JP2023034391A - ポリエステル樹脂、フィルム、および積層体 - Google Patents

ポリエステル樹脂、フィルム、および積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】フィルムとした場合に、高周波における低誘電特性と高弾性率を有しつつ、フィルム成形性に優れるポリエステル樹脂を得ること。【解決手段】下記構造単位(I)および6-ヒドロキシー2-ナフトエ酸構造単位(II)を必須成分とするポリエステル樹脂であって、構造単位(I)の含有量が1~40モル%であり、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の全構造単位に対する構造単位(II)の割合が30%より大きいポリエステル樹脂。TIFF2023034391000010.tif34164(R1は、H、C1~5のアルキル基、アリール基、およびCF3から選ばれるいずれか、Arは、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、およびトリフェニルから選ばれるいずれかの芳香族環構造を表し、芳香族環は、C1~5のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、およびCF3から選ばれるいずれかの置換基を有していても良い。X1、X2はそれぞれ独立に、O、CO、およびNHのいずれかを表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル樹脂、成形品、積層体に関する。より詳しくは、ポリエステル樹脂、それを用いて得られるフィルムやシートなどのポリエステル樹脂成形品および積層体に関するものである。
近年の移動携帯端末や通信基地局の需要増大に伴い、リジット基板やフレキシブル基板といったプリント回路基板に用いられる樹脂の需要が拡大している。さらに近年、第五世代移動通信“5G”の利用が開始され、これら基板用途の樹脂において、高周波における低誘電特性などの高性能化が求められている。
樹脂に低誘電特性を付与させる手法としては、電磁波に晒されたときの樹脂の運動性を抑制する手法が効果的である。液晶ポリエステル樹脂は、液晶構造によって分子鎖が配列・パッキングすることで分子鎖の運動性が抑制されるため、誘電特性に優れた樹脂である。液晶ポリエステル樹脂を更に低誘電化させた例として、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸からなる構造単位を一定量有する液晶ポリエステル樹脂が提案されている(例えば、特許文献1)。
前述したリジッド基板やフレキシブル基板といったプリント回路基板として樹脂を用いる場合、樹脂をフィルム状に成形して用いることが多いため、フィルムとしての特性向上も望まれる。特に、フィルムの弾性率を高めることは重要であり、フィルムを積層体として用いた場合、積層体のソリ変形や、加工時の破れなどの生産不良を抑制できる。加えて、今後需要が急増することから、生産性、すなわち樹脂フィルムの成形性も重要視される。ポリエステル樹脂フィルムの種々特性については、特定の構造を共重合させることで向上できる。特定構造を導入してフィルム特性向上させた例として、特許文献2においては、ビスフェノール残基と芳香族ジカルボン酸残基からなるポリアリレート樹脂フィルムが、優れた耐熱性、光透過性および難燃性に優れることが開示されており、また、特許文献3においては、ビスフェノールとナフタレン構造からなる芳香族コポリエステルが、物性に優れたフィルムとなることが示されている。同様に、ビスフェノール構造を有する芳香族ポリエステルが特許文献4に開示されており、成形加工しやすく、物性に優れるとされている。
特開2004-196930号公報 国際公開第2014/024787号 特開平2-255719号公報 特開平6-49189号公報
前記特許文献1に記載された方法では、ポリエステル樹脂の誘電正接に効果はあるものの、ミリ波と呼ばれる高周波帯での低誘電特性が不十分であり、またフィルム成形性に課題があった。特許文献2~4においては、特定構造を共重合させることで、種々フィルム特性が改善される手法が記載されているが、誘電特性に関する言及はなく、近年の電気電子部品に求められる高い水準での誘電特性とフィルム物性を両立することは困難であった。
本発明の課題は、フィルムとした場合に、高周波における低誘電特性と高弾性率を有しつつ、フィルム成形性に優れたポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂組成物、それから得られる成形品、ポリエステル樹脂フィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造を主鎖に有しつつ、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位を一定量含むことで、フィルムとした場合に、高周波における低誘電特性と高弾性率を有し、フィルム成形性に優れたポリエステル樹脂となることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は以下のとおりである:
(1)下記構造単位(I)および構造単位(II)を必須成分とするポリエステル樹脂であって、ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対する構造単位(I)の含有量が1~40モル%であり、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する全構造単位に対する構造単位(II)の割合が30%より大きいポリエステル樹脂。
Figure 2023034391000001
(Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、およびトリフルオロメチル基(CF)を表す。Arは、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、およびトリフェニルから選ばれるいずれかの芳香族環構造を表し、これら芳香族環は、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、およびトリフルオロメチル基(CF)の置換基を有していても良い。X、Xはそれぞれ独立に、O、CO、およびNHのいずれかを表す。)
(2)前記ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、芳香族または脂肪族ジオールに由来する構造単位を0.1~30モル%含む(1)に記載のポリエステル樹脂。
(3)前記構造単位(I)が、下記(i)に示される構造単位である(1)または(2)に記載のポリエステル樹脂。
Figure 2023034391000002
(X、Xはそれぞれ独立に、O、CO、およびNHのいずれかを表す。Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、およびトリフルオロメチル基(CF)から選ばれるいずれかを表す。R,Rはそれぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、およびトリフルオロメチル基(CF)を表す。n、mはそれぞれ独立に、0~4の整数のいずれかを表す。)
(4)(1)~(3)に記載のポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂フィルム。
(5)(4)に記載のポリエステル樹脂フィルムの少なくとも一方の面に支持体が積層された積層体。
本発明のポリエステル樹脂は、フィルムとした場合に、高周波における低誘電特性と高弾性率を有し、フィルム成形性に優れる。かかる樹脂から得られるフィルムは、電気・電子部品や機械部品内のフレキシブルプリント配線板や半導体パッケージなどに使用される積層体に好適である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂とは、各構造単位がエステル結合を介して連結してなる高分子のことであり、例えば、後述するオキシカルボニル単位、ジオキシ単位、ジカルボニル単位などが構造単位として選択される。
次に、ポリエステル樹脂を構成する構造単位について説明する。
本発明のポリエステル樹脂は、下記構造単位(I)を必須成分として含む。
Figure 2023034391000003
(Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、およびトリフルオロメチル基(CF)から選ばれるいずれかを表す。Arは、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、およびトリフェニルから選ばれるいずれかの芳香族環構造を表し、これら芳香族環は、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、およびトリフルオロメチル基(CF)から選ばれるいずれかの置換基を有していても良い。X、Xはそれぞれ独立に、O、CO、およびNHのいずれかを表す。)
構造単位(I)はトリフルオロメチル基(CF)を有している。フッ素原子は電気陰性度が高く、周囲の電子を引きつけて電子の運動性を抑制する効果があるため、部分構造(A)を含む構造単位(I)が主鎖中に存在することにより、高周波において低誘電特性となる。加えて、フッ素原子は水素原子と比べて原子半径が大きく、トリフルオロメチル基が構造単位(I)のプロパン構造の中央に存在することで、立体障害によりプロパン構造の回転が抑制されより強固な構造となる。さらに、プロパン由来の屈曲構造によって、後述する芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位が生成する高直線性の長連鎖生成を緩和し、当該部位由来の重合異物生成が抑制されるため、高弾性率であって、なおかつフィルム成形性が向上したポリエステル樹脂が得られる。
構造単位(I)におけるRは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、およびトリフルオロメチル基からいずれかを選択できるが、電子運動性をより抑制できて低誘電特性となることから、トリフルオロメチル基が好ましい。
ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対する構造単位(I)の含有量は1~40モル%である。1モル%よりも低いと、高周波における誘電特性とフィルム成形性が低下する。40モル%より多いと、弾性率が低下し、また重合性も低下する。高周波における誘電特性とフィルム成形性の観点から、5モル%以上が好ましく、8モル%以上がよりに好ましく、12モル%以上がさらに好ましい。重合性および弾性率を高める観点から、35モル%以下が好ましく、32モル%以下がよりに好ましく、28モル%以下がさらに好ましい。
主鎖中へ構造単位(I)を導入することが容易となる観点から、構造単位(I)は、下記(i)に示される構造単位であることが好ましい。
Figure 2023034391000004
(X、Xはそれぞれ独立に、O、CO、およびNHのいずれかを表す。Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、およびトリフルオロメチル基(CF)から選ばれるいずれかを表す。R,Rはそれぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、およびトリフルオロメチル基(CF)から選ばれるいずれかを表す。n、mはそれぞれ独立に、0~4の整数のいずれかを表す。)
構造単位(I)は、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(1,2-ベンゼンジカルボン酸)、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、などをモノマーとして用いることで導入することができる。重合性と高周波における誘電特性の観点から2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンをモノマーとして用いることが好ましく、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンをモノマーとして用いることが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、下記構造単位(II)を必須成分として含み、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する全構造単位に対する構造単位(II)の割合が30%より大きいことを特徴とする。なお、本割合の最大値は100%であり、また、本発明における芳香族ヒドロキシカルボン酸とは、芳香族化合物の芳香環にヒドロキシ基およびカルボキシル基がそれぞれ1つ以上直結している化合物を指す。
Figure 2023034391000005
構造単位(II)は6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位である。芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する全構造単位に対する構造単位(II)の割合が30%以下である場合、弾性率が低下してしまう。高周波において低誘電特性かつ、高弾性率とする観点から、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する全構造単位に対する構造単位(II)の割合は40%以上であることが好ましく、45%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましく、55%以上が特に好ましい。
ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対する構造単位(II)の含有量は、高周波における低誘電特性と、高弾性率とする観点から、30モル%より大きいことが好ましい。35モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上がより好ましく、45モル%以上がさらに好ましく、50モル%以上が特に好ましい。また、重合性とフィルム成形性の観点から、80モル%以下であることが好ましい。77モル%以下がより好ましく、75モル%以下がさらに好ましく、72モル%以下が特に好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、構造単位(I)とは異なるジオキシ単位として芳香族または脂肪族ジオールに由来する構造単位を含むことができ、ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して0.1~30モル%であることが好ましい。かかる範囲とすることで、構造単位(II)の長連鎖に由来する不融重合異物生成を低減することができ、高弾性率とし、フィルム成形性をさらに向上することができる。0.5モル%以上が好ましく、1モル%以上が好ましく、1.2モル%以上がさらに好ましい。また、高弾性率とする観点から、25モル%以下が好ましく、22モル%以下がより好ましく、20モル%以下がさらに好ましく、18モル%以下が特に好ましい。
芳香族または脂肪族ジオールの具体例としては、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシノール、t-ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、クロロハイドロキノン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンなどの芳香族ジオールから生成した構造単位、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから生成した構造単位、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオールから生成した構造単位、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールから生成した構造単位などが挙げられる。重合性がよく、高周波において低誘電特性とし、高弾性率とする観点から、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、エチレングリコールから生成した構造単位が好ましい。なお、これら構造単位を組み合わせて使用しても良い。
本発明のポリエステル樹脂は、高弾性率とし、フィルム成形性を向上させる観点から、構造単位(II)と異なる芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位として、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する下記構造単位(III)を含むことができ、ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して0.1~35モル%であることが好ましい。かかる範囲とすることで、構造単位(II)の長連鎖に由来する不融重合異物生成がさらに低減され、フィルム成形性が向上する観点から、0.5モル%以上が好ましく、1モル%以上が好ましく、1.2モル%以上がさらに好ましい。また、高弾性率とする観点から、30モル%以下が好ましく、25モル%以下がより好ましく、20モル%以下がさらに好ましく、15モル%以下が特に好ましい。
Figure 2023034391000006
本発明のポリエステル樹脂は、構造単位(I)とは異なるジカルボニル単位に由来する構造単位を含むことができる。ジカルボニル単位の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、2,2’-ジフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、1,2-ビス(2-クロロフェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸から生成した構造単位などが挙げられる。重合性とフィルム成形性がよく、高周波において低誘電特性とし、高弾性率とする観点から、芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位が好ましく、中でもテレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位が特に好ましい。
また、ポリエステル樹脂には、上記構造単位に加えて、p-アミノ安息香酸、p-アミノフェノールなどから生成した構造単位を、特性を損なわない程度の範囲でさらに有することができる。
上記の各構造単位を構成する原料となるモノマーは、各構造単位を形成しうる構造であれば特に限定されない。また、そのようなモノマーの水酸基のアシル化物、カルボキシル基のエステル化物、酸ハロゲン化物、酸無水物などのカルボン酸誘導体などが使用されてもよい。
ポリエステル樹脂について、各構造単位の含有量の算出法を以下に示す。まず、ポリエステル樹脂を粉砕後、水酸化テトラメチルアンモニウムを添加し、島津製GCMS-QP5050Aを用いて、熱分解GC/MS測定を行うことによって求めることができる。検出されなかった、あるいは検出限界以下の構造単位の含有量は0モル%として計算する。
ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、後述する方法でフィルムとすることが容易であり、高周波において低誘電特性となり、高弾性率となる観点から、ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、350℃以下が好ましく、340℃以下がより好ましく、330℃以下が特に好ましい。
ポリエステル樹脂の融点(Tg)は、高周波において低誘電特性となり、高弾性率となる観点から、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。後述する方法でフィルムとすることが容易となり観点から、ポリエステル樹脂の融点(Tg)は、200℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましく、170℃以下が最も好ましい。
<ポリエステル樹脂の製造方法>
本発明で使用するポリエステル樹脂を製造する方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。具体的には、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに由来する構造単位、4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位、およびエチレングリコールに由来する構造単位からなるポリエステル樹脂を例にすると、以下の方法が挙げられる。
(1)6-アセトキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ビス(4-アセトキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアセトキシビフェニル、テレフタル酸、およびポリエチレンテレフタレ―トなどポリエステルのポリマーもしくはオリゴマーまたはビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレートから脱酢酸重縮合反応によってポリエステル樹脂を製造する方法。
(2)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、テレフタル酸、およびポリエチレンテレフタレ―トなどのポリエステルのポリマーもしくはオリゴマーまたはビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレートに無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアセチル化した後、脱酢酸重縮合反応によってポリエステル樹脂を製造する方法。
(3)(1)または(2)の製造方法において出発原料の一部に1,2-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフトイル)エタンを用いる方法。
なかでも(2)の方法が、ポリエステル樹脂の重合度を制御しやすく、前述した芳香族ヒドロキシカルボン酸(構造単位(II)または(III))の長連鎖を抑制することができる点と、工業的に優れる点から、好ましく用いられる。
また、(2)の方法で本発明のポリエステル樹脂を製造する場合、フェノール性水酸基をアセチル化する反応(アセチル化反応)の温度は、通常130~210℃の範囲であるが、好ましくは130~150℃の範囲である。アセチル化反応時間は、重合反応性の観点から通常30分以上行うが、前述した芳香族ヒドロキシカルボン酸(構造単位(II)または(III))の長連鎖を抑制することができ、高弾性率および高強度かつ、フィルム成形性が向上する観点から、130~150℃の温度にて、2時間以上行うことが好ましく、2時間30分以上がより好ましい。一方、アセチル化反応時間は、生産性の観点から通常6時間以下で行うが、高弾性率および高強度とする観点から、4時間以下が好ましく、3時間30分以下がより好ましい。
アセチル化反応に用いる無水酢酸の使用量は、重合反応性の観点から、通常ポリエステル原料中のフェノール性水酸基の合計の1.00当量以上であるが、脱離やエステル交換に伴う未反応のフェノール性水酸基量を低減することができ、高周波において低誘電特性となる観点から、1.08当量以上が好ましく、1.10当量以上がより好ましい。一方、無水酢酸の使用量は、芳香族ヒドロキシカルボン酸の連鎖に由来する重合異物を抑制する観点から、通常1.20当量以下であるが、1.14当量以下が好ましく、1.13当量以下がより好ましい。
本発明で使用するポリエステル樹脂の製造方法として、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。固相重合法による処理としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、ポリエステル樹脂のポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕する。粉砕したポリマーまたはオリゴマーを、窒素気流下、または、減圧下において加熱し、所望の重合度まで重縮合することで、反応を完了させる。上記加熱は、ポリエステルの融点-50℃~融点-5℃の範囲で1~50時間行うことが好ましい。
ポリエステル樹脂の重縮合反応は、無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどを触媒として使用することもできる。
<ポリエステル樹脂の成形品>
本発明のポリエステル樹脂は、通常の射出成形、押出成形、プレス成形、溶液キャスト製膜、紡糸などの成形方法によって、優れた表面外観(色調)、機械的性質、耐熱性を有する成形品に加工することが可能である。ここでいう成形品としては、射出成形品、押出成形品、プレス成形品、シート、パイプ、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムなどの各種フィルム、未延伸糸、超延伸糸などの各種繊維などが挙げられる。高周波において低誘電特性であり、さらには高弾性率である本発明のポリエステル樹脂の効果が顕著に得られる観点から、フィルムであることが好ましい。フィルムの製造方法については後述する。
<ポリエステル樹脂フィルムおよび積層体>
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂フィルムや積層体を製造するための原料として用いることができる。
本発明のポリエステル樹脂フィルムは、本発明のポリエステル樹脂を含むものである。ポリエステル樹脂フィルムの製造方法は特に限定されず、公知の手法を用いて製造することができ、例えば以下(I)や(II)に記載の手法で得ることができる。
(I)本発明のポリエステル樹脂を、例えば一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機などから、インフレーションダイやTダイなどを介してフィルム状に吐出・固化させてフィルムを得る方法。
(II)本発明のポリエステル樹脂を、有機溶媒などの媒体に分散あるいは溶解させて得られたポリエステル樹脂組成物を支持体上に塗布し、媒体を除去して積層体を得た後、得られた積層体から支持体を除去する方法。
(I)と(II)などの手法から得られたフィルムを延伸することも可能である。延伸する方法は特に制限はなく、逐次二軸遠心、同時二軸遠心のいずれでも構わない。また延伸倍率は2~8倍の間、延伸速度は500~5000%/分の間が多く用いられる。
(I)と(II)などの手法から得られたフィルムは、熱処理を行うことが好ましい。熱処理を行うことによってフィルムを構成するポリエステル樹脂の高次構造が熱力学的に安定な構造に落ち着き、種々特性が向上する。熱処理温度は適宜特性に応じて決定されるが、ポリエステル樹脂の融点(Tm)-5℃~+30℃の範囲で行うことが好ましく、±0℃~+20℃の範囲がより好ましい。
また、本発明の積層体は、支持体および樹脂層が積層された積層体であって、本発明のポリエステル樹脂を含む樹脂層の少なくとも一方の面に、支持体が積層された積層体である。積層体は、例えば、下記(III)~(VI)の方法で製造することができる。
(III)上記(I)または(II)の方法により製造されたフィルムを加熱圧着により支持体に貼付する方法。
(IV)上記(I)または(II)の方法により製造されたフィルムと支持体とを接着剤により貼付する方法。
(V)上記(I)または(II)の方法により製造されたフィルム上に支持体を蒸着により形成する方法。
(VI)本発明のポリエステル樹脂を、有機溶媒などの媒体に分散あるいは溶解させて得られたポリエステル樹脂組成物を支持体上に塗布した後に、溶媒を除去する方法。
上記(II)~(VI)の方法に使用する支持体としては、特に制約は無く、金属箔、ガラス基板、高分子フィルムなどから選ばれる。(II)および(III)の方法に用いられる支持体においては、使用する溶媒に対して耐性があることが重要である。支持体は金属箔、ガラス基板、高分子フィルムなどの単体であっても、これらの複合素材であってもよい。高分子フィルムとしては、絶縁性を有するポリイミドフィルム、液晶ポリエステルフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。
上記(III)~(VI)の方法において、支持体が金属層である場合に使用される金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムなどが挙げられる。電気・電子部品や機械部品内のフレキシブルプリント配線板およびリジットプリント配線板などの回路基板用途などでは銅が好ましい。
このようにして得られる積層体の構造としては、例えば、フィルムと支持体との二層構造、フィルムの両面に支持体を積層させた三層構造、支持体の両面にフィルムを積層させた三層構造、さらにはフィルムと支持体を交互に四層以上積層させた多層構造などが挙げられる。
上記の方法により得られた積層体は、例えば、各種コンピュータ、OA機器、AV機器などに代表される電気・電子部品や電気・電子部品を実装したフレキシブルプリント配線板、リジットプリント配線板などの回路基板;車載用半導体、産業用半導体などに用いられる半導体パッケージ;透明導電性フィルムの基材、偏光フィルムの基材、各種調理食品用および電子レンジ加熱用の包装フィルム、電磁波シールド用フィルム、抗菌性フィルム、気体分離用フィルムなどに用いることができる。樹脂層が高温において低誘電正接であり、さらには高弾性率および低線膨張率であるため、高温での伝送損失、および変形が抑制された積層体を容易に得られることから、積層体を用いる、電気・電子部品や機械部品内のフレキシブルプリント配線板およびリジットプリント配線板などの回路基板や、半導体パッケージに好適に使用される。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明が実施例により限定されるものではない。実施例中、ポリエステル樹脂の組成および特性評価は以下の方法により測定した。
(1)ポリエステル樹脂の組成分析
粉砕したポリエステル樹脂0.1mgに、水酸化テトラメチルアンモニウム25%メタノール溶液2μLを添加し、島津製GCMS-QP5050Aを用いて熱分解GC/MS測定を行い、ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対する各構造単位の含有量(mol%)ならびに、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する全構造単位中の下記構造単位(II)の割合(%)を算出した。
(2)ポリエステルの融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)測定
示差走査熱量測定(DSC)装置(TAインスツルメンツ社製Q200)により、ポリエステル樹脂を室温から20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)の観測後、Tm+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される昇温曲線中の吸熱ピーク温度を融点(Tm)とし、ガラス転移に由来する二つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度(Tg)とした。
[実施例1]
撹拌翼および留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸25重量部、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸1186重量部、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン908重量部、テレフタル酸449重量部および無水酢酸1334重量部(フェノール性水酸基合計の1.1当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で150分反応させた後、145℃から300℃まで4時間かけて昇温した。その後、重合温度を300℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが50kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を2.5kg/cm(0.25MPa)に加圧し、直径6mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズしてポリエステル樹脂(A-1)を得た。
このポリエステル樹脂(A-1)について組成分析を行ったところ、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位(構造単位(III))は1.6モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位(構造単位(II))は53.0モル%、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに由来する構造単位(構造単位(I))は22.7モル%、テレフタル酸に由来する構造単位は22.7モル%であった。また、Tmは270℃、Tgは135℃であった。
得られたポリエステル樹脂(A-1)のペレットにつき、粗粉砕機で粉砕して粉末とした。得られた粉末を、金型温度を300℃に設定し、37t手動ホットプレス機(神藤金属工業NF-37HH)を用いてプレス成形(成形時間:5分間、成形圧:10MPa)を行い、A-1のフィルムを得た。得られたフィルムを、窒素雰囲気下260℃の熱風オーブン中で4時間保持する熱処理を行い、厚み0.08mmのフィルムを得た。
[実施例2]
撹拌翼および留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸25重量部、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸1186重量部、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン757重量部、テレフタル酸449重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル84重量部および無水酢酸1334重量部(フェノール性水酸基合計の1.1当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で150分反応させた後、145℃から300℃まで4時間かけて昇温した。その後、重合温度を300℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが50kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を2.5kg/cm(0.25MPa)に加圧し、直径6mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズしてポリエステル樹脂(A-2)を得た。
このポリエステル樹脂(A-2)について組成分析を行ったところ、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位(構造単位(III))は1.6モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位(構造単位(II))は53.0モル%、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに由来する構造単位(構造単位(I))は18.9モル%、4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位(芳香族ジオールに由来する構造単位)は3.8モル%、テレフタル酸に由来する構造単位は22.7モル%であった。また、Tmは272℃、Tgは138℃であった。
得られたポリエステル樹脂(A-2)のペレットにつき、粗粉砕機で粉砕して粉末とした。得られた粉末を、金型温度を300℃に設定し、37t手動ホットプレス機(神藤金属工業NF-37HH)を用いてプレス成形(成形時間:5分間、成形圧:10MPa)を行い、A-2のフィルムを得た。得られたフィルムを、窒素雰囲気下260℃の熱風オーブン中で4時間保持する熱処理を行い、厚み0.08mmのフィルムを得た。
[実施例3]
撹拌翼および留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸25重量部、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸1186重量部、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン378重量部、テレフタル酸374重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル210重量部および無水酢酸1233重量部(フェノール性水酸基合計の1.1当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で150分反応させた後、145℃から300℃まで4時間かけて昇温した。その後、重合温度を300℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが50kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を2.5kg/cm(0.25MPa)に加圧し、直径6mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズしてポリエステル樹脂(A-3)を得た。
このポリエステル樹脂(A-3)について組成分析を行ったところ、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位(構造単位(III))は1.7モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位(構造単位(II))は57.5モル%、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに由来する構造単位(構造単位(I))は10.2モル%、4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位(芳香族ジオールに由来する構造単位)は10.2モル%、テレフタル酸に由来する構造単位は20.4モル%であった。また、Tmは268℃、Tgは128℃であった。
得られたポリエステル樹脂(A-3)のペレットにつき、粗粉砕機で粉砕して粉末とした。得られた粉末を、金型温度を300℃に設定し、37t手動ホットプレス機(神藤金属工業NF-37HH)を用いてプレス成形(成形時間:5分間、成形圧:10MPa)を行い、A-3のフィルムを得た。得られたフィルムを、窒素雰囲気下250℃の熱風オーブン中で4時間保持する熱処理を行い、厚み0.08mmのフィルムを得た。
[実施例4]
撹拌翼および留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸547重量部、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸745重量部、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン363重量部、テレフタル酸179重量部および無水酢酸1132重量部(フェノール性水酸基合計の1.1当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で150分反応させた後、145℃から280℃まで4時間かけて昇温した。その後、重合温度を280℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが35kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を2.0kg/cm(0.20MPa)に加圧し、直径6mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズしてポリエステル樹脂(A-4)を得た。
このポリエステル樹脂(A-4)について組成分析を行ったところ、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位(構造単位(III))は39.3モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位(構造単位(II))は39.3モル%、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに由来する構造単位(構造単位(I))は10.7モル%、テレフタル酸に由来する構造単位は10.7モル%であった。また、Tmは240℃、Tgは125℃であった。
得られたポリエステル樹脂(A-4)のペレットにつき、粗粉砕機で粉砕して粉末とした。得られた粉末を、金型温度を270℃に設定し、37t手動ホットプレス機(神藤金属工業NF-37HH)を用いてプレス成形(成形時間:5分間、成形圧:10MPa)を行い、A-4のフィルムを得た。得られたフィルムを、窒素雰囲気下230℃の熱風オーブン中で4時間保持する熱処理を行い、厚み0.08mmのフィルムを得た。
[実施例5]
撹拌翼および留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸25重量部、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸1186重量部、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン1081重量部、4,4’-ジヒドロキシビフェニル419重量部および無水酢酸1233重量部(フェノール性水酸基合計の1.1当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で150分反応させた後、145℃から300℃まで5.5時間かけて昇温した。その後、重合温度を300℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが45kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を2.0kg/cm(0.20MPa)に加圧し、直径6mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズしてポリエステル樹脂(A-5)を得た。
このポリエステル樹脂(A-5)について組成分析を行ったところ、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位(構造単位(III))は1.6モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位(構造単位(II))は57.4モル%、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに由来する構造単位(構造単位(I))は20.5モル%、4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位(芳香族ジオールに由来する構造単位)は20.5モル%であった。また、Tmは271℃、Tgは132℃であった。
得られたポリエステル樹脂(A-5)のペレットにつき、粗粉砕機で粉砕して粉末とした。得られた粉末を、金型温度を300℃に設定し、37t手動ホットプレス機(神藤金属工業NF-37HH)を用いてプレス成形(成形時間:5分間、成形圧:10MPa)を行い、A-5のフィルムを得た。得られたフィルムを、窒素雰囲気下260℃の熱風オーブン中で4時間保持する熱処理を行い、厚み0.08mmのフィルムを得た。
[比較例1]
撹拌翼および留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸25重量部、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸1355重量部、ハイドロキノン178重量部、テレフタル酸269重量部および無水酢酸1160重量部(フェノール性水酸基合計の1.07当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら150℃で120分反応させた後、150℃から360℃まで4時間かけて昇温した。その後、重合温度を360℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが30kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を2.0kg/cm(0.20MPa)に加圧し、直径6mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズしてポリエステル樹脂(A-6)を得た。
このポリエステル樹脂(A-6)について組成分析を行ったところ、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位(構造単位(III))は1.7モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位(構造単位(II))は67.7モル%、ハイドロキノンに由来する構造単位(芳香族ジオールに由来する構造単位)は15.3モル%、テレフタル酸に由来する構造単位は15.3モル%であった。また、Tmは332℃、Tgは122℃であった。
得られたポリエステル樹脂(A-6)のペレットにつき、粗粉砕機で粉砕して粉末とした。得られた粉末を、金型温度を360℃に設定し、37t手動ホットプレス機(神藤金属工業NF-37HH)を用いてプレス成形(成形時間:5分間、成形圧:10MPa)を行い、A-6のフィルムを得た。得られたフィルムを、窒素雰囲気下320℃の熱風オーブン中で4時間保持する熱処理を行い、厚み0.08mmのフィルムを得た。
[比較例2]
撹拌翼および留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸7重量部、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸356重量部、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン1755重量部、テレフタル酸867重量部および無水酢酸1353重量部(フェノール性水酸基合計の1.07当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら150℃で120分反応させた後、150℃から300℃まで4時間かけて昇温した。その後、重合温度を300℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが35kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を2.0kg/cm(0.20MPa)に加圧し、直径6mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズしてポリエステル樹脂(A-7)を得た。
このポリエステル樹脂(A-7)について組成分析を行ったところ、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位(構造単位(III))は0.4モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位(構造単位(II))は15.2モル%、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに由来する構造単位(構造単位(I))は42.2モル%、テレフタル酸に由来する構造単位は42.2モル%であった。また、Tmは観測されず、Tgは186℃であった。
得られたポリエステル樹脂(A-7)のペレットにつき、粗粉砕機で粉砕して粉末とした。得られた粉末を、金型温度を260℃に設定し、37t手動ホットプレス機(神藤金属工業NF-37HH)を用いてプレス成形(成形時間:5分間、成形圧:10MPa)を行い、A-7のフィルムを得た。得られたフィルムを、窒素雰囲気下200℃の熱風オーブン中で4時間保持する熱処理を行い、厚み0.08mmのフィルムを得た。
[比較例3]
撹拌翼および留出管を備えた5Lの反応容器にp-ヒドロキシ安息香酸1106重量部、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸579重量部、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン207重量部、テレフタル酸102重量部および無水酢酸1346重量部(フェノール性水酸基合計の1.07当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら150℃で120分反応させた後、150℃から300℃まで4時間かけて昇温した。その後、重合温度を300℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが40kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を2.0kg/cm(0.20MPa)に加圧し、直径6mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズしてポリエステル樹脂(A-8)を得た。
このポリエステル樹脂(A-8)について組成分析を行ったところ、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位(構造単位(III))は65.0モル%、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構造単位(構造単位(II))は25.0モル%、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに由来する構造単位(構造単位(I))は5.0モル%、テレフタル酸に由来する構造単位は5.0モル%であった。また、Tmは235℃、Tgは118℃であった。
得られたポリエステル樹脂(A-8)のペレットにつき、粗粉砕機で粉砕して粉末とした。得られた粉末を、金型温度を260℃に設定し、37t手動ホットプレス機(神藤金属工業NF-37HH)を用いてプレス成形(成形時間:5分間、成形圧:10MPa)を行い、A-8のフィルムを得た。得られたフィルムを、窒素雰囲気下220℃の熱風オーブン中で4時間保持する熱処理を行い、厚み0.08mmのフィルムを得た。
得られた実施例1~5および比較例1~3に記載のポリエステル樹脂フィルムにつき、下記(3)~(5)の評価を行った結果を表1に示す。また、実施例1~4および比較例1~3に記載のポリエステル樹脂の組成分析によって得られた、<1>ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対する構造単位(I)の含有量(モル%)、<2>ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対する6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸由来の構造単位(構造単位(II))の含有量(モル%)、<3>ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対するp-ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(構造単位(III))の含有量(モル%)、<4>ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対する4,4-ジヒドロキシビフェニルまたはハイドロキノン(芳香族ジオール)由来の構造単位の含有量(モル%)、<5>ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対するテレフタル酸(ジカルボニル単位)由来の構造単位の含有量(モル%)、<6>芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する全構造単位に対する6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸由来の構造単位(構造単位(II))の割合(%)の結果も表1に示す。
(3)高周波での誘電特性評価 各実施例および比較例により得られたポリエステル樹脂フィルムについて、フィルム形状の10mm角の評価用試料を製作した。得られた誘電特性評価用フィルムを用いて、キーサイト・テクノロジー(株)製ネットワークアナライザーN5227Aおよびサムテック(株)製SUM-CYLINDER Ver2用いて遮断円筒導波管法(JIS R1660-1(2004))によって23℃、65GHzにおける比誘電率を求めた。比誘電率の値が小さいほど、高周波での誘電特性に優れる。
(4)弾性率評価
各実施例および比較例により得られたポリエステル樹脂フィルムについて、長さ150mm、幅10mmの短冊状にサンプルを切り出し、(株)オリエンテック製TENSILON UCT-100を用いて、初期引張チャック間距離50mm、引張速度200mm/分で、JIS K 7127(1999)に規定された方法に従って5回測定を行い、その引張弾性率(GPa)の平均値を算出した。値の高い方が弾性率に優れる。
(5)成形性評価
各実施例および比較例により得られたポリエステル樹脂フィルムについて、長さ500mm、幅500mmに切り出し、島津製デジタルマイクロスコープVHX-500Fを用いて、倍率150倍の視野で任意の50カ所において、0.1mm以上の大きさのクラックおよび不融重合異物の個数を確認した。個数が少ないほど成形性に優れる。
Figure 2023034391000007
本発明のポリエステル樹脂は、フィルムとした場合に、高周波において低誘電正接と高弾性率も有し、フィルム成形性に優れる。本発明のポリエステル樹脂フィルムおよび積層体は、複数枚積層することを特徴とする積層板を用いるフレキシブルプリント配線板、リジットプリント配線板などの回路基板、および半導体パッケージへの使用に好適である。

Claims (5)

  1. 下記構造単位(I)および構造単位(II)を必須成分とするポリエステル樹脂であって、ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対する構造単位(I)の含有量が1~40モル%であり、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する全構造単位に対する構造単位(II)の割合が30%より大きいポリエステル樹脂。
    Figure 2023034391000008
    (Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、およびトリフルオロメチル基(CF)から選ばれるいずれかを表す。Arは、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、およびトリフェニルから選ばれるいずれかの芳香族環構造を表し、これら芳香族環は、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、およびトリフルオロメチル基(CF)から選ばれるいずれかの置換基を有していても良い。X、Xはそれぞれ独立に、O、CO、およびNHのいずれかを表す。)
  2. 前記ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、芳香族または脂肪族ジオールに由来する構造単位を0.1~30モル%含む請求項1に記載のポリエステル樹脂。
  3. 前記構造単位(I)が、下記(i)に示される構造単位である請求項1または2に記載のポリエステル樹脂。
    Figure 2023034391000009
    (X、Xはそれぞれ独立に、O、CO、NHのいずれかを表す。Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、およびトリフルオロメチル基(CF)から選ばれるいずれかを表す。R,Rはそれぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、およびトリフルオロメチル基(CF)から選ばれるいずれかを表す。n、mはそれぞれ独立に、0~4の整数のいずれかを表す。)
  4. 請求項1~3に記載のポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂フィルム。
  5. 請求項4に記載のポリエステル樹脂フィルムの少なくとも一方の面に支持体が積層された積層体。
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