JP2023021072A - 減速機用転がり軸受部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】特定の化学成分を有する鋼材を使用し、その表面に浸炭窒化処理を施すことで表層部に窒化物を形成し、水素脆化による破損を遅延させる転がり軸受部品(外輪または内輪)を提供する。【解決手段】減速機に内蔵される転がり軸受の部品において、質量%で、C:0.80~1.20%、Si:0.05~1.20%、Mn:0.10~1.00%、Cr:1.50~4.00%、Mo:0.10~1.00%、残部鉄および不可避不純物を含む鋼製であり、最表層には浸炭窒化層を形成する。【選択図】図1
Description
本発明は、自動車,産業機械,ロボット等に内蔵される減速機の転がり軸受の部品(内外輪)に関する。
転がり軸受は、すべりを伴う環境下などにおいて使用される場合、潤滑剤や水分などが分解することによって水素が発生し、発生した水素が鋼中に侵入することにより、水素脆性を引き起こし、転がり軸受の疲労寿命を著しく低下させることが知られている。中でも、減速機用途の転がり軸受は、高速回転における発熱やすべりにより、潤滑油やグリースが分解されて水素が発生するため、水素脆性型の早期剥離(水素脆性剥離)が散見されており、その対策が求められていた。
その対策の一環として、摩擦抵抗の低い転がり軸受に関して、転がり軸受の部品、特に内外輪の表面を浸炭窒化処理や窒化処理により表面に窒化層を形成し、水素トラップサイトとして有効な微細な窒化物を生成させることで水素脆性剥離が生じるような場合においても優れた面疲労強度を有する技術が開示されている(特許文献1および特許文献2参照)。また、潤滑剤の添加剤としてモリブデン酸塩および有機酸塩を含むことで摩耗により露出した金属新生面に被膜を生成し、グリースの分解による水素の発生を抑制して水素脆性型の早期剥離を抑制する方法が知られている(特許文献3参照)。
しかし、代表的な軸受鋼(SUJ2)に対して表面に浸炭窒化処理や窒化処理による水素トラップサイトを使った対応策では、有効な窒化物を生成するために必要な元素が少ないため、使用寿命やその効果が不十分であった。また、軸受内部に充填する潤滑剤(オイルやグリース)の種類は転がり軸受の使用環境によって予め決定されている場合が多く、そのような場合には十分な対策が取れないという問題があった。
また、転がり軸受の潤滑不良によって、転動体と内外輪の軌道間に金属接触が発生し、金属接触により発生する熱と潤滑油の反応により水素が発生し、金属組織が変質することで内外輪の表層組織が白色組織となって、早期に剥離する場合もある。
そこで、本発明は特定の化学成分を有する鋼材を使用し、その表面に浸炭窒化処理を施すことで表層部に窒化物を形成し、水素脆化による破損を遅延させる転がり軸受部品(外輪または内輪)を提供することを課題とする。
本発明の転がり軸受部品は、質量%で、C:0.80~1.20%、Si:0.05~1.20%、Mn:0.10~1.00%、Cr:1.50~4.00%、Mo:0.10~1.00%、残部鉄および不可避不純物を含む鋼製として、最表層には浸炭窒化層が形成する減速機用転がり軸受部品とした。この浸炭窒化層は厚さを800μm以下とする。
また、浸炭窒化層の硬さはロックウェル硬さのCスケールで60HRC以上65HRC以下の範囲とする。さらに、浸炭窒化層に含有するC量(炭素量)は質量%で0.80%以上2.50%以下の範囲であり、かつN量(窒素量)は質量%で0.05%以上1.00%以下の範囲とする。なお、転がり軸受の部品は内輪または外輪のいずれでも構わない。
本発明の減速機用転がり軸受部品は、質量%で、C:0.80~1.20%、Si:0.05~1.20%、Mn:0.10~1.00%、Cr:1.50~4.00%、Mo:0.10~1.00%、残部鉄および不可避不純物を含む鋼製であって、その表面に浸炭窒化処理を施すことで浸炭窒化層を形成するので、水素トラップサイトとして有効な微細窒化物を増加させ、潤滑不足による金属接触により水素が発生しても、鋼中への侵入を抑制することができる。
結果として、内外輪の表面に白色組織が生成されにくいことで早期破損を防止する。同時に、耐熱性の高い母材を使用することで、高温環境下での硬さ低下や寿命低下を抑制する効果を奏する。ここで、「水素トラップサイト」とは、鋼中に侵入した水素を捕捉し、水素が最大応力負荷圏に集中しないよう分散させる、クロム(Cr)系窒化物やMnSi系窒化物等などの析出物をいう。
本発明の一実施形態である減速機用転がり軸受部品の主な化学成分の含有量について説明する。C(炭素)の含有量は、転がり軸受の表層および内部硬さを確保するために0.80~1.20%とした。Si(ケイ素)の含有量は、耐熱性の効果を有し、浸炭窒化によりSiとMnと複合窒化物を形成し、水素トラップサイトとして働くので、0.05~1.20%とした。
Mn(マンガン)の含有量は、耐摩耗性の効果を有し、浸炭窒化処理によりSiとMnの窒化物を形成して水素トラップサイトとして働くので、0.10~1.00%とした。Cr(クロム)の含有量は、耐熱性、耐摩耗性に効果があり、浸炭窒化により窒化物を形成して水素トラップサイトとして働く。また、炭化物の形成により硬さ確保、焼入れ性改善にも効果があるので、1.50~4.00%とした。
Mo(モリブデン)の含有量は、粒界強化による水素脆化抑制に効果があり、焼入れ性を改善するので、0.10~1.00%とした。前述した化学成分を含有する鋼材を、以下「母材」と言う。
次に、母材の表面に形成する浸炭窒化層について説明する。当該浸炭窒化層は、母材の表層部より窒素、炭素が侵入拡散することでCr系やMnSi系の窒化物を形成し、それらが水素トラップサイトとして作用し水素の侵入拡散を抑制する役割を果たす。また、浸炭窒化処理時における侵入窒素の影響により、母材の表層部に対する焼戻し軟化抵抗を向上させる。
結果として母材の耐熱性が向上する効果がある。このような効果を発揮できる窒素量および炭素量として、浸炭窒化層に含有するC量(炭素量)を質量%で0.80%以上2.50%以下の範囲、N量(窒素量)を質量%で0.05%以上1.00%以下の範囲に限定した。
浸炭窒化層の硬さ(硬度)は、転がり軸受部品としての耐摩耗性に影響する。特に、ロックウェル硬さのCスケールでHRC60未満を下回ると転がり軸受の転がり面が摩耗しやすくなる。そのため、転がり軸受部品の転がり面に摩耗によって新生面が生成されると、水素脆性型の組織変化による剥離が発生しやすくなるため、浸炭窒化層の硬さはロックウェル硬さのCスケールで60HRC以上65HRC以下の範囲とした。
次に、本発明の一実施形態である減速機用転がり軸受部品(内輪)の断面組織写真を図1に示す。本発明の減速機用転がり軸受部品は、図1に示す様に母材の表面には、厚さが約0.8mm(800μm)の浸炭窒化層が形成されている。
(実施例1)
転がり軸受部品の水素脆化による転動疲労寿命を評価するために、所定の試験片(以下、スラストプレート試験片という)に一定量の水素を含有(チャージ)させた上で転がり寿命(転動疲労)試験を行ったので、その試験結果について図面を用いて説明する。
転がり軸受部品の水素脆化による転動疲労寿命を評価するために、所定の試験片(以下、スラストプレート試験片という)に一定量の水素を含有(チャージ)させた上で転がり寿命(転動疲労)試験を行ったので、その試験結果について図面を用いて説明する。
本試験には、本発明の鋼材(発明材)と高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)の表面に浸炭窒化層を有する試験片(比較材1)と浸炭窒化層の無い試験片(比較材2)の合計3種類の鋼材を用いて、直径65~70mmの素材から直径61mm、厚さ6mmのスラストプレート試験片を粗加工した後、発明材および比較材1のみを浸炭窒化処理および焼入れ焼戻し処理を行った。各種熱処理を行った後、スラストプレート試験片の表面を厚さ5.8mmに研削仕上げおよびバフ仕上げによる最終仕上げを行い、スラストプレート試験片とした。
前述したスラストプレート試験片への水素含有は、まず1L中に1.4gのチオシアン酸アンモニウムを溶解した希硫酸電解液を用いて、電流密度0.4mA/cm2で20時間の陰極チャージ(水素チャージ)を行った。水素チャージが完了した後、スラストプレート試験片の表面をペーパー研磨仕上げしてから、転動疲労試験を開始した。
転動疲労試験に使用した試験機(転動疲労試験機)の模式図を図2に示す。転動疲労試験機は、図2に示されるように、円盤型の試験片13を取り付けた油槽に潤滑油15を注入し、テーブル14を押し上げ、保持器に支持された鋼球12をスラスト軸受11で受けることで所定面圧を負荷し、その状態でモータからの動力を伝達する軸10を回転させるものである。
転動疲労試験の条件は面圧4.9GPaで、潤滑はナフテン系鉱油(ENEOS製グリセフオイルF8)を用いて、負荷速度1800rpmで試験を行った。同一条件で約10点の試験を行い、ワイブル分布の累積破損確率が10%となるL10寿命を求めて評価寿命とした。
本試験の結果、発明材の転動疲労のL10寿命は、8.82×106回と優れていた。一方、比較材1は同L10寿命が2.50×106回であり、比較材2が9.13×105回となり、水素脆性型の早期転動疲労破壊が生じて低寿命であった。したがって本発明の鋼材(発明材)による転がり軸受部品は、水素脆性型の転動寿命が改善していることが分かった。
(実施例2)
次に、転がり軸受の長時間使用による高温雰囲気下における表面硬さの変化を把握するために高温域における表面硬さを測定したので、その測定試験結果について説明する。本測定試験では、実施例1で使用した3種類の鋼材(発明材および比較材1,2)によるスラストプレート試験片を用いて、180~450℃の雰囲気下に1時間保持した後、室温まで冷却してから試験片の表面硬さ(単位:ロックウェルCスケール)を測定した。なお、試験温度は、180℃、230℃、260℃、300℃、320℃、350℃、400℃および450℃の計8水準とした。各試験温度における発明材および比較材1,2の表面硬さ(HRC)の変化を表1に示す。
次に、転がり軸受の長時間使用による高温雰囲気下における表面硬さの変化を把握するために高温域における表面硬さを測定したので、その測定試験結果について説明する。本測定試験では、実施例1で使用した3種類の鋼材(発明材および比較材1,2)によるスラストプレート試験片を用いて、180~450℃の雰囲気下に1時間保持した後、室温まで冷却してから試験片の表面硬さ(単位:ロックウェルCスケール)を測定した。なお、試験温度は、180℃、230℃、260℃、300℃、320℃、350℃、400℃および450℃の計8水準とした。各試験温度における発明材および比較材1,2の表面硬さ(HRC)の変化を表1に示す。
発明材の表面硬さは、表1に示す様に62.2HRCから53.5HRCまで低下して、低下量は8.7となった。これに対して、比較材1は62.1HRCから50.9HRCまで低下して、比較材2は61.2HRCから46.2HRCまで低下して、比較材1および2の低下量は約11.2~15HRCであった。したがって、比較材1および2の表面硬さの低下量は、発明材の低下量に対して約1.3~1.7倍であり、発明材は比較材1および2に対して高温硬さの低下量も大きく抑制できることがわかった。
Claims (4)
- 減速機に内蔵される転がり軸受の部品において、前記転がり軸受の部品は質量%で、C:0.80~1.20%、Si:0.05~1.20%、Mn:0.10~1.00%、Cr:1.50~4.00%、Mo:0.10~1.00%、残部鉄および不可避不純物を含む鋼製であり、表層には厚さ800μm以下の浸炭窒化層が形成されていることを特徴とする減速機用転がり軸受部品。
- 前記浸炭窒化層の硬さは、ロックウェル硬さのCスケールで60HRC以上65HRC以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の減速機用転がり軸受部品。
- 前記浸炭窒化層に含有するC量は質量%で0.80%以上2.50%以下の範囲であり、かつN量は質量%で0.05%以上1.00%以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の減速機用転がり軸受部品。
- 前記転がり軸受の部品は、内輪または外輪のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の減速機用転がり軸受部品。
Applications Claiming Priority (2)
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JP2021125718 | 2021-07-30 |
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JP2022121114A Pending JP2023021072A (ja) | 2021-07-30 | 2022-07-29 | 減速機用転がり軸受部品 |
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