<第1の実施形態>
第1の実施形態について図1から図11を参照して説明する。
(錠剤印刷装置の構成例)
第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1の構成例について図1及び図2を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給部10と、搬送部20と、検出部30と、第1の撮像部40と、印刷部50と、第2の撮像部60と、回収部70と、制御装置80とを備える。
供給部10は、ホッパ11及びシュータ12を有している。この供給部10は、搬送部20の一端側に位置付けられ、印刷対象物である錠剤Tを搬送部20に供給することが可能に構成されている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、収容した錠剤Tをシュータ12に順次供給する。シュータ12は、ホッパ11から供給された錠剤Tを一列に整列させて搬送部20に供給する。供給部10は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。
搬送部20は、搬送ベルト21、駆動プーリ22、複数の従動プーリ23、モータ24、位置検出器25及び吸引チャンバ26を有する。搬送ベルト21は、無端状のベルトであり、駆動プーリ22及び各従動プーリ23に架け渡されている。駆動プーリ22及び各従動プーリ23は装置本体(図示せず)に回転可能に設けられており、駆動プーリ22はモータ24に連結されている。モータ24は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。位置検出器25は、エンコーダなどの機器であり、モータ24に取り付けられている。この位置検出器25は電気的に制御装置80に接続されており、検出信号を制御装置80に送信する。搬送部20は、モータ24による駆動プーリ22の回転によって各従動プーリ23と共に搬送ベルト21を回転させ、搬送ベルト21上の錠剤Tを図1中の矢印H1の回転方向、すなわち搬送方向H1に搬送する。
搬送ベルト21には、円形状の吸引孔21a(図2参照)が複数形成されている。これらの吸引孔21aは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、一本の搬送路を形成するように搬送方向H1に沿って一列に並べられている。各吸引孔21aは、吸引チャンバ26(図1参照)に形成された吸引路(図示せず)を介して吸引チャンバ26内に接続されており、吸引チャンバ26により吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ26には、ポンプが吸引管(いずれも図示せず)を介して接続されており、ポンプの作動により吸引チャンバ26内が減圧される。吸引管は、吸引チャンバ26の側面(搬送方向H1と平行な面)の略中央に接続されている。また、ポンプは制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。吸引チャンバ26内が減圧されると、搬送ベルト21の各吸引孔21a上に置かれた錠剤Tは吸引孔21aにより吸引され、搬送ベルト21上に保持される。
検出部30は、供給部10が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。この検出部30は、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21上の錠剤TのX方向(図2参照)の位置を検出する。検出部30としては、例えば、変位センサや近接センサなどが用いられる。また、変位センサとしては、例えば、反射型レーザセンサなどの各種のレーザセンサが用いられる。検出部30は制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80に検出信号を送信する。
第1の撮像部40は、検出部30が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。この第1の撮像部40は、検出部30により検出された錠剤TのX方向の位置情報に基づき、錠剤Tが第1の撮像部40の直下の撮像位置に到達した第1の撮像タイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む第1の画像を取得し、取得した第1の画像を制御装置80に送信する。第1の画像は、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向(図2参照)の位置を検出するために用いられる。第1の撮像部40としては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第1の撮像部40は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
ここで、錠剤TのX方向及びY方向の位置は、例えば、第1の撮像部40の撮像領域の中心(基準位置)に対するXY座標系の位置である。また、θ方向の位置は、例えば、第1の撮像部40の撮像領域のY方向の中心線に対する錠剤Tの回転度合いを示す位置である。このθ方向の位置は、錠剤Tに割線が設けられている場合や錠剤Tが楕円形や長円形、四角形などに成型されている場合など、錠剤Tが方向性を有する形体である場合に検出される。
印刷部50は、インクジェットヘッド51を有する。インクジェットヘッド51は、第1の撮像部40が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。インクジェットヘッド51は、複数(例えば数百個から数千個)のノズル51a(図2参照)を有し、ノズル51aが一列に並ぶ方向(ノズル列)が水平面内で搬送方向H1と直交(交差の一例)するように設けられている。インクジェットヘッド51は、ノズル51aごとの駆動素子の動作によって各ノズル51aから個別にインクを吐出する。このインクジェットヘッド51としては、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドが用いられる。インクジェットヘッド51は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。
第2の撮像部60は、印刷部50が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。この第2の撮像部60は、検出部30により検出された錠剤TのX方向の位置情報に基づき、錠剤Tが第2の撮像部60の直下の撮像位置に到達した第2の撮像タイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む第2の画像を取得し、取得した第2の画像を制御装置80に送信する。第2の画像は、錠剤Tに印刷された印刷パターンを検査するために用いられる。第2の撮像部60としては、前述の第1の撮像部40と同様、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第2の撮像部60は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
回収部70は、第2の撮像部60が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送部20における搬送方向H1の下流側の端部に設けられている。搬送部20は、搬送ベルト21上の錠剤Tが所定の位置、例えば、搬送部20における搬送方向H1の下流側の端部に到達した場合に錠剤Tの保持を解除する。回収部70は、搬送部20による保持が解除されて落下する錠剤Tを不良品と良品とに分けて回収するように構成されている。例えば、落下途中の錠剤Tに気体を吹き付け、錠剤Tの落下方向を不良品と良品で変えることで、あるいは、板等の部材により落下経路を変えることで、落下する錠剤Tを不良品と良品とに分けて回収することが可能である。例えば、不良品は印刷不合格錠であり、良品は印刷合格錠である。回収部70は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。
制御装置80は、各種情報及び各種プログラムに基づいて錠剤印刷装置1の各部、例えば、供給部10や搬送部20、検出部30、第1の撮像部40、印刷部50、第2の撮像部60、回収部70などを制御する。また、制御装置80は、位置検出器25や検出部30から送信される検出情報(例えば検出信号)などを受信し、また、第1の撮像部40や第2の撮像部60から送信される画像情報などを受信する。制御装置80は、例えば、集積回路などの電子回路又はコンピュータなどにより実現される。
(制御装置の構成例)
次に、制御装置80の構成例について図3を参照して説明する。
図3に示すように、制御装置80は、画像処理部81と、記憶部82と、制御部83と、データ処理部84とを有する。この制御装置80には、入力装置80aや出力装置80bが接続されている。入力装置80aは、例えば、スイッチやタッチパネル、キーボード、マウスなどにより実現される。また、出力装置80bは、例えば、ディスプレイやランプ、メータなどにより実現される。
画像処理部81は、第1の撮像部40により撮像された第1の画像及び第2の撮像部60によって撮像された第2の画像を取り込み、公知の画像処理技術を用いて画像を処理する。例えば、画像処理部81は、第1の撮像部40から得られた第1の画像を処理し、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置を取得する。また、画像処理部81は、第2の撮像部60から得られた第2の画像を処理し、錠剤Tに印刷された印刷パターン(例えば、文字やマーク)の印刷位置や形状、サイズを取得する。画像処理部81は、取得した各錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報、さらに、各錠剤T上の印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報を制御部83に送信する。
記憶部82は、処理情報や各種プログラムなどを記憶する。例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部82には、印刷に関する印刷データ、搬送ベルト21の移動速度データなどが記憶される。印刷データは、文字やマークなどの印刷パターンの情報を含む。
制御部83は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のコンピュータであり、各部を制御する。例えば、制御部83は、記憶部82に記憶された各種情報や各種プログラムに基づいて、供給部10や搬送部20、検出部30、第1の撮像部40、印刷部50、第2の撮像部60、回収部70、画像処理部81、記憶部82、データ処理部84などを制御する。また、制御部83は、検出部30や位置検出器25から送信される検出信号などを受信する。
例えば、制御部83は、検出部30から送信された検出情報、すなわち搬送ベルト21上の錠剤Tが検出されたタイミングに基づき、搬送ベルト21において錠剤TのX方向の位置を取得し、この錠剤TのX方向の位置を示す位置情報に基づき、第1の撮像部40の第1の撮像タイミング、印刷部50のインクジェットヘッド51の印刷開始タイミング、第2の撮像部60の第2の撮像タイミングを設定し、それらのタイミングを示すタイミング情報を生成して記憶部82に保存する。印刷開始タイミングとは、インクジェットヘッド51の直下の印刷位置に到達した錠剤Tに対して印刷を開始するタイミングである。なお、制御部83は、位置検出器25から送信された検出情報に基づき、搬送ベルト21の移動量(回転量)や速度などの情報を取得することが可能である。
また、制御部83は、画像処理部81から送信された錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報に基づいて、その位置情報を有する錠剤Tに対して印刷条件を設定する。例えば、制御部83は、錠剤TのY方向の位置情報や印刷データに基づいて、インクジェットヘッド51において対象の錠剤Tの印刷に使用するノズル51aの範囲、すなわち使用ノズル範囲を決定し、その使用ノズル範囲や印刷開始タイミングなどを含む印刷条件を設定する。なお、錠剤Tが方向性を有する形体である場合、制御部83は、錠剤Tのθ方向の位置情報に基づいて、錠剤Tのθ方向の位置に対応させて印刷条件を設定する。一例として、制御部83は、印刷パターンの向きを0度から179度の範囲で1度ずつ回転させた180通りの印刷パターンを記憶部82に登録しておき、それらの印刷パターンの中から、錠剤Tのθ方向の位置に適合する角度の印刷パターンを選択して印刷条件を設定する。
また、制御部83は、画像処理部81から送信された、錠剤Tに印刷された印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報に基づいて、印刷パターンが所定形状及び所定サイズで錠剤Tの所定位置に印刷されたか否か、すなわち印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否かを判断する(印刷状態検査)。例えば、制御部83は、印刷パターンの形状及びサイズ判断において、検査用の印刷パターンを記憶部82に登録しておき、その検査用の印刷パターンと実際の印刷後の錠剤T上の印刷パターン(錠剤Tに印刷された印刷パターン)とを比較する。
なお、制御部83は、適宜各種情報(例えば、位置情報やタイミング情報、印刷条件、印刷良否情報など)を記憶部82に保存するが、対象の錠剤Tが回収部70により回収されると、例えば、搬送部20における搬送方向H1の下流側の端部から落下して所定時間(例えば数秒)が経過した時点で、記憶部82から各種情報を削除する。ただし、それらの情報が後工程などで必要となる場合には、錠剤Tごとの各種情報を消去せずに残しておくことも可能である。
データ処理部84は、変換部84aと、決定部84bと、作成部84cとを有する。このデータ処理部84は、錠剤Tに印刷される情報の一例である識別情報を処理し、印刷パターンを生成する。データ処理部84は、情報処理装置として機能する。
変換部84aは、図4に示すように、ステップS1において、識別情報をマトリクス状のドットパターンP1に変換する。図4の例では、識別情報が数字の「1」及び「5」であり、その「1」及び「5」がそれぞれドットパターンP1に変換される。図4の例では、黒四角が印刷ドットを示し、白四角が非印刷ドット(印刷が予定されていないドット)を示す。このドットパターン変換は、予め定められたルールに従って実行されるものであり、例えば、プログラムに基づく変換処理であるが、これに限定されるものではない。なお、ドットパターンP1は、前述した非印刷ドットを含まないものとする。
ドットパターンP1は、複数のドットが行列状に並ぶ二次元配列のパターンであり、文字やマーク、画像などの情報を表現するために使用される。このドットパターンP1は、解像度に基づいて生成される。例えば、解像度がX600dpi×Y600dpiに設定されると、X600dpi×Y600dpiのマトリックスにおいて、識別情報に対応する箇所が変換部84aにより印刷ドットとして決定され、ドットパターンP1が生成される。識別情報は、入力装置80aに対するユーザの入力操作によって入力され、例えば、記憶部82に保存される。なお、解像度は、入力装置80aに対するユーザの入力操作によって設定されてもよく、あるいは、所定の解像度に予め設定されていてもよい。
決定部84bは、ステップS2において、ドットパターンP1おける上下左右すべてにそれぞれ隣接する複数のドットが存在するドット(すなわち、隣接する上下左右すべてにドットが存在するドット)を間引き対象ドットとして決定する。図4の例では、斜線による塗り潰し四角が間引き対象ドットを示す。ステップS2において、黒四角の集合により形成される領域が輪郭エリアA1であり、斜線による塗り潰し四角の集合により形成される領域が間引き対象エリアA2である。輪郭エリアA1は、複数の間引き対象外ドット(印刷ドット)により形成されたエリア、すなわち、各間引き対象外ドットが輪郭を形成するエリアである。間引き対象エリアA2は、輪郭エリアA1により囲まれ、複数の間引き対象ドットにより形成されたエリアである。
作成部84cは、ステップS3において、ドットパターンP1における間引き対象エリアA2を所定の間引きパターンP2aに変換し、所定の間引きパターンP2aを含むドットパターンP2を印刷パターンとして作成する。図4の例では、所定の間引きパターンP2aは市松模様であり、この市松模様の間引きパターンP2aが間引き対象エリアA2に適用されている。
ここで、図5に示すように、市松模様である間引きパターンP2aは、例えば、記憶部82に予め記憶されている。図5の例では、黒四角が間引き対象外ドット(印刷ドット)であり、白四角が間引き対象ドット(非印刷ドット)である。この間引きパターンP2aは、作成部84cにより記憶部82から読み出され、間引き対象エリアA2に適用される。なお、間引きパターンP2aは、複数のドットが行列状に並ぶ二次元配列のパターンであり、所定の模様を有する。この模様としては、市松模様以外にも各種の模様を用いることが可能である。
このようなステップS1からステップS3の処理によれば、識別情報がドットパターンP1に変換され、そのドットパターンP1に輪郭エリアA1及び間引き対象エリアA2が決定され、その間引き対象エリアA2に所定の間引きパターンP2aが当てはめられる。これにより、輪郭エリアA1以外に間引きパターンP2aを含むドットパターンP2が印刷パターンとして生成される。その後、生成された印刷パターンに従って印刷データが生成され、その印刷データに応じた印刷条件に基づいて、インクジェットヘッド51による印刷が実行される。これにより、印刷パターン、すなわち識別情報が錠剤Tに印刷される。
例えば、図6に示すように、識別情報が錠剤Tの一面に印刷される。図6の例では、数字の「1」及び「5」のそれぞれの印刷パターン、すなわち各々のドットパターンP2が錠剤Tの一面に印刷される。錠剤Tに印刷された各ドットパターンP2は、それぞれ、輪郭パターンP1aと、間引きパターンP2aとを有する。輪郭パターンP1aは、複数の間引き対象外ドット(印刷ドット)が数字の輪郭を形成するパターンである。間引きパターンP2aは、輪郭パターンP1aにより囲まれたエリアに形成された市松模様のパターンである。
なお、錠剤Tが方向性を有する形体である場合には、ドットパターンP1の向きを0度から179度の範囲で1度ずつ回転させた180通りのドットパターンP1が記憶部82に記憶されている。印刷処理時には、180通りのドットパターンP1の中から、錠剤Tのθ方向の位置に適合する角度のドットパターンP1が選択されて用いられるが、その際、ドットパターンP1に対して間引き対象エリアA2の決定処理や間引きパターンP2aの適用処理が実施される。このような場合、変換部84aは、ドットパターンP1を1度ずつ回転させて複数のドットパターンを作成し、決定部84bは、ドットパターンP1ごとに間引き対象ドットを決定して間引き対象エリアA2を生成し、作成部84cは、ドットパターンP1ごとに、輪郭エリアA1外に間引きパターンP2aを含むドットパターンP2を印刷パターンとして作成する。
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷工程について図1及び図2を参照して説明する。この印刷工程は、検査工程も含む。なお、印刷に要するデータなどの各種情報は、記憶部82に予め記憶されている。
錠剤印刷装置1が印刷処理を開始すると、モータ24は駆動し、搬送ベルト21はモータ24による駆動プーリ22及び従動プーリ23の回転に伴って搬送方向H1に回転する。搬送ベルト21が搬送方向H1に回転している状態で、錠剤Tがホッパ11からシュータ12に順次供給され、シュータ12により一列に並べられて搬送ベルト21上に一定間隔ではなくランダムに供給される。搬送ベルト21上に供給された錠剤Tは、搬送ベルト21上で一列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。
搬送ベルト21上の錠剤Tは、検出部30によって検出される。詳しくは、搬送ベルト21上の錠剤Tが、検出部30の直下の検出位置(例えばレーザ光の照射位置)に到達するタイミングで検出部30により検出され、その錠剤Tが検出されたタイミングに基づき、搬送ベルト21において錠剤TのX方向の位置が制御部83によって認識される。そして、その錠剤TのX方向の位置を示す位置情報が制御部83により生成され、記憶部82に保存される。
次に、搬送ベルト21上の錠剤Tが第1の撮像部40によって撮像される。詳しくは、搬送ベルト21上の錠剤Tが、第1の撮像部40の直下の撮像位置に到達した第1の撮像タイミングで第1の撮像部40によって撮像され、その第1の撮像部40による撮像により得られた第1の画像が制御装置80に送信される。この第1の画像に基づいて、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報が画像処理部81により生成され、記憶部82に保存される。この錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報や印刷パターンなどの情報に基づき、使用ノズル範囲や印刷開始タイミングなどを含む印刷条件が記憶部82に設定される。なお、前述の印刷開始タイミング(錠剤Tに対して印刷を開始するタイミング)に基づいて、錠剤Tに対する吐出タイミング(錠剤Tに対してインクを吐出するタイミング)が決定される。
この印刷条件に基づいて印刷が印刷部50により実行される。つまり、印刷部50のインクジェットヘッド51が、搬送ベルト21上の錠剤Tに所定の印刷パターン(例えば、ドットパターンP2)を印刷するように制御部83により制御される。詳しくは、第1の撮像部40の下方を通過した搬送ベルト21上の錠剤Tは、インクジェットヘッド51の直下の印刷位置に到達した印刷開始タイミングで、前述の印刷条件に基づいてインクジェットヘッド51によって印刷される。インクジェットヘッド51では、各ノズル51aからインクが適宜吐出され、錠剤Tの上面である被印刷面に印刷パターン(例えば、番号、アルファベット、片仮名、記号、図形)が印刷される。この錠剤Tに塗布されたインクは搬送中に乾燥する。なお、気体あるいは熱による乾燥を行う乾燥部(図示せず)を設け、その乾燥部によりインクを乾燥させるようにしても良い。
その後、搬送ベルト21上の印刷済の錠剤Tが第2の撮像部60によって撮像される。詳しくは、搬送ベルト21上の印刷済の錠剤Tは、第2の撮像部60の直下の撮像位置に到達した第2の撮像タイミングで第2の撮像部60によって撮像され、その第2の撮像部60による撮像により得られた第2の画像が制御装置80に送信される。
この第2の画像は、制御装置80の画像処理部81によって解析される。詳しくは、錠剤Tに印刷された印刷済の印刷パターンに関する情報、すなわち印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズが画像処理部81により取得される。第2の撮像部60から送信された第2の画像が画像処理部81により解析され、錠剤Tにおいて印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズを示す検査情報が生成され、記憶部82に保存される。
この検査情報に基づいて印刷状態検査が制御部83により実行される。詳しくは、記憶部82に保存された前述の印刷位置や形状、サイズに係る検査情報に基づき、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否かが制御部83により判断され、錠剤Tの印刷良否を示す印刷良否情報が生成されて記憶部82に保存される。例えば、印刷状態検査では、印刷に使用した印刷パターンが検査用の印刷パターンとして記憶部82に保存され、検査用の印刷パターンの所定の印刷位置や形状、サイズに関する良品情報と、記憶部82に保存された実際の印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズに関する検査情報とが比較され、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否か(合格又は不合格)が判断される。
最後、搬送ベルト21上の錠剤Tが回収部70により回収される。詳しくは、検査後の錠剤Tが搬送ベルト21の移動に伴って搬送ベルト21の下流側の端部に位置すると、搬送ベルト21に保持された状態から解放され、搬送ベルト21から落下して回収部70により回収される。このとき、合格である良品の錠剤Tは、そのまま落下して回収部70により回収されるが、不合格である不良品の錠剤Tは、搬送ベルト21から落下する途中でエアの吹き付けにより良品と分けて回収部70により回収される。
このような印刷工程において、錠剤印刷装置1は、例えば、特に素錠やOD錠(口腔内崩壊錠)のような、粉を固めて成形した錠剤Tに対して印刷を行うとき、意味を持つ最小単位の文字やマークなどをベタ塗りパターンより少ないドット数で間引き印刷を実行しつつ、文字の輪郭部分についてはドッドを間引かずに印刷を実行する。詳しくは、データ処理部84は、印刷する識別情報を取り込み、その識別情報をドットパターンP1(ベタ塗りパターン)に変換し、ドットパターンP1の中から上下左右すべてにそれぞれ隣接する複数のドットが存在するドットを間引き対象ドットとし、この間引き対象ドットで形成されている間引き対象エリアA2において、市松模様などの所定の間引きパターンP2aに基づいてドットを間引く。これにより、文字やマークなどの輪郭部分を間引かずに、間引き印刷を実行することができる。
したがって、ベタ塗りパターンに比べて、錠剤T上のインク量が減り、錠剤T上のインクが乾燥しやすくなるので、錠剤Tに着弾したインクが乾燥するために要する時間が短くなる。これにより、錠剤Tが回収部70に回収されるまでの間に、錠剤T上のインクが転写しない程度まで乾燥されるので、未乾燥のインクがあることによる転写を抑えることが可能になり、あるいは、錠剤Tに対するインク滲みが発生することも抑えることが可能になるので、錠剤Tに印刷された情報の視認性を低下させず、印刷を実行することができる。
ここで、錠剤Tに印刷を行う文字やマークなどのサイズは通常紙に印刷されるものと比べて非常に小さい。このため、1文字を形成するドット数は少なく、単純に間引きを行っただけでは、文字やマークによっては視認性が低下する。さらに、錠剤Tにおいて文字やマークの視認性は非常に重要であり、それらの視認性が低下することによって飲み間違いや一包化の際の入れ違いが起き、人命に影響することも考えられる。インク滲みを抑えるとともに、錠剤Tに印刷された文字やマーク、すなわち情報の視認性を保つ最適な印刷状態を実現するためには、前述のような輪郭部分を残した状態の間引きを行うことが重要である。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、変換部84aが、インクジェットヘッド51により錠剤Tに印刷される情報(例えば、識別情報)をドットパターンP1に変換し、決定部84bが、ドットパターンP1において、上下左右すべてにそれぞれ隣接する複数のドットが存在するドットを間引き対象ドットとして決定し、作成部84cが、ドットパターンP1において、間引き対象ドットにより形成される間引き対象エリアA2を所定の間引きパターンP2aに変換し、所定の間引きパターンP2aを含むドットパターンP2を印刷パターンとして作成する。これにより、ベタ塗りの印刷パターンに比べて、錠剤T上のインクが乾燥しやすくなるので、他の錠剤Tにインクが転写することを抑え、また、錠剤Tに印刷された印刷パターンが滲むことを抑えることが可能になる。したがって、錠剤Tに印刷された情報の視認性を向上させることができる。
(変形例1)
第1の実施形態に係る変形例1について図7を参照して説明する。
変形例1に係る決定部84bは、ステップS2(図4参照)において、縁取り(図6に示す輪郭パターンP1a)を太くする場合、すなわち、図7に示すように、輪郭エリアA1を大きくする場合、輪郭エリアA1の間引き対象外ドット(間引き対象エリアA2外のドット)に隣接する全ての間引き対象ドット、すなわち、輪郭エリアA1の間引き対象外ドットに対して上下左右斜め(八方)に隣接する間引き対象ドットを間引き対象外ドットに変更し、間引き対象エリアA2から省く。これにより、輪郭パターンP1aを太くして目立たせることが可能になるので、ユーザが識別情報を視認することが容易となり、ユーザの視認性を向上させることができる。
なお、輪郭エリアA1の間引き対象外ドットに対して上下左右斜めに隣接する間引き対象ドットを間引き対象外ドットに変更する場合には、その変更対象の間引き対象ドットから間引き対象エリアA2内に向かって、所定のドット数の間引き対象ドットを間引き対象外ドットに変更してもよい。図7の例では、変更対象の間引き対象ドットから間引き対象エリアA2内に向かって、1ドット分の間引き対象ドットを間引き対象外ドットに変更している。
(変形例2)
第1の実施形態に係る変形例2について図8を参照して説明する。
変形例2に係る決定部84bは、ステップS2(図4参照)において、図8に示すように、輪郭エリアA1の間引き対象外ドット(間引き対象エリアA2外のドット)に隣接する全ての間引き対象ドット、すなわち、輪郭エリアA1の間引き対象外ドットに対して上下左右斜め(八方)のいずれかに隣接する間引き対象ドットを間引き必須対象ドット(図8中の格子による塗り潰し四角)に変更し、間引き対象エリアA2から省く。間引き必須対象ドットは、必ず間引きされるドットであり、間引き必須対象ドットにより形成される間引き必須エリアA3は、所定の間引きパターンP2aが適用される間引き対象エリアA2から除外される。これにより、最も印刷ドットが多い輪郭パターンP1aが滲むことを防止することができるので、ユーザが識別情報を視認することが容易となり、ユーザの視認性を向上させることができる。なお、例えば輪郭部分を目立たせたいマークなどを識別情報として印刷する場合にも、この印刷パターンを採用することが好適である。
例えば、錠剤Tにおいて必ず印刷される輪郭エリアA1(輪郭パターンP1a)の個所では、インクの着弾が最も密集することになり、インク量が多くなる。ところが、その輪郭エリアA1の内側が必ず間引かれるので、乾燥に要する時間を短縮し、錠剤T同士のインク転写を抑えることができ、また、錠剤T上のインク滲みを抑えることができる。
なお、輪郭エリアA1の間引き対象外ドットに対して上下左右斜めのいずれかに隣接する間引き対象ドットを間引き必須対象ドットに変更する場合には、その変更対象の間引き対象ドットから間引き対象エリアA2内に向かって、所定のドット数の間引き対象ドットを間引き必須対象ドットに変更してもよい。図8の例では、変更対象の間引き対象ドットから間引き対象エリアA2内に向かって、1ドット分の間引き対象ドットを間引き必須対象ドットに変更している。
(間引き対象パターンの構成例)
ここで、第1の実施形態、第1の変形例及び第2の変形例においては、図5に示すように、1つの間引き対象外ドット及び1つの間引き対象ドットを交互に有する市松模様状の間引きパターンP2aを用いることを例示したが、これに限るものではない。間引き対象外ドットは印刷ドット(インク吐出領域)であり、間引き対象ドットは非印刷ドット(非吐出領域)である。
他の所定の間引きパターンとしては、例えば、図9に示すように、4つの間引き対象外ドット及び4つの間引き対象ドットを交互に有する市松模様状の間引きパターンP2bを用いてもよく、また、図10に示すように、十字状に並ぶ5つの間引き対象外ドットを繰り返し有する模様状の間引きパターンP2cや、図11に示すように、十字状に並ぶ5つの間引き対象ドットを繰り返し有する模様状の間引きパターンP2dを用いてもよい。
例えば、図5は、50%間引きパターンの一例である。図5の例では、所定の間引きパターンP2aは、1つの間引き対象外ドットと1つの間引き対象ドットとを、縦方向および横方向に交互に配置した市松模様状のパターンである。
図9は、図5とは異なる50%間引きパターンの一例である。図9の例では、所定の間引きパターンP2bは、正方形状に配置された4つの間引き対象外ドットと、正方形状に配置された4つの間引き対象ドットとを交互に配置した市松模様状のパターンである。
図10は、62.5%間引きパターンの一例である。図10の例では、所定の間引きパターンP2cは、十字状に並んだ5つの間引き対象外ドットと1つ間引き対象ドットとを縦方向および横方向に交互に配置したパターンである。図10の例の62.5%間引きパターンを用いれば、図5や図9の例の50%間引きパターンよりも、文字やマークなどを濃く印刷することが可能になる。
図11は、37.5%間引きパターンの一例である。図11の例では、所定の間引きパターンP2dは、十字状に並んだ5つの間引き対象ドットと1つ間引き対象外ドットとを縦方向および横方向に交互に配置したパターンである。図11の例の37.5%間引きパターンを用いれば、図5や図9の例の50%間引きパターンよりも錠剤T上に吐出されるインクの量が少ないため、印刷後のインクの乾燥が進みやすく転写を抑制することが可能になる。また、滲みやすい種類の錠剤に印刷を行う場合においても、50%間引きパターンよりも錠剤T上に吐出されるインクの量が少ない37.5%間引きパターンの方が、印刷後の識別情報が膨張して視認性が低下するのを防止することが可能になる。
ここで、例えば、図11の37.5%間引きパターンは、印刷ドット数が識別情報を構成するドット全体の37.5%であり、間引き対象となるドット数が全体の62.5%である。これは、他の図5や図9、図10などの間引きパターンでも同様である。ただし、間引きに関する比率(間引き比率)は、輪郭部分を間引かないため、輪郭エリアA1を除く、間引き対象エリアA2内での比率である。この比率は、間引き対象エリアA2の形状によって微妙に変わってくるため、図5の場合であれば、2ドット×2ドットで形成されるエリアにおいて50%、図9の場合であれば、4ドット×4ドットのエリアにおいて50%、図10の場合であれば、タテ3ドット×ヨコ4ドット(タテ4×ヨコ3)のエリアにおいて62.5%、図11の場合であれば、3ドット×3ドットのエリアにおいて37.5%というように、間引きパターン最小単位での比率である。したがって、実際の間引き対象エリアA2に、各間引きパターンのいずれかが適用されると、間引きパターンが適用されたパターン、すなわちドットパターンP2における間引き比率は、間引きパターン最小単位での比率と多少変わるが、ほぼ同じ程度の比率となる。
このような所定の間引きパターンP2a~P2dは、予め記憶部82に記憶されてもよい。これらの間引きパターンP2a~P2dは、入力装置80aに対するユーザの入力操作によって選択されて用いられてもよく、あるいは、文字やマークなどの形状に応じて自動的に選択されて用いられてもよい。
なお、間引きパターンとしては、図5、図9~図11に例示した各間引きパターンP2a~P2d以外の間引きパターンを用いてもよく、また、図5、図9~図11に例示した各間引きパターンP2a~P2dを組み合わせて用いてもよい。例えば、一つの間引きパターンにおいて、複数の領域を設定し、領域ごとにパターンが異なるように図5、図9~図11に例示した各パターンを用いてもよい。
また、各種の間引きパターンから、印刷する識別情報の文字の種類(アルファベット、数字、漢字、カタカナ、ひらがな、マーク、イラストなど)、印刷に使用するインクの種類、印刷対象である錠剤の種類によって最も視認性が良くなるパターンを選択することができる。例えば、錠剤に印刷される識別情報の中で、数字は最も頻度が高いものの一つであるが、数字を印刷する場合には曲線が多く、曲線を形成するドット数は直線を形成するドット数よりも少なくなることが考えられるので、50%の間引きパターンを用いることにより視認性を保つ。一方で漢字は直線部分と角部分が多く、特に角部分はドット数が多くなる傾向にあるため、37.5%間引きパターンを用いることにより多くのドットを間引いて視認性を保つ。また、印刷対象である錠剤が、素錠のような粉を固めて成形した錠剤であり、この粉の粒の大きさによって最適な間引きパターンを用いることができる。具体的には、粒が大きいときほど滲みが発生しやすいため、37.5%間引きパターンを用い、粒が小さいときには50%間引きパターンを用いる。このように最適な間引きパターンを採用することで、視認性を向上させることができる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態について図12を参照して説明する。
第2の実施形態では、第1の実施形態に係る間引き処理を実行した場合、文字やマークの形状によって、視認性が低下する場合に対応するためのものである。つまり、文字やマークによっては、第1の実施形態のように「間引き対象ドット」となったドットであっても、そのドットを間引くことによって、視認性が低下する場合がある。例えば、文字やマーク中の曲線部分、あるいは、直線ばかりで構成される文字やマークでは、視認性が低下することがある。
第2の実施形態では、例えば、閾値を「3ドット」と定めた場合(つまり、対象ドットを含めて上下及び左右方向に、最低でも4ドット以上印刷ドットが並んでいなければ間引きを行わないと定めた場合)、第1の実施形態に係るステップS2において、決定部84bは、図12に示すように、間引き対象エリアA2において間引き対象ドットとなったものの中から、上下のいずれか及び左右のいずれかの2方向に隣接し、当該ドットから起算して閾値である3ドット連続するドットが存在しない全ての間引き対象ドットを間引き対象外ドット(図12中の格子による塗り潰し四角)に変更し、間引き対象エリアA2から省く。なお、閾値は3に限らず、印刷する識別情報の文字の種類や、文字や識別情報の大きさ、印刷対象である錠剤の種類によって予め実験によって視認性が最も適当となるものを求め、定めておくことができる。
すなわち、決定部84bは、間引き対象ドットに隣接する上下の少なくとも1方向に当該ドットから起算して3ドット連続してドットが存在し、かつ、左右の少なくとも1方向に当該ドットから起算して3ドット連続してドットが存在する場合に、そのまま間引き対象ドットとする。間引き対象ドットに隣接する上下両方向において当該ドットから起算して3ドット連続してドットが存在しない(例えば2ドットしかない)場合、あるいは間引き対象ドットに隣接する左右両方向において当該ドットから起算して3ドット連続してドットが存在しない(例えば2ドットしかない)場合には、当該間引き対象ドットを間引き対象外ドットに変更する。その後、間引き対象エリアA2は所定の間引きパターンP2a~P2dのいずれかに変換される。
このような処理によれば、例えば、文字やマーク中の曲線部分、あるいは、直線ばかりで構成される文字やマークを印刷する場合においても、錠剤Tに印刷された文字やマークの視認性が低下するような間引きの実行を抑えることが可能になるので、それらの視認性を著しく損なうことなく、間引き印刷を行うことができる。例えば、3ドットなどの少ないドット数で形成された細い線は、輪郭部分において間引き対象外としたとしても全体的に見て視認性を損なってしまうことが考えられるが、本実施形態によれば、閾値より細い幅となる領域は間引きの対象外となるので、視認性を保つことができる。
また、閾値は、印刷する識別情報の文字の種類や、文字や識別情報の大きさ、印刷対象である錠剤の種類によって予め実験によって視認性が最も適当となるものを求め、定めておくことができる。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同じ効果を得ることができる。また、錠剤Tに印刷された文字やマークの視認性が低下するような間引きの実行を抑えることが可能になるので、それらの視認性を著しく損なうことなく、間引き印刷を行うことができる。
なお、間引き対象エリアA2に関して、図12のように飛び地になっている箇所も間引き対象エリアA2として扱われる。つまり、間引き対象エリアA2はつながって形成されているものに限定されるものではなく、つながっていない複数の間引き対象エリアA2の集合が1つの間引き対象エリアA2として扱われてもよい。すなわち、間引き対象エリアA2として指定されたドットすべてが間引き対象エリアA2として扱われる。
(変形例)
第2の実施形態に係る変形例について図13を参照して説明する。
この変形例では、例えば、閾値を「3ドット」と定めた場合、第1の実施形態に係るステップS2において、決定部84bは、図13に示すように、間引き対象エリアA2において間引き対象ドットとなったものの中から、上下左右の4方向のうち少なくとも3方向において隣接し、当該ドットから起算して閾値である3ドット連続するドットが存在しない全ての間引き対象ドットを間引き対象外ドット(図13中の格子による塗り潰し四角)とし、間引き対象エリアA2から省く。
すなわち、決定部84bは、間引き対象ドットに隣接する上下左右の少なくとも3方向に当該ドットから起算して3ドット連続してドットが存在する場合に、そのまま間引き対象ドットとする。間引き対象ドットに隣接する上下左右の3方向に当該ドットから起算して3ドット連続してドットが存在しない(例えば2方向において3ドットあるものの1方向において2ドットしかない)場合には、当該間引き対象ドットを間引き対象外ドットに変更する。その後、間引き対象エリアA2は所定の間引きパターンP2a~P2dのいずれかに変換される。
このような処理によれば、第2の実施形態よりも文字やマーク中の角部分に特徴(例えば、漢字のハネ、はらい部分など)がある場合でも、錠剤Tに印刷された文字やマークの視認性が低下するような間引きの実行を抑えることが可能になるので、角部分に特徴を有する文字やマークの視認性を損なうことなく、間引き印刷を行うことができる。
<第3の実施形態>
第3の実施形態について図14から図31を参照して説明する。
第3の実施形態では、決定部84bは、図14に示すように、印刷パターンであるドットパターンP3のドットが十字型に並んだ場合、十字型に並ぶ複数のドットの真ん中(中央)のドットを印刷しないよう、十字型のドットパターンP3の真ん中のドットを「間引き対象ドット」とし、間引き対象ドットを含むドットパターンP3Aを生成する。すなわち、決定部84bは、上下左右のすべてにそれぞれ隣接する複数のドット(印刷ドット)が存在するドットを間引き対象ドットとして間引き対象ドットを決定する。なお、図14の例では、黒四角が印刷ドットを示し、白四角が非印刷ドットであり、斜線による塗り潰し四角が間引き対象ドットである。これは、図15から図30でも基本的に同様であるため、以下ではその説明を省略する。
以下、図15を用いて十字型に並ぶ複数のドットの真ん中のドットである、間引き対象ドットの指定について具体的に説明する。
例えば、決定部84bは、図15に示すように、印刷パターンが行列状に並ぶベタ塗りのドットパターンP4である場合、検索対象とするドットを示す検索点B1を左から右に走査し、右から左に走査することを繰り返す(図15中の矢印参照)。詳しくは、決定部84bは、検索点B1をドットパターンP4の左上端から右方向に順次ずらし、1ライン分(1行分)ずらし終わったら次のライン(下ライン)の右端に移して左方向に順次ずらし、1ライン分ずらし終わったら次のライン(下ライン)の左端に移して右方向に順次ずらす。決定部84bは、その右方向と左方向のライン走査を交互に列方向に繰り返す。
この走査中、決定部84bは、上下左右のすべてにそれぞれ隣接する複数のドット(印刷ドット)が存在する検索点B1のドットを間引き対象ドットとしていく。例えば、図16に示すように、決定部84bは、検索点B1を中心とする十字型の領域R1における最初の間引き対象ドットを決定する。つまり、図16においては、左上端から右方向に検索点B1を走査させていき、1ライン下のラインを右端から左方向に走査し、2つ目のドットで初めて、間引き対象ドットなるドット(上下左右のすべてにそれぞれ隣接する複数の印刷ドットが存在するドット)に到達することになる。この十字型の領域R1においては、決定部84bが検索点B1の上下左右すべてが印刷ドットであるか否かを判定する。その後の走査において、決定部84bは、間引き対象ドットに既に指定されたドットを「非印刷ドット」として扱い、上下左右のいずれかに隣接する非印刷ドット(間引き対象ドット)が既に存在するドットを間引き対象ドットとしない。
このような走査条件下で、決定部84bは、ドットパターンP4に対して間引き対象ドットを決定していき、図15に示すようなドットパターンP4Aを形成する。このドットパターンP4Aは、輪郭パターンと、輪郭パターンにより囲まれたエリア内の複数のドットが間引かれたドットパターンとを含む。
また、決定部84bは、図17に示すように、検索点B1を右から左に走査し、左から右に走査することを繰り返してもよい。詳しくは、決定部84bは、検索点B1を右上端から左方向に順次ずらし、1ライン分(1行分)ずらし終わったら次のライン(下ライン)の左端に移して右方向に順次ずらし、1ライン分ずらし終わったら次のライン(下ライン)の右端に移して左方向に順次ずらす。決定部84bは、その左方向と右方向のライン走査を交互に列方向に繰り返す。
この走査中、前述と同様、決定部84bは、上下左右のすべてにそれぞれ隣接する複数のドット(印刷ドット)が存在する検索点B1のドットを間引き対象ドットとしていく。また、前述と同様、決定部84bは、上下左右のいずれかに隣接する非印刷ドット(間引き対象ドット)が既に存在するドットを間引き対象ドットとしない。なお、図17に示す走査方向(図17中の矢印参照)は、図15に示す走査方向(図15中の矢印参照)と逆であるが、得られる印刷パターンは同じとなる。
以上のように、走査パターンに基づいて印刷パターンが得られ、得られた印刷パターンに基づいて錠剤Tが印刷される。これにより、輪郭パターンと、その輪郭パターンにより囲まれたエリア内の複数のドットが間引かれたドットパターンで印刷された錠剤Tを得ることができる。
なお、走査パターンを変えることで、走査の方向や順番が変わり、間引き対象ドットが異なることになる。例えば、走査方向は、右方向や左方向以外にも、上方向や下方向であってもよい。つまり、走査パターン(パターン)を変えることで、処理により得られる印刷パターンが変わる場合がある。
例えば、決定部84bは、図18に示すように、印刷パターンがベタ塗りの印刷パターンP5である場合、検索点B1を左から右に走査することを繰り返す(パターン1)。詳しくは、決定部84bは、検索点B1を左上端から右方向に順次ずらし、1ライン分(1行分)ずらし終わったら次のライン(下ライン)の左端に移して右方向に順次ずらす。決定部84bは、その右方向のライン走査を列方向に繰り返す。
このような走査条件下で、決定部84bは、ドットパターンP5に対して間引き対象ドットを決定していき、図18に示すようなドットパターンP5Aを形成する。このドットパターンP5Aは、前述と同様、輪郭パターンと、輪郭パターンにより囲まれたエリア内の複数のドットが間引かれたドットパターンとを含む。これは、他の図19から図23も同様であるため、以下ではその説明を省略する。
また、例えば、決定部84bは、図19に示すように、検索点B1を右から左に走査することを繰り返す(パターン2)。詳しくは、決定部84bは、検索点B1を右上端から左方向に順次ずらし、1ライン分(1行分)ずらし終わったら次のライン(下ライン)の右端に移して左方向に順次ずらす。決定部84bは、その左方向のライン走査を列方向に繰り返す。
また、例えば、決定部84bは、図20に示すように、検索点B1を右から左に走査し、左から右に走査することを繰り返す(パターン3)。詳しくは、決定部84bは、検索点B1を右上端から左方向に順次ずらし、1ライン分(1行分)ずらし終わったら次のライン(下ライン)の左端に移して右方向に順次ずらし、1ライン分ずらし終わったら次のライン(下ライン)の右端に移して左方向に順次ずらす。決定部84bは、その左方向と右方向のライン走査を交互に列方向に繰り返す。
また、例えば、決定部84bは、図21に示すように、検索点B1を左から右に走査し、右から左に走査することを繰り返す(パターン4)。詳しくは、決定部84bは、検索点B1を左上端から右方向に順次ずらし、1ライン分(1行分)ずらし終わったら次のライン(下ライン)の右端に移して左方向に順次ずらし、1ライン分ずらし終わったら次のライン(下ライン)の左端に移して右方向に順次ずらす。決定部84bは、その右方向と左方向のライン走査を交互に列方向に繰り返す。
また、例えば、決定部84bは、図22に示すように、検索点B1を上から下に走査することを右方向に繰り返す(パターン5)。詳しくは、決定部84bは、検索点B1を左上端から下方向に順次ずらし、1ライン分(1列分)ずらし終わったら次のライン(右ライン)の上端に移して下方向に順次ずらす。決定部84bは、その下方向のライン走査を右方向に繰り返す。なお、図22に示すドットパターンP5A(パターン5の結果)は、図18に示すドットパターンP5A(パターン1の結果)と同じとなる。
また、例えば、決定部84bは、図23に示すように、検索点B1を上から下に走査することを左方向に繰り返す(パターン6)。詳しくは、決定部84bは、検索点B1を右上端から下方向に順次ずらし、1ライン分(1列分)ずらし終わったら次のライン(左ライン)の上端に移して下方向に順次ずらす。決定部84bは、その下方向のライン走査を左方向に繰り返す。なお、図23に示すドットパターンP5A(パターン6の結果)は、図19に示すドットパターンP5A(パターン2の結果)と同じとなる。
このように、走査パターンを変えた間引き後のドットパターンP5Aは生成される。出力装置80bは、例えば、ディスプレイであり、制御部83によって間引き後のドットパターンP5Aを複数種類表示、すなわち選択可能に表示し、作業者が使用するドットパターンP5Aを選択するようにしてもよい。また、作業者が使用するドットパターンP5Aを選択する場合には、その選択を一文字毎にできるようにしてもよい。
なお、検索点B1を中心とする領域R1は、十字型に限られるものではなく、例えば、正方形であってもよく、周囲すべてに隣接する複数の印刷ドットが存在するドット(すなわち、隣接する周囲すべてに印刷ドットが存在するドット)を間引き対象としてもよい。例えば、上下左右斜めすべてにそれぞれ隣接する複数の印刷ドットが存在するドットを間引き対象ドットとするようにしてもよい。
図24に示すように、決定部84bは、例えば、印刷パターンであるドットパターンP6のドットが3×3の正方形に並んだ場合、その3×3の正方形に並ぶ複数のドットの真ん中(中央)のドットを印刷しないよう、3×3の正方形に並ぶドットパターンP6の真ん中のドットを「間引き対象ドット」とし、間引き対象ドットを含むドットパターンP6Aを生成する。
例えば、決定部84bは、図25に示すように、検索対象とするドットを示す検索点B1を左から右に走査し、右から左に走査することを繰り返す。詳しくは、決定部84bは、検索点B1を左上端から右方向に順次ずらし、1ライン分(1行分)ずらし終わったら次のライン(下ライン)の右端に移して左方向に順次ずらし、1ライン分ずらし終わったら次のライン(下ライン)の左端に移して右方向に順次ずらす。決定部84bは、その右方向と左方向のライン走査を交互に列方向に繰り返す。
この走査中、決定部84bは、上下左右斜めのすべてにそれぞれ隣接する複数のドット(印刷ドット)が存在する検索点B1のドットを間引き対象ドットとしていく。例えば、図25に示すように、決定部84bは、検索点B1を中心とする正方形の領域R2における最初の間引き対象ドットを決定する。この正方形の領域R2においては、決定部84bが検索点B1の上下左右斜めすべてが印刷ドットであるか否かを判定する。その後の走査において、決定部84bは、間引き対象ドットに既に指定されたドットを「非印刷ドット」として扱い、上下左右のいずれかに隣接する非印刷ドット(間引き対象ドット)が既に存在するドットを間引き対象ドットとしない。
このような走査条件下で、決定部84bは、ドットパターンP5(図18参照)に対して間引き対象ドットを決定していき、図25に示すようなドットパターンP5Bを形成する。このドットパターンP5Bは、前述と同様、輪郭パターンと、輪郭パターンにより囲まれたエリア内の複数のドットが間引かれたドットパターンとを含む。
ここで、第3の実施形態に係る間引き処理を「十字中心消去方式」と呼称する。また、第1の実施形態に係る間引き処理を「輪郭保存マスク方式」と呼称する。これらの十字中心消去方式及び輪郭保存マスク方式を組み合わせてもよい。なお、十字中心消去方式には、正方形に並ぶ複数のドットの中央を間引き対象ドットとする間引き処理も含む。
例えば、輪郭保存マスク方式では、図形によって狭い領域(連続する印刷ドット数が少ない領域)で間引きが実行されないことがある。印刷される文字や図形の色味によっては、さらなる間引きによって視認性が向上する場合がある。例えば、明度が比較的低いインクによる印刷であれば、間引きが十分に行われないことによって連続する印刷ドット数が少ない領域と、連続する印刷ドット数が多い領域とで濃淡差ができてしまうことがある。そこで、決定部84bは、図26に示すように、印刷パターンであるドットパターンP7に対して輪郭保存マスク方式(例えば、図12に関する処理も含む輪郭保存マスク方式)を施してドットパターンP7Aを生成し、その後、ドットパターンP7Aに対して十字中心消去方式を施してドットパターンP7Bを生成してもよい。このドットパターンP7Bが印刷パターンとして用いられる。なお、図26においては、ドットパターンP7、P7AおよびP7Bの周囲に存在する非印刷ドットの図示を省略している。
また、決定部84bは、図27に示すように、予め設定された第1走査パターンに沿ってドットパターンを走査し、輪郭を決定しても良い。このとき、決定部84bは輪郭決定部として機能する。具体的には、まず、行列状に並ぶドットパターンP8に対して検索点B1を左から右に走査することを列方向(一番上の行から順次一行ずつ下へ向かう方向)に繰り返す。この走査において、非印刷ドット(非吐出点)から印刷ドット(吐出点)に変わる境界の印刷ドット、また、印刷ドットから非印刷ドットに変わる境界の印刷ドット、つまり、ドットパターンP8においてドットパターンP8の外側との境界に位置する印刷ドットを探索する。そして、それらの印刷ドットを輪郭ドット(図27中の網線による塗り潰し四角)として決定し、ドットパターンP8Aを生成する。この走査が終了すると、決定部84bは、ドットパターンP8Aに対して検索点B1を上から下に走査することを行方向(一番左の列から順次一列ずつ右へ向かう方向)に繰り返す。そして同様に、非印刷ドットから印刷ドットに変わる境界の印刷ドット、また、印刷ドットから非印刷ドットに変わる境界の印刷ドット(前述と同様、ドットパターンP8AにおいてドットパターンP8Aの外側との境界に位置する印刷ドット)を輪郭ドット(図27中の網線による塗り潰し四角)として決定して、ドットパターンP8Bを生成する。なおこの例においては、中央の印刷されない領域(非印刷領域)を含むドットパターンP8、ドットパターンP8Aにおける非印刷領域内を走査することも含めて「ドットパターンP8の走査」と称する。
図27の例では、左から右への走査を列方向に進めた後に上から下への走査を行方向に進める。上から下への走査をする際、左から右への走査をした結果、輪郭ドットとして決定されたドットが並ぶ一列目では、新たに輪郭ドットとして決定されるドットは存在せず、二列目の一番上のドットが、非印刷ドットから印刷ドットに変わる境界の印刷ドットとなる。
このように輪郭を指定し、残りの印刷ドットに対して間引き処理を行う間引き処理は、「十字中心消去方式」でも「輪郭保存マスク方式」でも、いずれでも良い。なお、輪郭ドットの決定は、上記に限るものでは無い。例えば、ドットパターンP8においてドットパターンP8の外側との境界に位置する印刷ドットの探索に、「十字中心消去方式」で用いた十字型の領域を利用することも可能である。この場合、上下左右に位置するドットのいずれかが非印刷ドットである場合に、そのドットを輪郭ドットとして決定すれば良い。また、この場合、ドットパターンP8の走査は、左右方向と上下方向にそれぞれ行なう必要はなく、全ての印刷ドットを1回ずつ順に走査するようにすれば良い。したがって、走査パターンは、左右方向に順次走査するパターンでも、上下方向に順次走査するパターンでも、或いは、ドットパターンP8の最外周から中心(最内周)に向けて渦巻状に順次走査するパターン、反対に、ドットパターンP8の最内周から最外周に向けて順次走査するパターンなどを採用することができる。
また、上記のように輪郭ドットを決定した後、「十字中心消去方式」を用いて間引き処理を行う場合、その走査パターンは、第3の実施形態で例示したものと同様の走査パターンを採用することができる。この走査パターンは、輪郭ドットを決定する際の第1走査パターンと異なる走査パターンが採用されることもあるが、同じ走査パターンとしても良い。輪郭ドットを決定した後の「十字中心消去方式」で用いる走査パターンを、便宜上、「第2走査パターン」と称する。
また、十字中心消去方式では、決定部84bは、検索点B1の上下左右すべてが印刷ドットであるか否かを判定(調査)するが、必ずしもすべてのドットに対してこの判定を行う必要はない。例えば、決定部84bは、検索点B1の走査を左から右に行う場合、図28に示すように、検索点B1の右のドット(図28中の点による塗り潰し四角)を調べ、その右の当該ドットが非印刷ドットであれば、当該ドットの上下右のドットが間引き対象ドットとなることがないので、当該ドットの上下右のドットを調べる必要はない。このため、上下右のドットに対する調査を省略する。なお、図28おいても、黒四角が印刷ドット、白四角が非印刷ドットを表している。つまり、図28の場合には、検索点B1の上下左右のドットを判定するときに得られる右のドット(検索点B1が次に移動するドット)の判定結果によっては、当該右のドットに検索点B1が移動したときに行う予定であった調査を省略することができる。
なお、仮に、検索点B1が非印刷ドットである場合には、検索点B1の上下左右のドットは間引き対象ドットにならない。したがって、判定部84bはこのような場合にも、これらのドットの調査を省略することができる。
ここで、検索点B1の走査を右から左に行う場合には、検索点B1の左のドットを調べ、検索点B1の走査を上から下に行う場合には、検索点B1の下のドットを調べ、あるいは、検索点B1の走査を下から上に行う場合には、検索点B1の上のドットを調べ、その調べたドットが非印刷ドットであれば、他のドットに対する調査を省略する。つまり、検索点B1が印刷ドットであるときに、検索点B1の走査方向における一つ先のドットが非印刷ドットである否かを調べることで、当該一つ先のドットに隣接するドットについての調査が必要か否かを判断する。このようにして調査を省略することができる。また、検索点B1が非印刷ドットであるときには、その上下左右の調査を省略することができる。
また、検索点B1が印刷ドットであるときに、検索点B1に隣接する上下左右のドットのうちいずれか一つでも非印刷ドットであることが判明した時点で、検索点B1のドットが間引き外対象ドットとなることが決定する。したがって、このような場合には検索点B1に隣接する上下左右のドットのうち未調査のドットの調査を省略することができる。
また、決定部84bは、例えば、右方向への走査を行う場合、検索点B1の右・上・左・下の順番に判定を行ってもよく、また、左方向への走査を行う場合、検索点B1の左・上・右・下の順番に判定を行ってもよい。このように走査方向に応じて判定順番を変えてもよく、あるいは、判定順番を予め定めておいて固定してもよい。また、判定順番は、特に限定されるものではなく、例えば、上・下・左・右や左・右・上・下などでもよく、あるいは、判定開始の検索点B1から時計回りとなる順番でも、反時計周りとなる順番であってもよい。
また、十字中心消去方式では、決定部84bは、図29に示すように、検索点B1の上下左右すべてが印刷ドットであるため(図29中の左上図及び左下図参照)、検索点B1を間引き対象ドット(図29中の左下図の白四角:非印刷ドット)とする。その後、決定部84bは、検索点B1の走査を左から右に行う場合、検索点B1の右のドットは絶対に間引かれることがないので、そのドットを検索点B1とせずに、もう1ドット右のドットを検索点B1としてもよい。つまり、決定部84bは、図29中の左下図から右下図を介して右上図に示すように、検索点B1を2ドット右へ移動させる。その検索点B1(図29中の右上図参照)において、左のドットは必ず印刷ドットであるので、右上下のドット(図29中の右上図の点による塗り潰し四角)だけを調査するだけでもよい。このように、前述のとおり検索点B1がもともと非印刷ドットだった場合のみならず、調査の結果間引き対象となり、非印刷ドットとなった場合においても同様に調査を省略することができる。
また、決定部84bは、図30に示すように、検索点B1の上下左右すべてが印刷ドットであるため(図30中の左上図及び左下図参照)、検索点B1を間引き対象ドット(図30中の左下図の白四角:非印刷ドット)とする。その後、決定部84bは、検索点B1の走査を上から下に行う場合、検索点B1の下のドットは絶対に間引かれることがないので、そのドットを検索点B1とせずに、もう1ドット下のドットを検索点B1としてもよい。つまり、決定部84bは、図30中の左下図から右下図を介して右上図に示すように、検索点B1を2ドット下へ移動させる。その検索点B1(図30中の右上図参照)において、上のドットは必ず印刷ドットであるので、左右下のドット(図30中の右上図の点による塗り潰し四角)だけを調査するだけでもよい。このように、前述のとおり検索点B1がもともと非印刷ドットだった場合のみならず、調査の結果間引き対象となり、非印刷ドットとなった場合においても同様に調査を省略することができる。
また、十字中心消去方式における検索点B1の走査方向は、上下左右のみならず、斜め方向(検索点B1が、右上、左下に移動していく)であっても良く、時計回りや反時計回りに渦巻き状に移動していく方向であっても良い。すなわち、間引き対象ドットとなり得るドットすべてを走査することができれば、どのような走査方向でも良い。なお、どのような走査方向であっても、間引き対象ドットとなり得ないドットの調査は前述のとおり省略することができる。なお、走査方向を斜め方向とした場合、図18に示すような凸状の部分を含むパターンや凹状の部分を含むパターンの場合であっても、縦方向、横方向、或いは斜め方向に印刷ドットの連続が生じることを防止することが可能となる。斜め方向とは、例えば、当該ドットの上下左右に隣接するドット同士の間に位置するドットが存在する方向である。この場合、走査ラインの切替えは、検索点B1がパターンの縁に達した時点で当該ドットに対してトッドパターンの縁に沿って隣接するいずれかのドットに移動するようにして行なえば良い。
また、文字や図形などの全体に間引き処理を行うだけではなく、例えば、図31に示すように、文字又は図形ごとにエリアを指定し、そのエリアごとに間引き方式を使い分けるようにしてもよい。図31の例では、印刷される複数の文字は、「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」である。決定部84bは、それらの文字ごとにエリア1~6を指定し、そのエリア1~6ごとに間引き方式を設定する。例えば、エリア1の間引き方式は十字中心消去方式であり、エリア2の間引き方式は輪郭保存市松間引きマスク方式(市松模様のマスク使用)であり、エリア3の間引き方式は輪郭保存市松間引きマスク方式及び十字中心消去方式の組み合わせであり、エリア4の間引き方式は輪郭保存四間引きマスク方式(図9に示す正方形状に配置された4つの間引き対象ドットを交互に配置した市松模様状のマスク使用)であり、エリア5の間引き方式は輪郭なし市松間引きマスク方式(市松模様のマスク使用)であり、エリア6の間引き方式はなし(間引きなし)である。
なお、エリアごとに間引き方式を設定するだけではなく、例えば、錠剤Tの種類(例えば、裸錠(素錠)、糖衣錠など)ごとや錠剤Tのサイズごと、図形の種類(例えば、文字、画像など)ごとに間引き方式を設定してもよい。例えば、アルファヘッドは間引いて、数字は間引かないようにしてもよく、また、文字は間引いて、画像は間引かないようにしてもよい。また、印刷する文字や画像の大きさによって間引き方式や間引きをするか否かについて選択、設定しても良い。例えば、印刷する文字が大きい場合には多少滲んだとしても視認性が低下しづらくなるので、間引きを行わない、あるいは間引き比率を例えば62.5%とする。印刷する文字が小さい場合には間引きを行い、間引き比率を37.5%として、視認性の低下を防ぐ。さらに、印刷する文字や画像を構成するドット数(文字や画像を構成する線の太さ)によって間引きの有無や間引き比率を選択、設定するようにしても良い。また、印刷に用いるインクの明度によって、あるいは、印刷する文字や画像の所望の濃淡によって、間引き方式や間引きをするか否かを選択、設定しても良い。
<他の実施形態>
前述の説明においては、実施の一形態に係る錠剤印刷装置1(錠剤印刷方法)を用いて錠剤Tに印刷を行うが、これは、実施の一形態に係る錠剤印刷装置1(錠剤印刷方法)を用いて錠剤Tに印刷を行い、印刷済の錠剤Tを製造すると言い換えることも可能である。すなわち、錠剤印刷装置1を錠剤製造装置に、錠剤印刷方法を錠剤製造方法に言い換えることができる。
また、前述の説明においては、情報処理装置として機能するデータ処理部84を制御装置80内に設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、制御装置80あるいは錠剤印刷装置1と別体に設けてもよい。
また、前述の説明においては、錠剤Tを一列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は二列や三列又は四列以上であってもよく、特に限定されるものではなく、搬送ベルト21の本数も二本以上であってもよく、特に限定されるものではない。また、インクジェットヘッド51の個数も二個以上であってもよく、特に限定されるものではない。
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド51として、ノズル51aが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル51aが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしてもよい。また、水平面内において搬送方向H1と直交する方向にインクジェットヘッド51を複数並べて用いるようにしてもよい。
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド51をノズル51aが並ぶ方向が水平面内において搬送方向H1と直交する方向になるように設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル51aが並ぶ方向が水平面内において搬送方向H1と交差する方向になるように設けるようにしてもよい。
また、前述の説明においては、錠剤Tの片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送部20、検出部30、第1の撮像部40、印刷部50及び第2の撮像部60を一つのユニットし、そのユニットを上下に重ねて配置して、上側の搬送部20で印刷した錠剤Tを反転して下側の搬送部20に受け渡し、錠剤Tの両面を印刷するようにしてもよい。
また、前述の説明においては、錠剤Tが搬送ベルト21上に一定間隔ではなくランダムに供給されるとしたが、これに限るものではなく、一定間隔で供給されてもよい。また、前述の説明においては、搬送ベルト21上に形成された吸引孔21aによって錠剤Tが吸引保持されるとしたが、これに限るものではなく、ポケットなどに収容保持され搬送されるようにしてもよく、あるいは、搬送ベルト21上に自重により保持され搬送されるようにしてもよい。
ここで、前述の錠剤Tとしては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤Tとしては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤Tに含めることができる。さらに、錠剤Tの形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤Tが医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本発明の実施形態に係る情報処理装置は、インクジェットヘッドにより錠剤に印刷される情報をマトリクス状のドットパターンに変換する変換部と、前記ドットパターンを、予め定めた第1走査パターンに沿って順次走査し、前記ドットパターンにおいて前記ドットパターン外側との境界に位置するドットを輪郭ドットとして決定する輪郭決定部と、前記ドットパターンにおいて、前記輪郭ドットと決定したドットを除いたドットを間引き対象ドットとして決定する決定部と、前記ドットパターンにおいて、前記間引き対象ドットを間引き、前記間引き対象ドットを間引いたドットパターンを印刷パターンとして作成する作成部と、を備え、前記決定部は、前記ドットパターンにおいて、前記間引き対象ドットにより形成される間引き対象エリアにおいて、予め定めた第2走査パターンに沿って、前記間引き対象ドット上を走査し、上下左右すべてにそれぞれ隣接する複数のドットが存在するドットを順次前記間引き対象ドットとして決定するとともに、前記第2走査パターンの走査順において、上下左右のいずれかに隣接する前記間引き対象ドットが既に存在するドットを前記間引き対象ドットとしない。