JP2023003555A - 弾性波デバイス、フィルタ、マルチプレクサ、およびウエハ - Google Patents

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Abstract

【課題】スプリアスを抑制することが可能な弾性波デバイス及び該弾性波デバイスを含むフィルタを提供する。【解決手段】弾性波デバイス100は、支持基板10と、支持基板10上に設けられる圧電層14と、圧電層14上に設けられ、複数の電極指23を有する一対の櫛型電極22と、複数の層11a~11dと、を有する。複数の層11a~11dは、支持基板10と圧電層14の間に、伝搬するバルク波の音速が異なる領域15、16がX方向に繰り返し並んで設けられている。複数の層11a~11d各々において、領域15、16は、厚さ方向で対向する一方の面から他方の面にかけて設けられる。複数の層11a~11dのうち隣接する一方の層の領域15、16と他方の層の領域15、16とは、少なくとも一部においてバルク波の音速が略同じ領域15同士がX方向にずれて配置されている境界層11とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、弾性波デバイス、フィルタ、マルチプレクサ、およびウエハに関する。
スマートフォン等の通信機器に用いられる弾性波共振器として弾性表面波共振器が知られている。弾性表面波共振器を形成する圧電層を支持基板に張り付けることが知られている。支持基板と圧電層の間に温度補償層を設けることが知られている(例えば特許文献1)。支持基板と圧電層の間に圧電層より音速の低い低音速膜を設け、低音速膜と支持基板の間に圧電層より音速の速い高音速膜を設けることが知られている(例えば特許文献2)。
特開2019-201345号公報 特開2015-115870号公報
特許文献2に記載された発明は、支持基板と高音速膜の間の支持基板の上面を粗面とすることでスプリアスを抑制している。しかしながら、支持基板の上面をスプリアスの抑制に適した粗面とするための加工が必要となり製造コストが増大してしまう。このため、他の方法によってスプリアスを抑制することが求められている。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、スプリアスを抑制することを目的とする。
本発明は、支持基板と、前記支持基板上に設けられる圧電層と、前記圧電層上に設けられ、複数の電極指を有する一対の櫛型電極と、前記支持基板と前記圧電層の間に設けられ、伝搬するバルク波の音速が異なる複数の領域が前記複数の電極指の配列方向に繰り返し並んで設けられた複数の層が積層されていて、前記複数の層各々において前記複数の領域は厚さ方向で対向する一方の面から他方の面にかけて設けられ、前記複数の層のうち隣接する一方の層の前記複数の領域と他方の層の前記複数の領域とは少なくとも一部においてバルク波の音速が略同じ領域が前記配列方向にずれて配置されている絶縁層と、を備える弾性波デバイスである。
上記構成において、前記複数の層のうち最も前記圧電層側に位置する層の前記複数の領域は、前記複数の領域各々が前記複数の電極指のうちの1本の電極指の前記配列方向における全体に重なるように前記配列方向に繰り返し並んでいる構成とすることができる。
上記構成において、前記絶縁層と前記圧電層の間に設けられ、前記圧電層の弾性定数の温度係数の符号とは弾性定数の温度係数の符号が反対である温度補償層を備え、前記温度補償層の前記絶縁層側の面から前記圧電層の前記一対の櫛型電極が設けられた面までの距離は2λ以下であり、前記絶縁層は、前記温度補償層より伝搬するバルク波の音速が速く、前記最も圧電層側に位置する層は、前記温度補償層に接している構成とすることができる。
上記構成において、前記複数の領域各々の前記配列方向の長さは、前記複数の電極指の平均ピッチの0.5倍以上1倍以下である構成とすることができる。
上記構成において、前記複数の領域各々の前記厚さ方向の長さは、前記複数の電極指の平均ピッチの0.5倍以上4倍以下である構成とすることができる。
上記構成において、前記隣接する一方の層の前記複数の領域は、前記他方の層の前記複数の領域に対して、前記複数の電極指の平均ピッチの0.5倍以上1倍以下の位相差で前記配列方向に繰り返し並んでいる構成とすることができる。
上記構成において、前記配列方向に平行な断面視にて前記複数の領域の間の境界は傾斜している構成とすることができる。
上記構成において、前記複数の領域は第1領域と前記第1領域より伝搬するバルク波の音速が遅い第2領域とで構成され、前記第2領域は、前記圧電層と比べて、伝搬するバルク波の音速が1.01倍以上1.1倍以下であり、前記第1領域は、前記第2領域に比べて、伝搬するバルク波の音速が1.2倍以上である構成とすることができる。
本発明は、上記に記載の弾性波デバイスを含むフィルタである。
本発明は、上記に記載のフィルタを含むマルチプレクサである。
本発明は、支持基板と、前記支持基板上に設けられ、回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層または回転Yカットニオブ酸リチウム層である圧電層と、前記支持基板と前記圧電層の間に設けられ、伝搬するバルク波の音速が異なる複数の領域が前記圧電層の結晶方位のX軸方向に繰り返し並んで設けられた複数の層が積層されていて、前記複数の層各々において前記複数の領域は厚さ方向で対向する一方の面から他方の面にかけて設けられ、前記複数の層のうち隣接する一方の層の前記複数の領域と他方の層の前記複数の領域とは少なくとも一部においてバルク波の音速が略同じ領域が前記X軸方向にずれて配置されている絶縁層と、を備えるウエハである。
本発明によれば、スプリアスを抑制することができる。
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの平面図、図1(b)は、断面図である。 図2(a)から図2(d)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。 図3(a)から図3(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。 図4(a)から図4(c)は、第1のシミュレーションに用いたモデルA、B、Cの断面図である。 図5(a)は、モデルCのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果であり、図5(b)は、3000MHz~4500MHzの周波数範囲におけるモデルA~Cのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果である。 図6(a)から図6(c)は、第2のシミュレーションに用いたモデルC、D、Eの断面図である。 図7(a)は、モデルC、Dのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果であり、図7(b)は、3000MHz~4500MHzの周波数範囲におけるモデルC~Eのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果である。 図8(a)および図8(b)は、第3のシミュレーションに用いたモデルF、Gの断面図である。 図9(a)は、モデルF、Gのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果であり、図9(b)は、3000MHz~4500MHzの周波数範囲におけるモデルF、Gのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果である。 図10(a)から図10(g)は、第4のシミュレーションに用いたモデルE、H~Mの断面図である。 図11(a)から図11(d)は、モデルAとモデルE、H~Jのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果である。 図12(a)から図12(c)は、モデルAとモデルK~Mのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果である。 図13は、境界層を構成する各層における領域のZ方向の長さと高周波スプリアスとの関係を示すグラフである。 図14(a)から図14(d)は、モデルFの領域の密度を振ったときのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果(その1)である。 図15(a)から図15(c)は、モデルFの領域の密度を振ったときのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果(その2)である。 図16(a)および図16(b)は、境界層を構成する各層における領域の密度または音速と高周波スプリアスとの関係を示すグラフである。 図17は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイスの断面図である。 図18は、実施例2に係るフィルタの回路図である。 図19は、実施例3に係るデュプレクサのブロック図である。 図20(a)は、実施例4に係るウエハの平面図、図20(b)は、断面図である。
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の平面図、図1(b)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の断面図である。電極指23の配列方向をX方向、電極指23の延伸方向をY方向、支持基板10および圧電層14の積層方向(厚さ方向)をZ方向とする。X方向、Y方向、およびZ方向は、圧電層14の結晶方位のX軸方向およびY軸方向とは必ずしも対応しない。圧電層14が回転YカットX伝搬の場合、X方向は結晶方位のX軸方向となる。
図1(a)および図1(b)に示すように、弾性波デバイス100は、支持基板10上に圧電層14が設けられている。支持基板10と圧電層14の間に温度補償層12が設けられている。温度補償層12と支持基板10の間に境界層11が設けられている。温度補償層12と圧電層14の間に接合層13が設けられている。なお、接合層13は設けられていない場合でもよい。支持基板10と境界層11の界面は平坦面であり、境界層11と温度補償層12の界面は平坦面である。また、温度補償層12と圧電層14または接合層13の界面も平坦面である。境界層11、温度補償層12、接合層13、および圧電層14の厚さをそれぞれT1、T2、T3、T4とする。
境界層11は、複数の層11a、11b、11c、11dが積層されることにより形成されている。複数の層11a~11dの間の界面は平坦面である。複数の層11a~11dは、伝搬するバルク波の音速が異なる複数の領域15、16を有する。領域15、16は、複数の層11a~11d各々においてZ方向で対向する一方の面から他方の面にかけて設けられ、かつ、X方向に交互に並んでいる。複数の層11a~11dのうち隣接する層は、少なくとも一部においてバルク波の音速が略同じ領域15同士および/または領域16同士がX方向にずれて配置されている。
圧電層14上に弾性波共振器20が設けられている。弾性波共振器20はIDT(Interdigital Transducer)21と反射器25を有する。反射器25はIDT21のX方向の両側に設けられている。IDT21および反射器25は、圧電層14上の金属膜27により形成される。
IDT21は、対向する一対の櫛型電極22を備える。櫛型電極22は、複数の電極指23と、複数の電極指23が接続されたバスバー24と、を備える。一対の櫛型電極22の電極指23が交差する領域が交差領域26である。交差領域26の長さが開口長である。一対の櫛型電極22は、交差領域26の少なくとも一部において電極指23がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。交差領域26において複数の電極指23が励振する弾性波は、主にX方向に伝搬する。一対の櫛型電極22のうち一方の櫛型電極22のピッチがほぼ弾性波の波長λとなる。複数の電極指23のピッチをDとすると、ピッチDのほぼ2倍が弾性波の波長λとなる。反射器25は、IDT21の電極指23が励振した弾性波(弾性表面波)を反射する。これにより、弾性波はIDT21の交差領域26内に閉じ込められる。
圧電層14は、例えば単結晶タンタル酸リチウム層または単結晶ニオブ酸リチウム層であり、例えば回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層または回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層である。
支持基板10は、例えばサファイア基板、シリコン基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、アルミナ基板、または炭化シリコン基板である。サファイア基板は単結晶Al基板であり、シリコン基板は単結晶または多結晶のシリコン基板であり、スピネル基板は多結晶MgAl基板である。石英基板はアモルファスSiO基板であり、水晶基板は単結晶SiO基板であり、炭化シリコン基板は多結晶または単結晶のSiC基板である。支持基板10のX方向の線膨張係数は圧電層14のX方向の線膨張係数より小さい。これにより、弾性波共振器20の周波数温度依存性を小さくできる。
温度補償層12は、圧電層14の弾性定数の温度係数の符号と反対の符号の弾性定数の温度係数を有する。例えば、圧電層14の弾性定数の温度係数は負であり、温度補償層12の弾性定数の温度係数は正である。温度補償層12は、例えば無添加または弗素等の添加元素を含む酸化シリコン(SiO)層であり、例えばアモルファス層である。温度補償層12が設けられることで、弾性波共振器20の周波数温度係数を小さくできる。温度補償層12が酸化シリコンを主成分とする場合、温度補償層12を伝搬するバルク波の音速は圧電層14を伝搬するバルク波の音速より遅くなる。酸化シリコンを主成分とするとは、酸素およびシリコンの合計が50at%(原子%)以上であり、80at%以上でもよい。酸素およびシリコンそれぞれが10at%以上であり、20at%以上でもよい。
境界層11を伝搬するバルク波の音速は、温度補償層12を伝搬するバルク波の音速より速い。すなわち、境界層11を構成する複数の層11a~11dが有する領域15、16の両方が温度補償層12よりもバルク波の音速が速い。これにより、圧電層14および温度補償層12内にメイン応答のエネルギーが閉じ込められる。境界層11は、例えば多結晶または非晶質であり、例えば酸化アルミニウム層、シリコン層、窒化アルミニウム層、窒化シリコン層、または炭化シリコン層である。境界層11として材料の異なる複数の層が設けられていてもよい。
境界層11を形成する複数の層11a~11dに設けられる領域15、16は、伝搬するバルク波の音速が異なるように、材料が異なっていてもよいし、材料が同じで密度が異なっていてもよい。また、領域15、16は、その他の方法によって伝搬するバルク波の音速が異なっていてもよい。なお、領域15、16は、少なくとも一方が温度補償層12よりもバルク波の音速が速い場合でもよい。
支持基板10を伝搬するバルク波の音速は、境界層11を伝搬するバルク波の音速より速く、例えば境界層11を伝搬するバルク波の音速の1.1倍以上が好ましい。支持基板10を伝搬するバルク波の音速は、境界層11を伝搬するバルク波の音速の2.0倍以下が好ましい。
温度補償層12を伝搬するバルク波の音速は、圧電層14を伝搬するバルク波の音速より速くてもよいが、弾性波が温度補償層12内に存在し易くなるために、圧電層14を伝搬するバルク波の音速より遅い場合が好ましく、0.99倍以下が好ましい。温度補償層12を伝搬するバルク波の音速が遅くなり過ぎると、圧電層14内に弾性波が存在し難くなるため、温度補償層12を伝搬するバルク波の音速は、圧電層14を伝搬するバルク波の音速の0.9倍以上が好ましい。
接合層13を伝搬するバルク波の音速は、温度補償層12を伝搬するバルク波の音速より速い。接合層13は、例えば多結晶または非晶質であり、例えば酸化アルミニウム層、シリコン層、窒化アルミニウム層、窒化シリコン層、または炭化シリコン層である。境界層11および接合層13を伝搬するバルク波の音速は圧電層14を伝搬するバルク波の音速より速い場合が好ましい。
金属膜27は、例えばアルミニウム、銅、またはモリブデンを主成分とする膜である。電極指23と圧電層14の間にチタン膜またはクロム膜等の密着膜が設けられていてもよい。密着膜は電極指23より薄い。電極指23を覆うように絶縁膜が設けられていてもよい。絶縁膜は保護膜および温度補償膜として機能してもよい。
IDT21は、圧電層14内に主モードである弾性表面波を励振するとき、バルク波等の不要波も励振する。弾性表面波のエネルギーが存在する範囲は圧電層14の上面から2λ程度の深さまでであり、特に圧電層14の上面からλまでの範囲に存在する。一方、バルク波等の不要波は圧電層14の上面から10λ以上まで存在する。バルク波が支持基板10の上面で反射してIDT21に戻るとスプリアスの原因となる。
スプリアスを抑制するために、支持基板10の上面に凹凸を形成して、バルク波を散乱させることが提案されている。しかしながら、支持基板10の上面にバルク波の散乱に適した凹凸を形成しようとすると、製造コストが増大してしまう。そこで、実施例1では、支持基板10の上面に凹凸を形成する代わりに、境界層11を複数の層11a~11dで形成している。この点の詳細については後述する。
[製造方法]
図2(a)から図3(c)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法を示す断面図である。図2(a)から図3(c)に示す製造方法はウエハ状態で行われ、最後にウエハを個片化することで弾性波デバイス100が形成される。ウエハには複数の弾性波デバイス100が形成されるが、図2(a)から図3(c)では、1つの弾性波デバイスのみを図示している。
図2(a)に示すように、表面が平坦なウエハ状の支持基板10を準備する。支持基板10の表面の算術平均粗さRaは例えば1nm以下である。支持基板10上に例えばスパッタリング法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法により絶縁膜15aを成膜し、その後、例えばエッチング法により絶縁膜15aを除去することで、パターニングされた絶縁膜15aを形成する。なお、絶縁膜15aは例えばリフトオフ法により形成してもよい。
図2(b)に示すように、支持基板10上に例えばスパッタリング法またはCVD法により絶縁膜15aとは伝搬するバルク波の音速が異なる絶縁膜16aを成膜する。絶縁膜15aと16aは材料を異ならせることで伝搬するバルク波の音速が異なるようにしてもよいし、成膜方法を変えることで材料は同じで密度を異ならせることで伝搬するバルク波の音速が異なるようにしてもよいし、その他の方法で伝搬するバルク波の音速が異なるようにしてもよい。その後、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて絶縁膜15aが露出するまで絶縁膜16aを研磨する。これにより、絶縁膜15aからなる領域15と絶縁膜16aからなる領域16とを有する層11aが形成される。
図2(c)に示すように、層11a上のレジストパターン90を形成した後、例えばスパッタリング法またはCVD法により絶縁膜16aを成膜する。
図2(d)に示すように、レジストパターン90を除去した後、層11a上に例えばスパッタリング法またはCVD法により絶縁膜15aを成膜する。その後、例えばCMP法を用いて絶縁膜16aが露出するまで絶縁膜15aを研磨する。これにより、絶縁膜15aからなる領域15と絶縁膜16aからなる領域16とを有する層11bが形成される。
図3(a)に示すように、図2(c)および図2(d)と同様の工程を繰り返し行って層11c、11dを形成する。これにより、層11a~11dからなる境界層11が形成される。その後、境界層11上に例えばスパッタリング法またはCVD法により温度補償層12を成膜する。
図3(b)に示すように、接合層13を介し温度補償層12の上面に圧電基板17を接合する。接合層13を介さずに温度補償層12と圧電基板17とを接合してもよい。接合には例えば表面活性化法を用いる。
図3(c)に示すように、圧電基板17の上面を例えばCMP法を用いて研磨し、薄層化した圧電層14とする。その後、圧電層14の上面に金属膜27からなる弾性波共振器20を形成する。最後にウエハを個片化することで、弾性波デバイス100が形成される。
[第1のシミュレーション]
スプリアスの評価を行った第1のシミュレーションについて説明する。第1のシミュレーションは境界層11の構造を異ならせたモデルA、B、Cに対して行い、各モデルのアドミッタンスをシミュレーションした。モデルA、B、Cにおいて共通したシミュレーション条件は以下である。境界層11の領域15と領域16は、材料の密度を異ならせることで伝搬するバルク波の音速を異ならせた。領域15、16は、交差領域26全体に後述する図に示された状態で設けられている。なお、後述する第2から第5のシミュレーションにおいても、以下のシミュレーション条件は共通である。
弾性波の波長λ:1.5μm
支持基板10:サファイア基板
境界層11:厚さが4λの酸化アルミニウム層
境界層11の領域15:密度が3150kg/mの酸化アルミニウム
境界層11の領域16:密度が4500kg/mの酸化アルミニウム
温度補償層12:厚さが0.2λの酸化シリコン層
圧電層14:厚さが0.3λの42°YカットX伝搬タンタル酸リチウム層
電極指23:厚さが60nmのチタン膜上に設けられた厚さが90nmのアルミニウム膜の積層膜
電極指23の対数:1対
デューティ比:50%
開口長:λ/32
図4(a)から図4(c)は、第1のシミュレーションに用いたモデルA、B、Cの断面図である。なお、図4(a)から図4(c)では、図の明瞭化のために、支持基板10、温度補償層12、圧電層14、および電極指23のハッチングを省略するとともに、境界層11については領域16にのみハッチングを付し、領域15のハッチングは省略している(以下の同様な図においても同じ)。
図4(a)に示すように、モデルAは、境界層11全体を領域15とした。すなわち、境界層11は全体が密度3150kg/mの酸化アルミニウムで形成されている。このように、モデルAは、境界層11が領域15、16を有する複数の層が積層されていないことから、比較例に相当するモデルである。
図4(b)に示すように、モデルBは、境界層11を1対の電極指23下においてX方向に2分割し、その一方を密度が3150kg/mの酸化アルミニウムからなる領域15とし、他方を密度が4500kg/mの酸化アルミニウムからなる領域16とした。すなわち、境界層11はX方向に並んだ領域15と領域16を有する1つの層11aで構成されているとした。モデルBにおいては、領域15、16のZ方向の長さは4λであり、X方向の長さは0.5λである。このように、モデルBは、境界層11が領域15、16を有する複数の層が積層されていないことから、比較例に相当するモデルである。
図4(c)に示すように、モデルCは、境界層11を1対の電極指23下においてZ方向およびX方向それぞれ2分割し、4つの領域のうちの+Zかつ+Xに位置する領域および-Zかつ-Xに位置する領域を密度が3150kg/mの酸化アルミニウムからなる領域15とし、+Zかつ-Xに位置する領域および-Zかつ+Xに位置する領域を密度が4500kg/mの酸化アルミニウムからなる領域16とした。すなわち、境界層11はX方向に並んだ領域15と領域16を各々有する2つの層11a、11bが積層されているとした。層11aの領域15と層11bの領域15はX方向にずれて配置され、層11aの領域16と層11bの領域16はX方向にずれて配置されている。モデルCにおいては、層11a、11b各々の領域15、16のZ方向の長さは2λであり、X方向の長さは0.5λである。このように、モデルCは、実施例に相当するモデルである。
図5(a)は、モデルCのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果であり、図5(b)は、3000MHz~4500MHzの周波数範囲におけるモデルA~Cのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果である。図5(a)および図5(b)に示すように、モデルCはモデルA、Bに比べて高周波スプリアスが抑制された結果であった。モデルCで高周波スプリアスが抑制されたのは以下のためと考えられる。モデルCの境界層11は、伝搬するバルク波の音速が異なる領域15、16がX方向に並んだ2つの層11a、11bが積層されている。層11aの領域15と層11bの領域15はX方向にずれて配置され、層11aの領域16と層11bの領域16はX方向にずれて配置されている。これにより、圧電層14から温度補償層12を通過して境界層11に到達したバルク波は層11a、11bの領域15、16により散乱され、その結果、高周波スプリアスが抑制されたと考えられる。
実施例1によれば、図1(b)のように、支持基板10と圧電層14の間に境界層11(絶縁層)が設けられている。境界層11は、伝搬するバルク波の音速が異なる複数の領域15、16がX方向に繰り返し並んだ複数の層11a~11dが積層されている。複数の層11a~11d各々において領域15、16はZ方向で対向する一方の面から他方の面にかけて設けられている。複数の層11a~11dのうち隣接する一方の層の領域15、16と他方の層の領域15、16とは少なくとも一部においてバルク波の音速が略同じ領域15同士および/または領域16同士がX方向にずれて配置されている。これにより、バルク波が層11a~11dの領域15、16により散乱されるため、バルク波に起因したスプリアスを抑制することができる。バルク波の音速が略同じとは、製造誤差程度に異なる場合を許容する。
なお、実施例1において、バルク波を散乱してスプリアスを抑制する点から、複数の層11a~11dのうち隣接する一方の層の領域15、16と他方の層の領域15、16とは全てにおいてバルク波の音速が略同じ領域15同士および領域16同士がX方向にずれて配置されている場合が好ましい。
バルク波を境界層11に到達させる点から、温度補償層12の厚さT2は、電極指23の平均ピッチDの1.5倍(0.75λ)以下が好ましく、1倍(0.5λ)以下がより好ましい。温度補償層12の温度補償機能を発揮させる点から、温度補償層12の厚さT2は、電極指23の平均ピッチDの0.2倍(0.1λ)以上が好ましく、0.4倍(0.2λ)以上がより好ましい。電極指23の平均ピッチDは、IDT21のX方向の幅を電極指23の本数で除することで算出できる。
境界層11は、4つの層11a~11dが積層されている場合に限られず、2層以上の層が積層されている場合であればよい。境界層11によってバルク波を散乱させる点からは、境界層11が有する層の積層数は多い方が好ましく、3層以上が好ましく、5層以上がより好ましく、8層以上が更に好ましい。また、境界層11の厚さT1が薄いとスプリアスが大きくなることから、境界層11の厚さT1は、電極指23の平均ピッチDの1.4倍(0.7λ)以上が好ましく、2倍(λ)以上がより好ましく、4倍(2λ)以上が更に好ましい。
弾性表面波のエネルギーを圧電層14および温度補償層12内に閉じ込める観点から、温度補償層12の境界層11側の面と圧電層14の櫛型電極22側の面との距離(T2+T3+T4)は、電極指23の平均ピッチDの4倍(2λ)以下が好ましく、3倍(1.5λ)以下がより好ましい。弾性表面波のエネルギーを温度補償層12内に存在させる観点から、圧電層14の厚さT4は、電極指23の平均ピッチDの2倍(λ)以下が好ましく、1倍(0.5λ)以下がより好ましい。圧電層14が薄くなり過ぎると弾性波が励振され難くなることから、圧電層14の厚さT4は、電極指23の平均ピッチDの0.2倍(0.1λ)以上が好ましく。0.4倍(0.2λ)以上がより好ましい。
[第2のシミュレーション]
図6(a)から図6(c)は、第2のシミュレーションに用いたモデルC、D、Eの断面図である。図6(a)のモデルCは、第1のシミュレーションで説明しているため、ここでは説明を省略する。
図6(b)に示すように、モデルDは、境界層11を1対の電極指23下においてZ方向に2分割、X方向に4分割し、+Z側の4つの領域のうち+X側および-X側の端に位置する2つの領域を領域15とし、中央に位置する2つの領域を領域16とした。-Z側の4つの領域のうち中央に位置する2つの領域を領域15とし、+X側および-X側の端に位置する2つの領域を領域16とした。
図6(c)に示すように、モデルEは、境界層11を1対の電極指23下においてZ方向に2分割、X方向に4分割し、+Z側の4つの領域のうち+X側に位置する2つの領域を領域15とし、-X側に位置する2つの領域を領域16とした。-Z側の4つの領域のうち+X側および-X側の端に位置する2つの領域を領域15とし、中央に位置する2つの領域を領域16とした。
このように、モデルC、D、Eは全て、境界層11はX方向に並んだ領域15と領域16を各々有する2つの層11a、11bが積層され、層11aの領域15と層11bの領域15はX方向にずれて配置され、層11aの領域16と層11bの領域16はX方向にずれて配置されている。モデルC、D、Eにおいて、層11a、11b各々の領域15、16のZ方向の長さは2λであり、X方向の長さは0.5λである。
モデルCでは、層11aの領域15、16は各々、1本の電極指23のX方向全体に重なって設けられ、層11bの領域15、16も各々、1本の電極指23のX方向全体に重なって設けられている。モデルDでは、層11aの領域15は2本の電極指23それぞれのX方向の半分に重なって設けられ、領域16も電極指23の半分に重なって設けられている。同様に、層11bの領域16は2本の電極指23それぞれのX方向の半分に重なって設けられ、領域15も電極指23の半分に重なって設けられている。モデルEでは、層11aの領域16は2本の電極指23それぞれのX方向の半分に重なって設けられ、領域15も電極指23の半分に重なって設けられている。層11bの領域15、16は各々、1本の電極指23のX方向全体に重なって設けられている。
図7(a)は、モデルC、Dのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果であり、図7(b)は、3000MHz~4500MHzの周波数範囲におけるモデルC~Eのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果である。図7(a)および図7(b)に示すように、モデルCはモデルD、Eに比べて高周波スプリアスが抑制され、モデルEはモデルDに比べて高周波スプリアスが抑制された結果であった。
第2のシミュレーションの結果から、実施例1において、境界層11を構成する複数の層11a~11dのうち最も圧電層14側に位置する層11dの領域15、16は、領域15、16各々が1本の電極指23のX方向全体に重なるようにX方向に並んでいることが好ましい。これにより、モデルC、Eのように、高周波スプリアスを抑制することができる。また、実施例1において、層11dは温度補償層12に接している層である場合が好ましい。これにより、モデルC、Eのように、高周波スプリアスを抑制することができる。また、実施例1において、境界層11を構成する複数の層11a~11dの全ての層において、領域15、16各々が1本の電極指23のX方向全体に重なるようにX方向に並んでいることが好ましい。これにより、モデルCのように、高周波スプリアスを抑制することができる。
また、図6(a)に示すように、モデルCでは、層11aの領域15、16は、層11bの領域15、16に対して、X方向に0.5λずれて並んでいる。図6(c)に示すように、モデルEでは、層11aの領域15、16は、層11bの領域15、16に対して、X方向に0.25λずれて並んでいる。図7(b)に示すように、モデルC、Eは共に高周波スプリアスが抑制されている。したがって、実施例1において、高周波スプリアスを抑制する点から、複数の層11a~11dのうち隣接する一方の層の領域15、16は、他方の層の領域15、16に対して、0.25λ以上0.5λ以下の位相差でX方向に並んでいる場合が好ましい。言い換えると、複数の層11a~11dのうち隣接する一方の層の領域15、16は、他方の層の領域15、16に対して、複数の電極指23の平均ピッチDの0.5倍以上1倍以下の位相差でX方向に並んでいる場合が好ましい。
図7(b)に示すように、モデルCはモデルEに比べて高周波スプリアスが抑制されている。したがって、高周波スプリアスを抑制する点から、隣接する一方の層の領域15、16は、他方の層の領域15、16に対して、0.3λ以上0.5λ以下の位相差で並んでいる場合が好ましく、0.4λ以上0.5λ以下の位相差で並んでいる場合がより好ましく、0.45λ以上0.5λ以下の位相差で並んでいる場合が更に好ましい。言い換えると、隣接する一方の層の領域15、16は、他方の層の領域15、16に対して、複数の電極指23の平均ピッチDの0.6倍以上1倍以下の位相差で並んでいる場合が好ましく、0.8倍以上1倍以下の位相差で並んでいる場合がより好ましく、0.9倍以上1倍以下の位相差で並んでいる場合が更に好ましい。
[第3のシミュレーション]
図8(a)および図8(b)は、第3のシミュレーションに用いたモデルF、Gの断面図である。図8(a)に示すように、モデルFは、境界層11を1対の電極指23下においてZ方向に4分割、X方向に2分割し、4つの層11a~11dの領域15、16が格子状に配置されるようにした。層11a~11dの領域15、16は各々、1本の電極指23全体に重なって設けられている。モデルFにおいて、層11a~11dの領域15、16のZ方向の長さはλであり、X方向の長さは0.5λである。
図8(b)に示すように、モデルGは、境界層11を1対の電極指23下においてZ方向およびX方向にそれぞれ4分割し、4つの層11a~11dの領域15、16が格子状に配置されるようにした。層11a~11dの領域15、16は各々、1本の電極指23の半分に重なって設けられている。モデルGにおいて、層11a~11dの領域15、16のZ方向の長さはλであり、X方向の長さは0.25λである。
図9(a)は、モデルF、Gのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果であり、図9(b)は、3000MHz~4500MHzの周波数範囲におけるモデルF、Gのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果である。図9に示すように、モデルFはモデルGよりも高周波スプリアスが抑制された結果であった。
第3のシミュレーション結果から、実施例1において、高周波スプリアスを抑制する点から、境界層11を構成する層11a~11dの領域15、16のX方向の長さは、0.25λ以上0.5λ以下が好ましく、0.3λ以上0.5λ以下がより好ましく、0.4λ以上0.5λ以下が更に好ましい。言い換えると、境界層11を構成する層11a~11dの領域15、16のX方向の長さは、複数の電極指23の平均ピッチDの0.5倍以上1倍以下が好ましく、0.6倍以上1倍以下がより好ましく、0.8倍以上1倍以下が更に好ましい。
[第4のシミュレーション]
図10(a)から図10(g)は、第4のシミュレーションに用いたモデルE、H~Mの断面図である。図10(a)のモデルEは、第2のシミュレーションで説明しているため、ここでは説明を省略する。
図10(a)のモデルEでは境界層11は2層の積層構造をしていたのに対し、図10(b)に示すように、モデルHでは境界層11は3層の積層構造し、図10(c)に示すように、モデルIでは境界層11は4層の積層構造をし、図10(d)に示すように、モデルJでは境界層11は6層の積層構造をしている。図10(e)に示すように、モデルKでは境界層11は10層の積層構造をし、図10(f)に示すように、モデルLでは境界層11は25層の積層構造をし、図10(g)に示すように、モデルMでは境界層11は50層の積層構造をしている。モデルHにおいて、各層の領域15、16のZ方向の長さは1.33λであり、X方向の長さは0.5λである。モデルIにおいて、各層の領域15、16のZ方向の長さは1λであり、X方向の長さは0.5λである。モデルJにおいて、各層の領域15、16のZ方向の長さは0.67λであり、X方向の長さは0.5λである。モデルKにおいて、各層の領域15、16のZ方向の長さは0.4λであり、X方向の長さは0.5λである。モデルLにおいて、各層の領域15、16のZ方向の長さは0.16λであり、X方向の長さは0.5λである。モデルMにおいて、各層の領域15、16のZ方向の長さは0.08λであり、X方向の長さは0.5λである。
図11(a)から図11(d)は、モデルE、H~Jのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果である。図12(a)から図12(c)は、モデルK~Mのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果である。図11(a)から図11(d)および図12(a)から図12(c)において、比較のためにモデルA(図4(a)参照)のアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果も図示している。図11(a)から図11(c)および図12(a)から図12(c)に示すように、モデルE、H~MはモデルAよりも高周波スプリアスが抑制された結果であった。
図13は、境界層11を構成する各層における領域15、16のZ方向の長さと高周波スプリアスとの関係を示すグラフである。図13の横軸は領域15、16のZ方向の長さである。縦軸は高周波スプリアスにおけるアドミッタンスの最大値と最小値との差|ΔY|である。図13において、モデルE、H~Mの結果を白丸で図示し、モデルAの結果を黒丸で図示している。図13に示すように、領域15、16のZ方向の長さが1λのときに高周波スプリアスが最も抑制された結果であった。
第4のシミュレーション結果から、実施例1において、高周波スプリアスを抑制する点から、境界層11を構成する層11a~11dの領域15、16のZ方向の長さは、0.25λ以上2λ以下が好ましく、0.5λ以上1.5λ以下がより好ましく、0.8λ以上1.2λ以下が更に好ましい。言い換えると、境界層11を構成する層11a~11dの領域15、16のZ方向の長さは、複数の電極指23の平均ピッチDの0.5倍以上4倍以下が好ましく、1倍以上3倍以下がより好ましく、1.6倍以上2.4倍以下が更に好ましい。これにより、高周波スプリアスを抑制することができる。
[第5のシミュレーション]
第5のシミュレーションは、図8(a)に示したモデルFを用い、領域15の密度を3150kg/mに固定し、領域16の密度を振ったときのアドミッタンスをシミュレーションした。
図14(a)から図14(d)および図15(a)から図15(c)は、モデルFの領域16の密度を振ったときのアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果である。図14(a)は、領域16の密度を1500kg/mとし、図14(b)は、2000kg/mとし、図14(c)は、3000kg/mとし、図14(d)は、4000kg/mとし、図15(a)は、4500kg/mとし、図15(b)は、4873kg/mとし、図15(c)は、6000kg/mとしている。図14(a)から図14(d)および図15(a)から図15(c)において、比較のためにモデルA(図4(a)参照)のアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果も図示している。
図16(a)および図16(b)は、境界層11を構成する各層における領域16の密度または音速と高周波スプリアスとの関係を示すグラフである。図16(a)の横軸は領域16の密度で、図16(b)の横軸は領域16の音速である。図16(a)および図16(b)の縦軸は高周波スプリアスにおけるアドミッタンスの最大値と最小値との差|ΔY|である。図16(a)および図16(b)において、領域16の密度(音速)を変えたモデルFの結果を白丸で図示し、モデルAの結果を黒丸で図示している。
図14(a)から図14(d)、図15(a)から図15(c)、および図16(a)、図16(b)に示すように、領域16の密度を1500kg/m~6000kg/mの範囲で振ったいずれの場合でも、高周波スプリアスが抑制された結果であった。このことから、領域15と領域16のバルク波の音速を異ならせれば、音速の差によらずにスプリアスを抑制できることが確認された。
回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層である圧電層14を伝搬するバルク波の音速は3750m/sであり、酸化シリコン層であり温度補償層12を伝搬するバルク波の音速は3684m/sである。密度が3150kg/mの酸化アルミニウムからなる領域15を伝搬するバルク波の音速は4582m/sである。図16(b)のように、領域16が圧電層14および温度補償層12に近いバルク波の音速を有し、領域15が領域16よりもバルク波の音速が速い場合、高周波スプリアスの抑圧効果が大きい。したがって、実施例1において、境界層11を構成する層11a~11dが領域15と領域15より伝搬するバルク波の音速が遅い領域16とで構成される場合、領域16は圧電層14に比べてバルク波の音速が1.01倍以上1.1倍以下である場合が好ましく、1.01倍以上1.08倍以下である場合がより好ましく、1.01倍以上1.05倍以下である場合が更に好ましい。領域15は領域16に比べてバルク波の音速が1.2倍以上であることが好ましく、1.25倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることが更に好ましい。これにより、スプリアスを効果的に抑制することができる。
境界層11を伝搬するバルク波の音速が速すぎると、境界層11と温度補償層12の界面でバルク波が反射され易くなるため、境界層11を伝搬するバルク波の音速は、温度補償層12を伝搬するバルク波の音速の2.0倍以下が好ましく、1.5倍以下がより好ましい。
[変形例]
図17は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイス110の断面図である。図17に示すように、弾性波デバイス110では、境界層11を構成する複数の層11a~11dの領域15、16は断面視して側面が傾斜している。傾斜角θは、例えば40°~89°である。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
実施例1の変形例1のように、X方向に平行な断面視にて領域15と領域16の境界は傾斜していてもよい。これにより、バルク波を効果的に散乱させることができ、スプリアスの抑制効果が大きくなる。
実施例1およびその変形例において、複数の層11a~11dは、伝搬するバルク波の音速が異なる2つの領域15、16を有する場合を例に示したが、伝搬するバルク波の音速が異なる3つ以上の複数の領域を有する場合でもよい。この場合、複数の層11a~11d各々において3つ以上の複数の領域はX方向に繰り返し並び、複数の層11a~11dのうち隣接する一方の層の複数の領域と他方の層の複数の領域とは少なくとも一部においてバルク波の音速が略同じ領域がX方向にずれて配置される。
実施例1およびその変形例において、境界層11と圧電層14の間に温度補償層12が設けられている場合を例に示したが、温度補償層12は設けられていない場合でもよい。しかしながら、弾性波共振器20の周波数温度係数を小さくする点から、温度補償層12は設けられている場合が好ましい。
図18は、実施例2に係るフィルタ200の回路図である。図18に示すように、フィルタ200は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振器S1~S4が直列に接続され、1または複数の並列共振器P1~P3が並列に接続されている。1または複数の直列共振器S1~S4および1または複数の並列共振器P1~P3の少なくとも1つに実施例1およびその変形例に係る弾性波デバイスを用いることができる。ラダー型フィルタの共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタは多重モード型フィルタでもよい。
図19は、実施例3に係るデュプレクサ300のブロック図である。図19に示すように、デュプレクサ300は、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ30が接続され、共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ32が接続されている。送信フィルタ30は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ32は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ30および受信フィルタ32の少なくとも一方を実施例2のフィルタとすることができる。マルチプレクサとしてデュプレクサを例に示したが、トリプレクサまたはクワッドプレクサ等でもよい。
図20(a)は、実施例4に係るウエハ400の平面図、図20(b)は、実施例4に係るウエハ400の断面図である。図20(a)および図20(b)に示すように、ウエハ400は、支持基板10上に圧電層14が設けられている。支持基板10と圧電層14の間に温度補償層12が設けられている。温度補償層12と支持基板10の間に境界層11が設けられている。温度補償層12と圧電層14の間に接合層13が設けられているが、接合層13は設けられていない場合でもよい。
圧電層14は、回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層または回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム層である。圧電層14の結晶方位のX軸方向をX方向とする。支持基板10および圧電層14の積層方向(厚さ方向)をZ方向とする。X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とする。なお、支持基板10、境界層11、温度補償層12、および接合層13は、実施例1に示した材料で形成される。
境界層11は、複数の層11a~11dが積層されることにより形成されている。複数の層11a~11dは、伝搬するバルク波の音速が異なる複数の領域15、16を有する。領域15、16は、複数の層11a~11d各々においてZ方向で対向する一方の面から他方の面にかけて設けられ、かつ、X方向に交互に並んでいる。複数の層11a~11dのうち隣接する層は、少なくとも一部においてバルク波の音速が略同じ領域15同士および/または領域16同士がX方向にずれて配置されている。
実施例4によれば、ウエハ400は、支持基板10と、支持基板10上に設けられ、回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層または回転Yカットニオブ酸リチウム層である圧電層14と、支持基板10と圧電層14の間に設けられた境界層11(絶縁層)と、を備える。境界層11は、伝搬するバルク波の音速が異なる複数の領域15、16がX方向に繰り返し並んだ複数の層11a~11dが積層されている。複数の層11a~11d各々において領域15、16はZ方向で対向する一方の面から他方の面にかけて設けられている。複数の層11a~11dのうち隣接する一方の層の領域15、16と他方の層の領域15、16とは少なくとも一部においてバルク波の音速が略同じ領域15同士および/または領域16同士がX方向にずれて配置されている。このように、ウエハ400の層構造は、実施例1の弾性波デバイス100の支持基板10から圧電層14までの層構造と同様の構造をしている。したがって、ウエハ400を用い、圧電層14上に弾性波共振器を形成することで、スプリアスが抑制された弾性波デバイスを得ることができる。
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
10 支持基板
11 境界層
11a~11d 層
12 温度補償層
13 接合層
14 圧電層
15、16 領域
15a、16a 絶縁膜
17 圧電基板
20 弾性波共振器
21 IDT
22 櫛型電極
23 電極指
24 バスバー
25 反射器
26 交差領域
27 金属膜
30 送信フィルタ
32 受信フィルタ
100、110 弾性波デバイス
200 フィルタ
300 デュプレクサ
400 ウエハ

Claims (11)

  1. 支持基板と、
    前記支持基板上に設けられる圧電層と、
    前記圧電層上に設けられ、複数の電極指を有する一対の櫛型電極と、
    前記支持基板と前記圧電層の間に設けられ、伝搬するバルク波の音速が異なる複数の領域が前記複数の電極指の配列方向に繰り返し並んで設けられた複数の層が積層されていて、前記複数の層各々において前記複数の領域は厚さ方向で対向する一方の面から他方の面にかけて設けられ、前記複数の層のうち隣接する一方の層の前記複数の領域と他方の層の前記複数の領域とは少なくとも一部においてバルク波の音速が略同じ領域が前記配列方向にずれて配置されている絶縁層と、を備える弾性波デバイス。
  2. 前記複数の層のうち最も前記圧電層側に位置する層の前記複数の領域は、前記複数の領域各々が前記複数の電極指のうちの1本の電極指の前記配列方向における全体に重なるように前記配列方向に繰り返し並んでいる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
  3. 前記絶縁層と前記圧電層の間に設けられ、前記圧電層の弾性定数の温度係数の符号とは弾性定数の温度係数の符号が反対である温度補償層を備え、
    前記温度補償層の前記絶縁層側の面から前記圧電層の前記一対の櫛型電極が設けられた面までの距離は2λ以下であり、
    前記絶縁層は、前記温度補償層より伝搬するバルク波の音速が速く、
    前記最も圧電層側に位置する層は、前記温度補償層に接している、請求項2に記載の弾性波デバイス。
  4. 前記複数の領域各々の前記配列方向の長さは、前記複数の電極指の平均ピッチの0.5倍以上1倍以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
  5. 前記複数の領域各々の前記厚さ方向の長さは、前記複数の電極指の平均ピッチの0.5倍以上4倍以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
  6. 前記隣接する一方の層の前記複数の領域は、前記他方の層の前記複数の領域に対して、前記複数の電極指の平均ピッチの0.5倍以上1倍以下の位相差で前記配列方向に繰り返し並んでいる、請求項1から5のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
  7. 前記配列方向に平行な断面視にて前記複数の領域の間の境界は傾斜している、請求項1から6のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
  8. 前記複数の領域は第1領域と前記第1領域より伝搬するバルク波の音速が遅い第2領域とで構成され、
    前記第2領域は、前記圧電層と比べて、伝搬するバルク波の音速が1.01倍以上1.1倍以下であり、
    前記第1領域は、前記第2領域に比べて、伝搬するバルク波の音速が1.2倍以上である、請求項1から7のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載の弾性波デバイスを含むフィルタ。
  10. 請求項9に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
  11. 支持基板と、
    前記支持基板上に設けられ、回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層または回転Yカットニオブ酸リチウム層である圧電層と、
    前記支持基板と前記圧電層の間に設けられ、伝搬するバルク波の音速が異なる複数の領域が前記圧電層の結晶方位のX軸方向に繰り返し並んで設けられた複数の層が積層されていて、前記複数の層各々において前記複数の領域は厚さ方向で対向する一方の面から他方の面にかけて設けられ、前記複数の層のうち隣接する一方の層の前記複数の領域と他方の層の前記複数の領域とは少なくとも一部においてバルク波の音速が略同じ領域が前記X軸方向にずれて配置されている絶縁層と、を備えるウエハ。
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