JP2023023472A - 缶胴及び缶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】近年では、省資源化の要請により缶蓋や缶胴の板厚の薄肉化が進められている。そして、薄い板厚が用いられることにより、缶胴に缶蓋を取り付ける際にフランジ先端が缶蓋のカール領域に食い込み孔があく、カットシームと称するトラブルが発生するおそれが大きくなっている。カットシームが生じると、形成された二重巻締部に充分な密封効果を得られない可能性がある。【解決手段】開口部にフランジ先端領域を設け、前記フランジ先端領域は、缶胴内側線が上側に凸の曲面となっていることを特徴とする缶胴を用いる。これにより、缶胴のフランジ先端領域に対する容易な加工によって、カットシームを予防することができる。【選択図】 図6
Description
本発明は、飲料や食品、その他の物が充填される缶における、缶胴のフランジ形状に関するものである。
従来、二重巻締めで缶を密封する際には、有底円筒状の缶胴に内容物を充填し、缶胴の開口部に缶蓋を載置して周辺部を二重巻締めする。二重巻締めされる缶胴のフランジ先端領域は、リング状であって、水平の平面に加工されている(特許文献1。)。二重巻締めにより缶を密封する際には、まず、図1に示すように缶胴7に缶蓋2を載せる。図1は、缶胴7に缶蓋2を被せた状態で、缶胴7の中心軸である缶軸Aを含む平面による縦断面を示したものである。そして、カール領域21にフランジ先端領域71を巻込んで締め、缶胴7に缶蓋2を固定して缶を密封する。
この二重巻締めでは、第1巻締め工程と第2巻締め工程の2段階の工程により巻締める。第1巻締め工程では、缶胴7と缶蓋2を図1に示す缶軸Aを中心にして回転させながら、図2に示すように、カール領域21の外側から第1巻締ロール3を矢印の方向に押し付ける。図2は、図1の左上部におけるフランジ先端領域71とカール領域21の近傍を拡大した縦断面と、第1巻締ロール3の縦断面を示す。第1巻締ロール3は、周囲に凹部31が形成されており、凹部31の縦断面形状は曲線状である。缶胴7と缶蓋2を回転させながら、第1巻締ロール3を矢印の方向に押し付けることにより、第1巻締ロール3も回転し、カール領域21とフランジ先端領域71は外側から下方に向けて一体的にカールする。そして、外方から折り返されながら抱き合わせるようにしてカール領域21がフランジ先端領域71を巻込む。なお、第1巻締め工程の前に、カール領域21のフランジ先端領域71側にはコンパウンド(図示せず)を付着させている。
第1巻締め工程が終了すると、第2巻締め工程に移行する。第2巻締め工程では、缶胴7と缶蓋2を、缶軸Aを中心に回転させ、第2巻締ロール4を押し付ける。第2巻締ロール4は回転しながら、巻込み部分をさらに半径方向外方から押しつぶす。そして、図3に示す押しつぶされた二重巻締部51を形成し、密封が完了する。図3では、第2巻締めが終了した後に離間した第2巻締ロール4も記載している。第2巻締ロール4の凹部41は、第1巻締ロール3の凹部31と異なる形状を有する。密封が完了した二重巻締部51では、フランジ先端領域71は折り返って下方に向き、ボディーフック72の一部を形成している。また、ボディーフック72の内側ではカール領域21の先端領域が上方を向いている。なお、図2と同様に、図3でもコンパウンドの記載を省略している。
缶胴7に缶蓋2を取り付ける二重巻締めを行う際には、第1巻締め工程の段階で缶胴7におけるフランジ先端領域71の先端であるフランジ先端711が、缶蓋2のカール領域21の表面に接触して滑りながら、フランジ先端領域71が変形していく。ところで、近年では、省資源化の要請により缶蓋2や缶胴7の板厚の薄肉化が進められている。そして、薄い板厚が用いられることにより、フランジ先端711が缶蓋2のカール領域21に食い込み孔があく、カットシームと称するトラブルが発生するおそれが大きくなっている。カットシームが生じると、形成された二重巻締部51に充分な密封効果を得られない可能性がある。
図4に、第1巻締め工程を縦断面図で示す。図4は、図1の左上部におけるフランジ先端領域71とカール領域21の近傍を拡大した縦断面である。図4でも、コンパウンドの記載を省略している。図4(a)は、巻締めを行う前の缶胴7に缶蓋2を被せた状態である。第1巻締め工程では、図4(a)の状態で缶胴7と缶蓋2が回転し、図2に矢印で示すように第1巻締ロール3がカール領域21に押し付けられる。第1巻締ロール3が押しつけられてカール領域21が変形すると、カール領域21がフランジ先端領域71を押して変形させ、図4(b)のように巻締部5が変形する。さらに第1巻締ロール3が押し付けられると、図4(c)のように巻締部5が変形する。
図4(b)、(c)の巻締部5では、フランジ先端領域71の先端側の端部であるフランジ先端711が、カール領域21に押し付けられている。その後、図3に示すように、第2巻締め工程で巻締部5が第2巻締ロール4により押しつぶされて二重巻締部51となる。このように、フランジ先端領域71を含む領域がボディーフック72になる過程で、カール領域21に押し付けられるフランジ先端711によりカール領域21に穴があいて、図5に示すようなカットシーム6が生じるおそれがある。
従来の単純形状の巻締ロールを適用した場合、上記のようにフランジ先端領域71とカール領域21の複雑な動きに十分に対応することができず、カットシーム6が生ずる危険性があった。そこで、二重巻締めの成形工具を工夫して、カットシーム6を予防することも考えられるが、成形工具が複雑になるといった不都合が生じる。
本発明の一実施形態は、缶胴の開口部に設けたフランジ先端領域を、上側に凸の曲面とするものである。
本発明によれば、缶胴のフランジ先端領域に対する容易な加工によって、カットシームを予防することができる。
本発明では、図6に示すようなフランジ先端領域11の形状により、カットシーム6を予防する。フランジ先端領域11は、開口部にフランジ先端111を端部として設けられている。缶胴1は開口部の近傍において、フランジ先端111の側から順に、フランジ先端領域11、屈曲領域13、首領域14と続いて形成される。フランジ先端111はフランジ先端領域11の先端である。本願では、缶軸Aを含む平面による缶胴の縦断面において、内側の線を、缶胴内側線Sとする。缶胴内側線Sは、缶胴の中部及び下部で内方となる内面の側の線であって、開口端で缶胴が折り返ると、缶胴内側線Sは缶胴の外側に位置する。缶胴の内面は、アルミニウム合金板の表面に塗装が施されている。塗装はアルミニウム合金板の厚さに比べて十分に薄い層であるが、缶胴内側線Sは塗装も含めた缶胴の内側の線である。缶胴1を水平面に接地した際に、缶胴内側線Sでフランジ先端領域11と屈曲領域13の境界が最高位置15となっている。フランジ先端領域11は、フランジ先端111から最高位置15までの領域である。
図6に示す実施形態において、缶胴内側線Sは、フランジ先端領域11では曲率半径FRが2.2mmの上側に凸の曲線である。フランジ先端領域11の缶胴内側線Sは、全体にわたって上側に凸の曲線となっている。また、缶胴内側線Sは、屈曲領域13では曲率半径BRが1.4mm、首領域14では曲率半径SRが5.0mmである。また、首領域14において、缶軸Aに垂直である缶胴1の横断面における内側の円の半径ARは、202mmである。
図6に示す実施形態において、最高位置15からフランジ先端111の上側であって缶胴内側線Sの側までの高さの差である先端倒れ量Dは、0.079mmである。また、缶胴1を水平面に接地した際に、フランジ先端111の縦断面における上側の接線である先端接線Tは、水平面Hに対する角度θが15.4°である。
本実施形態の缶胴1を用いた缶の製造方法においても、図2、3に示したように、缶蓋2の周囲におけるカール領域21と、缶胴1のフランジ先端領域11とを一緒に巻締めて、缶蓋2を缶胴1に装着する。図7に、図6のフランジ先端領域11を有した缶胴1を用いた際の第1巻締め工程を、フランジ先端領域11近傍の要部を拡大した縦断面図で示す。図7においても、図4と同様にコンパウンドの記載は省略している。図7(a)は、巻締めを行う前の缶胴1に缶蓋2を被せた状態である。図7(a)の状態で、第1巻締め工程においてカール領域21が、図2に示すように第1巻締ロール3により押される。第1巻締ロール3により押されてカール領域21が変形すると、カール領域21がフランジ先端領域11を押して変形させ、図7(b)のように巻締部5が変形し、さらに図7(c)のように巻締部5が変形する。
第1巻締め工程の図7(b)、(c)の巻締部5では、フランジ先端領域11の先端であるフランジ先端111がカール領域21から離れている。そして、第1巻締め工程の後、第2巻締め工程で巻締部5が第2巻締ロール4により押しつぶされて二重巻締部51となり、ボディーフック12が形成される。このように、第1巻締め工程の段階でフランジ先端111がカール領域21から離れていることによって、フランジ先端111はカール領域21に食い込むことがない。そして、図5に示したカットシーム6が生じることなく、図3の二重巻締部51を形成することができる。
図7(b)、(c)に示すように、第1巻込み工程では変形した巻締部5でフランジ先端111がカール領域21から離れていることが好ましい。しかし、第1巻込み工程で変形する巻締部5において、フランジ先端111がカール領域21から離れていなくても、缶胴1のフランジ先端領域11を図6のような缶胴内面が上側に凸の曲面の形状とすることにより、フランジ先端111がカール領域21に押し付けられる力は弱くなる。押し付け力が弱くなることによって、フランジ先端111はカール領域21に食い込みにくくなり、図3の二重巻締部51を形成した際にカットシームが生じにくくなる。
上記の実施形態では、缶軸Aを含む平面による縦断面の缶胴内側線Sにおいて、フランジ先端領域11の曲率半径FRは2.2mmである。しかし、フランジ先端領域11において、曲率半径FRは一定でなくてよく、曲率半径FRは、
1.0mm≦FR≦10.0mm
の範囲であればよい。
1.0mm≦FR≦10.0mm
の範囲であればよい。
フランジ先端領域11は、長さFLが
1.5mm≦FL≦3.5mm
であることが好ましい。
1.5mm≦FL≦3.5mm
であることが好ましい。
実施形態では、水平面に接地した際に、缶胴内側線Sにおけるフランジ先端111の上側の接線である先端接線の前記水平面に対する角度θの大きさは、15.4°である。しかし、角度θの大きさは、
0°<θ≦70°
の範囲であればよい。このような角度とすることにより、フランジ先端領域11を上に凸の曲面としたときに、カットシームを生じること無く巻締めを容易に行うことができる。角度θは、0°より大きければ、0°よりもフランジ先端111がカール領域21に食い込みにくい。
角度θは、さらに、
10°≦θ≦50°
の範囲とすることが好ましい。
0°<θ≦70°
の範囲であればよい。このような角度とすることにより、フランジ先端領域11を上に凸の曲面としたときに、カットシームを生じること無く巻締めを容易に行うことができる。角度θは、0°より大きければ、0°よりもフランジ先端111がカール領域21に食い込みにくい。
角度θは、さらに、
10°≦θ≦50°
の範囲とすることが好ましい。
また、上記の実施形態では、缶軸Aを含む平面による縦断面の缶胴内側線Sにおいて、屈曲領域13の曲率半径BRは1.4mmである。しかし、屈曲領域13において曲率半径BRは一定でなくて良い。曲率半径BRは、
0.5mm≦BR≦5.0mm
の範囲であることが好ましい。
ただし、屈曲領域13におけるBRの最小値は、フランジ先端領域11におけるFRの最小値よりも小さい。
0.5mm≦BR≦5.0mm
の範囲であることが好ましい。
ただし、屈曲領域13におけるBRの最小値は、フランジ先端領域11におけるFRの最小値よりも小さい。
さらに、上記の実施形態では、缶軸Aを含む平面による縦断面の缶胴内側線Sにおいて、首領域14の曲率半径SRは5.0mmである。しかし、首領域14において曲率半径SRは一定でなくてよい。曲率半径SRは、
2.0mm≦SR≦10.0mm
の範囲であることが好ましい。
ただし、屈曲領域13におけるBRの最小値は首領域14におけるSRの最小値よりも小さい。
2.0mm≦SR≦10.0mm
の範囲であることが好ましい。
ただし、屈曲領域13におけるBRの最小値は首領域14におけるSRの最小値よりも小さい。
また、フランジ先端領域11において、缶胴1を水平面に接地した際に、最高の高さである最高位置15からフランジ先端111までの高さの差である先端倒れ量Dは、
0.01mm≦D≦1.00mm
の範囲であることが好ましい。
フランジ先端領域11をこのような形態とすることにより、フランジ先端領域11を上に凸の曲面としたときに、巻締めを容易に行うことができる。また、先端倒れ量Dがあることにより、複数の缶胴1を集積させた際に、フランジ先端111が隣の缶胴1の外面に当たって傷を付ける可能性が小さくなる。
先端倒れ量Dは、さらに、
0.05mm≦D≦0.50mm
の範囲であることがより好ましい。
0.01mm≦D≦1.00mm
の範囲であることが好ましい。
フランジ先端領域11をこのような形態とすることにより、フランジ先端領域11を上に凸の曲面としたときに、巻締めを容易に行うことができる。また、先端倒れ量Dがあることにより、複数の缶胴1を集積させた際に、フランジ先端111が隣の缶胴1の外面に当たって傷を付ける可能性が小さくなる。
先端倒れ量Dは、さらに、
0.05mm≦D≦0.50mm
の範囲であることがより好ましい。
最高位置15よりもフランジ先端111の側であるフランジ先端領域11において、缶胴内面が上側に凸の曲面となっていれば、カットシームが生じにくくなる。これは、フランジ先端111近傍の変形が円滑に行われることによるものと推測される。
缶胴1のフランジ先端領域11の形状を上記のように形成することによって、フランジャーも公知のフランジャーを用いることができる。材料も限定されず、缶胴芯材であるアルミニウム合金板の少なくとも一方の面に熱可塑性樹脂が被着されたラミネート板を適用してもよい。缶胴芯材は他の材質でもよく、缶胴の内側は他の樹脂等の層としてもよい。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
1 缶胴
11 フランジ先端領域
111 フランジ先端
12 ボディーフック
13 屈曲領域
14 首領域
15 最高位置
2 缶蓋
21 カール領域
3 第1巻締ロール
31 凹部
4 第2巻締ロール
41 凹部
5 巻締部
51 二重巻締部
6 カットシーム
7 缶胴
71 フランジ先端領域
711 フランジ先端
72 ボディーフック
A 缶軸
S 缶胴内側線
11 フランジ先端領域
111 フランジ先端
12 ボディーフック
13 屈曲領域
14 首領域
15 最高位置
2 缶蓋
21 カール領域
3 第1巻締ロール
31 凹部
4 第2巻締ロール
41 凹部
5 巻締部
51 二重巻締部
6 カットシーム
7 缶胴
71 フランジ先端領域
711 フランジ先端
72 ボディーフック
A 缶軸
S 缶胴内側線
Claims (8)
- 開口部にフランジ先端を端部とするフランジ先端領域を設け、
前記フランジ先端領域は、缶胴内面が上側に凸の曲面となっていることを特徴とする缶胴。 - 前記フランジ先端領域の前記曲面は、缶軸を含む平面による縦断面の缶胴内側線における曲率半径FRの大きさが、
1.0mm≦FR≦10.0mm
の範囲であることを特徴とする請求項1に記載された缶胴。 - 前記フランジ先端領域は、前記フランジ先端から最高位置までの領域であることを特徴とする請求項1又は2に記載された缶胴。
- 前記フランジ先端領域の前記フランジ先端からの長さFLは、
1.5mm≦FL≦3.5mm
の範囲であることを特徴とする請求項3に記載された缶胴。 - 水平面に接地した際に、前記フランジ先端の上側の接線である先端接線の前記水平面に対する角度θの大きさは、
0°<θ≦70°
の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載された缶胴。 - 前記角度θの大きさは、
10°≦θ≦50°
の範囲であることを特徴とする請求項5に記載された缶胴。 - 最高の高さである最高位置から前記フランジ先端までの高さの差である先端倒れ量Dは、
0.01mm≦D≦1.00mm
の範囲であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載された缶胴。 - 前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載された缶胴の前記開口部に缶蓋を被せ、
前記缶蓋の周囲におけるカール領域と、前記フランジ先端領域とを一緒に巻締めて、前記缶蓋を前記缶胴に装着することを特徴とする缶の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021129036A JP2023023472A (ja) | 2021-08-05 | 2021-08-05 | 缶胴及び缶の製造方法 |
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JP2021129036A JP2023023472A (ja) | 2021-08-05 | 2021-08-05 | 缶胴及び缶の製造方法 |
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JP2023023472A true JP2023023472A (ja) | 2023-02-16 |
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