JP2023005070A - ポリエステル樹脂、およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルカリ易溶性に優れるとともに、糸質特性(強度、伸度)にも優れる繊維を、操業性よく得ることができるポリエステル樹脂を提供する。【解決手段】金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸をジカルボン酸成分として含み、数平均分子量が500~15000のポリエーテル化合物を5~25質量%含むポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂のグリコール成分が、エチレングリコールを主たる成分として含むとともに、トリエチレングリコールの含有量が0.5~5.5モル%である。グリコール成分としてジエチレングリコールを含み、ジエチレングリコールの含有量が2.5モル%以上であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル樹脂、およびその製造方法に関する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステル樹脂は、機械的特性、化学的特性に優れており、広範な分野(例えば、衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用等のフィルムまたはシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等)において使用されている。
各種用途のなかでも、アルカリ易溶性を有する繊維用途向けのポリエステル樹脂として、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸とポリエーテル化合物とを含有するものが知られている(例えば、特許文献1)。
特開2008-156453号公報
特許文献1においては、金属系の重縮合触媒が用いられていることから、重合時の金属の析出による操業性や糸質特性の低下、または色調不良という問題がある。また、金属系の重縮合触媒を用いると、アルカリ溶解時に触媒由来の重金属が溶出し、環境等への影響が懸念される。そのため、有機系触媒を用いたポリエステル樹脂も検討されている。
そして近年では、アルカリ易溶性、強度および伸度等の糸質特性がいっそう向上されたポリエステル樹脂が望まれている。
本発明の目的は、アルカリ易溶性、繊維とするときの操業性や、繊維としたときの糸質特性に優れ、アルカリ溶解時の重金属の溶出を抑制し得るポリエステル樹脂を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討の結果、所定量のポリエーテル化合物を含み、ジカルボン酸成分として金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含むとともに、グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量が特定範囲である本発明のポリエステル樹脂は、アルカリ易溶性に優れ、繊維としたときの強度や伸度等の糸質特性にも優れることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、以下(1)~(6)の通りである。
(1)金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸をジカルボン酸成分として含み、数平均分子量が500~15000のポリエーテル化合物を5~25質量%含むポリエステル樹脂であって、ポリエステル樹脂のグリコール成分が、エチレングリコールを主たる成分として含むとともに、トリエチレングリコールの含有量が0.5~5.5モル%である、ポリエステル樹脂。
(2)グリコール成分としてジエチレングリコールを含み、ジエチレングリコールの含有量が2.5モル%以上であることを特徴とする、(1)のポリエステル樹脂。
(3)ジカルボン酸成分中、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸の含有量が0.5~5.5モル%であることを特徴とする、(1)又は(2)のポリエステル樹脂。
(4)金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸以外の硫黄成分の含有量が5~100ppmである、(1)~(3)の何れかのポリエステル樹脂。
(5)(1)~(4)の何れかのポリエステル樹脂からなる、繊維。
(6)請求項1~4の何れか1項に記載のポリエステル樹脂を製造する方法であって、
ポリエステル原料に対して有機スルホン酸系化合物を添加し、常圧または加圧下において、240℃以上の温度で5~120分加熱して、グリコール成分のエーテル化反応を行う工程を含む、ポリエステル樹脂の製造方法。
本発明のポリエステル樹脂によれば、アルカリ易溶性に優れるとともに、強度や伸度等の糸質特性に優れる繊維を、操業性よく得ることができる。
以下、本発明のポリエステル樹脂を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含有する。金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を共重合することにより、ポリエステル樹脂にアルカリ易溶性を付与することができる。
ポリエステルを構成する全酸成分の合計量を100モル%とするとき、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸の含有量は、0.5~5.5モル%であることが好ましく、0.8~5モル%であることがより好ましい。
金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸の含有量が0.5モル%未満である場合は、ポリエステル樹脂を用いて繊維としたときに、十分なアルカリ易溶性が得られない場合がある。一方、含有量が5.5モル%を超えると、重縮合工程においてポリエステルの溶融粘度が高くなりすぎる傾向にあり、重合度を十分に上げることが困難となる場合がある。その結果、操業性、糸質特性、材料強度(例えば繊維としたときの糸強度等)が低下する場合がある。
また、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸は、後述のエーテル化工程において触媒として作用するので、含有量を上記範囲とすることで、グリコール成分におけるエチレングリコール、トリエチレングリコールの含有量を特定範囲としやすくなる。
金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸としては、例えば、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-カリウムスルホイソフタル酸、5-リチウムスルホイソフタル酸、ナトリウムスルホナフタレンジカルボン酸、ナトリウムスルホフェニルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホテレフタル酸等が挙げられるが、本発明においては、アルカリ易溶性、溶融紡糸時の操業性及びコストの面から、5-ナトリウムスルホイソフタル酸が好ましく用いられる。また、これらの酸をそのまま使用してもよいが、エステル形成性誘導体を使用してもよく、中でも、操業性などの点から、エチレングリコールとのエステルが好ましく用いられる。
酸成分中のテレフタル酸の割合は、94.5~99.5モル%であることが好ましく、95~99モル%であることが好ましい。テレフタル酸の割合が94.5モル%未満であると、樹脂組成物の結晶性が低下し、かつ融点が低くなり、溶融紡糸や延伸において操業性が低下する場合がある。一方、テレフタル酸の割合が99.5モル%を超えると、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸の共重合量が少なくなるため、アルカリ易溶性の効果が小さくなる場合がある。
本発明のポリエステル樹脂における、テレフタル酸と金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸以外の酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカン二酸等、ダイマー酸、更には無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられる。これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。
本発明のポリエステル樹脂は、トリエチレングリコールを含み、全グリコール成分中、トリエチレングリコールの含有量が0.5~5.5モル%である。なお、ここでいうグリコール成分の含有量(モル%)としては、後述するポリエーテル化合物を含まずに算出するものとする。
全グリコール成分中、トリエチレングリコールの含有量が0.6~5.0モル%であることが好ましく、0.7~4.0モル%であることがより好ましい。0.5モル%未満であると、融点が高くなり過ぎることから、アルカリ易溶性や操業性に劣り、また、優れた糸質特性(強度および伸度)が十分に発現しない。一方、5.5モル%を超えると、非晶性で、融点が低く耐熱性に劣る樹脂となり、繊維とする際の操業性や糸質特性が低下する。
全グリコール成分中、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールの含有量が、合計で7.0モル%以下であることが好ましく、0.6~4モル%であることがより好ましく、0.8~3モル%であることがさらに好ましい。7.0モル%を超えると、耐熱性が低下し、繊維とする際の操業性や、繊維としての糸質特性に劣る場合がある。一方、0.6モル%未満であると、繊維とする際の操業性や、繊維としてのアルカリ易溶性に劣る場合がある。
全グリコール成分中、テトラエチレングリコールの含有量が0.0~2.0モル%であることが好ましく、0~1.0モル%であることがより好ましく、0.0~0.5モル%であることがさらに好ましい。2.0モル%を超えると、耐熱性、糸質特性が低下する場合がある。
本発明のポリエステル樹脂は、グリコール成分として、ジエチレングリコールを含有することが好ましい。ジエチレングリコールの含有量は、全グリコール成分中、2.5モル%以上であることが好ましく、3.5モル%以上であることがより好ましく、4.5モル%以上であることがさらに好ましい。ジエチレングリコールの含有量をこの範囲とすることで、繊維としたときのアルカリ易溶性をいっそう向上させることができる。ジエチレングリコールの含有量の上限値は、繊維とする際の操業性、繊維としての糸質特性の点から、12モル%であることが好ましい。
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの各々の含有量を調整するためには、例えば、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸の含有量を好ましい範囲としたり、後述のポリエステル樹脂の製造方法における重合触媒として有機スルホン酸系化合物を用いたり、有機スルホン酸系化合物の添加量を好ましい範囲としたり、エーテル化反応に供される前のグリコール成分(G)と酸成分(A)とのモル比(G/A)を好ましい範囲としたり、エーテル化反応における温度または時間を調整したりすることができる。
本発明のポリエステル樹脂は、上記以外のグリコール成分を含んでいてもよい。その具体例としては、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体等を用いることができる。
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエーテル化合物を、5~25質量%含有していることが必要であり、6~20質量%含有していることが好ましく、7~15質量%含有していることがより好ましい。
ポリエーテル化合物の含有量が5質量%未満であると、本発明のポリエステル樹脂におけるアルカリ易溶性が低下する。また、ポリエーテル化合物の含有量が25質量%を超えると、ポリエステル樹脂の熱安定性が損なわれて、例えば、得られたポリエステル樹脂を繊維とする際に糸切れが発生するなど、操業性に劣ったり、糸質特性が低下したりする。
ポリエーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体などのポリアルキレングリコールが挙げられるが、中でもポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
ポリエーテル化合物の数平均分子量としては、500~15000であり、1000~15000であることが好ましく。2000~7000であることがより好ましく、3000~6000であることがさらに好ましい。ポリエーテル化合物の数平均分子量が500より小さい場合、本発明のポリエステル樹脂におけるアルカリ易溶性が低下する。また、ポリエステル樹脂中のポリエーテル化合物の数平均分子量が15000を超える場合、ポリエステル樹脂の熱安定性が損なわれることとなり、例えば得られたポリエステル樹脂を紡糸した際に糸切れが発生する。
本発明のポリエステル樹脂は、極限粘度が0.45dl/g以上であることが好ましく、0.5dl/g以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.6~0.8dl/gである。極限粘度が0.45dl/g未満であると、繊維としたときに、十分な糸質特性が得られない場合がある。
なお、本発明における極限粘度とは、フェノールと四塩化エタンとの等重量混合液を溶媒として、温度20℃で測定した値である。
本発明のポリエステル樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の重合体、制電剤、消泡剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤、その他の添加剤が添加されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が挙げられる。安定剤としては、リン酸またはリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、有機系、無機系または有機金属系のトナー、または蛍光増白剤等が添加されていてもよい。これにより、ポリエステル樹脂の黄み等の着色をさらに抑えることができる。または結晶性を向上させるため、ポリエチレンを初めとする他の樹脂、タルク等の無機核剤が添加されていてもよい。
本発明のポリエステル樹脂に、製造工程で発生した廃棄樹脂または市場から回収されたリサイクルポリエステル樹脂等(例えば、PETボトル等)を混合させてもよい。
(ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、ポリエステル原料に対して有機スルホン酸系化合物を添加し、常圧または加圧下において、240℃以上の温度で5~120分加熱して、グリコール成分のエーテル化反応を行う工程を含む。
本発明においては、重縮合反応を行う前に、特定条件でのエーテル化反応を行う工程を含むことで、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの含有量を特定範囲とすることができる。その結果、繊維とする際の操業性に優れるとともに、繊維としたときのアルカリ易溶性にも優れるポリエステル樹脂を得ることができる。
ポリエステル樹脂の原料としては、例えば、エチレングリコールを主たる成分として含むグリコール成分、ジカルボン酸成分、グリコール成分とジカルボン酸成分とからなる低次縮合物としてのエステル化物等が挙げられる。
上記エステル化物を得る手法としては、例えば、ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレートを製造する場合は、テレフタル酸、エチレングリコ-ル、および必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去し、エステル化して、ポリエステル樹脂の原料としてのエステル化物を得る。または、テレフタル酸ジメチル、エチレングリコ-ル、および必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコ-ルを留去し、エステル交換させてエステル化物を得る。
以下、エステル化物の調製方法について、説明する。
ジカルボン酸、またはそのエステル誘導体1モルに対して好ましくは1.02~2.5モル、より好ましくは1.03~1.8モルのエチレングリコ-ルが含まれたスラリーを調製し、これをエステル化反応器に連続的に供給し、エステル化物を得る。
エステル化反応は、エチレングリコ-ルが還流する条件下で、反応によって生成した水またはアルコ-ルを、精留塔で系外に除去しながら行う。エステル化反応は、複数のエステル化反応器を直列に連結した多段式装置を用いて行うことができる。
エステル化反応を多段階で行う場合、第1段階のエステル化反応の温度は、240~270℃であることが好ましく、245~265℃であることがより好ましい。圧力は、0.2~3kg/cm2Gであることが好ましく、0.5~2kg/cm2Gであることがより好ましい。
最終段階のエステル化反応の温度は、250~290℃であることが好ましく、255~275℃であることがより好ましい。圧力は、0~1.5kg/cm2Gであることが好ましく、0~1.3kg/cm2Gであることがより好ましい。
3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段階の反応条件と最終段階の反応条件の間の条件であることが好ましい。
多段階でのエステル化反応の反応率は、各段階で滑らかに上昇させることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上に達することが好ましく、93%以上に達することがより好ましい。これらのエステル化反応によりエステル化物を得ることができ、その好ましい分子量は500~5000程度である。
エステル化反応においてテレフタル酸を用いる場合、テレフタル酸の酸としての触媒作用により反応が進行する。
上記のようにして得られたエステル化物に対し、ポリエーテル化合物と金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸とを添加し、重合触媒としての有機スルホン酸系化合物を添加し、エーテル化反応を行う。その後、重縮合反応を進行させて、本発明のポリエステル樹脂を得る。エーテル化反応を行う前に、必要に応じて、アルカリ金属化合物を添加し、解重合反応を行ってもよい。
エステル化物に対する金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸の添加量は、例えば、質量比で、(エステル化物)/(金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸)=4.0~70.0である。これにより、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸の含有量を本発明の範囲とするとともに、得られるポリエステル樹脂中、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの含有量を特定範囲としやすくなる。
エステル化物に対するポリエーテル化合物の添加量は、例えば、質量比で、(エステル化物)/(ポリエーテル化合物)=4.0~60.0である。これにより、得られたポリエステル樹脂において、ポリエーテル化合物の含有量を特定範囲としやすくなる。
本発明においては、重合触媒として有機スルホン酸系化合物を用いることで、得られるポリエステル樹脂中、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの含有量を特定範囲とすることができる。有機スルホン酸系化合物としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、m-またはp-ベンゼンジスルホン酸、1,3,5-ベンゼントリスルホン酸、o-、m-またはp-スルホ安息香酸、ベンズアルデヒド-o-スルホン酸、アセトフェノン-p-スルホン酸、アセトフェノン-3,5-ジスルホン酸、o-、m-またはp-アミノベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、2-アミノトルエン-3-スルホン酸、フェニルヒドロキシルアミン-3-スルホン酸、フェニルヒドラジン-3-スルホン酸、1-ニトロナフタレン-3-スルホン酸、チオフェノール-4-スルホン酸、アニソール-o-スルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、o-、m-またはp-クロルベンゼンスルホン酸、o-、m-またはp-ブロモベンゼンスルホン酸、o-、m-またはp-ニトロベンゼンスルホン酸、ニトロベンゼン-2,4-ジスルホン酸、ニトロベンゼン-3,5-ジスルホン酸、ニトロベンゼン-2,5-ジスルホン酸、2-ニトロトルエン-5-スルホン酸、2-ニトロトルエン-4-スルホン酸、2-ニトロトルエン-6-スルホン酸、3-ニトロトルエン-5-スルホン酸、4-ニトロトルエン-2-スルホン酸、3-ニトロ-o-キシレン-4-スルホン酸、5-ニトロ-o-キシレン-4-スルホン酸、2-ニトロ-m-キシレン-4-スルホン酸、5-ニトロ-m-キシレン-4-スルホン酸、3-ニトロ-p-キシレン-2-スルホン酸、5-ニトロ-p-キシレン-2-スルホン酸、6-ニトロ-p-キシレン-2-スルホン酸、2,4-ジニトロベンゼンスルホン酸、3,5-ジニトロベンゼンスルホン酸、o-、m-またはp-フルオロベンゼンスルホン酸、4-クロロ-3-メチルベンゼンスルホン酸、2-クロロ-4-スルホ安息香酸、5-スルホサリチル酸、4-スルホフタル酸、2-スルホ安息香酸無水物、3,4-ジメチル-2-スルホ安息香酸無水物、4-メチル-2-スルホ安息香酸無水物、5-メトキシ-2-スルホ安息香酸無水物、1-スルホナフトエ酸無水物、8-スルホナフトエ酸無水物、3,6-ジスルホフタル酸無水物、4,6-ジスルホイソフタル酸無水物、2,5-ジスルホテレフタル酸無水物、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、メチオン酸、シクロペンタンスルホン酸、1,1-エタンジスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸無水物、3-プロパンジスルホン酸、β-スルホプロピオン酸、イセチオン酸、ニチオン酸、ニチオン酸無水物、3-オキシ-1-プロパンスルホン酸、2-クロルエタンスルホン酸、フェニルメタンスルホン酸、β-フェニルエタンスルホン酸、α-フェニルエタンスルホン酸、クロルスルホン酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸エチル、5-スルホサリチル酸ジメチル、4-スルホフタル酸トリメチル等、およびこれらの塩が挙げられる。中でも、汎用性の観点から、2-スルホ安息香酸無水物、o-スルホ安息香酸、m-スルホ安息香酸、p-スルホ安息香酸、5-スルホサリチル酸、ベンゼンスルホン酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸メチル、5-スルホイソフタル酸、これらの塩などが挙げられる。
重合触媒として、金属系触媒を用いない場合には、得られる本発明のポリエステル樹脂中の、金属系触媒由来の金属成分の含有量を少なくすることができる。金属成分の含有量が多いと、溶融加工時に異物が発生する場合や、アルカリ溶解時に金属成分が溶出する場合がある。金属成分の含有量は、1ppm以下であることが好ましく、0.5ppm以下であることがより好ましく、0ppmであることがさらに好ましい。金属系触媒としては、例えばアンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、亜鉛、アルミニウム、鉄、マグネシウム、マンガン、ニッケル、コバルト等の化合物が挙げられる。
有機スルホン酸系化合物は、例えば固体状、スラリー状または水、グリコール等に溶解させた溶液として添加することができる。
有機スルホン酸系化合物の添加量は、その種類にもよるが、ポリエステル樹脂を構成する酸成分1モルに対して0.5×10-4~9.0×10-4モルとすることが好ましく、1.0~8.0×10-4モルであることがより好ましい。添加量が上記範囲を超えて過少であると、重合度の高いポリエステル樹脂を得ることができず、強度やアルカリ易溶性に優れる繊維を得ることができない場合がある。または、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの含有量が特定範囲とならない場合がある。一方、上記範囲を超えて過多であると、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの含有量が多くなりすぎる場合や、ポリエステル樹脂の着色の原因となる場合がある。
有機スルホン酸系化合物の添加量を上記の範囲とすることで、得られるポリエステル樹脂中の、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸以外の硫黄成分(すなわち、触媒由来の硫黄成分)の含有量を、好ましくは5~100ppm、より好ましくは6~60ppmとすることができる。硫黄成分の含有量が5ppm未満であると、繊維としたときの糸質特性に劣る場合がある。一方、100ppmを超えると、ポリエステルの着色の原因となる場合がある。
エーテル化反応の温度は240℃以上であることが好ましく、240~300℃であることがより好ましく、250~280℃であることがさらに好ましい。240℃未満であると、反応が十分に進行せず、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの含有量を特定範囲とできない場合がある。300℃を超えると、反応中にエステル化物の分解が進行し、繊維とする際の操業性や、繊維としての糸質特性が低下することがある。
エーテル化反応の時間は、5~120分間が好ましく、10~60分間であることがより好ましい。5分未満であると反応が十分に進行せず、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの含有量を特定範囲とできない場合がある。120分を超えると、エーテル化反応が進行しすぎてしまい、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの含有量が特定範囲とならない場合や、反応中にエステル化物の分解が進行する場合があることから、繊維とする際の操業性や、繊維としての糸質特性が低下することがある。
エーテル化反応は、常圧または加圧下において進行させることが好ましく、その圧力は、0~3.0kg/cm2Gであることが好ましい。
エーテル化反応に供される原料における、グリコール成分と酸成分のとの比率(G/A)を調整することにより、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの含有量を特定範囲とすることができる。G/Aは1.05~3.00であることが好ましく、1.10~2.00であることがより好ましい。G/Aを調整するために、必要に応じて、ポリエステル原料に対し、エチレングリコール等のグリコール成分を追加で添加してもよい。1.05未満であるとジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの生成量が少なくなる傾向があり、一方、3.00を超えるとジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの生成量が多くなる傾向がある。
エーテル化反応の後に、重縮合反応を行って、本発明のポリエステル樹脂を得ることができる。重縮合反応としては、例えば溶融重縮合反応が挙げられる。重縮合反応は1段階で行ってもよいし、多段階に分けて行ってもよい。
重縮合反応条件としては、特に限定されるものではないが、第1段階の重縮合反応の温度は250~290℃であることが好ましく、260~280℃であることがより好ましい。圧力は500~20hPaであることが好ましく、200~30hPaであることがより好ましい。
多段階の場合、最終段階の重縮合反応の温度は265~300℃であることが好ましく、275~295℃であることが好ましい。圧力は10~0.1hPaが好ましく、5~0.5hPaであることがより好ましい。3段階以上で実施する場合には、中間段階の反応条件は、第1段階と最終段階の間の反応条件とすることが好ましい。これらの各段階において重合度を滑らかに上昇させることが好ましい。
さらに、重縮合反応時には、必要に応じて、上記の重合触媒と併せて、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、樹脂の熱分解を抑制することができるリン化合物を添加することもできる。
ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1’-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、効果とコストの点で、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
リン化合物としては、例えば亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフォート等のリン化合物を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
(ポリエステル樹脂の用途)
本発明のポリエステル樹脂は様々な用途に適用することができる。ポリエステルの用途としては、例えば繊維、成形品、フィルム等が挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂を用いて、本発明の繊維とすることができる。
本発明の繊維は、例えば本発明のポリエステル樹脂を含む原料を溶融し、紡糸することにより得られるものである。紡糸方法等は、公知の条件に従って実施することができる。例えば、ポリエステル樹脂を常法により乾燥し、通常の溶融紡糸機台に供給してポリエステルの融点より20℃以上高い温度で溶融紡糸し、1000~4000m/分の速度で、未延伸糸または半未延伸糸としていったん捲き取るか、あるいは、捲き取ることなく、引き続いて1.5~3.5倍に延伸し、80~180℃で熱処理を行い目的の繊維を得ることができる。
本発明の繊維は、例えば単糸繊度が0.8デシテックス以下(好ましくは0.6~0.3デシテックス)の極細繊維であってもよい。
本発明の繊維としては、例えばモノフィラメント、マルチフィラメント等のいずれであってもよく、また長繊維、短繊維等のいずれであってもよい。
本発明の繊維を構成する単繊維の形状は特に限定するものではなく、丸断面のみならず、多角形状等の異形断面のものであってもよい。
本発明の繊維は、必要に応じて、捲縮加工、仮撚加工等の後加工を施されていてもよい。
本発明の繊維は、単繊維の全てが本発明のポリエステル樹脂で形成されている繊維のみならず、本発明のポリエステル樹脂と、それ以外のポリエステル樹脂(バージンポリエステル樹脂や他の共重合成分を含有するポリエステル樹脂など)とが複合された複合繊維であってもよい。複合繊維の形態としては、芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型のものが挙げられる。
本発明の繊維がマルチフィラメントである場合、その特性値としては、例えば、単糸繊度0.3~30デシテックス、単糸数2~300本、総繊度5~350本、強度1~5cN/デシテックス、伸度10~400%の範囲を有するものが挙げられる。
本発明の繊維は、アルカリ易溶性に優れる。さらに、伸度、強度などの糸質特性にも優れる。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、測定、評価は以下の方法により行った。
(1)極限粘度[IV]
フェノールと四塩化エタンとの等重量混合液を溶媒として、温度20℃で測定した。
(2)ポリエステル樹脂の組成
重水素化クロロホルム/重水素化トリフルオロ酢酸=9/1(質量比)の混合溶媒1mLに10mgの試料を溶解し、日本電子社製LA-400型NMRにてH-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピーク積分強度から、ジカルボン酸成分、トリエチレングリコール成分とテトラエチレングリコール成分との合計量、および、それ以外の各グリコール成分のモル比を算出した。さらに、ポリエステル樹脂中のポリエーテル化合物の含有量(質量%)を算出した。
次いで、下記のようにして、トリエチレングリコールとテトラエチレングリコールの定量を行った。
ポリエステル樹脂を濃度0.75規定の水酸化カリウム/メタノール溶液中で加水分解した後、テレフタル酸を添加して中和した。次に、濾過して得られた濾液について、ガスクロマトグラフ法による測定をおこない、あらかじめ作成した検量線を用いて、トリエチレングリコールとテトラエチレングリコールとのモル比を算出し、これらのモル比と、前述のH-NMRを測定結果(トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールの合計の成分と、それ以外の各グリコール成分とのモル比)とから、全グリコール成分中の、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの含有量を算出した。
なお、グリコール成分であるエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの含有量(モル%)は、ポリエーテル化合物を含まずに算出した。
(4)融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)
パーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC-7を用い、窒素気流中、温度範囲25~280℃、昇温速度20℃/分で測定した。
(5)触媒の硫黄成分の含有量
ポリエステル樹脂を300℃で溶融成形して直径3cm×厚み1cmの円盤状の成形板とし、リガク社製蛍光X線分析装置 ZSX Primusを用いて、検量線法により硫黄成分の定量分析を行った。
次に、重水素化クロロホルム/重水素化トリフルオロ酢酸=9/1(質量比)の混合溶媒1mLに10mgの試料を溶解し、日本電子社製LA-400型NMRにてH-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピーク積分強度から5-Naスルホイソフタル酸ジグリコールエステル(SIPG)のモル比を算出し、そこから、SIPG由来の硫黄含有量を算出した。
蛍光X線分析装置で定量分析を行った硫黄成分量から、NMRにて算出したSIPG由来の硫黄含有量を引いた値を、触媒由来の硫黄成分の含有量として算出した。
繊維(操業性・強度、伸度・アルカリ減量速度)の評価方法は、以下の通りである。
(6)長繊維製造の操業性(切糸)
24時間連続して溶融紡糸を行った間の切糸回数が3回/(日・錘)以下である場合を「○」とし、それ以外の場合を「×」とした。
(7)糸質特性
JIS L-1013に従い、島津製作所製オートグラフDSS-500を用い、つかみ間隔25cm、引張速度30cmで強度および伸度を測定した。
本発明においては、強度が2.0cN/dtex以上であることが好ましく、3.0cN/dtex以上であることがより好ましい。また、伸度が28%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。
強度および伸度が、何れも上記の範囲を満足するものを「〇」とし、少なくとも一方が上記範囲を満足しないものを「×」とした。強度および伸度が上記範囲を満足すると、糸質特性のバランスに優れることの指標となる。
(8)アルカリ減量速度
得られたポリエステル樹脂を乾燥させた後、吐出孔を48個有する紡糸口金を用い、紡糸温度295℃で紡糸し、冷却、油剤付与を行いながら、1,500m/分の速度で巻き取り、未延伸糸を得た。これを延伸倍率2.8、ロールヒータ温度80℃、プレートヒータ150℃、延伸速度600m/minの条件で延伸した後、巻き取り75デシテックス/48フィラメントの延伸糸を得た。
次に、この延伸糸を通常の方法で筒編地にし、浴比が1:50であり、70℃に温度制御された5質量%の水酸化ナトリウム水溶液中で20分間減量処理を行い、次式よりにより求めた。
減量速度(質量%/分)=[(A-B)/A]×100/20
ただし、A:筒編地の減量前の質量(g)、B:筒編地の減量後の質量(g)を示す。
アルカリ減量速度が5質量%/分以上の場合を「〇」とし、5質量%/分未満の場合を「×」とした。
[エステル化物の作製]
エステル化反応缶に、テレフタル酸とエチレングリコール(モル比1/1.6)のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化物(テレフタル酸:エチレングリコール=100:111(モル比))を得た。
実施例1
〔ポリエステル樹脂〕
加熱溶融したエステル化物と、ポリエーテル化合物として、数平均分子量6,000のポリエチレングリコール(PEG)、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸成分として、5-Naスルホイソフタル酸ジグリコールエステル(SIPG)を、280℃に加熱した重縮合反応缶に、表1に示した仕込み量で投入した。次いで、重合触媒として、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、260℃で10分間エーテル化反応を行った。次に、反応缶の温度を280℃に維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、25ppmの触媒由来の硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は1.1モル%であった。
〔長繊維の製造〕
得られたポリエステル樹脂を乾燥させた後、吐出孔を48個有する紡糸口金を用い、紡糸温度273℃で紡糸し、冷却、油剤付与を行いながら、1395m/分の速度で巻き取り、未延伸糸を得た。これを延伸倍率2.5、ロールヒータ温度80℃、プレートヒータ150℃、延伸速度600m/minの条件で延伸した後、巻き取り、84デシテックス/48フィラメントのマルチフィラメント糸(延伸糸)を得た。
実施例2~8、比較例1~9
〔ポリエステル樹脂〕
表1に示したように、PEGの添加量、5-Naスルホイソフタル酸ジグリコールエステル(SIPG)の添加量、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)の添加量、エーテル化条件を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂を得た。
そして、実施例1と同様にしてマルチフィラメント糸を得た。
比較例10
5-スルホサリチル酸二水和物(SS)に代えて、三酸化アンチモン(Sb)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂を得た。そして、実施例1と同様にしてマルチフィラメント糸を得た。
実施例、比較例におけるポリエステル樹脂の原料仕込み組成、製造条件を表1に示す。
Figure 2023005070000001
実施例、比較例にて得られたポリエステル樹脂、繊維の特性値を表2に示す。
Figure 2023005070000002
表1および表2から明らかなように、実施例1~8で得られたポリエステル樹脂は、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸の含有量、ポリエーテル化合物の含有量に加えて、トリエチレングリコールの含有量が本発明で規定する範囲内のものであった。このため、繊維を得る際の操業性に優れ、操業性、糸質特性、アルカリ易溶性に優れた繊維を得ることができた。
一方、比較例1では、ポリエステル樹脂中のトリエチレングリコールの含有量が本発明で規定する範囲を外れて多くなった。その結果、非晶性で、耐熱性に劣る樹脂となり、紡糸での操業性が悪く、また延伸ができず、繊維の評価に付さなかった。
比較例2では、ポリエステル樹脂中のトリエチレングリコールの含有量が本発明で規定する範囲を外れて少なくなった。その結果、融点が高い樹脂となり、紡糸での操業性、繊維としたときの糸質特性、アルカリ易溶性に劣るものであった。
比較例3では、ポリエーテル化合物の含有量が本発明で規定する範囲を外れて少なかったため、繊維としたときのアルカリ易溶性に劣るものであった。
比較例4では、ポリエーテル化合物の含有量が本発明で規定する範囲を外れて多かったため、熱安定性が低く、紡糸での操業性、繊維としたときの糸質特性に劣るものであった。
比較例5では、エーテル化反応を行わなかったため、ポリエステル樹脂中のトリエチレングリコールの含有量が本発明で規定する範囲を外れて少なくなった。その結果、紡糸での操業性、繊維としたときの糸質特性や、アルカリ易溶性に劣るものであった。
比較例6では、エーテル化反応の温度を低くしたため、反応が十分に進行せず、ポリエステル樹脂中のトリエチレングリコールの含有量が本発明で規定する範囲を外れて少なくなった。その結果、紡糸での操業性、繊維としたときの糸質や、アルカリ易溶性に劣るものであった。
比較例7では、エーテル化反応の時間を長くしたことにより、ポリエステル樹脂中のトリエチレングリコールの含有量が本発明で規定する範囲を外れて多くなった。その結果、非晶性で、耐熱性の低い樹脂となった。紡糸での操業性が悪く、また延伸ができず、繊維の評価に付さなかった。
比較例8では、重合触媒としての5-スルホサリチル酸二水和物の添加量が多かったため、ポリエステル樹脂中のトリエチレングリコールの含有量が本発明で規定する範囲を外れて多くなった。その結果、非晶性で、耐熱性の低い樹脂となった。紡糸での操業性が悪く、また、延伸ができず、繊維の評価に付さなかった。
比較例9では、重合触媒としての5-スルホサリチル酸二水和物の添加量が少なかったため、エーテル化反応が十分に進行せず、トリエチレングリコールの含有量が本発明で規定する範囲を外れて少なくなった。その結果、紡糸での操業性が悪く、繊維としたときの糸質特性や、アルカリ易溶性に劣るものであった。
比較例10では、重合触媒として、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)ではなく、金属触媒である三酸化アンチモンを添加したため、トリエチレングリコールの含有量が少なくなった。その結果、紡糸での操業性が悪く、繊維としたときの糸質特性や、アルカリ易溶性に劣るものであった。また、アルカリ易溶性の評価において、アルカリ溶解中にSbが溶出した。

Claims (6)

  1. 金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸をジカルボン酸成分として含み、数平均分子量が500~15000のポリエーテル化合物を5~25質量%含むポリエステル樹脂であって、
    ポリエステル樹脂のグリコール成分が、エチレングリコールを主たる成分として含むとともに、トリエチレングリコールの含有量が0.5~5.5モル%である、ポリエステル樹脂。
  2. グリコール成分としてジエチレングリコールを含み、ジエチレングリコールの含有量が2.5モル%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
  3. ジカルボン酸成分中、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸の含有量が0.5~5.5モル%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂。
  4. 金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸以外の硫黄成分の含有量が5~100ppmである、請求項1~3の何れか1項に記載のポリエステル樹脂。
  5. 請求項1~4の何れか1項に記載のポリエステル樹脂からなる、繊維。
  6. 請求項1~4の何れか1項に記載のポリエステル樹脂を製造する方法であって、
    ポリエステル原料に対して有機スルホン酸系化合物を添加し、常圧または加圧下において、240℃以上の温度で5~120分加熱して、グリコール成分のエーテル化反応を行う工程を含む、ポリエステル樹脂の製造方法。
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