JP2023040817A - 車両用操舵装置 - Google Patents

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彰仁 岩瀬
Akihito Iwase
元明 日比
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Abstract

【課題】従来例とは異なる新規な方法であそびを補償したモータ制御を行うことができる車両用操舵装置を提供する。【解決手段】電動モータ制御部は、あそび範囲内での所定時間毎の操舵角変化量を零に設定して、ハンドル中立位置から現在までの所定時間毎の操舵角変化量を積算した値に相当する値を、あそび補償用操舵角とすると、操舵角を用いてあそび補償用操舵角を推定するあそび補償用操舵角推定部と、自動操舵のための目標操舵角である操舵角指令値とあそび補償用操舵角との偏差が零に近づくように電動モータを制御する角度制御部とを含む。【選択図】図3

Description

この発明は、車両用操舵装置に関する。
トラック、バス等の大型車両では、左右の車輪がアクスルビームで連結されているリジットアクスルサスペンションが広く用いられている。リジットアクスルサスペンションを有する車両では、ボールねじ式油圧パワーステアリング機構を備えた操舵装置が広く採用されている。このような大型車両の操舵装置は、ハンドル、ステアリングコラム、ステアリングギアボックス、ピットマンアーム、ドラッグリング、ナックルアーム、タイロッド等を備えており、インデペンデントサスペンションが用いられている乗用車の操舵装置に比べて複雑である。また、大型車両の操舵装置は乗用車の操舵装置に比べて、ステアリングシャフト等の長さが長い。
特許文献1には、前述のような大型車両の操舵装置のステアリングコラムに電動モータを追加し、この電動モータを使用して、目標軌道に沿って自動走行させる技術が開示されている。このような自動走行制御(自動操舵制御)は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、まず、目標軌跡と自車両位置との関係から、転舵輪の目標タイヤ角(目標転舵角)を算出し、その値にステアリングギア比(タイヤ角に対する操舵角の比)を乗算して目標操舵角を算出する。そして、目標操舵角と操舵角との偏差が零になるように、電動モータに対して角度フィードバック制御を行う。
特開2006-264622号公報 特開2016-135676号公報
前述したように、大型車両の操舵装置は、乗用車の操舵装置よりも複雑であり、ステアリングシャフトに生じる捻じれや撓みが比較的大きいため、ハンドルから転舵輪までの間のあそび(allowance)が大きい。このため、大型車両の操舵装置に対して例えば前述のような自動走行制御を行った場合には、目標操舵角を与えても、転舵輪のタイヤ角が目標タイヤ角に一致しないため、軌跡追従性が悪くなる。なお、乗用車においても、大型車両ほどではないが、ステアリングホイールから転舵輪までの間にあそびが存在するので、同様な問題がある。
そこで、特許文献2には、軌跡追従性を向上させるために、操舵不感帯をΔHとすると、切り始め時には、ΔH/2を目標操舵角に加算することにより目標操舵角を補正し、切り返し時には、ΔHを目標操舵角に加算することにより目標操舵角を補正する技術(以下、「従来例」という。)が開示されている。つまり、特許文献2には、あそびを補償したモータ制御を行う方法が開示されている。
なお、この明細書において、「切り始め」とは、操舵角が変化していない状態から操舵角が変化し始めることをいう。「切り返し」とは、操舵方向が逆転するように操舵角が変化することをいう。
この発明の目的は、従来例とは異なる新規な方法であそびを補償したモータ制御を行うことができる車両用操舵装置を提供することである。
本発明の一実施形態は、ハンドルに連結されたステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトに連結され、左右の転舵輪を転舵させるための転舵機構と、前記ステアリングシャフトを回転させるための電動モータと、前記ステアリングシャフトの回転角である操舵角を検出するための操舵角検出部と、前記電動モータを制御する電動モータ制御部とを含み、前記電動モータ制御部は、あそび範囲内での所定時間毎の操舵角変化量を零に設定して、ハンドル中立位置から現在までの所定時間毎の操舵角変化量を積算した値に相当する値を、あそび補償用操舵角とすると、前記操舵角を用いて前記あそび補償用操舵角を推定するあそび補償用操舵角推定部と、自動操舵のための目標操舵角である操舵角指令値と前記あそび補償用操舵角との偏差が零に近づくように前記電動モータを制御する角度制御部とを含む、車両用操舵装置を提供する。
この構成では、従来例とは異なる新規な方法であそびを補償したモータ制御を行うことができるようになる。
図1は、車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。 図2は、車両用操舵装置の電気的構成を示すブロック図である。 図3は、モータ制御用ECUの電気的構成であって、自動操舵モード時に電動モータを駆動制御するための電気的構成を示すブロック図である。 図4は、操舵角θとタイヤ角δとの関係を示すグラフである。 図5Aは、あそび補償用操舵角推定部によるあそび補償用操舵角推定処理の手順の一部を示すフローチャートである。 図5Bは、あそび補償用操舵角推定部によるあそび補償用操舵角推定処理の手順の一部を示すフローチャートである。 図5Cは、あそび補償用操舵角推定部によるあそび補償用操舵角推定処理の手順の一部を示すフローチャートである。 図6は、θ、θαおよびθ’の変化の一例を示すタイムチャートである。 図7は、操舵角θをsin波状に変化させた場合の、操舵角θ、操舵角変化量dθ/dt、q軸電流Iおよびq軸電流変化量dI/dtの変化を示すタイムチャートである。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一実施形態は、ハンドルに連結されたステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトに連結され、左右の転舵輪を転舵させるための転舵機構と、前記ステアリングシャフトを回転させるための電動モータと、前記ステアリングシャフトの回転角である操舵角を検出するための操舵角検出部と、前記電動モータを制御する電動モータ制御部とを含み、前記電動モータ制御部は、あそび範囲内での所定時間毎の操舵角変化量を零に設定して、ハンドル中立位置から現在までの所定時間毎の操舵角変化量を積算した値に相当する値を、あそび補償用操舵角とすると、前記操舵角を用いて前記あそび補償用操舵角を推定するあそび補償用操舵角推定部と、自動操舵のための目標操舵角である操舵角指令値と前記あそび補償用操舵角との偏差が零に近づくように前記電動モータを制御する角度制御部とを含む、車両用操舵装置を提供する。
この構成では、従来例とは異なる新規な方法であそびを補償したモータ制御を行うことができるようになる。
本発明の一実施形態では、前記あそび補償用操舵角推定部は、所定の基本あそび量と前記操舵角とに基づいて、前記あそび補償用操舵角を推定するように構成されている。
本発明の一実施形態では、前記あそび補償用操舵角推定部は、前記基本あそび量をαとし、前記基本あそび量の中心に相当するハンドル中立位置からの一定時間毎の操舵角変化量の積分値であって、かつα/2以上になるとα/2となり、-α/2以下になると-α/2となるθαを演算し、前記操舵角から前記θαを減算することにより、前記あそび補償用操舵角を推定するように構成されている。
本発明の一実施形態では、前記転舵輪のタイヤ角の絶対値が所定の第1閾値以下または前記操舵角の絶対値が所定の第2閾値以下である場合と、前記タイヤ角の絶対値が前記第1閾値よりも大きいまたは前記操舵角の絶対値が前記第2閾値よりも大きい場合とで、前記あそび補償用操舵角推定部による前記あそび補償用操舵角の推定方法が異なる。
本発明の一実施形態では、前記あそび補償用操舵角推定部は、前記転舵輪のタイヤ角の絶対値が前記第1閾値以下または前記操舵角の絶対値が前記第2閾値以下である場合には、所定の基本あそび量と前記操舵角とに基づいて、前記あそび補償用操舵角を推定し、前記転舵輪のタイヤ角の絶対値が前記第1閾値よりも大きいまたは前記操舵角の絶対値が前記第2閾値よりも大きい場合には、タイヤ角推定処理によって前記タイヤ角を推定し、推定したタイヤ角にオーバーオールギヤ比を乗算することによって前記あそび補償用操舵角を推定するように構成されており、前記タイヤ角推定処理では、ハンドル位置があそびの範囲内にある場合には、前記あそび補償用操舵角推定部は、前回のタイヤ角を今回のタイヤ角として推定し、ハンドル位置があそびの範囲外にある場合には、前記あそび補償用操舵角推定部は、切り返し動作後においてあそびが詰まったと判定したときに推定される比であって、あそびが詰まった直後の操舵角変化量に対するタイヤ角変化量の比と、前回の前記タイヤ角と、前記操舵角の変化量と、前記オーバーオールギヤ比とに基づいて、前記タイヤ角を推定する。
本発明の一実施形態では、車両走行中に前記基本あそび量を演算する基本あそび量演算部をさらに含み、前記基本あそび量演算部によって演算される前記基本あそび量に基づいて、前記基本あそび量が更新される。
[本発明の実施形態の詳細な説明]
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。図1において破線29の左側は、車両を側方から見た側面図であり、破線29の右側は、車両を上方から見た平面図である。
この車両用操舵装置1は、ハンドル(ステアリングホイール)2、ステアリングシャフト3を有するステアリングコラム4、ベベルギア部5、動力伝達軸6、ボールねじ式油圧パワーステアリング機構(以下、「油圧パワーステアリング機構7」という。)、転舵機構8、電動モータ9等を備えている。
ハンドル2は、ステアリングシャフト3を介してベベルギア部5の入力軸に連結されている。ベベルギア部5の出力軸は、動力伝達軸6を介して油圧パワーステアリング機構7の入力軸に連結されている。
転舵機構8は、ピットマンアーム11、ドラッグリンク12、ナックルアーム13、キングピン軸14,15、タイロッドアーム16およびタイロッド17を備える。
ピットマンアーム11の一端は、油圧パワーステアリング機構7のセクターシャフトに連結されている。ピットマンアーム11の他端には、ドラッグリンク12の一端が連結されている。ドラッグリンク12の他端は、右転舵輪(右前輪)22のナックルアーム13の一端に連結されている。ナックルアーム13の他端は、右転舵輪22のキングピン軸14に連結されている。右転舵輪22のキングピン軸14と左転舵輪(左前輪)21のキングピン軸15とは、タイロッドアーム16およびタイロッド17によって連結されている。図の破線18は、アクスルビームである。
電動モータ9は、ステアリングコラム4に設けられており、図示しない減速機を介してステアリングシャフト3に連結されている。減速機は、ウォームギヤと、このウォームギヤと噛み合うウォームホイールとを含むウォームギヤ機構からなる。以下において、減速機の減速比をNで表す。減速比Nは、ウォームホイールの回転角であるウォームホイール角に対するウォームギヤの回転角であるウォームギヤ角の比として定義される。電動モータ9のロータ回転角θは、回転角センサ25によって検出される。
ハンドル2が回転すると、この回転トルクが、ステアリングシャフト3、ベベルギア部5、動力伝達軸6およびボールねじ式油圧パワーステアリング機構7に伝達されて、ピットマンアーム11が揺動される。このピットマンアーム11の揺動により、ドラッグリンク12が前後方向に移動され、ナックルアーム13が揺動され、転舵輪21,22が転舵される。
電動モータ9が回転されると、この回転トルクがステアリングシャフト3に伝達されるので、前述と同様な動力伝達経路を介して転舵輪21,22が転舵される。すなわち、電動モータ9によってステアリングシャフト3を回転させることにより、転舵輪21,22の転舵が可能となる。
図2は、車両用操舵装置の電気的構成を示すブロック図である。
車両には、上位ECU101およびモータ制御用ECU102が設けられている。モータ制御用ECU102は、本発明の電動モータ制御部の一例である。
上位ECU101は、操舵モードが自動操舵モードであるか手動操舵モードであるかを示すモード信号Smodeを出力する。また、上位ECU101は、自動操舵モード時に、自動操舵のための操舵角指令値θcmdを生成する。
操舵角指令値θcmdは、自動操舵モード時における操舵角(ステアリングシャフト3の回転角)θの目標値である。この実施形態では、操舵角θは、ハンドル2の中立位置(操舵中立位置)からのステアリングシャフト3の正逆両方向の回転量(回転角)であり、操舵中立位置から右方向への回転量が正の値で表され、操舵中立位置から左方向への回転量が負の値で表される。この実施形態では、操舵角θは、回転角センサ25によって検出されるロータ回転角θから演算される。
モード信号Smodeおよび操舵角指令値θcmdは、モータ制御用ECU102に与えられる。
モータ制御用ECU102は、モード信号Smodeに基づいて、操舵モードが手動操舵モードか自動操舵モードであるかを判別する。そして、モータ制御用ECU102は、操舵モードが自動操舵モードである場合にのみ、操舵角指令値θcmdおよび回転角センサ25の出力信号に基づいて、電動モータ9を駆動制御する。
図3は、モータ制御用ECU102の電気的構成であって、自動操舵モード時に電動モータ9を駆動制御するための電気的構成を示すブロック図である。
モータ制御用ECU102は、マイクロコンピュータ31と、マイクロコンピュータ31によって制御され、電動モータ9に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)32と、電動モータ9に流れるモータ電流を検出する電流検出部33とを備えている。
マイクロコンピュータ31は、CPUおよびメモリ(ROM、RAM、不揮発性メモリなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、回転角演算部41と、減速比除算部(操舵角演算部)42と、UVW/dq変換部43と、あそび補償用操舵角推定部44と、角度偏差演算部45と、PD制御部46と、電流指令値設定部47と、電流偏差演算部48と、PI(比例積分)制御部49と、dq/UVW変換部50と、PWM(Pulse Width Modulation)制御部51とを含む。
回転角演算部41は、回転角センサ25の出力信号に基づいて、電動モータ9のロータの回転角θ(以下、「ロータ回転角θ」という。)を演算する。回転角演算部41によって演算されるロータ回転角θは、dq/UVW変換部50、UVW/dq変換部43および減速比除算部52に与えられる。
減速比除算部42は、回転角演算部41によって演算されるロータ回転角θを減速比Nで除算することにより、操舵角θを演算する。操舵角θは、あそび補償用操舵角推定部44に与えられる。回転角センサ25、回転角演算部41および減速比除算部42は、本発明の操舵角検出部の一例である。
電流検出部33は、電動モータ9のU相電流I、V相電流IおよびW相電流I(以下、これらを総称するときは、「三相検出電流IUVW」という。)を検出する。電流検出部33によって検出された三相検出電流IUVWは、UVW/dq変換部43に与えられる。
UVW/dq変換部43は、電流検出部33によって検出されるUVW座標系の三相検出電流IUVW(U相電流I、V相電流IおよびW相電流I)を、dq座標系の二相検出電流IおよびI(以下、これらを総称するときには「二相検出電流Idq」という。)に座標変換する。この座標変換には、回転角演算部41によって演算されるロータ回転角θが用いられる。UVW/dq変換部43によって演算される二相検出電流Idqは、電流偏差演算部48に与えられる。UVW/dq変換部43によって演算されるq軸電流Iは、あそび補償用操舵角推定部44に与えられる。
あそび補償用操舵角推定部44は、基本あそび量α、操舵角θおよびq軸電流Iに基づいて、あそび補償用操舵角θ’を推定する。操舵角θは、ハンドル中立位置から現在までの所定時間毎の操舵角変化量の積算値に相当する。あそび補償用操舵角θ’は、あそび範囲内での所定時間毎の操舵角変化量を零に設定して、ハンドル中立位置から現在までの所定時間毎の操舵角変化量を積算した値に相当する。
さらに言い換えれば、あそび補償用操舵角θ’は、現在の転舵輪21,22のタイヤ角(転舵角)δにオールオーバーギヤ比γを乗算した値に相当する。オーバーオールギヤ比γは、転舵輪21,22のタイヤ角(操舵角)δに対するハンドル2の回転角(ステアリングシャフト3の回転角θ)の比であり、予め設定されている。あそび補償用操舵角推定部44の動作の詳細については、後述する。あそび補償用操舵角推定部44によって推定されたあそび補償用操舵角θ’は角度偏差演算部45に与えられる。
角度偏差演算部45は、操舵角指令値θcmdとあそび補償用操舵角θ’との偏差Δθ(θcmd-θ’)を演算する。
PD制御部46は、角度偏差演算部45によって演算された角度偏差Δθに対してPD演算(比例微分演算)を行うことにより、トルク指令値Tcmdを演算する。
電流指令値設定部47は、トルク指令値Tcmdに基づいて、d軸電流指令値Id,cmdおよびq軸電流指令値Iq,cmd(以下、これらを総称するときには「二相電流指令値Idq,cmd」という。)を設定する。
具体的には、電流指令値設定部47は、q軸電流指令値Iq,cmdを有意値とする一方で、d軸電流指令値Id,cmdを零とする。より具体的には、電流指令値設定部47は、PD制御部46によって演算されたトルク指令値Tcmdを、電動モータ9のトルク定数Kで除算することにより、q軸電流指令値Iq,cmdを設定する。電流指令値設定部47によって設定された二相電流指令値Idq,cmdは、電流偏差演算部48に与えられる。
電流偏差演算部48は、電流指令値設定部47によって設定される二相電流指令値Idq,cmdと、UVW/dq変換部43から与えられる二相検出電流Idqとの偏差を演算する。より具体的には、電流偏差演算部48は、d軸電流指令値Id,cmdに対するd軸検出電流Iの偏差およびq軸電流指令値Iq,cmdに対するq軸検出電流Iの偏差を演算する。これらの偏差は、PI制御部49に与えられる。
PI制御部49は、電流偏差演算部48によって演算された電流偏差に対するPI(比例積分)演算を行なうことにより、電動モータ9に印加すべき二相電圧指令値Vdq,cmd(d軸電圧指令値Vd,cmdおよびq軸電圧指令値Vq,cmd)を生成する。この二相電圧指令値Vdq,cmdは、dq/UVW変換部50に与えられる。
dq/UVW変換部50は、二相電圧指令値Vdq,cmdを三相電圧指令値VUVW,cmdに座標変換する。この座標変換には、回転角演算部41によって演算されるロータ回転角θが用いられる。三相電圧指令値VUVW,cmdは、U相電圧指令値VU,cmd、V相電圧指令値VV,cmdおよびW相電圧指令値VW,cmdからなる。この三相電圧指令値VUVW,cmdは、PWM制御部51に与えられる。
PWM制御部51は、U相電圧指令値VU,cmd、V相電圧指令値VV,cmdおよびW相電圧指令値VW,cmdにそれぞれ対応するデューティのU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路32に供給する。
駆動回路32は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部51から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相電圧指令値VUVW,cmdに相当する電圧が電動モータ9の各相のステータ巻線に印加されることになる。
角度偏差演算部45およびPD制御部46は、角度フィードバック制御手段(角度制御部)を構成している。この角度フィードバック制御手段の働きによって、操舵角指令値θcmdとあそび補償用操舵角操舵角θ’との偏差(θcmd-θ’)が零に近づくように、電動モータ9が制御される。これにより、あそびが補償された角度制御を行うことができるので、操舵角指令値θcmdと操舵角θとの偏差(θcmd-θ)が零に近づくように、電動モータ9を制御する場合に比べて、軌跡追従性を向上させることができる。
以下、あそび補償用操舵角推定部44について、詳しく説明する。
まず、あそび補償用操舵角推定部44によるあそび補償用操舵角推定方法の考え方について説明する。
図4は、操舵角θとタイヤ角δとの関係を示すグラフである。
図4の実線(O-A-B-C-E-F-A)は、中立位置Oから零よりも大きい所定の第1操舵角θH1まで操舵角θを連続的に変化させた後、操舵角θを零よりも小さい所定の第2操舵角θH2まで連続的に変化させ、さらに操舵角θを第1操舵角θH1に向かって連続的に変化させた場合の、タイヤ角δの軌跡を示している。
ハンドル2から転舵輪21,22までの間にはあそび(がた)が存在している。このため、操舵角θが0°から増加しても、すぐには、タイヤ角δは増加しない。つまり、切り始め状態においては、操舵角θが変化しても、すぐには、タイヤ角δは変化しない。操舵角θの増加によってあそび詰まると(A点)、タイヤ角δが増加し始める。
そして、操舵角θが第1操舵角θH1に達し(B点)、右から左への切り返し動作が行われると、操舵角θが減少される。この場合も、あそびがあるため、すぐには、タイヤ角δは減少しない。つまり、切り返し状態においては、操舵角θが変化しても、すぐには、タイヤ角δは変化しない。操舵角θの減少によってあそびが詰まると(C点)、タイヤ角δが減少し始める。したがって、タイヤ角δが零になったときに(D点)、操舵角θは0以下の値となる。
操舵角θが第2操舵角θH2に達し(E点)、左から右への切り返し動作が行われると、操舵角θが増加される。この場合にも、あそびがあるため、すぐには、タイヤ角δは増加しない。操舵角θの増加によってあそびが詰まると(F点)、タイヤ角δが増加し始める。
A点とD点(またはB点とC点、またはE点とF点)との間の操舵角θの変化量の絶対値が、基本あそび量αである。
図4の実線(O-A-B-C-E-F-A)を用いて説明した操舵角θとタイヤ角δとの関係は、タイヤ角δ(操舵角θ)の絶対値が比較的小さい範囲(例えば、タイヤ角δでは-δαから+δαまでの範囲)では成り立つが、タイヤ角δ(操舵角θ)の絶対値が比較的大きい範囲では成り立たないおそれがあることが判明した。
これは、タイヤ角δ(操舵角θ)の絶対値が比較的大きい範囲において、車速が比較的大きい場合に切り返し動作が行われると、図4に破線La,Lbで示すように、セルフアライニングトルクの影響によって、基本あそび量αに相当する操舵角分のハンドルの切り返しが行われるよりも早い段階で、転舵輪21,22が戻り始めるからである。このため、タイヤ角δが比較的大きい範囲においては、図4の実線(O-A-B-C-E-F-A)を用いて説明した操舵角θとタイヤ角δとの関係に従ってタイヤ角δやあそび補償用操舵角θ’を求めると誤差が生じるおそれがある。
具体的には、操舵角θが+δαに相当するθHαに達した後(G点)に操舵角θが増加し、B点において右から左への切り返し動作が行われた場合、操舵角θが基本あそび量αに相当する操舵角分のハンドルの切り返しが行われるよりも早い段階(H点)であそびが詰まる。そして、タイヤ角δは、H点から破線Laに従って減少していき、+δαに達する(点I)。
また、操舵角θが-δαに相当するθHαに達した後(J点)に操舵角θが減少し、E点において左から右への切り返し動作が行われた場合、操舵角θが基本あそび量αに相当する操舵角分のハンドルの切り返しが行われるよりも早い段階(K点)であそびが詰まる。そして、タイヤ角δは、K点から破線Lbに従って増加していき、-δαに達する(点L)。
以下において、図4の実線(O-A-B-C-E-F-A)を用いて説明した操舵角θとタイヤ角δとの関係が成り立つと考えられるタイヤ角範囲(-δαから+δαまでの範囲)を、「バックラッシモデル適用可能範囲」という場合がある。δαは、例えば、0.36deg程度である。図4の実線(O-A-B-C-E-F-A)を用いて説明した操舵角θとタイヤ角δとの関係が成り立つと考えられる操舵角範囲を、-θHαから+θHαまでの範囲とすると、θHαは、例えば、12deg程度である。
図4においては、操舵中立位置Oから+θHαまでタイヤ角θを連続的に変化させた後、操舵角θを-θHαまで連続的に変化させ、さらに操舵角θを+θHαに向かって連続的に変化させた場合のタイヤ角δの軌跡が太い実線(O-A-G-I-J-L-A)で示されている。
あそび補償用操舵角推定部44は、タイヤ角δ(より詳しくは推定されるタイヤ角δ)がバックラッシモデル適用可能範囲内であれば、図4の実線(O-A-B-C-E-F-A)を用いて説明した操舵角θとタイヤ角δとの関係から推定されるタイヤ角δにオーバーオールギヤ比γを乗算した値に相当する値を、あそび補償用操舵角θ’として演算する。
あそび補償用操舵角推定部44は、タイヤ角δがバックラッシモデル適用可能範囲外であれば、図4にG-B-H-Iで示される破線Laを含む特性またはJ-E-K-Lで示される破線Lbを含む特性にしたがってタイヤ角δを推定し、推定した操舵角θにオーバーオールギヤ比γを乗算することにより、あそび補償用操舵角θ’を演算する。
図5A~図5Cは、あそび補償用操舵角推定部44によるあそび補償用操舵角推定処理の手順を示すフローチャートである。図5A~図5Cに示されるあそび補償用操舵角推定処理は、所定の演算周期毎に繰り返し実行される。
説明の便宜上、ハンドル位置(タイヤ角δ)は、初期状態では、中立位置にあるものとする。
あそび補償用操舵角推定部44は、まず、操舵角θの今回値θHtおよびq軸電流Iの今回値Iqtを取得する(ステップS1)。次に、あそび補償用操舵角推定部44は、タイヤ角δt-1がバックラッシモデル適用可能範囲内(-δα≦δt-1≦-δα)であるか否かを判別する(ステップS2)。具体的には、あそび補償用操舵角推定部44は、タイヤ角δt-1の絶対値|δt-1|がδα以下であれば、タイヤ角δt-1がバックラッシモデル適用可能範囲内であると判定し、タイヤ角δt-1の絶対値|δt-1|がδαよりも大きければ、タイヤ角δt-1がバックラッシモデル適用可能範囲外であると判別する。タイヤ角δt-1は、タイヤ角δの前回値である。ただし、タイヤ角δの初期値は0である。
タイヤ角δt-1がバックラッシモデル適用可能範囲内であれば(ステップS2:YES)、あそび補償用操舵角推定部44は、次式(1)に基づいて、あそび補償用操舵角θ’を演算するとともに、次式(2)に基づいて、タイヤ角δを演算する。そして、あそび補償用操舵角推定部44は、今回の演算周期での処理を終了する。
θHt’=θHt-θαt …(1)
if -α/2≦X≦α/2, then θαt=X
if X>α/2, then θαt=α/2
if X<-α/2, then θαt=-α/2
X=θαt-1+(θHt-θHt-1
δ=δt-1+(θHt’-θHt-1’)/γ …(2)
式(1)において、θαt-1は、θαの前回値であり、θHt-1は、θの前回値である。θαtは、基本あそび量αの中心に相当するハンドル中立位置からの一定時間毎の操舵角変化量の積分値であって、α/2以上になるとα/2となり、-α/2以下になると-α/2となる値である。式(2)において、θHt-1’はθ’の前回値である。
基本あそび量αは、予め設定された基本あそび量αであってよい。基本あそび量αは、後述するステップS13で演算される基本あそび量αに基づいて更新されることが好ましい。このようにすると、経年変化などによって変化する基本あそび量αを正確に演算することができる。
図6は、θ、θαおよびθ’の変化の一例を示すタイムチャートである。
時刻t1において、ハンドル2が中立位置から時計方向に切り始められ、操舵角θが増加し始める。これに伴って、θαも増加し始める。ハンドル位置があそびの範囲内にある場合には、θαは、前記式(1)におけるXの演算式にしたがって変動するが、θ’は変動しない。
時刻t2でθαがα/2に達すると、θαはα/2を保持する。あそびが詰まったため、θの増加に伴ってθ’が増加し始める。
時刻t3にて切り返し動作が開始されると、ハンドル位置があそびの範囲内に入るため、θαはXの演算式にしたがって減少し始める。一方、θ’は変動しなくなる。
時刻t4でθαが-α/2に達すると、θαは-α/2を保持する。あそびが詰まったため、θの減少に伴ってθ’が減少し始める。
図5Aに戻り、ステップS2において、タイヤ角δt-1がバックラッシモデル適用可能範囲外であると判別された場合には(ステップS2:NO)、あそび補償用操舵角推定部44は、操舵角θの変化量(今回の操舵角θHt-前回の操舵角θHt-1)が、零でないか否かを判別する(ステップS4)。
操舵角θの変化量が零(θHt-θHt-1=0)である場合には(ステップS4:NO)、あそび補償用操舵角推定部44は、保舵状態であると判定し、タイヤ角δの前回値δt-1を、現在のタイヤ角δとして設定する(ステップS5)。そして、あそび補償用操舵角推定部44は、現在のタイヤ角δにオーバーオールギヤ比γを乗算することにより、あそび補償用操舵角θHt’を演算する(ステップS6)。そして、あそび補償用操舵角推定部44は、今回の演算周期での処理を終了する。
ステップS4において、操舵角θの変化量が零ではない(θHt-θHt-1≠0)と判別された場合には(ステップS4:YES)、あそび補償用操舵角推定部44は、切り返し動作が行われたか否かを判別する(ステップS7(図5B参照))。切り返し動作が行われたか否かは、今回の操舵角変化量(θHt-θHt-1)の符号が、前回の操舵角変化量(θHt-1-θHt-2)の符号と異なるか否かに基づいて判別される。θHt-1は、操舵角θの前回値であり、θHt-2は操舵角θの前々回値である。
より具体的には、あそび補償用操舵角推定部44は、(θHt-θHt-1)×(θHt-1-θHt-2)<0であれば切り返し動作が行われたと判別し、(θHt-θHt-1)×(θHt-1-θHt-2)≧0であれば切り返し動作が行われていないと判別する。
切り返し動作が行われたと判別された場合には(ステップS7:YES)、あそび補償用操舵角推定部44は、θHtを切り返し動作開始時の操舵角θとして記憶する(ステップS8)。そして、あそび補償用操舵角推定部44は、ステップS9に進む。
ステップS7で切り返し動作が行われていないと判別された場合には(ステップS7:NO)、あそび補償用操舵角推定部44は、ステップS9に進む。
ステップS9では、あそび補償用操舵角推定部44は、ハンドル位置があそびの範囲内であるか否かを判定する。具体的には、あそび補償用操舵角推定部44は、q軸電流変化量の絶対値|dIqt/dt|が、所定の閾値A(ただし、A>0)よりも大きいか否かに基づいて、ハンドル位置があそびの範囲内であるか否かを判定する。あそび補償用操舵角推定部44は、|dIqt/dt|>Aであれば、ハンドル位置があそびの範囲内にあると判別し、|dIqt/dt|≦Aであれば、ハンドル位置があそびの範囲外にあると判別する。|dIqt/dt|は、例えば、|Iqt-Iqt-1|に基づいて演算されてもよい。Iqt-1は、q軸電流Iの前回値である。
ハンドル位置があそびの範囲内にあると判別された場合には(ステップS9:YES)、あそび補償用操舵角推定部44は、フラグFをセット(F=1)した後(ステップS10)、ステップS5(図5A参照)に移行する。フラグFの初期値は0である。ステップS5では、あそび補償用操舵角推定部44は、タイヤ角δの前回値δt-1を、現在のタイヤ角δとして設定する。そして、あそび補償用操舵角推定部44は、現在のタイヤ角δにオーバーオールギヤ比γを乗算することにより、あそび補償用操舵角θ’を演算する(ステップS6)。そして、あそび補償用操舵角推定部44は、今回の演算周期での処理を終了する。
図5Bに戻り、ハンドル位置があそびの範囲外にあると判別された場合には(ステップS9:NO)、あそび補償用操舵角推定部44は、フラグFがセットされているか否か判別する(ステップS11)。フラグFがセット(F=1)されている場合には(ステップS11:YES)、あそび補償用操舵角推定部44は、現時点があそびが詰まったタイミングであると判定し、フラグF1をリセット(F1=0)した後(ステップS12)、ステップS13に移行する。
ステップS13では、あそび補償用操舵角推定部44は、次式(3a)および(3b)に基づいて、第1比γおよび第2比γを演算する。また、あそび補償用操舵角推定部44は、次式(4)に基づいて、基本あそび量αを演算する。
γ=(δ-δα)/θHt …(3a)
γ=(δ+δα)/θHt …(3b)
α=|θ-θHt| …(4)
第1比γは、右から左への切り返し動作後にあそびが詰まった場合に、あそびが詰まった直後における操舵角変化量に対するタイヤ角変化量の比の推定値である。第1比γは、図4の破線Laの傾きに相当する。
一方、第2比γは、左から右への切り返し動作後にあそびが詰まった場合に、あそびが詰まった直後における操舵角変化量に対するタイヤ角変化量の比の推定値である。第2比γは、図4の破線Lbの傾きに相当する。
なお、図4のH点は、右から左への切り返し動作後にあそびが詰まったタイミングに相当し、図4のK点は、左から右への切り返し動作後にあそびが詰まったタイミングに相当する。ステップS7における切り返し動作の判定においては、右から左への切り返しか、左から右への切り返しかは判定されないため、ステップS13においては、各方向への切り返しに対応した比γ,γが演算されている。
ステップS13の処理が行われると、あそび補償用操舵角推定部44は、ステップS14(図5C参照)に移行する。
ステップS11において、フラグFがリセット(F=0)されていると判別された場合には(ステップS11:NO)、あそび補償用操舵角推定部44は、現時点が、あそびが詰まったタイミングではないと判定し、ステップS14に移行する。
ステップS14では、あそび補償用操舵角推定部44は、ハンドルが中立位置よりも左側に切れているか否かを判別する。具体的には、あそび補償用操舵角推定部44は、θHt<0であれば、ハンドル2が中立位置よりも左側に切れていると判別し、θHt≧0であれば、ハンドル2が中立位置よりも右側に切れていると判別する。
ハンドル2が中立位置よりも左側に切れている場合には(ステップS14:YES)、あそび補償用操舵角推定部44は、操舵方向が右方向であるか否かを判別する(ステップS15)。操舵方向が右方向であれば(ステップS15:YES)、あそび補償用操舵角推定部44は、左から右への切り返し動作が行われたと判定し、ステップS16に移行する。
ステップS16では、あそび補償用操舵角推定部44は、次式(5)に基づいて、現在のタイヤ角δを演算する。
δ=δt-1+(θHt-θHt-1)×γ …(5)
そして、あそび補償用操舵角推定部44は、ステップS6(図5A参照)に移行して、現在のタイヤ角δにオーバーオールギヤ比γを乗算することにより、あそび補償用操舵角θ’を演算する。そして、あそび補償用操舵角推定部44は、今回の演算周期での処理を終了する。
ステップS15において、操舵方向が左方向であると判別された場合には(ステップS15:NO)、あそび補償用操舵角推定部44は、左操舵方向への切込み動作が行われたと判定し、ステップS17に移行する。
ステップS17では、あそび補償用操舵角推定部44は、次式(6)に基づいて、現在のタイヤ角δを演算する。
δ=δt-1+(θHt-θHt-1)/γ …(6)
そして、あそび補償用操舵角推定部44は、ステップS6(図5A参照)に移行して、現在のタイヤ角δにオーバーオールギヤ比γを乗算することにより、あそび補償用操舵角θ’を演算する。そして、あそび補償用操舵角推定部44は、今回の演算周期での処理を終了する。
ステップS14において、ハンドルが中立位置よりも右側に切れていると判別された場合には(ステップS14:NO)、あそび補償用操舵角推定部44は、操舵方向が右方向(CW方向)であるか否かを判別する(ステップS18)。操舵方向が右方向であれば(ステップS18:YES)、あそび補償用操舵角推定部44は、右操舵方向への切込み動作が行われたと判定し、ステップS17に移行する。この場合には、前記式(6)に基づいて現在のタイヤ角δが演算され、得られたδにオーバーオールギヤ比γが乗算することによりあそび補償用操舵角θ’が演算される(ステップS6)。そして、あそび補償用操舵角推定部44は、今回の演算周期での処理を終了する。
ステップS18において、操舵方向が左方向(CCW方向)であると判別された場合には(ステップS18:NO)、あそび補償用操舵角推定部44は、右から左への切り返し動作が行われたと判定し、ステップS19に移行する。
ステップS19では、あそび補償用操舵角推定部44は、次式(7)に基づいて、現在のタイヤ角δを演算する。
δ=δt-1+(θHt-θHt-1)×γ …(7)
そして、あそび補償用操舵角推定部44は、ステップS6(図5A参照)に移行し、現在のタイヤ角δにオーバーオールギヤ比γを乗算することにより、あそび補償用操舵角θ’を演算する。そして、あそび補償用操舵角推定部44は、今回の演算周期での処理を終了する。
図5BのステップS7で切り返し判定からステップS11のあそびが詰まったタイミングの判定までの動作について、図7を参照して具体的に説明する。
図7は、操舵角θをsin波状に変化させた場合の、操舵角θ、操舵角変化量(操舵角速度)dθ/dt、q軸電流Iおよびq軸電流変化量dI/dtの変化を示すタイムチャートである。
時刻t1で、操舵角θが0から増加し始める。時刻t1から時刻t2の間、ハンドル位置があそびの範囲内にあるものとする。
操舵角θの時間微分である操舵角速度dθ/dtは、時刻t1で立ち上がった後、徐々に低下する。q軸電流Iは、時刻t1から増加し始める。q軸電流変化量dI/dtは、時刻t1で立ち上がった後、その値を保持する。
時刻t2であそびが詰まると、負荷が安定するため、q軸電流Iは、変化しなくなり、ほぼ一定となる。q軸電流変化量dI/dtは、時刻t2で立ち下がる。
時刻t3で右から左への切り返し動作が開始されると、操舵角速度dθ/dtの符号が反転するので、切り返し動作が開始されたと判別され(ステップS7参照)、その時点t3での操舵角θが切り返し動作開始時の操舵角θとして記憶される(ステップS8参照)。
q軸電流Iは、時刻t3からハンドル位置があそびの範囲内に入るため、時刻t3から減少し始める。q軸電流変化量dI/dtは、時刻t3で立ち下がった後、その値を保持する。q軸電流変化量dI/dtの絶対値は、時刻t3で閾値Aよりも大きくなるので、ハンドル位置があそびの範囲内に入ったと判別される(ステップS9参照)。
時刻t4であそびが詰まると、負荷が安定するため、q軸電流Iは、変化しなくなり、ほぼ一定となる。q軸電流変化量dI/dtは、時刻t4で立ち上がった後、その値を保持する。q軸電流変化量dI/dtの絶対値は、時刻t4で閾値A以下となるので、あそびが詰まったと判別される(ステップS9,S11参照)。時刻t4での操舵角をθとすると、|θ-θ|が基本あそび量αとして演算される(ステップS13参照)。
時刻t5で左から右への切り返し動作が開始されると、操舵角速度dθ/dtの符号が反転するので、切り返し動作が開始されたと判別され(ステップS7参照)、その時点t5での操舵角θが切り返し動作開始時の操舵角θとして記憶される(ステップS8参照)。
q軸電流Iは、時刻t5からハンドル位置があそびの範囲内に入るため、時刻t5から増加し始める。q軸電流変化量dI/dtは、時刻t5で立ち上がった後、その値を保持する。q軸電流変化量dI/dtの絶対値は、時刻t5で閾値Aよりも大きくなるので、ハンドル位置があそびの範囲内に入ったと判別される(ステップS9参照)。
時刻t6であそびが詰まると、負荷が安定するため、q軸電流Iは、変化しなくなり、ほぼ一定となる。q軸電流変化量dI/dtは、時刻t6で立ち下がった後、その値を保持する。q軸電流変化量dI/dtの絶対値は、時刻t6で閾値A以下となるので、あそびが詰まったと判別される(ステップS9,S11参照)。時刻t6での操舵角をθとすると、|θ-θ|が基本あそび量αとして演算される(ステップS13参照)。
前述の実施形態では、あそび補償用操舵角推定部44によって、あそび補償用操舵角θ’が推定され、操舵角指令値θcmdとあそび補償用操舵角θ’との偏差が零に近づくように、電動モータ9が角度フィードバック制御されている。これにより、あそび量が補償されたモータ制御が行えるので、軌跡追従性を向上させることができる。
また、前述の実施形態では、切り返し動作時のあそび量が、基本あそび量と一致しない可能性が高くなるタイヤ角範囲(操舵角範囲)においても、あそび補償用操舵角θ’を高い精度で推定することができるので、従来例に比べて、軌跡追従性を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。例えば、前述の実施形態では、図5AのステップS2において、タイヤ角δの絶対値|δ|が所定の閾値δα以下であるか否かに基づいて、タイヤ角δがバックラッシモデル適用可能範囲内であるか否かを判別している。しかし、操舵角θの絶対値|θ|が所定の閾値θHα以下であるか否かに基づいて、操舵角θがバックラッシモデル適用可能範囲内であるか否かを判別するようにしてもよい。
また、前述の実施形態では、タイヤ角δがバックラッシモデル適用可能範囲外である場合には、タイヤ角δがバックラッシモデル適用可能範囲内であると判別された場合とは異なる方法であそび補償用操舵角θ’を推定している。しかし、タイヤ角δがバックラッシモデル適用可能範囲外である場合においても、タイヤ角δがバックラッシモデル適用可能範囲内であると判別された場合と同様な方法(前記ステップS3参照)であそび補償用操舵角θ’を推定してもよい。
また、前述のステップS3では、式(1)に基づいて、あそび補償用操舵角θ’を演算している。しかし、タイヤ角δがバックラッシモデル適用可能範囲内である場合の、操舵角θに対するタイヤ角δの関係を記憶した操舵角/タイヤ角テーブルと、今回の操舵角θHtとからタイヤ角δを推定し、推定されたタイヤ角δにオーバーオールギヤ比γを乗算することにより、あそび補償用操舵角θ’を演算するようにしてもよい。
また、前述の実施形態では、ロータ回転角を検出するための回転角センサ25に基づいて操舵角θを検出しているが、ステアリングシャフト3の回転角を検出する舵角センサによって、操舵角θを検出するようにしてもよい。
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
1…パワーステアリング装置、2…ハンドル、3…ステアリングシャフト、8…転舵機構、9…電動モータ、21,22…転舵輪、25…回転角センサ、41…回転角演算部、42…減速比除算部、43…UVW/dq変換部、44…あそび補償用操舵角推定部、45…角度偏差演算部、46…PD制御部、47…電流指令値設定部、48…電流偏差演算部、49…PI(比例積分)制御部、50…dq/UVW変換部、51…PWM(Pulse Width Modulation)制御部、101…上位ECU、102…モータ制御用ECU

Claims (6)

  1. ハンドルに連結されたステアリングシャフトと、
    前記ステアリングシャフトに連結され、左右の転舵輪を転舵させるための転舵機構と、
    前記ステアリングシャフトを回転させるための電動モータと、
    前記ステアリングシャフトの回転角である操舵角を検出するための操舵角検出部と、
    前記電動モータを制御する電動モータ制御部とを含み、
    前記電動モータ制御部は、
    あそび範囲内での所定時間毎の操舵角変化量を零に設定して、ハンドル中立位置から現在までの所定時間毎の操舵角変化量を積算した値に相当する値を、あそび補償用操舵角とすると、前記操舵角を用いて前記あそび補償用操舵角を推定するあそび補償用操舵角推定部と、
    自動操舵のための目標操舵角である操舵角指令値と前記あそび補償用操舵角との偏差が零に近づくように前記電動モータを制御する角度制御部とを含む、車両用操舵装置。
  2. 前記あそび補償用操舵角推定部は、所定の基本あそび量と前記操舵角とに基づいて、前記あそび補償用操舵角を推定するように構成されている、請求項1に記載の車両用操舵装置。
  3. 前記あそび補償用操舵角推定部は、
    前記基本あそび量をαとし、前記基本あそび量の中心に相当するハンドル中立位置からの一定時間毎の操舵角変化量の積分値であって、かつα/2以上になるとα/2となり、-α/2以下になると-α/2となるθαを演算し、
    前記操舵角から前記θαを減算することにより、前記あそび補償用操舵角を推定するように構成されている、請求項2に記載の車両用操舵装置。
  4. 前記転舵輪のタイヤ角の絶対値が所定の第1閾値以下または前記操舵角の絶対値が所定の第2閾値以下である場合と、前記タイヤ角の絶対値が前記第1閾値よりも大きいまたは前記操舵角の絶対値が前記第2閾値よりも大きい場合とで、前記あそび補償用操舵角推定部による前記あそび補償用操舵角の推定方法が異なる、請求項1に記載の車両用操舵装置。
  5. 前記あそび補償用操舵角推定部は、
    前記転舵輪のタイヤ角の絶対値が前記第1閾値以下または前記操舵角の絶対値が前記第2閾値以下である場合には、所定の基本あそび量と前記操舵角とに基づいて、前記あそび補償用操舵角を推定し、
    前記転舵輪のタイヤ角の絶対値が前記第1閾値よりも大きいまたは前記操舵角の絶対値が前記第2閾値よりも大きい場合には、タイヤ角推定処理によって前記タイヤ角を推定し、推定したタイヤ角にオーバーオールギヤ比を乗算することによって前記あそび補償用操舵角を推定するように構成されており、
    前記タイヤ角推定処理では、
    ハンドル位置があそびの範囲内にある場合には、前記あそび補償用操舵角推定部は、前回のタイヤ角を今回のタイヤ角として推定し、
    ハンドル位置があそびの範囲外にある場合には、前記あそび補償用操舵角推定部は、切り返し動作後においてあそびが詰まったと判定したときに推定される比であって、あそびが詰まった直後の操舵角変化量に対するタイヤ角変化量の比と、前回の前記タイヤ角と、前記操舵角の変化量と、前記オーバーオールギヤ比とに基づいて、前記タイヤ角を推定する、請求項4に記載の車両用操舵装置。
  6. 車両走行中に前記基本あそび量を演算する基本あそび量演算部をさらに含み、
    前記基本あそび量演算部によって演算される前記基本あそび量に基づいて、前記基本あそび量が更新される、請求項2、3および5のいずれか一項に記載の車両用操舵装置。
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