JP2023020020A - カルベン化合物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】単離可能な安定性を有するカルベン化合物及びその製造方法を提供する。【解決手段】下記式(1)で表されるカーボネート塩を溶媒中で加熱させることを含む、下記式(2)で表されるカルベン化合物の製造方法 。【化1】JPEG2023020020000050.jpg19170【化2】JPEG2023020020000051.jpg19170(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、明細書に定義される通りである。)【選択図】なし

Description

本発明は、カルベン化合物及びその製造方法に関する。
N-ヘテロ環状カルベン化合物などのカルベン化合物は、様々な有機金属触媒の配位子として利用されている。
一般的なカルベン化合物の製造方法としては、たとえば、塩化ビスアミノ化合物を水素化ナトリウムやカリウムtert-ブトキシドなどの強塩基性化合物と反応させる方法が知られている(非特許文献1,2)。
一般に、カルベン化合物は大気中では不安定であり、有機金属触媒の配位子として利用する際には、溶液中で発生させてそのまま金属原子へ配位させるため、カルベン化合物を単離する試みはほとんどなされていない。
非特許文献3は、1,3-ジ置換イミダゾリウム炭酸水素塩(HCO )を原料として使用することで、1,3-ジ置換イミダゾールカルベンを配位子として有する金属錯体を製造できることから、1,3-ジ置換イミダゾリウム炭酸水素塩(HCO )はカルベンと平衡関係にあることが示されている。しかし、1,3-ジ置換イミダゾリウム炭酸水素塩(HCO )から直接、1,3-ジ置換イミダゾールカルベンそのものを製造、単離することは示されていない。これらのことから、一般に、1,3-ジ置換イミダゾリウム炭酸水素塩(HCO )は、カルベンから合成可能な化合物(例えば、カルベンと発生するCOが反応した1,3-ジ置換イミダゾール-2-カルボキシレートや上述した金属錯体など)は得られるが、カルベンのみを単離することが難しいと考えられてきた。
さらに、本願発明者らが1,3-ジメチルイミダゾリウム炭酸水素塩の水溶液をクロロベンゼン溶媒中で加熱したところ、カルベン化合物ではなく1,3-ジメチルイミダゾリウム炭酸水素塩から水が脱離した1,3-ジメチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートが得られた(後述する比較例1参照)。
Journal of the American Chemical Society 1991, 113, 1, 361-363. Journal of the American Chemical Society, 1994, 116, 6641-6649. Journal of the American Chemical Society 2012, 134, 6776-6784.
従来のカルベン化合物の製造方法では、皮膚腐食性などの強い毒性を有する強塩基性化合物を用いる必要があり、安全性の面からその使用は好ましいものではない。このことから、本発明は、強塩基性化合物を使用しないカルベン化合物の製造方法を提供することを課題とする。
強塩基性化合物を用いてカルベン化合物を溶液中で発生させて次の反応に利用する場合、様々な夾雑物質が存在するので反応が複雑になる。
本発明は、カーボネート塩からカルベン化合物を単離することができる新規な製造方法及び新規カルベン化合物を提供することを他の課題とする。
本発明は、以下のカルベン化合物及びその製造方法を包含する。
[1]
下記式(1)で表されるカーボネート塩を溶媒中で加熱させることを含む、下記式(2)で表されるカルベン化合物の製造方法。
式(1):
Figure 2023020020000001
(式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。RとR、RとR、RとR、或いは、RとRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環構造を形成してもよい。CRで表される基又はCRで表される基は、アダマンチル基であってもよい。Rは水素原子又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
式(2):
Figure 2023020020000002
(式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。)
[2]
前記溶媒の沸点が水の沸点よりも高く、水の沸点よりも高い温度に加熱することを含む、[1]に記載のカルベン化合物の製造方法。
[3]
反応温度が40~200℃である、[1]又は[2]に記載のカルベン化合物の製造方法。
[4]
式(1)で表されるカーボネート塩が、下記式(1-1)で表されるカーボネート塩である[1]~[3]のいずれか1項に記載のカルベン化合物の製造方法。
式(1-1):
Figure 2023020020000003
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。Lは、窒素原子同士を結ぶ炭素数2~40の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。)
[5]
式(1)で表されるカーボネート塩が下記式(1-2)又は式(1-3)のいずれかで表されるカーボネート塩である[4]に記載のカルベン化合物の製造方法。
式(1-2):
Figure 2023020020000004
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。R10及びR11は、同一又は異なって、水素原子又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R10及びR11はそれらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。)
式(1-3):
Figure 2023020020000005
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。R12及びR13は、同一又は異なって、水素原子又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R12とR13は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。)
[6]
、R、R、R、R及びRが同一又は異なって、炭素数1~8のアルキル基である[1]~[5]のいずれか1項に記載のカルベン化合物の製造方法。
[7]
前記溶媒が芳香族炭化水素溶媒、脂肪族又は脂環式炭化水素溶媒、又はハロゲン化芳香族炭化水素溶媒である、[1]~[6]のいずれか1項に記載のカルベン化合物の製造方法。
[8]
下記式(2)で表されるカルベン化合物。
式(2):
Figure 2023020020000006
(式中、R、R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R及びRは、同一又は異なって、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数2~20の炭化水素基を示す。RとR、RとR、RとR、或いは、RとRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環構造を形成してもよい。)
[9]
下記式(2-1)で表される、[8]に記載のカルベン化合物。
式(2-1):
Figure 2023020020000007
(式中、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。Lは、窒素原子同士を結ぶ炭素数2~40の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。)
[10]
下記式(2-2)又は式(2-3)のいずれかで表される、[8]又は[9]に記載のカルベン化合物。
式(2-2):
Figure 2023020020000008
(式中、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。R10及びR11は、同一又は異なって、水素原子又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R10及びR11はそれらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。)
式(2-3):
Figure 2023020020000009
(式中、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。R12及びR13は、同一又は異なって、水素原子又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R12とR13は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。)
[11]
下記式で表される[8]に記載のカルベン化合物。
Figure 2023020020000010
本発明によれば、カーボネート塩からカルベン化合物を製造することができる。カーボネート塩は、加熱により水又はアルコールとCOを発生し、これらを除去することで高純度のカルベン化合物を得ることができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明において、式(2)で表されるカルベン化合物(以下、カルベン化合物(2)という。)は、式(1)で表されるカーボネート塩(以下、カーボネート塩(1)という。)を加熱することにより製造される。
カルベン化合物(2)を得るために、カーボネート塩(1)は、溶媒中で加熱することが好ましい。溶媒の具体例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族又は脂環式炭化水素溶媒、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル溶媒等が挙げられ、好ましくは芳香族炭化水素溶媒、脂肪族又は脂環式炭化水素溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素溶媒であり、特に好ましくはトルエンである。本発明の製造方法では、カーボネート塩(1)において、Rがヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基である場合は、アルコール(R-OH)が副生し、カーボネート塩(1)において、Rが水素原子である場合は水が副生する。このため、水又はアルコールを除去するために、カーボネート塩(1)において、Rがヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基である場合は、副生するアルコール(R-OH)よりも高沸点の溶媒を使用することが好ましい。また、カーボネート塩(1)において、Rが水素原子である場合は水よりも高沸点の溶媒を使用することが好ましい。溶媒は必要に応じて2種以上を混合して使用することもできる。
溶媒の使用量は、カーボネート塩(1)1質量部に対して、通常150質量部以下、好ましくは0.1質量部以上120質量部以下である。
反応温度は、好ましくは40~200℃、より好ましくは60~150℃、さらに好ましくは80~130℃である。反応は、溶媒の沸点付近、たとえば加熱還流下に行うことが好ましい。本発明の製造方法では、加熱時にカーボネート塩(1)から水又はアルコール(R-OH)とCOを発生させるために、60℃以上の反応温度が好ましい。また、後述するカルベン化合物(2-2)でR10又はR11が水素原子の場合、反応温度が高すぎると、カルベン炭素が2つの窒素原子の間(C2位)ではなく、熱力学的に安定なC4位あるいはC5位に転位する可能性があるため、150℃以下の反応温度が好ましい。
反応時間は、通常、1~120時間であり、好ましくは1~48時間である。
また反応圧力としては、通常、常圧以下とすることが好ましい。本発明の製造方法では、加熱時に発生した水又はアルコール(R-OH)とCOを除去することで反応が進行するために、減圧下で反応を行うこともできる。たとえば、30~101kPaの反応圧力が好ましい。
本発明の製造方法において、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
得られたカルベン化合物(2)は、濃縮、再結晶などの常法に従い精製することができる。
カーボネート塩(1)は、炭酸水素塩(HO-CO-O、R=H)と炭酸モノエステル塩(RO-CO-O、R=ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基)のいずれでもよい。
カーボネート塩(1)について説明する。
式(1)中、R、R、R、R、R、R、R及びRは、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示し、好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基、特に好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~8の炭化水素基である。
このとき、さらに好ましい様態としては、R、R、R、R、R、R、R及びRはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20のアルキル基を示し、好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12のアルキル基、特に好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~8のアルキル基である。
別の様態として好ましくは、R及びRはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数2~20の炭化水素基を示し、好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数2~12の炭化水素基、特に好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数2~8の炭化水素基である。このとき、さらに好ましい様態としては、R及びRはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数2~20のアルキル基を示し、好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数2~12のアルキル基、特に好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数2~8のアルキル基である。
別の様態として、R、R、R及びRがフェニル基である場合、R及びRはフェニル基以外であること好ましい。
ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アリル基、ベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-(ジメチルアミノ)エチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、ベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、ブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基である。
、R、R、R、R、R、R及びRにおいて、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。炭化水素基又はアルキル基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基又はアルキル基は例えば、-O-、-N<、-S-、-SO-等の基を有し、炭化水素鎖又はアルキル鎖がこれらの基により中断されている。炭化水素基又はアルキル基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基又はアルキル基が酸素原子で置換されており、炭化水素鎖又はアルキル鎖が-O-の基により中断されていることが好ましい。
とR、RとR、RとR、或いは、RとRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環構造を形成してもよい。
は水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示し、好ましくは水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基、特に好ましくは水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~8の炭化水素基である。
ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、 ヘキシル基、オクチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アリル基、ベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-(ジメチルアミノ)エチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
において、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基は例えば、-O-、-N<、-S-、-SO-等の基を有し、炭化水素鎖がこれらの基により中断されている。炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基が酸素原子で置換されており、炭化水素鎖が-O-の基により中断されていることが好ましい。
カーボネート塩(1)は、好ましくは式(1-1)で表されるカーボネート塩(以下、カーボネート塩(1-1)という。)であり、より好ましくは式(1-2)で表されるカーボネート塩(以下、カーボネート塩(1-2)という。)又は式(1-3)で表されるカーボネート塩(以下、カーボネート塩(1-3)という。)である。
式(1-1):
Figure 2023020020000011
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。Lは、窒素原子同士を結ぶ炭素数2~40の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。)
式(1-2):
Figure 2023020020000012
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。R10及びR11は、同一又は異なって、水素原子又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R10及びR11はそれらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。)
式(1-3):
Figure 2023020020000013
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。R12及びR13は、同一又は異なって、水素原子又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R12とR13は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。)
式(1)において、RとRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって形成する環構造としては、カーボネート塩(1-1)が挙げられ、さらに好ましい実施形態として、カーボネート塩(1-2)及びカーボネート塩(1-3)が挙げられる。
式(1-1)において、Lは、窒素原子同士を結ぶ炭素数2~40の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。Lの炭素原子数は、好ましくは2~10、さらに好ましくは2~6、特に好ましくは、2である。単環構造としては、イミダゾール、イミダゾリン、ピリミジンが挙げられ、縮環構造としては、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾリン、ベンゾピリミジンが挙げられる。Lが置換基を有する炭素数2~40の架橋構造の場合、置換基の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ベンジルオキシ基等のアリールオキシ基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基等が挙げられる。また、Lの架橋構造が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されていても良い。Lの架橋構造が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の少なくとも1種のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基は例えば、-O-、-N<、-N=、-S-等の基の少なくとも1種を有し、炭化水素鎖がこれらの基により中断されている。
式(1-2)中、R10、R11は水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示し、好ましくは水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基、特に好ましくは水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~8の炭化水素基である。
ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、 ヘキシル基、オクチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アリル基、ベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-(ジメチルアミノ)エチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、ベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、ブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基である。
10、R11において、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基は例えば、-O-、-N<、-S-、-SO-等の基を有し、炭化水素鎖がこれらの基により中断されている。炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基が酸素原子で置換されており、炭化水素鎖が-O-の基により中断されていることが好ましい。
式(1-3)中、R12、R13は水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示し、好ましくは水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基、特に好ましくは水素原子又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~8の炭化水素基である。
ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、 ヘキシル基、オクチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アリル基、ベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-(ジメチルアミノ)エチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、ベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、ブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基である。
12、R13において、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基は例えば、-O-、-N<、-S-、-SO-等の基を有し、炭化水素鎖がこれらの基により中断されている。炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基が酸素原子で置換されており、炭化水素鎖が-O-の基により中断されていることが好ましい。
式(1-2)において、R10及びR11はそれらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。R10及びR11が、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成する場合、例えば、以下の式(1-2x)に示されるようなベンゾイミダゾリウム環構造をとることが出来る。
式(1-2x):
Figure 2023020020000014
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは前記に定義される通りである。R、R、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
式(1-2x)において、R、R、R又はRで表される炭素数1~20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ビニル基、アリル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2-メトキシメチル基、2-エトキシメチル基、2-(ジメチルアミノ)メチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基が挙げられる。
カーボネート塩(1)としては、例えば、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム炭酸水素塩、1,3-ビス(1,1-ジメチルプロピル)イミダゾリウム炭酸水素塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム炭酸水素塩、1,3-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)イミダゾリウム炭酸水素塩、1,3-ビス(1,1-ジメチル-2-フェニルエチル)イミダゾリウム炭酸水素塩、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウム炭酸水素塩;
1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム メチルカーボネート塩、1,3-ビス(1,1-ジメチルプロピル)イミダゾリウム メチルカーボネート塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム メチルカーボネート塩、1,3-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)イミダゾリウム メチルカーボネート塩、1,3-ビス(1,1-ジメチル-2-フェニルエチル)イミダゾリウム メチルカーボネート塩1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウム メチルカーボネート塩;
1,3-ジ-tert-ブチルベンゾイミダゾリウム炭酸水素塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ベンゾイミダゾリウム炭酸水素塩、1,3-ジ-tert-ブチルベンゾイミダゾリウム メチルカーボネート塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ベンゾイミダゾリウム メチルカーボネート塩が挙げられる。
好ましくは1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム炭酸水素塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム炭酸水素塩、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム メチルカーボネート塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム メチルカーボネート塩である。より好ましくは1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム炭酸水素塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム メチルカーボネート塩である。
カーボネート塩(1)は市販のものを使用してもよく、公知の方法により得られたものを使用してもよい。また、たとえば、下記製造方法A及び製造方法Bにより製造したものを使用することもできる。
<製造方法A及び製造方法B>
下記式(5)で表される塩(以下、塩(5)という。)と、下記式(6)で表されるアルカリ金属炭酸水素塩(以下、アルカリ金属炭酸水素塩(6)という。)又は下記式(7)で表される炭酸エステル(以下、炭酸エステル(7)という。)を反応させて、カーボネート塩(1)を得ることができる。
式(5):
Figure 2023020020000015
(式中、Yはハロゲンイオン又は下記式(8b)で表されるカルボン酸アニオンを示す。R、R、R、R、R、R、R及びRは前記に定義される通りである。)
式(8b):
14COO (8b
(式中、R14は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
式(6):
HCO・M (6)
(式中、Mはアルカリ金属原子を示す。)
式(7):
Figure 2023020020000016
(式中、R15、R16は同一又は異なって、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
塩(5)は、好ましくは式(5-1)で表される塩(以下、塩(5-1)という。)であり、より好ましくは式(5-2)で表される塩(以下、塩(5-2)という。)又は式(5-3)で表される塩(以下、塩(5-3)という。)である。
式(5-1):
Figure 2023020020000017
(式中、R、R、R、R、R、R、L及びYは各々前記に定義される通りである。)
式(5-2):
Figure 2023020020000018
(式中、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びYは各々前記に定義される通りである。)
Figure 2023020020000019
(式中、R、R、R、R、R、R、R12、R13及びYは各々前記に定義される通りである。)
式(8b)中、R14は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基であり、好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基である。ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基として好ましくは、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~8の炭化水素基であり、特に好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1又は2の炭化水素基である。
式(6)において、Mはアルカリ金属原子を示し、好ましくはナトリウム原子又はカリウム原子である。
アルカリ金属炭酸水素塩(6)としては、例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム等が挙げられ、好ましくは炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムである。
式(7)において、R15、R16はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基を示し、好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~12の炭化水素基、特に好ましくはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~8の炭化水素基である。
式(7)において、R15、R16で表されるヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1~20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アリル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-(ジメチルアミノ)エチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
15、R16において、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基は例えば、-O-、-N<、-S-、-SO2-等の基を有し、炭化水素鎖がこれらの基により中断されている。炭化水素基が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されている場合、炭化水素基が酸素原子で置換されており、炭化水素鎖が-O-の基により中断されていることが好ましい。
炭酸エステル(7)の具体例としては、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジペンチル、炭酸ジヘキシル等の炭酸ジアルキル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等の炭酸アルキレンが挙げられ、好ましくは炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチルであり、特に好ましくは炭酸ジメチルである。
式(1)において、R=水素原子である化合物(以下、カーボネート塩(1A)という。)を製造する場合、下記製造方法Aにより製造したものを使用することもできる。
<製造方法A>
式(5)において、Yがハロゲンイオンである下記式(5A)で表されるハロゲン化物(以下、ハロゲン化物(5A)という。)と、アルカリ金属炭酸水素塩(6)とを反応させてカーボネート塩(1A)を得る。
式(1A):
Figure 2023020020000020
(式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。)
式(5A):
Figure 2023020020000021
(式中、X-はハロゲンイオンを示す。R、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。)
式(1)において、R=ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基である化合物(以下、カーボネート塩(1B)という。)を製造する場合、下記製造方法Bにより製造したものを使用することもできる。
<製造方法B>
が式(8b)で表されるカルボン酸アニオン(以下、カルボン酸アニオン(8b)という。)である下記式(5B)で表されるカルボン酸塩(以下、カルボン酸塩(5B)という。)と炭酸エステル(7)とを反応させて、下記式(1B)で表されるカーボネート塩(以下、カーボネート塩(1B)という。)又は下記式(1B)で表されるカーボネート塩(以下、カーボネート塩(1B)という。)を製造できる。カーボネート塩(1B)及びカーボネート塩(1B)はカーボネート塩(1B)に包含される。
式(5B):
Figure 2023020020000022
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R及びR14は各々前記に定義される通りである。)
式(1B):
Figure 2023020020000023
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R及びR15は各々前記に定義される通りである。)
式(1B):
Figure 2023020020000024
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R及びR16は各々前記に定義される通りである。)
製造方法Aについて説明する。
式(5A)中、X-はハロゲンイオンを示す。ハロゲンイオンとしては、フッ素イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ素イオンなどが挙げられ、好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、特に好ましくは塩化物イオンである。
アルカリ金属炭酸水素塩(6)の使用量は、ハロゲン化物(5A)1モルに対して通常0.5モル以上、好ましくは0.8~5モルである。
製造方法Aにおいて、反応温度は、使用する原料、溶媒等によって最適な温度が異なるが、通常、-10℃以上であり、好ましくは0℃~100℃である。
溶媒は使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、使用する溶媒は反応に影響を与えないものであれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル溶媒、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、水等が挙げられ、好ましくはアルコール溶媒、水であり、特に好ましくは2-プロパノールである。溶媒は必要に応じて2種以上を混合して使用することもできる。
溶媒の使用量は、ハロゲン化物(5A)1質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは0.1~10質量部である。
必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
反応終了後は、ろ過による無機塩(アルカリ金属ハロゲン化物)の除去や、反応液を水溶液へと溶媒置換した後に有機溶媒を用いて洗浄することによる不純物の除去や、反応液の濃縮等により、カーボネート塩(1A)を単離することができ、必要に応じ、再結晶等の精製をしても良い。反応液からカーボネート塩(1A)を取り出さず、反応液のまま、炭酸エステル(7)と反応させてカーボネート塩(1B)を得ることもできる。
また、反応液や洗浄後の水溶液からカーボネート塩(1A)を取り出さず、カルベン化合物(2)の製造に適した溶液に置換することによって、カーボネート化合物(1A)としてカルベン化合物(2)の製造に用いることもできる。
製造方法Bについて説明する。
炭酸エステル(7)の使用量は、カルボン酸塩(5B)1モルに対して通常1モル以上であり、炭酸エステル(7)を反応溶媒として使用することもできるため、好ましくは1~1000モル、より好ましくは1~6モルである。また、カルボン酸塩(5B)中に過剰のカルボン酸及び水が含まれる場合には、それらが炭酸エステル(7)と反応するため、カルボン酸塩(5B)中の過剰のカルボン酸及び水の合計1モルに対して、炭酸エステル(7)を通常1モル以上、好ましくは1~6モル過剰に使用することが好ましい。炭酸エステル(7)をカルボン酸塩(5B)に対して過剰に使用することで溶媒として使用することもできる。
製造方法Bにおいて、反応温度は、使用する原料、溶媒等によって最適な温度が異なるが、通常、-10℃以上であり、好ましくは0℃~150℃である。
溶媒は使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、炭酸エステル(7)を溶媒として使用する以外に使用可能な溶媒としては、反応に影響を与えないものであれば特に制限されない。炭酸エステル(7)以外の溶媒の具体例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素溶媒、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられ、好ましくは芳香族炭化水素溶媒、アルコール溶媒である。溶媒は必要に応じて2種以上を混合して使用することもできる。
溶媒の使用量は、カルボン酸塩(5B)1質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは0.1~10質量部である。
必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
反応終了後は、有機溶媒を用いた洗浄による不純物の除去や、反応液の濃縮等により、カーボネート塩(1B)を単離することができ、必要に応じ、再結晶等の精製をしても良い。また、反応液や洗浄後の洗浄ろ洗液からカーボネート塩(1B)を取り出さず、カルベン化合物(2)の製造に適した溶液に置換することによって、連続的にカルベン化合物(2)を製造することもできる。
洗浄による不純物の除去を行う際の有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒が好ましく、トルエンが特に好ましい。
また、製造方法B以外にカーボネート塩(1B)を製造する方法として、製造方法Aで得られたカーボネート塩(1A)と炭酸エステル(7)を反応させることで、カーボネート塩(1B)を製造する方法が挙げられる。
製造方法A及び製造方法Bにおいて、ハロゲン化物(5A)又はカルボン酸塩(5B)は市販のものを使用してもよく、公知の方法により得られたものを使用してもよい。
塩(5)が式(5-2)で表される化合物である場合、すなわちハロゲン化物(5A)が下記式(5-2A)で表されるハロゲン化物(以下、ハロゲン化物(5-2A)という。)である場合、及びカルボン酸塩(5B)が下記式(5-2B)で表されるカルボン酸塩(以下、カルボン酸塩(5-2B)という。)である場合、たとえば、下記製造方法Cにより製造したものを使用することもできる。
式(5-2A):
Figure 2023020020000025
(式中、X-はハロゲンイオンを示す。R、R、R、R、R、R、R10及びR11は各々前記に定義される通りである。)
式(5-2B):
Figure 2023020020000026
(式中、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR14は各々前記に定義される通りである。)
<製造方法C>
下記式(9)で表されるジカルボニル化合物(以下、ジカルボニル化合物(9)という。)、下記式(10a)1級アミン化合物(以下、1級アミン化合物(10a)という。)及び下記式(10b)で表される1級アミン化合物(以下、1級アミン化合物(10b)という。)、ホルムアルデヒド、式(8a)で表されるハロゲン化水素(以下、ハロゲン化水素(8a)という。)又は式(8b)で表されるカルボン酸(以下、カルボン酸(8b)という。)を反応させてハロゲン化物(5-2A)又はカルボン酸塩(5-2B)を得る。
式(9):
Figure 2023020020000027
(式中、R10及びR11は前記に定義される通りである。)
式(10a):
C-NH (10a)
(式中、R、R及びRは前記に定義される通りである。)
式(10b):
C-NH (10b)
(式中、R、R及びRは前記に定義される通りである。)
式(8a):
HX (8a)
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
式(8b):
14COOH (8b)
(式中、R14は前記に定義される通りである。)
以下、製造方法Cについて説明する。
式(5-2A)において、Xはハロゲンイオンを示す。ハロゲンイオンとしては、フッ素イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ素イオンなどが挙げられ、好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、特に好ましくは塩化物イオンである。
ハロゲン化物(5-2A)としては、例えば、塩化1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム、塩化1,3-ビス(1,1-ジメチルプロピル)イミダゾリウム、塩化1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム、塩化1,3-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)イミダゾリウム、塩化1,3-ビス(1,1-ジメチル-2‐フェニルエチル)イミダゾリウム、塩化1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウム;
臭化1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム、臭化1,3-ビス(1,1-ジメチルプロピル)イミダゾリウム、臭化1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム、臭化1,3-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)イミダゾリウム、臭化1,3-ビス(1,1-ジメチル-2‐フェニルエチル)イミダゾリウム、臭化1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウム;
塩化1,3-ジ-tert-ブチルベンゾイミダゾリウム、塩化1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ベンゾイミダゾリウム、臭化1,3-ジ-tert-ブチルベンゾイミダゾリウム、臭化1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ベンゾイミダゾリウムが挙げられる。
好ましくは塩化1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム、塩化1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウムである。
カルボン酸塩(5-2B)としては、例えば、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウムギ酸塩、1,3-ビス(1,1-ジメチルプロピル)イミダゾリウムギ酸塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウムギ酸塩、1,3-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)イミダゾリウムギ酸塩、1,3-ビス(1,1-ジメチル-2‐フェニルエチル)イミダゾリウムギ酸塩、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムギ酸塩;
1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム酢酸塩、1,3-ビス(1,1-ジメチルプロピル)イミダゾリウム酢酸塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム酢酸塩、1,3-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)イミダゾリウム酢酸塩、1,3-ビス(1,1-ジメチル-2‐フェニルエチル)イミダゾリウム酢酸塩、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウム酢酸塩;
1,3-ジ-tert-ブチルベンゾイミダゾリウムギ酸塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ベンゾイミダゾリウムギ酸塩、1,3-ジ-tert-ブチルベンゾイミダゾリウム酢酸塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ベンゾイミダゾリウム酢酸塩が挙げられる。
好ましくは1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム酢酸塩、1,3-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミダゾリウム酢酸塩である。
ジカルボニル化合物(9)としては、グリオキサール、ジアセチル、3,4-ヘキサンジオン、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘプタンジオン、5-メチル-2,3-ヘキサンジオン、3-メチル-2,3-シクロペンタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン、ジベンゾイルが挙げられ、好ましくはグリオキサール、ジアセチルであり、より好ましくはグリオキサールである。
1級アミン化合物(10a)及び1級アミン化合物(10b)としては、tert-ブチルアミン、1,1-ジメチルエチルアミン、1,1-ジメチルプロピルアミン、クミルアミン、1,1,3,3-テトラメチルブチルアミン、1,1-ジメチル-2‐フェニルエチルアミン、1-アダマンチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の1級アミン化合物であり、好ましくは、tert-ブチルアミン、1,1,3,3-テトラメチルブチルアミン、クミルアミン、1-アダマンチルアミンであり、より好ましくは、tert-ブチルアミン、1,1,3,3-テトラメチルブチルアミンである。
ジカルボニル化合物(9)は水溶液やメタノール、ブタノール等のアルコール溶液をそのまま使用しても良い。
1級アミン化合物(10a)及び1級アミン化合物(10b)(以下、1級アミン化合物(10a)及び1級アミン化合物(10b)をあわせてアミン化合物(10)という。)の使用量としては、通常、ジカルボニル化合物(9)1モルに対して、1級アミン化合物(10a)と1級アミン化合物(10b)との合計量が0.1~10モルであり、好ましくは1~3モルである。
1級アミン化合物(10a)と1級アミン化合物(10b)の割合は、特に限定するものではなく、1級アミン化合物(10a):1級アミン化合物(10b)=0:100~100:0の範囲である。なお、1級アミン化合物(10a):1級アミン化合物(10b)=0:100あるいは1級アミン化合物(10a):1級アミン化合物(10b)=100:0の場合、RC=RCになり、1級アミン化合物(10a):1級アミン化合物(10b)=1:1の場合であっても、式(1)の化合物は、(RC、RC)、(RC、RC)、(RC、RC)の3種の組み合わせの混合物になり、1級アミン化合物(10a):1級アミン化合物(10b)=0:100~100:0の場合、(RC、RC)、(RC、RC)、(RC、RC)の3種の組み合わせの比率が異なり、これら3種は、R、R、R、R、R及びRは同一でも異なっていてもよく、式(5-2A)又は式(5-2B)の化合物に包含される。
ホルムアルデヒドは水溶液やメタノール、ブタノール等のアルコール溶液をそのまま使用してもよい。ホルムアルデヒドの使用量としては、通常、ジカルボニル化合物(8)1モルに対して、ホルムアルデヒドが0.1~10モルであり、好ましくは0.5~5.0モルである。
式(8a)においてXはハロゲン原子を表し、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは臭素原子、塩素原子であり、特に好ましくは塩素原子である。
ハロゲン化水素(8a)としては、フッ化水素、臭化水素、塩化水素、ヨウ化水素等が挙げられ、好ましくは臭化水素、塩化水素であり、特に好ましくは塩化水素である。
カルボン酸(8b)としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、テトラデシル酸、パルミチン酸、オクタデシル酸、シクロヘキサン酸、エトキシ酢酸、プロポキシ酢酸、2-(2-メトキシエトキシ)酢酸、2-(2-エトキシエトキシ)酢酸、2-(2-プロポキシエトキシ)酢酸、3-メトキシプロパン酸、3-エトキシプロパン酸、3-(2-メトキシエトキシ)プロパン酸、3-(2-エトキシエトキシ)プロパン酸、3-(2-プロポキシエトキシ)プロパン酸、3-(3-メトキシプロポキシ)プロパン酸、3-(3-エトキシプロポキシ)プロパン酸、3-(3-プロポキシプロポキシ)プロパン酸、オレイン酸、リノール酸、ソルビン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、乳酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸が挙げられ、好ましくはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸であり、より好ましくは酢酸である。
ハロゲン化水素(8a)又はカルボン酸(8b)(以下、ハロゲン化水素(8a)とカルボン酸(8b)をあわせて酸(8)という。)はそのまま使用しても水溶液やメタノール、ブタノールなどのアルコール溶液を使用することもできる。
製造方法Cにおいて、酸(8)としてハロゲン化水素(8a)を使用する場合、酸の使用量としては、通常、ジカルボニル化合物(9)1モルに対して、0.1モルから10モルであり、好ましくは0.5モルから5モル、さらに好ましくは0.8モルから1.5モルである。酸(8)としてカルボン酸(8b)を使用する場合、酸の使用量としては、通常、ジカルボニル化合物(9)1モルに対して、0.1モルから10モルであり、好ましくは0.5モルから5モル、さらに好ましくは0.8モルから3モルである。
製造方法Cにおいて、酸(8)としてハロゲン化水素(8a)を使用した場合は、ハロゲン化物(5-2A)が製造できる。また、酸(8)としてカルボン酸(8b)を使用した場合は、カルボン酸塩(5-2B)を製造できる。
反応温度は、使用する原料、溶媒等によって最適な温度が異なるが、通常、-10℃以上であり、好ましくは0℃~100℃である。
溶媒は使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、使用する溶媒は反応に影響を与えないものであれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、水等が挙げられ、好ましくは芳香族炭化水素溶媒、アルコール溶媒、水であり、特に好ましくはトルエン、水である。溶媒は必要に応じて2種以上を混合して使用することもできる。
溶媒の使用量は、ジカルボニル化合物(9)1質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは0.1~10質量部である。
必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
反応終了後は、濃縮等により低沸点不純物を除去することなどにより、ハロゲン化物(5-2A)又はカルボン酸塩(5-2B)を単離することができる。得られたハロゲン化物(5-2A)又はカルボン酸塩(5-2B)をジエチルエーテルなどの有機溶媒により洗浄し不純物(例えば、未反応の原料)を除去してもよい。反応液を水溶液へと溶媒置換した後に有機溶媒を用いて洗浄することによる不純物の除去をしても良い。
未反応のアミン化合物(10)が酸(8)と反応して得られるアンモニウム塩として残存する場合は、重曹などのアルカリ性化合物を用いて中和し、固体で得られる無機塩をろ過により除去することもできる。得られたハロゲン化物(5-2A)又はカルボン酸塩(5-2B)を必要に応じ、再結晶等により精製しても良い。
反応終了後、反応液からハロゲン化物(5-2A)を取り出さず、反応液のまま、ハロゲン化物(5A)として製造方法Aで使用することもできる。また、反応液からカルボン酸塩(5-2B)を取り出さず、反応液のまま、カルボン酸塩(5B)として製造方法Bで使用することもできる。
また、製造方法Bにおいて、カルボン酸塩(5B)は、たとえば、下記製造方法Dにより製造したものを使用することもできる。
<製造方法D>
カーボネート塩(1A)とカルボン酸(8b)を反応させてカルボン酸塩(5B)を得る。
製造方法Dについて説明する。
製造方法Dにおいて、カーボネート塩(1A)は市販のものでも公知の方法により製造したものでも良い。また、上述の製造方法Aにより製造したものを使用することもできる。上述の製造方法Aにより製造したものを使用する場合、製造方法Aに記載の反応後、反応液からカーボネート塩(1A)を単離せずに反応液のまま製造方法Dに使用しても良い。
製造方法Dにおいて、カルボン酸(8b)として好ましくは、酢酸である。
カルボン酸(8b)はそのまま使用しても水溶液やメタノール、ブタノールなどのアルコール溶液であるものを使用することもできる。酸の使用量としては、通常、カーボネート塩(1A)1モルに対して、0.1モルから10モルであり、好ましくは0.5モルから5モル、さらに好ましくは0.8モルから1.5モルである。
溶媒は使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、使用する溶媒は反応に影響を与えないものであれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、水等が挙げられ、好ましくはアルコール溶媒、水であり、特に好ましくはメタノールである。溶媒は必要に応じて2種以上を混合して使用することもできる。
溶媒の使用量は、カーボネート塩(1A)1質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは0.1~10質量部である。
必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
反応終了後は、濃縮等により低沸点不純物を除去することなどにより、カルボン酸塩(5B)を単離することができる。得られたカルボン酸塩(5B)を有機溶媒により洗浄し不純物を除去してもよい。得られたカルボン酸塩(5B)を必要に応じ、再結晶等により精製しても良い。
また、得られたカルボン酸塩(5B)反応液から取り出さず、製造方法Bの原料として用いることもできる。
カルベン化合物(2)について説明する。
式(2)中、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。
とR、RとR、RとR、或いは、RとRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環構造を形成してもよい。
カルベン化合物(2)は、好ましくは式(2-1)で表されるカルベン化合物(以下、カルベン化合物(2-1)という。)であり、より好ましくは式(2-2)で表されるカルベン化合物(以下、カルベン化合物(2-2)という。)又は式(2-3)で表されるカルベン化合物(以下、カルベン化合物(2-3)という。)である。
式(2-1):
Figure 2023020020000028
(式中、R、R、R、R、R、R及びL各々前記に定義される通りである。)
式(2-2):
Figure 2023020020000029
(式中、R、R、R、R、R、R、R10及びR11は各々前記に定義される通りである。)
式(2-3):
Figure 2023020020000030
(式中、R、R、R、R、R、R、R12及びR13各々前記に定義される通りである。)
式(2-2)において、R10及びR11はそれらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。R10及びR11が、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成する場合、例えば、以下の式(2-2x)に示されるようなベンゾイミダゾリウム環構造をとることが出来る。
式(2-2x):
Figure 2023020020000031
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは前記に定義される通りである。)
式(2-2x)において、R、R、R又はRで表される炭素数1~20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1-エチルペンチル基、ノニル基、2-エチルヘキシル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ビニル基、アリル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2-メトキシメチル基、2-エトキシメチル基、2-(ジメチルアミノ)メチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基が挙げられる。
以下にカルベン化合物(2)の具体例を示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Etはエチル基、Npはネオペンチル基、Phはフェニル基、Bnzはベンジル基を示す。
Figure 2023020020000032
Figure 2023020020000033
カルベン化合物(2)として好ましくは式(2-2-2)~式(2-2-5)で表される化合物であり、特に好ましくは(2-2-3)で表される化合物である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。なお、実施例中、H-NMRはブルカー株式会社製AV400を使用し、400MHzで測定した。また、実施例中、wt%は質量パーセント濃度を示す。
実施例中、塩素濃度は以下の方法により測定した。
塩素濃度測定方法:
イオンクロマトグラフィー
IC装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社ICS-1100
カラム:AS9-HC/AG9HC
カラム温度:30℃
溶離:2.3mM炭酸ナトリウム+2.8mM炭酸水素ナトリウム溶液
流速:毎分1.0mL
電流値:25mA
注入量:25μL
[DtOI][HCO]100mgを2-プロパノール/水=8/2の混合溶液で10mLにメスアップ。
実施例の製造スキームを以下に示す。
Figure 2023020020000034
・製造方法C(Method C、実線)が製造例1に対応、
・製造方法A(Method A)が製造例2に対応、
・製造方法D+B(Method D+B)が製造例3に対応、
・製造方法Cはイミダゾリウム環構造を有するものに限定されるが、製造方法A、B、Dはイオン交換反応であるため、イミダゾリウム環の構造に限定されない。
製造例1 [DtOI][Cl]の合成
Figure 2023020020000035
窒素置換した200mLの3つ口反応器に、35%塩酸水溶液7.7g(77mmol)と41wt%ホルマリン水溶液6.2g(85mmol)、40wt%グリオキサール水溶液12.1g(85mmol)を仕込み、40℃に加熱した。次いで、3つ口反応器中の混合物に1,1,3,3-テトラメチルブチルアミン20g(154mmol)を40℃で15分かけて滴下し、滴下中70℃まで昇温後、22時間攪拌した。その後、室温まで冷却後、0.5Mの炭酸水素ナトリウム水溶液200mLを加え、更に室温で30分間攪拌した。得られた反応溶液を分液漏斗に移し、ジエチルエーテル100mLを加え、振とう後、水層と上層を分液し、下層を再び分液漏斗に移し、ジエチルエーテル100mLを加え、同様の操作で得られた水層を減圧濃縮し黄褐色の固体を得た。得られた固体に、ジクロロメタン200mLを加え、室温で30分間攪拌させ、パーライトをプレコートしたヌッチェを用いて減圧濾過することで得られたろ液を減圧濃縮し、上記式で表される[DtOI][Cl]を12.0g(36mmol、収率47%)得た。
[DtOI][Cl]のH-NMR分析結果を以下に示す。
H-NMR(CDOD)δ(ppm)=0.8(18H、s)、1.77(12H、s)、2.03(4H、s)、7.96(2H、d、J=1.6Hz)、9.16-9.18(1H、m)
製造例2 [DtOI][HCO]の合成
Figure 2023020020000036
試験管に、製造例1で得られた[DtOI][Cl]1.0g(3.0mmol)、炭酸水素カリウム310mg(3.1mmol)、2-プロパノール5.2gを仕込み、80℃で7時間攪拌した。攪拌後、反応液を室温まで冷却し、さらに室温で63時間攪拌した。その後、得られた反応混合物を0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、得られたろ液を濃縮することで、上記式で表される[DtOI][HCO]1.1g(3.1mmol、収率99%)得た。[DtOI][HCO]のH-NMR分析結果および塩素イオン濃度を以下に示す。
H-NMR(CDOD)δ(ppm)=7.98(2H,s)、2.03(4H,s)、1.76(12H,s)、0.88(18H,s)
塩素イオン濃度:176ppm
製造例3 [DtOI][MeCO]の合成
Figure 2023020020000037
200mL3つ口反応器に、製造例2と同様の操作で得られた[DtOI][HCO]10.0g(28.2mmol)、酢酸1.86g(31.0mmol)、メタノール15.2gを仕込み、窒素気流下、室温で65時間攪拌し、得られた反応液を減圧濃縮し、微黄色固体9.97g得た。次いで、炭酸ジメチル7.44g(82.6mmol)を加え、110℃で42時間加熱還流し、得られた反応液を減圧濃縮し、暗褐色固体9.80gを得た。暗褐色固体にトルエン50mLを加え、室温で30分間攪拌した後に、ろ過することにより上記式で表される[DtOI][MeCO]を淡黄色固体として5.49g(14.9mmol、収率52.8%)得た。[DtOI][MeCO]のH-NMR分析結果を以下に示す。
H-NMR(CDCl)δ(ppm)=7.43(2H,s)、3.55(3H,s)、2.04(4H、s)、1.80(12H,s)、0.86(18H,s)
実施例1 DtBIの製造
Figure 2023020020000038
空冷管を取り付けた15mLの試験管に、東京化成工業株式会社製の1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリウム炭酸水素塩55.7mg(230μmol)とトルエン6.5gを加え、窒素置換した後に、3時間加熱還流した。得られた反応溶液を減圧濃縮し、上記式で表されるDtBIを30.5mg(169μmol、収率73.5%)得た。DtBIのH-NMR分析結果を以下に示す。
H-NMR(Toluene-d)δ(ppm)=6.70(2H,s)、1.44(18H,s)
13C-NMR(Toluene-d)δ(ppm)=212.1、114.9、55.8、31.4
実施例2 DtOIの製造
Figure 2023020020000039
空冷管を取り付けた15mLの試験管に、製造例2で得られた[DtOI][HCO]0.51g(1.4μmol)とトルエン5.45gを加え、窒素置換した後に6時間加熱還流した。得られた反応混合物を0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、得られたろ液を濃縮することで、上記式で表されるDtOIを0.05g(0.2μmol、収率11.9%)得た。DtOIのH-NMR分析結果を以下に示す。
H-NMR(C)δ(ppm)=6.74(2H,s)、1.87(4H,s)、1.58(12H,s)、0.85(18H,s)
13C-NMR(C)δ(ppm)=212.3、115.8、59.4、55.4、31.9、31.7、31.3
実施例3 DtOIの製造
空冷管を取り付けた100mLの試験管に、製造例3で得られた[DtOI][MeCO]5g(13.6mmol)とクロロベンゼン25gを加え、窒素置換した後に4時間加熱還流した。得られた反応混合物を0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、得られたろ液を濃縮することで、DtOIを1.8g(6.3mmol、収率46.2%)得た。
比較例1
空冷管とディーンスタークトラップを取り付けた15mLの試験管に、東京化成株式会社製1,3-ジメチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート 0.2g(1.4mmol)と水0.25g(13.9mmol)を加え攪拌することで、均一溶液とした。得られた溶液をH-NMR分析したところ、1,3-ジメチルイミダゾリウム炭酸水素塩が得られていることを確認した。1,3-ジメチルイミダゾリウム炭酸水素塩のH-NMR分析結果を以下に示す。
H-NMR(CDOD)δ(ppm)=7.55(2H,s)、3.92(6H,s)
次いで、得られた溶液にトルエンを8.0g加え、窒素置換した後に、85℃で水を共沸留去させたのちに、5時間加熱還流した。得られた反応混合物を濃縮し、H-NMRで分析したが、カルベン化合物は得られず、1,3-ジメチルイミダゾリウム炭酸水素塩と1,3-ジメチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートの混合物となっていることが確認された。

Claims (11)

  1. 下記式(1)で表されるカーボネート塩を溶媒中で加熱させることを含む、下記式(2)で表されるカルベン化合物の製造方法。
    式(1):
    Figure 2023020020000040
    (式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。RとR、RとR、RとR、或いは、RとRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環構造を形成してもよい。CRで表される基又はCRで表される基は、アダマンチル基であってもよい。Rは水素原子又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。)
    式(2):
    Figure 2023020020000041
    (式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。)
  2. 前記溶媒の沸点が水の沸点よりも高く、水の沸点よりも高い温度に加熱することを含む、請求項1に記載のカルベン化合物の製造方法。
  3. 反応温度が40~200℃である、請求項1又は2に記載のカルベン化合物の製造方法。
  4. 式(1)で表されるカーボネート塩が、下記式(1-1)で表されるカーボネート塩である請求項1~3のいずれか1項に記載のカルベン化合物の製造方法。
    式(1-1):
    Figure 2023020020000042
    (式中、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。Lは、窒素原子同士を結ぶ炭素数2~40の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。)
  5. 式(1-1)で表されるカーボネート塩が下記式(1-2)又は式(1-3)のいずれかで表されるカーボネート塩である請求項4に記載のカルベン化合物の製造方法。
    式(1-2):
    Figure 2023020020000043
    (式中、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。R10及びR11は、同一又は異なって、水素原子又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R10及びR11はそれらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。)
    式(1-3):
    Figure 2023020020000044
    (式中、R、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。R12及びR13は、同一又は異なって、水素原子又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R12とR13は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。)
  6. 、R、R、R、R及びRが同一又は異なって、炭素数1~8のアルキル基である請求項1~5のいずれか1項に記載のカルベン化合物の製造方法。
  7. 前記溶媒が芳香族炭化水素溶媒、脂肪族又は脂環式炭化水素溶媒、又はハロゲン化芳香族炭化水素溶媒である、請求項1~6のいずれか1項に記載のカルベン化合物の製造方法。
  8. 下記式(2)で表されるカルベン化合物。
    式(2):
    Figure 2023020020000045
    (式中、R、R、R、R、R及びRは、同一又は異なって、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R及びRは、同一又は異なって、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数2~20の炭化水素基を示す。RとR、RとR、RとR、或いは、RとRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。RとRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環構造を形成してもよい。)
  9. 下記式(2-1)で表される、請求項8に記載のカルベン化合物。
    式(2-1):
    Figure 2023020020000046
    (式中、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。Lは、窒素原子同士を結ぶ炭素数2~40の架橋構造を表し、二重結合を有していても良く、単環構造又は縮環構造を有していても良く、置換基を有していても良い。)
  10. 下記式(2-2)又は式(2-3)のいずれかで表される、請求項8又は9に記載のカルベン化合物。
    式(2-2):
    Figure 2023020020000047
    (式中、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。R10及びR11は、同一又は異なって、水素原子又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R10とR11は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。)
    式(2-3):
    Figure 2023020020000048
    (式中、R、R、R、R、R及びRは各々前記に定義される通りである。R12及びR13は、同一又は異なって、水素原子又はヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の炭化水素基を示す。R12とR13は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環構造を形成しても良い。)
  11. 下記式で表される請求項8に記載のカルベン化合物。
    Figure 2023020020000049
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