JP2022182199A - 磁性基体、コイル部品、及び回路基板 - Google Patents

磁性基体、コイル部品、及び回路基板 Download PDF

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Abstract

【課題】電気的絶縁性に優れた磁性基体を提供する。【解決手段】Ni及びZnを含有するフェライトで形成された焼結粒子1を含むと共に、表面に、酸化銅の全モル数に対するCu2Oのモル数の割合が20%以上である表面層2を有する焼結体10aで形成された磁性基体である。【選択図】図1

Description

本発明は、磁性基体、コイル部品及び回路基板に関する。
近年、電子部品の小型化及び高性能化の要望が高まっている。電子部品のうち、コイル部品については、小型化によって磁性基体の体積が減少した場合でも、低損失を確保することが求められている。コイル部品における損失は、磁性基体中を電流が流れることで生じるため、コイル部品の低損失化には、磁性基体の電気的絶縁性を向上させることが有効である。このため、磁性基体を構成する材料として、電気的絶縁性に優れるNi-Zn系フェライトを基本とし、これに種々の改良を施したものを用いることで、磁性基体の電気的絶縁性を高める試みがなされている。
例えば、特許文献1には、磁性基体を構成するフェライト焼結体を、主成分組成100モル%のうち、FeをFe換算で49モル%以上50モル%以下、ZnをZnO換算で32モル%以上34.5モル%以下、NiをNiO換算で6.5モル%以上12.5モル%以下及びCuをCuO換算で5モル%以上9モル%以下含有し、前記主成分により構成されるフェライト結晶の粒界にZnOが存在するものとする技術思想が開示されている。また、同文献には、前記フェライト焼結体の製造方法として、主成分を混合した後仮焼して得た仮焼体に、結晶粒界に存在させるZnO源となる酸化亜鉛を加えて粉砕混合し、造粒・成形を経て焼成することが開示されている。
また、特許文献2には、磁性基体を、不可避不純物を除きTiOのみを副成分として含み、TiOの含有量をxとしたときに、0.1重量%<x≦4.0重量%であることを特徴とするNi-Cu-Zn系フェライト材料で構成する技術思想が開示されている。
国際公開第2013/015074号 特開2005-132715号公報
特許文献1のように、原料の配合時期を異ならせることや、特許文献2のように、フェライト材料の構成成分以外の原料を添加することは、別途添加する原料が主成分に比べてごく少量であるため、その分散状態が不均一となりやすく、これに起因して所期の電気的絶縁性を有する磁性基体が得られないおそれがある。所期の電気的絶縁性を有さない磁性基体の生成は、損失の大きなコイル部品の形成へとつながる。
本発明は、前述の問題点を鑑みてなされたものであり、電気的絶縁性に優れた磁性基体の提供を目的とする。
本発明者は、前述の目的を達成するために種々の検討を行ったところ、Ni-Zn系フェライト焼結体の表面に、酸化銅を含有し、該酸化銅中のCuOの含有割合が比較的高い表面層を形成することで、前述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、前述の課題を解決するための本発明の一側面は、Ni及びZnを含有するフェライトで形成された焼結粒子を含むと共に、表面に、酸化銅の全モル数に対するCuOのモル数の割合が20%以上である表面層を有する焼結体で形成された磁性基体である。
また本発明は、前記磁性基体を備えるコイル部品、及び該コイル部品を備える回路基板を一側面として含む。
本発明によれば、電気的絶縁性に優れた磁性基体を提供することができる。
本発明の第1側面に係る磁性基体の断面構造を示す模式図 本発明の第2側面に係るコイル部品のうち、巻線コイル部品の構造例の説明図((a):全体斜視図、(b):(a)におけるA-A断面図) 本発明の第2側面に係るコイル部品のうち、積層コイル部品の構造例の説明図((a):全体斜視図、(b):(a)におけるB-B断面図) 本発明の第2の側面に係る積層コイル部品を製造するための、導体の前駆体が内部に配置された成形体の作製方法を示す説明図 本発明の実施例及び比較例に係る磁性基体について、表面層における酸化銅中のCuOの割合と比抵抗との関係を示すグラフ
以下、図面を参照しながら、本発明の構成及び作用効果について、技術的思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。
[磁性基体]
本発明の一側面に係る磁性基体(以下、単に「第1側面」と記載することがある。)は、図1に模式的に示すように、Ni及びZnを含有するフェライトで形成された焼結粒子1を含むと共に、表面に、酸化銅の全モル数に対するCuOのモル数の割合が20%以上である表面層2を有する焼結体10aで形成されたものである。この焼結体10aは、焼結粒子1同士の界面に、界面層3を有していてもよい。
第1側面において焼結粒子1を構成するフェライトは、構成元素としてFeの他にNi及びZnを含み、スピネル型の結晶構造を有するもので、Ni-Zn系フェライトと呼ばれている。また、前記各元素に加えてCuを含むものは、特にNi-Zn-Cu系フェライトと呼ばれることもある。Ni-Zn系フェライトの典型的な組成は、Fe、NiO及びZnO換算で、これらの酸化物の合計を100mol%としたときに、47.3mol%以上49.8mol%以下のFe、15.0mol%以上36.9mol%以下のNiO及び15.0mol%以上36.9mol%以下のZnOである。また、質量%で表示した場合のNi-Zn系フェライトの典型的な組成は、Fe、ZnO、及びNiO換算で、これらの酸化物の合計を100質量%としたときに、64.4質量%以上67.4質量%以下のFe、9.4質量%以上23.8質量%以下のNiO、及び10.4質量%以上25.6質量%以下のZnOである。さらに、Ni-Zn-Cu系フェライトの典型的な組成は、Fe、NiO、ZnO及びCuO換算で、これらの酸化物の合計を100mol%としたときに、41.6mol%以上49.3mol%以下のFe、13.3mol%以上36.5mol%以下のNiO、13.3mol%以上36.5mol%以下のZnO及び1.0mol%以上12.1mol%のCuOである。また、質量%で表示した場合のNi-Zn-Cu系フェライトの典型的な組成は、Fe、ZnO、NiO及びCuO換算で、これらの酸化物の合計を100質量%としたときに、58.9質量%以上66.9質量%以下のFe、8.6質量%以上23.6質量%以下のNiO、9.5質量%以上25.4質量%以下のZnO及び0.6質量%以上8.6質量%以下のCuOである。
前述のNi-Zn系フェライト及びNi-Zn-Cu系フェライトにおいては、Feの含有割合が高くなると、磁性基体の比透磁率及び飽和磁束密度が向上する。また、これらのフェライトにおいては、ZnOに対するNiOの比率(NiO/ZnO)の変動により、磁性基体の比透磁率の大きさが変動する。さらに、Ni-Zn-Cu系フェライトにおいては、CuOの含有割合が高くなると、磁性基体の比透磁率が向上する。このように、第1側面におけるフェライトは、組成によって磁性基体の特性を調整可能なものである。
焼結粒子1を構成するフェライトの組成は、以下の手順で決定する。まず、焼結体10aを切断ないし研削し、後述する表面層2で覆われていない平滑な面を露出させる。次いで、露出した面にカーボンを蒸着し、導電性を付与して測定面とする。次いで、測定面を、エネルギー分散型X線分光器(EDS)又は波長分散型X線分光器(WDS)のいずれかを搭載した走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、暗部に囲まれて相対的に明るく見える領域である焼結粒子1を特定する。次いで、焼結粒子1の中央付近の任意の箇所について、含有する元素の種類及び量をEDS又はWDSを用いて測定・算出し、Fe、Ni、Zn及びCuの含有量から、Fe、ZnO、NiO及びCuOの含有割合をmol%又は質量%で算出する。この測定・算出を5箇所について行って、各成分の含有割合の平均値を算出する。なお、一般的な製法で得られた焼結体においては、焼結粒子1の中央付近での各元素の含有割合は位置によらず一定であり、かつ異なる焼結粒子1間の各元素の含有割合には有意な差がないことが通常であるから、この場合の測定箇所は、1つの焼結粒子1内の複数個所としてもよく、異なる焼結粒子1から1箇所ずつ選択してもよい。最後に、算出された各平均値を、該各平均値の合計でそれぞれ除した後100倍し、前記各酸化物の合計を100%としたときの各酸化物の含有割合を算出し、これをフェライトの組成とする。
焼結体10aの表面には、表面層2が存在する。この表面層2は、組成又は原子若しくはイオンの配列の相違をもって、焼結粒子1と区別される。例えば、焼結体10aの断面を前述のEDSやWDSで分析して元素の分布をマッピングした際に、該断面の外周における元素濃度が焼結粒子1と異なること、焼結体10aの断面の外周を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した際に、焼結粒子1とは異なる構造が確認されること、及び焼結体10aの表面についてX線回折(XRD)測定を行った際に、スピネル型の結晶構造に由来する回折線とは異なるものが最強線として観測されたりすることは、いずれも表面層2の存在を裏付けるものといえる。
この表面層2は、酸化銅の全モル数に対するCuOのモル数の割合が20%以上である。
焼結体10aが前述の表面層2を有することで、高い比抵抗を有するものとなり、該焼結体で形成される磁性基体の電気的絶縁性が向上する。この理由は明らかではないが、以下の作用機序によるものと考えられる。
表面層2に含まれる酸化銅としては、CuO及びCuOが知られており、CuOは、CuOに比べて比抵抗が大きいとされている。このため、酸化銅としてCuOを一定の割合以上含む表面層2では、比抵抗が顕著に大きくなり、該表面層2を含む焼結体10aの比抵抗が高まると推定される。
焼結体1の比抵抗をより高いものとする点からは、表面層2における酸化銅の全モル数に対するCuOのモル数の割合は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
表面層2における酸化銅中のCuOの割合の算出は、以下の手順で行う。まず、表面層2を有する焼結体10aの表面について、オージェ電子分光法(AES)による測定・分析を行う。測定は、加速電圧3kV、照射電流5nA、試料傾斜75度の条件で、試料表面の任意の箇所について、点分析により行う。次いで、測定結果について各種元素の定性分析を行い、Cuが含まれることを確認する。次いで、Cuの状態分析を行い、CuO及びCuOの割合をmol%でそれぞれ算出する。次いで、算出されたCuO及びCuOの割合から、これらの合計に対するCuOの割合の比を算出する。
表面層2は、焼結体10aの表面全体を覆っていることが好ましい。しかし、焼結粒子1が露出する部分が存在しても、該露出部分の面積が焼結体10aの全表面積に占める割合が比較的小さく、かつ該露出部分が焼結体10aの特定箇所に偏在していない場合には、所期の電気的絶縁性を有する磁性基体を得ることができる。
焼結体10aは、焼結粒子1同士の界面に、該焼結粒子よりもCuの含有割合が高い界面層3を有してもよい。このことにより、応力特性に優れた磁性基体を得ることができる。これは、Cuに富むと共に焼結粒子1と原子又はイオンの配列が異なる界面層3が、応力緩和層として機能することで、焼結粒子1に印加される応力が低減されることによると推定される。
焼結体10aが界面層3を有することは、以下の手順で確認する。まず、上述したフェライト組成の決定方法と同様の方法で測定面の形成及びSEM観察を行い、測定面のSEM像を取得して焼結粒子1及びその界面の位置を決定する。次いで、SEM観察を行った領域について、EDS又はWDSを用いてCuの分布を測定し、マッピング像を取得する。最後に、SEM像とマッピング像とを対比し、マッピング像中のCu濃度が高い部分が、SEM像における焼結粒子1の界面に重なったことをもって、該重なった箇所を界面層3と判定する。なお、界面層3は、後述するとおり、焼結時に仮焼粉を構成する粒子からCuが分離することで形成されるため、構成元素の大部分がCuであり、焼結粒子1に比べてCuの割合が顕著に高くなっている。このため、マッピング像中のCu濃度が高い部分は、それ以外の部分と容易に区別することができる。
第1側面では、焼結体中に、不可避不純物を数百ppm程度まで含むことが許容される。不可避不純物の例としては、B、C、S、Cl、Se、Br、Te、Iや、Li、Na、Mg、Al、K、Ga、Ge、Sr、In、Sn、Sb、Ba、Pb、Bi等の典型元素、並びにSc、Ti、V、Cr、Y、Nb、Mo、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta等の遷移元素が挙げられる。
第1側面では、所期の電気的絶縁性を達成できる範囲内で、より優れた磁気的特性の磁性基体を得るために、上述した必須成分以外に種々の副成分を添加してもよい。
[磁性基体の製造方法]
第1側面に係る磁性基体は、Fe、Ni、Zn及びCuを含む原料粉末を準備すること、該原料粉末を、前記各元素が所期の割合で含まれるように配合・混合して、混合粉末を調製すること、該混合粉末を加熱処理して、スピネル型構造を有するフェライトを主成分とする仮焼粉末を調製すること、前記仮焼粉末を成形して成形体とすること、並びに前記成形体に対し、500℃から750℃までの温度領域を500℃/h以上の速度で昇温して800℃以上1100℃以下まで加熱した後、750℃から500℃までの温度領域を500℃/h以上の速度で降温する熱処理を、酸素濃度が大気中におけるもの以下である酸素含有雰囲気中で行うこと、を経て製造することができる。
使用する原料粉末は、Fe、Ni、Zn及びCuを含んでいれば特に限定されず、金属単体、合金、又は酸化物を初めとする種々の化合物を使用できる。化合物としては、複合酸化物等の、前述した元素のうち複数種を含むものであってもよい。これらのうち、粒子形状及び粒径のバラツキが小さく、粒径の小さな粒子からなる粉末が容易に入手可能な点で、酸化物であるFe、NiO、ZnO及びCuOの使用が好ましい。
使用する原料粉末の粒径は特に限定されず、例えば、体積基準で測定した粒度分布から算出される平均粒径(メジアン径(D50))を0.1μm以上5μm以下とすることができる。平均粒径は、0.5μm以上3.5μm以下とすることが好ましく、0.5μm以上2.5μm以下とすることがより好ましく、0.5μm以上1.5μm以下とすることがさらに好ましい。平均粒径が前記下限値以上であることで、取り扱いが容易となる。他方、平均粒径が前記上限値以下であることで、合成されたフェライトが均一になりやすい。この平均粒径は、例えば、レーザー回折/散乱法を利用した粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
原料粉末の配合量は、所期の組成のフェライトが生成するものとする。配合量の決定に際しては、Cuが、フェライト、表面層及び界面層の3者の生成に寄与し得ること、並びに後述する成形体の熱処理の条件によって、前記3者の生成に対するCuの寄与率が変動し得ることを考慮して、予備実験等により所期の組成及び構造の焼結体が得られることを確認するとよい。原料粉末としてFe、NiO、ZnO及びCuOを用いる場合の配合量の例としては、Feを47mol%以上50mol%以下、NiOを14mol%以上32mol%以下、ZnOを17mol%以上30mol%以下、CuOを3mol%以上12mol%以下とすることが挙げられる。
原料粉末の配合・混合方法は、不純物の混入を防ぎつつ各粉末が均一に混合されるものであれば特に限定されず、乾式混合、湿式混合のいずれを採用してもよい。ボールミルを用いた湿式混合を採用する場合には、例えば、混合時間を8時間以上24時間以下とすることができる。
混合粉末から仮焼粉末を得るための熱処理条件は、各原料が反応して所期の組成を有するNi-Zn系フェライトないしNi-Zn-Cu系フェライトが生成するものであれば限定されず、例えば大気雰囲気中、500℃以上1000℃以下で、1時間以上2時間以下とすればよい。熱処理条件を決定するにあたっては、低温又は短時間では未反応の原料や中間生成物が残存する虞があること、及び高温又は長時間では成分の揮発により所期の組成の化合物が得られない虞や、生成物が固結して解砕しにくくなることで生産性が低下する虞があること、を考慮するとよい。
前述の熱処理により得られた仮焼粉末が凝集している場合、成形に先立ってこれを解砕することが好ましい。解砕は、仮焼粉末の凝集をくずして適度の焼結性を有する粉体とするために行われる。解砕は、振動ミル、ハンマーミル、ローラーミル等を用いて乾式で行ってもよいが、仮焼粉末が大きい塊を形成しているときには、粗粉砕を行ってからボールミルやアトライター等を用いて湿式にて行うことが好ましい。解砕は、仮焼粉末の平均粒径が0.5μm以上2μm以下となるまで、又は仮焼粉末のBET比表面積が2.0m/g以上3.0m/g以下となるまで行うことが、成形性、保形性及び焼結性の点で好ましい。
また、仮焼粉末の成形に先立って、該仮焼粉末の造粒を行い、造粒物(顆粒)を得てもよい。造粒は、粉砕材料を適度な大きさの凝集粒子とし、成形に適した形態に変換するために行われる。こうした造粒法としては、例えば、加圧造粒法やスプレードライ法等が挙げられる。
さらに、仮焼粉末の成形に先立って、成形後の保形性を向上させるために、仮焼粉末にバインダを混合してもよい。使用するバインダとしては、仮焼粉末の粒子同士を接着して成形及び保形が可能で、かつ500℃以下の温度で分解して揮発するものが好ましい。こうしたバインダの一例として、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、及びビニル樹脂等が挙げられる。バインダの添加量は、成形性及び保形性等を考慮して適宜決定すればよく、例えば、仮焼粉末100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下とすることができる。仮焼粉末とバインダとの混合方法としては、ボールミルによる混合等が例示される。
仮焼粉末、又はこれと樹脂との混合物の成形方法は特に限定されず、例えば、前記粉末又は前記混合物を金型等の成形型に供給し、プレス等により加圧して成形する方法等が適用できる。この他に、仮焼粉末と樹脂とを含むグリーンシートを積層・圧着する方法を適用してもよい。また、成形体の形状も特に限定されず、棒状、板状、トロイダル状、ドラム型等の公知の形状から、用途に応じて適宜選択すればよい。
金型等を用いたプレス成形で成形体を得る場合、プレスの条件は、仮焼粉末及びこれと混合する樹脂の種類やこれらの配合割合等に応じて適宜決定すればよい。プレス圧力の一例として、5ton/cm以上、10ton/cm以下が挙げられる。プレス圧力が前記下限値以上であることで、充填率の高い成形体を得ることができる。他方、プレス圧力が前記上限値以下であることで、仮焼粉末を構成する粒子の破壊が抑制され、得られる焼結体において焼結粒子の粒径のバラツキが抑制される。
グリーンシートを積層・圧着して成形体を得る場合、吸着搬送機等を用いて個々のグリーンシートを積み重ね、プレス機を用いて熱圧着する方法が採用できる。圧着された積層体から複数のコイル部品を得る場合には、該積層体を、ダイシング機やレーザー切断機等の切断機を用いて分割してもよい。
この場合、グリーンシートは、典型的には、仮焼粉末とバインダとを含むスラリーを、ドクターブレードやダイコーター等の塗工機により、プラスチックフィルム等のベースフィルムの表面に塗布・乾燥することで製造される。前記グリーンシートの製造に好適なバインダとしては、ポリビニルブチラールを初めとするポリビニルアセタール樹脂等が例示される。また、前記スラリーを調製するための溶媒としては、ブチルカルビトールを初めとするグリコールエーテル等を用いることができるが、これに限定されない。前記スラリー中の各成分の含有量は、採用するグリーンシートの成形方法や製造するグリーンシートの厚み等に応じて適宜調節すればよい。
成形により得られた成形体がバインダを含む場合には、焼成に先立ってこれを除去する脱脂処理を行う。脱脂処理では、成形体を酸素の存在下で加熱して、バインダを酸化により揮発させる。脱脂処理の条件は、成形体中の仮焼粉末粒子を焼結させることなく、バインダの大部分を酸化除去できるものであれば特に限定されない。一例として、大気中で、300℃以上450℃以下の温度に、2時間以上4時間以下の時間保持することが挙げられる。
成形により得られ、必要により脱脂処理がなされた成形体に対する熱処理は、500℃から750℃までの温度領域を500℃/h以上の速度で昇温して800℃以上1100℃以下まで加熱した後、750℃から500℃までの温度領域を500℃/h以上の速度で降温する条件にて行う。このことにより、酸化銅を含有し、かつ酸化銅の全モル数に対するCuOのモル数の割合が20%以上である表面層、及び焼結粒子同士の界面に、該焼結粒子よりもCuの含有割合が高い界面層が形成された焼結体が得られる。
前述した条件での熱処理により、前記表面層及び前記界面層が生成する理由は明らかでないが、以下の作用機序によるものと考えられる。Ni-Zn-Cu系フェライトの焼結過程では、仮焼粉末の組成及び熱処理の条件によっては、焼結性の向上に寄与したCuが、焼結粒子の表面に残存することがある。この残存したCuは、従来の熱処理条件では、500℃から750℃までの温度領域において十分な量の酸素と結合することで、その大部分がCuOとして存在すると推定される。他方、前記温度領域にある時間を大幅に短くした前述の熱処理条件では、前記残存したCuが、十分な量の酸素と結合することができないため、CuOに比べてCuに対する酸素の割合が少ないCuOが多く生成すると推定される。特に焼結体表面では、熱処理装置(熱源)の温度変化に対してその温度が良好に追従することで、前記温度領域にある時間が焼結体内部に比べて短くなるため、前記残存したCuで形成される前記表面層において、CuOの比率が高くなると推定される。
前記成形体に対する熱処理では、500℃から750℃までの温度領域の昇温及び降温速度を600℃/h以上とすることが好ましく、700℃/h以上とすることがより好ましい。前記温度領域での昇温及び降温速度を高めることで、焼結体の表面層において酸化銅の全モル数に対するCuOのモル数の割合が高まり、比抵抗が向上する。また、焼結粒子の成長を適度に抑制し、磁性基体の応力特性を改善することもできる。前記温度領域における昇温及び降温速度の上限は限定されないが、熱処理装置の性能を考慮すると、1200℃/h程度となる。すなわち、前記温度領域での昇温及び降温速度は、通常は500℃/h以上1200℃/h以下であり、好ましくは600℃/h以上1200℃/h以下であり、より好ましくは700℃/h以上1200℃/h以下である。なお、従来は、Ni-Zn系フェライトないしNi-Zn-Cu系フェライトを焼結する際に、昇温及び降温速度を大きくすると、成形体ないし焼結体の表面と内部との間で収縮差が生じ、得られる焼結体の内部応力が大きくなる不具合が生じると考えられていた。このため、熱処理時の昇温及び降温速度は低く設定されることが通常であった。
前記成形体に対する熱処理は、酸素濃度が大気中におけるもの以下である酸素含有雰囲気中で行う。もちろん、前記酸素含有雰囲気は大気であってもよい。表面層での酸化銅の全モル数に対するCuOのモル数の割合を増大させる点からは、前記酸素含有雰囲気中の酸素濃度は、10000ppm(1%)以下とすることが好ましく、5000ppm以下とすることがより好ましく、3000ppm以下であることがさらに好ましい。他方、酸化物であるフェライトの特性を保持する点からは、前記酸素含有雰囲気中の酸素濃度は、100ppm以上とすることが好ましく、300ppm以上とすることがより好ましく、500ppm以上とすることがさらに好ましい。すなわち、熱処理時の酸素含有雰囲気における酸素濃度は、好ましくは100ppm以上10000ppm(1%)以下であり、より好ましくは300ppm以上5000ppm以下であり、さらに好ましくは500ppm以上3000ppm以下である。
前記成形体に対する熱処理では、昇温して750℃を超えた後、特定の温度にて所定時間保持してもよい。このことにより、焼結がより促進されて緻密な焼結体が得られる。保持態様の一例としては、加熱温度(最高到達温度)にて30分以上2時間以内保持することが挙げられる。
前述した脱脂処理及び熱処理は、雰囲気と温度を切り変えた設定ができる単一の熱処理装置を用いて連続的に行ってもよく、2以上の異なる熱処理装置を用いて断続的に行ってもよい。
[コイル部品]
本発明の第2の側面に係るコイル部品(以下、単に「第2側面」と記載することがある)100は、図2及び図3に例示するように、前述した第1側面に係る磁性基体10、及び前記磁性基体10の内部又は表面に配置された導体20を備える。
導体20の材質、形状及び配置は特に限定されず、要求特性に応じて適宜決定すればよい。材質の一例としては、銀若しくは銅、又はこれらの合金等が挙げられる。また、形状の一例としては、直線状、ミアンダー状、平面コイル状、螺旋状等が挙げられる。さらに、配置の一例としては、導体20としての被覆付きの導線を、磁性基体10の周囲に巻回したものや、各種形状の導体20を磁性基体10の内部に埋め込んだもの等が挙げられる。
第2側面の形状及び構造としては、図2に示すような巻線コイル部品及び図3に示すような積層コイル部品などが例示される。
第2側面は、低損失のコイル部品となる。これは、磁性基体10の比抵抗が高く、電気的絶縁性に優れることにより、磁性基体10を流れる電流量が抑制されることによる。
[コイル部品の製造方法1]
前述した第2側面に係るコイル部品は、第1側面に係る磁性基体の表面に導体を配置して製造することができる。具体的な配置方法としては、磁性基体に被覆付きの導線を巻回する方法や、磁性基体の表面に導体ペーストの印刷等により導体の前駆体を配置した後、焼成炉等の加熱装置を用いて焼付け処理を行う方法が例示される。
[コイル部品の製造方法2]
また、第2側面に係るコイル部品は、Fe、Ni、Zn及びCuを含む原料粉末を準備すること、該原料粉末を、前記各元素が所期の割合で含まれるように配合・混合して、混合粉末を調製すること、該混合粉末を加熱処理して、スピネル型構造を有するフェライトを主成分とする仮焼粉末を調製すること、該仮焼粉末と樹脂とを混合して混合物を得ること、前記混合物と導体の前駆体とを成形し、該前駆体が内部に配置された成形体とすること、前記成形体を脱脂処理すること、並びに前記脱脂処理後の成形体に対し、500℃から750℃までの温度領域を500℃/h以上の速度で昇温して800℃以上950℃以下まで加熱した後、750℃から500℃までの温度領域を500℃/h以上の速度で降温する熱処理を、酸素濃度が大気中におけるもの以下である酸素含有雰囲気中で行うことを経て、第1側面に係る磁性基体と導体とを同時に形成して製造することもできる。
この場合の仮焼粉末の調製方法、並びに仮焼粉末と混合するバインダの種類及び量は、上述した第1側面に係る磁性基体の製造に使用するものと同様であるため、説明を省略する。
導体の前駆体が内部に配置された成形体は、図4に示すように、上述した第1側面に係る磁性基体の製造に使用するグリーンシート31にヴィアホール32を加工した後、該グリーンシート31上に、導体ペーストの印刷等により導体の前駆体33を配置し、複数のグリーンシート31を積層・圧着する方法で得られる。ここで、導体の前駆体33とは、コイル部品中で導体を形成する導電性の材料に加えてバインダ樹脂等を含み、熱処理によって導体となるものを意味する。
使用する導体ペーストとしては、導体粉末と有機ビヒクルとを含むものが挙げられる。導体粉末としては、銀若しくは銅又はこれらの合金等の粉末が用いられる。導体粉末の粒径は特に限定されないが、例えば、体積基準で測定した粒度分布から算出される平均粒径(メジアン径(D50))が1μm~10μmのものが用いられる。有機ビヒクルの組成は、グリーンシートに含まれるバインダとの相性を考慮して決定すればよい。一例として、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂を、ブチルカルビトール等のグリコールエーテル系溶剤に溶解ないし膨潤させたものが挙げられる。導体ペーストにおける導体粉末及び有機ビヒクルの配合比率は、使用する印刷機に好適なペーストの粘度や形成しようとする導体パターンの膜厚等に応じて適宜調節することができる。
導体の前駆体が内部に配置された成形体に対して行う、脱脂処理の条件は、上述した第1側面に係る磁性基体の製造における条件と同様であるため、説明を省略する。また、脱脂処理後に行う熱処理の条件も、加熱温度(最高到達温度)が800℃以上950℃以下と若干低温である以外は上述のものと同様であるため、詳細な説明は省略する。熱処理の加熱温度を低めに設定するのは、生成した導体が溶融するのを防止するためである。
[回路基板]
本発明の第3の側面に係る回路基板(以下、単に「第3側面」と記載することがある。)は、前述の第2側面に係るコイル部品を載せた回路基板である。
回路基板の構造等は限定されず、目的に応じたものを採用すればよい。
第3側面は、第2側面に係るコイル部品を使用することで、損失の小さなものとなる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<磁性体及びコイル部品の作製>
まず、原料粉末として、Fe、NiO、ZnO、及びCuOを準備した。次いで、これらの原料粉末を、Feが49mol%、NiOが28mol%、ZnOが23mol%となり、Fe、NiO及びZnOの合計に対するCuOの割合が8質量%となるように秤量し、湿式ボールミルにて混合を行った。次いで、分散媒を蒸発させて除去し、得られた混合粉末を、大気雰囲気中、900℃で2時間熱処理して仮焼粉末を得た。次いで、得られた仮焼粉末を、BET比表面積が3.0m/gとなるように解砕した。次いで、解砕後の仮焼粉末に分散媒としての蒸留水及びバインダとしてのPVA(ポリビニルアルコール)を添加し、スプレードライヤーにて噴霧乾燥して造粒粉を得た。次いで、得られた造粒粉を金型内に供給し、10MPaの圧力で一軸圧縮成形して、円板状の成形体、トロイダル形状の成形体、及び中央に正方形の穴を有する正方形板状の成形体をそれぞれ得た。次いで、得られた各成形体を、大気雰囲気中で熱処理した。熱処理の温度条件は、500℃から900℃までの温度範囲を700℃/hの速度で昇温し、900℃で1時間保持した後、900℃から500℃までの温度範囲を700℃/hの速度で降温するものとした。このような熱処理を経て、直径8mm、厚さ0.5mmの円板状の磁性基体、外径25mm×内径12mm×厚さ15mmのトロイダル形状の磁性基体、及び一辺が15mmの正方形の中央に一辺が5mmの正方形の穴を有する、厚さ3mmの正方形板状の磁性基体をそれぞれ得た。最後に、得られた正方形板状の磁性基体の一辺、すなわち中央の穴を形成する辺と外周を形成する辺とで挟まれた部分に、導線を20ターン巻回して、実施例1に係る試験用コイル部品を得た。
<磁性基体(焼結体)の表面層分析>
得られたトロイダル形状の磁性基体について、表面層における酸化銅中のCuOの割合を上述した方法で算出した。表面層における各元素の含有割合の測定にはEDSを搭載したFE-SEM(カールツァイス製、MERLIN)を、オージェ電子分光法(AES)による分析にはフィールドエミッションオージェマイクロプローブ(日本電子株式会社製、JAMP-9510F)を、それぞれ使用した。その結果、酸化銅中のCuOのモル数の割合は25%と算出された。
<磁性体(焼結体)中の界面層の確認>
得られたトロイダル形状の磁性基体について、焼結体中の界面層の有無を上述した方法で確認した。SEM像及びマッピング像の取得には、EDSを搭載したFE-SEM(カールツァイス製、MERLIN)を使用した。その結果、焼結体は、内部に界面層を有するものと判定された。
<磁性体(焼結体)の比抵抗測定>
得られた円板状の磁性基体の表裏面(面積が最も大きい対向する2面))に、Agペーストを塗布した後、焼き付けて電極を形成した。次いで、この試験用磁性基体の電気抵抗値を、抵抗計(日置電機株式会社製、RM3544)を用いて測定し、得られた電気抵抗値、並びに電極面積及び試験用磁性基体の厚さから、比抵抗を算出した。得られた比抵抗は、4×10Ω・cmであった。
<磁性体(焼結体)の応力特性測定>
得られた試験用コイル部品について、測定装置としてインピーダンスアナライザ(キーサイト・テクノロジーズ・インク製、4294A)を用い、室温にて、OSCレベル500mV、周波数1MHzの条件で、応力を印可していない状態の比透磁率μを測定した。他方、試験用コイル部品の巻線部に対向する辺(非巻線部)に、加圧機を用いて30kgfの圧縮荷重をかけた以外は同条件下で比透磁率μを測定した。これらの測定結果から、応力特性として(μ-μ)/μ×100(%)を算出したところ、-3%となった。
[実施例2]
熱処理の温度条件を、500℃から900℃までの温度範囲を500℃/hの速度で昇温し、900℃で1時間保持した後、900℃から500℃までの温度範囲を500℃/hの速度で降温するものとした以外は実施例1と同様の手順にて、実施例2に係る磁性基体及び試験用コイル部品を作製した。
得られた磁性基体及び試験用コイル部品について、実施例1と同様の方法で、表面層における酸化銅中のCuOの割合の算出、界面層の有無の確認、並びに比抵抗及び応力特性の測定・算出を行った。その結果、表面層における酸化銅中のCuOのモル数の割合は23%と算出され、磁性基体を構成する焼結体は内部に界面層を有するものと判定され、磁性基体の比抵抗は3×10Ω・cmと、応力特性は-3%とそれぞれ算出された。
[実施例3から5]
熱処理を行う雰囲気を、酸素濃度が10000ppmの窒素-酸素混合ガスとした以外は実施例1と同様の手順にて、実施例3に係る磁性基体及びコイル部品を作製した。また、熱処理を行う雰囲気を、酸素濃度が3000ppmの窒素-酸素混合ガスとした以外は実施例1と同様の手順にて、実施例4に係る磁性基体及びコイル部品を作製した。さらに、熱処理を行う雰囲気を、酸素濃度が500ppmの窒素-酸素混合ガスとした以外は実施例1と同様の手順にて、実施例5に係る磁性基体及び試験用コイル部品を作製した。
得られた磁性基体及び試験用コイル部品について、実施例1と同様の方法で、表面層における酸化銅中のCuOの割合の算出、界面層の有無の確認、並びに比抵抗及び応力特性の測定・算出を行った。その結果、いずれの実施例に係る磁性基体においても、磁性基体を構成する焼結体は内部に界面層を有するものと判定された。また、表面層における酸化銅中のCuOのモル数の割合は、実施例3では30%と、実施例4では52%と、実施例5では76%と、それぞれ算出された。また、磁性基体の比抵抗は、実施例3では5×10Ω・cmと、実施例4では7×10Ω・cmと、実施例5では11×10Ω・cmと、それぞれ算出された。さらに、応力特性は、いずれの実施例に係る磁性基体についても-3%と算出された。
[比較例1、2]
熱処理の温度条件を、500℃から900℃までの温度範囲を350℃/hの速度で昇温し、900℃で1時間保持した後、900℃から500℃までの温度範囲を350℃/hの速度で降温するものとした以外は実施例1と同様の手順にて、比較例1に係る磁性基体及びコイル部品を作製した。また、900℃での保持時間を3時間とした以外は比較例1と同様の手順にて、比較例2に係る磁性基体及び試験用コイル部品を作製した。
得られた磁性基体及び試験用コイル部品について、実施例1と同様の方法で、表面層における酸化銅中のCuOの割合の算出、界面層の有無の確認、並びに比抵抗及び応力特性の測定・算出を行った。その結果、いずれの実施例に係る磁性基体においても、磁性基体を構成する焼結体は内部に界面層を有するものと判定された。また、表面層における酸化銅中のCuOのモル数の割合は、比較例1では18%と、比較例2では17%と、それぞれ算出された。また、磁性基体の比抵抗は、比較例1では1×10Ω・cmと、実比較例2では0.8×10Ω・cmと、それぞれ算出された。さらに、応力特性は、比較例1では-7%と、比較例2では-8%と、それぞれ算出された。
[比較例3]
原料粉末の配合を、Fe、NiO及びZnOの合計に対してCuOの割合が3質量%となるようにした以外は実施例1と同様の手順にて、比較例3に係る磁性基体及び試験用コイル部品を作製した。
得られた磁性基体について、実施例1と同様の方法で、表面層における酸化銅中のCuOの割合の算出を試みた。しかしながら、定性分析においてCuの主成分と言えるような顕著な含有は確認されず、また、CuOの存在は確認されなかった。また、得られた磁性基体について、実施例1と同様の方法で界面層の有無の確認を行ったところ、界面層の存在は確認されなかった。界面層の有無を確認した測定面について、その外周の組成を分析したところ、焼結粒子と元素濃度が異なる箇所は確認されなかった。この結果と、前述した磁性基体表面の分析結果とから、比較例3に係る磁性基体には表面層が存在せず、焼結粒子が表面に露出していると判断される。
比較例3に係る試験用磁性基体について、実施例1と同様の方法で比抵抗の測定を行ったところ、0.5×10Ω・cmとなった。また、比較例3に係る試験用コイル部品について、磁性基体の応力特性の測定を行ったところ、-12%となった。
以上に説明した実施例及び比較例の製造条件を表1に、得られた結果を表2に、それぞれまとめて示す。また、表面層における酸化銅中のCuOのモル数の割合と比抵抗との関係を、図4に示す。
Figure 2022182199000002
Figure 2022182199000003
表2及び図5からは、酸化銅を含有し、かつ該酸化銅中のCuOのモル数の割合が20%以上である表面層を有する焼結体で構成された磁性基体は、顕著に大きな比抵抗を有することが判る。また、これらの磁性基体は応力特性にも優れることが判る。
本発明によれば、電気的絶縁性に優れた磁性基体を提供することができる。このため、低損失のコイル部品が得られる点で本発明は有用である。また、本発明の好ましい態様によれば、応力が印可された状態でも透磁率の低下が小さい磁性基体を提供することができる。このため、樹脂等による被覆がなされることで磁性基体に応力が印可される状態となった場合でも、インダクタンスの低下が小さいコイル部品が得られる点でも本発明は有用である。
100 コイル部品
10 磁性基体
10a 焼結体
1 焼結粒子
2 表面層
3 界面層
20 導体
31 グリーンシート
32 ヴィアホール
33 導体の前駆体

Claims (4)

  1. Ni及びZnを含有するフェライトで形成された焼結粒子を含むと共に、
    表面に、酸化銅の全モル数に対するCuOのモル数の割合が20%以上である表面層を有する
    焼結体で形成された磁性基体。
  2. 前記焼結粒子同士の界面に、該焼結粒子よりもCuの含有割合が高い界面層を有する、請求項1に記載の磁性基体。
  3. 請求項1又は2に記載の磁性基体、及び前記磁性基体の内部又は表面に配置された導体を備えるコイル部品。
  4. 請求項3に記載のコイル部品を搭載した回路基板。
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