JP2023040683A - ラミネート積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境負荷が少ないほぼ単一の樹脂種から構成されたラミネート構成を有すると共に、包装材料に求められるガスバリア性やヒートシール性、強靭性等の必要性能を有するラミネート積層体を提供すること。【解決手段】ポリプロピレン系樹脂を原料とする延伸基材フィルム2枚とヒートシール性樹脂層1枚が接着剤を介してラミネートされてなるラミネート積層体であって、前記基材フィルムの少なくとも1枚は片面にポリビニルアルコール系共重合体および無機層状化合物を有する被覆層または無機薄膜層を有する積層フィルムであって、前記ヒートシール性樹脂層はポリプロピレンまたはポリエチレン樹脂を主たる構成成分とするオレフィン系樹脂からなり、前記ラミネート積層体が下記(a)~(d)の要件を満足することを特徴とするラミネート積層体。(a) 前記ラミネート積層体の突き刺し強度が15N以上であること。(b) 前記ラミネート積層体の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が20ml/m2・d・MPa以下かつ40℃×90%RH環境下における水蒸気透過度が2.0g/m2・d以下であること。(c) 前記ラミネート積層体のシール層同士を160℃、0.2MPa、2秒間でヒートシールしたときのヒートシール強度が15N/15mm以上であること。(d) 前記ラミネート積層体の120℃×5分加熱処理時の収縮率が、前記基材フィルムのMD方向及びTD方向のいずれの方向においても1.8%以下であること。【選択図】なし

Description

本発明は、食品、医薬品、工業製品等の包装分野に用いられる積層体に関する。更に詳しくは、ガスバリア性、加工性、強靭性に優れ、利便性を備えた環境対応型のラミネート積層体に関する。
近年、欧州はじめ世界各国において、使い捨てプラスチック使用削減に向けた規制が強化されている。その背景には、資源循環への国際的な意識の高まりや新興国におけるごみ問題の深刻化がある。そのため、食品、医薬品等に求められるプラスチック製包装材料についても、3R(recycle, reuse, reduce)の観点から環境対応型の製品が求められている。
前述の環境に優しい包装材料とするための可能性の一つとして、包装材料がリサイクル可能な単一素材から成ること、すなわちモノマテリアル化することが積極的に検討されている。モノマテリアル化のための素材としては、例えばポリエステル系またはオレフィン系の検討がそれぞれ進められている。
低環境負荷の包装材料が求められている一方で、利便性のため包装材料自体に求められる特性はますます多機能化しているのが現状である。例えば、アルミ箔を使用せず電子レンジでも使用できるようなパウチには、袋のガスバリア性、耐熱性、強靭性(耐破袋性や耐ピンホール性)、高いシール性等が一つの包装袋において同時に求められる。これを達成するためには、それぞれ別々の機能を有する異素材を貼り合わせる必要があり、袋の外側に蒸着ポリエステルフィルム、中間層にポリアミドフィルム、内側(内容物側)にオレフィン系ヒートシール性樹脂を接着剤を介してドライラミネートした少なくとも3層以上の構成が一般的となっている。この構成であれば目的とする性能は達成できるが、異素材の貼り合わせであることからリサイクル性に劣り、前述の環境にやさしい包装材料とは言えない問題がある。
これらの点を考慮し、モノマテリアル化可能な同一素材でも前述のような袋としての多機能性を有するような理想的な包装材料設計ができないかについて検討が進められている。
ポリエステル系モノマテリアル包材設計においては、従来のオレフィン系シーラントの代替として、低吸着性・耐熱性を向上させたポリエステル系シーラントが開示されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1のシーラントは、ヒートシール性を有する層とそれ以外の層を分け、これらの層の原料組成をそれぞれ別々に制御することにより、ヒートシール性と耐熱性を満足させている。ただ、ヒートシール性に関してはオレフィン系シーラントのシール強度に比べると劣っているという問題があり、また耐熱性の面で、ボイルやレトルト処理のような過酷な処理には耐えられないのが現状であった。
一方、オレフィン系モノマテリアル包材設計においては、従来のバリア性能を有する包装に比べガスバリア性能に劣る問題があった。ポリプロピレンフィルムは水蒸気バリア性を有するものの、例えば一般的に水蒸気バリア性が優れるとされる透明無機蒸着ポリエステルフィルムに比べると十分な値ではなく、また酸素バリア性に関しては非常に悪いという問題点があった。
これに対し、ポリプロピレンフィルムにポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリロニトリルなど一般に酸素バリア性が比較的高いと言われる高分子樹脂組成物を積層させたフィルムが使用されてきた(例えば、特許文献2~4参照)。しかしながら、上記のポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体の高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性コートフィルムは湿度依存性が大きいため、高湿下においてガスバリア性の低下が見られた。またポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリロニトリルは、湿度依存性が低いが、絶対値としてのバリア値が不十分であること、さらには廃棄・焼却の際に有害物質が発生する危険性が高いという問題があった。さらに前述のバリアコート層はいずれも、十分なバリア性能を発現させるため、少なくとも0.5μm以上の膜厚を積層する必要があった。コート層の膜厚が厚いと、リサイクルが困難になる可能性があり、また単一素材によるモノマテリアル化の観点からもふさわしくなかった。
ポリプロピレンフィルムのガスバリア性向上に関し、無機薄膜を積層することで湿度依存性がなく安定したガスバリア性能を発現させる試みも行われている(例えば、特許文献5)。しかし、従来のポリエステル蒸着フィルムに対してガスバリア性能の絶対値(特に酸素バリア性)が劣ることや、前述のコートタイプバリアフィルムに比べて物理的ダメージに弱い等の問題もあった。また、オレフィン系シーラントに蒸着を施したバリア材料も検討されているが(例えば、特許文献6)、水蒸気バリア性能は発現するものの酸素バリア性が十分でないこと等の課題があった。
特開2017-165059号公報 特開2000-52501号公報 特開平4-359033号公報 特開2003-231221号公報 国際公開第2017/221781号 特許第3318479号公報
上記特許文献では、包装材料をモノマテリアル化することと、包材に求められる各種性能との両立が難しく、環境にやさしくかつ利便性も高い包装材料を設計することができていなかった。
本発明は、かかる従来技術の問題点を背景になされたものである。
すなわち、本発明の課題は、環境負荷が少ないほぼ単一の樹脂種から構成されたラミネート構成を形成することができるとともに、包装材料に求められるガスバリア性やヒートシール性、さらには加工適性等の必要性能を有するラミネート積層体を提供することである。
本発明者らは、要求される性能に合わせた所定のコート層をポリプロピレン系延伸基材フィルム上に積層した積層フィルムとすることでガスバリア性能を大きく向上させ、さらに前記積層フィルムを2枚貼り合わせることで強靭性や耐熱性を確保でき、最終的にはオレフィン系成分からなるシーラントをラミネートすることで、高いヒートシール性を保持したままモノマテリアル化を実現した。以上より、環境にやさしくかつ利便性も高いラミネート積層体を提供できることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
(1)ポリプロピレン系樹脂を原料とする延伸基材フィルム2枚とヒートシール性樹脂層1枚が接着剤を介してラミネートされてなるラミネート積層体であって、前記基材フィルムの少なくとも1枚は片面にポリビニルアルコール系共重合体および無機層状化合物を有する被覆層または無機薄膜層を有する積層フィルムであって、前記ヒートシール性樹脂層はポリプロピレンまたはポリエチレン樹脂を主たる構成成分とするオレフィン系樹脂からなり、前記ラミネート積層体が下記(a)~(d)の要件を満足することを特徴とするラミネート積層体。
(a) 前記ラミネート積層体の突き刺し強度が15N以上であること。
(b) 前記ラミネート積層体の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が20ml/m・d・MPa以下かつ40℃×90%RH環境下における水蒸気透過度が2.0g/m・d以下であること。
(c) 前記ラミネート積層体のシール層同士を160℃、0.2MPa、2秒間でヒートシールしたときのシール強度が15N/15mm以上であること。
(d) 前記ラミネート積層体の120℃×5分加熱処理時の収縮率が、前記基材フィルムのMD方向及びTD方向のいずれの方向においても1.8%以下であること。
(2) 前記被覆層の無機層状化合物がモンモリロナイト系化合物を構成成分として含有することを特徴とする、(1)に記載のラミネート積層体。
(3)前記被覆層の付着量が0.10g/m以上0.50g/m以下であることを特徴とする、(1)または(2)に記載のラミネート積層体。
(4)前記無機薄膜層が酸化アルミニウム、または酸化ケイ素、または酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物からなる層であることを特徴とする(1)~(3)に記載のラミネート積層体。
(5) 前記基材フィルムの少なくとも1枚は150℃×5分の加熱収縮率がMD方向、TD方向いずれも10%以下である基材フィルムであることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載のラミネート積層体。
本発明者らは、かかる技術によって、環境に配慮しつつ、包装材料に求められるバリア性やヒートシール性、強靭性等の必要性能を有するラミネート積層体を提供することが可能となった。
本発明のラミネート積層体は、ポリプロピレン系樹脂を原料とする延伸基材フィルム2枚とヒートシール性樹脂層1枚が接着剤を介してラミネートされてなるラミネート積層体であって、前記基材フィルムの少なくとも1枚は片面にポリビニルアルコール系共重合体および無機層状化合物を有する被覆層または無機薄膜層を有する積層フィルムであって、前記ヒートシール性樹脂層はポリプロピレンまたはポリエチレン樹脂を主たる構成成分とするオレフィン系樹脂からなり、前記ラミネート積層体が下記(a)~(d)の要件を満足することを特徴とすることを特徴とするものである。
(a) 前記ラミネート積層体の突き刺し強度が15N以上であること。
(b) 前記ラミネート積層体の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が20ml/m・d・MPa以下かつ40℃×90%RH環境下における水蒸気透過度が2g/m・d以下であること。
(c) 前記ラミネート積層体のシール層同士を160℃、0.2MPa、2秒間でヒートシールしたときのシール強度が15N/15mm以上であること。
(d) 前記ラミネート積層体の120℃×5分加熱処理時の収縮率が、前記基材フィルムのMD方向及びTD方向のいずれの方向においても1.8%以下であること。
以下、本発明について詳細に説明する。
[基材フィルム層]
本発明で基材フィルムとして用いるプロピレン系樹脂延伸フィルムは、二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、公知の二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを使用することが可能であり、その原料、混合比率などは特に限定されない。例えばポリプロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)であるほか、プロピレンを主成分としてエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセンなどのα-オレフィンから選ばれる1種又は2種以上とのランダム共童合体やブロック共重合体など、あるいはこれらの重合体を2種以上混合した混合体によるものであってもよい。また物性改質を目的として酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤など、公知の添加剤が添加されていてもよく、例えば石油樹脂やテルペン樹脂などが添加されていてもよい。
また、本発明で用いる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、あるいは二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが積層された積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合の積層体の種類、積層数、積層方法などは特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
本発明において、基材フィルムを構成するポリプロピレン樹脂としては、実質的にコモノマーを含まないプロピレン単独重合体が好ましく、コモノマーを含む場合であっても、コモノマー量は0.5モル%以下であることが好ましい。コモノマー量の上限は、より好ましくは0.3モル%であり、さらに好ましくは0.1モル%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での寸法変化が小さくなり、すなわちある温度に加熱したときの伸び率(以下、加熱伸び率)が小さくなり、耐熱性が向上する。なお、結晶性を著しく低下させない範囲内において、微量であればコモノマーが含まれていてもよい。
基材フィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、プロピレンモノマーのみから得られるプロピレン単独重合体を含むことが好ましく、プロピレン単独重合体であっても、頭-頭結合のような異種結合を含まないことが最も好ましい。
基材フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のキシレン可溶分の下限は、現実的な面から、好ましくは0.1質量%である。キシレン可溶分の上限は好ましくは7質量%であり、より好ましくは6質量%であり、さらに好ましくは5質量%である。上記範囲であると結晶性が向上し、加熱伸び率がより小さくなり、耐熱性が向上する。
本発明において、ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf)の下限は0.5g/10分であることが好ましい。MFRの下限は、より好ましくは1.0g/10分であり、さらに好ましくは2.0g/10分であり、特に好ましくは4.0g/10分であり、最も好ましくは6.0g/10分である。上記範囲であると機械的負荷が小さく、押出や延伸が容易となる。MFRの上限は20g/10分であることが好ましい。MFRの上限は、より好ましくは17g/10分であり、さらに好ましくは16g/10分であり、特に好ましくは15g/10分である。上記範囲であると延伸が容易となったり、厚み斑が小さくなったり、延伸温度や熱固定温度が上げられやすく加熱伸び率がより小さくなり、耐熱性が向上する。
前記基材フィルムは耐熱性の点から、長手方向(MD方向)もしくは横方向(TD方向)の一軸延伸フィルムでも良いが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。本発明では、少なくとも一軸に延伸することで、従来のポリプロピレンフィルムでは予想できなかった高温での熱収縮率が低い、高度な耐熱性を具備したフィルムを得ることができる。延伸方法としては、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等を良好とする点から逐次二軸延伸法が好ましい。
逐次二軸延伸法としては、ポリプロピレン樹脂を単軸または二軸の押出機で樹脂温度が200℃以上280℃以下となるようにして加熱溶融させ、Tダイよりシート状にし、10℃以上100℃以下の温度のチルロール上に押出して未延伸シートを得る。ついで、長手方向(MD方向)に120℃以上165℃以下で、3.0倍以上8.0倍にロール延伸し、引き続き、テンターで予熱後、横方向(TD方向)に155℃以上175℃以下温度で4.0倍以上20.0倍以下に延伸することができる。さらに、二軸延伸後に165℃以上175℃以下の温度で1%以上15%以下のリラックスを許しながら、熱固定処理を行うことができる。
本発明では、前記基材フィルムの150℃×5分の加熱収縮率がMD方向、TD方向いずれも10%以下であることが好ましい。これらにより、基材の寸法変化が安定し印刷加工時やラミネート加工時の品位をより向上することができる。さらには、ラミネート積層体をシール加工する際のシール部分の外観が向上する。150℃×5分の加熱収縮率は、好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下、下限は0%が好ましい。150℃×5分の加熱収縮率が10%を超えると、加工時に熱シワやたるみなどが発生しやすくなるため、印刷面やラミネート面、シール面の品位が低下する場合がある。
また、120℃×5分の加熱収縮率は、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.7%以下、下限はー0.8%が好ましい。120℃×5分の加熱収縮率が1%を超えると、加工時に熱シワやたるみなどが発生しやすくなるため、印刷面やラミネート面、シール面の品位が低下する場合がある。
本発明で用いる基材フィルムは、ハンドリング性(例えば、積層後の巻取り性)を付与するために、フィルムに粒子を含有させてフィルム表面に突起を形成させることが好ましい。フィルムに含有させる粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の耐熱性高分子粒子が挙げられる。透明性の点から、フィルム中の粒子の含有量は少ないことが好ましく、例えば1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。また、粒子の好ましい平均粒子径は1.0~3.0μmであり、より好ましくは1.0~2.7μmである。ここでいう平均粒径の測定法は、走査電子顕微鏡で写真撮影し、イメージアナライザー装置を用いて水平方向のフェレ径を測定し、その平均値で表示したものである。さらに、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。また、フィルムには必要に応じて各種機能を付与するために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、色素、滑剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、無機または有機の充填剤などを含有させてもよい。
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外でも、基材フィルムの機械特性、及び、前記ガスバリア性コート層上に積層されるインキ層や接着層との接着性向上などを目的に本発明の目的を損なわない範囲において、フィルムに含有させても良い。例えば、前記と異なるポリプロピレン樹脂、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体であるランダムコポリマーや、各種エラストマー等が挙げられる。
本発明において、基材フィルムの厚みは各用途に合わせて任意に設定されるが、下限は2μm以上が好ましく、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは4μm以上である。一方、厚みの上限は300μm以下が好ましく、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下である。厚みが薄い場合には、ハンドリング性が不良になりやすい。一方、厚みが厚い場合にはコスト面で問題があるだけでなく、ロール状に巻き取って保存した場合に巻き癖による平面性不良が発生しやすくなる。
本発明の基材として用いるポリプロピレンフィルムのヘイズは内容物の視認性の観点より、透明性があることが好ましく、具体的には6%以下が好ましく、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは4%以下である。ヘイズは、例えば延伸温度、熱固定温度が高すぎる場合、冷却ロール(CR)温度が高く延伸原反シートの冷却速度が遅い場合、低分子量が多すぎる場合に悪くなる傾向があるので、これらを調節することにより、前記範囲内に制御することができる。
また本発明における基材フィルム層には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、表面粗面化処理が施されてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などが施されてもよい。アンカーコートには一般にポリウレタンやポリエステル等の接着性良好な樹脂を用いるのが好適である。
[被覆層]
本発明においては、基材フィルムのガスバリア性能や接着性を向上させる目的として被覆層を有することが好ましい。ただし、本発明では、被覆層を設けることで工程が増えることによるコストアップや、膜厚によってはリサイクルが困難になる等の、環境への負荷が生じることに留意して設計する必要がある。
被覆層の付着量は0.10~0.50(g/m)とすることが好ましい。後述するポリビニルアルコール系共重合体と無機層状化合物を使用した被覆層を前述のポリプロピレン系樹脂基材に用いる場合には、前記の特定の付着量の範囲とすることでガスバリア性、コート外観、接着性及びリサイクル性の全てを両立できることを本発明者らは見出した。これにより、塗工において被覆層を均一に制御することができるため、結果としてコートムラや欠陥の少ない膜となる。また被覆層が薄いことからリサイクル利用の際の異物低減等に寄与できる。被覆層の付着量は、下限は好ましくは0.15(g/m)以上、より好ましくは0.20(g/m)以上、さらに好ましくは0.25(g/m)以上であり、上限は好ましくは0.45(g/m)以下、より好ましくは0.40(g/m)以下、さらに好ましくは0.35(g/m)以下である。被覆層の付着量が0.50(g/m)を超えると、ガスバリア性は向上するが、被覆層内部の凝集力が不充分となり、また被覆層の均一性も低下するため、コート外観にムラ(ヘイズ上昇、白化)や欠陥が生じたり、ガスバリア性・接着性を充分に発現できない場合がある。また、加工性という点では膜厚が厚いことでブロッキングが発生するおそれもある。さらには、フィルムのリサイクル性に悪影響を及ぼす懸念がある。一方、被覆層の膜厚が0.10(g/m)未満であると、充分なガスバリア性および層間密着性が得られないおそれがある。
本発明の積層フィルムの表面に形成する被覆層に用いる樹脂組成物としては、ポリビニルアルコール系重合体が望ましい。ポリビニルアルコール系重合体は、ビニルアルコール単位を主要構成成分とするものであり、水素結合構造による高い凝集性によるバリア性能の大幅な向上が期待できる。ポリビニルアルコール系重合体の重合度、鹸化度は、目的とするガスバリア性及びコーティング水溶液の粘度などから定められる。重合度については、水溶液粘度が高いことやゲル化しやすいことから、コーティングが困難となり、コーティングの作業性から2600以下が好ましい。鹸化度については、90%未満では高湿下での十分な酸素ガスバリア性が得られず、99.7%を超えると水溶液の調整が困難で、ゲル化しやすく、工業生産には向かない。従って、鹸化度は90~99.7%が好ましく、さらに好ましくは93~99%である。また、本発明では加工性や生産性を損なわない範囲において、エチレンを共重合したポリビニルアルコール系重合体、シラノール変性したポリビニルアルコール系重合体など、各種共重合または変性したポリビニルアルコール系重合体も使用できる。
本発明の被覆層には無機層状化合物を含有する。無機層状化合物が存在することで、気体に対する迷路効果が期待でき、ガスバリア性が向上する。また、無機層状化合物を添加することでガスバリア性の湿度依存性を抑制することができる。材料としては、スメクタイト、カオリン、雲母、ハイドロタルサイト、クロライト等の粘土鉱物(その合成品を含む)を挙げることができる。具体的には、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、金雲母、タルク、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、バーミキュライト、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができる。さらに無機層状化合物として鱗片状シリカ等も使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、特にスメクタイト(その合成品も含む)が水蒸気バリア性の向上効果が高いことから好ましい。
また無機層状化合物としては、その中に酸化還元性を有する金属イオン、特に鉄イオンが存在するものが好ましい。さらに、このようなものの中でも、塗工適性やガスバリア性の点からはスメクタイトの1種であるモンモリロナイトが好ましい。モンモリロナイトとしては、従来からガスバリア剤に使用されている公知のものが使用できる。
例えば、下記一般式:
(X,Y)2~3Z4O10(OH)2・mH2O・(Wω)
(式中、Xは、Al、Fe(III)、又はCr(III)を表す。Yは、Mg、Fe(II)、Mn(II)、Ni、Zn、又はLiを表す。Zは、Si、又はAlを表す。Wは、K、Na、又はCaを表す。H2Oは、層間水を表す。m及びωは、正の実数を表す。)
これらの中でも、式中のWがNaであるものが水性媒体中でへき開する点から好ましい。
無機層状化合物の大きさや形状は、特に制限されないが、粒径(長径)としては5μm以下が好ましく、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。粒径が5μmより大きいと、分散性に劣り、結果、被覆層の塗工性やコート外観が悪化する恐れがある。一方、そのアスペクト比としては50~5000、より好ましくは100~4000、さらに好ましくは200~3000である。
本発明の被覆層におけるポリビニルアルコール系共重合体と無機層状化合物の配合比は75/25~35/65(wt%)が好ましく、より好ましくは70/30~40/60(wt%)、さらに好ましくは65/35~45/55(wt%)である。無機層状化合物の配合比が25wt%より少ないと、バリア性能が不十分となるおそれがある。一方、65wt%より多いと分散性が悪くなり塗工性が悪化することや、接着性が悪化するおそれがある。
本発明では、被覆層の全反射赤外吸収スペクトルにおける1040±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P1)と3300±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク強度(P2)の比(P1/P2)が3.0~25.0の範囲内である必要がある。好ましくは4.0~24.0の範囲であり、より好ましくは5.0~23.0の範囲である。1040±10cm-1のピークは、シリカ分子構造に由来するピークであり、被覆層中の無機層状化合物由来のシリカ結合量を示す指標となる。また、3300±10cm-1のピークは水酸基由来のピークであり、被覆層中の水酸基量を示す指標となる。(P1/P2)はシリカ結合と水酸基の比率を表しており、本比率が上記範囲にあることで、水酸基の水素結合を阻害することなくシリカ粒子が膜中に配置され、結果としてガスバリア性能が最大限発揮される。また、密着性も同時に発現することができる。(P1/P2)が3.0未満であると、被覆層中のシリカ結合量が少なく、迷路効果が得られないため、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合がある。また、加工性について、被覆層がブロッキングしやすくなるおそれもある。一方、(P1/P2)が25.0を超えると、ガスバリア性は向上するが膜が脆くなり、ラミネート積層体とした場合の接着性の面で不利となる他、塗工液の分散性が悪くなり、塗工時の外観不良(ヘイズ上昇、白化)が起こる懸念がある。被覆層の(P1/P2)の値を前記の所定の数値範囲とするには、前述の材料を使用して前述の所定の付着量とし、さらには材料の配合比を前述の適性範囲とし、後述の乾燥・熱処理条件と組み合わせることが必要である。
本発明の被覆層には、膜の凝集力向上および耐湿熱接着性を向上させる目的で、ガスバリア性や生産性を損なわない範囲で、各種の架橋剤を配合してもよい。架橋剤としては、例えば、ケイ素系架橋剤、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物等が例示できる。その中でも、ケイ素系架橋剤を配合することにより、特に無機層との耐水接着性を向上させる観点から、ケイ素系架橋剤が特に好ましい。その他に架橋剤として、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物等を併用してもよい。ただし、リサイクル性を重視する場合には架橋剤はできるだけ少量添加または配合しないことが好ましい。
本発明では、被覆層積層後のフィルムヘイズは内容物の視認性の観点より、20%以下あることが好ましく、より好ましくは18%以下、さらに好ましくは16%以下である。ヘイズが20%より大きいと、透明性が大きく悪化することに加え、表面の凹凸にも影響を与える懸念があり、後の印刷工程等での外観不良につながるおそれがある。なお、ヘイズは被覆層の組成比や溶媒条件、膜厚等で調整ができる。ここでヘイズの評価はJIS K7136に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH2000)を用いた。
被覆層用樹脂組成物の塗工方式は、フィルム表面に塗工して層を形成させる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常のコーティング方法を採用することができる。
被覆層を形成する際には、被覆層用樹脂組成物を塗布した後、比較的低温で予備乾燥しまず溶媒を揮発させ、その後高温で本乾燥させると、均一な膜が得られるため好ましい。予備乾燥の温度は80~110℃が好ましく、より好ましくは85~105℃、さらに好ましくは90~100℃である。予備乾燥温度が80℃未満であると、被覆層に乾燥不足が生じるおそれがある。また、予備乾燥温度が110℃より大きいと、被覆層が濡れ広がる前に乾燥が進行してしまい、外観不良のおそれがある。
一方、本乾燥温度は110~140℃が好ましく、より好ましくは115~135℃、さらに好ましくは120~130℃である。本乾燥温度が110℃未満であると、被覆層の造膜が進行せず凝集力および接着性が低下し、結果としてバリア性にも悪影響を与えるおそれがある。140℃を超えると、フィルムに熱がかかりすぎてしまいフィルムが脆くなったり、熱収縮によるシワが大きくなるおそれがある。
予備乾燥の好ましい乾燥時間は3.0~10.0秒、より好ましくは3.5~9.5秒、さらに好ましくは4.0~9.0秒である。また、本乾燥の好ましい乾燥時間は3.0~10.0秒、より好ましくは3.5~9.5秒、さらに好ましくは4.0~9.0秒である。ただし、乾燥の条件は、熱媒の方式や乾燥炉の吸排気状況によっても変わるため注意が必要である。また、乾燥とは別に、できるだけ低温領域、具体的には40~60℃の温度領域で1~4日間の追加の熱処理を加えることも、被覆層の造膜を進行させるうえで、さらに効果的である。
[無機薄膜層]
本発明では、ガスバリア性能向上の目的で、前記基材フィルムの表面に無機薄膜層(A)を有することができる。無機薄膜層(A)は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。特に、薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物が好ましい。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20~70質量%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20質量%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合がある。一方、70質量%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてガスバリア性が低下する虞がある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO2等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl2O3等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
無機薄膜層(A)の膜厚は、通常1~100nm、好ましくは5~50nmである。無機薄膜層(A)の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、100nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
無機薄膜層(A)を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)等、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層(A)を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiOとAlの混合物、あるいはSiOとAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm~5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
[無期薄膜用アンカーコート層]
本発明のラミネート積層体は、安定したガスバリア性やラミネート強度を確保することを目的として、基材フィルム層と前記無機薄膜層(A)との間にアンカーコート層を設けてもよい。基材フィルム層と前記無機薄膜層との間に設けるアンカーコート層に用いる樹脂組成物としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、オキサゾリン系、カルボジイミド系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。また、無機層との接着向上を目的として、有機官能基を少なくとも1種類以上有するシランカップリング剤を含有することも好適である。
前記アンカーコート層を形成するための方法としては、特に限定されるものではなく、例えばコート法など従来公知の方法を採用することができる。コート法の中でも好適な方法としては、オフラインコート法、インラインコート法を挙げることができる。例えば基材フィルム層を製造する工程で行うインラインコート法の場合、コート時の乾燥や熱処理の条件は、コート厚みや装置の条件にもよるが、コート後直ちに直角方向の延伸工程に送入し延伸工程の予熱ゾーンあるいは延伸ゾーンで乾燥させることが好ましく、そのような場合には通常50~250℃程度の温度とすることが好ましい。
[無期薄膜上の保護層]
本発明においては、前記無機薄膜層の上に保護層を有してもよい。金属酸化物層からなる無機薄膜層は完全に密な膜ではなく、微小な欠損部分が点在している。金属酸化物層上に後述する特定の保護層用樹脂組成物を塗工して保護層を形成することにより、金属酸化物層の欠損部分に保護層用樹脂組成物中の樹脂が浸透し、結果としてガスバリア性が安定するという効果が得られる。加えて、保護層そのものにもガスバリア性を持つ材料を使用することで、積層フィルムのガスバリア性能も向上することになる。
本発明においては、保護層の付着量を0.10~0.40(g/m)とすることが好ましい。これにより、塗工において保護層を均一に制御することができるため、結果としてコートムラや欠陥の少ない膜となる。また保護層自体の凝集力が向上し、無機薄膜層-保護層間の密着性も強固になる。保護層の付着量は、好ましくは0.13(g/m)以上、より好ましくは0.16(g/m)以上、さらに好ましくは0.19(g/m)以上であり、好ましくは0.37(g/m)以下、より好ましくは0.34(g/m)以下、さらに好ましくは0.31(g/m)以下である。保護層の付着量が0.400(g/m)を超えると、ガスバリア性は向上するが、保護層内部の凝集力が不充分となり、また保護層の均一性も低下するため、コート外観にムラや欠陥が生じたり、ガスバリア性・接着性を充分に発現できない場合がある。一方、保護層の膜厚が0.10(g/m)未満であると、充分なガスバリア性および層間密着性が得られないおそれがある。
本発明のラミネート積層体の無機薄膜層の表面に形成する保護層に用いる樹脂組成物としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂を用いることができ、さらにエポキシ系、イソシアネート系、メラミン系等の硬化剤を添加してもよい。
保護層用樹脂組成物の塗工方式は、フィルム表面に塗工して層を形成させる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常のコーティング方法を採用することができる。
保護層を形成する際には、保護層用樹脂組成物を塗布した後、加熱乾燥することが好ましく、その際の乾燥温度は100~160℃が好ましく、より好ましくは110~150℃、さらに好ましくは120~140℃である。乾燥温度が100℃未満であると、保護層に乾燥不足が生じたり、保護層の造膜が進行せず凝集力および耐水接着性が低下し、結果としてバリア性や手切れ性が低下するおそれがある。一方、乾燥温度が160℃を超えると、フィルムに熱がかかりすぎてしまいフィルムが脆くなり突刺し強度が低下したり、収縮して加工性が悪くなったりする虞がある。保護膜は塗布直後に90℃~110℃の比較的低温条件でまず溶媒を揮発させ、その後130℃以上で乾燥させると、均一で透明な膜が得られるため、特に好ましい。また、乾燥とは別に、できるだけ低温領域で追加の熱処理を加えることも、保護層の造膜を進行させるうえで、さらに効果的である。
[ヒートシール性樹脂層]
本発明の積層フィルムを包装材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成した積層体とする必要がある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が充分に発現できるものであればよいが、オレフィン系のHDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。この中でも耐久性、シール強度、価格、モノマテリアル化の観点から汎用性が高いLLDPEまたはポリプロピレン樹脂が特に好ましい。シーラント層の厚みは20~80μmが好ましく、さらに好ましくは25~75μm、より好ましくは30~70μmである。厚みが20μmより薄いと十分なシール強度が得られないことや、腰感がなく取り扱いづらい可能性がある。一方、厚みが80μmを超えると腰感が強く袋としての取り扱い性が低下することや、より高温でのシールが必要となり、表側の基材フィルムに熱シワが生じるおそれがある。また、価格も高額になる恐れがある。
[接着剤層]
本発明で用いられる接着剤層は、汎用的なラミネート用接着剤が使用できる。たとえば、ポリ(エステル)ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリエチレンイミン系、エチレン-(メタ)アクリル酸系、ポリ酢酸ビニル系、(変性)ポリオレフィン系、ポリブタジェン系、ワックス系、カゼイン系等を主成分とする(無)溶剤型、水性型、熱溶融型の接着剤を使用することができる。この中でも、耐熱性と、各基材の寸法変化に追随できる柔軟性を考慮すると、ウレタン系またはポリエステル系が好ましい。上記接着剤層の積層方法としては、たとえば、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、キスコート法、ダイコート法、ロールコート法、ディップコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、フォンテンコート法、その他の方法で塗布することができ、十分な接着性を発現するため、乾燥後の塗工量は1~8g/mが好ましい。より好ましくは2~7g/m、さらに好ましくは3~6g/mである。塗工量が1g/m未満であると、全面で貼り合せることが困難になり、接着力が低下する。また、8g/m以上を超えると、膜の完全な硬化に時間がかかり、未反応物が残りやすく、接着力が低下する。
さらに、本発明の積層フィルムには、基材フィルム層とヒートシール性樹脂層との間またはその外側に、印刷層を少なくとも1層以上積層してもよい。
印刷層を形成する印刷インクとしては、水性および溶媒系の樹脂含有印刷インクが好ましく使用できる。ここで印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂およびこれらの混合物が例示される。印刷インクには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥等公知の乾燥方法が使用できる。
[ラミネート積層体の特性]
本発明のラミネート積層体は、23℃×65%RH条件下における酸素透過度が20ml/m・d・MPa以下となることが、良好なガスバリア性を発現する点で好ましい。さらに、各フィルム上にバリア層を設けることで、好ましくは18ml/m・d・MPa以下、より好ましくは16ml/m・d・MPa以下とすることができる。酸素透過度が20ml/m・d・MPaを超えると、高いガスバリア性が要求される用途に対応することが難しくなる。他方、酸素透過度がいずれも0.5ml/m・d・MPa未満であると、バリア性能には優れるが残留溶剤が袋の外側に透過しにくくなり、相対的に内容物への移行量が増えるおそれがあるので好ましくない。酸素透過度の好ましい下限は、0.5ml/m・d・MPa以上である。
本発明の積層体は、40℃×90%RH条件下における水蒸気透過度がいずれも2.0g/m・d以下であることが、良好なガスバリア性を発現する点で好ましい。さらに各フィルム上にバリア層を設けることで、好ましくは1.8g/m・d以下、より好ましくは1.6g/m・d以下とすることができる。水蒸気透過度が2.0g/m・dを超えると、高いガスバリア性が要求される用途に対応することが難しくなる。他方、水蒸気透過度が0.1g/m未満であると、バリア性能には優れるが残留溶剤が袋の外側に透過しにくくなり、相対的に内容物への移行量が増えるおそれがあるので好ましくない。水蒸気透過度の好ましい下限は、0.1g/m・d以上である。
本発明のラミネート積層体は、JIS Z1707に準じて測定した突き刺し強度が15N以上であることが好ましく、より好ましくは16N以上、さらに好ましくは17N以上である。突き刺し強度が15N未満であると、袋として使用した際に、重量物を入れた状態で外的負荷がかかると穴が開いて、内容物が漏れ出す恐れがある。
本発明のラミネート積層体のヒートシール層同士を温度160℃、シールバー圧力0.2MPa、シール時間2秒でヒートシールした際のヒートシール強度が15N/15mm以上であることが好ましい。ヒートシール強度が15N/15mm未満であると、シール部分が剥離しやすくなるため、内容物量が多い用途には使用できない等、包装袋としての用途が限定されてしまう。ヒートシール強度は16N/15mm以上が好ましく、17N/15mm以上がより好ましい。
本発明のラミネート積層体は、120℃×5分加熱処理時の収縮率が、基材フィルムのMD方向及びTD方向のいずれの方向においても1.8%以下であることが好ましい。収縮率をこの範囲とすることにより、ラミネート積層体をシール加工する際のシール部分の外観が向上する。120℃×5分の加熱収縮率は、好ましくは1.7%以下、より好ましくは1.6%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。前記収縮率が1.8%を超えると、シール加工時に熱によるシワが発生しやすくなるため、シール面の品位が低下する場合がある。
本発明のラミネート積層体は、ポリプロピレン系樹脂を原料とする延伸基材フィルム2枚を貼り合わせることで、ラミネート積層体としての強靭性、ガスバリア性能の向上が期待できる。強靭性においては、一般的に突刺し強度が大きい特性を有するポリプロピレン系延伸フィルムを2枚使用することで、例えば包材として広く用いられているPETおよびナイロンフィルムの異素材2枚使い構成と比較しても遜色のない包材設計が可能となる。また、ガスバリア性においては、2枚の基材フィルムを用いることで、中間に位置するフィルムが外環境の影響、例えば温湿度や外的屈曲等の影響を受けにくくなり、より安定したガスバリア性能を発揮することができる。その意味で、ガスバリア性能を有する被覆層や無期薄膜層は、中間フィルムに積層されていることが特に好ましい。
本発明のラミネート積層体は、突き刺し強度が15N以上であることが好ましい。突刺し強度をこの範囲とすることにより、一般的に用いられるPETおよびナイロンフィルム異素材構成のラミネート積層体と同等の強靭性が得られる。突刺し強度は、好ましくは16N以上、より好ましくは17N以上、さらに好ましくは18N以上である。前記突刺し強度が15N未満であると、袋にした際の強度が足りず、突起部分や屈曲部分においてピンホール等が発生する要因となるおそれがある。
本発明のラミネート積層体におけるモノマテリアル化の評価基準として、各フィルムおよび接着剤の総厚みに対するオレフィン系素材の厚みの比率をモノマテリアル(モノマテ)比率として算出した際、モノマテ比率は85%以上であることが好ましい。より好ましくは87.5%、さらに好ましくは90%である。モノマテ比率をこの範囲とすることにより、リサイクルしやすい包材構成とすることができる。モノマテ比率が85%未満であると、異素材由来の異物等によりリサイクルが困難になるおそれがある。
本発明のラミネート積層体において、各フィルムおよび接着剤の総厚みは50~140μmであることが好ましい。より好ましくは55~135μm、さらに好ましくは60~130μmである。ラミネート積層体の総厚みをこの範囲とすることにより、突刺し強度やバリア性能等の必要な物性を発現できる包装体とすることができる。総厚みが50μm未満であると、袋としての強靭性が足りず、袋が破けたり穴が開いたりするおそれがある。一方、総厚みが140μmを超えると、腰感が強くなり取り扱いがしにくくなる他、包装体としてのコストアップにつながり経済的にも好ましくない。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、各種評価は次の測定法によって行った。
(1)各種フィルムの厚み
JIS K7130-1999 A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
(2)無機薄膜層の組成・膜厚
実施例、比較例で得られた積層フィルム(薄膜積層後)について、蛍光X線分析装置((株)リガク製「ZSX100e」)を用いて、予め作成した検量線により膜厚組成を測定した。なお、励起X線管の条件として50kV、70mAとした。
(3) 被覆層の付着量
各実施例および比較例において、基材フィルム上に無期薄膜層または被覆層を積層した段階で得られた各積層フィルムを試料とし、この試料から100mm×100mmの試験片を切り出し、エタノールによる被覆層の拭き取りを行い、拭き取り前後のフィルムの質量変化から付着量を算出した。
(4) 基材フィルムの150℃×5分加熱収縮率評価
各実施例および比較例において、作成した基材フィルムの測定方向(MD or TD)が長辺となるよう巾20mm、長さ300mmの試験片を作成し、試験片の中央部に200mmの距離を置いて標点をつける。その後、標点間の距離を金尺で少数点第一位まで読取り、加熱前の標点間距離Aを求める。その後、この試験片の端部をクリップで挟み、金属バーにつるした状態で150℃±1℃に温調した加熱オーブン内へ5分投入する。加熱後、取り出した試験片の標点間距離を加熱前同様に金尺で読取り、加熱後の標点間距離Bを求める。求めた各値を元に下記計算式で加熱収縮率を求める。
加熱収縮率(%)=(A-B)/A×100
[ラミネート積層体の作製]
(6) 評価用ラミネート積層体の作製
基材フィルムが1枚の場合、実施例、比較例に記載の基材フィルムにポリウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製TM569/cat10L)を80℃乾燥処理後の厚みが3μmになるよう塗布した後、ヒートシール性樹脂として未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡製P1128;厚み30μm;CPPとする)を60℃に加熱した金属ロール上でドライラミネートし、40℃にて4日間エージングを施すことにより、評価用のラミネート積層体を得た。
一方、基材フィルムが2枚の場合、実施例、比較例に記載の基材フィルムにポリウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製TM569/cat10L)を80℃乾燥処理後の厚みが3μmになるよう塗布した後、もう一枚の基材フィルムを60℃に加熱した金属ロール上でドライラミネートして巻き取りロールとした。本ロールに同様の接着剤を80℃乾燥処理後の厚みが3μmになるよう塗布した後、ヒートシール性樹脂として未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡製P1128;厚み30μm;CPPとする)を60℃に加熱した金属ロール上でドライラミネートし、40℃にて4日間エージングを施すことにより、評価用のラミネート積層体を得た。
(7) ラミネート積層体の酸素透過度の評価方法
上記(6)で作製したラミネート積層体について、JIS-K7126 B法に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX-TRAN(登録商標)2/22」)を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で、酸素透過度を測定した。なお、酸素透過度の測定は、ラミネート積層体の基材フィルム側からヒートシール性樹脂層側に酸素が透過する方向で行った。
(8)ラミネート積層体の水蒸気透過度の評価方法
上記(6)で作成したラミネート積層体について、JIS-K7129 B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W 3/33MG」)を用い、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で、水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、ラミネート積層体のヒートシール性樹脂層側から基材フィルム側に向けて水蒸気が透過する方向で行った。
(9) ラミネート積層体のヒートシール強度の評価方法
上記(6)で作製したラミネート積層体について、JIS Z1707に準拠してヒートシール強度測定を行った。具体的な手順を示す。ヒートシーラーにて、サンプルのヒートシール面同士を接着した。ヒートシール条件は、上バー温度160℃、下バー温度30℃、圧力0.2MPa、時間2秒とした。接着サンプルは、シール幅が15mmとなるように切り出した。剥離強度は、万能引張試験機「DSS-100」(島津製作所製)を用いて引張速度200mm/分で測定した。剥離強度は、15mmあたりの強度(N/15mm)で示した。なお、シール外観の評価としては、シワなくシールできたものを〇、一部にシワが生じたものを△、全面にシワが生じたものを×として相対評価した。
(10) ラミネート積層体の突き刺し強度の評価方法
上記(6)で作製したラミネート積層体を5cm角にサンプリングし、株式会社イマダ製デジタルフォースゲージ「ZTS-500N」、電動計測スタンド「MX2-500N」及び突き刺し治具「TKS-250N」を用いて、JIS Z1707に準じてフィルムの突き刺し強度を測定した。
(11) ラミネート積層体の120℃×5分加熱収縮率の評価方法
上記(6)で作製したラミネート積層体の測定方向(貼り合わせた基材フィルムのMD or TD方向)が長辺となるよう巾20mm、長さ300mmの試験片を作成し、試験片の中央部に200mmの距離を置いて標点をつける。その後、標点間の距離を金尺で少数点第一位まで読取り、加熱前の標点間距離Aを求める。その後、この試験片の端部をクリップで挟み、金属バーにつるした状態で120℃±1℃に温調した加熱オーブン内へ5分投入する。加熱後、取り出した試験片の標点間距離を加熱前同様に金尺で読取り、加熱後の標点間距離Bを求める。求めた各値を元に下記計算式で加熱収縮率を求める。
加熱収縮率(%)=(A-B)/A×100
(12) モノマテリアル化の評価基準:モノマテリアル比率
上記(6)で作製したラミネート積層体について、モノマテリアル化の評価基準として、各フィルムおよび接着剤の総厚みに対するオレフィン系素材の厚みの比率をモノマテリアル(モノマテ)比率として算出した。
(13) 視認・レンジ適性の評価基準
上記(6)で作製したラミネート積層体について、視認・レンジ適性の評価基準として、ラミネート積層体が透明のものを〇とした。
以下に本実施例及び比較例で使用する延伸基材フィルムを記す。なお、実施例1~6、及び比較例1~7で使用し、表1に示した。
[基材フィルムの作製]
下記ポリオレフィン基材フィルム作製で使用したポリプロピレン系樹脂原料の詳細、フィルム製膜条件、原料配合比率を表1~4に示す。
Figure 2023040683000001
Figure 2023040683000002
Figure 2023040683000003
Figure 2023040683000004
(OPP-1)
基材層(A)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を用いた。
また、表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を96.4重量%、表2に示すマスターバッチAを3.6重量%の割合で配合したものを使用した。
表面層(C)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を94.0重量%、表2に示すマスターバッチAを6.0重量%の割合で配合したものを使用した。
基材層(A)は45mm押出機、表面層(B)は25mm押出機、表面層(C)は20mm押出機を用いて、それぞれ原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、30℃の冷却ロールに表面層(B)が接触するよう冷却固化した後、135℃で縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向(TD)両端をクリップで挟み、173℃で予熱後、164℃で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、171℃で熱固定した。このときの製膜条件を製膜条件aとした。本製膜条件の詳細を表3に示す。
こうして、表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の構成の二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)の表面を、ソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取った。得られたフィルムの厚みは20μm(表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の厚みが1.0μm/18.0μm/1.0μm)であった。本構成の詳細を表4に示す。
(OPP-2)
基材層(A)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-2を40.0重量%、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-3を60.0重量%用いた。
また、表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-3を96.4重量%、表2に示すマスターバッチAを3.6重量%の割合で配合したものを使用した。
表面層(C)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-3を94.0重量%、表2に示すマスターバッチAを6.0重量%の割合で配合したものを使用した。
基材層(A)は45mm押出機、表面層(B)は25mm押出機、表面層(C)は20mm押出機を用いて、それぞれ原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、30℃の冷却ロールに表面層(B)が接触するよう冷却固化した後、125℃で縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向(TD)両端をクリップで挟み、168℃で予熱後、155℃で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、165℃で熱固定した。このときの製膜条件を製膜条件bとした。本製膜条件の詳細を表3に示す。
こうして、表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の構成の二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)の表面を、ソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取った。得られたフィルムの厚みは20μm(表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の厚みが1.0μm/18.0μm/1.0μm)であった。本構成の詳細を表4に示す。
以下に本実施例及び比較例で使用する被覆層形成用の塗工液の詳細を記す。なお、実施例1~6、及び比較例1~7で使用し、表5に示した。
[ポリビニルアルコール樹脂(A)]
精製水90質量部に、完全けん化ポリビニルアルコール樹脂(日本合成化学社製、商品名:GポリマーOKS8049Q、(けん化度99.0%以上、平均重合度450)、10質量部を加え、攪拌しながら80℃に加温し、その後約1時間攪拌させた。その後、常温になるまで冷却し、これにより固形分10%のほぼ透明なポリビニルアルコール溶液(PVA溶液)を得た。
[無機層状化合物分散液(B)]
無機層状化合物であるモンモリロナイト(商品名:クニピアF、クニミネ工業社製)5質量部を精製水95質量部中に攪拌しながら添加しホモジナイザーにて1500rpmの設定にて充分に分散した。その後、23℃にて1日間保温し固形分5%の無機層状化合物分散液を得た。
[被覆層に用いる塗工液1]
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(被覆層用樹脂組成物)を作成した。
イオン交換水 15.00質量%
イソプロピルアルコール 15.00質量%
ポリビニルアルコール樹脂(A) 30.00質量%
無機層状化合物分散液(B) 40.00質量%
[被覆層に用いる塗工液2]
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(被覆層用樹脂組成物)を作成した。
イオン交換水 15.00質量%
イソプロピルアルコール 15.00質量%
ポリビニルアルコール樹脂(A) 70.00質量%
[被覆層に用いる塗工液3]
下記の材料を下記に示す質量比で混合し、30分以上攪拌して溶解させた。次いで、公称ろ過精度が50μmのフィルターを用いて未溶解物を除去して、塗布液(被覆層用樹脂組成物)を作成した。
イオン交換水 37.50質量%
ポリ塩化ビニリデン樹脂(C) 62.50質量%
(旭化成ケミカルズ製サランラテックスL557、固形分比率48%)
(フィルムへの塗工液のコート(被覆層の積層))
上記調製した塗工液をグラビアロールコート法によって、基材フィルムのコロナ処理面上または後述の無機薄膜フィルムの無期薄膜層上に塗布し、90℃×4秒で予備乾燥した後、120℃×4秒で本乾燥させ、被覆層を得た。その後、40℃2日間の後加熱処理を施した。以上のようにして、被覆層を備えた積層フィルムを作製した。
以下に各実施例及び比較例で使用する無機薄膜層(A)の作製方法を記す。なお、実施例1~6、及び比較例1~7で使用し、表5に示した。
(無機薄膜層A-1の形成)
無機薄膜層A-1として、基材フィルム層上に酸化アルミニウムの蒸着を行った。基材フィルム層への酸化アルミニウムを蒸着する方法は、フィルムを連続式真空蒸着機の巻出し側にセットし、冷却金属ドラムを介して走行させフィルムを巻き取る。この時、連続式真空蒸着機を10-4Torr以下に減圧し、冷却ドラムの下部よりアルミナ製るつぼに純度99.99%の金属アルミニウムを装填し、金属アルミニウムを加熱蒸発させ、その蒸気中に酸素を供給し酸化反応させながらフィルム上に付着堆積させ、厚さ10nmの酸化アルミニウム膜を形成した。
(無機薄膜層A-2の形成)
無機薄膜層A-2として、基材フィルム層上に、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm~5mm程度の粒子状SiO2(純度99.9%)とA12O3(純度99.9%)とを用いた。このようにして得られたフィルム(無機薄膜層/被覆層含有フィルム)における無機薄膜層(SiO2/A12O3複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。またこの複合酸化物層の組成は、SiO/A1(質量比)=60/40であった。
以上のようにして、各フィルムの上に被覆層または無機薄膜層を備えたフィルム積層体を作製した。
各実施例、比較例では、各フィルム積層体を使用して、前述の接着剤を用いたドライラミネート法にて貼り合わせて表5に記載の構成のラミネート積層体とした。なお、比較例として基材フィルムに透明蒸着ポリエステルフィルム(東洋紡製VE100―12μm;蒸着PETとする)、二軸延伸ポリアミドフィルム(東洋紡製N1100―15μm;NYとする)を用いた。またヒートシール性樹脂層にアルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム(東レ加工製2703―25μm;VM‐CPPとする)を用いた。作製したラミネート積層体の構成は表5に示す。また、得られたラミネート積層体について、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
Figure 2023040683000005
Figure 2023040683000006
本発明により、要求される性能に合わせた所定のコート層をポリプロピレン系延伸基材フィルム上に積層した積層フィルムとすることでガスバリア性能を大きく向上させ、さらに前記積層フィルムを2枚貼り合わせることで強靭性や耐熱性を確保でき、最終的にはオレフィン系成分からなるシーラントをラミネートすることで、高いシール性を保持したままモノマテリアル化を実現した。しかも、本発明の積層フィルムは加工工程が少なくかつ容易に製造できるので、経済性と生産安定性の両方に優れており、均質な特性のガスバリア性ラミネート積層体を提供することができる。

Claims (5)

  1. ポリプロピレン系樹脂を原料とする延伸基材フィルム2枚とヒートシール性樹脂層1枚が接着剤を介してラミネートされてなるラミネート積層体であって、前記基材フィルムの少なくとも1枚は片面にポリビニルアルコール系共重合体および無機層状化合物を有する被覆層または無機薄膜層を有する積層フィルムであって、前記ヒートシール性樹脂層はポリプロピレンまたはポリエチレン樹脂を主たる構成成分とするオレフィン系樹脂からなり、前記ラミネート積層体が下記(a)~(d)の要件を満足することを特徴とするラミネート積層体。
    (a) 前記ラミネート積層体の突き刺し強度が15N以上であること。
    (b) 前記ラミネート積層体の23℃×65%RH環境下における酸素透過度が20ml/m・d・MPa以下かつ40℃×90%RH環境下における水蒸気透過度が2.0g/m・d以下であること。
    (c) 前記ラミネート積層体のヒートシール層同士を160℃、0.2MPa、2秒間でヒートシールしたときのシール強度が15N/15mm以上であること。
    (d) 前記ラミネート積層体の120℃×5分加熱処理時の収縮率が、前記基材フィルムの 1.8%以下であること。
  2. 前記被覆層の無機層状化合物がモンモリロナイト系化合物を構成成分として含有することを特徴とする、請求項1に記載のラミネート積層体。
  3. 前記被覆層の付着量が0.10g/m以上0.50g/m以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のラミネート積層体。
  4. 前記無機薄膜層が酸化アルミニウム、または酸化ケイ素、または酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物からなる層であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のラミネート積層体。
  5. 前記基材フィルムの少なくとも1枚は150℃×5分の加熱収縮率がMD方向、TD方向いずれも10%以下である基材フィルムであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のラミネート積層体。
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