JP2023007516A - ガイドワイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】局所的な折れ曲がりを生じにくく、カテーテルの送達性を向上できるガイドワイヤを提供する。【解決手段】ガイドワイヤ10は、基端部および先端部を有する超弾性金属を含む芯材20と、芯材20の先端部の外表面に密着するように線材を巻回して形成されたコイル30と、芯材20およびコイル30を被覆する樹脂被覆層40と、を有し、芯材20の先端部は、当該芯材20に湾曲形状を付与可能な形状付け部28を有し、コイル30は、形状付け部28の基端を覆っている。【選択図】図2
Description
本発明は、生体内に挿入する長尺な医療器具を誘導するガイドワイヤに関する。
ガイドワイヤは、血管内治療を行うためのカテーテルやステントを目的の位置まで誘導するために血管内に挿入する医療器具である。ガイドワイヤは、血管の湾曲部や分岐部を通過するために、血管選択性が要求される。
ガイドワイヤに血管選択性を付与するために、術者は、ガイドワイヤの先端部を曲げ、ガイドワイヤの先端部に所望の形状を付与することがある。このとき、ガイドワイヤの先端部が超弾性材料で形成されていると、超弾性材料が持つ弾性的な性質により、術者がガイドワイヤの先端部に形状を付与することが難しい。そこで、超弾性材料からなるガイドワイヤは、形状の付与が容易にできるよう、先端部の材料特性を変更することがある。例えば特許文献1には、Ni-Ti合金等からなる芯材の先端部に熱処理を施すことによって超弾性を低下させることにより、ガイドワイヤ先端部が形状付け(リシェイプ)可能となることが記載されている。
ガイドワイヤの芯材の一部の材料特性を変更すると、ガイドワイヤは、材料特性を変更した部分と材料特性を変更していない部分との境界部において、長軸方向に沿って物性が大きく変化する。長軸方向に沿って物性が大きく変化する境界部は、ガイドワイヤにかけられた応力が集中しやすいため、ガイドワイヤは、境界部で折れ曲がりやすくなる。ガイドワイヤが局所的に折れ曲がると、ガイドワイヤの基端に加えられたトルクや押し込み力がガイドワイヤの先端まで伝わらなくなり、ガイドワイヤは、血管選択性が低下する。また、ガイドワイヤは、カテーテルを意図した方向に誘導することが困難となる場合がある。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、局所的な折れ曲がりを生じにくく、カテーテルの送達性を向上できるガイドワイヤを提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明に係るガイドワイヤは、基端部および先端部を有する超弾性金属を含む芯材と、前記芯材の先端部の外表面に密着するように線材を巻回して形成されたコイルと、前記芯材および前記コイルを被覆する樹脂被覆層と、を有し、前記芯材の先端部は、当該芯材に湾曲形状を付与可能な形状付け部を有し、前記コイルは、前記形状付け部の基端を覆っていることを特徴とする。
上記のように構成したガイドワイヤは、芯材の形状付け部と形状付け部よりも基端側の部位との境界部をコイルで覆われるため、境界部の近傍で長軸方向に沿って剛性が大きく変化することを抑制できる。境界部での応力集中によるガイドワイヤの折れ曲がりを抑制できるため、ガイドワイヤは、ガイドワイヤの基端に加えられたトルクや押し込み力をガイドワイヤの先端まで伝達することができる。また、ガイドワイヤは、折れ曲がりにくくなるため、カテーテルの送達性が向上する。
前記コイルの基端の位置は、前記形状付け部の基端の位置から10mm以上基端側にあってもよい。これにより、ガイドワイヤの剛性の変化が生じるコイルの基端の位置と、形状付け部の基端の位置が、長軸方向に沿って分散する。そのため、ガイドワイヤは、長軸方向に沿って剛性が大きく変化することが抑制できる。その結果、ガイドワイヤは、局所的な折れ曲がりを抑制できる。
前記芯材の先端部は、長軸方向に沿って外径が一定の外径一定部と、前記外径一定部の基端に接続されて先端から基端へ向かうにつれて外径が大きくなる移行部と、を有し、前記コイルは、前記外径一定部と前記移行部との接続部を覆ってもよい。コイルが芯材の外径一定部と移行部との接続部を覆うことで、ガイドワイヤは、長軸方向に沿う剛性の変化率が一定に近づく。このため、ガイドワイヤは、先端部に柔軟性を有しつつ、局所的な折れ曲がりを抑制できる。
前記形状付け部の基端は、前記移行部にあってもよい。形状付け部の基端部の外径が太くなることで、ガイドワイヤは、形状付け部の基端近傍において折れ曲がりにくくなる。
前記形状付け部は、長軸方向において、前記形状付け部の全体が前記コイルにより覆われてもよい。剛性の低い形状付け部の全体をコイルで覆うことで、形状付け部の剛性を補うことができる。このため、ガイドワイヤの局所的な折れ曲がりを効果的に抑制できる。また、ガイドワイヤは、形状付け部を塑性変形させる際に、コイルも塑性変形させることができる。このため、ガイドワイヤは、形状付け部への形状付けが容易になるとともに、形状付け部に付与された形状を効果的に維持できる。
前記コイルの先端の位置は、前記形状付け部の先端の位置と長軸方向において一致してもよい。これにより、ガイドワイヤは、血管選択に重要な芯材の先端の形状付けが容易になるとともに、付与された形状を効果的に維持できる。
前記形状付け部は、前記芯材を熱処理することで形成してもよい。熱処理は、芯材の超弾性を低下または失わせると同時に、剛性を低下させる。このため、ガイドワイヤは、芯材に形状付け部を容易に形成でき、ガイドワイヤの先端部の柔軟性を向上できる。
前記コイルを形成する線材は、X線不透過性を有する材料により形成されてもよい。これにより、術者は、ガイドワイヤの先端の位置をX線透視下で容易に把握できる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法は、説明の都合上、誇張されて実際の寸法とは異なる場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。本明細書において、ガイドワイヤ10の血管に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。
本実施形態に係るガイドワイヤ10は、図1および2に示すように、長尺な芯材20と、芯材20の先端部に密着して巻回されたコイル30と、芯材20とコイル30を被覆した樹脂被覆層40と、樹脂被覆層を覆う親水性潤滑層50とを備えている。ガイドワイヤ10は、例えば肝臓、前立腺、子宮等の主に腹部の血管へカテーテルを誘導するために使用される。なお、ガイドワイヤ10が挿入される血管は、上述の例に限定されず、例えば心臓、脳、下肢等の血管であってもよい。
ガイドワイヤ10の各寸法は、ガイドワイヤ10の用途によって異なる。ガイドワイヤ10の各寸法を例示的に挙げると、以下の通りである。ガイドワイヤ10の長軸方向Xの長さは、800~5000mmである。ガイドワイヤ10の外径は、0.20~1.00mmである。なお、長軸方向Xは、ガイドワイヤ10の長軸の方向であるとともに、芯材20の長軸の方向でもある。
芯材20は、外径一定部21と、外径部の基端側に配置される移行部22と、移行部22の基端側に配置される本体部23とを備えている。外径一定部21、移行部22および本体部23は、同一の材料により一体的に形成されているが、一体的に形成されなくてもよい。外径一定部21は、長軸方向Xに沿ってほぼ一定の外径を有している。外径一定部21は、移行部22および本体部23よりも小さい外径を有し、柔軟性が高い。本体部23は、長軸方向Xに沿ってほぼ一定の外径を有している。本体部23は、外径一定部21および移行部22よりも大きい外径を有し、剛性が高い。移行部22は、先端から基端へ向かうにつれて外径が大きくなっている。移行部22は、外径一定部21と本体部23との間で芯材20の柔軟性(剛性)を連続的または段階的に移行させる。移行部22の構成は、外径一定部21と本体部23の剛性の物性を大きく変化させることがなければ、特に限定されない。芯材20は、外径一定部21と移行部22との間に接続部27を有している。
移行部22において、移行部22の長さに対する外径の変化率(外径の勾配)は一定でもよく、または変化してもよい。本実施形態では、移行部22は、第1移行部24、第2移行部25および第3移行部26の3つの部分からなる。第1移行部24の先端は、外径一定部21の基端に接続されている。第3移行部26の基端は、本体部23の先端に接続されている。第1移行部24、第2移行部25および第3移行部26の外径は、先端から基端へ向かうにつれて大きくなっているが、その変化率(増加率)は異なっている。移行部22を構成する部分の数は、本実施形態では3つであるが、1つであっても、2つであっても、4つ以上であってもよい。また、各部分の外径は、先端から基端へ向かうにつれて小さくなってもよい。
芯材20は、塑性変形により形状付けが可能な形状付け部28と、超弾性を備えて曲がり癖がつきにくい超弾性部29とを備えている。形状付け部28と超弾性部29との間には、境界部28Aが配置される。形状付け部28は、芯材20の先端部に配置される。形状付け部28は、外径一定部21と、移行部22の先端部とを含む範囲に形成される。形状付け部28の基端は、長軸方向Xにおいて第1移行部24の先端より基端の位置に配置される。なお、形状付け部28の基端は、第1移行部24と第2移行部25の間の部分、第2移行部25、第2移行部25と第3移行部26の間の部分、または第3移行部26に配置されてよい。超弾性部29は、形状付け部28よりも基端側に配置される。
芯材20の各寸法は、ガイドワイヤ10の用途によって異なる。ガイドワイヤ10の各寸法を例示的に挙げると、以下の通りである。外径一定部21の外径は0.06~0.10mm、長軸方向Xの長さは5~15mmである。第1移行部24の外径は、0.06~0.20mmである。第1移行部24の長軸方向Xの長さは、30~60mmである。第2移行部25の外径は、0.10~0.30mmである。第2移行部25の長軸方向Xの長さは、80~120mmである。第3移行部26の外径は、0.15~0.45mmである。第3移行部26の長軸方向Xの長さは、70~110mmである。第1移行部24、第2移行部25および第3移行部26を含む移行部22の全体の長さは50~600mmである。本体部23の外径は0.20~0.50mmである。本体部23の長軸方向Xの長さは1000~3000mmである。形状付け部28の長軸方向Xの長さは、好ましくは20mm以上であり、より好ましくは25mm以上である。
芯材20は、超弾性金属を含む線材の先端部の材料特性を変更することによって形成される。芯材20を形成する超弾性金属は、例えばNi-Ti合金、Cu-Zn-X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、Ni-Al合金であり、好ましくはNi-Ti合金である。Ni-Ti合金にCoやFeなどの第3元素を加えてもよい。超弾性金属は、高い弾性と適度な剛性を有する。そのため、芯材20の大部分が超弾性部29で形成されたガイドワイヤ10は、湾曲した血管に挿入されても曲がり癖がつきにくく、基端に加えられたトルクおよび押し込み力を先端まで伝達できる。本実施形態では、芯材20は、Ni-Ti合金からなる線材の先端部に熱処理を施すことで形成される。線材のうち熱処理が施された部分は、超弾性が低下または失われ、剛性が低下する。したがって、線材のうち熱処理が施された部分は、柔軟性を有しつつ容易に塑性変形可能な形状付け部28となる。線材のうち熱処理が施されない部分は、線材の超弾性と剛性が維持されて超弾性部29となる。芯材20の形状付け部28と超弾性部29との間には、境界部28Aが形成される。芯材20は、境界部28Aの先端側と基端側とで異なる材料特性を有する。
芯材20の熱処理された形状付け部28は、種々の方法により特定できる。形状付け部28は、色によって識別できる。芯材20の熱処理を施した部分に形成される酸化被膜は、未処理部と異なる色を呈するため、特定の色となった部分を形状付け部28と識別できる。例えば、Ni-Ti合金に熱処理を施すと、表面に青色の酸化被膜が形成される。このため、目視や顕微鏡により芯材20の表面を観察することで、青色の部分を形状付け部28と特定できる。
また、形状付け部28は、芯材20を変形させることにより識別できる。図3に示すように、水平に固定されたシリコンゴム製のシート61に、芯材20の先端部を置く。次に、芯材20の形状付け部28よりも基端側の部分を、直径0.50mm以上のステンレス鋼製の円柱62により、10gf以上の荷重でシート61に対して押し付ける。なお、荷重は、適宜設定できる。次に、芯材20の円柱62およびシート61の間に挟まれた部分よりも基端側の部分を、シート61から垂直上方へ50mmに位置する牽引部63に固定する。牽引部63は、例えばオートグラフのチャックである。次に、芯材20が円柱62とシート61の間から抜けるまで、牽引部63を垂直上方へ所定の速度(例えば、200mm/分)で移動させる。超弾性部29は、円柱62によって形状付けられずに直線状に戻り、形状付け部28は、円柱によって形状付けられて湾曲した形状となる。したがって、芯材20の湾曲した範囲を、形状付け部28であると特定できる。
また、形状付け部28は、金属相の観察により識別できる。例えば、Ni-Ti合金の金属相は、室温状態においてオーステナイト相の状態である。これを熱処理すると、室温状態においてマルテンサイト相の状態に変化する。この金属相の変化によって、Ni-Ti合金は、超弾性が低下または失われる。したがって、示差走査熱量測定(DSC:Differential scanning calorimetry)によって金属相を測定し、室温状態においてマルテンサイト相である範囲を、形状付け部28であると特定できる。
なお、金属相がオーステナイト相であっても、形状付けが可能な場合がある。例えば、Ni-Ti合金に600℃以上で熱処理を施した場合、Ni-Ti合金の組織中に、粒子サイズの異なるNi4Ti3の粒子が不均一に析出する。この場合、Ni4Ti3の粒子と母相であるB2相との界面で転移滑りが誘発されて変形しやすくなるため、形状付けが可能となる。したがって、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)または透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて金属組織を観察し、オーステナイト相でNi4Ti3の粒子が不均一に析出している範囲を、形状付け部28であると特定できる。
コイル30は、図1および2に示すように、コイル30の内表面が芯材20の先端部の外表面に密着するように配置されている。コイル30は、ガイドワイヤ10にX線透視下での視認性を付与し、かつガイドワイヤ10に剛性を付与する。コイル30は、長軸方向Xにおいて隣接する巻回同士が隙間なく密着していることが好ましい。これにより、コイル30は、X線透視下での視認性が向上し、かつ剛性が向上する。コイル30の剛性が向上すると、芯材20の剛性が大きく変化する部分をコイル30で覆うことにより、ガイドワイヤ10の剛性の大きな変化を緩和する効果が向上する。なお、コイル30は、隣接する巻回同士が隙間を有していてもよい。
コイル30の先端は、長軸方向Xにおいて、芯材20の先端とほぼ一致する。なお、コイル30の先端は、図8(A)に示すように、芯材20の先端よりも先端側にあってもよい。または、コイル30の先端は、図8(B)に示すように、芯材20の先端よりも基端側にあってもよい。
コイル30の基端は、図1および2に示すように、長軸方向Xにおいて、形状付け部28の基端よりも基端側にある。すなわち、コイル30は、芯材20の形状付け部28と超弾性部29との境界部28Aを覆っている。コイル30が芯材20の境界部28Aを覆うことにより、ガイドワイヤ10は、境界部28Aにおける大きな剛性の変化が緩和される。これにより、ガイドワイヤ10は、長軸方向Xに沿う剛性の変化率が一定に近づく。さらに、コイル30の基端は、長軸方向Xにおいて、移行部22と重なる位置にある。すなわち、コイル30は、芯材20の外径一定部21と移行部22との接続部27を覆っている。コイル30は、接続部27を覆うことによって、接続部27で生じるガイドワイヤ10の剛性の大きな変化を緩和する。これにより、ガイドワイヤ10は、長軸方向Xに沿う剛性の変化率が一定に近づく。本実施形態では、コイル30の基端は、長軸方向Xにおいて、第1移行部24と重なる位置にある。すなわち、コイル30は、外径一定部21と移行部22の境界を覆い、かつ形状付け部28の基端を覆っている。したがって、ガイドワイヤ10は、先端部に柔軟性を有しつつ、局所的な折れ曲がりを抑制できる。なお、コイル30の基端の位置は、長軸方向Xにおいて、移行部22と重なる位置にあれば特に限定されず、第1移行部24と第2移行部25の間の部分、第2移行部25、第2移行部25と第3移行部26の間の部分、または第3移行部26と重なる位置にあってもよい。
本実施形態では、コイル30は、長軸方向Xに沿う形状付け部28の全体を覆っている。すなわち、長軸方向Xにおいて、コイル30の長さは、形状付け部28の長さよりも長い。これにより、熱処理によって低下した形状付け部28の剛性を補うことができる。また、このようなガイドワイヤ10は、形状付け部28が塑性変形すると同時に形状付け部28を覆うコイル30も塑性変形することとなる。このため、ガイドワイヤ10は、形状付け部28への形状付けが容易になるとともに、形状付け部28に付与された形状を効果的に維持できる。
コイル30と芯材20との密着は、芯材20にコイル30を形成する線材を密着させながら巻回したり、予め準備された芯材20の外径と同等の内径を有するコイル30の内腔に芯材20の先端部を挿入したりすることで可能である。コイル30の両端は、接着剤や半田付け等により、芯材20に固定されることが好ましい。また、コイル30の両端は、芯材20やコイル30の線材を溶融させて芯材20に固定されてもよい。さらに、コイル30の先端は、芯材20の最先端に形成されたコイル30の内径よりも大きい球状の膨出部に、コイル30の先端を基端側から当接させて固定してもよい。
コイル30は、X線透視下で視認できるX線不透過性の金属を含むことが好ましいが、これに限定されない。X線不透過性の金属は、例えば金、白金、銀、ビスマス、タングステンまたこれらのうち2種類以上の合金(例えば、白金-タングステン)、もしくは他の金属との合金(例えば、金-イリジウム、白金-イリジウム、白金-ニッケル)などが挙げられる。コイル30は、コイル30の表面にさらに別の材料がメッキされてもよい。または、コイル30は、X線不透過性でない材料の表面に、X線不透過性の金属をメッキして形成されてもよい。
コイル30の各寸法は、ガイドワイヤ10の用途によって異なる。コイル30の各寸法を例示的に挙げると、以下の通りである。コイル30の長軸方向Xの長さは20~50mm、コイル30の外径は0.10~0.30mm、コイル30を形成する線材の線径は、50~100μmである。形状付け部28の基端からコイル30の基端までの長さLは、0mmを超え、好ましくは5mm以上であり、より好ましくは10mm以上である。
樹脂被覆層40は、芯材20およびコイル30を被覆している。樹脂被覆層40は、芯材20とコイル30を被覆して実質的に平滑な外表面を形成するために配置される。樹脂被覆層40は、コイル30が巻回された芯材20を、樹脂被覆層40を形成する材料を含む溶液でディップコーティングすることによって形成する。したがって、樹脂被覆層40の外表面は、芯材20およびコイル30の外形に倣って凹凸を有してもよい。
樹脂被覆層40の外径は、ガイドワイヤの外径と略等しい。樹脂被覆層40の外径は、ガイドワイヤ10の用途によって異なる。樹脂被覆層40の外径は、例示的に挙げると、以下の通りである。芯材20にコイル30が巻回された部分の位置での樹脂被覆層40の外径は、0.20~0.95mm、好ましくは0.20~0.50mmである。芯材20の本体部23の位置での樹脂被覆層40の外径は、0.25~1.00mm、好ましくは0.25~0.55mmである。両者の間の外径は、滑らかに移行する。なお、樹脂被覆層40は、先端から基端まで均一な外径で形成されてもよい。
樹脂被覆層40は、芯材20の先端部およびコイル30を含む部分のみを被覆してもよい。
樹脂被覆層40を形成する材料は、被覆の容易さと外表面の処理の容易さから、合成樹脂であることが好ましい。樹脂被覆層40は、芯材20の湾曲を妨げない程度に柔軟である。樹脂被覆層40を形成する材料は、特に限定されないが、例えばポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、フッ素系樹脂、シリコーンもしくは各々のエラストマー(例えば、ポリエステルエラストマー)およびそれらの複合材料が好適に使用できる。また、樹脂被覆層40は、2層以上の複数層で形成されてもよい。例えば、樹脂被覆層40は、合成樹脂からなる内層と、親水性潤滑層50が固定しやすいような反応基を多く有する樹脂を含む樹脂からなる外層とを有してもよい。また、樹脂被覆層40は、樹脂被覆層40を形成する材料を変えることにより、長軸方向Xに沿って異なる柔軟性を備えてもよい。
樹脂被覆層40は、X線不透過性を備える微粉末が含まれてもよい。X線不透過性を備える微粉末の構成材料は、例えばタングステン、ビスマス、バリウム等である。樹脂被覆層40は、X線不透過性を備える微粉末を含むことで、X線透視下で視認できる。特に、X線不透過性を備えるコイル30を囲む範囲の樹脂被覆層40がX線不透過性を備える微粉末を含むことで、ガイドワイヤ10の先端部の視認性がさらに向上する。
親水性潤滑層50は、湿潤時に潤滑性が向上するものである。親水性潤滑層50は、ガイドワイヤ10とカテーテルの内表面や血管との間で生じる摩擦抵抗を減少させることができる。親水性潤滑層50は、イオン結合や共有結合等の化学結合や、物理的結合により樹脂被覆層40に固定されている。親水性潤滑層50を形成する材料は、親水性ポリマーを適用できる。親水性潤滑層50を形成する親水性ポリマーは、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、グリシジルメタクリレート-ジメチルアクリルアミドのブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびそれらの誘導体等が挙げられる。なお、親水性潤滑層50は、ガイドワイヤ10に設けられなくてもよい。
実施例1~2、比較例1~2のガイドワイヤ10を作製し、三点曲げによる剛性測定試験と、血管モデルを用いたカテーテルの送達性試験を行った。なお、本発明はこれらの実施例、比較例に限定されない。表1に、後述する実施例、比較例の諸条件と、試験結果を示す。
[ガイドワイヤの作製]
<実施例1>
一定の外径を有するNi-Ti合金製の線材の先端から基端側へ300mmまでの範囲に、化学エッチングを施して、外径一定部21、移行部22および本体部23を備える芯材20を形成した。化学エッチングにおいては、線材の引き上げ速度を適宜変化させることで、基端側から第3移行部26、第2移行部25、第1移行部24および外径一定部21を順次形成した。本体部23の外径は350μm、外径一定部21の外径は85μmであった。外径一定部21の長軸方向Xの長さは10mmであった。
一定の外径を有するNi-Ti合金製の線材の先端から基端側へ300mmまでの範囲に、化学エッチングを施して、外径一定部21、移行部22および本体部23を備える芯材20を形成した。化学エッチングにおいては、線材の引き上げ速度を適宜変化させることで、基端側から第3移行部26、第2移行部25、第1移行部24および外径一定部21を順次形成した。本体部23の外径は350μm、外径一定部21の外径は85μmであった。外径一定部21の長軸方向Xの長さは10mmであった。
次に、芯材20の先端から基端側へ25mmまでの範囲に、電気炉で熱処理を施した。なお、芯材20の先端から基端側へ25mmの位置は、第1移行部24であった。熱処理の温度は600℃、熱処理の時間は35秒であった。熱処理後は、熱処理した部分を大気中で放冷した。
次に、芯材20の先端から基端側へ35mmまでの範囲に、直径60μmの金線を芯材20に密着させつつ隣接する巻回が密着するよう隙間なく密に巻回し、コイル30を形成した。この後、コイル30の両端を、接着剤により芯材20に固定した。
次に、芯材20およびコイル30に、タングステンの微粉末を含むポリウレタン溶液をディップコーティングした後、加熱して乾燥させて、樹脂被覆層40を形成した。次に、樹脂被覆層40の外表面に親水性ポリマーを含む溶液をディップコーティングした後、加熱して乾燥させて、親水性潤滑層50を形成した。この後、形成された線材を所定の長さとなるように切断し、端部処理を行って実施例1のガイドワイヤ10を形成した。
<実施例2>
コイル30を形成する範囲を芯材20の先端から基端側へ35mmまでの範囲としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のガイドワイヤ10を形成した。
コイル30を形成する範囲を芯材20の先端から基端側へ35mmまでの範囲としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のガイドワイヤ10を形成した。
<比較例1>
熱処理を施す範囲を芯材20の先端から基端側へ20mmまでとし、コイル30を形成する範囲を芯材20の先端から基端側へ20mmまでとしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のガイドワイヤ10を形成した。
熱処理を施す範囲を芯材20の先端から基端側へ20mmまでとし、コイル30を形成する範囲を芯材20の先端から基端側へ20mmまでとしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のガイドワイヤ10を形成した。
<比較例2>
熱処理を施す範囲を芯材20の先端から基端側へ30mmまでとし、コイル30を形成する範囲を芯材20の先端から基端側へ20mmまでとしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のガイドワイヤ10を形成した。
熱処理を施す範囲を芯材20の先端から基端側へ30mmまでとし、コイル30を形成する範囲を芯材20の先端から基端側へ20mmまでとしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のガイドワイヤ10を形成した。
[剛性測定試験]
図4に示す三点曲げ試験装置70により、実施例1、実施例2および比較例1のガイドワイヤ10の剛性を測定した。三点曲げ試験装置70は、ガイドワイヤ10を支持する固定治具71と、固定治具71の上方に配置された圧子74を備えていた。固定治具71は、ガイドワイヤ10を2点で支持するための一対の支持台73と凹部72を備えていた。支点間距離(支持台73同士の間隔)は、5mmであった。圧子74は、凹部72の中央の位置で固定治具71に対して昇降自在に配置され、ガイドワイヤ10を押し込む速度と押し込み量を任意に調整可能に構成されていた。圧子74は、炭素鋼からなり、下端が鋭角に突出した形状であった。圧子および支持台に直角になるように、2つの支持台にガイドワイヤ10を置き、オートグラフを用いて、圧子74を5mm/秒の試験速度で下降させ、ガイドワイヤ10の押し込み量が0.5mmのときの荷重(剛性)を測定した。荷重の測定は、ガイドワイヤ10の長軸方向Xに沿って3mmごとに行った。芯材20の先端からの距離に対する荷重の平均値の測定結果を図5に示す。なお、実施例1および実施例2のサンプル数(試験したガイドワイヤ10の数)は3つであり、比較例1のサンプル数は5つであった。
図4に示す三点曲げ試験装置70により、実施例1、実施例2および比較例1のガイドワイヤ10の剛性を測定した。三点曲げ試験装置70は、ガイドワイヤ10を支持する固定治具71と、固定治具71の上方に配置された圧子74を備えていた。固定治具71は、ガイドワイヤ10を2点で支持するための一対の支持台73と凹部72を備えていた。支点間距離(支持台73同士の間隔)は、5mmであった。圧子74は、凹部72の中央の位置で固定治具71に対して昇降自在に配置され、ガイドワイヤ10を押し込む速度と押し込み量を任意に調整可能に構成されていた。圧子74は、炭素鋼からなり、下端が鋭角に突出した形状であった。圧子および支持台に直角になるように、2つの支持台にガイドワイヤ10を置き、オートグラフを用いて、圧子74を5mm/秒の試験速度で下降させ、ガイドワイヤ10の押し込み量が0.5mmのときの荷重(剛性)を測定した。荷重の測定は、ガイドワイヤ10の長軸方向Xに沿って3mmごとに行った。芯材20の先端からの距離に対する荷重の平均値の測定結果を図5に示す。なお、実施例1および実施例2のサンプル数(試験したガイドワイヤ10の数)は3つであり、比較例1のサンプル数は5つであった。
実施例1および実施例2のガイドワイヤ10は、比較例1のガイドワイヤ10と比較して、剛性の増加率が先端から基端へ向かって略一定であった。これに対し、比較例1のガイドワイヤ10は、先端から20mmの位置よりも基端側で、剛性が大きく上昇した。実施例1および実施例2のガイドワイヤ10では、コイル30の基端は、形状付け部28の基端よりも基端の位置に配置された。すなわち、実施例1および実施例2のガイドワイヤ10は、形状付け部28と超弾性部29との境界部28Aがコイル30により覆われていた。芯材20の境界部28Aがコイル30で覆われていることにより、ガイドワイヤ10は、境界部28Aにおける大きな剛性の変化が緩和される。したがって、ガイドワイヤ10の剛性は、先端から基端へ向かって略一定の増加率を示したと考えられる。
実施例2のガイドワイヤ10は、実施例1のガイドワイヤ10と比較して、先端からの距離が25mm~30mmの範囲の剛性の増加率がより一定であった。これは、実施例2のガイドワイヤ10は、実施例1のガイドワイヤ10と比較して、ガイドワイヤ10の剛性が変化する部分が長軸方向に沿って分散したためと考えられる。実施例1のガイドワイヤ10は、コイル30の基端が芯材20の剛性が大きく変化する境界部28Aよりも5mm基端の位置に配置された。これに対し、実施例2のガイドワイヤ10は、コイル30の基端が境界部28Aよりも10mm基端の位置に配置された。ガイドワイヤ10は、コイル30の基端部においても剛性の変化を生じる。そして、ガイドワイヤ10の剛性は、芯材20の剛性とコイル30の剛性との組み合わせによって決まる。実施例2のガイドワイヤ10は、実施例1のガイドワイヤ10と比較して、芯材20の境界部28Aとコイル30の端部との距離が離れていた。このため、実施例2のガイドワイヤ10は、実施例1のガイドワイヤ10と比較して、それぞれの剛性の変化によって影響を受ける部分が長軸方向に沿って分散することとなり、コイル30の基端部分近傍の位置における剛性の増加率がより一定となったと考えられる。これに対し、ガイドワイヤ10において、芯材20の境界部28Aとコイル30の端部との距離が近い場合、それぞれの剛性の変化によって影響を受ける領域が重なるため、ガイドワイヤ10は、長軸方向Xに沿って大きな剛性の変化が生じやすくなる。
[カテーテルの送達性試験]
図6に示す血管モデル80を用いて、実施例1、実施例2、比較例1および比較例2のガイドワイヤ10によるカテーテルの送達性を評価する試験を行った。血管モデル80は、透明な樹脂製の平板状部材の内部に中空の通路が形成されていた。通路は、直線状の本管81と、本管81から分岐する側枝82とを有していた。本管81の内径は、3mmであった。側枝82の内径は、3mmであった。側枝82は、交互に逆方向へ湾曲する円弧状の6つの湾曲部83と、隣接する湾曲部83を連結する直線状の直線部84とを有していた。湾曲部83の内腔の中心を通る中心線の曲率半径Rは、4.5mmであった。全ての直線部84は、平行であり、本管81に対して50°の傾斜角度θで傾斜していた。直線部84の長さSは、5mmであった。
図6に示す血管モデル80を用いて、実施例1、実施例2、比較例1および比較例2のガイドワイヤ10によるカテーテルの送達性を評価する試験を行った。血管モデル80は、透明な樹脂製の平板状部材の内部に中空の通路が形成されていた。通路は、直線状の本管81と、本管81から分岐する側枝82とを有していた。本管81の内径は、3mmであった。側枝82の内径は、3mmであった。側枝82は、交互に逆方向へ湾曲する円弧状の6つの湾曲部83と、隣接する湾曲部83を連結する直線状の直線部84とを有していた。湾曲部83の内腔の中心を通る中心線の曲率半径Rは、4.5mmであった。全ての直線部84は、平行であり、本管81に対して50°の傾斜角度θで傾斜していた。直線部84の長さSは、5mmであった。
そして、実施例1、実施例2、比較例1および比較例2のガイドワイヤ10の先端から基端側へ30mmまでの部分を、図7(A)に示すように、本管81から側枝82へ挿入した。この後、ガイドワイヤ10に沿って、外径が2.0Fr(約0.7mm)のカテーテル100を押し進めた。ガイドワイヤ10の先端が、図7(B)に示すように、プロラプス(prolapse)せずに側枝82へ到達できたか否かにより、カテーテル100の送達性を評価した。なお、本明細書において、プロラプスとは、図7(C)に示すように、ガイドワイヤ10の先端を本管81から側枝82へ挿入した状態で、ガイドワイヤ10の先端よりも基端側の部分が局所的に折れ曲がり、折れ曲がった部分が、本管81の側枝82との分岐よりも先端側へ逸脱した状態を意味する。このような状態となると、ガイドワイヤ10の基端に加えられたトルクや押し込み力が折れ曲がった部分までしか伝わらないため、術者は、ガイドワイヤ10の先端を側枝82の先に進めることが困難となる。また、ガイドワイヤ10に沿って進められるカテーテル100の先端は、本管81の側枝82との分岐よりも先端の折れ曲がった部分へ誘導される。このため、カテーテル100は、側枝82へ到達することが困難となる。ガイドワイヤ10は、長軸方向Xに沿って剛性が大きく変化する部分で応力集中による折れ曲がりが生じやすい。そのため、先端から基端へ向かってガイドワイヤ10の剛性の増加率が略一定である場合、プロラプスは、生じにくくなる。カテーテル100は、本管81から側枝82へ適度に湾曲したガイドワイヤ10に沿って、側枝82へ円滑に誘導される。
また、ガイドワイヤ10は、図7(A)に示すように、ガイドワイヤ10の剛性が大きく変化する剛性変化点P2が本管81に位置する場合に、プロラプスを生じやすい。応力が集中する剛性変化点P2が本管81にあるため、カテーテル100にかけた押し込み力が、ガイドワイヤ10の先端が挿入された本管81の先の方向に向かってしまうためである。反対に、図7(A)に示すように、ガイドワイヤ10の剛性変化点P1が側枝82に挿入された場合は、ガイドワイヤ10は、プロラプスを生じにくい。応力が集中する剛性変化点が側枝82にあるため、カテーテル100にかけた押し込み力が、ガイドワイヤ10の先端が挿入された側枝82の先の方向に向かうためである。血管の側枝にカテーテルを進める際、術者は、ガイドワイヤ10の先端のみを側枝82に挿入した状態で、カテーテル100を押し込むことがある。側枝82内の剛性変化点P1が本管81と側枝82との分岐近傍にあると、カテーテル100にかけた押し込み力が本管81の先の方向に逃げやすくなり、ガイドワイヤ10は、プロラプスを生じやすくなる。したがって、ガイドワイヤ10の剛性変化点P1がガイドワイヤ10の先端により近い位置にある方が、プロラプスは生じにくい。
カテーテル100の送達性試験の結果を、上述した表1に示す。なお、実施例1のサンプル数は5つ、実施例2のサンプル数は4つ、比較例1のサンプル数は2つ、比較例2のサンプル数は4つであった。
カテーテル100の送達性試験の結果として、実施例1のガイドワイヤ10は、60%の確率で、プロラプスを生じることなくカテーテル100を側枝82へ送達できた。実施例1のガイドワイヤ10は、図5に示す剛性測定試験結果の通り、剛性の増加率が先端から基端へ向かって略一定であったため、プロラプスが生じにくかったと考えられる。
実施例2のガイドワイヤ10は、プロラプスを生じることなく、カテーテル100を側枝82へ確実に送達できた。実施例2のガイドワイヤ10は、図5に示す剛性測定試験結果の通り、剛性の増加率が先端から基端へ向かって略一定であったため、プロラプスが生じにくかったと考えられる。さらに、実施例2のガイドワイヤ10は、図5に示すように、実施例1のガイドワイヤ10と比較して、先端からの距離が25mm~30mmの範囲の剛性の増加率がより一定であった。そのため、応力集中による折れ曲がりが生じにくく、カテーテルの送達がより向上したと考えられる。
以上のように、本実施形態に係るガイドワイヤ10は、基端部および先端部を有する超弾性金属を含む芯材20と、芯材20の先端部の外表面に密着するように線材を巻回して形成されたコイル30と、芯材20およびコイル30を被覆する樹脂被覆層40と、を有し、芯材20の先端部は、当該芯材20に湾曲形状を付与可能な形状付け部28を有し、コイル30は、形状付け部28の基端を覆っている。すなわち、コイル30の基端は、ガイドワイヤ10の長軸方向Xにおいて、形状付け部28の基端よりも基端側にある。これにより、ガイドワイヤ10は、芯材20の形状付け部28と形状付け部28よりも基端側の部分との境界部28Aがコイル30で覆われるため、境界部28Aの近傍で長軸方向Xに沿って剛性が大きく変化することを抑制できる。境界部28Aでの応力集中による芯材20の折れ曲がりを抑制できるため、ガイドワイヤ10は、ガイドワイヤ10の基端に加えられたトルクや押し込み力をガイドワイヤ10の先端まで伝達することができる。また、ガイドワイヤ10は、血管選択時にプロラプスが生じにくくなるため、カテーテル100の送達性が向上する。
また、コイル30の基端の位置は、ガイドワイヤ10の長軸方向Xにおいて、形状付け部28の基端の位置から10mm以上基端側にある。これにより、ガイドワイヤ10の剛性の変化が生じる部分であるコイル30の基端の位置と形状付け部28の基端の位置が、長軸方向Xに沿って分散する。そのため、ガイドワイヤ10は、長軸方向Xに沿って剛性が大きく変化することが抑制できる。その結果、ガイドワイヤ10は、局所的な折れ曲がりを抑制できる。
また、芯材20の先端部は、長軸方向Xに沿って外径が一定の外径一定部21と、外径一定部21の基端に接続されて基端側へ向かって外径が大きくなる移行部22と、を有し、コイル30は、外径一定部21と移行部22との接続部27を覆っている。コイル30が芯材20の外径一定部21と移行部22との接続部27を覆うことで、ガイドワイヤ10は、長軸方向Xに沿う剛性の変化率が一定に近づく。このため、ガイドワイヤ10は、先端部に柔軟性を有しつつ、局所的な折れ曲がりを抑制できる。
また、形状付け部28の基端は、移行部22にある。形状付け部28の基端部の外径が太くなることで、ガイドワイヤ10は、形状付け部28の基端近傍において折れ曲がりにくくなる。
また、形状付け部28は、長軸方向Xにおいて、形状付け部28の全体がコイル30により覆われている。すなわち、コイル30の先端は、長軸方向Xにおいて、形状付け部28の先端と一致し、または、形状付け部28の先端よりも先端側に位置する。そして、コイル30の基端は、長軸方向Xにおいて、形状付け部28の基端と一致し、または、形状付け部28の基端よりも基端側に位置する。剛性の低い形状付け部28の全体をコイル30で覆うことで、形状付け部28の剛性を補うことができる。このため、ガイドワイヤ10の局所的な折れ曲がりを効果的に抑制できる。また、ガイドワイヤ10は、形状付け部28を塑性変形させる際に、コイル30も塑性変形させることができる。このため、ガイドワイヤ10は、形状付け部28への形状付けが容易になるとともに、形状付け部28に付与された形状を効果的に維持できる。
また、コイル30の先端の位置は、形状付け部28の先端の位置と長軸方向Xにおいて一致している。これにより、ガイドワイヤ10は、血管選択に重要な芯材20の先端の形状付けが容易になるとともに、付与された形状を効果的に維持できる。
また、形状付け部28は、芯材20を熱処理することで形成される。熱処理は、芯材20の超弾性を低下または失わせると同時に、剛性を低下させる。このため、ガイドワイヤ10は、芯材20に形状付け部28を容易に形成でき、ガイドワイヤ10の先端部の柔軟性を向上できる。
また、コイル30を形成する線材は、X線不透過性を有する材料により形成されている。これにより、術者が、ガイドワイヤ10の先端の位置をX線透視下で容易に把握できる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、ガイドワイヤ10は、脈管、尿管、胆管、卵管、肝管等の血管以外の生体管腔に挿入されてもよい。
10 ガイドワイヤ
20 芯材
21 外径一定部
22 移行部
23 本体部
24 第1移行部
25 第2移行部
26 第3移行部
27 接続部
28 形状付け部
28A 境界部
29 超弾性部
30 コイル
40 樹脂被覆層
50 親水性潤滑層
X 長軸方向
20 芯材
21 外径一定部
22 移行部
23 本体部
24 第1移行部
25 第2移行部
26 第3移行部
27 接続部
28 形状付け部
28A 境界部
29 超弾性部
30 コイル
40 樹脂被覆層
50 親水性潤滑層
X 長軸方向
Claims (8)
- 基端部および先端部を有する超弾性金属を含む芯材と、
前記芯材の先端部の外表面に密着するように線材を巻回して形成されたコイルと、
前記芯材および前記コイルを被覆する樹脂被覆層と、を有し、
前記芯材の先端部は、当該芯材に湾曲形状を付与可能な形状付け部を有し、
前記コイルは、前記形状付け部の基端を覆っていることを特徴とするガイドワイヤ。 - 前記コイルの基端の位置は、前記形状付け部の基端の位置から10mm以上基端側にあることを特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤ。
- 前記芯材の先端部は、長軸方向に沿って外径が一定の外径一定部と、前記外径一定部の基端に接続されて先端から基端へ向かうにつれて外径が大きくなる移行部と、を有し、
前記コイルは、前記外径一定部と前記移行部との接続部を覆うことを特徴とする請求項1または2に記載のガイドワイヤ。 - 前記形状付け部の基端は、前記移行部にあることを特徴とする請求項3に記載のガイドワイヤ。
- 前記形状付け部は、長軸方向において、前記形状付け部の全体が前記コイルにより覆われていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
- 前記コイルの先端の位置は、前記形状付け部の先端の位置と長軸方向において一致することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
- 前記形状付け部は、前記芯材を熱処理することで形成されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
- 前記コイルを形成する線材は、X線造影性を有する材料により形成されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のガイドワイヤ。
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