JP2022187087A - 液状組成物及びその製造方法 - Google Patents

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秀樹 山本
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Abstract

Figure 2022187087000001
【課題】セルロースエステルが均一に溶解した液状組成物及びその製造方法の提供。
【解決手段】この液状組成物は、セルロースエステルと有機溶媒とを含む。ハンセン溶解球法により求められるセルロースエステルの相互作用半径をRとし、ハンセン空間におけるセルロースエステルの溶解度パラメータと有機溶媒の溶解度パラメータとの距離をRとするとき、R/Rで表される相対エネルギー差REDは1.0以下である。この液状組成物は、ハンセン溶解球法により、セルロースエステルの相互作用半径R及び溶解度パラメータを得る工程、ハンセン空間におけるセルロースエステルと有機溶媒との距離Rを求める工程、及び、相対エネルギー差REDが1.0以下となる有機溶媒を選択する工程を有する製造工程により得られる。
【選択図】図1

Description

本開示は、液状組成物及びその製造方法に関する。詳細には、本開示は、セルロースエステルを含む液状組成物及びその製造方法に関する。
従来、セルロースエステルは、光学特性や機械的物性に優れた材料として、フィルム、繊維等種々の技術分野で用いられている。セルロースエステルをこのような用途に使用する場合、一般的に、セルロースアセテートを溶媒に溶解して液状化した後、所望の形状に成形する方法が採用されている。例えば、酢化度58%以上であるセルローストリアセテートの場合、塩化メチレン等のハロゲン系溶媒に溶解した溶液(ドープ)を支持体上に流延して乾燥したフィルムを剥離する、溶液流延法が実用化されている。
特開2003-201301号公報(特許文献1)には、アセチル置換度が2.636乃至2.958であるセルロースアセテートを、アセトン等の有機溶媒で膨潤させた後、-100℃乃至-10℃に冷却し、0℃乃至200℃に加温して溶解する技術が提案されている。特開2002-3643号公報(特許文献2)には、溶媒として酢酸メチル及びアセト酢酸アルキルエステルの混合溶媒を用いた、平均酢化度58.0~62.5%のセルロースアセテート溶液が開示されている。
特開2018-24585号公報(特許文献3)には、特定のイオン性液体に、エステル化度2.50~3.00のセルロースアセテートを溶解した溶解液が開示されている。特開平8-143709号公報(特許文献4)には、酢化度57~62.5%のセルロースアセテートとフルオロアルコールとを含む混合液が開示されている。特開平8-143708号公報(特許文献5)には、酢化度50~62.5%のセルロースアセテートと環状ジエーテルとを含む混合液が開示されている。
セルロースアセテート等のセルロースエステルは生分解性を有しており、活性汚泥により分解することが知られている。地球環境への関心の高まりから、各種用途における特性向上とともに、生分解性の向上も求められている。また、さらなる新規用途開発に向けて、セルロースエステルが有する置換基の種類、置換度、重合度等の変更が試みられている。しかし、多くのセルロースエステルは慣用される有機溶媒への溶解性が低いため、置換度等が異なるセルロースエステルについて、それぞれ最適な溶媒を見出すためには、多大な試行錯誤が必要であった。また、特許文献1-5のように、従来提案された溶媒は適用可能な置換度が限定されており、用途に応じた置換度、重合度等の展開が困難であった。
近年、良溶媒の選択に、ハンセン溶解度パラメータを利用する方法が検討されている。例えば、特開2017-142931号公報(特許文献6)には、ハンセン溶解度パラメータを用いて、燃料電池用電極触媒インクの添加溶媒を選定する技術が提案されている。特開2019-81901号公報(特許文献7)には、ポリマー成分と溶媒との、ハンセン溶解度パラメータを用いて定義される溶解度半径が約5以下である水溶性フィルムシール溶液が開示されている。
特表2016-500391号公報(特許文献8)には、全ハンセン溶解度パラメータの差が0.35MPa以下である2種のセルロースアシレートからなる相溶性ブレンドが開示されている。特表2009-533527号公報(特許文献9)には、モノマー水溶液と、炭化水素等を含む溶液とを用いた微小球調製物の製造方法が記載されている。この溶液には、クロロホルムのハンセン溶解度パラメータと特定の関係を満たす溶剤又は溶剤混合物と、塩化メチレンとの組み合わせが用いられている。特開平8-337601号公報(特許文献10)では、酢酸セルロースを溶解度パラメータ7~12.5の溶媒で洗浄して、低分子量成分を溶出する技術が提案されている。
特開2003-201301号公報 特開2002-3643号公報 特開2018-24585号公報 特開平8-143709号公報 特開平8-143708号公報 特開2017-142931号公報 特開2019-81901号公報 特表2016-500391号公報 特表2009-533527号公報 特開平8-337601号公報
ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、異なる材料間の親和性を評価する指標であり、一般的に、分散力項δd、双極子間力項δp、水素結合力項δhの3次元に分割して表記される。通常、3次元空間(ハンセン空間)にプロットした溶質のHSPと溶媒のHSPとが近接している場合、この溶媒がこの溶質の良溶媒であると評価される。一般的に使用される溶媒のHSPは、既存のデータベースから知ることができる。しかし、セルロースエステル自身のHSPが知られていなかったため、このデータベースを利用して良溶媒を選択することができなかった。
用途・性能に応じて置換度又は重合度を変更したセルロースエステルについて、良溶媒を選択する場合、選択対象となる溶媒又はその組み合わせの種類は膨大である。所望の置換度又は重合度を有するセルロースエステルを溶解させて液状組成物を得る技術は、未だ提案されていない。
本開示の目的は、セルロースエステルが溶解した液状組成物及びその製造方法の提供にある。
本開示者らは、鋭意検討の結果、所望のセルロースエステルについて算出したハンセン溶解度パラメータに基づいて、膨大な種類の物質の中から、最適な溶媒又はその組み合わせを選択することにより前述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本開示に係る液状組成物は、セルロースエステルと有機溶媒とを含む。ハンセン溶解球法により求められるセルロースエステルの相互作用半径をRとし、ハンセン空間におけるセルロースエステルの溶解度パラメータと有機溶媒の溶解度パラメータとの距離をRとするとき、R/Rで表される相対エネルギー差REDは、1.0以下である。
好ましくは、液状組成物におけるセルロースエステルの量は1重量%以上50重量%以下である。このセルロースエステルは、セルロースアセテートであってよい。有機溶媒は、混合溶媒であってよい。
本開示の成形品は、前述したいずれかに記載の液状組成物から、有機溶媒を除去することにより得られる。
本開示のコーティング剤は、前述したいずれかに記載の液状組成物を含む。
本開示の液状組成物の製造方法は、
(1)ハンセン溶解球法により、セルロースエステルの相互作用半径R及び溶解度パラメータを得る第一の工程、
(2)ハンセン空間における、セルロースエステルの溶解度パラメータと、有機溶媒の溶解度パラメータをとの距離Rを求める第二の工程、
及び
(3)比R/Rで表される相対エネルギー差REDが1.0以下となる有機溶媒を選択する第三の工程
を有している。第三の工程で選択された有機溶媒にセルロースエステルを溶解することにより、本開示の液状組成物が得られる。この第三の工程で選択された有機溶媒は、混合溶媒であってよい。
本開示に係る液状組成物には、所望の置換度及び重合度を有するセルロースエステルが溶解している。本開示の製造方法によれば、算出されたセルロースエステルのハンセン溶解度パラメータに基づいて、最適な溶媒又は混合溶媒を効率よく選択することができる。
図1は、本開示の一実施形態に係る液状組成物について、ハンセン空間における溶媒とセルロースエステルとの関係が示された概念図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本開示が詳細に説明される。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
なお、本願明細書において、「液状」とは常温(15~30℃)で流動性を有する状態を意味し、「有機溶媒」とは常温で液体の有機化合物を意味する。また、特に注釈のない限り、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」の意味であり、試験温度は全て室温(20℃±5℃)である。
[液状組成物]
本開示に係る液状組成物は、セルロースエステルと有機溶媒とを含む。この液状組成物では、比R/Rで表される相対エネルギー差REDが1.0以下である。ここで、Rは、ハンセン溶解球法により求められるセルロースエステルの相互作用半径であり、Rは、ハンセン空間におけるセルロースエステルの溶解度パラメータと、有機溶媒の溶解度パラメータとの距離である。
セルロースエステルと有機溶媒とのハンセン溶解度パラメータ(HSP)の距離Rは、以下の式により算出される。
={(δd-δd+(δp-δp+(δh-δh1/2
式中、δd、δp及びδhは、順に、セルロースエステルのハンセン溶解度パラメータの分散力項、双極子間力項及び水素結合力項であり、δd、δp及びδhは、順に、有機溶媒のハンセン溶解度パラメータの分散力項、双極子間力項及び水素結合力項である。
図1は、HSPの分散力項δd、双極子間力項δp及び水素結合力項δhを軸とする三次元空間(ハンセン空間)を示す概念図である。ハンセン空間上にプロットされたセルロースエステル(δd、δp、δh)と有機溶媒(δd、δp、δh)との距離が、両矢印Rとして示されている。
セルロースエステルの相互作用半径Rは、ハンセン空間上にプロットされたセルロースエステルのHSP(δd、δp、δh)を中心点とする球体(ハンセン溶解球又はハンセン球とも称される)の半径であり、このセルロースエステルを溶解する範囲を示している。この範囲が、図1中、一点鎖線で示されている。相互作用半径がRであるセルロースエステルに対し、比R/Rで表される相対エネルギー差REDが1.0以下である有機溶媒は、このハンセン溶解球の球面上又は内部に位置する。この有機溶媒に対するセルロースエステルの溶解性は、高い。この液状組成物では、セルロースエステルが、有機溶媒に均一に溶解している。セルロースエステルが溶解しやすいとの観点から、相対エネルギー差REDは小さいほど好ましく、その下限値は特に限定されない。
本開示の液状組成物において、セルロースエステルのHSP及び相互作用半径Rは、ハンセン溶解球法により求めることができる。具体的には、HSPが既知である複数の有機溶媒に、セルロースエステルを投入して、溶解性を評価した後、ハンセン空間上に、使用した全有機溶媒のHSPをプロットして、セルロースエステルを溶解した有機溶媒のプロットを含み、セルロースエステルを溶解しない有機溶媒のプロットを含まない、球体(ハンセン球)を求め、その半径を相互作用半径Rとし、その中心座標をセルロースエステルのHSPとする。
[セルロースエステル]
セルロースエステルは、置換基としてアシル基を有している。アシル基の例として、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、メチル基等が挙げられる。高い生分解性が求められる用途では、セルロースエステルの置換基は、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基が好ましく、アセチル基がより好ましい。セルロースエステルが2種以上のアシル基を有してもよい。本開示の効果が阻害されない範囲で、セルロースエステルがアシル基以外の置換基を含んでもよい。
本開示の液状組成物に含まれるセルロースエステルの具体例としては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。
[総置換度]
本開示の液状組成物において、セルロースエステルの総置換度DSは特に限定されない。用途に応じて所望の総置換度を選択することができる。例えば、良好な生分解性が必要な用途であれば、セルロースエステルの総置換度は、2.6以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.4以下がより好ましく、特に2.3以下が好ましい。機械的特性が重要な用途であれば、セルロースエステルの総置換度は、1.9以上が好ましく、2.0以上がさらに好ましく、2.1以上が特に好ましい。
[置換度の測定方法]
セルロースエステルの置換度は、以下の方法により測定することができる。例えば、手塚(Tezuka, Carbonydr. Res. 273, 83(1995))の方法に従いNMR法で測定できる。即ち、セルロースエステルの遊離水酸基をピリジン中でカルボン酸無水物によりアシル化する。ここで使用するカルボン酸無水物の種類は分析目的に応じて選択すべきであり、例えば、セルロースアセテートのブアセチル置換度を分析する場合は、無水酪酸がよく、セルロースブチレートのブチリル置換度を分析する場合は無水酢酸がよい。得られた試料を重クロロホルムに溶解し、13C-NMRスペクトルを測定する。置換基がアセチル基である場合を例に挙げれば、アセチル基の炭素シグナルは169ppmから171ppmの領域に高磁場から2位、3位、6位の順序で現れる。他の例を挙げれば、プロピオニル基を有するセルロースエステル、又は、プロピオニル基を有しないセルロースエステルを無水プロピオン酸で処理してプロピオニル置換度を分析する場合、プロピオニル基のカルボニル炭素のシグナルは、172ppmから174ppmの領域に同じ順序で現れる。手塚の方法やそれに準じる方法により無水カルボン酸で処理したセルロースエステルの総置換度は3.0なので、セルロースエステルがもともと有するアシル基のカルボニル炭素シグナルと、無水カルボン酸処理で導入したアシル基のカルボニルシグナルの面積の総和を3.0と規格化し、それぞれ対応する位置での各アシル基の存在比(言い換えれば、各シグナルの面積比)を求めれば、これをセルロースエステルにおけるグルコース環の2位、3位、6位の各アシル置換度とできる。なお、言うまでもなく、この方法で分析できるアシル基を含む置換基は、分析目的の処理に用いる無水カルボン酸に対応しない置換基のみである。また、13C-NMRのほか、H-NMRで分析することもできる。
[セルロースエステルの数平均分子量、重量平均分子量及び分子量分布]
本開示の液状組成物において、セルロースエステルの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnは特に限定されず、用途に応じて所望の分子量及び分子量分布を選択することができる。例えば、優れた引張特性を有する成形品が得られるとの観点から、100,000以上が好ましく、120,000以上がより好ましい。適正な溶液粘度が得られるとの観点から、セルロースエステルの重量平均分子量は1,500,000以下が好ましく、1,200,000以下がより好ましい。また、良好な生分解性が得られるとの観点から、重量平均分子量Mwは1,000,000以下が好ましく、800,000以下がより好ましく、500,000以下がさらに好ましい。耐久性が高いとの観点から、分子量分布は1.0~5.0が好ましく、1.3~4.0がより好ましく、1.5~3.0が特に好ましい。
セルロースエステルの数平均分子量、重量平均分子量及び分子量分布は、公知の方法で求めることができる。詳細には、以下の装置及び条件でサイズ排除クロマトグラフィー(GPC)測定をおこなうことにより決定される(GPC-光散乱法)。
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM-21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、ガードカラム(東ソー製TSKgel guardcolumn HXL-H)
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN-EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
[セルロースエステルの含有量]
本開示の液状組成物に含まれるセルロースエステルの量は特に限定されず、用途に応じて適宜調整されうる。例えば、液状組成物中のセルロースエステルの量は、1重量%以上50重量%以下であってよく、溶液流延法により製膜する場合、液状組成物中のセルロースエステルの濃度は、得られるフィルム強度の観点から、3重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、流動性の観点から、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。また、液状組成物を用いて繊維を紡糸する場合、得られる繊維強度の観点から、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、紡糸速度の観点から、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。
[有機溶媒]
本開示の液状組成物において、有機溶媒の種類は特に限定されない。ハンセン空間におけるセルロースエステルの相互作用半径をRとし、セルロースエステルのハンセン溶解度パラメータと、有機溶媒のハンセン溶解度パラメータとの距離をRとする場合に、比R/Rで表される相対エネルギー差REDが1.0以下である有機溶媒が、適宜選択されて用いられうる。
有機溶媒のハンセン溶解度パラメータは、既知のデータベースを参照して得ることができる。また、有機溶媒の化学構造に基づいて、市販のソフトウェアによりHSPを推算することも可能である。
相対エネルギー差REDが1.0以下である限り、液状組成物に含まれる有機溶媒が、混合溶媒であってもよい。混合溶媒は、相互に溶解可能な2種以上の有機溶媒を混合して得られる。混合溶媒のハンセン溶解度パラメータは、それぞれの有機溶媒のHSPの加重平均により算出される。
本開示の液状組成物に含まれる有機溶媒は、炭化水素系有機溶媒、アルコール系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系有機溶媒、エステル系有機溶媒等から選択されてよい。選択される有機溶媒は、脂肪族化合物であってもよく、芳香族化合物であってもよい。また、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環式であってもよい。有機溶媒が、水酸基、ハロゲン基、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基等の置換基を有していてもよい。
炭化水素系有機溶媒の具体例として、ヘキサン、トルエン、シクロヘキサン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等が挙げられる。アルコール系有機溶媒の具体例として、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ブタノール、2-メトキシエタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。エーテル系有機溶媒の具体例として、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
ケトン系有機溶媒の具体例として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、ベンジルアセトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等が挙げられる。アミド系有機溶媒の具体例として、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。エステル系有機溶媒としては、酢酸エチル、プロピオン酸エチル等が挙げられる。その他の有機溶媒として、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、サリチルアルデヒド、ジエチレンカーボネート等が例示される。
[その他添加剤]
本開示の効果が阻害されない範囲で、液状組成物が、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、光学特性調整剤、蛍光増白剤、難燃剤、滑剤、加水分解抑制剤、撥水剤等の添加剤をさらに含んでもよい。
[液状組成物の製造方法]
本開示の液状組成物の製造方法は、ハンセン溶解球法により、セルロースエステルの相互作用半径R及び溶解度パラメータを得る第一の工程、ハンセン空間におけるセルロースエステルの溶解度パラメータと、有機溶媒の溶解度パラメータをとの距離Rを求める第二の工程、及び、比R/Rで表される相対エネルギー差REDが1.0以下となる有機溶媒を選択する第三の工程を有している。この第三の工程で選択された有機溶媒にセルロースエステルを溶解することにより、本開示の液状組成物が得られる。本開示の効果を損なわない範囲で、液状組成物に、さらに他の添加剤を配合してもよい。
本開示の製造方法によれば、第一の工程において、セルロースエステルの相互作用半径R及び溶解度パラメータが求められる。第三の工程において、このセルロースエステルの相互作用半径R及び溶解度パラメータを用いて算出される相対エネルギー差REDが1.0以下となる有機溶媒を選択することにより、多大な試行錯誤を要することなく、当該セルロースエステルに最適な良溶媒を効率よく得ることができる。
また、本開示の製造方法では、セルロースエステルの種類によらず、最適な良溶媒を選定することができる。この製造方法によれば、従来、溶媒の種類が限定されていて選択できなかった置換度、重合度等のセルロースエステルについても、均一な液状組成物を得ることができる。これにより、用途に応じて所望の特性が得られるように、セルロースエステルの種類を変更することが可能になり、開発の自由度が向上する。
第一の工程は、従来知られていなかったセルロースエステルの相互作用半径R及び溶解度パラメータを、ハンセン溶解球法を用いて算出する工程である。
具体的には、始めに、溶解試験をおこなって、試験対象であるセルロースエステルを、HSPが既知の複数の有機溶媒に投入して、セルロースエステルが溶解した有機溶媒と、セルロースエステルが溶解しなかった有機溶媒とを分類する。次に、δd、δp及びδhを軸とする三次元空間(ハンセン空間)に、溶解試験に使用した全有機溶媒のHSPをプロットする。そして、セルロースエステルを溶解した有機溶媒を含み、セルロースエステルを溶解しない有機溶媒を含まない、球体(ハンセン球)を求める。このハンセン球の半径が相互作用半径Rであり、その中心座標がセルロースエステルのHSPである。
本開示の製造方法では、セルロースエステルの溶解性は、目視観察により、有機溶媒中に沈殿物が確認できない又は白濁が認められない場合を「溶解」とし、沈殿物が確認できる又は白濁が認められる場合を「不溶」として評価される。また、ハンセン球の算出には、市販のソフトウェアが用いられうる。有機溶媒のHSPとして、既知のデータベースの値が用いられてよい。また、有機溶媒の化学構造から、市販のソフトウェアを用いてHSPを算出してもよい。
第二の工程は、算出したセルロースエステルの溶解度パラメータと、有機溶媒の溶解度パラメータとの、ハンセン空間における距離Rを求める工程である。セルロースエステルのHSPが(δd、δp、δh)であり、有機溶媒のHSPが(δd、δp、δh)であるとき、この距離Rは、以下の式により求められる。
={(δd-δd+(δp-δp+(δh-δh1/2
第三の工程は、第一の工程で求めたセルロースエステルの相互作用半径Rと、第二の工程で求めた距離Rとの比R/Rで表される相対エネルギー差REDが、1.0以下となる有機溶媒を選択する工程である。
比R/Rで表される相対エネルギー差REDが1.0以下である有機溶媒は、セルロースエステルについて求められたハンセン球の球面上又は内部に位置する。ハンセン球は、換言すれば、セルロースエステルに対して溶解性を示す有機溶媒のHSPの範囲を示している。相対エネルギー差REDを指標として、HSPがこのハンセン球の球面上又は内部にプロットされる有機溶媒を選択することにより、当該セルロースエステルの良溶媒を効率的に得ることができる。
第三の工程において、2種以上の有機溶媒からなる混合溶媒が、セルロースエステルの良溶媒として選択されてもよい。混合溶媒のハンセン溶解度パラメータは、それぞれの有機溶媒のHSPの加重平均により算出される。この混合溶媒のHSPを用いて得られる相対エネルギー差REDが1.0以下となるように、複数の有機溶媒を組み合わせることにより、所望のセルロースエステルが溶解する溶媒を、容易に、かつ、効率的に得ることができる。
[用途]
本開示の液状組成物では、所望のセルロースエステルが有機溶媒又は混合溶媒に均一に溶解している。この液状組成物を所望の形状に成形して、有機溶媒を除去することにより、セルロースエステルを含む成形品が得られうる。好ましい成形品として、フィルム、シート及び繊維が挙げられる。具体的な用途としては、写真用フィルム、偏光板の保護フィルム、衣料用繊維、たばこフィルター用繊維束、人工腎臓用中空繊維等が例示される。
例えば、本開示の液状組成物を、口金を通して吐出し、乾燥させることにより、セルロースエステル繊維を得ることができる。また、本開示の液状組成物を、バーコーター等を用いて基板上に流延し、乾燥させることにより、セルロースエステルフィルム又はシートを得ることができる。
本開示の液状組成物を、所望の基材に塗布して乾燥させることにより、この基材の表面に、セルロースエステルからなる皮膜が形成される。この液状組成物は、コーティング剤としても適用されうる。
以下、実施例によって本開示の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本開示が限定的に解釈されるべきではない。
[試験1]
試験1では、ハンセン溶解球法を用いてセルロースエステルのHSPを算出した。具体的には、表1に示されるセルロースエステル(酢酸セルロース)及び表2に示されるHSP既知の有機溶媒を準備した。セルロースエステルの置換度、数平均分子量、重量平均分子量及び分子量分布が、DS、Mn、Mw及びMw/Mnとして表1に示されている。有機溶媒のハンセン溶解度パラメータ(δd、δp、δh)が表2に示されている。
始めに、酢酸セルロースCA1(総置換度2.9、数平均分子量105,930、重量平均分子量274,854、分子量分布2.59)0.5gを採取して105℃で2時間乾燥させた後、デシケータ中で室温まで放冷した。その後、アセトン50mlに投入して、スターラーで3時間撹拌した後、溶解性を評価した。溶解していない場合、さらに3時間撹拌して、再度溶解性を評価した。溶解性は、目視にて観察し、沈殿物がなく、液が透明な場合を溶解(スコア1)、液が白濁又は沈殿物が認められる場合を不溶(スコア0)と評価した。
表2に示された有機溶媒について、それぞれ同様に溶解性を評価した後、スコア1の溶媒のHSPと、スコア0の溶媒のHSPとを、全てハンセン空間上にプロットした。プロットされた各溶媒のHSPに基づいて、溶解性を示した溶媒のHSPを包含し、溶解性を示さなかった溶媒のHSPを包含しない仮想の球体(ハンセン球)を求め、このハンセン球の半径(相互作用半径)Rを算出した。また、ハンセン球の中心座標(δd、δp、δh)を算出して、この酢酸セルロースのHSPとした。
表1に示されたセルロースエステルCA2及びCA3について、同様に、相互作用半径R及びHSP(δd、δp、δh)を算出した。得られた結果が表3に示されている。表3中、δtは、下記式により算出した。
δt=(δd+δp+δh1/2
Figure 2022187087000002
Figure 2022187087000003
Figure 2022187087000004
[試験2]
試験2では、試験1で求めたセルロースエステルの相互作用半径R及びHSP(δd、δp、δh)に基づいて、セルロースエステルの良溶媒を選択して液状組成物を製造した。
具体的には、置換度2.9、相互作用半径4.4、HSP(δd=18.8、δp=12.6、δh=8.1)である酢酸セルロース(CA1)を105℃で2時間乾燥させた後、デシケータ中で室温まで放冷した。その後、表4に示される有機溶媒50mlに、各0.5gを投入し、スターラーで3時間撹拌後に目視にて溶解性を観察した。溶解していない場合、さらに3時間撹拌して、再度溶解性を観察し、試験1で前述した基準により、溶解性を評価した。なお、表4中の混合溶媒の比率は、全て容量比である。
置換度2.4、相互作用半径6.4、HSP(δd=18.9、δp=10.4、δh=7.7)である酢酸セルロース(CA2)、及び、置換度2.2、相互作用半径4.6、HSP(δd=18.9、δp=12.6、δh=7.9)である酢酸セルロース(CA3)について、同様に溶解性を評価した。得られた結果が表4に示されている。
表4中、REDは比R/Rで表される相対エネルギー差であり、Rは酢酸セルロースの相互作用半径であり、Rは次式により算出した、ハンセン空間における酢酸セルロースの溶解度パラメータ(δd、δp、δh)と有機溶媒の溶解度パラメータ(δd、δp、δh)との距離である。
={(δd-δd+(δp-δp+(δh-δh1/2
Figure 2022187087000005
表4に示されるように、セルロースエステルの置換度、分子量によらず、このセルロースエステルとの相対エネルギー差REDが1.0以下である溶媒は、高い溶解性を示すことがわかる。この評価結果から、本開示の優位性は明らかである。
以上説明された液状組成物及びその製造方法は、酢酸セルロース以外のセルロースエステルにも適用されうる。

Claims (8)

  1. セルロースエステルと有機溶媒とを含み、
    ハンセン溶解球法により求められる上記セルロースエステルの相互作用半径をRとし、ハンセン空間における上記セルロースエステルの溶解度パラメータと上記有機溶媒の溶解度パラメータとの距離をRとするとき、R/Rで表される相対エネルギー差REDが1.0以下である、液状組成物。
  2. 上記セルロースエステルの量が1重量%以上50重量%以下である、請求項1に記載の液状組成物。
  3. 上記セルロースエステルが、セルロースアセテートである、請求項1又は2に記載の液状組成物。
  4. 上記有機溶媒が混合溶媒である、請求項1から3のいずれかに記載の液状組成物。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の液状組成物から上記有機溶媒を除去して得られる、成形品。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載の液状組成物を含む、コーティング剤。
  7. ハンセン溶解球法により、セルロースエステルの相互作用半径R及び溶解度パラメータを得る第一の工程と、
    ハンセン空間における、上記セルロースエステルの溶解度パラメータと有機溶媒の溶解度パラメータとの距離Rを求める第二の工程と、
    比R/Rで表される相対エネルギー差REDが1.0以下となる有機溶媒を選択する第三の工程と、
    を有しており、
    上記第三の工程で選択された有機溶媒に上記セルロースエステルを溶解する、液状組成物の製造方法。
  8. 上記第三の工程で選択された有機溶媒が混合溶媒である、請求項7に記載の液状組成物の製造方法。
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