JP2023019119A - ピストン及び往復動圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数のピストンリングを備えたピストンにおいて、時間が経過してもピストンリング間の差圧の差が緩和された状態を維持して、ピストンリングの寿命を延長する。【解決手段】ピストン20は、複数のリング溝24が形成されたピストン本体22と、各リング溝24に配置される複数のピストンリング30とを備える。ピストン20では、リング溝24の低圧側面28に漏らし溝40が形成されており、ピストンリング30がシリンダ10に当接しつつ低圧側面28に当接した状態において、漏らし溝40が、ピストンリング30に対して高圧側空間52と低圧側空間54との連通を確保するように構成されている。【選択図】図4
Description
本発明は、ピストン及び往復動圧縮機に関する。
特許文献1には、合口が設けられたシールリングと、シールリングの内周に接して配置されるとともにシールリングにガスの圧力を均等に伝えるバックアップリングとを備えたピストンリングが開示されている。特許文献1のピストンリングでは、シールリングの突起部にバックアップリングを係止させて、合口同士が重なること及びリング同士が固着することを防ぎ、ピストンリングのシール性を向上させている。しかし、この構成では、ピストンリングのシール性が高いため、高圧の圧縮機に用いる場合に、一部のピストンリングに大きな差圧が負荷され、当該ピストンリングの寿命が短くなる虞がある。
これに対して、特許文献2には、合口からガスを漏らすように構成されたピストンリングを備えた往復動圧縮機が開示されている。特許文献2では、各ピストンリングの合口隙間の大きさが、高圧側から低圧側に向けて小さくするように調整されている。すなわち、この往復動圧縮機では、各ピストンリングに負荷される差圧をより均等にすることで、局所的なピストンリングの摩耗の進行を抑制し、それによって、ピストンリングの寿命を延長しようとしている。
特許文献2の往復動圧縮機では、各ピストンリングの合口隙間の大きさを調整することにより差圧の均等化を図っている。しかしながら、この往復動圧縮機では、ピストンの往復運動によって時間経過とともに各ピストンリングの摩耗が進行するため、それぞれの合口隙間の大きさは、設定された大きさと異なる大きさに変化することがある。このため、各ピストンリングの差圧が調整されている状態は、時間経過とともに維持され難くなり、一部のピストンリングに大きな差圧が負荷されて、ピストンリングの寿命が短くなる虞がある。
そこで、本発明の目的は、複数のピストンリングを備えたピストンにおいて、時間が経過しても複数のピストンリング間の差圧の差が緩和された状態を維持して、ピストンリングの寿命を延長させることである。
前記の目的を達成するため、本発明に係るピストンは、シリンダを有する往復動圧縮機に用いられるピストンであって、複数のリング溝が形成されたピストン本体と、前記ピストン本体の前記複数のリング溝内にそれぞれ配置された複数のピストンリングと、を備える。前記複数のリング溝の少なくとも1つのリング溝には、低圧側面に漏らし溝が形成されており、前記漏らし溝は、当該漏らし溝に対応するピストンリングが前記シリンダに当接しつつ前記低圧側面に当接した状態において、当該漏らし溝に対応する前記ピストンリングに対して高圧側の空間と、当該漏らし溝に対応する前記ピストンリングに対して低圧側の空間との連通を確保する。
このように構成されたピストンでは、漏らし溝を通じて高圧側の空間から低圧側の空間にガスが漏れるため、ピストンリングにかかる差圧を低減できる。このため、異なる大きさの差圧が負荷されている複数のピストンリングにおいて、ピストンリング間の差圧の差が緩和されるため、一部のピストンリングに大きな差圧が負荷されることを抑制できる。また、漏らし溝がピストンの摺動の影響を受けにくいリング溝内に配置されているので、漏らし溝の経時的な摩耗の進行を抑制できる。したがって、複数のピストンリングを備えたピストンにおいて、時間が経過しても複数のピストンリング間の差圧の差が緩和された状態を維持できるため、ピストンリングの寿命を延長させることができる。
前記ピストン本体は、ピストン軸と、前記ピストン軸に外嵌された第1ピストン部材と、前記第1ピストン部材とは別体に構成されていてもよく、前記ピストン軸に外嵌された第2ピストン部材と、を備えていてもよい。前記第1ピストン部材は、前記漏らし溝が形成された前記低圧側面を有していてもよく、前記第2ピストン部材は、前記低圧側面に対向して配置される高圧側面を有していてもよく、前記リング溝は、前記第1ピストン部材と前記第2ピストン部材との間に形成されていてもよい。
この態様では、第1ピストン部材と第2ピストン部材とが別体として構成されているので、ピストン本体を組立てる前に、低圧側面への漏らし溝の加工を、より容易に行える状態にできる。
前記複数のリング溝のうち少なくとも2つのリング溝にはそれぞれ、少なくとも1つの漏らし溝が形成されていてもよく、前記複数のリング溝間において、漏らし溝の数が調整されていてもよい。
この態様では、少なくとも2つのリング溝間で漏らし溝の数が調整されているため、複数のリング溝間において、高圧側の空間から低圧側の空間に漏らすガスの流量が調整できる。差圧が大きいピストンリングに対して漏らし溝の数を多くして、差圧が小さいピストンリングに対して漏らし溝の数を少なくすることができる。これにより、複数のピストンリング間の差圧の差をより効果的に緩和できる。
前記複数のリング溝のうち少なくとも2つのリング溝にはそれぞれ、漏らし溝が形成されていてもよく、前記複数のリング溝間において、漏らし溝の流路面積が調整されていてもよい。
この態様では、少なくとも2つのリング溝間で漏らし溝の流路面積が調整されているため、複数のリング溝間において、高圧側の空間から低圧側の空間に流すガス流量を調整できる。このため、差圧が大きいピストンリングに対して流路面積を大きくして、差圧が小さいピストンリングに対して流路面積を小さくすることができる。これにより、複数のピストンリング間の差圧の差をより効果的に緩和できる。
前記ピストンは、前記ピストンを摺動可能に収容するシリンダと、クランク機構とを備えた往復動圧縮機に設けられていてもよい。
本発明によれば、複数のピストンリングを備えたピストンにおいて、時間が経過しても複数のピストンリング間の差圧の差が緩和された状態を維持して、ピストンリングの寿命を延長されることができる。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る往復動圧縮機(以下「圧縮機100」と称する)の一部の構成を示した概略的な断面図である。以下の説明において、「上」や「下」といった方向指標が用いられる。これらの方向指標は、説明の明瞭化のみを目的としており、限定的に解釈されるべきではない。
図1は、第1実施形態に係る往復動圧縮機(以下「圧縮機100」と称する)の一部の構成を示した概略的な断面図である。以下の説明において、「上」や「下」といった方向指標が用いられる。これらの方向指標は、説明の明瞭化のみを目的としており、限定的に解釈されるべきではない。
図1に示すように、圧縮機100は、シリンダ10と、シリンダ10内に配置されたピストン20と、シリンダ10の側面にそれぞれ配置された吸込弁12及び吐出弁14と、シリンダ10の上面10Aに配置されたシリンダヘッド16と、を備える。圧縮機100はさらに、シリンダ10の下方に配置されるとともにピストン20をシリンダ10内で上下方向に往復動させる図略のクランク機構を備えている。
シリンダ10には、一方向に延びるとともにシリンダ10の上面10Aに開口する円柱状の内部空間10Bが形成されており、上面10Aの開口は、シリンダヘッド16により塞がれている。シリンダ10には、内部空間10Bから側方に延びるとともにシリンダ10の側面に開口する吸込流路10Eと、内部空間10Bから前記側方と反対の側方に延びるとともにシリンダ10の吸込流路10Eと反対の側面に開口する吐出流路10Fと、が形成されている。
吸込流路10Eには、シリンダ10の側面に結合された吸込弁12が設けられている。吸込弁12は、外部から内部空間10Bへのガスの流入を許容する逆止弁であり、外部から内部空間10Bにガスを供給するための図略の配管に接続されている。
吐出流路10Fには、シリンダ10の側面に結合された吐出弁14が設けられている。吐出弁14は、内部空間10Bから外部にガスの流出を許容する逆止弁であり、内部空間10Bから吐出されたガスを流すための図略の配管に接続されている。
ピストン20は、内部空間10B内にシリンダ10と同軸に配置されており、シリンダ10の軸長よりも短い軸長を有している。シリンダ10の内部空間10Bにおいて、ピストン20とシリンダヘッド16との間の部位は圧縮室10Cとして機能する。吸込流路10E及び吐出流路10Fはそれぞれ、圧縮室10Cと連通している。
ピストン20は、図2及び図3に示すように、円柱状のピストン本体22と、ピストン本体22の外周面に配置された複数のピストンリング30とを備えている。ピストン本体22の外径は、シリンダ10の内周面の直径よりも少し小さい。したがって、ピストン本体22の外周面とシリンダ10の内周面との間には、環状のピストン隙間50が形成されている。なお、図1及び図3では、ピストン隙間50を実際よりも誇張して表現している。
ピストン本体22の外周面には、周方向に延びるとともに互いに間隔をあけて配置された複数のリング溝24が形成されている。各リング溝24内には、ピストンリング30が配置されている。複数のピストンリング30は、圧縮室10Cからのガスが、ピストン隙間50を通じてクランク機構側に漏出することを抑制するために設けられたシール部材である。各ピストンリング30は環状であり、当該環を切断したような合口部を有している。
複数のリング溝24は、圧縮室10C側から順に配置されたリング溝24A、24B、24C・・・24X、24Y、24Zを有している。つまり、リング溝24Aは、圧縮室10Cに最も近い位置に配置されたリング溝であり、リング溝24Zは、クランク機構側に最も近い位置に配置されたリング溝である。
図4に拡大して示すように、各リング溝24は、内底面26と、高圧側面27と、低圧側面28と、を含んでいる。リング溝24によって、ピストンリング30を配置させるための矩形断面の空間が形成される。
内底面26は、ピストン本体22の円柱面状に形成されており、ピストンリング30の内周面と対向する。環状の内底面26の直径は、ピストン本体22の外径よりも小さく且つピストンリング30の内径よりも小さい。したがって、内底面26とピストンリング30の間には、底面側隙間33が形成される。内底面26のピストン20の軸方向の長さは、ピストンリング30の幅(ピストン20の軸方向の長さ)よりも少し大きい。したがって、高圧側面27又は低圧側面28とピストンリング30の間には、底面側隙間33と連通する側面側隙間34が形成される。
高圧側面27は、リング溝24のうち圧縮室10C側の端面を区画する環状の側面であり、内底面26における圧縮室10Cに近い方の縁部とピストン本体22の外周面とを繋ぎ、下(クランク機構側)を向いている。高圧側面27は、ピストンリング30の高圧側の側面に対向する。
低圧側面28は、リング溝24のうちクランク機構側の端面を区画する環状の側面であり、内底面26におけるクランク機構に近い方の縁部とピストン本体22の外周面とを繋ぎ、上(圧縮室10C側)を向いている。低圧側面28は、ピストンリング30の低圧側の側面と対向する。
ピストンリング30がシリンダ10の内周面に当接しつつリング溝24の低圧側面28に当接した状態では、シリンダ10及びピストン20間のピストン隙間50は、ピストンリング30によって、高圧側空間52と低圧側空間54とに仕切られる。高圧側空間52は、ピストンリング30よりも圧縮室10Cに近い側の空間である。低圧側空間54は、ピストンリング30よりもクランク機構に近い側の空間である。
リング溝24の低圧側面28には、内底面26からピストン本体22の外周面に延びる漏らし溝40が形成されている。漏らし溝40は、内端がリング溝24内の底面側隙間33に連通するように開口し、外端がピストン本体22の外周面に開口する。このため、ピストンリング30が低圧側面28に当接した状態では、漏らし溝40と、底面側隙間33と、側面側隙間34とによって、高圧側空間52と低圧側空間54とを連通させる流路が形成される。
漏らし溝40は、各リング溝24に設けられてもよく、一部のリング溝24に設けられてもよい。各リング溝24には、同じ数の漏らし溝40が設けられてもよく、異なる数の漏らし溝40が設けられてもよい。例えば、図5(a)~(c)は、リング溝24の低圧側面28に、8つ、4つ、2つの漏らし溝40が形成された例を示している。すなわち、複数のリング溝24間において、漏らし溝40の数が調整されている。これにより、複数のリング溝24間において、高圧側空間52から低圧側空間54に流れるガスの流量が調整される。
なお、リング溝24の低圧側面28上に設けられた漏らし溝40の数は、8つ、4つ、2つに限られない。例えば、低圧側面28上には、6つ、3つ、1つの漏らし溝40が設けられていてもよいし、これ以外の数であってもよい。また、低圧側面28上に複数の漏らし溝40が設けられている場合に、複数の漏らし溝40は互いに等しい間隔をあけて配置されてもよいし、互いに等しくない間隔をあけて配置されてもよい。
それぞれのリング溝24では、リング溝24内に配置されたピストンリング30にかかる差圧の大きさに応じて、漏らし溝40の数が調整されている。例えば、圧縮室10Cに最も近い位置に配置されており差圧が大きくなり易いピストンリング30のリング溝24Aには、最も大きい数(例えば8つ)の漏らし溝40が設けられている。そして、リング溝24Aの低圧側に隣接するリング溝24Bのピストンリング30の差圧は、リング溝24Aのピストンリング30の差圧よりも小さいため、リング溝24Bにはリング溝24Aと同数又はそれより少ない数(例えば4つ)の漏らし溝40が設けられている。さらに、リング溝24Bの低圧側に隣接するリング溝24Cのピストンリング30の差圧は、リング溝24Bのピストンリング30の差圧よりも小さいため、リング溝24Cにはリング溝24Bと同数又はそれよい少ない数(例えば2つ)の漏らし溝40が設けられている。又は、リング溝24Cには漏らし溝40が設けられていなくてもよい。
同様に、例えば、クランク機構に最も近い位置に配置されており差圧が大きくなり易いピストンリング30のリング溝24Zには、最も大きい数(例えば8つ)の漏らし溝40が設けられる。そして、リング溝24Zの高圧側に隣接するリング溝24Yのピストンリング30の差圧は、リング溝24Zのピストンリング30の差圧よりも小さいため、リング溝24Yにはリング溝24Zと同数又はそれより少ない数(例えば4つ)の漏らし溝40が設けられている。さらに、リング溝24Yの高圧側に隣接するリング溝24Xのピストンリング30の差圧は、リング溝24Yのピストンリング30の差圧よりも小さいため、リング溝24Xにはリング溝24Yと同数又はそれより少ない数(例えば2つ)の漏らし溝40が設けられている。又は、リング溝24Xには漏らし溝40が設けられていなくてもよい。
(運転動作と作用効果)
圧縮機100の運転時に、ピストン20は、クランク機構の往復運動に伴ってシリンダ10内を摺動し、圧縮室10Cは圧縮と膨張とを繰り返す。圧縮室10Cの圧縮及び膨張に伴って、吸込弁12を介して外部から圧縮室10Cにガスが吸込まれるとともに、吐出弁14を介して圧縮室10Cから外部に昇圧されたガスが吐出される。
圧縮機100の運転時に、ピストン20は、クランク機構の往復運動に伴ってシリンダ10内を摺動し、圧縮室10Cは圧縮と膨張とを繰り返す。圧縮室10Cの圧縮及び膨張に伴って、吸込弁12を介して外部から圧縮室10Cにガスが吸込まれるとともに、吐出弁14を介して圧縮室10Cから外部に昇圧されたガスが吐出される。
圧縮室10Cで昇圧されたガスの一部は、シリンダ10及びピストン20間のピストン隙間50に流入する。このガスはリング溝24内を通過してクランク機構側に漏出する。このとき、各ピストンリング30には差圧が負荷される。この差圧は、各ピストンリング30において、当該ピストンリング30の高圧側空間52と低圧側空間54との圧力の差に起因するものである。この差圧によって、各ピストンリング30は、シリンダ10の内周面に当接しつつリング溝24の低圧側面28に当接した状態になる。
圧縮機100では、圧縮室10Cからクランク機構側に漏れ出すガスの圧力を、複数のピストンリング30に分散させることにより、各ピストンリング30に大きな差圧が負荷されないように構成されている。この分散された差圧は、各ピストンリング30において均等ではなく、各ピストンリング30間において差が生じている。すなわち、一部のピストンリング30に比較的大きな差圧が負荷されることがあり、その場合には、比較的大きな差圧が負荷されるピストンリング30の摩耗が進行し易くなることがある。
しかし、本実施形態ではリング溝24に漏らし溝40が設けられており、漏らし溝40を通じて高圧側空間52から低圧側空間54にガスが漏れるため、各ピストンリング30にかかる差圧が低減されている。このため、各ピストンリング30間の差圧に差が生じている場合でも、差圧の大きいピストンリング30のリング溝24については漏らし溝40によってピストンリング30の差圧を低減させることにより、各ピストンリング30間の差圧の差を緩和できる。したがって、一部のピストンリング30に大きな差圧が負荷されることを抑制できる。
さらに、漏らし溝40がリング溝24の低圧側面28に形成されているので、ピストン20の摺動による摩耗や変形が生じ難くなっている。したがって、圧縮機100では、時間が経過してもピストンリング30間の差圧の差が緩和された状態を維持できるので、複数のピストンリング30の寿命を延長させることができる。
さらにまた、複数のリング溝24間で漏らし溝40の数が調整されているため、各ピストンリング30にかかる差圧を、漏らし溝40の数に応じて低減できる。すなわち、大きな差圧のかかるピストンリング30に対して漏らし溝40の数を多くして、小さな差圧のかかるピストンリング30に対して漏らし溝40の数を少なくすることにより、ピストンリング30間の差圧の差を、より効果的に緩和できる。
(第2実施形態)
第2実施形態の圧縮機100は、図6(a)~(c)に示すように、漏らし溝40の流路面積が調整されている点において、第1実施形態の圧縮機100とは異なっている。
第2実施形態の圧縮機100は、図6(a)~(c)に示すように、漏らし溝40の流路面積が調整されている点において、第1実施形態の圧縮機100とは異なっている。
例えば、図6(a)~(c)は、溝の深さ又は溝の幅を異ならせることにより流路面積を異ならせた漏らし溝40の例を示している。図6(b)の漏らし溝40Bの溝深さは、図6(a)の漏らし溝40Aの溝深さ1Dよりも大きい溝深さ2Dであり、漏らし溝40Bの流路面積は、漏らし溝40Aの流路面積よりも大きい。図6(c)の漏らし溝40Cの溝幅は、図6(a)の漏らし溝40Aの溝幅1Wよりも大きい溝幅2Wであり、漏らし溝40Cの流路面積は、漏らし溝40Aの流路面積よりも大きい。
このように構成された圧縮機100では、複数のリング溝24間において、漏らし溝40の流路面積が調整されているため、各ピストンリング30にかかる差圧を流路面積に応じて低減できる。すなわち、大きな差圧のかかるピストンリング30に対して漏らし溝40の流路面積を大きくして、小さな差圧のかかるピストンリング30に対して漏らし溝40の流路面積を小さくすることにより、ピストンリング30間の差圧の差を、より効果的に緩和できる。
(第3実施形態)
第3実施形態の圧縮機100では、ピストン本体22が分解できるように構成されている点において、第1実施形態の圧縮機100とは異なっている。
第3実施形態の圧縮機100では、ピストン本体22が分解できるように構成されている点において、第1実施形態の圧縮機100とは異なっている。
図7に示すように、ピストン本体22は、一方向に延びる円柱状のピストン軸67と、ピストン軸67に外嵌される複数のピストン部材60と、を備える。図7に示すように、複数のピストン部材60は、それぞれ別体に構成された第1ピストン部材61と、第2ピストン部材62と、中間ピストン部材63とを含んでいる。
第1ピストン部材61、第2ピストン部材62及び中間ピストン部材63は、1つのリング溝24を形成する部位である。ピストン本体22は、多数の第1ピストン部材61、第2ピストン部材62及び中間ピストン部材63を有する。
中間ピストン部材63は、第1ピストン部材61と第2ピストン部材62との間に配置される。第1ピストン部材61の外径は、第2ピストン部材62の外径と等しい。中間ピストン部材63の外径は、第1ピストン部材61の外径よりも小さく且つピストンリング30の内径よりも小さい。
第1ピストン部材61と、第2ピストン部材62と、中間ピストン部材63とが、ピストン軸67に外嵌されることによりリング溝24が形成される。つまり、リング溝24は第1ピストン部材61と第2ピストン部材62との間に形成される。このとき、第1ピストン部材61の上面はリング溝24の低圧側面28として、第2ピストン部材62の下面はリング溝24の高圧側面27として、中間ピストン部材63の外周面はリング溝24の内底面26として機能する。低圧側面28として機能する第1ピストン部材61の上面には、漏らし溝40が形成されている。
このように構成された圧縮機100では、ピストン本体22が第1ピストン部材61、第2ピストン部材62及び中間ピストン部材63に分解された状態で、低圧側面28として機能する面を有する第1ピストン部材61に漏らし溝40を加工できるので、漏らし溝40の加工がより容易に行える。
なお、第3実施形態では、各リング溝24に対応するピストン本体22が、3つのピストン部材61~63に分解可能であるが、これに限らない。例えば、図8に示すように、1つのリング溝24に対応するピストン本体22の部位が、第1ピストン部材61と、外周面が段状に形成された第2ピストン部材62とに分解可能に構成されてもよい。
この場合、第2ピストン部材62は、第1ピストン部材61の外径よりも小さく且つピストンリング30の内径よりも小さい外径の円柱状の第1部位62aと、ピストン20の軸方向に第1部位62aと隣接するとともに第1ピストン部材61と同じ大きさの外径を有する円柱状の第2部位62bとを含む。
第1部位62aの円柱面状の外周面は、リング溝24の内底面26として機能する。第2部位62bは、第1部位62aの上端縁と第2部位62bの下端縁とを繋ぐとともにリング溝24の高圧側面27として機能する下向き面を有している。
第2ピストン部材62は、第1部位62aの下面が第1ピストン部材61の上面に当接した状態で、ピストン軸67に外嵌される。これにより、第1ピストン部材61と第2ピストン部材62の間に、リング溝24が形成される。
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態及び第2実施形態の説明を第3実施形態に援用することができる。
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上述の実施形態に関連して説明された技術は、ガスの圧縮が必要とされる様々な技術分野に好適に利用される。
100・・・・・・・・・・圧縮機
10・・・・・・・・・・シリンダ
20・・・・・・・・・・ピストン
22・・・・・・・・・・ピストン本体
24・・・・・・・・・・リング溝
27・・・・・・・・・・高圧側面
28・・・・・・・・・・低圧側面
30・・・・・・・・・・ピストンリング
40・・・・・・・・・・漏らし溝
52・・・・・・・・・・高圧側空間
54・・・・・・・・・・低圧側空間
61・・・・・・・・・・第1ピストン部材
62・・・・・・・・・・第2ピストン部材
67・・・・・・・・・・ピストン軸
10・・・・・・・・・・シリンダ
20・・・・・・・・・・ピストン
22・・・・・・・・・・ピストン本体
24・・・・・・・・・・リング溝
27・・・・・・・・・・高圧側面
28・・・・・・・・・・低圧側面
30・・・・・・・・・・ピストンリング
40・・・・・・・・・・漏らし溝
52・・・・・・・・・・高圧側空間
54・・・・・・・・・・低圧側空間
61・・・・・・・・・・第1ピストン部材
62・・・・・・・・・・第2ピストン部材
67・・・・・・・・・・ピストン軸
Claims (5)
- シリンダを有する往復動圧縮機に用いられるピストンであって、
複数のリング溝が形成されたピストン本体と、
前記ピストン本体の前記複数のリング溝内にそれぞれ配置された複数のピストンリングと、を備え、
前記複数のリング溝の少なくとも1つのリング溝には、低圧側面に漏らし溝が形成されており、
前記漏らし溝は、当該漏らし溝に対応するピストンリングが前記シリンダに当接しつつ前記低圧側面に当接した状態において、当該漏らし溝に対応する前記ピストンリングに対して高圧側の空間と、当該漏らし溝に対応する前記ピストンリングに対して低圧側の空間との連通を確保する、ピストン。 - 前記ピストン本体は、
ピストン軸と、
前記ピストン軸に外嵌された第1ピストン部材と、
前記第1ピストン部材とは別体に構成され、前記ピストン軸に外嵌された第2ピストン部材と、を備え、
前記第1ピストン部材は、前記漏らし溝が形成された前記低圧側面を有し、
前記第2ピストン部材は、前記低圧側面に対向して配置される高圧側面を有し、
前記リング溝は、前記第1ピストン部材と前記第2ピストン部材との間に形成される、請求項1に記載のピストン。 - 前記複数のリング溝のうち少なくとも2つのリング溝にはそれぞれ、少なくとも1つの漏らし溝が形成されており、
前記複数のリング溝間において、漏らし溝の数が調整されている、
請求項1または請求項2に記載のピストン。 - 前記複数のリング溝のうち少なくとも2つのリング溝にはそれぞれ、漏らし溝が形成されており、
前記複数のリング溝間において、漏らし溝の流路面積が調整されている、
請求項1または請求項2に記載のピストン。 - 請求項1~4のいずれか1項に記載のピストンと、前記ピストンが挿入されるシリンダと、を備える往復動圧縮機。
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