JP2022187871A - ガラスレンズ成形装置、および成形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガラスレンズ成形中に、ガラス素材に生じた非対称な変形の改善又は抑制をすることができる成形装置を提供する。【解決手段】本開示に係るガラスレンズ成形装置は、一対の金型を用いてガラス素材を挟持し、プレス成形工程によるガラスレンズ成形装置であって、金型がガラス素材に当接する成形面を介してガラス素材を加熱する加熱機構と、一対の金型のうちの一方の金型を、他方の金型に向かって荷重軸に沿って移動させてプレスするプレス部材と、ガラス素材に作用する荷重軸方向の荷重を検出する荷重検知装置と、検出された荷重に基づき、ガラス素材と荷重軸とが直交する作用面における荷重中心の座標を算出する荷重中心算出部とを備える。加熱機構は、少なくとも1つの加熱素子と、加熱制御部とを含み、加熱制御部は、算出された荷重中心の座標に基づいて加熱素子を制御し、成形面内の温度分布を変化させてガラス素材を加熱する。【選択図】図4

Description

本発明は、ガラス成形装置に関し、具体的には、光学素子を代表するレンズなどのガラス製品を、金型を用いた成形技術により量産するガラスレンズ成形装置および成形方法に関する。
従来のガラスレンズ成形装置としては、加熱により軟化したガラス素材を、成形用型部材を用いてプレス成形に際して、成形型に対するガラス素材の導入口などの構造的な理由などで、型部材の周方向に関して、型部材に温度分布のバラツキがあるとき、これを修正することが可能な温度調整手段を設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
図15に示す特許文献1に記載された従来のガラスレンズ成形装置の構成図において、胴型401と、互いに対をなす型部材402,403が用いられる。ガラス素材404は、下型(下パンチ)403と上型(上パンチ)402との間に挟持され、上下に設置された円環状ヒータ部405により加熱される。ガラス素材404が所定の温度に達した軟化状態で、上型402と下型403とを軸方向に相対的に近づけることでプレスされ、型部材の形状をガラスに転写することで、所望するガラスレンズ形状となる。その後、ヒータ405の出力を調整して降温し、ガラスを固化させてから、型部材402,403を駆動し、成形されたガラスレンズを取り出し、一連のガラス成形プロセスが完了する。
近年、カメラ等の撮像系光学レンズは、複数枚のレンズを組合せることで収差や分解能等の多様な性能を満たすようになっている。レンズは集光や発散の目的で、凸形状、凹形状のレンズがある。中でも凹メニスカスレンズのような、レンズの中心部に比較して、周辺部が肉厚の形状のレンズでは、その精度が、型部材の温度のバラツキ、特に型部材の周辺部での温度分布のバラツキに対して敏感に影響されることが知られている。その結果、レンズの光学性能面に、光軸を中心とする軸対称でない形状誤差が生じてしまう問題があった。
そこで、特許文献1に記載されたガラスレンズ成形装置において、上下の型部材(パンチ)402、403の成形面付近を取り囲む円環状の温度制御手段406を設けている。温度制御手段406は、周方向に関して、所要に分割された領域に対する温度についての調整が可能となっている。このように、型部材の周方向に関して温度のバラツキがあるとき、これを修正することによって、温度の均一化が達成し形状誤差の発生を防止することができる。
特開平10-81524号公報
上記従来のガラスレンズ成形装置の構成では、型部材を取り囲む温度制御手段を用いて、周方向に分割された型部材の成形面周辺領域の温度が均一となるように温度制御をしている。しかしながら、この構成では、ガラスレンズの光学性能面の成形に直接影響を与える型部材の成形面について計測手段を有していなかった。その結果、プレス成形中に型部材の成形面の温度が時々刻々と変化するような現象には対応できないことが原因で、成形されたレンズ面の形状不良が生じるという課題を有している。ガラスレンズ成形の不具合を一層抑えるという観点において、従来の構成は未だ改善の余地がある。
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、ガラスレンズ成形中に、ガラス素材に生じた非対称な変形の改善又は抑制をすることができる成形装置および成形方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本開示に係るガラスレンズ成形装置は、金型がガラス素材に当接する成形面を介してガラス素材を加熱する加熱機構と、一対の金型のうちの一方の金型を、他方の金型に向かって荷重軸に沿って移動させてプレスするプレス部材と、ガラス素材に作用する荷重軸方向の荷重を検出する荷重検知装置と、検出された荷重に基づき、ガラス素材において、荷重軸に直交する作用面における荷重中心の座標を算出する荷重中心算出部と、を備え、加熱機構は、少なくとも1つの加熱素子と、加熱制御部とを含み、加熱制御部は、算出された荷重中心の座標に基づいて加熱素子を制御し、成形面内の温度分布を変化させてガラス素材を加熱する。
本開示のガラスレンズ成形装置および方法によれば、ガラスレンズ成形中の非対称な変形を改善することができ、高品質なガラスレンズの提供ができる。
複数の工程に分割して連続的にガラスレンズの成形を実行するガラスレンズ成形装置およびその成形プロセスを示す図である。 図1のガラスレンズ成形装置による成形プロセス完了後のガラス素材の外周面の様態を示す図である。 プレス成形中に非対称な変形の発生の様子を示す図である。 本開示の第1の実施の形態に係るデジタル加熱制御機構の構成図である。 本開示の実施の形態に係る荷重検知装置の荷重センサの平面配置の一構成例を示す図である。 本開示の実施の形態に係る荷重検知装置により検出された、プレス成形中にガラス素材における荷重中心の位置変化の一例を示す図である。 ガラス素材における荷重中心の位置変化と金型の成形面における温度分布との関連性を示す図である。 本開示の実施形態に係るデジタル加熱制御機構のデジタルヒータ70を従来のヒータブロック7に比較して示す図である。 本開示の実施形態に係るデジタル加熱制御機構のデジタルヒータの加熱温度の制御方式を示す図である。 図4に示すデジタル加熱制御機構の演算装置の一構成例を示すブロック図である。 図10の演算装置のプログラムのフローチャートである。 本開示の実施形態に係る加熱制御部による加熱制御の一例を示す図である。 本開示の第2の実施の形態に係るデジタル加熱制御機構の構成図である。 本開示の実施の形態に係るデジタル加熱制御機構が適用されたガラスレンズ成形装置およびその成形プロセスを示す図である。 従来のガラスレンズ成形装置の構成を示す図である。
本開示の第1態様によれば、一対の金型を用いてガラス素材を挟持し、プレス成形工程によるガラスレンズ成形装置であって、金型がガラス素材に当接する成形面を介してガラス素材を加熱する加熱機構と、一対の金型のうちの一方の金型を、他方の金型に向かって荷重軸に沿って移動させてプレスするプレス部材と、ガラス素材に作用する荷重軸方向の荷重を検出する荷重検知装置と、検出された荷重に基づき、ガラス素材において、荷重軸に直交する作用面における荷重中心の座標を算出する荷重中心算出部と、を備え、加熱機構は、少なくとも1つの加熱素子と、加熱制御部とを含み、加熱制御部は、算出された荷重中心の座標に基づいて加熱素子を制御し、成形面内の温度分布を変化させてガラス素材を加熱する、ガラスレンズ成形装置を提供する。
本開示の第2態様によれば、荷重検知装置は、少なくとも3つの荷重センサを含み、荷重センサは、荷重軸と直交する一の平面内に、荷重軸を中心に軸対称に配置され、それぞれが荷重軸方向に生じる荷重を検出する、第1態様に記載のガラスレンズ成形装置を提供する。
本開示の第3態様によれば、加熱機構は、温度計測素子を更に含み、温度計測素子は加熱素子の加熱温度を測定し、加熱制御部は、測定された加熱素子の加熱温度に基づいて、加熱素子を制御する、第1又は第2態様に記載のガラスレンズ成形装置を提供する。
本開示の第4態様によれば、温度調整判定部を更に備え、温度調整判定部は、荷重中心算出部により算出された荷重中心の座標に基づいて、作用面において、所定の基準位置に対する荷重中心の移動量を算出し、算出された移動量に基づいて、加熱素子の温度調整量を判定し、加熱制御部は、判定された対応する加熱素子の温度調整量を用いて、加熱素子を制御する、第1から第3態様のいずれか1つに記載のガラスレンズ成形装置を提供する。
本開示の第5態様によれば、加熱素子は複数であり、複数の加熱素子は、セグメント状に配置され、それぞれが互いに独立して調整可能な加熱温度で成形面の対応する領域を加熱し、加熱機構は、各々の加熱素子と対をなす複数の温度計測素子を含み、複数の温度計測素子は、それぞれが対をなす加熱素子の加熱温度を測定する、第1から第4態様のいずれか1つに記載のガラスレンズ成形装置を提供する。
本開示の第6態様によれば、加熱素子は、平板形状のヒータである、第1から第5態様のいずれか1つに記載のガラスレンズ成形装置を提供する。
本開示の第7態様によれば、一対の金型を用いてガラス素材を挟持し、プレス成形工程によるガラスレンズの成形方法であって、金型がガラス素材に当接する成形面を介してガラス素材を加熱するステップと、一対の金型のうちの一方の金型を、他方の金型に向かって荷重軸に沿って移動させてプレスするステップと、ガラス素材に作用する荷重軸方向の荷重を検出するステップと、検出された荷重に基づき、ガラス素材において、荷重軸に直交する作用面における荷重中心の座標を算出するステップと、算出された荷重中心の座標に基づいて、成形面内の温度分布を変化させてガラス素材を加熱するステップと、を含む、ガラスレンズの成形方法を提供する。
本開示の第8態様によれば、算出された荷重中心の座標に基づいて、成形面内の温度分布を変化させてガラス素材を加熱するステップは、算出された荷重中心の座標に基づいて、作用面において、所定の基準位置に対する荷重中心の移動量を算出するステップと、算出された移動量に基づいて、ガラス素材を加熱する温度の調整量を判定するステップと、判定された温度の調整量を用いて、ガラス素材を加熱する温度を制御するステップと、を含む、第7態様に記載のガラスレンズの成形方法を提供する。
本開示の第9態様によれば、算出された荷重中心の座標に基づいて、作用面において、所定の基準位置に対する荷重中心の移動量を算出するステップステップは、作用面において、所定の基準位置に対する荷重中心の移動方向を算出するステップを含み、算出された移動量に基づいて、ガラス素材を加熱する温度の調整量を判定するステップは、算出された荷重中心の移動方向に向かう側の成形面の領域の温度、および/又は算出された荷重中心の移動方向の反対側の成形面の領域の温度を、成形面の他の領域の温度に対して相対的に変化させるように判定するステップを含む、第8態様に記載のガラスレンズの成形方法を提供する。
本開示の第10態様によれば、複数の工程を含むガラスレンズの成形方法であって、上流工程で判定されたガラス素材を加熱する温度の調整量を下流工程にフィードバックするステップと、下流工程において、フィードバックされた温度の調整量に基づいて、成形面内の温度分布を変化させてガラス素材を加熱するステップと、を含む、第8又は第9態様に記載のガラスレンズ成形装置を提供する。
本開示の第11態様によれば、複数の工程を含むガラスレンズの成形方法であって、複数の工程のうち、1つ以上の工程は、ガラス素材に作用する荷重軸方向の荷重を検出するステップと、検出された荷重に基づき、作用面における荷重中心の座標を算出するステップと、算出された荷重中心の座標に基づいて、成形面内の温度分布を変化させてガラス素材を加熱するステップと、を含む、第7から第10態様のいずれか1つに記載のガラスレンズ成形装置を提供する。
<本発明に至る過程>
先ずは、図1乃至図3を参照しながら、本発明に至る過程について説明する。
図1は、複数の工程に分割して連続的にガラスレンズの成形を実行するガラスレンズ成形装置100およびその成形プロセスを示す図である。図1に示すガラスレンズ成形装置100は、ガラスレンズの成形プロセスを複数の工程に分割して連続的に実行することによって、同時に複数の金型1を利用することができ、生産性を高めることができる。図1に示す成形プロセスは、同図中の矢印で示すように、右から左に向かって進む各成形工程が、それぞれ投入部111と、加熱部112と、プレス成形部113と、冷却1部114と、冷却2部115と、取出部116とにおいて順次に実行される。金型1は、上型(上パンチ)2と、下型(下パンチ)3と、胴型4とを含み、上型2と下型3とは、対向に配置されて胴型4に保持され、レンズとなるガラス素材5aは、その間に挟持される。成形プロセスが開始した後、金型1は、ガラス素材5aを挟持した状態で、送り機構(図示せず)により一定間隔(例えば、10分毎)で架台101により支持されている成形装置100の投入部111に送入され、取出部116に向かって移送され、ガラス素材5aは、順次にそれぞれの工程で成形加工を受ける。以下に、各工程について説明する。
投入工程では、投入部111において、上型2を胴型4から外し、レンズとなるガラス素材5aを挿入した後上型2を胴型4に挿入し、レンズ素材5aを下型3と上型2との間で挟持するように金型1を組み立てる。続いて、加工室105のシャッター106aが開き、レンズ素材5aを挟持している金型1は、送り機構により摺動移動して加工室105内の加熱部112における対向に設置された上下のヒータブロック7aの間に移送される。加工室105内は、金型の酸化防止のために、一般的に真空もしくは窒素雰囲気状態である。
加熱工程において、加熱部112のヒータブロック7aは、複数の棒状のヒータ6aが挿入されており、所定の予熱温度を維持するように制御されている。加熱工程では、温度の低いガラス素材5aが割れたり、傷つけたりしないために、プレス部材10aは、上側のヒータブロック7aを荷重軸11aに沿って下方へ移動させ、ガラス素材5aに概ね荷重を掛けないように上型2に当接させる。加熱部に移送された直後の金型1は、ヒータブロック7aの設定温度よりも低い。ヒータブロック7aが金型1を介してガラス素材5aを加熱することによってガラス素材5aは、加熱工程の後半において十分に熱変形可能な温度に達する。所定時間の経過後、金型1は、熱変形可能な温度に達したガラス素材5aを挟持して成形部113に進み、加熱部112では、次の金型とともに送入されたガラス素材が加熱される。
成形工程において、成形部113の上下のヒータブロック7bは、複数の棒状のヒータ6bが挿入されており、所定の成形温度を維持するように制御されている。金型1が、成形部の上下のヒータブロック7bの間に配置された後、成形部113のプレス部材10bが荷重軸11bに沿って下降し、金型1の成形面(上型2の下端面および下型3の上端面)をガラス素材5bに当接させて、熱変形可能状態のガラス素材5aを押しつぶして変形させる。そして、ヒータブロック7bにより金型1の成形面を介して変形したガラス素材5bを加熱しながら、レンズの形状をガラス素材5bに転写する。所定時間の経過後、金型1は、レンズの形状が転写されたガラス素材5bを挟持して冷却1部114に進み、成形部113では、次の金型とともに送入されたガラス素材がプレス成形される。
冷却1工程において、冷却1部114の上下のヒータブロック7cは、複数の棒状のヒータ6cが挿入されており、成形部113のヒータブロック7bの温度よりもわずかに低い冷却1温度を維持するように制御されている。金型1が、冷却1部114の上下のヒータブロック7cの間に配置された後、冷却1部114のプレス部材10cが荷重軸11cに沿って下降し、金型1の成形面をガラス素材5bに当接させて、ガラス素材5bを冷却1温度に維持する。このとき、ガラス素材5bは、温度が下がるとともに収縮し、収縮する過程で金型2、3の成形面によりレンズの形状の転写が完全になされ、成形すべきレンズの表面形状が成形される。所定時間の経過後、金型1は、成形完了後のガラス素材5cを挟持して冷却2部115に進み、冷却1部114は、次の金型とともに送入されたガラス素材が成形される。
冷却2工程において、冷却2部115の上下のヒータブロック7dは、複数の棒状のヒータ6dが挿入されており、金型の取出温度を維持するように制御されている。金型1が、冷却2部115の上下のヒータブロック7dの間に配置された後、冷却2部のプレス部材10dが荷重軸11dに沿って降下し、金型1の成形面をガラス素材5cに当接させて、冷却2温度となるまで冷却する。成形完了後のガラス素材5cは、金型2,3に挟持されながら急速に冷却されて固化する。所定時間の経過後、加工室105のシャッター106bが開き、金型1は、加工室105外に送出され、固化したガラス素材5dを挟持して取出部116に進み、冷却2部115では、次の金型とともに送入されたガラス素材が冷却される。
取出工程において、金型1が分解され、成形後のガラス素材5dが取出され、成形プロセスが完了する。その後、金型1は、再び投入部111に移送され、新たなガラス素材が挿入され、上述した各工程が繰り返して実行される。
また、本開示に係るガラスレンズの成形プロセスは、上述した工程に限定されない。例えば、加熱工程を2段階に分けて実行してもよく、同様に、冷却工程を更に多段階に分けて実行しても良い。ヒータブロックは、上述したように、工程毎に設定温度が異なり、加熱部の予熱温度と成形部の成形温度が高く(同じ温度であるとは限らない)、冷却1部の冷却1温度は成形温度よりも低く、冷却2部の温度は、取出温度であって、冷却1温度よりもはるかに低いことが一般的である。
なお、金型を分解して成形後のガラス素材を取出する工程、および新たなガラス素材を挿入して金型を組立てる工程を自動化することによって、生産性を高めることも、生産の状況に合わせて実現可能である。
しかしながら、上記成形プロセスにおいて、ガラス素材の非対称な変形が発生する場合がある。以下、プレス成形中に、ガラス素材の非対称な変形の発生について説明する。
<プレス成形中にガラス素材の非対称な変形の発生>
図2は、図1のガラスレンズ成形装置による成形プロセス完了後のガラス素材の外周面の様態を示す図である。ガラスレンズ成形後には、芯取り予定線(図2(a)に示す5s1又は図2(b)に示す5s2)に沿って外周面が加工される。完成したガラスレンズが鏡筒に組付けられるとき、レンズの外周面が保持されるため、成形したレンズは、形状上の外周面中心が光学上の光軸と一致していない場合には、十分に光学性能が発揮できなくなる。
図2(a)に示す成形後のガラス素材5d1は、図2の紙面に対して垂直な光軸に対して、軸対称な成形状態であって、外周面と芯取り予定線5s1とは、同芯状となっている。一方、図2(b)に示す成形後のガラス素材5d2は、非軸対称な成形状態であって、外周面と芯取り予定線5s2とは非同芯状であり、非対称な変形が生じている。図2の(a)と(b)とのいずれの場合も、芯取り予定線に沿って外周面を加工すれば、同様の外径を有するレンズを仕上げることができる。しかしながら、図2(b)のガラス素材5d2から仕上げたレンズは、非対称な成形ひずみを有しているため、十分な光学性能に達成できず、成形上品質不良が生じる。
上記プレス成形後のガラス素材に生じた非対称な変形の発生原因について、図3を参照して検討する。図3は、プレス成形中に非対称な変形の発生の様子を示す図である。図3上段の図3(a)において、上型2と下型3の中央にガラス素材5eが挟持されている。このまま挟持された状態で図示しないヒータブロックにより加熱され、成形温度に達した後、図示しないプレス部材によって上型2が荷重軸11eに沿って下降する。
図3下段の図3(b)は、ガラス素材5eが正常にプレスされ成形された状態である。図3(b)に示すように、成形されたガラス素材5fが荷重軸中心に均等に押し広げられている。この場合、プレス成形中のガラス素材は、重心が移動することなく、ガラス素材と荷重軸との直交する平面における荷重中心12fが荷重軸11f上にある。この場合、成形後のガラス素材5fは、図2(a)のように、芯取り予定線に対して同芯状の外周面を有する。
一方、図3(c)には、非対称な変形が生じて、ガラス素材が軸対称に成形されていない状態を示している。このとき、プレス成形中のガラス素材は、荷重軸11gに対して一様に広がらず、広がりがm3方向よりもm4方向へ進むことによって、成形されたガラス素材5gは、重心が移動し、ガラス素材と荷重軸との直交する平面における荷重中心12gの位置が荷重軸11gに対してΔd1のズレが生じている。成形後のガラス素材5gは、図2(b)に示すように、芯取り予定線に対して非同芯状の外周面を有する。
このように、プレス成形中に非対称な変形の発生に伴って、荷重中心の移動が生じることが判明した。そこで、ガラスレンズ成形装置に適用するデジタル加熱制御機構を開発し、本発明に至った。本開示に係るデジタル加熱制御機構をガラスレンズ成形装置に適用することによって、プレス時の荷重中心の移動を計測することにより成形中にガラス素材における非対称な変形を検出し、それに応じて加熱制御することによって、非対称な変形の発生を改善することができる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施形態において示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置、および接続形態などは、本開示に係る一具体例であって、本開示を限定するものではない。よって、以下の実施形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、本開示の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。更に、他の実施形態との組合せも可能である。
なお、各図面は、模式図を示すものであり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図面において、実質的に同一の構成について、同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
(第1の実施の形態)
<本開示の第1の実施の形態に係るデジタル加熱制御機構の構成>
図4は、本開示の第1の実施の形態に係るデジタル加熱制御機構200の構成図である。図4に示す荷重検出およびデジタル加熱制御機構200は、上下対向に配置された一対のデジタルヒータ70と、荷重検知装置20と、演算装置30と、加熱制御部40とを備えている。一対のデジタルヒータ70は、加熱素子60と、加熱素子60と対をなす温度計測素子50とを含む。加熱素子60は、金型1の成形面(図示せず)を介してガラス素材(図示せず)を加熱し、温度計測素子50は、対をなす加熱素子の加熱温度を測定するように用いられる。デジタルヒータ70の下方に、荷重検知装置20の荷重センサ21が設置されている。これらの構成要素について、以下詳細に説明する。
<本開示の実施の形態に係るデジタル加熱制御機構の荷重検知装置>
図4に示すように、荷重検知装置20は、荷重センサ21と増幅器22とを備えている。荷重センサ21は、デジタルヒータ70の下方に設置され、プレス時の荷重を測定する。検出された荷重の値は、増幅器22によって増幅され、演算装置30に送信される。荷重センサ21を高温や温度変化から守るために、後述するように、ガラスレンズ成形装置の成形部(もしくは、冷却1部)のヒータブロックの下方に断熱材を介して設置することができる。
図5は、本開示の実施の形態に係る荷重検知装置20の荷重センサ21の平面配置の一構成例を示す図である。図5に示す荷重センサ21は、プレス方向(Z軸)のみの荷重を計測可能な1軸荷重センサを4つ(21a1,21a2,21a3,21a4)用いた構成例を示している。この構成は、安価な1軸荷重センサのみで構成できるので、実用的である。図5に示すように、4つの1軸荷重センサ21a1~21a4は、それぞれ荷重軸と直交する平面内におけるX軸に対して±m、Y軸に対して±n離れた位置に設置している。このように、X-Y座標の原点Oに対して、荷重センサを対称的配置するのは、後述する荷重中心の座標を導出する計算を容易にするためであり、荷重センサを対称的配置しない場合は、荷重中心の座標の計算が煩雑となる。荷重中心の位置を導出する仮想面を、作用面F1とし、図5に示すX-Y座標の平面とする。プレス成形中にプレス荷重が生じるとき、1軸荷重センサ21a1~21a4は、それぞれZ軸の荷重z1,z2,z3,z4を検出し、作用面F1におけるZ軸の荷重はz1~z4の合算値となる。
4つの荷重センサ21a1~21a4が、それぞれZ軸の荷重z1~z4を示した場合、X-Y座標の原点Oを中心にX軸まわりのモーメントMxとY軸まわりのモーメントMyとは、それぞれ以下の式(1),(2)により算出される。
Figure 2022187871000002
作用面F1における荷重中心G1の座標(ax1,ay1)は、以下の式(3),(4)によって求めることができる。
Figure 2022187871000003
荷重軸の中心位置が作用面F1のX-Y座標の原点Oに一致した場合、プレス成形が開始してからガラスが押し広げられた状態になるまで、成形後のガラス素材が図3(b)の状態であるとき、荷重中心G1がX-Y座標の原点Oと一致し、式(3),(4)の算出結果は、ax1=ay1≒0となることが推定できる。一方、成形後のガラス素材が図3(c)の状態であるとき、プレス成形中にガラス素材に非対称な変形が発生し、荷重中心G1がX-Y座標の原点Oから移動し、式(3),(4)による荷重中心G1の座標ax1、ay1の計算値はゼロにはならない。
なお、図5に示す荷重センサ21の構成例において、1軸荷重センサを4つ配置したが、荷重センサ21は3つ以上であれば、荷重中心の座標の算出が可能である。荷重センサ21を3つ使用する場合には、3つの荷重センサ21は、一直線上にない3箇所に配置すればよい。例えば、3つの荷重センサ21を、X-Y面における第1象限から第4象限までの4つの領域のうち3つの領域に、それぞれ配置することができる。
<プレス成形中にガラス素材における荷重中心の移動>
ガラスレンズのプレス成形中に、プレスの進行に伴って、図3(c)に示す非対称な変形が発生した場合、荷重中心はX-Y面内において移動することとなる。以下、図6-7を参照して、プレス成形中にガラス素材の荷重中心の移動様態、および当該移動の起因について述べる。
図6は、本開示の実施の形態に係る荷重検知装置により検出された、プレス成形中にガラス素材における荷重中心の位置変化の一例を示す図である。図7は、ガラス素材における荷重中心の位置変化と金型の成形面における温度分布との関連性を示す図である。図6および図7のX-Y座標は、図5に示す作用面F1のX-Y座標と同一であり、即ち、荷重中心の座標を表している。
図6に示す一例では、図1のガラスレンズ成形プロセスの成形工程において、金型1が成形部113に移動した直後は、上ヒータブロック7bは、上方にあるため、プレス荷重は発生していない(ガラス素材5bには、金型自重のみが作用している)。その後、プレス部材10bが下降し、金型1と接した時点からプレス荷重が発生する。図6に示す始点A1(図6に示す■位置)は、例えば、プレス荷重が10Nに達したときに、作用面F1において、ガラス素材に作用する荷重中心の位置を示している。その後、設定したサンプリングタイミング毎に、荷重中心が検知され、プレス成形の進行に伴って軌跡Q1に沿って荷重中心が移動し、成形工程終了時に原点Oより最も遠く離れたA2(図6に示す●位置)となっている。
プレス成形の進行に伴って、荷重中心の移動が生じる原因について検討する。成形工程において、成形温度を制御するヒータブロックの設定は、用いられるガラスの種類によって異なる。一般的にガラス転移点(Tg点)より高く、屈伏点(At点)付近に成形温度が設定される。ヒータブロックが金型の成形面を介して成形中のガラス素材を加熱するとき、金型の成形面における温度分布の不均一は、例えば、わずか1,2℃異なるだけでも、ガラス素材の粘性が大きく変化する。具体的には、成形面の温度が高い側に、ガラス素材の粘性が低く、変形がより速く進行する。その結果、荷重軸(Z軸)方向にのみプレス荷重を加えているにもかかわらず、X-Y面におけるガラスの変形が均一とならず、非対称な変形が生じる。このように、荷重センサ21によるプレス時の荷重を計測すると、図6に示した例のように、金型の成形面における温度分布の不均一に起因した荷重中心の移動が判明する。
図7には、荷重中心が作用面F1のX-Y座標の原点O(荷重軸中心)からB1(図7に示す●位置)まで移動したときの金型の成形面の温度分布を示している。この例において、荷重中心の移動方向Q2は、X軸よりγ°右回転した方向であり、当該移動方向に向かう側に、金型の成形面は、温度がわずかに高い領域がある(同図中“H”領域)。荷重中心の移動量Δd2の値は(対応的に図3(c)に示すΔd1)、成形するレンズの大きさ、成形条件にもよるが、直径30mm程度のレンズならば、最大でも1~2mmであり、通常は0.5mm以下である。このΔd2の値が大きい場合、成形されたレンズ面に非対称なひずみが残り、不良となる。Δd2の値がどの程度に大きくなれば不良となるかは、レンズ形状や品質規格によって適宜に定めてもよい。
<本開示の実施の形態に係るデジタル加熱制御機構におけるデジタルヒータの構成>
プレス成形中に、金型の成形面における温度分布の不均一に起因したガラス素材の非対称な変形を改善するための、本開示に係るデジタル加熱制御機構におけるデジタルヒータの構成について説明する。
図8は、本開示の実施形態に係るデジタル加熱制御機構のデジタルヒータ70を従来のヒータブロック7に比較して示す図である。図1に示した一般のガラスレンズ成形装置100のヒータブロック7の構成は、図8の上段に示すように、棒状のヒータ6を用い、ヒータブロックの加熱面(金型に当接する面)が均一な温度となるように構成されている。しかしながら、図1に示すように、ガラスレンズ成形プロセスは、金型1が摺動して順次に各工程に進むように実行される。そのような場合、例えヒータブロックの加熱面が均一な温度であったとしても、金型の成形面(ガラス素材に当接する面)が均一な温度になるとは限らない。なぜならば、例えば、下型3の下面と下側のヒータブロックの加熱面に微小な異物をかみ込んで金型がわずかながら浮き上がった場合や、長期的に使用してヒータブロックの加熱面が摩耗して接触状態が均一でないことが生じた場合などには、ヒータブロックが均一な温度であっても、一様に伝熱しないため、金型の成形面では不均一な温度分布が生じる。
そのような状況に鑑みて開発されたデジタルヒータ70は、図8の下段に示す。デジタルヒータ70は、加熱面に沿ってセグメント状に配置された1つ以上の加熱素子60と、加熱素子60のそれぞれと対をなす温度計測素子50とを含む。加熱素子60は、好ましくは、平板形状の小型平面ヒータ(例えば、坂口電熱(株)MS-1000R、MS-1000-10)であるが、これに限定されない。1つ以上の加熱素子60は、それぞれが互いに独立して調整可能な加熱温度で金型(図示せず)の対応する領域を加熱するように構成されている。温度計測素子50は、例えば、熱電対であってもよく、それぞれが対をなす加熱素子60と個々の加熱セグメントを形成している。
図9は、本開示の実施形態に係るデジタル加熱制御機構のデジタルヒータ70の加熱温度の制御方式を示す図である。図示のように、デジタルヒータ70において、個々の加熱セグメントは、一対の加熱素子60と温度計測素子50とが温度制御部40に接続され、互いに独立して温度制御可能に構成されている。このように、デジタルヒータ70の加熱面の温度分布を変化させることによって、金型の成形面の温度分布を適宜に調整し、ガラス素材を加熱することができる。
理論上、複数の加熱素子60により、デジタルヒータ70の加熱面に任意の温度分布を形成することができる。但し、複数の加熱素子60が互いに隣接し、相互影響しあうため、最大10℃程度の温度分布を任意の場所に形成することができる。上述したように、従来のヒータブロックは、加熱面における均一な温度分布を実現したとしても、金型の成形面を介してガラス素材に均一に伝熱することは困難である。本開示に係るデジタルヒータを利用すれば、加熱面における任意の温度分布を形成することによって、金型の成形面を均一な温度分布にすること、そして、成形中にガラス素材に均一に伝熱させることが可能となる。
図9は、縦横3×3の9加熱セグメントにより構成されたデジタルヒータの一例を示しているが、本開示はこれに限定されない。デジタルヒータ70を構成する加熱セグメント数を図9の例より増加させて、4×4、5×5、あるいは4×5のように増加させると、よりきめ細やかな温度制御が可能となる。一方で、例え加熱セグメント数を多くしても、温度自体はアナログ的に時間遅れを伴って伝達されるため、不必要に加熱セグメント数を増やすことは、図4に示す加熱制御部40のコスト増加を招くことになる。
成形中にガラス素材の非対称な変形を改善するためには、上述したデジタルヒータ70による加熱温度の制御と、荷重検知装置20による成形中に荷重中心の移動検出との組み合わせにより、初めて有効となる。デジタルヒータ70と荷重検知装置20との協働は、図4に示すデジタル加熱制御機構の演算装置30による加熱温度調整量の判定を通じて実現される。以下に、本開示の加熱制御機構200において、演算装置30による加熱温度調整量の判定について説明する。
<演算装置30(コンピュータ装置)>
図10は、図4に示すデジタル加熱制御機構の演算装置30の一構成例を示すブロック図である。演算装置30は、例えば、コンピュータ装置である。このコンピュータ装置として、汎用的なコンピュータ装置を用いることができ、例えば、図10に示すように、処理部31、記憶部32、表示部33を含む。なお、更に入力装置、記憶装置、インタフェース等を含んでもよい。演算装置30は、荷重検知装置20によって検出されたプレス成形中の荷重の測定データに基づいて、演算処理を行うことができる。
<処理部31>
処理部31は、例えば、中央処理演算子(CPU)、マイクロコンピュータ、又は、コンピュータで実行可能な命令を実行できる処理装置であればよい。
<記憶部32>
記憶部32は、例えば、ROM、EEPROM、RAM、フラッシュSSD、ハードディスク、USBメモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の少なくとも一つであってもよい。
記憶部32には、プログラム35を含む。なお、演算装置30がネットワークに接続されている場合には、必要に応じてプログラム35をネットワークからダウンロードしてもよい。
<プログラム35>
プログラム35には、荷重中心算出部35aと、温度調整判定部35bとを含むことができる。荷重中心算出部35aと、温度調整判定部35bとは、実行時には、記憶部32から読み出されて処理部31にて実行される。荷重中心算出部35aと、温度調整判定部35bとによって、プレス成形中にガラス素材の荷重中心の位置が算出され、更に荷重中心の移動に基づいて、ガラス素材を加熱するデジタルヒータの加熱温度の調整量を判定することができる。
<表示部33>
表示部33は、例えば、処理部31によりプログラム35が実行され、得られた結果を表示することができる。
図11を参照して、荷重中心の算出により、ガラス素材を加熱する温度の調整量を判定する判定プログラムについて説明する。図11は、図10の演算装置30のプログラム35のフローチャートである。図11に示すように、演算装置30のプログラム35は、以下3つのステップからなる。荷重中心算出部35aは、ステップS11に対応し、温度調整判定部35bは、ステップS12およびS13に対応する。
(1)荷重検知装置によって検出された荷重に基づいて、成形されているガラス素材の荷重中心の座標を算出する(S11)。
(2)次に、算出された荷重中心の座標に基づいて、荷重中心の移動量を算出し、算出された荷重中心の移動量を減少させるように、デジタルヒータにおける加熱素子の加熱温度の調整量を判定する(S12)。
(3)次いで、判定された加熱温度の調整量を加熱制御部40に送信する(S13)。
<本開示の実施の形態に係るデジタル加熱制御機構の加熱制御>
加熱制御部40は、演算装置30により判定された加熱温度の調整量に基づいて、デジタルヒータ70の加熱温度を制御し、金型の成形面内の温度分布を調整してガラス素材を加熱することができる。図12を参照して、本開示のデジタルヒータ70の加熱温度制御の一例を説明する。
図12は、本開示の実施形態に係る加熱制御部40による加熱制御の一例を示す図であり、縦横3×3の加熱セグメントにより構成されたデジタルヒータ70を真上から見た図5の作用面F1のX-Y座標を示している。中央には金型1(の外形)が配置されている。図7を参照して説明した荷重中心の移動を重ねて示している。前述したように、荷重中心が荷重軸の中心OからB1まで移動した場合、その移動方向に向かう側、すなわち、OB1の延長線上にわずかに温度が高い領域が存在すると考えられる。このとき、例えば、加熱制御部40により、デジタルヒータ70の加熱セグメント(3、1)の加熱素子の温度を、他の加熱セグメントに対し、相対的に下げるように制御することができる。具体的な温度調整量は、O点からB1点までの移動速度、移動量Δd2、金型の材質、および成形されるレンズの形状やガラス素材の材種等のパラメータを用いた解析又はマッピングデータに基づいて決めることができる。このように、温度制御を実施することによって、図12に示す荷重中心の移動量Δd2を減少させることができ、その結果、成形中にガラス素材に生じた非対称な変形を改善し、高精度なレンズが歩留まり良く生産することができる。
なお、成形中に荷重中心の移動量の算出は、荷重軸の中心位置を基準とするには限定されない。作用面F1において、任意に定められた基準位置に対して荷重中心の移動量を算出してもよく、成形中に、演算装置30により連続的に算出された荷重中心の座標に基づいて、作用面F1における荷重中心の移動量を算出してもよい。
(第2の実施の形態)
<本開示の第2実施の形態に係るデジタル加熱制御機構の構成>
図13は、本開示の第2の実施の形態に係るデジタル加熱制御機構200aの構成図である。この実施の形態において、デジタル加熱制御機構200aは、成形部113aにおいて荷重中心の移動に基づいて判定されたデジタルヒータ70aの加熱温度の調整量を、金型1を下流の冷却1部114aへ移送するとともに、冷却1部114aのデジタルヒータ70bへフィードバックし、デジタルヒータ70bの加熱面の温度分布を制御するように構成されている。
図13に示すように、デジタル加熱制御機構200aの基本構成は、前述したデジタル加熱制御機構200と同様であるため、詳細な説明は省略する。加熱制御部40aは、成形部113aのデジタルヒータ70aと、冷却1部114aのデジタルヒータ70bとの両方に接続され、加熱制御を行う。以下、成形工程で判定された加熱温度の調整量を冷却1工程にフィードバックするに伴う加熱制御方法について説明する。
ガラスレンズの成形プロセスにおいて、加熱部(図示せず)から成形部113aに移動した金型1のプレスが開始されると、デジタルヒータ70aの下方の荷重センサ21aによって検出された荷重は、増幅器22aを介して演算装置30に送信され、荷重中心の移動量が算出される。算出された荷重中心の移動量に基づいて、演算装置30によりデジタルヒータの加熱温度の調整量1が判定され、加熱制御部40に送信される。温度制御部40は、受信した加熱温度の調整量1に基づいて、成形部113aのデジタルヒータ70aの加熱温度を制御する。
次に、成形工程終了後、金型1が、下流工程の冷却1部114aへ移送されると同時に、温度制御部40は、成形部113aで判定された加熱温度の調整量1に基づいて、加熱温度の調整量2で冷却1部114aのデジタルヒータ70bの加熱温度を制御する。但し、冷却1部114aのデジタルヒータ70bの加熱温度制御に用いられる温度調整量2は、成形部113aで判定された加熱温度の調整量1と同一には限らない。望ましくは、加熱温度調整量2は、加熱温度の調整量1に基づいて導出した冷却1部114aに適した加熱温度の調整量である。
具体的には、成形部において得られた加熱温度の調整量より、例えば、温度が5℃低い調整量が冷却1部114aに適した加熱温度の調整量であれば、その適した加熱温度の調整量を加熱温度調整量2として用いて、冷却1部114aのデジタルヒータ70bの加熱温度を制御する。なお、加熱温度の調整量1に基づいて加熱温度の調整量2を導出には、上記単純な引き算には限定されない。
加熱温度の調整量1に基づいて加熱温度調整量2を導出して冷却1部114aのデジタルヒータ70bを制御するのは、前述したように、成形部113aの成形温度と、冷却1部114aの冷却1温度とは、異なるためである。一般に、冷却1部114aのデジタルヒータ70bの個々の加熱素子自体の熱容量が小さいため、急峻に指令温度まで変化し、デジタルヒータ70bの加熱面も徐々にその温度になる。成形部113aから移送された直後の金型1は、移動する間の荷重負荷がゼロになるため、一旦熱変形が回復した状態で冷却1部114aに送入される。送入された直後の金型1内の成形工程後のガラス素材の温度は、成形部113aの加熱温度のままであり、変えて大きく熱変形回復していることもあり、冷却1部114aでのプレスが開始されると、ガラス素材は再度金型の成形面に沿って変形し始める。この時、成形部で得られた加熱温度の調整量1に基づいて導出された加熱温度の調整量2による加熱面の温度分布にすることで、成形されるガラスレンズの非対称な変形を緩和することが可能となる。
更に、図13に示すように、冷却1部114aは、成形部113aと同様に、荷重センサ21bが設置され、プレス荷重が検出される。冷却1工程中に、荷重センサ21bにより測定されたプレス荷重に基づいて、演算装置30によりデジタルヒータ70bの新たな加熱温度の調整量が判定され、上記加熱温度の調整量2に基づいて設定されたデジタルヒータ70bの加熱温度について、冷却1部114aの成形状態に応じて更に制御することができる。
<本開示に係るデジタル加熱制御機構が適用されたガラスレンズ成形装置>
図14は、本開示の実施の形態に係るデジタル加熱制御機構が適用されたガラスレンズ成形装置300およびその成形プロセスを示す図である。ガラスレンズ成形装置300において、図13に示したデジタル加熱制御機構200aが、成形部313および冷却1部314に適用され、プレス成形中にデジタルヒータ70の加熱温度を制御する。図14に示すように、成形部313および冷却1部314において、1軸荷重検出器21が4個1組として、下側のデジタルヒータ70の下方に、断熱材8を介して設置されている。投入部311と、加熱部312と、冷却2部315と、取出部316とにおいて、ガラス素材にプレス荷重を加えないため、図1に示したガラスレンズ成形装置100と同様であり、従来のヒータブロック7が設置されている。
図14に示すガラスレンズ成形装置300の成形プロセスにおいて、本開示のデジタル加熱制御機構による加熱温度の制御方法は特に有利である。ガラスレンズ成形装置300のガラスレンズの成形プロセスは、全工程の工程時間が一定で、プロセス実行中に金型が一斉に移動する。本開示のデジタル加熱制御機構による加熱温度の制御は、工程時間が長く、例えば、3分程度以上の場合には非常に有効である。反対に工程時間が3分よりも短い場合には、例えデジタルヒータの加熱温度を制御しても、金型への熱伝導には時間を要するため、その間に工程時間が設定時間に達してしまい、温度制御が有効に実現しない場合がある。また、図13に示したように、成形部で得られた加熱温度の調整量を利用して冷却1部のデジタルヒータにフィードバックすることによって、金型が冷却1部に移動したときに、冷却1部のデジタルヒータの加熱温度が既に設定されているため、遅れることなく、加熱面に最適な温度分布を形成することができる。
なお、以上述べた本開示の実施形態において、金型の成形面における温度分布を均一にするように、加熱制御を行ったが、本開示はこれに限定されない。用途に応じて、敢えて成形面における温度分布を不均一にする加熱制御も可能である。
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、本発明の請求の範囲内に含まれると理解されるべきである。
本発明のガラスレンズ成形装置は、ガラスレンズ成形中の非対称な変形による品質不良を改善することができ、更には高精度なガラスレンズを効率的に生産が可能となる。また、使用する温度域が大きく異なる樹脂レンズの成形においても同様に使用することができる。
1 ガラスレンズ成形金型(全体)
2 上型
3 下型
4 スリーブ
5 ガラス素材
5a プレス成形前のガラス素材
5b プレス成形後のガラス素材
5c、5d、5e プレス成形中のガラス素材
6 ヒータ、6a:棒状の加熱素子、6b:平板状の加熱素子
7 7a ヒータブロック、7b(平板状加熱素子による)
8 断熱板
10 プレス部材
11 荷重軸(駆動軸)
20 荷重検知装置
21 荷重センサ
21a1、21a2、21a3、21a4 1軸荷重センサ
22 増幅器
30 演算装置
31 演算部
32 記憶部
33 表示部
35 プログラム
40 加熱制御部
50 温度計測素子
60 加熱素子
70 デジタルヒータ
100 ガラスレンズ成形装置
101 架台
105 加工室
106a 投入部シャッター
106b 取出部シャッター
111、311 投入部
112、312 加熱部
113、313 成形部
114、314 冷却1部
115、315 冷却2部
116、316 取出部
200、200a デジタル加熱制御機構
300 デジタル加熱制御機構が適用されたガラスレンズ成形装置
401 胴型
402 上パンチ
403 下パンチ
404 (成形中の)ガラスレンズ
405 ヒータ部
406 温度制御手段

Claims (11)

  1. 一対の金型を用いてガラス素材を挟持し、プレス成形工程によるガラスレンズ成形装置であって、
    前記金型が前記ガラス素材に当接する成形面を介して前記ガラス素材を加熱する加熱機構と、
    前記一対の金型のうちの一方の金型を、他方の金型に向かって荷重軸に沿って移動させてプレスするプレス部材と、
    前記ガラス素材に作用する前記荷重軸方向の荷重を検出する荷重検知装置と、
    検出された前記荷重に基づき、前記ガラス素材において、前記荷重軸に直交する作用面における荷重中心の座標を算出する荷重中心算出部と、
    を備え、
    前記加熱機構は、少なくとも1つの加熱素子と、加熱制御部と、を含み、
    前記加熱制御部は、
    算出された前記荷重中心の座標に基づいて前記加熱素子を制御し、前記成形面内の温度分布を変化させて前記ガラス素材を加熱する、
    ガラスレンズ成形装置。
  2. 前記荷重検知装置は、少なくとも3つの荷重センサを含み、
    前記荷重センサは、
    前記荷重軸と直交する一の平面内に、前記荷重軸を中心に軸対称に配置され、それぞれが前記荷重軸方向に生じる荷重を検出する、
    請求項1に記載のガラスレンズ成形装置。
  3. 前記加熱機構は、温度計測素子を更に含み、
    前記温度計測素子は前記加熱素子の加熱温度を測定し、
    前記加熱制御部は、
    測定された加熱素子の加熱温度に基づいて、加熱素子を制御する、
    請求項1又は2に記載のガラスレンズ成形装置。
  4. 温度調整判定部を更に備え、
    前記温度調整判定部は、
    前記荷重中心算出部により算出された前記荷重中心の座標に基づいて、前記作用面において、所定の基準位置に対する前記荷重中心の移動量を算出し、算出された前記移動量に基づいて、前記加熱素子の温度調整量を判定し、
    前記加熱制御部は、判定された対応する加熱素子の前記温度調整量を用いて、前記加熱素子を制御する、
    請求項1から3のいずれか1項に記載のガラスレンズ成形装置。
  5. 前記加熱素子は複数であり、
    複数の前記加熱素子は、セグメント状に配置され、それぞれが互いに独立して調整可能な加熱温度で前記成形面の対応する領域を加熱し、
    前記加熱機構は、各々の前記加熱素子と対をなす複数の温度計測素子を含み、
    複数の前記温度計測素子は、それぞれが前記対をなす加熱素子の加熱温度を測定する、
    請求項1から4のいずれか1項に記載のガラスレンズ成形装置。
  6. 前記加熱素子は、平板形状のヒータである、請求項1から5のいずれか1項に記載のガラスレンズ成形装置。
  7. 一対の金型を用いてガラス素材を挟持し、プレス成形工程によるガラスレンズの成形方法であって、
    前記金型が前記ガラス素材に当接する成形面を介して前記ガラス素材を加熱するステップと、
    前記一対の金型のうちの一方の金型を、他方の金型に向かって荷重軸に沿って移動させてプレスするステップと、
    前記ガラス素材に作用する前記荷重軸方向の荷重を検出するステップと、
    検出された前記荷重に基づき、前記ガラス素材において、前記荷重軸に直交する作用面における荷重中心の座標を算出するステップと、
    算出された前記荷重中心の座標に基づいて、前記成形面内の温度分布を変化させて前記ガラス素材を加熱するステップと、
    を含む、
    ガラスレンズの成形方法。
  8. 前記算出された前記荷重中心の座標に基づいて、前記成形面内の温度分布を変化させて前記ガラス素材を加熱するステップは、
    算出された前記荷重中心の座標に基づいて、前記作用面において、所定の基準位置に対する前記荷重中心の移動量を算出するステップと、
    算出された前記移動量に基づいて、前記ガラス素材を加熱する温度の調整量を判定するステップと、
    判定された前記温度の調整量を用いて、前記ガラス素材を加熱する温度を制御するステップと、
    を含む、
    請求項7に記載のガラスレンズの成形方法。
  9. 前記算出された前記荷重中心の座標に基づいて、前記作用面において、所定の基準位置に対する前記荷重中心の移動量を算出するステップステップは、
    前記作用面において、前記所定の基準位置に対する前記荷重中心の移動方向を算出するステップを含み、
    前記算出された前記移動量に基づいて、前記ガラス素材を加熱する温度の調整量を判定するステップは、
    算出された前記荷重中心の移動方向に向かう側の前記成形面の領域の温度、および/又は算出された前記荷重中心の移動方向の反対側の前記成形面の領域の温度を、前記成形面の他の領域の温度に対して相対的に変化させるように判定するステップを含む、
    請求項8に記載のガラスレンズの成形方法。
  10. 複数の工程を含むガラスレンズの成形方法であって、
    上流工程で判定された前記ガラス素材を加熱する温度の調整量を下流工程にフィードバックするステップと、
    前記下流工程において、フィードバックされた前記温度の調整量に基づいて、前記成形面内の温度分布を変化させて前記ガラス素材を加熱するステップと、
    を含む、
    請求項8又は9に記載のガラスレンズの成形方法。
  11. 複数の工程を含むガラスレンズの成形方法であって、
    前記複数の工程のうち、1つ以上の工程は、
    前記ガラス素材に作用する前記荷重軸方向の荷重を検出するステップと、
    検出された前記荷重に基づき、前記作用面における荷重中心の座標を算出するステップと、
    算出された前記荷重中心の座標に基づいて、前記成形面内の温度分布を変化させて前記ガラス素材を加熱するステップと、
    を含む、
    請求項7から10のいずれか1項に記載のガラスレンズの成形方法。
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