JP2023006634A - 樹脂成形品、カメラ、金型、および樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 加工機を用いて表面に微細な凸部を形成して所望の光沢度を再現する樹脂成形品において、光沢度の再現と製造時間の短縮化を両立した樹脂成形品を提供すること【解決手段】 第1の領域と、第2の領域を有し、前記第1の領域と前記第2の領域は、それぞれ複数の凸部が形成されており、前記第1の領域の凸部の平均直径は、前記第2の領域の凸部の平均直径よりも大きいことを特徴とする【選択図】 図5
Description
本発明は、外観面に凸部や光沢のパターンを有する樹脂成形品に関する。
近年カメラやプリンタ等の工業製品に使用される樹脂成形品の外観面には、高い意匠性が求められる。例えば、成形品表面を平滑化することで鏡面のような光沢をもたせ高級感を演出したり、逆に成形品表面に視認できないレベルの微細な凸部を設けることでマットな質感を演出したりすることが出来る。これらの成形品は、一般的には金型を用いた射出成形法等により制作するため、光沢を制御するための金型の表面加工が重要になる。前者の場合は研磨加工、後者の場合はエッチング加工やブラスト加工、あるいは切削やレーザーによる微細凸部加工を行うこととなる。例えば特許文献1では、2段階のエッチングを行うことで、深さや大きさが異なる凸部形状を有した金型を作成し、マット調を再現した樹脂成形品を提供する技術が開示されている。また、特許文献2では異なる光沢度を再現するために、切削加工により表面粗さの異なる微細凸部を形成した金型を用いて作成した樹脂成形品を提供する技術が開示されている。
しかしながら、近年製品デザインに対する多様性が求められており、同じ艶消しの光沢であっても少し光沢を高くしたい、あるいはより低く調整したいという要求が出ることがある。
このような場合、微細凸部の表面粗さを制御する必要があるが、特許文献1方法では、エッチング処理工程におけるエッチングレートはエッチング液中に存在するイオンの種類や濃度によって敏感に反応してしまうことがあった。そのため、処理温度と時間を同じにしても、同じ処理結果が得られないことがあった。その結果微妙な光沢値の調整に十分に対応ができないことがあった。また、特許文献2の方法では、マット調を再現するためには表面を荒らすための微細凸部を加工する必要がある。このとき、金型全面にわたり一律なサイズで微細な凸部を加工する必要があり、加工面積が大きくなると加工かかる時間が増大になるという課題があった。
そこで本発明では、光沢度の再現と製造時間の短縮化を両立した樹脂成形品を提供することを目的とする。
本発明の樹脂成形品は、第1の領域と第2の領域を有し前記第1の領域と前記第2の領域は、それぞれ複数の凸部が形成されており、前記第1の領域の凸部の平均直径は、前記第2の領域の凸部の平均直径よりも大きいことを特徴とする。
本発明のカメラは、上記の樹脂成形品によるカバーを有することを特徴とする。
本発明の金型は、第1の領域と第2の領域を有し、前記第1の領域には窪みが形成され、前記第1の領域の窪みの表面と、前記第2の領域の表面には、それぞれ複数の凹部が形成されており、前記第1の領域の凹部の平均直径は、前記第2の領域の凹部の平均直径よりも大きいことを特徴とする。
本発明の樹脂成形品の製造方法は、上記の金型に樹脂を射出することにより樹脂成形品を製造することを特徴とする。
本発明によれば、樹脂成形品の外観面において、所望の光沢を表現し、且つ製造に係るコストを低減した樹脂成形品を提供することが出来る。
まず本明細書において、凸部とは、半球形状、円錐形状、角錐形状、角錐台等の種々の形状を採り得る。凸部の平面視は、例えば円形状のドットであるが、各凸部の平面視における形状が真円形状に限定されないことは、言うまでもない。複数の凸部のそれぞれの平面視における形状は、楕円形状、歪んだ円形状、多角形状あるいは不定形状等であってもよい。なお、本明細書において、平面視における凸部の形状とは、成形品の表面に平行な平面に凸部を投影したときの外縁の形状を指す。凸部の平面視における形状が円形状以外である場合、凸部の直径とは、凸部の外縁を包摂する仮想的な円の直径のことをいう。
[第1の実施形態]
本発明の一実施形態である第1の実施形態の説明に先立って、光沢度を制御する考え方について説明する。
本発明の一実施形態である第1の実施形態の説明に先立って、光沢度を制御する考え方について説明する。
光沢度の制御は、ヒトの視覚では凸部として視認できないような、高さ数μm~15μm程度の微細な凸部を表面に複数形成する。図1は、本発明における樹脂成形品の光沢制御方法を模式的に示した図である。具体的には、樹脂成形品の上に形成された微細な凸部の状態(拡大模式図)と、該凸部の状態における単位面積あたりの法線方向の分布を表す法線ヒストグラムと、光沢強度との関係を模式的に表した図である。図1(a)のように、樹脂成形品の表面に凸部がない場合、法線方向は全て図中の上向きを示している。このようなとき、法線ヒストグラムは0度方向の頻度が極端に多くなる。このような場合、平面に入射される光はほぼ全て正反射方向に反射するため正反射強度が強くなり高光沢な面として認識される。一方、図1(b)のように、平面上に1つの凸部が配置された場合、凸部の表面は様々な法線を有するため、法線ヒストグラムは平面(図1(a))と比較して分散が大きくなる。このような場合、凸部に入射した光の分だけ散乱が起きるため、正反射方向に反射する光の量は平面(図1(a))に対して低下し、光沢度がやや低い面となる。また、図1(c)のように、凸部の割合が増加した場合、図1(b)の状態と比較して平面の割合が低下する。このような場合、0度方向の法線の頻度が低下し、凸部表面の様々な法線の頻度が増加するため、法線ヒストグラムはより分散が大きくなる。その結果、正反射方向に反射する光の量は、凸部で散乱する割合が多くなるため、図1(b)よりもさらに低下する。さらに、図1(d)のように、凸部の割合は変わらずに凸部の高さが大きくなる場合、法線ヒストグラムの分散が図1(c)と比べて大きくなる。このとき、凸部による散乱の度合いが大きくなり、図3(c)よりも光沢度が低くなる。一方、図1(e)は、図1(d)の相似形の凸部が形成された場合である。このとき、単位面積に占める凸部の割合は変わらないが、1つの凸部の大きさ(直径)が大きくなっているため、凸部の数が減少している。ただし、(d)と(e)は相似形であるため、法線ヒストグラムは図1(d)と同じとなる。そのため、正反射方向に反射する光の量は図3(d)と同等であるため、光沢度はほぼ一致した値となる。
ところで、一般に視力1.0のヒトが観察距離60cmの視距離で物を観察する場合の識別分解能は、約170μmである。従って、凸部の平面視における直径170μmの円の面積(約23000μm2)以上となった場合は、一つ一つの凸部が肉眼で形状として識別されてしまう。つまり、直径170μmの円を超える大きさになると一つ一つの凸部が肉眼で識別され易くなり、その結果外装面がざらついた面として認識されることがあり好ましくない。このため、図1(e)のような大きな凸部はヒトに視認される可能性があり好ましくない。従って、微細な凸部による光沢度制御では、図1(a)~(d)のように視認できないサイズで凸部の大きさや単位面積当たりの割合を適宜変更することにより所望の光沢度を再現することが好ましいと考えられる。なお、前述したように、凸部の平面視における形状が円形状以外である場合、本明細書における凸部の直径とは、凸部の外縁を包摂する仮想的な円の直径のことである。
このように樹脂成形品に微細な凸部を形成するためには、所望の光沢度を再現するための凸部に基づいて、金型の母材表面を1か所ずつ順番に局所的に加工して多数の凹部を形成してゆき、最終的に所望形状の成形面が構成されるようにする。具体的には、図2(a)の模式的な斜視図に示すように、金型の母材200に対して、エンドミル203を回転させながら接触させて切削加工あるいはレーザーによる加工等を行い、成形面となる面201に凹部を形成してゆく。図中に点線で示す円の各々は、凹部を形成する所定位置(切削加工位置)を示し、便宜的にXY座標を用いてD(1、1)~D(6、4)のように表記している。尚、図示の便宜のため24箇所の加工位置のみを示しているが、実際にははるかに多数の加工位置に凹部を形成する。例えば各所定位置にて切削加工を行う際には、エンドミル203の回転軸が当該所定位置の中心を通るように、母材200とエンドミル203の相対位置を設定する。図2(b)は、切削加工後の金型210を、図2(a)のC1-C1線に沿ってXZ面に沿って切断した断面図である。D(1、2)~D(6、2)に対応する所定位置には、切削加工により凹部であるH(1、2)~H(6、2)が形成されている。各凹部の中心線であるAx(1、2)~Ax(6、2)は、所定の加工位置であるD(1、2)~D(6、2)の中心を通っている。図3(a)および図3(b)は、多数の所定位置に対して切削加工を行う順番、すなわちエンドミル203の回転軸を母材200に対して相対移動させる経路の例を示す模式図である。
図3(a)の例では、まず矢印sc1に沿って、X方向に隣り合うD(1、1)からD(6、1)までの各所定位置にて順に切削加工してゆく。次に、エンドミルを一旦X軸マイナス方向に回帰させるとともにY軸プラス方向に移動させる。そして、矢印sc2に沿って、X方向に隣り合うD(1、2)からD(6、2)までの各所定位置にて順に切削加工してゆく。以下同様に、矢印sc3に沿ってX方向に隣り合うD(1、3)からD(6、3)を、さらに矢印sc4に沿ってX方向に隣り合うD(1、4)からD(6、4)を、この順に切削加工してゆく。
また、図3(b)の例では、まず矢印sc1に沿って、X方向に隣り合うD(1、1)からD(6、1)までの各所定位置にて順に切削加工してゆく。次に、エンドミルをY軸プラス方向に移動させる。そして、矢印sc2に沿って、X方向マイナス側に隣り合うD(6、2)からD(1、2)までの各所定位置にて順に切削加工してゆく。以下同様に、矢印sc3に沿ってX方向プラス側に隣り合うD(1、3)からD(6、3)を、さらに矢印sc4に沿ってX方向マイナス側に隣り合うD(6、4)からD(1、4)を、この順に切削加工してゆく。
図3(b)は順に切削加工していく例を示したが、これに限ることはなく、例えばランダムに切削加工してもよい。
このように、所望の光沢度となるように金型を加工するためには、エンドミルの移動と加工を繰り返し行う必要があり、加工面積に応じて加工時間が増大化してしまう。例えば、2cm四方の金型全面に、直径が170μmに凹部を加工する場合、約40時間かかることになる。
一方、ヒトは表面にある程度の凸部や急峻な曲面を有している場合、凸部や曲面の形状を注視するため、微細な凸部への感度が低くなり、凸部の視認性が低減する傾向がある。凸部や曲面を特徴づけるパラメータとして曲率半径がある。ここで、曲率半径とは、測定などにより得られた形状データに接する円で近似を行った時の円の半径である。例えば、図11(A)に示すように、比較的滑らかな形状の場合、曲率半径の値は大きく、凸部が急峻に変化する場合、曲率半径の値は小さくなる。前述の微細な凸部への感度について、発明者らが、曲率半径の異なる形状それぞれに対して微細凸部を付与して視認性の変化に関する実験を行った。その結果、図11(A)に示すような曲率半径が数センチの形状に対しては、凸部の平面視における直径170μmの円(面積約23000μm2)以上となった場合は、一つ一つの凸部が肉眼で形状として識別されてしまった。一方で、図11(B)に示すような曲率半径が1.0mm未満の曲面については、凸部の平面視における直径170μmの円(面積約23000μm2)以上であっても視認されづらいことが分かった。より詳細には、曲率半径が1.0mm未満の形状においては、凸部の直径が300μm以下、高さが50μm以下のサイズであれば、視認性が低下されることを確認した。本実施形態では上記特性に基づいて、曲率半径が1.0mm未満の形状を有する第1の領域と、曲率半径が1.0mm以上の第2の領域とに分割する。そして、第1の領域に形成する凸部は、第2の領域に形成する凸部に比べて、単位面積当たりの数が少ない。あるいは、凸部の直径が大きくなるように形成することで、同等の光沢を保持しながら、製造コストを低減した樹脂成形品を提供することが可能であることを見出したものである。言い換えれば、第1の領域の凸部の平均直径は、第2の領域の凸部の平均直径に比べて大きい。本明細書において、第1の領域の凸部の平均直径とは、第1の領域に存在する凸部のうち少なくとも10個の凸部の直径を計測し、その平均の長さとする。第2の領域の凸部の平均直径とは、第2の領域に存在する凸部のうち少なくとも10個の凸部の直径を計測し、その平均の長さとする。
なお、樹脂成形品から第1の領域と、第2の領域とを分割するための曲率半径の算出方法は形状データに基づいて行う。具体的には、白色干渉計を用いて得られた測定データに対して、縦1mm×横1mmの範囲で形状データを抽出し、高周波成分を除去した低周波な形状から曲率半径を算出して求めることができる。例えば、まず、ZYGO社の3次元光学プロファイラーNewView7000を用いて、10倍の対物レンズを装着し得られた測定データを取得する。続いて、取得された測定データの1mm×1mmの範囲を抽出し、ローパスフィルタを掛けることで高周波成分を除去することが出来る。ローパスフィルタは、例えば公知のガウシアンフィルタにおいて、形成される凸部の情報が除去できるフィルタサイズとして、例えば標準偏差を0.2mmに設定して算出すればよい。その後、得られた低周波な形状に接するような円で近似を行い、近似された円の半径を算出し曲率半径を取得すればよい。
なお、同様に上記で述べた凸部の高さ、及び直径は、例えば白色干渉計を用いて測定することが可能である。例えば、ZYGO社の3次元光学プロファイラーNewView7000を用いて、10倍の対物レンズで樹脂成形品の1.0mm×1.4mmの領域を10箇所測定した値の高さ方向の平均値及び幅の平均値を、凸部の平均高さ及び平均直径とみなしてもよい。あるいは単に、凸部の高さ、及び直径とみなしてもよい。
[第2の実施形態]
図4は、本発明の実施形態の一例として、本発明の樹脂部品を用いた電子機器の一例として、カメラの外装に用いる樹脂部品を例示する。図4において、カメラ4は例えばレンズ交換型カメラであり、筐体40の側面には、記録媒体を格納するためのカバー41を有している。さらにカバー41には、開閉を容易にするために数ミリ程度の大きさの凸部が形成されている。カバー41の外装は、所定色、例えば黒色の樹脂で成形されている。
図4は、本発明の実施形態の一例として、本発明の樹脂部品を用いた電子機器の一例として、カメラの外装に用いる樹脂部品を例示する。図4において、カメラ4は例えばレンズ交換型カメラであり、筐体40の側面には、記録媒体を格納するためのカバー41を有している。さらにカバー41には、開閉を容易にするために数ミリ程度の大きさの凸部が形成されている。カバー41の外装は、所定色、例えば黒色の樹脂で成形されている。
図5(a)は実施形態の樹脂成形品であるカバー41の外観面51を模式的に示す平面図である。外観面51は、カバーの開閉を行いやすくするために、曲率半径が数ミリ程度のかまぼこ形状の突起54が複数形成された第1の領域511と、第1の領域511を除いた第2の領域512とで構成されている。第1の領域511と第2の領域512とは、全体的な印象の相違がないように、光沢度が同等となるように付与された微細な凸部が多数設けられている。図5(b)は、図5(a)の破線52の位置で切断した模式的な拡大断面図である。凸部53は第2の領域512の表面に形成された微細な凸部であり、凸部55は、凸部が形成された第1の領域511における、複数の突起54の表面に形成された凸部である。なお、本実施形態では説明のため、全ての突起54は曲率半径1.0mm未満で近似できることとする。また第1の領域511には、光沢度を制御するパターンとして、微細な凸部55が形成されている。凸部53及び凸部55は共に目に見えない程度に小さい凸部であるが、前述のとおり、領域の曲率半径の程度に応じて、視認性の感度が変化することを利用して大きさと数が異なる特徴を有している。具体的には、第2の領域512に形成されている凸部53の平均直径が第1の領域511に形成されている凸部55の平均直径より小さい。また、第2の領域512に形成されている凸部53は、単位面積当たりの凸部の数が、第1の領域511に形成されている凸部の数よりも多いことを特徴としている。より詳細には、凸部53の高さは20μmより小さく、凸部55の高さは20μm以上70μm未満となるように形成されている。なお、前記高さは法線方向における距離であることとする。なお、前記高さの場合、凸部53の平面視の直径は170μm以下であり、凸部55の平面視の直径170μmより大きく、300μm以下となる。なお、単位面積とは微細な凸部により人が光沢として知覚できる最小単位のことであり、例えば縦1mm×横1mmの範囲とする。
なお、第1の実施形態でも説明した通り、樹脂成形品から第1の領域511と、第2の領域512とを分割するための曲率半径の算出方法は形状データに基づいて行う。具体的には、白色干渉計を用いて得られた測定データに対して、縦1mm×横1mmの範囲で形状データを抽出し、高周波成分を除去した低周波な形状から曲率半径を算出して求めることができる。例えば、まず、ZYGO社の3次元光学プロファイラーNewView7000を用いて、10倍の対物レンズを装着し得られた測定データを取得する。続いて、取得された測定データの1mm×1mmの範囲を抽出し、ローパスフィルタを掛けることで高周波成分を除去することが出来る。ローパスフィルタは、例えば公知のガウシアンフィルタにおいて、形成される凸部53、55の情報が除去できるフィルタサイズとして、例えば標準偏差を0.2mmに設定して算出すればよい。その後、得られた低周波な形状に接するような円で近似を行い、近似された円の半径を算出し曲率半径を取得すればよい。
なお、同様に上記で述べた凸部の高さ、及び直径は、例えば白色干渉計を用いて測定することが可能である。例えば、ZYGO社の3次元光学プロファイラーNewView7000を用いて、10倍の対物レンズで樹脂成形品の1.0mm×1.4mmの領域を10箇所測定した値の高さ方向の平均値及び幅の平均値を、凸部の平均高さ及び平均直径とみなしてもよい。あるいは単に、凸部の高さ、及び直径とみなしてもよい。
また、第1の領域511と第2の領域512の光沢度は、JIS Z 8741の反射角60°の鏡面光沢度(60度鏡面光沢度)に基づく測定結果を用いる。発明者の実験によれば各領域の60度光沢度の差の絶対値が5.0以下である場合、2つの領域の光沢感は違和感がないレベルで一致していた。そこで、例えば、日本電色工業株式会社製のハンディ型光沢計PG-1Mを反射角60°に設定して得られた測定結果の差分絶対値を算出して、光沢度が同等であるか否かの判断を行うことが出来る。
なお、後述の手法で製造される金型により製造される樹脂部品の樹脂としては、例えばABSやHIPS(ハイインパクトポリスチレン)などが考えられるが、特に樹脂の組成や名称によって本発明が限定されるものではないのはいうまでもない。
(金型の製造方法)
次に、本実施形態における樹脂成形用の金型の製造方法について説明する。
次に、本実施形態における樹脂成形用の金型の製造方法について説明する。
図6は、実施形態に係わる金型を製造するマシニングセンタを示す図である。マシニングセンタ60は、加工機本体61と、制御装置62とを有する。樹脂を注入するキャビティは、金型の一部を構成する複数の駒(キャビティ駒と称する場合がある)によって形成されていてもよい。キャビティを駒によって形成すると、複雑な形状の成形品であっても、転写面を分割して加工することができるため、金型の製造コストを削減することができる。
加工機本体61は、加工対象物である金型(キャビティ駒)の母材63に切削加工を施して、金型を製造するものである。加工機本体61は、切削工具64を支持する主軸であるスピンドル65、Xステージ66、Yステージ67及びZステージ68を有する。
切削工具64はエンドミルを使用することが好ましい。スピンドル65は、切削工具64をZ軸まわりに回転させる。Zステージ68は、スピンドル65を支持し、切削工具64を、加工対象である母材63に対してZ方向に移動させる。同様に、Xステージ66は、母材63に対して切削工具64をX方向に、Yステージ67は、母材63をY方向に移動させる。よって、加工機本体61は、切削工具64を回転させながら、切削工具64の先端を母材63に対して相対的にXYZ方向に移動させることができる。
制御装置62は、CPU及びメモリ等を有するコンピュータで構成され、加工機本体61をNCデータ69に基づいて制御する。NCデータ69には、X方向の移動量、Y方向の移動量、Z方向の移動量、主軸の回転速度、X方向の送り速度、Y方向の送り速度、Z方向の移動速度などの切削加工で使用する各種の指令が含まれている。制御装置62の制御により、切削工具64を回転させながら加工対象である母材63に対して相対的に移動させることにより、母材63にNCデータ69に基づく三次元形状を切削加工することができる。
図7(A)は、金型63を製造する第1の加工工程を、また、図7(B)は第2の加工工程を示している。また、図8(A)、図8(B)は、金型63を製造する第3の加工工程を示している。
まず、図7(A)に示す第1の加工工程では、金型63の表面71を荒加工する。図7に示すマシニングセンタに切削工具としてラジアスエンドミル72を用い、ラジアスエンドミル72を回転させながら切り込み走査を行ことにより金型63の表面71を切削する。その際、表面71を第2の加工工程で平滑にするときの手間を省くため、第1の加工工程で平面度が3μm以下程度に加工することが好ましい。
図7(B)の第2の加工工程では、金型63の表面71を回転式研磨工具73とダイヤモンドペーストを使って鏡面加工する。ここで、第3の加工工程で凹部81および83を加工した時に、凹部81および83の深さに差が出ないよう、第2の加工工程で表面71の平面度を1μm以下程度に加工することが好ましい。
第3の加工工程では、図8(A)、(B)に示すように、図7(B)に示す鏡面加工した金型63の表面71にボールエンドミル82を使って加工を行う。ここで、射出成形により樹脂部品に転写された際に、前述の図5の第1の領域511となる突起54となる加工が図8(A)、光沢を制御するための微細な凸部53あるいは55となる加工が図8(B)に相当する。
図8(A)に示すように、射出成形後に第1の領域511に相当する金型の第1の領域83の加工では、まず、ボールエンドミル82を回転させながら切り込み走査させ、窪み81を形成する。窪み81は、樹脂部品に転写されると突起54となり、その深さは、後で説明する微細加工で加工される深さよりも深く、凸部54の高さにほぼ相当する大きさである。なお、射出成形後に第2の領域512となる金型の第2の領域84については、窪み81の加工は行わない。
続いて、光沢制御のための微細な凸部となる加工は、図8(B)に示すように行う。まず、領域83に関しては、窪み81の表面にボールエンドミル82を回転させながら切込み操作させ、所定の深さとなるまで凹部85を形成する。凹部85は、樹脂成形品に転写されると凸部55となり、凸部55の高さにほぼ相当する大きさである。一方領域84については、所定の深さとなるまで凹部86を形成する。凹部86は、樹脂成形品に転写されると凸部53となり、凸部53の高さにほぼ相当する大きさである。ここで、凹部85及び凹部86の深さは、予め深さと単位面積当たりの数を変化させることで得られる光沢度との関係を保持しておき、所望の光沢度から逆引きによって算出する。本実施形態では、深さを1~200μm、1mm2当たりの凸部の数を4~625個と変化させたときの光沢度をモンテカルロレイトレーシングを用いたシミュレーションによって算出した。得られた結果を図9に示す。なお、艶消しレベルの高い低光沢を再現するために、1mm2に占める凸部の割合は90%以上としている。図9では深さと数に対応した60光沢度を、5.0ごとに色を変化させた等高線である。白に近いほど艶消しレベルが低く(高光沢)、黒に近いほど艶消しレベルが強い(低光沢)であることを示している。この結果に基づいて、所望の光沢度を再現する組み合わせの中で、領域83に関しては、凹部の深さが20μm(幅が170μm)から70μm(幅が300μm)の範囲で数が最小となるパラメータの組み合わせを選択する。本実施形態では破線で囲まれた領域91を選択した。また、領域84に関しては、所望の光沢度を再現しかつ、凹部の深さが20μm未満となるパラメータの組み合わせを選択する。本実施形態では破線で囲まれた領域92を選択した。なお、選択したパラメータの組み合わせを加工可能な十分な面積を凸部53が有していない場合、加工可能なパラメータの組み合わせになるように選択するパラメータを変えてよい。
これにより、金型の前記第1の領域の凹部の平均直径と、金型の第2の領域の凹部の平均直径が求められるが、金型の前記第1の領域の凹部の平均直径は、金型の前記第2の領域の凹部の平均直径よりも大きい。
なお、図8(B)の加工では、必要に応じて図8(A)の加工のときとは異なる刃形を有するボールエンドミル82に刃物を交換してもよい。
上記の加工の対象である金型63の材料としては、加工性や射出成形の耐久性の観点からステンレス鋼などが好適であるが、金型の材料は任意であり、真鍮や鋼材、その他の任意の材料を用いてよい。
以下では、実施例として、上記のような基本構成を有する樹脂部品の種々に異なる構成あるいはその製造手法につき説明する。
<実施例1>
図10は、本実施例1に係わる樹脂成形品の外観面を表す模式的な平面図である。また、図10(b)は、図10(a)における破線101の位置で切断した模式的な断面図、図10(c)は、図10(a)における破線102の位置で切断した模式的な断面図を示している。
図10は、本実施例1に係わる樹脂成形品の外観面を表す模式的な平面図である。また、図10(b)は、図10(a)における破線101の位置で切断した模式的な断面図、図10(c)は、図10(a)における破線102の位置で切断した模式的な断面図を示している。
実施例1では、厚さ1.6mm、図10に示す板状の樹脂成形品100に対して、中央付近に曲率半径0.8mmの凸部が形成された第1の領域103と、第1の領域103を除く第2の領域104(曲率半径は1.00mm以上)とを形成した。本実施例では第2の領域104では、図10(b)に示すように、各々の凸部の高さは10μmであり、平均直径は90μmとなるようにし、全部で128,483個の凸部を形成した。微細な凸部を形成することで外観面は艶消し面(低光沢)となり、日本電色工業株式会社製のハンディ型光沢計PG-1Mを用いて測定したところ、約11.0となった。一方、第1の領域103は図10(c)に示すように、曲率半径0.8mmの凸部の表面に凸部の高さが50μm、平均直径は270μmとなるようにした。その結果、第1の領域103全体では全部で2072個の凸部を形成した。これは、領域103全面に領域104と同等の凸部を形成する場合に比べて、約89%凸部の数が削減されている。なお、領域103を日本電色工業株式会社製のハンディ型光沢計PG-1Mを用いて測定したところ、約7.9となり、前記領域104との差は5.0以下であった。
本実施例では、樹脂成形品を射出成形するのに用いる金型の材料には、ステンレスを使用した。図6に示すマシニングセンタにラジアスエンドミルを取り付け、図7(A)を参照して説明した粗加工を行い、さらに、回転式研磨工具とダイヤモンドペーストを用いて図7(B)を参照して説明した鏡面加工を施した。その後、直径が200μmのボールエンドミルを用いて、図8を参照して説明したように、曲率の低い、シボに相当する領域での凹部の形成を行い、その後、微細凹部の切削加工を行い、凹部を形成した。なお、微細凹部の加工にかかる時間は、全面に凹部を形成する場合と比較して、13時間削減することが出来た。
この金型を用いて射出成形を行い、樹脂成形品103を得た。尚、樹脂材料は黒色のHIPSを使用した。得られた黒色の樹脂成形品の外観面について平均的な視力の人による観察を行い、凸部の視認性の有無について評価した。その結果、60cmからの観察では樹脂成形品の全ての位置で凸部が視認されにくいことを確認することが出来た。
<他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
本発明は、以上説明した実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
例えば、実施形態では第1の領域はすべて曲率半径が1.0mmの凸部として説明をしたが、曲率半径が1.0mm以上の凸部が存在した場合は、その部分には凸部53を形成してよい。
また、第2の実施形態はレンズ交換式カメラのカバーに対して適用したが、適用する形状はこれに限らない。曲率半径が1.0mmで急峻に変化する領域であれば、実施形態と同様にヒトは微細な突起の感度が低下する。
また、実施形態は凸形状に対して大きな凸部を形成するものとして説明を行ったが、曲率半径が1.0mm未満であれば凹部に適用することが可能である。この場合、曲率半径が小さい凹部に大きくて数の少ない凸部が形成され、曲率の大きい領域に小さくて数の多い凸部が形成される。
また、本実施形態は、曲率半径が1.0mm未満を閾値として2つの領域に分割することとして説明を行ったが、領域の数は2つに限定されるものではない。例えば、曲率半径の値に応じて、3つ以上の領域に分割することが可能である。この場合、曲率半径が小さい領域ほど凸部の数が大きく、数が少ないという特徴を有することとなる。
41 カバー
51 外観面
53 第2の領域の凸部
54 突起
55 第1の領域の凸部
511 第1の領域
512 第2の領域
51 外観面
53 第2の領域の凸部
54 突起
55 第1の領域の凸部
511 第1の領域
512 第2の領域
Claims (11)
- 第1の領域と第2の領域を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域は、それぞれ複数の凸部が形成されており、
前記第1の領域の凸部の平均直径は、前記第2の領域の凸部の平均直径よりも大きいことを特徴とする樹脂成形品。 - 前記第1の領域は、曲率半径が1.0mm未満であり、前記第2の領域は曲率半径が1.0mm以上であることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品。
- 前記第1の領域と第2の領域の60度光沢度の差が5.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形品。
- 前記第1の領域の凸部の平均直径は、170μmより大きく300μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の樹脂成形品。
- 前記第2の領域の凸部の平均直径は、170μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の樹脂成形品。
- 前記第1の領域の凸部の平均高さは、20μm以上70μm未満であることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の樹脂成形品。
- 前記第2の領域の凸部の平均高さは、20μmより小さいことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の樹脂成形品。
- 請求項1乃至7いずれか1項に記載の樹脂成形品によるカバーを有するカメラ。
- 第1の領域と第2の領域を有し、
前記第1の領域には窪みが形成され、
前記第1の領域の窪みの表面と、前記第2の領域の表面には、それぞれ複数の凹部が形成されており、
前記第1の領域の凹部の平均直径は、前記第2の領域の凹部の平均直径よりも大きいことを特徴とする金型。 - 前記第1の領域は、曲率半径が1.0mm未満であり、前記第2の領域は曲率半径が1.0mm以上であることを特徴とする請求項9に記載の金型。
- 請求項9に記載の金型に樹脂を射出することにより樹脂成形品を製造することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
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