JP2023004412A - 電子デバイス用基板、電子デバイス、チップ抵抗器および電子デバイスの製造方法 - Google Patents

電子デバイス用基板、電子デバイス、チップ抵抗器および電子デバイスの製造方法 Download PDF

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Norimichi Noguchi
大輔 末次
Daisuke Suetsugu
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裕貴 小田
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Abstract

【課題】表面が十分平坦化されていると共に、アルミナ基板と平坦化層の密着性に優れ、熱伝導性にも優れた電子デバイス用基板を提供する。【解決手段】アルミナ粒子の焼結体からなるアルミナ基板と、前記アルミナ基板の上面に積層された、複数の平坦化層とを備え、前記複数の平坦化層のうち、少なくとも1つは、主成分がアルミナの平坦化層であることを特徴とする電子デバイス用基板。【選択図】図1

Description

本開示は、電子デバイス用基板、電子デバイス、チップ抵抗器および電子デバイスの製造方法に関する。
アルミナ基板は良好な絶縁性と熱伝導性を有しているため、従来から電子デバイス、例えばチップ抵抗器における基板(絶縁基板)として多く用いられている。一般的に、チップ抵抗器は、絶縁基板と、この絶縁基板の上面の両端部に設けられた一対の上部電極と、絶縁基板の上面に設けられ、かつ一対の上部電極間に接続された抵抗体とを備えている。
前記チップ抵抗器は、更に、少なくとも抵抗体を覆うように設けられた保護膜と、一対の上部電極と電気的に接続されるように絶縁基板の両端面に設けられた一対の端面電極と、上部電極の一部と一対の端面電極の表面に形成されためっき層とを備えている。
通常、上記チップ抵抗器を製造する場合、アルミナからなる大判基板上に、複数組の上部電極等の表電極と抵抗体を一括して形成した後、該表電極等の形成された大判基板を、格子状に延びる一次分割溝と二次分割溝に沿って分割(ブレイク)するか、分割溝の代わりにダイシングブレードを用いて格子状に切断することで、個々のチップ素体を得る。
ところでアルミナ基板の表面は、微細な凹凸やうねりがあり平滑でない。よって、アルミナ基板の表面に形成される表電極と抵抗体の形状が安定しにくいという問題があった。特に、表電極と抵抗体をフォトリソグラフィにより薄膜として形成する場合、薄膜である表電極と抵抗体がアルミナ基板の表面状態の影響を受けて、歪、断線、クラック等が発生するという問題があった。
上記問題を解決するため、例えば特許文献1では、アルミナ基板自体にわずかなシリカガラスを含有させ、このアルミナ基板の表面全体にガラスコートを形成し、ガラスコート上に上部電極や抵抗体等を形成する技術が提案されている。
特開2017-168749号公報
特許文献1の技術では、アルミナ基板とガラスコートの界面に空孔が生じた。アルミナ基板とガラスコートの間に空孔が存在すると、アルミナ基板とガラスコートの密着性に劣り、例えば、チップ抵抗器製造の後工程で、ガラスコート上面に形成された抵抗体等の機能膜が、アニール処理や繰り返しの熱負荷の影響を受けたときに、抵抗体の断線等の不具合が生じ、その結果、チップ抵抗器の歩留まりが低下するという問題があった。本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、平坦化に優れていると共に、アルミナ基板と平坦化層の密着性に優れ、熱伝導性にも優れた電子デバイス用基板、該電子デバイス用基板を備えた電子デバイスとチップ抵抗器、および電子デバイスの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成できた本開示の電子デバイス用基板は、
アルミナ粒子の焼結体からなるアルミナ基板と、
前記アルミナ基板の上面に積層された、複数の平坦化層とを備え、
前記複数の平坦化層のうち、少なくとも1つは、主成分がアルミナの平坦化層であることを特徴とする。
本開示によれば、表面が十分平坦化されていると共に、電子デバイス用基板を構成するアルミナ基板と平坦化層の密着性に優れ、熱伝導性にも優れた電子デバイス用基板と、該電子デバイス用基板を備えた電子デバイスとチップ抵抗器、および電子デバイス用の製造方法を提供できる。
図1は、本開示の一実施形態に係る電子デバイス用基板の断面模式図である。 図2は、アルミナ基板と平坦化層の間の空孔の長さの割合を求める方法を説明するための断面模式図である。 図3は、高温で焼成した平坦化層の表面性状の一例を示す上面写真である。 図4は、本開示の一実施形態に係る電子デバイスとして、チップ抵抗器の断面模式図である。 図5は、実施例1における電子デバイス用基板の断面の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。 図6は、比較例1における電子デバイス用基板の断面の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。 図7は、比較例2における電子デバイス用基板の断面の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
上記特許文献1の技術では、上述の通り、チップ抵抗器における抵抗体の断線等の不具合が生じ、抵抗値のバラツキが生じた。本発明者らが、その原因を分析したところ、アルミナ基板とガラスコートの界面に空孔が確認された。空孔が存在する部分は、ガラスコートとアルミナ基板との密着性が低く、熱伝導率が悪化して抵抗体の溶断が発生したと考えられる。
本発明者らは、これらの事情に鑑みて、表面が十分平坦化されていると共に、電子デバイス用基板を構成するアルミナ基板と平坦化層の密着性に優れ、熱伝導性にも優れた電子デバイス用基板を得るために鋭意検討を行った。そしてその結果、上記チップ抵抗器等の電子デバイスに用いられる電子デバイス用基板を、アルミナ基板上に、複数の平坦化層が積層され、前記複数の平坦化層のうちの少なくとも1層はアルミナが主成分であるものとすればよいことを見出した。以下、本開示の実施形態における電子デバイス用基板についてまず説明する。
[電子デバイス用基板]
以下では、本開示の実施形態に係る電子デバイス用基板について、図1を参照しながら説明する。なお、本開示の実施形態は、図1に示した形態に限定されず、本開示の効果を損なわない範囲で適宜変更することができる。
図1は、本開示の実施形態に係る電子デバイス用基板11の断面模式図である。図1は、アルミナ粒子の焼結体からなるアルミナ基板11aの上面に、複数の平坦化層(多層平坦化層)11bが積層された構造を示している。また図1において、複数の平坦化層11bは、第1平坦化層111bと第2平坦化層112bの2層が積層して構成された例を示している。なお平坦化層の積層数はこれに限定されず、3層以上であってもよい。本明細書において、「アルミナ基板と接する平坦化層」とは、電子デバイス用基板の断面において、第1平坦化層111bの通り、アルミナ基板に最も近い層をいう。また、アルミナ基板11aと接する面積が最も多い層でもある。「最表面の平坦化層」とは、電子デバイス用基板の断面において、第2平坦化層112bの通り、アルミナ基板から最も遠い平坦化層をいう。以下、アルミナ基板11aと、複数の平坦化層11bのそれぞれについて説明する。
(アルミナ基板)
電子デバイス用基板に用いられるアルミナ基板11aは、アルミナ粒子の焼結体からなる。上記焼結体は、耐熱性および絶縁性に優れた純度が96%以上のアルミナで形成されていることが好ましい。更にアルミナ基板は、表面に凹凸を有する。このアルミナ基板の表面における凹凸は、焼結体を構成するアルミナ粒子の形状に起因する。上記凹凸を、最大高さRzで表すと、例えば数百nmから数千nm程度である。前記最大高さRzは例えばAFM(原子間力顕微鏡)で測定することができる。
(複数の平坦化層)
本開示の電子デバイス用基板11は、複数の平坦化層11bが積層した構成を有する。本開示の実施形態では、上記アルミナ基板11aの上に、複数の平坦化層11bを設けることにより、例えば電極や抵抗体といった機能膜を、アルミナ基板11aの表面状態の影響を受けることなく形成することができる。なお、本明細書において、単に「平坦化層」とは、焼成して得られた電子デバイス用基板の平坦化層をいい、焼成前の平坦化層とは区別される。
(平坦化層の成分組成)
複数の平坦化層のうち、少なくとも1つは、主成分がアルミナの平坦化層である。複数の平坦化層のうち、少なくとも1つの平坦化層を、主成分がアルミナの平坦化層とすることによって、熱負荷を受けたときに、アルミナ基板との熱膨張係数の差が生じにくい。更に、主成分がアルミナの平坦化層は、アルミナ基板と材質が似ているため、アルミナ基板と同様の優れた絶縁性と熱伝導性を示す。その結果、電子デバイスにおいて、優れた絶縁性と熱伝導性といったアルミナ基板の特徴を存分に発揮させることができる。ここで「主成分」とは、例えば上記主成分がアルミナの平坦化層の場合、1つの平坦化層に占めるアルミナの割合が50質量%以上であることをいう。前記割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
主成分がアルミナの平坦化層は、主成分のアルミナ以外に、例えばSiO(シリカ)、ZrO(ジルコニア)、TiO、MnO、MgO、CaO、SrO、BaO、Yb等の金属酸化物であるセラミックス、有機または無機のバインダー等が含まれていてもよい。主成分がアルミナの平坦化層は、好ましくは、主成分のアルミナ以外に、シリカとジルコニアのうちの1以上を含む。
複数の平坦化層のうち、少なくとも1つは、主成分がアルミナの平坦化層であるが、残りの平坦化層は、主成分がアルミナの平坦化層であってもよいし、主成分がアルミナ以外のセラミックスの平坦化層であってもよい。すなわち、複数の平坦化層のうち、少なくとも1つは、主成分がアルミナ以外のセラミックスの平坦化層であってもよい。最も好ましくは、複数の平坦化層のいずれもが、主成分がアルミナの平坦化層である。
主成分がアルミナ以外のセラミックスの平坦化層は、電子デバイス用基板の表面の平滑性と、アルミナ基板との優れた密着性、更には優れた熱伝導性を確保できるものであればく、主成分が、例えばSiO(シリカ)、ZrO(ジルコニア)、TiO、MnO、MgO、CaO、SrO、BaO、Yb等の金属酸化物であるセラミックスでありうる。主成分がアルミナ以外のセラミックスの平坦化層は、好ましくは、主成分がシリカまたはジルコニアである。
複数の平坦化層のうち、アルミナ基板と接する平坦化層は、主成分がアルミナの平坦化層とすることが好ましい。それによって、アルミナ基板と平坦化層が同質となり、また同等の熱膨張率となり良好な界面が得られるため好ましい。または、複数の平坦化層のうち、アルミナ基板から最も遠い、最表面の平坦化層を、主成分がアルミナの平坦化層としてもよい。それによって、電極や抵抗体といった機能膜で発生した発熱が良好に平坦化層に放熱されるため好ましい。アルミナ基板と接する平坦化層と最表面の平坦化層の両方を主成分がアルミナの平坦化層としてもよい。
本開示の電子デバイス用基板では、複数の平坦化層が積層され、多層構造を形成する。多層とは、2層以上の平坦化層が積層した構成であることをいう。積層数の上限は特に制限されないが、工程が複雑になることから5層以下であることが好ましい。
(複数の平坦化層の合計厚さ、各平坦化層の厚さ)
複数の平坦化層を構成する各平坦化層の厚さは、平坦化層の本来の目的である、アルミナ基板の表面の平坦化を図ることができれば特に限定されない。一般的なアルミナ基板の表面の最大高さRzは、上述の通り、焼結体を構成するアルミナ粒子の形状に起因して、数百nmから数千nmの範囲にある。よって、複数の平坦化層の合計厚さは、上記最大高さRzよりも大きいことが好ましい。上記最大高さRzは、上記焼結体を構成するアルミナ粒子の粒子径でもあり得ることから、複数の平坦化層の合計厚さは、例えば、上記焼結体を構成するアルミナ粒子の平均粒子径以上とすることが好ましいともいえる。複数の平坦化層の合計厚さは、上記最大高さRz、上記焼結体を構成するアルミナ粒子の平均粒子径にもよるが、例えば2.0μm以上であることが好ましく、より好ましくは2.5μm以上である。複数の平坦化層の合計厚さの上限は特に限定されず、例えば20μm以下とすることができる。
前記複数の平坦化層のうち、アルミナ基板と接する平坦化層の厚さが最も薄くてもよい。アルミナ基板と接する平坦化層の厚さは、アルミナ基板との密着性を高めて空孔の形成を抑制する観点から、10nm~1000nmの範囲とすることが好ましい。
複数の平坦化層の各層の主成分が異なる例として、例えば2層構造である場合、アルミナ基板と接する平坦化層がシリカを主成分とし、最表面の平坦化層がアルミナを主成分とすることが挙げられる。また例えば3層構造である場合、平坦化層の主成分が、アルミナ基板側から順に、アルミナ/シリカ/アルミナといった構造とすることが挙げられる。これらの構造では、平坦化層の間で化合物が生じて結着性が向上するため好ましい。シリカとアルミナの場合、ムライトが形成される。シリカは熱伝導性がアルミナより劣るため、シリカを主成分とする平坦化層の厚さを、例えば1μm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは300nm以下とすることで、熱伝導率の低下を抑制できる。
平坦化層は、電子デバイス用基板の例えば抵抗体を配置させる最表面が平坦化されていればよく、連続した一面であってもよいし、不連続な面を有していてもよい。不連続な面を有する場合として、例えばアルミナ基板と接する平坦化層が、アルミナ基板の凹凸の少なくとも凹部に位置し、アルミナ基板の一部が露出してもよく、電子デバイス用基板を上面からみたときに、平坦化層またはアルミナ基板が複数の島状に存在する場合も含みうる。平坦化層は、その直下のアルミナ基板または下地となる平坦化層の50面積%以上を覆っていることが好ましい。
複数の平坦化層は、いずれも主成分がアルミナの平坦化層であって、少なくとも1つの平坦化層は粒子形状が他の平坦化層と異なっていてもよい。また、複数の平坦化層のうち、アルミナ基板と接する平坦化層は、該平坦化層を構成する粒子が、他の平坦化層を構成する粒子よりも、平均粒子径が小さくかつ長辺と短辺のアスペクト比が小さいことが好ましい。
本実施形態の電子デバイス用基板は、複数の平坦化層の積層方向断面において、アルミナ基板の、平坦化層により被覆された表面線に占める、前記アルミナ基板と前記平坦化層の間の空孔の長さの割合が、50%以下であることが好ましい。図2は、本実施形態の電子デバイス用基板の一例として、アルミナ基板11aの平坦化層形成側表面の全てが複数の平坦化層11bで覆われず、アルミナ基板の露出部19を有している場合の、上記割合を求める方法を説明する断面模式図である。上記図2において、前記割合は、アルミナ基板11aの、平坦化層11bにより被覆された表面を表す表面線、すなわちP1からP4までの実線の長さとP5からP8までの実線の長さの合計に占める、アルミナ基板11aと平坦化層11bの間の空孔と接している、P2からP3までの実線の長さとP6からP7までの実線の長さの合計の割合を求めることで算出される。図2において、点線で示されたアルミナ基板の露出部19は、上記平坦化層11bにより被覆された表面線に含まれない。
[電子デバイス]
本開示の実施形態には、上記電子デバイス用基板を備えていることを特徴とする電子デバイスが含まれる。前記電子デバイスとして、チップ抵抗器が挙げられる。上記チップ抵抗器として、上記電子デバイス用基板の平坦化層の上面に、抵抗体が少なくとも配置されていることを特徴とするチップ抵抗器が挙げられる。またサーミスタとして上記電子デバイス用基板の平坦化層の上面に、測温抵抗体が少なくとも配置されていることを特徴とするサーミスタが挙げられる。それらの抵抗体の材料は平坦化層の少なくとも最表面との反応性が低いことが要求されるが、それ以外に特に制限されず、後に例示する材料を用いることができる。
[電子デバイスの製造方法]
本実施形態に係る電子デバイスの製造方法は、アルミナ基板の上面に、セラミックス粒子を、下記に例示する方法により塗布し、乾燥させた後、焼成すること、詳細には、下記の第1実施形態または第2実施形態の方法で複数の平坦化層を形成して、本実施形態に係る電子デバイス用基板を製造することを含む。
(第1実施形態)
第1実施形態の電子デバイスの製造方法は、
アルミナ粒子の焼結体からなるアルミナ基板の上面に、
セラミックス粒子を塗布し、乾燥させることを繰り返し実施して、焼成前の複数の平坦化層が積層した焼成用基板を得ることと、
前記焼成用基板を、結晶化が進む温度で焼成することにより、
複数の平坦化層が形成された電子デバイス用基板を得ることを含む。
(第2実施形態)
第2実施形態の電子デバイスの製造方法は、
アルミナ粒子の焼結体からなるアルミナ基板の上面に、
セラミックス粒子を塗布し、乾燥させて、焼成前の平坦化層を1層形成した焼成用基板を得ることと、
前記焼成用基板を、結晶化が進む温度で焼成することを、繰り返し実施することにより、
複数の平坦化層が形成された電子デバイス用基板を得ることを含む。
まず、電子デバイス用基板の製造方法について、以下で説明するが、第1実施形態と第2実施形態で重複する部分についてはまとめて説明する。
(アルミナ基板の準備)
電子デバイス用基板を構成する基板として、アルミナ粒子の焼結体からなるアルミナ基板を用意する。アルミナ基板11aの製造方法は特に限定されない。アルミナ基板は、アルミナ粒子を成型、焼結することによって作製される。なお、アルミナ基板11aを構成する焼結体の製造に用いられるアルミナ粒子は、求める特性によって異なる粒径のアルミナ粒子や添加剤を含むものを利用できる。
(複数の平坦化層の形成)
第1実施形態では、電子デバイス用基板の複数の平坦化層を形成する工程で、
(1)前記アルミナ基板の上面に、セラミックス粒子を塗布し、
(2)乾燥させること
を繰り返し実施して、焼成前の複数の平坦化層が積層した焼成用基板を得る工程と、
前記焼成用基板を、結晶化が進む温度で焼成する工程とを少なくとも実施する。
第2実施形態では、電子デバイス用基板の複数の平坦化層を形成する工程で、
[1]前記アルミナ基板の上面において、セラミックス粒子を塗布し、乾燥させて、焼成前の平坦化層が1層形成された焼成用基板を得る工程と、
[2]前記焼成用基板を、結晶化が進む温度で焼成する工程と
を繰り返し実施することを少なくとも含む。
アルミナ基板上に、平坦化層を形成するためのセラミックス粒子を塗布する方法は特に限定されない。例えばゾルゲル法を用いることができる。ゾルゲル法はセラミック合成法の一つであり、従来の溶融法や焼結法に比べて低い温度で平坦化層を作製できる。また溶液状態の原料を用いるため、膜厚の薄い平坦化層を作製することができる。または粒子の分散液を利用することもできる。よって、後述する異なる形状の粒子や複数の異なる成分の粒子を加えることができる。更には、焼結性や焼結後の膜質を制御するための添加物、例えば有機バインダーを加えることができる。
平坦化層を構成するためのセラミックス粒子は、前述した平坦化層の成分組成と同様の成分のセラミックス粒子を用いればよい。
前記複数の平坦化層のうち、アルミナ基板と接する平坦化層は、長辺と短辺のアスペクト比が1以上5以下であるか、概球状であるセラミックス粒子を用いて形成することが好ましい。前記形状のセラミックス粒子を用いることで、アルミナ基板の凹凸にセラミックス粒子が侵入しやすく、アルミナ基板と平坦化層の間の空孔の発生を抑制して、アルミナ基板と平坦化層の密着性を高め、熱伝導性などの、電子デバイス用基板と電子デバイスの特性を高めることができる。
アルミナ基板と接する平坦化層は、平均粒子径が50nm以下であるセラミックス粒子を用いて形成することが好ましい。この場合も、アルミナ基板の凹凸にセラミックス粒子が侵入しやすく、アルミナ基板と平坦化層の間の空孔の発生を抑制して、アルミナ基板と平坦化層の密着性を高め、熱伝導性などの、電子デバイス用基板と電子デバイスの特性を高めることができる。平均粒子径の下限は、上記作用効果を確保する観点からは特に限定されないが、現在の製造可能な粒子サイズとして、平均粒子径(一次粒子径)の下限は5nm程度である。前記平均粒子径は、例えばTEMを用いて測定することが挙げられる。
アルミナ基板と接する平坦化層は、長辺と短辺のアスペクト比が1以上5以下であるか概球状であって、かつ、平均粒子径が50nm以下であるアルミナ粒子を用いて形成することがより好ましい。
一実施形態として、アルミナ基板と接する焼成前の平坦化層の厚さは、例えば10nm以上、最大高さRz×1.0以下の範囲とすることが挙げられる。アルミナ基板と接する焼成前の平坦化層の厚さを上記範囲とすれば、アルミナ基板との界面の空孔が生じ難いため好ましい。
一実施形態として、焼成前の複数の平坦化層は、いずれも、サイズと形状が同じアルミナ粒子で構成され、厚さのみが異なっていてもよい。
一実施形態として、複数の平坦化層は、いずれも主成分がアルミナのセラミックス粒子(例えばアルミナ粒子)で形成され、各平坦化層を構成するセラミックス粒子の形状が異なっていることが挙げられる。例えば2層構造の平坦化層の場合、アルミナ基板と接する焼成前の平坦化層を球状のセラミックス粒子で形成し、最表面の焼成前の平坦化層を板状または羽毛状のセラミックス粒子で形成することが挙げられる。この様に形状の異なるセラミックス粒子を用いて複数の平坦化層を形成することで、アルミナ基板と接する平坦化層は、アルミナ基板との密着力が高く、最表面は優れた平滑性を示す電子デバイス用基板が得られる。更に、いずれも主成分がアルミナのセラミックス粒子を用いることで、焼成した際に平坦化層どうしの結着性も良好となる。
以下では、平坦化層を形成するためのセラミックス粒子を塗布する方法の一例として、ゾルゲル法について説明するが、本実施形態に係る平坦化層の形成方法はこれに限定されず、他の方法で形成することも含まれる。
ゾルゲル法では、ゾル材をアルミナ基板11a上に塗布し、乾燥させることによって多層平坦化層11bを形成することができる。粒子分散液を用いる場合でも粒子分散液をアルミナ基板11aに塗布し、乾燥させることにより多層平坦化層11bを形成することができる。塗布の方式としては、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法、転写塗布法、ダイ塗布、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷法などの各種手段が可能である。
上記方法によれば、平坦化層を形成する際に塗布液のレベリング効果が発揮されて、例えば、平坦化層の厚さがアルミナ基板の最大高さRzとほぼ同じであっても、平滑な表面の平坦化層を得ることができる。
レベリング効果を効率良く発現させるには、レベリングに至るまでの時間の制御を目的に、乾燥による増粘制御のための添加剤を加えることができる。また、表面張力の低下によるレベリングの促進も可能であるため、表面張力低下を促進させる添加剤を加えてもよい。添加剤の添加は消泡の効果も期待できる。具体的にはシリコーン系の添加剤やフッ素系の添加剤を用いることができるが、それらに制限されない。また界面活性剤にも陽イオン(アニオン)、陰イオン性(カチオン)、両性、ノニオン系等があるが、添加元の塗布液の特性を悪化させない限り特に制限されない。
上記では、多層平坦化層11bを構成する材料について述べたが、これに限らず、アルミナ基板側に処理を行うことも可能である。例えば濡れ性改善のために、多層平坦化層を構成する材料の特性に応じて、アルミナ基板の、多層平坦化層を形成する面に対し、親水化処理や親油化処理などを行うこともできる。例えば水性の塗布液の場合はアルミナ基板11aに対して親水化処理、具体的にはプラズマ処理を行うことにより濡れ性を向上させることができる。
アルミナゾルとして、種々の製造方法により得られる、ベーマイト結晶、擬ベーマイト結晶、γアルミナ、或いは非結晶のコロイダルアルミナ粒子のゾルが挙げられる。また、その形状が、棒状、繊維状、羽毛状、粒状など種々の形状を有するコロイダルアルミナ粒子のゾルが挙げられる。
アルミナ基板11a上に上記アルミナゾルなどの塗布液を塗布し、乾燥させる。本明細書において、1回の塗布等により層を形成し、乾燥することで得られる、焼成前の平坦化層、またはこれを焼成して得られる平坦化層を、1層とする。
(焼成前の平坦化層)
第1実施形態と第2実施形態のいずれにおいても、焼成前の平坦化層は、平坦化層の形成に用いた原料に由来の粒子形状等を有する。例えば、アルミナ基板と接する焼成前の平坦化層は、長辺と短辺のアスペクト比が1以上5以下、または概球状の粒子で構成されていることが好ましい。該構成によれば、前述のとおり、アルミナ基板の凹凸にセラミックス粒子が侵入しやすく、アルミナ基板と平坦化層の間の空孔の発生を抑制して、アルミナ基板と平坦化層の密着性を高め、熱伝導性などの、電子デバイス用基板と電子デバイスの特性を高めることができる。
アルミナ基板と接する焼成前の平坦化層は、平均粒子径が50nm以下であるセラミックス粒子で構成されていることが好ましい。この場合も、アルミナ基板の凹凸にセラミックス粒子が侵入しやすく、アルミナ基板と平坦化層の間の空孔の発生を抑制して、アルミナ基板と平坦化層の密着性を高め、熱伝導性などの、電子デバイス用基板と電子デバイスの特性を高めることができる。平均粒子径の下限は、上記作用効果を確保する観点からは特に限定されないが、現在の製造可能な粒子サイズとして、平均粒子径(一次粒子径)の下限は5nm程度である。
アルミナ基板と接する焼成前の平坦化層は、長辺と短辺のアスペクト比が1以上5以下であるか概球状であって、かつ、平均粒子径が50nm以下であるアルミナ粒子で形成されていることがより好ましい。
一実施形態として、アルミナ基板と接する焼成前の平坦化層の厚さは、例えば10nm以上、最大高さRz×1.0以下の範囲であることが挙げられる。アルミナ基板と接する焼成前の平坦化層の厚さが上記範囲であれば、アルミナ基板との界面の空孔が生じ難いため好ましい。
一実施形態として、焼成前の複数の平坦化層は、いずれも、サイズと形状が同じアルミナ粒子で構成され、厚さのみが異なっていてもよい。
一実施形態として、複数の焼成前の平坦化層は、いずれも主成分がアルミナのセラミックス粒子(例えばアルミナ粒子)で形成され、各平坦化層を構成するセラミックス粒子の形状が異なっていることが挙げられる。例えば2層構造の平坦化層の場合、アルミナ基板と接する焼成前の平坦化層は球状のセラミックス粒子で形成され、最表面の焼成前の平坦化層は板状または羽毛状のセラミックス粒子で形成されていることが挙げられる。この様に形状の異なるセラミックス粒子で複数の平坦化層が形成されていることで、アルミナ基板と接する平坦化層は、アルミナ基板との密着力が高く、最表面は優れた平滑性を示す電子デバイス用基板が得られる。更に、いずれも主成分がアルミナのセラミックス粒子で形成されることで、焼成した際に平坦化層どうしの結着性も良好となる。
(焼成)
焼成を行うことによって、より緻密な平坦化層を実現することができる。焼成は、複数の平坦化層の上面に形成される抵抗体に、焼成による体積収縮の影響が及ばないように、抵抗体の形成前に実施する。第1実施形態と第2実施形態のいずれの場合も、この焼成は後工程で行うアニール処理と同等以上の温度で行うことが好ましい。結晶化が進む温度での焼成は、例えば主成分がアルミナの場合、γアルミナ、θアルミナ、αアルミナに結晶化が進むことが挙げられ、例えば600~1800℃の温度範囲で行うことが挙げられる。焼成の時間は、後記の実施例の通り、例えば3時間とすることが挙げられる。
第1実施形態の通り、焼成前の平坦化層を複数層形成してから焼成する場合、焼成により各層の間で結合が生じる。平坦化層の主成分が同じであれば結合が進みやすい。また複数の平坦化層の主成分が互いに異なっていれば、化合物・中間組成物が形成されうる。
第2実施形態の通り、セラミックス粒子を塗布し、乾燥させて平坦化層を1層形成する毎に焼成を行ってもよい。例えば、アルミナ基板の上面に、第1平坦化層を形成するためのアルミナ粒子を塗布し、乾燥させた後に、例えば1100℃以上の高温、例えば1280℃で3時間以上焼成することが挙げられる。それによって、例えば図3の、上記高温焼成後の平坦化層の上面写真の通り、αアルミナの生成に伴う収縮によるクラックを意図的に生じさせてもよい。図3は、株式会社日立ハイテクノロジーズの走査型電子顕微鏡(製品名S-4800)を用いて、倍率20,000倍で観察し撮影した電子顕微鏡写真である。上記クラックを形成後、第2平坦化層を形成するための例えばアルミナ粒子含有溶液を、第1平坦化層のクラックに入り込むよう塗布してから、焼成を行うことによって、アンカー効果が生じ、第1平坦化層と第2平坦化層の結着性を向上させることができる。
(チップ抵抗器とその製造方法)
以下では、本開示の実施形態に係る電子デバイス用基板を備えた電子デバイスとして、チップ抵抗器について、図面を参照しながら説明する。なお、本開示の実施形態は、下記図面に示した形態に限定されず、本開示の効果を損なわない範囲で適宜変更することができる。以下の説明において、同じ構成部分には同じ符号を付して、適宜説明を省略している。
まず、図4を用いて本開示の一実施形態における電子デバイス用基板を備えたチップ抵抗器について説明する。本開示の一実施形態におけるチップ抵抗器21は、図4に示す構成を有している。すなわち、チップ抵抗器21は、アルミナ基板11aと多層平坦化層11bからなる電子デバイス用基板11と、一対の上部電極12と、一対の下部電極13と、抵抗体14と、一対の端面電極15とを備えた構成としている。一対の上部電極12は、アルミナ基板11aの一面(上面)の両端部に設けられている。また図4に示すように、一対の下部電極13が、電子デバイス用基板11の裏面の両端部に設けられていてもよい。多層平坦化層11bはアルミナ基板11aの上面全体に設けられており、抵抗体14は、多層平坦化層11bの上面に設けられ、かつ一対の上部電極12間に接続されている。一対の端面電極15は、一対の上部電極12と電気的に接続されるように電子デバイス用基板11の両端面に設けられている。なお、前記図4に例示したチップ抵抗器21は、下部電極13が設けられているが、本開示に係るチップ抵抗器は、下部電極13が設けられていなくてもよい。
本実施形態に係る電子デバイスの製造方法の一例として、チップ抵抗器の製造方法が挙げられる。本開示の好ましい一実施形態に係るチップ抵抗器の製造方法は、上述の通り、アルミナ基板の上面に、セラミックス粒子を、ゾルゲル法または粒子分散液を用いる方法等により塗布し、乾燥させた後、焼成すること、詳細には、第1実施形態または第2実施形態の方法で電子デバイス用基板を製造する工程を含む。チップ抵抗器を含む本実施形態に係る電子デバイスの製造方法は、電子デバイス用基板を、第1実施形態または第2実施形態の方法で製造する以外は特に限定されない。
上記焼成して得られた電子デバイス用基板の平坦化層の上に、例えば後述する実施例に示す通り、スパッタリングなどによりNiCrAlSi合金からなる薄膜を形成し、続いて、フォトリソ工法(レジスト塗布、乾燥、露光、現像、エッチングおよびレジスト剥離)により、上記薄膜をミアンダ形状に加工するパターン形成を行い、抵抗体14を形成することができる。抵抗体14を構成する材料として、上記NiCrAlSi合金の他に、Pt、Ni、Cuの各金属の純金属と各金属を50質量%以上含む合金、例えばPt-Co合金が挙げられる。これらは抵抗温度係数(TCR)が大きい材料であり、これらの材料で形成された抵抗体は、チップ抵抗器としての機能を発揮する以外に、温度計測用の抵抗体としても利用が可能である。
図4における上記アルミナ基板11a、平坦化層11b、抵抗体14以外の形成方法も特に限定されない。例えば上部電極12は、銅からなる材料を、平坦化層11b上にスパッタリングなどの方法で成膜して形成されうる。その他の電極、保護膜、めっき層も、一般的に行われている通り形成することができる。
上記チップ抵抗器21の製造工程では、上記抵抗体14の形成後であって上部電極12等形成前、または、上記抵抗体14と上記電極12等を形成後、アニール処理が施されうる。
以下、実施例を挙げて本開示をより具体的に説明する。本開示は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本開示の技術的範囲に包含される。
[実施例1]
まず、基材となるアルミナ基板上に、次の通り2層の平坦化層を積層したサンプルを作製した。基材となるアルミナ基板は純度が96%以上のアルミナで形成されており、最大高さRzは2.4μmであった。本実施例では、アルミナ基板の上面に形成する平坦化層の合計厚さが、アルミナ基板の最大高さRzの値以上の場合を、平滑性を確保できていると判断し、上記平坦化層の合計厚さがアルミナ基板の最大高さRzよりも小さい場合を、平滑性を確保できていないと判断した。
上記アルミナ基板の上面に、川研ファインケミカル株式会社製のアルミナゾル(商品名:アルミナゾル-10A、結晶形:擬ベーマイト、(短径×長径):10nm×50nm)をスピンコーター(ミカサ株式会社製)にて回転数3000rpmで20秒間処理して塗布を行い、室温乾燥させて、第1平坦化層を形成した。この第1平坦化層の厚さは約1.7μmであった。次いで、日産化学株式会社製のアルミナゾル(商品名:アルミナゾルAS-200、羽毛状粒子、長さ:200nm以上)をスピンコーター(ミカサ株式会社製)にて回転数1000rpmで20秒間処理して塗布を行い、室温乾燥させて、第2平坦化層を形成し、焼成前サンプルを得た。乾燥後の第2平坦化層の厚さは約3.7μmであった。
(アルミナ基板と平坦化層の間の空孔状態の確認)
上記焼成前サンプルの平坦化層表面に垂直な断面において、アルミナ基板と平坦化層の界面を観察できるようにミリング加工を施し、上記界面を含む断面を、株式会社日立ハイテクノロジーズの走査型電子顕微鏡(製品名S-4800)を用いて観察を行い、断面SEM画像を得た。その結果を図5に示す。図5では、アルミナ基板11a上に焼成前の多層平坦化層11c、すなわち、アルミナ基板11a上に焼成前の第1平坦化層111c、その上に焼成前の第2平坦化層112cが積層された構造を有している。なお最表層には薄い層が形成されているが、これは、上記ミリング加工で生じた堆積物16である。
[焼成]
上記サンプルに対し、電気乾燥炉にて700℃で3時間のアニール処理を実施し、積層基板試料を得た。
(平坦化層とアルミナ基板の密着性の評価)
上記積層基板試料を用い、平坦化層とアルミナ基板の密着性を次の通り評価した。
薄膜密着強度試験機(Quad Group社Sebastian)を用い、スタッドピンを接着剤であるエポキシ樹脂で積層基板試料の第2平坦化層の表面に固定させ、スタッドピンを引っ張って荷重をかけ、剥離した時点での強度(破壊強度)を測定するスタッドピン法で、平坦化層とアルミナ基板の密着性を評価した。リファレンスとして、平坦化層を形成せず、スタッドピンをエポキシ樹脂でアルミナ基板の表面に固定させて、上記と同様の試験を行ったときの破壊強度を基準とした。そして、このリファレンスの破壊強度と同等の破壊強度を示した場合を、平坦化層とアルミナ基板の密着性に優れているとして「○」、リファレンスの破壊強度よりも低い破壊強度を示した場合を、平坦化層とアルミナ基板の密着性に劣るとして「×」と評価した。
[発熱試験用サンプルの作製(抵抗体の形成)]
上記積層基板試料の第2平坦化層の上面に、次の通り抵抗体を形成した。詳細には、スパッタリングなどによりNiCrAlSi合金からなる薄膜を第2平坦化層の上に作製し、続いて、フォトリソ工法(レジスト塗布、乾燥、露光、現像、エッチングおよびレジスト剥離)により、上記薄膜を、線幅40μmの線状に加工するパターン形成を行って抵抗体を形成した。また線状の抵抗体の両端にはCuからなる電極を形成して、発熱試験用試料を得た。電極間距離は1.1mmとした。得られた発熱試験用試料を用い、以下に詳述する発熱試験を行った。
(発熱試験)
上記発熱試験用試料を用い、熱伝導性を評価するため、通電時の発熱状態を評価した。初期抵抗値が異なるため初期抵抗値を測定し、投入電力が一定となるように通電を行ったときの発熱状態を、サーモグラフィ(アビオニクス社、Advancedthermo TVS-500EX)にて測定し、最も発熱している箇所の温度を求め、投入電力が1Wの場合に換算した。この発熱試験では、投入電力1Wあたりに換算したときの値がリファレンス(アルミナ基板)の値と同程度以下である場合を、良好な熱伝導性を示すと判断した。
[比較例1]
比較例1では、川研ファインケミカル株式会社製のアルミナゾル(商品名:アルミナゾル-10A、結晶形:擬ベーマイト、(短径×長径):10nm×50nm)を用いて、平坦化層を1層のみ(厚さ1.74μm)、スピンコートの回転数1000rpmで形成した以外は、実施例1と同様に、サンプルを得て、断面顕微鏡観察、平坦化層とアルミナ基板の密着性の評価、および発熱試験を実施した。
[比較例2]
比較例2では、日産化学株式会社製のアルミナゾル(商品名:アルミナゾル200(AS-200)、羽毛状粒子、長さ:200nm以上)を用いて、平坦化層を1層のみ(厚さ3.48μm)、スピンコートの回転数1000rpmで形成した以外は、実施例1と同様に、サンプルを得て、断面顕微鏡観察、平坦化層とアルミナ基板の密着性の評価、および発熱試験を実施した。
[リファレンス]
実施例1で用いたアルミナ基板のみをリファレンスとして用意した。このアルミナ基板を用い、上述の通り密着性試験を行うとともに、発熱試験用試料を形成して発熱試験を行い、リファレンスとしての各測定値を得た。
前記図5と同様に観察し撮影した、比較例1および比較例2の断面顕微鏡観察写真を図6、図7にそれぞれ示す。図6および図7に示す通り、比較例1および比較例2では、焼成前の多層平坦化層11cの代わりに、焼成前の単層平坦化層17を形成している。上記図5~図7の断面顕微鏡観察写真において、白線状部分が空孔である。これら図5~図7から、アルミナ基板の、平坦化層により被覆された表面線に占める、前記アルミナ基板と前記平坦化層の間の空孔の長さの割合は、実施例1と比較例1は、50%以下であるが、比較例2は50%を超えていることがわかる。なお、本実施例では、空孔の長さの割合を焼結前のサンプルで評価したが、この評価結果は、焼結後のサンプルにおいてもほぼ同じであることを別途確認済みである。
実施例1、比較例1および比較例2の、平坦化層の合計厚さ、および平坦化層とアルミナ基板の密着性の評価結果(表1では「密着性試験」と表記)を表1に示す。さらに、実施例1、比較例1、比較例2およびリファレンスの発熱試験の結果も表1に併記する。
Figure 2023004412000002
表1から明らかなように、実施例1は、平坦化層の合計厚さがアルミナ基板の最大高さRzの値(2.4μm)を超えており、電子デバイス用基板表面の平滑性を確保できていることがわかる。また、図5から明らかなように、実施例1では、アルミナ基板と第1平坦化層の間の空孔が十分に抑制され、その結果、アルミナ基板と平坦化層の密着性が高く、発熱試験において、熱伝導性にも優れており、リファレンス(アルミナ基板のみ)とほぼ同じであった。
一方、比較例1では、図6から明らかなように、アルミナ基板と平坦化層の間の空孔が抑制され、アルミナ基板と平坦化層の密着性を確保できた。また、発熱試験の結果もリファレンス(アルミナ基板のみ)とほぼ同じであった。しかし、平坦化層の厚さがアルミナ基板の最大高さRzの値よりも小さく、平滑性を確保できなかった。
比較例2では、表1の結果から、平坦化層の厚さがアルミナ基板の最大高さRzの値を超えており、平滑性は確保されている。しかし図7に示される通り、アルミナ基板と平坦化層の間に空孔が連続的に発生しており、アルミナ基板と平坦化層の密着性が悪くなった。また発熱試験において、熱伝導性に劣る結果となった。比較例2において、密着性が悪く、かつ熱伝導性がリファレンス(アルミナ基板のみ)よりも劣る理由としては、アルミナ基板と平坦化層の間の空孔が原因であると推定できる。空孔が多数存在すると、アルミナ基板との密着性が劣るだけではなく、空孔(空気の層)が断熱として機能するため、部分的な熱伝導しか得られず熱伝導性に劣ると考えられる。
比較例1と比較例2はどちらもアルミナで形成された単層の平坦化層である。しかし、平坦化層の形成に使用したアルミナの粒子形状は異なっており、比較例1の方が、アルミナ基板と平坦化層の間の空孔が抑制された結果となった。この結果から、アルミナ基板と平坦化層の間の空孔をより抑制するには、比較例1で平坦化層の形成に使用したアルミナの粒子形状の通り、球形に近く、また粒径が小さい粒子を用いることが有効であることがわかる。
本開示の電子デバイス用基板は、表面が十分平坦化されていると共に、アルミナ基板と平坦化層の密着性に優れ、熱伝導性にも優れている。よって、優れた耐久性の求められる電子デバイスに用いる基板部品として有用である。
11 電子デバイス用基板
11a アルミナ基板
11b 多層平坦化層
111b 第1平坦化層
112b 第2平坦化層
11c 焼成前の多層平坦化層
111c 焼成前の第1平坦化層
112c 焼成前の第2平坦化層
12 上部電極
13 下部電極
14 抵抗体
15 端面電極
21 チップ抵抗器
16 堆積物
17 焼成前の単層平坦化層
18 空孔
19 アルミナ基板の露出部

Claims (15)

  1. アルミナ粒子の焼結体からなるアルミナ基板と、
    前記アルミナ基板の上面に積層された、複数の平坦化層とを備え、
    前記複数の平坦化層のうち、少なくとも1つは、主成分がアルミナの平坦化層であることを特徴とする電子デバイス用基板。
  2. 前記主成分がアルミナの平坦化層は、アルミナ基板と接する平坦化層である、請求項1に記載の電子デバイス用基板。
  3. 前記複数の平坦化層のうち、アルミナ基板と接する平坦化層の厚さが最も薄い、請求項1または2に記載の電子デバイス用基板。
  4. 前記主成分がアルミナの平坦化層は、主成分のアルミナ以外に、シリカとジルコニアのうちの1以上を含む、請求項1~3のいずれかに記載の電子デバイス用基板。
  5. 前記複数の平坦化層のうち、少なくとも1つは、主成分がアルミナ以外のセラミックスの平坦化層である、請求項1~4のいずれかに記載の電子デバイス用基板。
  6. 前記主成分がアルミナ以外のセラミックスの平坦化層は、主成分がシリカまたはジルコニアである、請求項5に記載の電子デバイス用基板。
  7. 前記複数の平坦化層は、いずれも主成分がアルミナの平坦化層であって、少なくとも1つの平坦化層は粒子形状が他の平坦化層と異なる、請求項1~4のいずれかに記載の電子デバイス用基板。
  8. 前記複数の平坦化層のうち、アルミナ基板と接する平坦化層は、該平坦化層を構成する粒子が、他の平坦化層を構成する粒子よりも、平均粒子径が小さくかつ長辺と短辺のアスペクト比が小さい、請求項1~7のいずれかに記載の電子デバイス用基板。
  9. 前記複数の平坦化層の積層方向断面において、
    前記アルミナ基板の、前記平坦化層により被覆された表面線に占める、前記アルミナ基板と前記平坦化層の間の空孔の長さの割合が、50%以下である、請求項1~8のいずれかに記載の電子デバイス用基板。
  10. 請求項1~9のいずれかに記載の電子デバイス用基板を備えていることを特徴とする電子デバイス。
  11. 請求項1~9のいずれかに記載の電子デバイス用基板の平坦化層の上面に、抵抗体が少なくとも配置されていることを特徴とするチップ抵抗器。
  12. 請求項10の電子デバイスの製造方法であって、
    アルミナ粒子の焼結体からなるアルミナ基板の上面に、
    セラミックス粒子を塗布し、乾燥させることを繰り返し実施して、焼成前の複数の平坦化層が積層した焼成用基板を得ることと、
    前記焼成用基板を、結晶化が進む温度で焼成することにより、
    複数の平坦化層が形成された電子デバイス用基板を得ることを含む、ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
  13. 請求項10の電子デバイスの製造方法であって、
    アルミナ粒子の焼結体からなるアルミナ基板の上面に、
    セラミックス粒子を塗布し、乾燥させて、焼成前の平坦化層を1層形成した焼成用基板を得ることと、
    前記焼成用基板を、結晶化が進む温度で焼成することを、繰り返し実施することにより、
    複数の平坦化層が形成された電子デバイス用基板を得ることを含む、ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
  14. 前記複数の平坦化層のうち、アルミナ基板と接する平坦化層は、長辺と短辺のアスペクト比が1以上5以下であるか概球状であるセラミックス粒子を用いて形成する、請求項12または13に記載の電子デバイスの製造方法。
  15. 前記複数の平坦化層のうち、アルミナ基板と接する平坦化層は、平均粒子径が50nm以下であるセラミックス粒子を用いて形成する、請求項12~14のいずれかに記載の電子デバイスの製造方法。
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