JP2022187599A - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的物性に優れ、かつ良好な毛羽品位を有する炭素繊維を提供する。【解決手段】アクリロニトリル系前駆体繊維を耐炎化し耐炎化繊維を得る耐炎化工程と、不活性雰囲気中、耐炎化繊維を第1炭素化炉で炭素化し、第1炭素化繊維を得る第1炭素化工程と、第1炭素化繊維を更に炭素化する第2炭素化工程とを有する炭素繊維の製造方法であって、前記第1炭素化工程において焼成油剤の熱重量分析における重量減少率が50%以上となる温度域において耐炎化繊維に与える熱量が26J・h/g以下とし、かつ第1炭素化炉内における炉内圧力と大気圧との差圧の変動が20%以下となるように耐炎化繊維を処理する。【選択図】なし

Description

本発明は、航空機用等の複合材料に好適に使用される炭素繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、比強度・比弾性率に優れ、且つ軽量であるため、熱硬化性及び熱可塑性樹脂の強化繊維として、従来のスポーツ・一般産業用途だけでなく、航空・宇宙用途、自動車用途など、幅広い用途に利用されている。近年、炭素繊維を強化繊維とし、マトリクス樹脂と一体化させて得られる炭素繊維強化複合材料の優位性はますます高まり、特に自動車、航空・宇宙用途において、繊維強化複合材料の性能の向上に対する要求が高い。
これらの複合材料は、例えば、強化繊維にマトリックス樹脂が含浸された中間製品であるプリプレグから、加熱・加圧といった成形・加工工程を経て成形される。炭素繊維とマトリックス樹脂との複合化において、高性能化を追求するためには、炭素繊維そのもの自体の強度や弾性率等の機械的物性の向上が必要不可欠であり、これまで炭素繊維の機械的物性を向上させる検討が行われてきた。
しかし、炭素繊維自身の機械的物性を向上させようとすると、その前駆体繊維の炭素化時の条件が過酷なものとなることが多く、実使用に堪える良好な毛羽品位を有する炭素繊維が得られにくいという問題があった。
そこで、炭素繊維の機械的物性を向上させるために、これまで種々の検討がなされてきた。例えば、特許文献1には、前駆体繊維を耐炎化した耐炎化繊維を300~900℃において、不活性雰囲気中で炭素化する工程において、延伸倍率を精密に制御することによって高強度の炭素繊維を得ることが開示されている。また、特許文献2には耐炎化繊維束における前駆体繊維に付与された油剤成分の残存状態を制御することで高品位の炭素繊維を得ることが開示されている。しかし、これらの方法を用いても、炭素繊維の機械的物性・毛羽品位はまだまだ満足できるものではなかった。
特開2011-241507号公報 特開2016-199824号公報
本発明の目的は、かかる従来技術における問題点を解消し、機械的物性に優れ、かつ良好な毛羽品位を有する炭素繊維を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討をおこなった結果、第1炭素化工程で得られる第1炭素化繊維の、繊維表面におけるSi/Cを巧みに制御するとき、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、
1.アクリロニトリル系前駆体繊維を耐炎化し耐炎化繊維を得る耐炎化工程と、不活性雰囲気中、耐炎化繊維を第1炭素化炉で炭素化し、第1炭素化繊維を得る第1炭素化工程と
、第1炭素化繊維を更に炭素化する第2炭素化工程とを有する炭素繊維の製造方法であって、前記第1炭素化繊維の、繊維表面のSi/Cを1.0%以上とすることを特徴とする炭素繊維の製造方法、
2.耐炎化繊維のSi/Cと前記第1炭素化繊維のSi/Cとの比が5以上である前記1記載の炭素繊維の製造方法、
3.アクリロニトリル系前駆体繊維を耐炎化し耐炎化繊維を得る耐炎化工程と、不活性雰囲気中、耐炎化繊維を第1炭素化炉で炭素化し、第1炭素化繊維を得る第1炭素化工程と、第1炭素化繊維を更に炭素化する第2炭素化工程とを有する炭素繊維の製造方法であって、前記第1炭素化工程において焼成油剤の熱重量分析における重量減少率が50%以上となる温度域において耐炎化繊維に与える熱量が26J・h/g以下とし、かつ第1炭素化炉内における雰囲気圧力と大気圧との差圧の変動率が20%以下となるように耐炎化繊維を処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法、
4.前記第1炭素化工程において最高温度が750℃以下となるように耐炎化繊維を処理する前記3に記載の炭素繊維の製造方法、
5.前記前駆体繊維の焼成油剤付着量が0.15~0.60質量%である前記3又は4に記載の炭素繊維の製造方法、
6.前記前駆体繊維に付与する焼成油剤が、熱重量分析において550℃まで加熱した際の重量減少率が70%以上となる油剤である前記3~5のいずれか1つに記載の炭素繊維の製造方法、
7.前記耐炎化繊維の比重が1.34~1.38g/cmである前記3~6のいずれか1つに記載の炭素繊維の製造方法、
及び、
8.前記第2炭素化工程における最高温度が1300℃~1700℃である前記3~7のいずれか1つに記載の炭素繊維の製造方法、
が提供される。
本発明により得られた炭素繊維を複合材料の強化繊維に用いると、炭素繊維の強度発現率に優れた繊維強化複合材料が得られる。
本発明の炭素繊維は、アクリロニトリル系前駆体繊維を耐炎化し耐炎化繊維を得る耐炎化工程と、不活性雰囲気中、耐炎化繊維を第1炭素化炉で炭素化し、第1炭素化繊維を得る第1炭素化工程と、第1炭素化繊維を更に炭素化する第2炭素化工程とを有する炭素繊維の製造方法であって、前記第1炭素化繊維の、糸表面のSi/Cを1.0%以上とすることを特徴とする炭素繊維の製造方法である。本発明においてSi/Cとは、X線光電子分光法により測定される、繊維束表面の珪素原子と炭素原子の存在比をいう。
本発明により得られる炭素繊維は、第1炭素化後の繊維表面におけるSi/Cが1.0%以上であることが必要である。こうすれば、続く第2炭素化工程において繊維表面に負荷を受けた際にダメージとなりにくく、高い引張特性と良好な毛羽品位を両立することができるからである。
本発明により得られる炭素繊維の前記Si/Cの値は、1.0%以上であることが必要であり、1.5%以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、5.0%以上がさらに好ましい。Si/Cの値が1%未満では、続く第2炭素化工程において繊維表面に負荷を受けやすくなり、高い引張特性と良好な毛羽品位を両立することが困難になる。上限は、特に制限されないが、20%以下であることが好ましい。第1炭素化後のSi/Cが高すぎると、続く第2炭素化工程に持ち込まれたSiが第2炭素化炉内で飛散し、異物が発生する場合がある。
さらに、本発明により得られる炭素繊維は、耐炎化繊維のSi/Cと前記第1炭素化繊維のSi/Cとの比が5以上という要件を満たすことが好ましい。こうすれば耐炎化工程においても十分なSiを繊維表面に担持し、耐炎化工程及び第1炭素化工程において良好な工程通過性を有する。また、第2炭素化工程に過剰なSiを持ち込むことが抑制されるため、第2炭素化工程でのSiの飛散を防ぐことができ、Siに由来する異物の付着が抑制された品位の良い炭素繊維を得ることができる。
本発明により得られる炭素繊維の耐炎化繊維のSi/Cと前記第1炭素化繊維のSi/Cとの比は、5以上であることが好ましく、10以上がより好ましく、13以上がさらに好ましく、15以上が特に好ましい。上限は、特に限定されないが、30以下が好ましく、20以下がより好ましい。耐炎化繊維のSi/Cと前記第1炭素化繊維のSi/Cとの比が大きすぎる場合、第1炭素化工程でのSi飛散量が多くなりすぎることがある。
本発明では、第1炭素化処理において焼成油剤の熱重量分析における重量減少率が50%以上となる温度域において耐炎化繊維に与える熱量を26J・h/g以下、好ましくは25.5J・h/g以下、さらに好ましくは24J・h/g%以下とする。熱量の下限は特に制限されるものではないが5J・h/g以上とすることが好ましい。また第1炭素化炉内における雰囲気圧力と大気圧との差圧の変動率(第1炭素化炉内圧力の変動率)が20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは12%以下となるように耐炎化繊維を処理する。これにより、繊維表面に十分なSiを担持することができ、続く第2炭素化工程で負荷がかかりにくく、毛羽品位が良好な炭素繊維が得られる。
本発明では、第1炭素化処理において最高温度が750℃以下となるように耐炎化繊維を処理することが好ましい。これにより、繊維表面に十分なSiを繊維表面に担持することができ、続く第2炭素化工程で負荷がかかりにくく、毛羽品位が良好な炭素繊維が得られる。
さらに、本発明の炭素繊維は耐炎化工程前の焼成油剤付与後の前駆体繊維の油剤付着量が0.15~0.60質量%であることが好ましい。これにより、続く焼成工程において繊維が油剤で覆われることによってダメージを受けにくく、かつ過度な油剤付着とはならないため欠点の要因になりにくく、高い繊維物性を得ることができる。
また、耐炎化工程前の前駆体繊維に付与する焼成油剤は、例えば窒素雰囲気下昇温速度10℃/分の条件での熱重量減少(TG)測定で550℃まで加熱した際の重量減少率が70%以上となることが好ましい。これにより、炭素化処理時に過度に繊維表面に油剤が残存することを避けられるため、高い繊維物性を得ることができる。
本発明の炭素繊維は、耐炎化処理後の繊維比重が1.34~1.38g/cmであることが好ましい。これにより、過度に耐炎化処理されずに第1炭素化工程を通過することができる。
ここで、耐炎化処理後の繊維比重が1.38を越える場合には過度に酸化反応が進行するために第一炭素化工程を通過しづらくなり、更に酸化された部分が炭素化工程で欠陥となり、高い繊維物性が得られない。
本発明の炭素繊維は、第2炭素化工程における最高温度が1300℃~1700℃であることが好ましい。これにより第2炭素化工程において結晶化が進みすぎて繊維物性が低下することを防ぐことができる。
ここで、第2炭素化工程における最高温度が上記範囲を越える場合には結晶化が過度に進行するために構造が脆弱になり、高い繊維物性が得られない。
本発明の炭素繊維は、例えば、以下の方法により製造することができる。
<前駆体繊維>
炭素繊維の製造方法に用いる前駆体繊維は、アクリロニトリルを90質量%以上、好ましくは95質量%以上含有し、その他の単量体を10質量%以下含有する単量体を単独又は共重合した紡糸溶液を紡糸して製造する、アクリル系前駆体繊維が好ましい。その他の単量体としてはイタコン酸、(メタ)アクリル酸エステル等が例示される。紡糸後の原料繊維を、水洗、乾燥、延伸、オイリング処理することにより、前駆体繊維が得られる。このとき、トータル延伸倍率が5~15倍になるようスチーム延伸する。
<予備熱処理>
得られた前駆体繊維を、引き続き加熱空気中170~270℃、延伸比0.90~1.10で100~300秒熱処理(予備熱処理)してもよい。予備熱処理温度が170℃未満の場合、若しくは延伸比が1.10を超える場合は、前駆体繊維の表面が過疎になり、前駆体繊維束を耐炎化処理、炭素化処理して得られる炭素繊維束の強度、伸度が低下するので好ましくない。予備熱処理温度が250℃を超える場合は、炭素化処理して得られる炭素繊維束の強度、伸度が低下するので好ましくない。なお、延伸比が0.9未満の場合は予備熱処理工程及びその後の熱処理工程が不安定となるため好ましくない。
予備熱処理して得られる前駆体繊維の密度は、1.2g/cm以下とすることが好ましい。
<焼成油剤の付与工程>
アクリロニトリル系前駆体繊維には、焼成油剤付与工程にて焼成油剤を付着させる。給油は浸漬給油、タッチローラー給油、スプレー給油など公知の方法により行える。この焼成油剤の付与の目的は、耐炎化工程及び炭素化工程において、単繊維同士の融着防止を図ること、及びアクリロニトリル系前駆体繊維束の集束性を向上させることにある。
焼成油剤付与工程における焼成油剤の付着量は、絶乾状態におけるアクリル系前駆体繊維に対し0.15~0.60質量%であり、0.20~0.50質量%であることがより好ましい。該付着量が0.15質量%未満であると、続く耐炎化工程及び炭素化工程において単繊維同士が融着しやすく、また炭素化工程で繊維がダメージを受けやすい。
また、焼成油剤付与後のアクリロニトリル系前駆体繊維束の集束性が悪く、耐炎化工程及び炭素化工程において前駆体繊維束が広がり、工程が安定しない。一方、0.60質量%を超えて付着させても、融着や集束性に対する効果は付着量に比例して増加しない。むしろ、最終的に得られる炭素繊維中に、油剤由来の不純物が混入して、炭素繊維束の品質が悪くなる。
焼成油剤としては、シリコーンを含有する油剤を用いる。シリコーンは、未変性シリコーン、変性シリコーンの何れでもよいが、変性シリコーンがより好ましい。変性シリコーンの中でもエポキシ変性シリコーン、エチレンオキサイド変性シリコーン、ポリシロキサン、アミノ変性シリコーンが好ましく、アミノ変性シリコーンが特に好ましい。シリコーンを含有する油剤は、公知のものが多数市販されている。該油剤と親水基を持つ浸透性油剤とを組み合わせて用いることが好ましい。
浸透性油剤は官能基として、スルフィン酸、スルホン酸、燐酸、カルボン酸やそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、その誘導体を有するものが好ましい。これらの浸透性油剤のうちでも、浸透しやすい燐酸アンモニウム若しくはその誘導体を用いるのが特に好まし
い。
<耐炎化工程>
上記の前駆体繊維は、170~270℃、より好ましくは200~260℃、延伸比0.90~1.10で耐炎化前に予備熱処理され、引き続き加熱空気中200~260℃で5~120分耐炎化処理される。この時の処理は、一般的に、延伸倍率0.85~1.15の範囲で処理されるが、高強度・高弾性率の炭素繊維を得るためには、0.95以上がより好ましい。
この耐炎化処理による酸化反応および環化反応によって、前駆体繊維の化学構造が変化し耐炎化繊維となる。耐炎化の度合いは、耐炎化の温度または時間などに比例し、前駆体繊維の繊維密度の増加に評価される。この耐炎化処理は、前駆体繊維を繊維密度1.34~1.38g/cmの酸化された繊維とするものであり、耐炎化時の張力(延伸配分)は特に限定されるものでは無い。
<第一炭素化工程>
上記耐炎化繊維は、例えば、窒素雰囲気下、最低温度300℃、最高温度が550℃~750℃の第1炭素化炉で、耐炎化繊維の張力を制御して緊張下で1段目の第1炭素化をする。
第1炭素化における温度が550℃未満の場合は、炭素化反応不足となり、高い繊維物性が得られない。
第1炭素化における最高温度は750℃以下が好ましく、700℃以下がより好ましい。第1炭素化における最高温度が750℃を超えると、油剤成分由来の珪素化合物のほとんどが飛散し、その後の工程通過中に繊維束がダメージを受け品位が悪化しやすくなるため好ましくない。
また、第1炭素化炉内における雰囲気圧力と大気圧との差圧の変動率は20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは12%以下となるよう制御する必要がある。制御の具体的な方法としては、炉内で発生するガスの排気量調整などがある。
第1炭素化炉内における炉内圧力と大気圧との差圧の変動が20%を越える場合は炉内の温度分布が変動するために、安定した第一炭素化後繊維のSi/Cが得られない。
本発明においてSi/Cとは、X線光電子分光法により測定される、繊維束表面の珪素原子と炭素原子の存在比をいう。
Si/Cの値は、1.0%以上であることが必要であり、2%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。Si/Cの値が1.0%未満の場合は、続く第2炭素化工程において繊維表面に負荷を受けやすくなり、高い引張特性と良好な毛羽品位を両立することが困難になる。上限は、特に制限されないが、20%以下であることが好ましい。第1炭素化後のSi/Cが高すぎると、続く第2炭素化工程に持ち込まれたSiが第2炭素化炉内で飛散し、異物が発生する場合がある。
<第二炭素化工程>
より炭素化を進め且つグラファイト化(炭素の高結晶化)を進める為に、窒素等の不活性ガス雰囲気下最低温度が600℃、最高温度が1000~1800℃の第二炭素化炉で、第一炭素化繊維の張力を制御して焼成する。
なお、各炭素化炉において、炉の入り口付近からに急激な温度変化、例えば最高温度に急激に繊維を導入することは、表面欠陥、内部欠陥を多く発生させるため好ましくない。
また、炉内の高温部で必要以上に滞留時間が長くなると、グラファイト化が進み過ぎ、脆性化した炭素繊維が得られることになるので好ましくない。上記第一炭素化処理~第二炭素化工程は、張力をコントロールすると共に、必要に応じて、複数の炉で所定の物性となるように処理を行っても良い。
<表面酸化処理>
上記炭素化工程を経て得らえた炭素繊維束は親水性が低くマトリクス樹脂によっては親和性が低いことが多いため、マトリクス樹脂との親和性を高めることを目的に表面酸化処理を行うことが好ましい。表面酸化処理では、炭素繊維束を電解液中、炭素繊維束の質量に対して処理電気量10~250C/g、好ましくは20~250C/gで表面酸化処理を施す。処理電気量が10C/g未満の場合は、後工程のサイジング処理後の炭素繊維の表面酸素濃度比(O/C)が小さくなり、炭素繊維とマトリックス樹脂間での接着性が低下し、衝撃後圧縮強度が低下する。処理電気量が250C/gを超える場合は、表面酸素濃度比(O/C)が大きくなり過ぎるとともに、炭素繊維表面に欠陥が発生し、衝撃により試験片が損傷し好ましくない。
電解液としては、硝酸、硫酸等の無機酸、硫酸アンモニウム等の無機酸塩などの水溶液を使用できるが、安全性や取扱性の面から硫酸アンモニウム水溶液がより好ましい。電解液の温度は20~50℃が好ましい。電解液の濃度は0.5~2.0Nが好ましく、0.7~1.5Nがより好ましい。
<サイジング処理>
表面酸化処理された炭素繊維束は、サイジング液に通され、サイズ剤が付与される。サイジング液におけるサイズ剤の濃度は、10~25質量%が好ましく、サイズ剤の付着量は、0.4~1.7質量%が好ましい。炭素繊維束に付与されるサイズ剤は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂やその変性物が挙げられる。なお、複合材料のマトリックス樹脂に応じ、適したサイズ剤を適宜選択することができる。また、このサイズ剤は二種類以上を組み合わせて使用することも可能である。
サイズ剤付与処理は、通常、乳化剤等を用いて得られる水系エマルジョン中に炭素繊維束を浸漬するエマルジョン法が用いられる。また、炭素繊維の取扱性や、耐擦過性、耐毛羽性、含浸性を向上させるため、分散剤、界面活性剤等の補助成分をサイズ剤に添加しても良い。
<乾燥処理>
サイジング処理後の炭素繊維束は、サイジング処理時の分散媒であった水等を蒸散させるため乾燥処理が施され、複合材料製造用炭素繊維束が得られる。乾燥にはエアドライヤーを用いることが好ましい。乾燥温度は特に限定されるものではないが、汎用的な水系エマルジョンの場合は通常100~180℃に設定される。また、本発明においては、乾燥工程の後、200℃以上の熱処理工程を経ることも可能である。
以下、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例及び比較例に制限されるものではない。
以下の実施例及び比較例に記載した条件により、炭素繊維を作製した。各炭素繊維の諸物性値を、以下の方法により測定した。
<炭素繊維の弾性率の測定方法>
JIS・R・7608に規定された方法により測定した。
<繊維束表面のSi/C>
繊維束表面の珪素と炭素の存在比(Si/C)は、次の手順に従って測定した。繊維束をカットして、ステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90度に設定し、X線源としてMgKαを用い、試料チャンバー内を1×10-6Paの真空度に保った。
測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わせた。Si2pピーク面積は、96~108eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、C1sピーク面積は、282~292eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。
繊維束表面の珪素と炭素の存在比(Si/C)は、上記Si2pピーク面積とC1sピーク面積の比を百分率で計算して求めた。
<焼成油剤の熱重量分析における質量減少率が50%に到達する温度>
油剤の重量減少率は、(株)マックサイエンス製 TG-DTA2000Sを用い、昇温速度10℃/分、25~600℃ の間、Nガス100ml/分条件下で測定した。また、測定試料は油剤純分5.0mgを用い、昇温後の資料の重量を投入試料重量で除することにより算出される重量減少率が50%に達する温度を求めた。
<CF毛羽品位>
CFの毛羽品位は、炭素繊維束の毛羽量(Fuzz)の測定を行い、〇(Fuzz150μg/m未満)、×(Fuzz150μg/m以上)で評価した。
<Fuzz>
炭素繊維束を、125gの重りを乗せたウレタンシートの間を、1分間に15mの速度で、2分間走行させ、ウレタンシートに溜まった炭素繊維量を測定し、μg/mで算出した。
[実施例1]
前駆体繊維として単繊維繊度1.2dtex、フィラメント数24000のポリアクリロニトリル繊維を加熱空気中250℃で予備熱処理後、18g/lの油剤Aをディップ法により付与する焼成油剤付与工程を経た後に空気中240℃で、繊維密度1.35になるまで耐炎化処理を行い、耐炎化繊維を得た。
尚、油剤Aの組成は下記の通りであり、該油剤をTG測定による重量減少率測定が50%に達する温度は490℃であった。
<油剤Aの組成>
アミノ変性シリコーン、グリシジルエポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンを重量比で6:1:1の比率で混合し、乳化剤とイオン交換水を用いてエマルションとしたものを油剤Aとする。
次いで窒素ガス雰囲気下、最高温度600℃の第1炭素化炉において、290℃から600℃まで昇温速度86℃/分にて昇温し、焼成油剤の熱重量分析における質量減少率が50%以上となる、490℃以上の温度域における滞留時間が1.79分となるように、また、炉内における雰囲気圧力と大気圧との差圧の製造中の変動率が10%となるように第1炭素化処理を行った。このとき、第1炭素化炉において耐炎化繊維に与える熱量は22.6J・h/gであり、繊維表面のSi/Cが1.8%である第1炭素化繊維を得た。
得られた第1炭素化繊維を、さらに、窒素雰囲気下、入口温度600℃、最高温度1650℃の第2炭素化炉において、160秒間第2炭素化処理を行い、単繊維直径6.8μmの炭素繊維を得た。これを硫酸アンモニウム水液中で20C/gの電気量で電解酸化により表面処理した後、エポキシ系樹脂にてサイジング処理を施した。この炭素繊維の物性を表1に示す。
[実施例2]
油剤Aの付与時濃度を30g/lに変更した以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性を表1に示す。
[実施例3]
焼成油剤の種類をBに変更した以外は実施例1と同様にして短繊維を得た。得られた炭素繊維の物性を表1に示す。
尚、油剤Bの組成は下記の通りであり、該油剤を熱重量分析において加熱した際に質量減少率が50%に達する温度は500℃であった。
<油剤Bの組成>
アミノ変性シリコーンを100重量部とし、乳化剤とイオン交換水を用いてエマルションとしたものを油剤Bとする。
[実施例4]
前駆体繊維として単繊維繊度0.71dtex、フィラメント数12000のポリアクリロニトリル繊維を、加熱空気中250℃で予備熱処理後、18g/lの油剤Aを付与する焼成油剤付与工程を経た後に空気中240℃で、繊維密度1.35になるまで耐炎化処理を行い、耐炎化繊維を得た。
次いで窒素ガス雰囲気下、最高温度600℃の第1炭素化炉において、300℃から600℃まで昇温速度89℃/分にて昇温し、焼成油剤の熱重量分析における質量減少率が50%以上となる、490℃以上の温度域における滞留時間が2.03分となるように、また炉内圧力と大気圧との差圧の製造中の変動率が10%となるように第1炭素化処理を行った。このとき、第1炭素化炉において耐炎化繊維に与える熱量は25.4J・h/gであった。
得られた第1炭素化繊維を、さらに、窒素雰囲気下、最高温度1500℃の第2炭素化炉において、160秒間第2炭素化処理を行い、単繊維直径4.8μmの炭素繊維を得た。これを硫酸アンモニウム水液中で20C/gの電気量で電解酸化により表面処理した後、エポキシ系樹脂にてサイジング処理を施した。この炭素繊維の物性を表1に示す。
[比較例1]
第1炭素化炉内における雰囲気圧力と大気圧との差圧の製造中の変動率が22%とした以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性を表1に示す。得られた炭素繊維は毛羽の量が多く、加工工程での取り扱い性を満足するものではなかった。
[比較例2]
油剤Aの付与時濃度を8g/lに変更した以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性を表1に示す。得られた炭素繊維は毛羽の量が多く、加工工程での取り扱い性を満足するものではなかった。
[比較例3]
第1炭素化工程の最高温度を700℃に変更し、290℃から700℃まで昇温速度114℃/分にて昇温し、焼成油剤の熱重量分析における質量減少率が50%以上となる、490℃以上の温度域における滞留時間が2.24分となるように、また炉内圧力と大気圧との差圧の製造中の変動率が10%となるように第1炭素化処理を行った以外は実施例1と同様にして炭素繊維を得た。このとき第1炭素化炉において耐炎化繊維に与える熱量は30.8J・h/gであった。得られた炭素繊維の物性を表1に示す。得られた炭素繊維は毛羽の量が多く、加工工程での取り扱い性を満足するものではなかった。
[比較例4]
油剤Aの付与時濃度を8g/lに変更した以外は実施例4と同様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の物性を表1に示す。得られた炭素繊維は第2炭素化工程で断糸が多発し、炭素繊維としての形態を保持できるものではなかった。
Figure 2022187599000001
本発明によれば、機械的物性に優れ、かつ良好な毛羽品位を有する炭素繊維が提供され、該炭素繊維を複合材料の強化繊維に用いると、炭素繊維の強度発現率に優れた繊維強化複合材料が得られるので、本発明で得られる炭素繊維は産業上の利用可能性が高く、その工業的価値は極めて大きい。

Claims (8)

  1. アクリロニトリル系前駆体繊維を耐炎化し耐炎化繊維を得る耐炎化工程と、不活性雰囲気中、耐炎化繊維を第1炭素化炉で炭素化し、第1炭素化繊維を得る第1炭素化工程と、第1炭素化繊維を更に炭素化する第2炭素化工程とを有する炭素繊維の製造方法であって、前記第1炭素化繊維の、繊維表面のSi/Cを1.0%以上とすることを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  2. 耐炎化繊維のSi/Cと前記第1炭素化繊維のSi/Cとの比が5以上である請求項1記載の炭素繊維の製造方法。
  3. アクリロニトリル系前駆体繊維を耐炎化し耐炎化繊維を得る耐炎化工程と、不活性雰囲気中、耐炎化繊維を第1炭素化炉で炭素化し、第1炭素化繊維を得る第1炭素化工程と、第1炭素化繊維を更に炭素化する第2炭素化工程とを有する炭素繊維の製造方法であって、前記第1炭素化工程において焼成油剤の熱重量分析における質量減少率が50%以上となる温度域において耐炎化繊維に与える熱量を26J・h/g以下とし、かつ第1炭素化炉内における雰囲気圧力と大気圧との差圧の変動率が20%以下となるように耐炎化繊維を処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  4. 前記第1炭素化工程において最高温度が750℃以下となるように耐炎化繊維を処理する請求項3に記載の炭素繊維の製造方法。
  5. 前記前駆体繊維の焼成油剤付着量が0.15~0.60質量%である請求項3又は4に記載の炭素繊維の製造方法。
  6. 前記前駆体繊維に付与する焼成油剤が、熱重量分析において550℃まで加熱した際の質量減少率が70%以上となる油剤である請求項3~5のいずれか1項に記載の炭素繊維の製造方法。
  7. 前記耐炎化繊維の比重が1.34~1.38g/cmである請求項3~6のいずれか1項に記載の炭素繊維の製造方法。
  8. 前記第2炭素化工程における最高温度が1300℃~1700℃である請求項3~7のいずれか1項に記載の炭素繊維の製造方法。
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