JP2023023931A - アンカー材及び補強土壁 - Google Patents

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【課題】構造が簡単で組み立てが容易なアンカー材と排水性能の高い補強土壁を提供すること。【解決手段】本発明のアンカー材1は、先端を壁面パネルA1の背面に連結可能なアンカーバー10と、アンカーバー10に付設した1つ又は複数のアンカープレート20と、を備え、アンカープレート20は、板状のプレート本体21と、プレート本体21の中心付近からプレート本体21の側縁に向かって開拡する楔状溝22と、を有し、アンカーバー10を楔状溝22内に嵌め合わせた状態において、アンカーバー10がプレート本体21の略中心に位置し、アンカーバー10と楔状溝22の溝底との間に間隙Sが設けられることを特徴とする。本発明の補強土壁Aは、地山前面に立設した複数の壁面パネルA1と、壁面パネルA1の背面に連結したアンカー材1と、地山と複数の壁面パネルA1の間に充填した盛土材A2と、を備え、盛土材A2内に埋設したアンカー材1によって、壁面パネルA1を盛土材A2内に定着させたことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、アンカー材及び補強土壁に関し、特に構造が簡単で組み立てが容易なアンカー材と、これを用いてなる排水性能の高い補強土壁に関する。
に関する。
補強土壁とは、垂直方向に積上げた壁面パネルと地山の間に盛土材を充填し、盛土材内に埋設したアンカー材の一端を壁面パネルの背面に連結することで、アンカー材の引抜き抵抗力によって、壁面パネルに作用する土圧に対抗させる土木構造物である。
特許文献1及び2には、壁面パネルの背面に連結した棒状補強材と、棒状補強材に螺着したアンカープレートと、棒状補強材の中間部に棒状補強材と平行に付設した滑り抑止プレートとからなる、補強土壁用のアンカー材が開示されている。
特開2012-211507号公報 特開2010-180572号公報
従来技術には以下の課題がある。
<1>アンカー材の部品数が多く構造が複雑であるため、組み立てに時間がかかる。特に棒状補強材への複数の部材の連通と螺着に手間がかかる。また、部品数が多いため、材料コストが高い。
<2>滑り抑止プレートが盛土材内に水平に配置されるため、盛土材の転圧時に滑り抑止プレートの下部に転圧不足が生じやすく、供用後に盛土材が圧密沈下する原因となるおそれがある。
<3>盛土材の内部にアンカープレートが壁面パネルと平行に配置されるため、盛土材内の浸透水の移動を遮蔽して、アンカープレートの背面に滞留させるおそれがある。これによって、豪雨時等に盛土材内に浸透水による飽和領域が拡大し、補強土壁の強度を低下させるおそれがある。
本発明は、以上の従来技術の課題を解決するためのアンカー材及び補強土壁を提供することを目的とする。
本発明の補強土壁のアンカー材は、先端を壁面パネルの背面に連結可能なアンカーバーと、アンカーバーに付設した1つ又は複数のアンカープレートと、を備え、アンカープレートは、板状のプレート本体と、プレート本体の中心付近からプレート本体の側縁に向かって開拡する楔状溝と、を有し、アンカーバーを楔状溝内に嵌め合わせた状態において、アンカーバーがプレート本体の略中心に位置し、アンカーバーと楔状溝の溝底との間に間隙が設けられることを特徴とする。
本発明の補強土壁のアンカー材は、アンカーバーが、異形鉄筋であってもよい。
本発明の補強土壁は、地山の前面に立設した複数の壁面パネルと、壁面パネルの背面に連結したアンカー材と、地山と複数の壁面パネルの間に充填した盛土材と、を備え、盛土材内に埋設したアンカー材によって、壁面パネルを盛土材に定着させたことを特徴とする。
本発明の補強土壁は、複数の壁面パネルの背面と盛土材の間に砕石からなる排水層を設けてもよい。
本発明の補強土壁は、管状、棒状、又は紐状のドレーン管を備え、ドレーン管を、楔状溝内を通し、アンカーバーの下部に沿って、盛土材内から排水層内にわたって配置してもよい。
本発明の補強土壁は、アンカーバーの先端が、略C字状、略U字状、又は略V字状のフック端であって、壁面パネルの背面に付設した環状金具にフック端を係止し、又は環状金具に係止したフック端の先端をアンカーバーに固定して連結してもよい。
本発明の補強土壁は、アンカーバーの後端を、地山内に打設した鉄筋挿入工の頭部と連結してもよい。
本発明の補強土壁は、壁面パネルが、金属製の網状体からなっていてもよい。
本発明のアンカー材及び補強土壁は、次の効果の少なくともひとつを備える。
<1>アンカー材が2部材のみからなり、アンカープレートの楔状溝にアンカーバーを嵌め込むだけで連結できるため、組み立てが容易で、短時間で組み立てることができる。また、部品数が少なく構造が単純であるため、材料コストが安価である。
<2>面状のアンカープレートと棒状のアンカーバーの2部材に分解できるため、荷姿がよく、積み重ねて一度に多数搬送できると共に、保管場所を広く占有しない。
<3>アンカーバーをアンカープレートの楔状溝に嵌め込んで固定する構造であるため、盛土材内の浸透水がアンカープレートに阻害されず、間隙や楔状溝を通って移動できる。このため、排水性能が高く、豪雨時にも補強土壁の強度の低下を惹起しにくい。
本発明に係る補強土壁の説明図。 壁面パネルの説明図。 本発明に係るアンカー材の説明図。 連結端の説明図。 アンカー材の組み立て方法の説明図。 実施例2の説明図。 実施例4の説明図。
以下、図面を参照しながら本発明のアンカー材及び補強土壁について詳細に説明する。
[補強土壁]
<1>全体の構成(図1)。
本発明の補強土壁Aは、地山の前面に立設した複数の壁面パネルA1と、壁面パネルA1の背面に連結したアンカー材1と、地山と壁面パネルA1の間に充填した盛土材A2と、を少なくとも備える。
本例では、1枚の壁面パネルA1に対して1つのアンカー材1を付設する。ただしアンカー材1の数はこれに限らず、補強土壁Aの設計に応じて、複数のアンカー材1を壁面パネルA1の適宜の位置に付設することができる。
アンカー材1は、盛土材A2内に埋設する。なお、本例ではアンカー材1の楔状溝22を下向きにして埋設しているが、これを上向きに埋設してもよい。
本例では、壁面パネルA1の背面と盛土材A2の間に、砕石からなる排水層A3を設ける。
本例では複数の壁面パネルA1を垂直に積み上げるが、これに限らず、所定の角度をもって傾斜して積上げてもよい。
また盛土材A2内に公知の水抜きパイプを配置してもよい(不図示)。
<2>壁面パネル(図2)
壁面パネルA1は、補強土壁Aの壁面を構成する部材である。
壁面パネルA1は、背面側にアンカー材1と連結するための連結部A1aを備える。
本例では壁面パネルA1として、背面に略コの字形の金属製の連結部A1aを縦向きに埋設したプレキャストコンクリート製パネルを採用する。ただし壁面パネルA1の構造はこれに限らず、コンクリートブロック、樹脂製パネル、捨て型枠等であってもよい。
壁面パネルA1には、水抜き穴を設けてもよい(不図示)。
<3>盛土材
盛土材A2は、地山と壁面パネルA1の間に充填する盛土である。
本例では盛土材A2として、気泡混合材等を含む軽量盛土を採用する。
盛土材A2は軽量盛土に限らず、現地発生土、各種の改良土、建設残土等を採用することができるが、一層ごとのまき出し厚さを30~50cmとし、各層ごとに充分転圧し、締め固めることが望ましい。また、水分を多く含む建設残土は固化剤等を用いて改良土として採用することが望ましい。
<4>アンカー材(図3)
アンカー材1は、壁面パネルA1に作用する土圧に対し、引抜き抵抗力を発揮する部材である。
アンカー材1は、アンカーバー10と、アンカーバー10に付設した1つ又は複数のアンカープレート20と、を少なくとも備える。
本例では、1本のアンカーバー10に3枚のアンカープレート20を付設する。ただしアンカープレート20の数はこれに限らず、1枚、2枚、又は4枚以上であってもよい。
<4.1>アンカーバー
アンカーバー10は、壁面パネルA1と連結する棒状の部材である。
アンカーバー10は、バー本体11と、バー本体11の先端に設けた連結端12と、を備える。
本例ではアンカーバー10として、先端を連結端12に加工した異形鉄筋を採用する。異形鉄筋は所定の引張強度が確保されており、周面の凹凸が後述するアンカープレート20の楔状溝22に噛み合いやすいいのでアンカーバー10に至適である。
ただしアンカーバー10は異形鉄筋に限らず、PC鋼棒、FRPロッド、アラミドFRPロッド等であってもよい。
<4.1.1>連結端(図4)
アンカーバー10は、バー本体11の先端に壁面パネルA1に連結するための連結端12を備える。
本例では連結端12が、略C字状のフック端12aである(図4(a))。フック端12aを壁面パネルA1の背面に設けた環状の連結部A1aに係止することで、アンカー材1を壁面パネルA1に揺動可能に連結する。
これによって、補強土壁Aの供用後、盛土材A2が圧密沈下を引き起こしても、盛土材A2内のアンカー材1が追従して沈下することで、盛土材A2内におけるアンカー材1の定着が切れにくく、アンカー材1の引き抜き抵抗機能を維持することができる。
なお、連結端12は略C字状に限らず、略U字状(図4(b))、又は略V字状の他の形状のフック端12aであってもよい。
また、フック端12aの折り返した先端をクランプ金具等でバー本体11に固定してもよい(図4(c))。
この他、壁面パネルA1の背面に連結部A1aとして雌ねじインサートを埋設し、アンカーバー10の先端に雄ねじを刻設して連結端12として、雌ねじインサートに螺着して連結する構造であってもよい(図4(d))。
<4.2>アンカープレート
アンカープレート20は、盛土材A2内における支圧機能を備える材である。
アンカープレート20は、板状のプレート本体21と、プレート本体21に設けた楔状溝22と、を少なくとも有する。
本例ではプレート本体21として、防錆処理を施した略矩形の鋼板を採用する。ただしプレート本体21の形状や素材はこれに限らず、例えば形状は円形であってもよい。
アンカープレート20は、アンカーバー10を楔状溝22内に嵌め合わせた状態において、バー本体11がプレート本体21の略中心に位置し、バー本体11と楔状溝22の溝底との間に間隙Sが設けられる。
<4.2.1>楔状溝
楔状溝22は、アンカーバー10を嵌め込む溝である。
楔状溝22は、プレート本体21の中心付近から側縁に向かって開拡する。本例では楔状溝22の溝底が、プレート本体21の平面視において円弧状を呈する。
楔状溝22の開角は問わないが、溝幅との関係において、プレート本体21の中心において、アンカーバー10のバー本体11が堅く嵌り合う角度である必要があり、概ね2°~5°程度が望ましい。
楔状溝22の溝底は、プレート本体21の中心より深い。すなわち、プレート本体21の側縁側からみると、楔状溝22はプレート本体21の中心より対辺側まで切り込んでいる。
このため、アンカーバー10のバー本体11を楔状溝22内に嵌め合わせた状態において、バー本体11と楔状溝22の溝底との間に間隙Sが構成される。
本発明のアンカー材1は、アンカーバー10とアンカープレート20とを、間隙Sを保持しつつ嵌め合わせて連結する構造であるため、盛土材A2内の浸透水がプレート本体21によって阻害されず、間隙Sや楔状溝22を通って移動できるため、排水性能が高い。
<4.3>アンカー材の組み立て方法(図5)
本発明のアンカー材1は、現場で容易に組み立て可能な点に一つの特徴を有する。
すなわち、アンカープレート20の楔状溝22内に、アンカーバー10のバー本体11を嵌め込むだけでアンカー材1が完成する。
詳細には、例えば現場にて楔状溝22を上向きにしてアンカープレート20を地面に配置し、楔状溝22内にアンカーバー10を位置決めする。
続いて、バー本体11の楔状溝22近くの部分をハンマー等で叩いて、バー本体11を楔状溝22内に嵌め込む。
本発明のアンカー材1は、楔状溝22がプレート本体21の中心より深く切り込んであるため、プレート本体21の中心において楔状溝22が開きやすく、アンカーバー10の嵌め込みが容易であると共に、楔状溝22の復元力によってアンカープレート20をアンカーバー10に確実に固定することができる。
また、棒状のアンカーバー10と面状のアンカープレート20に分けて搬送・保管できるため、輸送性が高く、保管場所をとらない。
<5>排水層
排水層A3は、盛土材A2内の地下水や浸透水を外部へ排出するための層である。
本例では排水層A3として、壁面パネルA1の背面に砕石を充填し、厚さ20cm程度の層を構築する。
補強土壁における排水層の構造自体は公知なのでここでは詳述しない。
[ドレーン管を設ける例]
本例では、盛土材A2内のアンカー材1に沿ってドレーン管A4を配置する(図6)。
本例ではドレーン管A4として、有孔の水抜きパイプを採用する。
ドレーン管A4を、アンカーバー10のバー本体11の下部に沿って、盛土材A2内から排水層A3内にわたって配置する。
本発明のアンカー材1は、アンカープレート20が楔状溝22を備えるため、楔状溝22を通して、ドレーン管A4をバー本体11に沿って連続して配置することができる。
ドレーン管A4は望ましくは、バー本体11の後端部より後方に延出し、先端を排水層内A3に到達させる。
ドレーン管A4は、有孔の水抜きパイプの他、繊維状の棒状体、紐状体等の公知のドレーン材を採用することができる。
一般に、盛土材内にアンカー材を埋設する場合、アンカーバーの下部やアンカープレートの周辺の盛土材を十分に転圧できないため、盛土材内の地下水や浸透水がアンカーバー下部やアンカープレート周辺に滞留しやすい。
本例では、バー本体11の下部に沿ってドレーン管A4を配置することで、これらの滞留水を盛土材A2内から排水層A3内に誘導して円滑に排出し、盛土材A2内の間隙水圧を低減することができる。
[アンカー材を鉄筋挿入工と連結した例]
本例では、アンカー材1の後端を地山に打設した鉄筋挿入工(ロックボルト)の頭部と連結する。
背面の地山に鉄筋挿入工が施工されている場合、地山から鉄筋挿入工の頭部が突出する。そこで本例では、アンカー材1のバー本体11の後端部を鉄筋挿入工の頭部と連結する。
詳細には、例えば地山に打設する鉄筋挿入工の頭部をO字状に、バー本体11の後端部を略C字状、略U字状、又は略V字状等に加工しておき、直接係止して又はシャックルやカラビナ等の金具を介して両者を連結する。
本例の場合、地山の勾配が急で盛土厚が比較的薄い設計であっても、地山内の鉄筋挿入工と連結することで、アンカー材1が盛土材A2の土圧に対して有効に引抜き抵抗力を発揮することができる。
[壁面材が金属製の網状体からなる例]
本例では、壁面パネルA1が、金属製の網状体からなる(図7)。
金属製の網状体としては例えば、エキスパンドメタル、クリンプ金網、ワイヤーメッシュ等を採用することができる。
本例では、矩形のエキスパンドメタルの前面に、十字状に組んだチャンネル材を付設して補強し、チャンネル材の中央に孔をあけてナットを付設し、背面側からアンカー材1のアンカーバー10を連結する。
エキスパンドメタルの背面には、吸出し防止材を貼り付けるが、吸出し防止材を植生マットとすることで、壁面の緑化も可能となる。
1 アンカー材
10 アンカーバー
11 バー本体
12 連結端
12a フック端
20 アンカープレート
21 プレート本体
22 楔状溝
A 補強土壁
A1 壁面パネル
A1a 連結部
A2 盛土材
A3 排水層
A4 ドレーン管
S 間隙

Claims (8)

  1. 地山の前面に立設した複数の壁面パネルと、地山と前記複数の壁面パネルの間に充填した盛土材と、を備える補強土壁において、前記壁面パネルを前記盛土材内に定着させるための、アンカー材であって、
    先端を前記壁面パネルの背面に連結可能なアンカーバーと、
    前記アンカーバーに付設した1つ又は複数のアンカープレートと、を備え、
    前記アンカープレートは、板状のプレート本体と、前記プレート本体の中心付近から前記プレート本体の側縁に向かって開拡する楔状溝と、を有し、
    前記アンカーバーを前記楔状溝内に嵌め合わせた状態において、前記アンカーバーが前記プレート本体の略中心に位置し、前記アンカーバーと前記楔状溝の溝底との間に間隙が設けられることを特徴とする、
    アンカー材。
  2. 前記アンカーバーが、異形鉄筋であることを特徴とする、請求項1に記載のアンカー材。
  3. 地山の前面に立設した複数の壁面パネルと、
    前記壁面パネルの背面に連結した請求項1又は2に記載のアンカー材と、
    地山と前記複数の壁面パネルの間に充填した盛土材と、を備え、
    前記盛土材内に埋設した前記アンカー材によって、前記壁面パネルを前記盛土材に定着させたことを特徴とする、
    補強土壁。
  4. 前記複数の壁面パネルの背面と前記盛土材の間に砕石からなる排水層を設けたことを特徴とする、請求項3に記載の補強土壁。
  5. 管状、棒状、又は紐状のドレーン管を備え、前記ドレーン管を、前記楔状溝内を通し、前記アンカーバーの下部に沿って、前記盛土材内から前記排水層内にわたって配置したことを特徴とする、請求項4に記載の補強土壁。
  6. 前記アンカーバーの先端が、略C字状、略U字状、又は略V字状のフック端であって、前記壁面パネルの背面に付設した環状金具に前記フック端を係止し、又は前記環状金具に係止した前記フック端の先端を前記アンカーバーに固定して連結したことを特徴とする、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の補強土壁。
  7. 前記アンカーバーの後端を、地山内に打設した鉄筋挿入工の頭部と連結したことを特徴とする、請求項3乃至6のいずれか一項に記載の補強土壁。
  8. 前記壁面パネルが、金属製の網状体からなることを特徴とする、請求項3乃至7のいずれか一項に記載の補強土壁。
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