0.01W/cm以上であってもよい。さらに好ましくは、出力密度は0.03W/cm以上であってもよい。樹脂組成物の表面に照射される光の出力密度は10W/cm以下であってもよい。好ましくは、出力密度は5W/cm以下であってもよい。さらに好ましくは、出力密度は3W/cm以下であってもよい。
樹脂組成物の表面に光を照射する際の酸素濃度は1000ppm以下であってもよい。好ましくは、酸素濃度は750ppm以下であってもよい。さらに好ましくは、酸素濃度は500ppm以下であってもよい。さらに好ましくは、酸素濃度は300ppm以下であってもよい。
上述のように、樹脂組成物の表面に100nm以上380nm以下の波長を有する光を照射した後、樹脂組成物に、当該光の波長よりも長い波長を有する光を照射する。これにより、樹脂組成物の表面から深さ方向に離れた部分における硬化が進行し、樹脂組成物の全体が硬化する。このとき、樹脂組成物の表面部分における硬化の進行度合いと、表面から深さ方向に離れた部分における硬化の進行度合いの差により、シワ構造の形成がさらに進行する。このように樹脂組成物の全体を硬化させる際に用いられる光として、例えば紫外線(UV)を用いてもよい。また、樹脂組成物の全体を硬化させる際には、紫外線に代えて他の電離放射線、例えば電子線(EB)を用いてもよい。
本実施形態の化粧シート10は、凹凸面32を有する艶消層30を備え、艶消層30は、樹脂層と複数の粒子とを含み、凹凸面32は、シワ構造を有し、凹凸面32における、JIS Z8741:1997に規定される60°鏡面光沢度は、5以下であり、凹凸面32における、JIS B0601:2013に規定される平均長さRSmは、25μm以上35μm以下である。
クレヨン、靴墨、口紅等の粘度の高い汚染物質は、凹凸面32の凹部に入り込むと、凹凸面32に対して強固に付着する。したがって、従来の化粧シートにおいては、粘度の高い汚染物質を凹凸面32から除去することは困難であった。本実施形態の化粧シート10によれば、凹凸面32における平均長さRSmが25μm以上であることにより、艶消層30のシート面に沿った方向における凹凸面32の凹部の寸法が大きくなる。これにより、布やティッシュペーパー等の拭き取り部材が凹凸面32の凹部に入り込みやすくなる。したがって、凹凸面32の凹部に入り込んだ粘度の高い汚染物質が、拭き取り部材により除去されやすくなる。
また、本実施形態の化粧シート10によれば、凹凸面32における平均長さRSmが35μm以下であることにより、凹凸面32のシワ構造が粗くなることが抑制される。したがって、凹凸面32の光沢度が大きくなることを十分に抑制できる。すなわち、凹凸面32が、艶消効果を十分に発揮できる。さらに、本実施形態の化粧シート10によれば、凹凸面32における光沢度が5以下であることにより、凹凸面32がさらに十分な艶消効果を発揮できる。
以下、本件発明者らが実施した実験の一例について説明する。なお、本開示の実施の形態は、以下の実験結果により限定されるものではない。
以下の条件にて、サンプル1~5を作製した。各サンプルについて、艶消層の表面の写真を撮影した。図2~図6は、各サンプルの艶消層の表面の写真である。また、各サンプルについて、表面における光沢度並びに表面粗さ(平均長さRSm及び最大高さRz)を測定した。さらに、各サンプルについて、表面の拭き取り性を評価した。表1に、各サンプルの条件、測定された光沢度、最大高さRz及び平均長さRSmの値、拭き取り性の評価、並びに、対応する表面写真の図面番号を示す。
サンプル1
50質量部の多官能オリゴマー(平均官能基数:3)及び50質量部の2官能モノマーを混合し、これに3質量部の光重合開始剤を添加して、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物に3質量部の粒子Aを添加して、エネルギー線硬化性インキを得た。粒子Aは、平均粒子径5μmのシリカ粒子である。粒子Aは、上述の実施形態における粒子38と同様の効果を発揮することが意図されている。すなわち、サンプル1における粒子Aは、シワ構造を構成する凸部及び/又は凹部を形成するための起点となることが意図されている。したがって、サンプル1における粒子Aは、それ自体が凹凸面における凹凸を形成することが意図されたものではない。そのため、サンプル1における粒子Aの添加量は、後述のサンプル4における粒子Bの添加量と比較して少なくなっている。
コロナ放電処理を施した厚さ60μmのポリプロピレン製のシートの一方の面に、厚さ3μmの白色絵柄層、厚さ2μmの2液硬化プライマー層を設けた。このプライマー層上に上記エネルギー線硬化性インキを塗布して乾燥させた。エネルギー線硬化性インキの塗布量は、5g/m(乾燥時)であった。
エネルギー線硬化性インキに対して、波長395nmのUV-LED光源を用いて紫外線を照射して樹脂組成物の予備硬化を行った。出力は0.6W/cm、積算露光量は30mJ/cmであった。
次に、エネルギー線硬化性インキに対して、波長172nmのエキシマランプによりエキシマ光を照射して、樹脂組成物の表面を硬化させた。出力は30mW/cm、積算露光量は6mJ/cmであった。
その後、エネルギー線硬化性インキに対して、波長365nmの高圧水銀灯により紫外線を照射して、樹脂組成物の全体を硬化させ、エネルギー線硬化性インキから艶消層を得た。出力は200W/cm、積算露光量は400mJ/cmであった。硬化後の艶消層の表面には、シワ構造を有する凹凸面が形成されていた。
サンプル2
樹脂比率を、40質量部の多官能オリゴマー(平均官能基数:3)、60質量部の2官能オリゴマーとした以外は、サンプル1と同様とした。硬化後の艶消層の表面には、シワ構造を有する凹凸面が形成されていた。
サンプル3
樹脂比率を、30質量部の多官能オリゴマー(平均官能基数:3)、30質量部の2官能モノマー及び40質量部の単官能モノマーに変更し、粒子Aを2質量部に変更し、光重合開始剤を0.5質量部とした以外は、サンプル1と同様とした。硬化後の艶消層の表面には、シワ構造を有する凹凸面が形成されていた。
サンプル4
65質量部の多官能オリゴマー(平均官能基数:3)及び35質量部の2官能モノマーを混合し、これに0.5質量部の光重合開始剤を添加して、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物に30質量部の粒子Bを添加して、エネルギー線硬化性インキを得た。粒子Bは、平均粒子径4μmのシリカ粒子である。粒子Bは、それ自体が凹凸面における凹凸を形成することが意図されている。そのため、サンプル4における粒子Bの添加量は、サンプル1~3及び5における粒子Aの添加量と比較して多くなっている。
エネルギー線硬化性インキに対して、高圧水銀灯により紫外線を照射して、樹脂組成物の全体を硬化させ、エネルギー線硬化性インキから艶消層を得た。出力は200W/cm、積算露光量は400mJ/cmであった。硬化後の艶消層の表面には、粒子Bの存在に起因する凹凸面が形成されていた。すなわち、粒子Bが存在する部分に凸部が形成され、これにより、艶消層の表面に凹凸面が形成されていた。その一方、艶消層の表面には、シワ構造を有する凹凸面は形成されなかった。
サンプル5
硬化時にUV-LED光源を使用せず、エキシマ光及び高圧水銀灯による紫外線の積算露光量を11/2にした以外は、サンプル2と同様とした。硬化後の艶消層の表面には、シワ構造を有する凹凸面が形成されていた。
表1において、「光沢度」の欄の「60°」は、JIS Z8741:1997に規定される60°鏡面光沢度を示す。同様に、「85°」は、JIS Z8741:1997に規定される85°鏡面光沢度を示す。60°鏡面光沢度及び85°鏡面光沢度は、BYK-Gardner社製micro-gloss光沢計を用いて測定した。
表1において、「表面粗さ」の欄の「RSm」は、JIS B0601:2013に規定される平均長さRSmを示す。また、「Rz」は、JIS B0601:2013に規定される最大高さRzを示す。平均長さRSm及び最大高さRzは、キーエンス社製レーザー顕微鏡(型番:VK-X100)を用いて測定した。対物レンズの倍率は50倍とした。艶消層の20箇所について平均長さRSm及び最大高さRzを測定し、それらの相加平均の値を各サンプルの平均長さRSm及び最大高さRzの値とした。
拭き取り性は、クレヨン及び靴墨を用いて評価した。
クレヨンを用いた拭き取り性評価
クレヨンとしては、赤色のクレヨンを用いた。サンプル1~5のシートにクレヨンを付着させ、所定の時間静置した後、拭き取りを行った。まず、家庭用洗剤の原液を含ませた布で、クレヨンを拭き取った。この段階でクレヨンが肉眼で視認できなくなった場合には、評価をAとした。クレヨンが肉眼で視認できた場合には、次に、消毒用エタノールを含ませた布で拭き取った。この段階でクレヨンが肉眼で視認できなくなった場合には、評価をBとした。この段階を経てもクレヨンが肉眼で視認できた場合には、評価をCとした。
靴墨を用いた拭き取り性評価
クレヨンの代わりに黒色の靴墨を用いたこと以外は、クレヨンを用いた拭き取り性評価と同様に評価を行った。
Figure 2023051146000002
表1に示されているように、サンプル4では、クレヨンを用いた拭き取り性評価及び靴墨を用いた拭き取り性評価のいずれも評価がBである。したがって、凹凸面がシワ構造を有しないサンプル4は、良好な拭き取り性を有しないことがわかる。
凹凸面がシワ構造を有するサンプル1~3及び5のうち、60°鏡面光沢度が5以下であるサンプル1~3は、十分な艶消効果が発揮されていることがわかる。また、サンプル1~3及び5のうち、平均長さRSmが25μm以上であるサンプル1、2及び5では、クレヨンを用いた拭き取り性評価及び靴墨を用いた拭き取り性評価のいずれも評価がAであり、良好な拭き取り性を有していることがわかる。さらに、サンプル1~3及び5のうち、平均長さRSmが35μm以下であるサンプル1~3では、60°鏡面光沢度が5以下であり、十分な艶消効果が発揮されていることがわかる。
したがって、本実験では、凹凸面がシワ構造を有するとともに、60°鏡面光沢度が5以下であり、平均長さRSmが25μm以上35μm以下である、サンプル1及び2において、凹凸面が、艶消効果を十分に発揮するとともに、クレヨンや靴墨等の粘度の高い汚染物質に対して良好な拭き取り性を有するという結果が得られた。
具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述の具体例は一実施の形態を限定しない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施でき、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行える。
10 化粧シート
12 基材
14 接着層
16 透明樹脂層
18 プライマー層
20 意匠層
22 着色層
24 絵柄層
30 艶消層
32 凹凸面
34 裏面
36 樹脂層
38 粒子

Claims (1)

  1. 凹凸面を有する艶消層を備えた化粧シートであって、
    前記艶消層は、樹脂層と複数の粒子とを含み、
    前記凹凸面は、シワ構造を有し、
    前記凹凸面における、JIS Z8741:1997に規定される60°鏡面光沢度は、5以下であり、
    前記凹凸面における、JIS B0601:2013に規定される平均長さRSmは、25μm以上35μm以下である、化粧シート。
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