JP2023026381A - 化合物、樹脂及びポリカーボネート樹脂 - Google Patents

化合物、樹脂及びポリカーボネート樹脂 Download PDF

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JP2023026381A
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裕介 杉原
Yusuke Sugihara
寛幸 林
Hiroyuki Hayashi
通昭 藤
Michiaki Fuji
雄輔 井澤
Yusuke Izawa
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Abstract

【課題】高屈折率かつ低Tgで、成形加工性が良好であり、金型を腐食する懸念のない熱可塑性樹脂が得られるポリカーボネート樹脂等の樹脂原料モノマー化合物を提供する。【解決手段】下記式(A)で表される化合物。TIFF2023026381000018.tif61140(Xは炭素数1~10のアルキレン基を表し、m、nは0~4の整数を示し、Rは、アクリロイル基などを表す。)【選択図】なし

Description

本発明は新規化合物と、この化合物を用いた樹脂及びポリカーボネート樹脂に関する。
カメラ、ビデオカメラ、カメラ付携帯電話、テレビ電話、カメラ付ドアホン等の各種光学系製品に使用される光学レンズの材料として、光学ガラス、光学樹脂が使用される。
光学ガラス等は、要求される様々な光学特性を実現することが可能であり、また、環境耐性に優れている。しかし、光学ガラス等は加工性が悪く生産性が低いという問題点を有する。
一方、光学用樹脂は、射出成形により大量生産が可能であるという利点を有する。この利点から、例えばカメラ用レンズとして、ポリカーボネート等の光学用樹脂からなる光学レンズが使用されている。
レンズ用の樹脂としては、ビスフェノールAをカーボネート結合させたポリカーボネートが広く使用されている。このポリカーボネートの屈折率は1.586である。
近年、製品の軽薄短小化により、高い屈折率の樹脂の開発が求められている。一般に、光学材料の屈折率が高いと、同一の屈折率を有するレンズエレメントをより曲率の小さい面で表現できるため、この面で発生する収差を小さくできる。その結果、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏心感度を低減したり、レンズ厚みを薄くして軽量化することが可能になる。
しかし、一般に、樹脂の屈折率を高くすると、樹脂のガラス転移温度(Tg)も高くなり、成形加工性が低下する傾向がある。そこで、高屈折率かつ低Tgで成形加工性の良好な樹脂が検討されている。
特許文献1では、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンをカーボネート結合させたポリカーボネートからなる光学レンズが開示されている。
特許文献2では、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン及び3,11-ジヒドロキシエトキシナフトチオフェンをカーボネート結合させたポリカーボネートを含む組成物からなるレンズが開示されている。
特開2007-57916号公報 特許第6014788号公報
特許文献1の9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンをカーボネート結合させたポリカーボネートの屈折率は1.639であり、更なる高屈折率化が求められる。
特許文献2のポリカーボネートは、ジナフトチオフェン骨格を有するため、特許文献1のポリカーボネートよりも高屈折率である。しかし、本発明者らが検討したところ、このポリカーボネートは、成形温度付近で二酸化硫黄が発生することがある。この二酸化硫黄は、酸性物質であるため、金型の腐食を引き起こす。そのため、特許文献2のポリカーボネートは、成形時に金型を繰り返し使用することが困難であり、実用性に劣る。
本発明は、ポリカーボネート樹脂等の樹脂の原料モノマーとして用いたときに、高屈折率かつ低Tgで、成形加工性が良好であり、金型を腐食する懸念のない樹脂を得ることができる化合物;この化合物を用いてなる高屈折率で、成形加工性が良好であり、金型を腐食する懸念のない樹脂及びポリカーボネート樹脂を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、ジナフトフラン系化合物の二量体よりなる新規化合物が、上記課題を解決し得ることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記式(A)で表される化合物。
Figure 2023026381000001
(上記式(A)中、Xは置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基を表し、mは0~4の整数を示し、nは0~4の整数を示し、Rは、水素原子、グリシジル基、アクリロイル基、又はメタクリロイル基を表す。)
[2] [1]に記載の化合物に由来する構成単位を含む樹脂。
[3] [1]に記載の化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂。
[4] [1]に記載の化合物に由来する構成単位を含むポリエステル樹脂。
[5] [1]に記載の化合物に由来する構成単位を含むポリエステルカーボネート樹脂。
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂等の樹脂の原料モノマーとして用いたときに、高屈折率かつ低Tgで、成形加工性が良好であり、金型を腐食する懸念のない樹脂を得ることができる化合物と、この化合物を用いた、高屈折率で成形加工性が良好であり、金型を腐食する懸念のない樹脂及びポリカーボネート樹脂が提供される。
特に、本発明の化合物は、樹脂の構成単位としてジナフトフラン環を高密度に導入されている化合物であることから、ジナフトフラン環に由来する高屈折率特性をより一層有効に発揮することが期待される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
[化合物]
本発明の化合物は、下記式(A)で表される化合物(以下、「化合物(A)」と称す場合がある。)である。
Figure 2023026381000002
(上記式(A)中、Xは置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基を表し、mは0~4の整数を示し、nは0~4の整数を示し、Rは、水素原子、グリシジル基、アクリロイル基、又はメタクリロイル基を表す。)
<重合性反応基>
式(A)において、-O-Rで形成される基、即ち、以下の基が樹脂の原料モノマーとしての化合物(A)の重合性反応基となる。
Figure 2023026381000003
<X>
式(A)において、Xは、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基である。
Xにおける「置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基」における「炭素数1~10のアルキレン基」の具体例としては、これらに限定されるものではないが、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン、n-へプチレン、n-オクチレン、n-ノナレン、n-デシレン等の直鎖状のアルキレン基;1-メチルエチレン基、2-メチルエチレン基、1-エチルエチレン基、2-エチルエチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、1,1-ジメチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、3-メチルプロピレン基等の分岐鎖を含むアルキレン基;脂環構造を含むアルキレン基;複素環構造を含むアルキレン基;が挙げられる。ただし、このアルキレン基の例示において置換位置の数値は、ジナフトフラン環側の炭素原子からつけるものとする。
脂環構造を含むアルキレン基において、脂環構造としては、例えば下記[E]群に示されるものが挙げられる。
脂環構造を含むアルキレン基としては、例えば、脂環構造と、各々前記脂環構造の任意の2箇所に結合した2つの直鎖状又は分岐状のアルキレン基とからなる基が挙げられる。この基は、2つの直鎖状又は分岐状のアルキレン基の間に脂環構造が介在する基ともいえる。脂環構造における2つのアルキレン基の結合位置については任意であり、同一炭素原子に2つのアルキレン基が結合していてもよい。
Figure 2023026381000004
複素環構造を含むアルキレン基において、複素環構造としては、例えば下記[F]群に示されるものが挙げられる。
複素環構造を含むアルキレン基としては、例えば、複素環構造と、各々前記複素環構造の任意の2箇所に結合した2つの直鎖状又は分岐状のアルキレン基とからなる基が挙げられる。この基は、2つの直鎖状又は分岐状のアルキレン基の間に複素環構造が介在する基ともいえる。複素環構造における2つのアルキレン基の結合位置については任意であり、同一炭素原子に2つの結合手が置換していてもよい。
Figure 2023026381000005
上記脂環構造又は複素環構造に結合する直鎖状又は分岐状のアルキレン基の具体例としては、これらに限定されるものではないが、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン等の直鎖状のアルキレン基;1-メチルエチレン基、2-メチルエチレン基、1-エチルエチレン基、2-エチルエチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、1,1-ジメチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、3-メチルプロピレン基等の分岐鎖を含むアルキレン基(ただし、ここで置換位置の数値は、上記環構造に結合した炭素原子からつけるものとする)が挙げられる。
上記炭素数1~10のアルキレン基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1~10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基);炭素数1~10のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基);炭素数1~10のアシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基);炭素数1~10のアシルアミノ基(例えばアセトアミド基、ベンゾイルアミド基);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1~10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基)、炭素数1~10のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基)、炭素数1~10のアシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基)、炭素数1~10のアシルアミノ基(例えばアセトアミド基、ベンゾイルアミド基)、ニトロ基、シアノ基等から選ばれる1~3個の置換基を有していてもよい炭素数4~10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1~3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。
置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基の具体例としては、フェニルメチレン基、1-フェニルエチレン基、1-フェニルプロピレン基、1-シクロヘキシルプロピレン基、1,1,2,2-テトラフルオロエチレン基が挙げられる。
安価原料調達、合成容易性の観点で、置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基としては、直鎖状のアルキレン基、又は脂環構造を含むアルキレン基がより好ましく、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン、n-へプチレン、n-オクチレン、n-ノナレン、n-デシレン、2,2-ジメチルプロピレン基、下記[H]群に示されるような脂環構造を含むアルキレン基がさらに好ましい。
Figure 2023026381000006
ただし、上記[H]群に示される各脂環構造における2つのメチレン基の置換位置については任意であり、同一炭素原子に2つのメチレン基が結合していてもよい。
上記の中でも、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-へプチレン基、n-オクチレン基、n-ノナレン基、n-デシレン基、2,2-ジメチルプロピレン基が好ましい。
鎖長が長いほどガラス転移温度が低くなる傾向があるため、成形加工性の観点では、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-へプチレン、n-オクチレン基、n-ノナレン基、n-デシレン基がより好ましい。
また、分子構造が小さくなると単位構造中のジナフトフラン構造の濃度を高くすることができることから、高屈折率の観点では、n-ブチレン基、n-プロピレン基、エチレン基、メチレン基がより好ましい。
重合性反応基がヒドロキシ基含有基の場合、光学特性と機械強度のバランスに優れ、熱安定性に優れるため、エチレン基が特に好ましい。一方で、重合性反応基がグリシジル基含有基又はアクリロイル基含有基の場合、光学特性と機械強度のバランスに優れるため、メチレン基、エチレン基が特に好ましい。メチレン基、エチレン基は、短段階かつ工業的に安価に導入できる優位性もある。
Xが置換されていてもよい炭素数2~10のアルキレン基である場合、重合反応性基、特にヒドロキシ基に結合するXのβ位炭素原子には、水素原子が結合していないことが好ましい。β位炭素原子に水素原子が結合していない場合、重合中にプロトン脱離によりオレフィンが生成することがないため、耐熱性が高く、熱安定性に優れる。
ヒドロキシ基のβ位炭素原子に水素原子が結合していないアルキレン基としては、例えば、2,2-ジメチルプロピレン基のような、直鎖状のアルキレン基のβ位炭素原子の水素原子が全てアルキル基で置換された基が挙げられる。
<m、n>
式(A)において、mは0~4の整数を示し、nは0~4の整数を示す。
機械強度、光学特性の観点からm,nは各々独立に0~3であることが好ましく、成形性とのバランスの観点から0または1であることがより好ましく、合成の容易性の観点から0であることがさらに好ましい。
また、合成容易性の観点からはm,nは同一の数字であることが好ましい。
ただし、化合物の溶解性を上げる観点からはm,nは異なる数字であることが好ましい。
<化合物(A)の製造方法>
本発明の化合物(A)のうち、式(A)におけるm,nが0でRが水素原子の化合物(A)は、例えば、以下の反応式に従って、(1,1’-ビナフタレン)-2,2’,7,7’-テトラオールを脱水環化反応すると共に二量体化することで製造することができる。
Figure 2023026381000007
脱水環化すると共に二量体化する方法としては、例えば、有機溶剤中、パラトルエンスルホン酸等の強酸の存在下で(1,1’-ビナフタレン)-2,2’,7,7’-テトラオールを加熱する方法が挙げられる。
有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、テトラリン、オルトジクロロベンゼンが挙げられる。
パラトルエンスルホン酸の使用量は、例えば(1,1’-ビナフタレン)-2,2’,7,7’-テトラオール1モルに対して0.01~10モル、好ましくは0.01~5モルである。加熱温度は、例えば0~200℃である。加熱時間は、例えば1~200時間である。
反応後、必要に応じて、反応生成物を精製する。
また、脱水環化工程と二量化工程は上記の様に連続で行っても、別工程として行ってもよい。
式(A)において、m,nが1でXが置換されていてもよい炭素数2~10のアルキレン基、例えばエチレン基でRが水素原子の化合物(A)を製造するには、例えば、上述のようにして得られたm,nが0でRが水素原子の化合物とアルキレンカーボネート(以下の反応式ではエチレンカーボネート)とを炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の塩基化合物の存在下で反応させる方法が挙げられる。
Figure 2023026381000008
反応に用いるアルキレンカーボネートとしては、置換されていてもよい、メチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート等の炭素数1~10のアルキレンカーボネートが挙げられる。アルキレンカーボネートの使用量は、反応当量以上であればよい。
炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の塩基化合物の使用量は、例えば反応に供される化合物1モルに対して0.01~5.0モルである。反応温度は、例えば0~180℃である。反応時間は、例えば0.5~200時間である。反応は、ジメチルホルムアミド等の溶媒の存在下で行うことができる。
反応後、必要に応じて、反応生成物を精製する。
Rがグリシジル基である化合物(A)を製造するには、上述のようにして得られた化合物にエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンを反応させればよい。
また、Rがアクリロイル基又はメタクリロイル基である化合物(A)を製造するには、上述のようにして得られた化合物にアクリル酸クロリド等のアクリル酸ハロゲン化物又はメタクリル酸クロリド等のメタクリル酸ハロゲン化物を反応させればよい。
[樹脂]
本発明の化合物(A)は、ヒドロキシ基、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はこれらを含有する基を有することでカーボネート結合、エポキシ結合、又はエステル結合により化合物(A)に由来する構成単位を有する樹脂の原料モノマーとして用いることができる。
本発明の化合物(A)が用いられる樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂等が挙げられる。
本発明の化合物(A)が用いられる樹脂中の本発明の化合物(A)に由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、通常0.1~50質量%である。
[ポリカーボネート樹脂]
本発明の化合物(A)を用いて得られる本発明の化合物(A)に由来する構成単位を有する本発明のポリカーボネート樹脂は、本発明の化合物(A)のうち、重合性反応基がヒドロキシ基であるもの、即ち、Rが水素原子である化合物(以下、「化合物(A-OH)」と称す場合がある。)と、必要に応じて用いられる化合物(A-OH)以外のジヒドロキシ化合物とを、炭酸ジフェニル等と、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させることで製造できる。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に化合物(A-OH)と炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジフェニルは、化合物(A-OH)に対して過剰量用いることが好ましい。化合物(A-OH)に対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。具体的には、例えば、化合物(A-OH)1モルに対する炭酸ジフェニルの使用量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上であり、また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
原料の供給方法としては、化合物(A-OH)および炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方または両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルと化合物(A-OH)とのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、触媒が使用される。エステル交換触媒としては、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物が望ましい。
触媒の使用量は、化合物(A-OH)または炭酸ジフェニル1モルに対して、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上であり、また、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、さらに好ましくは20μモル以下である。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成形時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
上記方法によりポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
[添加剤]
本発明の化合物(A)を用いて得られる化合物(A)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂等の樹脂には、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、充填剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜添加して樹脂組成物とすることができる。
離型剤としては、アルコールと脂肪酸のエステルを含むものが好ましい。離型剤の総質量に対する前記エステルの割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステル、多価アルコールと脂肪酸との部分エステル又は全エステルが挙げられる。一価アルコールと脂肪酸のエステルとしては、炭素数1~20の一価アルコールと炭素数10~30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。多価アルコールと脂肪酸との部分エステル又は全エステルとしては、炭素数1~25の多価アルコールと炭素数10~30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。
一価アルコールと飽和脂肪酸とエステルとしては、例えば、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。なかでもステアリルステアレートが好ましい。
多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの部分エステル又は全エステル等が挙げられる。なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましい。
樹脂組成物中の離型剤の含有量は、樹脂100質量部に対して0.005~2.0質量部が好ましく、0.01~0.6質量部がより好ましく、0.02~0.5質量部がさらに好ましい。
熱安定剤としては、例えば、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤及びヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。
リン系熱安定剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、これらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。
なかでも、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイトが特に好ましい。
樹脂組成物中のリン系熱安定剤の含有量は、樹脂100質量部に対して0.001~0.2質量部が好ましい。
硫黄系熱安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3、3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3、3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3、3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。なかでもペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ジラウリル-3、3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3、3’-チオジプロピオネートが好ましく、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)が特に好ましい。
樹脂組成物中の硫黄系熱安定剤の含有量は、樹脂100質量部に対して0.001~0.2質量部が好ましい。
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。なかでも、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
樹脂組成物中のヒンダードフェノール系熱安定剤の含有量は、樹脂100質量部に対して0.001~0.3質量部が好ましい。
リン系熱安定剤とヒンダードフェノール系熱安定剤は、併用することもできる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系からなる群より選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ビス(2.4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(オクチル)オキシ]-フェノール等が挙げられる。
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)等が挙げられる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼン等が挙げられる。
樹脂組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、樹脂100質量部に対して0.01~3.0質量部が好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、用途に応じ、樹脂組成物の成形品に十分な耐候性を付与することが可能である。
[樹脂の物性]
<ガラス転移温度(Tg)>
本発明の化合物(A)を用いて得られる化合物(A)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂等の樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性の観点から100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。また、造形性の観点から、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。
樹脂のガラス転移温度(Tg)の定義及び測定方法は、後述の実施例に記載の通りである。
<屈折率及びアッベ数>
本発明の化合物(A)を用いて得られる化合物(A)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂等の樹脂の20℃で測定した波長589nmの屈折率(以下「nD」と略すことがある)は、1.600以上が好ましく、1.610以上がより好ましく、1.620以上がさらに好ましく、1.630以上がよりさらに好ましく、1.643以上が特に好ましく、1.648以上が最も好ましい。nDが上記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂を用いたレンズの球面収差を低減でき、さらにレンズの焦点距離を短くする事ができる。
本発明の化合物(A)を用いて得られる化合物(A)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂等の樹脂の屈折率から求められるアッベ数(νD)は、光学用途の観点から23以下が好ましく、22以下がより好ましく、21以下がさらに好ましい。
樹脂の屈折率及びアッベ数の定義及び測定方法は、後述の実施例に記載の通りである。
<還元粘度>
本発明の化合物(A)を用いて得られる化合物(A)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂等の樹脂の還元粘度は、得られる成形品の耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、及び機械強度の観点から0.15dl/g以上が好ましく、0.20dl/g以上がより好ましく、0.25dl/g以上がさらに好ましい。また、得られる成形品の生産性や成形性の観点から、1.50dl/g以下が好ましく、1.30dl/g以下がより好ましく、1.20dl/g以下がさらに好ましく、1.15dL/g以下が特に好ましい。
樹脂組成物の還元粘度の定義及び測定方法は、後述の実施例に記載の通りである。
[他の熱可塑性樹脂とのブレンド]
本発明の化合物(A)を用いて得られる化合物(A)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂等の樹脂は、他の樹脂とブレンドして用いてもよい。光学性能が良好で、射出成形ができる傾向があることから、他の樹脂をブレンドすることが好ましい。ブレンドする他の樹脂としては、具体的には、重縮合系ポリマー、オレフィン系ポリマー、又は付加重合系ポリマーが挙げられ、重縮合系ポリマーが好ましい。
重縮合系ポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルカーボネート、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。なかでもポリエステル、ポリカーボネートが好ましい。
例えば、ビスフェノールA、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、ビナフトール、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフタレン(BNEO)、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF)を一つ又は複数種使用したポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネートが好ましい。これらポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の化合物(A)を用いて得られる化合物(A)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂等の樹脂は、成形した場合、光学的に透明であることが好ましいため、本発明の樹脂とブレンドされる他の樹脂は、本発明の樹脂と相溶性を有するものが好ましい。
[用途]
本発明の化合物(A)を用いて得られる化合物(A)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂等の樹脂は、化合物(A)に由来する構成単位に基づく高屈折率と低Tgの特性を有し、例えば、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、レンズ、プリズム、光学膜、基板、光学フィルター、ハードコート膜、導光板等の光学部材に用いることができる。
<レンズ>
本発明の化合物(A)を用いて得られる化合物(A)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂等の樹脂は、高屈折率であるため、光学部材、特にレンズに好適である。
好ましい一実施形態において、レンズは、非球面レンズである。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要が無く、軽量化及び成形コストの低減化が可能になる。したがって、非球面レンズは、レンズの中でも特にカメラレンズ、例えばスマホタブレット等のカメラのレンズとして有用である。
他の好ましい一実施形態において、レンズは、片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズである。
本発明の化合物(A)を用いて得られる化合物(A)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂等の樹脂は、低Tgで成形流動性が高いため、薄肉小型で複雑な形状であるレンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05~3.0mm、より好ましくは0.05~2.0mm、さらに好ましくは0.1~2.0mmである。また、直径が1.0mm~20.0mm、より好ましくは1.0~10.0mm、さらに好ましくは、3.0~10.0mmである。
本発明の化合物(A)を用いて得られる化合物(A)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂等の樹脂からなるレンズは、金型成形、切削、研磨、レーザー加工、放電加工、エッチング等の任意の方法により成形される。この中でも、製造コストの面から、金型成形がより好ましい。金型成形としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、注型、ロール加工等が挙げられる。
本発明の化合物(A)を用いて得られる化合物(A)に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂等の樹脂からなるレンズを射出成形で製造する場合、シリンダー温度230~350℃、金型温度70~170℃の条件にて成形することが好ましく、シリンダー温度250~300℃、金型温度80~160℃の条件にて成形することがより好ましい。シリンダー温度が350℃以下であれば、樹脂が分解着色しにくく、230℃以上であれば、溶融粘度が低く成形しやすい。金型温度が170℃以下であれば、成形片を金型から取り出しやすい。金型温度が70℃以上であれば、成形時の金型内で樹脂が早く固まることを抑制でき、成形片の形状を制御しやすい。また、金型に付された賦型を十分に転写しやすい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。特に記載のない場合、「%」は「質量%」を示す。
〔本発明の化合物(A)の製造と評価〕
H-NMRの測定方法>
外径5mmのNMR試料管に試料約10mgを入れ、溶媒としてDMSO-d0.7mlを用いて溶解させた。JEOL社製 ECZ400S分光計にて共鳴周波数400MHz、測定温度25℃にてH-NMRを測定した。
[合成例1:2,12-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジナフトフラン(2,12DNFE)の合成]
<(1,1’-ビナフタレン)-2,2’,7,7’-テトラオールの合成>
Figure 2023026381000009
フラスコに、2,7-ジヒドロキシナフタレン(80g、499.5mol)、塩化鉄(162.0g、998.9mol)、水(2.0L)、イソプロパノール(300mL)を入れ、40℃で3時間撹拌した。反応液を室温に冷却した後、酢酸エチル(600mL)と水(600mL)を加え、有機層を抽出した後、濃縮し、シリカカラムクロマトグラフィーにより精製することで、緑色固体として(1,1’-ビナフタレン)-2,2’,7,7’-テトラオールを54.2g(収率:67.8%、HPLC純度:89%)得た。
H NMR:(500MHz,DMSO-d) δ ppm =9.20(s,2H),8.93(s,2H),7.68(dd,J=8.5,6.5Hz,4H),7.07(d,J=9.0Hz,2H),6.78(dd,J=8.5,2.5Hz,2H),6.29(d,J=2.0Hz,2H)
<(1,1’-ビナフタレン)-2,2’-ジオール-7,7’-ジメトキシの合成>
Figure 2023026381000010
フラスコに(1,1’-ビナフタレン)-2,2’,7,7’-テトラオール(160g、502.6mol)、メタノール(1800mL)、硫酸(345.1g、3.52mol)を入れ、80℃で撹拌した。反応液に対し、室温で酢酸エチル(2L)を加え、飽和炭酸カリウム水溶液でpHを7~8に中和した。水(2L)を加え、有機層を抽出した後、濃縮することで茶色液体として(1,1’-ビナフタレン)-2,2’-ジオール-7,7’-ジメトキシを417g得た。一部モノメトキシ体も取得されたがそのまま次工程に使用した。
H NMR:(400MHz,CDCl) δ ppm =7.89-7.82(m,2H),7.80-7.73(m,2H),7.24-7.18(m,2H),7.06-6.97(m,2H),6.49(br s,2H),5.08(br s,2H),3.74-3.42(s,6H)
<2,12-ジメトキシジナフトフランの合成>
Figure 2023026381000011
フラスコに(1,1’-ビナフタレン)-2,2’-ジオール-7,7’-ジメトキシ(180g、446.9mol)、パラトルエンスルホン酸(115.4g、670.4mol)、トルエン(2.4L)を入れ、140℃で三日間撹拌した。反応液濃縮後、酢酸エチル(8L)により希釈し、飽和炭酸カリウム水溶液でpH7~8に中和した。その後水(8L)を加え、有機層を抽出した後、シリカカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色固体として2,12-ジメトキシジナフトフランを117g(HPLC純度:64%)得た。
<2,12-ジヒドロキシジナフトフランの合成>
Figure 2023026381000012
フラスコに2,12-ジメトキシジナフトフラン(48.9g、148.9mol)、ジクロロメタン(1,0L)を仕込み、-78℃で3臭化ホウ素(93.3g、372.3mol)を入れ、20℃で5時間撹拌した。水(3L)を滴下した後濃縮し、有機層を除いた後、酢酸エチル(3L)を加え、有機層を抽出した。濃縮により白色固体として2,12-ジヒドロキシジナフトフランを43g(収率:96.2%、HPLC純度:100%)得た。
H NMR:(400MHz,DMSO-d) δ ppm =10.07(s,2H),8.31(d,J=1.6Hz,2H),8.01(d,J=8.8Hz,2H),7.95(d,J=8.8Hz,2H),7.71(d,J=8.8Hz,2H),7.19(dd,J=8.8,2.0Hz,2H)
<2,12-ビス(ヒドロキシエトキシ)ジナフトフランの合成>
Figure 2023026381000013
フラスコに2,12-ジヒドロキシジナフトフラン(7g、23.3mol)、ジメチルホルムアミド(230mL)、炭酸カリウム(322.2mg、2.33mol)を仕込み、エチレンカーボネート(8.2g、93.2mol)をジメチルホルムアミド(20mL)に溶解させたのち、フラスコに滴下した。120℃で反応液を16時間撹拌した後、氷水(400mL)を加え、ろ過することで固体を得た。この固体をアセトニトリルにて20℃で懸洗することにより、灰色固体として2,12-ビス(ヒドロキシエトキシ)ジナフトフランを8.5g(収率:94.3%、HPLC純度:100%)得た。
H NMR:(400MHz,DMSO-d) δ ppm =8.43(d,J=2.0Hz,2H),8.13(d,J=8.8Hz,2H),8.04(d,J=8.8Hz,2H),7.82(2H,d,J=8.8Hz),7.36(dd,J=8.8,2.0Hz,2H),4.97(t,J=5.2Hz,2H),4.28(t,J=4.8Hz,4H),3.86(dd,J=8.8,5.2Hz,4H)
[実施例1]
Figure 2023026381000014
フラスコに(1,1’-ビナフタレン)-2,2’,7,7’-テトラオール(10g、31mmol)、パラトルエンスルホン酸(14g、83mmol)、クロロベンゼン(50mL)を入れ、140から150℃で16時間撹拌した。反応液濃縮後、酢酸エチル(500mL)により希釈し、飽和炭酸カリウム水溶液でpH7~8に中和した。その後水(500mL)を加え、有機層を抽出した後、硫酸ナトリウムを加え乾燥させ、ろ過し、濃縮した後、濃縮物をDMF(ジメチルホルムアミド)に溶かし高速液体カラムクロマトグラフィー(カラムはWaters Torus 2-PIC 150*19mm*5μm)にて、ヘプタン、エタノール溶液を溶媒として用い精製し、黄色固体として目的物の二量体:Dimer Bを850mg(HPLC純度:81A%)得た。
[実施例2]
Figure 2023026381000015
フラスコに、実施例1で得られたDimer B(1.0g、1.7mmol)、ジメチルホルムアミド(10mL)、炭酸カリウム(24mg、0.17mol)を仕込み、エチレンカーボネート(606mg、6.88mmol)をジメチルホルムアミド(5mL)に溶解させた溶液を、このフラスコに滴下した。120℃で反応液を16時間撹拌した後、氷水(100mL)を加え、ろ過することで固体を得た。この固体をアセトニトリル(20mL)が入ったフラスコに加え、2時間熟成し、上澄みを除去した後真空乾燥を行った。その後、高速液体カラムクロマトグラフィー(カラムはWaters Torus 2-PIC 150*19mm*5μm)にて、ヘプタン、エタノール溶液を溶媒として用い精製し、目的の二量体:Dimer B-EOを60mg(HPLC純度:98.4A%)得た。
H NMR:(400MHz,DMSO-d) δ ppm =8.92(d,J=1.6Hz,2H),8.39-8.30(m,4H),8.22(d,J=8.8Hz,2H),8.10(t,J=8.4Hz,4H),8.03(d,J=8.8Hz,2H),7.89(d,J=8.8Hz,2H),7.59(dd,J=8.8,2.0Hz,2H),7.24(dd,J=8.8,2.4Hz,2H),4.77(brt,J=5.2Hz,2H),4.10-3.90(m,4H),3.46-3.43(m,4H)
〔樹脂の製造及び評価〕
[使用原料]
上記で製造した化合物以外に、以下の実施例及び比較例でポリカーボネート樹脂の製造に用いた原料は次の通りである。
DPC(ジフェニルカーボネート):三菱ケミカル社製
BPEF(9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン):大阪ガスケミカル社製
2,12DNFE:2,12-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジナフトフラン
2,12DHEDNT:2,12-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジナフトチオフェン
酢酸カルシウム一水和物(Ca(CHCOO)・HO):キシダ化学社製
[実施例3]
2,12DNFEに対して、得られたDimerB-EOを全体の6モル%(10質量%)となるように加え、DimerB-EO含有2,12DNFE混合物を取得した。
DimerB-EO含有2,12DNFE混合物、BPEF、DPCを下記表1の比率で混合し、触媒として酢酸カルシウム一水和物を0.2質量%水溶液として反応容器に投入した。窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌を行い、原料を溶解しながら、60分で240℃まで常圧で昇温した。
240℃で30分常圧で保持したのち、反応の第1段目の工程として、240℃を保って、圧力を常圧から13.3kPaまで40分で減圧した。その後、13.3kPaで40分保持し、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。第2段目の工程として、加熱槽温度を240℃から270℃まで20分で上昇させた。270℃に到達してから、圧力を13.3kPaから、30分で0.200kPa以下になるように制御しながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、常圧に戻し、生成した反応物を反応容器から取り出すことにより、ポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.458dl/gであった。屈折率を20℃で測定するとnC=1.638、nD=1.645、ne=1.653、nF=1.667であり、アッベ数は22であった。
[実施例4]
実施例3において、樹脂中の各成分の比率を下記表1の通りに変更した以外は同様にポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.388dl/gであった。屈折率を20℃で測定するとnC=1.650、nD=1.659、ne=1.667、nF=1.683であり、アッベ数は20であった。
[比較例1]
BPEFの14.16(0.0323モル)、DPCの7.06g(0.0329モル)、及び触媒として酢酸カルシウム一水和物の1.71×10-3g(9.69×10-6モル)を0.2%水溶液として反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌を行い、60分で220℃まで常圧で昇温して原料を溶解させた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は0.330dl/gであった。屈折率を20℃で測定するとnC=1.634、nD=1.642、ne=1.649、nF=1.762であり、アッベ数は23であった。
[比較例2]
BPEFの12.84g(0.0293モル)、2,12DHEDNTの1.32g(0.0033モル)、DPCの7.11g(0.0332モル)、及び触媒として酢酸カルシウム一水和物の5.73×10-4g(1.76×10-6モル)を0.2%水溶液として反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌を行い、60分で220℃まで常圧で昇温して原料を溶解させた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体の還元粘度は1.152dl/gであった。屈折率を20℃で測定するとnC=1.638、nD=1.647、ne=1.654、nF=1.668であり、アッベ数は22であった。
[評価方法]
<ガラス転移開始温度(Tg)>
示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー社製「EXSTAR 6220」)を用いて、試料約10mgを10℃/minの昇温速度で加熱して測定し、JIS
K 7121(1987)に準拠して、低温側のベースラインと高温側のベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる温度から、中間点ガラス転移開始温度(Tg)を求めた。
<屈折率及びアッベ数>
試料を250℃でプレス成形して厚み約200μmのフィルムを作製し、得られたフィルムを幅約8mm、長さ10から20mmの短冊状に切り出して測定試験片とする。
測定試験片について、アッベ屈折計(アタゴ社製「DR-M4」)で、波長656nm(C線)、589nm(D線)、546nm(e線)、486nm(F線)の干渉フィルターを用いて、各波長の屈折率であるnC、nD、ne、nFを測定した。
測定は、界面液としてジヨードメタン又は1-ブロモナフタレンを用い、20℃で行った。
測定結果から次式によりアッベ数νdを算出した。アッベ数が大きいほど、屈折率の波長依存性が小さくなり、例えば単レンズにした際の波長による焦点のずれが小さくなる。
νD=(1-nD)/(nC-nF)
<還元粘度>
溶媒として、フェノールと1,1,2,2-テトラクロロエタンの1:1混合溶媒(質量比)を用いて試料の溶液を調製し、溶液及び溶媒について、中央理化製DT-504型自動粘度計にてウベローデ型粘度計を用い、温度30.0℃±0.1℃で通過時間を測定した。溶液の濃度は1.00g/dlになるように、精密に調整した。試料は110℃で攪拌しながら、30分で溶解し、冷却後測定に用いた。溶媒の通過時間t0、溶液の通過時間tから、下記式により相対粘度ηrelを求めた。
ηrel=t/t0(g・cm-1・sec-1
相対粘度ηrelから、下記式により比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η-η0)/η0=ηrel-1
比粘度ηspを濃度c(g/dl)で割って、すなわち下記式により、還元粘度(換算粘度)ηredを求めた。この数値が高いほど分子量が大きい。
ηred=ηsp/c
実施例3、4の各測定結果及び比較例1、2の各測定結果を表1に示す。
Figure 2023026381000016

Claims (5)

  1. 下記式(A)で表される化合物。
    Figure 2023026381000017
    (上記式(A)中、Xは置換されていてもよい炭素数1~10のアルキレン基を表し、mは0~4の整数を示し、nは0~4の整数を示し、Rは、水素原子、グリシジル基、アクリロイル基、又はメタクリロイル基を表す。)
  2. 請求項1に記載の化合物に由来する構成単位を含む樹脂。
  3. 請求項1に記載の化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート樹脂。
  4. 請求項1に記載の化合物に由来する構成単位を含むポリエステル樹脂。
  5. 請求項1に記載の化合物に由来する構成単位を含むポリエステルカーボネート樹脂。
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