JP2023048965A - トリム加工用金型およびその製造方法、ならびに加工品の製造方法 - Google Patents

トリム加工用金型およびその製造方法、ならびに加工品の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023048965A
JP2023048965A JP2022049105A JP2022049105A JP2023048965A JP 2023048965 A JP2023048965 A JP 2023048965A JP 2022049105 A JP2022049105 A JP 2022049105A JP 2022049105 A JP2022049105 A JP 2022049105A JP 2023048965 A JP2023048965 A JP 2023048965A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cutting edge
punch
trimming
die
manufacturing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022049105A
Other languages
English (en)
Inventor
辰也 庄司
Tatsuya Shoji
史明 本多
Fumiaki Honda
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Proterial Ltd
Original Assignee
Proterial Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Proterial Ltd filed Critical Proterial Ltd
Publication of JP2023048965A publication Critical patent/JP2023048965A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Shearing Machines (AREA)
  • Punching Or Piercing (AREA)
  • Mounting, Exchange, And Manufacturing Of Dies (AREA)

Abstract

【課題】 超ハイテン材を加工しても刃先の欠損発生を抑制でき、金型の寿命を向上させることができる、トリム加工用金型とその製造方法、および該トリム金型を用いた加工品の製造方法を提供する。【解決手段】 パンチとダイを用いて被加工材をせん断によりトリム加工する、トリム加工用金型において、前記パンチの刃先部は、面取り加工による面取り面と、前記面取り面と打抜き面とで構成される切刃とを有し、前記面取り面と打抜き面とで構成される切刃は、刃先の曲率半径が0.05mm以上である、トリム加工用金型、トリム加工用金型の製造方法、および加工品の製造方法。【選択図】 図1

Description

本発明は、トリム加工用金型およびその製造方法、ならびに加工品の製造方法に関する。
自動車部品や家電部品の製造方法として、単純な形状の鋼板に打抜きおよび切断(トリム)加工を施し、複雑形状の部品を得る方法が知られている。これらの加工に用いられる打抜き金型やトリム加工用金型といったせん断加工用金型は、加工中に金型の切れ刃が欠損(欠け、チッピングとも記載する)することが問題となっており、特に自動車部品にはハイテン鋼材等の高張力鋼材の採用により切れ刃の欠損が発生しやすく、欠損対策として従来様々な検討がなされている。
例えば特許文献1には、金型の長寿命化の達成を可能とする、パンチとダイを有する打ち抜き加工装置について開示されている。このダイの刃先はダイ上面の平坦部から打ち抜き方向に前記金属板の板厚の0.1~3倍の寸法だけ下がった位置にあり、かつ、空洞部を挟んで両側に位置する前記ダイの上面が、前記空洞部を含む水平方向寸法が前記パンチの径の1~10倍の領域において面取りされていることが記載されており、またパンチの刃先は、曲率半径が0.5~2mmであることについても記載されている。
特開2009-255167号公報
近年自動車部品には軽量化ニーズにより高強度ハイテン(超ハイテン)の適用が増加している。この超ハイテン材部品の加工時に金型が受ける局所的負荷は非常に大きく、特許文献1に提案されているような打抜き金型を用いても、金型刃先の欠損が抑制できない可能性がある。特に鋼板の切断に用いるトリム加工用金型は、金型の打抜き面(金型に被加工材が突き当たる面)における外周刃全体で切断する穴あけ用打抜き金型とは異なり、外周の一部しか用いないために、切断時には刃先に偏荷重やトルクがかかりやすく、切断刃の設計、特に切断刃の厚さに起因する剛性や強度)によっては欠損のリスクが急激に高まる。さらに、通常トリム加工工程は成形工程の後に入ることが多いため、被加工材のトリム位置は平面であるとは限らず、部品として段差を有することもある。そのため、クリアランスや被加工材の挿入角度といった切断条件が変化する事が多く、やはり刃先の欠損リスクは高まる。したがって、トリム加工用金型は穴あけ用打抜き金型よりもさらに刃先の耐久性を高める必要がある。
そこで本発明の目的は、超ハイテン材を加工しても刃先の欠損発生を抑制でき、金型の寿命を向上させることができる、トリム加工用金型とその製造方法、および該トリム金型を用いた加工品の製造方法を提供することにある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものである。即ち本発明の一態様は、パンチとダイを用いて被加工材をせん断によりトリム加工する、トリム加工用金型において、前記パンチの刃先部は、面取り加工による面取り面と、前記面取り面と打抜き面とで構成される切刃とを有し、前記面取り面と打抜き面とで構成される切刃は、刃先の曲率半径が0.05mm以上である、トリム加工用金型である。
好ましくは、前記面取り面とパンチ側面とのなす角度は10~45°以下である。
好ましくは、前記パンチの材質はFe基合金であり、パンチ刃先部の硬さが50HRC以上である。
好ましくは、前記パンチの刃先部に、物理蒸着法による少なくとも1種以上の硬質被膜が被覆されている。
本発明の他の一態様は、パンチとダイを用いて被加工材をせん断によりトリム加工する、トリム加工用金型の製造方法であって、パンチ刃先部の硬さが50HRC以上になるように調整されたFe基合金からなるパンチを機械加工して、面取り面とパンチ側面とのなす角度が10~45°となるように面取り加工する工程と、刃先の曲率半径が0.05mm以上となる前記面取り面と打抜き面とで構成される切刃を形成して、前記面取り面と切刃とを有する刃先部を形成する工程と、前記形成された刃先部に物理蒸着法によって少なくとも1種以上の硬質皮膜を被覆する工程を有することを特徴とする、トリム加工用金型の製造方法である。
本発明の他の一態様は、前記トリム加工用金型を用いて、引張強度780MPa以上の被加工材をトリム加工する、加工品の製造方法である。
本発明によれば、超ハイテン材を加工しても刃先の欠損発生を抑制でき、トリム加工における金型の寿命を向上させることができる、トリム加工用金型を得ることができる。
本発明の金型を示す模式図である。(a)パンチの側面図である。(b)パンチの底面図である。 本発明の金型の刃先部を示す拡大模式図である。 斜めトリム加工を説明するための模式図である。 実施例1における打抜き試験後の本発明例パンチ刃先拡大写真である。 実施例1における打抜き試験後の比較例パンチ刃先拡大写真である。 実施例2における打抜き試験後の本発明例パンチ刃先拡大写真である。 実施例2における打抜き試験後の他の本発明例パンチ刃先拡大写真である。 実施例3における打抜き試験後の本発明例パンチ刃先拡大写真である。 実施例4で使用するパンチの模式図である。 実施例4における打抜き試験後の本発明例の被覆パンチ刃先拡大写真である。 実施例4における打抜き試験後の他の本発明例の被覆パンチ刃先拡大写真である。 実施例4における打抜き試験後の比較例の被覆パンチ刃先拡大写真である。 実施例4における打抜き試験後の他の比較例の被覆パンチ刃先拡大写真である。
以下に本発明の実施形態について説明する。本発明はここで取り上げた実施形態に限定されるものではなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜組合せや改良が可能である。本発明の金型は、トリム加工用途に供するものである。本発明におけるトリム加工とは鋼板の縁を所要の形状にせん断(トリム)する加工のことを示す。
(トリム加工用金型)
まず本実施形態のトリム加工用金型(以下、単に「金型」とも記載する)について説明する。本発明の金型は、被加工材が載置され、かつ被加工材を固定するダイと、ダイによって固定された被加工材を打抜くパンチとを備える。ここで、本発明はトリム加工用途に特化した金型である。そのため金型形状はパンチ打抜き面の全外周に切刃が形成されている穴あけ工具とは異なり、金型の打抜き面において一部の外周にのみ切刃を有するといった形状の違いがある。
本実施形態のパンチを図1に示す。本実施形態のパンチ1は、側面2と、被加工材と対向する打抜き面3とを有し、パンチ刃先部1aには面取り加工による面取り面4が形成されている。本実施形態ではこのように面取りを形成させることで、刃先強度を高めて欠損の発生を抑制することができる。本実施形態における面取り面4と側面2(正確には側面2のダイ方向への延長面)とのなす面取り角度αは、10~45°であることが好ましい。αを上述した角度範囲とすることで、より一層の刃先強度向上効果を得ることができる。より好ましい面取り角度の下限は15°である。特に被加工材の圧延面とせん断によって形成される面が直交しない斜めトリム加工においては、刃先の変形や被加工材への引っ掛かりが発生し易いため、斜めトリム加工においては面取り角度を15°以上とすることがより好ましい。また、面取り角度が大きすぎると、せん断時の抵抗が大きくなり、被加工材がせん断されて出来る切り口に残留応力が増大することで、特に超ハイテンにおいて切り口からの割れが発生しやすくなる。より好ましい面取り角度の上限は40°である。なお上述したように、本実施形態のパンチは鋼板の縁を切断するトリム加工用であるため、パンチ外周全てではなく、外周の一部に切刃が形成されている。言い換えると、本実施形態のパンチは打抜き面外周長の少なくとも5%(より好ましくは、少なくとも10%)に、切刃が形成されていない領域を有する。
パンチの面取り長さCは、0.1mm以上であることが好ましい。この範囲とすることで、上述した斜めトリム加工のようなパンチへの負荷が大きい加工を行っても、被加工材の引っ掛かりを抑制して刃先欠損を抑制する効果を高めることができる。より好ましい面取り長さの下限は0.2mmである。また、面取り長さの上限は少なくとも被加工材の板厚未満であることが好ましい。面取り長さが長すぎると、面取り面自体でせん断することになり、被加工材がせん断されて出来る切り口においてダレやバリが大きくなり、製品の歩留を悪化させる。また、切り口に残留応力が増大することで、特に超ハイテンにおいて切り口からの割れが発生しやすくなる。より好ましい面取り長さの上限は、被加工材の強度やクリアランスにも依存するため一義的に決められないが、概ね被加工材の板厚の60%以下と設定することができる。
本実施形態のパンチは図2に示すように、パンチ刃先部1aが面取り面4と打抜き面3とで構成される切刃(第1切刃)5を有し、その刃先の曲率半径が0.05mm以上であることも特徴とする。特に形状プレス加工後の形状部をトリムする際は、パンチとダイの適切なクリアランスが維持できず、また板押さえ力も不足しやすくなり刃先に過大な力がかかる。本実施形態のパンチは刃先が上記の曲率半径を有する曲面切刃を備えることで、加工時に刃先にかかる負荷を分散させつつ、ワークの加工面も良好な状態にすることができる。また他にも、図面上で予め刃先の仕上げ形状を明確に決めておくことで、金型加工時に生成するバリ等の異常な形状を除去でき、予期しない欠損の抑止に寄与する。刃先の好ましい曲率半径の下限は0.07mmであり、より好ましい曲率半径の下限は0.1mmである。刃先の曲率半径の上限は被加工材の板厚によって変わり、例えば板厚が1mm~2mm程度の鋼板を加工する際、好ましい曲率半径の上限は1mmであり、より好ましい曲率半径の上限は0.7mmである。上記曲率半径を有する第1切刃と面取りとを組み合わせることで、過酷なせん断条件においても切刃の欠損を抑制し、安定した切り口形状を得ることが出来る。すなわち、面取り面と打抜き面とで構成され、その刃先が上記の曲率半径を有する切刃によって、せん断加工初期における被加工材とのコンタクト時に刃先にかかる負荷を分散させる。そして、面取り面4、および同様にパンチ刃先部1aが有する面取り面4とパンチ側面2とで構成される第2切刃6によってせん断中にかかる刃先応力を分散させる。せん断後は、特にハイテンにおいて顕著に起こるスプリングバックと、加工硬化した被加工材先端によって、パンチが戻る際に刃先および側面への突き当てと摺動が発生する。これは斜めせん断によって特に顕著であるが、上述した面取りと曲率半径の効果によって刃先および側面への負荷が軽減される。なお第2切刃もその刃先に曲率半径を有する曲面切刃とすることができる。
本実施形態のパンチおよびダイの材質は、Fe基合金、超硬合金、CBN、セラミックス等を適用することができる。好ましい材質は合金工具鋼であり、より好ましくはSKD11、SKD12、あるいはこれらの改良鋼からなる冷間ダイス鋼と、SKH51に代表されるハイス、SKH40に代表される粉末ハイス、ハイスの炭化物量を低減し靭性を改善したマトリックスハイスである。また本実施形態のパンチは、少なくとも刃先部の硬度が50HRC以上であることが好ましい。より好ましくは56HRC以上、さらに好ましくは60HRC以上である。この硬度を達成するためには、後述する製造方法において適切なFe基合金を選択しつつ焼入れ、焼戻し等の適切な熱処理を施すことで達成可能である。
本実施形態のパンチの刃先部には、物理蒸着法による少なくとも1種以上の硬質被膜が被覆されていることが好ましい。被覆することができる硬質被膜は、4、5、6族遷移金属、Si、Alの少なくとも一種の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物および硼化物から選択される一種以上の硬質皮膜を被覆することができ、好ましくはCr系窒化物やTi系およびV系窒化物、炭窒化物、炭化物、もしくはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)に代表されるC系硬質皮膜であり、より好ましくはAlCr系窒化物やAlCrSi系窒化物、AlTi系窒化物、TiSi系窒化物、V系窒化物被膜を選択する。これらの硬質被膜をパンチの刃先部に被覆することで、主にパンチ側面への被加工材の凝着を抑制する効果を付与することができる。また硬質被膜は目的に応じて単層構造でも良いし、上述した成分の範囲内で異なる成分の二層以上の複層構造(交互積層構造を含む)としてもよい。この被膜の膜厚は、本発明の効果を損なわない程度に適宜調整すればよい。例えば、AlCrSi系窒化物の硬質被膜を被覆する場合、好ましい膜厚は1μm~6μmであり、より好ましい膜厚の下限は2μmであり、より好ましい膜厚の上限は5μmである。さらに本実施形態では、パンチ基材表面にイオンボンバードやショットピーニング、窒化処理、炭窒化処理、炭化処理、硼化処理等の改質処理を施しても良い。上記改質処理は、表面に化合物層(いわゆる白層)を形成した状態ではその後の物理蒸着法による被膜の密着性を阻害する要因となるため、除去するか、もしくは表面に化合物層を形成しない処理が好ましい。例えば窒化処理においては、イオンやラジカルを利用した窒化により基材表面に窒素拡散層のみ形成することが可能である。また、上記改質処理は、基材表面のみ硬化することで物理蒸着法による硬質被膜の密着性を向上させる目的があるが、硬化深さが大きいと、せん断時の衝撃で硬質被膜を通して基材表面からクラックが進展しやすくなり、かえって刃先の欠損を引き起こすことがあるため、適切な硬化深さを選択することが出来る。例えばイオン窒化では、硬化深さ(窒化深さ)を50μm以下とすることで、物理蒸着法による被膜の効果と相まって、刃先の欠損を抑制できる。
本実施形態のパンチは、そのパンチ刃先部が10~45°の面取り加工をされていることから、必然とパンチ刃先部には、面取り面と打ち抜き面で構成された第一切刃5と、面取り面と側面で構成された第二切刃6の二つのエッジを有することにより、刃先における物理蒸着法による被覆直後の硬質被膜層にて起こる自己破壊や被膜内部クラックの発生を抑制することにも寄与する。例えば、物理蒸着法にて500℃付近の炉内環境で窒化物被膜または炭化物被膜を鋼などのパンチ母材に形成すると、物理蒸着法での冷却過程において、被膜と母材との熱膨張係数の違いにより双方の収縮量に差が生じ、熱膨張係数が小さい被膜内部に大きな熱応力が付与される。特に一般的なパンチのエッジ形状部は尖った角部形状(ピンカド形状、シャープエッジ)を有しており、この角部において被膜の熱応力が高くなりやすく、応力を十分に分散できない可能性がある。そして、この被膜内部に働く応力が被膜強度を超えた場合に、被膜内部へのクラックの誘発や被膜の自己破壊を起こしやすくなり、被覆パンチの機能を著しく低下させることにもつながる。従って、本発明は、故意にエッジ部を複数もうけることにより、物理蒸着法により窒化物や炭化物被膜を被覆する際に、その冷却過程において刃先に働く過剰な熱応力を分散させる効果がある。その結果、ヤング率が高い被膜を厚く被覆することができるため、さらに耐久性が向上したパンチを得ることができる。
本実施形態のダイは、一般的にトリム加工で使用されているダイを使用することができるが、より過酷な環境下で被加工材を安定して加工するために改良してもよい。例えば刃先部に、パンチに適用した面取りや曲率半径を有する切刃(曲面切刃)を形成してもよく、硬質被膜に関してもパンチと同一または異なる組成の硬質被膜を被覆してもよい。
(トリム加工用金型の製造方法)
続いて、刃先部が、50HRC以上の硬度を有し、かつ10~45°の面取り面および刃先が0.05mm以上の曲率半径を有する面取り面と打抜き面とで構成された切刃を備え、さらに硬質被膜を被覆された本実施形態のトリム加工用金型の製造方法について説明する。まず加工後の刃先部が50HRC以上になるように調整されたFe基合金製のパンチを準備する。50HRC以上に調整する方法としては、適切な合金工具鋼を選定した上で焼入れ、焼戻し等の適切な熱処理を行う。なお、本実施形態におけるパンチ刃先への物理蒸着法による硬質被膜を形成する場合は、被膜の密着性を確保しつつ、被膜形成時の熱による基材の寸法変化を抑制するため、真空中または不活性ガス中での焼入れと、450℃以上での2回以上(高速度鋼においては3回以上)の焼戻しを施すことが好ましい。
次に加工後の刃先部が50HRC以上になるように調整したパンチに対して、まず、機械加工により面取り面とパンチ側面とのなす角度が10~45°となるように面取りを行う。機械加工手段としてはプロファイル研削機や平面研削機による研削や切削加工、放電加工等の従来から知られている手段を用いれば良い。そして面取り加工後、面取り面と打抜き面とで構成される切刃に対して、刃先の曲率半径が0.05mm以上となるように加工する曲面切刃形成工程を行うことで、刃先部に仕上げる。この曲面切刃を形成する手段も、上記と同じく従来から知られている加工方法が利用できる。
曲面切刃形成工程を終えたパンチの刃先部に対して、物理蒸着法によって少なくとも1種以上の硬質被膜を被覆する硬質被膜被覆工程を行い、本実施形態のパンチを得る。硬質被膜は4、5、6族遷移金属、Si、Alの少なくとも一種の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物および硼化物から選択される一種以上の硬質皮膜を選択することができる。物理蒸着法としては、皮膜密着性を高めることができるアークイオンプレーティング法やスパッタリング法、ホローカソード法などを適用することができる。好ましくはアークイオンプレーティング法を適用する。基材となる硬質被膜被覆前のパンチには、適宜ヒーターによる加熱や洗浄、イオンクリーニング、イオンボンバード、ショットピーニング、窒化処理等を行ってもよい。また、金型が使用済で既に欠損している場合や、選定された金型材質が適切でなく熱処理によって50HRC以上の硬さを得ることが難しい場合は、肉盛溶接や三次元造形機等の各種造形方法を用いて、造形されたままで所望の硬さを達成するか、造形後に適切な熱処理を実施する事で所望の硬さを達成して、刃先部が50HRC以上に調整されたパンチを得ることが出来る。パンチとして刃先部を形成するのに必要かつ十分な体積と、刃先部に面取りと曲面切刃を形成するために、造形前後あるいは造形工程の途中に、適宜除去加工工程を入れることが出来る。
(加工品の製造方法)
上述した本発明のトリム加工用金型を用いることで、引張強度780MPa以上の被加工材を斜めせん断といった不安定な加工環境においても安定して加工することができ、二次せん断面がない高品位な加工面を有する加工品を作成することができる。なお斜めせん断の場合は、加工の安定性を高めるためにパンチ、ダイ以外に、被加工材を固定する板押さえを使用してもよい。
(実施例1)
本発明の金型の効果を確認するためのトリム加工実験を行った。加工は図3に示すような斜めトリム加工(被加工材の傾斜7°)で実施し、被加工材には厚さ1.4mm、幅82mmのコイル状1470MPa級ハイテン材を使用した。プレス機は80トン順送プレスを用い、パンチ速度60spm、クリアランス0.24mmの条件で、5000ショットのトリム加工を施した。この加工実験では、被加工材の挿入角度βが7°になるようにダイ刃先の位置を下げているが、板押さえ形状は追随させていないため、切断時に被加工材先端が動いてパンチ側面に擦れ、一般的な加工よりもパンチが欠損しやすい条件を再現したものとなっている。表1に本発明例と比較例のパンチの材質および形状を示す。なお面取りが施されている試料のパンチの面取り長さは、いずれも0.4mmである。表2にパンチ材質の詳細な成分を示す。なおダイは本発明例、比較例ともに硬さ66HRCの粉末ハイス鋼を使用し、刃長は90mmのものを使用した。トリム加工後、パンチのワーク両端近傍における損傷の大きい領域を観察し、打抜き面から見た切刃端の損傷長さを測定した。測定結果も表1に示す。また実験後のパンチ写真を図4および図5に示す。
Figure 2023048965000002
Figure 2023048965000003
表1、図4および図5より、面取りが無いNo.6、曲面切刃を有しないNo.7、面取りと曲面切刃の両方とも無いNo.5とNo.8の試料は、せん断によって刃側面にワークが凝着することによる、早期の刃先欠損および摩耗が確認された。対して本発明例である試料No.1~4は、何れも比較例より凝着が減少しており、刃先欠損と摩耗が大幅に抑制できていることが確認できた。特に面取り角度40°の試料No.3は、面取角20°である試料No.2と比較して凝着の減少がみられ、この効果により刃先欠損と摩耗を大幅に低減することができたと考えられる。なお面取り角10°である試料No.1も切刃の欠損は確認されなかったが、面取り形状の崩れが発生しており、試料No.3よりも僅かに劣る結果となっていることを確認した。以上の結果から本発明のトリム加工用金型は、ハイテン材を加工しても従来品より刃先の欠損発生を抑制でき、トリム加工における金型の寿命を向上させる効果を有することが確認できた。
(実施例2)
本発明のダイス鋼を母材とする金型の効果を確認するための追加のトリム加工実験を行った。加工は実施例1と同じ条件でトリム加工を施した。表3および表4に本発明例のパンチの材質および形状を示す。表3のNo.9、10は面取り長さを0.6mmとしている。また、表4のNo.11はパンチに硬質皮膜を被覆したものである。製造方法を以下に記す。まず、被覆するパンチに脱脂洗浄済みのものを準備し、アーク蒸発源、真空容器および基材回転機構を含むアークイオンプレーティング装置内に設置した。ターゲットにはAlCrSiターゲット(Al60Cr37Si3(at%))を用い、初期工程として、装置内にてパンチを450℃で加熱脱ガスした後、Arガスを導入し、パンチ表面のプラズマクリーニング処理(Arイオンエッチング)を行った。続いて、真空容器内のガスを窒素に置き換えて試料毎に基材に印加する負のバイアス電圧印加、炉内圧力を調整し、カソード蒸発源にアーク電流を供給してプラズマクリーニング処理後のパンチに被覆を行い、AlCrSiN層を1.3μm形成した。トリム加工後、パンチのワーク両端近傍における損傷の大きい領域を観察し、打抜き面から見た切刃端の損傷長さを測定した。測定結果も表3および表4に示す。また実験後のパンチ写真を図6および図7に示す。
Figure 2023048965000004
Figure 2023048965000005
表3、図6より、本発明例で面取り長さが0.6mmである試料No.9、No.10は、何れも凝着が減少しており、刃先欠損と摩耗が大幅に抑制できていることが確認できた。面取り角度40°の試料No.10は、面取角20°である試料No.9と比較して凝着の減少がみられ、この効果により刃先欠損と摩耗を大幅に低減することができたと考えられる。また、表4、図7より、本発明例である試料No.11、No.12については、10000ショット後であっても刃先欠損が大幅に抑制できていた。特に硬質皮膜を被覆した試料No.11は、パンチ側面のワークエッジに該当する部分において皮膜滅失、凝着が認められたものの、硬質皮膜のない試料No.12と比較しても摩耗を低減することができたと考えられる。
(実施例3)
本発明のセミハイス鋼を母材とする金型の効果を確認するためのトリム加工実験を行った。加工は実施例1に記載の斜めトリム加工(被加工材の傾斜7°)で実施し、被加工材には厚さ3.4mm、幅82mm、長さ600mmの切板状780MPa級ハイテン材を使用した。プレス機は80トン順送プレスを用い、パンチ速度60spm、クリアランス0.34mmの条件で、200ショットのトリム加工を施した。表5に本発明例および比較例のパンチの材質および形状を示す。トリム加工後、パンチのワーク両端近傍における損傷の大きい領域を観察し、打抜き面から見た切刃端の損傷長さを測定した。測定結果も表5に示す。また実験後のパンチ写真を図8に示す。
Figure 2023048965000006
表5、図8より、本発明例である試料No.13~15は、200ショットと言うごく初期の段階においても、比較例である試料No.16に比べて何れも凝着が減少しており、刃先欠損と摩耗が大幅に抑制できていることが確認できた。特に面取り角度40°、面取り長さ1mmの試料No.13は、面取角20°、面取り長さ1mmである試料No.14や、面取り角度40°、面取り長さ0.5mmである試料No.15と比較しても凝着の減少がみられ、この効果により刃先欠損と摩耗を大幅に低減することができたと考えられる。
(実施例4)
続いて本発明の金型において、硬質皮膜の付きまわり性を確認した。被覆するパンチに脱脂洗浄済みのものを準備し、アーク蒸発源、真空容器および基材回転機構を含むアークイオンプレーティング装置内に設置した。ターゲットにはAlCrSiターゲット(Al67Cr30Si3(at%))を用い、初期工程として、装置内にてパンチを450℃で加熱脱ガスした後、Arガスを導入し、パンチ表面のプラズマクリーニング処理(Arイオンエッチング)を行った。続いて、真空容器内のガスを窒素に置き換えて試料毎に基材に印加する負のバイアス電圧印加、炉内圧力を調整し、カソード蒸発源にアーク電流を供給、プラズマクリーニング処理後のパンチに被覆を行い、2.8μmのAlCrSiN層を形成した。
図9に本実施例で用いた試料の外観模式図を、図10~図13に、各試料における図6のM部を観察した走査線電子顕微鏡写真を示す。また、表6に実施例に用いた刃先形状が異なる試料の詳細と、エッジ部における被膜の付きまわり性評価結果を示す。本発明の試料No.17(図10)と試料No.18(図11)は、刃先の曲率半径の有無だけでなく、各刃先の角度が鈍角(90°以上)になることにより、成膜後に各刃先部における被膜の残留応力が緩和され、被膜の自己破壊や剥離を抑制できる。一方、比較例の試料No.19(図12)と試料No.20(図13)は、いずれも刃先に被膜剥離が生じた。刃先の曲率半径を設けた試料No.20においても、その角度自体が鈍角ではないことから、被膜の自己破壊および剥離につながったと考える。以上より本発明のトリム加工用金型は、硬質皮膜の付きまわり性が良く、耐久性に優れる硬質皮膜を安定して成膜でき、さらに性能を向上させることが可能である。
Figure 2023048965000007
1:パンチ
1a:パンチ刃先部
2:側面
3:打抜き面
4:面取り面
5:切刃(第一切刃)
6:第二切刃
7:ダイ
8:板押さえ
9:被加工材
C:面取り長さ
α:面取り角度
β:挿入角度


Claims (6)

  1. パンチとダイを用いて被加工材をせん断によりトリム加工する、トリム加工用金型において、
    前記パンチの刃先部は、面取り加工による面取り面と、前記面取り面と打抜き面とで構成される切刃とを有し、
    前記面取り面と打抜き面とで構成される切刃は、刃先の曲率半径が0.05mm以上である、トリム加工用金型。
  2. 前記面取り面とパンチ側面とのなす角度は10度以上45度以下である、
    請求項1に記載のトリム加工用金型。
  3. 前記パンチの材質はFe基合金であり、パンチ刃先部の硬さが50HRC以上である、請求項1または2に記載のトリム加工用金型。
  4. 前記パンチの少なくとも刃先部に、物理蒸着法による少なくとも1種以上の硬質被膜が被覆されていることを特徴とする、請求項1~3の何れかに記載のトリム加工用金型。
  5. パンチとダイを用いて被加工材をせん断によりトリム加工する、トリム加工用金型の製造方法であって、
    パンチ刃先部の硬さが50HRC以上になるように調整されたFe基合金からなるパンチを機械加工して、面取り面とパンチ側面とのなす角度が10~45°となるように面取り加工する工程と、
    刃先の曲率半径が0.05mm以上となる前記面取り面と打抜き面とで構成される切刃を形成して、前記面取り面と切刃とを有する刃先部を形成する工程と、
    前記形成された刃先部に物理蒸着法によって少なくとも1種以上の硬質皮膜を被覆する工程を有することを特徴とする、トリム加工用金型の製造方法。
  6. 請求項1~4の何れかに記載のトリム加工用金型を用いて、引張強度780MPa以上の被加工材をトリム加工する、加工品の製造方法。

JP2022049105A 2021-09-28 2022-03-24 トリム加工用金型およびその製造方法、ならびに加工品の製造方法 Pending JP2023048965A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021158102 2021-09-28
JP2021158102 2021-09-28

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023048965A true JP2023048965A (ja) 2023-04-07

Family

ID=85779861

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022049105A Pending JP2023048965A (ja) 2021-09-28 2022-03-24 トリム加工用金型およびその製造方法、ならびに加工品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023048965A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1245699B1 (en) Coated tool for warm and/or hot working
US6811581B2 (en) High-speed tool steel gear cutting tool and manufacturing method therefor
JP5276330B2 (ja) 冷間金型用鋼および冷間プレス用金型
JP6525310B2 (ja) 被覆工具
JP2009061465A (ja) 冷間鍛造用金型及びその製造方法
JP2009120886A (ja) 冷間金型用鋼および金型
JP4771223B2 (ja) 耐久性に優れた硬質材料被覆塑性加工用金型
JP2002307129A (ja) 潤滑剤付着性および耐摩耗性に優れた温熱間加工用被覆工具
JP6590213B2 (ja) 冷間加工用金型の製造方法
JP6489412B2 (ja) 硬質皮膜層、及び冷間塑性加工用金型
JP5748983B2 (ja) 耐焼付き性に優れたアルミ製缶用工具およびその製造方法
JP2018039045A (ja) 被覆冷間用金型
JP2009061464A (ja) 温熱間鍛造用金型及びその製造方法
JP2000343151A (ja) パンチプレス用金型及びその製造方法
JP2023048965A (ja) トリム加工用金型およびその製造方法、ならびに加工品の製造方法
JP2005305510A (ja) プレス型工具
JP2020020030A (ja) 硬質皮膜被覆部材、及び硬質皮膜被覆工具
JP2003253422A (ja) マンドレルあるいは成形金型などの工具の高寿命化方法および高寿命化されたマンドレルあるいは成形金型などの工具
CN110857465B (zh) 刀具及其制造方法
JP6604105B2 (ja) 超硬工具及びその製造方法
JP6762790B2 (ja) 硬質皮膜被覆部材
JP2020131310A (ja) 切削工具およびその製造方法
JP4084678B2 (ja) 表面被覆切削工具およびその製造方法
JP2005153126A (ja) プラズマ窒化セラミック硬質膜被覆工具
Gainieva PERSPECTIVES AND VARIETIES OF PVD CUTTING TOOL COATING