JP2022173043A - 二軸延伸フィルム - Google Patents

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俊介 小井土
Shunsuke Koido
大樹 鶴岡
Daiki Tsuruoka
智博 鈴木
Tomohiro Suzuki
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Abstract

【課題】優れた低誘電特性を有する、汎用性の高い二軸延伸ポリエステルフィルムを提供すること、及びフレキシブルディスプレイ用途にも対応可能な耐屈曲性に優れた二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。【解決手段】2種以上のポリエステルを含み、そのうちの少なくとも1種がポリブチレンナフタレート樹脂(A)であり、28GHzにおける誘電率が、3.13以下である、二軸延伸フィルムである。【選択図】なし

Description

本発明は、二軸延伸フィルムに関する。
近年、電気、電子機器の高性能、高機能化に伴い、情報の高速通信対応が必要とされている。例えば、スマートフォンにおいては、5G(第五世代移動通信システム)の高速通信サービスの開始に伴い、民生分野だけではなく、産業分野(工場、自動車などの車両等)でも高速通信サービスが普及する状況にある。
5Gの高速大容量のデータ通信には、「ミリ波」(波長1~10mm、周波数30~300GHz)帯の電波が用いられる。ミリ波の長所としては、一度に送信できるデータが大容量であること、得られる画像が高精細化できること等が挙げられる。
一方で、回路基板に前記ミリ波のような高周波のデジタル信号を流すと、送信されたデジタル信号の一部が回路基板の配線上で熱として消費される誘電損失が起こり、減衰したデジタル信号として受信側に到達する、いわゆる「伝送損失」が発生する。そのため、使用する部材においても、伝送損失低減対策が必要とされる状況にある。前記伝送損失は、誘電損失と導体損失の総和であり、該誘電損失αは下記式(1)から算出される。
Figure 2022173043000001
なお、fは周波数、cは光速、εは比誘電率、tanδは誘電正接である。
例えば、樹脂フィルムと銅箔で形成される柔軟な回路基板であるFPC(Flexible Printed Circuits)では、伝送損失低減として、樹脂フィルムには誘電損失αの低減が求められている。より具体的には、εやtanδを下げること、特にはtanδを下げる試みがなされている。
樹脂フィルムの低誘電率化や低誘電正接化に対して、種々の材料が提案されており、その中でも、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂は、誘電率及び誘電正接がともに低く、高周波信号を扱う各種電気部品の絶縁層として広く使用されている(非特許文献1)。
しかしながら、フッ素樹脂は、機械的特性、加工性及びコストなどの点から制限が多く、汎用性のある樹脂フィルムが要望されている。
汎用性が高い樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムは、耐熱性、耐候性、機械的強度、透明性などに優れており、かつ、価格的にも入手し易いことから、包装材料、光学用途などの各種用途に使用されているが、低誘電特性に関してはあまり検討されていない。
例えば、特許文献1には、優れた低誘電特性を有するポリエステルフィルムとして、内部に5~45体積%の空洞を含有する積層二軸延伸ポリエステルフィルムが開示されている。空洞を含有することで、空隙(空気)を分散させることができ、低誘電率化や低誘電正接化を達成している。
また、近年、電子機器などの小型化、軽量化に伴い、フレキシブル基板やフレキシブルプリント回路が用いられる傾向にある。その流れに伴い、ディスプレイ用途においてもフレキシブル性の要求が高まっている中で、復元性に優れ、繰り返しの折り曲げ耐性に優れるフィルムが強く求められている。
特開2006-352470号公報
「高周波対応部材の開発動向と5G、ミリ波レーダーへの応用」、技術情報協会、第3章、第2節、p.77-84「高速、高周波対応FPCの開発動向と低伝送損失化」
上記特許文献1に記載の空洞含有積層二軸延伸ポリエステルフィルムは、異種材料を混合して空洞を形成するものであるが、このような場合、空洞のサイズあるいは異種材料の分散状態を制御することが難しく、例えば、異種材料の分散状態が不十分な場合には、所望する低誘電特性が得られないことがある。
本発明で解決しようとする課題は、上記の問題点を解決し、空洞を有しなくても優れた低誘電特性を有する、汎用性の高い二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
また、フレキシブルディスプレイ用途にも対応可能な耐屈曲性に優れた二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。本発明は、その一態様において以下の[1]~[19]を要旨とする。
[1]2種以上のポリエステルを含み、そのうちの少なくとも1種がポリブチレンナフタレート樹脂(A)であり、28GHzにおける誘電率が、3.13以下である、二軸延伸フィルム。
[2]28GHzにおける誘電正接が、0.0040以下である、上記[1]に記載の二軸延伸フィルム。
[3]長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際のヒステリシスロス率の平均値が45.0%以下である、上記[1]又は[2]に記載の二軸延伸フィルム。
[4]長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際の残留ひずみの平均値が0.900%以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルム。
[5]非晶性ポリエステル(B)を含む、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルム。
[6]前記非晶性ポリエステル(B)は、前記ポリブチレンナフタレート樹脂(A)よりもガラス転移温度が高い、上記[5]に記載の二軸延伸フィルム。
[7]前記ポリブチレンナフタレート樹脂(A)100質量部に対して、前記非晶性ポリエステル(B)を1質量部以上100質量部以下の割合で含む、上記[5]又は[6]に記載の二軸延伸フィルム。
[8]前記非晶性ポリエステル(B)が、ポリアリレートである、上記[5]~[7]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルム。
[9]高速通信回路用である、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルム。
[10]フレキシブルディスプレイ用である、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルム。
[11]高速通信回路を搭載したフレキシブルディスプレイ用である、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルム。
[12]上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の二軸延伸フィルムの少なくとも一方の表層上に硬化樹脂層を有し、該硬化樹脂層が、架橋剤を不揮発成分に対して70質量%以上含有する樹脂組成物から形成される、硬化樹脂層付きフィルム。
[13]上記[12]に記載の硬化樹脂層付きフィルムの前記硬化樹脂層上に金属層を備える、金属積層フィルム。
[14]前記金属層がパターン化された、上記[13]に記載の金属積層フィルム。
[15]前記金属層が銅又は銀からなる、上記[13]又は[14]に記載の金属積層フィルム。
[16]高速通信回路用である、上記[12]に記載の硬化樹脂層付きフィルム。
[17]透明アンテナフィルム用である、上記[16]に記載の硬化樹脂層付きフィルム。
[18]高速通信回路用である、上記[13]~[15]のいずれか1つに記載の金属積層フィルム。
[19]透明アンテナフィルム用である、上記[18]に記載の金属積層フィルム。
本発明の二軸延伸フィルムは、優れた低誘電特性を有する。
また、本発明の二軸延伸フィルムは、優れた耐屈曲性を有する。
したがって、本発明の二軸延伸フィルムは、高速通信回路用及びフレキシブルディスプレイ用に加えて、高速通信回路が搭載されたフレキシブルディスプレイ用にも好適に用いることができる。
応力-ひずみ曲線のプロファイルである。
以下、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
<<二軸延伸フィルム>>
本発明の二軸延伸フィルム(以下、「本フィルム」とも称する)は、2種以上のポリエステルを含み、そのうちの少なくとも1種がポリブチレンナフタレート(以下、「PBN」とも称する)樹脂(A)であり、28GHzにおける誘電率が、3.13以下である、二軸延伸フィルムである。
本フィルムは、二軸延伸フィルムであるため、薄膜とすることができ、かつ、特定の混合ポリエステルを使用して誘電率を特定の範囲内に調整しているので、優れた低誘電特性を有する。
さらに、本フィルムは、特定の混合ポリエステルを使用して結晶化速度をコントロールしているため、PBN樹脂(A)単体だと困難である押出成形や延伸加工にも優れる。
本フィルムがPBN樹脂(A)を含有することで、優れた低誘電特性を有する機構については定かではないが、芳香族のスタッキングによって双極子の運動が抑制されるためだと推定している。
一般的に、誘電体を電場内に置くと、双極子が配向する。そして、交流電場の位相に追随するように、双極子が回転・反転する。この双極子の回転・反転運動に伴って摩擦が生じ、誘電損失が発生する。
したがって、双極子の運動を抑制することが、優れた低誘電特性に繋がると推定している。
また、本フィルムがPBN樹脂(A)を含有することで、優れた耐屈曲性を有する機構については定かではないが、アルキル鎖部分のコンホメーションによって結晶転移を起こすためだと推定している。
<ポリブチレンナフタレート樹脂(A)>
本フィルムを構成するPBN樹脂(A)は、ジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を、ジオール成分(a-2)として1,4-ブタンジオール単位を含むポリエステルであり、好ましくは2,6-ナフタレンジカルボン酸と1,4-ブタンジオールを主成分とする、すなわち、ジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上、ジオール成分(a-2)として1,4-ブタンジオール単位を50モル%以上含むことが好ましい。
特に、本発明で用いるPBN樹脂(A)は、ジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を90モル%以上、ジオール成分(a-2)として1,4-ブタンジオール単位を90モル%以上含むことがより好ましい。
前記PBN樹脂(A)を構成するジカルボン酸成分(a-1)は、2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を含み、ジカルボン酸成分(a-1)のうち、2,6-ナフタレンジカルボン酸単位が92モル%以上であることがより好ましく、94モル%以上であることがさらに好ましく、96モル%以上であることが特に好ましく、98モル%以上であることがとりわけ好ましく、ジカルボン酸成分(a-1)の全て(100モル%)が2,6-ナフタレンジカルボン酸であることが最も好ましい。ジカルボン酸成分(a-1)として、2,6-ナフタレンジカルボン酸単位を90モル%以上とすることにより、PBN樹脂(A)のガラス転移温度及び結晶性が向上し、ひいては本フィルムの耐熱性が向上する。
前記PBN樹脂(A)は、成形性や耐熱性の向上を目的として、2,6-ナフタレンジカルボン酸以外の酸成分を共重合してもよい。具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられるが、これらの中でも成形性の観点から、イソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸が好ましい。これらの酸成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、前記2,6-ナフタレンジカルボン酸以外の酸成分の含有量は、2,6-ナフタレンジカルボン酸を含む全酸成分中10モル%以下であることが好ましい。
前記PBN樹脂(A)を構成するジオール成分(a-2)は、1,4-ブタンジオール単位を含み、ジオール成分(a-2)のうち、1,4-ブタンジオール単位が92モル%以上であることがより好ましく、94モル%以上であることがさらに好ましく、96モル%以上であることが特に好ましく、98モル%以上であることがとりわけ好ましく、ジオール成分(a-2)の全て(100モル%)が1,4-ブタンジオールであることが最も好ましい。ジオール成分(a-2)として、1,4-ブタンジオール単位を90モル%以上とすることにより、混合するポリエステルとの相溶性が向上し、さらにはPBN樹脂(A)のガラス転移温度及び結晶性が向上し、ひいては本フィルムの耐熱性が向上する。
前記PBN樹脂(A)は、成形性や耐熱性の向上を目的として、1,4-ブタンジオール以外のジオール成分を共重合してもよい。具体的には、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノン、ビスフェノール、スピログリコール、2,2,4,4,-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、イソソルバイド等が挙げられるが、この中でも成形性の観点からエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましい。これらのジオール成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、前記1,4-ブタンジオール以外のジオール成分の含有量は、1,4-ブタンジオールを含む全ジオール成分中10モル%以下であることが好ましい。
PBN樹脂(A)のガラス転移温度(Tg(A))は、50℃以上130℃以下であることが好ましく、58℃以上125℃以下であることがより好ましく、65℃以上120℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度(Tg(A))がかかる範囲にあれば、耐熱性と押出成形性のバランスに優れる。
なお、ガラス転移温度(Tg(A))は、実施例に記載の方法で測定できる。
<少なくとも1種のポリエステル>
本フィルムは、前記PBN樹脂(A)以外に、少なくとも1種のポリエステルを含む混合ポリエステルにより構成される。
前記少なくとも1種のポリエステルは、特に制限されないが、非晶性ポリエステル(B)であることが好ましく、さらに、前記非晶性ポリエステル(B)は、前記PBN樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いことがより好ましい。
PBN樹脂(A)に対して、前記非晶性ポリエステル(B)を混合することにより、PBN樹脂(A)の結晶化速度をコントロールし、押出成形性や延伸加工性に優れたフィルムを得ることができる。
また、非晶性である非晶性ポリエステル(B)を加えることにより、PBN樹脂(A)自体の結晶性を緩和し、延伸時の破断を抑え、加工時のハンドリング性を向上させることができる。
さらに、前記非晶性ポリエステル(B)が、PBN樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いことで、PBN樹脂(A)単体よりもガラス転移温度の高い樹脂組成物が得られ、耐熱性が良好となる。
前記非晶性ポリエステル(B)としては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分を合わせて少なくとも3種以上用いて重縮合して得られる構造を有するものであることが好ましい。
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;p-オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等が挙げられる。
ジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ダイマージオール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルバイト、スピログリコール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールTMCなどのビスフェノール化合物若しくはその誘導体又はそれらのエチレンオキサイド付加物)などが挙げられる。
前記非晶性ポリエステル(B)の中でも、耐屈曲性の観点から、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ダイマージオール、ビスフェノール類等の二価フェノールから選ばれる少なくとも1種のジオール成分を含有する非晶性共重合ポリエステルが好ましい。
さらに、耐熱性及び耐屈曲性の観点から、全芳香族ポリエステルがより好ましく、それらの中でもポリアリレート(以下「PAR」と記載することがある)がさらに好ましい。
前記PARは、ジカルボン酸成分(b-1)と二価フェノール成分(b-2)との重縮合物である。PARを構成するジカルボン酸成分(b-1)としては、二価の芳香族カルボン酸であれば特に制限はないが、なかでもテレフタル酸成分とイソフタル酸成分の混合物であることが好ましい。
そのテレフタル酸成分とイソフタル酸成分の混合比(モル比)は、テレフタル酸/イソフタル酸=99/1~1/99が好ましく、90/10~10/90がより好ましく、80/20~20/80がさらに好ましく、70/30~30/70が特に好ましく、60/40~40/60がとりわけ好ましい。ジカルボン酸成分(b-1)としてテレフタル酸とイソフタル酸の混合比が上記範囲であることで、PARは耐熱性と押出成形性に優れる。
PARは、ジカルボン酸成分(b-1)としてテレフタル酸とイソフタル酸以外の酸成分を共重合してもよい。
具体的には、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
また、PARの耐熱性を損なわないよう、テレフタル酸とイソフタル酸以外の酸成分の共重合比率は10モル%未満であることが好ましい。
PARを構成する二価フェノール成分(b-2)としては、二価のフェノール類であれば特に制限はないが、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)成分、ビスフェノールTMC(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン)成分のいずれか、又は、ビスフェノールAとビスフェノールTMCのいずれも含むことが好ましい。
一般に、ビスフェノールA成分を含むことで押出成形性(流動性)に優れたPARとなる。
一方、ビスフェノールTMC成分を含むことで、ガラス転移温度が向上し、耐熱性に優れるPARとなる。
押出成形性と耐熱性のバランスを取りたい場合には、ビスフェノールA成分とビスフェノールTMC成分のいずれも用いることが好ましい。この場合、ビスフェノールA成分とビスフェノールTMC成分の割合(モル%)は、ビスフェノールA/ビスフェノールTMC=99/1~1/99が好ましく、90/10~10/90がより好ましく、80/20~20/80がさらに好ましく、70/30~30/70が特に好ましく、60/40~40/60がとりわけ好ましい。
ビスフェノールA成分とビスフェノールTMC成分の割合をかかる範囲にすることにより、耐熱性と押出成形性のバランスに優れるPARとなる。
PARは、二価フェノール成分(b-2)としてビスフェノールAとビスフェノールTMC以外のビスフェノール類を共重合してもよい。
具体的には、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン)、ビスフェノールAF(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)、ビスフェノールB(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン)、ビスフェノールBP(ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン)、ビスフェノールC(2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールE(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)、ビスフェノールG(2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン)、ビスフェノールM(1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン)、ビスフェノールS(ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン)、ビスフェノールP(1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン)、ビスフェノールPH(5,5’-(1-メチルエチリデン)-ビス[1,1’-(ビスフェニル)-2-オール]プロパン)、ビスフェノールZ(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)等が挙げられる。
PARの耐熱性を損なわないよう、上記化合物の共重合比率は10モル%未満であることが好ましい。
PARは、前記PBN樹脂(A)との相溶性を高めるために、ジカルボン酸成分(b-1)としてテレフタル酸成分とイソフタル酸成分の混合物を、二価フェノール成分(b-2)としてビスフェノールA成分、ビスフェノールTMC成分のいずれか、又は、ビスフェノールAとビスフェノールTMCの混合物を選択することが好ましい。
本発明に用いるPARは、押出成形性の向上を目的としてポリカーボネート樹脂を混合してもよい。PARとポリカーボネート樹脂は相溶するため、PARに対してポリカーボネート樹脂を混合することで、透明性や機械特性を維持したままPARのガラス転移温度を下げることができ、結果として押出成形性を向上することができる。
PARとポリカーボネートを混合する場合、その混合比率(質量比)はPAR/ポリカーボネート=99/1~50/50が好ましく、98/2~60/40がより好ましく、97/3~70/30が更に好ましく、96/4~80/20が特に好ましい。PARとポリカーボネートの混合比率がかかる範囲であれば、PARの耐熱性を維持したまま溶融成形性を向上することができる。
本発明に用いるPAR等の非晶性ポリエステル(B)は、前記PBN樹脂(A)よりもガラス転移温度が高く、それらのガラス転移温度の差は60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、90℃以上であることが特に好ましく、100℃以上であることがとりわけ好ましい。
PBN樹脂(A)と非晶性ポリエステル(B)のガラス転移温度の差が上記範囲であることで、本フィルムのガラス転移温度が好適な範囲となり、耐熱性及び押出成形性に優れたフィルムが得られる。
PBN樹脂(A)と非晶性ポリエステル(B)のガラス転移温度の差の上限値については、得に限定されないが、通常220℃以下であり、190℃以下であることが好ましい。
PAR等の非晶性ポリエステル(B)のガラス転移温度(Tg(B))は、130℃以上280℃以下であることが好ましく、140℃以上260℃以下であることがより好ましく、150℃以上240℃以下であることがさらに好ましい。非晶性ポリエステル(B)のガラス転移温度(Tg(B))がかかる範囲にあれば、本フィルムのガラス転移温度が好適な範囲となり、耐熱性及び押出成形性に優れたフィルムが得られる。
なお、ガラス転移温度(Tg(B))は、実施例に記載の方法で測定できる。
本フィルムは、PBN樹脂(A)100質量部に対して、PAR等の非晶性ポリエステル(B)を1質量部以上100質量部以下の割合で含むことが好ましい。本フィルムの非晶性ポリエステル(B)の含有割合が1質量部以上であれば、結晶化速度を遅くすることができるため、押出成形性が向上する。
また、非晶性ポリエステル(B)の含有割合が1質量部以上であれば、耐熱性が向上する。
一方、非晶性ポリエステル(B)の含有割合が100質量部以下であれば、本フィルムの低誘電特性及び耐屈曲性が十分なものとなる。
以上の観点から、前記非晶性ポリエステル(B)の含有割合は、PBN樹脂(A)100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以上70質量部以下であることが特に好ましい。
本フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲において、PBN樹脂(A)及び少なくとも1種のポリエステル以外の他の樹脂を含むことを許容することができる。
他の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、上記以外のポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、及び、フッ素系樹脂等が挙げられる。
本フィルムは、易滑性の付与及び各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性を付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステルなどのポリマー製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
また、本フィルムは一般的に配合される添加剤を適宜含むことができる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性及び多孔フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、及び、着色剤などの添加剤が挙げられる。
<本フィルムの製造方法>
本発明の二軸延伸フィルムの製造方法について説明するが、以下の説明は、本樹脂組成物を製造する方法の一例であり、本フィルムはかかる製造方法により製造される本フィルムに限定されるものではない。
本発明の実施形態の一例に係る本フィルムの製造方法は、前記PBN樹脂(A)及び少なくとも1種のポリエステルを含有する樹脂組成物をフィルム状に成形し、二軸延伸する製造方法である。
前記PBN樹脂(A)、少なくとも1種のポリエステル、その他の樹脂、及び添加剤を混練し、樹脂組成物を得る方法は特に限定されないが、なるべく簡便に樹脂組成物を得るために、押出機を用いて溶融混練することによって製造するのが好ましい。樹脂組成物を構成する原料を均一に混合するために、同方向二軸押出機を用いて溶融混練するのが好ましい。
混練温度は、用いる全ての重合体のガラス転移温度以上であり、かつ結晶性樹脂に対しては、その重合体の結晶融解温度以上であることが好ましい。使用する重合体のガラス転移温度や結晶融解温度に対して、なるべく混練温度が高い方が、重合体の一部のエステル交換反応が生じやすく、相溶性が向上しやすいものの、必要以上に混練温度が高くなると樹脂の分解が起こるため好ましくない。このことから、混練温度は250℃以上330℃以下が好ましく、255℃以上325℃以下がより好ましく、260℃以上320℃以下がさらに好ましく、265℃以上315℃以下が特に好ましい。混練温度がかかる範囲であれば、重合体の分解を生じることなく、相溶性や溶融成形性を向上させることができる。
得られた樹脂組成物を、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等によって成形して二軸延伸フィルムを作製することができる。それぞれの成形方法において、装置及び加工条件は特に限定されない。
本フィルムは例えば、以下の方法により製造することが好ましい。
混合して得られた樹脂組成物より、実質的に無定型で配向していないフィルム(以下「未延伸フィルム」とも称する)を押出法で製造する。この未延伸フィルムの製造は、例えば、上記原料を押出機により溶融し、フラットダイ又は環状ダイから押出した後、急冷することによりフラット状又は環状の未延伸フィルムとする押出法を採用することができる。この際、場合によって、複数の押出機を使用した積層構成としてもよい。
次に、上記の未延伸フィルムを、フィルムの長手方向(MD)及びこれと直角な幅方向(TD)で、延伸効果、フィルム強度等の点から、少なくとも一方向に通常1.1~6.0倍、好ましくは縦横二軸方向に各々1.1~6.0倍の範囲で延伸する。
二軸延伸の方法としては、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等、従来公知の延伸方法がいずれも採用できる。例えば、テンター式逐次二軸延伸方法の場合には、未延伸フィルムを、前記樹脂組成物のガラス転移温度をTgとして、Tg~Tg+50℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に1.1~6.0倍に延伸し、続いてテンター式横延伸機によってTg~Tg+50℃の温度範囲内で横方向に1.1~6.0倍に延伸することにより製造することができる。また、テンター式同時二軸延伸やチューブラー式同時二軸延伸方法の場合は、例えば、Tg~Tg+50℃の温度範囲において、縦横同時に各軸方向に1.1~6.0倍に延伸することにより製造することができる。
上記方法により延伸された二軸延伸フィルムは、引き続き熱固定される。熱固定をすることにより常温における寸法安定性を付与することができる。この場合の処理温度は、好ましくは前記樹脂組成物の結晶融解温度Tm-1~Tm-50℃の範囲を選択する。熱固定温度が上記範囲内にあれば、熱固定が十分に行われ、延伸時の応力が緩和され、十分な耐熱性や機械特性が得られ、破断やフィルム表面の白化などのトラブルがない優れたフィルムが得られる。
本発明においては、熱固定による結晶化収縮の応力を緩和させる為に、熱固定中に幅方向に0~15%、好ましくは1~10%の範囲で弛緩を行うことが好ましい。弛緩が十分に行われ、フィルムの幅方向に均一に弛緩されると、幅方向の収縮率が均一になり、常温寸法安定性に優れたフィルムが得られる。また、フィルムの収縮に追従した弛緩が行われる為、フィルムのたるみ、テンター内でのバタツキがなく、フィルムの破断もない。
<本フィルムの物性>
本フィルムは、28GHzにおける誘電率が、3.13以下であり、3.10以下が好ましく、3.08以下がより好ましく、3.05以下がさらに好ましい。28GHzにおける誘電率が3.13以下であれば、フィルムが優れた低誘電特性を有しているといえる。誘電率は、混合するポリエステルの種類や含有量、延伸条件などによって調整することができる。
なお、下限値は特に限定されるものではないが、2.00以上であればよい。また、誘電率は実施例に記載の方法により測定した。
また、本フィルムの28GHzにおける誘電正接(tanδ)は、0.0040以下が好ましく、より好ましくは0.0038以下、さらに好ましくは0.0036以下、特に好ましくは0.0034以下、とりわけ好ましくは0.0032以下である。下限値は特に限定されるものではないが、0.0010程度である。28GHzにおける誘電正接(tanδ)が0.0040以下であれば、フィルムが優れた低誘電特性を有しているといえ、高速通信回路用として好適に使用することができる。誘電正接は、混合するポリエステルの種類や含有量、延伸条件などによって調整することができる。
なお、誘電正接は実施例に記載の方法により測定した。
本フィルムは、23℃における長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際のヒステリシスロス率の平均値は、45.0%以下が好ましく、43.0%以下がより好ましく、41.0%以下がさらに好ましい。下限値は特に限定されるものではないが、0.100%以上である。ヒステリシスロス率を45.0%以下とすることで、フィルムの復元力が大きくなって、フィルムの折り曲げ耐性(耐屈曲性)が実用範囲内に保たれる。
また、ヒステリシスロス率を長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれの方向の平均値とすることで、フィルム全体としての特性指標とすることができる。
なお、ヒステリシスロス率は使用する樹脂の種類、含有量、延伸条件などによって調整することができる。
本フィルムのヒステリシスロス率はJIS K 7312:1996に準じて、実施例に記載の方法により測定することができる。
より具体的には、引張サイクル試験によって、図1に示すような応力-ひずみ曲線のグラフが得られた場合に、abcefで囲まれた面積の、全体(abcda)の面積に対する比率がヒステリシスロス率と定義される。
さらに、本フィルムの23℃における長手方向(MD)及び幅方向(TD)のヒステリシスロス率の差は15.0%以下であることが好ましく、より好ましくは14.0%以下であり、さらに好ましくは13.0%以下、特に好ましくは12.0%以下である。
長手方向(MD)及び幅方向(TD)のヒステリシスロス率の差が上記数値範囲内であることにより、フィルムの折り曲げ耐性、ひいてはフィルムの各種特性の異方性が小さくなるため、フィルムの方向による制約を受けない。
したがって、フィルムを部材として使用する際や、二次加工時などの製造工程において、特定の方向を選択する必要がなくなり、作業員の作業負荷増大を回避できる利点を有する。
また、異方性による特定方向のみの不具合が起こりにくいため、ハンドリング性にも優れるフィルムとなる。
なお、長手方向(MD)及び幅方向(TD)のヒステリシスロス率の差を小さくする方法としては、例えば、それぞれの方向における延伸倍率やフィルムの結晶性を制御することによって、所望の値とすることができる。
なお、本発明において、フィルムの長手方向(MD)とは、フィルムの製造工程でフィルムが進行する方向、すなわちフィルムロールの巻き方向をいう。
また、フィルムの幅方向(TD)とは、フィルム面に平行かつ長手方向と直交する方向をいい、すなわち、フィルムロール状としたときロールの中心軸と平行な方向である。
本フィルムの23℃における長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際の残留ひずみの平均値は、0.900%以下であることが好ましく、より好ましくは0.850%以下、さらに好ましくは0.800%以下、特に好ましくは0.750%以下である。下限は特に限定されるものではないが、0.100%以上である。残留ひずみを0.900%以下とすることで、フィルムの復元力が大きくなって、フィルムの折り曲げ耐性(耐屈曲性)が実用範囲内に保たれる。
また、残留ひずみを長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれの方向の平均値とすることで、フィルム全体としての特性指標とすることができる。なお、残留ひずみは延伸条件などによって調整することができる。
本フィルムの残留ひずみはJIS K 7312:1996に準じて、実施例に記載の方法により測定することができる。
より具体的には、引張サイクル試験によって、図1に示すような応力-ひずみ曲線のグラフが得られた場合に、fの値が残留ひずみと定義される。
さらに、本フィルムの23℃における長手方向(MD)及び幅方向(TD)の残留ひずみの差は0.300%以下であることが好ましく、より好ましくは0.298%以下であり、さらに好ましくは0.296%以下である。
長手方向(MD)及び幅方向(TD)の残留ひずみの差が上記数値範囲内であることにより、フィルムの折り曲げ耐性、ひいてはフィルムの各種特性の異方性が小さくなるため、フィルムの方向による制約を受けない。
したがって、フィルムを部材として使用する際や、二次加工時などの製造工程において、特定の方向を選択する必要がなくなり、作業員の作業負荷増大を回避できる利点を有する。
また、異方性による特定方向のみの不具合が起こりにくいため、ハンドリング性にも優れるフィルムとなる。
本フィルムのガラス転移温度(Tg)は、80℃以上150℃以下であることが好ましく、82℃以上140℃以下であることがより好ましく、84℃以上130℃以下がさらに好ましい。本フィルムのガラス転移温度(Tg)が80℃以上であれば、良好な耐熱性を有するといえる。一方、ガラス転移温度(Tg)が150℃以下あれば、押出成形性や延伸加工性にも適したものとなる。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、実施例に記載の方法で測定できる。
本フィルムの結晶融解温度(Tm)は、200℃以上300℃以下であることが好ましく、210℃以上290℃以下であることがより好ましく、220℃以上280℃以下であることがさらに好ましい。本フィルムの結晶融解温度(Tm)がかかる範囲であれば、本フィルムは耐熱性と押出成形性のバランスに優れる。
なお、結晶融解温度(Tm)は、実施例に記載の方法で測定できる。
本フィルムについて、150℃で30分間熱処理した際の熱収縮率は、長手方向(MD)、幅方向(TD)共に5.0%以下であることが好ましく、3.5%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましい。本フィルムの熱収縮率がかかる範囲にあれば、フィルムとして使用するのに十分な耐熱性を有する。
なお、下限値は特に制限されないが、0.01%以上である。
本フィルムのヘーズは、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。本フィルムのヘーズが上記上限値以下であれば、良好な透明性を有する。なお、下限値は特に制限されないが、0.01%以上である。
本フィルムの厚みは、1~250μmであることが好ましく、5~200μmであることがより好ましく、10~150μmであることがさらに好ましい。1μm以上とすることで、フィルム強度が実用範囲内に保たれる。250μm以下とすることで、高速通信回路及び光学用途に好適に用いることができる。
なお、厚みは、延伸条件等によって調整することができる。
本フィルムの密度は、1.320g/cm以下であることが好ましく、より好ましくは1.310g/cm以下、さらに好ましくは1.300g/cm以下である。下限値は特に制限されないが、1.100g/cm以上である。フィルム密度がかかる範囲であることで、誘電正接が良好となり、誘電正接に比例する誘電損失が効果的に低減できる。
フィルム密度と誘電正接の関係は、以下のように推定している。誘電正接は、交流電圧を印加すると双極子が振動することで発生するエネルギー損失の度合いを示すパラメーターであり、フィルム密度が高い場合、双極子の振動が互いに打ち消しあうことでエネルギー損失、すなわち誘電正接が小さくなると推定している。
<用途>
本発明の二軸延伸フィルムは、優れた低誘電特性を有するため、高速通信回路用に好適に用いることができる。高速通信回路用途としては、樹脂フィルムと銅箔で形成される柔軟な回路基板であるFPC(Flexible Printed Circuits)や、透明なフィルム上に視認されない超微細金属メッシュ配線を形成した透明アンテナフィルム等が挙げられる。
また、本発明の二軸延伸フィルムは、耐屈曲性に優れているため、フレキシブルディスプレイ(ベンダブル、ローラブル、ストレッチャブル、フォルダブル)用にも好適に用いることができる。具体的には、前面板、タッチセンサー用基材フィルム、下部保護フィルム等のディスプレイ用構成部材として使用されることが好ましい。なお、下部保護フィルムは、表示装置の裏面側を保護するフィルムである。
ディスプレイは、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、パソコンなどにおいて使用するとよい。ディスプレイの種類は、特に制限されず、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどいずれでもよく、タッチパネル型のディスプレイであってもよい。ディスプレイとしては、有機ELディスプレイが好ましい。
さらには、本発明の二軸延伸フィルムは、低誘電特性及び耐屈曲性に優れているため、高速通信回路を搭載したフレキシブルディスプレイ用として好適に用いることができる。
<<硬化樹脂層付きフィルム>>
本発明の二軸延伸フィルムは、金属層に対する密着性向上を目的として、必要に応じて、二軸延伸フィルムの少なくとも一方の表層上に硬化樹脂層を有していてもよく、該硬化樹脂層は、架橋剤を不揮発成分に対して70質量%以上含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。なかでも、二軸延伸フィルムの両表層上に硬化樹脂層を設けることがより好ましい。ここで、硬化樹脂層を有する二軸延伸フィルムは、硬化樹脂層付きフィルムと称し、二軸延伸フィルムとは区別される。
なお、二軸延伸フィルムと前記硬化樹脂層との間には、その他の層を有していてもよい。
前記架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用でき、例えば、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。
これらの中でも、硬化樹脂層上に金属層を設ける場合、耐久密着性が向上するという観点から、オキサゾリン化合物が好適に用いられる。
また、加熱によるフィルム表面へのオリゴマーの析出防止や、硬化樹脂層の耐久性向上という観点からは、メラミン化合物が好適に用いられる。
(オキサゾリン化合物)
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン及び2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限はなく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基及びシクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン等のα,β-不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上のモノマーを使用することができる。
塗膜の耐久性向上の観点から、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基量は、好ましくは0.5~10mmol/g、より好ましくは3~9mmol/g、さらに好ましくは5~8mmol/gの範囲である。
(メラミン化合物)
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えばアルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール及びイソブタノール等が好適に用いられる。
また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えばエピクロロヒドリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン及びビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物や、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。
ポリエポキシ化合物としては、例えばソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。ジエポキシ化合物としては、例えばネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。モノエポキシ化合物としては、例えばアリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル及びフェニルグリシジルエーテル等が、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)及びイソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が例示される。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物及びカルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネート又は脂環族イソシアネートがより好ましい。
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール及びエチルフェノールなどのフェノール系化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール及びエタノールなどのアルコール系化合物;イソブタノイル酢酸メチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物;ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物;ジフェニルアニリン、アニリン及びエチレンイミンなどのアミン系化合物;アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム及びシクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
また、イソシアネート化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましい。
(カルボジイミド化合物)
カルボジイミド化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な密着性等のために、分子内に2つ以上のカルボジイミド構造を有するポリカルボジイミド化合物がより好ましい。
カルボジイミド化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
カルボジイミド化合物に含有されるカルボジイミド基の含有量は、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1molを与えるためのカルボジイミド化合物の重さ[g])で、通常100~1000、好ましくは250~700、より好ましくは300~500の範囲である。上記範囲で使用することで、塗膜の耐久性が向上する。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩及びヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
(シランカップリング化合物)
シランカップリング化合物とは、1つの分子中に有機官能基とアルコキシ基などの加水分解基を有する有機ケイ素化合物である。例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有化合物;p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシランなどのスチリル基含有化合物;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有化合物;トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート基含有化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基含有化合物などが挙げられる。
これらの架橋剤は、単独でも2種以上の併用であってもよいが、2種以上併用することにより、硬化樹脂層上に設ける金属層との密着性及び加熱後のオリゴマーの析出防止性を向上させることができる。その中でも、特に硬化樹脂層上の金属層との密着性を向上させられるオキサゾリン化合物と、加熱後のオリゴマーの析出防止性が良好なメラミン化合物との組み合わせが好ましい。
また、硬化樹脂層上の金属層との密着性をより向上させるためには、3種以上の架橋剤を組み合わせることがより好ましく、3種以上の架橋剤の組み合わせとしては、架橋剤の1つとしてメラミン化合物を選択することが好適であり、メラミン化合物と組み合わせる相手方の架橋剤としては、オキサゾリン化合物とエポキシ化合物、カルボジイミド化合物とエポキシ化合物がさらに好ましい。
かかる架橋剤を含有する場合、同時に架橋を促進するための成分、例えば架橋触媒などを併用することができる。
本発明に係る硬化樹脂層を形成する樹脂組成物中の全不揮発成分に対する割合として、前記架橋剤は70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。70質量%以上であれば、硬化樹脂層上に設けた金属層との密着性及び加熱後のオリゴマー析出防止性が良好となる。
前記樹脂組成物は、硬化樹脂層の外観の向上や、硬化樹脂層上に設ける金属層との密着性向上等のために、本発明の主旨を損なわない範囲において、バインダー樹脂を含有することも可能である。
前記バインダー樹脂としては、従来公知のものを使用できるが、硬化樹脂層上に設ける層との密着性向上の観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。
また、前記樹脂組成物は、ブロッキング、滑り性改良を目的として、粒子を含有することも可能である。その平均粒径は、フィルムの透明性の観点から、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。一方、滑り性をより効果的に向上させるために、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、特に好ましくは硬化樹脂層の膜厚よりも大きい範囲である。
なお、粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機粒子等が挙げられる。
さらに、本発明の主旨を損なわない範囲において、前記樹脂組成物には必要に応じて、架橋触媒、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を併用することが可能である。
硬化樹脂層の膜厚(乾燥後)としては、0.003~1.0μmが好ましく、0.005~0.5μmがより好ましく、0.01~0.2μmがさらに好ましい。膜厚が1.0μm以下であれば、硬化樹脂層の外観や耐ブロッキング性が十分である。一方、膜厚が0.003μm以上であれば、フィルムから析出するオリゴマー析出量が少なく、良好となる。
前記樹脂組成物は、一般的に、水、有機溶剤、又はこれらの混合液により希釈されていることが好ましく、硬化樹脂層は、樹脂組成物の希釈液を、フィルムの表面に塗布液としてコーティングして、乾燥することにより形成するとよい。
フィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレイコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗布方法を用いることができる。
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性、密着性を改良するために、塗布前にフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
フィルム表面には必要に応じてコーティングを施すことができ、コーティングにより、前記硬化樹脂層を形成するとよい。硬化樹脂層の形成方法としては、インラインコーティング及びオフラインコーティングがあるが、インラインコーティングで行うことが好ましい。インラインコーティングは、フィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、原料であるポリエステルを溶融押し出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻き上げ前の二軸延伸フィルムの何れかにコーティングするが、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に幅方向(横方向)に延伸する方法が好ましい。なお、インラインコーティングによって硬化樹脂層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液又は水分散体として、固形分濃度が0.1~50質量%程度を目安に調整した塗布液を用いることが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の1種以上の有機溶剤を含有していてもよい。
フィルム上に硬化樹脂層を形成する際の乾燥及び硬化条件に関しては、特に制限されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより硬化樹脂層を設ける場合、好ましくは80~200℃で3~40秒間、より好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
一方、インラインコーティングにより硬化樹脂層を設ける場合は、好ましくは70~280℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに関わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
なお、硬化樹脂層中の各種化合物(成分)の分析は、例えば、TOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等によって行うことができる。
<硬化樹脂層付きフィルムの物性>
本発明に係る硬化樹脂層は、金属層に対する密着性向上だけでなく、加熱によるフィルム表面へのオリゴマーの析出防止にも効果がある。オリゴマーの析出を低減させることで、オリゴマーが析出・白化して起こるフィルム外観の白化による視認性低下を抑制することができる。
本発明の硬化樹脂層付きフィルムにおいて、二軸延伸フィルムの両表層上に硬化樹脂層を有する態様では、少なくとも一方の硬化樹脂層表面のオリゴマー(エステル環状三量体)析出量は、0.50mg/m以下であることが好ましく、0.45mg/m以下であることがより好ましく、0.40mg/m以下であることがさらに好ましい。オリゴマー析出量が0.50mg/m以下であれば、表面にオリゴマーが析出・結晶化して起こるフィルム外観の白化による視認性の低下、後加工での欠陥の発生及び工程内や部材の汚染などがなく好ましい。下限値は特に制限されないが、0.01mg/m以上である。
なお、オリゴマー析出量は実施例に記載の方法により得られる値である。
<<金属積層フィルム>>
本発明の金属積層フィルムにおいて、前記硬化樹脂層上には金属層を有していてもよい。なお、前記硬化樹脂層と金属層との間には、その他の層を有していてもよい。
金属層は、金属を主成分として含有する層である。ここでいう、主成分とは、金属層の50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上を金属が占めるという意味である。
使用する金属に関しては、銅、銅合金、銀、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金などが挙げられるが、電磁波遮蔽特性の観点から、銅、銀が好ましく、柔軟性(フレキシブル性)の観点から、銅がより好ましい。
金属層は、二軸延伸フィルム及び硬化樹脂層付きフィルムが有する透明性を保持する観点から、例えば、メッシュ形状やワイヤー形状のようにパターン化されていることが好ましい。
金属層の厚みは、2~30μmであることが好ましく、3~25μmであることがより好ましい。金属層の厚みが上記下限値以上であると、導電性が十分に担保され、上記上限値以下であると金属層を設けた際に視認性を低減することができる。
なお、金属層の厚みはサンプル断面を電子顕微鏡で観察する方法により、測定できる。
<用途>
本発明の硬化樹脂層付きフィルム及び金属積層フィルムは、透明性を損なわず、優れた低誘電特性を有する。
したがって、高速通信回路用に好適に用いることができる。高速通信回路用途としては、樹脂フィルムと銅箔で形成される柔軟な回路基板であるFPC(Flexible Printed Circuits)や、透明なフィルム上に視認されない超微細金属メッシュ配線を形成した透明アンテナフィルム等が挙げられる。中でも、高い透明性が求められる透明アンテナフィルム用として好適に用いることができる。
<<語句の説明など>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」あるいは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
<評価方法>
(1)誘電率と誘電正接
得られたフィルムについて、株式会社エーイーティー社製の誘電率測定システム(空洞共振器(TEモード)、制御ソフトウェア、ベクトルネットワークアナライザMS46122B(アンリツ株式会社製))を用いてJIS R1641に準じて、周波数10GHz及び、28GHz、40GHzにおける誘電率及び誘電正接を測定した。
(2)ヒステリシスロス率
JIS K 7312:1996に準じて、以下の方法により23℃におけるヒステリシスロス率の平均値を求めた。
測定装置は、引張試験機(株式会社島津製作所製 引張試験機AG‐1kNXplus)を用いた。試験片は、本フィルムから測定方向の長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出したものを用いた。試験片の長さ方向の両端部をチャック間距離50mmでチャックし、クロスヘッドスピード0.5mm/分にてひずみ5%まで上昇させた後、同様の速度で初期位置まで下降させる1サイクルの引張サイクル試験から応力-ひずみ曲線を得た。応力-ひずみ曲線は、図1に示すようなプロファイルをとり、ヒステリシスロス率は、得られた応力-ひずみ曲線から、上昇動作で得られた曲線の面積A1(abcda)と、下降動作で得られた曲線の面積の差となる面積A2(abcef)を用いて、以下の式(2)にて算出した。試験は3回測定し、その平均値を求めた。上記引張サイクル試験はフィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)にてそれぞれ実施し、その平均値を求めた。
ヒステリシスロス率=(A2/A1)×100・・・式(2)
(3)残留ひずみ
JIS K 7312:1996に準じて、以下の方法により23℃における残留ひずみの平均値を求めた。
測定装置は、引張試験機(株式会社島津製作所製 引張試験機AG‐1kNXplus)を用いた。試験片は、本フィルムから測定方向の長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出したものを用いた。試験片の長さ方向の両端部をチャック間距離50mmでチャックし、クロスヘッドスピード0.5mm/分にてひずみ5%まで上昇させた後、同様の速度で初期位置まで下降させる1サイクルの引張サイクル試験から得られた応力-ひずみ曲線において、応力が無くなった点のひずみを残留歪とした。試験は3回測定し、その平均値を求めた。上記引張サイクル試験はフィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)にてそれぞれ実施し、その平均値を求めた。
(4)ガラス転移温度
得られたフィルムについて、DSC8000(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、JIS K7121(2012年)に準じて、加熱速度10℃/分にて一度融解温度まで昇温させたのちに降温速度10℃/分にて降温させ、次いで加熱速度10℃/分の昇温過程におけるガラス転移温度を測定した。
(5)結晶融解温度
得られたフィルムについて、DSC8000(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、JIS K7121(2012年)に準じて、加熱速度10℃/分の昇温過程における結晶融解温度を測定した。
(6)成形性
押出成形において、キャストロールで冷却固化して延伸前シートを得る際に、結晶化して白化せずに透明なフィルムが得られた場合には○、結晶化して白化したフィルムが得られた場合には×と評価した。
(7)熱収縮率
本フィルムを測定方向の長さ120mm、幅10mmの長方形に切り出し、端部から長さ100mmのところに印をつけたものを用いた。これら試験片の端部をクリップで挟んで吊り下げ、150℃で30分間加熱した。冷却後、試験片端部から印までの長さを測定して熱収縮率を求めた。
なお、測定は長手方向(MD)及び幅方向(TD)の両方行った。
(8)ヘーズ
ヘーズメーターNDH-7000II(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7136(2000年)に基づいて、全光線透過率及び拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。
[ヘーズ]=([拡散透過率]/[全光線透過率])×100
(9)厚み
本フィルムの厚みについては、1/1000mmのダイヤルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
(10)フィルム密度
本フィルムを長さ100mm、幅100mmの正方形に切り出し、そのフィルムの厚みを測定し、フィルム体積を以下の式で算出した。
また、電子天秤にてフィルムの重量を測定し、フィルム体積と重量からフィルム密度を以下の式で算出した。
[フィルム体積]=[フィルム面積]×[フィルム厚み]
[フィルム密度]=[フィルム重量]/[フィルム体積]
(11)加熱による硬化樹脂層表面のオリゴマー(エステル環状三量体)析出量
実施例で得られた硬化樹脂層付きフィルムについて、縦300mm、横225mmのサイズの試料サンプルとして、所定の温度(180℃)に保った熱風式オーブン中、120分間熱処理を施した。熱処理後、測定面を内面として、縦200mm、横125mmの上部が開いている箱型の形状を作製した。
次いで、上記の箱型形状の中にDMF(ジメチルホルムアミド)10mLを入れて3分放置した後、DMFを回収し、液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製:LC-7A 移動相A:アセトニトリル、移動相B:2%酢酸水溶液、カラム:三菱ケミカル株式会社製「MCI GEL ODS 1HU」、カラム温度:40℃、流速:1mL/分、検出波長:254nm)に供給して、DMF中のエステル環状三量体量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、硬化樹脂層表面のオリゴマー(エステル環状三量体)量(mg/m)とした。DMF中のエステル環状三量体は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
なお、標準試料は、予め分取したエステル環状三量体を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し、作製した。
[ポリブチレンナフタレート樹脂(A)]
PBN樹脂(A)として、ジカルボン酸成分(a-1):2,6-ナフタレンジカルボン酸=100モル%、ジオール成分(a-2):1,4-ブタンジオール=100モル%のホモPBNを用いた。当該PBN樹脂のガラス転移温度(Tg(A))は77℃であった。
[ポリアリレート樹脂]
少なくとも1種のポリエステルとして、非晶性ポリエステル(B)である、ジカルボン酸成分(b-1):テレフタル酸/イソフタル酸(モル比)=50/50、二価フェノール成分(b-2):ビスフェノールA100モル%のPARを用いた。当該PARのガラス転移温度(Tg(B))は193℃であった。以下、PARを(B)とする。
[ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム]
PETフィルムとして、厚み50μmの二軸延伸PETフィルム(三菱ケミカル株式会社製「ダイアホイル T100-50」)を用いた。
[ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂]
PEN樹脂として、ジカルボン酸成分:2,6-ナフタレンジカルボン酸=100モル%、ジオール成分:エチレングリコール100モル%のホモPENを用いた。
[硬化樹脂層]
硬化樹脂層を形成するための樹脂組成物としては下記を用いた。
(A1):ヘキサメトキシメチロールメラミン
(A2):オキサゾリン化合物であるエポクロス(株式会社日本触媒製) オキサゾリン基量7.7mmоl/g
(A3):ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
(B1):平均粒径0.07μmのシリカ粒子
なお、実施例で用いた塗布液の組成は表1に示すとおりである
Figure 2022173043000002
(実施例1)
ペレット状の(A)80質量%に対して、ペレット状の(B)20質量%の割合で添加し((A)が100質量部に対して、(B)が25質量部)、ドライブレンドした後、285℃に設定したΦ40mm二軸押出機にて溶融混練し、ギャップ1.0mmのTダイ内からフィルムとして押出し、65℃のキャストロールで引き取り、冷却固化し、厚み約450μmの膜状物(キャストフィルム)を得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、赤外線ヒーター(ヒーター近傍温度:133℃)で加熱して長手方向(MD)に2.8倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度110℃、延伸温度115℃、熱固定温度190℃で幅方向(TD)に4.3倍延伸を行い、その後テンター内にて熱固定しながら、幅方向(TD)にフィルムの弛緩処理を5%行った。
得られたフィルムについて測定を行った結果を表2に示す。
(実施例2)
ペレット状の(A)70質量%に対して、ペレット状の(B)30質量%の割合で添加し((A)が100質量部に対して、(B)が42.9質量部)、ドライブレンドした後、285℃に設定したΦ40mm二軸押出機にて溶融混練し、ギャップ1.0mmのTダイ内からフィルムとして押出し、90℃のキャストロールで引き取り、冷却固化し、厚み約450μmの膜状物(キャストフィルム)を得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、赤外線ヒーター(ヒーター近傍温度:133℃)で加熱して長手方向(MD)に2.8倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度110℃、延伸温度115℃、熱固定温度190℃で幅方向(TD)に4.3倍延伸を行い、その後テンター内にて熱固定しながら、幅方向(TD)にフィルムの弛緩処理を5%行った。
得られたフィルムについて測定を行った結果を表2に示す。
(実施例3)
ペレット状の(A)60質量%に対して、ペレット状の(B)40質量%の割合で添加し((A)が100質量部に対して、(B)が66.7質量部)、ドライブレンドした後、285℃に設定したΦ40mm二軸押出機にて溶融混練し、ギャップ1.0mmのTダイ内からフィルムとして押出し、95℃のキャストロールで引き取り、冷却固化し、厚み約450μmの膜状物(キャストフィルム)を得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、赤外線ヒーター(ヒーター近傍温度:145℃)で加熱して長手方向(MD)に2.8倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度120℃、延伸温度125℃、熱固定温度190℃で幅方向(TD)に4.1倍延伸を行い、その後テンター内にて熱固定しながら、幅方向(TD)にフィルムの弛緩処理を5%行った。
得られたフィルムについて測定を行った結果を表2に示す。
(比較例1)
ペレット状の(A)100質量%を使用し、キャストロールの温度を75℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法でキャストフィルムを製膜しようとしたところ、結晶化と思われる白化が起き、キャストロールへの密着不良のため、外観が悪く、厚みの不均一なフィルムとなり、延伸可能な非晶フィルムが採取できなかった。したがって、表2の成形性を×とした。
(比較例2)
二軸延伸PETフィルムについて評価を行った結果を表2に示す。
(比較例3)
ペレット状のPEN樹脂100質量%を使用し、285℃に設定したΦ40mm二軸押出機にて溶融混練し、ギャップ1.0mmのTダイ内からフィルムとして押出し、110℃のキャストロールで引き取り、冷却固化し、厚み約450μmの膜状物(キャストフィルム)を得た。
続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、赤外線ヒーター(ヒーター近傍温度:175℃)で加熱して長手方向(MD)に2.6倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度125℃、延伸温度130℃、熱固定温度190℃で幅方向(TD)に3.8倍延伸を行い、その後テンター内にて熱固定しながら、幅方向(TD)にフィルムの弛緩処理を5%行った。
得られたフィルムについて測定を行った結果を表2に示す。
Figure 2022173043000003
さらに、以下表3に、実施例1~3、比較例2及び3のフィルムについて、10GHz及び40GHzにおいての誘電正接と誘電率を示す。
Figure 2022173043000004
本発明の二軸延伸フィルムは、上記実施例1~3から明らかなように、高周波数帯域で低誘電特性を有することから、伝送損失が小さく、5Gの高速大容量のデータ通信に適用が可能である。また、ヒステリシスロス率及び残留ひずみが小さいことから、復元性、繰り返しの折り曲げ耐性に優れ、フレキシブル性が要求される用途に好適に用いることができる。さらにヘーズが小さく、透明性に優れることから、光学用途としても有用である。加えて、本発明の二軸延伸フィルムは、十分な耐熱性をも有する。これらの特性に加え、汎用性の高いポリエステルフィルムであることから、コスト的にも有利であり、かつ製造も容易であることから、種々の用途に応用することが可能である。
(実施例4)
実施例2の長手方向(MD)延伸後、幅方向(TD)延伸前に、一軸延伸フィルムの両面に、前記塗布液を塗布し、膜厚(乾燥後)が0.04μmの硬化樹脂層を有する二軸延伸フィルム(硬化樹脂層付きフィルム)を得た。
なお、実施例4においては、二軸延伸フィルムの厚みが125μmとなるように製膜した。
得られた硬化樹脂層付きフィルムについて、加熱による硬化樹脂層表面のオリゴマー析出量の評価結果を下記表4に示す。
Figure 2022173043000005
なお、表4中の0.38/0.45は、片面のオリゴマー析出量が0.38mg/m、もう片面のオリゴマー析出量が0.45mg/mであることを意味する。
本発明の硬化樹脂層付きフィルムにおいては、実施例4の結果から、二軸延伸フィルムの少なくとも一方の表層上に硬化樹脂層を有することで、硬化樹脂層表面のオリゴマー析出量を低減させ得る。
したがって、本発明の硬化樹脂層付きフィルムは、視認性も良好であり、特に高い透明性が求められる透明アンテナ用として好適に用いることができる。
本発明の二軸延伸フィルムは、優れた低誘電特性を有するため、高速通信回路用、特に、FPCや、透明アンテナフィルム等に好適に用いることができる。また、耐屈曲性に優れているため、フレキシブルディスプレイ用にも好適に用いることができる。具体的には、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、パソコンなどの液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなど、またタッチパネル型のディスプレイにも有用である。特に、低誘電特性及び耐屈曲性に優れているため、高速通信回路を搭載したフレキシブルディスプレイ用として好適に用いることができる。

Claims (19)

  1. 2種以上のポリエステルを含み、
    そのうちの少なくとも1種がポリブチレンナフタレート樹脂(A)であり、
    28GHzにおける誘電率が、3.13以下である、二軸延伸フィルム。
  2. 28GHzにおける誘電正接が、0.0040以下である、請求項1に記載の二軸延伸フィルム。
  3. 長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際のヒステリシスロス率の平均値が45.0%以下である、請求項1又は2に記載の二軸延伸フィルム。
  4. 長手方向(MD)及び幅方向(TD)それぞれの方向に5%引張ひずみまでの引張サイクル試験を行った際の残留ひずみの平均値が0.900%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
  5. 非晶性ポリエステル(B)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
  6. 前記非晶性ポリエステル(B)は、前記ポリブチレンナフタレート樹脂(A)よりもガラス転移温度が高い、請求項5に記載の二軸延伸フィルム。
  7. 前記ポリブチレンナフタレート樹脂(A)100質量部に対して、前記非晶性ポリエステル(B)を1質量部以上100質量部以下の割合で含む、請求項5又は6に記載の二軸延伸フィルム。
  8. 前記非晶性ポリエステル(B)が、ポリアリレートである、請求項5~7のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
  9. 高速通信回路用である、請求項1~8のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
  10. フレキシブルディスプレイ用である、請求項1~8のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
  11. 高速通信回路を搭載したフレキシブルディスプレイ用である、請求項1~8のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
  12. 請求項1~8のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルムの少なくとも一方の表層上に硬化樹脂層を有し、該硬化樹脂層が、架橋剤を不揮発成分に対して70質量%以上含有する樹脂組成物から形成される、硬化樹脂層付きフィルム。
  13. 請求項12に記載の硬化樹脂層付きフィルムの前記硬化樹脂層上に金属層を備える、金属積層フィルム。
  14. 前記金属層がパターン化された、請求項13に記載の金属積層フィルム。
  15. 前記金属層が銅又は銀からなる、請求項13又は14に記載の金属積層フィルム。
  16. 高速通信回路用である、請求項12に記載の硬化樹脂層付きフィルム。
  17. 透明アンテナフィルム用である、請求項16に記載の硬化樹脂層付きフィルム。
  18. 高速通信回路用である、請求項13~15のいずれか1項に記載の金属積層フィルム。
  19. 透明アンテナフィルム用である、請求項18に記載の金属積層フィルム。
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