JP7338768B1 - 化粧シート - Google Patents

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Abstract

【課題】抗ウイルス性を効率よく発現し得るとともに、抗ウイルス性の経時的低下を抑制し得る化粧シートを提供する。【解決手段】第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面を有する化粧シートであって、前記化粧シートは、前記第1面から前記第2面に向けて、保護層、装飾層及び基材をこの順に有し、前記保護層は、バインダー樹脂及び抗ウイルス剤を有し、前記第1面は、下記条件1及び2を満たす、化粧シート。<条件1>ISO 25178-2:2012の界面の展開面積比であるSdrが0.500以上。<条件2>JIS B0601:2013の最大高さであるRzと、JIS B0601:2013の粗さ曲線要素の平均長さであるRSmとの比をRSm/Rzと定義した際に、RSm/Rzが5.5以下。【選択図】なし

Description

本開示は、化粧シートに関する。
壁、天井、床等の建築物の内装用部材;外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の建築物の外装用部材;窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材;箪笥、棚、机等の一般家具;食卓、流し台等の厨房家具;家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板;車両の内装又は外装用部材;等の物品の表面に対して、化粧シートが貼り合わせられる場合がある。
化粧シートは、例えば、物品に対して、所望の艶、意匠及び触感を付与することを目的として用いられている。
抗菌トレンド及びインフルエンザ等の各種症対策のため、近年、化粧シートには、上記の目的の他に、抗菌性及び抗ウイルス性が求められている。
抗ウイルス性は、例えば、化粧シートの最表面に位置する保護層に抗ウイルス剤を添加することにより付与することができる。抗ウイルス性化粧シートに関して、例えば、特許文献1及び2等が提案されている。
特開2022-086989号公報 特開2022-041927号公報
抗ウイルス性は、抗ウイルス剤の添加量を増やすほど高くなる傾向がある。しかし、抗ウイルス剤の添加量を増やし過ぎた場合、抗ウイルス剤に由来する色味が生じたり、保護層の塗膜物性が低下したりする場合がある。特許文献1及び2では、抗ウイルス性を効率よく発現させることを何ら検討していない。
また、化粧シートの表面には、人の手足及び清掃用具等が触れることが多い。化粧シートの表面が、人の手足及び清掃用具等により擦られると、抗ウイルス剤が化粧シートの表面から脱離し、抗ウイルス性が経時的に低下する場合がある。特許文献1及び2では、抗ウイルス性の経時的低下について何ら検討していない。
本開示は、抗ウイルス性を効率よく発現し得るとともに、抗ウイルス性の経時的低下を抑制し得る化粧シートを提供することを課題とする。
上記課題を解決すべく、本開示は、下記の化粧シートを提供する。
第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面を有する化粧シートであって、
前記化粧シートは、前記第1面から前記第2面に向けて、保護層、装飾層及び基材をこの順に有し、
前記保護層は、バインダー樹脂及び抗ウイルス剤を有し、
前記第1面は、下記条件1及び2を満たす、化粧シート。
<条件1>
ISO 25178-2:2012の界面の展開面積比であるSdrが0.500以上。
<条件2>
JIS B0601:2013の最大高さであるRzと、JIS B0601:2013の粗さ曲線要素の平均長さであるRSmとの比をRSm/Rzと定義した際に、RSm/Rzが5.5以下。
本開示によれば、抗ウイルス性を効率よく発現し得るとともに、抗ウイルス性の経時的低下を抑制し得る化粧シートを提供することができる。
本開示の化粧シートの一実施形態を示す断面図である。 本開示の化粧シートの他の実施形態を示す断面図である。 本開示の化粧シートの一実施形態を示す平面視における模式図である。
[化粧シート]
以下、本開示の化粧シートについて説明する。
本開示の化粧シートは、
第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面を有する化粧シートであって、
前記化粧シートは、前記第1面から前記第2面に向けて、保護層、装飾層及び基材をこの順に有し、
前記保護層は、バインダー樹脂及び抗ウイルス剤を有し、
前記第1面は、下記条件1及び2を満たす、ものである。
<条件1>
ISO 25178-2:2012の界面の展開面積比であるSdrが0.500以上。
<条件2>
JIS B0601:2013の最大高さであるRzと、JIS B0601:2013の粗さ曲線要素の平均長さであるRSmとの比をRSm/Rzと定義した際に、RSm/Rzが5.5以下。
本開示の化粧シートは、抗ウイルスの用途に有用である。
一般的に、同一の材料及び層構成の物品であっても、「抗ウイルス性」の効力と、「抗菌性」及び「抗黴性」の効力とは、各種の条件により相関しない場合がある。各種の条件としては、ウイルスの種類、細菌の種類、黴の種類、環境条件等が挙げられる。このため、本開示の化粧シートは、細菌の種類、環境条件、及び要求する抗菌性の水準に応じて、抗ウイルスの用途のみならず、抗菌の用途にも適用することができる場合もある。なお、カビは菌類の一種であるため、本開示の化粧シートは、同樣に、カビの種類、環境条件、及び要求する抗カビ性の水準に応じて、抗カビの用途にも適用することができる場合もある。
図1及び図2は、本開示の化粧シート1の実施の形態を示す断面図である。図1及び図2は、化粧シート1を厚さ方向に平行な面で切断した断面図である。化粧シート1の厚さ方向は、図1及び図2のZ方向である。
図1及び図2において、化粧シート1は、第1面から第2面に向けて、保護層4、装飾層6及び基材5をこの順に有している。図1及び図2では、上側の面が第1面、下側の面が第2面である。
図1及び図2において、装飾層6は、着色層6a及び絵柄層6bの2層構成である。
図2の化粧シート1は、保護層4、装飾層6及び基材5の他に、プライマー層9、透明性樹脂層8及び接着層7を有している。
図1及び図2は模式的な断面図である。すなわち、化粧シート1を構成する各層の縮尺、及び表面形状の縮尺は、図示しやすくするために模式化したものであり、実際の縮尺とは相違している。
本開示の化粧シートは、図1及び図2の積層構成に限定されない。
<第1面>
本開示の化粧シートは、第1面を有する。化粧シートの第1面は、人が視認したり、人が触ったりする側の面である、化粧シートの表側の面として用いることが好ましい。
本開示の化粧シートは、第1面側の最表面に位置する層が保護層であることが好ましい。
化粧シートの第1面は、下記条件1及び2を満たすことを要する。
<条件1>
ISO 25178-2:2012の界面の展開面積比であるSdrが0.500以上。
<条件2>
JIS B0601:2013の最大高さであるRzと、JIS B0601:2013の粗さ曲線要素の平均長さであるRSmとの比をRSm/Rzと定義した際に、RSm/Rzが5.5以下。
Sdrは、第1面の表面積をA1、第1面のXY平面に投影した時の面積をA0とした際に、下記の式で表すことができる。Sdrが大きいほど、平滑な面を基準とした第1面の表面積の増加割合が大きいといえる。
Sdr=(A1/A0)-1
Sdrが大きいと、ウイルスが抗ウイルス剤と接触する確率が上がりやすくなる。一方、Sdrが小さいと、ウイルスが抗ウイルス剤と接触する確率が下がりやすくなる。このため、Sdrが0.500未満であり条件1を満たさない場合、抗ウイルス性を効率よく発現することができない。抗ウイルス性を効率よく発現することができない場合、抗ウイルス活性値を所定の値にするために多くの時間を要してしまう。
なお、Sdrが0.500未満であっても、抗ウイルス剤を過剰に添加すれば、抗ウイルス性を良好にできると考えられる。しかし、Sdrが0.500未満の保護層に抗ウイルス剤を過剰に添加しても、抗ウイルス性を効率よく発現することはできない。また、保護層に抗ウイルス剤を過剰に添加した場合、抗ウイルス剤に由来する色味が生じたり、保護層の塗膜物性が低下したりする場合がある。
Sdrが大きくなるほど、第1面の表面形状は、シワ等の凹凸が緻密に配置されている形状である傾向が高くなる。シワ等の凹凸が緻密に配置されている場合、第1面の凹部にウイルスを含む皮脂が入り込みにくくなり、シワの稜線部や凹部において抗ウイルス性を十分に発揮できなくなる可能性がある。
第1面のSdrは、0.500以上1.500以下であることが好ましく、0.700以上1.250以下であることがより好ましく、0.800以上1.000以下であることがさらに好ましい。
本明細書で示す構成要件において、数値の上限の選択肢及び下限の選択肢がそれぞれ複数示されている場合には、上限の選択肢から選ばれる一つと、下限の選択肢から選ばれる一つとを組み合わせ、数値範囲の実施形態とすることができる。
例えば、上記のSdrの場合、0.500以上1.500以下、0.500以上1.250以下、0.500以上1.000以下、0.700以上1.500以下、0.700以上1.250以下、0.700以上1.000以下、0.800以上1.500以下、0.800以上1.250以下、0.800以上1.000以下等の数値範囲の実施形態が挙げられる。
保護層のうち、人の手足及び清掃用具等の物体と接触しやすい箇所は保護層の凸部である。そして、保護層の凹凸の標高差が大きいほど、保護層の凹部に物体は接触しにくい。また、保護層の凹凸の間隔が狭いほど、保護層の凹部に物体は接触しにくい。
RSm/Rzが小さいことは、シワ等の凹凸の間隔が狭いこと、及び/又は、シワ等の凹凸の標高差が大きいこと、を意味している。RSm/Rzが小さいと、保護層の凹部に物体が接触しにくくなり、凹部の抗ウイルス剤を脱離し難くすることができるため、抗ウイルス性の経時的低下を抑制しやすくできる。一方、RSm/Rzが大きいと、保護層の凹部に物体が接触しやすくなり、凹部の抗ウイルス剤が脱離しやすくなるため、抗ウイルス性が経時的に低下しやすくなる。このため、RSm/Rzが5.5を超えて条件2を満たさない場合、抗ウイルス性の経時的低下を抑制することができない。
RSm/Rzが過剰に小さいことは、シワ等の凹凸の間隔が過剰に狭いこと、及び/又は、シワ等の凹凸の標高差が過剰に大きいこと、を意味している。シワ等の凹凸の間隔が過剰に狭い場合、第1面の凹部にウイルスを含む皮脂が入り込みにくくなり、凹部において抗ウイルス性を十分に発揮できなくなる可能性がある。シワ等の凹凸の標高差が過剰に大きい場合、清掃時に布等の清掃用具が破れる可能性がある。
第1面のRSm/Rzは、3.0以上5.5以下であることが好ましく、3.5以上5.3以下であることがより好ましく、4.0以上5.2以下であることがさらに好ましい。
化粧シートの第1面は、Rzが4.5μm以上8.5μm以下であることが好ましく、5.0μm以上8.0μm以下であることがより好ましく、5.5μm以上7.5μm以下であることがさらに好ましい。
Rzを4.5μm以上とすることにより、条件2を満たしやすくできるため、抗ウイルス性の経時的低下をより抑制しやすくできる。Rzを8.5μm以下とすることにより、清掃時に布等の清掃用具が破れることを抑制しやすくできる。
化粧シートの第1面は、RSmが20.0μm以上50.0μm以下であることが好ましく、22.0以上45.0μm以下であることがより好ましく、25.0μm以上40.0μm以下であることがさらに好ましい。
RSmを20.0μm以上とすることにより、第1面の凹部にウイルスを含む皮脂が入り込みやすくなるため、抗ウイルス性をより効率よく発現しやすくできる。RSmを50.0μm以下とすることにより、条件2を満たしやすくできるため、抗ウイルス性の経時的低下をより抑制しやすくできる。
化粧シートの第1面は、JIS B0601:2013の算術平均粗さであるRaが、0.6μm以上1.5μm以下であることが好ましく、0.7μm以上1.3μm以下であることがより好ましく、0.8μm以上1.1μm以下であることがさらに好ましい。
Raを0.6μm以上とすることにより、化粧シートの艶消し性を良好にしやすくできる。Raを1.5μm以下とすることにより、化粧シートが白っぽく見えることにより、化粧シートの意匠性が低下することをより抑制しやすくできる。
《表面形状の測定方法》
本明細書において、Sdr、RSm、Rz及びRa等の表面形状は、レーザー顕微鏡により測定したものとする。レーザー顕微鏡を用いた表面形状の測定では、測定領域を縦203.6μm×横271.5μmとする。レーザー顕微鏡の測定時には、対物レンズを50倍とする。
また、本明細書において、Sdr、RSm、Rz及びRa等の表面形状の値は、化粧シートの表面形状の任意の1箇所と、その他の任意の8箇所の合計9箇所の測定値の平均値とする。任意の9箇所については、互いに離れた箇所としてもよいし、互いに近接又は接していてもよい。
1箇所の測定領域のSdrの値は、1箇所の測定領域の全体から算出する。1箇所のRSm、Rz及びRaの値は、測定領域に対応する測定画面において、縦方向に8の断面、横方向に7の断面について測定して得られた、合計15の断面の測定値の平均値とする。縦方向及び横方向の断面の間隔は、間隔が狭くなり過ぎない範囲で適宜設定すればよい。RSm、Rz及びRaを算出する際のカットオフ値は0.8mmとする。
表面形状を測定できるレーザー顕微鏡としては、形状解析レーザー顕微鏡(「VK-X150(制御部)/VK-X160(測定部)」、株式会社キーエンス製)が挙げられる。
<積層構成>
本開示の化粧シートは、第1面から第2面に向けて、保護層、装飾層及び基材をこの順に有する。化粧シートの第1面側の最表面に位置する層は、保護層であることが好ましい。
本開示の化粧シートは、保護層、装飾層及び基材以外の層を有していてもよい。保護層、装飾層及び基材以外の層としては、プライマー層、透明性樹脂層及び接着層等が挙げられる。化粧シートの積層構成の実施形態としては、下記(1)及び(2)が挙げられる。
(1)第1面から第2面に向けて、保護層、装飾層及び基材をこの順に有する構成。
(2)第1面から第2面に向けて、保護層、プライマー層、透明性樹脂層、接着層、装飾層及び基材をこの順に有する構成。
《保護層》
保護層は、バインダー樹脂及び抗ウイルス剤を有する。
本開示の化粧シートにおける保護層は、第1面側の最表面に位置することが好ましい。保護層は、例えば、装飾層及び基材を保護する役割を有する。また、保護層は、抗ウイルス剤を含むことにより、化粧シートに抗ウイルス性を付与する役割を有する。
保護層は、化粧シートを平面視した際に、化粧シートの全面に有することが好ましい。
保護層は、Sdrを上述した範囲としやすくするため、凹凸が緻密に配置され、かつ、凹凸の傾斜角が大きい表面形状を有することが好ましい。保護層は、RSm/Rzを上述した範囲としやすくするため、RSmが小さい、及び/又は、Rzが大きい表面形状を有することが好ましい。このため、保護層の表面形状は、シワにより構成される凹凸形状であることが好ましい。
ただし、保護層の表面形状がシワにより構成される凹凸形状を有していても、Sdr及びRSm/Rzを上述した範囲にできるとは限らない。Sdr及びRSm/Rzを上述した範囲にしやすくするためには、シワの密度及びシワの標高差を高くすることが重要である。そして、後述するA2の手法でシワの密度及びシワの標高差を高くするためには、保護層を形成する硬化性樹脂組成物として、後述する所定の多官能モノマーを含むことが重要である。ただし、シワの標高差を高くすると、凸部の裾野が広がることによってRSmが大きくなり、RSm/Rzが小さくならない場合がある。このため、RSm/Rzを上述した範囲にしやすくするためには、保護層を形成する硬化性樹脂組成物として、後述する所定の多官能モノマーを含み、かつ、前記多官能モノマーと多官能オリゴマーとの配合割合を、後述する所定の配合割合とすることが重要である。
なお、従来の汎用的な保護層は、バインダー樹脂及びマット剤を含み、マット剤の粒子形状に基づいて凹凸形状を形成している。従来の汎用的な保護層では、緻密かつ傾斜角の大きい凹凸形状を形成することが困難であるため、Sdr及びRSm/Rzを上述した範囲にすることは困難である。
Sdr及びRSm/Rzが上述した範囲である保護層は、例えば、下記A1又はA2の手法で作製することができる。下記A2の手法の場合、バインダー樹脂組成物の配合を調整するとともに、バインダー樹脂組成物を硬化する際の波長を制御することが重要である。
A1:Sdr及びRSm/Rzが上記範囲となる表面形状をシミュレーションで作成する。シミュレーションで作成した形状が反映されるように、金属等の型の母材の表面をエッチング又は切削することにより、型を作製する。型に保護層形成用の組成物を流し込み、型から前記組成物を取り出することにより、保護層を得ることができる。あるいは、基材上に保護層形成用の組成物を塗布した後、前記型を押し当てて賦型し、前記型を剥離することにより、保護層を得ることができる。
A2:基材又は装飾層上に、バインダー樹脂組成物、抗ウイルス剤及びシワ形成安定剤を含む保護層形成用の組成物を塗布、硬化することにより、保護層を得ることができる。
シワに関する態様としては、例えば図3に示される態様が挙げられる。
図3には、化粧シート1の第1面側の表面に、平面視において不規則なシワを有していることが示されている。また、図3では、不規則なシワが、湾曲した複数の線条突起部により形成する複数の凸部3と、複数の突起部(複数の凸部3)により囲まれて形成する凹部2とを含むことにより構成されていることが示されている。また、図3では、湾曲した複数の凸部3の少なくとも一部が、各々蛇行する線条突起部により形成され、当該蛇行する線条突起部に囲まれるようにして、蛇行する凹部2が形成していることも示されている。
シワは、干渉を防止したり、自然な風合いを高めたりするため、平面視において不規則なシワであることが好ましい。また、シワが不規則であることにより、反射光が特定の角度に偏ることを抑制し、艶消性を高めやすくできる。
ここで「湾曲」とは、平面視において、連続する線条の凸部3の延在方向が一方側から他方側に反転している部分を1箇所以上有することを意味する。延在方向が一方側から他方側に反転している部分の例としては、例えば線条の凸部3の平面視形状の幅を0とみなして、連続曲線で近似した場合に、連続曲線が変曲点を有する形態等が挙げられる。また、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視して直線で近似した場合に、V字型の折線又は3角形の1頂点を挟む2辺で近似される部分を有する形態等が挙げられる。
また「蛇行」とは、平面視において、連続する線条の凸部3の延在方向が一方側から他方側に反転している部分(以下、「反転部分」とも称する。)を、少なくとも2箇所以上有し、線条の凸部3をその延在方向に進んだときに、互いに隣接する当該2箇所において交互に線条の凸部3の延在方向が逆向きに反転部分する部分を有することを意味する。例えば、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに連続曲線で近似される場合に、ローマ字「S」で近似される部分を有する形態等が挙げられる。また、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに直線で近似される場合に、ローマ字「W」で近似される部分を有する形態等が挙げられる。
本明細書において、不規則とは、一定の法則を有する形状、また一定の法則をもって配列される、いわゆるパターン化している、とはいえないことを意味する。不規則ではない形状(規則的な形状)の典型的な例としては、例えば円柱形状の単位レンズをその長手方向と直行する方向に複数個が互いに隣接して配列した、いわゆる「レンチキュラーレンズ」のように、特定の方向に一定の周期性をもって配列した形状等が挙げられる。よって、本実施形態における不規則なシワは、一つの突起部の形状自体が周期性等の一定の法則をもって形成される形状ではなく不規則であること、また複数の突起部により形成する複数の凸部の形状が一定の法則をもって形成及び配列されるものではなく不規則であること、またこのような複数の突起部により囲まれた凹部の形状も不規則であること、を包含するものである。
不規則なシワを構成する凸部及び凹部は、一つの突起部(一つの凸部)の形状自体、複数の突起部(複数の凸部)の各々の形状及びその配列、複数の突起部により囲まれた凹部の形状のいずれかが不規則であればよいが、いずれもが不規則であることが好ましい。
凹凸形状における凸部と凹部は、凹凸形状における高さ分布の中間値を基準とし、該中間値を超える高さの領域を凸部、該中間値以下の高さの領域を凹部と定義することができる。例えば、本実施形態の保護層の表面の高さに対応する濃度を有する画像の濃度差(即ち、明度差)を利用して、濃度分布画像で最も濃い部分を階調255とし、濃度分布画像で最も薄い部分を階調0とする(高さの中間値に対応する濃度の中間値は127)。そして、階調0~255について、階調0~127を凹部、階調128~255を凸部と、二値化処理して区分すればよい。
―バインダー樹脂―
バインダー樹脂は、保護層の耐擦傷性を向上するため、硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、電離放射線硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含むことがより好ましい。
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。中でも、保護層の耐擦傷性を高め、さらには、シワ形状を形成しやすい電離放射線硬化性樹脂が好ましい。
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線硬化性官能基を有する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基は電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合及び/又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性樹脂としては、電子線硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、シワ形状を形成しやすい紫外線硬化性樹脂が好ましい。
電離放射線硬化性樹脂は、重合性モノマー及び重合性オリゴマーから選ばれる1種以上を用いることができる。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、上記の表面形状を得やすくするため、2以上4以下が好ましく、2以上3以下がより好ましく、2がさらに好ましい。多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、Sdr及びRSm/Rzを上記範囲にしやすくするため、(メタ)アクリロイル基と(メタ)アクリロイル基との間に一定の距離を有するものが好ましい。(メタ)アクリロイル基と(メタ)アクリロイル基との間に一定の距離を有する多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキレンオキサイド変性された多官能性(メタ)アクリレートモノマー、及び、カプロラクトン変性された多官能性(メタ)アクリレートモノマーから選ばれる少なくとも1種以上のモノマーが挙げられる。これらのモノマーは、分子内の変性された箇所が動きやすいため、硬化時にシワを高密度で形成しやすくできる。アルキレンオキサイド変性された多官能性(メタ)アクリレートモノマーよりも、カプロラクトン変性された多官能性(メタ)アクリレートモノマーの方が、硬化時によりシワを高密度で形成しやすい。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーの全量に対して、アルキレンオキサイド変性された多官能性(メタ)アクリレートモノマー、及び、カプロラクトン変性された多官能性(メタ)アクリレートモノマーを合計した割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
アルキレンオキサイド変性された多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、多官能性(メタ)アクリレートモノマー中に、(-R-O-)で示す単位を有するものである。
前記単位において、Rは直鎖状又は分岐状アルキレン基を示す。Rの炭素数は、2以上4以下であることが好ましく、2以上3以下であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
前記単位において、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す。平均付加モル数は、2以上9以下であることが好ましく、3以上6以下であることがより好ましい。平均付加モル数を2以上とすることにより、硬化時にシワを高密度で形成しやすくできる。平均付加モル数を9以下とすることにより、保護層の耐擦傷性の低下を抑制しやすくできる。
カプロラクトン変性された多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、多官能性(メタ)アクリレートモノマー中に、ε-カプロラクトンを開環した構造単位である〔-C(=O)-(CH-O-〕を有するものである。
前記変性モノマーは、上記の開環構造を、分子内に1以上6以下有することが好ましく、2以上4以下有することがより好ましい。上記の開環構造を2以上有する場合、個々の開環構造は、分子内で繋がって存在していてもよいし、分子内で離れた位置に存在していてもよい。開環構造を1以上有することにより、硬化時にシワを高密度で形成しやすくできる。開環構造を6以下有することにより、保護層の耐擦傷性の低下を抑制しやすくできる。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、多官能グリセリン(メタ)アクリレートモノマーを含むことも好ましい。多官能グリセリン(メタ)アクリレートモノマーを含むことにより、保護層の柔軟性を高め、化粧シートの耐擦傷性を高めやすくできる。多官能グリセリン(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
このため、多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、下記(A)及び(B)を含むことが好ましい。
(A)アルキレンオキサイド変性された多官能性(メタ)アクリレートモノマー、及び、カプロラクトン変性された多官能性(メタ)アクリレートモノマーから選ばれる少なくとも1種以上のモノマー
(B)多官能グリセリン(メタ)アクリレートモノマー
上記(A)と上記(B)との配合比は、質量基準で10:1~1:1が好ましく、5:1~2:1がより好ましい。
電離放射線硬化性樹脂は、多官能性(メタ)アクリレートモノマー等の重合性モノマーと、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー等の重合性オリゴマーとを併用することが好ましい。重合性モノマーと重合性オリゴマーとを併用することにより、Sdr及びRSm/Rzを上記範囲にしやすくできる。
重合性オリゴマーは、重合性モノマーに比べてシワを形成しにくい。このため、重合性モノマーにと重合性オリゴマーとを併用すると、シワの起点が減ると考えられる。そして、シワの起点が減ると、個々のシワの標高差は大きくなる傾向がある。このため、重合性モノマーにと重合性オリゴマーとを併用することにより、Rzを大きくしやすくなり、条件2を満たしやすくなる。ただし、重合性オリゴマーの量を増やし過ぎると、シワの起点が減り、表面積を増やしにくくなるため、条件1を満たしにくくなる。このため、重合性モノマーと重合性オリゴマーとの質量比は、5:5~9:1であることが好ましく、6:4~8:2であることがより好ましい。
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有するオリゴマーが挙げられる。
多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、及びノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
重合性オリゴマーの中でも、分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好ましい。
重合性オリゴマーの官能基数は、下限は2以上が好ましく、上限は8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。重合性オリゴマーの官能基数が前記範囲であると、上記形状を得やすく、かつ、化粧シートの強度を良好にしやすくできる。
重合性オリゴマーの重量平均分子量は、1,500以上7,500以下が好ましく、1,700以上5,000以下がより好ましく、2,000以上4,500以下が更に好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。重合性オリゴマーの重量平均分子量が前記範囲であると、上記形状を得やすく、かつ、化粧シートの強度を良好にしやすくできる。
電離放射線硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合、保護層形成用の組成物は、光重合開始剤、光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
-抗ウイルス剤-
抗ウイルス剤は、無機系の抗ウイルス剤及び有機系の抗ウイルス剤が挙げられる。抗ウイルス剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
有機系の抗ウイルス剤としては、下記(1)~(3)が挙げられる。これらの有機系の抗ウイルス剤は、保護層中において、粒子の形態で存在することが好ましい。
(1)イミダゾール化合物を含む抗ウイルス剤
(2)スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物を含む抗ウイルス剤
(3)スチレン樹脂を含む抗ウイルス剤
(1)イミダゾール化合物を含む抗ウイルス剤
イミダゾール系化合物は、イミダゾール骨格を分子の構成単位に含む化合物である。本開示においては、各種のイミダゾール系化合物のうち、保護層内で粒子の形態を維持するものを用いることが好ましい。粒子の形態を維持しやすいイミダゾール系化合物としては、水及び有機溶媒に溶解しにくいものが好ましく、例えば、メチル=ベンゾイミダゾール-2-イルカルバメート(別名:カルベンダジム)、ポリマー化したイミダゾール系化合物が挙げられる。
なお、メチル=ベンゾイミダゾール-2-イルカルバメート(別名:カルベンダジム)、ポリマー化したイミダゾール系化合物であっても、溶媒によっては溶解する場合があるので注意が必要である。例えば、メチル=ベンゾイミダゾール-2-イルカルバメート(別名:カルベンダジム)に対しては、溶媒として、メチルエチルケトン、酢酸エチル等を用いることが好ましい。
(2)スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物を含む抗ウイルス剤
本開示において、「スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物を含む抗ウイルス剤」は、「スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物を含む抗ウイルス剤」であってもよいし、「スチレンポリマー誘導体化合物を含む抗ウイルス剤と、不飽和カルボン酸誘導体化合物を含む抗ウイルス剤との混合物」であってもよいし、これらの組み合わせでもよい。
スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物の構成成分は、スチレン、スルホン酸ナトリウム、アクリル酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群から選択される少なくとも一種の構造を有することが好ましく、スチレン及びスルホン酸ナトリウムの少なくとも一種の構造、並びに、アクリル酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群から選択される少なくとも一種の構造の両方を有することがより好ましい。
抗ウイルス剤中におけるスチレンポリマー誘導体化合物と不飽和カルボン酸誘導体化合物との含有割合は限定されないが、質量比が30:70~70:30であることが好ましく、40:60~60:40であることがより好ましい。前記質量比とすることにより、エンベロープウイルス及びノンエンベロープウイルスの両方に対して、抗ウイルス性を発揮しやすくできる。なお、エンベロープウイルスのみに対して抗ウイルス性を発揮させる場合には、スチレンポリマー誘導体化合物のみを含んでいればよい。
スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物を含む抗ウイルス剤が、抗ウイルス性を発揮する理由は、下記に推測されるメカニズムに拘束される訳ではないが、下記のように考えられる。
インフルエンザウイルスは、宿主細胞表面の糖鎖受容体(糖鎖末端はノイラミン酸)に結合して宿主細胞内に侵入するところ、スチレンスルホン酸塩を含む共重合体はノイラミン酸と類似したイオン基を有するため、宿主細胞の代わりにウイルスと結合してウイルスを捕捉することで、ウイルスが宿主細胞の受容体に結合するのを防止して抗ウイルス効果を発揮すると考えられる。また、不飽和カルボン酸誘導体化合物は、水分と接触することにより水酸基(OH-)を生じさせて、前記水酸基が抗ウイルス性の作用を及ぼすものと考えられる。
(3)スチレン樹脂を含む抗ウイルス剤
スチレン樹脂を含む抗ウイルス剤は、前記不飽和カルボン酸誘導体化合物を含有しない抗ウイルス剤である。
無機系の抗ウイルス剤としては、担体に金属イオンを担持あるいは含有する抗ウイルス剤が挙げられる。
金属イオンは、銀、亜鉛及び銅の何れかが好ましく、銀がより好ましい。
担体としては、ゼオライト、アパタイト、ガラス、モリブデン、リン酸ジルコニウム及びリン酸チタン等の無機化合物が好ましい。
ゼオライトは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルミノケイ酸塩であり、天然ゼオライト及び合成ゼオライトの何れも用いることができる。また、ゼオライトは、結晶構造により、A型、フォージャサイト型(X型、Y型)、モルデナイト型、クリノプチロライト型などに分類され、何れも用いることができる。
アパタイトは、下記一般式で示される組成を有する鉱物の総称である。
10(ZO
上記式において,Mは、Ca、Ba、Mg、Na、K、Fe及びAl等を示し,Zは、P、S、Si及びAs等を示し、Xは、F、Cl、O及びOH等を示す。上記式に該当する代表例としては,フッ素アパタイト「Ca10(PO」、水酸アパタイト「Ca10(PO(OH)」が挙げられる。
ガラスは、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウ酸ガラス及びリン酸ガラス等が挙げられる。
リン酸ジルコニウムは、六方晶リン酸ジルコニウムが挙げられる。
担体に金属イオンを担持あるいは含有させる方法としては、汎用の手法の中から適宜選択すればよい。ここで、「金属イオンを含有」とは金属イオン又は金属イオンを生成可能な物質を何らかの形態で担体中に保持することを意味する。また、「金属イオンを生成可能な物質」とは、例えば、水等に溶解することにより金属イオンを生成する物質のように、外的要因ないしは経時的要因等により金属イオンを生成する物質を意味する。
具体的な担持あるいは含有形態としては、物理吸着又は化学吸着により担持させる方法;イオン交換により担持させる方法;結合剤により担持させる方法;銀化合物を担体に打ち込むことにより含有させる方法;蒸着、溶解析出反応、スパッタ等の薄膜形成法により担体の表面に銀化合物の薄層を形成させることにより担持あるいは含有させる方法;ガラス等の金属酸化物を高温でイオン交換する方法;等が挙げられる。前述した形態の中でも、イオン交換により担持させる方法が好ましい。
抗ウイルス剤は、加工性を良好にするとともに、抗ウイルス効果を安定しやすくするため、粒子形状であることが好ましい。粒子の形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はない。
抗ウイルス剤の平均粒子径は、保護層に埋没することを抑制しやすくするため、1μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上9μm以下であることがより好ましく、3μm以上7μm以下であることが更に好ましい。
平均粒子径を1μm以上とすることにより、保護層形成用の組成物の安定性を良好にしやすくできる。
平均粒子径を10μm以下とすることにより、抗ウイルス剤が保護層の表面から突出することを抑制しやすくできる。このため、化粧シートの外観が低下することを抑制しやすくできるとともに、コーティングロール及びドクターブレード等の塗工装置の部材の磨耗を抑制しやすくできる。
本明細書において、抗ウイルス剤及びシワ形成安定剤の平均粒子径は、レーザー回折法における体積平均値d50として求められる値を意味する。
保護層中の抗ウイルス剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、下限は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上であり、上限は、好ましくは20.0質量部以下、より好ましくは15.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.5質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下である。
抗ウイルス剤の含有量を0.5質量部以上とすることにより、所望の抗ウイルス性能を発現しやすくできる。
抗ウイルス剤の含有量を20.0質量部以下とすることにより、保護層の耐擦傷性の低下を抑制しやすくできるとともに、コーティングロール及びドクターブレード等の塗工装置の部材の磨耗を抑制しやすくできる。また、抗ウイルス剤は樹脂に対して溶解せず、分散された状態であるため、過剰な添加は保護層を濁らせる要因となる。上記添加量とすることにより、保護層の下に位置する装飾層の外観を保持したシートを作製することができる。
-シワ形成安定剤-
上述したA2の手法により保護層を形成する場合、保護層形成用の組成物は、シワ形成安定剤を含むことが好ましい。
シワ形成安定剤は、保護層の表面で不規則なシワの形成を安定させることができる。
シワ形成安定剤としては、例えば有機粒子、無機粒子を用いることができる。
有機粒子を構成する有機物としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等が挙げられる。
無機粒子を構成する無機物としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケート及び硫酸バリウム等が挙げられ、これらの中でも透明性に優れるシリカが好ましい。
上述したシワ形成安定剤の中でも、シリカが好ましい。
シワ形成安定剤の形状としては、球形、多面体、鱗片状、不定形等が挙げられる。
シワ形成安定剤としては、シワ形成安定剤の平均粒子径dと、保護層の厚さtとの比であるd/tが、0.10以上0.80以下であるものが好ましい。d/tは、0.12以上0.70以下であることがより好ましく、0.15以上0.60以下であることがさらに好ましい。
シワ形成安定剤の平均粒子径dの好ましい範囲は、保護層の厚さtにもよるが、1.0μm以上15.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以上10.0μm以下であることがより好ましく、2.0μm以上9.0μm以下であることがさらに好ましい。
シワ形成安定剤は、平均粒子径が異なる2種類のシワ形成安定剤を含むことが好ましい。平均粒子径が大きい方のシワ形成安定剤の平均粒子径をd1、平均粒子径が小さい方のシワ形成安定剤の平均粒子径をd2とした場合、d1/d2は、1.5以上4.0以下であることが好ましく、2.0以上3.5以下であることがより好ましく、2.5以上3.0以下であることがさらに好ましい。d1/t及びd2/tは、いずれも0.10以上0.80以下であることが好ましい。
平均粒子径が大きい方のシワ形成安定剤と、平均粒子径が小さい方のシワ形成安定剤との含有量の比、質量基準で、1:3~3:1であることが好ましく、1:2~2:1であることがより好ましい。
上記のように、平均粒子径が異なる2種類のシワ形成安定剤を含むことにより、保護層に安定してシワを形成し、条件1及び2を満たしやすくできる。この理由は、平均粒子径が大きい方のシワ形成安定剤がシワの起点となり、さらに、平均粒子径の小さい方のシワ形成安定剤が、、平均粒子径が大きい方のシワ形成安定剤を起点として形成されるシワを細かく分散安定化させるためと考えられる。
シワ形成安定剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、下限は好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは3.0質量部以上であり、上限は好ましくは15.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以下、更に好ましくは7.0質量部以下である。
保護層の厚さtは、特に制限はないが、上述したA2の手法により保護層を形成する場合には、d/tが上記範囲となるような範囲とすることが好ましい。
保護層の厚さtの実施形態としては、下限は1μm以上であり、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上、より更に好ましくは5μm以上であり、上限として好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、より更に好ましくは20μm以下である。
本明細書において、保護層等の化粧シートを構成する各層の厚さは、化粧シートの断面について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像から20箇所の厚さを測定し、20箇所の値の平均値とする。
保護層は、本開示の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐摩耗剤及び表面調整剤等の添加物を含有していてもよい。
《装飾層》
本開示の化粧シートは、意匠性を向上させるため、装飾層を有する。装飾層は、基材と保護層との間に設けられる層である。また、後述する透明性樹脂層を有する場合、化粧シートの積層構成は、保護層、透明性樹脂層、装飾層及び基材の順であることが好ましい。
装飾層は、例えば、全面を被覆する着色層であってもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層であってもよい。ここで、「全面を被覆する着色層」は、「ベタ着色層」とも称され、図1及び図2の「6a」によって示される層であり、「絵柄層」は図1及び図2の「6b」で示される。また、図1及び図2に示されるように、装飾層は、ベタ着色層と絵柄層とを組み合わせたものであってもよい。
また、装飾層は、金属薄膜であってもよい。
絵柄層の絵柄としては、木材板表面の年輪や導管溝等の木目柄、大理石、花崗岩等の石板表面の石目柄、布帛表面の布目柄、皮革表面の皮シボ柄、幾何学模様、文字、及び図形が挙げられ、これらを組み合わせたものであってもよい。
装飾層に用いられるインキとしては、バインダー樹脂に、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜混合したものが使用される。
装飾層のバインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が挙げられる。また、1液硬化型樹脂、イソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型樹脂など、種々のタイプの樹脂を用いることができる。
着色剤としては、隠蔽性及び耐候性に優れる顔料が好ましい。顔料は基材に用いられ得る顔料として例示したものと同様のものを用いることができる。
着色剤の含有量は、装飾層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、30質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
装飾層は、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
装飾層の厚さは、所望の絵柄に応じて適宜選択すればよいが、意匠性を向上させるために、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましく、2μm以上5μm以下がさらに好ましい。被着材の色及び外観を隠蔽する必要がある場合には、含有する着色剤の種類及び含有量のいかんにもよるが、装飾層の厚さは1.5μm以上であることが好ましい。
《基材》
基材を構成する材料としては、紙、不織布、織布、樹脂等が挙げられる。
紙基材としては、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、樹脂含浸紙、薄葉紙、和紙等が挙げられる。
不織布又は織布の基材を構成する繊維としては、ガラス、アルミナ、シリカ、炭素等の無機材料により構成される無機繊維;ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂により構成される有機繊維;等から選ばれる1種以上が挙げられる。
樹脂基材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等から選ばれる樹脂の1種以上を含む樹脂基材が挙げられる。
基材は、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含むものであってもよい。
基材は、1種の基材の単独であってもよいし、2種以上の基材を重ね合わせた複合基材であってもよい。
基材の厚みは特に制限はなく、重視する性能に応じて適宜決定すればよい。
樹脂基材の場合、厚みは、下限は20μm以上が好ましく、より好ましくは40μm以上であり、上限は300μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
紙基材の場合、坪量は、20g/m以上150g/m以下が好ましく、30g/m以上100g/m以下がより好ましい。
基材は、保護層等との密着性を高めるために、片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施したものであってもよい。また、基材と保護層との間には、易接着層を有していてもよい。
《その他の層》
本開示の化粧シートは、保護層、装飾層及び基材以外の層を有していてもよい。保護層、装飾層及び基材以外の層としては、プライマー層、透明性樹脂層、接着層等が挙げられる。
図2の化粧シート1は、第1面から前記第2面に向けて、保護層4、プライマー層9、透明性樹脂層8、接着層7、装飾層6、及び基材5を順に有している。
(プライマー層)
プライマー層は、例えば、層間密着性を向上させるために形成される。
プライマー層を形成する位置は、例えば、保護層と装飾層との間、装飾層と基材との間、透明性樹脂層と保護層との間、等が挙げられる。
プライマー層は、主としてバインダー樹脂から構成され、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
バインダー樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
また、バインダー樹脂は、これら樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加し、架橋硬化したものであってもよい。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂等のポリオール系樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化したものが好ましく、アクリルポリオール樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化したものがより好ましい。
プライマー層の厚さは、0.1μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上8μm以下がより好ましく、2μm以上6μm以下がさらに好ましい。
(透明性樹脂層)
透明性樹脂層は、化粧シートの強度を高めたり、装飾層を保護したりするために形成される。透明性樹脂層は、装飾層を保護するため、装飾層と保護層との間に形成することが好ましい。
透明性樹脂層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称される。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられ、これらの中でも後加工適性等の観点からポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂が好ましい。また、これらの各種樹脂を2種類以上積層して、又は混合して使用してもよい。
透明性樹脂層は、装飾層を視認できる程度に透明であればよく、無色透明の他、着色透明及び半透明であってもよい。すなわち、本明細書において、「透明性」とは、無色透明の他、着色透明及び半透明も含むことを意味する。
透明性樹脂層は、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、また着色剤等の添加剤を含有してもよい。
透明性樹脂層の厚さは、装飾層の保護、また後加工適性等を考慮すると、20μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上120μm以下がより好ましく、60μm以上100μm以下が更に好ましい。
(接着層)
本開示の化粧シートが、基材と透明性樹脂層を有する場合、基材と透明性樹脂層との間には、両層の密着性を向上するために接着層を有してもよい。
接着層と装飾層との位置関係は特に限定されず、具体的には、基材に近い側から装飾層、接着層及び透明性樹脂層をこの順に有していてもよいし、基材に近い側から接着層、装飾層及び透明性樹脂層をこの順に有していてもよい。
接着層は、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等の接着剤から構成することができる。これら接着剤の中でも、ウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。
ウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ポリオール化合物と、イソシアネート化合物等の硬化剤とを含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤が挙げられる。
接着層の厚さは、効率よく所望の接着力を得るため、0.1μm以上30μm以下が好ましく、1μm以上15μm以下がより好ましく、2μm以上10μm以下がさらに好ましい。
<光学特性>
本開示の化粧シートは、装飾層を有する。化粧シートの透過性が高い場合、化粧シートの後ろに位置する物により、装飾層の意匠性が低下することがある。この抑制するため、また、本開示の化粧シートは、基材として透明ではない材料を用いる場合がある。このため、本開示の化粧シートは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下である。
本明細書において、化粧シートの全光線透過率は、任意の10箇所における測定の平均値である。
本開示の化粧シートは、第1面のJIS Z8741:1997の60度鏡面光沢度が1.0以上20.0以下であることが好ましく、1.0以上10.0以下であることがより好ましく、1.0以上5.0以下であることがさらに好ましい。
本開示の化粧シートは、第1面のJIS Z8741:1997の85度鏡面光沢度が7.0以上25.0以下であることが好ましく、7.5以上23.0以下であることがより好ましく、8.0以上20.0以下であることがさらに好ましい。
60度鏡面光沢度及び85度鏡面光沢度を所定の値以下とすることにより、化粧シートの艶消し性を良好にしやすくできる。60度鏡面光沢度及び85度鏡面光沢度を所定の値以上とすることにより、Sdrが大きすぎる場合の不具合、及び、RSm/Rzが小さすぎる場合の不具合が生じることを抑制しやすくできる。
本明細書において、60度鏡面光沢度及び85度鏡面光沢度は、10箇所の測定値の平均値とする。
[化粧シートの製造方法]
本開示の化粧シートの第一の製造方法は、基材上に装飾層を設ける装飾層形成工程、前記装飾層上に保護層を形成する工程、を備える。
保護層を形成する工程は、上述したA1及びA2が挙げられる。以下、上述したA2の工程について、より具体的に説明する。
保護層は、例えば、装飾層上に、バインダー樹脂組成物、抗ウイルス剤及びシワ形成安定剤を含む保護層形成用の組成物を塗布、硬化することにより、形成することができる。
保護層形成用の組成物を塗布した後は、少なくとも100nm以上380nm以下の波長光で照射して、バインダー樹脂組成物を硬化することが好ましい。
本開示の化粧シートの製造方法において、保護層の形成にあたり、少なくとも100nm以上380nm以下という低波長の紫外線を、保護層を形成する組成物に照射することが重要である。低波長の紫外線を照射して硬化させることにより、保護層の表面に、不規則なシワを形成させることができる。
このような低波長の紫外線を、保護層形成用の組成物に照射することにより、保護層の表面にシワが形成する機構についての詳細は不明であるが、以下の機構によるものと推察される。
保護層形成用の組成物を所定の厚さで塗布した塗布層に低波長の紫外線を照射すると、紫外線のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層にはエネルギーが到達しないことにより、硬化性樹脂を含む組成物の表面部分だけが硬化をはじめる。そのため、表面だけが硬化収縮を生じることとなり、不規則なシワが形成するものと考えられる。このように、不規則なシワの形成は、低波長の紫外線の照射により、保護層形成用の組成物の表面からの一定の厚み方向のみが硬化した状態において生じていると考えられる。
また、後述する比較例では、シワ形成安定剤を含まない比較例4及び5では、不規則なシワの形成が不安定となっている。このことから、不規則なシワを安定的に形成するためには、シワ形成安定剤が含まれることが必要不可欠である。
本開示の製造方法において、保護層形成用の組成物を少なくとも100nm以上380nm以下の波長光で照射する。この照射により、既述のように紫外線のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層にはエネルギーが到達しないことにより、硬化性樹脂を含む組成物の表面部分だけが硬化をはじめる。そのため、表面だけが硬化収縮を生じることで不規則なシワが安定して形成される。そして、かかる後、硬化の進行が遅い表面近傍部分から深さ方向に離れた深奥部分への硬化が進み、硬化性樹脂を含む組成物の層は硬化物となる。深奥部分への硬化の進行を促進するには、後述するように、100nm以上380nm以下の波長光で照射した後、さらに他の照射処理を行うことが好ましい。
少なくとも100nm以上380nm以下の波長光としては、例えば、Ar、Kr、Xe、Ne等の希ガス、F、Cl、I、Br等のハロゲンによる希ガスのハロゲン化物等ガス、又はこれらの混合ガスの放電によって形成される励起状態の2量体、すなわちエキシマ(excimer)からの紫外線波長域の光を含む「エキシマ光」が好ましい。エキシマ光の波長及び光源となるエキシマとしては、例えばArのエキシマから輻射される波長126nmの光(以下、「126nm(Ar)」のように略称する。)、146nm(Kr)、157nm(F)、172nm(Xe)、193nm(ArF)、222nm(KrCl)、247nm(KrF)、308nm(XeCl)、351nm(XeF)等の波長光を好ましく採用することができる。エキシマ光としては、自然放出光、誘導放出によるコヒーレンス(可干渉性)の高いレーザー光のいずれを用いることができるが、通常自然放出光を用いれば十分である。なお、光(紫外線)を放射する放電ランプは、「エキシマランプ」とも称されている。
エキシマ光は波長ピークが単一であり、また通常の紫外線(例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ等から放射される紫外線)と比べて波長の半値幅が狭いことが特徴として挙げられる。このようなエキシマ光を用いることで、不規則なシワの形成が安定する。
不規則なシワの形成を安定させるため、波長としては好ましくは120nm以上、より好ましくは140nm以上、更に好ましくは150nm以上、より更に好ましくは155nm以上であり、上限として好ましくは320nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは250nm以下、より更に好ましくは200nm以下であり、最も好ましくは、172nm(Xe)である。このように、本開示では、安定的にシワを形成するため、より短波長の波長光を用いることが好ましく、中波長紫外線(波長:280~320nm)、短波長紫外線(波長:280nm以下)がより好ましく、短波長紫外線が更に好ましい、ともいえる。
本開示において、上記波長光の積算光量は、不規則なシワの形成を安定させるため、好ましくは1mJ/cm以上、より好ましくは10mJ/cm以上、更に好ましくは30mJ/cm以上、より更に好ましくは50mJ/cm以上である。また上限としては特に制限はなく、波長光の照射に必要な灯数を低減し、また生産効率の向上等の生産性を考慮すると、好ましくは1,000mJ/cm以下、より好ましくは500mJ/cm以下、更に好ましくは300mJ/cm以下である。これと同様の理由から、紫外線出力密度は、好ましくは0.001W/cm以上、より好ましくは0.01W/cm以上、更に好ましくは0.03W/cmであり、上限として好ましくは10W/cm以下、より好ましくは5W/cm以下、更に好ましくは3W/cm以下である。
また、上記波長光を照射する際の酸素濃度は、より低いことが好ましく、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは750ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、より更に好ましくは300ppm以下である。
本開示の化粧シートの製造方法における保護層形成工程では、上記の少なくとも100nm以上380nm以下の波長光での照射の他、保護層形成用の組成物の硬化に寄与する他の処理を行ってもよい。
例えば、既述の表面部分と表面から深さ方向に離れた深奥部分の硬化の進行度合いの違いによる不規則なシワの形成を安定させ、かつ深奥部分への硬化の進行を促進させるため、例えば380nmを超える波長光、好ましくは385nm以上400nm以下程度の波長光で予め照射して保護層形成用の組成物を全体的に予備硬化させた後に、100nm以上380nm以下の波長光で照射してもよいし、また100nm以上380nm以下の波長光での照射後に、硬化性樹脂を含む組成物を更に硬化させるために後硬化を行ってもよい。予備硬化、後硬化については、保護層に求められる所望の性状に応じて採用の要否を適宜決めればよい。また、上記波長光は紫外線に属するものであるが、紫外線に限らず他の電離放射線、例えば電子線等を用いることも可能である。例えば、後硬化においては、保護層の表面特性の向上の観点から、電子線が好ましく用いられ得る。
本開示の製造方法において、保護層は、保護層形成用の組成物を、インクジェット法、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布した塗布層(未硬化樹脂層)を、少なくとも100nm以上380nm以下の波長光で照射して形成することができる。
本開示の化粧シートは、の用途としては、以下の(1)~(12)が挙げられる。
(1)住宅、事務所、店舗、病院、診療所等の建築物の壁、床、天井等の内装部分の表面材。
(2)住宅、事務所、店舗、病院、診療所等の建築物の外壁、屋根、軒天井、戸袋等の外装部分の表面材。
(3)窓、窓枠、扉、扉枠等の建具の表面材(内装部分又は外装部分);建具の付随備品(取っ手等)の表面材;建具の治具の表面材。
(4)手すり、腰壁、廻り縁、敷居、鴨井、笠木の造作部材の表面材。
(5)塀、門扉、物干台の柱や手すり等の屋外(外装)部分の表面材。
(6)箪笥、机、椅子、食器棚、厨房の流し台等の家具の表面材;家具の付随備品(取っ手等)の表面材;家具の治具の表面材。
(7)テレビジョン受像機、ラジオ受信機、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、扇風機、空調機、電話機等の各種家電製品の筐体等の表面材;家電製品の付随備品(取っ手、スイッチ等)の表面材;家電製品の治具の表面材。
(8)電子複写機、ファクシミリ、プリンタ、パーソナルコンピュータ等の各種電算機器等のOA機器の表面材;銀行、郵便局等の金融機関のATM装置の各種OA機器類の筐体の表面材;各種OA機器類の付随備品(キーボード鍵盤等)の表面材;各種OA機器類の治具の表面材。
(9)自動車、鉄道車両等の車輛、船舶、航空機等の乗物の内装又は外装部分(壁、床、天井、手すり、支柱、操作盤、レバー、ハンドル、舵輪等の操縦機器類)の表面材。
(10)各種建築物の間仕切;店舗、事務所、官公庁等の窓口、会計精算場所等におけるウイルスの飛沫感染防止のための遮蔽板又は遮蔽カーテン;あるいはこれらの表面材。
(11)伝票類等のビジネスフォーム;預金通帳;金融機関のキャッシュカード、クレジットカード、ポイントカード等のカード類;あるいはこれらの表面材。
(12)硝子、樹脂等の瓶;金属缶;樹脂レトルト容器等の樹脂軟包装材;各種チューブ類等の包装材料;あるいはこれらの表面材。
[化粧部材]
本開示の化粧部材は、物品上に、上述した本開示の化粧シートを貼り付けてなるものである。
物品としては、化粧シートの用途で例示した物品が挙げられる。
本開示は、下記の[1]~[12]を含む。
[1] 第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面を有する化粧シートであって、
前記化粧シートは、前記第1面から前記第2面に向けて、保護層、装飾層及び基材をこの順に有し、
前記保護層は、バインダー樹脂及び抗ウイルス剤を有し、
前記第1面は、下記条件1及び2を満たす、化粧シート。
<条件1>
ISO 25178-2:2012の界面の展開面積比であるSdrが0.500以上。
<条件2>
JIS B0601:2013の最大高さであるRzと、JIS B0601:2013の粗さ曲線要素の平均長さであるRSmとの比をRSm/Rzと定義した際に、RSm/Rzが5.5以下。
[2] 前記条件1において、Sdrが0.500以上1.500以下である、[1]に記載の化粧シート。
[3] 前記条件2において、RSm/Rzが3.0以上5.5以下である、[1]又は[2]に記載の化粧シート。
[4] 前記第1面は、JIS B0601:2013の最大高さであるRzが、4.5μm以上8.5μm以下である、[1]~[3]の何れかに記載の化粧シート。
[5] 前記第1面は、JIS B0601:2013の粗さ曲線要素の平均長さであるRSmが、20.0μm以上50.0μm以下である、[1]~[4]の何れかに記載の化粧シート。
[6] 前記第1面は、JIS B0601:2013の算術平均粗さであるRaが、0.6μm以上1.5μm以下である、[1]~[5]の何れかに記載の化粧シート。
[7] 前記化粧シートを平面視した際に、前記化粧シートの全面に保護層を有する、[1]~[6]の何れかに記載の化粧シート。
[8] 前記バインダー樹脂100質量部に対して、前記抗ウイルス剤を0.5質量部以上20.0質量部以下含む、[1]~[7]の何れかに記載の化粧シート。
[9] 前記バインダー樹脂が、硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含む、[1]~[8]の何れかに記載の化粧シート。
[10] 前記第1面側の最表面に位置する層が前記保護層である、[1]~[9]の何れかに記載の化粧シート。
[11] 前記第1面のJIS Z8741:1997の60度鏡面光沢度が1.0以上20.0以下であり、前記第1面のJIS Z8741:1997の85度鏡面光沢度が7.0以上25.0以下である、[1]~[10]の何れかに記載の化粧シート。
[12] JIS K7361-1:1997の全光線透過率が20%以下である、[1]~[11]の何れかに記載の化粧シート。
次に、本開示を実施例により、さらに詳細に説明するが、本開示は、この例によってなんら限定されるものではない。
1.測定及び評価
1-1.表面形状の測定
実施例及び比較例で得られた化粧シートの第1面について、表面形状(Sdr、RSm、Rz及びRa)を、レーザー顕微鏡を用いて測定した。化粧シートの表面形状の任意の1箇所と、それに近接した8箇所の合計9箇所を測定し、9箇所の測定値の平均値を、各化粧シートの表面形状(Sdr、RSm、Rz及びRa)とした。1箇所の測定領域は、縦203.6μm×横271.5μmとした。
1箇所の測定領域のSdrの値は、1箇所の測定領域の全体から算出した。1箇所のRSm、Rz及びRaの値は、測定領域に対応する測定画面において、縦方向に8の断面、横方向に7の断面について測定して得られた、合計15の断面の測定値の平均値とした。RSm、Rz及びRaを算出する際のカットオフ値は0.8mmとした。
測定装置は、形状解析レーザー顕微鏡(「VK-X150(制御部)/VK-X160(測定部)」、株式会社キーエンス製)を用いた。
<測定条件>
・対物レンズ:50倍
・レーザ波長:658nm
・測定モード:表面形状モード
・測定ピッチ:0.13μm
・測定品質:高速モード
1-2.鏡面光沢度
実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、第1面の60度鏡面光沢度及び85度鏡面光沢度を測定した。各化粧シートについて、任意の10箇所を測定し、10箇所の平均値を、各化粧シートの0度鏡面光沢度及び85度鏡面光沢度とした。測定装置は、グロスメータ(「マイクログロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いた。
1-3.初期の抗ウイルス性
実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、下記の手法により抗ウイルス活性値を測定した。各化粧シートについて、下記の“所定の時間”を徐々に増やし、1時間ごとに抗ウイルス活性値を測定して、下記の基準で評価した。抗ウイルス活性値は、インフルエンザウイルスについて測定した。
<抗ウイルス活性値の測定方法>
化粧シート及び無加工品に関して、5cm角の試験片を準備する。試験片に0.4mlのウイルス液を滴下し、4cm角のフィルムで被覆する(化粧シートの場合、保護層側にウイルス液を滴下する。)。この試験片を25℃、90%RHの環境に“所定の時間”静置する。静置後、試験片上に滴下したウイルス液を洗いだして回収し、ウイルス感染価を測定する。次式(1)により抗ウイルス活性値を算出する。
R=Ut-At (1)
R:抗ウイルス活性値
Ut:無加工品の24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm)の常用対数の平均
At:化粧シートの24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm)の常用対数の平均
<評価基準>
A:抗ウイルス活性値が2.0に達する時間までの時間が10時間以内。
B:抗ウイルス活性値が2.0に達する時間までの時間が10時間超15時間以内。
B-:抗ウイルス活性値が2.0に達する時間までの時間が15時間超20時間以内。
C:抗ウイルス活性値が2.0に達する時間までの時間が20時間超。
1-4.抗ウイルス性の経時安定性(1)
実施例及び比較例で得られた化粧シートの第1面を、下記の条件で摩耗した(但し、1-3の評価が「C」のものは評価から除外した。)。摩耗後の化粧シートについて、1-3と同様にして、抗ウイルス活性値が2.0に達する時間までの時間を測定した。1-4の時間と1-3との時間の差分を算出し下記の基準で評価した。
<評価基準>
A:差分が5時間以内。
B:差分が5時間超10時間以内。
B-:差分が10時間超15時間以内。
C:差分が15時間超。
<摩耗条件>
・摩耗材:ガーゼ(川本産業株式会社製)
・摩耗材の荷重:100g
・摩耗回数:往復1000回
1-5.抗ウイルス性の経時安定性(2)
実施例で得られた化粧シートの第1面を、下記の条件で摩耗した。摩耗後の化粧シートについて、1-3と同様にして抗ウイルス活性値を測定した(但し、“所定の時間”は24時間に固定した。)。24時間後の抗ウイルス活性値が2.0以上のものを「A」、24時間後の抗ウイルス活性値が2.0未満のものを「C」とした。抗ウイルス活性値は、インフルエンザウイルスについて測定した。24時間後の抗ウイルス活性値が2.0以上のものは、ISO 21702の規定を満たし、抗ウイルス性が良好といえる。
<摩耗条件>
・摩耗材:ガーゼ(川本産業株式会社製)
・摩耗材の荷重:100g
・摩耗回数:往復1000回
1-6.拭き取り具の破れ
上記1-4の試験後に、ガーゼの状態を目視で評価した。化粧シートの表面凹凸に起因してガーゼが破れていないものを「A」、ガーゼのごく一部が破れていたものを「B」、ガーゼの大部分が破れていたものを「C」とした。
[実施例1]
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:60μm)を基材とし、基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層及び絵柄層からなる装飾層(厚さ:3μm)を設けた。
次いで、装飾層上に、ウレタン樹脂系接着剤からなる厚み3μmの接着剤層を形成し、さらに、接着剤層上に、ポリプロピレン系樹脂をTダイ押出し機により加熱溶融押出し、厚み80μmの透明性樹脂層を形成した。次いで、透明性樹脂層上に、2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設けた。
次いで、プライマー層上に、下記の保護層形成用の組成物1を、乾燥及び硬化後の厚みが5μmとなるようにグラビア法により全面に塗布した。
次いで、保護層側の面から、LEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:6W/cm)、さらに、エキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、さらに高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して(紫外線出力密度:200W/cm)、保護層を形成した。
以上の工程により、実施例1の化粧シートを得た。実施例1の化粧シートは、第1面から第2面に向けて、保護層、プライマー層、透明性樹脂層、接着層、装飾層及び基材をこの順に有している。
<保護層形成用の組成物1>
・多官能ウレタンアクリレートオリゴマーA 30質量部
(平均官能基数:3、重量平均分子量:2400)
・多官能アクリレートモノマーA 50質量部
(ポリエチレングリコールジアクリレート、共栄社化学製『ライトアクリレート 4EG-A』)
・多官能アクリレートモノマーB 20質量部
(グリセリンジアクリレート、東亞合成製『アロニックス M-920』)
・シワ形成安定剤A 3.0質量部
(シリカ粒子、平均粒子径:8μm)
・シワ形成安定剤B 3.0質量部
(シリカ粒子、平均粒子径:3μm)
・抗ウイルス剤 3質量部
(下記の粒子A1と粒子A2とを質量比1:1で含む抗ウイルス剤、平均粒子径5μm)
(粒子A1:スチレンポリマー誘導体化合物を含有する粒子、島貿易株式会社製のポリスチレンスルホン酸誘導体、商品名「VERSA-TL3」)
(粒子A2:不飽和カルボン酸誘導体化合物を含有する粒子、BYK製の溶剤系不飽和ポリカルボン酸ポリマーである商品名「BYK-P104」を乾燥させて成形した粒子)
・ホスフィンオキサイド系光重合開始剤 0.8質量部
(IGM Resin製『Omnirad TPO-L』)
[実施例2]
実施例1において、保護層形成用の組成物1に含まれる多官能ウレタンアクリレートオリゴマーAを、多官能ウレタンアクリレートオリゴマーB(平均官能基数:3、重量平均分子量:4400)に変更し、塗布量を15μmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の化粧シートを得た。
[実施例3]
実施例1において、保護層形成用の組成物1を、下記の保護層形成用の組成物2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを得た。
<保護層形成用の組成物2>
・多官能ウレタンアクリレートオリゴマーB 30質量部
(平均官能基数:3、重量平均分子量:4400)
・多官能アクリレートモノマーA 30質量部
(ポリエチレングリコールジアクリレート、共栄社化学製『ライトアクリレート 4EG-A』)
・多官能アクリレートモノマーC 20質量部
(ε-カプロラクトンを開環した構造単位を有するモノマー、日本化薬製『KAYARAD HX-220』)
・多官能アクリレートモノマーB 20質量部
(グリセリンジアクリレート、東亞合成製『アロニックス M-920』)
・シワ形成安定剤A 3.0質量部
(シリカ粒子、平均粒子径:8μm)
・シワ形成安定剤B 3.0質量部
(シリカ粒子、平均粒子径:3μm)
・抗ウイルス剤 3質量部
(前記粒子A1と前記粒子A2とを質量比1:1で含む抗ウイルス剤、平均粒子径5μm)
・ホスフィンオキサイド系光重合開始剤 0.8質量部
(IGM Resins製『Omnirad TPO-L』)
[実施例4]
実施例1において、シワ形成安定剤Aを、平均粒子径8μmシリカから、平均粒子径10μmアルミナに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを得た。
[比較例1~3]
実施例1~3において、保護層形成用の組成物を塗布した後に、LEDから構成されるUV照射装置及びエキシマ光照射装置による紫外線を照射せず、高圧水銀灯による紫外線のみを照射した以外は、実施例1~3と同様にして、比較例1~3の化粧シートを得た。
[比較例4]
実施例1において、保護層形成用の組成物1を、下記の保護層形成用の組成物3に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の化粧シートを得た。
<保護層形成用の組成物3>
・多官能ウレタンアクリレートオリゴマーC 40質量部
(平均官能基数:7、重量平均分子量:1590)
・アクリル酸 10質量部
・多官能アクリレートモノマーD 15質量部
(ジプロピレングリコールジアクリレート、ダイセル・オルネクス製『DPGDA』)
・多官能アクリレートモノマーE 10質量部
(プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、ダイセル・オルネクス製『EBECRYL 145』)
・多官能アクリレートモノマーF 20質量部
(プロピレンオキサイド変性テトラグリセリンアクリレート、BASF製『PO9105』)
・抗ウイルス剤 3質量部
(前記粒子A1と前記粒子A2とを質量比1:1で含む抗ウイルス剤、平均粒子径5μm)
・ホスフィンオキサイド系光重合開始剤 0.8質量部
(IGM Resins製『Omnirad TPO-L』)
[比較例5]
実施例1において、保護層形成用の組成物1を、下記の保護層形成用の組成物4に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例5の化粧シートを得た。
<保護層形成用の組成物4>
・多官能ウレタンアクリレートオリゴマーD 40質量部
(平均官能基数:6、重量平均分子量:855)
・多官能アクリレートモノマーE 25質量部
(プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、ダイセル・オルネクス製『EBECRYL 145』)
・多官能アクリレートモノマーG 35質量部
(ヘキサンジオールジアクリレート、大阪有機化学工業製『ビスコート #230』)
・抗ウイルス剤 3質量部
(前記粒子A1と前記粒子A2とを質量比1:1で含む抗ウイルス剤、平均粒子径5μm)
・ホスフィンオキサイド系光重合開始剤 0.8質量部
(IGM Resins製『Omnirad TPO-L』)
[比較例6]
実施例1において、多官能アクリレートモノマーA及びBを、下記の多官能アクリレートモノマーG及びHに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例6の化粧シートを得た。
・多官能アクリレートモノマーG 35部
・多官能アクリレートモノマーH 25部
(ポリエチレングリコールジアクリレート、共栄社化学製『ライトアクリレート 3EG-A』)
[比較例7]
実施例1において、多官能ウレタンアクリレートオリゴマーA、多官能アクリレートモノマーA、及び多官能アクリレートモノマーBを、下記の多官能アクリレートオリゴマーB、多官能アクリレートモノマーE及びGに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例7の化粧シートを得た。
・多官能ウレタンアクリレートオリゴマーB 40部
・多官能アクリルモノマーE 25部
・多官能アクリルモノマーG 35部
第1表の結果から、本開示の化粧シートは、抗ウイルス性を効率よく発現し得るとともに、抗ウイルス性の経時的低下を抑制し得ることを確認できる。
1:化粧シート
2:凹部
3:凸部(突起部)
4:保護層
5:基材
6:装飾層
6a:着色層
6b:絵柄層
7:接着層
8:透明性樹脂層
9:プライマー層

Claims (12)

  1. 第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面を有する化粧シートであって、
    前記化粧シートは、前記第1面から前記第2面に向けて、保護層、装飾層及び基材をこの順に有し、
    前記保護層は、バインダー樹脂及び抗ウイルス剤を有し、
    前記第1面は、下記条件1及び2を満たす、化粧シート。
    <条件1>
    ISO 25178-2:2012の界面の展開面積比であるSdrが0.500以上。
    <条件2>
    JIS B0601:2013の最大高さであるRzと、JIS B0601:2013の粗さ曲線要素の平均長さであるRSmとの比をRSm/Rzと定義した際に、RSm/Rzが5.5以下。
  2. 前記条件1において、Sdrが0.500以上1.500以下である、請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記条件2において、RSm/Rzが3.0以上5.5以下である、請求項1に記載の化粧シート。
  4. 前記第1面は、JIS B0601:2013の最大高さであるRzが、4.5μm以上8.5μm以下である、請求項1に記載の化粧シート。
  5. 前記第1面は、JIS B0601:2013の粗さ曲線要素の平均長さであるRSmが、20.0μm以上50.0μm以下である、請求項1に記載の化粧シート。
  6. 前記第1面は、JIS B0601:2013の算術平均粗さであるRaが、0.6μm以上1.5μm以下である、請求項1に記載の化粧シート。
  7. 前記化粧シートを平面視した際に、前記化粧シートの全面に保護層を有する、請求項1に記載の化粧シート。
  8. 前記バインダー樹脂100質量部に対して、前記抗ウイルス剤を0.5質量部以上20.0質量部以下含む、請求項1に記載の化粧シート。
  9. 前記バインダー樹脂が、硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1に記載の化粧シート。
  10. 前記第1面側の最表面に位置する層が前記保護層である、請求項1に記載の化粧シート。
  11. 前記第1面のJIS Z8741:1997の60度鏡面光沢度が1.0以上20.0以下であり、前記第1面のJIS Z8741:1997の85度鏡面光沢度が7.0以上25.0以下である、請求項1に記載の化粧シート。
  12. JIS K7361-1:1997の全光線透過率が20%以下である、請求項1に記載の化粧シート。
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