JP2023012748A - 樹脂組成物、静電荷像現像用トナー、画像形成方法、感光性接着剤及び光スイッチング材料 - Google Patents

樹脂組成物、静電荷像現像用トナー、画像形成方法、感光性接着剤及び光スイッチング材料 Download PDF

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Abstract

【課題】光照射による流動化及びその後の非流動化がより効率的に誘起できる樹脂組成物を提供することを目的とする。【解決手段】少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第1の基を有する樹脂と、前記第1の基と相補的に少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第2の基を有し、かつ光により可逆的に異性化する部位を有する光異性化化合物と、を含む、樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、静電荷像現像用トナー、画像形成方法、感光性接着剤及び光スイッチング材料に関する。
光異性化反応に伴って可逆的に流動化・非流動化する化合物として、アゾベンゼンの低分子化合物や高分子化合物が広く知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2では、アゾベンゼン液晶化合物へ紫外光もしくは可視光の照射によって、シス-トランスの異性化を用い、可逆的な結晶相-等方相の相変化を誘発させ、流動化/非流動化を行なう技術が開示されている。
特開2011-256155号公報 特開2011-256291号公報
しかしながら、アゾベンゼン液晶化合物等の光異性化反応に伴って可逆的に流動化・非流動化する化合物においては、光異性化、特にシスからトランスへの非流動化では、一度流動化した分子が液晶の性質により再配列して非流動化するには時間的なスケールが大きくなるという問題があった。
また、昨今の3Dプリンターの普及により、熱溶融押し出し方式による積層体の造形において、着色された又は不透明なポリ乳酸、ABS樹脂、ポリプロピレン等からなるフィラメントの他に、PET系、ポリカーボネート等の透明フィラメントが上市されている。3Dプリンターでの造形においては、造形される造形物の形状によっては、造形中に造形物を支持するための支持体やラフトを、造形物と同時に作製(造形)する場合がある。この場合、造形終了後に、造形物と支持体との接点を切り離すことにより造形物から支持体を除去する工程を有する。このとき、造形物に残されたその接点部分がバリとなるため、バリを平滑にするための作業(例えば、研磨等)に手間がかかる。そのため、3Dプリンターの製造においては、支持体を容易に除去することにより、工程を簡略化することが望まれており、例えば、光で除去可能な支持体の開発が望まれている。
更に、光異性化反応に伴って流動化・非流動化が可能な化合物は、光異性化に伴う極性の変化、屈折率の変化、配向の変化、粘度の変化、又は表面張力の変化等を利用して、光応答性材料を作製することができる。例えば、光異性化に伴う表面張力の変化や表面張力の変化による物質移動を利用して、高分子膜の表面の微細加工を行うことも可能である。このように、光応答性材料は多方面に渡る分野で展開可能であり、様々な分野において光に応答する組成物が強く望まれている。
そこで、本発明は、光照射による流動化及びその後の非流動化がより効率的に誘起できる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、光照射による流動化及びその後の非流動化がより効率的に誘起できる樹脂組成物を含むトナーにおいて、定着性及び細線再現性の優れたトナーを提供することである。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を積み重ねた。その結果、特定の樹脂と、特定の光異性化化合物とを含む樹脂組成物により、光照射による流動化及びその後の非流動化がより効率的に誘起できることを見出した。さらに、上記樹脂組成物をトナーに含有させることで、トナーの定着性及び細線再現性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記1~9に示す樹脂組成物、これを含むトナー及び画像形成方法、並びにこれを用いた感光性接着剤及び光スイッチング材料により達成されるものである。
1. 少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第1の基、及び光により架橋する光架橋性部位を有する樹脂と、前記第1の基と相補的に少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第2の基、及び光により可逆的に異性化する光異性化部位を有する光異性化化合物と、を含む、樹脂組成物。
2. 前記樹脂が、下記一般式(1)で表される構造と、一般式(2)で表される構造と、を含む、上記1.に記載の樹脂組成物:
Figure 2023012748000001
一般式(1)中、Mは、連結基を表し、Bは、少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第1の基を表す;
一般式(2)中、Jは、連結基を表し、Dは、光架橋性部位を表す。
3. 前記光異性化化合物が、下記一般式(3)で表される化合物である、上記1.または2.に記載の樹脂組成物。
Figure 2023012748000002
一般式(3)中、
及びLは、それぞれ独立して、連結基を表し、
及びAは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基又は置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、
及びZは、それぞれ独立して、N又はCHを表し、
は、前記第1の基と相補的に少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第2の基を表し、
nは、1~10の整数であり、
Gは、nが1の場合、前記第1の基と相補的に少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第2の基を表し、nが2~10の場合、n価の連結基を表す、
で表される化合物である。
4. 前記光架橋性部位が、桂皮酸残基、アントラセン残基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びアリル基からなる群より選択される1種以上である、上記1.~3.のいずれかに記載の樹脂組成物。
5. 前記第1の光照射の波長が、250nm以上480nm以下である、上記1.~4.のいずれかに記載の樹脂組成物。
6. 上記1.~5.のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた感光性接着剤。
7. 上記1.~5.のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、トナー。
8. 上記7.に記載のトナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程とを含む、画像形成方法。
9. 上記1.~5.のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、光スイッチング材料。
本発明によれば、光照射による流動化及びその後の非流動化がより効率的に誘起できる樹脂組成物が提供される。
本発明の一実施形態による画像形成方法で用いられる画像形成装置100を示す概略構成図である。 画像形成装置100における照射部40の概略構成図である。 実施例及び比較例で合成した光応答性化合物の光照射に伴う流動性と、非流動性(接着性)の変化とを測る装置の概略図である。
本発明の樹脂組成物は、(a1)少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第1の基及び(a2)光により架橋する光架橋性部位を有する樹脂と;(b1)前記第1の基と相補的に少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第2の基及び(b2)光により可逆的に異性化する部位を有する光異性化化合物と;を含む。
ここで、第1の基と第2の基とを説明する。第1の基と第2の基とは、その2つの基の間で、少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な基である。具体的には、第1の基と第2の基とは、後述する相補的多重水素結合をする基であり、構造中に複数の水素結合アクセプター(Acceptor)と水素結合ドナー(Donor)とを有し、分子間で相補的に2つ以上の水素結合を形成することができる基である。以下、このような2つの基の間で相補的に2つ以上の水素結合を形成する基を「相補的多重水素結合性基」とも称する。
本発明では、樹脂組成物に含まれる樹脂と光異性化化合物とに、それぞれ相補的多重水素結合性基を導入したものである。これにより、樹脂組成物中、樹脂の有する相補的多重水素結合性基と、光異性化化合物の有する相補的多重水素結合性基との間で、2つ以上の水素結合が形成される。すなわち、樹脂組成物中、樹脂と光異性化化合物とは、互いに有する相補的多重水素結合性基を介して結合するため、樹脂組成物に配合した樹脂に比べて大きな分子が形成されていることになる。この場合、樹脂組成物は、配合した樹脂に比べて高粘度となる。
液晶の性質を有する光異性化化合物による流動化は、非流動性のトランス体(E)が光照射され、シス体(Z)へ異性化することで結晶の規則構造が崩れ相転移変化し、これにより流動化が誘起されると考えられている。そのメカニズムは、以下のように考えられる。光異性化化合物(トランス体)へ光を照射すると、まず結晶表面の光異性化化合物がトランス体からシス体へ異性化する。これにより、光異性化化合物は結晶構造が壊れ、流動化する。溶解した結晶表面層は、結晶状態から液状へと相転移することで、光の透過性が向上し、光が結晶内部へ到達可能になる。結晶の最表層より徐々に内部の結晶層が壊れることで、層全体が流動化する。しかし、これらの光異性化化合物をスチレンアクリル樹脂やポリエステル樹脂等の樹脂(いわゆる結着樹脂)に混合して樹脂組成物とすると、光異性化化合物の流動化だけでは樹脂組成物全体の流動化が十分に行われないことが懸念される。すなわち、樹脂組成物において流動化・非流動化を誘起させるためには、樹脂組成物における光異性化化合物の含有量を増やす必要がある。しかし、樹脂よりも分子量の小さい光異性化化合物の添加を増やしてゆくと、光異性化化合物が可塑剤のような働きを示し、組成物全体が低弾性になり所望の物性を得ることが困難となる。そこで、本発明者らは以下のような考えに至った。
高分子同士を共有結合で結合(すなわち、架橋)させると、得られた架橋高分子の弾性率が向上し、架橋度が低い場合でも弾性率向上が見られることが知られている。ここで、現在の電子写真方式によるトナー定着は、熱によりトナー全体の弾性率を低下させて、溶融したトナーを被定着体に付着させる。その後、トナーが冷却されるとともにトナーの弾性率が向上し、トナー像が定着する原理が用いられている。
本発明者らは、低弾性の樹脂(例えば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂等)と光異性化化合物とを、水素結合(相補的多重水素結合)などの非共有結合で架橋することにより、超分子のような高弾性化ができるのであれば、溶融及び定着時における所望の弾性率が達成できるのではないかと考えた。すなわち、通常、架橋は共有結合であるため可逆性はないが、上述の水素結合(相補的多重水素結合)は外部エネルギーの付与で結合切断が可能であるため、樹脂と光異性化化合物との結合に水素結合を用いることができるのではないかと考えた。本発明では、この水素結合(相補的多重水素結合)の結合及び切断は、光異性化化合物の光異性化を用いる設計とした。水素結合は一つ一つの結合エネルギーは小さいが、多数用いることで共有結合に匹敵するような結合エネルギーを示すことが可能であることが知られており、それに伴い、弾性率等の物性向上が期待できる。
本発明では、更に、光異性化化合物のシス体からトランス体への異性化による非流動化に着目した。液晶の性質を有する光異性化化合物は、シス体からトランス体への異性化後に結晶化(粘度上昇)が促進されることにより、流動化した溶融状態から非流動化すると考えられる。このとき、シス体からトランス体への異性化率が低い場合、不純物(シス体)が混在した状態でのトランス体の結晶化が進行する必要があり、結晶化という現象からみて、効率的な結晶は期待できない。よって、トランス体への異性化率が低いと結晶化が十分に進行せず、非流動化が十分でない場合がある。
そこで、本発明では、樹脂組成物に含有される樹脂において、光により架橋する光架橋性部位を導入した。樹脂組成物が非流動化された状態において、樹脂に含まれる光架橋性部位は、結合(架橋)相手となる他の樹脂、あるいは架橋剤に含まれる光架橋性部位との距離が離れているのに加え、架橋反応に必要なエネルギーが供給されていないので、架橋反応が進行しない状態となっている。そうして、樹脂組成物に外部エネルギーが付与されると、光異性化部の異性化のコンフォメーション変化により、樹脂及び光異性化化合物間の水素結合が切断されて樹脂組成物が徐々に流動化を開始する。樹脂の流動化が促進され、樹脂の粘度低下が起こると、樹脂に含まれる光架橋性部位の移動範囲が向上し、結合相手である他の樹脂に含まれる光架橋性部位、あるいは架橋剤と架橋反応に適した位置関係に配向する。そうすると、樹脂に含まれる光架橋性部位は、他の樹脂に含まれる光架橋性部位、あるいは架橋剤と徐々に架橋反応を進行させることとなり、これにより、樹脂組成物の粘度が上昇し、樹脂組成物が非流動化する。本発明の樹脂組成物の非流動化は、シス体からトランス体への異性化率に依存せず、また外部エネルギー照射を受け、流動化と同時に開始し、流動化で低下した粘度を利用して反応を行なうため、迅速に進行する。
なお、本発明の樹脂組成物においては、上述の光架橋性部位の光架橋反応による粘度上昇によって非流動化を発現しているが、当該光架橋性部位の光架橋反応だけでなく、樹脂と光異性化化合物との間で水素結合を形成することによって(すなわち、外部エネルギーの付与によってシス体からトランス体への異性化によって)粘度の向上を達成してもよい。
以上より、本発明の樹脂組成物は、光異性化化合物の異性化に伴い流動化した後、樹脂同士が共有結合性の架橋を形成することによって、迅速な非流動化ができると考えられ、前記樹脂組成物をトナーに導入することで、光照射により定着可能かつ細線再現性の高いトナーを得ることができる。
相補的多重水素結合性基は、2つ以上の水素結合を形成する構造であれば、特に制限はないが、例えば、プリン誘導体であるアデニン、グアニン、ピリミジン誘導体であるシトシン、チミン、ウラシル等の核酸塩基やその誘導体の残基、ウレア、チオウレア、メラミン、シアヌル酸、バルビツール酸、2,6-ジアセチルアミノピリジン、2,6-ジプロピオニルアミノピリジン等の2,6-ジアシルアミノピリジン、4,6-ジアミノ-2-ピリミジノン、2-アミノ-4,6-ピリミジンジノン、2,4,6-トリアミノピリミジン、フタルイミド、2,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、2-ウレイド-4-アミノ-1,3,5-トリアジン及び2-ウレイド-4-ピリミジノン等やその誘導体の残基(一価の基、n価の基)が挙げられる。これらの中で、相補的多重水素結合性基は、核酸塩基の対をなすアデニン、チミン、高い対称性構造を有する2,6-ジアシルアミノピリジン、ウラシル、メラミン、シアヌル酸、フタルイミド、2,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン及びその誘導体の残基が好ましい。
ここで、本発明の樹脂組成物において、樹脂が有する第1の基(より好ましくはB)と、光異性化化合物が有する第2の基(より好ましくはB及びnが1の場合のG)と、が、相補的多重水素結合性基に相当する。例えば、B及びBは、1価の基であり、nが1の場合のGは、1価の基である。よって、B及びBは、相補的多重水素結合性基の1価の残基であり、nが1の場合のGは、相補的多重水素結合性基の1価の残基である。
本発明の樹脂組成物において、相補的多重水素結合性基としては、樹脂が有する第1の基及び光異性化化合物が有する第2の基が必須に存在する。好ましい実施形態において、第1の基及び第2の基が、それぞれ独立して、アデニン、チミン、2,6-ジアシルアミノピリジン、ウラシル、メラミン、シアヌル酸、フタルイミド、及び2,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンからなる群より選択されるいずれか一つの化合物の残基である。
また、相補的多重水素結合性基は、樹脂が有する第1の基と光異性化化合物が有する第2の基とが対となって、第1の基と第2の基との間で水素結合を形成する。このような相補的多重水素結合性基の対(第1の基と第2の基との組み合わせ)としては、アデニン/チミン、アデニン/ウラシル、グアニン/シトシン、メラミン/バルビツール酸、メラミン/シアヌル酸、2,6-ジアシルアミノピリミジン/ウラシル、4,6-ジアミノ-2-ピリミジノン/2-アミノ-4,6-ピリミジンジノン、2,4,6-トリアミノピリミジン/バルビツール酸、2,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン/フタルイミド、2,4,6-トリアミノピリミジン/バルビツール酸、2,4,6-トリアミノピリミジン/フタルイミド等及びその誘導体や、同一構造で対をなすことができるウレア、チオウレア、2,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、2-ウレイド-4-アミノ-1,3,5-トリアジン及び2-ウレイド-4-ピリミジノン等及びその誘導体などが挙げられる。これらの中で、核酸塩基の対をなすアデニン/チミン、高い対称性構造を有し、安定した水素結合を形成できる2,6-ジアシルアミノピリミジン/ウラシル、メラミン/シアヌル酸、2,4,6-トリアミノピリミジン/バルビツール酸/フタルイミドが好ましい。
よって、好ましい実施形態において、第1の基及び第2の基は、アデニン/チミン、2,6-ジアシルアミノピリジン/ウラシル、メラミン/シアヌル酸、及び2,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン/フタルイミドから選択される残基の対である。
ここで、核酸塩基間で水素結合を形成するグアニン/シトシン、アデニン/チミンを例に、本発明における多重水素結合について説明する。上述のように、樹脂が有する第1の基(より好ましくはB)と、光異性化化合物が有する第2の基(より好ましくはB及びnが1の場合のG)と、が、相補的多重水素結合性基に相当する。これらの第1の基と第2の基とは、下記のグアニン/シトシン、アデニン/チミンの対のように2分子間で2以上の水素結合を形成する。
Figure 2023012748000003
グアニンは、N-H及びN-Hの水素がアクセプター、カルボニル基の酸素の非共有電子対がドナーであり、その対となるシトシンは、N-Hの水素がアクセプターであり、窒素原子の非共有電子対及びカルボニル基の酸素の非共有電子対がドナーである。グアニンのドナーとシトシンのアクセプターとが水素結合し、グアニンのアクセプターとシトシンのドナーとが水素結合することで、相補的に多重の水素結合が形成される。
例えば、ひとつの分子内において、一端にグアニン残基を有し、他端にシトシン残基を有する化合物は、溶液中でグアニン残基とシトシン残基とが相補的多重水素結合を形成し、超分子ポリマーを形成する。一つ一つの水素結合の結合エネルギーは小さいが、多重水素結合を複数形成することにより、ポリマーとしての物性が発現する。
すなわち、本発明の樹脂組成物では、樹脂が有する第1の基と、光異性化化合物が有する第2の基とが相補的多重水素結合を形成することにより、超分子ポリマーが形成される。また、この水素結合は、光照射等のエネルギーを付与することにより可逆的に切断及び形成が可能である。
例えば、樹脂組成物は、超分子ポリマーを形成した状態で用いられる。そして、流動化が必要な場合において、光照射により、樹脂組成物中で形成されている樹脂と光異性化化合物との水素結合が切断され、これにより、樹脂組成物は低粘度(低弾性)化される。その後、樹脂組成物中の樹脂において光架橋反応が徐々に進行し、これにより、樹脂組成物は高粘度(高弾性)化される。よって、本発明の樹脂組成物は、光照射により流動化し、その後非流動化することができる。
<樹脂>
本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂は、相補的多重水素結合性基と、光により架橋する光架橋性部位と、を有する。樹脂は、一実施形態において、下記一般式(1)で表される構造及び下記一般式(2)で表される構造を有する。
Figure 2023012748000004
一般式(1)中、Mは、連結基を表し、Bは、少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第1の基(相補的多重水素結合性の第1の基)を表す。Mは、第1の基であるBと主鎖部分とを連結する連結基であり、以下では、一般式(1)で表される構造を「側鎖部分(1)」とも称する。
一般式(2)中、Jは、連結基を表し、Dは、光架橋性部位を表す。Jは、光架橋性部位と主鎖部分とを連結する連結基であり、以下では、一般式(2)で表される構造を「側鎖部分(2)」とも称する。
よって、一実施形態において、樹脂は、主鎖部分と、側鎖部分(側鎖部分(1):「-M-B」および側鎖部分(2):「-J-D」)と、を含む。好ましい実施形態において、樹脂は、主鎖部分において、「相補的多重水素結合性基(第1の基)及び光架橋性部位を有しないユニット(S)」(以下、単に「ユニット(S)」とも称する)と、「相補的多重水素結合性基(第1の基)を有するユニット(T)」(以下、単に「ユニット(T)」とも称する)と、「光架橋性部位を有するユニット(U)」(以下、単に「ユニット(U)」とも称する)と、を有するのが好ましい。この場合、「相補的多重水素結合性基を有するユニット(T)」が上記一般式(1)で表される側鎖部分(1)を有し、「光架橋性部位を有するユニット(U)」が上記一般式(2)で表される側鎖部分(2)を有する。
一般式(1)において、Bを構成しうる相補的多重水素結合性基は、上述した相補的多重水素結合性基が同様に適用できるため、ここでは省略する。
一般式(2)において、Dを構成しうる光架橋性部位としては、例えば、光による二量化反応が可能な経皮酸、アントラセン;光重合触媒(ラジカル発生触媒)を用い、光による架橋反応が可能なアクリロイル(アクリレート)、メタクリロイル(メタクリレート);エン-チオール反応の反応部位であるアリル;等が挙げられる。光架橋性部位はいずれも250~400nmの波長で、反応を進行させることができるが、例えば、Dが桂皮酸の場合、波長300nmの光照射により二量化反応を進行させることができ、Dがアントラセンの場合、波長365nmの光照射により二量化反応を進行させることができる。よって、本発明の樹脂組成物において、一実施形態において、光架橋性部位が、桂皮酸残基、アントラセン残基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びアリル基からなる群より選択される1種以上である。なお、本明細書中、アクリロイル基及びメタクリロイル基をまとめた(メタ)アクリロイル基と称する場合がある。
光架橋性部位は、光架橋部位を有する化合物を、樹脂組成物を構成する樹脂を形成する際に同時に反応させることにより、光架橋性部位を樹脂に導入することができ、光架橋性部位を有する樹脂を得ることができる。光架橋部位を有する化合物としては、上記した光架橋性部位を有する化合物であればよく、例えば、経皮酸誘導体、アントラセン誘導体、(メタ)アクリロイル基((メタ)アクリレート)基)を有する化合物、アリル基を有する化合物が挙げられる。
また、Dが(メタ)アクリロイルの場合には、樹脂組成物において光重合開始剤を含有させることが好ましい。重合開始剤は、特に制限されないが、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等が挙げられる。Dがアリル基の場合は、エンチオール反応を行なうためにペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1、4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、1、4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)等の多官能チオール化合物が好ましく用いられる。重合開始剤の添加量は、樹脂組成物中の樹脂の濃度、樹脂における光架橋性部位の導入率等によって異なるが、具体的には樹脂中の光架橋性部位のモル数に対して、0.5~5.0質量%の範囲内とすることができる。
一般式(1)及び(2)において、M及びJを構成しうる連結基としては、例えば、単結合、アルキレン基(例えば、メチレン、1,2-エチレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、シクロヘキサン-1,4-ジイルなど)、アルケニレン基(例えば、エテン-1,2-ジイル、ブタジエン-1,4-ジイルなど)、アルキニレン基(例えば、エチン-1,2-ジイル、ブタン-1,3-ジイン-1,4-ジイルなど)、少なくとも一つの芳香族基を含む化合物から誘導される連結基(例えば、置換もしくは無置換のベンゼン、縮合多環炭化水素、芳香族複素環、芳香族炭化水素環集合、芳香族複素環集合など)、及びヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、リン原子など)を含む連結基からなる群より選択される基又はそれらの群より選択される1種以上を組み合わせた基である。これらのうち、Mを構成しうる連結基は、好ましくは、単結合、炭素数1~10(より好ましくは炭素数1~5)のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、及びヘテロ原子連結基(好ましくは酸素、硫黄、窒素)からなる群より選択される基又はそれらの群より選択される2種以上を組み合わせた基である。これら連結基は、更に後述する置換基により置換されても良く、連結基を組み合わせて複合基を形成してもよい。
ここで、ヘテロ原子含有連結基としては、例えば、-NH-、-NHCO-、-CO-、-COO-、-OOC-、-NHCOO-、-O-、-S-等が挙げられる。これらのうち、-NH-、-S-、-CO-、-COO-が好ましい。
本明細書中、「置換」とは、注目する官能基や部分構造が、任意に有してもよい置換基で置換されたことを意味する。任意に有してもよい置換基としては、重水素原子、ハロゲン基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基)、シアノ基、無置換の炭素数1~20のアルキル基、ハロゲンで置換された炭素数1~20のアルキル基、無置換の炭素数6~30の一価の芳香族炭化水素基、又は無置換の環形成原子数5~30の一価の芳香族複素環基から選択される。ここで、無置換の炭素数1~20のアルキル基、無置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、及び無置換の環形成原子数5~30の芳香族複素環基は、特に制限されない。例えば、後述する一般式(3)において、A及びAをそれぞれ構成しうる、無置換の炭素数6~30の二価の芳香族炭化水素基、無置換の炭素数6~30の二価の芳香族炭化水素基、及び無置換の環形成原子数5~30の二価の無置換の環形成原子数5~30の芳香族複素環基として例示された化合物の一価の基が挙げられる。
樹脂組成物を構成する樹脂の主鎖部分としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル樹脂(ABS樹脂)、スチレン樹脂(ポリスチレン)、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフロロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの共重合体等の樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。これらのうち、樹脂は、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂及びポリエステル樹脂から選択される1種以上であるのが好ましい。本発明において、樹脂は、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂がより好ましく、スチレンアクリル樹脂がさらに好ましい。
よって、「相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有しないユニット(S)」、「相補的多重水素結合性基を有するユニット(T)」及び「光架橋性部位を有するユニット(U)」から構成される主鎖部分は、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂及びポリエステル樹脂から選択されるのが好ましい。
本発明に係る樹脂の全ユニットにおいて、相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有しないユニット(S)のモル数と相補的多重水素結合性基を有するユニット(T)と光架橋性部位を有するユニット(U)とのモル数との比(S/T/U)は、所望の物性を達成すれば特に限定はないが、好ましくは30/35/35~99.4/0.5/0.1であり、より好ましくは30/35/35~98.8/1/0.2であり、さらに好ましくは60/20/20~98.2/1.5/0.3であり、特に好ましくは70/15/15~97.6/2/0.4であり、最も好ましくは74/13/13~97/2.5/0.5である。
(アクリル樹脂)
本発明でいうアクリル樹脂とは、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いて、重合を行うことにより形成されるものである。(メタ)アクリル酸エステル単量体とは、エステル結合を有する官能基を側鎖に有するものである。具体的には、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル単量体の他、CH=C(CH)COOR(Rはアルキル基)で表されるメタクリル酸エステル単量体などのビニル系エステル化合物が含まれる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、以下に示すアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体が代表的なものであるが、これに制限されるものではない。アクリル酸エステル単量体としては、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレートなどが挙げられる。メタクリル酸エステル単量体としては、たとえば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
これらのアクリル酸エステル単量体、又はメタクリル酸エステル単量体は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。
(スチレンアクリル樹脂)
本発明でいうスチレンアクリル樹脂とは、少なくともスチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを用いて、重合を行うことにより形成されるものである。ここで、スチレン単量体とは、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものも含まれる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、上記アクリル樹脂で述べた化合物が同様に用いられる。
以下にスチレンアクリル樹脂を形成することが可能なスチレン単量体の具体例を示すが、以下に示すものに限定されるものではない。スチレン単量体としては、たとえば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレンなどが挙げられる。
これらのスチレン単量体、アクリル酸エステル単量体、又はメタクリル酸エステル単量体は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。
また、スチレンアクリル樹脂には、上述したスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体のみで形成された共重合体の他に、これらスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に加えて、一般のビニル単量体を併用して形成されるものもある。以下に、本発明でいうスチレンアクリル樹脂を形成する際に併用可能なビニル単量体を例示するが、併用可能なビニル単量体は以下に示すものに限定されるものではない。
(1)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(2)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(3)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(4)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(5)N-ビニル化合物類
N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等
(6)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等。
また、多官能性ビニル単量体を使用して、架橋構造の樹脂を作製することも可能である。さらに、側鎖にイオン性解離基を有するビニル単量体を使用することも可能である。イオン性解離基の具体例としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。以下に、これらイオン性解離基を有するビニル単量体の具体例を示す。
カルボキシル基を有するビニル単量体の具体例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。
スチレンアクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。必要に応じて、例えば、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネートなどの公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
本発明に使用されるスチレンアクリル樹脂を形成する場合、スチレン単量体及びアクリル酸エステル単量体の含有量は特に限定されるものではなく、結着樹脂の軟化温度やガラス転移温度を制御する観点から適宜調整することが可能である。具体的には、スチレン単量体の含有量は、単量体全体に対し40~95質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。また、アクリル酸エステル単量体の含有量は、単量体全体に対し5~60質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。
スチレンアクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジンなどが挙げられる。
また、乳化重合法でスチレンアクリル樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素などが挙げられる。
重合開始剤の添加量は、目的の分子量や分子量分布によって異なるが、具体的には重合性単量体の添加量に対して、0.1~5.0質量%の範囲内とすることができる。
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50~100℃であることが好ましく、55~90℃であることがより好ましい。また、重合時間は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、たとえば2~12時間であることが好ましい。
乳化重合法により形成されるスチレンアクリル樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とすることもできる。この場合の製造方法としては、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する多段重合法を採用することができる。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、二価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、二価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂である。なお、ポリエステル樹脂は、非晶性であってもよいし結晶性であってもよい。
多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2~3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
ジカルボン酸成分としては、たとえば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、ドデセニルコハク酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの不飽和芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。ジカルボン酸成分は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
その他、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸、及び上記のカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1~3のアルキルエステルなども用いることができる。
ジオール成分としては、たとえば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの飽和脂肪族ジオール;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオールなどの不飽和脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールが挙げられ、また、これらの誘導体を用いることもできる。ジオール成分は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことによりを製造することができる。
ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物などが挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O-n-Bu))、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度は特に限定されるものではないが、70~250℃であることが好ましい。また、重合時間も特に限定されるものではないが、0.5~10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂としては、例えば、以下の構造式(構成単位)で表される樹脂が例示される。なお、下記構造式において「-M-B」部分及び「-J-D」は側鎖部分である。
Figure 2023012748000005
上記構造式中、M及びBは、一般式(1)の定義と同様であり、J及びDは、一般式(2)の定義と同様である。上記構造式中、各ユニットの付加モル数は、上記した「相補的多重水素結合性基を有しないユニット(S)」と「相補的多重水素結合性基を有するユニット(T)」と、「光架橋性部位を有するユニット(U)」とのモル比に対応する。なお、上記スチレンアクリル樹脂においては、「相補的多重水素結合性基を有するユニット(T)」と、「光架橋性部位を有するユニット(U)」以外のユニットが、「相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有しないユニット(S)」である。よって、上記スチレンアクリル樹脂においては、「相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有しないユニット(S)」は3つのユニットにより構成されている。
本発明において、樹脂組成物の流動性や非流動性、トナーの定着率や細線再現性等の所望の物性を示せば特に限定はないが、樹脂の数平均分子量(Mn)は、1000~500000であるのが好ましく、2000~300000であるのがより好ましく、3000~100000であるのがさらに好ましく、5000~50000であるのがさらにより好ましく、6000~30000であるのが特に好ましく、8000~25000であるのが最も好ましい。また、樹脂組成物の溶融は、分子量分布が狭いほど温度範囲がシャープになることが知られており、所望の物性を示せば特に限定はないが、質量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、1.05~5.0であるのが好ましく、1.10~4.0であるのがより好ましく、1.20~3.0であるのがさらに好ましい。
なお、樹脂のMn及びMw/Mnは、実施例に記載の方法により測定することができる。
<光異性化化合物>
次に、相補的多重水素結合性基を有する光異性化化合物について説明する。光異性化化合物は、分子内に光でトランス構造からシス構造、及び/又はシス構造からトランス構造する光異性化部位を有していればよく、例えば、スチリル構造(Ph-C=C-)、アゾ構造(-N=N-)、アゾメチン構造(-C=N-)、プロペンイミン構造(-C=C-C=N-)等の光異性化部位を分子内に有していればよい。好ましい一実施形態において、光異性化化合物は、下記一般式(3):
Figure 2023012748000006
一般式(3)中、
及びLは、それぞれ独立して、連結基を表し、
及びAは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基又は置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、
及びZは、それぞれ独立して、N又はCHを表し、
は、前記第1の基と相補的に少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第2の基を表し、
nは、1~10の整数であり、
Gは、nが1の場合、前記第1の基と相補的に少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第2の基を表し、nが2~10の場合、n価の連結基を表す、
で表される化合物である。なお、本明細書中、Gを構成しうるn価の連結基は、L及びLを構成しうる(2価の)連結基を含むが、Gを構成しうるn価の連結基の好ましい形態については、「n価の連結基」として下記に説明する。
一般式(3)中、L及びLを構成しうる連結基としては、例えば、単結合、アルキレン基(例えば、メチレン、1,2-エチレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、シクロヘキサン-1,4-ジイルなど)、アルケニレン基(例えば、エテン-1,2-ジイル、ブタジエン-1,4-ジイルなど)、アルキニレン基(例えば、エチン-1,2-ジイル、ブタン-1,3-ジイン-1,4-ジイルなど)、少なくとも一つの芳香族基を含む化合物から誘導される連結基(例えば、置換もしくは無置換のベンゼン、縮合多環炭化水素、芳香族複素環、芳香族炭化水素環集合、芳香族複素環集合などから誘導される連結基)、及びヘテロ原子含有連結基(酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、リン原子を含む基など)からなる群より選択される基又はそれらの群より選択される1種以上を組み合わせた基である。これらのうち、L及びLは、好ましくは、単結合、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、少なくとも一つの芳香族基を含む化合物から誘導される連結基(好ましくはフェニレン基)及びヘテロ原子含有連結基(好ましくは酸素原子、窒素原子)からなる群より選択される基又はそれらの群より選択される1種以上を組み合わせた基である。これら連結基は更に上記置換基により置換されても良く、連結基を組み合わせて複合基を形成してもよい。
ここで、ヘテロ原子含有連結基としては、例えば、-NH-、-NHCO-、-CO-、-COO-、-NHCOO-、-O-、-S-等が挙げられる。これらのうち、-NH-、-NHCO-、-CO-、-COO-、が好ましい。
好ましい実施形態において、L及びLは、それぞれ独立して、-(NHCO-R)-で表される基(ここで、Rは、炭素数1~12のアルキレン基又は炭素数6~12のアリーレン基であり、nは1~6の整数である)である。Rは、好ましくは炭素数1~3のアルキル基又はフェニル基もしくはナフチル基であり、nは、好ましくは1~3の整数である。具体的には、L及びLは、-NHCO-CHCH-;-NHCO-CHCH-NHCO-CHCH-;NHCO-(CHCH-NHCO-CHCH-;-NHCO-CH(CH)CH-NHCO-CHCH-;-NHCO-Ph-NHCO-CHCH-(ただし、Ph=C);等が挙げられる。
一般式(3)において、A及びAは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基又は置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表わす。一般式(3)においてA及びAを構成しうる、芳香族炭化水素基としては、特に制限されないが、炭素数6~30の二価の芳香族炭化水素基であり、例えば、炭素数6~30の1つ以上の芳香族環を含む炭化水素(芳香族炭化水素)環由来の基等が挙げられる。また、芳香族炭化水素環基が2以上の環を含む場合、2以上の環は互いに単結合で結合又は縮合していてもよい。炭素数6~30の二価の芳香族炭化水素基を構成する芳香族炭化水素環は、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ペンタレン環、インデン環、ナフタレン環、アントラセン環、アズレン環、ヘプタレン環、アセナフタレン環、フェナレン環、フルオレン環、フェナントレン環、ビフェニル環、タ-フェニル環、トリフェニレン環、ピレン環、クリセン環、ピセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ペンタセン環、テトラフェン環、ヘキサフェン環、ヘキサセン環、ルビセン環、トリナフチレン環、ヘプタフェン環、ピラントレン環等が挙げられる。すなわち、炭素数6~30の二価の芳香族炭化水素基としては、これらの環に由来する基や、又はこれらの環の組み合わせに由来する基等が挙げられる。なお、本明細書において、「環に由来する基」及び「環の組み合わせに由来する基」とは、環構造から、環構成元素に直接結合する水素原子を価数の分だけ外し、遊離原子価とした基を表す。
一般式(3)においてA及びAを構成しうる、芳香族複素環基としては、特に制限されないが、環形成原子数5~30の二価の芳香族複素環基であり、例えば、1個以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S))を有し、残りの環原子が炭素原子(C)である1以上の芳香族環を含む環形成原子数5~60の環(芳香族複素環)由来の基等が挙げられる。また、芳香族複素環基が2以上の環を含む場合、2以上の環は互いに単結合で結合又は縮合していてもよい。二価の芳香族複素環基を構成する芳香族複素環としては、特に限定されないが、例えば、π電子不足系芳香族複素環、π電子過剰系芳香族複素環、π電子不足系芳香族複素環とπ電子過剰系芳香族複素環とを混合したπ電子不足系-π電子過剰系混合芳香族複素環が挙げられる。π電子不足系芳香族複素環の具体例としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、アクリジン環、フェナジン環、ベンゾキノリン環、ベンゾイソキノリン環、フェナンスリジン環、フェナントロリン環、ベンゾキノン環、クマリン環、アントラキノン環、フルオレノン環等が挙げられる。π電子過剰系芳香族複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、インドロカルバゾール環等が挙げられる。π電子不足系-π電子過剰系混合芳香族複素環の具体例としては、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、イミダゾリノン環、ベンズイミダゾリノン環、イミダゾピリジン環、イミダゾピリミジン環、イミダゾフェナンスリジン環、ベンズイミダゾフェナンスリジン環、アザジベンゾフラン環、アザカルバゾール環、アザジベンゾチオフェン環、ジアザジベンゾフラン環、ジアザカルバゾール環、ジアザジベンゾチオフェン環、キサントン環、チオキサントン環等が挙げられる。すなわち、環形成原子数5~30の二価の芳香族複素環基としては、これらの環に由来する基や、又はこれらの環の組み合わせに由来する基等が挙げられる。
一般式(3)中、Z及びZは、それぞれ独立して、N又はCHを表す。好ましい実施形態において、Z及びZは、それぞれ独立して、N又はCHであり、かつZ≠Zである。Z及びZは、芳香族複素環基とそれぞれ同様のもので、一価の基であるものが挙げられる。
一般式(3)において、Bは、相補的多重水素結合性基である第2の基であり、第1の基であるBに対して相補的に2以上の水素結合を形成するものである。相補的多重水素結合性基については上述したため省略する。
一般式(3)において、nは、1~10の整数であり、好ましくは1~8の整数であり、より好ましくは1~5の整数であり、さらに好ましくは1~4の整数である。
一般式(3)において、Gは、nが1の場合、相補的多重水素結合性基の第2の基であり、第1の基であるBに対して相補的に2以上の水素結合を形成するものである。相補的多重水素結合性基については上述したため省略する。
一般式(3)において、Gは、nが2~10の場合、n価の連結基を表す。
また、一般式(3)においてGを構成しうる、n価の連結基としては、種々のものが挙げられ特に制限はないが、例えば、置換もしくは非置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは非置換の芳香族複素環基のn価の基である。n価の連結基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基から選択される2以上が、互いに単結合で結合されて組み合わされていてもよい。また、Gを構成しうる、n価の連結基である脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の間に、-O-、-NHCO-、-CO-及び-COO-からなる群より選択される1つ以上の基が組み込まれていてもよい。
Gを構成しうる、n価の連結基である脂肪族炭化水素基としては、特に制限されないが、炭素数1~30のn価の脂肪族炭化水素基であり、例えば、炭素数1~30のn価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数2~30のn価の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。なお、n価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基又は炭素数3~30の脂環式炭化水素基等も含まれる。
なお、n価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、n=1のときには、炭素数1~20のアルキル基、n=2のときには、炭素数1~20のアルキレン基、n=3のときには、炭素数2~20のアルカントリイル基、n=4のときには、炭素数3~20のアルカンテトライル基等が例示される。
Gを構成しうる、n価の連結基である芳香族炭化水素基としては、特に制限されないが、炭素数6~30のn価の芳香族炭化水素基であり、例えば、A及びAを構成しうる炭素数6~30の二価の芳香族炭化水素基を構成する芳香族炭化水素環由来のn価の基が同様に適用できる。
Gを構成しうる、n価の連結基である芳香族複素環基としては、特に制限されないが、環形成原子数5~30のn価の芳香族複素環基であり、例えば、A及びAを構成しうる炭素数6~30の二価の芳香族複素環基を構成する芳香族複素環由来のn価の基が同様に適用できる。それらのうち、Gを構成しうる、n価の連結基である芳香族複素環基としては、トリアジン環由来の基が好ましい。
一般式(3)においてGを構成しうる、n価の連結基の例としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリアジン、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン等の多価アルコールをメルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸でエステル化したチオール化合物由来のn価の基(残基)が挙げられる。
好ましい実施形態において、n価の連結基は、下記構造式(x-1)~(x-13)で表される。下記構造において、「*」で示した部位は、一般式(3)におけるLとの結合手を表す。なお、下記構造式(x-1)及び(x-2)において、Rは炭素数1~10のアルキル基である。
Figure 2023012748000007
一般式(3)で表される光異性化化合物としては、例えば、以下に示される化合物1~154が挙げられる。
Figure 2023012748000008
Figure 2023012748000009
Figure 2023012748000010
Figure 2023012748000011
Figure 2023012748000012
Figure 2023012748000013
Figure 2023012748000014
Figure 2023012748000015
Figure 2023012748000016
Figure 2023012748000017
Figure 2023012748000018
Figure 2023012748000019
Figure 2023012748000020
本発明の樹脂組成物において、樹脂の有する相補的多重水素結合性基に対する光異性化化合物の有する相補的多重水素結合性基のモル比(光異性化化合物が有する相補的多重水素結合性基のモル数/樹脂が有する相補的多重水素結合性基のモル数)が、0.05~7.0であるのが好ましく、0.1~5.0であるのがより好ましく、0.2~3.0であるのがさらに好ましく、0.3~2.5であるのが特に好ましく、0.5~2.0であるのが最も好ましい。樹脂と光異性化化合物とが有する相補的多重水素結合性基のモル比が上記範囲である場合、本発明の効果がより発揮される。
<光異性化化合物の調製方法>
一般式(3)で表される光異性化化合物(相補的多重水素結合性基を有する光異性化化合物)の調製方法は特に制限されない。例えば、はじめに所望の光異性化化合物を準備し、得られた光異性化化合物に相補的多重水素結合性基を導入することで調製することができる。以下に、光異性化化合物の合成方法の例をいくつか示す。
〔合成例1:光異性化化合物1の合成〕
<アゾメチン-2NOの合成>
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた2000mLの4頭フラスコに、4-ニトロアニリン(東京化成工業社製)(80.0g、0.58mol)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)(81.7g、0.58mol)とエタノール1000mLとを投入した反応液を、50℃で加熱攪拌した。その後、反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、メタノール/エタノールの混合溶媒中で再結晶を行い、アゾメチン-2NOを128.6g(収率85%)得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<アゾメチン-2NHの合成>
Chemistry of Heterocyclic Compounds, 2004,40(6), 701を参考に合成した。
1000mL四頭フラスコに三方コック2個、温度計、滴下ロート及び玉栓を設置し、容器内を減圧後、窒素置換を行なった。この操作を3回行なった。窒素フローしながら、酢酸エチル400mL、アゾメチン-2NO(100.0g、0.38mol)及びアリルパラジウム(II)クロリドダイマー(2.8g、8mmol)を四頭フラスコに投入し、室温で30分攪拌した。その後アイスバスで四頭フラスコ内の溶液の液温を10℃以下に保ちながら、滴下ロートへ投入したトリエチルシラン(53.4g、0.46mol)を、四頭フラスコ内の溶液中へ30分かけて滴下した。滴下後、アイスバスをオイルバスに交換し、反応溶液を65℃で17時間攪拌した。反応溶液をエバポレーターにて濃縮し、得られた固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-2NHが50.1g(収率65%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<チミン-COOHの合成>
チミンとβ-プロピオラクトンを用いChem.Lett.,1973,967と同様な手法で1-(2-カルボキシエチル)アデニンを合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<チミン-COOPhCl(活性エステル)の合成>
2L四頭フラスコに、DMF1000mL、トリエチルアミン28.1g(0.28mol)、ペンタクロロフェニルトリクロロアセテート(114.3g、0.28mol)を添加し、室温で攪拌することで完溶させた。この溶液中に1-(2-カルボキシエチル)チミン(50.0g、0.25mol)を添加し、室温で20h反応させた。その後溶液が固化するまでDMF、トリエチルアミン等を減圧留去し、得られた固体をフラスコから取出し、ヌッチェ上にて冷水で水洗した。この固体を50℃の減圧オーブンにて乾燥後、CHCl/MeOH=1/1(v/v)で再結晶することで、ペンタクロロフェニル3-(2、4-ジヒドロキシ-5-メチルピリミジン-1-イル)プロピオネートを40.6g得た(収率36%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物1の合成>
1000mLナスフラスコに、<チミン-COOPhCl(活性エステル)の合成>で合成したペンタクロロフェニル3-(2、4-ジヒドロキシ-5-メチルピリミジン-1-イル)プロピオネート(24.4g、54.7mmol)、合成例1の<アゾメチン-2NHの合成>で合成したアゾメチン-2NH(5.0g、24.8mmol)及びDMF300mLを投入し、室温攪拌により溶解させた。その後室温で12時間反応させた後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、固形分を得た。得られた固形分を水洗し、その後アセトンにて洗浄した。洗浄後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、光異性化化合物1が7.2g(収率51%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例2:光異性化化合物4の合成〕
合成例1の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成工業社製)に代えた以外は、合成例1と同様な方法で光異性化化合物4を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例3:光異性化化合物16の合成〕
<アゾメチン-2NH(2)の合成>
合成例1の5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-アミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、合成例1と同様な方法でアゾメチン-2NH(2)を合成した。
<アゾメチン-2NH(3)の合成>
アゾメチン-2NH(2)(100.0g、0.47mol)をトルエン500mLに溶解し、トリエチルアミン(114.3g、1.13mol)を加えた後に、氷浴にて溶液温度を10℃以下に保った。この溶液中へ3-アミノプロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(110.4g、1.03mol)を30分かけて滴下後、50℃で5時間反応させた。メタノールを添加しクエンチした後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。得られた固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-2NH(3)を86.5g得た(収率52%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物16の合成>
その後、アゾメチン-2NH(3)とチミン-COOPhCl(活性エステル)との反応を合成例1と同様の方法で行い、光異性化化合物16を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例4:光異性化化合物18の合成〕
<Ph-3NOの合成>
2000mL四頭フラスコに三方コック2個、温度計、滴下ロート及び玉栓を設置し、容器内を減圧後、窒素置換を行なった。この操作を3回行なった。窒素フローしながら、脱水トルエン800mL、1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-アミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(159.2g、1.24mol)及び脱水トリエチルアミン(138.4g、1.37mol)を四頭フラスコに投入し、室温で30分攪拌した。その後アイスバスで四頭フラスコ内の溶液の液温を10℃以下に保ちながら、滴下ロートへ投入した1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド(東京化成工業社製)(100.0g、0.38mol)を、四頭フラスコ内の溶液中へ30分かけて滴下した。滴下後アイスバスをはずし、反応溶液を室温で6時間攪拌した。その後、反応溶液をエバポレーターにて濃縮し、得られた固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、Ph-3NOが77.3g(収率38%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<Ph-3NHの合成>
1000mLの三角フラスコに、Ph-3NO(70.0g、0.13mol)とパラジウム炭素(0.90g、1.94mol)とを入れ、次いでエタノールとテトラヒドロフランとをそれぞれ200mL入れ、水素を封入しながら攪拌した。その後、反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、Ph-3NHを51.3g(収率88%)得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<アゾメチン-3NOの合成>
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた1000mLの4頭フラスコに、<Ph-3NHの合成>で得られたPh-3NH(50.0g、0.11g)、4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成工業社製)(55.4g、0.37mol)、エタノール200mL及びテトラヒドロフラン200mLを投入し、50℃で3時間加熱攪拌した。次に、その反応液を室温まで冷却後、吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、メタノール/エタノールの混合溶媒中で再結晶を行い、アゾメチン-3NOを55.5g(収率61%)得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<アゾメチン-3NHの合成>
Chemistry of Heterocyclic Compounds, 2004,40(6), 701を参考に合成した。
500mL四頭フラスコに三方コック2個、温度計、滴下ロート及び玉栓を設置し、容器内を減圧後、窒素置換を行なった。この操作を3回行なった。窒素フローしながら、酢酸エチル300mL、<アゾメチン-3NOの合成>で得られたアゾメチン-3NO(50.0g、0.06mol)及びアリルパラジウム(II)クロリドダイマー(東京化成工業社製)(0.7g、2mmol)を投入し、室温で30分攪拌した。その後アイスバスで四頭フラスコ内の溶液の液温を10℃以下に保ちながら、滴下ロートへ投入したトリエチルシラン(12.8g、0.11mol)を、四頭フラスコ内の溶液中へ30分かけて滴下した。滴下後アイスバスをオイルバスに交換し、65℃で17時間攪拌した。反応溶液をエバポレーターにて濃縮し、得られた固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-3NHが33.8g(収率73%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物18の合成>
1000mLナスフラスコに、〔合成例1〕<チミン-COOPhCl(活性エステル)の合成>で合成したペンタクロロフェニル3-(2、4-ジヒドロキシ-5-メチルピリミジン-1-イル)プロピオネート(38.8g、86.9mmol)、<アゾメチン-3NHの合成>で合成したアゾメチン-3NH(20.0g、26.3mmol)及びDMF300mLを投入し、室温攪拌により溶解させた。その後室温で12時間反応させた後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、固形分を得た。得られた固形分を水洗し、その後アセトンにて洗浄した。洗浄後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、光異性化化合物18が13.3g(収率39%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例5:光異性化化合物22の合成〕
<アゾベンゼン-2NOの合成>
2000mL四頭フラスコに三方コック2個、温度計、滴下ロート及び玉栓を設置し、容器内を減圧後、窒素置換を行なった。この操作を3回行なった。窒素フローしながら、4,4’-アゾアニリン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(100.0g、0.47mol)、トルエン500mL及びトリエチルアミン(115.4g、1.14mol)を四頭フラスコに加えた後に、氷浴にて四頭フラスコ内の溶液温度を10℃以下に保った。この溶液中へ3-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成工業社製)(115.4g、1.04mol)を窒素フローしながら分割添加し、クロリド添加後、50℃で5時間反応させた。メタノールを添加しクエンチした後、その反応溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。得られた固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾベンゼン-2NOを153.9g得た(収率64%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<アゾベンゼン-2NHの合成>
上記アゾベンゼン-2NOを用い、合成例4の<アゾメチン-3NH>と同様の方法により、アゾベンゼン-2NHを得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物22の合成>
上記アゾベンゼン-2NOとチミン-COOPhCl(活性エステル)との反応を合成例1と同様の方法で行い、光異性化化合物22を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例6:光異性化化合物23の合成〕
4,4’-(1,2-エチレンジイル)ジアニリン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)とチミン-COOPhCl(活性エステル)を用い、合成例1と同様な方法で光異性化化合物23を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例7:光異性化化合物26の合成〕
<TMP-3NHの合成>
合成例3の<アゾメチン-2NH(2)の合成>で、アゾメチン-2NHを、トリメチロールプロパン(東京化成工業社製)に代えた以外は、合成例3の<アゾメチン-2NH(2)の合成>と同様な方法でTMP-3NHを合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<TMP-3NOの合成>
合成例3の<アゾメチン-2NH(2)の合成>で、アゾメチン-2NH、3-アミノプロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)を、TMP-3NH、4-(4-ニトロフェニルアゾ)ベンゾイルクロリド(Chemieliva Pharmaceutical社製)に代えた以外は、合成例3の<アゾメチン-2NH(2)の合成>と同様な方法でTMP-3NOを合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<TMP-3NH(2)の合成>
上記TMP-3NOを用い、合成例4の<アゾメチン-3NH>と同様の方法により、TMP-3NH(2)を得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物26の合成>
上記TMP-3NH(2)とチミン-COOPhCl(活性エステル)とを用い、合成例1と同様な方法で光異性化化合物26を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例8:光異性化化合物29の合成〕
<TAZ-3NOの合成>
合成例3の<アゾメチン-2NH(2)の合成>で、アゾメチン-2NH、3-アミノプロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)を、4-[2-(ニトロフェニル)エテニル]アニリン(Chemieliva Pharmaceutical社製)、シアヌル酸クロリド(東京化成工業社製)に代え、加熱還流を6時間実施した以外は、合成例3の<アゾメチン-2NH(2)の合成>と同様な方法でTAP-3NOを合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<TAZ-3NHの合成>
上記TAZ-3NOを用い、合成例4の<アゾメチン-3NH>と同様の方法により、TAZ-3NHを得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物29の合成>
上記TAZ-3NHとチミン-COOPhCl(活性エステル)とを用い、合成例1と同様な方法で光異性化化合物29を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例9:光異性化化合物36の合成〕
<アゾメチン-2NO(2)の合成>
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた500mLの4頭フラスコに、4-ニトロアニリン(東京化成工業社製)(80.0g、0.58mol)と1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキシアルデヒド(Accel Pharmtec社製)(89.3g、0.58mol)とエタノール300mLとを投入し、50℃で加熱攪拌した。その後、反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、メタノール/エタノールの混合溶媒中で再結晶を行い、アゾメチン-2NO(2)を136.6g(収率86%)得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<アゾメチン-2NH(4)の合成>
1000mL四頭フラスコに三方コック2個、温度計、滴下ロート及び玉栓を設置し、容器内を減圧後、窒素置換を行なった。この操作を3回行なった。窒素フローしながら、テトラヒドロフラン250mL、エタノール250mL、アゾメチン-2NO(2)(100.0g、0.36mol)及びアリルパラジウム(II)クロリドダイマー(2.7g、7mmol)を四頭フラスコに投入し、室温で30分攪拌した。その後アイスバスで四頭フラスコ内の溶液の液温を10℃以下に保ちながら、滴下ロートへ投入したトリエチルシラン(50.9g、0.44mol)を、四頭フラスコ内の溶液中へ30分かけて滴下した。滴下後、アイスバスをオイルバスに交換し、65℃で17時間攪拌した。反応溶液をエバポレーターにて濃縮し、得られた固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-2NH(4)が64.1g(収率82%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<アゾメチン-2NH(5)の合成>
1000mL四頭フラスコに三方コック2個、温度計、滴下ロート及び玉栓を設置し、容器内を減圧後、窒素置換を行なった。この操作を3回行なった。窒素フローしながら、アゾメチン-2NH(4)(100.0g、0.47mol)とトルエン500mLとを四頭フラスコに加えてアゾメチン-2NHを溶解させ、次いでトリエチルアミン(114.3g、1.13mol)を加えた後に、氷浴にて四頭フラスコ内の溶液温度を10℃以下に保った。この溶液中へ3-アミノ-2-メチルプロパノイルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(114.3g、1.0mol)を30分かけて滴下後、50℃で5時間反応させた。得られた反応溶液にメタノールを添加しクエンチした後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。得られた固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、アゾメチン-2NH(5)を105.9g得た(収率59%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<アデニン-COOHの合成>
アデニンとβ-プロピオラクトンとを用いChem.Lett.,1973,967と同様な手法で9-(2-カルボキシエチル)アデニンを合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<アデニンCF-COOPhNO(活性エステル)の合成>
5L四頭フラスコに、ピリジン2000mL、9-(2-カルボキシエチル)アデニン(40.0g、0.19mol)、4-ニトロフェノール(30.0g、0.22mol)、4-ニトロフェニルトリフルオロアセテート(200.0g、0.85mol)を添加し、50℃で2時間攪拌した。その後、溶液が固化するまでロータリーエバポレータで反応溶液を濃縮し、得られた固形分をCHClで溶解した。この溶液にジエチルエーテルを加え、析出した固体をヌッチェで濾過した。この固体をCHClに再溶解し、激しく攪拌したCHClと同量のジエチルエーテル中にゆっくり滴下し、再沈精製を行なった。この固体をヌッチェで濾過し、50℃の減圧オーブンにて乾燥することで、4-ニトロフェニル-3-(6-トリフルオロアセトアミドプリン-9-イル)プロピオネートを63.0g得た(収率77%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<CFCOで保護された光異性化化合物36の合成>
500mLナスフラスコに、4-ニトロフェニル-3-(6-トリフルオロアセトアミドプリン-9-イル)プロピオネート(66.2g、0.16mol)、上述の<アゾメチン-2NH(4)の合成>で合成したアゾメチン-2NH(4)(50.0g、0.13mol)及びジメチルスルホキシド200mLを投入し、室温で攪拌することにより溶解させた。その後室温で3日間反応させた後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、固形分を得た。得られた固形分を水洗し、その後ジエチルエーテルにて洗浄した。洗浄後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、CFCOで保護された光異性化化合物36が88.2g(収率71%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物36の合成(CFCOの脱保護)>
100mLナスフラスコに、炭酸カリウム(2.9g、20.9mmol)及び水20mLを投入し、室温攪拌により溶解させた。その後、この溶液にメタノール20mLを加えた溶液中に、上述の<CFCOで保護された光異性化化合物36の合成>で合成したCFCOで保護された光異性化化合物36(10.0g、10.5mmol)を投入し、室温で12時間攪拌した。得られた反応溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。得られた固体をエタノールに再溶解させ、激しく攪拌した水中へゆっくり滴下することで、再沈精製した。この固形分を50℃の減圧オーブンにて乾燥することで、光異性化化合物36を6.6g得た(収率83%)。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例10:光異性化化合物39の合成〕
〔合成例9〕の<アゾメチン-2NO(2)の合成>において、4-ニトロアニリン(東京化成工業社製)と1-メチル-5-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキシアルデヒド(Accel Pharmtec社製)とを、4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成工業社製)と5-ニトロ-2-チオフェンアミン(Chemieliva Pharmaceutica社製)とに代えた以外は、〔合成例9〕と同様な方法で光異性化化合物39を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例11:光異性化化合物49の合成〕
〔合成例9〕<CFCOで保護された光異性化化合物36の合成>のアゾメチン-2NH(4)を4,4’-アゾジアニリン(Sigma-Aldrich社製)に代え、その後<光異性化化合物36の合成(CFCOの脱保護)>と同様な方法で光異性化化合物49を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例12:光異性化化合物57の合成〕
<STB-COClの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100mL4頭フラスコにCHClを50mL、4-カルボキシ-4’-ニトロスチルベン(10.0g、37.1mmol)及びDMF数滴を投入し、室温で攪拌し溶解させた。この溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、オキザリルクロリド(東京化成工業社製)(5.2g、40.9mmol)を、この溶液中に30分かけて滴下し、その後アイスバスを取り除き溶液の液温を室温とし、5時間攪拌した。溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、再度CHClを50mL投入後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した。この操作を3回繰り返した。その結果、STB-COClが10.5g(収率98%)得られた。
<光異性化化合物57の合成>
〔合成例7〕のトリメチロールプロパン(東京化成工業社製)、4-(4-ニトロフェニルアゾ)ベンゾイルクロリド(Chemieliva Pharmaceutical社製)及びチミン-COOPhCl(活性エステル)を、ペンタエリスリトール(東京化成工業社製)、上記で合成したSTB-COCl及びアデニンCF-COOPhNO(活性エステル)に代えた以外は、〔合成例7〕及び〔合成例9〕の<光異性化化合物36の合成(CFCOの脱保護)>と同様な方法で光異性化化合物57を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例13:光異性化化合物62の合成〕
<ウラシル-NOの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100mL4頭フラスコにCHCl 50mL、6-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-2,4-ピリミジンジオン(Aurora Fine Chemicals社製)(5.0g、32.0mmol)及びトリエチルアミン(東京化成工業社製)(5.8g、57.6mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。この溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、4-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成工業社製)(7.1g、38.4mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。その後、溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、ウラシル-NOが7.2g(収率74%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<ウラシル-NHの合成>
200mLの三角フラスコに、ウラシル-NO(7.0g、22.9mmol)とパラジウム炭素(0.11g、229mmol)とを入れ、エタノールとテトラヒドロフランとをそれぞれ30mL入れ、水素を封入しながら攪拌した。この反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、ウラシル-NHを5.4g(収率86%)得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<ウラシル-CHOの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100mL4頭フラスコにCHCl 50mL、6-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-2,4-ピリミジンジオン(Aurora Fine Chemicals社製)(5.0g、32.0mmol)及びトリエチルアミン(東京化成工業社製)(5.8g、57.6mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、上記で合成した4-ホルミルベンゾイルクロリド(Aurora Fine Cheicals社製)(6.5g、38.4mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。その後、溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、ウラシル-CHOが7.8g(収率84%)得られた。構造は、1H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物62の合成>
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mLの4頭フラスコに上記で合成したウラシル-NH(7.0g、25.4mmol)、ウラシル-CHO(7.3g、25.4mmol)及びエタノール30mLを投入し、50℃で加熱攪拌した。この反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、光異性化化合物62が9.0g(収率65%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例14:光異性化化合物63の合成〕
合成例13の4-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成工業社製)、6-ヒドロキシメチル-1-メチル-2,4-ピリミジンジオン(Aurora Fine Chemicals社製)を、各々5-ニトロ-2-フルロイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)、6-(2-アミノエチル)-1-メチル-2,4-ピリミジンジオン(Aurora Fine Chemicals社製)に代えた以外は、合成例13と同様の方法で光異性化化合物63を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例15:光異性化化合物70の合成〕
<ウラシル-COOPhCl(活性エステル)の合成>
〔合成例1〕の<チミン-COOPhCl(活性エステル)の合成>で、1-(2-カルボキシエチル)チミンを、2-(1-メチルピリミジン2,4-ジオン-4-イル)酢酸に代えた以外は、〔合成例1〕の<チミン-COOPhCl(活性エステル)の合成>と同様な方法でウラシル-COOPhCl(活性エステル)を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物70の合成>
〔合成例6〕のペンタクロロフェニル3-(2,4-ジヒドロ-5-メチルピリミジン-1-イル)プロピオネートを、上記で合成したウラシル-COOPhCl(活性エステル)に代えた以外は、〔合成例6〕の<チミン-COOPhCl(活性エステル)の合成>と同様な方法で光異性化化合物70を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例16:光異性化化合物75の合成〕
<光異性化化合物75の合成>
〔合成例7〕のチミン-COOPhCl(活性エステル)を、上記〔合成例15〕で合成したウラシル-COOPhCl(活性エステル)に代えた以外は、〔合成例7〕と同様な方法で光異性化化合物75を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例17:光異性化化合物79の合成〕
<光異性化化合物79の合成>
合成例13の4-ニトロベンゾイルクロリド(東京化成工業社製)、6-ヒドロキシメチル-1-メチル-2,4-ピリミジンジオン(Aurora Fine Chemicals社製)を、各々5-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボニルクロリド(Chemiliva Pharmaceutical社製)、2、6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Hong Kong Cehmphre社製)に代えた以外は、合成例13と同様の方法で光異性化化合物79を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例18:光異性化化合物87の合成〕
<2,6-ジアセトアミドピリジン-NOの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた200mL4頭フラスコにCHCl 50mL、2,6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Apichemical社製)(10.0g、44.8mmol)及びトリエチルアミン(東京化成工業社製)(8.2g、80.6mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。この溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、4-ニトロベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)(10.0g、53.8mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、2,6-ジアセトアミドピリジン-NOが12.3g(収率74%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<2,6-ジアセトアミドピリジン-NHの合成>
200mLの三角フラスコに、2,6-ジアセトアミドピリジン-NO(10.0g、26.9mmol)とパラジウム炭素(0.12g、269mmol)とを入れ、次いで、エタノールとテトラヒドロフランとをそれぞれ50mL入れ、水素を封入しながら攪拌した。反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、2,6-ジアセトアミドピリジン-NHを8.4g(収率91%)得た。
<光異性化化合物87の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた200mL4頭フラスコにCHCl 50mL、上記で合成した2,6-ジアセトアミドピリジン-NH(12.3g、35.8mmol)及びトリエチルアミン(東京化成工業社製)(5.4g、53.7mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、4,4’-アゾジベンゾイルジクロリド(Sigma-Aldrich社製)(5.0、16.3mmol)のCHCl溶液を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、光異性化化合物87が10.0g(収率67%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例19:光異性化化合物88の合成〕
2,6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Apichemical社製)、および4,4’-スチルベンジカルボニルクロリド(Sigma-Aldrich社製)を用い、〔合成例18〕<光異性化化合物87の合成>と同様な方法で光異性化化合物88を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例20:光異性化化合物91の合成〕
<TMP-NO(2)の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた200mL4頭フラスコにCHCl 50mL、トリメチロールプロパン(東京化成工業社製)(5.0g、37.3mmol)及びトリエチルアミン(東京化成工業社製)(18.7g、184.5mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、4-ニトロベンゾイルジクロリド(Sigma-Aldrich社製)(22.8g、123.0mmol)のCHCl溶液を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、TMP-NO(2)が16.9g(収率78%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<TMP-NH(2)の合成>
200mLの三角フラスコに、TMP-NO(2)(15.0g、25.8mmol)とパラジウム炭素(0.18g、387mmol)を入れ、エタノールとテトラヒドロフランをそれぞれ50mL入れ、水素を封入しながら攪拌した。反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、TMP-NH(2)を11.0g(収率87%)得た。
<2,6-ジアセトアミドピリジン-CHO(2)の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた200mL4頭フラスコにCHCl 50mL、2、6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Apichemical社製)(10.0g、36.6mmol)及びトリエチルアミン(東京化成工業社製)(6.7g、65.9mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、5-ホルミル-2-フランカルボニルクロリド(Aurora Fine Chemicals社製)(7.0g、43.9mmol)のCHCl溶液を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、2,6-ジアセトアミドピリジン-CHO(2)が10.7g(収率85%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物91の合成>
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mLの4頭フラスコに上記で合成したTMP-NH(2)(10.0g、20.3mmol)、2,6-ジアセトアミドピリジン-CHO(2)(7.0g、20.3mmol)及びDMF30mLを投入し、50℃で加熱攪拌した。この反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、光異性化化合物91が15.6g(収率52%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例21:光異性化化合物101の合成〕
<光異性化化合物101の合成>
〔合成例3〕<アゾメチン-2NH(2)の合成>で合成したアゾメチン-2NH(2)とカルボニルジイソシアネート(Chemiliva Pharmaceutical社製)とを用い、Chemische Berichte、1986、119(3)、83を参考にして光異性化化合物101を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例22:光異性化化合物102の合成〕
<光異性化化合物102の合成>
4,4’-アゾジアニリンとカルボニルジイソシアネート(Chemiliva Pharmaceutical社製)とを用い、Chemische Berichte、1986、119(3)、83を参考にして光異性化化合物102を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例23:光異性化化合物105の合成〕
<STB-NO(2)の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた200mL4頭フラスコにCHCl 50mL、4,4’-(1,2-エテンジイル)-ビスアニリン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(10.0g、47.6mmol)、トリエチルアミン(東京化成工業社製)(15.9g、156.9mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、3-ニトロベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)(19.4g、104.6mmol)のCHCl溶液を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、STB-NO(2)が17.9g(収率74%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<STB-NH(2)の合成>
200mLの三角フラスコに、STB-NO(2)(15.0g、29.5mmol)とパラジウム炭素(0.14g、295mmol)とを入れ、次いで、エタノールとテトラヒドロフランとをそれぞれ50mL入れ、水素を封入しながら攪拌した。反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、STB-NH(2)を10.8g(収率82%)得た。
<光異性化化合物105の合成>
STB-NH(2)とカルボニルジイソシアネート(Chemiliva Pharmaceutical社製)とを用い、Chemische Berichte、1986、119(3)、83を参考にして光異性化化合物105を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例24:光異性化化合物106の合成〕
<DTMP-CHOの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた500mL4頭フラスコにCHCl 200mL、ジ(トリメチロールプロパン)(東京化成工業社製)(10.0g、39.9mmol)及びトリエチルアミン(東京化成工業社製)(26.7g、263.6mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、4-ホルミルベンゾイルクロリド(Sigma-Aldrich社製)(29.6g、175.8mmol)のCHCl溶液を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、DTMP-CHOが19.0g(収率61%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<DTMP-NOの合成>
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mLの4頭フラスコに上記で合成したDTMP-CHO(15.0g、19.3mmol)、5-ニトロ-2-フランアミン(10.9g、84.7mmol)及びCHCl 30mLを投入し、50℃で加熱攪拌した。この反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、DTMP-NOが13.4g(収率56%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<DTMP-NHの合成>
200mLの三角フラスコに、DTMP-NO(12.0g、9.7mmol)とパラジウム炭素(0.09g、193.1mmol)とを入れ、次いで、エタノールとテトラヒドロフランとをそれぞれ50mL入れ、水素を封入しながら攪拌した。この反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、DTMP-NHを9.9g(収率91%)得た。
<光異性化化合物106の合成>
DTMP-NHとカルボニルジイソシアネート(Chemiliva Pharmaceutical社製)とを用い、Chemische Berichte、1986、119(3)、83を参考にして光異性化化合物106を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例25:光異性化化合物113の合成〕
<アゾメチン-2NH(6)の合成>
合成例1<アゾメチン-2NHの合成>で5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を、4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成工業社製)に代えた以外は、合成例1<アゾメチン-2NHの合成>と同様な方法でアゾメチン-2NH(6)を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物113の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた500mL4頭フラスコにDMF300mL、上記で合成したアゾメチン-NH(6)(12.0g、56.8mmol)及び炭酸水素ナトリウム(関東化学社製)(15.7g、187.4mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。この溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン(東京化成工業社製)(18.2g、125.0mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。溶液を水へ投入後、水に不溶な固体をろ過し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を乾燥後、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、光異性化化合物113が11.4g(収率49%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例26:光異性化化合物115の合成〕
<光異性化化合物115の合成>
合成例25で4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成工業社製)を5-ニトロチオフェン-2-カルボキシアルデヒド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、合成例25と同様な方法で光異性化化合物115を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例27:光異性化化合物117の合成〕
<光異性化化合物117の合成>
合成例25の<光異性化化合物113の合成>でアゾメチン-NH(6)を、4,4’-(1,2-エチレンジイル)ジアニリン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、合成例25と同様な方法で光異性化化合物117を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例28:光異性化化合物124の合成〕
<TMP-NO(2)の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた500mL4頭フラスコにCHCl 300mL、トリメチロールプロパン(東京化成工業社製)(5.0g、37.3mmol)及びトリエチルアミン(東京化成工業社製)(18.7g、184.5mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、〔合成例12〕<STB-COClの合成>で合成したSTB-COCl(35.4g、123.0mmol)のCHCl溶液を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、TMP-NO(2)が17.9g(収率54%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<TMP-NH(2)の合成>
300mLの三角フラスコに、TMP-NO(2)(15.0g、16.9mmol)とパラジウム炭素(0.12g、253.4mmol)とを入れ、次いで、エタノールとテトラヒドロフランとをそれぞれ50mL入れ、水素を封入しながら攪拌した。その後、反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、TMP-NH(2)を11.3g(収率84%)得た。
<光異性化化合物124の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた500mL4頭フラスコにDMF150mL、上記で合成したTMP-NH(2)(11.0g、13.8mmol)及び炭酸水素ナトリウム(関東化学社製)(5.7g、68.2mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン(東京化成工業社製)(6.6g、45.5mmol)を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。溶液を水へ投入後、水に不溶な固体をろ過し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を乾燥後、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、光異性化化合物124が6.4g(収率41%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例29:光異性化化合物129の合成〕
<アゾメチン-2CNの合成>
〔合成例1〕<アゾメチン-2NOの合成>で4-ニトロアニリン(東京化成工業社製)と5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)とを、4-アミノベンゾニトリル(東京化成工業社製)と5-ホルミルフラン-2-カルボニトリル(Aurora Fine Chemicals LLC社製)とに代えた以外は、合成例1と同様な方法でアゾメチン-2CNを合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物129の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた100mL4頭フラスコにDMF150mL、上記で合成したアゾメチン-2CN(10.0g、45.2mmol)及び水酸化カリウム(関東化学社製)(2.8g、49.7mmol)を投入した。その後、ジシアノジアミン(東京化成工業社製)(8.4g、99.4mmol)を4頭フラスコ内の反応溶液へ添加し、6時間加熱還流した。溶液を水へ投入後、水に不溶な固体をろ過し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を乾燥後、塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、光異性化化合物129が18.9g(収率47%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例30:光異性化化合物132の合成〕
<光異性化化合物132の合成>
〔合成例29〕<光異性化化合物129の合成>でアゾメチン-2CNを、4,4’-(1E)-1,2-エテネジルビスベンゾニトリル(Chemiliva Pharaceutical社製)に代えた以外は、〔合成例29〕<光異性化化合物129の合成>と同様な方法で光異性化化合物132を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例31:光異性化化合物135の合成〕
<AZB-2CNの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた500mL4頭フラスコにCHCl 300mL、4,4’-アゾジアニリン(Sigma-Aldrich社製)(12.0g、56.5mmol)及びトリエチルアミン(東京化成工業社製)(18.9g、186.6mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、〔合成例12〕3-シアノベンゾイルクロリド(20.6g、124.4mmol)のCHCl溶液を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、AZB-2CNが20.7g(収率78%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物135の合成>
〔合成例29〕<光異性化化合物129の合成>でアゾメチン-2CNを、AZB-2CNに代えた以外は、〔合成例29〕<光異性化化合物129の合成>と同様な方法で光異性化化合物135を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例32:光異性化化合物137の合成〕
<DPE-2CNの合成>
〔合成例24〕<DTMP-CHOの合成>及び<DTMP-NOの合成>でジ(トリメチロールプロパン)(東京化成工業社製)及び5-ニトロ-2-フランアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)を、ジ(ペンタエリスリトール)(東京化成工業社製)及び4-シアノアニリン(東京化成工業社製)に代えた以外は、合成例24と同様な方法でDPE-2CNを合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物137の合成>
〔合成例29〕<光異性化化合物129の合成>でアゾメチン-2CNを、DPE-2CNに代えた以外は、〔合成例29〕<光異性化化合物129の合成>と同様な方法で光異性化化合物137を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例33:光異性化化合物140の合成〕
<アゾメチン-2NH(7)の合成>
〔合成例1〕<アゾメチン-2NOの合成>で4-ニトロアニリン(東京化成工業社製)及び5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を、4-ニトロアニリン(東京化成工業社製)及び5-ニトロ-2-フランアミン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、〔合成例1〕<アゾメチン-2NOの合成>及び<アゾメチン-2NHの合成>と同様な方法でアゾメチン-2NH(7)を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物140の合成>
上記で合成したアゾメチン-NH(7)と1,3-ジオキソイソインドール-5-カルボニルクロルド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)とを用いて、〔合成例31〕<AZB-2CNの合成>と同様な方法で光異性化化合物140を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例34:光異性化化合物145の合成〕
<アゾメチン-2NH(8)の合成>
〔合成例1〕<アゾメチン-2NOの合成>で4-ニトロアニリン(東京化成工業社製)及び5-ニトロ-2-フルアルデヒド(関東化学社製)を、4-ニトロベンズアルデヒド(東京化成工業社製)及び5-ニトロチオフェン-2-カルボキシアルデヒド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)に代えた以外は、〔合成例1〕<アゾメチン-2NOの合成>及び<アゾメチン-2NHの合成>と同様な方法でアゾメチン-2NH(8)を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<光異性化化合物145の合成>
上記で合成したアゾメチン-NH(5)と1,3-ジオキソイソインドール-5-カルボニルクロルド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)とを用いて、〔合成例31〕<AZB-2CNの合成>と同様な方法で光異性化化合物140を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例35:光異性化化合物149の合成〕
<光異性化化合物149の合成>
4,4’-(1,2-エテンジイル)-ビスアニリン(Aurora Fine Chemicals LLC社製)と1,3-ジオキソイソインドール-5-カルボニルクロルド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)とを用いて、〔合成例31〕<AZB-2CNの合成>と同様な方法で光異性化化合物140を合成した。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
〔合成例36:光異性化化合物153の合成〕
<TMP-3NOの合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた500mL4頭フラスコにCHCl 200mL、トリメチロールプロパン(東京化成工業社製)(5.0g、37.3mmol)及びトリエチルアミン(東京化成工業社製)(18.7g、184.5mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、4-(4-ニトロフェニルアゾ)ベンゾイルクロリド(Chemimiva Pharmaceutical社製)(35.6g、123.0mmol)のCHCl溶液を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、TMP-3NOが21.3g(収率64%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<TMP-3NHの合成>
300mLの三角フラスコに、TMP-NO(2)(15.0g、16.8mmol)とパラジウム炭素(0.12g、251.7mmol)とを入れ、次いでエタノールとテトラヒドロフランとをそれぞれ50mL入れ、水素を封入しながら攪拌した。反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行い、TMP-NH(2)を11.9g(収率88%)得た。
<光異性化化合物153の合成>
窒素導入管、滴下ロート、温度計を備えた200mL4頭フラスコにCHCl 100mL、TMP-3NH(10.0g、12.4mmol)及びトリエチルアミン(東京化成工業社製)(6.2g、61.6mmol)を投入し、室温で攪拌し溶解させた。溶液をアイスバスで冷却し、液温を10℃以下に維持した。その後、この溶液に、1,3-ジオキソイソインドール-5-カルボニルクロリド(Aurora Fine Chemicals LLC社製)(8.6g、41.1mmol)のCHCl溶液を30分かけて滴下し、室温で5時間攪拌した。溶液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた固形分を水洗した。水洗後の固形分を塩化メチレン/メタノール系溶媒を用い、カラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、光異性化化合物153が11.5g(収率70%)得られた。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
以上、いくつかの光異性化化合物の合成方法を例示したが、本発明において用いられる光異性化化合物の合成方法はこれに制限されない。
<樹脂組成物のその他の添加剤>
本発明の樹脂組成物には、前記した樹脂の他に、各種添加剤を本発明の目的効果を損なわない範囲で適用することができる。以下に、適用可能な添加剤の一例を示す。
(可塑剤)
本発明において、可塑剤として知られる化合物を添加することは、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等の樹脂組成物の改質の観点において好ましい。
本発明に適用可能な可塑剤としては、リン酸エステル系可塑剤、エチレングリコールエステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、ジグリセリンエステル系可塑剤(脂肪酸エステル)、多価アルコールエステル系可塑剤、ジカルボン酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤等が挙げられる。
この中でも多価アルコールエステル系可塑剤(多価アルコールと一価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤)、多価カルボン酸エステル系可塑剤(多価カルボン酸と一価のアルコールからなるエステル系可塑剤)のどちらか、又はその両方を使用することが好ましい。
本発明の樹脂組成物に適用可能な可塑剤の詳細については、例えば、特許第5380840号公報の段落[0102]~同[0162]に記載されている化合物を挙げることができる。
可塑剤の添加量は、本発明の樹脂組成物100質量部において、好ましくは0.001~50質量部、より好ましくは0.01~30質量部、さらに好ましくは、0.1~15質量部の範囲内である。
(酸化防止剤)
本発明の樹脂組成物には、熱、光による樹脂の分解を防止するため、酸化防止剤を適用することもできる。
本発明に適用可能な酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、耐熱加工安定剤、光安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられる。これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にフェノール化合物のヒドロキシ基に対してオルト位置に嵩高い分岐アルキルを有するヒンダードフェノール系酸化防止剤、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体、及びその併用が好ましい。
本発明の樹脂組成物に適用可能な酸化防止剤の詳細については、例えば、特許第5380840号公報の段落[0163]~同[0186]に記載されている化合物を挙げることができる。
酸化防止剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明の樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.001~5質量部、より好ましくは0.01~3.0質量部、さらに好ましくは、0.1~1.0質量部の範囲内である。
(酸掃去剤、紫外線吸収剤)
本発明の樹脂組成物を用いた三次元積層体に適用可能な添加剤としては、例えば、特許第5380840号公報の段落[0187]~同[0192]に記載されている酸掃去剤、段落[0193]~同[0197]に記載されている紫外線吸収剤等を挙げることができる。
(他の添加剤)
また、本発明の樹脂組成物に適用できる各種樹脂添加剤としては、微粒子、離型剤、染顔料、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤・アンチブロッキング剤、流動性改良剤、分散剤、防菌剤などが挙げられる。また、各種充填材も配合することができる。配合する充填材は、組成物の機能を低下させなければ特に制限は無く、粉末状、繊維状、粒状及び板状の無機充填材が使用でき、また、樹脂系の充填材又は天然系の充填材も好ましく使用できる。これらは2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物を流動化させるために照射する光の波長は、好ましくは250nm~480nmであり、より好ましくは260~450nmの範囲内であり、さらに好ましくは270~420nmの範囲内である。この範囲内であれば、光を良く吸収するため、光溶融性が良くなり、定着性が良くなる。また、上記波長の照射光を照射することにより、熱や圧力を加えなくとも、流動化させることができる。また、相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂と、相補的多重水素結合性基を有する光異性化化合物とを含む樹脂組成物を、後述するトナーに導入することで、上記波長での定着が可能となり、かつ細線再現性の高いトナーを得ることができる。なお、上記波長範囲は、紫外線の領域であるが、紫外線に近い可視光の領域も含まれる。紫外線に近い可視光の領域の照射光でも下記の照射条件により本発明の樹脂組成物を流動化させることができるためである。
樹脂組成物を非流動化させるためには、流動化した樹脂組成物へ熱、又は光のエネルギーを付与する。光異性化化合物の部分構造により、エネルギー種は異なるが、光を照射する場合の光の波長は、好ましくは330nm~700nmであり、より好ましくは340~680nmの範囲内であり、さらに好ましくは350~650nmの範囲内である。この範囲内であれば、光を良く吸収するため、熱や圧力を加えなくとも、非流動化させることができる。そのため、相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂と、相補的多重水素結合性基を有する光異性化化合物とを含む樹脂組成物を、後述するトナーに導入することで、上記波長での定着が可能となり、かつ細線再現性の高いトナーを得ることができる。なお、上記波長範囲は、紫外線の領域であるが、紫外線に近い可視光の領域も含まれる。紫外線に近い可視光の領域の照射光でも下記の照射条件により本発明の樹脂組成物を非流動化させることができるためである。
[静電荷像現像用トナー]
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、本発明の樹脂組成物を含有することを特徴とする。トナーに含有される樹脂組成物中の樹脂は、結着樹脂として用いることができる。以下のトナーの説明では、「結着樹脂」は「相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂」に読み替えられる。
前記トナーに含有される樹脂組成物中の樹脂、すなわち結着樹脂(相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂)及び光異性化化合物の含有量(含有比)は、化合物種や樹脂種によるが、定着性と細線再現性との観点から、樹脂の有する相補的多重水素結合性基に対する光異性化化合物の有する相補的多重水素結合性基のモル比(光異性化化合物が有する相補的多重水素結合性基のモル数/樹脂が有する相補的多重水素結合性基のモル数)が、0.05~7.0であるのが好ましく、0.1~5.0であるのがより好ましく、0.2~3.0であるのがさらに好ましく、0.3~2.5であるのが特に好ましく、0.5~2.0であるのが最も好ましい。この範囲であれば、光異性化化合物の光相転移が生じやすく、トナーの光照射による軟化速度が十分なものとなる。
本発明のトナーは、トナー母体粒子と、トナー母体粒子表面に付着される外添剤とを備えるトナー粒子を含む。
本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。「トナー母体粒子」は、少なくとも樹脂組成物、すなわち、結着樹脂(相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂)及び光異性化化合物(相補的多重水素結合性基を有する光異性化化合物)を含有するものであり、その他必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
<結着樹脂>
前記トナー母体粒子は、相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂及び相補的多重水素結合性基を有する光異性化化合物に加え、さらに相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂以外の他の結着樹脂(以下、「他の樹脂」とも称する)を含有してもよい。
トナーの製造方法として後述の乳化凝集法を利用することにより、略均一な粒径及び形状を有するトナー粒子を作製できることが一般的に知られている。
相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂と他の結着樹脂とを併用することにより、乳化凝集法における塩析を用いて略均一な粒径及び形状を有するトナー粒子の作製を行うことができる。よって、相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂、相補的多重水素結合性基を有する光異性化化合物及び他の結着樹脂を含有するトナーは、電子写真用トナーにより容易に適用することができる。
このような他の結着樹脂は、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられている樹脂を制限なく用いることができる。具体的には、例えば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、及びエポキシ樹脂などが挙げられる。これら他の結着樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
これらの中でも、溶融すると低粘度になり、かつ高いシャープメルト性を有するという観点から、他の結着樹脂は、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレンアクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
他の結着樹脂において好ましい形態であるスチレンアクリル樹脂及びポリエステル樹脂は、本発明の樹脂組成物に含有される相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂の主鎖部分として使用されるスチレンアクリル樹脂及びポリエステル樹脂と同様である。主鎖部分のスチレンアクリル樹脂およびポリエステル樹脂の説明は上述のとおりであるため、ここではその説明を省略する。
なお、相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂、相補的多重水素結合性基を有する光異性化化合物及び他の結着樹脂を含有するトナーは、単層構造であってもよいしコア・シェル構造であってもよい。コア・シェル構造のコア粒子及びシェルに用いられる結着樹脂の種類は、特に制限されない。
<着色剤>
前記トナー母体粒子は、さらに着色剤を含むのが好ましい。相補的多重水素結合性基を有する光異性化化合物は無色でありながら、異性化に伴い流動化及び非流動化現象を誘起することができると考えられる。そのため、相補的多重水素結合性基を有する光異性化化合物とともに所望の着色剤をトナーに導入することで、光照射により定着可能となり、かつ加えた着色剤の色再現性の高いトナーを得ることができる。着色剤としては、一般に知られている染料及び顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどが挙げられ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などの染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などの顔料が挙げられる。
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122などの染料;C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などの顔料が挙げられる。
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などの染料;C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76などの顔料が挙げられる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の含有割合は、トナー母体粒子中0.5~20質量%の範囲内であることが好ましく、2~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
<離型剤>
本発明のトナーは、さらに離型剤を含むのが好ましい。本発明の樹脂組成物(樹脂及び光異性化化合物)とともに離型剤をトナーに導入することで、より定着性に優れたトナーを得ることができる。
使用される離型剤は、特に限定されるものではなく、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、又は酸化型の低分子量ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、パラフィン、合成エステルワックスなどが挙げられ、特に、低融点及び低粘度であることから、合成エステルワックスを用いることが好ましく、合成エステルワックスとしてベヘン酸ベヘニル、グリセリントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネートなどを用いることが特に好ましい。
離型剤の含有割合は、トナー母体粒子中1~30質量%の範囲内であることが好ましく、3~15質量%の範囲内であることがより好ましい。
<荷電制御剤>
本発明のトナーは、さらに荷電制御剤を含有してもよい。使用される荷電制御剤は、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤及び負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
荷電制御剤の含有割合は、トナー母体粒子中0.01~30質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
<外添剤>
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、当該トナー粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加して本発明のトナーを構成してもよい。
外添剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などの無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子などの無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子などの無機チタン酸化合物粒子などの無機粒子が挙げられる。これらは単独でも又は2種以上を組み合わせても用いることができる。
これら無機粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性や環境安定性の向上のために、表面処理が行われていてもよい。
これら外添剤の添加量は、トナー母体粒子中0.05~5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~3質量%の範囲内であることがより好ましい。
<トナーの平均粒径>
トナーの平均粒径は、体積基準のメジアン径(D50)で4~10μmの範囲内であることが好ましく、6~9μmの範囲内であることがより好ましい。体積基準のメジアン径(D50)が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなりハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
本発明において、トナーの体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した測定装置を用いて測定、算出されるものである。
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、たとえば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径が体積基準のメジアン径(D50)とされる。
[トナーの製造方法]
本発明のトナーの製造方法は特に制限されない。
本発明に係る光異性化化合物、結着樹脂及び着色剤等の添加剤を含むトナーを製造する場合は、粒径及び形状の制御が容易な乳化凝集法を利用した製造方法であることが好ましい。
このような製造方法は、
(1A)結着樹脂粒子の分散液を調製する結着樹脂粒子分散液調製工程
(1B)着色剤粒子の分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程
(1C)光異性化化合物の溶液を調製する光異性化化合物溶液調製工程
(2)結着樹脂粒子、着色剤粒子及び光異性化化合物が存在している水系媒体中に、凝集剤を添加し、塩析を進行させると同時に凝集、融着を行い、会合粒子を形成する会合工程
(3)会合粒子の形状制御をすることによりトナー母体粒子を形成する熟成工程
(4)水系媒体からトナー粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤等を除去する濾過、洗浄工程
(5)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程
(6)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
の各工程を含むことが好ましい。以下、(1A)~(1C)の工程について説明する。
(1A)結着樹脂粒子分散液調製工程
本工程では、従来公知の乳化重合などにより樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させて結着樹脂粒子を形成する。一例として、結着樹脂を構成する重合性単量体を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させることにより、結着樹脂粒子の分散液を作製する。
また、結着樹脂粒子分散液を得る方法として、上記の水系媒体中で重合開始剤により重合性単量体を重合させる方法の他に、例えば、溶媒を用いることなく、水性媒体中において分散処理を行う方法、又は結着樹脂(結晶性樹脂等)を酢酸エチルなどの溶媒に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水性媒体中に乳化分散させた後、脱溶媒処理を行う方法などが挙げられる。
この際、必要に応じ、結着樹脂には離型剤(ワックス)をあらかじめ含有させておいてもよい。また、分散のために、適宜公知の界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸などのアニオン系界面活性剤)の存在下で重合させることも好ましい。なお、結着樹脂粒子分散液とは別に離型剤粒子分散液を、着色剤粒子分散液調製工程と同様にして調製し、上記(2)の会合工程の水系媒体中に存在させるようにしてもよい。
分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、50~300nmの範囲内が好ましい。分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
(1B)着色剤粒子分散液調製工程
この着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、10~300nmの範囲内であることが好ましく、50~200nmの範囲内であることがより好ましい。着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定することができる。
(1C)光異性化化合物溶液調製工程
光異性化化合物溶液調製工程は、相補的多重水素結合性基を有する光異性化化合物を有機溶媒に溶解させ、光異性化化合物溶液を調製する工程である。有機溶媒の使用量は、光異性化化合物が溶解する程度であれば、特に制限されないが、この後の会合工程や熟成工程を効率よく行うという観点から、できるだけ少ないことが好ましい。
<有機溶媒>
本工程で用いられる有機溶媒は、本発明の光異性化化合物を溶解させることができれば特に制限されず使用することができる。具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ヘキサン、ヘプタンなどの飽和炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
このような有機溶媒は、単独でも又は2種以上混合しても用いることができる。これら有機溶媒の中でも、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類が好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、ジクロロメタンがより好ましい。
<水系媒体>
(1A)~(1B)の工程で用いられる水系媒体は、水、又は水を主成分として、アルコール類、グリコール類などの水溶性溶媒や、界面活性剤、分散剤などの任意成分が配合されている水系媒体などが挙げられる。水系媒体は、好ましくは水と界面活性剤とを混合したものが用いられる。
界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウムなどの脂肪酸石けん、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
このような界面活性剤は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。界面活性剤の中では、好ましくはアニオン性界面活性剤、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが使用される。
界面活性剤の添加量は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部の範囲内、より好ましくは0.04~1質量部の範囲内である。
(2)会合工程から(6)外添剤添加工程までの工程については、従来公知の種々の方法にしたがって行うことができる。
なお、(2)会合工程において使用される凝集剤は、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
[現像剤]
本発明のトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
上記磁性体としては、例えばマグネタイト、γ-ヘマタイト、又は各種フェライトなどを使用することができる。
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。
キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散してなるいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂又はフッ素樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂など使用することができる。
キャリアの体積基準のメジアン径は、20~100μmの範囲内であることが好ましく、25~80μmであることがより好ましい。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
トナーのキャリアに対する混合量は、トナーとキャリアとの合計質量を100質量%として、2~10質量%の範囲内であることが好ましい。
[画像形成方法]
本発明のトナーは、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、1つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置及び感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法にも適用することができる。
本発明の一実施形態による画像形成方法では、本発明の樹脂組成物を含有するトナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程とを含む。
また、トナー中の光異性化化合物を十分に流動化させ、トナー像を素早く軟化させる観点から、前記トナー像に光を照射する際の光の波長は、250nm以上480nm以下の範囲内であることが好ましい。
また、より良い定着性を得るという観点から、前記トナー像を加圧する工程をさらに含むのが好ましい。さらに、より良い定着性を得るという観点から、前記加圧する工程では、前記トナー像をさらに加熱するのが好ましい。
図1は、本発明の一実施形態による画像形成方法で用いられる画像形成装置100を示す概略構成図である。ただし、本発明に用いられる画像形成装置としては、下記の形態及び図示例に限定されるものではない。図1には、モノクロの画像形成装置100の例を示すが、カラーの画像形成装置にも本発明を適用することができる。
画像形成装置100は、記録媒体としての記録用紙Sに画像を形成する装置であって、画像読取装置71及び自動原稿送り装置72を備え、用紙搬送系7により搬送される記録用紙Sに対し画像形成部10、照射部40、及び圧着部9により画像形成を行う。
また、記録媒体として、画像形成装置100では記録用紙Sを用いているが、画像形成を行う対象とされる媒体は、用紙以外でもよい。
自動原稿送り装置72の原稿台上に載置された原稿dは、画像読取装置71の走査露光装置の光学系により走査露光されてイメージセンサーCCDに読み込まれる。イメージセンサーCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部20において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等が行われた後、画像形成部10の露光器3に入力される。
用紙搬送系7は、複数のトレイ16、複数の給紙部11、搬送ローラー12、搬送ベルト13等を備えている。トレイ16は、決められたサイズの記録用紙Sをそれぞれ収容しており、制御部90からの指示に応じて定められたトレイ16の給紙部11を作動させ、記録用紙Sを供給する。搬送ローラー12は、給紙部11によってトレイ16から送り出された記録用紙S又は手差し給紙部15から搬入された記録用紙Sを画像形成部10へ搬送する。
画像形成部10は、感光体1の周りに、感光体1の回転方向に沿って、帯電器2、露光器3、現像部4、転写部5、除電部(図示せず)及びクリーニング部8がこの順番に配置されて構成されている。
像担持体である感光体1は、表面に光導電層の形成された像担持体であり、図示しない駆動装置により図1中の矢印方向に回転可能に構成されている。感光体1の近傍には、画像形成装置100内の温度や湿度を検知する温湿度計17が設けられている。
帯電器2は、感光体1の表面に均一に電荷を与え、感光体1の表面を一様に帯電させる。露光器3は、レーザーダイオード等のビーム発光源を備え、帯電された感光体1の表面にビーム光を照射することで照射部分の電荷を消失させ、感光体1上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像部4は、内部に収容されるトナーを感光体1に供給して、感光体1表面上に静電潜像に基づくトナー像を作像する。
転写部5は、記録用紙Sを介して感光体1と対向し、トナー像を記録用紙Sに転写する。除電部は、トナー像を転写した後の感光体1上の除電を行う。クリーニング部8は、ブレード85を備える。ブレード85により、感光体1表面をクリーニングして感光体1の表面に残留した現像剤を除去する。
トナー像が転写された記録用紙Sは、搬送ベルト13により圧着部9へ搬送される。圧着部9は、任意に設置されるものであり、トナー像が転写された記録用紙Sに対し、加圧部材91及び92によって圧力のみ又は熱及び圧力を加えて定着処理を施し、これにより記録用紙S上に画像を定着させる。画像が定着された記録用紙Sは、搬送ローラーによって排紙部14に搬送され、排紙部14から機外へ排出される。
また、画像形成装置100は用紙反転部24を備えており、加熱定着処理がなされた記録用紙Sを排紙部14の手前で用紙反転部24に搬送し、表裏を反転して排出するか、又は表裏を反転した記録用紙Sを再度画像形成部10に搬送し記録用紙Sの両面に画像形成を行うことを可能としている。
<照射部>
図2は、画像形成装置100における照射部40の概略構成図である。
本発明の一実施形態による画像形成装置100は、照射部40を備える。照射部40を構成する装置の例としては、発光ダイオード(LED)、レーザー光源などが挙げられる。
照射部40は、現像剤のトナーに含まれる光異性化化合物を溶融、流動化させるものである。照射する光の波長は、十分に流動化させうる程度であればよく、好ましくは280~480nmの範囲内、より好ましくは300~420nmの範囲内、さらに好ましくは330~420nmの範囲内の波長を有する光を照射する。照射部40における光の照射量(積算光量)も、十分に流動化させうる程度であればよく、好ましくは0.1~200J/cmの範囲内、より好ましくは0.1~100J/cmの範囲内、さらに好ましくは0.1~50J/cmの範囲内である。
光異性化化合物を非流動化(再固化)させる際は、そのまま室温(25±15℃の範囲)で放置することで非流動化させればよい。
すなわち、本発明の一実施形態による画像形成方法は、記録媒体上に本発明のトナーからなるトナー像を形成する工程と、前記トナー像に対して、280~480nmの範囲内の波長を有する光を照射して前記トナー像を軟化させる工程と、軟化した前記トナー像に対して、室温(25±15℃の範囲)で放置することで、前記トナー像を固化させ記録媒体に定着させる工程と、を含む。なお、定着させる工程においては、軟化した前記トナー像を加圧する工程をさらに含むことが好ましい。前記加圧する工程では、軟化した前記トナー像をさらに加熱することが好ましい。加熱することで、より軟化させることができるからである。
前記加圧する工程でさらに加熱する際の加熱温度としては、好ましくは30~100℃の範囲内、より好ましくは40~100℃の範囲内である。
照射部40はトナー像を保持する記録用紙Sにおける感光体側の第1面に向かって光を照射するものであり、感光体1と転写部である転写ローラー5とにニップされた記録用紙S面に対して感光体側に配置されている。また、記録用紙Sの搬送方向(用紙搬送方向)に沿って、照射部40が配置されている。
照射部40は、感光体1と転写ローラー5とのニップ位置に対して、用紙搬送方向下流側、かつ圧着部9に対して用紙搬送方向上流側に配置されている。
本発明の一実施形態による画像形成方法によれば、帯電器2により感光体1に一様な電位を付与して帯電させた後、原画像データに基づいて露光器3により照射した光束で感光体1上を走査し、静電潜像を形成する。次に現像部4により光異性化化合物を含むトナーを有する現像剤を感光体1上に供給する。
感光体1の表面に担持されたトナー像が、感光体1の回転によって転写部である転写ローラー5の位置に至るタイミングに合わせて、トレイ16から記録用紙Sを画像形成部10に搬送すると、転写ローラー5に印加される転写バイアスにより、感光体1上のトナー像が、転写ローラー5と感光体1とにニップされた記録用紙S上に転写される。
また、転写部材5は、加圧部材を兼ねており、感光体1から記録用紙Sにトナー像を転写させることができながら、トナー像に含まれる光異性化化合物を確実に記録用紙Sに密着させることができる。
トナー像が記録用紙Sに転写された後に、クリーニング部8のブレード85は、感光体1表面に残留する現像剤を除去する。
トナー像が転写された記録用紙Sが搬送ベルト13により圧着部9に搬送される過程において、照射部40は、記録用紙S上に転写されたトナー像に対して、280~480nmの波長を有する光を照射する。照射部40により記録用紙Sの第1面上のトナー像に向かって紫外光を照射することにより、トナー像をより確実に溶融させることができ、トナー像の記録用紙Sに対する定着性を向上させることができる。
トナー像が保持された記録用紙Sが、搬送ベルト13により圧着部9に至ると、加圧部材91及び92が、トナー像を記録用紙Sの第1面に圧着する。圧着部9により定着処理が施される前に、トナー像が照射部40による紫外光照射により軟化するため、記録用紙Sに対する画像圧着の省エネルギー化を図ることができる。本発明の画像形成方法は、前記トナー像を固化させ記録媒体に定着させる工程において、室温(25±15℃の範囲)で放置しつつ、トナー像を加圧部材91、92により加圧する工程をさらに含むことが好ましい。加圧部材91、92により、圧力を加えることで、トナー像の記録用紙Sへの定着性がより向上する。
記録媒体上のトナー像を加圧する際の圧力は、特に限定されないが、0.01~5.0MPaの範囲内であることが好ましく、0.05~1.0MPaの範囲内であることがより好ましい。圧力を0.01MPa以上とすることで、トナー像の変形量を大きくしうるため、トナー像と記録用紙Sとの接触面積が増加し、画像の定着性をさらに高めやすい。また、圧力を5.0MPa以下とすることで、加圧時のショックノイズを抑制できる。
また、加圧する工程では、前記トナー像をさらに加熱することが好ましい。加圧部材91、92により圧力及び熱を加えることで、トナー像の記録用紙Sへの定着性がより一層向上する。具体的には、加圧部材91は、記録用紙Sが加圧部材91及び92の間を通過する際に、光照射によって軟化したトナー像は、加熱によりさらに軟化された状態で加圧されることで、トナー像の記録用紙Sへの定着性がより一層向上する。
その後、記録用紙S上のトナー像を、自然環境下で(室温で放置して)固化する。詳しくは、加圧部材91及び92の間を通過した記録用紙Sが、排紙部14に至るまで、自然環境下(室温で放置する状態)におくことで、記録用紙S上のトナー像をより確実に凝固させることができ、トナー像の記録用紙Sに対する定着性をより向上させることができる。
記録用紙Sの両面に画像を形成する場合、圧着処理がなされた記録用紙Sを排紙部14の手前で用紙反転部24に搬送し、表裏を反転して排出するか、又は表裏を反転した記録用紙Sを再度画像形成部10に搬送する。
(光スイッチング材料)
本発明の樹脂組成物は、光照射により流動化し、その後、非流動化するため、本発明の樹脂組成物を用いて光スイッチング材料を作製することができる。例えば、光異性化に伴う色や極性の変化、物質移動、配向の変化、粘度の変化、表面張力の変化を利用して光スイッチング材料を作製することができる。本発明の樹脂組成物は、例えば、液晶材料などにおいて、光異性化に伴う分子の配向の変化に対応して、繰り返しの書き換えが可能なパターニング描画に応用することが可能である。また、例えば、光照射に伴う表面張力の変化やこれによる物質移動を利用して、高分子膜の表面の微細加工を行うことができる。すなわち、本発明の一実施形態によれば、本発明の樹脂組成物を含む、光スイッチング材料が提供される。
(感光性接着剤)
本発明の樹脂組成物は、光照射により流動化し、その後、非流動化するため、本発明の樹脂組成物を用いて繰り返しの利用が可能な感光性接着剤を作製することができる。例えば、本発明の樹脂組成物は、粘度(摩擦係数)の変化に対応して、繰り返しの光脱着可能な感光性接着剤として各種の接着技術に応用することが可能である。すなわち、本発明の一実施形態は、本発明の樹脂組成物を含む、感光性接着剤である。
本発明の感光性接着剤は、繰り返しの利用が可能な仮止めに使えるほか、リサイクル利用にも適しているが、これらに何ら制限されるものではない。
本発明の樹脂組成物を、ある対象物と対象物を接着する仮止め材に用いた場合、光照射により対象物から剥離した後、非流動化しないと、作業環境内にある様々なものに接着し、作業環境を汚染してしまう。また、対象物の品質の劣化を引き起こす原因となるため、本発明の樹脂組成物には、光照射により流動化し、その後、非流動化することが必要とされる。好ましい実施形態において、本発明の樹脂組成物は、光照射により流動化・非流動化が可能である。
また、本発明の感光性接着剤は、本発明の樹脂組成物のほか、<樹脂組成物のその他の添加剤>で記載した可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有していてもよく、これらに限定されるものではない。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
下記表1、表2に示す光異性化化合物は、上述する合成法によりそれぞれ合成した。また、比較例で使用した比較化合物A~Dは、下記の方法により合成した。
[比較化合物Aの合成]
特開2014-191078号公報の段落[0217]~[0224]に記載の「(1-1-1)UV軟化材料Aの合成」と同様の方法で、アゾベンゼン化合物である比較化合物Aを得た。構造は、H-NMR、IRにて確認し、目的の化合物が得られていることがわかった。
Figure 2023012748000021
[比較化合物Bの合成]
特開2014-191078号公報の段落[0227]~[0237]に記載の「(1-2-1)UV軟化材料Bの合成」と同様の方法で、アゾベンゼン化合物である比較化合物Bを得た。構造は、H-NMR、IRにて確認し、目的の化合物が得られていることがわかった。
Figure 2023012748000022
[比較化合物Cの合成]
Chemistry of Materials,2015,27(21),7388-7394を参考に合成し、スチルベン化合物である比較化合物Cを得た。
Figure 2023012748000023
[比較化合物Dの合成]
ジメチルホルムアミド(DMF)中、4-ヒドロキシ-3-メチルベンズアルデヒドと1-ヨードヘキサン(C13I)とを炭酸カリウム(KCO)を用いて加熱還流して反応させ、反応液を水洗後、濃縮し、カラムクロマトグラフィーにて精製することで、4-ヘキシルオキシ-3-メチルベンズアルデヒドを得た(下記スキーム1参照)。エタノール(EtOH)中、スキーム1で得られた4-ヘキシルオキシ-3-メチルベンズアルデヒドと5-ヘキシルチオフェン-2-アミンとを加熱撹拌して反応させ、反応液をろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄し、メタノール/エタノールで再結晶することで目的物であるアゾメチン化合物である比較化合物Dを得た(下記スキーム2参照)。構造は、H-NMR、IRにて確認し、目的の化合物が得られていることがわかった。
Figure 2023012748000024
下記表1、表2に示す樹脂は、後述する合成法によりそれぞれ合成した。
下記で表される化合物MA1~MA8を、下記方法により合成した。また、下記合成で用いたブチルアクリレート(BA)、ビニルシンナメート(VC)、9-アントリルアクリル酸メチル(AnthA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、アクリロイルクロリド(AcCl)、アリルアクリレート(AllylA)の構造も下記に示す。
Figure 2023012748000025
[(メタ)アクリレートモノマーの合成]
<合成例MA1>
Organic&Biomolecular Chemistry,2004,2(22),3374を参考に、2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)エタノール(Sigma-Aldrich社製)、アクリロイルクロリド(東京化成工業社製)を用い、アデニン部位を有するモノマーMA1を得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<合成例MA2>
Journal of Medicinal Chemistry,2012、55(20),8712を参考に、2-ブロモエチルアクリレート(Sigma-Aldrich社製)、2,4-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(東京化成工業社製)及びO,O’-ビス(トリメチルシリル)チミン(Sigma-Aldrich社製)を用い、チミン部位を有するモノマーMA2を得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<合成例MA3>
<合成例MA1>の2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)エタノールを2,6-ジアセトアミド-4-ヒドロキシメチルピリジン(Hong Kong Chemhere社製)に代えた以外は、<合成例MA1>と同様の方法により、2,6-ジアセトアミドピリジン部位を有するモノマーMA3を得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<合成例MA4>
ウラシル部位を有するモノマーMA4は、Sigma-Aldrich社より入手した。
<合成例MA5>
メラミン部位を有するモノマーMA5は、Chemieliva Pharmaceutical社より入手した。
<合成例MA6>
200mLの三角フラスコに、1-(4-ニトロフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン(5.0g、20.0mmol、Chemieliva Pharmaceutical社製)とパラジウム炭素(0.09g、200mmol)とを入れ、エタノールとテトラヒドロフランとをそれぞれ30mL入れ、水素を封入しながら撹拌した。反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶を行ない、1-(4-アミノフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンを4.2g(収率95%)得た。続いて、<合成例MA1>の2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)エタノールを1-(4-アミノフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンに代えた以外は、<合成例MA1>と同様の方法により、シアヌル酸部位を有するモノマーMA6を得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
<合成例MA7>
ジアミノトリアジン部位を有するモノマーMA7は、Chemieliva Pharmaceutical社より入手した。
<合成例MA8>
<合成例MA1>の2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)エタノールを5-アミノ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3-ジオン(Chemieliva Pharmaceutical社製)に代えた以外は、<合成例MA1>と同様の方法により、ナフタルイミド部位を有するモノマーMA8を得た。構造は、H-NMR、IRにて確認した。
[アクリル樹脂の合成]
下記方法にしたがって、下記で表されるアクリル樹脂AC-1-1~AC-1-4、AC-2~AC-11、AC-A、AC-Bを合成した。なお、下記では、表1及び表2において樹脂組成物として用いられる樹脂と光異性化化合物との組み合わせとして示す。
Figure 2023012748000026
Figure 2023012748000027
<合成例AC-1-1>
窒素ライン、冷却管を備えた100mLの3頭フラスコにテトラヒドロフラン50mLを投入し、10分間加熱還流させた。窒素フローを行ないながら室温まで冷却させ、窒素置換したシリンジで、脱気したテトラヒドロフランを10mLはかり取った。このテトラヒドロフランを、窒素ライン、冷却管、温度計を備え、すでに減圧ポンプと窒素により窒素置換された50mLの4頭フラスコに投入した。その後、窒素フロー下、ブチルアクリレート(東京化成工業社製)(1.36g、10.6mmol)、<合成例MA1>で得られたMA1(0.31g、1.3mmol)、ビニルシンナメート(VC、東京化成工業社製)(0.01g、0.1mmol)及びAIBN(東京化成工業社製)(0.10g、0.6mmol)を投入し、6時間加熱還流させた。重合溶液を室温まで冷却後、激しく攪拌したエタノール50mL中へゆっくり滴下し、再沈させた。重合溶液を全量滴下後30分室温で攪拌し、固形分を濾過した。得られた固形分を、減圧ポンプを用いて乾燥し、アデニン部位を有するAC-1-1を1.43g得た(収率85%)。AC-1-1中のBA(ブチルアクリレート)、MA1及びVC(ビニルシンナメート)由来のユニットのモル比(MA/MA1/VC、すなわち、ユニットS/T/U)は、H-NMRの積分比より算出し、89.0/10.5/0.5(mol/mol/mol)であった。このH-NMRの積分比より算出された樹脂中の光架橋性部位のモル比を表1に示す。
得られた樹脂の分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて下記条件により測定した。
(GPC測定条件)
溶媒:塩化メチレン
カラム:Shodex K806、K805、K803(昭和電工(株)製を3本接続して使用)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000((株)日立製作所製)
流量:1.0mL/min。
これにより測定された、AC-1-1のMnは18900であり、Mw/Mnは2.48であった。
<合成例AC-1-2>
ブチルアクリレート(東京化成工業社製)(1.33g、10.3mmol)、<合成例MA1>で得られたMA1(0.30g、1.3mmol)、ビニルシンナメート(VC、東京化成工業社製)(0.06g、0.4mmol)及びAIBN(東京化成工業社製)(0.10g、0.6mmol)を用いた以外は、<合成例AC-1-1>と同様にして、AC-1-2を1.35g得た(収率80%)。AC-1-2中のBA(ブチルアクリレート)、MA1及びVC(ビニルシンナメート)由来のユニットのモル比(MA/MA1/VC、すなわち、ユニットS/T/U)は、H-NMRの積分比より算出し、86.0/11.2/2.8(mol/mol/mol)であった。また、AC-1-2のMnは19800であり、Mw/Mnは2.64であった。
<合成例AC-1-3>
ブチルアクリレート(東京化成工業社製)(1.23g、9.6mmol)、<合成例MA1>で得られたMA1(0.28g、1.2mmol)、ビニルシンナメート(VC、東京化成工業社製)(0.21g、1.2mmol)及びAIBN(東京化成工業社製)(0.10g、0.6mmol)を用いた以外は、<合成例AC-1-1>と同様にして、AC-1-3を1.58g得た(収率92%)。AC-1-3中のBA(ブチルアクリレート)、MA1及びVC(ビニルシンナメート)由来のユニットのモル比(MA/MA1/VC、すなわち、ユニットS/T/U)は、H-NMRの積分比より算出し、80.3/9.5/10.2(mol/mol/mol)であった。また、AC-1-3のMnは20800であり、Mw/Mnは2.53であった。
<合成例AC-1-4>
ブチルアクリレート(東京化成工業社製)(0.96g、7.5mmol)、<合成例MA1>で得られたMA1(0.22g、0.9mmol)、ビニルシンナメート(VC、東京化成工業社製)(0.63g、3.6mmol)及びAIBN(東京化成工業社製)(0.10g、0.6mmol)を用いた以外は、<合成例AC-1-1>と同様にして、AC-1-4を1.57g得た(収率87%)。AC-1-4中のBA(ブチルアクリレート)、MA1及びVC(ビニルシンナメート)由来のユニットのモル比(MA/MA1/VC、すなわち、ユニットS/T/U)は、H-NMRの積分比より算出し、61.7/7.9/30.4(mol/mol/mol)また、AC-1-4のMnは19500であり、Mw/Mnは2.61であった。
<合成例AC-A:比較例>
ブチルアクリレート(東京化成工業社製)(1.38g、10.8mmol)、<合成例MA1>で得られたMA1(0.28g、1.2mmol)及びAIBN(東京化成工業社製)(0.10g、0.6mmol)を用いた以外は、<合成例AC-1-1>と同様にして、AC-Aを1.51g得た(収率91%)。AC-A中のBA(ブチルアクリレート)及びMA1由来のユニットのモル比(MA/MA1)は、H-NMRの積分比より算出し、90.2/9.8(mol/mol)であった。また、AC-AのMnは23600であり、Mw/Mnは2.31であった。
<合成例AC-B(ポリブチルアクリレート):比較例>
ブチルアクリレート(東京化成工業社製)(1.54g、12.0mmol)、AIBN(東京化成工業社製)(0.10g、0.6mmol)を用いた以外は、<合成例AC-1-1>と同様にして、AC-Bを1.48g得た(収率96%)。AC-BのMnは22200であり、Mw/Mnは2.19であった。
<合成例AC-2~AC-8>
<合成例AC-1-1>のMA1をMA2~MA8に代えた以外は、<合成例AC-1-1>と同様の方法により、AC-2~AC-8を合成した。なお、表1には、樹脂AC-2~AC-8について、H-NMRの積分比より算出した樹脂中の光架橋性部位のモル比を示す。
<合成例AC-9>
「AnthAの合成」
Tetrahedron,2019,75(2),209を参考に、アントラセンがペンダントされたアクリレートモノマーであるAthtAを合成した。
「AC-9の合成」
<合成例AC-1-1>のVC(ビニルシンナメート)を9-アントリルアクリル酸メチル(AnthA)に代えた以外は、<合成例AC-1-1>と同様の方法により、AC-9を合成した。AC-9中のBA(ブチルアクリレート)、MA1及びAnthA由来のユニットのモル比(MA/MA1/AnthA、すなわち、ユニットS/T/U)は、H-NMRの積分比より算出し、79.8/10.6/9.6(mol/mol/mol)であった。また、AC-9のMnは17600であり、Mw/Mnは2.27であった。
<合成例AC-10>
「AC-10前駆ポリマーの合成」
<合成例AC-1-1>のVC(ビニルシンナメート)を2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)に代えた以外は、<合成例AC-1-1>と同様の方法により、AC-10前駆体ポリマーを合成した。
「AC-10の合成」
窒素雰囲気下、AC-10前駆体ポリマー1.0gを脱水テトラヒドロフラン10mLに溶解し、トリエチルアミン(0.18g、1.8mmol)を加えた後に、氷浴にて溶液温度を10℃以下に保った。この溶液中へアクリロイルクロリド(東京化成工業社製)(0.13g、1.4mol)を5分かけて滴下後、室温で3時間反応させた。この溶液を、激しく攪拌したエタノール50mL中へゆっくり滴下し、再沈させた。重合溶液を全量滴下後30分室温で攪拌し、固形分を濾過した。得られた固形分を、減圧ポンプを用いて乾燥し、AC-10を1.09g得た。AC-10中のBA(ブチルアクリレート)、MA1及び末端アクリレートユニット由来のモル比(MA/MA1/末端Ac、すなわち、ユニットS/T/U)は、H-NMRの積分比より算出し、80.6/9.7/9.7(mol/mol/mol)であった。また、AC-10のMnは18400であり、Mw/Mnは2.38であった。
<合成例AC-11>
<合成例AC-1-1>のVC(ビニルシンナメート)をアリルアクリレート(AllylA、東京化成工業社製)に代えた以外は、<合成例AC-1-1>と同様の方法により、AC-11を合成した。AC-11中のBA(ブチルアクリレート)、MA1及び末端アクリレートユニット由来のモル比(MA/MA1/末端Ac、すなわち、ユニットS/T/U)は、H-NMRの積分比より算出し、80.2/9.9/9.9(mol/mol/mol)であった。また、AC-11のMnは20300であり、Mw/Mnは2.44であった。
[ポリエステル及び相補的多重水素結合性基を有するポリエステルの合成]
下記方法にしたがって、下記で表されるポリエステルPES-1を合成した後、相補的多重水素結合性基を導入したポリエステルPES-1-1を合成した。その後更にクリック反応により、光架橋性部位である桂皮酸エステルを含有するPES-1-1-1を合成した。
Figure 2023012748000028
<合成例PES-1>
5-(2-プロペン-1-イルオキシ)-1,3-ベンゼンジカルボン酸(Chemieliva Pharmaceutical社製)、5-(2-プロピン-1-イルオキシ)-1,3-ベンゼンジカルボン酸(Chemieliva Pharmaceutical社製)を用い、Journal of Polymer Science, Polymer Physics Edition, 21, 7, 1091-1101(1983)を参考にPES-1を合成した。
<合成例PES-1-1>
PES-1をテトラヒドロフランに完溶させた後、各々のポリマー中に含有するアリル基に対し1.5倍モルの6-アミノ-9H-プリン-9-エタンチオール(Aurora Fine Chemicals LLC社製)を加えた反応溶液に、Green Chemistry,2013、15(4)、1016と同様の手法により、撹拌しながらUV光(254nm)を照射した。反応溶液の30倍量のエチルアルコールをフラスコに入れ、メカニカルスターラーとテフロン(登録商標)羽を設置し、エチルアルコールを激しく撹拌した中へ、得られた反応溶液を1時間かけて滴下した。2時間撹拌した後、ヌッチェ、ろ紙にて、減圧濾過した。得られた固体を60℃で減圧乾燥し、PES-1-1を得た。H-NMRの積分比より、アリル基の二重結合の消失を確認した。
<合成例PES-1-1-1>
PES-1-1、2-プロペン酸3-フェニル-2-アジドエチルエステル(Aurora Fine Chemicals社製)を用い、Journal of the American Chemical Society,(2018),140(5),1596と同様の手法により、PES-1-1-1を得た。ポリマー中の相補的多重水素結合ユニット、光架橋部位である桂皮酸ユニットの導入率として、ユニットS/T/Uは、H-NMRの積分比より算出し、81/9/10(mol/mol/mol)であった。また、PES1-1-1のMnは、29300であり、Mw/Mnは、2.61であった。
[ポリカーボネート及び相補的多重水素結合性基を有するポリカーボネートの合成]
下記方法にしたがって、下記で表されるポリカーボネーPC-1を合成した後、相補的多重水素結合性基を導入したポカーボネートPC-1-1を合成した。その後更にクリック反応により、光架橋性部位である桂皮酸エステルを含有するPC-1-1-1を合成した。
<合成例PC-1>
Macromolecules,25,18,4588-4596(1992)を参考にPC-1を合成した。
<合成例PC-1-1>
PES-1の代わりにPC-1を用いたこと以外は、<合成例PES-1-1>と同様の方法により、PC-1-1を得た。H-NMRの積分比より、アリル基の二重結合の消失を確認した。
<合成例PC-1-1-1>
PES-1-1の代わりにPC-1-1を用いたこと以外は、<合成例PES-1-1-1>と同様の方法により、PC-1-1-1を得た。H-NMRの積分比より、アリル基の二重結合の消失を確認した。
ポリマー中の相補的多重水素結合ユニット、光架橋部位である桂皮酸ユニットの導入率として、ユニットS/T/Uは、H-NMRの積分比より算出し、82/10/8(mol/mol/mol)であった。また、PC1-1-1のMnは、18100であり、Mw/Mnは、2.49であった。
Figure 2023012748000029
(1)実施例1
[樹脂組成物の調製]
<樹脂組成物1-1の調製>
Ac-1-1 100mg、及び上記の方法で合成した光異性化化合物22 80mg(Fw 810.29)をシャーレに入れた後、CHClを100ml添加した。アルミ箔でフタをして、ドラフト内でCHClが乾固するまで放置した。その後、室温で減圧乾燥機を用いて真空乾燥することにより、溶媒を除去した。
<樹脂組成物1-2~1-14>
表1に記載されている樹脂及び光異性化化合物を用い、<組成物1-1の調製>と同様な方法(樹脂100mgを用い、その樹脂中の相補的多重水素結合性基に対し等モルの光異性化化合物を使用)で、樹脂組成物1-2~1-14を調製した。溶解しにくい組成物の場合は、溶液を加熱し溶解した。なお、それぞれの光異性化化合物は、上記と同様の方法で合成したものを用いた。
<樹脂組成物1-15>
Omnirad(登録商標)651(IGM Resins B.V.社製)を23.8mg加えた以外は、<組成物1-1の調製>と同様な方法で、樹脂組成物1-15を調製した。
<樹脂組成物1-16>
カレンズMT(登録商標)PE1(昭和電工社製)を50.7mg加えた以外は、<組成物1-1の調製>と同様な方法で、樹脂組成物1-16を調製した。
<比較樹脂組成物1-A~1-F>
表1に記載されている樹脂及び光異性化化合物を用い、<樹脂組成物1-1の調製>と同様な方法で、樹脂組成物1-A~1-Fを調製した。溶解しにくい組成物の場合は、溶液を加熱し溶解した。
[光応答接着試験]
前記で調製した樹脂組成物1-1~1-16及び比較樹脂組成物1-A~1-Fの光照射に伴う接着性の変化を図3に示す装置を用いて、以下の光応答接着試験で評価した。
図3に示すように、18mm角のカバーガラス1に化合物2mgをガラス中心から半径6mm内に載せ、同サイズのカバーガラス2を、カバーガラス1に対して平行方向に約4mmずらした位置に設置した。
カバーガラス間に各樹脂組成物1-1~1-16及び比較樹脂組成物1-A~1-Fを挟んだ後に、カバーガラスを加熱し、当該樹脂組成物を溶融させ、カバーガラス1とカバーガラス2とを接着させた。得られた各サンプルを下記の流動化試験(非流動性→流動性の試験)に供し、その後、下記の非流動化の試験(流動性→非流動性の試験)に供した。
<流動化試験(非流動性→流動性の試験)>
図3に示す(A)部分を台にセロハンテープで固定し、(C)部分には100gのおもりを装着した長さ30cmのビニル紐をセロハンテープで固定した。樹脂組成物1-1~1-16、比較樹脂組成物1-A~1-Fの(B)部分に波長365nmの光を照射量30J/cmで3分照射し、カバーガラス2がカバーガラス1から剥がれるかを確認し、下記の評価基準にしたがって判定した。樹脂組成物1-16に対しては、波長365nmの光を照射量30J/cmで1分照射後、波長254nmの光を照射量30J/cmで2分照射した。なお、下記評価基準で○及び△を合格とした。得られた結果を表1に示す。
(評価基準)
〇:カバーガラス2がカバーガラス1から完全に剥がれた
△:カバーガラス2がずれた
×:カバーガラス2は動かなかった。
<非流動化試験(流動性→非流動性の試験)>
光照射終了後から「非流動性試験開始」とし、2分、自然環境下、すなわち室温(25±15℃の範囲)で放置した。後に、上記試験で使用したカバーガラス1の試料部分((B)部分)を覆いかぶせるようにカバーガラス3(カバーガラス1、2と同サイズ)をのせ、カバーガラス1とカバーガラス3とが接着するかを確認し、下記の評価基準にしたがって判定した。なお、下記評価基準で○及び△を合格とした。得られた結果を表1に示す。
(評価基準)
〇:接着しなかった(非流動化していた)
△:一部接着した(一部、流動化状態が保たれていた)
×:接着した(流動化状態が保たれていた)。
Figure 2023012748000030
上記結果に示されるように、本発明の樹脂組成物は、流動化及び非流動化試験において流動化・非流動化現象を誘起することが認められた。これに対して、比較例の樹脂組成物は、流動化・非流動化現象の両方を誘起することはなかった。
[実施例2-1:トナー1の作製]
(2)実施例2
[トナー2-1の製造]
<スチレンアクリル樹脂粒子分散液1C-Cの調製>
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム8gをイオン交換水3000gに溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、重合開始剤である過硫酸カリウム15.0gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加し、再度液温80℃とした。一方、スチレン(475.2g、4.57mol)、n-ブチルアクリレート(247.5g、1.93mol)、メタクリル酸(67.3g、0.93mol)、<合成例MA1>で合成したモノマーMA1(17.5g、0.08mol)、ビニルシンナメート(VC、東京化成工業社製)(1.1g、0.006mol)及びn-オクチル-3-メルカプトプロピオネート16.0gよりなる重合性モノマー溶液を混合後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8に調整した。その後、モノマー溶液を1時間かけて前述の界面活性剤、重合開始剤を溶解した溶液中へ滴下した。滴下終了後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行ない、スチレンアクリル樹脂粒子(1a)を含有するスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1A)を調製した。この溶液を60℃に加熱し、ゆっくりと最少量のアセトンに溶解させた光異性化化合物22(Fw 810.29)(64.8g、0.08mol)を添加した。添加後、90分撹拌し、アセトンを除去することで、光異性化化合物22で架橋されたスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1A-A)を調製した。
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン-2-ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7gをイオン交換水800gに溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、上記のスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1A-A)260gとスチレン(242.6g、2.33mol)、n-ブチルアクリレート(118.8g、0.93mol)、<合成例MA1>で合成したモノマーMA1(7.7g、0.03mol)、ビニルシンナメート(VC、東京化成工業社製)(0.5g、0.003mol)及びn-オクチル-3-メルカプトプロピオネート1.5g、離型剤としてパラフィンワックス「HNP-11」(日本精蝋社製)67gを90℃にて溶解させた重合性モノマー溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CREARMIX」(エム・テクニック社製)により1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム9.0gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行い、スチレンアクリル樹脂粒子(1b)を含有するスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1B)を調製した。この溶液を60℃に加熱し、ゆっくりと最少量のアセトンに溶解させた光異性化化合物22(Fw 810.29)(24.3g、0.03mol)を添加した。添加後、90分撹拌し、アセトンを除去することで、光異性化化合物22で架橋されたスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1B-B)を調製した。
(第3段重合)
上記のスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1B-B)に過硫酸カリウム16.5gをイオン交換水400gに溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下に、スチレン(430.7g、4.13mol)、n-ブチルアクリレート(128.7g、1.00mol)、メタクリル酸(32.7g、0.25mol)、<合成例MA1>で合成したモノマーMA1(17.7g、0.05mol)、ビニルシンナメート(VC、東京化成工業社製)(1.1g、0.006mol)及びn-オクチル-3-メルカプトプロピオネート8gからなる重合性モノマー溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却しスチレンアクリル樹脂1を含有するスチレンアクリル樹脂粒子分散液1(1C)を得た。この溶液を60℃に加熱し、ゆっくりと最少量のアセトンに溶解させた光異性化化合物22(Fw 810.29)(61.5g、0.08mol)を添加した。添加後、90分撹拌し、アセトンを除去することで、光異性化化合物22で架橋されたスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1C-C)を調製した。
(シアン着色剤粒子分散液の調製)
n-ドデシル硫酸ナトリウム 11.5gを純水 1600gに溶解し、銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3) 25gを徐々に添加し、次いで、「クレアミックス(登録商標)WモーションCLM-0.8(エム・テクニック株式会社製)」を用い、シアン着色剤粒子分散液を調製した。電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定した、分散液中のシアン着色剤粒子の個数基準のメジアン径は、151nmであった。
(凝集、融着)
上記で作製したスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1C-C)を固形分換算で504g、イオン交換水900g、及びシアン着色剤粒子分散液を固形分換算で70gを、攪拌装置、温度センサー、及び冷却管を装着した反応装置に投入した。容器内の温度を30℃に保持して、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
次に、塩化マグネシウム・6水和物2gをイオン交換水1000gに溶解した水溶液を撹拌下、10分間かけて滴下した後、昇温を開始し、この系を60分間かけて70℃まで昇温し、70℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター株式会社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメジアン径(D50)が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム190gをイオン交換水760gに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。70℃で1時間撹拌した後、さらに昇温を行い、75℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させた。その後、30℃まで冷却することにより、トナー粒子の分散液を得た。
上記で得られたトナー粒子の分散液を遠心分離機で固液分離し、トナー粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥して、トナー2-1を作製した。
[トナー2-2~トナー2-11、トナー2-14及び比較トナー2-A~2-Fの製造]
[トナー2-1の製造]において、相補的多重水素結合性基含有モノマーであるMA1及び光架橋性部位を有する化合物(ビニルシンナメート)、光異性化化合物を表2に記載の化合物に変更し、樹脂中における光架橋性部位のモル比(ユニット(U)のモル比)が表2に記載の量となるように、化合物及び量を適宜変更して、トナー2-2~トナー2-11、トナー2-14及び比較トナー2-A~2-Fを作製した。
[トナー2-12の製造]
<合成例PES-1-1-1>で合成したポリエステル樹脂PES-1-1-1 100gを、「ランデルミル 形式:RM」(株式会社徳寿工作所製)で粉砕し、予め作製した0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液 638gと混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US-150T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて、V-LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、ポリエステル樹脂粒子分散液(1D-D)を得た。この溶液を60℃に加熱し、ゆっくりと最少量のアセトンに溶解させた光異性化化合物22(Fw 810.29)(15.4g、0.02mol)を添加した。添加後、90分撹拌し、アセトンを除去することで、光異性化化合物22で架橋されたポリエステル樹脂粒子分散液(1D-D)を調製した。
(凝集、融着)
[トナー2-1の製造]の(凝集、融着)で用いたスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1C-C)を上記で作製したポリエステル樹脂粒子分散液(1D-D)に代えた以外は同様な方法で、トナー2-12を作製した。
[トナー2-13の製造]
<合成例PC-1-1-1>で合成したポリカーボネート樹脂PC-1-1-1 100gを、「ランデルミル 形式:RM」(株式会社徳寿工作所製)で粉砕し、予め作製した0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液 638gと混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US-150T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて、V-LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、ポリカーボネート樹脂粒子分散液(1E-E)を得た。この溶液を60℃に加熱し、ゆっくりと最少量のアセトンに溶解させた光異性化化合物22(Fw 810.29)(20.8g、0.03mol)を添加した。添加後、90分撹拌し、アセトンを除去することで、光異性化化合物22で架橋されたポリカーボネート樹脂粒子分散液(1E-E)を調製した。
(凝集、融着)
[トナー2-1の製造]の(凝集、融着)で用いたスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1C-C)を上記で作製したポリカーボネート樹脂粒子分散液(1E-E)に代えた以外は同様な方法で、トナー2-13を作製した。
[トナー2-15の製造]
[トナー2-1の製造]<スチレンアクリル樹脂粒子分散液1C-Cの調製>の(第1段重合)、(第2段重合)及び(第3段重合)の光異性化化合物22のアセトン溶液中へOmnirad(登録商標)651(IGM Resins B.V.社製)を2.1g、0.8g及び2.1gを加えた以外は、[トナー2-1の製造]と同様な方法で、トナー2-15を調製した。
[トナー2-16の製造]
[トナー2-1の製造]<スチレンアクリル樹脂粒子分散液1C-Cの調製>の(第1段重合)、(第2段重合)及び(第3段重合)の光異性化化合物22のアセトン溶液中へカレンズMT(登録商標)PE1(昭和電工社製)を4.4g、1.6g及び4.4gを加えた以外は、[トナー2-1の製造]と同様な方法で、トナー2-16を調製した。
[現像剤の作製]
上記で作製した各トナーについて、シクロヘキサンメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体樹脂(モノマー質量比1:1)で被覆した体積平均粒径が30μmのフェライトキャリア粒子を、トナー粒子濃度が6質量%となるように混合し、現像剤2-1~2-16及び2-A~2-Fを得た。混合は、V型混合機を用いて30分間行った。
[定着性試験]
得られた各現像剤を用いて、記録媒体として普通紙上にトナー画像を形成し、印刷物を得た。具体的には、一方現像剤、他方にグロスコート紙(坪量:128g/m)を設置した一対の平行平板(アルミニウム)電極間に、現像剤を磁力によって摺動させながら配置し、電極間ギャップが0.5mm、DCバイアスとACバイアスとはトナー付着量4g/mとなる条件でトナーを現像させ、普通紙の表面にトナー層を形成し、定着装置で定着させて、印刷物を得た。
<評価>
この印刷物の1cm角の画像を、「JKワイパー(登録商標)」(日本製紙クレシア株式会社製)で50kPaの圧力をかけて10回こすり、画像の定着率で評価した。定着率80%以上を合格とする。得られた定着性試験の評価結果(定着率)を下記表2に示す。なお、画像の定着率とは、プリント後の画像及びこすった後の画像の濃度を反射濃度計「RD-918」(サカタインクスエンジニアリング株式会社製)で測定し、こすった後のベタ画像の反射濃度を、プリント後のベタ画像の反射濃度で除した値を百分率で表した数値である。
定着装置は、図2に示す装置を適宜改変して構成された下記3種の装置を用いた。
定着装置No.1:図2の圧着部9がなく、照射部40から照射される紫外光の波長は365nmであり(光源:発光波長が365nm±10nmのLED光源)、照射量は5J/cmである。また紫外光照射により軟化したトナーは、排紙部14(図1参照)に至るまで、自然環境下、即ち室温(20℃)で放置した状態で固化(化合物を非流動化)、定着させた。
定着装置No.2:図2の圧着部9があり、加圧部材91の温度が20℃であり、加圧時の圧力は0.2MPaである。照射部の光源及び照射量はNo.1と同様である。また紫外光照射により軟化したトナーは、加圧部材91による加圧により定着させ、その後、排紙部14(図1参照)に至るまで、室温(20℃)で放置した状態で固化(化合物を非流動化)させた。
定着装置No.3:図2の圧着部9があり、加圧部材91の温度が80℃である。照射部の光源及び照射量はNo.1と同様である。また、加圧部材91での加圧時の圧力は、No.2と同様である。また紫外光照射により軟化したトナーは、加圧部材91による加圧、加熱により、より軟化させて定着させた。その後、排紙部14(図1参照)に至るまで、室温(20℃)で放置した状態で固化(化合物を非流動化)させた。
[細線再現性試験]
<画像形成方法>
得られた現像剤を用いて、記録媒体として普通紙上にトナー画像を形成し、印刷物を得た。具体的には、一方現像剤、他方にグロスコート紙(坪量:128g/m)を設置した一対の平行平板(アルミ)電極間に、現像剤を磁力によって摺動させながら配置し、電極間ギャップが0.5mm、DCバイアスとACバイアスとはトナー付着量4g/mとなる条件でトナーを現像させ、普通紙上に6本/mmの各細線のトナー層を形成し、定着装置にて定着した印刷物を用いて行った。
<評価>
印画物における細線画像部を、デジタルマイクロスコープ「VHX-600」(キーエンス社製)にて拡大したモニター画像から、インジケータによって6本/mmの細線の線幅の測定を行い(W1)、これの定着前の線幅(W2)に対する細線再現率を{(W1/W2)×100}によって算出した。線幅の測定においては、測定位置によってトナーの細線の線幅が異なり、細線の線幅方向の両端部は線幅方向に凹凸があるため、その凹凸を平均化した直線を両端部について引き、その直線間の距離をもって線幅とした。
なお、下記評価結果は、実施例2-1~2-16及び比較例2-A~2-Fは、トナー2-1~2-16及び比較トナー2-A~2-Fを用いて、定着装置No.1で画像を形成後に評価した結果であり、実施例2-17及び2-18は、トナー2-6を用いて、それぞれ、定着装置No.2及びNo.3で画像を形成後に評価した結果である。
Figure 2023012748000031
表2から明らかなように、各実施例で作製したトナーは、定着性がよく、細線再現性にも優れていることが確認された。これに対して、比較例2-A~2-Fで作製したトナーは、定着性及び細線再現性に劣ることがわかった。定着性及び細線再現性の評価のために用いられた紫外線の光源及び紫外線の照射条件は、実施例2-1~2-4及び比較例2-A~2-Fを通して一定であることから、実施例のトナーは比較例のトナーに比べて、光照射により速やかに流動化・非流動化し、これにより定着性及び細線再現性に優れるという効果が発現されたものといえる。
各実施例に示されるように、トナーが相補的多重水素結合性基及び光架橋性部位を有する樹脂と、相補的多重水素結合性基を有する光異性化化合物と、を含む樹脂組成物を含む場合、トナー画像の定着性試験において86%以上の優れた定着率を示し、細線再現性において110%以上の優れた細線再現率を示すことがわかった。
1 感光体、
2 帯電器、
3 露光器、
4 現像部、
5 転写部(転写ローラー)、
7 用紙搬送系、
8 クリーニング部、
9 圧着部、
10 画像形成部、
11 給紙部、
12 搬送ローラー、
13 搬送ベルト、
14 排紙部、
15 手差し給紙部、
16 トレイ、
17 温湿度計、
20 画像処理部、
24 用紙反転部、
40 照射部、
71 画像読取装置、
72 自動原稿送り装置、
85 ブレード、
90 制御部、
91、92 加圧部材、
100 画像形成装置、
d 原稿、
S 記録用紙。

Claims (9)

  1. 少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第1の基、及び光により架橋する光架橋性部位を有する樹脂と、
    前記第1の基と相補的に少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第2の基、及び光により可逆的に異性化する光異性化部位を有する光異性化化合物と、
    を含む、樹脂組成物。
  2. 前記樹脂が、下記一般式(1)で表される構造と、一般式(2)で表される構造と、を含む、請求項1に記載の樹脂組成物:
    Figure 2023012748000032

    一般式(1)中、Mは、連結基を表し、Bは、少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第1の基を表す;
    一般式(2)中、Jは、連結基を表し、Dは、光架橋性部位を表す。
  3. 前記光異性化化合物が、下記一般式(3):
    Figure 2023012748000033

    一般式(3)中、
    及びLは、それぞれ独立して、連結基を表し、
    及びAは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基又は置換もしくは非置換の芳香族複素環基を表し、
    及びZは、それぞれ独立して、N又はCHを表し、
    は、前記第1の基と相補的に少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第2の基を表し、
    nは、1~10の整数であり、
    Gは、nが1の場合、前記第1の基と相補的に少なくとも2つの水素結合を形成することが可能な第2の基を表し、nが2~10の場合、n価の連結基を表す、
    で表される化合物である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記光架橋性部位が、桂皮酸残基、アントラセン残基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びアリル基からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記第1の光照射の波長が、250nm以上480nm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いた感光性接着剤。
  7. 請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、トナー。
  8. 請求項7に記載のトナーからなるトナー像を記録媒体上に形成する工程と、前記トナー像に光を照射して、前記トナー像を軟化させる工程とを含む、画像形成方法。
  9. 請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、光スイッチング材料。
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