JP2023039002A - 防虫ネット - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた害虫忌避性と害虫忌避効果の持続性を有し、さらには目合いが一定で目ずれが起らず、ハウスなど農業施設内への害虫侵入が抑制され、通気性が良好な防虫ネットを提供する。【解決手段】 繊維の異形度が最適化され、かつ、防虫剤が混錬された熱接着性異形繊維を用いて目合いを特定の範囲に設定して編織した防虫ネットとすることにより、前記課題を解決することを見出した。【選択図】なし

Description

本発明は、防虫ネットに関する。更に詳しくは、優れた害虫忌避性を有する防虫ネットに関する。
農業生産において、害虫から農作物を守ることは昔から現在に至るまで続いている課題の一つである。この虫害対策には、農薬や天敵等による殺虫、被覆資材による害虫侵入防止、忌避効果による害虫の排除、誘因効果の利用による駆除などが挙げられるが、中でも農薬の普及は農作物の虫害を激減させ、これにより収穫量は大幅に増大した。その反面、農業従事者には薬傷、消費者には残留農薬害、環境には生態系の破壊といった問題を引き起こした。このため、人体や環境に対して負荷が少ない、あるいは無害な薬剤の開発が進められてきた。しかし、これら農薬など薬剤を使用する場合には、散布や燻蒸などの作業が必要であり、これら作業は農業生産者にとって大きな負担となっている。また現在は無害といわれている薬剤でも、長期的な影響については解明されていない。
さらに健康に対する意識が高まり、無農薬または低農薬の有機栽培農作物を求める消費者の動きなどもあって、従来の殺虫タイプの農薬だけに頼らない虫害対策が求められている。この農薬を使わない虫害対策の一つに、被覆資材を用いる方法を挙げることができる。これらの被覆資材はハウスやトンネルなどを用いるいわゆる施設園芸に用いられるもので、被覆することによりハウスやトンネルなどへの害虫の侵入を防止する。これら被覆資材として、農業用フィルム、寒冷紗、ネットおよび不織布などが広く用いられている。
これらのうち、農業用フィルムは本来保温や雨除けが主目的の被覆資材で通気性がなく、害虫の活動が活発な高温時期には施設内が蒸れるため換気が必要で、被覆が開放される結果、害虫が侵入してしまうことがある。よって、寒冷時期を除いては、単独で虫害対策に使用することは好ましくない。寒冷紗や不織布は遮光や保温が目的の被覆資材であり、強度不足で破れやすく、破れた隙間から害虫が侵入して農作物に被害を与えることがあるため、やはり虫害対策に使用するのは好ましくない。ネットは、通気性がよいため強度の優れた繊維を用いたものは虫害防止のための被覆資材として好ましく、とくに熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントを編織したネットが防虫ネットとして用いられている。
防虫ネットの性能は、基本的に防虫ネットを構成する繊維が作り出す隙間の大きさにより決まる。この隙間の大きさは、通常、隣接する繊維間の距離である“目合い”を以って表わす。
従来の防虫ネットの場合、この目合いは固定されていないものが多く、風雨や取扱いの過程で繊維が動き、この目合いが変化する“目ずれ”が発生するため、目合いが広がったところから害虫が侵入することが多々あった。その後、防虫ネットの目ずれを防止し目合いを一定に保つ方法として、ネットを構成する繊維の交点を熱接着する方法が開発されたが、目合いだけで害虫の侵入を完全に防止するのは困難であった。
この様な害虫の侵入を防ぐ目的で、防虫剤を含有した繊維を使用することが広く行われている。例えば、芯鞘構造を有し、鞘部を構成する樹脂の結晶化度が、芯部を構成する樹脂の結晶化度以下である防虫繊維であり、芯部に防虫剤が練りこまれた防虫繊維が開示されている。なお、円形、扁平、三角、中空、星型等の異型形状の防虫繊維を用いること、耐摩耗性、姿勢安定性、平滑性の観点から円形が好ましいことが示されているが、防虫剤の効果におよぼす繊維の形状や異形度の影響については何ら示唆されたものではなかった。(特許文献1)
さらに、防虫剤であるエトフェンプロックスが練り込まれている農業用防虫ネットにおいて、アザミウマまたはコナジラミ用であり、目合いが0.4mm以上0.8mm以下であり、エトフェンプロックスが練り込まれたモノフィラメントからなる織物である農業用防虫ネットが提案されている。(特許文献2)
あるいは、マルチフィラメントを構成する単繊維が芯部とその外側に形成された鞘部とを有する芯鞘複合型マルチフィラメントであり、芯部に防虫剤であるピレスロイド系化合物を含有し、ピレスロイド系化合物の含有量が、芯鞘複合型マルチフィラメント100質量%に対し0.1~3質量%であり、単繊維繊度が1~7dtexである芯鞘複合型マルチフィラメントが提案されている。(特許文献3)
これらの防虫ネットは単に防虫剤を含有した繊維を用いたものであり、害虫忌避性の点で不十分なものであった。
一方、繊維自体の形状をコントロールするものとして、糸条を構成する熱接着性繊維を異形繊維とすることにより、防虫ネット自身が様々な光条・光芒の反射光を発生させて害虫忌避性を示すという効果を利用した防虫ネットが開示されている。(特許文献4)
しかしながら、当該技術は防虫剤の導入については想定されていないし、防虫剤の効果におよぼす繊維の形状や異形度の影響については何ら示唆されたものではなく、害虫忌避性の点でも不十分なものであった。
国際公開第2016/143809号 国際公開第2019/139161号 特開2020-63537号公報 特開2000-217497号公報
本発明は、優れた害虫忌避性、および害虫忌避効果の持続性を有し、さらには目合いが一定で目ずれが起らず、ハウスなど農業施設内への害虫侵入が抑制され、通気性が良好な防虫ネットを提供することを課題とする。
本発明者は、前記従来技術の課題を解決するために鋭意研究の結果、防虫ネットを構成する繊維として、異形度の値が害虫忌避性の観点から最適化された異形繊維とすると共に、該異形繊維として防虫剤が練りこまれている熱接着性繊維を用いること、および該熱接着性繊維を使用して防虫ネットの目合いを特定の範囲に設定し編織することにより、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
[1] 繊維同士の交点が熱接着されてなる防虫ネットであって、前記防虫ネットを構成する繊維は、異形度が1.10~2.20の範囲であり、かつ繊維中に防虫剤が混錬された熱接着性異形繊維であり、前記防虫ネットの目合いは0.8~3.0mmの範囲である防虫ネット。
[2] 前記熱接着性異形繊維の繊度が、100~5000dtexの範囲である[1]に記載の防虫ネット。
[3] 前記熱接着性異形繊維が鞘芯型構造を有し、鞘部の体積V2に対する芯部の体積V1の比(V1/V2)が50/50~90/10の範囲である、[1]または[2]に記載の防虫ネット。
[4] 前記防虫剤が、ピレスロイド系化合物である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の防虫ネット。
[5] 前記防虫剤が、マイクロカプセル化した防虫剤である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の防虫ネット。
[6] 前記熱接着性異形繊維の割合が、全繊維量の20質量%以上である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の防虫ネット。
本発明の防虫ネットを構成する繊維を、異形度が1.10~2.20の範囲であり、かつ、防虫剤が混練されている熱接着性異形繊維とすることにより、繊維内部からの防虫剤が滲み出てくる現象(ブリードアウト)および繊維表面からの防虫剤の拡散を適度にコントロールすることが可能となる。本発明の防虫ネットは、前記熱接着性異形繊維を用いて目合いが0.8~3.0mmの編織物とすることにより、優れた害虫忌避性と害虫忌避効果の持続性を発現する。前記熱接着性繊維の交点を熱接着することにより、目ずれが起き難く、風などで吹き付けられた害虫の侵入防止効果の高い防虫ネットを提供することができる。
異形度の求め方を説明するための概念図である。 害虫忌避率の試験に用いた装置の概念図である。 熱接着性異形繊維1のマイクロスコープ画像である。 熱接着性異形繊維2のマイクロスコープ画像である。 熱接着性繊維3のマイクロスコープ画像である。 熱接着性繊維4のマイクロスコープ画像である。
以下に、本発明の実施の形態を説明する。本発明の防虫ネットを構成する繊維は、異形度が1.10~2.20の範囲であり、かつ、防虫剤が混錬されている熱接着性異形繊維である。本発明の防虫ネットは、前記熱接着性異形繊維を用いて目合いが0.8~3.0mmの範囲の編織物に形成し、熱処理を行い繊維の交点が接着されたものである。前記熱接着性異形繊維は、繊度が100~5000dtexの範囲であり、鞘部の体積V2に対する芯部の体積V1の比(V1/V2)が50/50~90/10の範囲の鞘芯型構造を有する。
また、本発明の防虫ネットは、防虫剤としてピレスロイド系化合物、あるいはマイクロカプセル化した防虫剤を使用することができる。さらに、防虫ネットを構成する全繊維量の少なくとも20%を前記熱接着性異形繊維とすることができる。
本発明の防虫ネットにおいて、防虫ネットを構成する熱接着性異形繊維は、異形度が1.10~2.20の範囲であり、好ましくは異形度が1.15~1.50の範囲である。
繊維の異形度とは、断面周長を、その断面積と同面積をもつ円の周長で除した値である。異形度を1.10以上とすることで、繊維の断面は円から異形化が進み、繊維の表面積が大きくなることから、練りこまれている防虫剤の効果が大きくなる。さらに反射光によるキラキラ感が強くなり、これらの相乗効果も相まって、十分な害虫忌避性が期待できる。また、異形度を2.20以下とすることで、突起部位の長さが大きくなりすぎず、繊維強度の低下を防止することができる。さらに、ネットの編織性が著しく低下することもない。
異形の形状には、特に規定はなく、例えば星型、H字型、M字型、N字型、V字型、W字型、X字型、Y字型や*(アスタリスク)字型など種々の形状、あるいは楕円、扁平、三角、中空のものが使用できるが、紡糸安定性、防虫剤の効果および反射光によるキラキラ感の効果を考慮すると、星型、H字型、X字型、Y字型や*(アスタリスク)字型が好ましい。さらに、繊維は中空部を有していてもよいし、海島型等の複合繊維としてもよい。繊維が中空部を有するとき、繊維を多層構造とすることができる。
本発明の防虫ネットにおいて、防虫ネットを構成する繊維は、繊度が100~5000dtexの範囲であり、好ましくは150~2800dtexの範囲である。相対的に繊維が細繊度であるほど、防虫ネットを構成する繊維の本数を増やすことが可能となり、その場合総繊維の表面積が大きくなるため防虫性能が向上する。繊度が100dtex以上であると、防虫ネットの強度が低下してネットが破れる恐れがない。繊度が5000dtex以下であると、前記防虫ネットの重量が大きくなり過ぎず、運搬が容易であり、展張部位に高荷重がかかりすぎることを防げることから、ハウスなどの設備を損傷する恐れが低くなる。
本発明の防虫ネットを構成する熱接着性異形繊維には、単一成分樹脂からなるレギュラーモノフィラメント、複数の樹脂からなる複合モノフィラメント、さらには単一成分樹脂もしくは複数の樹脂からなるマルチフィラメントを用いることができる。特に、繊維を熱接着する場合に十分な接着強度を有する交点とするためには、熱接着性の複合モノフィラメントが好ましく用いられる。
本発明の熱接着性異形繊維は、少なくとも融点差が10℃以上ある低融点樹脂と高融点樹脂とからなり、繊維表面の少なくとも一部が連続する低融点樹脂により形成された二種以上の樹脂からなる熱接着性繊維であることが好ましい。熱接着性異形繊維の構造は、たとえば鞘芯型、並列型、海島型などのいずれも使用できるが、異形という特殊な形状を踏まえれば、鞘芯型・並列型の構造が好ましく用いられる。中でも鞘芯型構造の熱接着性異形繊維は熱接着性が良好で一定しており好ましい。この場合、異形化する部位は鞘部のみである必要はなく、鞘芯ともに異形化されても構わない。
前記鞘芯型構造の鞘部の体積V2に対する芯部の体積V1の比(V1/V2)は50/50~90/10の範囲が好ましく、55/45~80/20の範囲がより好ましく、60/40~75/25の範囲がさらに好ましい。
前記比(V1/V2)が50/50以上であると、十分な防虫性能を発揮するのに適した値となりやすくなる。前記比(V1/V2)が90/10以下であると、防虫性能の速効性がさらに優れる。
前記熱接着性異形繊維を構成する低融点樹脂および高融点樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、プロピレン共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂を例示することができるが、とくに好ましくはポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂である。
前記低融点樹脂および高融点樹脂の組合せの例としては、低融点樹脂/高融点樹脂で表わす場合、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、プロピレンと他のαオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン、各種のポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、プロピレンと他のαオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ポリエチレンテレフタレート、低融点熱可塑性ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、各種のポリエチレン/ナイロン6、ポリプロピレン/ナイロン6、プロピレンと他のαオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ナイロン6、ナイロン6/ナイロン66、ナイロン6/熱可塑性ポリエステルなどを挙げることができる。
これらの中ではポリオレフィン同士もしくはポリオレフィンとポリエステルからなる組合せが好ましく、その具体例としては高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、エチレン・プロピレン・ブテン-1三元共重合体/ポリプロピレン、エチレン・プロピレン二元共重合体/ポリプロピレン、エチレン・プロピレン・ブテン-1三元共重合体/ポリエチレンテレフタレート、あるいは高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートなどを挙げることができる。さらに、これらの中ではポリオレフィン同士、例えば高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、エチレン・プロピレン・ブテン-1三元共重合体/ポリプロピレン、エチレン・プロピレン二元共重合体/ポリプロピレンなどが耐薬品性の面から特に好ましい。
前記の低融点樹脂と高融点樹脂の二成分の樹脂の組合せにおいては、効果的な反射光によるキラキラ感を強調し優れた害虫忌避効果を得るために、二成分の樹脂は屈折率の差の大きいものを選ぶのが望ましい。前記の熱接着性異形繊維には、本発明の効果を妨げない範囲において、安定剤、難燃剤、抗菌剤などが添加されていてもよい。また、着色剤が添加されていても良い。着色剤の添加により、遮光率や保温性をコントロールできる他、虫や鳥などの忌避性を補強する効果が期待できる。
本発明の防虫ネットにおいて、防虫ネットを構成する熱接着性異形繊維は、忌避性を向上させるために、防虫剤が添加され、混錬されている。特に、鞘芯型構造の熱接着性異形繊維を用いた場合は、鞘部のみ、あるいは芯部のみに防虫剤を含有していても良いし、鞘芯ともに含有していても構わない。
本発明の防虫ネットにおいて、熱接着性異形繊維に添加してもよい防虫剤は、忌避を目的とした防虫剤の他に、例えば殺虫剤、殺鼠剤、殺菌剤、殺カタツムリ剤(ムロシサイド)、殺幼虫剤および殺卵剤のような、害虫生物の生存や繁殖を妨げる効果を持つ薬剤も含まれる。本発明においては、昆虫を早期に麻痺又は殺傷する作用を有し、そして哺乳類の毒性度の極めて低い防虫剤を使用することが好ましい。これらの薬剤は、単独で用いてもよく、同じ薬効を期待できる薬剤を複数組み合わせて用いてもよい。また、用途に応じて、薬効の異なる薬剤を任意に組み合わせて用いてもよい。さらに、忌避効果を高める為に、公知の添加剤を追加して用いることも可能である。
本発明で用いることのできる防虫剤は、既知のものが広く使用できるが、好ましくは、ピレスロイド系化合物である。ピレスロイド系化合物としては、例えば、アクリナトリン(acrinathrin)、アレスリン(allethrin)、d-アレスリン、dd-アレスリン、ビフェントリン(bifenthrin)、シクロプロトリン(cycloprothrin)、シフルトリン(cyfluthrin)、ベータシフルトリン(beta-cyfluthrin)、シハロトリン(cyhalothrin)、ガンマシハロトリン(gamma-cyhalothrin)、ラムダシハロトリン(lambda-cyhalothrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、アルファシペルメトリン(alpha-cypermethrin)、シータサイパーメトリン(theta-cypermethrin)、ゼータシペルメトリン(zeta-cypermethrin)、シフェノトリン(cyphenothrin)、デルタメトリン(deltamethrin)、ジメフルトリン(dimefluthrin)、エンペントリン(empenthrin)、エスフェンバレレート(esfenvalerate)、エトフェンプロックス(etofenprox)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、フルシトリネート(flucythrinate)、フルフェンプロックス(flufenprox)、フルメトリン(flumethrin)、フルバリネート(fluvalinate)、フラメトリン(furamethrin)、ハルフェンプロックス(halfenprox)、イミプロトリン(imiprothrin)、メトフルトリン(metofluthrin)、ペルメトリン(permethrin)、フェノトリン(phenothrin)、d-フェノトリン、プラレトリン(prallethrin)、プロフルトリン(profluthrin)、ピレトリン(pyrethrins)、レスメトリン(resmethrin)、d-レスメトリン、シラフルオフェン(silafluofen)、タウフルバリネート(tau-fluvalinate)、テフルトリン(tefluthrin)、テラレスリン(terallethrin)、テトラメトリン(tetramethrin)、d-テトラメトリン、トラロメトリン(tralomethrin)、トランスフルトリン(transfluthrin)、天然ピレトリン等が挙げられる。本発明で特に好ましく用いることのできるピレスロイド系化合物としては、ペルメトリン、エスフェンバレレート、デルタメトリン、アルファシペルメトリン、ラムダシハロトリン、ビフェントリン及びエトフェンプロックスからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
本発明の防虫ネットに使用される熱接着性異形繊維において、防虫剤の含有量は熱接着性異形繊維100質量%に対し0.1~5.0質量%であることが好ましい。より好ましくは、熱接着性異形繊維100質量%に対し0.2~4.0質量%であり、特に好ましくは0.3~3.0質量%である。
防虫剤の含有量が熱接着性異形繊維100質量%に対し0.1質量%以上であることにより、優れた忌避性能が得られるとともに、防虫性能の持続性が優れる傾向にある。防虫剤の含有量が熱接着性異形繊維100質量%に対し5.0質量%以下であることにより、安定した紡糸性で熱接着性異形繊維を得ることができる。
繊維に防虫性能が付与された防虫繊維として、例えば、繊維を製造した後に防虫剤を繊維の表面に付着させたものなど種々提案されているが、付着量が風雨や洗濯等によって減少してしまい、防虫性能の持続性を制御することは困難であった。これに対して、本発明の熱接着性異形繊維は、防虫剤が繊維内部にも分布しているため、防虫剤の種類や含有量を調整することで防虫性能の持続性を容易に制御可能である。さらに、本発明においては、特定の異形度を有する異形繊維を用いることにより繊維の表面積を適正化すること、あるいは鞘部と芯部で物理特性の異なる鞘芯型構造の熱接着性異形繊維を用いることにより、繊維内部からの防虫剤のブリードアウトおよび繊維表面からの防虫剤の拡散をコントロールして、持続性のある害虫忌避性を発現可能である。
本発明の防虫ネットに使用される熱接着性異形繊維は、溶融紡糸により製造できる。例えば、鞘芯型構造の熱接着性異形繊維を用いた場合は、紡糸段階において、芯部の原料となる樹脂と防虫剤とを溶融混錬することで、芯部に所定量の防虫剤を含有させることができる。あるいは溶融混錬の際に、芯部の原料となる樹脂に防虫剤を練り込んでもよい。芯部に防虫剤を練り込むことで、経時的な忌避性能の低減を抑制することができる。その結果、繊維の製造後に防虫剤を繊維の表面に付着させる方法よりも、防虫性能の耐久性および持続性を付与できる。
溶融混錬する防虫剤として、例えば、マイクロカプセル化した防虫剤を用いることができる。マイクロカプセル化した防虫剤とは、防虫剤がマイクロカプセル内に充填されたものである。特に液状化合物の防虫剤を用いることで、防虫剤を安定した状態で高濃度添加することが可能となるとともに、熱接着性異形繊維の内部における防虫剤の拡散速度を調整しやすくなる。しかしながら、液状化合物の防虫剤を用いた場合には、防虫剤が熱接着性異形繊維の外面付近に著しくブリードアウトすることがある。このため、繊維間でタック性(粘着性)が発生して製織し難くなったり、紡糸時に防虫剤が揮発してしまい、必要量以上の防虫剤が必要となったりしてしまう。このような場合、マイクロカプセル化した防虫剤を用いれば、溶融紡糸のときに、液状化合物としての防虫剤をマイクロカプセル内に留めて、外面付近に移行することを抑制できるため、著しいブリードアウトを抑止しやすくできる。これにより、タック性を発生し難くできるとともに、必要量以上の防虫剤が用いられることを抑制できる。
また、本発明の防虫ネットに用いられる熱接着性異形繊維は、防虫効果とは異なる任意の機能を付与するための成分を機能性材料として含んでもよい。該機能性材料としては、艶消剤としての二酸化チタン、滑剤としてのステアリン酸カルシウムや、シリカやアルミナなどの微粒子、抗酸化剤としてヒンダートフェノール誘導体、さらには顔料などの着色剤、安定剤、分散剤等の添加材料の他、紫外線遮蔽剤、近赤外線遮蔽剤、抗菌剤、防黴剤、帯電防止剤、難燃剤、耐候剤および各種触媒などが挙げられる。なお、この機能性材料は、防虫剤とともに熱接着性異形繊維内に分散して存在したり、あるいは表面に付着したりしていればよい。
本発明の防虫ネットに用いられる熱接着性異形繊維は、防虫ネットの経糸・緯糸のどちらか、もしくは両方に用いることができる。例えば、防虫ネットの緯糸に本発明の熱接着性異形繊維を用い、経糸に熱接着性異形繊維以外の高強度の繊維を用いることで、害虫忌避性と防虫ネットの強度を両立することができる。あるいは、経糸・緯糸ともに、本発明の熱接着性異形繊維とその他の高強度の繊維を任意のパターンで配列させて編織してもよい。
また、本発明の熱接着性異形繊維は、異なる異形断面をもつもの同士を経糸・緯糸のどちらか、もしくは両方に用いても良く、さらに異形度の異なるものをネットの経糸・緯糸のどちらか、もしくは両方に組み合わせて用いることも可能である。
本発明の防虫ネットにおいて熱接着性異形繊維は、防虫剤の効果や反射光の低下を防ぎ、十分な害虫忌避性を得る為に、熱接着性異形繊維の割合を20%以上とすることが好ましい。より好ましくは50%以上である。ここで言う「熱接着性異形繊維の割合」とは、本発明の防虫ネットを構成する全繊維における、熱接着性異形繊維の割合(質量%)を示したものである。
本発明の防虫ネットにおいて、目合いは0.8~3.0mmの範囲であり、より好ましくは0.8~1.0mmの範囲である。目合いを0.8mm以上とすることで、良好な通気性と適度な室温が維持でき、作物の良好な生育や収量増加が期待できる。目合いを3mm以下とすることで、害虫が侵入し難くなる。
本発明の防虫ネットは多数の網目から形成されたものである。網目の形状は、好ましくは正方形、長方形、六角形または八角形等の多角形であり、特に好ましくは正方形または長方形である。
本発明の防虫ネットの目合いとは、網目が作り出す隙間の大きさを意味する。網目の形状が正方形の場合は一辺の長さで表され、長方形の場合は長辺の長さで表され、六角形または八角形の場合は対角線の長さで表される。
本発明の防虫ネットのうち、熱接着性異形繊維の交点が熱接着された防虫ネットは、前記の熱接着性異形繊維をネット状に編織し、編織と同時に、もしくは編織後に、得られた編織物を熱接着性異形繊維の交点が融着する温度以上に加熱することにより、得ることができる。本発明の防虫ネットは、前記の編織において、織りパターンなどが限定されることはない。すなわち、経糸や緯糸に用いられる熱接着性異形繊維の配列、単位長さ当りの本数などは、任意に設定できる。織り構造としては、平織り、綾織り、朱子織り、絡み織り、ラッセル織りなどが挙げられるが、編織性、目合いの調節しやすさ、防虫性などを考慮した場合、平織りが好ましい。熱接着性異形繊維の打ち込み本数は、本発明の防虫ネットが利用される作物の種類、害虫の種類と大きさなどにより適宜決定される。
前記の編織物の交点を加熱し熱接着させるための装置としては、熱風型加熱機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機、高圧蒸気加熱機、超音波型加熱機、熱ロール型加熱機、熱圧着ロール型加熱機などを挙げることができ、これらは単独でも複数組み合わせて使用してもよい。とりわけ、熱風型加熱機と熱ロール型加熱機、または熱風型加熱機と熱圧着ロール型加熱機を組み合わせた装置を使用すると、交点の接着強度の高い防虫ネットを得ることができる。
本発明の防虫ネットの使用方法に特に制限はなく、例えば、支柱を用いて農業用防虫ネットにより作物を被覆するトンネル張りや平張り、ビニールハウスの側面に農業用防虫ネットを張るハウスサイド張り、ビニールハウスの外面全体を農業用防虫ネットで覆う全面張り、支柱等を用いずに作物を被覆するベタがけ等の方法で使用してよい。本発明の効果が最大限に発揮されるという観点から、ハウスサイド張りが好ましい。
本発明の防虫ネットは、害虫に寄生される可能性がある作物の栽培に使用できる。ここで害虫とは、人、家畜、ペット、農産物に被害をもたらす虫のことをいう。害虫としては、加害の対象により、衛生害虫、農業害虫、食品害虫等に分類される。例えば農業害虫としては、カイガラムシ、アリ、アザミウマ、コナジラミ、トコジラミ及びゾウムシ等が挙げられる。本発明の防虫ネットは、農業害虫に対して好適に用いられるが、特に支障のない限り、衛生害虫や食品害虫等に分類される害虫に対しても忌避や防除の効果が期待できる。
害虫は昆虫だけではなく、ダニ類、クモ類も含む。例えば、双翅目(Diptera)、ゴキブリ目(Blattaria)、ハサミムシ目(Dermaptera)、半翅目(Hemiptera)、膜翅目(Hymenoptera)、直翅目(Orthoptera)、シロアリ目(Isoptera)、真正クモ目(Araneida)、鱗翅目(Lepidoptera)、鞘翅目(Coleoptera)、アザミウマ目(Thysanoptera)、ダニ目(Acarina)、ムカデ網(Chilopoda)及びヤスデ網(Diplopoda)が挙げられる。
本発明の防虫ネットは、特に、カイガラムシ(coccoids)、アリ、アザミウマ(thrips)、コナジラミ、トコジラミ及びゾウムシ(weevil)による被害軽減に好適に寄与する。
カイガラムシは、カイガラムシ上科(Coccoidea)に属する昆虫であり、シュロマルカイガラムシ(Abgrallaspis cyanophylli)、アカマルカイガラムシ(Aonidiella aurantii)、アカマルカイガラモドキ(Aonidiella inornata)、オスベッキーマルカイガラムシ(Aonidiella orientalis)、ウスイロマルカイガラムシ(Aspidiotus destructor)、アカホシマルカイガラムシ(Chrysomphalus aonidum)、オンシツマルカイガラムシ(Chrysomphalus dictyospermi)、ランシロカイガラムシ(Diaspis boisduvalii)、ヤシシロマルカイガラムシ(Hemiberlesia lataniae)等、クロイトカイガラムシ(Ischnaspis longirostris)、タコノキナガカイガラムシ(Pinnaspis buxi)、アオキシロカイガラムシ(Pseudaulacaspis cockerelli)、パパイヤシロナガカイガラムシ(Pseudaulacaspis papayae)等のマルカイガラムシ科のカイガラムシ、ヒラタカタカイガラムシ(Coccus hesperidum)、ミドリカタカイガラムシ(Coccus viridis)、カメノコウカタカイガラムシ(Eucalymnatus tessellatus)、ハンエンカタカイガラムシ(Saissetia coffeae)等のカタカイガラムシ科のカイガラムシ、エジプトワタフキカイガラムシ(Icerya aegyptiaca)等のワタフキカイガラムシ科のカイガラムシ、Steatococcus samaraius、パイナップルコナカイガラムシ(Dysmicoccus brevipes)、バナナコナカイガラムシ(Dysmicoccus neobrevipes)、フタスジコナカイガラムシ(Ferrisia virgata)、Nipaecoccus nipae、ミカンコナカイガラムシ(Planococcus citri)、Planococcus minor、バナナオナガコナカイガラムシ(Pseudococcus elisae)、ビーズレイコナカイガラムシ(Pseudococcus jackbeardsleyi)、Pseudococcus orchidicola等のコナカイガラムシ科のカイガラムシ等が挙げられる。
アリは、アリ科(Formicidae)に属する昆虫であり、シロナガキアリ(Anoplolepis gracilipes)、Brachymyrmex obscurior、オーストラリアオオアリ(Camponotus consobrinus)、Camponotus pennsylvanicus、Camponotus variegatus、トビイロケアリ(Lasius niger)、Nylanderia vaga、Nylanderia bourbonica、オーストラリアツムギアリ(Oecophylla smaragdina)、ヒゲナガアメイロアリ(Paratrechina longicornis)、ウスヒメキアリ(Plagiolepis alluaudi)、Solenopsis属のアリ等が挙げられる。
アザミウマはアザミウマ目に属する昆虫であり、Chaetanaphothrips signipennis、Chaetanaphothrips clarus、ランノオビアザミウマ(Chaetanaphothrips orchidii)、Hercinothrips bicinctus、クリバネアザミウマ(Hercinothirps femoralis)、Thrips florum、ハナアザミウマ(Thrips hawaiiensis)、Frankliniella parvula 、Elixothrips brevisetis等が挙げられる。
コナジラミはカメムシ目に属する昆虫であり、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)、ミカンコナジラミ(Dialeurodes citri)、ミカントゲコナジラミ(Aleurocanthus spiniferus)、ヒメコナジラミ等が挙げられる。
トコジラミはカメムシ目に属する昆虫であり、トコジラミ(Cimex hemipterus)、ネッタイトコジラミ等が挙げられる。
ゾウムシはゾウムシ上科(Curculionoidea)に属する昆虫であり、バショウオサゾウムシ(Cosmopolites sordidus)、バナナツヤオサゾウムシ(Odoiporus longicollis)、バショウコクゾウムシ(Polytus mellerborgi)等が挙げられる。
本発明の防虫ネットは、特にアザミウマおよびコナジラミを有効に防除することができる。アザミウマやコナジラミは多種多様の作物に寄生するので、使用対象を一概に定めることはできないが、例えば食用作物の場合であれば、スイカやキュウリ等のウリ科;トマトやピーマン、ナス、シシトウ、タバコ等のナス科;ミカン科;ネギ等のヒガンバナ科;キャベツ等のアブラナ科;ホウレンソウ等のアカザ科;インゲン等のマメ科;といった作物に適用することができる。
食用作物の中では、特にウリ科またはナス科の作物栽培に使用することが好ましい。これらの作物は、アザミウマやコナジラミによる被害が顕著であり、特に、アザミウマやコナジラミが媒介となってウイルス感染しやすいからである。しかも、栽培時期が温暖な季節であるために、アザミウマやコナジラミが活発に活動し、被害が拡大しやすい。加えて、これらの科に属する作物にはトマトやピーマンなど、栽培時に温度と通気(湿度)の両方のコントロールが重要になるものが多く含まれている。
また、本発明の防虫ネットは、トルコギキョウやキク等の花卉類栽培にも好適に使用される。花卉は鑑賞に耐えるよう、花弁はもちろん茎や葉も含めて、キズがなく、色斑もないように生育することが強く求められる作物であるが、アザミウマやコナジラミに寄生されると、知らぬ間に吸汁されて花や葉に白斑を生じさせたり、変形を起こさせたりしてしまう。更に、コナジラミの粘着質の排泄物が付着することで、外観を損ねてしまう。よって、花卉類は、アザミウマやコナジラミを防除する必要性が特に高い作物である。
実施例、比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<試験方法>
以下に本発明に関する試験方法を説明する。
(a)異形度:
異形度は、繊維の断面周長(L1)を、その断面積と同面積をもつ円の周長(L2)で除した値であり、下式(1)により異形度を算出した。

異形度=L1÷L2 ・・・(1)

図1を用いて、異形度の求め方を、例を挙げて説明する。1.00mm×2.00mmの2つの長方形ABCDと長方形EFGHが正十文字で重なり合う形状の図形1において、a=d=1.00mm,b=c=0.50mm,e=f=2.00mmである。この正十文字の周長、すなわち実線部分の長さの和は8.00mm(L1)である。また、この正十文字の斜線部分の面積は3.00mmであるので、これと同じ面積をもつ円の半径は、0.977mmとなり、前記の円の周長が6.14mm(L2)と求められる。よって、この図形の異形度はL1の値をL2の値で除したものであるので、計算により異形度は1.30となる。
(b)害虫忌避率:
図2を用いて、害虫忌避率の試験方法を説明する。円柱筒状の放虫部2(外径100mm、内径90mm、長さ300mm)および円柱筒状の移動部4(外径90mm、内径80mm、長さ50mm)の間に、害虫の移動を妨げる形で防虫ネット3を取り付ける。害虫誘引のための作物7を、立方体箱状の誘引部5(一辺の長さ300mm、厚さ5mm)に投入する。ついで、放虫部2の中に害虫6を所定の数(Y匹)放虫した後、所定時間後の誘引部5に移動した害虫の数(Z匹)を数えて、下式(2)により所定時間後の害虫忌避率を算出した。なお、放虫部2、移動部4、誘引部5は透明なアクリル製の部材で形成されており、目視で害虫の数を観測可能となっている。

所定時間後の害虫忌避率(%)=(Y-Z)÷Y×100 ・・・(2)

害虫忌避率は数値が大きいほど害虫忌避効果が大きい。なお、試験は、自然光に近い日射が得られ、かつ、害虫が逃げ出さないように日当たりの良いガラス室内で実施し、試験後害虫は薬殺した。
(c)エトフェンプロックスの含有量:
切断した繊維を170℃で10分間加熱した後、常温まで冷却して評価試料を準備した。評価試料を溶剤に2日間以上浸漬した後、溶剤に抽出されたエトフェンプロックス成分を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量した。溶剤中に含まれるエトフェンプロックスの質量Wから、下式(3)によりエトフェンプロックスの含有量を算出した。

エトフェンプロックスの含有量(質量%)
=W÷(評価試料の質量)×100 ・・・(3)
(d)鞘芯部の体積比(V1/V2):
熱接着性繊維の断面を、KEYENCE社製マイクロスコープ(型式:VHX-500F)を用いて観察した。得られたマイクロスコープ画像の繊維の断面について、装置に付属の画像処理機能を利用して、鞘芯型構造の鞘部の体積V2および芯部の体積V1を計測し体積比(V1/V2)を算出した。
<製造例1>
鞘成分に融点が134℃のエチレン・プロピレン二元共重合体、芯成分に融点が164℃のポリプロピレンを用い、鞘芯ともに防虫剤(エトフェンプロックスのマイクロカプセル)を混練させて、断面形状がY字型の熱接着性異形繊維1を製造した。なお、熱接着性異形繊維1のエトフェンプロックスの含有量は0.27質量%であり、異形度は1.235であった。さらに、熱接着性異形繊維1の繊度は322dtexであり、芯部と鞘部の体積比(V1/V2)は70/30であった。図3は熱接着性異形繊維1の断面を示す。
<製造例2>
鞘成分に融点が134℃のエチレン・プロピレン二元共重合体、芯成分に融点が164℃のポリプロピレンを用い、鞘芯ともに防虫剤(エトフェンプロックスのマイクロカプセル)を混練させて、断面形状がY字型の熱接着性異形繊維2を製造した。なお、熱接着性異形繊維2のエトフェンプロックスの含有量は0.27質量%であり、異形度は1.196であった。さらに、熱接着性異形繊維2の繊度は200dtexであり、芯部と鞘部の体積比(V1/V2)は70/30であった。図4は熱接着性異形繊維2の断面を示す。
<製造例3>
鞘成分に融点が134℃のエチレン・プロピレン二元共重合体、芯成分に融点が164℃のポリプロピレンを用い、鞘芯ともに防虫剤を混練させないで、断面形状が円形の熱接着性繊維3を製造した。なお、熱接着性繊維3の繊度は322dtexであり、芯部と鞘部の体積比(V1/V2)は60/40であった。図5は熱接着性繊維3の断面を示す。
<製造例4>
鞘成分に融点が134℃のエチレン・プロピレン二元共重合体、芯成分に融点が164℃のポリプロピレンを用い、鞘芯ともに防虫剤を混練させないで、断面形状が円形の熱接着性繊維4を製造した。なお、熱接着性繊維4の繊度は200dtexであり、芯部と鞘部の体積比(V1/V2)は60/40であった。図6は熱接着性繊維4の断面を示す。
(実施例1)
緯糸に熱接着性異形繊維1、経糸に熱接着性繊維3を用いて1.0mm目合いの平織りネットに編織した。このネットを、熱風型加熱機を用いて160~165℃で熱処理し、熱接着性繊維同士の交点が熱接着された防虫ネット1を得た。防虫ネット1を構成する繊維の50質量%が、熱接着性異形繊維1であった。
このネットを用いて害虫忌避率を評価したところ、2時間後の害虫忌避率39%、4時間後の害虫忌避率36%、5時間後の害虫忌避率36%と良好な害虫忌避率を示した。なお、害虫忌避率は30%以上あれば十分である。
(実施例2)
緯糸に熱接着性異形繊維2、経糸に熱接着性繊維4を用いて0.8mm目合いの平織りネットに編織した。このネットを、熱風型加熱機を用いて160~165℃で熱処理し、熱接着性繊維同士の交点が熱接着された防虫ネット2を得た。防虫ネット2を構成する繊維の50質量%が、熱接着性異形繊維2であった。
このネットを用いて害虫忌避率を評価したところ、実施例1と同様に良好な害虫忌避率を示した。
本発明の防虫ネットは、特に好ましい害虫忌避性を示すことが分かる。また、本発明の防虫ネットは、繊維の交点を熱接着することにより、目ずれを起こさず、風などで吹き付けられた害虫の侵入も防止可能であり、通気性も良好である。
前記の実施例においては、熱接着性異形繊維の異形形状として、Y字型を用いたが、その他の異形形状においても、同様の効果を期待することができる。また、防虫剤としてエトフェンプロックスを用いたが、その他の防虫剤においても、同様の効果を期待することができる。本発明の防虫ネットは、優れた害虫忌避性を有するため、農業用防虫ネットとしてのみならず、建築用、家庭用、その他多くの用途に使用することができる。また、本発明の防虫ネットは、他の資材例えば布帛、フィルム、金属ネット、建設資材、土木資材、農業資材など、多くの資材と組み合わせて使用することも可能である。
本発明の熱接着性異形繊維は、防虫性繊維製品の素材として有用であり、ネット状に編織することにより防虫性能の耐候性および持続性に優れる防虫ネットを提供することができる。
1・・・正十文字で重なり合う形状の図形
2・・・放虫部
3・・・防虫ネット
4・・・移動部
5・・・誘引部
6・・・害虫
7・・・害虫誘引のための作物
101・・・熱接着性異形繊維1の断面
102・・・熱接着性異形繊維2の断面
103・・・熱接着性繊維3の断面
104・・・熱接着性繊維4の断面

Claims (6)

  1. 繊維同士の交点が熱接着されてなる防虫ネットであって、前記防虫ネットを構成する繊維は、異形度が1.10~2.20の範囲であり、かつ繊維中に防虫剤が混錬された熱接着性異形繊維であり、前記防虫ネットの目合いは0.8~3.0mmの範囲である防虫ネット。
  2. 前記熱接着性異形繊維の繊度が、100~5000dtexの範囲である請求項1に記載の防虫ネット。
  3. 前記熱接着性異形繊維が鞘芯型構造を有し、鞘部の体積V2に対する芯部の体積V1の比(V1/V2)が50/50~90/10の範囲である、請求項1または請求項2に記載の防虫ネット。
  4. 前記防虫剤が、ピレスロイド系化合物である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の防虫ネット。
  5. 前記防虫剤が、マイクロカプセル化した防虫剤である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の防虫ネット。
  6. 前記熱接着性異形繊維の割合が、全繊維量の20質量%以上である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の防虫ネット。
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