JP2022534221A - 自動二輪車用の電気的なスターターシステム - Google Patents

Abstract

機械的なキックスタート式始動装置（２００）を備える自動二輪車用、特に４速トランスミッションを備える、例えばハーレーダビッドソンブランドの自動二輪車用の電気的なスターターシステム（１００）であって、自動二輪車が、トランスミッションメインシャフト（３４０）を有し、該トランスミッションメインシャフト（３４０）が、自動二輪車のスタート時および自動二輪車の標準運転中に所定の始動・駆動回転方向（ｘ）に回転し、キックスタート式始動装置（２００）が、キッカーピニオンとキッカークラッチ部分（２４０）とを有し、キッカーピニオンが、キッカークラッチ部分（２４０）と軸方向で連結するべく形成されており、キッカークラッチ部分（２４０）は、トランスミッションメインシャフト（３４０）に、トルクを伝達するように結合されており、電気的なスターターシステム（１００）は、電気的なスターターモーター（１１０）を含み、該電気的なスターターモーター（１１０）は、該電気的なスターターモーター（１１０）によって駆動可能なスターターシャフトピニオン（１１２）を備えている電気的なスターターシステム（１００）において、自動二輪車用の電気的なスターターシステムを改良し、特にキックスタート式始動装置を備える自動二輪車への電気的なスターターシステムの組込み、もしくは後装備を、オリジナル構成部品に僅かな変更を加え、僅かな時間手間をかけるだけで、かつ／またはより簡単にもしくはより迅速に、実施し得ることを可能にする解決手段が提供されることが望まれる。このことは、電気的なスターターモーター（１１０）のトルクが、特に中間接続されたスターター伝動装置（１２０）を介して、スターターシャフトピニオン（１１２）から、好ましくは正面側で、キッカークラッチ部分（２４０）へ伝達可能であることにより達成される。【選択図】図１

Description

本発明は、機械的なキックスタート式始動装置を備える自動二輪車用、特に４速トランスミッションを備えるハーレーダビッドソンブランド（Marke Harley-Davidson）級の自動二輪車用の電気的なスターターシステムであって、
この自動二輪車は、トランスミッションメインシャフトを有し、このトランスミッションメインシャフトは、自動二輪車のスタート時および自動二輪車の標準運転中に、所定の始動・駆動回転方向に回転し、キックスタート式始動装置は、キッカーピニオンとキッカークラッチ部分とを有し、キッカーピニオンは、キッカークラッチ部分と軸方向で連結するために形成されており、キッカークラッチ部分は、トランスミッションメインシャフトに、トルクを伝達するように結合されており、電気的なスターターシステムは、電気的なスターターモーターを含み、このスターターモーターは、該スターターモーターによって駆動可能なスターターシャフトピニオンを備えている、電気的なスターターシステムに関する。

本発明はさらに、機械的なキックスタート式始動装置を備える自動二輪車、特に４速トランスミッションを備えるハーレーダビッドソンブランドの自動二輪車に後装備するための電気的なスターターセットにも関する。

本発明はさらに、本発明による電気的なスターターシステム、または本発明による電気的なスターターセットが装備されているか、後装備されているか、または後装備される自動二輪車に関する。

本発明は、内燃機関を備える自動二輪車の分野に属するもので、「自動二輪車」とは、動力化された二輪車であり、例えばスクータまたはモペッドも、これに含まれる。電動機とは異なり、内燃機関は、自力では始動することができない。したがって、内燃機関をスタートさせるためには、外力により、少なくとも１回の吸気・圧縮行程を行わせることによって、内燃機関を「クランキング」させることが必要となる。すなわち、内燃機関のクランクシャフトを、始動のために、必要となる最低回転数になるまで付勢させることが必要となる。クランクシャフトの付勢は、「始動機」と呼ばれる装置を介して行われる。多くの始動機は「電気式スターター」とも呼ばれる電動機の形に構成されている。この電気式スターターは、例えばステアリングまたは電動機自体に設けられたスタートボタンを介して操作され、電気式スターターのトルクは、内燃機関をスタートさせるためにクランクシャフトへ伝達される。

特に自動二輪車で使用されるような小型の内燃機関のためには、機械式の始動機も使用される。よく知られているのは、機械的なキックスタート式始動装置、すなわちいわゆる「キックスターター」の形の機械式の始動機である。

キックスターターは、通常、キックスタートペダルとキッカーシャフトとから成るレバーである。運転者がキックスタートペダルを力強く足で踏むことにより、キッカーシャフトは回転運動をさせられ、この回転運動は、クランクシャフトへ伝達され、これにより、内燃機関をスタートさせるために必要な回転数が得られる。特に例えばハーレーダビッドソンブランドの自動二輪車の場合、内燃機関とトランスミッションとは、しばしば別体のハウジング内に収容されている（「ビッグツイン」）。したがって、クランクシャフトへの直接的な伝達形式のほかに、回転運動は、自動二輪車トランスミッションのトランスミッションメインシャフトを介して、間接的にも伝達される。この場合、マニュアル式にキッカーシャフトに形成されたトルクは、まず自動二輪車のトランスミッションメインシャフトへ伝達され、次いでこの回転運動は、トランスミッションメインシャフトから、いわゆる一次駆動装置を介して、チェーンまたはベルトにより、内燃機関のクランクシャフトへ引き渡される。

スタート過程または始動過程のためには、トランスミッションメインシャフトが所定の始動・駆動回転方向に回転させられ、ひいてはクランクシャフトも、この始動・駆動回転方向に回転させられる。始動・駆動回転方向は、自動二輪車の標準運転中に、つまり内燃機関の作動中に、かつ／または前進走行時に、クランクシャフトもしくはトランスミッションメインシャフトが回転する際の回転方向に相当する。ごく希に、後退ギアを備える自動二輪車も存在する。内燃機関により駆動される後退走行時においても、クランクシャフトとトランスミッションメインシャフトとは、上記の始動・駆動回転方向に回転する。走行方向の変更は、トランスミッションを後退ギアへシフトチェンジすることによって行われる。

それに対して、自動二輪車が、例えば運転者により加えられた筋力により手動式で後方に押される場合には、前進ギアが入れられたままであると、後輪の回転が、二次チェーンを介して、トランスミッションメインシャフトへ伝達され、トランスミッションメインシャフトが、始動・駆動方向とは逆向きの逆転方向に回転してしまうことになる。ニュートラルギアを入れることにより、自動二輪車が後方に押される際に、トランスミッションメインシャフトが回転することが、直接に阻止される。

スタート過程または始動過程の後に、かつ／または自動二輪車の標準運転時に、キックスタートペダルが「一緒に回ってしまう」ことを回避し、かつキックスタートペダルの初期位置への戻りを可能にするために、キッカーシャフトとトランスミッションメインシャフトとが、キックスタート式始動装置のクラッチ結合部、すなわち「キッカークラッチ」を介して、互いに解離可能に結合されている。キッカークラッチは、トルクを伝達するように、トランスミッションメインシャフトに嵌着されたキッカークラッチ部分と、軸方向で向かい合って位置するように配置されたキッカーピニオンとから形成されており、この場合、キッカークラッチ部分は、軸方向に配置されて、傾斜面状に形成された直交方向歯列（「キッカーラチェット」とも呼ばれる）を備えており、キッカーピニオンは、対応する相補的な直交方向歯列を備えている。キッカーピニオンは、特に青銅ブシュを介して、トランスミッションメインシャフトに回転可能に支持されており、正面側の歯列によってキッカー歯車に噛み合うように形成されている。

このキッカー歯車は、やはりトルクを伝達するように、特に摩擦接続式および／または形状接続式に、キッカーシャフトに嵌着されており、このキッカーシャフトには、前で説明したように、キックスタートペダルが取り付けられている。トランスミッションメインシャフトの駆動回転方向でフリーホイールを形成するキッカークラッチ部分と、キッカーピニオンとの間の互いに噛み合った直交方向歯列に基づいて、スタート過程直後に、キックスタートペダルが一緒に回ってしまうことが阻止される。標準運転の間、すなわち内燃機関の作動中では、キッカークラッチは軸方向で互いに連結が解除される。

電気式スターターが発明される前は、このようなキックスターターが必要であった。キックスターターは、既に数十年来、自動二輪車の内燃機関をスタートさせるための始動機として使用されている。今日でもなお、製造年次が古い極めて多くの自動二輪車、特にハーレーダビッドソンブランドの自動二輪車は、キックスターターを備えている。

利便性向上の理由から、キックスタート式始動装置を装備した旧式の自動二輪車に、電気的なスターターシステムを後装備することの需要が生じている。それと同時に、マニアの間では、電気的な始動機を後装備する際に、オリジナルキックスターターの完全な機能性を維持し、かつ自動二輪車におけるできるだけ少数のオリジナルコンポーネント、またはオリジナル構成部品のみしか、交換または変更しないことが重要視されている。

従来技術、例えば特許文献１（独国実用新案第２０２０１６１０４４５４号明細書）により、キックスターターを備えるハーレーダビッドソンブランドの自動二輪車に後装備するための電気的なスターターシステムが公知となっている。オリジナル自動二輪車において提供されている構成スペースを有効に利用するために、主として自動二輪車の走行方向の左側において、電気的なスターターシステムを組み込むための種々の変更が行われている。

通常、自動二輪車の右側で、キッカークラッチを介して、トランスミッションメインシャフトへトルクを供給するオリジナルキックスターターの機能は維持される。自動二輪車の左側では、クラッチハブの改良により、トランスミッションメインシャフトへの電動機のトルク伝達が行われる。このクラッチハブは、付加的なスターターリングギアと溶接され、このスターターリングギアには、スタート過程の際に、電動機のスターターシャフトピニオンが噛み合う。スターターリングギアのための所要の構成スペースを提供するために、トランスミッションメインシャフトに設けられる自動二輪車のクラッチ全体を走行方向の左側へ配置換えしなければならない。そのため、位置整合を得るために、内燃機関自体の出力ピニオンも、左側へ配置換えしなければならない。
別の変更点としては、付加的なチェーンテンショナの組込み、ならびにオリジナルオイルタンクの調整が必要となる。

独国実用新案第２０２０１６１０４４５４号明細書

本発明の課題は、自動二輪車用の電気的なスターターシステムを改良し、特にキックスタート式始動装置を備える自動二輪車への電気的なスターターシステムの組込み、もしくは後装備を、オリジナル構成部品を僅かに変更し、僅かな時間をもって、簡単かつ迅速に、実施し得るようにすることである。

この課題は、請求項１に記載の電気的なスターターシステム、請求項１０に記載の電気的なスターターセット、および請求項１５に記載の自動二輪車により解決される。

冒頭で述べた形式の本発明によるスターターシステムは、電気的なスターターモーターのトルクが、特に中間接続されたスターター伝動装置を介して、スターターシャフトピニオンから、好ましくは正面側で、キッカークラッチ部分へ伝達可能であることを特徴としている。

すなわち、本発明によれば、内燃機関をスタートさせるために必要となるトルクを、電気的なスターターモーターによって提供し、機械的なキックスタート式始動装置のキッカークラッチ部分を介して、トランスミッションメインシャフトへ伝達するようになっている。このことは、特に好都合であることが判っている。なぜならば、キッカークラッチ部分は、キックスタート式始動装置の構成要素として、キックスターターからトランスミッションメインシャフトへトルクを伝達するために、トランスミッションメインシャフトに、一体的に、もしくはトルクを伝達するように結合されているからである。

自動二輪車において設けられていた、トランスミッションメインシャフトに対するトルクの伝達の方式を、電気的なスターターモーターにより付与されたトルクを伝達するためにも使用することにより、オリジナル構成部品に対して行われるべき変更数、および／または交換されるべきオリジナルコンポーネントの点数が最小限に抑えられる。特に、歯車またはリングギア（歯環）のような付加的な構成部品を、トランスミッションメインシャフトに結合することは必要とならない。

本発明によれば、必要な組換えもしくは変更は、自動二輪車の、機械的なキックスタート式始動装置が取り付けられている側でしか行われない。機械的なキックスタート式始動装置が取り付けられている側とは、通常、自動二輪車の走行方向で右側である。そのため、例えば自動二輪車のクラッチの配置換えを回避することができる。これにより、チェーンテンショナの組込みのような従来必要であった組換え、および／または内燃機関の出力ピニオンに対する変更が不要となる。自動二輪車のオリジナル構成部品の変更は、機械的なキックスタート式始動装置のコンポーネント以外については必要ではない。このことは特に有利である。なぜならば、キックスタート式始動装置の組換えは、例えばクラッチ、もしくはクラッチケージ、および／または一次駆動装置の変更よりも、著しく簡単であり、かつ面倒なく実現し得るからである。

電気的なスターターシステムがキッカークラッチ部分自体に作用するか、もしくはトルクを伝達するようにキッカークラッチ部分に作用することにより、本発明による電気的なスターターシステムを、よりコンパクトな構造に構成し得るようになり、かつ／または電気的なスターターモーターを、より小型とすることができる。

そのため、本発明による電気的なスターターシステムは、外見的にはほとんど気付かれることのない構造上の変更を加えるだけで、機械的なキックスタート式始動装置に組み込むことができる。これにより、自動二輪車の外観は、ほとんど変わらないままとなる。そのため、マニアの間では、コレクションの対象としても取引される、特に旧式のハーレーダビッドソン級の自動二輪車の所有者にとっては、乗り心地と、オリジナル構成部品およびその機能性をほぼ完全に維持し、かつ視覚的な外観に関して、最適な妥協を達成することができる。そのため、本発明による電気的なスターターシステムは、４速ビックツインハーレーダビッドソン自動二輪車用のスタート補助として、特に有利に適用することができる。

本発明の有利な実施態様は、各従属請求項に記載されており、以下に、これらの有利な実施態様について詳しく説明する。

キックスターターを備える自動二輪車では、機械的なキックスタート式始動装置のトルクが、通常、軸方向でキッカークラッチを介して、すなわち軸方向に配置された、互いに対して相補的な直交方向歯列を介して、キッカーピニオンとキッカークラッチ部分との間で伝達される。したがって、提供されている構成スペースを最適に利用するためには、電気的なスターターモーターのトルクが、同じくキッカークラッチ部分へ、正面側で、特に電気的なスターターシステムの「スターター伝動装置」と呼ばれる円筒歯車伝動装置を介して伝達されることが有利である。スターター伝動装置は、電気的なスターターモーターの出力部に取り付けられたスターターシャフトピニオンと、キッカークラッチ部分との間に間接続されていてもよい。

すなわち、本発明の有利な一実施態様では、電気的なスターターモーターは、トランスミッションメインシャフトに対して軸平行に配置されていてもよく、電気的なスターターモーターのトルクは、電気的なスターターシステムに設けられた、中間接続されたスターター伝動装置、好ましくは円筒歯車伝動装置の１つまたは複数の段を介して、トランスミッションメインシャフトにトルクを伝達するように結合されたキッカークラッチ部分へ伝達可能であってもよい。

この実施態様では、電気的なスターターモーターが、自動二輪車の走行方向に関してトランスミッションの背後に配置されており、トランスミッションメインシャフトと、電気的なスターターモーターのスターターシャフトとは、互いに平行に向けられている。電気的なスターターモーターのスターターシャフトに設けられたスターターシャフトピニオンを起点として、トルクは、好ましくは複数段のスターター伝動装置を介して、キッカークラッチ部分へ伝達され、かつこのキッカークラッチ部分から、トランスミッションメインシャフトへ引き渡される。相応する変速比により、一方では、スターター伝動装置が、電気的なスターターモーターの回転数を、トランスミッションメインシャフトで必要となるトルクに変換するために働き、他方では、電気的なスターターモーターのスターターシャフトとトランスミッションメインシャフトとの間の間隔も補償される。
そのためには、スターター伝動装置が円筒歯車伝動装置として構成されていると合目的的である。これにより、トルクは正面側でキッカークラッチ部分へ伝達可能となる。このような構成では、スターター伝動装置の全体的にコンパクトな構造、ひいては、電気的なスターターシステム全体のコンパクトな構造を得ることができる。トルクが、全体的に、より短い経路を介して伝達されることにより、内燃機関の特に穏やかで、かつ騒音の少ないスタートを実現させることができる。

本発明の別の実施態様におけるように、電気的なスターターシステムが、スターターリングギアを有し、このスターターリングギアが、スターター伝動装置、特に円筒歯車伝動装置のスターター歯車とトルクを伝達するように噛み合うために、または電気的なスターターモーターのスターターシャフトピニオンとトルクを伝達するように噛み合うために、キッカークラッチ部分を同軸に取り囲んでいると有利である。

この実施態様では、キッカークラッチ部分が、その周面に沿って、つまり正面側に、「スターターリングギア」と呼ばれるリングギアを備えており、スターター伝動装置の「スターター歯車」と呼ばれる歯車と噛み合うように形成されている。好ましくは、スターター歯車とスターターリングギアとは、正面側で互いに連結されるか、もしくは互いに噛み合った歯車対偶を形成している。

内燃機関の作動中、すなわち自動二輪車の標準運転中に、クランクシャフトの回転が、トランスミッションメインシャフトを介して電気的なスターターモーターに逆伝達され、電気的なスターターモーターの、意図されていない回転、もしくはスターターモーターの破損を招いてしまうのを阻止するために、本発明の１つの実施態様におけるように、電気的なスターターシステムがスターターフリーホイール装置を有していると、機能的に有利である。スターターフリーホイール装置は、電気的なスターターモーター、特にスターターシャフトピニオンと、キッカークラッチ部分との間に中間接続されているので、トランスミッションメインシャフトの始動・駆動回転方向で、電気的なスターターモーターを起点としてキッカークラッチ部分に向かう方向では、トルク伝達するクラッチが形成されており、キッカークラッチ部分を起点として電気的なスターターモーターに向かう方向では、空転するクラッチが形成されている。

電気的なスターターモーターとキッカークラッチ部分との間の完全な連結解除を実現するためには、例えば、スターターシャフトピニオンとキッカークラッチ部分との間の軸方向のずれを可能にすることが考えられる。特に、スターターシャフトピニオンおよび／またはスターター歯車に噛み合ったスターターピニオンが、線状に移動可能に形成されていてもよい。これにより、スターターシャフトピニオンおよび／またはスターターピニオンは、電気的なスターターモーターから、キッカークラッチ部分へ、トルクおよび回転運動を伝達するために互いに噛み合うように配置されるか、もしくはキッカークラッチ部分から、電気的なスターターモーターへのトルクおよび回転運動の伝達を阻止するために、互いに対してずらして配置されている。択一的な別の、よりスペース節約的な構成として、スターターフリーホイール装置を、キッカークラッチ部分を同軸に取り囲むように配置していてもよい。

したがって、改良形では、スターターフリーホイール装置が、スプラグ式フリーホイールまたはローラー状スプラグ式フリーホイール、特に転がり軸受式フリーホイールの形式で構成されていて、キッカークラッチ部分を同軸に取り囲んでおり、この場合、特に始動・駆動回転方向とは逆向きの逆転方向では、トランスミッションメインシャフトの回転運動がロックされている。

この場合、スターターフリーホイール装置が、半径方向外側のレースと半径方向内側のレースとを有し、半径方向外側のレースが、電気的なスターターシステムのスターターリングギアに、トルクを伝達するように結合されており、半径方向内側のレースが、キックスタート式始動装置のキッカークラッチ部分に、トルクを伝達するように結合されていると、特に合目的的である。

スターターフリーホイール装置は、好ましくは１列または２列の転動体フリーホイールとして構成されているのがよい。この場合、半径方向外側のレースと半径方向内側のレースとの間には、相応して１つまたは２つの転動通路が設けられ、この転動通路の内部には、転動体特に円筒体またはボールが配置されている。トランスミッションメインシャフトの始動・駆動回転方向で、かつ内燃機関のスタートのためには、すなわち電気的なスターターモーターの回転運動をトランスミッションメインシャフトへ伝達したい場合には、転動体フリーホイールが「クランプ状態」となり、これにより、半径方向外側のレースと半径方向内側のレースとの間の相対運動はロックされる。これにより、スターターフリーホイール装置からキッカークラッチ部分への、ひいては、キッカークラッチ部分に結合されたトランスミッションメインシャフトへの電気的なスターターモーターの回転運動もしくはトルクの伝達が可能になる。

内燃機関がスタートされて、トランスミッションメインシャフトが内燃機関によって駆動されるやいなや、もしくは半径方向内側のレースの回転数が、半径方向外側のレースの回転数を上回ると、スターターフリーホイール装置は自動的に連結解除し、転動体は転動通路の内部を自由に転動するので、トランスミッションメインシャフトに固く嵌着されたキッカークラッチ部分は、トランスミッションメインシャフトと共に回転する。しかしこの回転運動もしくはトルクは、半径方向外側に位置するレースへは伝達されず、もしくはこのレースに結合されたスターターリングギアへも伝達されない。スターターフリーホイール装置は、この場合、オーバーランニングクラッチとして働く。特に有利には、転がり軸受式フリーホイールとして構成された、このようなスターターフリーホイール装置が、スターター伝動装置と自動二輪車のトランスミッションメインシャフトとの間に設けられていると、電気的なスターターモーターの破損が阻止される。付加的に、転がり軸受式フリーホイールは、高い回転静粛性を有し、これによりスタート過程においても、作動中の内燃機関における標準運転中においても、全体的に僅かな騒音しか発生することはない。

付加的に、本発明の任意選択的な変化形では、スターターフリーホイール装置が、逆転ロックの機能をも有していてよい。この場合、トランスミッションメインシャフトの回転運動は、始動・駆動回転方向でしか可能にならず、それに対して、逆向きの逆転方向における逆行する回転運動はロックされる。トランスミッションメインシャフトの逆転方向では、半径方向内側のレースにトルクが加えられる限り、転動体フリーホイールは「クランプ状態」となる。特に、この方向では減速作用を発揮する、中間接続された多段式のスターター伝動装置に基づき、十分に高い作動抵抗が生じさせられるので、トランスミッションメインシャフトは、スターターフリーホイール装置により、逆転方向においてロックされる。この機能には、逆転方向における電気的なスターターモーターの、意図されていない回転が阻止されるという利点がある。引き続き、ニュートラルへのシフトチェンジによって、すなわちトランスミッションメインシャフトを後輪から切り離すことによって、自動二輪車を後方へ押し動かすことができる。

さらに、本発明の別の有利な実施態様では、電気的なスターターシステムが、アダプタープレートを有し、このアダプタープレートは、キックスタート式始動装置のカバーと、自動二輪車のトランスミッションハウジングとの間に配置されており、電気的なスターターモーターは、このアダプタープレートによって、自動二輪車のトランスミッションハウジングに取り付けられている。

電気的なスターターモーターを、提供されている構成スペース内にできるだけスペース節約的に収容するためには、電気的なスターターモーターを、自動二輪車の走行方向で自動二輪車トランスミッションの背後に、好ましくはトランスミッションハウジングの背後に取り付けることが合目的的である。
電気的なスターターモーターの取付けは、有利にはアダプタープレートによって実現され、このアダプタープレートは、自動二輪車の、機械的なキックスタート式始動装置を有する側において、通常では自動二輪車の走行方向で自動二輪車の右側において、トランスミッションハウジングに配置されており、特にトランスミッションハウジングに、例えば植込みボルト（スタッドボルト）を介してねじ締結されている。そのためには、アダプタープレートが、「キッカーカバー」とも呼ばれるキックスタート式始動装置のカバーの外周輪郭に実質的に相当する外周輪郭を有しているのがよく、これにより、アダプタープレートは、キッカーカバーと同一面に整合する。

付加的に、アダプタープレートは、側方の拡張部を有し、この拡張部は、取付け区分として形成されており、これにより、電気的なスターターモーターに結合され、特にねじ締結される。したがって、アダプタープレートは、電気的なスターターモーターに対する唯一の結合部を成し、かつ加えられたトルクおよび結合個所に生じる力に耐えることができるようにするために、例えば１０ｍｍの最小厚さに形成されていることが望ましい。好ましくは、アダプタープレートは、１５～２０ｍｍの厚さ、特に好適には約２０ｍｍの厚さを有する。

アダプタープレートに基づき、キックスタートカバーとハウジングカバーとの間の間隔が増大する。したがって、オリジナルトランスミッションハウジングに設けられた切欠の内部で、キックスタートカバーをハウジングカバーに、その間にアダプタープレートを挟んで取り付けるためには、最初に設けられていた取付け手段よりも長寸の取付け手段、特に植込みボルトが使用されることが望ましい。多くのタイプの自動二輪車では、この理由から、排気装置の調整も必要となる。キックスターターカバーとアダプタープレートとの間にも、アダプタープレートとトランスミッションハウジングとの間にも、それぞれ１つのシール部材が設けられていると有利である。

さらに、アダプタープレートの別の有利な機能は、スターター伝動装置、スターターフリーホイール装置および／またはキッカークラッチ部分の保護および収容である。

したがって、上記実施態様の改良形では、アダプタープレートが、スターターフリーホイール装置を収容し、かつ／またはスターターリングギアを収容するための収容領域を有し、かつ／またはこのような収容領域を形成していると合目的的である。

付加的に、アダプタープレートは、１つまたは複数のスターター結合片に特に解離可能に結合されていてよい。これらのスターター結合片は、スターター伝動装置の別の伝動装置要素を収容するために、かつ／または電気的なスターターモーター、特にその出力側のスターターシャフトピニオンに結合するために設けられており、一緒になって、１つのスターター伝動装置ハウジングを形成している。

比較的古い製造年次の自動二輪車、特に、例えば４速トランスミッションを備えるビックツインハーレーダビッドソン自動二輪車に、電気的なスターターシステムを後装備することを容易にし、かつ組込みおよび取外し、もしくは故障したコンポーネントおよび／または消耗したコンポーネントの、代替部品との交換を簡単にするために、本発明の変化形として、電気的なスターターシステムは、キックスタートばねを受け止めるための取外し可能なばね受けを備えるキッカーシャフトを有していてよい。この場合、キッカーシャフトは、キッカー歯車にトルクを伝達するように結合するように形成される。

機械的なキックスタート式始動装置のオリジナル構成では、キックスタートカバー、すなわちキッカーカバーが、キッカーシャフトおよびこのキッカーシャフトにトルクを伝達するように取り付けられたキッカー歯車と一緒に取り外されるようになっている。しかし、電気的なスターターシステムの、本発明により付加的にキッカークラッチ部分に設けられた構成部品に基づき、特に、キッカークラッチ部分をそれぞれ同軸に取り囲んでいるスターターリングギア、および／またはスターターフリーホイール装置に基づき、キッカークラッチ部分の外周が、オリジナル構成部品のキッカーラチェットに比べて拡大されている。これにより、キッカー歯車は、キッカーシャフトに沿って、キッカークラッチ部分の手前でオーバーラップされ、キッカーシャフトをキッカー歯車と一緒に、かつキッカーカバーと一緒に取り外すことは、もはや不可能となっている。

この問題を回避するための手段は、キッカーばねが取り付けられるばね受けが、キッカーシャフトから取外し可能に、もしくは着脱可能に形成されていることにより提供される。キックスタート式始動装置の、キッカーカバーの背後に配置されているオリジナル構成部品や、電気的なスターターシステムの構成部品に対するアクセスを可能とするために、この実施態様では、キッカーカバーもしくはキックスターターカバーは、後装備、組換えおよび構成部品の交換のために、ばね受けをあらかじめ取り除くことによって、キッカーシャフト自体を取り外すことなしに、キッカーシャフトを介して引き出すことができる。

自動二輪車、特に４速トランスミッションを備えるハーレーダビッドソンブランドの自動二輪車に、電気的なスターターシステムを装備し、それと同時に、機械的なキックスタート式始動装置の機能を維持するためには、オリジナルの自動二輪車に、本発明による電気的なスターターシステムを後装備することができるようになっていると、合目的的である。この場合、この電気的なスターターシステムは、少なくとも部分的に、機械的なキックスタート式始動装置に組み込まれている。

したがって、冒頭で課された本発明の課題は、機械的なキックスタート式始動装置を備えた自動二輪車、特に４速トランスミッションを備える例えばハーレーダビッドソンブランドの自動二輪車に、後装備するための電気的なスターターセットにより解決される。この場合、自動二輪車は、トランスミッションメインシャフトを有し、このトランスミッションメインシャフトは、自動二輪車のスタート時、および自動二輪車の標準運転中に、所定の始動・駆動回転方向に回転する。

本発明によれば、電気的なスターターセットは、電気的なスターターモーターを含み、この電気的なスターターモーターは、この電気的なスターターモーターによって駆動可能なスターターシャフトピニオンを備えている。電気的なスターターセットは、さらに、スターターフリーホイール装置を備えたキッカークラッチ部分を含み、キッカークラッチ部分は、トランスミッションメインシャフトにトルクを伝達するように結合するために形成されており、スターターフリーホイール装置は、キッカークラッチ部分をスターターシャフトピニオンと、特に正面側で連結するために形成されている。電気的なスターターセットは、さらに、アダプタープレートを含み、このアダプタープレートは、電気的なスターターモーターを自動二輪車のトランスミッションハウジングに結合するために、かつ／またはスターターフリーホイール装置を備えるキッカークラッチ部分を収容するべく形成されている。

すなわち、本発明によれば、キッカークラッチ部分自体が、電気的なスターターセットの構成要素であって、軸方向では、機械的なキックスタート式始動装置のキッカーピニオンと噛み合うために、かつ正面側では、電気的なスターターモーターと、トルクを伝達するように連結するために形成されている。キッカークラッチ部分は、さらに、好ましくは組み込まれたスターターフリーホイール装置を備えている。特に、スターターフリーホイール装置は、キッカークラッチ部分を転がり軸受式フリーホイールの形式で、同軸的に取り囲んでいてもよく、この場合、半径方向内側のレースが、トルクを伝達するように、形状接続式および／または摩擦接続式に、キッカークラッチ部分に結合されている。択一的な別の構成では、キッカークラッチ部分と、半径方向内側のレースとが一体に形成されていてもよい。好ましくは、半径方向外側のレースの正面側の面が、リングギア状に形成された外側歯列を有するか、または半径方向外側のレースを同軸に取り囲むリングギアに、トルクを伝達するように、形状接続式および／または摩擦接続式に結合されている。

キッカークラッチ部分は、軸方向では、直交方向歯列を備えており、この直交方向歯列は、オリジナルキッカーピニオンに設けられた直交方向歯列に対して相補的に形成されており、このオリジナルキッカーピニオンの直交方向歯列に噛み合うことができる。直交方向歯列は、トランスミッションメインシャフトの駆動回転方向において、キッカークラッチ部分とキックスターターとの間のフリーホイールを形成し、スターターフリーホイール装置は、同じくトランスミッションメインシャフトの駆動回転方向において、キッカークラッチ部分と電気的なスターターモーターとの間のフリーホイールを形成するために設けられている。したがって、組み込まれたスターターフリーホイール装置を備えるキッカークラッチ部分は、電気的なスターターシステムと、機械的なキックスタート式始動装置との間の中央の結合要素を成している。

有利な実施態様では、電気的なスターターセットが事前組付けされており、この場合、アダプタープレートが、特に１つまたは複数のスターター結合片を介して電気的なスターターモーターに、好ましくは解離可能に結合されており、かつ／またはスターターフリーホイール装置を備えるキッカークラッチ部分が、アダプタープレートに設けられた、このために形成された収容領域の内部に配置されている。

電気的なスターターセットの構成部品の少なくとも大部分が、既に前組付けされているため、自動二輪車への後装備が著しく容易となる。組換え、もしくは機械的なキックスタート式始動装置への電気的なスターターセットの組込みは、特別な専門知識および／または例えば溶接器具のような特殊な工具なしでも、使用者自身によって行うことができ、専門工場への持込みは、必ずしも必要ではない。

さらに別の有利な変化形では、電気的なスターターセットが、スターター歯車とスターターリングギアとを含み、スターターリングギアは、キッカークラッチ部分とスターターフリーホイール装置とを同軸に取り囲むように配置されており、スターター歯車は、スターター伝動装置の構成要素として、電気的なスターターモーターのスターターシャフトピニオンに噛み合うように、かつスターターリングギアに噛み合うように形成されており、かつこのように配置することが可能である。

後装備ならびに取外し、および組込みを、できるだけ簡単に、かつ面倒なく行うために、本発明の有利な実施態様では、電気的なスターターセットは、付加的に、取外し可能なばね受けを備えるキッカーシャフトを含み、キッカーシャフトは、キックスタート式始動装置に設けられたキッカー歯車にトルクを伝達するように結合するように形成されている。

さらに別の実施態様では、トランスミッションハウジングとキッカーカバーとの間に配置されるべきアダプタープレートの補償のための付加的なコンポーネントとして、電気的なスターターセットが、それぞれ必要に応じて、かつ／または選択的に自動二輪車の相応するオリジナル構成部品と交換するために、キッカーシャフトおよび／またはブレーキシャフト、および／またはトランスミッションクラッチ操作レバー、および／またはクラッチプッシュロッドを有していてよい。

オリジナル構成部品に比べて、キッカーシャフトおよび／またはブレーキシャフト、および／またはトランスミッションクラッチ操作レバー、および／またはクラッチプッシュロッドは、好ましくはそれぞれアダプタープレートの厚さ分だけ、特に１０～２０ｍｍだけ、延長されている。

さらに、冒頭で課せられた課題は、本発明によれば、上記実施態様のうちの１つによる電気的なスターターシステム、または上記変化形のうちの１つによる電気的なスターターセットが装備されているか、後装備されているか、または備えられている自動二輪車によっても解決される。

本発明に基づく別の詳細、特徴、組合せ、利点および作用を、以下に図面につき説明する本発明の有利な実施形態により明らかにする。

本発明による電気的なスターターシステムの例示的な実施形態を、アダプタープレートを用いて、自動二輪車のトランスミッションハウジングに組み付けられた状態で、ただしキックスタート式始動装置のカバーなしに示す概略的な斜視図である。 図１に示したアダプタープレートを単独で示す概略的な斜視図である。 図１に示した本発明による電気的なスターターシステムの例示的な実施形態を、キックスタート式始動装置のカバーと共に示す概略的な分解斜視図である。 図１に示した本発明による電気的なスターターシステムの例示的な実施形態を、アダプタープレートなしに示す概略的な側面図である。 図１に示した本発明による電気的なスターターシステムの例示的な実施形態を、トランスミッションハウジングの側から見た概略的な斜視図である。 本発明による電気的なスターターセットの例示的な実施形態を、キックスタート式始動装置のカバーに組み付けられた状態で示す概略的な分解斜視図である。

図面は、単に例示的なものであって、本発明を理解するためのものに過ぎない。同じ構成要素には、同じ符号を付してある。

図１は、本発明による電気的なスターターシステム１００の例示的な実施形態を、アダプタープレート１５０を用いて、自動二輪車（図示せず）のトランスミッションハウジング３１０に組み付けられた状態で示す、概略的な斜視図である。図は、自動二輪車フロントおよび機械的なキックスタート式始動装置２００の側で、斜め上方から見て示されており、この場合、機械的なキックスタート式始動装置２００は、通常、自動二輪車の、走行方向で右側に配置されている。

アダプタープレート１５０のほかに、電気的なスターターシステム１００は、電気的なスターターモーター１１０とスターター伝動装置１２０とを含み、スターター伝動装置１２０は、スターター伝動装置ハウジング１３０の内部に配置されている。電気的なスターターモーター１１０は、自動二輪車の走行方向で、トランスミッションハウジング３１０の背後に配置されている。トランスミッションハウジング３１０は、自動二輪車のトランスミッション３００の主要コンポーネントを取り囲んでおり、トランスミッションベースプレート３３０に設けられている。アダプタープレート１５０は、トランスミッションハウジング３１０に設けられたアダプター部３２０の周面の輪郭に実質的に対応する外周面を有し、例えばねじまたは植込みボルトをもって、このアダプター部３２０に整合するように取り付けられている。図面には、さらにトランスミッションクラッチ操作レバー３５０およびクラッチプッシュロッド３６０が示されている。

トランスミッションハウジング３１０のアダプター部３２０には、さらに機械的なキックスタート式始動装置２００の複数の構成部品が配置されており、特にアダプター部３２０には、キッカー歯車２２０が設けられている。キッカー歯車２２０は、トルク伝達のために、形状接続式および／または摩擦接続式にキッカーシャフト２１０に結合されている。キッカーシャフト２１０は、アダプタープレート１５０に設けられた、腎臓形に形成された切欠１５１から突出しており、その外側の端部に、キックスタートペダル（図示せず）を形状接続式に取り付けるためのペダル接続部２１１を有している。キッカーシャフト２１０には、さらに、キッカーばね（同じく図示せず）との結合のためのばね受け２１２が設けられている。好ましくは、ばね受け２１２は、ペダル接続部２１１を介して、キッカーシャフト２１０から取り外すことができる。そのために、ばね受け２１２が、特に止めねじ２１３によって、着脱可能にキッカーシャフト２１０に結合されている。キッカーピニオンは、図面には見えていないが、キッカー歯車２２０と噛み合うために、トランスミッション３００のトランスミッションメインシャフト３４０（同じく図面には見えていない）に回転運動可能に支持されている。キッカーピニオンは、キッカークラッチ部分２４０と一緒にキッカークラッチを形成しており、キッカークラッチ部分２４０は、トルクを伝達するために、トランスミッションメインシャフト３４０に相対回動不能に結合されているか、もしくはトルクを伝達するように、トランスミッションメインシャフト３４０に結合されている。

図２は、図１に示したアダプタープレート１５０を単独で示す概略的な斜視図である。アダプタープレート１５０は、組み込まれた状態で、キッカーシャフト２１０により貫通される腎臓形の切欠１５１と、キッカークラッチ部分２４０を収容するために形成され、かつ加工成形されている収容領域１５２と、電気的なスターターモーター１１０との取付けのために設けられている取付け部１５３とを含み、この取付け部１５３は、スターター伝動装置ハウジング１３０の閉鎖部分片を形成している。
したがって、アダプタープレート１５０は取付け部１５３を介して、電気的なスターターモーター１１０とトランスミッションハウジング３１０との唯一の結合部を成している。言い換えれば、電気的なスターターモーター１１０は、アダプタープレート１５０の取付け部１５３にしか取り付けられていない。スターターモーター１１０によって加えられるトルク、および取付け部１５３と収容領域１５２との間に生じる力に耐えることができるようにするために、アダプタープレートは、少なくともこの個所において、例えば１０ｍｍの最小厚さをもって形成されている。好ましくは、アダプタープレートは、１５～２０ｍｍの厚さ、特に好適には約２０ｍｍの厚さを有する。

図３は、図１に示した本発明による電気的なスターターシステム１００の例示的な実施形態を示す概略的な分解斜視図であり、付加的に、機械的なキックスタート式始動装置２００のカバー２５０が示されている。この図は、自動二輪車リアおよびキックスタート式始動装置２００の側から斜めに見て描かれている。

カバー２５０とトランスミッションハウジング３１０との間には、アダプタープレート１５０が配置されており、これにより、両オリジナル構成部品（カバー２５０とトランスミッションハウジング３１０）の間の最初の間隔は、アダプタープレート１５０の厚さ分だけ大となる。キックスタートカバー２５０を、その間に位置するアダプタープレート１５０と共に、トランスミッションハウジング３１０のアダプター部３２０に設けられた切欠の内部に取り付けるためには、取付け手段２５１が使用される。取付け手段２５１としては、ばねワッシャとナットとを備える植込みボルトが、例示的に示されている。

アダプタープレート１５０の取付け部１５３は、３つのねじ１５４によって、電気的なスターターモーター１１０を取り付けるために使用される。好ましくは、電気的なスターターモーター１１０は、スターター伝動装置ハウジング１３０を介して、間接的に取付け部１５３とねじ締結される。スターター伝動装置ハウジング１３０は、２つの部分、すなわち取付け部１５３に対応する第１のスターター結合片１３１と、電気的なスターターモーター１１０に対応する第２のスターター結合片１３２とによって形成されている。

さらに図３からは、電気的なスターターシステム１００の、スターター伝動装置ハウジング１３０の内部に配置されたスターター伝動装置１２０の一部を看取することができる。スターター伝動装置１２０は、スターターピニオン１２１を含み、このスターターピニオン１２１は、スターター歯車１２２と共に歯車対偶を形成している。これにより、電気的なスターターモーター１１０の、この図面では見えていないスターターシャフトピニオン１１２で取り出される電気的なスターターモーター１１０のトルクが、正面側でキッカークラッチ部分２４０（図５も参照）へ伝達される。このために、スターター歯車１２２に設けられた外側歯列は、キッカークラッチ部分２４０をその正面に沿って取り囲んでいるスターターリングギア１２３と噛み合っている。スターター伝動装置１２０のその他の構成要素は、図６に示されており、これについては、対応する個所において詳しく説明する。

図４は、図１に示した本発明による電気的なスターターシステム１００の例示的な実施形態の概略的な側面図である。図４には、トランスミッションメインシャフト３４０の回転方向が示されている。内燃機関をスタートさせるためには、トランスミッションメインシャフト３４０が、電気的なスターターシステム１００により、または択一的な代替手段として機械的なキックスタート式始動装置２００により、始動・駆動回転方向ｘに回転させられる。標準的な走行運転の間、もしくは内燃機関の作動中でも、トランスミッションメインシャフト３４０は、クランクシャフトと共に始動・駆動回転方向ｘに回転する。それに対して、自動二輪車が後方へ押されると、ギアが入れられたままであると、後輪の回転運動が、逆向きの逆転方向ｙで、トランスミッションメインシャフト３４０へ伝達されてしまうことになる。

トランスミッションメインシャフト３４０には、キッカークラッチ部分２４０が、トルクを伝達するように支持されている。キッカークラッチ部分２４０は、転がり軸受式フリーホイールとして構成されたスターターフリーホイール装置１４０により、同軸に取り囲まれている。スターターフリーホイール装置１４０は、半径方向内側のレース１４２と、半径方向外側のレース１４１とを有し、両レースは、図面に示す構成では、２列の転動体フリーホイールとして２つの転動通路を形成しており、両転動通路の内部には、転動体１４３、本実施形態ではボールが配置されている。

半径方向内側のレース１４２は、トルクを伝達するようにキッカークラッチ部分２４０に結合されている。この結合は、摩擦接続式および／または形状接続式に、例えば締まり嵌めとして形成されているのがよいが、択一的な別の構成として、キッカークラッチ部分２４０を内側のレース１４２と一体に形成することも考えられる。半径方向外側のレース１４１も、やはり摩擦接続式および／または形状接続式に、例えば締まり嵌めとして、または択一的な別の構成では一体的に、スターターリングギア１２３に、トルクを伝達するように結合されている。

スターターリングギア１２３には、スターター歯車１２２の外側歯列が正面側で噛み合っている。トランスミッションメインシャフト３４０の始動・駆動回転方向ｘにおいて、スターターフリーホイール装置１４０はオーバーランニングクラッチとして働き、半径方向外側のレース１４１が半径方向内側のレース１４２よりも高速に回転する限りは「クランプ状態」となる。これにより、半径方向外側のレース１４１と半径方向内側のレース１４２との相対運動がロックされており、「半径方向外側」から「半径方向内側」への回転運動およびトルクの伝達が可能となる。

すなわち、内燃機関のスタートのためには、電気的なスターターモーター１１０により生成されたトルクが、始動・駆動回転方向ｘでトランスミッションメインシャフト３４０へ伝達される。トランスミッションメインシャフト３４０の回転数が十分に高くなるか、もしくは内燃機関がスタートされて、自力でトランスミッションメインシャフト３４０を駆動するようになるやいなや、半径方向内側のレース１４２が半径方向外側のレース１４１を「オーバーランニング（追い越し）」し、これにより、スターターフリーホイール装置１４０は自動的に結合を解離する。すなわち、転動体１４３が、転動通路の内部を自由に転動する。この場合、「半径方向内側」から「半径方向外側」への回転運動もしくはトルクの伝達は阻止され、始動・駆動回転方向ｘにおけるトランスミッションメインシャフト３４０から電気的なスターターモーター１１０への回転運動、もしくはトルクの伝達阻止され、このように、電気的なスターターモーター１１０の破損が回避される。

前進ギアが入れられた状態で、自動二輪車が後方へ押された場合に、トランスミッションメインシャフト３４０が逆転方向ｙに回転することを阻止し、ひいては場合によっては生じる電気的なスターターモーター１１０の破損を阻止するためには、前進ギアが入れられた状態において、スターターフリーホイール装置１４０が「逆転ロック」として働き、逆に、半径方向内側のレース１４２が半径方向外側のレース１４１よりも高速に回転する場合、もしくは自動二輪車の後輪からトランスミッションメインシャフト３４０へ後退回転運動が伝達される場合は、「クランプ状態」となる。

次いで、逆転方向ｙにおけるトランスミッションメインシャフト３４０の実際のロックは、キッカー歯車２２０に設けられた終端ストッパを介して行われる。このために、キッカー歯車２２０はストッパピン２２１を備えており、このストッパピン２２１は、キックスタート式始動装置２００のカバー２５０の内部に設けられた、相応して対応するストッパ面に当接するように形成されている。ストッパピン２２１とストッパ面との協働により、終端ストッパが実現される。この終端ストッパは、一方ではスタート過程後の走行運転時におけるキッカー歯車２２０の休止位置を規定し、他方では逆転方向ｙにおいてトランスミッションメインシャフト３４０をロックする。

それにもかかわらず、自動二輪車を後方へ押し動かすことができるようにするためには、慣例通りに、ニュートラルへのシフトチェンジを行うことができる。キッカー歯車２２０は、図４の描画方向で見てスターターフリーホイール装置１４０の背後に、もしくはスターターフリーホイール装置１４０とトランスミッションハウジング３１０との間に配置されており、スターターリングギア１２３を備えるスターターフリーホイール装置１４０によって、部分的にオーバーラップされている。

図５は、図１に示した本発明による電気的なスターターシステム１００の例示的な実施形態を、反対の側から、すなわちトランスミッションハウジング３１０（図５には示されていない）の側から見た概略的な斜視図である。特に、キッカークラッチ部分２４０が良く判る。キッカークラッチ部分２４０は、一点鎖線で示されたトランスミッションメインシャフト３４０を起点とした半径に沿って見て、まず半径方向内側のレース１４２によって同軸に取り囲まれており、次いで転動体１４３によって同軸に取り囲まれており、さらに、半径方向外側のレース１４１によって同軸に取り囲まれており、これら半径方向内側のレース１４２と転動体１４３と半径方向外側のレース１４１とは、一緒になって、スターターフリーホイール装置１４０を形成している。

最後に、外周面に正面側の歯列を備えたスターターリングギア１２３が配置されている。キッカークラッチ部分２４０は、軸方向には直交方向歯列２４１を備えており、この直交方向歯列２４１は、機械的なキックスタート式始動装置２００のオリジナルキッカーピニオン（図示せず）に設けられた直交方向歯列に対して相補的に形成されている。オリジナルキッカーピニオンは、一点鎖線で示されたトランスミッションメインシャフト３４０に回転運動可能に支持されており、キッカークラッチ部分２４０と連結噛合いを行うために、トランスミッションメインシャフト３４０に沿って軸方向に摺動可能である。

自動二輪車の内燃機関をスタートさせるためには、機械的なキックスタート式始動装置２００によって形成されたトルクを、キッカー歯車２２０を介して、キッカーピニオンへ伝達させる。この場合、キッカーピニオンは、トランスミッションメインシャフト３４０に沿って、キッカー歯車２２０の正面側の歯列と噛み合わされる。このときにさらに、キッカーピニオンの直交方向歯列と、キッカークラッチ部分２４０の直交方向歯列２４１とが互いに噛み合う。

相補的な両直交方向歯列は、トランスミッションメインシャフト３４０の始動・駆動回転方向ｘにおいては、キッカーピニオンからキッカークラッチ部分２４０へ、トルクもしくは回転運動が伝達可能となり、それに対して、逆にキッカークラッチ部分２４０からキッカーピニオンへ向かう方向では、斜めに形成された歯面に基づいてフリーホイールが実現されるように構成されている。

このようにして、スタート過程が行われた後に始動・駆動回転方向ｘにおいて、キックスタートペダルが一緒に回転してしまうことが回避される。しかし、直交方向歯列２４１は、スタート過程の後にキックスタートペダルを逆向きの逆転方向ｙで再びその初期位置へ戻すことをも可能にする。自動二輪車の標準運転中、すなわち内燃機関の作動中では、キッカーピニオンはキッカークラッチ部分２４０ともキッカー歯車１２０とも噛み合っておらず、軸方向でトランスミッションメインシャフト３４０に沿って「後方」に向かってずらされている。

要約すると、内燃機関をスタートさせるためには、電気的なスターターシステム１００および機械的なキックスタート式始動装置２００のいずれも、キッカークラッチ部分２４０に作用させる。この場合、電気的なスターターモーター１１０のトルクは正面側で、機械的なキックスタート式始動装置２００のトルクは軸方向で、それぞれキッカークラッチ部分２４０へ伝達可能となる。トルク伝達部はこの場合、それぞれスターターフリーホイール装置１４０の形のフリーホイール、もしくはキッカークラッチ部分２４０の直交方向歯列２４１とキッカーピニオンの直交方向歯列との間のラチェット結合部の形のフリーホイールを備えている。このように、電気的なスターターシステム１００は、特にスペース節約的に、かつ最小限の変更を加えるだけで、機械的なキックスタート式始動装置２００に組み込まれる。この場合、キックスタート式始動装置２００の機能性は完全に維持される。

さらに図６には、本発明による電気的なスターターセット１００ａの例示的な実施形態を、キックスタート式始動装置２００のカバー２５０が組み付けられた状態で概略的に示す分解斜視図が示されている。電気的なスターターセット１００ａは、電気的なスターターモーター１１０と、第１のスターター結合片１３１と、第２のスターター結合片１３２と、アダプタープレート１５０と、スターター伝動装置１２０と、キッカークラッチ部分２４０とを含み、キッカークラッチ部分２４０は、スターターフリーホイール装置１４０を備えており、このスターターフリーホイール装置１４０は、正面側にスターターリングギア１２３を備えている。アダプタープレート１５０の取付け部１５３と共に、第１のスターター結合片１３１と第２のスターター結合片１３２とが、スターター伝動装置ハウジング１３０を形成しており、このスターター伝動装置ハウジング１３０の内部には、スターター伝動装置１２０が収容されている。スターター伝動装置１２０は、スターターピニオン１２１とスターター歯車１２２とを有し、この場合、スターター歯車１２２は正面側でスターターリングギア１２３と噛み合っている。

スターターピニオン１２１は、二重歯車として形成されており、反対の側に位置するシャフト端部でピニオン１２４と噛み合っている。このピニオン１２４は、別の二重歯車の構成要素である。同一のシャフトに配置されている歯車１２５は、さらに電気的なスターターモーター１１０のスターターシャフトピニオン１１２と噛み合っている。したがって、スターター伝動装置１２０により、スターターシャフトピニオン１１２から取出し可能なトルクは、複数の変速段およびレベル、好ましくは４つの変速段と３つのレベルとを介して、キッカークラッチ部分２４０へ、そのスターターリングギア１２３によって引き渡される。

好ましくは、電気的なスターターモーター１１０と、スターター伝動装置ハウジング１３０、およびこのスターター伝動装置ハウジング１３０に内蔵されているスターター伝動装置１２０と、スターターフリーホイール装置１４０を備えるキッカークラッチ部分２４０とは、アダプタープレート１５０と一緒に既に前組付けされているので、機械的なキックスタート式始動装置２００を備える自動二輪車に後装備するためには、この機械的なキックスタート式始動装置２００のカバー２５０を取り外し、アダプタープレート１５０を、電気的なスターターセット１００ａの、相応して前組付けされた構成部品と共に、カバー２５０とトランスミッションハウジング３１０との間に取り付けるだけでよい。

任意選択的な構成として、取付けのために、電気的なスターターセット１００ａに、延長された取付け手段２５１ａを添え付けていてもよく、これにより、アダプタープレート１５０に基づいて拡大された、カバー２５０とトランスミッションハウジング３１０との間の間隔が補償される。
同じく任意選択的な構成として、電気的なスターターセット１００ａが、それぞれ必要に応じて、かつ／または選択的に自動二輪車の相応するオリジナル構成部品と交換するために、付加的に、延長されたキッカーシャフト２１０、および／または延長されたブレーキシャフト、および／または延長されたトランスミッションクラッチ操作レバー３５０、および／または延長されたクラッチプッシュロッド３６０を有していてもよい。

総括すると、電気的なスターターセット１００ａは、特殊な専門知識または特別な工具を必要とすることなく、簡単に、かつ面倒なく、後装備することができる。オリジナル構成部品において行われるべき変更は、最小限であり、かつ外見的にはほとんど気付かれず、機械的なキックスタート式始動装置２００の機能は完全に維持される。好ましくは、オリジナルキッカークラッチ部分を、スターターフリーホイール装置１４０とスターターリングギア１２３とを有するキッカークラッチ部分２４０により代えるだけでよい。構造に応じて、場合によっては、キッカーシャフト２１０および／またはブレーキシャフトおよび／またはトランスミッションクラッチ操作レバー３５０および／またはクラッチプッシュロッド３６０を交換することも必要となる。

１００ 電気的なスターターシステム
１００ａ 電気的なスターターセット
１１０ 電気的なスターターモーター
１１２ スターターシャフトピニオン
１２０ スターター伝動装置
１２１ スターターピニオン
１２２ スターター歯車
１２３ スターターリングギア
１２４ ピニオン
１２５ 歯車
１３０ スターター伝動装置ハウジング
１３１ 第１のスターター結合片
１３２ 第２のスターター結合片
１４０ スターターフリーホイール装置
１４１ 半径方向外側のレース
１４２ 半径方向内側のレース
１４３ 転動体
１５０ アダプタープレート
１５１ 切欠
１５２ 収容領域
１５３ 取付け部
１５４ ねじ
２００ 機械的なキックスタート式始動装置
２１０ キッカーシャフト
２１１ ペダル接続部
２１２ ばね受け
２２０ キッカー歯車
２２１ ストッパピン
２４０ キッカークラッチ部分
２４１ 直交方向歯列
２５０ カバー
２５１ 取付け手段
２５１ａ 延長された取付け手段
３００ トランスミッション
３１０ トランスミッションハウジング
３２０ アダプター部
３３０ トランスミッションベースプレート
３４０ トランスミッションメインシャフト
３５０ トランスミッションクラッチ操作レバー
３６０ クラッチプッシュロッド
ｘ 始動・駆動回転方向
ｙ 逆転方向

Claims (15)

1. 機械的なキックスタート式始動装置（２００）を備える自動二輪車用、特に４速トランスミッションを備える、ハーレーダビッドソンブランドの自動二輪車用の電気的なスターターシステム（１００）であって、前記自動二輪車は、トランスミッションメインシャフト（３４０）を有し、このトランスミッションメインシャフト（３４０）は、前記自動二輪車のスタート時および前記自動二輪車の標準運転中に、所定の始動・駆動回転方向（ｘ）に回転し、前記キックスタート式始動装置（２００）は、キッカーピニオンとキッカークラッチ部分（２４０）とを有し、前記キッカーピニオンは、前記キッカークラッチ部分（２４０）と軸方向で連結するように形成されており、前記キッカークラッチ部分（２４０）は、前記トランスミッションメインシャフト（３４０）に、トルクを伝達するように結合されており、前記電気的なスターターシステム（１００）は、電気的なスターターモーター（１１０）を含み、該電気的なスターターモーター（１１０）は、該電気的なスターターモーター（１１０）によって駆動可能なスターターシャフトピニオン（１１２）を備えている、電気的なスターターシステム（１００）において、
   前記電気的なスターターモーター（１１０）のトルクが、中間接続されたスターター伝動装置（１２０）を介して、前記スターターシャフトピニオン（１１２）から、好ましくは正面側で、前記キッカークラッチ部分（２４０）へ伝達可能であることを特徴とする、自動二輪車用の電気的なスターターシステム（１００）。
2. 前記電気的なスターターモーター（１１０）は、前記トランスミッションメインシャフト（３４０）に対してほぼ平行に配置されており、前記電気的なスターターモーター（１１０）のトルクが、前記電気的なスターターシステム（１００）に設けられた、中間接続されたスターター伝動装置（１２０）、好ましくは円筒歯車伝動装置の１つまたは複数の段を介して、前記トランスミッションメインシャフト（３４０）にトルクを伝達するように結合された前記キッカークラッチ部分（２４０）へ伝達可能であることを特徴とする、請求項１に記載の電気的なスターターシステム（１００）。
3. 前記電気的なスターターシステム（１００）がスターターリングギア（１２３）を有し、該スターターリングギア（１２３）が、前記スターター伝動装置（１２０）、特に円筒歯車伝動装置のスターター歯車（１２２）とトルクを伝達するように噛み合うために、または前記電気的なスターターモーター（１１０）の前記スターターシャフトピニオン（１１２）とトルクを伝達するように噛み合うために、前記キッカークラッチ部分（２４０）を同軸に取り囲んでいることを特徴とする、請求項１または２に記載の電気的なスターターシステム（１００）。
4. 前記電気的なスターターシステム（１００）がスターターフリーホイール装置（１４０）を有し、該スターターフリーホイール装置（１４０）は、前記電気的なスターターモーター（１１０）、特に前記スターターシャフトピニオン（１１２）と、前記キッカークラッチ部分（２４０）との間に中間接続されており、これにより、前記トランスミッションメインシャフト（３４０）の前記始動・駆動回転方向（ｘ）で、前記電気的なスターターモーター（１１０）を起点として、前記キッカークラッチ部分（２４０）に向かう方向では、トルク伝達するクラッチが形成されており、かつ前記キッカークラッチ部分（２４０）を起点として、前記電気的なスターターモーター（１１０）に向かう方向では、空転するクラッチが形成されていることを特徴とする、請求項１から３までのいずれか１項に記載の電気的なスターターシステム（１００）。
5. 前記スターターフリーホイール装置（１４０）が、スプラグ式フリーホイールまたはローラー状スプラグ式フリーホイール、特に転がり軸受式フリーホイールの形式で構成されていて、前記キッカークラッチ部分（２４０）を同軸的に取り囲んでおり、特に前記始動・駆動回転方向（ｘ）とは逆向きの逆転方向（ｙ）で、前記トランスミッションメインシャフト（３４０）の回転運動がロックされていることを特徴とする、請求項４に記載の電気的なスターターシステム（１００）。
6. スプラグ式フリーホイールまたはローラー状スプラグ式フリーホイール、特に転がり軸受式フリーホイールとして構成された前記スターターフリーホイール装置（１４０）は、半径方向外側のレース（１４１）と半径方向内側のレース（１４２）とを有し、前記半径方向外側のレース（１４１）が、前記電気的なスターターシステム（１００）の前記スターターリングギア（１２３）に、トルクを伝達するように結合されており、前記半径方向内側のレース（１４２）が、前記キックスタート式始動装置（２００）の前記キッカークラッチ部分（２４０）に、トルクを伝達するように結合されていることを特徴とする、請求項５に記載の電気的なスターターシステム（１００）。
7. 前記電気的なスターターシステム（１００）は、アダプタープレート（１５０）を有し、該アダプタープレート（１５０）が、前記キックスタート式始動装置（２００）のカバー（２５０）と、前記自動二輪車のトランスミッションハウジング（３１０）との間に配置されており、前記電気的なスターターモーター（１１０）が、前記アダプタープレート（１５０）によって前記自動二輪車の前記トランスミッションハウジング（３１０）に取り付けられていることを特徴とする、請求項１から６までのいずれか１項に記載の電気的なスターターシステム（１００）。
8. 前記アダプタープレート（１５０）が、前記スターターフリーホイール装置（１４０）を収容し、かつ／または前記スターターリングギア（１２３）を収容するための収容領域（１５２）を有し、かつ／または該収容領域（１５２）を形成している、請求項７に記載の電気的なスターターシステム（１００）。
9. 前記電気的なスターターシステム（１００）が、キックスタートばねを受け止めるための取外し可能なばね受け（２１２）を備えたキッカーシャフト（２１０）を有し、該キッカーシャフト（２１０）が、キッカー歯車（２２０）にトルクを伝達するように結合するために形成されていることを特徴とする、請求項１から８までのいずれか１項に記載の電気的なスターターシステム（１００）。
10. 機械的なキックスタート式始動装置（２００）を備えた自動二輪車、特に４速トランスミッションを備えたハーレーダビッドソンブランドの自動二輪車に後装備するための電気的なスターターセット（１００ａ）において、前記自動二輪車が、トランスミッションメインシャフト（３４０）を有し、該トランスミッションメインシャフト（３４０）は、前記自動二輪車のスタート時および前記自動二輪車の標準運転中に所定の始動・駆動回転方向（ｘ）に回転し、前記電気的なスターターセット（１００ａ）が、
    － 電気的なスターターモーター（１１０）であって、この電気的なスターターモーター（１１０）によって駆動可能なスターターシャフトピニオン（１１２）を備えている電気的なスターターモーター（１１０）と、
    － スターターフリーホイール装置（１４０）を備えるキッカークラッチ部分（２４０）であって、このキッカークラッチ部分（２４０）が、前記トランスミッションメインシャフト（３４０）にトルクを伝達するように結合するために形成されており、前記スターターフリーホイール装置（１４０）は、前記キッカークラッチ部分（２４０）を前記スターターシャフトピニオン（１１２）と、特に正面側で連結するために形成されているキッカークラッチ部分（２４０）と、
    － 前記電気的なスターターモーター（１１０）を前記自動二輪車のトランスミッションハウジング（３１０）に結合するために、かつ／または前記スターターフリーホイール装置（１４０）を備える前記キッカークラッチ部分（２４０）を収容するために形成されているアダプタープレート（１５０）とを含む、電気的なスターターセット（１００ａ）。
11. 前記電気的なスターターセット（１００ａ）が前組付けされており、前記アダプタープレート（１５０）が、特に１つまたは複数のスターター結合片（１３１，１３２）を介して前記電気的なスターターモーター（１１０）に、好ましくは解離可能に、結合されており、かつ／または前記スターターフリーホイール装置（１４０）を備えた前記キッカークラッチ部分（２４０）が、前記アダプタープレート（１５０）に設けられた、このために形成された収容領域（１５２）の内部に配置されていることを特徴とする、請求項１０記載の電気的なスターターセット（１００ａ）。
12. 前記電気的なスターターセット（１００ａ）が、スターター歯車（１２２）とスターターリングギア（１２３）とを含み、該スターターリングギア（１２３）は、前記キッカークラッチ部分（２４０）と前記スターターフリーホイール装置（１４０）とを同軸に取り囲むように配置されており、前記スターター歯車（１２２）は、スターター伝動装置（１２０）の構成要素として、前記電気的なスターターモーター（１１０）の前記スターターシャフトピニオン（１１２）と連結するように、かつ前記スターターリングギア（１２３）に噛み合うように形成されており、かつこのように配置可能であることを特徴とする、請求項１０または１１記載の電気的なスターターセット（１００ａ）。
13. 前記電気的なスターターセット（１００ａ）が、取外し可能なばね受け（２１２）を備えたキッカーシャフト（２１０）を含み、該キッカーシャフト（２１０）が、前記キックスタート式始動装置（２００）に設けられたキッカー歯車（２２０）にトルクを伝達するように結合するべく形成されていることを特徴とする、請求項１０から１２までのいずれか１項記載の電気的なスターターセット（１００ａ）。
14. 前記電気的なスターターセット（１００ａ）が、それぞれ必要に応じて、かつ／または選択的に前記自動二輪車の相応するオリジナル構成部品と交換するために、キッカーシャフト（２１０）および／またはブレーキシャフトおよび／またはトランスミッションクラッチ操作レバー（３５０）および／またはクラッチプッシュロッド（３６０）を有することを特徴とする、請求項１０から１３までのいずれか１項記載の電気的なスターターセット（１００ａ）。
15. 請求項１から９までのいずれか１項記載の電気的なスターターシステム（１００）または請求項１０から１４までのいずれか１項記載の電気的なスターターセット（１００ａ）が装備されているか、後装備されているか、または備えている自動二輪車。

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