JP2023044790A - 捲縮糸 - Google Patents

捲縮糸 Download PDF

Info

Publication number
JP2023044790A
JP2023044790A JP2021152833A JP2021152833A JP2023044790A JP 2023044790 A JP2023044790 A JP 2023044790A JP 2021152833 A JP2021152833 A JP 2021152833A JP 2021152833 A JP2021152833 A JP 2021152833A JP 2023044790 A JP2023044790 A JP 2023044790A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymer
yarn
segment
fiber
textile
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021152833A
Other languages
English (en)
Inventor
紘佑 ▲はま▼田
Kosuke Hamada
正人 増田
Masato Masuda
慎也 中道
Shinya Nakamichi
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP2021152833A priority Critical patent/JP2023044790A/ja
Publication of JP2023044790A publication Critical patent/JP2023044790A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Multicomponent Fibers (AREA)

Abstract

Figure 2023044790000001
【課題】洗濯や繰り返しの着用による擦れ、摩擦等によりテキスタイル品位を劣化させることなく風合いや外観が変化し、その着用感や快適性を増すようなテキスタイルを得るのに適した捲縮糸を提供する。
【解決手段】少なくとも異なる2種類のポリエステルが繊維表面に複数箇所露出して存在し、ポリマーA及びポリマーBは繊維表面に複数箇所露出して存在し、かつ、ポリマーBは複数のセグメントとして存在し、ポリマーAとポリマーBの接触長(CAB)とポリマーBの周長(L)との比(CAB/L)が0.5以上であることを特徴とする捲縮糸により達成できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、少なくとも異なる2種類のポリエステルからなる捲縮糸に関するものである。
ポリエステルやポリアミドなどからなる合成繊維は優れた力学特性や寸法安定性、取扱い性、機能加工性等の特徴を有しているため、衣料用途から非衣料用途まで幅広く利用されている。
人々の生活が多様化するに伴い、衣料に求められる快適性も感性に訴えるものから、機能性を追求したもの等、様々なものが存在するが、コットンデニムのように、着用を繰り返すことや洗濯等による外力を受けることで外観や風合いが変化し、その着用感や快適性を増す経年変化を楽しむテキスタイルは昔から人々に親しまれている。
天然素材の多くは、この経年変化が嗜好とされ、好ましく受け入れられるものとなるが、合成繊維では、単なる経時的な劣化とされる。これは、合成繊維が優れた力学特性を有しているために起こることであり、テキスタイル表面に毛玉ができることによるピリングが不快な触感や、外観の低下の要因になるためである。
テキスタイルにおいては、一般に着用や洗濯時に発生する生地-生地、生地-皮膚、生地-その他物質との擦れ、摩擦等の外力により、繊維表面がフィブリル化(毛羽立ち)し、これらフィブリル同士が絡み合い、この繊維同士の絡み合いが進行することで、ピリングを発生することとなるが、コットン等の天然繊維素材においては、繊維の伸度が比較的低いことで擦り切れやすく、繊維の絡み合いが拡大する前に脱落するため、ピリングによるテキスタイルの品位劣化が生じにくい上に、繊維束が適度にフィブリル化することで、内部の未染色部分(白場)が露出して好適な外観変化が生まれる。
一方で、ポリエステルやポリアミド等の合成繊維が含まれると、靭性が高く切れにくいという性質から、繊維同士の絡み合いが脱落することなくテキスタイル表面に留まり、これが拡大することでピリングとなり、触感を悪くするとともに外観を悪化させるなど、テキスタイルの品位劣化となってしまう。
このような品位劣化は、繊維束に糸端が少ない長繊維よりも、短繊維同士をより合わせて紡いだ紡績糸で顕著に現れるものである。これらの課題に対して、ポリマーを改質したり、繊維断面や繊維形態を適正化することで、抗ピリング性を向上させることが提案されている。
特許文献1では、構成ポリマーを2種類の変性ポリエステルポリマーが混合されて得られた繊維であり、簡単な後処理で抗ピリング性の布帛を得るのに適した原糸が提案されている。
特許文献2では、ポリマーブレンドにより、抗ピリング性や繊維裁断性に優れるタフネスが低いポリエステル繊維をあえて活用する技術が提案されている。
特許文献3では、扁平形状で外周部に凹凸を有するような扁平多葉断面とすることで、ソフト性や抗ピリング性に優れたテキスタイルに適した原糸が提案されている。
特開2002-212878号公報(特許請求の範囲) 特開2008-169502号公報(特許請求の範囲) 特開2016-44377号公報(特許請求の範囲)
特許文献1では、酸脆化性が異なる2種類の変性ポリエステルポリマーが混合されて得られた繊維であり、酸処理により繊維を脆化することで抗ピリング性効果を発現する技術が開示されている。
この場合では、繊維が切れやすくなるためにピリングが脱落しやすくなる効果を期待できるが、テキスタイルを構成する繊維そのものの強力を低下させてしまうこととなるため、布帛の組織を複雑にしたり、制約をもうけないと、着用時の擦れ、摩擦等により、繊維束がささくれた状態になり、テキスタイルの外観や触感を不要に低下させてしまう場合があった。
特許文献2では、汎用のポリエチレンテレフタレートを主成分として、結晶化速度の速い高融点の結晶性ポリマーや高Tgの非晶性ポリマーをブレンドした繊維とすることで、繊維中で島状態に分散しているポリマーが欠陥となり、抗ピリング性効果を発揮することを技術ポイントとしている。一方で、このような繊維形態とすることは繊維内部に欠陥となる成分が常に内在していることを意味するため、延伸や高次加工工程で受ける外力により繊維内部にクラックが生じ、工程通過性不良やテキスタイルの寿命を縮めてしまう場合があった。
特許文献3では、繊維横断面が扁平形状で外周部に凹凸を有する繊維であって、単繊維強度を1.5~4.0cN/dtexの範囲内とすることを技術ポイントとしている。確かに、繊維断面を扁平形状とすることで、テキスタイル表面は平滑性を示すこととなり、摩擦等の外力が全体に均質に分散して働くため、テキスタイルへの過度な負荷を抑制することができる。加えて、単繊維強度を上記範囲内とすることでピリングの脱落を促進することができることから、抗ピリング効果が期待できる。
しかしながら、テキスタイル表面には繊維の凸部が存在することになるため、繰り返しの擦れ、摩擦により凸部が不必要に摩耗される可能性があり、耐摩耗性という観点では根本的な解決にならない場合があった。また、繊維形状が扁平形状であるため、摩耗により布帛表面に平滑面が生じ、いわゆるテカリとよばれる強く光を反射する現象を誘発する場合があり、テキスタイルの品位を低下する場合があった。
以上のように、従来技術により達成される合成繊維では、繰り返しの着用により発生する繊維同士の絡み合いが脱落することなくテキスタイル表面に留まることによりピリングが発生して成長し、経年でのテキスタイル品位劣化を十分に抑制できているとは言い難いものであった。また、繰り返しの着用による擦れ、摩擦等によりテキスタイルの風合いや外観が変化し、その着用感や快適性を増すようなテキスタイルを実現する原糸が求められていた。
上記した従来技術の課題は、以下によって解消される。すなわち、
(1)少なくとも異なる2種類のポリエステルから構成される複合繊維の横断面において、ポリマーA及びポリマーBは繊維表面に複数箇所露出して存在し、かつ、ポリマーBは複数のセグメントとして存在し、ポリマーAとポリマーBの接触長(CAB)とポリマーBの周長(L)との比(CAB/L)が0.5以上であることを特徴とする捲縮糸。
(2)単糸繊度が3dtex以下、ポリマーBのセグメント数が4以上であることを特徴とする前記(1)に記載の捲縮糸。
(3)ポリマーBのセグメントは面積に差を有しており、最大セグメントの面積が最小セグメントの面積の2.0倍以上であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の捲縮糸。
(4)ポリマーBがポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれかに記載の捲縮糸。
(5)前記(1)~(4)のいずれかに記載の捲縮糸を含む繊維製品。
である。
本発明の捲縮糸では、高次加工工程では剥離することなく、テキスタイル着用中に受ける擦れ、摩擦等の外力により、極細繊維がいわゆるフィブリルとして発生することで経年変化が生まれるとともに、適度に切断されることで、繊維同士の絡み合いが留まることがなく、抗ピリング性を発揮することのできるテキスタイルに適した原糸を提供できる。
すなわち、本発明の捲縮糸では、洗濯や繰り返しの着用による擦れ、摩擦等によりテキスタイル品位を劣化させることなく風合いや外観が変化し、その着用感や快適性を増す経年変化を楽しむような従来にないテキスタイルを可能とする捲縮糸である。
本発明の捲縮糸の横断面構造の一例の概略図である。 本発明の接触長(CAB)、周長(L)を説明するための図である。 本発明の捲縮糸の捲縮形態の概略図である。 本発明の異形度を説明するためのセグメントBの概略図である。
以下、本発明について望ましい実施形態と共に記述する。
本発明の捲縮糸の構成は、少なくとも異なる2種類のポリエステルが繊維表面に複数箇所露出して存在する複合繊維であり、本発明の目的とするテキスタイル品位を劣化させることなく、その着用感や快適性を増す経年変化を楽しむようなテキスタイルを達成することにおいて、重要な要件である。
なお、本発明においては、図1に例示するように、該複合繊維の横断面においてセグメント数が少ない成分(図1中の黒部分1)をポリマーA、セグメント数が多い成分(図1中の斜線部分2)をポリマーBと定義し、ポリマーAより構成されるセグメントをセグメントA、ポリマーBより構成されるセグメントをセグメントBと記載する。少なくとも、ポリマーBは複数のセグメントとして存在する。
本発明でいう捲縮糸とは、例えば、熱処理によりポリマーAとポリマーBの収縮差に応じて単糸が湾曲し、コイルのような3次元的スパイラル捲縮が発現するような糸形態や、仮撚加工などの撚糸加工を施して束中の繊維全体に均一な捲縮を付与した糸形態であることを意味し、少なくともいずれかの捲縮構造を有する糸であることが必要である。
本発明の目的効果を発揮するためには、両方の捲縮構造を有する捲縮糸であることがより好ましい形態として挙げられる。ここでいう捲縮形態とは、捲縮ピッチが100~2000μmである糸形態であることをいう。ここでいう捲縮ピッチとは、繊維を1m×10ループでかせ取りし、98℃の沸騰水中にて1.765×10-4cN/dtexの荷重下で15分間処理後乾燥する。その後、繊維を単糸一本に分解し、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープにて、コイル中心方向に長さ3mm間の捲縮形態を観察したときの、捲縮位相における山-山間の距離(μm)(図3中の3)を求めた。なお、1単糸あたり任意の3箇所で測定を行い、これを異なる10本の単糸において行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下を四捨五入した値を捲縮ピッチとした。
合成繊維が引き起こすテキスタイル品位の経年劣化の要因は、その優れた靭性により、繰り返しの擦れ、摩擦等により発生したフィブリルが擦り切れにくいため、繊維同士の絡み合いが脱落することなくテキスタイル表面に留まり、これが経時で拡大することでピリングを形成するためである。従来技術では、ポリマーを改質して繊維の強力を低下させる手法もあるが、この手法ではテキスタイルの強度も低下することとなり、用途が制限される場合があった。そこで本発明者らが鋭意検討し、繊維横断面において少なくとも異なる2種類のポリマーが繊維表面に複数箇所露出して存在する捲縮糸とすることで、上記課題を解決できることを見出したのである。
すなわち、本発明の捲縮糸は、ポリエステルから選択される少なくとも2種類のポリマーから構成される複合繊維であり、これらポリマーは親和性が高く、なじみやすいことから製糸工程、延伸工程、高次加工工程等の各工程においては剥離することなく、テキスタイルとなった後に擦れ、摩擦等の比較的大きな外力を受けることで、ポリマーAとポリマーBの界面間で剥離し、ポリマーBより構成される極細繊維がフィブリルとしてテキスタイル表面に発生することになる。
このように、外力によって極細繊維が後発的に発現することで、テキスタイルとして特徴的な風合いや外観変化を発揮するのである。
また、発生した極細繊維は、その細さ故、靱性が低く適度に切断されやすいのであるが、さらに複合繊維が捲縮構造であることにより、発生した極細繊維の糸端の拘束力が高く、糸の自由度が低下することに起因して、極細繊維の擦り切れやすさが助長されることとなり、抗ピリング効果を相乗的に発揮するのである。加えて、極細繊維がテキスタイルの骨格を担うポリマーAを保護する役割を担うこととなるため、より強い摩擦を受けた際に発生する繊維表面の平滑化に由来した不快感、すなわちテカリの抑制効果も期待できるものとなるのである。
一般的に、複合繊維のような異なるポリマーから構成される複合素材では、それぞれのポリマーが接触する界面において各々の分子鎖が絡み合うことで接着効果を発揮していることが知られている。すなわち、このようなポリマー界面における分子鎖の絡み合いを制御することで、強固に接着したり、容易に剥離しやすい複合素材を得ることができる。
本発明においては、断面形状とポリマーの組合せの2点から剥離性を制御することを技術ポイントとすることで、製糸工程、延伸工程、仮撚り工程、高次加工工程等の各工程における通過性を損なうことなく、良好なテキスタイルを得ることができる。
すなわち、本発明の捲縮糸は、横断面におけるポリマーAとポリマーBの接触長(CAB、ポリマーAとポリマーBの各セグメントの接触長の合計、図2の(a))とポリマーBの周長(L、ポリマーBの各セグメントの周長の合計、図2の(b))との比(CAB/L)が0.5以上であることが重要な要件である。比(CAB/L)が上記範囲内にあれば、ポリマーAおよびポリマーBとの接触面積が必然的に大きくなることにより分子鎖の絡み合いが促進されるとともに、アンカー効果による接着力も大きくなるために、結果として熱処理等による剥離性を大きく抑制することができるのである。
以上の観点から、比(CAB/L)が大きいほど、ポリマー同士の接着力も大きくなり工程通過性も向上するため好ましいが、一方で、比(CAB/L)が大きすぎると本発明の目的とする摩擦での剥離、極細繊維の発生を必要以上に阻害することになるため、比(CAB/L)が0.6~0.9であることがより好ましい範囲として挙げられる。なお、該比の実質的な上限は1.0であるが、この場合はポリマーBがポリマーAに完全に被覆されている状態を示すことから、本発明においては1.0未満である必要がある。
本発明におけるポリマーAおよびポリマーBは、親和性が高くなじみやすいポリマーから選択されることで分子鎖の絡み合いがより助長されることとなり、剥離性を制御することができる。
ここでいう親和性とは、例えば、2種類のポリマーの溶解度パラメータ(SP値)に基づいて選択することもできる。SP値とは、(蒸発エネルギー/モル容積)1/2で定義される物質の凝集力を反映するパラメータであり、この値が近いほどそのポリマーの組み合わせは親和性が高いことを意味している。このSP値は種々のポリマーで知られているが、例えば「プラスチック・データブック」(旭化成アミダス株式会社/プラスチック編集部共編、1999年)の189ページ等に記載されている。
本発明においては、選択された2種類のポリマーのSP値の差が絶対値で4(MJ/m1/2以下であれば、工程通過性において良好な接着力を有することとなり、本発明の目的効果の観点からも好ましい範囲として挙げられる。以上の観点から鑑みると、より好ましくは3(MJ/m1/2以下、さらに好ましくは2(MJ/m1/2以下である。
本発明の捲縮糸は、製糸後に種々の高次加工を経て、最終製品にされるものである。このため、各工程での処理温度等を踏まえると、ポリマーAおよびポリマーBは融点が165℃以上の耐熱性が良好なポリマーであることが好適であり、またポリマーの親和性ならびに繊維強力という観点から鑑みると、ポリマーAおよびポリマーBはポリエステルならびにその共重合体から選択されることが好適である。
ここでいうポリエステルとは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステルおよびその共重合体のいずれかから選択されるものである。なお、必要に応じて酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲でポリマー中に含んでいてもよい。
本発明の捲縮糸を構成するポリマーとしては、上述した観点から、ポリエステルならびにその共重合体から選択される必要があるが、ポリマーBがポリトリメチレンテレフタレート(PTT)であることがより好ましい形態として挙げられる。
すなわち、ポリマーBにPTTを選択することで、繰り返しの摩擦により発生した極細繊維が、ソフトな肌触りを発揮することとなり風合いに良好な経年変化を生み出すことに加えて、PTT極細繊維の繊維強力は抗ピリング性を効果的に発揮するのである。一方で、ポリマーAはポリエステルであれば特に制限されるものではないが、染色した際の発色性という観点では、カチオン可染ポリエステルとすることが好ましい形態として挙げられる。すなわち、ポリマーAとしてカチオン可染ポリエステル、ポリマーBとしてPTTを選択した場合、カチオン染色することで優れた発色性を示すテキスタイルになるとともに、摩耗により未染色部分のPTT極細繊維がテキスタイル表層に現れることとなるため、経年で白味が露わとなる外観変化を発揮することとなり、コットンデニムのような天然繊維テキスタイルに見られる経年変化テキスタイルとなるため、好適な組合せとして挙げられる。
本発明の捲縮糸は、テキスタイル品位を劣化させることなく、テキスタイルの風合いや外観が変化し、その着用感や快適性を増す経年変化を楽しむような高機能素材として用いられることが好適である。
このため、パンツ地などのカジュアル衣料として、従来にはない高付加価素材として期待できるものである。このような観点では、本発明の捲縮糸は、単糸繊度が3dtex以下であることが好ましく、係る範囲であれば、最終製品になるまでの工程通過性に優れ、テキスタイルとした場合に良好な風合いを示すとともに、擦れ、摩擦により発生する極細繊維に由来した切れやすさ、良好な外観ならびに風合い変化を生むという点において好ましい。一方で単糸繊度が小さすぎると、テキスタイルの力学物性が低下し取扱性が悪化するということを踏まえると、本発明の捲縮糸の単糸繊度は0.5dtex以上であることが好ましい。
本発明の目的とする極細繊維の効果を如何なく発揮するためには、極細繊維の発生効率が高いほど好ましい。以上の観点では、断面あたりの分割セグメント数を多くすることが望ましいため、ポリマーBのセグメント数が4以上であることが好ましい。なお、ポリマーBのセグメント数が多くなるほど、発生する極細繊維の繊維径は小さくなるが、極細繊維が細すぎるとテキスタイル表面の摩擦力が不要に大きくなったり、肌にまとわりつくような不快な風合いとなる場合があるため、ポリマーBのセグメント数は100以下であることが好ましい。
本発明の捲縮糸は、その横断面におけるポリマーBのセグメントにおいて、セグメントの面積には差を有しており、少なくとも面積の一番大きいセグメント(最大セグメント)と一番小さいセグメント(最小セグメント)を有する。そして、最大セグメントの面積(図1中の2-1)が最小セグメントの面積(図1中の2-2)の2.0倍以上であることが好ましい範囲として挙げられる。係る範囲であれば、複合繊維の横断面における重心点が中心から離れることとなり、これにより熱処理後の繊維が高収縮成分側に湾曲することで捲縮構造を発現することから、好ましいのである。
ここで、重心位置が離れているほどより良好な捲縮が発現し、本発明の目的効果に合うということから、ポリマーBのセグメントにおいて最大セグメントの面積が最小セグメントの面積の4.0倍以上であることがより好ましい。
本発明において、最大セグメントは1つには限定されず、重心点が中心から離れるように配置(非対称に配置)すれば、複数個あってもよい。また、最小セグメントの面積・形状は、本発明の目的効果を最大限に発揮するという観点から、均一であることが好ましい。
なお、本発明の異なる態様として、ポリマーA、ポリマーB及びポリマーCの3種のポリエステルから構成し、ポリマーBのセグメントを最小セグメント、ポリマーCのセグメントを最大セグメントとすることも可能である。
本発明の捲縮糸におけるセグメントBの断面形状は少なくとも1辺もしくは1部が繊維表面に露出するような形状であることが必要であり、三角、Y形、扁平といった異形形状が例示される。異形形状とすることで、セグメントAとの接触長が長くなり、アンカー効果による接着力を向上させることができることに加えて、摩擦により発生する極細繊維が丸形状とは異なる特徴的な風合いを呈したり、特異な形状により光沢感などの外観変化を助長するという優れた性能を発揮することに繋がる。
本発明における異形形状とは、異形度が1.2以上であることをいう。異形度とは、次のように求めるものである。複合繊維の断面を2次元的に撮影し、その画像から、セグメントBに外接する真円の径を外接円径とし、さらに、内接する真円の径を内接円径として、異形度=外接円径÷内接円径から、小数点以下2桁目を四捨五入し、小数点以下1桁目まで求めたものを異形度とした。ここで言う外接円とは、図4中の破線4であり、内接円とは図4中の破線5を示している。この異形度を無作為に抽出した10本の繊維について測定し、それぞれの画像での測定値の単純な数平均値を求め、異形度とした。なお、異形度が1.0であればセグメントBの形状は正円となる。なお、実質的にとりうる異形度の範囲の上限は10.0であるが、本発明の目的効果から鑑みると、異形度は5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。
本発明の捲縮糸は、上述したようにポリマーの熱収縮差を利用した捲縮糸としても仮撚り加工などの撚糸加工が施されたものであってもよく、両方の捲縮構造を有する捲縮糸であることがより好ましい。これは、ポリマーの熱収縮差による捲縮構造に加えて、撚糸加工も施すことで、2種類の捲縮ピッチが混ざり合うこととなるため、発生した極細繊維の糸端の拘束力が高まることに由来する、極細繊維が適度に切れやすいという効果が期待できるため、抗ピリング性を良好に発揮するという観点から好ましいのである。
例えば、仮撚加工を施す方法としては、ポリエステルで汎用的に用いられている方法であれば特に限定するものではないが、生産性を考慮するとディスクやベルトを用いた摩擦仮撚機を用いて加工することが好ましい。
仮撚加工によって本発明の捲縮糸を安定的に製造するには、加撚領域での糸束の実撚数により捲縮ピッチをコントロールすることが好適である。
すなわち、加撚領域での糸束の撚数である仮撚数T(単位は回/m)が、仮撚加工後の糸束の総繊度Df(単位はdtex)に応じて決定される、以下の条件を満たすように、加撚機構の回転数や加工速度等の仮撚条件を設定することが好ましい。
5000/Df0.5≦T≦40000/Df0.5
ここで仮撚数Tは、次の方法で測定したものである。すなわち、仮撚工程の加撚領域で走行している糸束を、ツイスター直前で撚りをほどかないよう、50cm以上の長さで採取する。そして、採取した糸サンプルについて検撚機に取り付け、JIS L1013(2010)8.13に記載の方法にて撚数を測定したものが仮撚数Tである。仮撚数が上述の条件を満たすことで、得られた糸束では300μm以上の粗大な捲縮径を制御でき、シボやスジといった布帛品位の低下を抑制できるのみならず、本発明の目的効果を発揮することが可能となる。
本発明の捲縮糸が少なくとも一部を構成する繊維製品とすると、工程通過性などの取扱い性を損なうことなく、着用を繰り返すことや洗濯等による外力を受けることでテキスタイルに極細繊維が後発的に発生し、風合いや外観が変化したり抗ピリング性といった特徴を兼ね備えた高機能素材として用いられることが好適である。さらに、発生する極細繊維はテキスタイルの骨格を担うポリマーAを保護する役割を担うこととなるため、より強い摩擦を受けた際に発生する繊維表面の平滑化に由来した不快感、すなわちテカリの抑制効果も期待できることから、パンツ地などのカジュアル衣料として、従来にはない高付加価素材として期待できるものである。
以下に本発明の捲縮糸の製造方法の一例を詳述する。
本発明の捲縮糸を得る方法として長繊維の製造を目的とした溶融紡糸法、湿式および乾湿式などの溶液紡糸法によって製造することも可能であるが、生産性を高めるという観点から、溶融紡糸法が好適である。
本発明の捲縮糸を製造する方法としては、繊維横断面において図1に例示する断面とするような、繊維表面(横断面における外周)にポリマーが交互に配されるように構成される複合繊維を利用して製造することが最も好適である。
本発明の捲縮糸を得るのに適した複合繊維は、繊維軸に垂直方向の繊維断面において、最大セグメントの面積が最小セグメントの面積の2.0倍以上であることが好ましく、図1に例示するように、ポリマーBのセグメントのなかに面積の大きいセグメントを有すると繊維断面に非対称性が生じ、熱処理時に熱収縮挙動の違いから捲縮構造を発現するのである。このように、サイズの異なるセグメントが存在することで、本発明の捲縮糸が得られやすくなるのである。
本発明の捲縮糸を得るのに適した複合繊維を構成するポリマーは前述のとおりである。
本発明の捲縮糸の糸形態として、熱処理によりポリマーAとポリマーBの収縮差に応じて単糸が湾曲し、コイルのような3次元的スパイラル捲縮を発現させるという観点では、ポリマーA/ポリマーBの溶融粘度比が1.5倍以上であることが好ましい。上記範囲とすることで、ポリマーA側に紡糸線上で応力が集中しやすくなり、繊維構造形成が促進されることで、結果としてポリマーAとポリマーBとの間に収縮差が生じやすくなるため好ましい。
溶融紡糸法にて、本発明の捲縮糸を得るのに適した複合繊維を製造するのに用いる口金については、2成分以上のポリマーを複合できるものから適宜選択されるものであるが、複数成分のポリマーを所望のセグメント数とそのサイズを精密に制御する観点からは、特開2011-174215号公報に記載の複合口金が好適に用いられる。この複合紡糸口金を利用することで断面形状を精度良く形成できるため、繊維断面中における各セグメントの形状、サイズおよび配置等を制御することが可能であることから、上記口金を選択することが好適なのである。
本発明の捲縮糸を得るのに適した複合繊維を製造する場合には、紡糸温度は前述した観点から決定した使用ポリマーのうち、主に高融点や高粘度のポリマーが流動性を示す温度とすることが好適である。この流動性を示す温度とは、ポリマー特性やその分子量によっても異なるが、そのポリマーの融点が目安となり、融点+60℃以下で設定すればよい。これ以下の温度であれば、紡糸ヘッドあるいは紡糸パック内でポリマーが熱分解等することなく、分子量低下が抑制され、良好に複合繊維を製造することができる。この際のポリマーの吐出量は、安定性を維持しつつ溶融吐出できる範囲として、吐出孔当たり0.1g/min/holeから20.0g/min/holeを挙げることができる。この際、吐出の安定性を確保できる吐出孔における圧力損失を考慮することが好ましい。ここでいう圧力損失は、0.1MPa~40MPaを目安にポリマーの溶融粘度、吐出孔径、吐出孔長との関係から吐出量を係る範囲より決定することが好ましい。
本発明の捲縮糸を得るのに適した複合繊維を紡糸する際のポリマーAとポリマーBの比率は、吐出量を基準に重量比でポリマーA/ポリマーB比率で5/95~95/5の範囲で選択することができる。複合繊維の安定的な製造や、複合断面の長期安定性という観点から鑑みると、ポリマーA/ポリマーB比率が50/50~90/10の範囲内とすることが好ましい。
本発明の捲縮糸を得るのに適した複合繊維は、吐出されたポリマーを未延伸糸として一旦巻き取った後に延伸する二工程法のほか、紡糸および延伸工程を連続して行う直接紡糸延伸法や高速製糸法など、いずれのプロセスにおいても製造できる。また、高速製糸法における紡糸速度の範囲は特に規定しないため、半延伸糸として巻き取った後に延伸する工程でもよい。さらに、必要に応じて仮撚りなどの糸加工を行うこともできる。
上記複合繊維を二工程法で製糸する場合、ホットロール-ホットロール延伸や熱ピンを用いた延伸の他、あらゆる公知の延伸方法を用いることができる。また、用途に応じて交絡や仮撚りを加えながら延伸してもよい。毛羽発生や両成分の剥離などの複合異常を抑制するために、延伸糸の残留伸度は25~50%となるように延伸することが好ましい。
紡糸パック内を流れて、口金から吐出された複合ポリマー流は冷却固化された後、油剤を付与されて周速が規定されたローラーによって引き取られることにより、複合繊維が得られる。この引取速度は、500~6000m/分程度にするとよく、ポリマーの物性や繊維の使用目的によって変更可能である。特に、高配向とし力学特性を向上させるという観点からすると、500~4000m/分とし、その後延伸することで、繊維の一軸配向を促進できるため、好ましい。延伸に際しては、ポリマーのガラス転移温度など、軟化できる温度を目安として、予熱温度を適切に設定することが好ましい。予熱温度の上限としては、予熱過程で繊維の自発伸長により糸道乱れが発生しない温度とすることが好ましい。
上記のようにして得られた複合繊維について、熱処理を施したり、仮撚りなどの撚り加工を施すことで、本発明の捲縮糸を製造することができる。
以下実施例を挙げて、本発明の混繊糸について具体的に説明する。実施例および比較例については、下記の評価を行った。
A.ポリマーの溶融粘度
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、東洋精機製キャピログラフ1Bによって、歪速度を段階的に変更して、溶融粘度を測定した。なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、実施例あるいは比較例には、1216s-1の溶融粘度を記載している。ちなみに、加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、窒素雰囲気下で測定を行った。
B.繊度
100mのマルチフィラメントの重量を測定し、その値を100倍した値を算出した。この動作を10回繰り返し、その平均値の小数点第2位を四捨五入した値をマルチフィラメントの繊度(dtex)とした。
C.セグメントBの面積比
捲縮糸をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert社製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert-Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した後、その切削面を(株)日立製作所製 H-7100FA型透過型電子顕微鏡(TEM)にて繊維が50本以上観察できる倍率で撮影した。この画像から、無作為に抽出した単糸について画像解析ソフトWINROOFによりセグメントBの最大セグメントの面積および最小セグメントの面積を測定し、面積比=最大セグメントの面積÷最小セグメントの面積から、小数点以下2桁目を四捨五入し、小数点以下1桁目まで求めたものを面積比とした。この面積比を無作為に抽出した10本の単糸について測定し、それぞれの画像での測定値の単純な数平均値を求め、面積比とした。
D.セグメントBの異形度
捲縮糸をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert社製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert-Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した後、その切削面を(株)日立製作所製 H-7100FA型透過型電子顕微鏡(TEM)にて繊維が50本以上観察できる倍率で撮影した。この画像から、セグメントBに外接する真円の径を外接円径とし、さらに、内接する真円の径を内接円径として、異形度=外接円径÷内接円径から、小数点以下2桁目を四捨五入し、小数点以下1桁目まで求めたものを異形度とした。ここで言う外接円とは、図4中の破線4であり、内接円とは図4中の破線5を示している。この異形度を無作為に抽出した10個のセグメントBについて測定し、それぞれの画像での測定値の単純な数平均値を求め、異形度とした。
E.捲縮ピッチ
繊維を1m×10ループでかせ取りし、98℃の沸騰水中にて1.765×10-4cN/dtexの荷重下で15分間処理後乾燥する。その後、繊維を単糸一本に分解し、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープにて、コイル中心方向に長さ3mm間の捲縮形態を観察したときの、捲縮位相における山-山間の距離(μm)を求めた。なお、1単糸あたり任意の3箇所で測定を行い、これを異なる10本の単糸において行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下を四捨五入した値を捲縮ピッチとした。
F.ピリング試験および評価(フィブリル、抗ピリング性)
経糸が捲縮糸、緯糸が一般に使用される綿の紡績糸より構成される黒染色した織物について、アピアランス・リテンション(ART)ピリングテスターにて摩擦回数を200回としたこと以外はJIS-L-1076-6.3.C法に準拠して実施し、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープにて摩耗箇所を観察することで、フィブリルの有無ならびに抗ピリング性を次の基準に基づき判定した。
・フィブリルの有無
○:フィブリルあり
×:フィブリルなし
・抗ピリング性
○:抗ピリング性あり(ピリングなし)
×:抗ピリング性なし(ピリングあり)。
なお、ここでいう織物は、経糸方向のカバーファクター(CFA)が1800、緯糸方向のカバーファクター(CFB)が1200となるように繊維本数を調整し、3/1ツイル組織に製織した。ただし、CFAおよびCFBとは、織物の経密度および緯密度をJIS-L-1096:2010 8.6.1に準じて2.54cmの区間にて測定し、CFA=経密度×(経糸の繊度)1/2、CFB=緯密度×(緯糸の繊度)1/2の式より求めた値である。
G.色調評価(外観変化性)
F項で評価した摩耗前後の布帛について、コニカミノルタ製CM-3700Aを用いて布帛の反射測定からL、a、b値を測定した。なお、摩耗試験前布帛の測定結果をL、a、b値、摩耗試験後布帛の測定結果をL、a、b値とした。得られたそれぞれのL、a、b値について、摩耗前後での色調差の指標として下記式に基づいてΔEを算出し、布帛の外観変化を評価した。
ΔE={(ΔL)+(Δa)+(Δb)0.5
ここで、ΔL=L-L、Δa=a-a、Δb=b-bである。
上記ΔE値が大きいほど、摩耗による外観変化が大きいことを示し、その外観変化性を次の基準に基づき3段階で判定した。
A:外観変化が明瞭である(ΔE≧2.0)
B:外観変化がわずかに見られる(1.0≦ΔE<2.0)
C:外観変化が見られない(ΔE<1.0)。
[実施例1]
特開2011-174215号公報に記載の複合口金の技術を用いて、ポリマーAからなるセグメントAの周囲に、ポリマーBからなる1つの大きなセグメントと、16個の小さなセグメントを形成するように設計、製作した口金を使用して、ポリマーAとしてポリエチレンテレフタレートにアジピン酸ジメチルを4.5重量%、ナトリウムスルホイソフタル酸を0.4重量%共重合したカチオン可染性PET(CD-PET、溶融粘度280Pa・s)、ポリマーBとしてポリトリメチレンテレフタレート(PTT、溶融粘度90Pa・s)として、体積比率をCD-PET/PTT=70/30になるように調整し、紡糸温度285℃、総吐出量54g/min、紡糸速度1200m/minにて巻き取った。次いで、90℃と130℃に設定した加熱ローラー間で延伸速度600m/minとし、3.1倍延伸後に、仮撚数Tが450回/mとなるように仮撚り加工を実施することで、図1の(a)に示す断面形状の144detx-72フィラメントの捲縮糸を採取した。
得られた捲縮糸は、強度2.7cN/dtex、伸度39%と実用に耐えうる十分な力学特性を有しており、糸束の断面を観察したところ、ポリマーAとポリマーBの各セグメントの接触長(CAB)とポリマーBの各セグメント周長(L)との比(CAB/L)が0.72であり、セグメントBの面積比(最大面積と最小面積の比)は16.3、セグメントBの異形度は1.6であった。また、単糸の捲縮ピッチは856μmであった。
得られた捲縮糸を織編物に加工後、精練工程を経て、カチオン染料(Nichilon Black CD KSL300%、5%owf)を用いて、130℃に加熱した浴中で60分間処理することで、布帛を採取した。得られた布帛は、摩擦等の外力により極細繊維がフィブリルとして発生することで滑らかな風合いを発現するとともに、外観においてもギラツキがなく、白味が立つ良好な色調変化(ΔE=3.1)を発揮するものでありながら、ピリングが形成されないものであり(抗ピリング性:○)、摩擦で風合いおよび外観に良好な変化が生じる布帛であった。結果を表1に示す。
[実施例2、3]
実施例2においてはポリマーBをポリエチレンテレフタレート(PET、130Pa・s)に、実施例3においてはポリマーBをポリブチレンテレフタレート(PBT、120Pa・s)に変更したこと以外は、実施例1に従い実施した。
実施例2、3においては、捲縮糸のポリマー構成を変更した場合でも、摩擦によりフィブリルが発生しつつも、抗ピリング性ならびに外観変化を発揮することができるものであった。結果を表1に示す。
[実施例4、5]
実施例4においてはポリマーBからなる最小セグメントBが4個(図1の(b))、実施例5においては64個(図1の(c))形成されるように口金孔配置を変更したこと以外は、実施例1に従い実施した。
実施例4においては、1個あたりのセグメントBの面積が大きくなることで細かな捲縮ピッチを形成することとなり嵩高性のある布帛となることに加え、実施例1と比較してセグメントBの異形度が大きいことに起因して、摩耗試験後の布帛は光沢感のある布帛であった。
実施例5においては、摩擦により発生する極細繊維(フィブリル)が多くなることに起因して、白味の露出が顕著に現れ、良好な経年変化を発揮する布帛であった。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例6においては、16個のセグメントBの面積が一定となるように口金孔配置を変更したこと以外は、実施例1に従い実施した。
得られた布帛は、繰り返しの摩擦により極細繊維がフィブリルとして発生することで滑らかな風合いを発現するとともに、外観においても良好な色調変化(ΔE=2.0)を発揮するものでありながら、ピリングが形成されず、風合いおよび外観に良好な変化が生じる布帛であった。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例とは異なり、ポリマーAを鞘、ポリマーBを芯に配置するような複合口金を用いて同心円状の芯鞘複合繊維を製造したこと以外は、実施例1に従い実施した。
得られた布帛の摩耗試験では、ポリマーBが繊維表層に存在しないことに加えて、捲縮形態の弱い糸構造であることから糸端の少ないフィラメント織物となるため、摩擦によるフィブリルの発生が抑制され、摩擦前後での色調変化は観察されず、経年変化は見られなかった。結果を表1に示す。
[比較例2]
ポリマーBが繊維表面に1カ所露出するように、ポリマーAとポリマーBがサイドバイサイドとなるような複合口金を用い、体積比率がCD-PET/PTT=50/50となるように複合繊維を採取したこと以外は、実施例1に従い実施した。
得られた捲縮糸は、CD-PETとPTTとの重心間距離が大きいことに起因して良好な捲縮構造を有するものであったが、接触長が小さいことに起因してアンカー効果が十分に働かず、摩耗前の布帛の段階で一部が剥離したものであった。加えて、剥離したPTTは比較的大きい繊維径となるため、摩擦により切れにくいことから、フィブリル同士の絡み合いが進行してピリングを形成するものであり、風合いならびに外観に不快感を示す布帛であった。結果を表1に示す。
[実施例7~9]
実施例7においては、ポリマーAとしてCD-PET、ポリマーBとしてPTT、ポリマーCとして高収縮PET(溶融粘度290Pa・s)、を使用した3種のポリエステルから構成される複合繊維とし、ポリマーBのセグメントを最小セグメントとして16個、ポリマーCから構成されるセグメントを最大セグメントとして1個配置するような複合口金を用いて複合繊維を採取したこと以外は、実施例1に従い実施した。
実施例8においてはポリマーBをPET、実施例9においてはポリマーBをPBTに変更したこと以外は、実施例7に従い実施した。
得られた捲縮糸は、いずれも優れた捲縮特性を示すものであることから、摩擦により発生した極細繊維の糸端の拘束力が高く、糸の自由度が低下することに起因して、極細繊維の擦り切れやすさが助長されることとなり、風合いおよび外観変化が効果的に発揮されるものであった。結果を表2に示す。
少なくともポリマーA、ポリマーBが繊維表面に複数箇所露出して存在する複合繊維において、それぞれの断面形状とポリマーの組合せを制御することに加え、捲縮形態という特徴を有することで、高次加工工程では剥離することなく、摩擦等の外力により、極細繊維がフィブリルとして発生して風合いや外観変化が生まれるとともに、その細さに起因した適度に切れやすいという特徴から、抗ピリング性を発揮することのできるテキスタイルに適した原糸を提供できるのである。そのため、洗濯や繰り返しの着用による擦れ、摩擦等によりテキスタイル品位を劣化させることなく風合いや外観が変化し、その着用感や快適性を増す経年変化を楽しむような従来にないテキスタイルとして期待できる。さらに、発生する極細繊維はテキスタイルの骨格を担うポリマーAを保護する役割を担うこととなるため、より強い摩擦を受けた際に発生する繊維表面の平滑化に由来した不快感、すなわちテカリの抑制効果も期待できることから、パンツ地などのカジュアル衣料として、従来にはない高付加価素材として好適に用いることができるのである。
Figure 2023044790000002
1:捲縮糸におけるポリマーA(セグメントA)
2:捲縮糸におけるポリマーB(セグメントB)
2-1:セグメントBの最大セグメントの面積部分
2-2:セグメントBの最小セグメントの面積部分
3:捲縮ピッチ
4:セグメントBの外接円
5:セグメントBの内接円

Claims (5)

  1. 少なくとも異なる2種類のポリエステルから構成される複合繊維の横断面において、ポリマーA及びポリマーBは繊維表面に複数箇所露出して存在し、かつ、ポリマーBは複数のセグメントとして存在し、ポリマーAとポリマーBの接触長(CAB)とポリマーBの周長(L)との比(CAB/L)が0.5以上であることを特徴とする捲縮糸。
  2. 単糸繊度が3dtex以下、ポリマーBのセグメント数が4以上であることを特徴とする請求項1に記載の捲縮糸。
  3. ポリマーBのセグメントは面積に差を有しており、最大セグメントの面積が最小セグメントの面積の2.0倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の捲縮糸。
  4. ポリマーBがポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の捲縮糸。
  5. 請求項1~請求項4のいずれかに記載の捲縮糸を含む繊維製品。
JP2021152833A 2021-09-21 2021-09-21 捲縮糸 Pending JP2023044790A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021152833A JP2023044790A (ja) 2021-09-21 2021-09-21 捲縮糸

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021152833A JP2023044790A (ja) 2021-09-21 2021-09-21 捲縮糸

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023044790A true JP2023044790A (ja) 2023-04-03

Family

ID=85777284

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021152833A Pending JP2023044790A (ja) 2021-09-21 2021-09-21 捲縮糸

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023044790A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7135854B2 (ja) 偏心芯鞘複合繊維および混繊糸
CA2310686C (en) Soft stretch yarns and their method of production
JP7135469B2 (ja) 偏心芯鞘複合繊維を用いた織編物
JP2003113554A (ja) 複合布帛およびその製造方法
JPH0734341A (ja) 混繊複合糸およびその製造方法ならびに編織物
JP2017226941A (ja) 織編物及びポリアミド芯鞘型混繊糸の元糸
KR101866688B1 (ko) 멜란지 효과가 우수하고, 드레이프성 및 고신축성을 갖는 레이온-라이크 폴리에스테르 복합사 및 그 제조방법
JP2023044790A (ja) 捲縮糸
KR102232005B1 (ko) 멜란지톤의 발현이 우수한 복합가연사 및 그 제조방법
JP2021098907A (ja) 紡績糸および繊維構造物
JP6948048B2 (ja) 潜在捲縮性複合繊維
KR102234800B1 (ko) 원단의 터치감을 부드럽게 개선한 자연스러운 염색 농담차를 가지는 폴리에스테르 혼섬사 및 그 제조방법
JP2002194635A (ja) ポリエステル系混繊糸および仮撚加工糸
JP7439960B2 (ja) 複合繊維、マルチフィラメントおよび繊維製品
KR102415021B1 (ko) 이색 칼라톤의 발현이 가능한 pet 복합가연사 및 그 제조방법
JP2003055848A (ja) 抗ピル性および伸縮性に優れた長短複合糸
JP4380519B2 (ja) ソフトストレッチ糸の製造方法
JP3719258B2 (ja) ソフトストレッチ糸および製造方法ならびに布帛
JP2004225227A (ja) ポリエステル複合嵩高加工糸
JP2003239146A (ja) カットパイル織編物用ポリエステル複合仮撚加工糸およびその製造方法
JP2022107941A (ja) 海島型複合繊維及びそれからなる布帛
JP4228504B2 (ja) 混繊糸からなる織編物
JP4071533B2 (ja) 着古し外観を有する縫製品
JP3570171B2 (ja) 芯鞘複合繊維の製造法およびそれからなる仮撚加工 糸の製造法
JP3877025B2 (ja) 立毛布帛